(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-08
(45)【発行日】2022-03-16
(54)【発明の名称】施設利用エリア分析装置及び施設利用エリア分析プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20220309BHJP
G01C 21/34 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
G06Q50/10
G01C21/34
(21)【出願番号】P 2020197096
(22)【出願日】2020-11-27
(62)【分割の表示】P 2019155432の分割
【原出願日】2019-08-28
【審査請求日】2020-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000135771
【氏名又は名称】株式会社パスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100102716
【氏名又は名称】在原 元司
(74)【代理人】
【識別番号】100122275
【氏名又は名称】竹居 信利
(72)【発明者】
【氏名】兵頭 輝将
(72)【発明者】
【氏名】▲藍▼野 弘一
【審査官】安田 勇太
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-84769(JP,A)
【文献】特開2006-242583(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 -99/00
G01C 21/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
施設利用エリア分析の対象範囲内において、
前記対象範囲を分割して設定された領域内に施設利用者の住居地点を発生させ、前記施設利用者の住居地点を起点とし、地域拠点を終点
とする経路データを生成する経路データ生成手段と、
前記経路データが
、対象施設からの所定の範囲内を通過する施設利用経路データであるかを判定する経路データ判定手段と、
前記経路データ判定手段が判定した前記施設利用経路データの起点となっている
前記施設利用者の住居地点を発生させた前記領域を、前記対象施設の利用者居住地点として判定する居住地点判定手段と、
前記居住地点判定手段が前記対象施設の前記利用者居住地点として判定した、一つの前記領域の範囲または複数の前記領域を結合した範囲を、前記対象施設の利用者が居住する地域であることを示す、前記対象施設の施設利用エリアとして生成する施設利用エリア生成手段と、
を備える施設利用エリア分析装置。
【請求項2】
前記対象範囲を分割して設定された前記領域は、所定の距離毎に地域を方眼形状に分割したメッシュ形態であることを特徴とする、請求項1に記載の施設利用エリア分析装置。
【請求項3】
前記対象範囲を分割して設定された前記領域は、市区町村や町丁目、街区、あるいは、統計調査区等の不定形状をとる面的データであることを特徴とする、請求項1に記載の施設利用エリア分析装置。
【請求項4】
前記経路データ生成手段は、前記対象範囲を分割して設定された、前記領域の形状における重心地点または中心地点を前記施設利用者の住居地点として設定する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の施設利用エリア分析装置。
【請求項5】
前記経路データ生成手段は、前記地域拠点を、前記施設利用者の住居地点に最も近接している地域拠点を検索して設定する、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の施設利用エリア分析装置。
【請求項6】
前記経路データ生成手段により生成された前記経路データの前記住居地点と前記地域拠点とを最短経路で結んだ最短経路データを生成し、前記経路データと、前記最短経路データとの距離の差が、所定の閾値以内である経路データを抽出する経路データ抽出手段を備え、
前記経路データ判定手段は、前記経路データ抽出手段が抽出した経路データが、前記対象施設からの所定の範囲内を通過する施設利用経路データであるかを判定する、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の施設利用エリア分析装置。
【請求項7】
前記経路データ判定手段は、前記対象施設からの所定の範囲を、前記対象施設の属性及び/または前記施設利用者の移動手段に応じて設定する、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の施設利用エリア分析装置。
【請求項8】
前記施設利用エリア生成手段は、前記領域が複数の前記対象施設の施設利用エリアに含まれる場合は、前記領域に最も近接する前記対象施設または前記地域拠点に最も近接する前記対象施設のいずれかの前記施設利用エリアとして設定する、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の施設利用エリア分析装置。
【請求項9】
コンピュータを、
施設利用エリア分析の対象範囲内において、
前記対象範囲を分割して設定された領域内に施設利用者の住居地点を発生させ、前記施設利用者の住居地点を起点とし、地域拠点を終点
とする経路データを生成する経路データ生成手段、
前記経路データが
、対象施設からの所定の範囲内を通過する施設利用経路データであるかを判定する経路データ判定手段、
前記経路データ判定手段が判定した前記施設利用経路データの起点となっている
前記施設利用者の住居地点を発生させた前記領域を、前記対象施設の利用者居住地点として判定する居住地点判定手段、
前記居住地点判定手段が前記対象施設の前記利用者居住地点として判定した、一つの前記領域の範囲または複数の前記領域を結合した範囲を、前記対象施設の利用者が居住する地域であることを示す、前記対象施設の施設利用エリアとして生成する施設利用エリア生成手段、
として機能させる施設利用エリア分析プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施設利用エリア分析装置及び施設利用エリア分析プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
店舗等の施設の利用者が居住するエリアの分布等を分析する施設利用エリア分析技術、例えば仮想商圏の分析について、様々な手法が提案されている。このような技術としては、店舗の周辺に一定距離による同心円を描き、その範囲内にある人口統計を使って予想顧客数を算出して仮想商圏を分析する手法、一定距離による同心円の代わりに、道路に沿った距離を使った一定の範囲内を仮想商圏として定める手法や、交通事情等を考慮して実際の移動時間が同一の範囲内を仮想商圏として定める手法等、より現実に近い仮想商圏を決める方法等がある。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、仮想商圏を決定する際に、鉄道や河川等、通行が困難な箇所がある場合、仮想商圏から除外したり影響範囲を限定したりする方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の技術においては、鉄道や河川等の地形的な制約は考慮されているが、例えば、自宅を出て駅に向かい、鉄道を使って通勤・通学をし、再び駅から自宅に戻るといった日常的な利用者の行動パターン等は考慮されていない。即ち、利用対象である施設の位置と、利用者が日常的に使用する経路との関係を十分に仮想商圏等の分析に反映することができなかった。
【0006】
例えば、日常的に使用する商品を購入する際には、自宅から最寄りの店舗を使う場合もあるが、仮に自宅から離れていても、通勤・通学時に地域拠点である最寄り駅からの帰宅経路上にある店舗であれば、商品を購入するケースが多く見られる。従って、仮想商圏を検討する際には、このような商品の購買行動を反映させる必要がある。逆に、自宅から最寄りの店舗であっても、帰宅経路上に無ければ、わざわざ自宅を通り過ぎて当該店舗を利用するケースは少なく、経路上の店舗で購入を済ましてしまうケースが多い。
【0007】
このような場合には、いわゆる店舗の位置を中心とした円商圏による仮想商圏の分析方法とは別に、駅から自宅に流れる利用者の動きに合わせた仮想商圏の分析方法を適用することで、より高精度の仮想商圏の分析を行うことができる。
【0008】
なお、本手法は、商品の購入の際の店舗等に限らず、例えば、レストラン、喫茶店、ファーストフード店、居酒屋等を含む飲食店や、クリーニング店、レンタルビデオ店等の生活サービス店舗、銀行の現金自動預け払い機(ATM)の設置場所や、フィットネスクラブや図書館等の文化施設、市役所・区役所等の庁舎外の手続用窓口等、住民が日常的に利用する施設等の立地検討の際の参考情報としても利用することができる。
【0009】
本発明の目的は、上記のような店舗、公共施設等の施設の立地検討の際に利用するために、当該施設の利用者の住居地点の分布等からなる施設利用エリアを高精度に分析できる施設利用エリア分析装置及び施設利用エリア分析プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態は、施設利用エリア分析装置であって、施設利用エリア分析の対象範囲内において、前記対象範囲を分割して設定された領域内に施設利用者の住居地点を発生させ、前記施設利用者の住居地点を起点とし、地域拠点を終点とする経路データを生成する経路データ生成手段と、前記経路データが、対象施設からの所定の範囲内を通過する施設利用経路データであるかを判定する経路データ判定手段と、前記経路データ判定手段が判定した前記施設利用経路データの起点となっている前記施設利用者の住居地点を発生させた前記領域を、前記対象施設の利用者居住地点として判定する居住地点判定手段と、前記居住地点判定手段が前記対象施設の前記利用者居住地点として判定した、一つの前記領域の範囲または複数の前記領域を結合した範囲を、前記対象施設の利用者が居住する地域であることを示す、前記対象施設の施設利用エリアとして生成する施設利用エリア生成手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、前記対象範囲を分割して設定された前記領域は、所定の距離毎に地域を方眼形状に分割したメッシュ形態であることを特徴とする。
【0012】
また、前記対象範囲を分割して設定された前記領域は、市区町村や町丁目、街区、あるいは、統計調査区等の不定形状をとる面的データであることを特徴とする。
【0013】
また、前記経路データ生成手段は、前記対象範囲を分割して設定された、前記領域の形状における重心地点または中心地点を前記施設利用者の住居地点として設定するのが好適である。
【0014】
また、前記経路データ生成手段は、前記地域拠点を、前記施設利用者の住居地点に最も近接している地域拠点を検索して設定するのが好適である。
【0015】
また、前記経路データ生成手段により生成された前記経路データの前記住居地点と前記地域拠点とを最短経路で結んだ最短経路データを生成し、前記経路データと、前記最短経路データとの距離の差が、所定の閾値以内である経路データを抽出する経路データ抽出手段を備え、前記経路データ判定手段は、前記経路データ抽出手段が抽出した経路データが、前記対象施設からの所定の範囲内を通過する施設利用経路データであるかを判定するのが好適である。
【0016】
前記経路データ判定手段は、前記対象施設からの所定の範囲を、前記対象施設の属性及び/または前記施設利用者の移動手段に応じて設定する
【0017】
また、前記施設利用エリア生成手段は、前記領域が複数の前記対象施設の施設利用エリアに含まれる場合は、前記領域に最も近接する前記対象施設または前記地域拠点に最も近接する前記対象施設のいずれかの前記施設利用エリアとして設定するのが好適である。
【0018】
また、本発明の他の実施形態は、施設利用エリア分析プログラムであって、コンピュータを、施設利用エリア分析の対象範囲内において、前記対象範囲を分割して設定された領域内に施設利用者の住居地点を発生させ、前記施設利用者の住居地点を起点とし、地域拠点を終点とする経路データを生成する経路データ生成手段、前記経路データが、対象施設からの所定の範囲内を通過する施設利用経路データであるかを判定する経路データ判定手段、前記経路データ判定手段が判定した前記施設利用経路データの起点となっている前記施設利用者の住居地点を発生させた前記領域を、前記対象施設の利用者居住地点として判定する居住地点判定手段、前記居住地点判定手段が前記対象施設の前記利用者居住地点として判定した、一つの前記領域の範囲または複数の前記領域を結合した範囲を、前記対象施設の利用者が居住する地域であることを示す、前記対象施設の施設利用エリアとして生成する施設利用エリア生成手段、として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、店舗等の施設の利用者の分布等を高精度に分析することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施形態にかかる施設利用エリア分析装置の例の機能ブロック図である。
【
図2】実施形態にかかる施設利用エリア分析装置の動作例の説明図である。
【
図3】実施形態にかかる施設利用エリア分析装置の動作例のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)を、図面に従って説明する。
【0022】
図1には、実施形態にかかる施設利用エリア分析装置100の例の機能ブロック図が示される。
図1において、施設利用エリア分析装置100は、地図データ取得部10、経路データ取得部11、経路データ生成部12、経路データ抽出部13、経路データ判定部14、居住地点判定部16、施設利用エリア生成部18、表示制御部20、通信部22、記憶部24及びCPU26を含んで構成されている。なお、CPU26以外にGPU等のアクセラレーターを用いてもよい。上記施設利用エリア分析装置100は、CPU26、ROM、RAM、不揮発性メモリ、I/O、通信インターフェース等を備え、装置全体の制御及び各種演算を行うコンピュータとして構成されており、上記各機能は、例えばCPU26とCPU26の処理動作を制御するプログラムとにより実現される。
【0023】
地図データ取得部10は、施設利用エリア分析の対象範囲内において、施設利用エリア分析に必要となる地図データを取得する。地図データは、施設利用エリア分析装置に実装されている地理情報システム(GIS)で利用可能なデータ形式をとっており、経路データ作成時に使用する道路ネットワークデータ、地域拠点としての電車の駅の出口、バスの停留所等の位置情報、施設利用エリア分析の対象施設の位置情報等からなる。また、地図データには、施設利用者の住居地点を取得するために、地域の人口統計データおよび/または居住者データ等の居住者情報が含まれ、さらに地図を表示する際の背景用の地図情報として、行政界(市区町村界、町丁目界)や道路形状や鉄道線路、河川、海岸線、公共施設や工場等のデータが含まれてもよい。取得した地図データは、記憶部24に記憶させる。
【0024】
ここで、地図データ取得部10で取得する地図データのうち、例えば、店舗等の対象施設の位置情報には、その施設の属性情報が付与されていてもよい。属性情報とは、例えば、店舗の場合であれば、当該店舗の種別、系列店か競合店の区別、売り場面積、開店時間等の情報で、商圏分析をする際の指標とするものである。
【0025】
また、地図データ取得部10で取得する地図データに含まれる地域の人口統計データとは、施設利用エリア分析の対象範囲内を、所定の距離毎に地域を方眼形状に分割したメッシュ形態をとり、メッシュ毎に居住者数等の人口統計を持つデータである。あるいは、メッシュ形態をとらず、市区町村や町丁目、街区、あるいは、統計調査区等の不定形状をとる面的データ(ポリゴンデータ)であってもよく、この場合、ポリゴンデータ毎に居住者数等の人口統計を持つ。また、居住者データとは、施設利用エリア分析の対象範囲内にある建物形状または建物ポイント毎に居住者数を付与したデータ、または、住民情報や顧客情報のような居住者情報(居住者数)に住所情報が付与されたデータである。
【0026】
経路データ取得部11は、施設利用エリア分析の対象範囲内において、施設利用者の住居地点を起点とし、地域拠点を終点とする地図上の経路データを取得して、記憶部24に記憶させる。ここで、上記施設は、店舗、公共施設その他の利用者の利用に供される施設であって、実施形態にかかる施設利用エリア分析装置100の分析の対象となる施設(対象施設)である。また、施設利用エリアは、上記施設を利用する利用者の居住領域(住居地点の集合)であり、施設利用エリア分析の対象範囲は、実施形態にかかる施設利用エリア分析装置100の分析の対象となる領域であって、上記居住領域、対象施設、地域拠点を含む領域である。また、地域拠点は、電車の駅の出口、バスの停留所、自動車により通勤する場合の会社の社屋または工場の駐車場その他の、利用者が居住地との間で日常的に往復移動する拠点である。なお、地域拠点を、面的に地域拠点エリアとして設定することもでき、例えば、中心市街地を形成している所定の範囲を地域拠点エリアとして定め、当該地域拠点エリア内または外周部上にある任意の地点、例えば主要な交差点等を地域拠点の一つとしてもよい。ここで、経路データは、上記の通り、施設利用者の住居地点を起点とし、上記地域拠点の一つを終点とする地図上の経路で、必ずしも最短経路で無くてもよい。
【0027】
経路データ取得部11は、予め様々な経路データを作成し、保持している外部のサーバから通信部22を介して経路データを取得してもよいし、キーボード、マウス等のポインティングデバイス、タッチパネル等の適宜な入力手段により使用者が入力して経路データ取得部11に取得させる構成としてもよい。経路データとしては、例えば実際の道路を通行した多数の自動車の移動経路をデータ化したもの等が挙げられる。さらに、実施形態にかかる経路データ生成部12が当該経路データを生成する構成としてもよい。経路データは、地図上において、上記住居地点を起点とし、上記地域拠点の一つを終点として指定されることで、道路ネットワークデータを利用して生成される。
【0028】
経路データ生成部12は、経路データ取得部11が上記経路データを取得できない場合に、経路データを生成する。この場合、経路データ生成部12は、上記地図データに含まれる、施設利用者の住居地点を取得するための人口統計データおよび/または居住者データ等の居住者情報、および、道路ネットワークデータ、地域拠点としての例えば駅の位置情報、施設利用エリア分析の対象施設の位置情報を記憶部24から読み出し、経路データを生成する対象である施設利用者の住居地点と地域拠点とを選択し、道路ネットワークデータを使って両者を結ぶ(施設利用者の住居地点を起点とし、地域拠点を終点とする)経路データを生成する。経路データは、住居地点と地域拠点とを結ぶ最短経路であることが好適であるが、必ずしも最短経路で無くてもよい。施設利用者の住居地点に対応する経路データは1つに限定することはなく、最短経路以外でも、利用可能な経路を複数生成してもよい。生成された経路データは、記憶部24に記憶される。
【0029】
また、経路データ生成部12は、予め、記憶部24に記憶されている地図データから対象施設の位置情報を読み出して、住居地点から対象施設を経由し、または、所定の範囲内を通過して地域拠点に到達する経路データを生成してもよい。この経路データは、後述する当該対象施設の施設利用経路データとなる。さらに、全ての対象施設毎に、当該対象施設を経由し、または、所定の範囲内を通過するそれぞれの経路データを生成してもよい。生成された経路データは、記憶部24に記憶される。
【0030】
経路データ生成部12は、上記対象施設からの所定の範囲を、当該対象施設の属性及び/または施設利用者の移動手段に応じた距離として設定する。上記対象施設の属性とは、例えば、スーパーマーケット等の大型商業施設の場合の売り場面積等が挙げられる。この場合、売り場面積が大きければ広い範囲が、小さければ狭い範囲が、それぞれの対象施設ごとに設定される。また、施設利用者の移動手段としては、徒歩、自転車、自動車等が挙げられ、あまり遠回りをしない徒歩の場合は狭い範囲が、多少の遠回りが可能な自動車利用の場合は広い範囲が設定される。移動手段による所定の範囲の設定は、施設利用エリア分析の対象範囲内において一律に行われる。以上に述べた所定の範囲は、当該対象施設の属性及び/または施設利用者の移動手段に応じて予め具体的な数値の段階として決定しておくことができる。また、以上に述べた所定の範囲は、例えば操作者が設定し、入力してもよいし、通信部22を介して外部のサーバ等から取得してもよい。設定された対象施設からの所定の範囲の情報も、記憶部24に記憶させる。
【0031】
経路データ生成部12は、施設利用者の住居地点を、記憶部24より読み出した居住者情報をもとに決定してもよい。居住者情報が居住者の住所情報、または、居住地の位置情報の場合は、当該住所情報または位置情報の地点を施設利用者の住居地点として経路データの起点とする。居住者情報が、メッシュ形態、または、町丁目、街区、あるいは、統計調査区等の不定形状をとるポリゴン形状毎の統計データの場合は、例えば、当該ポリゴン形状内の任意地点(例えば、ポリゴンデータの重心地点やポリゴン内部の中心地点等)にラベル点を発生させ、その地点(ラベル点)を施設利用者の住居地点として経路データの起点としてもよい。上記起点から、例えば、最も近接する道路ネットワークデータ上にある点までの線データを追加し、地域拠点である終点までの経路データを生成する。
【0032】
経路データ生成部12は、施設利用者の住居地点に対応する地域拠点として、当該住居地点に最も近接している地域拠点を検索してもよいし、例えば住居地点の住所情報毎に定められている地域拠点を受け付けてもよい。さらに、一の住居地点に対応する地域拠点が複数あってもよく、一の住居地点から複数の地域拠点毎にそれぞれ経路データを生成してもよい。
【0033】
経路データ抽出部13は、上記経路データと道路ネットワークデータとを記憶部24から読み出し、当該経路データが有する上記住居地点(起点)と上記地域拠点(終点)とを地図上の最短経路で結んだ際の最短経路データを、読み出した道路ネットワークデータを使って生成する。さらに、経路データ抽出部13は、各経路データ(起点と終点とが上記最短経路データと同じ経路データ)と、生成された上記最短経路データの距離を算出し、その差が所定の閾値以内である経路データを抽出し、記憶部24に記憶させる。こうすることで、住居地点と地域拠点とを結んだ経路データのうち、最短経路を利用した場合より著しく遠回りをしている経路データが除外されることになる。
【0034】
経路データ抽出部13は、上記所定の閾値を、対象施設の属性及び/または施設利用者の移動手段に応じた数値として設定する。上記対象施設の属性とは、経路データ生成部12の場合と同様に、例えば、スーパーマーケット等の大型商業施設の場合の売り場面積等が挙げられる。この場合、売り場面積が大きければ大きい閾値が、小さければ小さい閾値がそれぞれの対象施設ごとに設定される。また、施設利用者の移動手段としては、経路データ生成部12の場合と同様に、徒歩、自転車、自動車等が挙げられ、あまり遠回りをしない徒歩の場合は小さい閾値が、多少の遠回りが可能な自動車利用の場合は大きい閾値が設定される。移動手段による閾値の設定は、施設利用エリア分析の対象範囲内において一律に行われるが、住居地点と地域拠点間の距離が比較的短い場合は徒歩移動として閾値を小さく、住居地点と地域拠点間の距離が比較的長い場合は自動車移動として閾値を大きく設定してもよい。さらに、閾値を距離の差では無く、経路データの距離と最短経路の距離との比率として、例えば、経路データの距離が最短経路データの距離の110%以内のような形で設定してもよい。以上に述べた閾値は、例えば操作者が設定し、入力してもよいし、通信部22を介して外部のサーバ等から取得してもよい。設定された閾値も、記憶部24に記憶させる。
【0035】
経路データ判定部14は、経路データ抽出部13により抽出された上記経路データ(最短経路データとの距離の差が所定の閾値以内である経路データ)を記憶部24から読み出し、当該経路データが、対象施設からの所定の範囲内を通過するか否かを判断し、通過する場合に、当該経路データを当該対象施設の施設利用経路データと判定する。経路データ抽出部13により抽出された全ての経路データ毎に、全ての対象施設に対する所定の範囲内の通過の有無を判定し、判定結果は、記憶部24に記憶させる。ここで、上記「所定の範囲内を通過する」とは、例えば対象施設を中心とする所定の半径の円を発生させ、経路データがこの円内を通過することで、公知技術であるGIS(地理情報システム)の空間解析機能を使用して、図形的に経路データの全部または一部が円内に含まれるかにより判定される。また、例えば、対象施設の周辺が、線路や河川、幹線道路等で地域が分断されている場合は、対象施設を起点とし、道路ネットワークデータを使用して、道路に沿った距離が所定の長さ以内にある道路の範囲を抽出し、上記経路データがその範囲内の道路を経由することを、上記「所定の範囲内を通過する」としてもよい。
【0036】
経路データ判定部14は、上記対象施設からの所定の範囲を、当該対象施設の属性及び/または施設利用者の移動手段に応じた距離として設定する。上記対象施設の属性とは、経路データ生成部12の場合と同様に、例えば、スーパーマーケット等の大型商業施設の場合の売り場面積等が挙げられる。この場合、売り場面積が大きければ広い範囲が、小さければ狭い範囲が、それぞれの対象施設ごとに設定される。また、施設利用者の移動手段としては、経路データ生成部12の場合と同様に、徒歩、自転車、自動車等が挙げられ、あまり遠回りをしない徒歩の場合は狭い範囲が、多少の遠回りが可能な自動車利用の場合は広い範囲が設定される。移動手段による所定の範囲の設定は、施設利用エリア分析の対象範囲内において一律に行われる。以上に述べた所定の範囲は、当該対象施設の属性及び/または施設利用者の移動手段に応じて予め具体的な数値の段階として決定しておくことができる。また、以上に述べた所定の範囲は、例えば操作者が設定し、入力してもよいし、通信部22を介して外部のサーバ等から取得してもよい。設定された対象施設からの所定の範囲の情報も、記憶部24に記憶させる。
【0037】
居住地点判定部16は、上記経路データ判定部14が判定した施設利用経路データを記憶部24から読み出し、全ての対象施設毎に、各対象施設の上記所定の範囲内を通過している施設利用経路データを抽出し、抽出された当該施設利用経路データの起点となっている全ての施設利用者の住居地点を、上記対象施設の利用者居住地点と判定して記憶部24に記憶させる。ここで、一の施設利用経路データが、複数の対象施設の所定の範囲内を通過している場合は、当該施設利用経路データの住居地点は、それぞれの対象施設に対する利用者居住地点として判定される。
【0038】
なお、上記経路データの起点である施設利用者の住居地点が、例えば所定の距離毎に地域を方眼形状にて分割されたメッシュ形態をとる人口統計等の面的な情報の場合や、市区町村や町丁目、あるいは、統計調査区等の不定形状をとる面的データの場合は、その範囲全体が対象施設の利用者居住地点として判定され、後述する対象施設の施設利用エリアの一部となる。
【0039】
施設利用エリア生成部18は、対象施設毎に上記居住地点判定部16が判定した利用者居住地点を記憶部24から読み出し、この利用者居住地点の集合を、対象施設の利用者が居住する地域であることを示す、対象施設の施設利用エリアとして生成し、記憶部24に記憶させる。利用者居住地点の集合とは、利用者居住地点が存在する外周内を範囲とし、その範囲が対象施設の施設利用エリアとなる。また、施設利用者の住居地点が面的な情報の場合は、その面的なエリアを結合した範囲を、そのまま対象施設の施設利用エリアとする。さらに、施設利用エリア生成部18は、居住者情報を記憶部24から読み出し、生成された対象施設の施設利用エリア内にある居住者情報より居住者数を集計することで、当該対象施設の施設利用者数を推計してもよい。なお、一の利用者居住地点が、複数の対象施設の利用者居住地点として判定されている場合は、施設利用エリアは同一範囲に重複して生成される。
【0040】
表示制御部20は、上記対象施設の施設利用エリア等を記憶部24から読み出し、対象施設および地域拠点の他、背景地図用として使用する地図データ等を記憶部24から読み出して、これらを重ね合わせて表示した状態で画像化し、液晶表示装置その他の適宜な表示装置を制御して表示する。
【0041】
通信部22は、適宜なインターフェースにより構成され、外部のサーバ等から地図データおよび/または経路データを取得し、地図データ取得部10、経路データ取得部11に渡す等の処理を実行する。
【0042】
記憶部24は、ハードディスク装置、ソリッドステートドライブ(SSD)等の不揮発性メモリで構成され、上記各種情報等、及びCPU26の動作プログラム等の、施設利用エリア分析装置100が行う各処理に必要な情報を記憶する。なお、記憶部24としては、デジタル・バーサタイル・ディスク(DVD)、コンパクトディスク(CD)、光磁気ディスク(MO)、フレキシブルディスク(FD)、磁気テープ、電気的消去および書き換え可能な読出し専用メモリ(EEPROM)、フラッシュ・メモリ等を使用してもよい。また、記憶部24には、主としてCPU26の作業領域として機能するランダムアクセスメモリ(RAM)、及びBIOS等の制御プログラムその他のCPU26が使用するデータが格納される読み出し専用メモリ(ROM)を含めるのが好適である。
【0043】
図2には、施設利用エリア分析装置100の動作例の説明図が示される。
図2の例では、電車の駅等の地域拠点28及び対象施設30がそれぞれ一つ示され、これらを含む施設利用エリア分析の対象範囲O内にある主要な道路が線で示されている。ここで、対象範囲Oは、例えば出店候補地の周辺地域となり、地域拠点28となる駅を最寄り駅としている範囲(徒歩・自転車圏内)等とすることが好適である。また、経路データ判定部14が設定した対象施設30からの所定の範囲Aが、半径rの円で表されている。なお、上記所定の範囲Aは、円形領域に限定されず、矩形、楕円形等適宜な形状とすることができる。あるいは、上述したように、対象施設30を起点とし、道路ネットワークデータを使用して、道路に沿った距離が所定の長さ以内にある道路の範囲としてもよい。また、上記各道路に面して、施設利用者の住居地点が黒塗り四角(■)で示されている。従って、上記道路の内、各住居地点(■)と地域拠点28との間の区間が、施設利用者の住居地点を起点とし、地域拠点28を終点とする地図上の経路データを構成している。この経路データを構成する経路(道路)は、各住居地点から地域拠点28に到達する過程で、例えば
図2の道路X(駅前道路等)のように、経路が重なる場合もある。
【0044】
経路データ抽出部13は、経路データ取得部11が取得した、または経路データ生成部12が生成した経路データに対して、その起点および終点の位置情報を抽出し、道路ネットワークデータを使った経路検索により上記2地点間を結ぶ最短経路データを生成する。次に、経路データ抽出部13は、上記経路データと、生成された上記最短経路データとの距離を算出し、その差が所定の閾値以内である経路データを抽出する。
図2の例では、C1のエリアの各住居地点から地域拠点28への最短経路データが、
図2の道路上に表示されている経路a1で示され、その他の経路データが経路a2、a3で示される。この場合、経路a2について算出した上記差が所定の閾値以内であり、経路a3について算出した上記差が所定の閾値を超えている例である。経路データ抽出部13は、経路a2を抽出し、記憶部24に記憶する。
【0045】
C2のエリアでは、各住居地点から地域拠点28への経路データとして経路bが示され、C3のエリアでは、各住居地点から地域拠点28への経路データとして経路cが示されており、それぞれ地域拠点28への最短経路となっており、各経路の経路データは記憶部24に記憶されている。また、C4のエリアでは、各住居地点から地域拠点28への最短経路が経路dで示されているが、経路dの途中から分岐した後経路cと合流して地域拠点28へ到達する経路eも存在する。この場合、経路eと最短経路である経路dとの距離の差が所定の閾値を超えており、経路eの経路データは記憶部24には記憶されていない。
【0046】
経路データ判定部14は、経路データ抽出部13により抽出された経路データを記憶部24から読み出す。また、経路データ判定部14は、上記対象施設30からの所定の範囲Aを発生する。
【0047】
次に、経路データ判定部14は、記憶部24から読み出した経路データとしての経路が、上記対象施設30からの所定の範囲A内を通過するか否かを判断し、通過する経路を施設利用経路データと判定する。
図2の例では、経路a2、b、cが上記所定の範囲A内を通過しているので、施設利用経路データと判定される。なお、前述した経路eも、経路cと合流して上記所定の範囲A内を通過しているが、最短経路との距離の差が所定の閾値を超えており、経路データ抽出部13において抽出されていないため、施設利用経路データとしても判定されないことになる。
【0048】
居住地点判定部16は、上記施設利用経路データと判定された経路a2、b、cについて、それぞれの起点となる施設利用者の住居地点を、上記対象施設30の利用者居住地点と判定し、施設利用エリア生成部18が、上記利用者居住地点の集合を、対象施設30の施設利用エリアとして生成する。
図2の例では、経路a2、b、cに面している住居地点(■)の3つの集合(エリア)C1、C2、C3が施設利用エリアに相当する。なお、C1は、経路a2の経路データが施設利用経路データと判定されている。また、
図2に示されるように、経路a2に分岐路a4、a5が繋がっており、経路bに分岐路b1が繋がっている場合には、当該分岐路も各経路a2、bの一部として施設利用エリアを生成するのが好適である。
【0049】
施設利用エリア生成部18は、上記施設利用エリアとして生成された住居地点の集合(エリア)C1、C2、C3に加えて、同様に対象施設30の利用者居住地点として判定された住居地点の範囲を結合して生成された範囲全体を、上記対象施設30の施設利用エリアDとしてもよい。
【0050】
なお、経路データ生成部12が住居地点から対象施設を経由し、または、所定の範囲内を通過して地域拠点に到達する経路データ(施設利用経路データ)を生成している場合には、当該経路データが経路データ抽出部13により抽出されていれば、居住地点判定部16が当該経路データの起点となる施設利用者の住居地点を、上記対象施設30の利用者居住地点と判定する構成とすることができる。この場合には、経路データ判定部14の判定処理は行わなくてもよい。
【0051】
以上に述べた
図2の例では、各経路を徒歩で移動することを想定しているが、これには限定されず、本実施形態は、上記移動手段を自動車や自転車に置き換えても適用可能である。移動手段に自動車を使用する場合は、単純な距離を使用する他に、交通渋滞等を考慮した移動時間の利用や、一方通行等の交通規制の反映等を適用することもできる。
【0052】
さらに、住居地点から地域拠点までの徒歩での移動の一部に路線バスを併用してもよい。路線バスを使用する場合は、利用可能な対象施設は、住居拠点と地域地点とを結ぶ経路データのうち、路線バスの乗車区間を除く、住居地点と乗車バス停間、および、降車バス停と地域拠点間に立地している施設に限定される。従って、経路データ判定部14の判定処理は、経路データの上記区間のみを対象とする。
【0053】
図3には、実施形態にかかる施設利用エリア分析装置100の動作例のフロー図が示される。
図3において、地図データ取得部10は、施設利用エリア分析に必要となる地図データを取得して、記憶部24に記憶させる(S1)。
【0054】
経路データ取得部11は、施設利用エリア分析の対象範囲内において、施設利用者の住居地点を起点とし、地域拠点を終点とする地図上の経路データの存在の有無を確認する(S2)。経路データが外部サーバ等に存在する場合(S2-Y)は、上記経路データを取得して、記憶部24に記憶させる(S6)。経路データが存在しない場合(S2-N)は、S3以降の経路データの生成処理に進む。
【0055】
経路データが存在しない場合(S2-N)、経路データ生成部12は経路データの生成を行う。まず、記憶部24に記憶されている地図データから、一または複数の居住者情報を読み出す。居住者情報が居住者の住所情報の場合は、住所情報をもとに公知技術であるアドレスマッチングを使って緯度経度等の地図上の位置情報に変換した住居地点データを生成する。また、居住者情報が居住地の緯度経度等の位置情報の場合は、そのまま住居地点データとする。居住者情報が、メッシュ形態、または、町丁目、街区、あるいは、統計調査区等の不定形状をとるポリゴン形状毎の統計データの場合は、例えば、当該ポリゴンデータに対して重心点を発生させ、その地点の緯度経度等の位置情報を住居地点データとする(S3)。
【0056】
次に、経路データ生成部12は、記憶部24に記憶されている地図データから地域拠点の位置情報を含む地域拠点のデータを読み出す。例えば、操作者が入力する指示情報等に基づき地域拠点を最寄り駅の出口等とした場合のように、地域拠点が複数存在する場合は、ステップS3で生成した各住居地点データに対して、直線距離または道路距離を使って最も近接している地域拠点をそれぞれ割り当てる。さらに、駅の乗降客数や商業集積度等の程度に応じて、所定の重み係数等を反映させて地域拠点を割り当ててもよい。例えば、乗降客数の多い駅の地域拠点には、住居地点と当該地域拠点との距離に1未満の係数を乗じることで実際の距離を減算し、割り当てる地域拠点を調整してもよい。なお、施設利用エリア分析の対象範囲内において地域拠点が1箇所の場合は、全ての住居地点データに対して一の地域拠点を割り当てる。また、一の居住地点に対して、複数の地域拠点を割り当ててもよい(S4)。
【0057】
経路データ生成部12は、記憶部24に記憶されている地図データから道路ネットワークデータを読み出し、当該道路ネットワークデータを使用して公知技術である経路検索を行い、住居地点データの位置(施設利用者の住居地点)を起点とし、当該住居地点に割り当てられた地域拠点の位置を終点とする経路データを生成する。以上の処理を全ての住居地点に対して実行し、住居地点データに対して割り当てられた一または複数の地域拠点までの経路を生成し、記憶部24に記憶させる(S5)。
【0058】
生成される経路データは、住居地点と地域拠点とを結ぶ最短経路であることが好適であるが、必ずしも最短経路で無くてもよく、また、複数の経路データを生成してもよい。例えば、記憶部24に記憶されている地図データから対象施設の位置情報を読み出して、住居地点から対象施設を経由し、または、上記所定の範囲内を通過して地域拠点に到達する経路データとしてもよい。また、全ての対象施設毎に、当該対象施設を経由し、または、上記所定の範囲内を通過するそれぞれの経路データを生成してもよい。
【0059】
経路データ抽出部13は、取得または生成した経路データを記憶部24から読み出し、読み出した経路データに対して、その起点および終点の位置情報を抽出し、道路ネットワークデータを使った経路検索により上記2地点間を結ぶ最短経路データを生成する。次に、取得または生成した経路データと最短経路データとの距離の差を算出する。算出された距離の差が、所定の閾値を超えているか否かを判定し、所定の閾値の範囲内である経路データを抽出し、記憶部24に記憶させる(S7)。
【0060】
経路データ判定部14は、対象施設の所定の範囲を設定する。まず、記憶部24に記憶された地図データから、対象施設となる全ての施設の位置情報を読み出し、地図上において、当該位置情報を中心点とした所定の半径を持つ円形状を発生させる。また、円形状では無く、道路ネットワークデータを使用して、対象施設の位置情報を起点として、道路に沿った距離が所定の長さ(一定の道路距離)以内にある道路の範囲を抽出してもよい。なお、所定の半径、または、道路の範囲は、事前に操作者により設定させておくことができる。以上の処理を全ての対象施設に対して実行し、円形状または一定の道路距離の範囲を生成して記憶部24に記憶させる(S8)。
【0061】
経路データ判定部14は、S7の経路データ抽出部13で抽出された経路データが、S8で生成された対象施設からの円形状または一定の道路距離の範囲内を通過するか否かを判断し、通過する場合に、当該経路データを当該対象施設の施設利用経路データと判定する(S9)。全ての対象施設ごとに、上記範囲内を通過する経路データを抽出し、当該経路データを当該対象施設の施設利用経路データと判定してもよい。判定結果は、記憶部24に記憶させる。
【0062】
ここで、経路データ生成部12において作成した経路データが、住居地点から対象施設を経由し、または、上記所定の範囲内を通過して地域拠点に到達する場合は、これらの経路データが対象施設を近接して通過しているため、経路データ判定部14におけるS8およびS9の処理を行うことなく、経路データ抽出部13にて抽出されるだけで、当該対象施設の施設利用経路データとしてもよい。
【0063】
居住地点判定部16は、対象施設毎に、上記経路データ判定部14が判定した、および/または、経路データ生成部12が住居地点から対象施設を経由し、または、上記所定の範囲内を通過して地域拠点に到達する経路データとして生成した当該対象施設の施設利用経路データを記憶部24から読み出し、当該施設利用経路データの起点となっている施設利用者の住居地点を、上記対象施設の利用者居住地点として判定する(S10)。判定結果の利用者居住地点は記憶部24に記憶させる。
【0064】
施設利用エリア生成部18は、上記居住地点判定部16が判定した対象施設の利用者居住地点を記憶部24から読み出し、この利用者居住地点の集合を、対象施設の利用者が居住する地域であることを示す、対象施設の施設利用エリアとして生成する。利用者居住地点が存在する外周内を範囲とし、その範囲が対象施設の施設利用エリアとする。また、施設利用者の住居地点が面的な情報の場合は、その面的なエリアを結合した範囲を、そのまま対象施設の施設利用エリアとする。全ての対象施設に対して、施設利用エリアを生成する(S11)。さらに、居住者情報を記憶部24から読み出し、生成された対象施設の施設利用エリア内にある居住者情報より居住者数を集計し、当該対象施設の利用者数を推計する。判定結果の施設利用エリアおよび当該対象施設の利用者数の推計結果は記憶部24に記憶させる。
【0065】
施設利用エリアは、同一箇所が複数の対象施設の施設利用エリアに含まれる場合がある。その時は、重複した状態にしてもよいし、地域拠点に近い対象施設を優先して施設利用エリアとしてもよいし、住居地点に近い対象施設を優先して施設利用エリアにしてもよい。
【0066】
さらに、施設利用エリアの範囲に上限を設けてもよい。対象施設の種類によっては、住居地点から遠隔地に立地する対象施設は利用できない場合があるため、対象施設と住居地点間の距離に所定の上限を設定し、その距離を超えた利用者居住地点を除外してもよい。居住地点判定部16で判定された利用者居住地点と当該対象施設との距離を算出し、所定の閾値を超えている場合は、当該利用者居住地点を施設利用エリアを生成する対象範囲から除外する。あるいは、上記に該当する場合は、当初より居住地点判定部16において利用者居住地点として判定しない構成としてもよい。
【0067】
表示制御部20は、上記対象施設の施設利用エリアを記憶部24から読み出し、記憶部24に記憶された地図データから背景用の地図情報として必要となる地図データを読み出し、施設利用エリアと重畳して地図表示したものを画像化し、液晶表示装置その他の適宜な表示装置を制御して表示する(S12)。この場合、当該対象施設の利用者数の推計結果を表示することもできる。
【0068】
上述した、
図3の各ステップを実行するためのプログラムは、記録媒体に格納することも可能であり、また、そのプログラムを通信手段によって提供してもよい。その場合、例えば、上記説明したプログラムについて、「プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体」の発明または「データ信号」の発明として捉えてもよい。
【符号の説明】
【0069】
10 地図データ取得部、11 経路データ取得部、12 経路データ生成部、13 経路データ抽出部、14 経路データ判定部、16 居住地点判定部、18 施設利用エリア生成部、20 表示制御部、22 通信部、24 記憶部、26 CPU、28 地域拠点、30 対象施設、100 施設利用エリア分析装置。