IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東亜工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ユニット建物 図1
  • 特許-ユニット建物 図2
  • 特許-ユニット建物 図3
  • 特許-ユニット建物 図4
  • 特許-ユニット建物 図5
  • 特許-ユニット建物 図6
  • 特許-ユニット建物 図7
  • 特許-ユニット建物 図8
  • 特許-ユニット建物 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-08
(45)【発行日】2022-03-16
(54)【発明の名称】ユニット建物
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/348 20060101AFI20220309BHJP
   E04B 1/343 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
E04B1/348 G
E04B1/343 E
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020206748
(22)【出願日】2020-12-14
【審査請求日】2020-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】591077704
【氏名又は名称】東亜工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107906
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 克彦
(72)【発明者】
【氏名】狩野 巧
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-202439(JP,A)
【文献】特開2012-202163(JP,A)
【文献】特開2005-097980(JP,A)
【文献】特開2001-040787(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/343,1/348
E04H 1/12
E04H 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
等間隔に並設された複数の支柱と、
隣接する一対の支柱の間において上方及び下方に掛け渡された梁と、
前記支柱と前記梁で囲まれた開口部にユニット建物本体の内側から嵌合された額縁であって、前記支柱及び前記梁の内側面に配置される額縁本体と、前記額縁本体の内縁部に設けられ、前記ユニット建物本体の外側に張り出した内縁フランジ部と、を有する額縁と、
前記額縁にユニット建物本体の外側から嵌合された外壁フレームであって、所定の外枠体と、前記外枠体の外縁部に接続され、前記内縁フランジ部に嵌合された外縁フランジ部と、を有する外壁フレームと、
前記外壁フレームの外側に固定された外壁パネルと、
前記外壁フレームの内側に固定された内壁パネルと、
前記外壁パネルと前記内壁パネルの間の壁内空間に設置された断熱材と、を備え、
前記外壁フレームの外枠体が、壁内空間に連通した空気流通孔を有る角管体で構成されるか、前記外壁フレームの外枠体が、壁内空間に連通した空気流通溝を有するように角管体の一部が切り欠かれてなる半角管体で構成されたことを特徴とするユニット建物。
【請求項2】
前記内縁フランジ部及び前記外縁フランジ部に囲まれてなる排水路を備えることを特徴とする請求項1に記載のユニット建物。
【請求項3】
前記額縁と前記支柱の間に設けられた第1の防水シール材と、
前記内縁フランジ部の先端部と前記外縁フランジ部の間に設けられた第2の防水シール材と、
前記外縁フランジ部の先端部と前記額縁の間に設けられた第3の防水シール材と、を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のユニット建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユニット建物に関する。
【背景技術】
【0002】
ユニット建物(例えば、ユニット住宅、ユニットハウス等)は住居等の様々な用途の簡易ユニット建物として利用されている。
【0003】
従来、ユニット建物の外壁構造を施工する際には、先ず骨組構造体に窓枠、玄関枠等を開口形成し、その後、この骨組構造体の外周に胴縁を取り付け、この胴縁を介して外壁材を固定し、さらに断熱材を介して内壁を固定していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-37803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような従来のユニット建物の外壁構造では、その施工を完了した後は、窓、玄関等の位置を変更することが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題に鑑み、本発明のユニット建物は、等間隔に並設された複数の支柱と、隣接する一対の支柱の間において上方及び下方に掛け渡された梁と、前記支柱と前記梁で囲まれた開口部にユニット建物本体の内側から嵌合された額縁であって、前記支柱及び前記梁の内側面に配置される額縁本体と、前記額縁本体の内縁部に設けられ、前記ユニット建物本体の外側に張り出した内縁フランジ部と、を有する額縁と、前記額縁にユニット建物本体の外側から嵌合された外壁フレームであって、所定の外枠体と、前記外枠体の外縁部に接続され、前記内縁フランジ部に嵌合された外縁フランジ部と、を有する外壁フレームと、前記外壁フレームの外側に固定された外壁パネルと、前記外壁フレームの内側に固定された内壁パネルと、前記外壁パネルと前記内壁パネルの間の壁内空間に設置された断熱材と、を備え、前記外壁フレームの外枠体が、壁内空間に連通した空気流通孔を有る角管体で構成されるか、前記外壁フレームの外枠体が、壁内空間に連通した空気流通溝を有するように角管体の一部が切り欠かれてなる半角管体で構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、支柱と梁で囲まれたユニット建物の開口部は同一寸法であるから、外壁構造の施工を完了した後であっても、外壁パネル、内壁パネル及び断熱材と一体化された外壁フレームのみを開口部から取り外して別の開口部に移設することで、窓、玄関等の位置を簡単に変更することができる。
【0008】
また、本発明によれば、このような移設自在な外壁構造においても、止水性能、及び壁内通気性能を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態におけるユニット建物の斜視図である。
図2】本発明の実施形態におけるユニット建物の平面図である。
図3】本発明の実施形態におけるユニット建物の額縁の正面図である。
図4図3のA-A線における断面図である。
図5】本発明の実施形態におけるユニット建物の外壁フレームの正面図である。
図6図5のB-B線における断面図である。
図7図6のB-B線における他の断面図である。
図8】額縁に外壁フレームに嵌めた状態を示す正面図である。
図9図8のC-C線における断面図である。図9(a)は開口部に額縁を嵌めた状態、図9(b)は額縁に外壁フレームを嵌めた状態、図9(c)は、図8のC-C線における断面図であって、外壁フレームに、外壁パネル、内壁パネル等を固定した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態におけるユニット建物100を図1図9に基づいて説明する。
【0011】
先ず、ユニット建物100の全体の骨組構造について図1に基づいて説明する。図示のように、このユニット建物100の骨組構造は、金属製の角管体(断面四角形の角パイプ)を用いて組まれた立方体状骨組である。ユニット建物の骨組構造を角管体で構成するのは、本来的にはユニット建物の軽量化と高剛性化のためである。
【0012】
一対の支柱1a,1bはユニット建物100の正面から見て左右の上下方向に立設されている。また、一対の支柱1a,1bは、同一の高さを有している。そして、右側の支柱1aは同一の間隔Lを置いて、ユニット建物100の前後方向に複数並設されている。左側の支柱1bも同一の間隔Lを置いて、ユニット建物100の前後方向に複数並設されている。
【0013】
また、ユニット建物100の前面及び後面には中間支柱1c,1cがそれぞれ立設されているが、この中間支柱1cと隣接する支柱1a又は1bの間隔も同じ間隔Lになっている。
【0014】
左右側に延びた天井梁2aは、左右一対の支柱1a,1bのそれぞれの上端部の間に掛け渡されている。また、前後方向に延びた天井梁2bは隣接する支柱1a,1a(1b,1b)のそれぞれの上端部に掛け渡されている。左右側に延びた天井梁2aには換気扇3,3が取り付けられている。一般に、換気扇3,3には、室内空気の排気を行うタイプ、室内空気と室外空気との入れ替えを行うタイプがある。この場合、天井梁2aの管体内部空間は、天井梁2aと一対の支柱1a,1bの接続部において、一対の支柱1a、1bの管体内部空間と連通している。
【0015】
これにより、例えば、換気扇3から吸気された室内空気は、天井梁2aの管体内部空間から一対の支柱1a,1bの管体内部空間を通過して、一対の支柱1a,1bの下端部の開口端からユニット建物100の外に排気されるようになっている。
【0016】
左右方向に延びた床梁4aは、一対の支柱1a,1bのそれぞれの下端部の間に掛け渡されている。また、前後方向に延びた床梁4bは隣接する支柱1a,1a(1b,1b)のそれぞれの下端部に掛け渡されている。この床梁4aに換気扇3,3を取り付けることもできる。
【0017】
次に、このユニット建物100の外壁構造について説明する。このユニット建物100においては、隣接する支柱1a,1a(1b,1b)、天井梁2b及び床梁4bで囲まれた8個の開口部が形成されている。また、ユニット建物100の正面と、裏面にも、それぞれ1個の開口部が形成されている。
【0018】
上述のように、一対の支柱1a,1bは同一の高さを有し、同一の間隔Lを置いて並設されているので、これらの開口部は縦横いずれも同一の寸法になっている。
【0019】
これらの開口部に額縁5、外壁フレーム6A,6Bが固定される。額縁6は共通部材である。外壁フレーム6A,6Bは用途による異なる専用部材であり、例えば、外壁フレーム6Aは玄関枠に対応し、外壁フレーム6Bは窓枠に対応した構成になっている。
【0020】
額縁5はユニット建物100の本体の内側から防水シール材を介して開口部に嵌合される。他方、外壁フレーム6A,6Bは、ユニット建物100の本体の外側から額縁5に着脱自在に嵌合されるようになっている。そして、外壁フレーム6A,6Bの外側には、用途に合った専用の外壁パネル10が固定され、外壁パネル10の内側には内壁パネル11が固定され、外壁パネル10と内壁パネル11の間の壁内空間には断熱材もしくは遮熱材が設置される。
【0021】
このような外壁構造によれば、額縁5を開口部に固定した状態で、ユニット建物100の本体と額縁5の止水を完了させ、外壁構造体(外壁パネル10、内壁パネル11及び断熱材と一体化された外壁フレーム6A,6B)のみを開口部に固定された額縁5から取り外して別の開口部に移設、交換することができ、窓、玄関等の位置を簡単に変更することができる。
【0022】
図2に示すように、ユニット建物100は、左右一対の支柱1a,1bと天井梁2a、床梁4aで囲まれた建物内開口部に間仕切りパネル7を設置することで、例えば4つの部屋A,B,C,Dを設けることができる。そして、ユニット建物100の用途により、各部屋A,B,C,Dの窓、玄関等の位置を簡単に変更することができる。例えば、ユニット建物100を避難施設やトイレとして利用する場合、各部屋A,B,C,Dのそれぞれに玄関と窓を設けることができる。
【0023】
ユニット建物100をコロナウイルス感染症等の感染症検査施設として利用する場合、部屋A,Cを検査室、部屋B,Dを患者待合室として設定し、それぞれに適した玄関、窓の配置に変更可能である。例えば、部屋B,Dを患者待合室とする場合、部屋B,Dの前後にそれぞれ入口専用玄関と出口専用玄関を設け、患者同士の接触を避けるように配置することができる。
【0024】
また、天井梁2a及び一対の支柱1a,1bの管体内部空間を換気経路として利用しているので、間仕切りパネル7を設置した場合、換気扇3により各部屋A,B,C,D毎に室内空間の換気を行うことができる。
【0025】
次に、このユニット建物100の外壁構造の詳細について、図3図9に基づいて説明する。図3は開口部に嵌められた状態を示す額縁5の正面図である。図4図3のA-A線における断面図である。図示のように、額縁5は隣接する支柱1a,1a(1b,1b)、天井梁2b及び床梁4bで囲まれた開口部にユニット建物100の本体の内側から嵌合される。額縁5は開口部を有する四角形状の枠体である。
【0026】
額縁5の本体は平板で構成されるが、その開口部側の内縁部(内側に沿ったへり部)にはユニット建物100の外側に直角に折れ曲がって張り出した内縁フランジ部51が設けられている。内縁フランジ部51の先端部は支柱1a,1a(1b,1b)側にさらに直角に折れ曲がっている。
【0027】
額縁5の外周部には、平面図で見ると環状の第1の防水シール材52が固定されている。額縁5は、第1の防水シール材52を介して支柱1a,1a(1b,1b)の内側面に圧着されている。また、内縁フランジ部51の先端部の外周面には、平面図で見ると環状の第2の防水シール材53が固定されている。第1及び第2の防水シール材52,53は、例えばゴム製のパッキンである。
【0028】
図5は、外壁フレーム6の正面図である。図6及び図7は、図5のB-B線における断面図である。図示のように、外壁フレーム6は窓や玄関等の用途に応じて角管体61を任意に連結してなる枠体である。この例では、角管体61からなる四角形状の外枠体の中央上下方向に一本の角管体61が連結されている。
【0029】
外壁フレーム6の外枠体を構成する角管体61の外縁部(外側に沿ったヘリ部)には、外縁フランジ部62が溶接等により背合わせに接合されている。外縁フランジ部62は断面で見ると角管体61の一部を長手方向に沿って切り欠いてなる半角管体である。
【0030】
詳しく説明すると、この外縁フランジ部62は、図6の断面図で見ると、ユニット建物100の内側に向かって直角に折れ曲がっている。外縁フランジ部62の先端部は角管体61側にさらに直角に折れ曲がっている。この外縁フランジ部62の先端部の外周面には、平面図で見ると環状の第3の防水シール材63が固定されている。この第3の防水シール材63は、例えばゴム製のパッキンである。
【0031】
また、壁内通気性能を確保するために、外壁フレーム6を構成する角管体61に複数の空気流通孔64が設けられている。これらの空気流通孔64は、後述する外壁パネル10と内壁パネル11の間の壁内空間に連通している。
【0032】
外壁フレーム6を構成する角管体61は下端部に開口端61aを有しており、この開口端から入った空気が空気流通孔64を介して、管体61と壁内空間との間で循環するようになっている。
【0033】
この場合、図7に示すように、角管体61の代わりに、半角管体61Xを用いても良い。この半角管体61Xは、角管体61の一部を長手方向に沿って切り欠いてなるものであり、切り欠き部が空気流通溝61bになっている。この場合、半角管体61Xの空気流通溝61bは壁内空間に向けられている。
【0034】
このユニット建物100の外壁構造の施工方法を図8及び図9に基づいて説明する。
図8は、額縁5に外壁フレーム6に嵌めた状態を示す正面図である。図9(c)は図8のC-C線における断面図である。
【0035】
先ず、図9(a)に示すように、額縁5はユニット建物100の本体の内側から、これらの間に設けられた第1のシール部材52を介して支柱1a,1a(1b,1b)の内側面に圧着される。
【0036】
次に、図9(b)に示すように、外壁フレーム6がユニット建物100の本体の外側から、額縁5に嵌め込まれる。この場合、額縁5の内縁フランジ部51に外壁フレーム6の外縁フランジ部62が嵌合される。
【0037】
そして、内縁フランジ部51の先端部と外縁フランジ部62は、これらの間に設けられた第2の防水シール材53を介して圧着される。また、外縁フランジ部62の先端部と額縁5は、これらの間に設けられた第3の防水シール材63を介して圧着される。これにより、外壁構造の止水性能が確保される。
【0038】
そして、図9(c)に示すように、外壁フレーム6の外側に外壁パネル10が固定され、外壁フレーム6の内側に額縁5と干渉しない位置に内壁パネル11が固定される。外壁パネル10と内壁パネル11の間の壁内空間には断熱材12が設置される。これにより、外壁構造体(外壁パネル10、内壁パネル及び断熱材12と一体化された外壁フレーム6)は額縁5に対して着脱自在になっている。この場合、支柱1a,1a(1b,1b)の外側面と外壁パネル10の外側面は面一になっている。
【0039】
図8及び図9(b),(c)に示すように、内縁フランジ部51及び外縁フランジ部62で囲まれ、上下方向に延びた空間は排水路20になっており、仮にユニット建物100に第3の防水シール材63から雨水が浸入した場合、雨水が排水路20の下端部の開口端20aから排出されるようになっている。
【0040】
また、上述の外壁フレーム6の構造によって、壁内通気性能が確保され、断熱材12が設置された壁内空間における湿気を抑え、カビの発生等を防止することができる。
【符号の説明】
【0041】
1a,1b 支柱
1c 中間支柱
2a,2b 天井梁
3 換気扇
4a,4b 床梁
5 額縁
6 外壁フレーム
7 間仕切りパネル
10 外壁パネル
11 内壁パネル
12 断熱材
20 排水路
51 内縁フランジ部
52 第1の防水シール材
53 第2の防水シール材
61 角管体
61a 開口端
61b 空気流通溝
61X 半角管体
62 外縁フランジ部
63 第3の防水シール材
100 ユニット建物
【要約】      (修正有)
【課題】施工を完了した後であっても、窓、玄関等の位置を簡単に変更することができる外壁構造を備えたユニット建物を提供する。
【解決手段】ユニット建物100において、支柱1aは等間隔に並設され、隣接する一対の支柱1aの間に天井梁2b及び床梁4bが掛け渡される。支柱1a、天井梁2b、及び床梁4bで囲まれた開口部には、ユニット建物本体の内側から額縁5が嵌合される。外壁フレーム6A,6Bは額縁5にユニット建物本体の外側から嵌合される。外壁フレームの外側には外壁パネルが固定され、外壁フレーム6A,6Bの内側には内壁パネルが固定される。外壁パネルと内壁パネルの間の壁内空間には断熱材が設置される。外壁フレーム6A,6Bは壁内空間に連通した空気流通路を有する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9