IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アイシス ファーマシューティカルズ, インコーポレーテッドの特許一覧

特許7037681TMPRSS6発現を調節するための化合物及び方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-08
(45)【発行日】2022-03-16
(54)【発明の名称】TMPRSS6発現を調節するための化合物及び方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/113 20100101AFI20220309BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20220309BHJP
   A61K 31/712 20060101ALI20220309BHJP
   A61K 31/7125 20060101ALI20220309BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220309BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20220309BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20220309BHJP
   A61P 39/02 20060101ALI20220309BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20220309BHJP
   C12N 15/57 20060101ALN20220309BHJP
【FI】
C12N15/113 130Z
A61K31/7088 ZNA
A61K31/712
A61K31/7125
A61K48/00
A61P7/00
A61P7/06
A61P39/02
C12N15/12
C12N15/57
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2021015452
(22)【出願日】2021-02-03
(62)【分割の表示】P 2017546624の分割
【原出願日】2016-04-04
(65)【公開番号】P2021074010
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2021-03-05
(31)【優先権主張番号】62/142,986
(32)【優先日】2015-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595104323
【氏名又は名称】アイオーニス ファーマシューティカルズ, インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Ionis Pharmaceuticals,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100163784
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 健志
(72)【発明者】
【氏名】グオ,スーリン
(72)【発明者】
【氏名】アガジャン,マリアム
(72)【発明者】
【氏名】スウェイジ,エリック・イー
【審査官】馬場 亮人
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-520593(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0309286(US,A1)
【文献】特表2014-518612(JP,A)
【文献】特開2013-099338(JP,A)
【文献】特表2014-530004(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/113
A61P 39/02
A61P 7/00
A61P 7/06
A61K 31/7088
A61K 31/7125
A61K 31/712
A61K 48/00
C12N 15/12
C12N 15/57
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式:mCks Aes Gks mCds Tds Tds Tds Ads Tds Tds mCds mCds Aes Aes Aks Gk(配列番号77)に従う修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物であって、式中、
A=アデニン核酸塩基、
mC=5-メチルシトシン核酸塩基、
G=グアニン核酸塩基、
T=チミン核酸塩基、
e=2’-O(CH-OCHフラノシル修飾糖部分、
d=2’-デオキシフラノシル糖部分、
s=ホスホロチオエートヌクレオシド間結合、及び
k=拘束エチル(cEt)糖部分であり、
該化合物は5’-トリスヘキシルアミノ-(THA)-C6 GalNAc共役体をさらに含み、結合点は5’末端ヌクレオシドであり、該5’-トリスヘキシルアミノ-(THA)-C6 GalNAc共役体が、化学構造:
【化1】
を有し、該修飾オリゴヌクレオチドが、開裂部位によって該5’-トリスヘキシルアミノ-(THA)-C6 GalNAc共役体に結合し、該開裂部位が5’-P(OH)(=O)-O-3’である、上記化合物。
【請求項2】
結合点が、5’末端ヌクレオシドの5’-ヒドロキシル基の5’-酸素原子である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
アニオンの形態が以下の化学構造:
【化2】
(配列番号77)
を有する、化合物。
【請求項4】
以下の化学構造:
【化3】
(配列番号77)
を有する、又はその塩の形態である、化合物。
【請求項5】
塩が、ナトリウム塩又はカリウム塩である、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
以下の化学構造:
【化4】
(配列番号77)
に従う、化合物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の化合物を含む、医薬組成物。
【請求項8】
薬学的に許容可能な担体若しくは希釈剤をさらに含む、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
薬学的に許容可能な希釈剤が生理食塩水又は水である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
医薬品の調製に使用するための、請求項1~6のいずれか1項に記載の化合物を含む、医薬組成物。
【請求項11】
細胞、組織、臓器又は動物におけるTMPRSS6を減少させるための、請求項7~9のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
動物における、鉄蓄積を減少し、ヘプシジン発現レベルを増加し、且つ/又はトランスフェリンの飽和度を減少するための、請求項7~9のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
動物における過剰鉄蓄積に関連する疾患、障害又は病態を治療し、又は予防するための、請求項7~9のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
疾患、障害又は病態が、赤血球増加症、ヘモクロマトーシス、及び貧血から選択される、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
赤血球増加症を治療し、又は予防するための、請求項7~9のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
赤血球増加症が真性多血症である、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
遺伝性貧血、骨髄異形成症候群、及び重症慢性溶血から選択される疾患、障害又は病態を治療し、又は予防するための、請求項7~9のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
遺伝性貧血が、鎌状赤血球貧血、サラセミア、ファンコニー貧血、ダイアモンド・ブラックファン貧血、シュワックマン・ダイアモンド症候群、赤血球膜傷害、グルコース-6-リン酸脱水素酵素欠損症、及び遺伝性出血性毛細血管拡張症から選択される、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
サラセミアを治療し、又は予防するための、請求項7~9のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記サラセミアが、α-サラセミア、β-サラセミア及びδ-サラセミアから選択される、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
β-サラセミアが、軽症型、中間型、又は重症型である、請求項20に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表
本出願は、配列表とともに電子形式で出願されている。配列表は、2016年3月23日に作成された148KbのサイズのBIOL0271WOSEQ_ST25.txtという名前のファイルとして提供される。この配列表の電子形式の情報は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本発明は、動物における鉄蓄積を減少する目的で、TMPRSS6の発現を調節するための方法、化合物及び組成物を提供する。
【背景技術】
【0003】
ヒトにおける鉄バランスの維持は、鉄吸収及び分泌についてのヒトの生理機能が限定的であるため、デリケートである(Finch,C.A.and Huebers,H.N.Engl.J.Med.1982.306:1520-1528)。鉄欠乏は、広範囲にわたる障害であり、食事による鉄摂取では、身体の要求に応えられない条件から生じる。病的失血は、負の鉄バランスに起因することが多い。鉄過剰も高頻度に認められる病態であり、遺伝的原因、例えば、鉄代謝の異なる遺伝子の突然変異から生じ得る(Camaschella,C.Blood.2005.106:3710-3717)。肝臓ペプチドホルモンであるヘプシジンは、鉄吸収及びリサイクルを制御するために、身体の鉄代謝に重要な役割を担っている(Ganz,T.Am.Soc.Hematol.Educ.Program 2006.507:29-35;Kemna,E.H.et al.,Clin.Chem.2007.53:620-628)。HFE(ヘモクロマトーシスタンパク質)(Ahmad,K.A.et al.,Blood Cells Mol
Dis.2002.29:361)、トランスフェリン受容体2(Kawabata,H.et al.,Blood 2005.105:376)、及びhemojuvelin(Papanikolaou,G.et al.,Nat.Genet.2004.36:77)を含むいくつかのタンパク質もまた、身体の鉄レベルを調節する。
【0004】
膜貫通プロテアーゼ、セリン6(TMPRSS6)は、II型膜貫通セリンプロテアーゼであり、肝臓で主に発現する(Velasco,G.et al.,J.Biol.Chem.2002.277:37637-37646)。TMPRSS6における突然変異は、鉄欠乏貧血と関連し(Finberg,K.E.et al.,Nat.Genet.2008.40:569-571)、ヘプシジンのレベルが異常に増加することが分かった。小球性貧血を有するヒト集団の研究では、TMPRSS6遺伝子の機能喪失型突然変異は、ヘプシジンの過剰産生を導き、次に不完全な鉄吸収及び利用を導いてしまうことが分かった(Melis,M.A.et al.,Hematologica 2008.93:1473-1479)。TMPRSS6は、鉄欠損によって誘因される膜貫通シグナル伝達経路に関与し、ヘプシジンをコードする遺伝子であるHamp活性の多様な経路を抑制する(Du,X.et al.,Science 2008.320:1088-1092)。HFE-/-マウスにおけるTMPRSS6のヘテロ接合性欠損は、全身の鉄過剰を減少させ、HFE-/-マウスにおけるTMPRSS6のホモ接合欠損は、全身の鉄欠乏及びヘプシジンの肝臓発現の増加を引き起す(Finberg,K.E.et al.,Blood 2011.117:4590-4599)。
【0005】
鉄過剰障害の例は、ヘモクロマトーシスである。ヘモクロマトーシス(例えば、1型ヘモクロマトーシスまたは遺伝性ヘモクロマトーシス)は、消化器官からの食事性鉄の過剰
な腸管吸収をもたらす障害である(Allen,K.J.et al.,N.Engl.J.Med.2008.358:221-230)。結果として、全身の鉄貯蔵が病的に増加する。過剰な鉄は、組織及び臓器、特に肝臓、副腎、心臓、皮膚、生殖腺、関節及び膵臓に蓄積し、それらの正常な機能を破壊する。硬変(Ramm,G.A. and Ruddell,R.G.Semin.Liver Dis.2010.30:271-287)、多発性関節障害(Carroll,G.J.et al.,Arthritis
Rheum.2011.63:286-294)、副腎不全、心不全、糖尿病(Huang,J.et al.,Diabetes 2011.60:80-87)等の副次的な合併症が高頻度に認められる。鉄過剰障害の別の例は、β‐サラセミアであり、患者は、β‐サラセミアを治療するために無効赤血球生成または輸血によって生じる鉄過剰を発現する場合がある。
【0006】
これまで、鉄過剰障害を治療するための治療戦略は、限定的であった。siRNA及びアンチセンスオリゴヌクレオチド等の核酸阻害薬が、提示され、開発されてきたが、TMPRSS6(PCT出願WO2014/076195、WO2012/135246、WO2014/190157、WO2005/0032733、WO2013/070786及びWO2013/173635、米国特許第8,090,542号、Schmidt
et al.Blood.2013,121(7):1200-8)を直接標的とする化合物のいずれも、鉄過剰障害を治療するために承認されてこなかった。したがって、TMPRSS6を阻害するための非常に強力で忍容性のある化合物についての必要性は満たされていない。本明細書に開示される本発明は、TMPRSS6発現の新規の非常に強力な阻害薬の発見及び治療におけるその使用に関する。
【0007】
本願に引用される全ての文書、または文書の一部には、特許、特許出願、記事、書籍、及び論文が含まれるがこれらに限定されず、本明細書で考察する文書の一部を参照することにより、その全体が本明細書に明示的に組み込まれる。
【発明の概要】
【0008】
本明細書では、動物におけるTMPRSS6 mRNA及び/またはタンパク質のレベルを調節するための組成物、化合物及び方法を提供する。本明細書では、TMPRSS6を減少させるための組成物、化合物及び方法を提供する。
【0009】
本明細書に開示する特定の実施形態では、TMPRSS6をコードする核酸を標的とする修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物を提供する。特定の実施形態では、化合物は、配列番号1~6のいずれかの核酸配列に示されるように、TMPRSS6配列を標的とする。
【0010】
本明細書に開示する特定の実施形態では、12~30個の連結したヌクレオシドから成る修飾オリゴヌクレオチドを含み、配列番号1の核酸塩基3162~3184の等しい長さの部分と相補的な少なくとも8個の連続した核酸塩基の部分を含む核酸塩基配列を含む化合物を提供し、修飾オリゴヌクレオチドの核酸塩基配列が、配列番号1と少なくとも80%相補的である。
【0011】
本明細書に開示する特定の実施形態では、12~30個の連結したヌクレオシドから成る修飾オリゴヌクレオチドを含み、配列番号23、36、37、63、77の核酸塩基配列のいずれかの少なくとも8個の連続した核酸塩基を含む核酸塩基配列を有する化合物を提供する。
【0012】
本明細書に開示する特定の実施形態では、以下の式を有する、修飾されたオリゴヌクレオチドを含む化合物を提供する。
【化1】
【0013】
本明細書に開示する特定の実施形態では、以下の式を有する、修飾されたオリゴヌクレオチドを含む化合物を提供する。
【化2】
【発明を実施するための形態】
【0014】
前述の一般的な説明及び以下の発明を実施するための形態はどちらも例示的かつ説明的なものであるにすぎず、特許請求される発明を限定するものではないと理解すべきである。本明細書において、単数形の使用は、別途明確に記述されない限り、複数形を含む。本明細書で使用されるとき、「or(または)」の使用は、別途記述されない限り、「and/or(及び/または)」を意味する。さらに、「including(~を含む)」という用語、ならびに「includes(~を含む)」及び「included(含まれる)」等の他の形態の使用は、限定的なものではない。また、「要素」または「成分」等の用語は、別途明確に記述されない限り、1つのユニットを含む要素及び成分、ならびに2つ以上のサブユニットを含む要素及び成分の両方を包含する。
【0015】
本明細書で使用される節の見出しは、単に構成目的のものであり、記載される主題を限定するものと解釈されるべきではない。本願に列挙される全ての文書、または文書の部分は、これらに限定されないが、特許、特許出願、記事、書籍、及び論文を含み、本明細書で考察する文書の部分を参照することにより、その全体が本明細書に明示的に組み込まれる。
【0016】
定義
特別な定義が与えられない限り、本明細書に記載する分析化学、合成有機化学、ならびに医化学及び製薬化学に関連して用いられる命名法、ならびにそれらの手順及び技法は、周知であり、当技術分野で一般に使用されるものである。化学合成及び化学分析には、標準的技法を使用することができる。許可されている場合、本明細書出の開示全般で参照される全ての特許、出願、公開された出願及び他の刊行物、GENBANK寄託番号及び国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)及び他のデータ等のデータベースにより
得られる関連の配列情報は、本明細書で考察する文書の部分を参照することにより、その全体が本明細書に組み込まれる。別途示されない限り、以下の用語は、以下の意味を有する。
【0017】
「2’-O-メトキシエチル」(2’-MOE及び2’-O(CH-OCHとも称される)とは、フロシル環の2’位のO-メトキシ-エチル修飾を指す。2’-O-メトキシエチル修飾糖は、修飾糖である。
【0018】
「2’-O-メトキシエチルヌクレオチド」とは、2’-O-メトキシエチル修飾糖部分を含むヌクレオチドを意味する。
【0019】
「5-メチルシトシン」とは、5位に結合したメチル基で修飾されたシトシンを意味する。5-メチルシトシンは、修飾核酸塩基である。
【0020】
「約」とは、値の±10%以内を意味する。例えば、「マーカーが約50%増加し得る」と述べられている場合、マーカーが45%~55%増加し得るということを意味する。
【0021】
「活性医薬品」または「医薬品」とは、個体に投与されたときに治療的利益を提供する医薬組成物中の1つの物質または複数の物質を意味する。例えば、特定の実施形態において、TMPRSS6を標的にするアンチセンスオリゴヌクレオチドは、活性医薬品である。
【0022】
「活性標的領域」または「標的領域」とは、1つまたは複数の活性アンチセンス化合物が標的とされる領域を意味する。
【0023】
「活性アンチセンス化合物」とは、標的核酸レベルまたはタンパク質レベルを低下させるアンチセンス化合物を意味する。
【0024】
「同時に投与される」とは、2つの薬剤の薬理学的効果が、患者に現れる任意の様式でのこれらの2つの薬剤を共投与することを指す。同時投与は、これら両方の薬剤が、単一の医薬組成物で、同一の剤形で、または同一の投与経路によって投与されることを必要としない。これら両方の薬剤の効果が同時に現われなくてもよい。効果は、ある期間の重複しか必要とせず、共に広範囲に及ぶ必要はない。
【0025】
「投与」は、個体に医薬品を提供することを意味し、医療専門家及び自己投与による投与を含むが、これに限定されない。
【0026】
「薬剤」とは、動物に投与したときに治療的利益を提供することができる活性物質を意味する。「第1の薬剤」とは、本発明で提供する治療化合物を意味する。例えば、第1の薬剤は、TMPRSS6を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドである。「第2の薬剤」とは、本発明で記載する第2の治療化合物を意味する。例えば、第2の薬剤は、TMPRSS6を標的とする第2のアンチセンスオリゴヌクレオチドまたは非TMPRSS6標的であり得る。あるいは、第2の薬剤は、アンチセンスオリゴヌクレオチド以外の化合物であり得る。
【0027】
「寛解」または「寛解する」とは、関連疾患、障害、及び/または病態の少なくとも1つの指標、兆候、または症状の軽減を指す。特定の実施形態では、寛解は、病態、障害及び/または疾患の1つまたは複数の指標の進行の遅延または緩徐化を含む。指標の重症度は、当業者に知られている主観的尺度または客観的尺度によって決定することができる。
【0028】
「貧血」は、血中の赤血球細胞(赤血球)の正常な数より少ないことを特徴とする疾患であり、通常、ヘモグロビンの量の減少によって測定される。貧血の原因には、慢性炎症、慢性腎疾患、腎臓透析治療、遺伝的(遺伝性)障害、慢性感染症、急性感染症、がん及びがん治療が含まれ得る。これらの疾患、障害及び/または病態における鉄ホメオスタシスの変化及び/または赤血球生成は、赤血球の産生の減少を引き起こすこともある。貧血の臨床徴候として、低い血清鉄(低鉄血症)、低いヘモグロビンレベル、低いヘマトクリットレベル、赤血球細胞の減少、網状赤血球の減少、可溶性トランスフェリン受容体及び鉄拘束赤血球生成が挙げられる。貧血の例として、サラセミア(すなわち、α-サラセミア、β-サラセミア(軽症型、中間型、及び重症型)及びδ-サラセミア)、鎌状赤血球貧血、再生不良性貧血、ファンコニー貧血、ダイアモンド・ブラックファン貧血、シュワックマン・ダイアモンド症候群、赤血球膜障害、グルコース-6-リン酸脱水素酵素欠損症、または遺伝性出血性毛細血管拡張症、溶結性貧血、慢性疾患等の貧血が挙げられる。
【0029】
「動物」とは、ヒト、またはマウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、及び非ヒト霊長類(サル及びチンパンジーを含むが、これらに限定されない)を含むが、これらに限定されない非ヒト動物を指す。
【0030】
「抗体」は、何らかの方法で抗原と特異的に反応することを特徴とする分子を指し、この場合、抗体及び抗原はそれぞれ互いの観点から定義される。
抗体は、完全な抗体分子、または重鎖、軽鎖、Fab領域及びFc領域等のその任意の断片もしくは領域を指してもよい。
【0031】
「アンチセンス活性」とは、アンチセンス化合物のその標的核酸へのハイブリダイゼーションに起因する任意の検出可能または測定可能な活性を意味する。特定の実施形態において、アンチセンス活性は、標的核酸またはそのような標的核酸によってコードされるタンパク質の量または発現の減少である。
【0032】
「アンチセンス化合物」とは、水素結合により標的核酸へのハイブリダイゼーションを経ることのできるオリゴマー化合物を意味する。
【0033】
「アンチセンス阻害」とは、アンチセンス化合物の不在下における標的核酸レベルまたは標的タンパク質レベルと比較した、標的核酸に相補的なアンチセンス化合物の存在下における標的核酸レベルまたは標的タンパク質レベルの低下を意味する。
【0034】
「アンチセンスオリゴヌクレオチド」とは、標的核酸の対応する領域またはセグメントへのハイブリダイゼーションを可能にする核酸塩基配列を有する一本鎖オリゴヌクレオチドを意味する。
【0035】
「二環糖」とは、2個の非ジェミナル環原子の架橋により修飾されたフロシル環を意味する。二環糖は、修飾糖である。
【0036】
「二環式核酸」または「BNA」とは、ヌクレオシドまたはヌクレオチドを指し、ヌクレオシドまたはヌクレオチドのフラノース部分は、フラノース環上で2個の炭素原子をつなぎ、それにより二環式環系を形成する橋を含む。
【0037】
「輸血」とは、静脈内の血行路で血液産物を受け取る過程を指す。輸血は、失われた血液成分を交換するために、様々な疾患、障害及び/または病態で使用される。
【0038】
「キャップ構造」または「末端キャップ部分」とは、アンチセンス化合物のいずれかの末端に組み込まれている化学的修飾を意味する。
【0039】
「cEt」または「拘束エチル」は、4’-炭素及び2’-炭素を接続する架橋を含む二環糖部分を意味し、架橋は式4’-CH(CH)-O-2’を有する。
【0040】
「拘束エチルヌクレオシド」(cEtヌクレオシドとも呼ばれる)は、4’-CH(CH)-O-2’架橋を含む二環糖部分を含むヌクレオシドを意味する。
【0041】
「化学的に異なる領域」とは、同一のアンチセンス化合物の別の領域とは何らかの点で化学的に異なるアンチセンス化合物の領域を指す。例えば、2’-O-メトキシエチルヌクレオチドを有する領域は、2’-O-メトキシエチル修飾を有しないヌクレオチドを有する領域とは化学的に異なる。
【0042】
「キメラアンチセンス化合物」とは、少なくとも2つの化学的に異なる領域を有するアンチセンス化合物を意味する。
【0043】
「共投与」とは、個体への2つ以上の薬剤の投与を意味する。これらの2つ以上の薬剤は、単一の医薬組成物中に存在し得るか、または別個の医薬組成物中に存在し得る。これらの2つ以上の薬剤の各々は、同一または異なる投与経路で投与され得る。共投与は、同時投与、並行投与または連続投与を包含する。
【0044】
「相補性」とは、第1の核酸及び第2の核酸の核酸塩基間で対合する能力を意味する。特定の実施形態において、第1の核酸は、アンチセンス化合物であり、第2の核酸は、標的核酸である。
【0045】
「連続した核酸塩基」とは、互いに直接隣接した核酸塩基を意味する。
【0046】
「デオキシリボヌクレオチド」とは、ヌクレオチドの糖部分の2’位に水素を有するヌクレオチドを意味する。デオキシリボヌクレオチドは、様々な置換基のうちのいずれかで修飾され得る。
【0047】
「希釈剤」とは、薬理学的活性を欠くが、薬学的に必要であるか、または望ましい組成物中の成分を意味する。例えば、注入された組成物中の希釈剤は、液体、例えば、リン酸緩衝食塩水(PBS)であり得る。
【0048】
「投薬単位」とは、医薬品が提供される形態、例えば、丸剤、錠剤、または当技術分野で既知の他の剤形を意味する。特定の実施形態において、剤形は、凍結乾燥されたアンチセンスオリゴヌクレオチドを含有するバイアルである。特定の実施形態において、剤形は、再構成されたアンチセンスオリゴヌクレオチドを含有するバイアルである。
【0049】
「用量」とは、単回投与で提供されるか、または特定の期間に提供される医薬品の特定の量を意味する。特定の実施形態において、用量は、1、2、またはそれ以上のボーラス、錠剤、または注入で投与され得る。例えば、特定の実施形態において、皮下投与が所望される場合、所望の用量は、単回注入では容易に提供されない体積を必要とし、それ故に、2回以上注入して所望の用量を達成することができる。特定の実施形態において、医薬品は、輸液によって長期間にわたって、または連続して投与される。用量は、1時間、1日、1週間、または1ヵ月当たりの医薬品の量として記載してもよい。
【0050】
「有効量」または「治療有効量」とは、薬剤を必要とする個体において所望の生理学的結果をもたらすのに十分な活性医薬品の量を意味する。有効量は、治療される個体の健康及び身体状態、治療される個体の分類群、組成物の製剤、個体の病状の評価、ならびに他
の関連因子によって個体間で異なり得る。
【0051】
「完全に相補的な」または「100%相補的な」とは、第1の核酸の核酸塩基配列の各核酸塩基が、第2の核酸の第2の核酸塩基配列中に相補的な核酸塩基を有することを意味する。特定の実施形態において、第1の核酸は、アンチセンス化合物であり、第2の核酸は、標的核酸である。
【0052】
「ギャップマー」とは、RNase H切断を支援する複数のヌクレオシドを有する内部領域が1個または複数個のヌクレオシドを有する外部領域間に位置付けられるキメラアンチセンス化合物を意味し、内部領域を含むヌクレオシドは、外部領域を含むヌクレオシドまたは複数のヌクレオシドとは化学的に異なる。内部領域は、「ギャップセグメント」と称され得、外部領域は、「ウイングセグメント」と称され得る。
【0053】
「ギャップ拡大」は、1~6個のヌクレオシドを有する5’ウイングセグメントと3’ウイングセグメントとの間及びそれらのすぐ隣に位置する12個以上の連続した2’-デオキシヌクレオシドのギャップセグメントを有するキメラアンチセンス化合物を意味する。
【0054】
「ヘモクロマトーシス」は、消化器官から過剰な鉄を吸収する鉄代謝の障害であり、身体の様々な組織に、鉄を過剰に蓄積かつ沈着させてしまう。原発性または遺伝性または典型的なヘモクロマトーシスは、例えばHFE遺伝子における遺伝的突然変異によって引き起こされる。当該疾患の患者は、過剰な量の鉄を有し、これが、消化器官で吸収され、身体組織、特に肝臓で蓄積する。二次的または後天性ヘモクロマトーシスは、頻繁な輸血、鉄サプリメントの大量の経口もしくは非経口摂取、またはその他の疾患の二次影響によって生じる場合がある。
【0055】
「造血発生」は、造血性幹細胞に由来する血液の細胞成分の形成を指す。これらの幹細胞は、骨髄の髄質に存在し、全ての異なる成熟した血液細胞型を生じさせる固有の能力を有する。
【0056】
「溶血」は、赤血球または赤血球細胞が破壊され、その内容物が周囲の体液に放出されることを指す。動物における溶血は、微生物感染、寄生虫感染、自己免疫障害及び遺伝的障害を含む多数の医学的状態によって生じることがある。
【0057】
「ヘプシジン」は、mRNA、及び炎症または血中の鉄レベルの上昇に反応して肝細胞によって産生されるmRNAによってコードされるタンパク質の両方を指す。ヘプシジンの主要な役割は、これらの血中鉄レベルの減少を促進することによって、血中鉄レベルを制御することである。ヘプシジンの発現は、赤血球生成について鉄利用性を減少させる急性及び慢性炎症の状態で増加する。「ヘプシジン」は、また、ヘプシジン抗菌ペプチド、HAMP、HAMP1、HEPC、HFE2、LEAP-1、LEAP1及び肝発現抗菌ペプチドとも称される。
【0058】
「遺伝性貧血」は、身体中の赤血球細胞を通常より速く死滅させてしまい、肺から身体の異なる部分へ酸素を送ることにおいて無効なものにするか、または赤血球細胞を全く作り出さない遺伝性病態によって生じる貧血を指す。例として、鎌状赤血球貧血、サラセミア、ファンコニー貧血、ダイアモンド・ブラックファン貧血、シュワックマン・ダイアモンド症候群、赤血球膜障害、グルコース-6-リン酸脱水素酵素欠損症、または遺伝性出血性毛細血管拡張症が挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
「HFE」は、ヒトヘモクロマトーシス遺伝子またはタンパク質を指す。
【0060】
「HFE遺伝子突然変異」は、遺伝性ヘモクロマトーシスを生じ得る、HFE遺伝子における突然変異を指す。
【0061】
「ハイブリダイゼーション」とは、相補的核酸分子のアニーリングを意味する。特定の実施形態において、相補的核酸分子には、アンチセンス化合物及び標的核酸が含まれる。
【0062】
「鉄の過剰蓄積に関連する疾患、障害及び/もしくは病態のリスクがあるかまたはそれを有する動物を識別すること」は、鉄の過剰蓄積に関連する疾患、障害及び/もしくは病態と診断されている動物を識別すること、またはその疾患、障害及び/もしくは病態を発現しやすい動物を識別することを意味する。例えば、動物は、ヘモクロマトーシスの家族歴がある場合、鉄の過剰蓄積に関連する疾患、障害及び/または病態を発症しやすい場合がある。このような識別は、動物の病歴の評価及び標準的試験または評価を含む任意の方法によって達成することができる。
【0063】
「すぐ隣に」は、すぐ隣の要素間で、介入する要素がないことを意味する。
【0064】
「個体」または「対象」または「動物」とは、処置または療法のために選択されたヒトまたは非ヒト動物を意味する。
【0065】
「発現または活性を阻害する」とは、RNAまたはタンパク質の発現または活性の減少または阻止を指し、必ずしも発現または活性の完全な排除を示すわけではない。
【0066】
「ヌクレオシド間結合」とは、ヌクレオシド間の化学結合を指す。
【0067】
「静脈内投与」とは、静脈への投与を意味する。
【0068】
「鉄蓄積」または「鉄過剰」は、何らかの原因による、身体のおける鉄の蓄積及び沈着を示す。最も一般的な要因は、遺伝的要因、輸血の反復により生じ得る輸血による鉄過剰、または食事性鉄過剰摂取である。
【0069】
「鉄サプリメント」は、患者における鉄欠乏を治療するために、医療的理由から処方されるサプリメントを指す。鉄は、経口経路で、または非経口で供給することができる。
【0070】
「連結したヌクレオシド」とは、一緒に結合する隣接したヌクレオシドを意味する。
【0071】
「マーカー」または「バイオマーカー」は、健康または生理関連評価のために、指標として機能する測定可能かつ定量可能な生物学的パラメータである。例えば、トランスフェリンの飽和度の増加、鉄レベルの増加、またはヘプシジンレベルの減少が、鉄過剰疾患、障害及び/または病態の考えられるマーカーである。
【0072】
「MCH」は、「平均赤血球血色素量」または「平均赤血球ヘモグロビン」、血液サンプル中の赤血球あたりのヘモグロビン(Hb)の平均質量を表す値を意味する。
【0073】
「MCV」は、「平均赤血球容積」または「平均赤血球容積」、赤血球細胞の平均サイズを表す値を指す。
【0074】
「ミスマッチ」または「非相補的核酸塩基」または「MM」とは、第1の核酸の核酸塩基が第2の核酸または標的核酸の対応する核酸塩基と対合することができない場合を指す。
【0075】
「修飾ヌクレオシド間結合」は、天然に存在するヌクレオシド間結合(ホスホジエステルヌクレオシド間結合)の置換または任意の変化を指す。
【0076】
「修飾核酸塩基」とは、アデニン、シトシン、グアニン、チミジン、またはウラシル以外の任意の核酸塩基を指す。例えば、修飾核酸塩基は、5-メチルシトシンであり得る。「非修飾核酸塩基」とは、プリンが、アデニン(A)及びグアニン(G)をベースとし、ピリミジンが、チミン(T)、シトシン(C)、及びウラシル(U)をベースとすることを意味する。
【0077】
「修飾ヌクレオシド」は、独立して、修飾糖部分及び/または修飾核酸塩基を有するヌクレオシドを意味する。
【0078】
「修飾ヌクレオチド」は、独立して、修飾糖部分、修飾ヌクレオシド間結合及び/または修飾核酸塩基を有するヌクレオチドを意味する。
【0079】
「修飾オリゴヌクレオチド」は、修飾ヌクレオシド間結合、修飾糖、及び/または修飾核酸塩基を意味する。
【0080】
「修飾糖」とは、天然糖の置換または変化を指す。例えば、修飾糖は、2’-MOEであり得る。
【0081】
「調節する」は、細胞、組織、臓器または有機体の特徴を変化または調節することを指す。例えば、TMPRSS6レベルを調節することは、細胞、組織、臓器または有機体におけるTMPRSS6 mRNAまたはTMPRSS6タンパク質のレベルを増加または減少させることを意味することができる。「調節剤」は、細胞、組織、臓器または有機体における変化に影響する。例えば、TMPRSS6アンチセンスオリゴヌクレオチドは、細胞、組織、臓器または有機体におけるTMPRSS6 mRNAまたはTMPRSS6タンパク質の量を増加または減少させる調節剤であり得る。
【0082】
「モノマー」は、オリゴマーの単一の単位である。モノマーは、天然であっても改変されたものであっても、ヌクレオシド及びヌクレオチドを含むが、これに限定されない。
【0083】
「モチーフ」とは、アンチセンス化合物における化学的に異なる領域のパターンを意味する。
【0084】
「突然変異」は、核酸配列の変化を指す。突然変異は、放射線照射、ウイルス、トランスポゾン及び変異原性化学物質、ならびに減数分裂、DNA複製、RNA転写及び転写後プロセッシングの最中に生じるエラーを含むがこれらに限定されない様々な方法で発生させることができる。突然変異によって、配列にいくつかの異なる変化が生じ、これらは、何ら影響を及ぼすことなく、遺伝子の産物を変化させるか、または遺伝子を適切にもしくは完全に機能することを阻止することができる。例えば、HFE突然変異は、遺伝子産物の不適切な機能化を起こし、腸内の過剰な鉄吸収を引き起こす。
【0085】
「骨髄異形成症候群」は、血液細胞の骨髄の種類の無効な産生を伴う血液学的疾患、障害及び/または病態の多様な集合を指す。症候群は、骨髄における幹細胞の障害によって生じる。骨髄異形成症候群において、造血発生は無効であり、血液細胞の数及び質が不可逆的に減少し、さらに血液産生を損なう。結果として、骨髄異形成症候群の患者は、重度の貧血を発症し、頻繁に輸血を必要とする。
【0086】
「天然に存在するヌクレオシド間連結部」とは、3’~5’ホスホジエステル連結部を意味する。
【0087】
「天然糖部分」とは、DNA(2’-H)またはRNA(2’-OH)に見られる糖を意味する。
【0088】
「核酸」とは、モノマーヌクレオチドから成る分子を指す。核酸には、リボ核酸(RNA)、デオキシリボ核酸(DNA)、一本鎖核酸、二本鎖核酸、低分子干渉リボ核酸(siRNA)、及びマイクロRNAs(miRNA)が含まれる。
【0089】
「核酸塩基」とは、別の核酸塩基と対合することができる複素環部分を意味する。
【0090】
「核酸塩基配列」とは、任意の糖、結合、または核酸塩基修飾から独立した連続した核酸塩基の順序を意味する。
【0091】
「ヌクレオシド」とは、糖に連結された核酸塩基を意味する。
【0092】
「ヌクレオシド模倣物」は、糖または糖と塩基を置換するために用いられる構造を含み、例えば、モルホリノ、シクロヘキセニル、シクロヘキシル、テトラヒドロピラニル、ビシクロ、またはトリシクロ糖模倣物、例えば、非フラノース糖単位を有するヌクレオシド模倣物等のオリゴマー化合物の1つまたは複数の位置での結合を必ずしも含むわけではない。
【0093】
「ヌクレオチド」とは、ヌクレオシドの糖部分に共有結合したリン酸基を有するヌクレオシドを意味する。
【0094】
「ヌクレオチド模倣物」は、ヌクレオシドを置換するために用いられる構造と、例えば、ペプチド核酸またはモルホリノ(-N(H)-C(=O)-O-または他の非ホスホジエステル結合によって連結されたモルホリノ)等のオリゴマー化合物の1つまたは複数の位置での結合とを含む。
【0095】
「オリゴマー化合物」または「オリゴマー」は、2つ以上の下部構造(モノマー)を含み、核酸分子の領域にハイブリダイズすることができるポリマー構造を指す。特定の実施形態において、オリゴマー化合物は、オリゴヌクレオシドである。特定の実施形態において、オリゴマー化合物は、オリゴヌクレオチドである。特定の実施形態において、オリゴマー化合物は、アンチセンス化合物である。特定の実施形態において、オリゴマー化合物は、アンチセンスオリゴヌクレオチドである。特定の実施形態において、オリゴマー化合物は、キメラオリゴヌクレオチドである。
【0096】
「オリゴヌクレオチド」とは、各々が互いに独立して、修飾され得るかまたは修飾され得ない連結したヌクレオシドのポリマーを意味する。
【0097】
「非経口投与」とは、注入または輸液を介する投与を意味する。非経口投与には、皮下投与、静脈内投与、筋肉内投与、動脈内投与、腹腔内投与、または頭蓋内投与、例えば、髄腔内もしくは脳室内投与が含まれる。投与は、連続投与、または長期投与、短期投与、または間欠投与であり得る。
【0098】
「ペプチド」とは、アミド結合によって少なくとも2つのアミノ酸を連結することによって形成される分子を指す。ペプチドは、ポリペプチド及びタンパク質を指す。
【0099】
「トランスフェリンの飽和度」は、合計の鉄結合能に対する血清鉄の比を100で乗算したものを指す。この値により、臨床医は、鉄を結合するために利用可能なトランスフェリン分子のうち、どれくらいの血清鉄が実際に結合するのかが分かる。
【0100】
「医薬組成物」とは、個体への投与に好適な物質の混合物を意味する。例えば、医薬組成物は、1つまたは複数の活性剤及び医薬担体、例えば滅菌水溶液を含み得る。
【0101】
「薬学的に許容される担体」とは、オリゴヌクレオチドの構造を妨害しない媒体または希釈剤を意味する。ある特定のそのような担体は、医薬組成物を、例えば、対象による経口摂取のための丸剤、錠剤、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液、及びトローチ剤として製剤化することを可能にする。例えば、薬学的に許容される担体は、PBS等の滅菌水溶液であり得る。
【0102】
「薬学的に許容される誘導体」は、薬学的に許容される塩、共役体、プロドラッグまたは本明細書に記載の化合物の異性体を含む。
【0103】
「薬学的に許容される塩」とは、アンチセンス化合物の生理学的にかつ薬学的に許容される塩、すなわち、親オリゴヌクレオチドの所望の生物学的活性を保持し、かつそれに望ましくない毒物学的影響を与えない塩を意味する。
【0104】
「ホスホロチオエート結合」とは、ホスホジエステル結合が非架橋酸素原子のうちの1つを硫黄原子と置き換えることによって修飾されるヌクレオシド間の結合を意味する。
ホスホロチオエート結合は、修飾ヌクレオシド間結合である。
【0105】
「赤血球増加症」は、赤血球細胞数の増加(絶対的赤血球増加症)または血漿量の減少(相対的赤血球増加症)のいずれかに起因する特定の量の赤血球細胞(RBC)が増加する病態を指す。血液量対赤血球細胞の比率は、ヘマトクリット(Hct)レベルとして測定することができる。RBCの比率の増加により、血液が粘稠性となり、循環系を通る血流が遅くなり、血餅を形成される場合がある。血流がより遅くなると、細胞、組織及び/または臓器に輸送される酸素が減少する場合があり、アンギナまたは心不全等の疾患、障害または病態を引き起こされる場合がある。循環器において血餅が形成されると、細胞、組織及び/または臓器が損傷する場合があり、心筋梗塞または脳卒中等の疾患、障害または病態を引き起こされる場合がある。赤血球増加症の治療として、RBC産生を減少させる静脈切開術または薬剤が挙げられる(例えば、INF-α、ヒドロキシ尿素、アナグレリド)。赤血球増加症の例として、真性多血症(PCV)、真性一次性赤血球増加症(PRV)及び赤血病が挙げられるが、これらに限定されない。特定の例において、赤血球増加症は対象における赤血球白血病に進行する場合がある。
【0106】
「部分」とは、定義された数の核酸の連続した(すなわち、連結した)核酸塩基を意味する。特定の実施形態において、部分は、定義された数の標的核酸の連続した核酸塩基である。特定の実施形態において、部分は、定義された数のアンチセンス化合物の連続した核酸塩基である。
【0107】
「予防する」とは、数分から無期限の期間、疾患、障害、もしくは病態の発生、発現もしくは進行を遅延させるか、または未然に防ぐことを指す。予防は、疾患、障害、または状態の発症のリスクを低下させることも意味する。
【0108】
「プロドラッグ」は、内因性酵素または他の化学物質または条件の作用によって、体内または細胞内で活性形態に変換される不活性な形態で調製される治療薬を意味する。
【0109】
「副作用」とは、所望の作用以外の治療に起因する生理学的応答を意味する。特定の実施形態において、副作用には、注入部位反応、肝機能検査異常、腎機能異常、肝臓毒性、腎臓毒性、中枢神経系異常、ミオパシー、及び倦怠感が含まれる。例えば、血清中のアミノトランスフェラーゼレベルの増加は、肝臓毒性または肝機能異常を示し得る。
【0110】
「一本鎖オリゴヌクレオチド」とは、相補鎖にハイブリダイズされないオリゴヌクレオチドを意味する。
【0111】
「特異的にハイブリダイズ可能な」とは、アンチセンス化合物が標的核酸に対して所望の効果を引き起こすのに十分な程度の相補性を有する一方で、特異的結合が所望される条件下、すなわち、in vivoアッセイ及び治療処置の場合の生理学的条件下で非標的核酸にほとんどまたはまったく影響を及ぼさないことを指す。
【0112】
「皮下投与」とは、皮膚の直下への投与を意味する。
【0113】
「Targeting(標的とする)」または「Targeted(標的にする)」とは、標的核酸に特異的にハイブリダイズし、かつ所望の効果を引き起こすアンチセンス化合物の設計及び選択のプロセスを意味する。
【0114】
「標的核酸」、「標的RNA」、及び「標的RNA転写物」は全て、アンチセンス化合物によって標的にすることができる核酸を指す。
【0115】
「標的セグメント」とは、アンチセンス化合物が標的とする標的核酸のヌクレオチドの配列を意味する。「5’標的部位」は、標的セグメントの5’末端のヌクレオチドを指す。「3’標的部位」は、標的セグメントの3’末端のヌクレオチドを指す。
【0116】
「サラセミア」は、異常なヘモグロビン分子の形成によって生じる貧血の下位グループ(例えば、α-サラセミア、β-サラセミア、δ-サラセミア、非輸血依存性サラセミア(NTDT))を意味し、赤血球細胞を破壊または分解してしまう。サラセミアの合併症として、過剰鉄(サラセミア自体またはサラセミアを治療するための頻繁な輸血のいずれかによる血中の鉄過剰)、感染、骨の変形、脾臓の腫大(すなわち、脾腫)、成長の遅延、及び心臓の問題(例えば、うっ血性心不全及び不整脈)のリスクの増加が挙げられる。
【0117】
「治療有効量」は、動物に治療利益をもたらす薬剤の量を意味する。
【0118】
「TMPRSS6」(「マトリプターゼ-2」としても知られる)は、TMPRSS6の任意の核酸またはタンパク質を指す。
【0119】
「TMPRSS6核酸」は、TMPRSS6をコードする核酸を意味する。例えば、特定の実施形態において、TMPRSS6は、TMPRSS6をコードするDNA配列、TMPRSS6をコードするDNA(イントロン及びエキソンを含むゲノムDNAを含む)から転写されるRNA配列、及びTMPRSS6をコードするmRNA配列を含む。「TMPRSS6 mRNA」とは、TMPRSS6タンパク質をコードするmRNAを意味する。
【0120】
「TMPRSS6特異的阻害剤」は、TMPRSS6遺伝子、TMPRSS6 RNAの発現及び/またはTMPRSS6の発現を分子レベルで特異的に阻害することができる任意の薬剤を指す。例えば、TMPRSS6特異的阻害剤には、核酸(アンチセンス化合物を含む)、ペプチド、抗体、小分子、及びTMPRSS6のレベルを阻害することができる他の薬剤が含まれる。特定の実施形態では、TMPRSS6を特異的に調節すること
によって、TMPRSS6特異的阻害剤は、鉄蓄積経路の成分に影響を与えることができる。
【0121】
「治療する」とは、動物における疾患、障害または病態の変化または改善に影響を与えるために、医薬組成物を動物に投与することを指す。特定の実施形態では、1つまたは複数の医薬組成物を動物に投与することができる。
【0122】
「非修飾ヌクレオチド」とは、天然に存在する核酸塩基、糖部分、及びヌクレオシド間結合から成るヌクレオチドを意味する。特定の実施形態において、非修飾ヌクレオチドは、RNAヌクレオチド(すなわち、β-D-リボヌクレオチド)またはDNAヌクレオチド(すなわち、β-D-デオキシリボヌクレオチド)である。
【0123】
特定の実施形態
本明細書に開示される特定の実施形態では、TMPRSS6は、以下に記載の配列を有する:GenBank寄託番号NM_153609.2(配列番号1として本明細書に組み込まれる)、16850000~16897000を切断したGENBANK寄託NT_011520.12の成分(配列番号2として本明細書に組み込まれる)、GENBANK寄託番号CR456446.1(配列番号3として本明細書に組み込まれる)、GENBANK寄託番号BC039082.1(配列番号4として本明細書に組み込まれる)、GENBANK寄託番号AY358398.1(配列番号5として本明細書に組み込まれる)、及びGENBANK寄託番号DB081153.1(配列番号6として本明細書に組み込まれる)。
【0124】
本明細書に開示される特定の実施形態では、TMPRSS6をコードする核酸を標的とする修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物を提供する。特定の実施形態では、化合物は、配列番号1~6のいずれかの核酸配列に示されるように、TMPRSS6配列を標的とする。
【0125】
本明細書に開示される特定の実施形態は、配列番号1~6の等しい長さの部分と相補的な少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、または20個の連続した核酸塩基を含む核酸塩基配列を有する、12~30個の連結したヌクレオシドから成る修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物を提供する。
【0126】
本明細書に開示する特定の実施形態は、配列番号1の核酸塩基3162~3184の等しい長さの部分と相補的な少なくとも8個の連続した核酸塩基の部分を含む核酸塩基配列を有する12~30個の連結したヌクレオシドから成る修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物を提供し、修飾オリゴヌクレオチドの核酸塩基配列が、配列番号1と少なくとも80%相補的である。
【0127】
本明細書に開示する特定の実施形態は、配列番号1の核酸塩基1286~1305の等しい長さの部分と相補的な少なくとも8個の連続した核酸塩基の部分を含む核酸塩基配列を有する12~30個の連結したヌクレオシドから成る修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物を提供し、修飾オリゴヌクレオチドの核酸塩基配列が、配列番号1と少なくとも80%相補的である。
【0128】
本明細書に開示される特定の実施形態は、配列番号1の3162~3184の等しい長さの部分と相補的な少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少
なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、または20個の連続した核酸塩基を含む核酸塩基配列を有する12~30個の連結したヌクレオシドから成る修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物を提供し、修飾オリゴヌクレオチドの核酸塩基配列が、配列番号1と少なくとも80%相補的である。
【0129】
本明細書に開示される特定の実施形態は、配列番号1の1286~1305の等しい長さの部分と相補的な少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、または20個の連続した核酸塩基を含む核酸塩基配列を有する12~30個の連結したヌクレオシドから成る修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物を提供し、修飾オリゴヌクレオチドの核酸塩基配列が、配列番号1と少なくとも80%相補的である。
【0130】
本明細書に開示される特定の実施形態は、配列番号7~85の核酸塩基配列のいずれかの少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、または20個の連続した核酸塩基配列を有する12~30個の連結したヌクレオシドから成る修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物を提供する。
【0131】
本明細書に開示される特定の実施形態は、配列番号23、36、37、63、77の核酸塩基配列のいずれかの少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、または20個の連続した核酸塩基を含む核酸塩基配列を有する12~30個の連結したヌクレオシドから成る修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物を提供する。
【0132】
本明細書に開示される特定の実施形態は、配列番号36の少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、または20個の連続した核酸塩基を含む核酸塩基配列を有する12~30個の連結したヌクレオシドから成る修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物を提供する。
【0133】
本明細書に開示される特定の実施形態は、配列番号77の少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、または20個の連続した核酸塩基を含む核酸塩基配列を有する12~30個の連結したヌクレオシドから成る修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物を提供する。
【0134】
特定の実施形態において、修飾オリゴヌクレオチドの核酸塩基配列は、配列番号1~6のいずれかの等しい長さの部分と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%相補的である。特定の実施形態では、修飾オリゴヌクレオチドは、配列番号1~6のいずれかの等しい長さの部分と100%相補的な核酸塩基配列を含む。
【0135】
特定の実施形態において、化合物は、8~80、20~80、10~50、20~35、10~30、12~30、15~30、16~30、20~30、20~29、20~28、20~27、20~26、20~25、20~24、20~23、20~22、20~21、15~25、16~25、15~24、16~24、17~24、18~24、19~24、19~22、16~21、18~21または16~20の連結した核酸塩
基から成る修飾オリゴヌクレオチドを含む。特定の実施形態において、化合物は、16個の連結したヌクレオシドから成る修飾オリゴヌクレオチドを含む。特定の実施形態において、化合物は、20個の連結したヌクレオシドから成る修飾オリゴヌクレオチドを含む。
【0136】
特定の実施形態において、化合物は、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、または80の長さの連結した核酸塩基、または上記の値のいずれか2つで定義される範囲の連結した核酸塩基から成る修飾オリゴヌクレオチドを含む。
【0137】
特定の実施形態において、修飾オリゴヌクレオチドは、一本鎖である。
【0138】
特定の実施形態において、修飾オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの修飾ヌクレオシド間結合を含む。特定の実施形態において、修飾ヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合である。特定の実施形態において、少なくとも1つの修飾ヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合である。特定の実施形態において、修飾ヌクレオシド間結合のそれぞれは、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合である。
【0139】
特定の実施形態において、修飾オリゴヌクレオチドは、修飾糖を含む少なくとも1つのヌクレオシドを含む。特定の実施形態において、少なくとも1つの修飾糖は二環糖を含む。特定の実施形態では、少なくとも1つの修飾糖が、2’-O-メトキシエチル、拘束エチル、3’-フルオロ-HNA、または4’-(CH-O-2’架橋を含み、ここでnは、1または2である。
【0140】
特定の実施形態において、修飾オリゴヌクレオチドは、修飾核酸塩基を含む少なくとも1つのヌクレオシドを含む。特定の実施形態において、該修飾核酸塩基は、5-メチル-シトシンである。
【0141】
特定の実施形態において、修飾オリゴヌクレオチドは、共役基を含む。特定の実施形態において、共役体は炭水化物部分である。特定の実施形態において、共役体はGalNAc部分である。特定の実施形態において、GalNAcは、5’-トリスヘキシルアミノ-(THA)-C6 GalNAcである。特定の実施形態において、共役体は、以下の式を有する。
【化3】
【0142】
特定の実施形態において、化合物は、12~30個の連結したヌクレオシドから成る修
飾オリゴヌクレオチドを含み、配列番号1の領域3162~3184の等しい長さの部分を標的にするか、またはそれに相補的であり、修飾オリゴヌクレオチドは、(a)連結したデオキシヌクレオシドから成るギャップセグメント、(b)連結したヌクレオシドから成る5’ウイングセグメント、及び(c)連結したヌクレオシドから成る3’ウイングセグメントを含み、ギャップセグメントは、5’ウイングセグメントと3’ウイングセグメントに直接隣接してかつその間に位置し、各ウイングセグメントの各ヌクレオシドは修飾糖を含む。特定の実施形態において、修飾オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つのホスホロチオエートヌクレオシド間結合を含む。特定の実施形態において、修飾オリゴヌクレオチドは、GalNAc共役体をさらに含む。特定の実施形態において、共役体は、5’-トリスヘキシルアミノ-(THA)-C6 GalNAc共役体である。
【0143】
特定の実施形態において、化合物は、12~30個の連結したヌクレオシドから成る修飾オリゴヌクレオチドを含み、配列番号1の領域1286~1305の等しい長さの部分を標的とするか、またはそれに相補的であり、修飾オリゴヌクレオチドは、(a)連結したデオキシヌクレオシドから成るギャップセグメント、(b)連結したヌクレオシドから成る5’ウイングセグメント、及び(c)連結したヌクレオシドから成る3’ウイングセグメントを含み、ギャップセグメントは、5’ウイングセグメントと3’ウイングセグメントに直接隣接してかつその間に位置し、各ウイングセグメントの各ヌクレオシドは修飾糖を含む。特定の実施形態において、修飾オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つのホスホロチオエートヌクレオシド間結合を含む。特定の実施形態において、修飾オリゴヌクレオチドは、GalNAc共役体をさらに含む。特定の実施形態において、共役体は、5’-トリスヘキシルアミノ-(THA)-C6 GalNAc共役体である。
【0144】
特定の実施形態において、化合物は、20個の連結したヌクレオシドから成る修飾オリゴヌクレオチドを含み、配列番号1の領域3162~3181の等しい長さの部分を標的にするか、またはそれに相補的であり、修飾オリゴヌクレオチドは、(a)10個の連結したデオキシヌクレオシドから成るギャップセグメント、(b)5個の連結したヌクレオシドから成る5’ウイングセグメント、及び(c)5個の連結したヌクレオシドから成る3’ウイングセグメントを含み、ギャップセグメントは、5’ウイングセグメントと3’ウイングセグメントに直接隣接してかつその間に位置し、各ウイングセグメントの各ヌクレオシドは2’-O-メトキシエチル糖を含み、少なくとも1つのヌクレオシド間結合はホスホロチオエート結合であり、各シトシン残基は、5-メチルシトシンである。特定の実施形態において、修飾オリゴヌクレオチドは、GalNAc共役体をさらに含む。特定の実施形態において、共役体は、5’-トリスヘキシルアミノ-(THA)-C6 GalNAc共役体である。
【0145】
特定の実施形態において、化合物は、16個の連結したヌクレオシドから成る修飾オリゴヌクレオチドを含み、配列番号1の領域3169~3184の等しい長さの部分を標的にするか、またはそれに相補的であり、修飾オリゴヌクレオチドは、(a)9個の連結したデオキシヌクレオシドから成るギャップセグメント、(b)3個の連結したヌクレオシドから成る5’ウイングセグメント、及び(c)4個の連結したヌクレオシドから成る3’ウイングセグメントを含み、ギャップセグメントは、5’ウイングセグメントと3’ウイングセグメントに直接隣接してかつその間に位置し、各ウイングセグメントの各ヌクレオシドは、修飾糖を含み、各ヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエート結合であり、各シトシン残基は、5-メチルシトシンである。特定の実施形態において、修飾オリゴヌクレオチドは、GalNAc共役体をさらに含む。特定の実施形態において、共役体は、5’-トリスヘキシルアミノ-(THA)-C6 GalNAc共役体である。
【0146】
特定の実施形態において、化合物は、20個の結合したヌクレオシドから成る修飾オリゴヌクレオチドを含み、配列番号36の少なくとも8個の連結した核酸塩基を含む核酸塩
基配列を有し、修飾オリゴヌクレオチドは、(a)10個の連結したデオキシヌクレオシドから成るギャップセグメント、(b)5個の連結したヌクレオシドから成る5’ウイングセグメント、及び(c)5個の連結したヌクレオシドから成る3’ウイングセグメントを含み、ギャップセグメントは、5’ウイングセグメントと3’ウイングセグメントに直接隣接してかつその間に位置し、各ウイングセグメントの各ヌクレオシドは2’-O-メトキシエチル糖を含み、少なくとも1つのヌクレオシド間結合はホスホロチオエート結合であり、各シトシン残基は、5-メチルシトシンである。特定の実施形態において、修飾オリゴヌクレオチドは、GalNAc共役体をさらに含む。特定の実施形態において、共役体は、5’-トリスヘキシルアミノ-(THA)-C6 GalNAc共役体である。
【0147】
特定の実施形態において、化合物は、16個の連結したヌクレオシドから成る修飾オリゴヌクレオチドを含み、配列番号77の少なくとも8個の連結した核酸塩基を含む核酸塩基配列を有し、修飾オリゴヌクレオチドは、(a)9個の連結したデオキシヌクレオシドから成るギャップセグメント、(b)3個の連結したヌクレオシドから成る5’ウイングセグメント、及び(c)4個の連結したヌクレオシドから成る3’ウイングセグメントを含み、ギャップセグメントは、5’ウイングセグメントと3’ウイングセグメントに直接隣接してかつその間に位置し、各ウイングセグメントの各ヌクレオシドは修飾糖を含み、各ヌクレオシド間結合はホスホロチオエート結合であり、各シトシン残基は、5-メチルシトシンである。特定の実施形態において、修飾オリゴヌクレオチドは、GalNAc共役体をさらに含む。特定の実施形態において、共役体は、5’-トリスヘキシルアミノ-(THA)-C6 GalNAc共役体である。
【0148】
本明細書に開示される特定の実施形態は、以下の式:mCes Teo Teo Teo Aeo Tds Tds mCds mCds Ads Ads Ads Gds Gds Gds mCeo Aeo Ges mCes Te(配列番号36)に従う修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物を提供するが、ここでAはアデニンであり、mCは5-メチルシトシンであり、Gはグアニンであり、Tはチミンであり、eは2’-O-メトキシエチル修飾ヌクレオシドであり、dは2’-デオキシヌクレオシドであり、sはホスホロチオエートヌクレオシド間結合である。特定の実施形態において、修飾オリゴヌクレオチドは、GalNAc共役体をさらに含む。特定の実施形態において、共役体は、5’-トリスヘキシルアミノ-(THA)-C6 GalNAc共役体である。
【0149】
本明細書に開示する特定の実施形態では、以下の式を有する修飾されたオリゴヌクレオチドを含む化合物を提供する。
【化4】
【0150】
本明細書に開示される特定の実施形態は、以下の式:mCks Aes Gks mCds Tds Tds Tds Ads Tds Tds mCds mCds Aes
Aes Aks Gk(配列番号77)に記載の修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物を提供するが、ここでAはアデニンであり、mCは5-メチルシトシンであり、Gはグアニンであり、Tはチミンであり、eは2’-O-メトキシエチル修飾ヌクレオシドであり、dは2’-デオキシヌクレオシドであり、sはホスホロチオエートヌクレオシド間結合であり、kはcEtである。特定の実施形態において、修飾オリゴヌクレオチドは、GalNAc共役体をさらに含む。特定の実施形態において、共役体は、5’-トリスヘキシルアミノ-(THA)-C6 GalNAc共役体である。
【0151】
本明細書に開示する特定の実施形態では、以下の式で修飾されたオリゴヌクレオチドを含む化合物を提供する。
【化5】
【0152】
特定の実施形態では、本明細書に開示される化合物または組成物は、修飾オリゴヌクレオチドの塩を含む。
【0153】
特定の実施形態では、本明細書に開示される化合物または組成物は、薬学的に許容される担体または希釈剤をさらに含む。
【0154】
特定の実施形態において、動物はヒトである。
【0155】
特定の実施形態は、本明細書に記載の修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物または組成物を提供し、ここで粘度は40cP未満である。特定の実施形態では、組成物は15cp未満の粘度を有する。特定の実施形態では、組成物は12cp未満の粘度を有する。特定の実施形態では、組成物は10cp未満の粘度を有する。
【0156】
本明細書に開示される特定の実施形態は、細胞、組織、臓器または動物におけるTMPRSS6を減少させる際に使用する、TMPRSS6を標的とする修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物及び組成物を提供する。
【0157】
本明細書に開示される特定の実施形態は、細胞、組織、臓器または動物における鉄レベルを減少させる際に使用する、TMPRSS6を標的とする修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物及び組成物を提供する。特定の実施形態では、化合物及び組成物は、血清鉄レベルを減少させる。特定の実施形態では、化合物及び組成物は、肝鉄レベルを減少させる。特定の実施形態では、化合物及び組成物は、鉄吸収を減少させる。特定の実施形態では、化合物及び組成物は、鉄過剰または蓄積を減少させる。特定の実施形態では、鉄過剰/蓄積を減少することによって、鉄過剰に関連する疾患、障害または病態が寛解され、治療さ
れ、予防されるか、遅延する。
【0158】
本明細書に開示される特定の実施形態は、動物におけるmRNAまたはタンパク質発現レベル等のプシジンレベルを増加させる際に使用する、TMPRSS6を標的とする修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物及び組成物を提供する。
【0159】
本明細書に開示される特定の実施形態は、動物におけるトランスフェリンの飽和度を減少させる際に使用する、TMPRSS6を標的とする修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物及び組成物を提供する。特定の実施形態では、トランスフェリンの飽和度を減少させることによって、赤血球生成について鉄供給が減少する。特定の実施形態では、赤血球生成の減少は、動物における赤血球増加症またはその症状を治療、予防、発症を遅延し、寛解し、かつ/または減少させる。特定の実施形態において、赤血球増加症は真性多血症である。特定の実施形態では、TMPRSS6を標的とする修飾オリゴヌクレオチドでの治療は、赤血球増加症が赤血球白血病に進行するのを予防または遅延する。
【0160】
本明細書に開示される特定の実施形態は、動物における鉄蓄積を減少させるための、TMPRSS6を標的とする修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物及び組成物を提供する。特定の実施形態では、TMPRSS6を標的とする修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物及び組成物は、動物における鉄の過剰蓄積に関連する疾患、障害及び/もしくは病態、またはその症状を治療し、予防し、その進行を遅らせ、その発症を遅延させ、寛解させ、かつ/または減少させるために使用される。
【0161】
特定の実施形態では、鉄蓄積は、動物の疾患、障害または病態の結果または原因である。特定の実施形態では、疾患、障害または病態は、無効赤血球生成、赤血球増加症、ヘモクロマトーシスまたは貧血である。特定の実施形態において、ヘモクロマトーシスは遺伝性ヘモクロマトーシスである。特定の実施形態では、貧血は、遺伝性貧血、骨髄異形成症候群または重症慢性溶血である。特定の実施形態では、遺伝性貧血は、鎌状赤血球貧血、サラセミア、ファンコニー貧血、ダイアモンド・ブラックファン貧血、シュワックマン・ダイアモンド症候群、赤血球膜障害、グルコース-6-リン酸脱水素酵素欠損症、または遺伝性出血性毛細血管拡張症である。特定の実施形態において、サラセミアは、β-サラセミアである。特定の実施形態では、β-サラセミアは、重症型β-サラセミア、中間型β-サラセミアまたは軽症型β-サラセミアである。特定の実施形態では、疾患、障害または病態は、HFE遺伝子の突然変異に関連する。他の実施形態では、疾患は、hemojuvelin遺伝子の突然変異に関連する。他の実施形態では、疾患は、ヘプシジン遺伝子の突然変異に関連する。
【0162】
特定の実施形態では、鉄蓄積は、動物の疾患、障害を治療するための治療の結果である。特定の実施形態では、治療は、静脈切開術または輸血治療である。特定の実施形態では、疾患、障害及び/または病態は、複数回の輸血に起因し得る。特定の実施形態では、複数回の輸血は、赤血球増加症をもたらし得る。特定の実施形態では、複数回の輸血は、動物が貧血を有することに関連する。複数回の輸血を必要とする貧血の例は、遺伝性貧血、遺伝性貧血及び重症慢性溶血である。
【0163】
特定の実施形態では、疾患、障害及び/または病態は、非経口の鉄サプリメント摂取または過剰な食事性鉄摂取に関連する。
【0164】
特定の実施形態では、治療に使用されるTMPRSS6を標的とする修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物または組成物を提供する。特定の実施形態では、TMPRSS6を標的とする修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物または組成物は、治療有効量で動物に投与される。
【0165】
特定の実施形態では、医薬品の調製のために使用されるTMPRSS6を標的とする修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物または組成物を提供する。特定の実施形態では、医薬品は、動物における鉄の過剰蓄積に関連する疾患、障害及び/または病態を治療し、予防し、その進行を遅らせ、その発症を遅らせ、かつ/または減少させるために使用する。
【0166】
特定の実施形態では、TMPRSS6を標的とする修飾オリゴヌクレオチドを含む組成物または化合物は、1つまたは複数の第2薬剤(複数可)と共に同時投与される。特定の実施形態では、第2薬剤は、鉄キレート剤またはヘプシジンアゴニストである。さらなる実施形態では、鉄キレート剤は、FBS0701(FerroKin)、エクジェイド、Desferalまたはデスフェラール(DFP)を含む。特定の実施形態において、第2薬剤は第2アンチセンス化合物である。さらなる実施形態では、第2アンチセンス化合物はTMPRSS6を標的とする。他の実施形態では、第2アンチセンス化合物は、非TMPRSS6化合物を標的とする。他の実施形態では、TMPRSS6を標的とする修飾オリゴヌクレオチドを含む組成物または化合物は、静脈切開術または輸血治療の前、最中、または後に投与される。
【0167】
アンチセンス化合物
オリゴマー化合物として、オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオシド、オリゴヌクレオチド類似体、オリゴヌクレオチド模倣物、アンチセンス化合物、アンチセンスオリゴヌクレオチド、及びsiRNAが挙げられるが、これらに限定されない。オリゴマー化合物は、標的核酸に対して「アンチセンス」であってもよく、これは、水素結合を介して標的核酸へのハイブリダイゼーションを受けることができることを意味する。
【0168】
特定の実施形態において、アンチセンス化合物は、5’から3’方向に書かれた場合に、標的とする標的核酸の標的セグメントの逆相補体を含む核酸塩基配列を有する。特定のそのような実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、5’から3’方向に書かれた場合、標的とする標的核酸の標的セグメントの逆相補体を含む核酸塩基配列を有する。
【0169】
特定の実施形態において、TMPRSS6核酸を標的とするアンチセンス化合物は、長さが10~30ヌクレオチドある。換言すれば、アンチセンス化合物は、10~30個の連結した核酸塩基である。特定の実施形態において、アンチセンス化合物は、8~80、10~80、12~50、15~30、18~24、19~22または20個の連結した核酸塩基から成る修飾オリゴヌクレオチドを含む。特定のそのような実施形態において、アンチセンス化合物は、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、または80の長さの連結した核酸塩基、または上記の値のいずれか2つで定義される範囲の連結した核酸塩基から成る修飾オリゴヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、アンチセンス化合物はアンチセンスオリゴヌクレオチドである。
【0170】
特定の実施形態において、アンチセンス化合物は、短縮または切断された修飾オリゴヌクレオチドを含む。短縮または切断された修飾オリゴヌクレオチドは、5’末端(5’切断)、中央部分またはあるいは3’末端(3’切断)から欠失された単一のヌクレオシドを有することができる。短縮または切断された修飾オリゴヌクレオチドは、5’末端から欠失された2以上のヌクレオシド、中央部分から欠失した2以上のヌクレオシドを有する
ことができ、あるいは3’末端から欠失した2以上のヌクレオシドを有することができる。あるいは、欠失したヌクレオシドは、例えば、5’末端から欠失された1つまたは複数のヌクレオシド、中央部分から欠失された1つまたは複数のヌクレオシド、及び/または3’末端から欠失された1つまたは複数のヌクレオシドを有するアンチセンス化合物において、修飾オリゴヌクレオチド全体に分散してもよい。
【0171】
単一の追加のヌクレオシドが伸長オリゴヌクレオチド中に存在する場合、追加のヌクレオシドは、オリゴヌクレオチドの5’末端、3’末端、または中央部分に位置し得る。2つ以上の追加のヌクレオシドが存在する場合、例えば、2つのヌクレオシドが、オリゴヌクレオチドの5’末端に付加されている(5’付加)、3’末端に付加されている(3’付加)、または中央部分に付加されているオリゴヌクレオチドでは、追加されたヌクレオシドは互いに隣接していてもよい。あるいは、追加されたヌクレオシドは、例えば、5’末端に付加された1つまたは複数のヌクレオチド、3’末端に付加された1つまたは複数のヌクレオシド、及び/または中央部分に付加された1つまたは複数のヌクレオシドを有するオリゴヌクレオチドにおいて、アンチセンス化合物全体に分散してもよい。
【0172】
活性を排除することなく、アンチセンスオリゴヌクレオチド等のアンチセンス化合物の長さを増加しもしくは減少させ、かつ/またはミスマッチ塩基を導入することができる。例えば、Woolf et al.(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:7305-7309,1992)において、13~25核酸塩基長の一連のアンチセンスオリゴヌクレオチドを、標的RNAの切断を誘導するその能力について、卵母細胞注入モデルで試験した。末端近くに8個または11個のミスマッチ塩基を含む25核酸塩基長のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、ミスマッチを含まないアンチセンスオリゴヌクレオチドほどではなかったものの、標的mRNAの特異的切断を導くことができた。同様に、標的特異的切断が、13核酸塩基アンチセンスオリゴヌクレオチド(1つまたは3つのミスマッチを有するものを含む)を使用して達成された。
【0173】
Gautschi et al(J.Natl.Cancer Inst.93:463-471,March 2001)は、bcl-2 mRNAに対して100%の相補性を有し、かつbcl-xL mRNAに対して3つのミスマッチを有するオリゴヌクレオチドが、in vitro及びin vivoでbcl-2とbcl-xL両方の発現を低減できることを実証した。さらに、このオリゴヌクレオチドはin vivoで強力な抗腫瘍活性も示した。
【0174】
Maher及びDolnick(Nuc.Acid.Res.16:3341-3358,1988)は、一連のタンデム14核酸塩基アンチセンスオリゴヌクレオチド、ならびにそれぞれ2つまたは3つの該タンデムアンチセンスオリゴヌクレオチドの配列で構成される28核酸塩基アンチセンスオリゴヌクレオチド及び42核酸塩基アンチセンスオリゴヌクレオチドを、ヒトDHFRの翻訳を停止させるその能力について、ウサギ網状赤血球アッセイで試験した。3つの14核酸塩基アンチセンスオリゴヌクレオチドのそれぞれは単独で、28核酸塩基アンチセンスオリゴヌクレオチドまたは42核酸塩基アンチセンスオリゴヌクレオチドよりもレベルは低かったものの、翻訳を阻害することができた。
【0175】
特定のアンチセンス化合物モチーフ及びメカニズム
特定の実施形態において、アンチセンス化合物が、強化された阻害活性、標的核酸に対する増加した結合親和性、またはin vivoヌクレアーゼによる分解に対する耐性等といった性質が該アンチセンス化合物に付与されるようなパターンまたはモチーフで配置された化学修飾サブユニットを有する。
【0176】
キメラアンチセンス化合物は、典型的には、ヌクレアーゼ分解に対する増加した耐性、
増加した細胞取り込み、標的核酸に対する増加した結合親和性、及び/または増加した阻害活性が付与されるように修飾された少なくとも1つの領域を含有する。キメラアンチセンス化合物の第2の領域は、別の所望の特性を付与することができ、例えば、RNA:DNA二重鎖のRNA鎖を切断する細胞エンドヌクレアーゼRNase Hの基質として役立つことができる。
【0177】
アンチセンス活性は、標的核酸とのアンチセンス化合物(例えば、オリゴヌクレオチド)のハイブリダイゼーションに関与する任意のメカニズムから生じ得、ハイブリダイゼーションは最終的に生物学的効果をもたらす。特定の実施形態において、標的核酸の量及び/または活性が調節される。特定の実施形態において、標的核酸の量及び/または活性が低下する。特定の実施形態において、アンチセンス化合物の標的核酸へのハイブリダイゼーションは、最終的に標的核酸の分解をもたらす。特定の実施形態において、アンチセンス化合物の標的核酸へのハイブリダイゼーションは、標的核酸の分解をもたらさない。特定のそのような実施形態において、標的核酸とハイブリダイズしたアンチセンス化合物の存在(占有)は、アンチセンス活性の調節をもたらす。特定の実施形態において、特定の化学的モチーフまたは化学修飾のパターンを有するアンチセンス化合物は、1つまたは複数のメカニズムを利用するのに特に適している。特定の実施形態において、アンチセンス化合物は、1超のメカニズムを介して、かつ/または解明されていないメカニズムを介して機能する。したがって、本明細書に記載のアンチセンス化合物は、特定のメカニズムによって限定されない。
【0178】
アンチセンスメカニズムは、これらに限定されることなく、RNase H媒介性アンチセンス、RISC経路を利用し、siRNA、ssRNA及びマイクロRNAメカニズムを含むがこれらに限定されないRNAiメカニズム、及び占有ベースのメカニズムを含む。特定のアンチセンス化合物は、1つまたは複数のそのようなメカニズムを介してかつ/または追加のメカニズムを介して作用し得る。
【0179】
RNase H媒介アンチセンス
特定の実施形態では、アンチセンス活性は、少なくとも部分的に、RNase Hによる標的RNAの分解から生じる。RNase Hは、RNA:DNA二重鎖のRNA鎖を切断する細胞エンドヌクレアーゼである。「DNA様」の一本鎖アンチセンス化合物が哺乳類細胞におけるRNase H活性を誘発することが当技術分野で既知である。したがって、DNAまたはDNA様ヌクレオシドの少なくとも一部を含むアンチセンス化合物は、RNase Hを活性化し得、標的核酸の切断をもたらす。特定の実施形態において、RNase Hを利用するアンチセンス化合物は、1つまたは複数の修飾ヌクレオシドを含む。特定の実施形態において、そのようなアンチセンス化合物は、1~8個の修飾ヌクレオシドの少なくとも1つのブロックを含む。特定のそのような実施形態において、修飾ヌクレオシドはRNase H活性を支持しない。特定の実施形態において、このようなアンチセンス化合物は、本明細書に記載されるようなギャップマーである。特定のそのような実施形態において、ギャップマーのギャップはDNAヌクレオシドを含む。特定のそのような実施形態において、ギャップマーのギャップはDNA様ヌクレオシドを含む。特定のそのような実施形態において、ギャップマーのギャップはDNAヌクレオシド及びDNA様ヌクレオシドを含む。
【0180】
ギャップマーモチーフを有する特定のアンチセンス化合物は、キメラアンチセンス化合物と考えられる。ギャップマーでは、RNaseH切断を支持する複数のヌクレオチドを有する内側領域が、内側領域のヌクレオシドとは化学的に異なる複数のヌクレオチドを有する外側領域の間に配置されている。ギャップマーモチーフを有するアンチセンスオリゴヌクレオチドの場合、ギャップセグメントは一般にエンドヌクレアーゼ切断の基質として機能し、一方、ウイングセグメントは修飾ヌクレオシドを含む。特定の実施形態において
、ギャップマーの領域は、各別個の領域を含む糖部分のタイプによって区別される。ギャップマーの領域を区別するために使用される糖部分のタイプとして、いくつかの実施形態において、β-D-リボヌクレオシド、β-D-デオキシリボヌクレオシド、2’-修飾ヌクレオシド(そのような2’-修飾ヌクレオシドとして、例えば2’-MOE及び2’-O-CH等を挙げることができる)、及び二環式糖修飾ヌクレオシド(そのような二環式糖修飾ヌクレオシドとして拘束エチルを有するものを挙げることができる)が挙げられる。特定の実施形態において、ウイング中のヌクレオシドは、例えば2’-MOE及び拘束エチル(cEt)またはLNA等の二環式糖部分を含む、いくつかの修飾糖部分を含み得る。特定の実施形態において、ウイングはいくつかの修飾糖部分と非修飾糖部分を含んでもよい。特定の実施形態において、ウイングには、2’-MOEヌクレオシド、拘束エチルヌクレオシドまたはLNAヌクレオシド等の二環糖部分、及び2’-デオキシヌクレオシドの様々な組み合わせが含まれ得る。
【0181】
異なる領域は、それぞれ均一な糖部分を含むか、異なった糖部分を含むか、または交互に並んだ糖部分を含み得る。ウイングギャップ-ウイングモチーフは、しばしば「X-Y-Z」と記載されるが、この場合、「X」は5’-ウイングの長さを表し、「Y」はギャップの長さを表し、「Z」は3’-ウイングの長さを表す。「X」及び「Z」は、均一な糖部分を含むか、異なった糖部分を含むか、または交互に並んだ糖部分を含み得る。特定の実施形態において、「X」及び「Y」が、1つまたは複数の2’-デオキシヌクレオシドを含み得る。「Y」は2’-デオキシヌクレオシドを含み得る。本明細書で使用される「X-Y-Z」と記述されるギャップマーは、ギャップが5’-ウイング及び3’-ウイングのそれぞれと直接隣接して配置されるような構成を有する。したがって、5’-ウイングとギャップの間にも、ギャップと3’-ウイングの間にも、介在ヌクレオチドは存在しない。本明細書に記載するアンチセンス化合物はいずれもギャップマーモチーフを有することができる。特定の実施形態において、「X」及び「Z」が同じであり、他の実施形態において、それらが異なる。特定の実施形態において、「Y」は8~15個のヌクレオシドである。X、Y、またはZは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30個またはそれ以上のヌクレオシドのいずれかで有り得る。
【0182】
特定の実施形態において、TMPRSS6核酸を標的とするアンチセンス化合物は、ギャップが6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16個の連結したヌクレオシドから成るギャップマーモチーフを有する。
【0183】
特定の実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、次の式A:(J)-(B)-(J)-(B)-(A)-(D)-(A)-(B)-(J)-(B)-(J)で表される糖モチーフを有し、
式中、
各Aは独立して2’-置換ヌクレオシドであり、
各Bは独立して二環式ヌクレオシドであり、
各Jは独立して2’-置換ヌクレオシドまたは2’-デオキシヌクレオシドのいずれかであり、
各Dは2’-デオキシヌクレオシドであり、
mは0~4、nは0~2、pは0~2、rは0~2、tは0~2、vは0~2、wは0~4、xは0~2、yは0~2、zは0~4、gは6~14であるが、
ただし、
m、n及びrの少なくとも1つは0以外であり、
w及びyの少なくとも1つは0以外であり、
m、n、p、r及びtの合計は2~5であり、
v、w、x、y及びzの合計は2~5である。
【0184】
RNAi化合物
特定の実施形態において、アンチセンス化合物は干渉RNA化合物(RNAi)であり、これは二本鎖RNA化合物(低分子干渉RNAまたはsiRNAとも呼ばれる)及び一本鎖RNAi化合物(またはssRNA)を含む。そのような化合物は、標的核酸(したがって、マイクロRNA/マイクロRNA模倣化合物を含む)を分解かつ/または隔離するために、RISC経路を少なくとも部分的に介して働く。特定の実施形態において、アンチセンス化合物は、そのようなメカニズムに特に適した修飾を含む。
【0185】
i.ssRNA化合物
特定の実施形態において、一本鎖RNAi化合物(ssRNA)としての使用に特に適したものを含むアンチセンス化合物は、修飾された5’末端を含む。特定のそのような実施形態において、5’末端は修飾リン酸部分を含む。特定の実施形態において、このような修飾リン酸は安定化する(例えば、未修飾5’-リン酸と比較し、分解/切断に耐性がある)。特定の実施形態において、このような5’-末端ヌクレオシドは5’-リン部分を安定化させる。特定の修飾された5’-末端ヌクレオシドは、当該分野で、例えばWO/2011/139702に見出され得る。
【0186】
特定の実施形態において、ssRNA化合物の5’-ヌクレオシドは式IIc:
【化6】
で表される糖モチーフを有し、式中、
は任意に保護されたリン部分であり、
は式IIcの化合物をオリゴマー化合物に連結するヌクレオシド間連結基であり、
Aは次の式の1つを有する。
【化7】
及びQはそれぞれ、H、ハロゲン、C-Cアルキル、置換C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、置換C-Cアルコキシ、C-Cアルケニル、置換C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、置換C-CアルキニルまたはN(R)(R)であり、
は、O、S、N(R)またはC(R)(R)であり、
、R、R、R及びRはそれぞれ、独立してH、C-Cアルキル、置換C-CアルキルまたはC-Cアルコキシであり、
は、O、S、NR14、C(R15)(R16)、C(R15)(R16)C(R17)(R18)、C(R15)=C(R17)、OC(R15)(R16)またはOC(R15)(Bx)であり、
14は、H、C-Cアルキル、置換C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、置換C-Cアルコキシ、C-Cアルケニル、置換C-Cアルケニル、C-Cアルキニルまたは置換C-Cアルキニルであり、
15、R16、R17及びR18はそれぞれ独立して、H、ハロゲン、C-Cアルキル、置換C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、置換C-Cアルコキシ、C-Cアルケニル、置換C-Cアルケニル、C-Cアルキニルまたは置換C
-Cアルキニルである。
Bxは、複素環式塩基部分であり、
または、Bxが存在する場合、Bxは、複素環式塩基部分であり、Bxは、H、C-Cアルキル、置換C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、置換C-Cアルコキシ、C-Cアルケニル、置換C-Cアルケニル、C-Cアルキニルまたは置換C-Cアルキニルであり、
、J、J及びJはそれぞれ独立して、H、ハロゲン、C-Cアルキル、置換C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、置換C-Cアルコキシ、C-Cアルケニル、置換C-Cアルケニル、C-Cアルキニルまたは置換C-Cアルキニルであり、
またはJは、JまたはJの1つと架橋を形成し、ここで、前記架橋は、O、S、NR19、C(R20)(R21)、C(R20)=C(R21)、C[=C(R20)(R21)]及びC(=O)から選択される1~3個の連結されたビラジカル基を含み、他のJ、J及びJの2つはそれぞれ独立して、H、ハロゲン、C-Cアルキル、置換C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、置換C-Cアルコキシ、C-Cアルケニル、置換C-Cアルケニル、C-Cアルキニルまたは置換C-Cアルキニルであり、
19、R20及びR21はそれぞれ独立して、H、C-Cアルキル、置換C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、置換C-Cアルコキシ、C-Cアルケニル、置換C-Cアルケニル、C-Cアルキニルまたは置換C-Cアルキニルである。
Gは、H、OH、ハロゲンまたはO-[C(R)(R)]-[(C=O)-X-Zであり、
及びRはそれぞれ独立して、H、ハロゲン、C-Cアルキル、置換C-Cアルキルであり、
はO、SまたはN(E)であり、
Zは、H、ハロゲン、C-Cアルキル、置換C-Cアルキル、C-Cアルケニル、置換C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、置換C-Cアルキニル、またはN(E)(E)であり、
、E及びEはそれぞれ独立して、H、C-Cアルキル、または置換C-Cアルキルであり、
nは1~約6であり、
mは0または1であり、
jは0または1であり、
各置換基は、ハロゲン、OJ、N(J)(J)、=NJ、SJ、N、CN、OC(=X)J、OC(=X)N(J)(J)及びC(=X)N(J)(J)から独立して選択される1つまたは複数の任意に保護される置換基を含み、
はO、SまたはNJであり、
、J及びJはそれぞれ独立して、HまたはC-Cアルキルであり、
jが1である場合、ZはハロゲンまたはN(E)(E)以外であり、
ここで、該オリゴマー化合物は、8~40個のモノマーサブユニットを含み、標的核酸の少なくとも一部とハイブリダイズ可能である。
【0187】
特定の実施形態において、MはO、CH=CH、OCHまたはOC(H)(Bx)である。特定の実施形態において、MはOである。
【0188】
特定の実施形態では、はJ、J、J及びJそれぞれHである。特定の実施形態では、Jは、JまたはJの1つと架橋を形成する。
【0189】
特定の実施形態において、Aは次の式の1つを有する。
【化8】
式中、
及びQはそれぞれ独立して、H、ハロゲン、C-Cアルキル、置換C-Cアルキル、C-Cアルコキシまたは置換C-Cアルコキシである。特定の実施形態では、Q及びQはそれぞれHである。特定の実施形態では、Q及びQはそれぞれ独立して、Hまたはハロゲンである。特定の実施形態では、Q及びQはHであり、Q及びQの他は、F、CHまたはOCHである。
【0190】
特定の実施形態において、Tは以下の式を有する。
【化9】
式中、
及びRはそれぞれ独立して、保護ヒドロキシル、保護チオール、C-Cアルキル、置換C-Cアルキル、C-Cアルコキシまたは置換C-Cアルコキシ、保護アミノまたは置換アミノであり、
はOまたはSである。特定の実施形態では、RはOであり、R及びRはそれぞれ独立して、OCH、OCHCHまたはCH(CHである。
【0191】
特定の実施形態では、Gは、ハロゲン、OCH、OCHF、OCHF、OCF、OCHCH、O(CHF、OCHCHF、OCHCF、OCH-CH=CH、O(CH-OCH、O(CH-SCH、O(CH-OCF、O(CH-N(R10)(R11)、O(CH-ON(R10)(R11)、O(CH-O(CH-N(R10)(R11)、OCHC(=O)-N(R10)(R11)、OCHC(=O)-N(R12)-(CH-N(R10)(R11)またはO(CH-N(R12)-C(=NR13)[N(R10)(R11)]であり、ここで、R10、R11、R12及びR13はそれぞれ独立して、HまたはC-Cアルキルである。特定の実施形態では、Gは、ハロゲン、OCH、OCF、OCHCH、OCHCF、OCH-CH=CH、O(CH-OCH、O(CH-O(CH-N(CH、OCHC(=O)-N(H)CH、OCHC(=O)-N(H)-(CH-N(CHまたはOCH-N(H)-C(=NH)NHである。特定の実施形態では、GはF、OCHまたはO(CH-OCHである。特定の実施形態では、GはO(CH-OCHである。
【0192】
特定の実施形態において、5’-末端ヌクレオシドは式IIeを有する。
【化10】
【0193】
特定の実施形態において、ssRNAに特に適しているものを含むアンチセンス化合物は、定義されたパターンまたは糖修飾モチーフでオリゴヌクレオチドまたはその領域に沿って配置された1つまたは複数の型の修飾糖部分及び/または天然糖部分を含む。そのようなモチーフは、本明細書で考察される糖修飾及び/または他の既知の糖修飾のうちのいずれかを含み得る。
【0194】
特定の実施形態において、オリゴヌクレオチドは、均一な糖修飾を有する領域を含むか、またはそれから成る。特定のそのような実施形態において、領域の各ヌクレオシドは、同じRNA様糖修飾を含む。特定の実施形態において、領域の各ヌクレオシドは2’-Fヌクレオシドである。特定の実施形態において、領域の各ヌクレオシドは2’-OMeヌクレオシドである。特定の実施形態において、領域の各ヌクレオシドは2’-MOEヌクレオシドである。特定の実施形態において、領域の各ヌクレオシドはcEtヌクレオシドである。特定の実施形態において、領域の各ヌクレオシドはLNAヌクレオシドである。特定の実施形態において、均一な領域はオリゴヌクレオチドの全てまたは本質的に全てを構成する。特定の実施形態において、領域は1~4個の末端ヌクレオシドを除きオリゴヌクレオチド全体を構成する。
【0195】
特定の実施形態において、オリゴヌクレオチドは、ヌクレオシドが第1型の糖修飾を有するヌクレオチドと第2型の糖修飾を有するヌクレオチドとの間で交互に並ぶ1つまたは複数の交互糖修飾領域を含む。特定の実施形態において、両方の型のヌクレオシドはRNA様ヌクレオシドである。特定の実施形態において、交互ヌクレオシドは、2’-OMe、2’-F、2’-MOE、LNA、及びcEtから選択される。特定の実施形態において、交互の修飾は、2’-F及び2’-OMeである。そのような領域は、連続していてもよく、または異なる修飾ヌクレオシドまたは共役ヌクレオシドによって中断されていてもよい。
【0196】
特定の実施形態において、交互修飾の交互領域はそれぞれ単一のヌクレオシドから成る(すなわち、パターンは(AB)であり、ここで、Aは第1の型の糖修飾を有するヌクレオシドであり、Bは第2の型の糖修飾を有するヌクレオシドであり、xは1~20であり、yは0または1である)。特定の実施形態において、交互のモチーフ内の1つまたは複数の交互領域は、1超の型のヌクレオシドを含む。例えば、オリゴヌクレオチドは、以下のヌクレオシドモチーフのいずれかの1つまたは複数の領域を含むことができ、:AABBAA、
ABBABB、
AABAAB、
ABBABAABB、
ABABAA、
AABABAB、
ABABAA、
ABBAABBABABAA、
BABBAABBABABAA、または
ABABBAABBABABAA、
式中、Aは第1の型のヌクレオシドであり、Bは第2の型のヌクレオシドでる。特定の実施形態において、A及びBはそれぞれ2’-F、2’-OMe、BNA、及びMOEから選択される。
【0197】
特定の実施形態において、そのような交互のモチーフを有するオリゴヌクレオチドは、修飾された5’末端ヌクレオシド、例えば、式IIcまたはIIeのヌクレオシドも含む。
【0198】
特定の実施形態において、オリゴヌクレオチドは、2-2-3モチーフを有する領域を含む。
そのような領域は以下のモチーフ:
-(A)-(B)-(A)-(C)-(A)-を含み、
式中、Aは第1型の修飾ヌクレオシドであり、
B及びCは、Aとは異なって修飾されたヌクレオシドであるが、B及びCは、互いに同じまたは異なる修飾を有していてもよく、
x及びyは1~15である。
【0199】
特定の実施形態において、Aは2’-OMe修飾ヌクレオシドである。特定の実施形態において、B及びCは両方とも2’-F修飾ヌクレオシドである。特定の実施形態において、Aは2’-OMe修飾ヌクレオシドであり、B及びCは両方とも2’-F修飾ヌクレオシドである。
【0200】
特定の実施形態において、オリゴヌクレオシドは以下の糖モチーフ:
5’-(Q)-(AB)-(D)
を有し、式中、
Qは、安定化リン酸部分を含むヌクレオシドである。
特定の実施形態において、Qは、式IIcまたはIIeを有するヌクレオシドであり、
Aは第1型の修飾ヌクレオシドであり、
Bは第2型の修飾ヌクレオシドであり、
Dは、それに隣接するヌクレオシドとは異なる修飾を含む修飾ヌクレオシドである。
したがって、yが0の場合、DにはBとは異なる修飾をしなければならず、yが1の場合、DにはAとは異なる修飾をしなければならない。
特定の実施形態では、Dは、AともBとも異なる。
Xは5~15であり、
Yは0または1であり、
Zは0~4である。
特定の実施形態において、オリゴヌクレオシドは以下の糖モチーフ:
5’-(Q)-(A)-(D)
を有し、式中、
Qは、安定化リン酸部分を含むヌクレオシドである。
特定の実施形態において、Qは、式IIcまたはIIeを有するヌクレオシドであり、
Aは第1型の修飾ヌクレオシドであり、
Dは、Aとは異なる修飾を含む修飾ヌクレオシドである。
Xは11~30であり、
Zは0~4である。
【0201】
特定の実施形態において、上記モチーフのA、B、C及びDは、2’-OMe、2’-F、2’-MOE、LNA、及びcEtから選択される。特定の実施形態において、Dは末端ヌクレオシドを表す。特定の実施形態において、このような末端ヌクレオシドは、標的核酸にハイブリダイズするようには設計されていない(ただし、1つまたは複数は偶然にハイブリダイズし得る)。特定の実施形態において、各Dヌクレオシドの核酸塩基は、標的核酸の対応する位置における核酸塩基の同一性に関わらず、アデニンである。特定の実施形態において、各Dヌクレオシドの核酸塩基はチミンである。
【0202】
特定の実施形態において、ssRNAとしての使用に特に適しているものを含むアンチセンス化合物は、定義されたパターンまたは修飾ヌクレオシド間結合モチーフでオリゴヌクレオチドまたはその領域に沿って配置された修飾ヌクレオシド間結合を含む。特定の実
施形態において、オリゴヌクレオチドは、交互のヌクレオシド間結合モチーフを有する領域を含む。特定の実施形態において、オリゴヌクレオチドは、均一に修飾されたヌクレオシド間結合の領域を含む。特定のそのような実施形態において、オリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合によって均一に連結された領域を含む。特定の実施形態において、オリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合によって均一に連結される。特定の実施形態において、オリゴヌクレオチドの各ヌクレオシド間結合は、ホスホジエステル及びホスホロチオエートから選択される。特定の実施形態において、オリゴヌクレオチドの各ヌクレオシド間結合は、ホスホジエステル及びホスホロチオエートから選択され、少なくとも1個のヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエートである。
【0203】
特定の実施形態において、オリゴヌクレオチドは、少なくとも6個のホスホロチオエートヌクレオシド間結合を含む。特定の実施形態において、オリゴヌクレオチドは、少なくとも8個のホスホロチオエートヌクレオシド間結合を含む。特定の実施形態において、オリゴヌクレオチドは、少なくとも10個のホスホロチオエートヌクレオシド間結合を含む。特定の実施形態において、オリゴヌクレオチドは、少なくとも6個の連続したホスホロチオエートヌクレオシド間結合の少なくとも1個のブロックを含む。特定の実施形態において、オリゴヌクレオチドは、少なくとも8個の連続したホスホロチオエートヌクレオシド間結合の少なくとも1個のブロックを含む。特定の実施形態において、オリゴヌクレオチドは、少なくとも10個の連続したホスホロチオエートヌクレオシド間結合の少なくとも1個のブロックを含む。特定の実施形態において、オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの12個の連続したホスホロチオエートヌクレオシド間結合の少なくとも1個のブロックを含む。特定のそのような実施形態において、少なくとも1個のそのようなブロックは、オリゴヌクレオチドの3’末端に位置する。特定のそのような実施形態において、少なくとも1個のそのようなブロックがオリゴヌクレオチドの3’末端から3ヌクレオシド以内に位置する。
【0204】
本明細書に記載の種々の糖モチーフのいずれかを有するオリゴヌクレオチドは、任意の連結モチーフを有してもよい。例えば、上記のオリゴヌクレオチドを含むがそれらに限定されないオリゴヌクレオチドは、以下の表から非限定的に選択される結合モチーフを有してもよい。
【表1】
【0205】
ii.siRNA化合物
特定の実施形態において、アンチセンス化合物は二本鎖RNAi化合物(siRNA)である。そのような実施形態おいて、一方または両方の鎖は、ssRNAについて上記の任意の修飾モチーフを含み得る。特定の実施形態において、ssRNA化合物は非修飾RNAであってもよい。特定の実施形態において、siRNA化合物は、未修飾RNAヌクレオシドを含むが、修飾ヌクレオシド間結合を含み得る。
【0206】
いくつかの実施形態は、各鎖が1つまたは複数の修飾されたまたは修飾されていないヌクレオシドの位置によって定義されるモチーフを含む二本鎖組成物に関する。特定の実施形態において、完全にまたは少なくとも部分的にハイブリダイズして二重鎖領域を形成し、さらに核酸標的に相補的であり、核酸標的にハイブリダイズする領域を含む第1及び第2のオリゴマー化合物を含む組成物が提供される。このような組成物は、核酸標的に対し
て完全または部分的相補性を有するアンチセンス鎖である第1のオリゴマー化合物と、第1のオリゴマー化合物と少なくとも1つの二本鎖領域を形成し、かつそれと相補性である1つまたは複数の領域を有するセンス鎖である第2のオリゴマー化合物と、を含むことが適切である。
【0207】
いくつかの実施形態の組成物は、核酸標的にハイブリダイズすることによって遺伝子発現を調節し、その結果、その正常な機能が失われる。いくつかの実施形態において、標的核酸はTMPRSS6である。特定の実施形態において、標的TMPRSS6の分解は、本発明の組成物で形成される活性化RISC複合体によって促進される。
【0208】
いくつかの実施形態は、鎖の1つが、例えば、RISC(または切断)複合体への反対鎖の優先的ローディングに影響を及ぼすのに有用な二本鎖組成物に関する。組成物は、選択された核酸分子を標的化し、1つまたは複数の遺伝子の発現を調節するのに有用である。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、標的RNAの一部にハイブリダイズし、その結果、標的RNAの正常な機能が失われる。
【0209】
特定の実施形態は、両方の鎖がヘミマーモチーフ、完全修飾モチーフ、位置修飾モチーフまたは交互モチーフを含む二本鎖組成物を対象とする。本発明の組成物の各鎖は、例えばsiRNA経路において特定の役割を果たすように修飾することができる。各鎖において異なるモチーフを使用することにより、または各鎖において異なる化学修飾を有する同じモチーフを使用することにより、センス鎖の取り込みを阻害しながらRISC複合体に対するアンチセンス鎖を標的とすることが可能になる。このモデル内では、各鎖は、その特定の役割のために強化されるように、独立して修飾することができる。アンチセンス鎖は、RISCの1つの領域におけるその役割を強化するために5’末端で修飾することができ、3’末端にはRISCの異なる領域におけるその役割を強化するために異なった修飾を行うことができる。
【0210】
二本鎖オリゴヌクレオチド分子は、自己相補的センス領域及びアンチセンス領域を含む二本鎖ポリヌクレオチド分子で有り得、ここでアンチセンス領域は、標的核酸分子またはその一部のヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列、及び標的核酸配列またはその一部に対応するヌクレオチド配列を有するセンス領域を含む。二本鎖オリゴヌクレオチド分子は、一方のストランドがセンス鎖であり、他方がアンチセンス鎖である2つの別々のオリゴヌクレオチドから構築されてもよく、この場合、アンチセンス及びセンス鎖は、自己相補的であり(すなわち、各ストランドが、他方のストランドのヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列を含む)、例えば、アンチセンス鎖及びセンス鎖が二本鎖または二本鎖構造を形成する場合、例えば、二本鎖領域(double-stranded region)は、約15~約30、例えば、約15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30塩基対であり、アンチセンス鎖は、標的核酸分子またはその一部分のヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列を含み、センス鎖は、標的核酸配列またはその一部分に対応するヌクレオチド配列を含む(例えば、二本鎖オリゴヌクレオチド分子の約15~約25以上のヌクレオチドが、標的核酸またはその一部分に相補的である)。あるいは、二本鎖オリゴヌクレオチドは、単一のオリゴヌクレオチドから構築され、ここでsiRNAの自己相補的センス領域及びアンチセンス領域は、核酸ベースまたは非核酸ベースのリンカー(単数または複数)によって連結される。
【0211】
二本鎖オリゴヌクレオチドは、二本鎖、非対称二重鎖、ヘアピンまたは非対称ヘアピン二次構造を有するポリヌクレオチドであり得、自己相補的センス及びアンチセンス領域を有するが、この場合、アンチセンス領域は、別個の標的核酸分子またはその一部のヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列、及び標的核酸配列またはその一部に対応するヌ
クレオチド配列を有するセンス領域を含む。二本鎖オリゴヌクレオチドは、2つ以上のループ構造及び自己相補的なセンス及びアンチセンス領域を含む基部を有する環状単鎖ポリヌクレオチドであってもよく、アンチセンス領域は、標的核酸分子またはその一部分のヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列を含み、センス領域は、標的核酸配列またはその一部分に対応するヌクレオチド配列を有し、環状ポリヌクレオチドは、RNAiを媒介することができる活性siRNA分子を生成するように、in vivoまたはin vitroのいずれかでプロセッシングされ得る。
【0212】
特定の実施形態において、二本鎖オリゴヌクレオチドは、別々のセンス及びアンチセンス配列または領域を含むが、この場合、センス及びアンチセンス領域は、当分野で知られているようにヌクレオチドまたは非ヌクレオチドリンカー分子によって共有結合的に連結されるか、または代替的にイオン性相互作用、水素結合、ファンデルワールス相互作用、疎水性相互作用、及び/またはスタッキング相互作用によって非共有結合的に連結される。特定の実施形態において、二本鎖オリゴヌクレオチドは、標的遺伝子のヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列を含む。別の実施形態において、二本鎖オリゴヌクレオチドは、標的遺伝子の発現の阻害を引き起こす様式で標的遺伝子のヌクレオチド配列と相互作用する。
【0213】
本明細書で使用される二本鎖オリゴヌクレオチドは、RNAのみを含む分子に限定される必要はないが、化学的に修飾されたヌクレオチド及び非ヌクレオチドをさらに包含する。特定の実施形態において、短い干渉核酸分子は、2’-ヒドロキシ(2’-OH)含有ヌクレオチドを欠いている。特定の実施形態において、短い干渉核酸は、任意にいかなるリボヌクレオチド(例えば、2’-OH基を有するヌクレオチド)も含まない。しかし、RNAiを支持するために分子内にリボヌクレオチドの存在を必要としないそのような二本鎖オリゴヌクレオチドは、2’-OH基を有する1つまたは複数のヌクレオチドを含む、結合した1つのリンカーもしくは複数のリンカー、または他の結合もしくは会合した基、部分、もしくは鎖を有してもよい。任意に、二本鎖オリゴヌクレオチドは、約5,10,20,30,40、または50%のヌクレオチド位置でリボヌクレオチドを含み得る。本明細書で使用されるsiRNAという用語は、配列特異的RNAi、例えば、低分子干渉RNA(siRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)、マイクロRNA(miRNA)、短ヘアピンRNA(shRNA)、低分子干渉オリゴヌクレオチド、低分子干渉核酸、低分子干渉修飾オリゴヌクレオチド、化学修飾siRNA、転写後遺伝子サイレンシングRNA(ptgsRNA)、及びその他を媒介することが可能である核酸分子を説明するために使用される他の用語と同等であることを意味する。さらに、本明細書で使用されるRNAiという用語は、転写後遺伝子サイレンシング、翻訳阻害、またはエピジェネティクス等の配列特異的RNA干渉を説明するために使用される他の用語と同等であることを意味する。例えば、二本鎖オリゴヌクレオチドを、転写後レベル及び転写前レベルの両方で後成的に沈黙化された遺伝子に使用することができる。非限定的な例において、本発明のsiRNA分子による遺伝子発現の後成的な調節は、遺伝子発現を変化させるためのクロマチン構造またはメチル化パターンのsiRNA媒介性修飾に起因し得る(例えば、Verdel et al.,2004,Science,303,672-676、Pal-Bhadra et al.,2004,Science,303,669-672、Allshire,2002,Science,297,1818-1819、;Volpe et al.,2002,Science,297,1833-1837、Jenuwein,2002,Science,297,2215-2218、及びHall
et al.,2002,Science,297,2232-2237を参照)。
【0214】
本明細書で提供されるいくつかの実施形態の化合物及び組成物は、例えば、自己相補的配列を有する単一のRNA鎖が二本鎖構造をとることのできる「ヘアピン」またはステムループ二本鎖RNAエフェクター分子または2つの別々のRNA鎖を含む二重鎖dsRN
Aエフェクター分子を含むdsRNA媒介遺伝子サイレンシングまたはRNAiメカニズムにより、TMPRSS6を標的とすることができることが企図される。様々な実施形態において、dsRNAは、完全にリボヌクレオチドから成るか、または例えば2000年4月19日に出願されたWO00/63364、もしくは1999年4月21日に出願された米国特許出願第60/130,377号により開示されるRNA/DNAハイブリッド等のリボヌクレオチドとデオキシヌクレオチドとの混合物から成る。dsRNAまたはdsRNAエフェクター分子は、分子の1つのセグメントのヌクレオチドが分子の別のセグメントのヌクレオチドと塩基対を形成するように、自己相補性の領域を有する単一の分子であってもよい。様々な実施形態において、単一分子から成るdsRNAは、完全にリボヌクレオチドから成るか、またはデオキシリボヌクレオチドの領域に相補的なリボヌクレオチドの領域を含む。あるいは、dsRNAは、互いに相補的な領域を有する2つの異なる鎖を含み得る。
【0215】
様々な実施形態において、両方の鎖は完全にリボヌクレオチドからなり、一方の鎖は完全にリボヌクレオチドからなり、一方の鎖は完全にデオキシリボヌクレオチドから成るか、または一方または両方の鎖はリボヌクレオチドとデオキシリボヌクレオチドとの混合物を含む。特定の実施形態において、相補性の領域は、互いに対してかつ標的核酸配列に対して、少なくとも70、80、90、95、98、または100%相補的である。特定の実施形態において、二本鎖構造内に存在するdsRNAの領域は、少なくとも19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、50、75,100、200、500、1000、2000または5000ヌクレオチドを含むか、またはdsRNAに表されるcDNAまたは他の標的核酸配列中の全てのヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、dsRNAは、一本鎖末端等のいかなる一本鎖領域を含有しないか、またはdsRNAはヘアピンである。他の実施形態において、dsRNAは、1つまたは複数の一本鎖領域またはオーバーハングを有する。特定の実施形態において、RNA/DNAハイブリッドは、アンチセンス鎖または領域であるDNA鎖または領域(例えば、標的核酸に対して少なくとも70、80、90、95、98、または100%の相補性を有する)及びRNA鎖またはセンス鎖もしくは領域である領域(例えば、標的核酸に対して少なくとも70、80、90、95、98、または100%の同一性を有する)を含み、逆もまた同様である。
【0216】
様々な実施形態において、RNA/DNAハイブリッドは、本明細書に記載のものまたは2000年4月19日に出願されたWO00/63364、または1999年4月21日に出願された米国特許出願第60/130,377号に記載されたもの等の酵素的または化学的合成方法を使用してin vitroで作製される。他の実施形態において、in vitroで合成されたDNA鎖は、in vivoまたはin vitroで作製されたRNA鎖と、DNA鎖の細胞への形質転換の前、後または同時に複合化される。他の実施形態では、dsRNAは、センス及びアンチセンス領域を含む単一環状核酸であるか、dsRNAは、環状核酸、及び第2の環状核酸もしくは線状核酸のいずれかを含む(例えば、2000年4月19日に出願されたWO00/63364、または1999年4月21日に出願された米国特許出願第60/130,377号を参照のこと)。例示的な環状核酸には、ヌクレオチドの遊離5’ホスホリル基がループバック様式で別のヌクレオチドの2’ヒドロキシル基に連結されるラリアト構造が含まれる。
【0217】
他の実施形態において、該dsRNAは、対応する2’位が水素またはヒドロキシル基を含有する対応するdsRNAと比較して、糖の2’位がハロゲン(フッ素基等)を含むか、またはin vitroもしくはin vivoでdsRNAの半減期を増加させるアルコキシ基(例えば、メトキシ基)を含む1つまたは複数の修飾ヌクレオチドを含む。さらに他の実施形態において、dsRNAは、天然に存在するホスホジエステル結合以外の隣接するヌクレオチド間に1つまたは複数の結合を含む。そのような結合の例には、ホ
スホラミド、ホスホロチオエート、及びホスホロジチオエート結合が含まれる。dsRNAはまた、米国特許第6,673,661号に教示されているような化学的に修飾された核酸分子であってもよい。他の実施形態において、dsRNAは、例えば2000年4月19日に出願されたWO00/63364、または1999年4月21日に出願された米国特許出願第60/130,377号で開示される通り、1つまたは2つのキャップ鎖を含有する。
【0218】
他の実施形態において、dsRNAは、米国仮特許出願第60/399,998号、米国仮特許出願第60/419,532号、及びPCT/US2003/033466に記載のdsRNA分子と同様に、少なくとも部分的にWO00/63364に開示されるdsRNA分子のいずれかであり得、その教示は参照により本明細書に組み込まれる。該dsRNAのいずれかは、本明細書に記載の方法またはWO00/63364に記載されているような標準的方法を用いて、in vitroまたはin vivoで発現させることができる。
【0219】
占有
特定の実施形態において、アンチセンス化合物は、RNase Hを介して切断または標的核酸を生じさせる、またはRISC経路を介する切断または隔離をもたらすと予想されない。特定のそのような実施形態において、アンチセンス活性は、ハイブリダイズしたアンチセンス化合物の存在が標的核酸の活性を妨害する占有から生じ得る。特定のそのような実施形態において、アンチセンス化合物は均一に修飾されていてもよく、または修飾及び/または修飾ヌクレオシド及び未修飾ヌクレオシドの混合物を含んでいてもよい。
【0220】
標的核酸、標的領域及びヌクレオチド配列
TMPRSS6をコードするヌクレオチド配列は、以下に記載の配列を有するが、これらに限定されない:GenBank寄託番号NM_153609.2(配列番号1として本明細書に組み込まれる)、16850000~16897000を切断したGENBANK寄託番号NT_011520.12の成分(配列番号2として本明細書に組み込まれる)、GENBANK寄託番号CR456446.1(配列番号3として本明細書に組み込まれる)、GENBANK寄託番号BC039082.1(配列番号4として本明細書に組み込まれる)、GENBANK寄託番号AY358398.1(配列番号5として本明細書に組み込まれる)、またはGENBANK寄託番号DB081153.1(配列番号6として本明細書に組み込まれる)。特定の実施形態では、本明細書に記載のアンチセンス化合物は、TMPRSS6をコードする核酸を標的とする。特定の実施形態では、本明細書に記載のアンチセンス化合物は、配列番号1~6のいずれかの配列を標的とする。
【0221】
本明細書に含まれる例の各配列番号に記載される配列は、糖部分に対する任意の修飾、ヌクレオシド間結合、または核酸塩基に対する任意の修飾に依存しないことが理解される。このように、配列番号によって定義されたアンチセンス化合物は、独立して、糖部分に対する1つまたは複数の修飾、ヌクレオシド間結合、または核酸塩基を含むことができる。Isis番号(ISIS番号)によって定義されるアンチセンス化合物は、核酸塩基配列及びモチーフの組み合わせを示す。
【0222】
特定の実施形態において、標的領域は、標的核酸の構造的に定義された領域である。例えば、標的領域は、3’UTR、5’UTR、エクソン、イントロン、エキソン/イントロン接合部、コーディング領域、翻訳開始領域、翻訳終結領域、または他の定義された核酸領域を含んでいてもよい。TMPRSS6の構造的に定義された領域は、NCBI等の配列データベースからの寄託番号によって得ることができ、そのような情報は、参照により本明細書に組み込まれる。特定の実施形態において、標的領域は、標的領域内の1つの標的セグメントの5’標的部位から、標的領域内の別の標的セグメントの3’標的部位ま
での配列を含んでいてもよい。
【0223】
特定の実施形態において、「標的セグメント」は、核酸内の標的領域のより小さなサブ部分である。例えば、「標的セグメント」とは、1つまたは複数のアンチセンス化合物が標的とする標的核酸のヌクレオチドの配列で有り得る。「5’標的部位」は、標的セグメントの5’末端のヌクレオチドを指す。「3’標的部位」は、標的セグメントの3’末端のヌクレオチドを指す。
【0224】
標的化は、所望の効果が生じるように、アンチセンス化合物がハイブリダイズする少なくとも1つの標的セグメントの決定を含む。特定の実施形態において、所望の効果は、mRNA標的核酸レベルの減少である。特定の実施形態において、所望の効果は、標的核酸または標的核酸に関連する表現型の変化によりコードされるタンパク質のレベルの減少である。
【0225】
標的領域は、1つまたは複数の標的セグメントを含んでいてもよい。標的領域内の複数の標的セグメントは重複してもよい。あるいは、それらは重複していなくてもよい。特定の実施形態において、標的領域内の標的セグメントは、約300個以下のヌクレオチドにより分離される。特定の実施形態において、標的領域内の標的セグメントは、いくつかのヌクレオチドによって分離され、すなわち、標的核酸上の約250、200、150、100、90、80、70、60、50、40、30、20、または10個のヌクレオチド、250、200、150、100、90、80、70、60、50、40、30、20、または10個以下のヌクレオチド、約250、200、150、100、90、80、70、60、50、40、30、20、または10個以下のヌクレオチド、または前述の値のいずれか2つによって定義される範囲のヌクレオチドで分離される。特定の実施形態において、標的領域内の標的セグメントは、標的核酸上の5個以下のヌクレオチド、または約5個のヌクレオチドで分離される。特定の実施形態において、標的セグメントは連続する。本明細書に列挙される5’標的部位または3’標的部位のいずれかである開始核酸を有する範囲によって定義される標的領域が意図される。
【0226】
適切な標的セグメントは、5’UTR、コーディング領域、3’UTR、イントロン、エキソン、またはエキソン/イントロン接合内に見出すことができる。開始コドンまたは終止コドンを含む標的セグメントも、適切な標的セグメントである。適切な標的セグメントは、特に、開始コドンまたは終始コドン等の特定の構造的に定義された領域を除外してもよい。
【0227】
適切な標的セグメントの決定は、ゲノム全体にわたる、標的核酸の配列と他の配列との比較を含むことができる。例えば、BLASTアルゴリズムは、異なる核酸間の類似性の領域を同定するために使用することができる。この比較により、選択された標的核酸(すなわち、非標的またはオフターゲット配列)以外の配列に非特異的にハイブリダイズし得るアンチセンス化合物配列を選択することを防ぐことができる。
【0228】
活性標的領域内のアンチセンス化合物の(例えば、標的核酸レベルの減少率によって定義されているように)活性の変化があり得る。特定の実施形態において、TMPRSS6mRNAレベルの減少は、TMPRSS6発現の阻害の指標となる。TMPRSS6タンパク質のレベルの減少は、TMPRSS6発現の阻害の指標にもなる。さらに、表現型の変化は、TMPRSS6発現の阻害の指標となる。例えば、ヘプシジン発現レベルの増加は、TMPRSS6発現の阻害を示すことができる。別の例では、組織中の鉄蓄積の減少は、TMPRSS6発現の阻害を示すことができる。別の例では、トランスフェリンの飽和度の減少は、TMPRSS6発現の阻害を示すことができる。
【0229】
ハイブリダイゼーション
いくつかの実施形態において、本明細書に開示するアンチセンス化合物とTMPRSS6核酸との間でハイブリダイゼーションが起こる。最も一般的なハイブリダイゼーションのメカニズムは、核酸分子の相補的核酸塩基間での水素結合形成(例えばワトソン-クリック型、フーグスティーン型または逆フーグスティーン型水素結合形成)を伴う。
【0230】
ハイブリダイゼーションは、様々な条件下で起こり得る。ストリンジェントな条件は配列依存的であり、ハイブリダイズさせようとする核酸分子の性質及び組成によって決定する。
【0231】
配列が標的核酸に特異的にハイブリダイズ可能であるかどうかを決定する方法は、当該業界において公知である(Sambrook and Russell,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd Ed.,2001)。特定の実施形態において、本明細書中に提供するアンチセンス化合物は、TMPRSS6核酸と特異的にハイブリダイズする。
【0232】
相補性
アンチセンス化合物の十分な数の核酸塩基が、標的核酸の対応する核酸塩基と水素結合することができ、それにより所望の効果(例えばTMPRSS6核酸等の標的核酸のアンチセンス阻害)が生じることになる場合、そのアンチセンス化合物と標的核酸とは互いに相補的である。
【0233】
アンチセンス化合物とTMPRSS6核酸との間の非相補的な核酸塩基は、アンチセンス化合物が、依然としてTMPRSS6核酸に特異的にハイブリダイズすることができれば、耐容性を示すことができる。さらにアンチセンス化合物は、介在セグメントまたは隣接セグメントがハイブリダイゼーション事象に関与しないように、TMPRSS6の1つまたは複数のセグメントにハイブリダイズしてもよい(例えばループ構造、ミスマッチ、またはヘアピン構造)。
【0234】
特定の実施形態において、本明細書中に提供するアンチセンス化合物またはその特定部分は、TMPRSS6核酸、その標的領域、標的セグメント、または特定部分に対して、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%相補的である。標的核酸に対するアンチセンス化合物の相補性パーセントは、常法を使って決定することができる。例えば、アンチセンス化合物の20核酸塩基中18核酸塩基が標的領域に相補的であり、それゆえに特異的にハイブリダイズするアンチセンス化合物は、90パーセントの相補性を示す。この例では、残りの非相補的核酸塩基はクラスター化してもよいし、残りの非相補的核酸塩基に相補的核酸塩基が散在していてもよく、また、互いに連続している必要も、相補的核酸塩基と連続している必要もない。したがって、標的核酸と完全に相補的な2つの領域と隣接する4つの非相補的核酸塩基を有する18核酸塩基長のアンチセンス化合物は、標的核酸に対して77.8%の総相補性を有し、したがって本発明の範囲に包含される。
【0235】
標的核酸の一領域に対するアンチセンス化合物の相補性パーセントは、通常当技術分野において知られているBLASTプログラム(basic local alignment search tool)及びPowerBLASTプログラム(basic local alignment search tool)及びPowerBLASTプログラム(Altschul et al.,J.Mol.Biol.,1990,21
5,403 410;Zhang and Madden,Genome Res.,1997,7,649 656)を使用して決定することができる。相同性パーセント、配列同一性パーセントまたは配列相補性パーセントは、例えばSmithとWatermanのアルゴリズム(Adv.Appl.Math.,1981,2,482489)を使用するGapプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package,Version 8 for Unix,Genetics Computer Group,University Research Park,Madison Wis.)により、デフォルト設定を使用して決定することができる。
【0236】
特定の実施形態において、本明細書中に提供するアンチセンス化合物またはその特定部分が、標的核酸またはその特定部分に完全に相補的(すなわち100%相補的)である。例えばアンチセンス化合物は、TMPRSS6核酸、またはその標的領域、またはその標的セグメントもしくは標的配列に完全に相補的であり得る。本明細書で使用される「完全に相補的」とは、アンチセンス化合物の各核酸塩基が、標的核酸の対応する核酸塩基と正確に塩基対合できることを意味する。例えば、20核酸塩基アンチセンス化合物は、そのアンチセンス化合物に完全に相補的な標的核酸の対応する20核酸塩基部分が存在する限り、400核酸塩基長の標的配列に対して完全に相補的である。完全に相補的なものもまた、第1及び/または第2核酸の特定部分を参照して使用することもできる。例えば、30核酸塩基アンチセンス化合物の20核酸塩基部分は、400核酸塩基長の標的配列に対して「完全に相補的」であることができる。30核酸塩基オリゴヌクレオチドの20核酸塩基部分は、標的配列が対応する20核酸塩基部分(その各核酸塩基がアンチセンス化合物の該20核酸塩基部分に相補的であるもの)を有する限り、標的配列に対して完全に相補的である。同時に、該30核酸塩基アンチセンス化合物全体は、該アンチセンス化合物の残りの10核酸塩基も標的配列に相補的であるかどうかに応じて、標的配列に対して完全に相補的である場合も、そうでない場合もある。
【0237】
非相補的核酸塩基の場所は、アンチセンス化合物の5’末端または3’末端であることができる。あるいは、非相補的核酸塩基が、アンチセンス化合物の内部位置にあってもよい。2つ以上の非相補的核酸塩基が存在する場合、それらは連続して(すなわち連結されて)いてもよいし、不連続であってもよい。一実施形態において、非相補的核酸塩基が、ギャップマーアンチセンスオリゴヌクレオチドのウイングセグメント内に位置する。
【0238】
特定の実施形態において、12、13、14、15、16、17、18、19、または20核酸塩基長のアンチセンス化合物または最長12、13、14、15、16、17、18、19、または20核酸塩基長のアンチセンス化合物が、TMPRSS6核酸等の標的核酸またはその特定部分と比較して、4つ以下、3つ以下、2つ以下、または1つ以下の非相補的核酸塩基(複数可)を含む。
【0239】
特定の実施形態において、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30核酸塩基長のアンチセンス化合物、または最長12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30核酸塩基長のアンチセンス化合物が、TMPRSS6核酸等の標的核酸またはその特定部分と比較して、6つ以下、5つ以下、4つ以下、3つ以下、2つ以下、または1つ以下の非相補的核酸塩基(複数可)を含む。
【0240】
本明細書に提供するアンチセンス化合物には、標的核酸の一部分に相補的なものも含まれる。本明細書で使用される「一部分」とは、標的核酸の一領域または一セグメント内の定義された数の連続する(すなわち連結された)核酸塩基を指す。「一部分」は、アンチセンス化合物の、定義された数の連続する核酸塩基も指し得る。特定の実施形態において
、アンチセンス化合物が、ある標的セグメントの少なくとも8核酸塩基部分に相補的である。特定の実施形態において、アンチセンス化合物が、ある標的セグメントの少なくとも12核酸塩基部分に相補的である。特定の実施形態において、アンチセンス化合物が、ある標的セグメントの少なくとも15核酸塩基部分に相補的である。ある標的セグメントの少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20核酸塩基部分もしくはそれ以上の核酸塩基部分、またはこれらの値のうちの任意の2つによって画定される範囲に相補的なアンチセンス化合物も企図される。
【0241】
同一性
本明細書中に提供するアンチセンス化合物は、ある特定ヌクレオチド配列、配列番号、もしくは具体的なIsis番号によって表される化合物、またはその一部分に対して、定義された同一性パーセントも有し得る。本明細書で使用されるアンチセンス化合物は、同じ核酸塩基対合能を有する場合、本明細書に開示する配列と同一である。例えば、ウラシルとチミジンはどちらもアデニンと対合するので、開示したDNA配列中のチミジンの代わりにウラシルを含有するRNAは、該DNA配列と同一であるとみなされるであろう。本明細書に記載するアンチセンス化合物の短縮型及び延長型、ならびに本明細書中に提供するアンチセンス化合物と比較して非同一塩基を有する化合物も企図される。非同一塩基は互いに隣接してもよいし、アンチセンス化合物全体に散在していてもよい。アンチセンス化合物のパーセント同一性は、比較対象である配列と比較して同一塩基対合を有する塩基の数に従って計算される。
【0242】
特定の実施形態において、アンチセンス化合物またはその一部分が、本明細書に開示するアンチセンス化合物もしくは配列番号、またはその一部分の1つまたは複数と、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一である。
【0243】
修飾
ヌクレオシドは塩基-糖の組み合わせである。ヌクレオシドの核酸塩基(塩基としても知られる)部分は、通常、複素環式塩基部分である。ヌクレオチドは、ヌクレオシドの糖部分に共有結合で連結されたリン酸基をさらに含むヌクレオシドである。ペントフラノシル糖を含むヌクレオシドの場合は、リン酸基を、糖の2’、3’または5’ヒドロキシル部分に連結することができる。隣接するヌクレオシドを共有結合で互いに連結してオリゴヌクレオチド形成することにより、線状ポリマー状のオリゴヌクレオチドを形成する。一般に、オリゴヌクレオチド構造内では、リン酸基は、オリゴヌクレオチドのヌクレオシド間連結部を形成しているとみなされている。
【0244】
アンチセンス化合物の修飾には、ヌクレオシド間連結部、糖部分、または核酸塩基の置換または改変が包含される。修飾アンチセンス化合物は、例えば、強化された細胞取り込み、核酸標的に対する強化された親和性、ヌクレアーゼの存在下での増加した安定性、増加した阻害活性といった望ましい性質ゆえに、ネイティブ型より好ましいことが多い。
【0245】
化学修飾ヌクレオシドは、短縮型または切断型アンチセンスオリゴヌクレオチドの、その標的核酸に対する結合親和性を増加させるために使用することもできる。結果として、そのような化学修飾ヌクレオシドを有する短いアンチセンス化合物で、匹敵する結果を得ることができる場合が多い。
【0246】
修飾ヌクレオシド間結合
RNA及びDNAの天然に存在するヌクレオシド間連結部は、3’~5’ホスホジエステル連結部である。1つまたは複数の修飾(すなわち天然に存在しない)ヌクレオシド間連結部を有するアンチセンス化合物は、例えば、強化された細胞取り込み、核酸標的に対する強化された親和性、及びヌクレアーゼの存在下での増加した安定性等といった望ましい性質ゆえに、天然に存在するヌクレオシド間連結部を有するアンチセンス化合物よりも選択されることが多い。
【0247】
修飾ヌクレオシド間連結部を有するオリゴヌクレオチドには、リン原子が保持されているヌクレオシド間連結部と、リン原子を有さないヌクレオシド間連結部とが含まれる。代表的なリン含有ヌクレオシド間連結部には、ホスホジエステル、ホスホトリエステル、メチルホスホネート、ホスホラミデート、及びホスホロチオエートが含まれるが、これらに限定されない。リン含有連結部及び非リン含有連結部を調製する方法は、周知である。
【0248】
特定の実施形態において、TMPRSS6核酸を標的とするアンチセンス化合物が、1つまたは複数の修飾ヌクレオシド間連結部を含む。特定の実施形態において、少なくとも1つの修飾ヌクレオシド間連結部がホスホロチオエート連結部である。特定の実施形態において、アンチセンス化合物の各ヌクレオシド間連結部がホスホロチオエートヌクレオシド間連結部である。
【0249】
修飾糖部分
本発明のアンチセンス化合物は、場合によっては、糖基が修飾されているヌクレオシドを1つまたは複数含有し得る。そのような糖修飾ヌクレオシドは、強化されたヌクレアーゼ安定性、増加した結合親和性、または他の何らかの有益な生物学的性質を、アンチセンス化合物に付与し得る。特定の実施形態において、ヌクレオシドが化学修飾リボフラノース環部分を含む。化学修飾リボフラノース環の例には、置換基の付加(5’置換基、2’置換基、非ジェミナル環原子の架橋による二環式核酸(BNA)の形成、S、N(R)、またはC(R)(R)(R,R及びRは、それぞれ独立してH、C-C12アルキルまたは保護基である)によるリボシル環酸素原子の置き換え、及びそれらの組み合わせ等があるが、これらに限定されない。化学修飾糖の例としては、2’-F-5’-メチル置換ヌクレオシド(開示されている他の5’,2’-ビス置換ヌクレオシドについては、PCT国際出願WO2008/101157(公開日2008年8月21日)を参照されたい)、またはSによるリボシル環酸素原子の置き換え及び2’位におけるさらなる置換(米国特許出願公開US2005-0130923(公開日2005年6月16日)参照)、あるいはBNAの5’-置換(PCT国際出願WO2007/134181(公開日2007年11月22日)参照、この場合はLNAが例えば5’-メチル基または5’-ビニル基で置換されている)等がある。
【0250】
修飾された糖部分を有するヌクレオシドの例として、限定されることなく、5’-ビニル、5’-メチル(RまたはS)、4’-S、2’-F、2’-OCH、2’-OCHCH、2’-OCHCHF及び2’-O(CHOCH置換基を含むヌクレオシドが挙げられる。2’位の置換基は、アリル、アミノ、アジド、チオ、O-アリル、O-C-C10アルキル、OCF、OCHF、O(CHSCH、O(CH-O-N(R)(R)、O-CH-C(=O)-N(R)(R)、及びO-CH-C(=O)-N(R)-(CH-N(R)(R)から選択することができ、R、R及びRはそれぞれ独立して、Hまたは置換もしくは非置換C-C10アルキルである。
【0251】
本明細書で使用される「二環式ヌクレオシド」とは、二環式糖部分を含む修飾ヌクレオシドを指す。二環式ヌクレオシド(BNA)の例には、4’リボシル環原子と2’リボシル環原子の間に架橋を含むヌクレオシド等があるが、これらに限定されない。特定の実施
形態では、本明細書で提供されるアンチセンス化合物は、1つまたは複数のBNAヌクレオシドを含み、ここで、架橋は以下の式の1つを含む:4’-(CH)-O-2’(LNA);4’-(CH)-S-2’;4’-(CH-O-2’(ENA);4’-CH(CH)-O-2’(cEt)及び4’-CH(CHOCH)-O-2’(及びその類似体、2008年7月15日に出願された米国特許第7,399,845号を参照のこと);4’-C(CH)(CH)-O-2’(及びその類似体、2009年1月8日に公開されたWO/2009/006478として公開されたPCT/US2008/068922を参照のこと);4’-CH-N(OCH)-2’(及びその類似体、2008年12月11日に公開されたWO/2008/150729として公開されたPCT/US2008/064591を参照のこと);4’-CH-O-N(CH)-2’(2004年9月2日に公開された米国特許第US2004-0171570を参照のこと);4’-CH-N(R)-O-2’、ここでRは、H、C-C12アルキルまたは保護基であり(2008年9月23日に公開された米国特許第7,427,672号を参照のこと);4’-CH-C(H)(CH)-2’(Zhou et al.,J.Org.Chem.,2009,74,118-134を参照のこと);及び4’-CH-C(=CH)-2’(及びその類似体、2008年12月8日に公開されたWO 2008/154401として公表されたPCT/US2008/066154を参照のこと)。
【0252】
さらに二環式ヌクレオシドは、公開された文献に報告されている(例えば、Srivastava et al.,J.Am.Chem.Soc.,2007,129(26)8362-8379、Frieden et al.,Nucleic Acids Research,2003,21,6365-6372、Elayadi et al.,Curr.Opinion Invens.Drugs,2001,2,558-561、Braasch et al.,Chem.Biol.,2001,8,1-7、Orum et al.,Curr.Opinion Mol.Ther.,2001,3,239-243、Wahlestedt et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,2000,97,5633-5638、Singh et al.,Chem.Commun.,1998,4,455-456、Koshkin et al.,Tetrahedron,1998,54,3607-3630、Kumar et al.,Bioorg.Med.Chem.Lett.,1998,8,2219-2222、Singh et al.,J.Org.Chem.,1998,63,10035-10039、米国特許第7,399,845号、同第7,053,207号、同第7,034,133号、同第6,794,499号、同第6,770,748号、同第6,670,461号、同第6,525,191号、同第6,268,490号、米国特許出願公開第US2008-0039618号、同第US2007-0287831号、同第US2004-0171570号、米国特許出願第12/129,154号、同第61/099,844号、同第61/097,787号、同第61/086,231号、同第61/056,564号、同第61/026,998号、同第61/026,995号、同第60/989,574号、国際出願第WO2007/134181号、同第WO2005/021570号、同第WO2004/106356号、同第WO99/14226号、ならびにPCT国際出願第PCT/US2008/068922号、同第PCT/US2008/066154号、及び同第PCT/US2008/064591号を参照されたい)。例えばα-L-リボフラノース及びβ-D-リボフラノース等の1つまたは複数の立体化学的糖配置を有する前述の二環式ヌクレオシドのそれぞれを調製することができる(PCT国際出願PCT/DK98/00393(1999年3月25日に公開されたWO99/14226)を参照されたい)。
【0253】
本明細書で使用される「単環式ヌクレオシド」とは、二環式糖部分ではない修飾糖部分を含むヌクレオシドを指す。特定の実施形態において、ヌクレオシドの糖部分または糖部
分類似体が、任意の位置で修飾または置換されていてもよい。
【0254】
本明細書で使用される「4’-2’二環式ヌクレオシド」または「4’→2’二環式ヌクレオシド」とは、フラノース環の2つの炭素原子をつなぐ架橋を含むフラノース環を含み、該橋が糖環の2’炭素原子と4’炭素原子をつなぐ、二環式ヌクレオシドを指す。
【0255】
特定の実施形態では、BNAヌクレオシドの二環式糖部分として、限定されないが、-[C(R)(R)]-、-C(R)=C(R)-、-C(R)=N-、-C(=NR)-、-C(=O)-、-C(=S)-、-O-、-Si(R-、-S(=O)-、及び-N(R)-であり、ここで、xは0、1、または2であり;nは、1、2、3または4であり;R及びRはそれぞれ独立して、H、保護基、ヒドロキシル、C-C12アルキル、置換C-C12アルキル、C-C12アルケニル、置換C-C12アルケニル、C-C12アルキニル、置換C-C12アルキニル、C-C20アリール、置換C-C20アリール、複素環ラジカル、置換複素環ラジカル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、C-C脂環式ラジカル、置換C-C脂環式ラジカル、ハロゲン、OJ、NJ、SJ、N、COOJ、アシル(C(=O)-H)、置換アシル、CN、スルホニル(S(=O)-J)、またはスルホキシル(S(=O)-J)から独立して選択される1または1~4個の結合基を含む、架橋を限定されることなく含むペントフラノシル糖部分の4’炭素原子と2’炭素原子との間の少なくとも1つの架橋を有する化合物が挙げられる。
【0256】
及びJはそれぞれ独立して、H、C-C12アルキル、置換C-C12アルキル、C-C12アルケニル、置換C-C12アルケニル、C-C12アルキニル、置換C-C12アルキニル、C-C20アリール、置換C-C20アリール、アシル(C(=O)-H)、置換アシル、複素環ラジカル、置換複素環ラジカル、C-C12アミノアルキル、置換C-C12アミノアルキルまたは保護基である。
【0257】
特定の実施形態において、二環式糖部分の架橋は、-[C(R)(R)]-、-[CR)(R)]-O-、-C(R)-N(R)-O-または-C(R)-O-N(R)-である。特定の実施形態では、架橋は、4’-CH-2’、4’-(CH-2’、4’-(CH-2’、4’-CH-O-2’、4’-(CH-O-2’、4’-CH-O-N(R)-2’及び4’-CH-N(R)-O-2’-であり、Rはそれぞれ独立して、H、保護基またはC-C12アルキルである。
【0258】
特定の実施形態において、二環式ヌクレオシドは、異性体構成によってさらに定義される。例えば、4’-(CH)-O-2’架橋を含むヌクレオシドは、α-L配置またはβ-D配置で有り得る。従来、α-L-メチレンオキシ(4’-CH-O-2’)BNAは、以前に、アンチセンスオリゴヌクレオチドに組み込まれており、そのアンチセンスオリゴヌクレオチドはアンチセンス活性を示した(Frieden et al.,Nucleic Acids Research,2003,21,6365-6372)。
【0259】
特定の実施形態では、二環式ヌクレオシドは、4’~2’架橋を有するヌクレオチドであり、ここで、当該架橋として、限定されないが、α-L-4’-(CH)-O-2’、β-D-4’-CH-O-2’、4’-(CH-O-2’、4’-CH-O-N(R)-2’、4’-CH-N(R)-O-2’、4’-CH(CH)-O-2’、4’-CH-S-2’、4’-CH-N(R)-2’、4’-CH-CH(CH)-2’、及び4’-(CH-2’であり、ここでRはH、保護基またはC-C12アルキルが挙げられる。
【0260】
特定の実施形態において、二環式ヌクレオシドは以下の式を有する。
【化11】
式中、
Bxが、複素環式塩基部分であり、
-Q-Q-Q-は、-CH-N(R)-CH-、-C(=O)-N(R)-CH-、-CH-O-N(R)-、-CH-N(R)-O-または-N(R)-O-CHであり、
はC-C12アルキルまたはアミノ保護基であり、かつ
及びTは、それぞれ独立して、H、ヒドロキシル保護基、共役基、反応性リン基、リン部分または支持媒体への共有結合である。
【0261】
特定の実施形態において、二環式ヌクレオシドは以下の式を有する。
【化12】
式中、
Bxが、複素環式塩基部分であり、
及びTは、それぞれ独立して、H、ヒドロキシル保護基、共役基、反応性リン基、リン部分または支持媒体への共有結合であり、
は、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、置換C-Cアルキル、置換C-Cアルケニル、置換C-Cアルキニル、アシル、置換アシル、置換アミド、チオールまたは置換チオールである。
【0262】
一実施形態では、置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン、オキソ、ヒドロキシル、OJ、NJ、SJ、N、OC(=X)J、及びNJC(=X)NJであり、ここで、J、J及びJはそれぞれ独立して、H、C-Cアルキル、または置換C-Cアルキルであり、XはOまたはNJである。
【0263】
特定の実施形態において、二環式ヌクレオシドは以下の式を有する。
【化13】
式中、
Bxが、複素環式塩基部分であり、
及びTは、それぞれ独立して、H、ヒドロキシル保護基、共役基、反応性リン基、リン部分または支持媒体への共有結合であり、
は、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、置換C-Cアルキル、置換C-Cアルケニル、置換C-Cアルキニル、または置換アシル(C(=O)-)である。
【0264】
特定の実施形態において、二環式ヌクレオシドは以下の式を有する。
【化14】
式中、
Bxが、複素環式塩基部分であり、
及びTは、それぞれ独立して、H、ヒドロキシル保護基、共役基、反応性リン基、リン部分または支持媒体への共有結合であり、
は、C-Cアルキル、置換C-Cアルキル、C-Cアルケニル、置換C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、または置換C-Cアルキニルであり、
、q、q及びqはそれぞれ独立して、H、ハロゲン、C-Cアルキル、置換C-Cアルキル、C-Cアルケニル、置換C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、置換C-Cアルキニル、C-Cアルコキシル、置換C-Cアルコキシル、アシル、置換アシル、C-Cアミノアルキルまたは置換C-Cアミノアルキルである。
【0265】
特定の実施形態において、二環式ヌクレオシドは以下の式を有する。
【化15】
式中、
Bxが、複素環式塩基部分であり、
及びTは、それぞれ独立して、H、ヒドロキシル保護基、共役基、反応性リン基、リン部分または支持媒体への共有結合であり、
、q、q及びqはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、C-C12アルキル、置換C-C12アルキル、C-C12アルケニル、置換C-C12アルケニル、C-C12アルキニル、置換C-C12アルキニル、C-C12アルコキシ、置換C-C12アルコキシ、OJ、SJ、SOJ、SO、NJ、N、CN、C(=O)OJ、C(=O)NJ、C(=O)J、O-C(=O)NJ、N(H)C(=NH)NJ、N(H)C(=O)NJまたはN(H)C(=S)NJであり、
またはq及びqは共に=C(q)(q)であり、
及びqはそれぞれ独立して、H、ハロゲン、C-C12アルキル、または置換C-C12アルキルである。
【0266】
オリゴマー化及び核酸認識特性と共に、4’-CH-O-2’架橋を有するアデニン
、シトシン、グアニン、5-メチル-シトシン、チミン及びウラシル二環式ヌクレオシドの合成及び調製が記載されている(Koshkin et al.,Tetrahedron,1998,54,3607-3630)。二環式ヌクレオシドの合成はまた、WO98/39352号及びWO99/14226号に記載されている。
【0267】
4’-CH-O-2’及び4’-CH-S-2’のような4’から2’への架橋基を有する種々の二環式ヌクレオシドの類似体も調製されている(Kumar et al.,Bioorg.Med.Chem.Lett.,1998,8,2219-2222)。核酸ポリメラーゼの基質として使用するための二環式ヌクレオシドを含むオリゴデオキシリボヌクレオチド二本鎖の調製も説明されている(Wengel et al.,WO99/14226)。さらに、新規の構造的に制限された高親和性オリゴヌクレオチド類似体である2’-アミノ-BNAの合成は、当該技術分野において説明されている(Singh et al.,J.Org.Chem.,1998,63,10035-10039)。加えて、2’-アミノ-及び2’-メチルアミノ-BNAも調製されており、相補的なRNA鎖及び相補的DNA鎖を有するそれらの二重鎖の熱安定性が、以前に報告されている。
【0268】
特定の実施形態において、二環式ヌクレオシドは以下の式を有する。
【化16】
式中、
Bxが、複素環式塩基部分であり、
及びTは、それぞれ独立して、H、ヒドロキシル保護基、共役基、反応性リン基、リン部分または支持媒体への共有結合であり、
、q、q及びqはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、C-C12アルキル、置換C-C12アルキル、C-C12アルケニル、置換C-C12アルケニル、C-C12アルキニル、置換C-C12アルキニル、C-C12アルコキシル、置換C-C12アルコキシル、OJ、SJ、SOJ、SO、NJ、N、CN、C(=O)OJ、C(=O)NJ、C(=O)J、O-C(=O)NJ、N(H)C(=NH)NJ、N(H)C(=O)NJまたはN(H)C(=S)NJであり、
及びqまたはq及びqは一緒に=C(q)(q)であり、ここで、q及びqはそれぞれ独立して、H、ハロゲン、C-C12アルキルまたは置換C-C12アルキルである。
【0269】
4’-(CH-2’架橋及びアルケニル類似体架橋4’-CH=CH-CH-2’を有する1つの炭素環式二環式ヌクレオシドが説明されている(Frier et al.,Nucleic Acids Research,1997,25(22),4429-4443、及びAlbaek et al.,J.Org.Chem.,2006,71,7731-7740)。炭素環式二環式ヌクレオシドの合成及び調製も、それらのオリゴマー化及び生化学的研究と共に説明されている(Srivastava et
al.,J.Am.Chem.Soc.2007,129(26),8362-8379)。
【0270】
特定の実施形態において、以下に示すように、二環式ヌクレオシドとして、(A)α-
L-メチレンオキシ(4’-CH-O-2’)BNA、(B)β-D-メチレンオキシ(4’-CH-O-2’)BNA、(C)エチレンオキシ(4’-(CH-O-2’)BNA、(D)アミノオキシ(4’-CH-O-N(R)-2’)BNA、(E)オキシアミノ(4’-CH-N(R)-O-2’)BNA、(F)メチル(メチレンオキシ)(4’-CH(CH)-O-2’)BNA、(拘束エチルまたはcEtとも呼ばれる)、(G)メチレン-チオ(4’-CH-S-2’)BNA、(H)メチレン-アミノ(4’-CH-N(R)-2’)BNA、(I)メチル炭素環(4’-CH-CH(CH)-2’)BNA、(J)プロピレン炭素環(4’-(CH-2’)BNA、及び(K)ビニルBNAが挙げられるが、これらに限定されない。
【化17】
式中、Bxは塩基部分であり、Rは独立して、H、保護基、C-CアルキルまたはC-Cアルコキシである。
【0271】
本明細書で使用される「修飾テトラヒドロピランヌクレオシド」または「修飾THPヌクレオシド」という用語は、通常のヌクレオシド中のペントフラノシル残基の代わりに六員テトラヒドロピラン「糖」が使用されているヌクレオシドを意味し、糖代用物と呼ばれる場合もある。
修飾THPヌクレオシドには、当技術分野においてヘキシトール核酸(HNA)、アニトール(anitol)核酸(ANA)、マニトール(manitol)核酸(MNA)(Leumann,Bioorg.Med.Chem.,2002,10,841-854を参照されたい)またはフルオロHNA(F-HNA)と呼ばれる、以下に示すテトラヒドロピラン環系を有するものが含まれるが、これらに限定されない。
【化18】
【0272】
特定の実施形態において、以下の式を有する糖代用物が選択される。
【化19】
式中、
Bxが、複素環式塩基部分であり、
及びTはそれぞれ、独立して、テトラヒドロピランヌクレオシド類似体をオリゴマー化合物に連結するヌクレオシド間連結基であり、またはT及びTのうちの1つはテトラヒドロピランヌクレオシド類似体をオリゴマー化合物またはオリゴヌクレオチドに連結するヌクレオシド間連結基であり、T及びTの他方は、H、ヒドロキシル保護基、連結共役基または5’もしくは3’末端基であり、
、q、q、q、q、q及びqはそれぞれ独立して、H、C-Cアルキル、置換C-Cアルキル、C-Cアルケニル、置換C-Cアルケニル、C-Cアルキニルまたは置換C-Cアルキニルであり、
及びRの1つは水素であり、他方は、ハロゲン、置換または非置換アルコキシ、NJ、SJ、N、OC(=X)J、OC(=X)NJ、NJC(=X)NJ及びCNであり、ここでXは、O、SまたはNJであり、J、J及びJはそれぞれ独立して、HまたはC-Cアルキルである。
【0273】
特定の実施形態では、q、q、q、q、q、q及びqはそれぞれHである。特定の実施形態では、q、q、q、q、q、q及びqの少なくとも1つは、H以外である。特定の実施形態では、q、q、q、q、q、q及びqの少なくとも1つは、メチルである。特定の実施形態では、THPヌクレオシドを提供し、ここで、R及びRのつはFである。特定の実施形態では、Rはフルオロであり、RはHであり、Rはメトキシであり、RはHであり、Rはメトキシエトキシであり、RはHである。
【0274】
特定の実施形態において、糖代用物が、5超の原子及び1超のヘテロ原子を有する環を含む。例えば、モルホリノ糖部分を含むヌクレオシド、及びオリゴマー化合物におけるそれらの使用が説明されている(例えばBraasch et al.,Biochemistry,2002,41,4503-4510、ならびに及び米国特許第5,698,685号、同第5,166,315号、同第5,185,444号、及び同第5,034,506号を参照されたい)。本明細書で使用される「モルホリノ」という用語は、以下の式を有する糖代用物を意味する。
【化20】
【0275】
特定の実施形態において、例えば、上記モルホリノ構造の様々な置換基を付加するか改変することによって、モルホリノが修飾されていてもよい。そのような糖代用物を本明細書では「修飾モルホリノ」と称される。
【0276】
2’-F-5’-メチル置換ヌクレオシド(他の開示された5’,2’-ビス置換ヌクレオシドについては、2008年8月21日に公開されたPCT国際出願第WO2008
/101157号を参照のこと)、ならびにリボシル環酸素原子のSでの置換及び2’位でのさらなる置換(2005年6月16日に公開された米国特許出願第US2005-0130923号を参照のこと)、または代替として二環式核酸の5’-置換(4’-CH-O-2’二環式ヌクレオシドが5’位で5’-メチルまたは5’-ビニル基でさらに置換される、2007年11月22日に公開されたPCT国際出願第WO2007/134181号を参照のこと)等であるが、これらに限定されない修飾の組み合わせも提供される。炭素環式二環式ヌクレオシドの合成及び調製も、それらのオリゴマー化及び生化学的研究と共に説明されている(Srivastava et al.,J.Am.Chem.Soc.2007,129(26),8362-8379を参照のこと)。
【0277】
特定の実施形態において、アンチセンス化合物が、天然に存在するヌクレオシド中のペントフラノシル残基の代わりに六員シクロヘキセニルを有するヌクレオシドである修飾シクロヘキセニルヌクレオシドを1つまたは複数含む。修飾シクロヘキセニルヌクレオシドとして、当該技術分野において説明されているものが挙げられるが、これらに限定されない(例えば、権利者が共通である、2010年4月10日公開の公開PCT出願WO2010/036696号、Robeyns et al.,J.Am.Chem.Soc.,2008,130(6),1979-1984、;Horvath et al.,Tetrahedron Letters,2007,48,3621-3623、Nauwelaerts et al.,J.Am.Chem.Soc.,2007,129(30),9340-9348、Gu et al.,,Nucleosides,Nucleotides & Nucleic Acids,2005,24(5-7),993-998、Nauwelaerts et al.,Nucleic Acids Research,2005,33(8),2452-2463、Robeyns et al.,Acta Crystallographica,Section F:Structural Biology and Crystallization Communications,2005,F61(6),585-586、Gu et al.,Tetrahedron,2004,60(9),2111-2123、Gu et al.,Oligonucleotides,2003,13(6),479-489、Wang et al.,J.Org.Chem.,2003,68,4499-4505、Verbeure et al.,Nucleic Acids Research,2001,29(24),4941-4947、Wang et al.,J.Org.Chem.,2001,66,8478-82、Wang et al.,Nucleosides,Nucleotides & Nucleic Acids,2001,20(4-7),785-788、Wang et al.,J.Am.Chem.,2000,122,8595-8602、公開PCT出願WO06/047842号及び公開PCT出願WO01/049687号、また、各文献の本文は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。特定の修飾シクロヘキセニルヌクレオシドは式Xを有する。
【化21】
式中、該少なくとも1つの式Xのシクロヘキセニルヌクレオシド類似体のそれぞれについて、独立して、
Bxが、複素環式塩基部分であり、
及びTはそれぞれ、独立して、シクロヘキセニルヌクレオシド類似体をアンチセンス化合物に連結するヌクレオシド間連結基であり、またはT及びTのうちの1つは
テトラヒドロピランヌクレオシド類似体をアンチセンス化合物に連結するヌクレオシド間連結基であり、T及びTの他方は、H、ヒドロキシル保護基、連結共役基または5’もしくは3’末端基であり、
、q、q、q、q、q、q、q、及びqはそれぞれ独立して、H、C-Cアルキル、置換C-Cアルキル、C-Cアルケニル、置換C-Cアルケニル、C-Cアルキニルまたは置換C-Cアルキニルまたはその他の糖置換基である。
【0278】
多くの他の単環式、二環式及び三環式環系が当該分野で公知であり、本明細書で提供されるようなオリゴマー化合物への取り込みのためにヌクレオシドを修飾するために使用され得る糖代用物として適切である(例えば、総説については、Leumann,Christian J.Bioorg.& Med.Chem.,2002,10,841-854を参照されたい)。そのような環系は、それらの活性をさらに増強するために様々な追加の置換を受けてもよい。
【0279】
本明細書で使用される「2’-修飾糖」とは、2’位で修飾されたフラノシル糖を意味する。特定の実施形態において、そのような修飾が、ハライド、例えば、限定するわけではないが、置換及び無置換アルコキシ、置換及び無置換チオアルキル、置換及び無置換アミノアルキル、置換及び無置換アルキル、置換及び無置換アリル、ならびに置換及び無置換アルキニルから選択される置換基を含む。特定の実施形態では、2’修飾は、限定されないが、O[(CHO]CH,O(CHNH,O(CHCH,O(CHF,O(CHONH,OCHC(=O)N(H)CH,及びO(CHON[(CHCHを含む置換基から選択され、ここでn及びmは1~約10である。他の2’-置換基は、C-C12アルキル、置換アルキル、アルケニル、アルキニル、アルカリル、アラルキル、O-アルカリルまたはO-アラルキル、SH、SCH、OCN、Cl、Br、CN、F、CF、OCF、SOCH、SOCH、ONO、NO、N、NH、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカリール、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換シリル、RNA切断基、レポーター基、インターカレーター、アンチセンス化合物の薬物動態特性を改良するための基または薬力学的性質を改良するための基、及び類似する性質を有する他の置換基から選択することもできる。特定の実施形態において、修飾ヌクレオシドが2’-MOE側鎖を含む(Baker et al.,J.Biol.Chem.,1997,272,11944-12000)。そのような2’-MOE置換は、非修飾ヌクレオシド、ならびに他の修飾ヌクレオシド、例えば2’-O-メチル、O-プロピル、及びO-アミノプロピルと比較して、改良された結合親和性を有するものであると説明されている。2’-MOE置換基を有するオリゴヌクレオチドは、in vivo用途に有望な特徴を持つ遺伝子発現のアンチセンス阻害剤であることも示されている(Martin,Helv.Chim.Acta,1995,78,486-504;Altmann
et al.,Chimia,1996,50,168-176;Altmann et al.,Biochem.Soc.Trans.,1996,24,630-637;and Altmann et al.,Nucleosides Nucleotides,1997,16,917-926)。
【0280】
本明細書で使用される「2’-修飾」または「2’-置換」は、2’位にHまたはOH以外の置換基を含む糖を含むヌクレオシドを指す。2’-修飾ヌクレオシドとして、限定されないが、アリル、アミノ、アジド、チオ、O-アリル、O-C-C10アルキル、-OCF、O-(CH-O-CH、2’-O(CHSCH、O-(CH-O-N(R)(R)、またはO-CH-C(=O)-N(R)(R)等の非架橋2’置換基を有するヌクレオシドが挙げられ、ここで、R及びRはそれぞれ独立して、Hまたは置換もしくは非置換C-C10アルキルである。2’-修飾ヌ
クレオシドは、例えば糖の他の位置及び/または核酸塩基に、他の修飾をさらに含んでもよい。
【0281】
本明細書で使用される「2’-F」とは、糖環の2’位にフルオロ基を含む糖を含むヌクレオシドを指す。
【0282】
本明細書で使用される「2’-OMe」または「2’-OCH」または「2’-O-メチル」または「2’-メトキシ」とは、それぞれ、糖環の2’位に-OCH基を含む糖を含むヌクレオシドを指す。
【0283】
本明細書で使用される「MOE」または「2’-MOE」または「2’-OCHCHOCH」または「2’-O-メトキシエチル」はそれぞれ、糖環の2’位に-OCHCHOCH基を含む糖を含むヌクレオシドを指す。
【0284】
修飾糖の調製方法は、当業者に公知である。修飾糖の調製方法は、当業者に公知である。そのような修飾糖の調製を教示する代表的な米国特許の一部には、例えば、限定するわけではないが、同4,981,957号、同5,118,800号、同5,319,080号、同5,359,044号、同5,393,878号、同5,446,137号、同5,466,786号、同5,514,785号、同5,519,134号、同5,567,811号、同5,576,427号、同5,591,722号、同5,597,909号、同5,610,300号、同5,627,053号、同5,639,873号、同5,646,265号、同5,670,633号、同5,700,920号、同5,792,847号及び同6,600,032号、ならびに国際出願PCT/US2005/019219(出願日2005年6月2日)(2005年12月22日に公開されたWO2005/121371)等があり、これらはそれぞれ参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0285】
本明細書で使用される「オリゴヌクレオチド」とは、複数の連結されたヌクレオシドを含む化合物を指す。特定の実施形態において、該複数のヌクレオシドのうちの1つまたは複数が修飾されている。特定の実施形態において、オリゴヌクレオチドが、1つまたは複数のリボヌクレオシド(RNA)及び/またはデオキシリボヌクレオシド(DNA)を含む。
【0286】
修飾糖部分を有するヌクレオチドにおいて、核酸塩基部分(天然、修飾またはそれらの組み合わせ)は、適切な核酸標的とのハイブリダイゼーションのために維持される。
【0287】
特定の実施形態において、アンチセンス化合物が、修飾糖部分を有する1つまたは複数のヌクレオシドを含む。特定の実施形態において、修飾糖部分が2’-MOEである。特定の実施形態において、2’-MOE修飾ヌクレオシドがギャップマーモチーフで配置される。特定の実施形態において、修飾糖部分が、(4’-CH(CH)-O-2’)架橋基を有する二環式ヌクレオシドである。特定の実施形態において、該(4’-CH(CH)-O-2’)修飾ヌクレオシドが、ギャップマーモチーフのウイング全体にわたって配置される。
【0288】
修飾核酸塩基
核酸塩基(または塩基)の修飾または置換は、天然に存在するまたは合成的に修飾されていない核酸塩基と構造的に区別可能であるが、さらに機能的に交換可能である。天然及び修飾核酸塩基の両方は、水素結合に関与することができる。そのような核酸塩基修飾は、ヌクレアーゼ安定性、結合親和性、または他の有益な生物学的特性をアンチセンス化合物に付与し得る。修飾核酸塩基は、例えば、5-メチルシトシン(5-me-C)のよう
な合成及び天然核酸塩基を含む。5メチル-シトシン置換を含む特定の核酸塩基置換は、標的核酸に対するアンチセンス化合物の結合親和性を増加させるのに特に有用である。例えば、5メチル-シトシン置換は、核酸二重鎖の安定性を0.6~1.2℃増加させることが示されている(Sanghvi,Y.S.,Crooke,S.T.and Lebleu,B.,eds.,Antisense Research and Applications,CRC Press,Boca Raton,1993,pp.276-278)。
【0289】
追加の非修飾核酸塩基としては、5-ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン、アデニン及びグアニンの6-メチル及び他のアルキル誘導体、アデニン及びグアニンの2-プロピル及び他のアルキル誘導体、2-チオウラシル、2-チオチミン及び2-チオシトシン、5-ハロウラシル及びシトシン、5-プロピニル-C≡C-CH)ウラシル及びピリミジン塩基のシトシン及び他のアルキニル誘導体、6-アゾウラシル、シトシン及びチミン、5-ウラシル(プソイドウラシル)、4-チオウラシル、8-ハロ、8-アミノ、8-チオール、8-チオアルキル、8-ヒドロキシル及び他の8-置換アデニン及びグアニン、5-ハロ、特に5-ブロモ、5-トリフルオロメチル及び他の5-置換ウラシル及びシトシン、7-メチルグアニン及び7-メチルアデニン、2-F-アデニン、2-アミノ-アデニン、8-アザグアニン及び8-アザアデニン、7-デアザグアニン及び7-デアザアデニン及び3-デアザグアニン及び3-デアザアデニンが挙げられる。
【0290】
複素環式塩基部分は、プリンまたはピリミジン塩基が、他の複素環、例えば、7-デアザ-アデニン、7-デアザグアノシン、2-アミノピリジン、及び2-ピリドンに置換されるものも含まれ得る。アンチセンス化合物の結合親和性を増加させるのに特に有用な核酸塩基は、2-アミノプロピルアデニン、5-プロピニルウラシル及び5-プロピニルシトシンを含む5-置換ピリミジン、6-アザピリミジン及びN-2、N-6及びO-6置換プリンを含む。
【0291】
特定の実施形態において、TMPRSS6核酸を標的とするアンチセンス化合物が、1つまたは複数の修飾核酸塩基を含む。特定の実施形態において、TMPRSS6核酸を標的とするギャップ拡大アンチセンスオリゴヌクレオチドは、1つまたは複数の修飾核酸塩基を含む。特定の実施形態において、修飾核酸塩基の少なくとも1つは、5-メチルシトシンである。特定の実施形態において、各シトシンは5メチル-シトシンである。
【0292】
医薬組成物を処方するための組成物及び方法
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、医薬組成物または製剤の調製のために、薬学的に許容される活性物質または不活性物質と混合することができる。組成物及び医薬組成物を製剤化するための方法は、投与経路、疾患の程度、または投与される用量を含むが、これらに限定されないいくつかの基準に依存する。
【0293】
TMPRSS6核酸を標的とするアンチセンス化合物は、アンチセンス化合物を適切な薬学的に許容される希釈剤または担体と組み合わせることによって、医薬組成物に利用することができる。薬学的に許容される希釈剤は水、例えば、注射用水(WFI)を含む。薬学的に許容される希釈剤は、生理食塩水、例えば、リン酸緩衝食塩水(PBS)を含む。水または生理食塩水は、非経口で送達される組成物における使用に適した希釈剤である。したがって、一実施形態において、本明細書に記載の方法で使用されるのは、TMPRSS6核酸を標的とするアンチセンス化合物及び薬学的に許容される希釈剤を含む医薬組成物である。特定の実施形態において、薬学的に許容される希釈剤は水または生理食塩水である。特定の実施形態において、アンチセンス化合物はアンチセンスオリゴヌクレオチドである。
【0294】
アンチセンス化合物を含む医薬組成物は、ヒトを含む動物への投与時に、生物学的に活性な代謝産物またはその残基を(直接的または間接的に)提供することができる、そのようなエステルの任意の薬学的に許容される塩、エステルもしくはそのようなエステルの塩、または他のオリゴヌクレオチドを包含する。したがって、例えば、本開示は、アンチセンス化合物の薬学的に許容される塩、プロドラッグ、そのようなプロドラッグの薬学的に許容される塩、及び他の生物学的等価物を対象とする。好適な薬学的に許容される塩には、ナトリウム塩及びカリウム塩が含まれるが、これらに限定されない。
【0295】
本明細書に記載の化合物の薬学的に許容可能な塩は、当該技術分野において周知の方法によって調製することができる。薬学的に許容可能な塩の総説については、Stahl and Wermuth、Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties、Selection and Use(Wiley-VCH、Weinheim、Germany、2002)を参照されたい。アンチセンスオリゴヌクレオチドのナトリウム塩が有用であり、ヒトへの治療的投与のために十分に許容されている。したがって、一実施形態において、本明細書に記載の化合物は、ナトリウム塩の形態である。
【0296】
プロドラッグは、体内で内因性ヌクレアーゼによって切断されて活性アンチセンス化合物を形成するアンチセンス化合物の一方または両方の末端におけるさらなるヌクレオシドの組み込みを含み得る。
【0297】
投薬
特定の実施形態において、医薬組成物は、所望の効果を達成するために投薬レジメンを選択することができる投薬レジメン(例えば、用量、投与頻度及び期間)に従って投与される。所望の効果は、例えばTMPRSS6の減少、またはTMPRSS6に関連する疾患または状態の予防、軽減、改善またはその進行の遅延であり得る。
【0298】
特定の実施形態において、投薬レジメンの変数は、対象において所望の濃度の医薬組成物をもたらすように調整される。投与レジメンに関して使用される「濃度の医薬組成物」は、医薬組成物の化合物、オリゴヌクレオチド、または活性成分を指すことができる。例えば、特定の実施形態において、用量及び投与頻度は、所望の効果を達成するのに十分な量で医薬組成物の組織濃度または血漿濃度を提供するように調整される。
【0299】
投薬は、処置される病態の重症度及び応答性に依存し、一連の治療は数日~数ヵ月間、または治癒が達成されるまで、または病態の減少が達成されるまで継続する。投薬は薬物の効力及び代謝にも依存する。特定の実施形態において、投薬量は、体重1kgあたり0.01μg~100mg、または0.001mg~1000mgの投薬の範囲内であり、毎日、毎週、隔週、毎月、四半期、半年もしくは毎年1回以上、または2~20年に1回投与してもよい。治療が成功した後、病態の再発を防止するために患者は維持療法を受けることが望ましく、この場合、オリゴヌクレオチドは、1日1回以上~20年に1回、体重1kg当たり0.01μg~100mgの維持用量の範囲で、または0.001mg~1000mgの範囲で投与される。
【0300】
投与
本発明の化合物または医薬組成物は、局所的または全身的治療が所望されるかどうか、及び治療される領域に応じて、多くの方法で投与することができる。吸収(すなわち肺)、経腸(すなわち腸)、非経口または局所で投与を行うことができる。
【0301】
特定の実施形態において、本明細書に記載の化合物及び組成物は、非経口的に投与され
る。非経口投与として、限定されないが、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内、筋肉内、頭蓋内、くも膜下腔内、髄内、脳室内または腫瘍内投与または注入が挙げられる。非経口投与として、鼻腔内投与も含む。
【0302】
特定の実施形態において、非経口投与は輸液によるものである。輸液は、長期輸液、または、連続輸液、または短期輸液、または間欠輸液であり得る。特定の実施形態において、注入された医薬品はポンプで送達される。
【0303】
特定の実施形態において、非経口投与は注射によるものである。注入物は注射器またはポンプで送達することできる。特定の実施形態において、注射はボーラス注射である。特定の実施形態において、注射は、組織または器官に直接投与される。
【0304】
特定の実施形態において、非経口投与のための剤形は、緩衝剤、希釈剤、ならびに浸透増強剤、担体化合物及び他の薬学的に許容される担体または賦形剤を含むがこれらに限定されない、他の好適な添加剤をさらに含有する無菌水溶液を含んでもよい。
【0305】
特定の実施形態において、本明細書に記載の化合物及び組成物は、経腸的に投与される。経腸投与として、限定されないが、経口、経粘膜的、腸管または直腸(例えば、座薬、浣腸)が挙げられる。特定の実施形態では、化合物または組成物の経腸投与のための製剤として、限定されないが、薬学的担体、賦形剤、粉末剤または粒剤、ナノ微粒子、水中の懸濁液または溶液または非水性培地、カプセル、ゲルカプセル、サッシェ剤、タブレットまたはミニタブレットを挙げることができる。増粘剤、香味剤、希釈剤、乳化剤、分散補助剤、または結合剤が所望され得る。特定の実施形態において、経腸製剤は、本発明で提供する化合物が1種以上の浸透増強剤、界面活性剤及びキレート剤と共に投与されるものである。
【0306】
特定の実施形態では、投与は、肺投与を含む。特定の実施形態では、肺投与は、吸入によって、対象の肺に、エアゾール化されたオリゴヌクレオチドを送達することを含む。対象がエアゾール化されたオリゴヌクレオチドを吸収した後に、オリゴヌクレオチドは、肺胞マクロファージ、好酸球、上皮、血管内皮及び細気管支内皮を含む正常肺組織及び炎症を起こした組織の両方の細胞に分布する。修飾オリゴヌクレオチドを含む医薬組成物の送達に適した機器として、限定されないが、標準噴霧器が挙げられる。追加の適切な機器として、ドライパウダー吸入器または定量噴霧式吸入器が挙げられる。
【0307】
特定の実施形態では、医薬組成物は、全身暴露より局所曝露を達成するために投与される。例えば、肺投与は、最小の全身暴露で、肺に医薬組成物を送達する。
【0308】
共役アンチセンス化合物
特定の実施形態では、本明細書に提供されるオリゴヌクレオチドまたはオリゴマー化合物は、1つまたは複数の共役基の共有結合によって改変される。一般に、共役基は、限定されないが、薬力学、薬物動態、安定性、結合、吸収、細胞分布、細胞取込、負荷、及びクリアランスを含む結合したオリゴヌクレオチドまたはオリゴマー化合物の1つまたは複数の特性を改変する。本明細書で使用されるとき、「共役基」は、オリゴヌクレオチドまたはオリゴマー化合物に結合する原子の基を含むラジカル基を意味する。一般に、共役基は、限定されないが、薬力学、薬物動態、安定性、結合、吸収、細胞分布、細胞取込、負荷、及び/またはクリアランス特性を含む結合する化合物の1つまたは複数の特性を改変する。共役基は、化学分野で通常、使用され、共役基をオリゴヌクレオチドまたはオリゴマー化合物に共有結合させる共役リンカーを含むことができる。特定の実施形態では、共役基は、共役基をオリゴヌクレオチドまたはオリゴマー化合物に共有結合させる切断可能な部分を含む。特定の実施形態では、共役基は、共役基をオリゴヌクレオチドまたはオリ
ゴマー化合物に共有結合させる共役リンカー及び開裂部位を含む。特定の実施形態において、共役基は、以下の式を有する。
【化22】
ここで、nは、1~約3であり、nが1のときmは0であるか、またはnが2もしくは3であるときmは1であり、jは1もしくは0であり、kは1もしくは0であり、jとkの合計は少なくとも1である。
【0309】
特定の実施形態では、nが1であり、jが1であり、kが0である。特定の実施形態では、nが1であり、jが0であり、kが1である。特定の実施形態では、nが1であり、jが1であり、kが1である。特定の実施形態では、nが2であり、jが1であり、kが0である。特定の実施形態では、nが2であり、jが0であり、kが1である。特定の実施形態では、nが2であり、jが1であり、kが1である。特定の実施形態では、nが3であり、jが1であり、kが0である。特定の実施形態では、nが3であり、jが0であり、kが1である。特定の実施形態では、nが3であり、jが1であり、kが1である。
【0310】
共役基は、ラジカルとして本明細書で示され、オリゴヌクレオチド等のオリゴマー化合物と共有結合を形成するための結合を提供する。特定の実施形態では、オリゴマー化合物の結合点は、3’末端ヌクレオシドまたは修飾ヌクレオシドである。特定の実施形態では、オリゴマー化合物の結合点は、3’末端ヌクレオシドまたは修飾ヌクレオシドの3’-ヒドロキシル基の3’-酸素原子である。特定の実施形態では、オリゴマー化合物の結合点は、5’末端ヌクレオシドまたは修飾ヌクレオシドである。特定の実施形態では、オリゴマー化合物の結合点は、5’末端ヌクレオシドまたは修飾ヌクレオシドの5’-ヒドロキシル基の5’-酸素原子である。特定の実施形態では、オリゴマー化合物の結合点は、ヌクレオシドの任意の反応部位、修飾ヌクレオシドまたはヌクレオシド間結合である。
【0311】
本明細書で使用するとき、「開裂部位」及び「開裂結合」は、特定の生理学的条件下で、分裂または開裂することができる原子の開裂結合または開裂結合基を意味する。特定の実施形態では、開裂部位は開裂結合である。特定の実施形態では、開裂部位は開裂結合を含む。特定の実施形態では、開裂部位は原子の基である。特定の実施形態では、開裂部位は、細胞またはリソソーム等の細胞内区画の内部で選択的に開裂される。特定の実施形態では、開裂部位は、ヌクレアーゼ等の内在酵素によって、選択的に開裂される。特定の実施形態では、開裂部位は、1、2、3、4、または4つ以上の開裂結合を有する原子の基を含む。
【0312】
特定の実施形態では、共役基は、開裂部位を含む。特定のそのような実施形態では、開裂部位は、オリゴマー化合物を共役リンカーと共有結合させる。特定のそのような実施形態では、開裂部位は、オリゴマー化合物を細胞標的部位と共有結合させる。
【0313】
特定の実施形態では、開裂結合は、アミド、ポリアミド、エステル、エーテル、リン酸ジエステルの1つもしくは両方、リン酸エステル、カルバミン酸、ジスルフィド、またはペプチドから選択される。特定の実施形態では、開裂結合は、リン酸ジエステルのエステルの1つである。特定の実施形態では、開裂結合は、リン酸ジエステルのエステルの1つまたは両方である。特定の実施形態では、開裂部位は、オリゴマー化合物と共役基の残りとのリン酸ジエステル結合である。特定の実施形態では、開裂部位は、オリゴマー化合物と共役基の残りとの間に位置する、リン酸ジエステル結合を含む。特定の実施形態では、
開裂部位はリン酸塩またはリン酸ジエステルを含む。特定の実施形態では、開裂部位は、リン酸ジエステルまたはホスホロチオエート結合のいずれかによって、共役リンカーと結合する。特定の実施形態では、開裂部位は、リン酸ジエステル結合によって共役リンカーと結合する。特定の実施形態では、共役基は開裂部位を含まない。
【0314】
特定の実施形態では、開裂部位は開裂ヌクレオシドまたは修飾ヌクレオシドである。特定の実施形態では、ヌクレオシドまたは修飾ヌクレオシドは、プリン、置換プリン、ピリミジンまたは置換ピリミジンから選択される任意に保護された複素環式塩基を含む。特定の実施形態では、開裂部位は、ウラシル、チミン、シトシン、4-N-ベンゾイルシトシン、5-メチルシトシン、4-N-ベンゾイル-5-メチルシトシン、アデニン、6-N-ベンゾイルアデニン、グアニン及び2-N-イソブチリルグアニンから選択されるヌクレオシドである。
【0315】
特定の実施形態では、開裂部位は、リン酸ジエステル結合によって、オリゴマー化合物の3’末端または5’末端ヌクレオシドのいずれかに結合し、リン酸ジエステルまたはホスホロチオエート結合によって、共役基の残りと共結合する、2’-デオキシヌクレオシドである。特定の実施形態では、開裂部位は、リン酸ジエステル結合によって、オリゴマー化合物の3’末端か5’末端ヌクレオシドのいずれかに結合し、リン酸ジエステルまたはホスホロチオエート結合によって、共役基の残りと共結合する、2’-デオキシアデノシンである。特定の実施形態では、開裂部位は、リン酸ジエステル結合によって、3’末端ヌクレオシドまたは修飾ヌクレオシドの3’-ヒドロキシル基の3’-酸素原子に結合する2’-デオキシアデノシンである。特定の実施形態では、開裂部位は、リン酸ジエステル結合によって、5’末端ヌクレオシドまたは修飾ヌクレオシドの5’-ヒドロキシル基の5’-酸素原子に結合する2’-デオキシアデノシンである。特定の実施形態では、開裂部位は、オリゴマー化合物のヌクレオシドまたは修飾ヌクレオシドの2’位に結合する。
【0316】
本明細書で使用されるとき、共役基に関連する「共役リンカー」は、細胞標的部位を、直接または開裂部位を介してオリゴマー化合物に共有結合させる任意の原子または原子の基を含む共役基の部分を意味する。特定の実施形態では、共役リンカーは、アルキル、アミノ、オキソ、アミド、ジスルフィド、ポリエチレングリコール、エーテル、チオエーテル(-S-)及びヒドロキシルアミノ(-O-N(H)-)から選択される基を含む。特定の実施形態では、共役リンカーは、アルキル、アミノ、オキソ、アミド、及びエーテル基から選択される基を含む。特定の実施形態では、共役リンカーは、アルキル及びアミド基から選択される基を含む。特定の実施形態では、共役リンカーは、アルキル及びエーテル基から選択される基を含む。特定の実施形態では、共役リンカーは、少なくとも1つのリン酸結合基を含む。特定の実施形態では、共役リンカーは、少なくとも1つのリン酸ジエステル基を含む。特定の実施形態では、共役リンカーは、少なくとも1つの中性結合基を含む。
【0317】
特定の実施形態では、共役リンカーは、オリゴマー化合物と共有結合する。特定の実施形態では、共役リンカーは、オリゴマー化合物及び分岐基と共有結合する。特定の実施形態では、共役リンカーは、オリゴマー化合物及びテザーリガンドと共有結合する。特定の実施形態では、共役リンカーは、開裂部位と共有結合する。特定の実施形態では、共役リンカーは、開裂部位及び分岐基と共有結合する。特定の実施形態では、共役リンカーは、開裂部位及びテザーリガンドと共有結合する。特定の実施形態では、共役リンカーは、1つまたは複数の開裂結合を含む。特定の実施形態では、共役基は共役リンカーを含まない。
【0318】
本明細書で使用されるとき、「分岐基」は、2つ以上のテザーリガンド及び共役基の残
りと共有結合を形成することができる少なくとも3つの部位を有する原子の基を意味する。一般に、分岐基は、テザーリガンドを、共役リンカー及び/または開裂部位によって、オリゴマー化合物に接続するために、複数の反応部位を提供する。特定の実施形態では、分岐基は、アルキル、アミノ、オキソ、アミド、ジスルフィド、ポリエチレングリコール、エーテル、チオエーテル及びヒドロキシルアミノ基から選択される基を含む。特定の実施形態では、分岐基は、アルキル、アミノ、オキソ、アミド、ジスルフィド、ポリエチレングリコール、エーテル、チオエーテル及びヒドロキシルアミノ基から選択される基を含む、分岐脂肪族基を含む。特定のそのような実施形態では、分岐脂肪族基は、アルキル、アミノ、オキソ、アミド、及びエーテル基から選択される基を含む。特定のそのような実施形態では、分岐脂肪族基は、アルキル、アミノ及びエーテル基から選択される基を含む。特定のそのような実施形態では、分岐脂肪族基は、アルキル及びエーテル基から選択される基を含む。特定の実施形態では、分岐基は単環式系または多環式環系を含む。
【0319】
特定の実施形態では、分岐基は、共役リンカーと共有結合する。特定の実施形態では、分岐基は、開裂部位と共有結合する。特定の実施形態では、分岐基は、共役リンカー及びテザーリガンドのいずれかと共有結合する。特定の実施形態では、分岐基は、1つまたは複数の開裂結合を含む。特定の実施形態では、共役基は分岐基を含まない。
【0320】
特定の実施形態では、本明細書で提供される共役基は、少なくとも1つのテザーリガンドを有する細胞標的部位を含む。特定の実施形態では、細胞標的部位は、分岐基と共有結合する2つのテザーリガンドを含む。特定の実施形態では、細胞標的部位は、分岐基と共有結合する3つのテザーリガンドを含む。
【0321】
本明細書で使用されるとき、「テザー」は、リガンドを共役基の残りに接続させる原子の基を意味する。特定の実施形態では、テザーはそれぞれ、任意の組み合わせのアルキル、置換アルキル、エーテル、チオエーテル、ジスルフィド、アミノ、オキソ、アミド、リン酸ジエステル及びポリエチレングリコールから選択される1つまたは複数の基を含む直鎖脂肪族基である。特定の実施形態では、テザーはそれぞれ、任意の組み合わせのアルキル、エーテル、チオエーテル、ジスルフィド、アミノ、オキソ、アミド、及びポリエチレングリコール基から選択される1つまたは複数の基を含む直鎖脂肪族基である。特定の実施形態では、テザーはそれぞれ、任意の組み合わせのアルキル、置換アルキル、リン酸ジエステル、エーテル及びアミノ、オキソ、アミド基から選択される1つまたは複数の基を含む直鎖脂肪族基である。特定の実施形態では、テザーはそれぞれ、任意の組み合わせのアルキル、エーテル及びアミノ、オキソ、アミド基から選択される1つまたは複数の基を含む直鎖脂肪族基である。特定の実施形態では、テザーはそれぞれ、任意の組み合わせのアルキル、アミノ、及びオキソ基から選択される1つまたは複数の基を含む直鎖脂肪族基である。特定の実施形態では、テザーはそれぞれ、任意の組み合わせのアルキル、及びオキソ基から選択される1つまたは複数の基を含む直鎖脂肪族基である。特定の実施形態では、テザーはそれぞれ、任意の組み合わせのアルキル、及びリン酸ジエステルから選択される1つまたは複数の基を含む直鎖脂肪族基である。特定の実施形態では、テザーはそれぞれ少なくとも1つのリン酸結合基または中性結合基を含む。
【0322】
特定の実施形態では、テザーは、1つまたは複数の開裂結合を含む。特定の実施形態では、テザーリガンドはそれぞれ分岐基と結合する。特定の実施形態では、テザーリガンドはそれぞれアミド基によって分岐基と結合する。特定の実施形態では、テザーリガンドはそれぞれエーテル基によって分岐基と結合する。特定の実施形態では、テザーリガンドはそれぞれリン酸結合基または中性結合基によって、分岐基と結合する。特定の実施形態では、テザーリガンドはそれぞれリン酸ジエステル基によって分岐基と結合する。特定の実施形態では、テザーはそれぞれアミドまたはエーテル基のいずれかによってリガンドと結合する。特定の実施形態では、テザーはそれぞれエーテル基によってリガンドと結合する
【0323】
特定の実施形態では、テザーはそれぞれ、リガンドと分岐基との間の鎖長が約8~約20個の原子を含む。特定の実施形態では、テザーはそれぞれ、リガンドと分岐基との間の鎖長が約10~約18個の原子を含む。特定の実施形態では、テザーはそれぞれ、鎖長が約13個の原子を含む。
【0324】
特定の実施形態では、本開示は、各リガンドがテザーによって共役基の残りと共有結合する、リガンドを提供する。特定の実施形態では、各リガンドは、標的細胞上の少なくとも1つの種類の受容体について親和性を有するように選択される。特定の実施形態では、哺乳動物の肝細胞上の少なくとも1つの種類の受容体について親和性を有するリガンドが選択される。特定の実施形態では、肝臓アシアロ糖タンパク質レセプター(hepatic asialoglycoprotein receptor)(ASGP-R)について親和性を有するリガンドが選択される。特定の実施形態において、各リガンドは炭水化物である。特定の実施形態では、各リガンドは、独立して、ガラクトース、N-アセチルガラクトセアミン、マンノース、グルコース、グルコサモン及びフコースから選択される。特定の実施形態において、各リガンドは、N-アセチルガラクトセアミン(GalNAc)である。特定の実施形態では、標的部位は1~3個のリガンドを含む。特定の実施形態では、標的部位は3個のリガンドを含む。特定の実施形態では、標的部位は2個のリガンドを含む。特定の実施形態では、標的部位は1個のリガンドを含む。特定の実施形態では、標的部位は3個のN-アセチルガラクトセアミンリガンドを含む。特定の実施形態では、標的部位は2個のN-アセチルガラクトセアミンリガンドを含む。特定の実施形態では、標的部位は1個のN-アセチルガラクトセアミンリガンドを含む。
【0325】
特定の実施形態では、各リガンドは、炭水化物、炭水化物誘導体、修飾炭水化物、多価炭水化物クラスター、多糖、修飾多糖、または多糖誘導体である。特定の実施形態では、各リガンドはアミノ等またはチオ糖である。例えば、アミノ糖は、当該技術分野で既知の任意の数の化合物、例えば、グルコサミン、シアル酸、α-D-ガラクトサミン、N-アセチルガラクトサミン、2-アセトアミド-2-デオキシ-D-ガラクトピラノース(GalNAc)、2-アミノ-3-O-[(R)-1-カルボキシエチル]-2-デオキシ-β-D-グルコピラノース(β-ムラミン酸)、2-デオキシ-2-メチルアミノ-L-グルコピラノース、4,6-ジデオキシ-4-ホルムアミド-2,3-ジ-O-メチル-D-マンノピラノース、2-デオキシ-2-スルホアミノ-D-グルコピラノース及びN-スルホ-D-グルコサミン、及びN-グリコロイル-α-ノイラミン酸から選択することができる。例えば、チオ糖は、5-チオ-β-D-グルコピラノース、メチル2,3,4-トリ-O-アセチル-1-チオ-6-O-トリチル-α-D-グルコピラノシド、4-チオ-β-D-ガラクトピラノース及びエチル3,4,6,7-テトラ-O-アセチル-2-デオキシ-1,5-ジチオ-α-D-gluco-ヘプトピラノシドから成る群から選択される。
【0326】
特定の実施形態では、本明細書で提供される共役基は、炭水化物クラスターを含む。本明細書で使用されるとき、「炭水化物クラスター」は、2つ以上の炭水化物残基が、テザー基によって分岐基と結合する、共役基の部分を意味する。(例えば、炭水化物共役クラスターの例として、Maier et al.,“Synthesis of Antisense Oligonucleotides Conjugated to a Multivalent Carbohydrate Cluster for Cellular Targeting,” Bioconjugate Chemistry,2003,(14):18-29,which is incorporated herein by reference in its entirety、またはRensen et al.,“Design and Synthesis of Nove
l N-Acetylgalactosamine-Terminated Glycolipids for Targeting of Lipoproteins to the Hepatic Asiaglycoprotein Receptor,” J.Med.Chem.2004,(47):5798-5808を参照のこと)。
【0327】
本明細書で使用されるとき、「修飾炭水化物」は、自然に存在する炭水化物に対して1つまたは複数の化学修飾を有する任意の炭水化物を意味する。
【0328】
本明細書で使用されるとき、「炭水化物誘導体」は、出発物質または中間体として炭水化物を使用して合成することができる任意の化合物を意味する。
【0329】
本明細書で使用されるとき、「炭水化物」は、自然に存在する炭水化物、修飾炭水化物、または炭水化物誘導体を意味する。
【0330】
特定の実施形態では、細胞標的部位が以下の式を有する共役基を提供する。
【化23】
【0331】
特定の実施形態では、細胞標的部位が以下の式を有する共役基を提供する。
【化24】
【0332】
特定の実施形態では、細胞標的部位が以下の式を有する共役基を提供する。
【化25】
【0333】
特定の実施形態において、共役基は以下の式を有する。
【化26】
【0334】
上述の共役基、共役基、テザー、共役リンカー、分岐基、リガンド、開裂部位、及びその他の修飾物を含むアンチセンス化合物等の共役オリゴマー化合物のいくつかの調製を教示する代表的な米国特許、米国特許出願公開、及び国際特許出願公開として、限定されないが、米国特許第5,994,517号、同第6,300,319号、同第6,660,720号、同第6,906,182号、同第7,262,177号、同第7,491,805号、同第8,106,022号、同第7,723,509号、同第2006/0148740号、同第2011/0123520号、国際公開第WO2013/033230号、及び同第WO2012/037254号が含まれるが、これらに限定されず、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0335】
上述の共役基、共役基、テザー、共役リンカー、分岐基、リガンド、開裂部位、及びその他の修飾物を含むアンチセンス化合物等の共役オリゴマー化合物のいくつかの調製を教
示する代表的な出版物には、BIESSEN et al.,“The Cholesterol Derivative of a Triantennary Galactoside with High Affinity for the Hepatic
Asialoglycoprotein Receptor:a Potent Cholesterol Lowering Agent”J.Med.Chem.(1995)38:1846-1852,BIESSEN et al.,“Synthesis
of Cluster Galactosides with High Affinity for the Hepatic Asialoglycoprotein Receptor”J.Med.Chem.(1995)38:1538-1546,LEE et al.,“New and more efficient multivalent glyco-ligands for asialoglycoprotein receptor of mammalian hepatocytes”Bioorganic & Medicinal Chemistry(2011)19:2494-2500,RENSEN et al.,“Determination of the Upper Size Limit for Uptake and Processing of Ligands by the Asialoglycoprotein Receptor on Hepatocytes in Vitro and in Vivo”J.Biol.Chem.(2001)276(40):37577-37584,RENSEN et al.,“Design and Synthesis of Novel N-Acetylgalactosamine-Terminated Glycolipids for Targeting of Lipoproteins to the Hepatic Asialoglycoprotein Receptor”J.Med.Chem.(2004)47:5798-5808,SLIEDREGT et al.,“Design and Synthesis of
Novel Amphiphilic Dendritic Galactosides for Selective Targeting of Liposomes to the Hepatic Asialoglycoprotein Receptor”J.Med.Chem.(1999)42:609-618、及びValentijn et al.,“Solid-phase synthesis of lysine-based cluster galactosides with high affinity for the Asialoglycoprotein Receptor”Tetrahedron,1997,53(2),759-770が含まれるが、これらに限定されず、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0336】
特定の実施形態では、共役基として、限定されないが、介入物、リポーター分子、ポリアミン、ポリアミド、ポリエチレングリコール、チオエーテル、ポリエーテル、コレステロール、チオコレステロール、コール酸部分、葉酸、脂質、リン脂質、ビオチン、フェナジン、フェナントリジン、アントラキノン、アダマンタン、アクリジン、フルオレセイン、ローダミン、クマリン及び染料が挙げられる。特定の共役基、例えば、コレステロール部分(Letsinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1989,86,6553-6556)、コール酸(Manoharan et al.,Bioorg.Med.Chem.Let.,1994,4,1053-1060)、チオエーテル、例えば、ヘキシル-S-トリチルチオール(Manoharan et al.,Ann.N.Y.Acad.Sci.,1992,660,306-309;Manoharan et al.,Bioorg.Med.Chem.Let.,1993,3,2765-2770)、チオコレステロール(Oberhauser et al.,Nucl.Acids Res.,1992,20,533-538)、脂肪族鎖、例えば、ドデカンジオールまたはウンデシル残基(Saison-Behmoaras et al.,EMBO J.,1991,10,1111-1118;Kab
anov et al.,FEBS Lett.,1990,259,327-330;Svinarchuk et al.,Biochimie,1993,75,49-54)、リン脂質、例えば、ジ-ヘキサデシル-rac-グリセリンまたはトリエチル-アンモニウム 1,2-ジ-O-ヘキサデシル-rac-グリセロ-3-H-ホスホン酸塩(Manoharan et al.,Tetrahedron Lett.,1995,36,3651-3654;Shea et al.,Nucl.Acids Res.,1990,18,3777-3783)、ポリアミンまたはポリエチレングリコール鎖(Manoharan et al.,Nucleosides&Nucleotides,1995,14,969-973)、またはアダマンタン酢酸(Manoharan et al.,Tetrahedron Lett.,1995,36,3651-3654)、パルミチル部分(Mishra et al.,Biochim.Biophys.Acta,1995,1264,229-237)、またはオクタデシルアミンまたはヘキシルアミノ-カルボニル-オキシコレステロール部分(Crooke et al.,J.Pharmacol.Exp.Ther.,1996,277,923-937)については、以前に記述されている。
【0337】
特定の実施形態では、共役基は、活性薬物質、例えば、アスピリン、ワルファリン、フェニルブタゾン、イブプロフェン、スプロフェン、フェンブフェン、ケトプロフェン、(S)-(+)-プラノプロフェン、カルプロフェン、ダンシルサルコシン、2,3,5-トリヨード安息香酸、フルフェナム酸、ホリン酸、ベンゾサイアジアザイド、クロロチアジド、ジアゼピン、インドメチシン、バルビツール酸、セファロスポリン、サルファ剤、抗糖尿病薬、抗菌剤または抗生剤を含む。
【0338】
共役リンカーの非限定的ないくつかの例として、ピロリジン、8-アミノ-3,6-ジオキサオクタン酸(ADO)、スクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボン酸(SMCC)及び6-アミノヘキサン酸(AHEXまたはAHA)が挙げられる。その他のリンカーとして、限定されないが、置換C-C10アルキル、置換または非置換C-C10アルケニルまたは置換もしくは非置換C-C10アルキニルが挙げられ、ここで、好ましい置換基の非限定的なリストとして、ヒドロキシル、アミノ、アルコキシ、カルボキシ、ベンジル、フェニル、ニトロ、チオール、チオアルコキシ、ハロゲン、アルキル、アリール、アルケニル及びアルキニルが挙げられる。
【0339】
共役基は、オリゴヌクレオチドの一方の端または両方の端(末端共役基)及び/または任意の内部位置に結合することができる。
【0340】
特定の実施形態では、共役基は、オリゴマー化合物のオリゴヌクレオチドの3’末端にある。特定の実施形態において、共役基は3’末端の近くにある。特定の実施形態では、共役基は、オリゴマー化合物の3’末端であるが、1つまたは複数の末端基ヌクレオシドの前に結合する。特定の実施形態では、共役基は末端基の内部に置かれる。
【0341】
細胞培養及びアンチセンス化合物処理
アンチセンス化合物がTMPRSS6核酸のレベル、活性または発現に与える効果を、様々な細胞型でin vitroで試験することができる。このような分析に使用する細胞型は、商業供給業者(例えば、American Type Culture Collection,Manassus,VA、Zen-Bio,Inc.,Research Triangle Park,NC、Clonetics Corporation,Walkersville,MD)から入手可能であり、市販の試薬(例えば、Invitrogen Life Technologies,Carlsbad,CA)を使用して、供給業者の指示書に従って細胞を培養する。例示的な細胞型としては、HepG2細胞、Hep3B細胞、Huh7細胞(肝細胞癌)、初代肝細胞、A549細胞、GM
04281繊維芽細胞及びLLC-MK2細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
【0342】
アンチセンスオリゴヌクレオチドのin vitro試験
本明細書では、アンチセンスオリゴヌクレオチドで細胞を処理する方法を記載し、その他のアンチセンス化合物で処理するために、適切に修飾することができる。
【0343】
一般に、細胞が培養物中で約60~80%コンフルエンスに達した時に、アンチセンスオリゴヌクレオチドで細胞を処理する。
【0344】
培養細胞にアンチセンスオリゴヌクレオチドを導入するためによく使用される試薬の1つに、カチオン性脂質トランスフェクション試薬LIPOFECTIN(登録商標)(Invitrogen,Carlsbad,CA)がある。アンチセンスオリゴヌクレオチドをOPTI-MEM(登録商標)1中のLIPOFECTIN(登録商標)(Invitrogen,Carlsbad,CA)と混合し、所望の最終濃度のアンチセンスオリゴヌクレオチド及び100nMのアンチセンスオリゴヌクレオチドにつき典型的には2~12ug/mLのLIPOFECTIN(登録商標)濃度を達成する。
【0345】
アンチセンスオリゴヌクレオチドを培養細胞に導入するために使用される別の試薬は、LIPOFECTAMINE 2000(登録商標)(Invitrogen,Carlsbad,CA)を含む。アンチセンスオリゴヌクレオチドをOPTI-MEM(登録商標)1還元血清培地(Invitrogen,Carlsbad,CA)中のLIPOFECTAMINE 2000(登録商標)と混合し、所望の濃度のアンチセンスオリゴヌクレオチド及び100nMのアンチセンスオリゴヌクレオチドにつき典型的には2~12ug/mLのLIPOFECTAMINE(登録商標)濃度を達成する。
【0346】
培養細胞にアンチセンスオリゴヌクレオチドを導入するために使用される別の試薬は、Cytofectin(登録商標)(Invitrogen,Carlsbad,CA)を含む。アンチセンスオリゴヌクレオチドをOPTI-MEM(登録商標)1還元血清培地(Invitrogen,Carlsbad,CA)中のCytofectin(登録商標)と混合し、所望の濃度のアンチセンスオリゴヌクレオチド及び100nMのアンチセンスオリゴヌクレオチドにつき典型的には2~12ug/mLのCytofectin(登録商標)濃度を達成する。
【0347】
培養細胞にアンチセンスオリゴヌクレオチドを導入するために使用される別の試薬は、Oligofectamine(商標)(Invitrogen Life Technologies、Carlsbad、CA)である。アンチセンスオリゴヌクレオチドをOpti-MEM(商標)-1還元血清培地(Invitrogen Life Technologies、Carlsbad、CA)中でOligofectamine(商標)と混合することで、オリゴヌクレオチドに対するOligofectamine(商標)の比が、100nMあたり約0.2対0.8μLを有する所望のオリゴヌクレオチド濃度を達成する。
【0348】
アンチセンスオリゴヌクレオチドを培養細胞に導入するために使用される別の試薬は、FuGENE6(Roche Diagnostics Corp.、Indianapolis、IN)を含む。アンチセンスオリゴマー化合物を1mLの無血清RPMI中のFuGENE6と混合し、100nM当たり1~4μLのFuGENE6のFuGENE6対オリゴマー化合物比を有する所望の濃度のオリゴヌクレオチドを達成した。
【0349】
アンチセンスオリゴヌクレオチドを培養細胞に導入するために使用される別の技術は、エレクトロポーション(Sambrook and Russell in Molec
ular Cloning.A Laboratory Manual.third Edition.Cold Spring Harbor laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York.2001)を含む。
【0350】
細胞は、常法により、アンチセンスオリゴヌクレオチドで処理される。細胞は、典型的にはアンチセンスオリゴヌクレオチド処理の16~24時間後に採取され、その時点で、標的核酸のRNAレベルまたはタンパク質レベルが、当技術分野に知られており、本明細書に記載する方法によって測定される(Sambrook and Russell in Molecular Cloning.A Laboratory Manual.third Edition.Cold Spring Harbor laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York.2001)。一般に、複数の複製試料で処理を行う場合は、反復した処理の平均としてデータを表す。
【0351】
使用されるアンチセンスオリゴヌクレオチドの濃度は、細胞株ごとに異なる。特定の細胞株について、最適なアンチセンスオリゴヌクレオチドの濃度を決定する方法は、当該技術分野で既知である(Sambrook and Russell in Molecular Cloning.A Laboratory Manual.third Edition.Cold Spring Harbor laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York.2001)。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、典型的に、LIPOFECTAMINE2000(登録商標)、リポフェクチンまたはサイトフェクチンでトランスフェクトするときに、1nM~300nMの範囲の濃度で使用される。エレクトロポレーションによるトランスフェクションの場合は、それより高い625nM~20,000nMの範囲の濃度で、アンチセンスオリゴヌクレオチドが使用される。
【0352】
RNA単離
RNA分析は、全細胞RNAまたはポリ(A)+mRNAで行うことができる。RNA単離の方法は、当該技術分野で既知である(Sambrook and Russell,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd Ed.,2001)。RNAは、当技術分野において周知の方法を使って、例えば、製造者が推奨するプロトコルに従って、TRIZOL(登録商標)試薬(Invitrogen,Carlsbad,CA)を使用することによって、調製される。
【0353】
標的レベルまたは発現の阻害の解析
TMPRSS6核酸のレベルまたは発現の阻害は、当該技術分野で既知の様々な方法でアッセイすることができる(Sambrook and Russell,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd Ed.,2001)。例えば、標的核酸レベルは、例えばノーザンブロット分析、競合的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、または定量的リアルタイムPCRによって定量化することができる。RNA分析は、全細胞RNAまたはポリ(A)+mRNAに対して行うことができる。RNA単離の方法は当技術分野では周知である。ノーザンブロット分析は、また当該技術分野では典型的なものである。定量的リアルタイムPCRは、製造者の指示書に従って、PE-Applied Biosystems,Foster City,CAから入手可能な市販のABI PRISM(登録商標)7600、7700、または7900配列検出システムを使用して好都合に達成することができる。
【0354】
標的RNAレベルの定量的リアルタイムPCR分析
標的RNAレベルの定量化は、製造業者の説明書に従ってABI PRISM(登録商標)7600、7700、または7900配列検出システム(PE-Applied B
iosystems,Foster City,CA)を用いて定量的リアルタイムPCRによって達成することができる。定量的リアルタイムPCRの方法は当技術分野で周知である。
【0355】
リアルタイムPCRの前に、単離されたRNAは、逆転写酵素(RT)反応に供され、リアルタイムPCR増幅のための基質として使用される相補的DNA(cDNA)を生成する。RT及びリアルタイムPCR反応は、同じサンプルウェル中で連続的に実施する。RT及びリアルタイムPCR試薬は、Invitrogen(Carlsbad,CA)から入手する。RTリアルタイムPCR反応は、当業者に周知の方法によって実施される。
【0356】
リアルタイムPCRによって得られる遺伝子(またはRNA)標的量は、シクロフィリンA等の、発現が一定である遺伝子の発現レベルのいずれかを用いて、またはRIBOGREEN(登録商標)(Invitrogen、Inc.Carlsbad,CA)を用いて全RNAを定量することによって正規化される。シクロフィリンAの発現は、リアルタイムPCRによって、多重化を標的と同時にまたは別個に実行することによって定量化する。全RNAは、RIBOGREEN(登録商標)RNA定量試薬(Invitrogen,Inc.Eugene,OR)を用いて定量される。RIBOGREEN(登録商標)によるRNA定量化の方法は、Jones,L.J.,et al,(Analytical Biochemistry,1998,265,368-374)に教示されている。CYTOFLUOR(登録商標)4000機器(PE Applied Biosystems)は、RIBOGREEN(登録商標)蛍光を測定するために使用する。
【0357】
プローブ及びプライマーは、TMPRSS6核酸にハイブリダイズするように設計する。リアルタイムPCRプローブ及びプライマーの設計方法は、当該分野で周知であり、PRIMER EXPRESS(登録商標)ソフトウェア(Applied Biosystems,Foster City,CA)等のソフトウェアの使用を含んでもよい。
【0358】
タンパク質レベルの分析
TMPRSS6核酸のアンチセンス阻害は、TMPRSS6タンパク質レベルを測定することによって評価することができる。TMPRSS6のタンパク質レベルは、免疫沈降、ウエスタンブロット分析(イムノブロッティング)、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、定量タンパク質アッセイ、タンパク質活性アッセイ(例えば、カスパーゼ活性アッセイ)、免疫組織化学、免疫細胞化学または蛍光活性化細胞選別(FACS)等の当該技術分野で周知の様々な方法で評価または定量化することができる(Sambrook
and Russell,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd Ed.,2001)。標的に対する抗体を同定し、抗体のMSRSカタログ(Aerie Corporation,Birmingham,MI)等の種々のソースから得ることができるか、または当該技術で周知の従来のモノクローナルまたはポリクローナル抗体生成法で調製することができる。
【0359】
アンチセンス化合物のin vivo試験
TMPRSS6の発現を阻害し、身体における鉄の蓄積を減少するといった表現型の変化を起こす能力を評価するために、アンチセンス化合物、例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドの試験を動物で行う。正常な動物、または実験的疾患モデルで、試験を実施してもよい。動物への投与では、アンチセンスオリゴヌクレオチドを、殺菌注射用水またはリン酸緩衝生理食塩水等の薬学的に許容される希釈剤中で製剤化する。投与として、腹腔内、静脈内及び皮下等の非経口経路による投与が挙げられる。アンチセンスオリゴヌクレオチドの投与量及び投薬頻度の計算は、投与経路及び動物の体重等の要因に依存する。1つの実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いた治療期間の後、RNAを肝
組織から単離し、TMPRSS6核酸発現の変化を測定する。TMPRSS6タンパク質レベルの変化も測定することができる。TMPRSS6発現の変化は、ヘプシジン発現レベル、鉄の血漿レベル、及び動物に存在するトランスフェリンの飽和度を決定することによって、測定することができる。
【0360】
特定の適応症
個体に本明細書に記載の1つまたは複数の組成物または化合物を投与することを含む、個体を治療するための組成物、化合物及び方法を提供する。特定の実施形態では、個体におけるTMPRSS6発現を減少させるための組成物、化合物及び方法を提供する。特定の実施形態では、TMPRSS6核酸を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む治療有効量の組成物または化合物を個体に投与することによって、個体を治療するための組成物、化合物及び方法を提供する。特定の実施形態では、TMPRSS6を標的とするアンチセンス化合物は、TMPRSS6を減少させる。特定の実施形態では、TMPRSS6の減少を必要とする個体は、鉄蓄積疾患、障害または病態を有しているか、またはそれらに罹患するリスクにある。特定の実施形態では、個体における鉄レベルを減少させる際に使用するために、本明細書に記載の組成物、化合物及び方法を提供する。
【0361】
特定の実施形態では、鉄蓄積は、個体の疾患、障害または病態を治療するための治療の結果である。特定の実施形態では、治療は、輸血治療である。特定の実施形態では、複数回の輸血は赤血球増加症を引き起こし得る。さらなる実施形態では、複数回の輸血は、動物が貧血を有することに関連する。複数回の輸血を必要とする貧血の例は、遺伝性貧血、遺伝性貧血及び重症慢性溶血である。遺伝性貧血の例として、限定されないが、鎌状赤血球貧血、サラセミア、ファンコニー貧血、ダイアモンド・ブラックファン貧血、シュワックマン・ダイアモンド症候群、赤血球膜障害、グルコース-6-リン酸脱水素酵素欠損症、または遺伝性出血性毛細血管拡張症が挙げられる。特定の実施形態において、サラセミアは、β-サラセミアである。特定の実施形態では、β-サラセミアは、HbE/β-サラセミア、重症型β-サラセミア、中間型β-サラセミアまたは軽症型β-サラセミアである。
【0362】
特定の実施形態では、鉄蓄積は、個体の疾患、障害または病態に起因する。特定の実施形態では、疾患、障害または病態は、遺伝性ヘモクロマトーシスまたはサラセミアである。特定の実施形態では、サラセミアは、非輸血依存性サラセミア(NTDT)またはβ-サラセミアである。特定の実施形態では、β-サラセミアは、HbE/β-サラセミア、重症型β-サラセミア、中間型β-サラセミアまたは軽症型β-サラセミアである。
【0363】
特定の実施形態では、疾患、障害及び/または病態は、過剰な非経口の鉄サプリメント摂取または過剰な食事性鉄摂取に関連する。
【0364】
本明細書は、mRNAまたはタンパク質発現レベル等のヘプシジンレベルを増加させるための組成物、化合物及び方法を提供する。特定の実施形態では、mRNAまたはタンパク質発現レベル等のヘプシジンレベルを増加させるために使用される、本明細書に記載のTMPRSS6を標的とするアンチセンス化合物を提供する。
【0365】
本明細書は、動物におけるトランスフェリンの飽和度を減少させるための組成物、化合物及び方法を提供する。特定の実施形態では、動物におけるトランスフェリンの飽和度を減少させるために使用される、本明細書に記載のTMPRSS6を標的とするアンチセンス化合物を提供する。特定の実施形態では、トランスフェリンの飽和度を減少させることによって、赤血球生成について鉄供給が減少する。特定の実施形態では、赤血球生成の減少は、動物における赤血球増加症またはその症状を治療し、予防し、その発症を遅延し、寛解し、かつ/または減少させる。特定の実施形態では、動物における赤血球増加症また
はその症状を治療し、予防し、その発症を遅らせ、寛解し、かつ/または減少させる際に使用される、本明細書に記載のTMPRSS6を標的とするアンチセンス化合物を提供する。特定の実施形態において、赤血球増加症は真性多血症である。特定の実施形態では、TMPRSS6を標的とするアンチセンス化合物での治療は、赤血球増加症が赤血球白血病に進行するのを予防または遅延する。
【0366】
特定の実施形態において、個体におけるTMPRSS6核酸を標的とする治療有効量のアンチセンス化合物の投与には、アンチセンス化合物に対する個体の応答を判定するために、TMPRSS6レベルのモニタリングを伴う。特定の実施形態において、個体におけるTMPRSS6核酸を標的とする治療有効量のアンチセンス化合物の投与には、個体のヘプシジンレベルのモニタリングを伴う。特定の実施形態において、個体におけるTMPRSS6核酸を標的とする治療有効量のアンチセンス化合物の投与には、個体の鉄レベルのモニタリングを伴う。特定の実施形態において、個体におけるTMPRSS6核酸を標的とする治療有効量のアンチセンス化合物の投与には、個体のトランスフェリンの飽和度の評価を伴う。アンチセンス化合物の投与に対する個体の応答は、治療的介入の量及び期間を決定するために医師が使用する。
【0367】
本明細書では、鉄蓄積疾患、障害または病態に罹患しているまたは罹患しやすい患者を治療するための医薬品を調製する際に使用されるTMPRSS6を標的とするアンチセンス化合物を含む医薬組成物を提供する。
【0368】
特定の実施形態では、本明細書に記載の方法は、TMPRSS6核酸に相補的な少なくとも8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個の連続した核酸塩基部分を有する修飾オリゴヌクレオチドを含むアンチセンス化合物を投与することを含む。
【0369】
特定の併用療法
特定の実施形態において、本明細書で提供する組成物または化合物を含む第1の薬剤は、1つまたは複数の第2の薬剤と同時投与される。特定の実施形態において、そのような第2の薬剤は、本明細書に記載の第1の薬剤のように、鉄蓄積疾患、障害または病態を治療するように設計されている。特定の実施形態において、そのような第2の薬剤は、本明細書に記載の第1の薬剤のように異なる疾患、障害または病態を治療するように設計されている。特定の実施形態において、そのような第2の薬剤は、本明細書に記載の1つまたは複数の組成物または化合物の望ましくない副作用を治療するように設計される。特定の実施形態において、第1の薬剤は、第2の薬剤の望ましくない副作用を治療するように設計される。特定の実施形態において、第2の薬剤は、第1の薬剤の望ましくない効果を治療するために、第1の薬剤と同時投与される。特定の実施形態において、第2の薬剤を第1の薬剤と同時投与して組合せ効果をもたらす。特定の実施形態において、第2の薬剤を第1の薬剤と同時投与して相乗効果をもたらす。特定の実施形態において、第1及び第2の薬剤の共投与は、薬剤が独立した治療として投与された場合に治療効果または予防効果を達成するために必要とされる用量よりも低い用量の使用を可能にする。特定の実施形態では、同時投与される第2の薬剤の用量は、第2の薬剤が単独で投与される場合に投与される用量と同じである。特定の実施形態では、同時投与される第2の薬剤の用量は、第2の薬剤が単独で投与される場合に投与される用量より少ない。特定の実施形態では、同時投与される第2の薬剤の用量は、第2の薬剤が単独で投与される場合に投与される用量より多い。
【0370】
特定の実施形態において、第1の薬剤及び1つまたは複数の第2の薬剤は、同時に投与される。特定の実施形態において、第1の薬剤及び1つまたは複数の第2の薬剤は、異なる時間に投与される。特定の実施形態において、第2の薬剤は、第1の薬剤を投与する前
に投与される。特定の実施形態において、第2の薬剤は、第1の薬剤を投与した後に投与される。特定の実施形態において、第1の薬剤及び1つまたは複数の第2の薬剤は、単一の医薬製剤に一緒に調製される。特定の実施形態において、第1の薬剤及び1つまたは複数の第2の薬剤は、別々に調製される。
【0371】
特定の実施形態では、第2の薬剤は、限定されないが、核酸化合物を含む。このような核酸化合物は、siRNA、リボザイムまたはTMPRSS6または別の標的を標的とするアンチセンス化合物を含むことができる。
【0372】
特定の実施形態では、第2の薬剤として、限定されないが、鉄キレート剤等の非アンチセンス化合物、トランスフェリン、骨形成タンパク質6(BMP6)、ヘプシジンアゴニスト、幹細胞、TMPRSS6を標的とする抗体または胎児ヘモグロビン(HbF)成長薬が挙げられる。さらなる実施形態では、鉄キレート剤は、限定されないが、FBS0701(FerroKin)、エクジェイド、デスフェラール、及びデフェリプロンから選択される。特定の実施形態では、HBF成長薬として、5-ヒドロキシル尿素、短鎖脂肪酸(SCFA)誘導体(例えば、HQK1001)、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害薬(例えば、デシタビン)またはヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害薬(例えば、Zolina、パノビノスタットが挙げられる。
【0373】
特定の実施形態では、第2の薬剤は、限定されないが、静脈切開術または輸血治療を含む。特定の実施形態では、第1の薬剤は、静脈切開術または輸血治療時に同時に投与される。特定の実施形態では、第1の薬剤は、静脈切開術または輸血治療の前に投与される。特定の実施形態では、第1の薬剤は、静脈切開術または輸血治療の後に投与される。特定の実施形態では、本明細書で提供される組成物または化合物の投与によって、個体における静脈切開術または輸血治療の頻度が減少する。特定の実施形態では、本明細書で提供される組成物または化合物の投与によって、静脈切開術または輸血治療の頻度が増加する。特定の実施形態では、本明細書で提供される組成物または化合物の投与によって、静脈切開術または輸血治療に必要な時間が減少する。
【0374】
特定の化合物
ヒトにおける治療薬としての使用を促進する有益な特性を有する好ましいアンチセンス化合物を、本明細書の例で説明する。簡略して、好ましいアンチセンス化合物の選択に寄与する試験のみを説明する。参照を容易にするために、例の非網羅的要約を以下に提供する。
【0375】
MOEギャップマーモチーフを有する約2200個のアンチセンス化合物またはヒトTMPRSS6を標的とするモチーフを含むcEtを設計し、細胞に単回投与した後のヒトTMPRSS6mRNAに与える効果について、Hep3B細胞においてスクリーニングした。実施例1は、さらなる試験のために選択された100個以上の強力なアンチセンス化合物について、代表的な単回投与のスクリーニングのデータを示す。
【0376】
in vitroでの単回投与で試験を行った約2200個のアンチセンス化合物のうち、約100個のアンチセンス化合物を選択して用量依存性阻害試験を行い、Hep3B細胞における最大半量の阻害濃度(IC50)を決定した(実施例2)。
【0377】
CD-1マウスのおける試験のために、用量反応及び/または単回投与試験におけるその効力に基づいて、約77個のアンチセンス化合物をさらに選択し、マウスのアンチセンス化合物の耐性(例えば、血漿化学マーカー、体重、臓器の重量)を決定した(実施例3~4)。
【0378】
CD-1マウスにおける耐性について試験を行った約77個のアンチセンス化合物のうち、約48個のアンチセンス化合物を選択してSprague-Dawley系ラットにおける試験を行い、ラットの耐性を決定した(実施例5)。
【0379】
ラットの耐性試験に基づいて、約32個のアンチセンス化合物を選択して、ヒトTMPRSS6トランスジェニック(huTMPRSS6 tg)マウスにおける、in vivoの効力試験を行った(実施例6)。
【0380】
マウス試験において、効力及び耐性があると識別されたアンチセンス化合物を、アカゲザルTMPRSS6遺伝子配列に対する交差反応性について、評価した(実施例7)。本明細書に記載の試験におけるアンチセンス化合物を、カニクイザルで試験を行ったが(実施例11)、カニクイザルTMPRSS6配列を、アンチセンス化合物の配列との比較に使用することができなかったため、アンチセンス化合物の配列を、近縁種のアカゲザルの配列と比較した。約7個のアンチセンス化合物が、アカゲザルTMPRSS6遺伝子配列とミスマッチがないことがわかった。
【0381】
マウスの効力及び耐性試験の結果、ならびにアカゲザルの配列との相同性に基づいて、先行試験の7個のアンチセンス化合物の配列(585774、585683、585775、630718、647477、647449、647420)の配列を選択して、より強力にTMPRSS6レベルを減少させるために、さらなる化学修飾を行った。GalNAc共役体を有する8個の新たな化合物(702843、705051、705052、705053、706940、706941、706942、706943)を、7個の元のアンチセンス化合物に基づいて設計した(実施例7)。
【0382】
8個のGalNAc共役アンチセンス化合物を、CD-1マウスにおける耐性(例えば、体重、臓器の重量、肝代謝マーカー(例えば、ALT、AST及びビリルビン)、腎代謝マーカー(例えば、BUN及びクレアチニン)、組織学、血液学的パラメータ(例えば、血液細胞数及びヘマトクリット)等を測定した)について(実施例8)、及びヒトTMPRSS6トランスジェニックマウスの効力について(実施例9)、マウスを用いて試験した。
【0383】
8個のGalNAc共役アンチセンス化合物も、粘度について評価し、8個のうち7個で好ましい粘度レベルを有することが分かり、1個はボーダーラインの許容可能な粘度レベルを有することがわかった(実施例10)。
【0384】
マウス及びin vitroの粘度試験において確認された好ましいプロファイルに基づいて、8個のGalNAc共役アンチセンス化合物に、カニクイザルにおいて、TMPRSS6を減少させる効力、耐性、ならびに鉄パラメータ(例えば、ヘプシジンレベル、血清鉄及びトランスフェリン飽和)に対する効果について試験を行った(実施例11)。8個のGalNAc共役アンチセンス化合物は、概してカニクイザルにおいて、効力及び耐性があることが分かった。アンチセンス化合物705051、702843、706942及び706943は、特にTMRPSS6、血清鉄及びトランスフェリン飽和を減少させる効力があることが分かった。
【0385】
したがって、本明細書では、治療薬として使用することに有用な1つまたは複数の特徴を有するアンチセンス化合物を提供する。特定の実施形態では、本明細書では、配列番号1~6のいずれかから選択されるヌクレオチドの領域を標的とする、またはそれに特異的にハイブリダイズすることが可能な、本明細書に記載の修飾オリゴヌクレオチドを含むアンチセンス化合物を提供する。
【0386】
特定の実施形態では、本明細書に記載の特定のアンチセンス化合物は、TMPRSS6発現を阻害する能力を有するために有効である。特定の実施形態において、化合物または組成物は、TMPRSS6を少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%または少なくとも95%阻害する。
【0387】
特定の実施形態では、本明細書に記載の特定のアンチセンス化合物は、ヒト細胞、例えば、Hep3B細胞株(実施例2で説明される)において試験するときに、in vitroのIC50が20μM未満、10μM未満、8μM未満、5μM未満、2μM未満、1μM未満、0.9μM未満、0.8μM未満、0.7μM未満、0.6μM未満、また0.5μM未満であるために有効である。
【0388】
特定の実施形態では、本明細書に記載の特定のアンチセンス化合物は、in vivoでの半有効量(ED50)が≦5mpk/wk、≦4mpk/wk、≦3mpk/wk、≦2mpk/wkまたは≦1mpk/wkであるために有効である。特定の実施形態では、≦1mpk/wkのED50を有する好ましいアンチセンス化合物として、実施例8に記載されるアンチセンス化合物702843、706940、706942及び706943が挙げられる。
【0389】
特定の実施形態では、本明細書に記載の特定のアンチセンス化合物は、実施例9に記載のように、40cP未満、35cP未満、30cP未満、25cP未満、20cP未満、15cP未満、または10cP未満の粘度を有するために有効である。40cP超の粘度を有するオリゴヌクレオチドは、最適粘度に満たない粘度を有する。
【0390】
特定の実施形態では、本明細書に記載の特定のアンチセンス化合物は、例に記載されたin vivoの耐性の測定値によって示されるように、高い耐性を有する。特定の実施形態では、本明細書に記載の特定のアンチセンス化合物は、生理食塩水で処置された動物と比較したALT及び/またはASTの3倍、2倍、1.5倍以下の増加が示すように、高い耐性を有する。
【0391】
特定の実施形態では、本明細書に記載の特定のアンチセンス化合物は、50%超の阻害能力、ED50≦1mpk/wk、40cP未満の粘度、トランスジェニックマウスにおける3倍以下のALT及び/またはASTの増加の1つまたは複数を有するために有効である。
【0392】
特定の実施形態では、ISIS 702843(配列番号36)が好ましい。当該化合物は、TMPRSS6トランスジェニックマウスにおいて強力な阻害薬であり、かつCD-1マウスにおいて非常に耐性のあるアンチセンス化合物であることが分かった。マウスにおいて、当該化合物は、生理食塩水で処置された動物と比較した3倍未満のALTレベル及び/またはASTレベルの増加を有した。当該化合物は、huTMPRSS6トランスジェニックマウスにおいて、約33cPの許容可能な粘度及びED50≦1mpk/wkを有した。また、サルにおいて、当該化合物は、TMPRSS6の阻害に最も強力な化合物であった。
【0393】
特定の実施形態では、ISIS 705051(配列番号36)が好ましい。当該化合物は、TMPRSS6トランスジェニックマウスにおいて強力な阻害薬であり、かつCD-1マウスにおいて非常に耐性のあるアンチセンス化合物であることが分かった。マウスにおいて、当該化合物は、生理食塩水で処置された動物と比較した3倍未満のALTレベル及び/またはASTレベルの増加を有した。当該化合物は、huTMPRSS6トラン
スジェニックマウスにおいて、約23cPの許容可能な粘度及びED50≦3mpk/wkを有した。また、サルにおいて、当該化合物は、TMPRSS6の阻害に最も強力な化合物であった。
【0394】
特定の実施形態では、ISIS 706942(配列番号77)が好ましい。当該化合物は、TMPRSS6トランスジェニックマウスにおいて強力な阻害薬であり、かつCD-1マウスにおいて非常に耐性のあるアンチセンス化合物であることが分かった。マウスにおいて、当該化合物は、生理食塩水で処置された動物と比較した3倍未満のALTレベル及び/またはASTレベルの増加を有した。当該化合物は、huTMPRSS6トランスジェニックマウスにおいて、約20cPの許容可能な粘度及びED50≦1mpk/wkを有した。また、サルにおいて、当該化合物は、TMPRSS6の阻害に最も強力な化合物であった。
【0395】
特定の実施形態では、ISIS 706943(配列番号77)が好ましい。当該化合物は、TMPRSS6トランスジェニックマウスにおいて強力な阻害薬であり、かつCD-1マウスにおいて非常に耐性のあるアンチセンス化合物であることが分かった。huTMPRSS6トランスジェニックマウスにおいて、当該化合物は、生理食塩水で処置された動物と比較した3倍未満のALTレベル及び/またはASTレベルの増加を有した。当該化合物は、huTMPRSS6トランスジェニックマウスにおいて、約19cPの許容可能な粘度及びED50≦1mpk/wkを有した。また、サルにおいて、当該化合物は、TMPRSS6の阻害に最も強力な化合物であった。
【0396】
実施例
参照による非限定的な開示及び組み込み
本明細書に記載されるある特定の化合物、組成物、及び方法が特定の実施形態に従って具体的に記載されているが、以下の実施例は、本明細書に記載される化合物を例証する役割のみを果たし、それを限定するようには意図されていない。本出願に記載の参考文献の各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0397】
実施例1:ヒトII型膜貫通セリンプロテアーゼ6(TMPRSS6)を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチド
約2200個の新しく設計したキメラアンチセンスオリゴヌクレオチドを、5-10-5 MOEギャップマーまたはcET含有ギャップマーとして設計した。
【0398】
5-10-5 MOEギャップマーを20ヌクレオシドの長さのオリゴヌクレオチドとして設計し、中央のギャップセグメントは、10個の2’-デオキシヌクレオシドを含み、それぞれ5個のヌクレオシドを含む5’方向及び3’方向のウィングセグメントに隣接する。5’ウィングセグメントの各ヌクレオシド及び3’ウィングセグメントの各ヌクレオシドは、2’-MOE修飾を有する。各ギャップマーにわたるヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエート(P=S)結合である。各ギャップマーにわたる全てのシトシン残基は、5-メチルシトシンである。
【0399】
cET含有ギャップマーは、様々なデオキシ、MOE、及び(S)-cEtギャップマーモチーフで設計した。デオキシ、MOE、及び(S)-cEtオリゴヌクレオチドは、16ヌクレオシドの長さであり、ヌクレオチドは、MOE糖修飾、(S)-cEt糖修飾またはデオキシリボースのいずれかを有する。表3の「化学物質」の列は、各オリゴヌクレオチドの糖修飾を記載している。「k」は、(S)-cEt糖修飾を示し、「d」は、デオキシリボースを示し、「e」は、MOE修飾を示す。特に示されない限り、各ギャップマーにわたるヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエート(P=S)結合である。各ギャップマーにわたる全てのシトシン残基は、5-メチルシトシンである。
【0400】
「開始部位」は、ギャップマーがヒト遺伝子配列において標的とされる5’末端ヌクレオシドを示す。「終了部位」は、ギャップマーがヒト遺伝子配列において標的とされる3’末端ヌクレオシドを示す。以下の表に挙げられる各ギャップマーは、配列番号1として本明細書で示されるヒトTMPRSS6 mRNA(GENBANK寄託番号NM_153609.2)、または配列番号2として本明細書で示されるヒトTMPRSS6ゲノム配列(ヌクレオチド16850000~16897000から切断したGENBANK寄託番号NT_011520.12の補体)のいずれかを標的とする。以下の表では、「n/a」は、アンチセンスオリゴヌクレオチドが100%の相補性を有する特定の遺伝子配列を標的としないことを示す。
【0401】
2200個のキメラアンチセンスオリゴヌクレオチドに、その単回投与がin vitroでTMRPSS6 mRNAに与える効果について試験を行った。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、同様の培養条件を有する一連の試験において少なくとも1回、試験を行った。
【0402】
試験対象の2200個のうち、約110の強力なアンチセンスオリゴヌクレオチドの代表的な結果を、以下の表1~3に示す。これらの強力なアンチセンスオリゴヌクレオチドを以下に記載のさらなる試験のために選択した。
【0403】
表1は、5-10-5 MOEギャップマーによるTMPRSS6mRNAの阻害率を示す。ウェル当たり約20,000個の細胞の密度で培養されたHep3B細胞を、4,500nMアンチセンスオリゴヌクレオチドで、エレクトロポレーションを使用してトランスフェクトした。約24時間の処理時間の後、RNAを細胞から単離し、TMPRSS6 mRNAレベルを定量的リアルタイムPCRによって測定した。ヒトプライマープローブセットRTS3840(配列番号92として本明細書で示される正方向配列CAAAGCCCAGAAGATGCTCAA;配列番号93としてとして本明細書で示される逆方向配列GGAATAGACGGAGCTGGAGTTG;配列番号94としてとして本明細書で示されるプローブ配列ACCAGCACCCGCCTGGGAACTT)を使用してmRNAレベルを測定した。TMPRSS6 mRNAレベルを、RIBOGREEN(登録商標)によって測定されるように、RNA総含有量に従って調節した。未処理の対照細胞と比較して、TMPRSS6の阻害率として結果を示す。
【表2-1】
【表2-2】
【0404】
表2は、追加の5-10-5 MOEギャップマーによるTMPRSS6mRNAの阻害率を示す。ウェル当たり約20,000個の細胞の密度で培養されたHep3B細胞を、5,000nMアンチセンスオリゴヌクレオチドで、エレクトロポレーションを使用してトランスフェクトした。約24時間の処理時間の後、RNAを細胞から単離し、TMPRSS6 mRNAレベルを定量的リアルタイムPCRによって測定した。ヒトプライマープローブセットRTS3840を使用して、mRNAレベルを測定した。TMPRSS6 mRNAレベルを、RIBOGREEN(登録商標)によって測定されるように、RNA総含有量に従って調節した。未処理の対照細胞と比較して、TMPRSS6の阻害率として結果を示す。
【表3】
【0405】
表3は、一連の実験のcEt含有ギャップマーによるTMPRSS6 mRNAの阻害率を示す。ウェル当たり約20,000個の細胞の密度で培養されたHep3B細胞を、2,000nMアンチセンスオリゴヌクレオチドで、エレクトロポレーションを使用してトランスフェクトした。約24時間の処理時間の後、RNAを細胞から単離し、TMPRSS6 mRNAレベルを定量的リアルタイムPCRによって測定した。ヒトプライマープローブセットRTS3840を使用して、mRNAレベルを測定した。TMPRSS6
mRNAレベルを、RIBOGREEN(登録商標)によって測定されるように、RNA総含有量に従って調節した。未処理の対照細胞と比較して、TMPRSS6の阻害率として結果を示す。
【表4-1】
【表4-2】
【0406】
実施例2:Hep3B細胞におけるヒトTMPRSS6を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドの用量反応
実施例1に記載される単回投与実験において試験を行った約2200個のアンチセンスオリゴヌクレオチドから選択した約100個のアンチセンスオリゴヌクレオチドを、ヒトTMPRSS6 mRNAのin vitro阻害の試験において、Hep3B細胞中で様々な用量で試験した。
【0407】
以下の表4の実験では、ウェル当たり12,000個の細胞密度で細胞を置き、アンチセンスオリゴヌクレオチドの0.15μM、0.44μM、1.33μM、4.00μM及び12.00μMの濃度でエレクトロポーションを使用してトランスフェクトした。約16時間の処理時間の後、RNAを細胞から単離し、TMPRSS6 mRNAレベルを定量的リアルタイムPCRによって測定した。ヒトプライマープローブセットRTS38
40を使用して、mRNAレベルを測定した。TMPRSS6 mRNAレベルを、RIBOGREEN(登録商標)によって測定されるように、RNA総含有量に従って調節した。未処理の対照細胞と比較して、TMPRSS6の阻害率として結果を示す。「0」は、アンチセンスオリゴヌクレオチドがTMPRSS6 mRNAレベルを減少させなかったことを示す。
【0408】
各オリゴヌクレオチドの最大半量の阻害濃度(IC50)も示す。アンチセンスオリゴヌクレオチドで処理した細胞において、TMPRSS6 mRNAレベルが、用量依存的に有意に減少した。
【表5-1】
【表5-2】
【0409】
以下の表5の実験では、ウェル当たり5,000個の細胞密度で細胞を置き、アンチセンスオリゴヌクレオチドの0.19μM、0.56μM、1.67μM及び5.0μMの濃度でエレクトロポーションを使用してトランスフェクトした。約16時間の処理時間の後、RNAを細胞から単離し、TMPRSS6 mRNAレベルを定量的リアルタイムPCRによって測定した。ヒトプライマープローブセットRTS3840を再度使用して、mRNAレベルを測定した。TMPRSS6 mRNAレベルを、RIBOGREEN(登録商標)によって測定されるように、RNA総含有量に従って調節した。未処理の対照細胞と比較して、TMPRSS6の阻害率として結果を示す。
【0410】
各オリゴヌクレオチドの最大半量の阻害濃度(IC50)も示す。アンチセンスオリゴヌクレオチドで処理した細胞において、TMPRSS6 mRNAレベルが用量依存的に有意に減少した。
【表6】
【0411】
以下の表6の実験では、ウェル当たり20,000個の細胞密度で細胞を置き、アンチセンスオリゴヌクレオチドの0.22μM、0.67μM、2.00μM及び6.0μMの濃度でエレクトロポーションを使用してトランスフェクトした。約16時間の処理時間の後、RNAを細胞から単離し、TMPRSS6 mRNAレベルを定量的リアルタイムPCRによって測定した。ヒトプライマープローブセットRTS3840を使用して、mRNAレベルを測定した。TMPRSS6 mRNAレベルを、RIBOGREEN(登録商標)によって測定されるように、RNA総含有量に従って調節した。未処理の対照細胞と比較して、TMPRSS6の阻害率として結果を示す。
【0412】
各オリゴヌクレオチドの最大半量の阻害濃度(IC50)も示す。アンチセンスオリゴヌクレオチドで処理した細胞において、TMPRSS6 mRNAレベルが用量依存的に有意に減少した。
【表7】
【0413】
実施例3:CD1マウスにおけるヒトTMPRSS6を標的とする5-10-5 MOEギャップマーの耐性
CD1(登録商標)マウス(Charles River、MA)は多目的マウスモデルであり、安全性及び有効性試験に頻繁に使用される。マウスを上述の表から選択した約26個のISIS 5-10-5 MOEギャップマーアンチセンスオリゴヌクレオチドで処理し、様々な血漿化学マーカーのレベルの変化を評価した。
【0414】
処理
6週齢の雄CD1マウスの群に、50mg/kgのISISオリゴヌクレオチドを1週間に2回6週間にわって皮下注射した(100mg/kg/週の用量)。雄CD1マウスの1つの群には、PBSを1週間に2回6週間にわたって皮下注射した。最後の投与から48時間後にマウスを安楽死させ、臓器及び血漿を採取してさらに分析した。
【0415】
血漿化学マーカー
ISISオリゴヌクレオチドが肝臓及び腎臓の機能に与える効果を評価するために、トランスアミナーゼの血漿レベル(ALT及びAST)、総ビリルビン(Tbil)、アルブミン(Alb)、クレアチニン(Creat)、及びBUNを、自動臨床化学分析器(Hitachi Olympus AU400e、Melville、NY)を使用して測定した。結果を表7に示す。アンチセンスオリゴヌクレオチドの予想される範囲外で、肝臓または腎臓機能マーカーいずれかのレベルの変化を引き起こしたISISオリゴヌクレオチドは、さらなる試験で除外した。
【表8】
【0416】
体重及び臓器重量
全群のマウスの体重を、実験の開始時と試験終了まで毎週測定した。肝臓、膵臓、腎臓の重量は、試験の最後にも測定し、ベースラインのPBS対照群と比較した体重及び臓器重量の変化を表8に示す。アンチセンスオリゴヌクレオチドの予想される範囲外で、臓器重量を変化させたISISオリゴヌクレオチドは、さらなる試験から除外した。
【表9】
【0417】
これらの耐性試験では、大部分の5-10-5 MOEギャップマーアンチセンスオリゴヌクレオチドは、投与から6週間後、良好な耐性を示したことが観察された。
【0418】
実施例4:CD1マウスにおけるヒトTMPRSS6を標的とするcEt含有オリゴヌクレオチドの耐性
CD1(登録商標)マウス(Charles River、MA)は多目的マウスモデルであり、安全性及び有効性試験に頻繁に使用される。マウスを、上述の表から選択した約51個のcEt含有オリゴヌクレオチドで処理し、様々な血漿化学マーカーの変化について評価した。
【0419】
処理
5~6週齢の雄CD1マウスの群(処理群につきn=4)に、25mg/kgのISISオリゴヌクレオチドを1週間に2回6週間にわたって皮下注射した(50mg/kg/週の用量)。雄CD1マウスの1つの群には、PBSを1週間に2回6週間にわたって皮下注射した。最後の投与から48時間後にマウスを安楽死させ、臓器及び血漿を採取してさらに分析した。肝臓、腎臓、及び膵臓を組織診断のために採取し、血漿を採取し、特定の血漿化学マーカーのレベルを測定した。
【0420】
オリゴヌクレオチドを同じ条件で2つの試験群に分け、結果を以下の表に示す。
【0421】
血漿化学マーカー
ISISオリゴヌクレオチドが肝臓及び腎臓の機能に与える効果を評価するために、トランスアミナーゼの血漿レベル、ビリルビン、アルブミン、クレアチニン、及びBUNを
、自動臨床化学分析器(Hitachi Olympus AU400e、Melville、NY)を使用して測定した。結果を表9~10に示す。アンチセンスオリゴヌクレオチドの予想される範囲外で、肝臓機能マーカーまたは腎臓機能マーカーのいずれかのレベルの変化を引き起こしたISISオリゴヌクレオチドは、さらなる試験から除外した。
【表10】
【表11】
【0422】
体重及び臓器重量
全群のマウスの体重を、実験の開始時と試験終了まで毎週測定した。肝臓、膵臓、腎臓の重量は、試験の最後にも測定し、ベースラインであるPBS対照群と比較した体重及び臓器重量の変化を表11~12に示す。アンチセンスオリゴヌクレオチドの予想される範囲外で、臓器の重量を変化させたISISオリゴヌクレオチドは、さらなる試験から除外した。
【表12】
【表13】
【0423】
実施例5:Sprague-Dawley系ラットにおけるヒトTMPRSS6を標的とするオリゴヌクレオチドの耐性
Sprague-Dawley系ラットは、安全性及び有効性評価に使用される多目的モデルである。ラットを48個のアンチセンスオリゴヌクレオチドで処理して、上述の実施例に記載される試験のマウスにおけるin vitroでの効能及び耐性を示すことが分かり、様々な血漿化学マーカーのレベルの変化について評価した。
【0424】
処理
雄Sprague-Dawley系ラット(およそ8週齢)を12時間の明/暗周期に保持し、Purina正常ラット固形飼料、食餌5001を自由に摂取させた。4匹のSprague-Dawley系ラットの群に、それぞれ、100mg/kgのMOEギャップマーまたは50mg/kgのcEt含有アンチセンスオリゴヌクレオチドを、1週間に1回6週間にわたって皮下注射した。最後の投与から1~2日後に、尿中タンパク質/クレアチニン比(P/C)をアッセイし、以下に記載の血液評価のために、最後の投与から3日後に血液を採取した。最後の投与から3日後に、ラットを安楽死させ、臓器及び血漿を採取してさらに分析した。
【0425】
血漿化学マーカー
ISISオリゴヌクレオチドが肝臓及び腎臓の機能に与える効果を評価するために、トランスアミナーゼ(アラニントランスアミナーゼ(ALT)及びアスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST))の血漿レベル、総ビリルビン(Tbil)、アルブミン(Alb)、クレアチニン(Creat)、及びBUNを、自動臨床化学分析器(Hitachi
Olympus AU400e、Melville、NY)を使用して測定した。結果を表13に示す。アンチセンスオリゴヌクレオチドの予想される範囲外で、肝臓機能マーカーまたは腎臓機能マーカーのいずれかのレベルの変化を引き起こしたISISオリゴヌクレオチドは、さらなる試験で除外した。
【表14】
【表15】
【0426】
血液アッセイ
約1.3mLの血液の血液サンプルを、利用可能な試験動物それぞれからK-EDTAを含む管に採取し、赤血球数(RBC)、白血球細胞(WBC)の数、個別の白血球数、例えば、単球、好中球、リンパ球のもの、ならびに血小板数、総ヘモグロビン含有量及びヘマトクリット(HCT)を測定して分析するために、IDEXX Laboratories,Inc.(Fremont,CA)に送った。結果を表15に示す。アンチセンスオリゴヌクレオチドの予想される範囲外で、血液マーカーのいずれかのレベルの変化を引き起こしたISISオリゴヌクレオチドは、さらなる試験で除外した。
【表16】
【0427】
体重及び臓器重量
全群のラットの体重を、実験の開始時と試験終了まで毎週測定した。肝臓、膵臓、腎臓の重量は、試験の最後にも測定し、ベースラインであるPBS対照群と比較した体重及び臓器重量の変化を表16に示す。アンチセンスオリゴヌクレオチドの予想される範囲外で、臓器重量を変化させたISISオリゴヌクレオチドは、さらなる試験から除外した。
【表17】
【0428】
実施例6:トランスジェニックマウスモデルにおけるTMPRSS6のアンチセンス阻害の効果
上記ラットの試験において耐性を確認した約32個のアンチセンスオリゴヌクレオチドを、ヒトTMPRSS6導入遺伝子(「huTMPRSS6」または「Tg」マウス)を有するマウスのヒトTMPRSS6 mRNA転写を減少させる能力についてさらに評価した。
【0429】
処理
8~16週齢の雄及び雌huTMPRSS6トランスジェニックマウスに、TMPRSS6を標的とするISISアンチセンスオリゴヌクレオチドを1回の投与につき6mg/kgで2週間にわたって5回(合計30mg/kg)皮下注射により投与するか、または対照としてPBSを投与した。各処理群は4匹のマウスで構成した。最後の投与から48時間後に、各マウスから血液を採取し、マウスを屠殺して、組織を回収した。
【0430】
RNA分析
試験の最後に、肝臓のTMPRSS6 mRNA発現についてリアルタイムPCR分析を行うために、肝臓からRNAを抽出した。結果は、PBSで処理された動物に対する阻害率として、表17に示す。ヒトプライマープローブセットRTS4586(配列番号86として本明細書で示される正方向配列TGATAACAGCTGCCCACTG;配列番号87として本明細書で示される逆方向配列TCACCTTGAAGGACACCTCT;配列番号88として本明細書で示されるプローブ配列AGTTCTGCCACACCTTGCCCA)を使用してmRNAレベルを測定した。mRNAレベルを、ハウスキーピング遺伝子のシクロフィリンAのレベルで正規化し、プライマープローブセットmCYCLO_24(配列番号89として本明細書で示される正方向プライマーTCGCCGCTTGCTGCA;配列番号90として本明細書で示される逆方向プライマーATCGGCCGTGATGTCGA;配列番号91として本明細書で示されるプローブCCATGGTCAACCCCACCGTGTTC)を使用して測定した。
【表18】
【0431】
実施例7:GalNAc標的TMPRSS6と共役されるアンチセンス化合物
上記実施例において、効力及び耐性が確認されたTMPRSS6を標的とする選択されたアンチセンスオリゴヌクレオチドの配列を親配列として選択して、ヒトTMPRSS6を標的とする新たなGalNAc共役アンチセンス化合物を設計した。
【0432】
以下の表18を要約されているように、当該実施例に記述される、新たに設計されたアンチセンス化合物のそれぞれは、5’-トリスヘキシルアミノ-(THA)-C6GalNAcエンドキャップを有した。ISIS 702843は、5’-トリスヘキシルアミノ-(THA)-C6GalNAcエンドキャップと混合した(ホスホロチオエート及びリン酸ジエステル基)骨格を有する5-10-5 MOEギャップマーであった。ISIS 705051、705052及び705053は、5’-トリスヘキシルアミノ-(THA)-C6GalNAcエンドキャップを含むホスホロチオエート骨格を有する5-10-5 MOEギャップマーであった。ISIS 706940は、全てのホスホロチオエートヌクレオシド間結合及び5’-トリスヘキシルアミノ-(THA)-C6GalNAcエンドキャップを有する3-10-3cEtギャップマーであり、ISIS 706941、706942及び706943はデオキシ、MOE、及び5’-トリスヘキシルアミノ-(THA)-C6GalNAcエンドキャップ含むホスホロチオエート骨格を有する(S)-cEt含有ギャップマーである。
【表19】
【0433】
表18に記載のオリゴヌクレオチド配列は全て、ヒトとアカゲザル配列の両方に相補的であった。本明細書に記載の試験が行われたとき、TMPRSS6についてのカニクイザルゲノム子配列は、国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)で入手できなかったため、ヒトTMPRSS6を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドとカニクイザル遺伝子配列との交差反応を確認することができなかった。代わりに、相同性について、アンチセンスオリゴヌクレオチドの配列とアカゲザル配列とを比較した。アカゲザル配列と相同性を有するISISオリゴヌクレオチドは、カニクイザル配列とも完全に交差反応があることが予測される。
【0434】
GalNAc共役について選択されたアンチセンスオリゴヌクレオチドは、アカゲザルゲノム配列と完全に相補的である(配列番号95として本明細書で示される、ヌクレオチド380000~422000から切断したGENBANK寄託番号NW_001095
180.1の補体)。アカゲザル配列に対する各オリゴヌクレオチドの開始部位及び終了部位を表19に示し、ヒト配列に対する各オリゴヌクレオチドの開始部位及び終了部位を表20に示す。「開始部位」は、ギャップマーがアカゲザルまたはヒト配列において標的とされる5’末端ヌクレオチドを示す。
【表20】
【表21】
【0435】
実施例8:CD-1マウスにおけるヒトTMPRSS6を標的とするGalNAc3修飾アンチセンスオリゴヌクレオチドの耐性
CD1(登録商標)マウス(Charles River、MA)を、上記表18に記載されるISIS GalNAc修飾アンチセンスオリゴヌクレオチドで処理し、様々な血漿化学マーカーのレベルの変化について評価した。
【0436】
処理
6週齢の雄CD1マウスの群(処理群につきn=4)に、40mg/kgのISIS MOEギャップマーGalNAc3修飾アンチセンスオリゴヌクレオチド(80mg/kg/週の用量)、または上記表14の20mg/kgのISIS(S)-cEt含有ギャップマーGalNAc3修飾アンチセンスオリゴヌクレオチド(40mg/kg/週の用量)を1週間に2回6週間にわたって皮下注射した。雄CD1マウスの1つの群には、PBSを1週間に2回6週間にわたって皮下注射した。最後の投与から48時間後にマウス
を安楽死させ、臓器及び血漿を採取してさらに分析した。肝臓、腎臓、膵臓、心臓及び肺を組織診断のために採取し、血漿を採取して特定の血漿化学マーカーのレベルを測定した。
【0437】
血漿化学マーカー
ISIS GalNAc修飾アンチセンスオリゴヌクレオチドが肝臓及び腎臓の機能に与える効果を評価するために、トランスアミナーゼの血漿レベル、ビリルビン、アルブミン、クレアチニン、及びBUNを、自動臨床化学分析器(Hitachi Olympus AU400e、Melville、NY)を使用して測定した。結果を表21に示す。アンチセンスオリゴヌクレオチドの予想される範囲外で、肝臓機能マーカーまたは腎臓機能マーカーのいずれかのレベルの変化を引き起こしたISISオリゴヌクレオチドは、さらなる試験から除外した。
【表22】
【0438】
体重及び臓器重量
全群のマウスの体重を、実験の開始時と試験終了まで毎週測定した。肝臓、腎臓及び膵臓の重量は、試験の最後にも測定し、ベースラインのPBS対照群と比較した体重及び臓器重量の変化を表22に示す。アンチセンスオリゴヌクレオチドの予想される範囲外で、臓器の重量を変化させたISISオリゴヌクレオチドは、さらなる試験から除外した。
【表23】
【0439】
血液検査
CD1マウスにおけるISIS GalNAc修飾アンチセンスオリゴヌクレオチドが血液学的パラメータに与える効果について評価するために、約1.3mLの血液の血液サンプルを、利用可能な試験動物それぞれからK-EDTAを含む管に採取した。サンプルは、赤血球(RBC)の数、白血球細胞数(WBC)、個別の白血球数、例えば、単球、好中球、リンパ球のもの、ならびに血小板数、ヘモグロビン含有量及びヘマトクリッ
トについて、ADVIA120血液分析器(Bayer、USA)を使用して分析した。結果を表23に示す。
【0440】
データは、オリゴヌクレオチドが、当該用量で、アンチセンスオリゴヌクレオチドについての予想範囲を超えて、血液学的パラメータを有意に変化させなかったことを示している。概して、ISIS GalNAc共役アンチセンスオリゴヌクレオチドは、マウスの血液学的パラメータの観点から耐性が良好であった。
【表24】
【0441】
CD-1マウスの肝臓、腎臓、心臓及び肺におけるGalNAc共役TMPRSS6アンチセンス化合物の組織学的評価を実施した。概して、GalNAc共役アンチセンスオリゴヌクレオチドは、非共役オリゴヌクレオチドより腎臓において約8倍の活性を有する用量で投与したにもかかわらず、TMPRSS6の阻害に良好な耐性を有する有用な化合物であり、鉄蓄積疾患、障害または病態の治療の重要な候補である。
【0442】
実施例9:huTMPRSS6トランスジェニックマウスにおけるTMPRSS6を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドの用量反応
TMPRSS6(ISIS番号702843、705051、705052、705053、706940、706941、706942及び706943)を標的とする8個のISISGalNAc修飾アンチセンスオリゴヌクレオチドならびに2つの親化合物(ISIS585774及びISIS630718)に対して、huTMPRSS6トランスジェニックマウスにおけるヒトTMPRSS6 mRNA発現を阻害する能力について用量反応試験で試験を行い、評価した。
【0443】
処理
huTMPRSS6 Tgマウスを12時間の明/暗周期で保持し、正常ラット固形飼料を自由に摂取させた。マウスは、実験の開始前に研究施設で少なくとも7日間順応させた。アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)を緩衝生理食塩水(PBS)で調製し、0.2ミクロンのフィルターで濾過することによって無菌にした。オリゴヌクレオチドを0.9%のPBSに、注射のために溶解した。
【0444】
およそ3.5~4.5週齢の雄及び雌huTMPRSS6マウスを、それぞれ4匹のマウスの44の群に分けた(各群、2匹の雄と2匹の雌の群)。マウスにISISオリゴヌクレオチドを1週間に2回3週間にわたって皮下注射した。マウスの1つの群に、PBSを、1週間に2回3週間にわたって皮下注射した。最後の投与から48時間後に、各マウスから血液を採取し、マウスを屠殺し、組織を採取した。
【0445】
RNA分析
処理期間の最後に、ヒトTMPRSS6 mRNA発現の定量的リアルタイムPCR分析及び測定を行うために、全RNAをトランスジェニックマウスの肝臓から抽出した。TMPRSS6 mRNAレベルを、ハウスキーピング遺伝子のシクロフィリンAのレベルで正規化し、mCYCLO_24プライマープローブセットを使用して、標準プロトコルに従って測定した。結果は、PBS処理対照に正規化され、「%PBS」として示される各処理群についてのTMPRSS6 mRNAレベルの平均パーセントとして、以下の表24に示す。100超の値は、単純に「100」として示される。負の値は、単純に「0」として示される。
【0446】
ヒトプライマープローブセットRTS4586(配列番号86として本明細書で示される正方向配列TGATAACAGCTGCCCACTG;配列番号87として本明細書で示される逆方向配列TCACCTTGAAGGACACCTCT;配列番号88として本明細書で示されるプローブ配列AGTTCTGCCACACCTTGCCCA)を使用してmRNAレベルを測定した。
【表25】
【0447】
血漿化学マーカー
ISISオリゴヌクレオチドが肝臓及び腎臓の機能に与える効果を評価するために、トランスアミナーゼの血清レベル、ビリルビン及びBUNを、自動臨床化学分析器(Hitachi Olympus AU400e、Melville、NY)を使用して測定し、以下の表25に示した。アンチセンスオリゴヌクレオチドの予想される範囲外で、肝臓機能マーカーまたは腎臓機能マーカーのいずれかのレベルの変化を引き起こしたISISオリゴヌクレオチドは、さらなる試験から除外した。
【表26】
【0448】
全てのGalNAc共役ASOは耐性が良好であり、臓器重量及び体重ならびに血清トランスアミナーゼレベルの大きな変化を示さなかった。
【0449】
各ASOの最大半量有効用量(ED50)を計算し、以下の表26に表す。
【表27】
【0450】
ED50計算値は、GalNAc共役ASOが、非共役ASOより約10倍もの効能があることを示した。ISIS 702843は、最も強力なGalNAc共役5-10-5 MOEギャップマー化合物であった。
【0451】
実施例10:TMPRSS6を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドの粘度の評価
アンチセンスオリゴヌクレオチドの粘度を、40cP超の粘度を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドを排除するために測定した。40cP超の粘度を有するオリゴヌクレオチドは、対象への投与に適してない。
【0452】
ISISオリゴヌクレオチド(32~35mg)を、ガラス製バイアルに加え、120μLの水を添加し、アンチセンスオリゴヌクレオチドを50℃でバイアルを加熱することによって、溶液に溶解させた。加熱前の試料の部分(75μL)をマイクロ粘度計(Cambridge)に分注した。マイクロ粘度計の温度を25℃に設定し、試料の粘度を測定した。加熱前の試料の別の部分(20μL)を、85℃、260nMでのUV読み取り(Cary UV instrument)を行うために、10mLの水に分注した。結果は表27に示されるが、大部分のGalNAcアンチセンスオリゴヌクレオチドの溶液は、前述の基準の下で粘度が最適であることを示している。アンチセンスオリゴヌクレオチド706941は、試験を行ったアンチセンスオリゴヌクレオチドの中で唯一、40cP超の粘度レベルを有するものであった。
【表28】
【0453】
実施例11:カニクイザルにおける、GalNAc共役体を含むTMPRSS6を標
的とするオリゴヌクレオチドによるin vivoでのアンチセンス阻害
当該試験が行われたとき、TMPRSS6についてのカニクイザルゲノム配列は、国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)のデータベースで入手できなかったため、ヒトTMPRSS6を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドとカニクイザル遺伝子配列との交差反応を確認することができなかった。代わりに、上記実施例6に記載されるように、相同性について、アンチセンスオリゴヌクレオチドの配列をアカゲザル配列と比較した。アカゲザル配列に対する相同性を有するISISオリゴヌクレオチドは、カニクイザル配列とも完全に交差反応があることが予測される。
【0454】
カニクイザルにおいて試験するために選択された10個のヒトTMPRSS6アンチセンスオリゴヌクレオチドは、上記実施例6に記載されるアカゲザルゲノム配列(配列番号95)と0のミスマッチを有した。
【0455】
試験デザイン
10個のアンチセンスオリゴヌクレオチドを、有効性及び耐性について、ならびに肝臓及び腎臓の薬物動態プロファイルについて、雄カニクイザルにおけるTMPRSS6mRNAのアンチセンス阻害の13週にわたる試験で評価した。サルを、8個のISIS GalNAc修飾ASO、及び表28に示されるTMPRSS6を標的とする2個の非共役親アンチセンスオリゴヌクレオチドアンチセンスオリゴヌクレオチドを皮下投与することによって処理した。
【表29】
【0456】
GalNAc共役ASOの高用量(30mpk)の群により毒性を評価した。GalNAc共役ASOの低用量(5mpk)の群と、対応する非共役親配列とを比較して活性を評価した。群2、3、6、7及び8は、同じ配列であり、混合された骨格(MBB)化合物ISIS番号702843を、低用量と高用量の両方で試験し、さらに完全なホスホロチオエート化合物ISIS第705051と比較した(同様に低用量と高用量の両方で試験した)。群9、10、11及び14は、同じ配列であり、ISIS番号706940を、低用量と高用量の両方で試験した。
【0457】
処理
試験の前に、サルを隔離し、その間、総体的な健康を毎日観察した。サルは2~4歳であり、体重が2~4kgであった。56匹のカニクイザルを、1群につき4匹のサルの14の処理群にランダムに割り付けた。サルに、ISISオリゴヌクレオチドまたはPBSを、適切な大きさのステンレス鋼投与針及びシリンジを使用して、最初の週は1日おきに、その後は1週間に1回の合計15回を11週間にわたって皮下注射した。最初の投与の前1週目、その後9日目、16日目、30日目、44日目、58日目、72日目、及び86日目に再び尾を出血させた。
【0458】
試験期間中、病気または苦痛の兆候について、サルを1日2回観察した。処理、怪我または病気による瞬間的なまたはわずかな痛みまたは苦痛より大きな痛みまたは苦痛を経験している動物に対して、獣医学のスタッフが、試験責任者との相談の後、承認された鎮痛薬または薬剤を使用して治療を行い、痛みを取り除いた。健康状態が良くないまたは瀕死状態であると考えられる動物を特定して、さらなるモニタリングを行い、安楽死を想定した。動物の安楽死を計画して86日目に実行した。実施例に記載のプロトコルは、動物実験委員会(Institutional Animal Care and Use Committee(IACUC))によって承認された。
【0459】
最初の投与の前、及びその後の様々な時点で、臨床病理エンドポイント(血液検査、臨床化学、凝固、補体Bb及びC3、サイトカイン及びケモカイン分析)のために血液を採取し、尿中の化学的性質を測定した。実験期間のベースライン及び最後に、肝臓のTMPRSS6 mRNA発現、血清ヘプシジン(Intrinsic LifeSciences、San Diego、CA)、血清鉄及び血清トランスフェリン飽和等の特定の薬理学的エンドポイントを測定した。試験の最後に、体重及び臓器重量、組織の組織病理、ならびに肝臓及び腎臓のPK分析値を測定した。体重、サイトカインまたはアルブミンレベルの有意な変化は観察されなかった。
【0460】
TMPRSS6 RNA分析
試験の最後に、様々なプライマープローブセットを使用する、TMPRSS6のmRNA発現の測定のリアルタイムPCR分析のために、肝臓からRNAを抽出した。プライマープローブセットRTS3840を使用した代表的なデータを以下の表に示す。表29の結果は、生理食塩水対照と比較したTMPRSS6 mRNAの阻害率として表され、シクロフィリン(mCYCLO_24プライマープローブセット)で正規化した。
【表30】
【0461】
ISIS番号705051、702843、706942及び706943はかなり有効性があり、13週の投与後に30mpkで、≧89%の標的減少を示した。
【0462】
ヘプシジン分析
血清ヘプシジンレベルを、以下の表30に示される時点で測定した。結果をパーセント生理食塩水対照として表す。「-7日目」は、最初の投与が行われる1週間前を示す。
【表31】
【0463】
表は、試験期間中に血清ヘプシジンレベルが増加したことを示す。
【0464】
血清鉄及びトランスフェリン飽和分析
14の処理群のそれぞれの4匹の対象の平均値を以下の表31に示す。表31に示されるように、血清鉄レベル及びトランスフェリン飽和(「Tf sat」)は、対照群と比較して、処理群において86日目に減少した。
【表32】
ある態様において、本発明は以下であってもよい。
[態様1]配列番号1の核酸塩基3162~3184の等しい長さの部分と相補的な少なくとも8個の連続した核酸塩基の部分を含む核酸塩基配列を有する12~30個の連結したヌクレオシドから成る修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物であって、前記修飾オリゴヌクレオチドの核酸塩基配列が、配列番号1と少なくとも80%相補的である、前記化合物。
[態様2]前記修飾オリゴヌクレオチドが、15~30、15~25、15~24、16~24、17~24、18~24、19~24、20~24、19~22、20~22、16~20、16または20個の連結したヌクレオシドから成る、態様1に記載の化合物。
[態様3]前記修飾オリゴヌクレオチドが、配列番号1の等しい長さの部分と相補的な少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20の連続した核酸塩基の部分を含む核酸塩基配列を含む、態様1に記載の化合物。
[態様4]前記修飾オリゴヌクレオチドの核酸塩基配列が、配列番号1と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%相補的である、先行態様のいずれかに記載の化合物。
[態様5]配列番号63、77の核酸塩基配列のいずれかの少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16個の連続した核酸塩基を含む、核酸塩基配列を有する12~30個の連結したヌクレオシドから成る修飾オリゴヌクレオチドを含む、化合物。
[態様6]配列番号23、36、37の核酸塩基配列のいずれかの少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、または20個の連続した核酸塩基を含む、核酸塩基配列を有する12~30個の連結したヌクレオシドから成る修飾オリゴヌクレオチドを含む、化合物。
[態様7]12~30個の連結したヌクレオシドから成り、配列番号36の核酸塩基配列の少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、または20個の連続した核酸塩基を含む、核酸塩基配列を有する修飾オリゴヌクレオチドを含む、化合物。
[態様8]前記修飾オリゴヌクレオチドが、一本鎖である、前記態様のいずれかに記載の化合物。
[態様9]少なくとも1つのヌクレオシド間結合が、修飾ヌクレオシド間結合である、先行態様のいずれかに記載の化合物。
[態様10]少なくとも1つの修飾ヌクレオシド間結合が、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合である、態様9に記載の化合物。
[態様11]修飾ヌクレオシド間結合のそれぞれが、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合である、態様9に記載の化合物。
[態様12]前記修飾オリゴヌクレオチドが、少なくとも1つの修飾糖である、先行態様のいずれかに記載の化合物。
[態様13]少なくとも1つの修飾糖が、二環糖である、態様12に記載の化合物。
[態様14]少なくとも1つの修飾糖が、2’-O-メトキシエチル、拘束エチル、3’-フルオロ-HNA、または4’-(CH-O-2’架橋を含み、ここでnが1または2である、態様12に記載の化合物。
[態様15]少なくとも1つのヌクレオシドが、修飾核酸塩基を含む、先行態様のいずれかに記載の化合物。
[態様16]前記核酸塩基が、5-メチルシトシンである、態様15に記載の化合物。
[態様17]前記修飾オリゴヌクレオチドが、12~30個の連結したヌクレオシドから成り、
a. 連結したデオキシヌクレオシドから成るギャップセグメント、
b. 連結したヌクレオシドから成る5’ウイングセグメント、及び
c. 連結したヌクレオシドから成る3’ウイングセグメントを含み、
前記ギャップセグメントが、5’ウイングセグメントと3’ウイングセグメントとの間に位置し、各ウイングセグメントの各ヌクレオシドが修飾糖を含む、先行態様のいずれかに記載の化合物。
[態様18]前記修飾オリゴヌクレオチドが、16~20個の連結したヌクレオシドから成る、態様17に記載の方法。
[態様19]前記修飾オリゴヌクレオチドが、20個の連結したヌクレオシドから成り、
a.10個の連結したデオキシヌクレオシドから成るギャップセグメント、
b.5個の連結したヌクレオシドから成る5’ウイングセグメント、及び
c.5個の連結したヌクレオシドから成る3’ウイングセグメントを含み、
前記ギャップセグメントが、5’ウイングセグメントと3’ウイングセグメントとの間に位置し、各ウイングセグメントの各ヌクレオシドが、2’-O-メトキシエチル糖を含み、少なくとも1つのヌクレオシド間結合が、ホスホロチオエート結合であり、各シトシン残基が、5-メチルシトシンである、態様17に記載の化合物。
[態様20]配列番号36の少なくとも8個の連続した核酸塩基を含む核酸塩基配列を有する20個の連結したヌクレオシドから成る修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物であって、前記修飾オリゴヌクレオチドが、
a.10個の連結したデオキシヌクレオシドから成るギャップセグメント、
b.5個の連結したヌクレオシドから成る5’ウイングセグメント、
c.5個の連結したヌクレオシドから成る3’ウイングセグメント、及び
d.GalNAc共役体を含み、
前記ギャップセグメントが5’ウイングセグメントと3’ウイングセグメントとの間に位置し、各ウイングセグメントの各ヌクレオシドが2’-O-メトキシエチル糖を含み、少なくとも1つのヌクレオシド間結合がホスホロチオエート結合であり、各シトシン残基が5-メチルシトシンである、前記化合物。
[態様21]配列番号77の少なくとも8個の連続した核酸塩基を含む核酸塩基配列を有する16個の連結したヌクレオシドから成る修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物であって、前記修飾オリゴヌクレオチドが、
a.9個の連結したデオキシヌクレオシドから成るギャップセグメント、
b.3個の連結したヌクレオシドから成る5’ウイングセグメント、
c.4個の連結したヌクレオシドから成る3’ウイングセグメント、及び
d.GalNAc共役体を含み、
前記ギャップセグメントが5’ウイングセグメントと3’ウイングセグメントとの間に位置し、各ウイングセグメントの各ヌクレオシドが修飾糖を含み、各ヌクレオシド間結合がホスホロチオエート結合であり、各シトシン残基が5-メチルシトシンである、前記化合物。
[態様22]以下の式:mCes Teo Teo Teo Aeo Tds Tds mCds mCds Ads Ads Ads Gds Gds Gds mCeo Aeo Ges mCes Te(配列番号36)に従う修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物であって、式中、
A=アデニン、
mC=5-メチルシトシン、
G=グアニン、
T=チミン、
e=2’-O-メトキシエチル修飾ヌクレオシド、
d=2’-デオキシヌクレオシド、
s=ホスホロチオエートヌクレオシド間結合である、前記化合物。
[態様23]以下の式:mCks Aes Gks mCds Tds Tds Tds Ads Tds Tds mCds mCds Aes Aes Aks Gk(配列番号77)に従う修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物であって、式中、
A=アデニン、
mC=5-メチルシトシン、
G=グアニン、
T=チミン、
e=2’-O-メトキシエチル修飾ヌクレオシド、
d=2’-デオキシヌクレオシド、
s=ホスホロチオエートヌクレオシド間結合、
k=拘束エチルである、前記化合物。
[態様24]共役GalNAc部分をさらに含む、先行態様のいずれかに記載の化合物。
[態様25]以下の式に従う修飾オリゴヌクレオチド。
【化27】
[態様26]以下の式に従う修飾オリゴヌクレオチド。
【化28】
[態様27]先行態様のいずれかに記載の化合物もしくは修飾オリゴヌクレオチド、またはその塩、及び薬学的に許容可能な担体もしくは希釈剤を含む、組成物。
[態様28]治療に使用するための、先行態様のいずれかに記載の化合物または修飾オリゴヌクレオチドを含む、組成物。
[態様29]医薬品の調製に使用するための、先行態様のいずれかに記載の化合物または修飾オリゴヌクレオチドを含む、組成物。
[態様30]細胞、組織、臓器または動物におけるTMPRSS6を減少させる際に使用するための、先行態様のいずれかに記載の化合物または修飾オリゴヌクレオチド。
[態様31]動物における、鉄蓄積を減少し、ヘプシジン発現レベルを増加し、かつ/またはトランスフェリンの飽和度を減少するために使用するための、先行態様のいずれかに記載の化合物または修飾オリゴヌクレオチド。
[態様32]動物における過剰鉄蓄積に関連する疾患、障害または病態を治療し、予防し、またはその進行を遅らせる際に使用するための、先行態様のいずれかに記載の化合物または修飾オリゴヌクレオチド。
[態様33]前記疾患、障害または病態が、赤血球増加症、ヘモクロマトーシスまたは貧血である、態様32に記載の化合物または修飾オリゴヌクレオチド。
[態様34]前記貧血が、遺伝性貧血、骨髄異形成症候群または重症慢性溶血である、態様33に記載の化合物または修飾オリゴヌクレオチド。
[態様35]前記遺伝性貧血が、鎌状赤血球貧血、サラセミア、ファンコニー貧血、ダイアモンド・ブラックファン貧血、シュワックマン・ダイアモンド症候群、赤血球膜傷害、グルコース-6-リン酸脱水素酵素欠損症、または遺伝性出血性毛細血管拡張症である、態様34に記載の化合物または修飾オリゴヌクレオチド。
[態様36]前記サラセミアが、β‐サラセミアである、態様35に記載の化合物または修飾オリゴヌクレオチド。
【配列表】
0007037681000001.app