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特許7037687[4-(1,3,3-トリメチル-2-オキソ-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-7-イル)フェノキシ]エチルオキシ化合物またはその塩
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-08
(45)【発行日】2022-03-16
(54)【発明の名称】[4-(1,3,3-トリメチル-2-オキソ-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-7-イル)フェノキシ]エチルオキシ化合物またはその塩
(51)【国際特許分類】
   C07D 241/44 20060101AFI20220309BHJP
   A61K 31/498 20060101ALI20220309BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALI20220309BHJP
   A61K 31/661 20060101ALI20220309BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20220309BHJP
   A61P 11/02 20060101ALI20220309BHJP
   A61P 11/04 20060101ALI20220309BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20220309BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220309BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20220309BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20220309BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20220309BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220309BHJP
   A61P 37/00 20060101ALI20220309BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220309BHJP
   C07D 403/12 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
C07D241/44 CSP
A61K31/498
A61K31/5377
A61K31/661
A61P1/00
A61P11/02
A61P11/04
A61P11/06
A61P17/00
A61P19/02
A61P19/08
A61P27/02
A61P29/00
A61P29/00 101
A61P37/00
A61P43/00 111
C07D403/12
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021089664
(22)【出願日】2021-05-28
(62)【分割の表示】P 2016164830の分割
【原出願日】2016-08-25
(65)【公開番号】P2021138728
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2021-05-28
(31)【優先権主張番号】P 2015166247
(32)【優先日】2015-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000177634
【氏名又は名称】参天製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】川島 健二
(72)【発明者】
【氏名】山崎 裕輔
(72)【発明者】
【氏名】高岡 慎治
(72)【発明者】
【氏名】椎 大介
(72)【発明者】
【氏名】小田 知子
(72)【発明者】
【氏名】松山 高央
【審査官】阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-90117(JP,A)
【文献】特開2009-84273(JP,A)
【文献】特開2009-84274(JP,A)
【文献】特開2009-7344(JP,A)
【文献】特開2008-74829(JP,A)
【文献】特開2009-298775(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 241/44
A61K 31/498
A61K 31/5377
A61K 31/661
A61P 1/00
A61P 11/02
A61P 11/04
A61P 11/06
A61P 17/00
A61P 19/02
A61P 19/08
A61P 27/02
A61P 29/00
A61P 37/00
A61P 43/00
C07D 403/12
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物またはその塩。
【化17】

[式中、Rが、水素原子、低級アルキル基または-COORを示し;
が低級アルキル基の場合、該低級アルキル基はハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、-COOR、-CONRおよびシアノ基から選択される1または複数個の基を置換基として有してもよく;
が、水素原子、低級アルキルカルボニル基、複素環カルボニル基またはリン酸基を示し;
が低級アルキルカルボニル基の場合、該低級アルキルカルボニル基はヒドロキシ基、アミノ基、低級アルキルアミノ基およびカルボキシ基から選択される1または複数個の基を置換基として有してもよく、
が低級アルキル基を示し;
およびRが同一または異なって、水素原子、低級アルキル基を示し、またはRおよびRが一緒になって複素環を示し;
前記低級アルキル基は、炭素原子数が1~8個の直鎖または分枝のアルキル基であり、
前記低級アルキルカルボニル基および低級アルキルアミノ基は、それぞれ、炭素原子数が1~8個の直鎖または分枝のアルキル基を有するカルボニル基およびアミノ基である。]
【請求項2】
一般式(1)において、Rが、低級アルキル基を示し;
該低級アルキル基は1または複数個のヒドロキシ基を置換基として有してもよく;
が、水素原子または低級アルキルカルボニル基を示し;
が低級アルキルカルボニル基の場合、該低級アルキルカルボニル基は1または複数個の低級アルキルアミノ基を置換基として有してもよい請求項1に記載の化合物またはその塩。
【請求項3】
一般式(1)において、Rが、メチルまたは1-ヒドロキシエチルを示し;
が、水素原子またはジメチルアミノメチルカルボニルを示す請求項1に記載の化合物またはその塩。
【請求項4】
・(S)-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-[4-(2-ヒドロキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-[4-(2-ヒドロキシ-3,3,3-トリフルオロプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・(R)-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-[4-(2-ヒドロキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・(R)-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-[4-(2-ヒドロキシブチル)オキシ-2-メトキシフェニル]-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・(S)-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-[4-(2-ヒドロキシブチル)オキシ-2-メトキシフェニル]-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・(R)-7-[4-(2-エトキシカルボニル-2-ヒドロキシエチル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・(S)-7-[4-(2,4-ジヒドロキシブチル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・(R)-7-[4-(2,4-ジヒドロキシブチル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・(S)-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-[4-(2-ヒドロキシアセトキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-[4-(2-ヒドロキシエチル)オキシ-2-メトキシフェニル]-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・7-[4-(2,3-ジヒドロキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・(S)-7-[4-(2,3-ジヒドロキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・(R)-7-[4-(2,3-ジヒドロキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・(R)-7-[4-(3-シアノ-2-ヒドロキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・(S)-7-[4-(3-シアノ-2-ヒドロキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・7-[4-(3-フルオロ-2-ヒドロキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・7-[4-(3-エトキシカルボニル-2-ヒドロキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・7-[4-(3-t-ブトキシカルボニル-2-ヒドロキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・7-[4-(3,3-ジメチル-2-ヒドロキシブチル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・7-[4-(3-カルボキシ-2-ヒドロキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-[4-[3-(N-ピロリジルカルボニル)-2-ヒドロキシプロピル]オキシ-2-メトキシフェニル]-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-[4-[3-(N-モルホリノ)カルボニル-2-ヒドロキシプロピル]オキシ-2-メトキシフェニル]-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-[4-[3-(N-ピペリジノ)カルボニル-2-ヒドロキシプロピル]オキシ-2-メトキシフェニル]-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・(S)-7-[4-[2-(N,N-ジメチルアミノアセトキシ)プロピル]オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-[4-[(2S)-[(2S)-ピロリジルカルボニルオキシ]プロピル]オキシ-2-メトキシフェニル]-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・(R)-7-[4-[2-(N,N-ジメチルアミノアセトキシ)プロピル]オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・(S)-7-[4-(2-アミノアセトキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・7-[4-[(2S)-[(2S)-アミノ-3-メチルブタノイルオキシ]プロピル]オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・(S)-7-[4-[2-(3-カルボキシプロパノイルオキシ)プロピル]オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・(S)-7-[4-[2-(2,3-ジヒドロキシプロパノイル)オキシプロピル]オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・7-[4-[(2S)-[(2S)-アミノ-3-ヒドロキシプロパノイルオキシ]プロピル]オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・(S)-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-[4-(2-ホスホノヒドロキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・(S)-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-[4-(2-ホスホノヒドロキシブチル)オキシ-2-メトキシフェニル]-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オンおよび、
・(S)-7-[4-(3-シアノ-2-ホスホノヒドロキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オンからなる群より選択される化合物またはその塩。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物またはその塩を含有する医薬組成物。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物またはその塩を有効成分とするグルココルチコイド受容体アゴニスト。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物またはその塩を有効成分として含有するグルココルチコイド受容体活性化剤。
【請求項8】
請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物またはその塩を有効成分として含有する、グルココルチコイド受容体が関与する疾患の予防または治療剤であって、グルココルチコイド受容体が関与する疾患が、炎症性の骨・関節疾患、眼炎症性疾患、喘息、気管支炎、鼻炎、皮膚炎および炎症性腸疾患からなる群より選択される少なくとも1種である、予防または治療剤。
【請求項9】
炎症性の骨・関節疾患が、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、変形性関節症、骨粗鬆症および脊椎関節炎からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項8に記載の予防または治療剤。
【請求項10】
眼炎症性疾患が、前眼部炎症性疾患である、請求項8に記載の予防または治療剤。
【請求項11】
眼炎症性疾患が、後眼部炎症性疾患である、請求項8に記載の予防または治療剤。
【請求項12】
前眼部炎症性疾患が、角膜炎、角結膜炎、結膜炎、眼瞼炎、眼球乾燥症候群、アレルギー性結膜炎、ぶどう膜炎、前眼部の手術後炎症および眼組織移植拒絶反応による炎症からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項10に記載の予防または治療剤。
【請求項13】
後眼部炎症性疾患が、加齢黄斑変性、糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫、血管新生黄斑症、増殖性硝子体網膜症、網膜中心静脈閉塞症、網膜中心動脈閉塞症、網膜静脈分枝閉塞症、網膜動脈分枝閉塞症、外傷を起因とした後眼部の炎症や変性、網膜炎、ぶどう膜炎、強膜炎および視神経炎からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項11に記載の予防または治療剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な[4-(1,3,3-トリメチル-2-オキソ-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-7-イル)フェノキシ]エチルオキシ化合物またはその塩に関する。本発明の化合物またはその塩は、グルココルチコイド受容体アゴニスト活性を有し、医薬として、特にグルココルチコイド受容体が関与する疾患の予防または治療剤として有用である。
【背景技術】
【0002】
グルココルチコイド受容体は、核内レセプタースーパーファミリーに属する94kDaのリガンド-活性化細胞内転写調節因子である。この受容体は、その転写調節作用により、炭水化物・タンパク質・脂肪などの代謝調節、免疫・炎症反応の抑制、中枢神経系の活性化、心血管系機能の調節、基礎・ストレス関連ホメオスタシスなどに影響を及ぼすことが知られている(非特許文献1、特許文献1)。
【0003】
よって、グルココルチコイド受容体に対する結合活性を有する化合物、特にグルココルチコイド受容体に対するアゴニスト作用を有する化合物(以下、「グルココルチコイド受容体アゴニスト」ともいう)は、これら疾患の予防および/または治療剤として有用であると考えられている。
【0004】
特許文献2は、グルココルチコイド受容体モジュレーターである1,2,3,4-テトラヒドロキノキサリノン誘導体を開示している。
【0005】
特許文献3は、グルココルチコイド受容体アゴニストである1,3,3-トリメチル-7-フェニル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン誘導体を開示している。
【0006】
しかし、[4-(1,3,3-トリメチル-2-オキソ-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-7-イル)フェノキシ]エチルオキシ化合物またはその塩はいずれの文献にも具体的に開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2002-193955号公報
【文献】特開2008-74829号公報
【文献】特開2009-84273号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】総合臨床,54(7),1951-2076(2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
新規な[4-(1,3,3-トリメチル-2-オキソ-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-7-イル)フェノキシ]エチルオキシ化合物またはその塩を提供することは非常に興味深い課題である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、[4-(1,3,3-トリメチル-2-オキソ-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-7-イル)フェノキシ]エチルオキシ化合物またはその塩の合成研究を行い、数多くの新規化合物を創製することに成功した。さらにその化合物の薬理作用について研究した結果、[4-(1,3,3-トリメチル-2-オキソ-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-7-イル)フェノキシ]エチルオキシ化合物またはその塩がグルココルチコイド受容体アゴニスト活性を有し、医薬として有用であることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
本発明は下記一般式(1)で表される化合物またはその塩(以下、「本発明化合物」ともいう)およびそれらを含む医薬組成物に関する。また、その医薬用途における好ましい発明は、グルココルチコイド受容体アゴニストに関するものであり、その対象疾患としては、グルココルチコイド作用が関与する疾患、すなわち、内分泌疾患、膠原病、腎疾患、心疾患、アレルギー性疾患、血液疾患、消化器疾患、肝疾患、肺疾患、重症感染症、結核性疾患、神経疾患、悪性腫瘍、抗悪性腫瘍剤投与に伴う消化器症状、外科疾患、産婦人科疾患、泌尿器科疾患、皮膚疾患、耳鼻咽喉科疾患、口腔外科疾患、緑内障、リウマチ性疾患、炎症性疾患などが挙げられる。特に好ましい発明は、これらの疾患の予防または治療剤に関する発明である。また、本発明は、これらの疾患の予防または治療における本発明化合物の使用、これらの疾患の予防または治療のための医薬の製造における本発明化合物の使用、これらの疾患の予防または治療するための方法であって、本発明化合物の有効量を投与することを含む方法にも関する。
【0012】
【化1】

[式中、Rは、水素原子、置換基を有してもよい低級アルキル基、カルボキシ基、カルボキシ基のエステル、カルボキシ基のアミドまたはシアノ基を示し;
は、水素原子、置換基を有してもよい低級アルキルカルボニル基、置換基を有してもよい低級シクロアルキルカルボニル基、置換基を有してもよいアリールカルボニル基、置換基を有してもよい複素環カルボニル基、カルボキシ基のエステル、カルボキシ基のアミド、リン酸基またはリン酸基のエステルを示す。]
【0013】
すなわち、本発明は以下に関する。
【0014】
項1.下記一般式(1)で表される化合物またはその塩。
【化2】

[式中、Rは、水素原子、置換基を有してもよい低級アルキル基、カルボキシ基、カルボキシ基のエステル、カルボキシ基のアミドまたはシアノ基を示し;
は、水素原子、置換基を有してもよい低級アルキルカルボニル基、置換基を有してもよい低級シクロアルキルカルボニル基、置換基を有してもよいアリールカルボニル基、置換基を有してもよい複素環カルボニル基、カルボキシ基のエステル、カルボキシ基のアミド、リン酸基またはリン酸基のエステルを示す。]
【0015】
項2.一般式(1)において、
が、水素原子、低級アルキル基、カルボキシ基、カルボキシ基のエステル、カルボキシ基のアミドまたはシアノ基を示し;
が低級アルキル基の場合、該低級アルキル基はハロゲン原子、低級シクロアルキル基、アリール基、複素環基、ヒドロキシ基、ヒドロキシ基のエステル、低級アルコキシ基、ハロゲン原子で置換された低級アルコキシ基、低級シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アミノ基、低級アルキルアミノ基、低級シクロアルキルアミノ基、アリールアミノ基、複素環アミノ基、アミノ基のアミド、低級アルキルアミノ基のアミド、低級シクロアルキルアミノ基のアミド、アリールアミノ基のアミド、複素環アミノ基のアミド、低級アルキルカルボニル基、低級シクロアルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、複素環カルボニル基、カルボキシ基、カルボキシ基のエステル、カルボキシ基のアミドおよびシアノ基から選択される1または複数個の基を置換基として有してもよく;
が、水素原子、低級アルキルカルボニル基、低級シクロアルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、複素環カルボニル基、カルボキシ基、カルボキシ基のエステル、カルボキシ基のアミド、リン酸基またはリン酸基のエステルを示し;
が低級アルキルカルボニル基、低級シクロアルキルカルボニル基、アリールカルボニル基または複素環カルボニル基の場合、該低級アルキルカルボニル基、該低級シクロアルキルカルボニル基、該アリールカルボニル基または該複素環カルボニル基はハロゲン原子、低級シクロアルキル基、アリール基、複素環基、ヒドロキシ基、ヒドロキシ基のエステル、低級アルコキシ基、ハロゲン原子で置換された低級アルコキシ基、低級シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アミノ基、低級アルキルアミノ基、低級シクロアルキルアミノ基、アリールアミノ基、複素環アミノ基、アミノ基のアミド、低級アルキルアミノ基のアミド、低級シクロアルキルアミノ基のアミド、アリールアミノ基のアミド、複素環アミノ基のアミド、低級アルキルカルボニル基、低級シクロアルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、複素環カルボニル基、カルボキシ基、カルボキシ基のエステル、カルボキシ基のアミドおよびシアノ基から選択される1または複数個の基を置換基として有してもよい項1に記載の化合物またはその塩。
【0016】
項3.一般式(1)において、
が、水素原子、低級アルキル基、カルボキシ基またはカルボキシ基のエステルを示し;
が低級アルキル基の場合、該低級アルキル基はハロゲン原子、ヒドロキシ基、低級アルコキシ基、低級アルキルカルボニル基、カルボキシ基、カルボキシ基のエステル、カルボキシ基のアミドおよびシアノ基から選択される1または複数個の基を置換基として有してもよく;
が、水素原子、低級アルキルカルボニル基、複素環カルボニル基、リン酸基またはリン酸基のエステルを示し;
が低級アルキルカルボニル基の場合、該低級アルキルカルボニル基はハロゲン原子、ヒドロキシ基、ヒドロキシ基のエステル、低級アルコキシ基、ハロゲン原子で置換された低級アルコキシ基、アミノ基、低級アルキルアミノ基、低級アルキルカルボニル基、カルボキシ基、カルボキシ基のエステル、カルボキシ基のアミドおよびシアノ基から選択される1または複数個の基を置換基として有してもよい項1に記載の化合物またはその塩。
【0017】
項4.一般式(1)において、Rが、水素原子、低級アルキル基またはカルボキシ基のエステルを示し;
が低級アルキル基の場合、該低級アルキル基はハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、カルボキシ基のエステル、カルボキシ基のアミドおよびシアノ基から選択される1または複数個の基を置換基として有してもよく;
が、水素原子、低級アルキルカルボニル基、複素環カルボニル基またはリン酸基を示し;
が低級アルキルカルボニル基の場合、該低級アルキルカルボニル基はヒドロキシ基、アミノ基、低級アルキルアミノ基およびカルボキシ基から選択される1または複数個の基を置換基として有してもよい項1に記載の化合物またはその塩。
【0018】
項5.一般式(1)において、Rが、低級アルキル基を示し;
該低級アルキル基は1または複数個のヒドロキシ基を置換基として有してもよく;
が、水素原子または低級アルキルカルボニル基を示し;
が低級アルキルカルボニル基の場合、該低級アルキルカルボニル基は1または複数個の低級アルキルアミノ基を置換基として有してもよい項1に記載の化合物またはその塩。
【0019】
項6.一般式(1)において、Rが、メチルまたは1-ヒドロキシエチルを示し;
が、水素原子またはジメチルアミノメチルカルボニルを示す項1に記載の化合物またはその塩。
【0020】
項7.
・(S)-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-[4-(2-ヒドロキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-[4-(2-ヒドロキシ-3,3,3-トリフルオロプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・(R)-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-[4-(2-ヒドロキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・(R)-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-[4-(2-ヒドロキシブチル)オキシ-2-メトキシフェニル]-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・(S)-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-[4-(2-ヒドロキシブチル)オキシ-2-メトキシフェニル]-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・(R)-7-[4-(2-エトキシカルボニル-2-ヒドロキシエチル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・(S)-7-[4-(2,4-ジヒドロキシブチル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・(R)-7-[4-(2,4-ジヒドロキシブチル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・(S)-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-[4-(2-ヒドロキシアセトキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-[4-(2-ヒドロキシエチル)オキシ-2-メトキシフェニル]-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・7-[4-(2,3-ジヒドロキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・(S)-7-[4-(2,3-ジヒドロキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・(R)-7-[4-(2,3-ジヒドロキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・(R)-7-[4-(3-シアノ-2-ヒドロキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・(S)-7-[4-(3-シアノ-2-ヒドロキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・7-[4-(3-フルオロ-2-ヒドロキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・7-[4-(3-エトキシカルボニル-2-ヒドロキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・7-[4-(3-t-ブトキシカルボニル-2-ヒドロキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・7-[4-(3,3-ジメチル-2-ヒドロキシブチル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・7-[4-(3-カルボキシ-2-ヒドロキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-[4-[3-(N-ピロリジルカルボニル)-2-ヒドロキシプロピル]オキシ-2-メトキシフェニル]-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-[4-[3-(N-モルホリノ)カルボニル-2-ヒドロキシプロピル]オキシ-2-メトキシフェニル]-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-[4-[3-(N-ピペリジノ)カルボニル-2-ヒドロキシプロピル]オキシ-2-メトキシフェニル]-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・(S)-7-[4-[2-(N,N-ジメチルアミノアセトキシ)プロピル]オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-[4-[(2S)-[(2S)-ピロリジルカルボニルオキシ]プロピル]オキシ-2-メトキシフェニル]-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・(R)-7-[4-[2-(N,N-ジメチルアミノアセトキシ)プロピル]オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・(S)-7-[4-(2-アミノアセトキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・7-[4-[(2S)-[(2S)-アミノ-3-メチルブタノイルオキシ]プロピル]オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・(S)-7-[4-[2-(3-カルボキシプロパノイルオキシ)プロピル]オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・(S)-7-[4-[2-(2,3-ジヒドロキシプロパノイル)オキシプロピル]オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・7-[4-[(2S)-[(2S)-アミノ-3-ヒドロキシプロパノイルオキシ]プロピル]オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・(S)-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-[4-(2-ホスホノヒドロキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・(S)-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-[4-(2-ホスホノヒドロキシブチル)オキシ-2-メトキシフェニル]-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オンおよび、
・(S)-7-[4-(3-シアノ-2-ホスホノヒドロキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オンからなる群より選択される化合物またはその塩。
【0021】
項8.項1~7のいずれか1項に記載の化合物またはその塩を含有する医薬組成物。
【0022】
項9.項1~7のいずれか1項に記載の化合物またはその塩を有効成分とするグルココルチコイド受容体アゴニスト。
【0023】
項10.項1~7のいずれか1項に記載の化合物またはその塩を有効成分として含有するグルココルチコイド受容体活性化剤。
【0024】
項11.項1~7のいずれか1項に記載の化合物またはその塩を有効成分として含有する、グルココルチコイド受容体が関与する疾患の予防または治療剤。
【0025】
項12.グルココルチコイド受容体が関与する疾患が、内分泌疾患、膠原病、腎疾患、心疾患、アレルギー性疾患、血液疾患、消化器疾患、肝疾患、肺疾患、重症感染症、結核性疾患、神経疾患、悪性腫瘍、抗悪性腫瘍剤投与に伴う消化器症状、外科疾患、産婦人科疾患、泌尿器科疾患、皮膚疾患、耳鼻咽喉科疾患、口腔外科疾患、緑内障、リウマチ性疾患および炎症性疾患からなる群より選択される少なくとも1種である、項11に記載の予防または治療剤。
【0026】
項13.炎症性疾患が、炎症性の骨・関節疾患、眼炎症性疾患、喘息、気管支炎、鼻炎、皮膚炎および炎症性腸疾患からなる群より選択される少なくとも1種である、項12に記載の予防または治療剤。
【0027】
項14.炎症性の骨・関節疾患が、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、変形性関節症、骨粗鬆症および脊椎関節炎からなる群より選択される少なくとも1種である、項13に記載の予防または治療剤。
【0028】
項15.眼炎症性疾患が、前眼部炎症性疾患である、項13に記載の予防または治療剤。
【0029】
項16.眼炎症性疾患が、後眼部炎症性疾患である、項13に記載の予防または治療剤。
【0030】
項17.前眼部炎症性疾患が、角膜炎、角結膜炎、結膜炎、眼瞼炎、眼球乾燥症候群、アレルギー性結膜炎、ぶどう膜炎、前眼部の手術後炎症および眼組織移植拒絶反応による炎症からなる群より選択される少なくとも1種である、項15に記載の予防または治療剤。
【0031】
項18.後眼部炎症性疾患が、加齢黄斑変性、糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫、血管新生黄斑症、増殖性硝子体網膜症、網膜中心静脈閉塞症、網膜中心動脈閉塞症、網膜静脈分枝閉塞症、網膜動脈分枝閉塞症、外傷を起因とした後眼部の炎症や変性、網膜炎、ぶどう膜炎、強膜炎および視神経炎からなる群より選択される少なくとも1種である、項16に記載の予防または治療剤。
【0032】
項19.グルココルチコイド受容体が関与する疾患の予防または治療における使用のための、項1~7のいずれか1項に記載の化合物またはその塩。
【0033】
項20.グルココルチコイド受容体が関与する疾患が、内分泌疾患、膠原病、腎疾患、心疾患、アレルギー性疾患、血液疾患、消化器疾患、肝疾患、肺疾患、重症感染症、結核性疾患、神経疾患、悪性腫瘍、抗悪性腫瘍剤投与に伴う消化器症状、外科疾患、産婦人科疾患、泌尿器科疾患、皮膚疾患、耳鼻咽喉科疾患、口腔外科疾患、緑内障、リウマチ性疾患および炎症性疾患からなる群より選択される少なくとも1種である、項19に記載の化合物またはその塩。
【0034】
項21.炎症性疾患が、炎症性の骨・関節疾患、眼炎症性疾患、喘息、気管支炎、鼻炎、皮膚炎および炎症性腸疾患からなる群より選択される少なくとも1種である、項20に記載の化合物またはその塩。
【0035】
項22.炎症性の骨・関節疾患が、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、変形性関節症、骨粗鬆症および脊椎関節炎からなる群より選択される少なくとも1種である、項21に記載の化合物またはその塩。
【0036】
項23.眼炎症性疾患が、前眼部炎症性疾患である、項21に記載の化合物またはその塩。
【0037】
項24.眼炎症性疾患が、後眼部炎症性疾患である、項21に記載の化合物またはその塩。
【0038】
項25.前眼部炎症性疾患が、角膜炎、角結膜炎、結膜炎、眼瞼炎、眼球乾燥症候群、アレルギー性結膜炎、ぶどう膜炎、前眼部の手術後炎症および眼組織移植拒絶反応による炎症からなる群より選択される少なくとも1種である、項23に記載の化合物またはその塩。
【0039】
項26.後眼部炎症性疾患が、加齢黄斑変性、糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫、血管新生黄斑症、増殖性硝子体網膜症、網膜中心静脈閉塞症、網膜中心動脈閉塞症、網膜静脈分枝閉塞症、網膜動脈分枝閉塞症、外傷を起因とした後眼部の炎症や変性、網膜炎、ぶどう膜炎、強膜炎および視神経炎からなる群より選択される少なくとも1種である、項24に記載の化合物またはその塩。
【0040】
項27.グルココルチコイド受容体が関与する疾患の予防または治療用の医薬の製造における使用のための、項1~7のいずれか1項に記載の化合物またはその塩の使用。
【0041】
項28.グルココルチコイド受容体が関与する疾患が、内分泌疾患、膠原病、腎疾患、心疾患、アレルギー性疾患、血液疾患、消化器疾患、肝疾患、肺疾患、重症感染症、結核性疾患、神経疾患、悪性腫瘍、抗悪性腫瘍剤投与に伴う消化器症状、外科疾患、産婦人科疾患、泌尿器科疾患、皮膚疾患、耳鼻咽喉科疾患、口腔外科疾患、緑内障、リウマチ性疾患および炎症性疾患からなる群より選択される少なくとも1種である、項27に記載の使用。
【0042】
項29.炎症性疾患が、炎症性の骨・関節疾患、眼炎症性疾患、喘息、気管支炎、鼻炎、皮膚炎および炎症性腸疾患からなる群より選択される少なくとも1種である、項28に記載の使用。
【0043】
項30.炎症性の骨・関節疾患が、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、変形性関節症、骨粗鬆症および脊椎関節炎からなる群より選択される少なくとも1種である、項29に記載の使用。
【0044】
項31.眼炎症性疾患が、前眼部炎症性疾患である、項29に記載の使用。
【0045】
項32.眼炎症性疾患が、後眼部炎症性疾患である、項29に記載の使用。
【0046】
項33.前眼部炎症性疾患が、角膜炎、角結膜炎、結膜炎、眼瞼炎、眼球乾燥症候群、アレルギー性結膜炎、ぶどう膜炎、前眼部の手術後炎症および眼組織移植拒絶反応による炎症からなる群より選択される少なくとも1種である、項31に記載の使用。
【0047】
項34.後眼部炎症性疾患が、加齢黄斑変性、糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫、血管新生黄斑症、増殖性硝子体網膜症、網膜中心静脈閉塞症、網膜中心動脈閉塞症、網膜静脈分枝閉塞症、網膜動脈分枝閉塞症、外傷を起因とした後眼部の炎症や変性、網膜炎、ぶどう膜炎、強膜炎および視神経炎からなる群より選択される少なくとも1種である、項32に記載の使用。
【0048】
項35.項1~7のいずれか1項に記載の化合物またはその塩の有効量を投与する、グルココルチコイド受容体が関与する疾患の予防または治療方法。
【0049】
項36.グルココルチコイド受容体が関与する疾患が、内分泌疾患、膠原病、腎疾患、心疾患、アレルギー性疾患、血液疾患、消化器疾患、肝疾患、肺疾患、重症感染症、結核性疾患、神経疾患、悪性腫瘍、抗悪性腫瘍剤投与に伴う消化器症状、外科疾患、産婦人科疾患、泌尿器科疾患、皮膚疾患、耳鼻咽喉科疾患、口腔外科疾患、緑内障、リウマチ性疾患および炎症性疾患からなる群より選択される少なくとも1種である、項35に記載の予防または治療方法。
【0050】
項37.炎症性疾患が、炎症性の骨・関節疾患、眼炎症性疾患、喘息、気管支炎、鼻炎、皮膚炎および炎症性腸疾患からなる群より選択される少なくとも1種である、項36に記載の予防または治療方法。
【0051】
項38.炎症性の骨・関節疾患が、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、変形性関節症、骨粗鬆症および脊椎関節炎からなる群より選択される少なくとも1種である、項37に記載の予防または治療方法。
【0052】
項39.眼炎症性疾患が、前眼部炎症性疾患である、項37に記載の予防または治療方法。
【0053】
項40.眼炎症性疾患が、後眼部炎症性疾患である、項37に記載の予防または治療方法。
【0054】
項41.前眼部炎症性疾患が、角膜炎、角結膜炎、結膜炎、眼瞼炎、眼球乾燥症候群、アレルギー性結膜炎、ぶどう膜炎、前眼部の手術後炎症および眼組織移植拒絶反応による炎症からなる群より選択される少なくとも1種である、項39に記載の予防または治療方法。
【0055】
項42.後眼部炎症性疾患が、加齢黄斑変性、糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫、血管新生黄斑症、増殖性硝子体網膜症、網膜中心静脈閉塞症、網膜中心動脈閉塞症、網膜静脈分枝閉塞症、網膜動脈分枝閉塞症、外傷を起因とした後眼部の炎症や変性、網膜炎、ぶどう膜炎、強膜炎および視神経炎からなる群より選択される少なくとも1種である、項40に記載の予防または治療方法。
【0056】
項43.項1~7のいずれか1項に記載の化合物またはその塩を有効成分として含有する、グルココルチコイド受容体が関与する疾患の予防または治療のための、医薬組成物。
【0057】
項44.グルココルチコイド受容体が関与する疾患が、内分泌疾患、膠原病、腎疾患、心疾患、アレルギー性疾患、血液疾患、消化器疾患、肝疾患、肺疾患、重症感染症、結核性疾患、神経疾患、悪性腫瘍、抗悪性腫瘍剤投与に伴う消化器症状、外科疾患、産婦人科疾患、泌尿器科疾患、皮膚疾患、耳鼻咽喉科疾患、口腔外科疾患、緑内障、リウマチ性疾患および炎症性疾患からなる群より選択される少なくとも1種である、項43に記載の予防または治療のための医薬組成物。
【0058】
項45.炎症性疾患が、炎症性の骨・関節疾患、眼炎症性疾患、喘息、気管支炎、鼻炎、皮膚炎および炎症性腸疾患からなる群より選択される少なくとも1種である、項44に記載の予防または治療のための医薬組成物。
【0059】
項46.炎症性の骨・関節疾患が、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、変形性関節症、骨粗鬆症および脊椎関節炎からなる群より選択される少なくとも1種である、項45に記載の予防または治療のための医薬組成物。
【0060】
項47.眼炎症性疾患が、前眼部炎症性疾患である、項45に記載の予防または治療のための医薬組成物。
【0061】
項48.眼炎症性疾患が、後眼部炎症性疾患である、項45に記載の予防または治療のための医薬組成物。
【0062】
項49.前眼部炎症性疾患が、角膜炎、角結膜炎、結膜炎、眼瞼炎、眼球乾燥症候群、アレルギー性結膜炎、ぶどう膜炎、前眼部の手術後炎症および眼組織移植拒絶反応による炎症からなる群より選択される少なくとも1種である、項47に記載の予防または治療のための医薬組成物。
【0063】
項50.後眼部炎症性疾患が、加齢黄斑変性、糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫、血管新生黄斑症、増殖性硝子体網膜症、網膜中心静脈閉塞症、網膜中心動脈閉塞症、網膜静脈分枝閉塞症、網膜動脈分枝閉塞症、外傷を起因とした後眼部の炎症や変性、網膜炎、ぶどう膜炎、強膜炎および視神経炎からなる群より選択される少なくとも1種である、項48に記載の予防または治療のための医薬組成物。
【発明の効果】
【0064】
本発明は、新規な[4-(1,3,3-トリメチル-2-オキソ-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-7-イル)フェノキシ]エチルオキシ化合物またはその塩を提供することができる。本発明化合物は、優れたグルココルチコイド受容体アゴニスト活性を有し、医薬として、特にグルココルチコイド作用が関与する疾患、すなわち、内分泌疾患、膠原病、腎疾患、心疾患、アレルギー性疾患、血液疾患、消化器疾患、肝疾患、肺疾患、重症感染症、結核性疾患、神経疾患、悪性腫瘍、抗悪性腫瘍剤投与に伴う消化器症状、外科疾患、産婦人科疾患、泌尿器科疾患、皮膚疾患、耳鼻咽喉科疾患、口腔外科疾患、緑内障、リウマチ性疾患、炎症性疾患などの疾患の予防または治療剤として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
本明細書中で使用される文言(原子、基、環など)の定義について以下に詳しく説明する。
【0066】
「ハロゲン原子」とは、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素原子を示す。
【0067】
「低級アルキル基」とは、炭素原子数が1~8個、好ましくは1~6個、特に好ましくは1~4個の直鎖または分枝のアルキル基を示す。具体例として、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソペンチル基などが挙げられる。
【0068】
「低級シクロアルキル基」とは、炭素原子数が3~8個、好ましくは3~6個のシクロアルキル基を示す。具体例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルまたはシクロオクチル基などが挙げられる。
【0069】
「アリール基」とは、炭素原子数が6~14個の単環式芳香族炭化水素または2環式若しくは3環式の縮合多環式芳香族炭化水素から水素1原子を除いた残基を示す。具体例として、フェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル基などが挙げられる。
【0070】
「複素環基」とは、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選択される1または複数個のヘテロ原子を環内に有する飽和若しくは不飽和単環式複素環(好ましくは,1若しくは2個のヘテロ原子を環内に有する、炭素原子数3~5個の飽和若しくは不飽和単環式複素五または六員環)または2環式若しくは3環式の縮合多環式複素環(好ましくは,1若しくは2個のヘテロ原子を環内に有する、炭素原子数7~13個の2環式若しくは3環式の縮合多環式複素環)から水素1原子を除いた残基を示す。
【0071】
飽和の単環式複素環の具体例として、窒素原子を環内に有するピロリジン、ピラゾリジン、イミダゾリジン、トリアゾリジン、ピペリジン、ヘキサヒドロピリダジン、ヘキサヒドロピリミジン、ピペラジン、ホモピペリジン、ホモピペラジン環などが、酸素原子を環内に有するテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン環などが、硫黄原子を環内に有するテトラヒドロチオフェン、テトラヒドロチオピラン環などが、窒素原子と酸素原子を環内に有するオキサゾリジン、イソオキサゾリジン、モルホリン環などが、窒素原子と硫黄原子を環内に有するチアゾリジン、イソチアゾリジン、チオモルホリン環などが挙げられる。
【0072】
また、それらの飽和の単環式複素環はベンゼン環などと縮合してジヒドロインドール、ジヒドロインダゾール、ジヒドロベンゾイミダゾール、テトラヒドロキノリン、テトラヒドロイソキノリン、テトラヒドロシンノリン、テトラヒドロフタラジン、テトラヒドロキナゾリン、テトラヒドロキノキサリン、ジヒドロベンゾフラン、ジヒドロイソベンゾフラン、クロマン、イソクロマン、ジヒドロベンゾチオフェン、ジヒドロイソベンゾチオフェン、チオクロマン、イソチオクロマン、ジヒドロベンゾオキサゾール、ジヒドロベンゾイソオキサゾール、ジヒドロベンゾオキサジン、ジヒドロベンゾチアゾール、ジヒドロベンゾイソチアゾール、ジヒドロベンゾチアジン、キサンテン、4a-カルバゾール、ペリミジン環などの2環式または3環式の縮合多環式複素環を形成してもよい。
【0073】
不飽和の単環式複素環の具体例として、窒素原子を環内に有するジヒドロピロール、ピロール、ジヒドロピラゾール、ピラゾール、ジヒドロイミダゾール、イミダゾール、ジヒドロトリアゾール、トリアゾール、テトラヒドロピリジン、ジヒドロピリジン、ピリジン、テトラヒドロピリダジン、ジヒドロピリダジン、ピリダジン、テトラヒドロピリミジン、ジヒドロピリミジン、ピリミジン、テトラヒドロピラジン、ジヒドロピラジン、ピラジン環などが、酸素原子を環内に有するジヒドロフラン、フラン、ジヒドロピラン、ピラン環などが、硫黄原子を環内に有するジヒドロチオフェン、チオフェン、ジヒドロチオピラン、チオピラン環などが、窒素原子と酸素原子を環内に有するジヒドロオキサゾール、オキサゾール、ジヒドロイソオキサゾール、イソオキサゾール、ジヒドロオキサジン、オキサジン環などが、窒素原子と硫黄原子を環内に有するジヒドロチアゾール、チアゾール、ジヒドロイソチアゾール、イソチアゾール、ジヒドロチアジン、チアジン環などが挙げられる。
【0074】
また、それらの不飽和の単環式複素環はベンゼン環などと縮合してインドール、インダゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ジヒドロキノリン、キノリン、ジヒドロイソキノリン、イソキノリン、フェナントリジン、ジヒドロシンノリン、シンノリン、ジヒドロフタラジン、フタラジン、ジヒドロキナゾリン、キナゾリン、ジヒドロキノキサリン、キノキサリン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、クロメン、イソクロメン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチオフェン、チオクロメン、イソチオクロメン、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、ベンゾオキサジン、ベンゾチアゾール、ベンゾイソチアゾール、ベンゾチアジン、フェノキサンチン、カルバゾール、β-カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、フェノチアジン、フェノキサジン環などの2環式または3環式の縮合多環式複素環を形成してもよい。
【0075】
「低級アルコキシ基」とは、ヒドロキシ基の水素原子が低級アルキル基で置換された基を示す。具体例として、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、n-ブトキシ、n-ペントキシ、n-ヘキシルオキシ、n-ヘプチルオキシ、n-オクチルオキシ、イソプロポキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、イソペントキシ基などが挙げられる。
【0076】
「低級シクロアルキルオキシ基」とは、ヒドロキシ基の水素原子が低級シクロアルキル基で置換された基を示す。具体例として、シクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ、シクロヘプチルオキシ、シクロオクチルオキシ基などが挙げられる。
【0077】
「アリールオキシ基」とは、ヒドロキシ基の水素原子がアリール基で置換された基を示す。具体例として、フェノキシ、ナフトキシ、アントリルオキシ、フェナントリルオキシ基などが挙げられる。
【0078】
「複素環オキシ基」とは、ヒドロキシ基の水素原子が複素環基で置換された基を示す。具体例として、ピロリジニルオキシ、ピペリジニルオキシ、ピペラジニルオキシ、テトラヒドロフラニルオキシ、モルホリニルオキシ、ピラゾリルオキシ、イミダゾリルオキシ、ピリジニルオキシ、ピリミジニルオキシ、フラニルオキシ、チアゾリルオキシ、キノリルオキシ、キナゾリルオキシ、ベンゾフラニルオキシ、ベンゾチアゾリルオキシ基などが挙げられる。
【0079】
「低級アルキルアミノ基」とは、アミノ基の一方または両方の水素原子が低級アルキル基で置換された基を示す。具体例として、メチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、エチル(メチル)アミノ基などが挙げられる。
【0080】
「低級シクロアルキルアミノ基」とは、アミノ基の一方または両方の水素原子が低級シクロアルキル基で置換された基を示し、アミノ基の一方の水素原子が低級シクロアルキル基で置換された基を示す場合、他方は水素原子またはその水素原子が低級アルキル基で置換された基を示す。具体例として、シクロプロピルアミノ、シクロブチルアミノ、シクロペンチルアミノ、シクロヘキシルアミノ、シクロヘプチルアミノ、シクロオクチルアミノ、ジシクロヘキシルアミノ、シクロヘキシル(メチル)アミノなどが挙げられる。
【0081】
「アリールアミノ基」とは、アミノ基の一方若しくは両方の水素原子がアリール基で置換された基を示し、アミノ基の一方の水素原子がアリール基で置換された基を示す場合、他方は水素原子またはその水素原子が低級アルキル基若しくは低級シクロアルキル基で置換された基を示す。具体例として、フェニルアミノ、ナフチルアミノ、アントリルアミノ、フェナントリルアミノ、ジフェニルアミノ、メチル(フェニル)アミノ、エチル(フェニル)アミノ、シクロヘキシル(フェニル)アミノ基などが挙げられる。
【0082】
「複素環アミノ基」とは、アミノ基の一方若しくは両方の水素原子が複素環基で置換された基を示し、アミノ基の一方の水素原子が複素環基で置換された基を示す場合、他方は水素原子またはその水素原子が低級アルキル基、低級シクロアルキル基若しくはアリール基で置換された基を示す。具体例として、ピペリジニルアミノ、N-メチル-N-ピペリジニルアミノ、N-フェニル-N-ピペリジニルアミノ、ピペラジニルアミノ、モルホリニルアミノ、N-メチル-N-モルホリニルアミノ、N-シクロプロピル-N-モルホリニルアミノ、ピリジニルアミノ、N-メチル-N-ピリジニルアミノ基などが挙げられる。
【0083】
「低級アルキルカルボニル基」とは、ホルミル基の水素原子が低級アルキル基で置換された基を示す。具体例としてメチルカルボニル、エチルカルボニル、n-プロピルカルボニル、n-ブチルカルボニル、n-ペンチルカルボニル、n-ヘキシルカルボニル、n-ヘプチルカルボニル、n-オクチルカルボニル、イソプロピルカルボニル、イソブチルカルボニル、sec-ブチルカルボニル、tert-ブチルカルボニル、イソペンチルカルボニル基などが挙げられる。
【0084】
「低級シクロアルキルカルボニル基」とは、ホルミル基の水素原子が低級シクロアルキル基で置換された基を示す。具体例としてシクロプロピルカルボニル、シクロブチルカルボニル、シクロペンチルカルボニル、シクロヘキシルカルボニル、シクロヘプチルカルボニル、シクロオクチルカルボニル基などが挙げられる。
【0085】
「アリールカルボニル基」とは、ホルミル基の水素原子がアリール基で置換された基を示す。具体例として、フェニルカルボニル、ナフチルカルボニル、アントリルカルボニル、フェナントリルカルボニル基などが挙げられる。
【0086】
「複素環カルボニル基」とは、ホルミル基の水素原子が複素環基で置換された基を示す。具体例として、ピロリジニルカルボニル、ピペリジニルカルボニル、ピペラジニルカルボニル、テトラヒドロフラニルカルボニル、モルホリニルカルボニル、ピラゾリルカルボニル、イミダゾリルカルボニル、ピリジニルカルボニル、ピリミジニルカルボニル、フラニルカルボニル、チアゾリルカルボニル、キノリルカルボニル、キナゾリルカルボニル、ベンゾフラニルカルボニル、ベンゾチアゾリルカルボニル基などが挙げられる。
【0087】
「リン酸基」とは、-PO(OH)で表される基を示す。
【0088】
「ヒドロキシ基のエステル」とは、-OCO-Rで表される基を示す。
【0089】
ここで「R」は、置換基を有してもよい低級アルキル基、置換基を有してもよい低級シクロアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよい低級アルコキシ基、置換基を有してもよい低級シクロアルキルオキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよい複素環オキシ基、アミノ基、置換基を有してもよい低級アルキルアミノ基、置換基を有してもよい低級シクロアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリールアミノ基または置換基を有してもよい複素環アミノ基を示す。以下、「R」は同じ。
【0090】
「アミノ基のアミド」とは、-NHCO-Rで表される基を示す。ここで、「R」は前記に同じ。
【0091】
「低級アルキルアミノ基のアミド」とは、-NRCO-Rで表される基を示す。ここで、「R」は置換基を有してもよい低級アルキル基を示し、「R」は前記に同じ。
【0092】
「低級シクロアルキルアミノ基のアミド」とは、-NRCO-Rで表される基を示す。ここで、「R」は置換基を有してもよい低級シクロアルキル基を示し、「R」は前記に同じ。
【0093】
「アリールアミノ基のアミド」とは、-NRCO-Rで表される基を示す。ここで、「R」は置換基を有してもよいアリール基を示し、「R」は前記に同じ。
【0094】
「複素環アミノ基のアミド」とは、-NRCO-Rで表される基を示す。ここで、「R」は置換基を有してもよい複素環基を示し、「R」は前記に同じ。
【0095】
「カルボキシ基のエステル」とは、-COORで表される基を示す。ここで、「R」は、置換基を有してもよい低級アルキル基、置換基を有してもよい低級シクロアルキル基、置換基を有してもよいアリール基または置換基を有してもよい複素環基を示す。
【0096】
「カルボキシ基のアミド」とは、-CONRで表される基を示す。ここで、「R」および「R」は、同一または異なって、水素原子、置換基を有してもよい低級アルキル基、置換基を有してもよい低級シクロアルキル基、置換基を有してもよいアリール基または置換基を有してもよい複素環基を示し、または「R」および「R」が一緒になって、複素環を示す。
【0097】
「リン酸基のエステル」とは、-PO(ORで表される基を示す。ここで、「R」は、低級アルキル基を示す。
【0098】
「置換基を有してもよい低級アルキル基」、「置換基を有してもよい低級アルキルカルボニル基」、「置換基を有してもよい低級アルコキシ基」または「置換基を有してもよい低級アルキルアミノ基」とは、それらの低級アルキル部分が下記α群から選択される1または複数個の置換基を有してもよい「低級アルキル基」、「低級アルキルカルボニル基」、「低級アルコキシ基」または「低級アルキルアミノ基」を示す。
【0099】
「α群」とは、ハロゲン原子、低級シクロアルキル基、アリール基、複素環基、ヒドロキシ基、ヒドロキシ基のエステル、低級アルコキシ基、ハロゲン原子で置換された低級アルコキシ基、低級シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アミノ基、低級アルキルアミノ基、低級シクロアルキルアミノ基、アリールアミノ基、複素環アミノ基、アミノ基のアミド、低級アルキルアミノ基のアミド、低級シクロアルキルアミノ基のアミド、アリールアミノ基のアミド、複素環アミノ基のアミド、低級アルキルカルボニル基、低級シクロアルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、複素環カルボニル基、カルボキシ基、カルボキシ基のエステル、カルボキシ基のアミド、ニトロ基およびシアノ基を示す。
【0100】
「置換基を有してもよい低級シクロアルキルカルボニル基」、「置換基を有してもよいアリールカルボニル基」、「置換基を有してもよい複素環カルボニル基」、「置換基を有してもよい低級シクロアルキル基」、「置換基を有してもよいアリール基」、「置換基を有してもよい複素環基」、「置換基を有してもよいシクロアルキルオキシ基」、「置換基を有してもよいアリールオキシ基」、「置換基を有してもよい複素環オキシ基」、「置換基を有してもよいシクロアルキルアミノ基」または「「置換基を有してもよいアリールアミノ基」とは、それらの低級シクロアルキル部分、アリール部分、および複素環部分が上記α群から選択される1または複数個の置換基を有してもよい、「置換基を有してもよい低級シクロアルキルカルボニル基」、「置換基を有してもよいアリールカルボニル基」、「置換基を有してもよい複素環カルボニル基」、「置換基を有してもよい低級シクロアルキル基」、「置換基を有してもよいアリール基」、「置換基を有してもよい複素環基」、「置換基を有してもよいシクロアルキルオキシ基」、「置換基を有してもよいアリールオキシ基」、「置換基を有してもよい複素環オキシ基」、「置換基を有してもよいシクロアルキルアミノ基」または「「置換基を有してもよいアリールアミノ基」を示す。
【0101】
本発明でいう「複数個の基」とは、夫々の基が同一であっても異なるものであってもよく、置換する部位において2個以上、置換可能な数以下の個数の基を示し、その個数は2または3個の場合が好ましい。また、水素原子やハロゲン原子も「基」の概念に含まれる。
【0102】
本発明化合物における「塩」とは、医薬として許容される塩であれば、特に制限はない。例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸などの無機酸との塩、酢酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、クエン酸、酒石酸、アジピン酸、グルコン酸、グルコヘプト酸、グルクロン酸、テレフタル酸、メタンスルホン酸、乳酸、馬尿酸、1,2-エタンジスルホン酸、イセチオン酸、ラクトビオン酸、オレイン酸、パモ酸、ポリガラクツロン酸、ステアリン酸、タンニン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、硫酸ラウリルエステル、硫酸メチル、ナフタレンスルホン酸、スルホサリチル酸などの有機酸との塩、臭化メチル、ヨウ化メチルなどとの四級アンモニウム塩、臭素イオン、塩素イオン、ヨウ素イオンなどのハロゲンイオンとの塩、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属との塩、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属との塩、鉄、亜鉛などとの金属塩、アンモニアとの塩、トリエチレンジアミン、2-アミノエタノール、2,2-イミノビス(エタノール)、1-デオキシ-1-(メチルアミノ)-2-D-ソルビトール、2-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール、プロカイン、N,N-ビス(フェニルメチル)-1,2-エタンジアミンなどの有機アミンとの塩などが挙げられる。
【0103】
本発明化合物に幾何異性体および/または光学異性体が存在する場合は、それらの異性体も本発明の範囲に含まれる。
【0104】
本発明化合物にプロトン互変異性が存在する場合は、それらの互変異性体(ケト体、エノール体)も本発明に含まれる。
【0105】
本発明化合物に水和物および/または溶媒和物が存在する場合は、それらの水和物および/または溶媒和物も本発明の範囲に含まれる。
【0106】
本発明化合物に結晶多形および/または結晶多形群(結晶多形システム)が存在する場合には、それらの結晶多形体および/または結晶多形群(結晶多形システム)も本発明に含まれる。ここで、結晶多形群(結晶多形システム)とは、それら結晶の製造、晶出、保存などの条件および/または状態(尚、本状態には製剤化した状態も含む)により、結晶形が種々変化する場合の各段階における結晶形および/またはその全体を意味する。
【0107】
本発明は、一般式(1)で表される化合物またはその塩の製薬学的に許容されるプロドラッグも包含する。製薬学的に許容されるプロドラッグとは、可溶媒分解によりまたは生理学的条件下で、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基などに変換されうる基を有する化合物である。プロドラッグを形成する基としては、例えば、Progress in Medicine、第5巻、2157-2161頁、1995年や「医薬品の開発」(廣川書店、1990年)第7巻 分子設計163-198に記載の基が挙げられる。
【0108】
また、本発明化合物は、その化合物自体でプロドラッグとしての役割を果たすこともできる。
【0109】
本発明でいう「医薬組成物」とは、医薬として利用可能な組成物を意味する。本発明の医薬組成物は、本発明化合物又はその塩及び医薬として許容される添加剤(例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、コーティング剤、安定化剤、矯味矯臭剤(甘味料、酸味料、香料など)、等張化剤、緩衝化剤、界面活性剤、安定化剤、防腐剤、pH調整剤、無痛化剤)を含むことができ、必要に応じて、必要量を使用し、調製することができる。
【0110】
本発明でいう「グルココルチコイド受容体アゴニスト」とは、グルココルチコイド受容体と結合することにより、アゴニスト作用を有する化合物をいう。当該アゴニスト作用は完全アゴニスト作用または部分アゴニスト作用であってもよく、例えば、IL-6産生抑制作用、TNFα産生抑制作用、IL-2産生抑制作用、IL-4産生抑制作用、MCP-1産生抑制作用を含む。
【0111】
グルココルチコイド受容体が関与する疾患としては、グルココルチコイド受容体アゴニストで予防および/または治療可能な疾患であれば、特に制限はなく、通常、糖質ステロイド類で予防および/または治療可能な疾患に適用することができる。
【0112】
「グルココルチコイド受容体が関与する疾患」としては、例えば、慢性副腎皮質機能不全(原発性、続発性、下垂体性、医原性)、急性副腎皮質機能不全(副腎クリーゼ)、副腎性器症候群、亜急性甲状腺炎、甲状腺中毒症〔甲状腺(中毒性)クリーゼ〕、甲状腺疾患に伴う悪性眼球突出症、ACTH単独欠損症、特発性低血糖症などの内分泌疾患;エリテマトーデス(全身性および慢性円板状)、全身性血管炎(大動脈炎症候群、結節性動脈周囲炎、多発性動脈炎、ヴェゲナ肉芽腫症を含む)、多発性筋炎(皮膚筋炎)、強皮症などの膠原病;ネフローゼ、ネフローゼ症候群などの腎疾患;うっ血性心不全などの心疾患;気管支喘息、喘息性気管支炎(小児喘息性気管支炎を含む)、薬剤その他の化学物質によるアレルギー・中毒(薬疹、中毒疹を含む)、血清病などのアレルギー性疾患;紫斑病(血小板減少性および血小板非減少性)、再生不良性貧血、白血病(急性白血病、慢性骨髄性白血病の急性転化、慢性リンパ性白血病、皮膚白血病を含む)、溶血性貧血、顆粒球減少症などの血液疾患;潰瘍性大腸炎、限局性腸炎、重症消耗性疾患の全身状態の改善(癌末期、スプルーを含む)などの消化器疾患;劇症肝炎、胆汁うっ滞型急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変などの肝疾患;サルコイドーシス、びまん性間質性肺炎(肺線維症、放射線肺臓炎を含む)などの肺疾患;重症感染症;肺結核、結核性髄膜炎、結核性胸膜炎、結核性腹膜炎、結核性心のう炎などの結核性疾患;脳脊髄炎(脳炎、脊髄炎を含む)、末梢神経炎(ギランバレー症候群を含む)、筋強直症、重症筋無力症、多発性硬化症(視束脊髄炎を含む)、小舞踏病、顔面神経麻痺、脊髄蜘網膜炎などの神経疾患;悪性リンパ腫(リンパ肉腫症、細網肉腫症、ホジキン病、皮膚細網症、菌状息肉症)および類似疾患(近縁疾患)、好酸性肉芽腫、乳癌の再発転移などの悪性腫瘍;抗悪性腫瘍剤(シスプラチンなど)投与に伴う消化器症状(悪心・嘔吐);副腎摘除、副腎皮質機能不全患者に対する外科的侵襲、侵襲後肺水腫、臓器・組織移植、蛇毒・昆虫毒(重症の虫さされを含む)、原因不明の発熱などの外科疾患;卵管整形術後の癒着防止などの産婦人科疾患;前立腺癌、陰茎硬結などの泌尿器科疾患;湿疹・皮膚炎群(急性湿疹、亜急性湿疹、慢性湿疹、接触皮膚炎、貨幣状湿疹、自家感作性皮膚炎、アトピー皮膚炎、乳・幼・小児湿疹、ビダール苔癬、その他の神経皮膚炎、脂漏性皮膚炎、進行性指掌角皮症、その他の手指の皮膚炎、陰部あるいは肛門湿疹、耳介および外耳道の湿疹・皮膚炎、鼻前庭および鼻翼周辺の湿疹・皮膚炎など)、痒疹群(小児ストロフルス、蕁麻疹様苔癬、固定蕁麻疹を含む)、蕁麻疹、乾癬および類症(尋常性乾癬(重症例)、関節症性乾癬、乾癬性紅皮症、膿疱性乾癬、稽留性肢端皮膚炎、疱疹状膿痂疹、ライター症候群)、掌蹠膿疱症、扁平苔癬、成年性浮腫性硬化症、紅斑症(多形滲出性紅斑、結節性紅斑)、アナフィラクトイド紫斑(単純型、シェーンライン型、ヘノッホ型)、ウェーバークリスチャン病、粘膜皮膚眼症候群(開口部びらん性外皮症、スチブンス・ジョンソン病、皮膚口内炎、フックス症候群、ベーチェット病、リップシュッツ急性陰門潰瘍)、レイノー病、円形脱毛症、天疱瘡群(尋常性天疱瘡、葉状天疱瘡、Senear‐Usher症候群、増殖性天疱瘡)、デューリング疱疹状皮膚炎(類天疱瘡、妊娠性疱疹を含む)、先天性表皮水疱症、帯状疱疹、紅皮症(ヘブラ紅色粃糠疹を含む)、顔面播種状粟粒性狼瘡、アレルギー性血管炎およびその類症(急性痘瘡様苔癬状粃糠疹を含む)、潰瘍性慢性膿皮症、新生児スクレレーマなどの皮膚疾患;急性・慢性中耳炎、滲出性中耳炎・耳管狭窄症、メニエル病およびメニエル症候群、急性感音性難聴、血管運動(神経)性鼻炎、アレルギー性鼻炎、花粉症(枯草熱)、進行性壊疽性鼻炎、喉頭炎・喉頭浮腫、耳鼻咽喉科領域の手術後の後療法、嗅覚障害、急性・慢性(反復性)唾液腺炎などの耳鼻咽喉科疾患;難治性口内炎および舌炎などの口腔外科疾患;緑内障;リウマチ熱(リウマチ性心炎を含む)、リウマチ性多発筋痛、強直性脊椎炎(リウマチ性脊椎炎)などのリウマチ性疾患、さらに、下記の炎症性疾患などが挙げられる。
【0113】
本発明でいう「炎症性疾患」とは、炎症を伴う疾患であれば、特に制限はない。
【0114】
例えば、炎症性の骨・関節疾患、眼炎症性疾患、喘息、気管支炎、鼻炎、皮膚炎、炎症性腸疾患などが挙げられ、好ましくは、炎症性の骨・関節疾患および/または眼炎症性疾患が挙げられる。
【0115】
ここで、「炎症性の骨・関節疾患」とは、関節部において炎症を伴う疾患であれば、特に制限はなく、例えば、関節リウマチ、若年性関節リウマチ(スチル病を含む)、変形性関節症、骨粗鬆症、脊椎関節炎などが挙げられ、好ましくは関節リウマチおよび/または変形性関節症が挙げられる。
【0116】
また、「眼炎症性疾患」とは、眼部において炎症を伴う疾患であれば、特に制限はなく、前眼部炎症性疾患及び後眼部炎症性疾患を含む。
【0117】
前眼部炎症性疾患であれば、例えば、角膜炎、角結膜炎、結膜炎、眼瞼炎、眼球乾燥症候群(以下、「ドライアイ」ともいう。)、アレルギー性結膜炎、ぶどう膜炎、前眼部の手術後炎症、眼組織移植拒絶反応による炎症などが挙げられ、好ましくは、角膜炎、角結膜炎、結膜炎、眼瞼炎、眼球乾燥症候群(ドライアイ)、アレルギー性結膜炎、ぶどう膜炎、前眼部の手術後炎症が挙げられ、特に好ましくは、角膜炎、角結膜炎、結膜炎、眼球乾燥症候群(ドライアイ)、アレルギー性結膜炎が挙げられる。
【0118】
後眼部炎症性疾患であれば、加齢黄斑変性、糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫、血管新生黄斑症、突発性黄斑上膜、増殖性硝子体網膜症、網膜色素変性症、網膜中心静脈閉塞症、網膜中心動脈閉塞症、網膜静脈分枝閉塞症、網膜動脈分枝閉塞症、網膜剥離や外傷(後眼部の手術を含む)を起因とした後眼部の炎症や変性、網膜炎、ぶどう膜炎、強膜炎、視神経炎などが挙げられ、好ましくは、加齢黄斑変性、糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫、血管新生黄斑症、増殖性硝子体網膜症、網膜中心静脈閉塞症、網膜中心動脈閉塞症、網膜静脈分枝閉塞症、網膜動脈分枝閉塞症、外傷(後眼部の手術を含む)を起因とした炎症や変性、網膜炎、ぶどう膜炎、強膜炎、視神経炎などの網膜疾患が挙げられ、特に好ましくは、加齢黄斑変性、糖尿病黄斑浮腫、網膜中心静脈閉塞症、網膜静脈分枝閉塞症が挙げられる。
【0119】
本発明でいう「治療剤」とは、疾病の治療の為に使用する薬剤を意味する。また、本発明でいう「予防剤」とは、疾病の予防の為に使用する薬剤を意味する。
【0120】
(A)本発明化合物における好ましい例として、一般式(1)で示される化合物またはその塩において、各基が以下に示す基である化合物またはその塩が挙げられる。
【化3】

一般式(1)において、
(a1)Rが、水素原子、低級アルキル基、カルボキシ基、カルボキシ基のエステル、カルボキシ基のアミドまたはシアノ基を示し;
が低級アルキル基の場合、該低級アルキル基はハロゲン原子、低級シクロアルキル基、アリール基、複素環基、ヒドロキシ基、ヒドロキシ基のエステル、低級アルコキシ基、ハロゲン原子で置換された低級アルコキシ基、低級シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アミノ基、低級アルキルアミノ基、低級シクロアルキルアミノ基、アリールアミノ基、複素環アミノ基、アミノ基のアミド、低級アルキルアミノ基のアミド、低級シクロアルキルアミノ基のアミド、アリールアミノ基のアミド、複素環アミノ基のアミド、低級アルキルカルボニル基、低級シクロアルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、複素環カルボニル基、カルボキシ基、カルボキシ基のエステル、カルボキシ基のアミドおよびシアノ基から選択される1または複数個の基を置換基として有してもよく;およびまたは、
(a2)Rが、水素原子、低級アルキルカルボニル基、低級シクロアルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、複素環カルボニル基、カルボキシ基、カルボキシ基のエステル、カルボキシ基のアミド、リン酸基またはリン酸基のエステルを示し;
が低級アルキルカルボニル基、低級シクロアルキルカルボニル基、アリールカルボニル基または複素環カルボニル基の場合、該低級アルキルカルボニル基、該低級シクロアルキルカルボニル基、該アリールカルボニル基または該複素環カルボニル基はハロゲン原子、低級シクロアルキル基、アリール基、複素環基、ヒドロキシ基、ヒドロキシ基のエステル、低級アルコキシ基、ハロゲン原子で置換された低級アルコキシ基、低級シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アミノ基、低級アルキルアミノ基、低級シクロアルキルアミノ基、アリールアミノ基、複素環アミノ基、アミノ基のアミド、低級アルキルアミノ基のアミド、低級シクロアルキルアミノ基のアミド、アリールアミノ基のアミド、複素環アミノ基のアミド、低級アルキルカルボニル基、低級シクロアルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、複素環カルボニル基、カルボキシ基、カルボキシ基のエステル、カルボキシ基のアミドおよびシアノ基から選択される1または複数個の基を置換基として有してもよい化合物またはその塩。
すなわち、一般式(1)で示される化合物において、上記(a1)および(a2)の各組合せからなる化合物またはその塩。
【0121】
(B)本発明化合物におけるより好ましい例として、一般式(1)で示される化合物またはその塩において、各基が以下に示す基である化合物またはその塩が挙げられる。
一般式(1)において、
(b1)Rが、水素原子、低級アルキル基、カルボキシ基またはカルボキシ基のエステルを示し;
が低級アルキル基の場合、該低級アルキル基はハロゲン原子、ヒドロキシ基、低級アルコキシ基、低級アルキルカルボニル基、カルボキシ基、カルボキシ基のエステル、カルボキシ基のアミドおよびシアノ基から選択される1または複数個の基を置換基として有してもよく;および/または、
(b2)Rが、水素原子、低級アルキルカルボニル基、複素環カルボニル基、リン酸基またはリン酸基のエステルを示し;
が低級アルキルカルボニル基の場合、該低級アルキルカルボニル基はハロゲン原子、ヒドロキシ基、ヒドロキシ基のエステル、低級アルコキシ基、ハロゲン原子で置換された低級アルコキシ基、アミノ基、低級アルキルアミノ基、低級アルキルカルボニル基、カルボキシ基、カルボキシ基のエステル、カルボキシ基のアミドおよびシアノ基から選択される1または複数個の基を置換基として有してもよい化合物またはその塩。
すなわち、一般式(1)で示される化合物において、上記(b1)および(b2)の各組合せからなる化合物またはその塩。
【0122】
(C)本発明化合物におけるさらに好ましい例として、一般式(1)で示される化合物またはその塩において、各基が以下に示す基である化合物またはその塩が挙げられる。
一般式(1)において、
(c1)Rが、水素原子、低級アルキル基またはカルボキシ基のエステルを示し;
が低級アルキル基の場合、該低級アルキル基はハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、カルボキシ基のエステル、カルボキシ基のアミドおよびシアノ基から選択される1または複数個の基を置換基として有してもよく;および/または、
(c2)Rが、水素原子、低級アルキルカルボニル基、複素環カルボニル基またはリン酸基を示し;
が低級アルキルカルボニル基の場合、該低級アルキルカルボニル基はヒドロキシ基、アミノ基、低級アルキルアミノ基およびカルボキシ基から選択される1または複数個の基を置換基として有してもよい化合物またはその塩。
すなわち、一般式(1)で示される化合物において、上記(c1)および(c2)の各組合せからなる化合物またはその塩。
【0123】
(D)本発明化合物におけるさらに好ましい例として、一般式(1)で示される化合物またはその塩において、各基が以下に示す基である化合物またはその塩が挙げられる。
一般式(1)において、
(d1)Rが、低級アルキル基を示し;該低級アルキル基は1または複数個のヒドロキシ基を置換基として有してもよく;および/または、
(d2)Rが、水素原子または低級アルキルカルボニル基を示し;
が低級アルキルカルボニル基の場合、該低級アルキルカルボニル基は1または複数個の低級アルキルアミノ基を置換基として有してもよい化合物またはその塩。
すなわち、一般式(1)で示される化合物において、上記(d1)および(d2)の各組合せからなる化合物またはその塩。
【0124】
(E)本発明化合物におけるさらに好ましい例として、一般式(1)で示される化合物またはその塩において、各基が以下に示す基である化合物またはその塩が挙げられる。
一般式(1)において、
(e1)Rが、メチルまたは1-ヒドロキシエチルを示し;および/または、
(e2)Rが、水素原子またはジメチルアミノメチルカルボニルを示す化合物またはその塩。
すなわち、一般式(1)で示される化合物において、上記(e1)および(e2)の各組合せからなる化合物またはその塩。
【0125】
(F)本発明化合物における特に好ましい具体例として、下記の化合物またはその塩が挙げられる。
・(S)-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-[4-(2-ヒドロキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-[4-(2-ヒドロキシ-3,3,3-トリフルオロプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・(R)-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-[4-(2-ヒドロキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・(R)-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-[4-(2-ヒドロキシブチル)オキシ-2-メトキシフェニル]-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・(S)-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-[4-(2-ヒドロキシブチル)オキシ-2-メトキシフェニル]-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・(R)-7-[4-(2-エトキシカルボニル-2-ヒドロキシエチル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・(S)-7-[4-(2,4-ジヒドロキシブチル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・(R)-7-[4-(2,4-ジヒドロキシブチル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・(S)-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-[4-(2-ヒドロキシアセトキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-[4-(2-ヒドロキシエチル)オキシ-2-メトキシフェニル]-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・7-[4-(2,3-ジヒドロキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・(S)-7-[4-(2,3-ジヒドロキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・(R)-7-[4-(2,3-ジヒドロキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・(R)-7-[4-(3-シアノ-2-ヒドロキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・(S)-7-[4-(3-シアノ-2-ヒドロキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・7-[4-(3-フルオロ-2-ヒドロキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・7-[4-(3-エトキシカルボニル-2-ヒドロキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・7-[4-(3-t-ブトキシカルボニル-2-ヒドロキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・7-[4-(3,3-ジメチル-2-ヒドロキシブチル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・7-[4-(3-カルボキシ-2-ヒドロキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-[4-[3-(N-ピロリジルカルボニル)-2-ヒドロキシプロピル]オキシ-2-メトキシフェニル]-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-[4-[3-(N-モルホリノ)カルボニル-2-ヒドロキシプロピル]オキシ-2-メトキシフェニル]-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-[4-[3-(N-ピペリジノ)カルボニル-2-ヒドロキシプロピル]オキシ-2-メトキシフェニル]-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・(S)-7-[4-[2-(N,N-ジメチルアミノアセトキシ)プロピル]オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-[4-[(2S)-[(2S)-ピロリジルカルボニルオキシ]プロピル]オキシ-2-メトキシフェニル]-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・(R)-7-[4-[2-(N,N-ジメチルアミノアセトキシ)プロピル]オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・(S)-7-[4-(2-アミノアセトキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・7-[4-[(2S)-[(2S)-アミノ-3-メチルブタノイルオキシ]プロピル]オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・(S)-7-[4-[2-(3-カルボキシプロパノイルオキシ)プロピル]オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・(S)-7-[4-[2-(2,3-ジヒドロキシプロパノイル)オキシプロピル]オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・7-[4-[(2S)-[(2S)-アミノ-3-ヒドロキシプロパノイルオキシ]プロピル]オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・(S)-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-[4-(2-ホスホノヒドロキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・(S)-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-[4-(2-ホスホノヒドロキシブチル)オキシ-2-メトキシフェニル]-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン、
・(S)-7-[4-(3-シアノ-2-ホスホノヒドロキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン。
【0126】
本発明化合物の製造方法は、以下に示す方法に大別することができ、置換基の種類に応じて、適宜その方法を選択することができる。また、個々の具体的な製造方法については、後述の実施例中の製造例の項で詳細に説明する。なお、これらの例示は本発明をよりよく理解するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。下記の合成経路中で使用されている「PG」は保護基、「LG」は脱離基を示す。
【0127】
本発明化合物(I)-(a)(一般式(1)において、Rが水素原子である化合物。)は、合成経路1に従い製造することができる。すなわち、化合物(A)(前記特許文献2を参考に調製。)と化合物(II)または化合物(III)を、エタノールやN,N-ジメチルホルムアミド(以下、「DMF」ともいう。)などの有機溶媒中、炭酸カリウムや炭酸セシウムなどの塩基存在下、0℃から120℃で1時間から24時間反応させることにより本発明化合物(I)-(a)を得ることができる。または、化合物(A)と化合物(IV)を前記と同様の条件、または化合物(A)と化合物(V)を、テトラヒドロフラン(以下、「THF」ともいう。)や塩化メチレンなどの有機溶媒中、トリブチルホスフィンと1,1´-(アゾジカルボニル)ジピペリジンの存在下、0℃から80℃で1時間から24時間反応させることにより化合物(VI)を得ることができる。得られた化合物(VI)を、ヒドロキシ基の一般的な脱保護条件、すなわちメタノールなどの有機溶媒中、酸または塩基存在下、または接触水素化反応条件下などで、0℃から100℃で1時間から24時間反応させることにより本発明化合物(I)-(a)を得ることができる。
【0128】
合成経路1
【化4】
【0129】
また、本発明化合物(I)-(a)(一般式(1)において、Rが水素原子である化合物。)は、合成経路2に従い製造することもできる。すなわち、化合物(A)と化合物(VII)を、エタノールやDMFなどの有機溶媒中、炭酸カリウムや炭酸セシウムなどの塩基存在下、0℃から120℃で1時間から24時間反応させることにより化合物(VIII)を得ることができる。さらに得られた化合物(VIII)と、水素化ホウ素ナトリウムや水素化リチウムアルミニウムなどの還元剤とを、メタノールや塩化メチレンなどの有機溶媒中、0℃から50℃で30分間から24時間反応させることにより本発明化合物(I)-(a)を得ることができる。
【0130】
合成経路2
【化5】
【0131】
本発明化合物(I)-(b)(一般式(1)において、Rが置換基を有してもよい低級アルキル基、Rが水素原子である化合物。)は、合成経路3に従い製造することができる。すなわち、化合物(A)と化合物(IX)を、エタノールやDMFなどの有機溶媒中、炭酸カリウムや炭酸セシウムなどの塩基存在下、0℃から120℃で1時間から24時間反応させることにより化合物(X)を得ることができる。さらに得られた化合物(X)と求核試薬を、DMFや塩化メチレンなどの有機溶媒中、0℃から100℃で1時間から24時間反応させることにより本発明化合物(I)-(b)を得ることができる。
【0132】
合成経路3
【化6】
【0133】
本発明化合物(I)-(c)(一般式(1)において、Rがヒドロキシ基を有している低級アルキル基、Rが水素原子である化合物。また、合成経路4中のnは1以上の整数を示す。)は、合成経路4に従い製造することができる。すなわち、化合物(A)と化合物(XI)または化合物(XII)を、エタノールやDMFなどの有機溶媒中、炭酸カリウムや炭酸セシウムなどの塩基存在下、0℃から120℃で1時間から24時間反応させることにより得られる化合物(XIII)-(a)または化合物(XIII)-(b)を、ヒドロキシ基の一般的な脱保護条件、すなわちメタノールなどの有機溶媒中、酸または塩基存在下、または接触水素化反応条件下などで、0℃から100℃で1時間から24時間反応させることにより本発明化合物(I)-(c)を得ることができる。
【0134】
合成経路4
【化7】
【0135】
化合物(XI)(nは1以上の整数を示す)は、合成経路5に従い製造することができる。すなわち、化合物(XIV)と塩化メタンスルホニル、または塩化p-トルエンスルホニルを、塩化メチレンなどの有機溶媒中、ピリジンや2,6-ルチジンなどの塩基存在下、-40℃から室温で30分間から24時間で反応させることにより化合物(XV)(LGはメシル基またはトシル基である化合物)を得ることができる。さらに得られた化合物(XV)を、メタノールなどの有機溶媒中、炭酸カリウムなどの塩基存在下、室温から80℃で30分間から6時間で反応させることにより化合物(XI)を得ることができる。
【0136】
合成経路5
【化8】
【0137】
本発明化合物(I)-(d)(一般式(1)において、Rが-CHCOOR、Rが水素原子である化合物。Rは低級アルキル基を示す。)、本発明化合物(I)-(e)(一般式(1)において、Rが-CHCOOH、Rが水素原子である化合物。)および本発明化合物(I)-(f)(一般式(1)において、Rが-CH-R、Rが水素原子である化合物。Rはカルボキシ基のエステル-COORまたはカルボキシ基のアミド-CONRを示す。R、RおよびRは前記と同じ。)は、合成経路6に従い製造することができる。すなわち、化合物(A)とブロモ酢酸メチル(XVI)を、アセトニトリルやDMFなどの有機溶媒中、炭酸カリウムや炭酸セシウムなどの塩基存在下、0℃から120℃で1時間から24時間反応させることにより化合物(XVII)を得ることができる。さらに得られた化合物(XVII)と酢酸エステル(XVIII)(Rは前記と同じ。)を、ジエチルエーテルやTHFなどの有機溶媒中、水素化ナトリウムやリチウムジイソプロピルアミドなどの塩基存在下、-80℃から0℃で15分間から8時間反応させた後で、さらに水素化ホウ素ナトリウムや水素化リチウムアルミニウムなどの還元剤を、メタノールや塩化メチレンなどの有機溶媒中、0℃から50℃で30分間から24時間反応させることにより本発明化合物(I)-(d)を得ることができる。
【0138】
また、化合物(I)-(d)を、メタノールやエタノールなどの有機溶媒中、水酸化ナトリウムなどの塩基存在下、0℃から80℃で30分間から24時間反応させることにより本発明化合物(I)-(e)を得ることができる。
【0139】
また、化合物(I)-(e)とアルコール(XIX)またはアミン(XX)を、THFやDMFなどの有機溶媒中、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(以下、「EDC」ともいう)やO-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N´N´-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩(以下、「HATU」ともいう)などの縮合剤および4-ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンなどの塩基存在下、0℃から80℃で、1時間から24時間反応させることにより本発明化合物(I)-(f)を得ることができる。
【0140】
合成経路6
【化9】
【0141】
本発明化合物(I)-(g)(一般式(1)において、Rが置換基を有してもよい低級アルキルカルボニル基、置換基を有してもよい低級シクロアルキルカルボニル基、置換基を有してもよいアリールカルボニル基または置換基を有してもよい複素環カルボニル基である化合物。)は、合成経路7に従い製造することができる。すなわち、本発明化合物(I)-(a)とカルボン酸(XXI)を、THFやDMFなどの有機溶媒中、EDCやHATUなどの縮合剤および4-ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンなどの塩基存在下、0℃から80℃で、1時間から24時間反応させることにより、または本発明化合物(I)-(a)と酸無水物(XXII)を、THFやピリジンなどの有機溶媒中、4-ジメチルアミノピリジンなどの塩基存在下、0℃から80℃で、1時間から24時間反応させることにより本発明化合物(I)-(g)を得ることができる。
【0142】
合成経路7
【化10】
【0143】
本発明化合物(I)-(h)(一般式(1)において、Rがリン酸基である化合物。)は、合成経路8に従い製造することができる。すなわち、本発明化合物(I)-(a)とジアルコキシ(ジイソプロピルアミノ)ホスフィン(XXIII)(Rは低級アルキル基を示す。)を、DMFなどの有機溶媒中、1H-テトラゾールおよびm-クロロ安息香酸の存在下、0℃から50℃で10分間から3時間反応させることにより本発明化合物(I)-(i)(一般式(1)において、Rがリン酸基のエステル-PO(ORである化合物。)を得ることができる。さらに、得られた本発明化合物(I)-(i)とトリフルオロ酢酸とを、塩化メチレンなどの有機溶媒中、0℃から50℃で10分間から3時間反応させることにより本発明化合物(I)-(h)を得ることができる。
【0144】
合成経路8
【化11】
【0145】
前記の合成経路により製造した本発明化合物は、汎用されている技術を使用して、前述した塩、水和物または溶媒和物の形態とすることもできる。
【0146】
本発明化合物の医薬としての有用性を見出すために、下記の薬理試験を実施した。なお、文献公知の化合物についても同様のアッセイを実施して本発明化合物の試験結果と比較することにより、本発明化合物が医薬として特に有用であることが確認された。
【0147】
グルココルチコイド受容体(以下、「GR」ともいう。)競合アッセイキットを使用し、偏光蛍光法によるGR競合アッセイを実施した。その結果、本発明化合物は、優れたGR結合活性を示した。
【0148】
また、Lipopolysaccharide(以下、「LPS」ともいう。)刺激後のヒト角膜上皮細胞株におけるIL-6産生抑制作用を検討した。その結果、本発明化合物は、優れたIL-6産生抑制作用、すなわちGRアゴニストとしての作用を示した。
【0149】
また、LPS刺激後のラット全血におけるTNFα産生抑制作用を検討した。その結果、本発明化合物は、優れたTNFα産生抑制作用、すなわちGRアゴニストとしての作用を示した。
【0150】
また、抗CD3/CD28抗体刺激後の正常ヒトCD4T細胞におけるIL-2産生抑制作用を検討した。その結果、本発明化合物は、優れたIL-2産生抑制作用、すなわちGRアゴニストとしての作用を示した。
【0151】
また、抗CD3/CD28抗体刺激後の正常ヒトCD4+T細胞におけるIL-4産生抑制作用を検討した。その結果、本発明化合物は、優れたIL-4産生抑制作用、すなわちGRアゴニストとしての作用を示した。
【0152】
また、LPS刺激後のヒト単球細胞におけるMCP-1産生抑制作用を検討した。その結果、本発明化合物は、優れたMCP-1産生抑制作用、すなわちGRアゴニストとしての作用を示した。
【0153】
以上から、本発明化合物は、複数のサイトカイン、すなわち前述のIL-6、TNFα、IL-2、IL-4およびMCP-1、の産生抑制作用を有することから、特にGRアゴニストとして有用であり、ステロイド類などのGRアゴニストが有効とされる疾患、特に炎症性疾患(骨・関節疾患、眼炎症性疾患など)の予防または治療剤として有用であることが確認された。また、本発明化合物は、例えば特許文献2に記載の公知化合物と比較しても、多数のサイトカインの産生抑制作用を有することから、GRアゴニストとして更に有用である。
【0154】
また、本発明化合物の前眼部炎症性疾患治療剤としての可能性を評価するために、ラットのカラゲニン惹起結膜炎モデルにおける本発明化合物の浮腫形成に対する抑制効果、ウサギの前房穿刺眼炎症モデルにおける本発明化合物の房水中浸潤細胞数に対する抑制効果、眼窩外涙腺摘出ラットドライアイモデルにおける本発明化合物の角膜障害に対する治療効果およびウサギのオボアルブミン能動感作アレルギー性結膜炎モデルにおける本発明化合物の充血に対する抑制効果を検討した。その結果、本発明化合物は、浮腫形成抑制効果、房水中浸潤細胞数抑制効果、角膜障害治療効果および充血抑制効果を示した。
【0155】
従って、本発明化合物は、前眼部炎症性疾患治療剤、特に角膜炎、角結膜炎、結膜炎、眼瞼炎、眼球乾燥症候群(ドライアイ)、アレルギー性結膜炎、ぶどう膜炎、術後炎症および眼組織移植拒絶反応による炎症など、更に好ましくは角膜炎、角結膜炎、結膜炎、眼球乾燥症候群(ドライアイ)、アレルギー性結膜炎、ぶどう膜炎、術後炎症などの眼炎症性疾患の予防または治療剤として有用であることが確認された。
【0156】
さらに、本発明化合物の後眼部炎症性疾患治療剤としての可能性を評価するために、ウサギのVEGF誘発網膜血管透過性亢進モデルにおける本発明化合物の硝子体内への蛍光色素漏出量抑制効果を検討した。その結果、本発明化合物は、網膜血管透過性亢進抑制作用を示した。
【0157】
従って、本発明化合物は、後眼部炎症性疾患治療剤、特に加齢黄斑変性、糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫、血管新生黄斑症、増殖性硝子体網膜症、網膜中心静脈閉塞症、網膜中心動脈閉塞症、網膜静脈分枝閉塞症、網膜動脈分枝閉塞症、外傷を起因とした後眼部の炎症や変性、網膜炎、ぶどう膜炎、強膜炎、視神経炎など、更に好ましくは加齢黄斑変性、糖尿病黄斑浮腫、網膜中心静脈閉塞症、網膜静脈分枝閉塞症などの眼炎症性疾患の予防または治療剤として有用であることが確認された。
【0158】
また、前記の薬理試験実施中に、本発明化合物の投与に起因する重篤な副作用は観察されず、眼炎症性疾患の予防または治療剤として有用であることが確認された。
【0159】
また、これらの詳細については、後述の実施例の「薬理試験」の項でも、より具体的に説明する。
【0160】
本発明化合物は、経口でも、非経口でも投与することができる。投与形態としては、経口投与、眼への局所投与(点眼投与、結膜嚢内投与、硝子体内投与、結膜下投与、テノン嚢下投与など)、静脈内投与、筋肉内投与、関節内投与、経鼻投与、吸入投与、経皮投与などが挙げられる。好ましくは非経口の投与形態であり、眼への局所投与(点眼投与、結膜嚢内投与、硝子体内投与、結膜下投与、テノン嚢下投与など)、静脈内投与、筋肉内投与、関節内投与、経鼻投与、吸入投与、経皮投与などが挙げられる。特に好ましくは、眼への局所投与(点眼投与、結膜嚢内投与、硝子体内投与、結膜下投与、テノン嚢下投与など)である。
【0161】
本発明化合物の投与剤型としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、腸溶剤、注射剤、点眼剤、坐剤、経皮吸収製剤、軟膏剤、エアゾール剤(吸入剤含む)などが挙げられ、それらは汎用される技術を使用して製剤化することができる。眼に局所投与する際に用いられる好ましい剤型としては、点眼剤、特に溶解型点眼剤、懸濁型点眼剤、エマルジョン型点眼剤またはゲル型点眼剤など、眼軟膏剤、特に結膜嚢内塗布剤または眼瞼塗布剤など、または注射剤、特に結膜下投与剤、テノン嚢投与剤または硝子体内投与剤などが挙げられる。
【0162】
例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤などの経口剤は、乳糖、マンニトール、デンプン、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸、炭酸カルシウム、リン酸水素カルシウムなどの賦形剤、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、タルクなどの滑沢剤、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどの結合剤、カルボキシメチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルメチルセルロース、クエン酸カルシウムなどの崩壊剤、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マクロゴール、シリコーン樹脂などのコーティング剤、パラオキシ安息香酸エチル、ベンジルアルコールなどの安定化剤、甘味料、酸味料、香料などの矯味矯臭剤などを必要に応じて、必要量を使用し、調製することができる。
【0163】
また、注射剤、点眼剤などの非経口剤は、塩化ナトリウム、濃グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、塩化カリウム、ソルビトール、マンニトールなどのなど等張化剤、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸,氷酢酸、トロメタモールなどの緩衝化剤、ポリソルベート80、ステアリン酸ポリオキシ40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60などの界面活性剤、クエン酸ナトリウム、エデト酸ナトリウムなどの安定化剤、塩化ベンザルコニウム、パラベン、塩化ベンゾトニウム、パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム、クロロブタノールなどの防腐剤、塩酸、クエン酸、リン酸、氷酢酸、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどのpH調整剤、ベンジルアルコールなどの無痛化剤などを必要に応じて、必要量を使用し、調製することができる。
【0164】
本発明化合物の投与量は、症状、年齢、剤型などにより適宜選択して使用することができる。例えば、経口剤では通常1日当たり0.01~1000mg、好ましくは1~100mgを1回または数回に分けて投与することができる。また、点眼剤は通常0.0001%~10%(w/v)、好ましくは0.01%~5%(w/v)の濃度のものを1回または数回に分けて投与することができる。
【0165】
以下に本発明化合物の製造例、薬理試験および製剤例の結果を示す。なお、これらの例示は本発明をよりよく理解するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0166】
[製造例]
参考例1
メタンスルホン酸(S)-4-ベンジルオキシ-2-ヒドロキシブチルエステル(参考化合物1-1)
(S)-4-ベンジルオキシ-1,2-ブタンジオール(10.0g、51.0mmol)と2,6-ルチジン(59mL、507mmol)の塩化メチレン(200mL)溶液に、-20℃で塩化メタンスルホニル(4.1mL,53.0mmol)の塩化メチレン(50mL)溶液を30分間で滴下し、室温で24時間撹拌した。さらに室温で塩化メタンスルホニル(1.3mL,16.8mmol)の塩化メチレン(30mL)溶液を30分間で滴下し、1.5時間撹拌した。その混合物を0.5N塩酸(200mL×4)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(100mL×3)、飽和食塩水(100mL)で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過した。濾液を減圧下濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール)で精製することにより、標記参考化合物(12.3g)を得た(収率88%)。
【0167】
【表1】
【0168】
参考例2
(S)-4-ベンジルオキシ-1,2-エポキシブタン(参考化合物2-1)
メタンスルホン酸(S)-4-ベンジルオキシ-2-ヒドロキシブチルエステル(参考化合物1-1、12.3g、44.8mmol)、炭酸カリウム(12.3g、89.0mmol)およびメタノール(100mL)の混合物を、室温で75分撹拌した。減圧下で溶媒を留去した後、0.5N水酸化ナトリウム(450mL)と酢酸エチル(200mL)を加えた。混合物を分配し、水層を酢酸エチル(100mL×2)で抽出した。有機層を合わせて、飽和食塩水(100mL)で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過した。濾液を減圧下濃縮することにより、標記参考化合物(8.0g)を得た(定量的)。
【0169】
【表2】
【0170】
(R)-4-ベンジルオキシ-1,2-エポキシブタン(参考化合物2-2)
氷冷下、(R)-4-ベンジルオキシ-1,2-ブタンジオール(1.24g、6.3mmol)のピリジン(25mL)溶液に塩化p-トルエンスルホニル(1.45g、7.6mmol)を加えて5時間撹拌後に、室温で終夜撹拌した。その混合物を酢酸エチル(100mL)で希釈し、1N塩酸(50mL、30mL)、飽和食塩水(50mL)で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過した後、濾液を減圧下濃縮した。得られた残渣をテトラヒドロフラン(60mL)に溶解し、室温で水素化ナトリウム(0.38g、9.5mmol)を加え、50℃で終夜撹拌した。室温で放冷後、水(200mL)を加えて酢酸エチル(200mL)で抽出し、有機層を飽和食塩水(100mL)で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過した後、濾液を減圧下濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)で精製することにより、標記参考化合物(0.99g)を得た(収率89%)。
【0171】
【表3】
【0172】
参考例3
(S)-7-[4-(4-ベンジルオキシ-2-ヒドロキシブチル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン(参考化合物3-1)
【0173】
8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-(4-ヒドロキシ-2-メトキシフェニル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン(化合物A(前記特許文献2を参考に調製、以下同じ)、500mg、1.11mmol)、(S)-4-ベンジルオキシ-1,2-エポキシブタン(参考化合物2-1、500mg、2.81mmol)、炭酸カリウム(600mg、4.34mmol)およびエタノール(5mL)の混合物を60℃で7時間撹拌した。その混合物に水(30mL)を加えた後、酢酸エチル(30mL×2)で抽出した。有機層を飽和食塩水(30mL)で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過した。濾液を減圧下濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)で精製することにより、標記参考化合物(420mg)を白色アモルファスとして得た(収率60%)。
【0174】
【表4】
【0175】
参考例4
8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-[4-(2-テトラヒドロピラン-2-イルオキシエチル)オキシ-2-メトキシフェニル]-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン(参考化合物4-1)
【0176】
8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-(4-ヒドロキシ-2-メトキシフェニル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン(化合物A、100mg、0.22mmol)、2-(テトラヒドロピラン-2-イルオキシ)エタノール(65μL、0.48mmol)、トリ-n-ブチルホスフィン(115μL、0.48mmol)、1,1‘-(アゾジカルボニル)ジピペリジン(115mg、0.46mmol)のテトラヒドロフラン(5mL)懸濁液を室温で終夜撹拌した。その混合物を酢酸エチル(30mL)で希釈し、有機層を飽和食塩水(30mL×2)で洗浄した。その有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過した。濾液を減圧下濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)で精製することにより、標記参考化合物(150mg)を黄色油状物として得た(定量的)。
【0177】
【表5】
【0178】
参考例5
7-[4-(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イルメチル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン(参考化合物5-1)
【0179】
8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-(4-ヒドロキシ-2-メトキシフェニル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン(化合物A、600mg、1.3mmol)、p-トルエンスルホン酸(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルエステル(572mg、2.0mmol)、炭酸セシウム(868mg、2.7mmol)およびN,N-ジメチルホルムアミド(5.0mL)の混合物を80℃で終夜撹拌した。室温で放冷後、その混合物に水(150mL)を加えて酢酸エチル(150mL)で抽出した。有機層を飽和食塩水(150mL)で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過した。濾液を減圧下濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)で精製することにより、標記参考化合物(710mg)を白色アモルファスとして得た(収率95%)。
【0180】
【表6】
【0181】
参考化合物5-1の製造方法に準じて、化合物Aおよび市販化合物を使用することにより、参考化合物5-2~5-6を得た。
【0182】
(R)-7-[4-(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イルメチル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン(参考化合物5-2)
【0183】
【表7】
【0184】
(S)-7-[4-(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イルメチル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン(参考化合物5-3)
【0185】
【表8】
【0186】
(R)-7-[4-(2,3-エポキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン(参考化合物5-4)
【0187】
【表9】
【0188】
(S)-7-[4-(2,3-エポキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン(参考化合物5-5)
【0189】
【表10】
【0190】
7-[4-(3,3-ジメチル-2-オキソブチル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン(参考化合物5-6)
【0191】
【表11】
【0192】
参考例6
8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-[4-(メトキシカルボニルメチル)オキシ-2-メトキシフェニル]-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン(参考化合物6-1)
【0193】
8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-(4-ヒドロキシ-2-メトキシフェニル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン(化合物A、2.0g、4.4mmol)、ブロモ酢酸メチル(0.64mL、6.8mmol)、炭酸カリウム(0.95g、6.9mmol)および脱水アセトニトリル(45mL)の混合物を100℃で終夜加熱還流した。室温で放冷後、その混合物に水(100mL)を加えて酢酸エチル(100mL)で抽出した。有機層を飽和食塩水(100mL)で洗浄した後、減圧下濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)で精製することにより、標記参考化合物(2.4g)を薄橙色アモルファスとして得た(定量的)。
【0194】
【表12】
【0195】
参考例7
2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-カルボン酸(参考化合物7-1)
【0196】
氷冷下、2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-メタノール(1.0g、7.6mmol)、水酸化カリウム(1.0g、15mmol)の水(50mL)溶液に、過マンガン酸カリウム(1.8g、11.3mmol)の水(30mL)溶液を滴下し、2時間撹拌した。セライトを用いてこの混合物を濾過し、濾液を減圧下濃縮した。得られた濾液に、pH4になるまで飽和硫酸水素カリウム水溶液を加えた。この混合物を酢酸エチル(200mL×2)で抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過した。濾液を減圧下濃縮することにより標記参考化合物(0.33g)を無色油状物として得た(収率30%)。
【0197】
【表13】
【0198】
参考化合物7-1の製造方法に準じて、市販化合物を使用することにより、参考化合物7-2を得た。
【0199】
(S)-(-)-N-t-ブチルカルボニル-2,2-ジメチル-1,3-ジオキサゾリジン-4-カルボン酸(参考化合物7-2)
【0200】
【表14】
【0201】
参考例8
(S)-7-[4-(2-ベンジルオキシアセトキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン(参考化合物8-1)
【0202】
(S)-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-[4-(2-ヒドロキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン(化合物1-1、60mg、0.12mmol)、ベンジルオキシ酢酸(4mg、0.24mmol)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(45mg、0.24mmol)、4-ジメチルアミノピリジン(2.9mg、0.024mmol)および無水塩化メチレン(3.0mL)の混合物を室温で終夜撹拌した。その混合物に水(10mL)を加えて酢酸エチル(10mL×2)で抽出した。有機層を飽和食塩水(10mL)で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過した。濾液を減圧下濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)で精製することにより、標記参考化合物(62mg)を白色固体として得た(収率81%)。
【0203】
【表15】
【0204】
参考化合物8-1の製造方法に準じて、化合物1-1、参考化合物7-1および7-2を使用することにより、参考化合物8-2および8-3を得た。
【0205】
(S)-7-[4-[2-(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イルカルボニルオキシ)プロピル]オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン(参考化合物8-2)
【0206】
【表16】
【0207】
(S)-7-[4-[2-(N-t-ブトキシカルボニル-2,2-ジメチル-1,3-ジオキサゾリジン-4-イルカルボニルオキシ)プロピル]オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン(参考化合物8-3)
【0208】
【表17】
【0209】
実施例1
(S)-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-[4-(2-ヒドロキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン(化合物1-1)
【0210】
200mL容積の耐圧反応管2つに、それぞれ8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-(4-ヒドロキシ-2-メトキシフェニル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン(化合物A、7.5g、16.7mmol)、脱水エタノール(113mL)、炭酸カリウム(11.5g、83.2mmol)および(S)-(-)-プロピレンオキシド(5.8mL、82.9mmol)を入れて密封し、100℃で一晩撹拌した。放冷後、2つの反応液をまとめて減圧下濃縮した。残渣に酢酸エチル(150mL)を加えて、水(150mL×2回)、飽和食塩水(150mL)で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過した。濾液を減圧下濃縮した後、残渣に2-プロパノール(90mL)を加えて室温で終夜撹拌した。析出固体を濾取し、2-プロパノール(7.5mL)で洗浄した。固体を60℃で減圧乾燥することにより、標記化合物(11.5g)を白色固体として得た(収率68%)。
【0211】
【表18】
【0212】
8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-[4-(2-ヒドロキシ-3,3,3-トリフルオロプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン(化合物1-2)
【0213】
8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-(4-ヒドロキシ-2-メトキシフェニル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン(化合物A、100mg、0.22mmol)、3-ブロモ-1,1,1-トリフルオロメチル-2-プロパノール(46.0μL、0.44mmol)、炭酸セシウム(145mg、0.44mmol)およびN,N-ジメチルホルムアミド(1.5mL)の混合物を50℃で終夜撹拌した。室温で放冷後、その混合物に水(50mL)を加えて、酢酸エチル(50mL)で抽出した。有機層を飽和食塩水(50mL×2)で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過した。濾液を減圧下濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)で精製することにより、標記化合物(114mg)を白色固体として得た(収率91%)。
【0214】
【表19】
【0215】
化合物1-1または1-2の製造方法に準じて、化合物Aおよび市販化合物を使用することにより、化合物1-3~1-6を得た。
【0216】
(R)-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-[4-(2-ヒドロキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン(化合物1-3)
【0217】
【表20】
【0218】
(R)-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-[4-(2-ヒドロキシブチル)オキシ-2-メトキシフェニル]-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン(化合物1-4)
【0219】
【表21】
【0220】
(S)-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-[4-(2-ヒドロキシブチル)オキシ-2-メトキシフェニル]-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン(化合物1-5)
【0221】
【表22】
【0222】
(R)-7-[4-(2-エトキシカルボニル-2-ヒドロキシエチル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン(化合物1-6)
【0223】
【表23】
【0224】
実施例2
(S)-7-[4-(2,4-ジヒドロキシブチル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン(化合物2-1)
【0225】
(S)-7-[4-(4-ベンジルオキシ-2-ヒドロキシブチル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン(参考化合物3-1、254mg、0.405mmol)のメタノール(6mL)溶液にパラジウム炭素(50mg)を加え、水素雰囲気下室温で終夜撹拌した。その混合物を濾過し、濾液を減圧下濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)で精製することにより、標記化合物(213mg)を白色アモルファスとして得た(収率98%)。
【0226】
【表24】
【0227】
(R)-7-[4-(2,4-ジヒドロキシブチル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン(化合物2-2)
【0228】
8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-(4-ヒドロキシ-2-メトキシフェニル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン(化合物A、451mg、1.0mmol)、(R)-4-ベンジルオキシ-1,2-エポキシブタン(参考化合物2-2、267mg、1.5mmol)、炭酸セシウム(828mg、2.5mmol)およびN,N-ジメチルホルムアミド(4.5mL)の混合物を70℃で終夜撹拌した。室温で放冷後、その混合物に水(100mL)を加えて、酢酸エチル(100mL)で抽出した。有機層を飽和塩化アンモニウム水溶液(100mL)、飽和食塩水(100mL)で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過した。濾液を減圧下濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)で精製した。得られた中間体((R)-7-[4-(4-ベンジルオキシ-2-ヒドロキシブチル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン)をメタノール(5.0mL)に溶解し、パラジウム炭素(30mg)を加えて水素雰囲気下、室温で終夜撹拌した。その混合物をメタノール(30mL)と共にセライトで濾過した。その濾液を減圧下濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール)で精製することにより、標記化合物(341mg)を白色アモルファスとして得た(収率63%)。
【0229】
【表25】
【0230】
化合物2-1の製造方法に準じて、参考化合物8-1を使用することにより、化合物2-3を得た。
【0231】
(S)-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-[4-(2-ヒドロキシアセトキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン(化合物2-3)
【0232】
【表26】
【0233】
実施例3
8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-[4-(2-ヒドロキシエチル)オキシ-2-メトキシフェニル]-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン(化合物3-1)
【0234】
8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-[4-(2-テトラヒドロピラン-2-イルオキシエチル)オキシ-2-メトキシフェニル]-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン(参考化合物4-1、130mg、0.22mmol)のテトラヒドロフラン-メタノール混合溶液(1:1、4.0mL)に、1N塩酸(2.0mL)を加えて室温で終夜撹拌した。その混合物を酢酸エチル(20mL)で希釈し、有機層を飽和重層水(20mL)、飽和食塩水(20mL)で洗浄した。その有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過した。濾液を減圧下濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)で精製することにより、標記化合物(72mg)を無色油状物として得た(収率65%)。
【0235】
【表27】
【0236】
実施例4
7-[4-(2,3-ジヒドロキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン(化合物4-1)
【0237】
氷冷下、7-[4-(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イルメチル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン(参考化合物5-1、685mg、1.2mmol)の塩化メチレン(20mL)溶液に、トリフルオロ酢酸(4.0mL)を加えて室温で3時間撹拌した。その混合物に水(1.0mL)を添加し、さらに室温で1時間撹拌した。その混合物を減圧下濃縮し、得られた残渣を酢酸エチル(150mL)で希釈した。有機層を飽和重層水(100mL)、飽和食塩水(100mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過した。濾液を減圧下濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)で精製することにより、標記化合物(556mg)を白色アモルファスとして得た(収率88%)。
【0238】
【表28】
【0239】
化合物4-1の製造方法に準じて、参考化合物5-1および5-2を使用することにより 、化合物4-2および4-3を得た。
【0240】
(S)-7-[4-(2,3-ジヒドロキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン(化合物4-2)
【0241】
【表29】
【0242】
(R)-7-[4-(2,3-ジヒドロキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン(化合物4-3)
【0243】
【表30】
【0244】
実施例5
(R)-7-[4-(3-シアノ-2-ヒドロキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン(化合物5-1)
【0245】
(R)-7-[4-(2,3-エポキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン(参考化合物5-4、235mg、0.46mmol)、シアン化カリウム(66mg、1.0mmol)、水(0.90mL)およびN,N-ジメチルホルムアミド(5.0mL)の混合物を室温で終夜撹拌した。その混合物に飽和食塩水(30mL)を加えて酢酸エチル(30mL×3)で抽出した。有機層を飽和食塩水(40mL)で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過した。濾液を減圧下濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)で精製することにより、標記化合物(208mg)を白色アモルファスとして得た(収率87%)。
【0246】
【表31】
【0247】
化合物5-1の製造方法に準じて、参考化合物5-5および市販化合物を使用することにより、化合物5-2を得た。
【0248】
(S)-7-[4-(3-シアノ-2-ヒドロキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン(化合物5-2)
【0249】
【表32】
【0250】
実施例6
7-[4-(3-フルオロ-2-ヒドロキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン(化合物6-1)
【0251】
氷冷下、7-[4-(2,3-ジヒドロキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン(化合物4-1、200mg、0.38mmol)の塩化メチレン(4.0mL)溶液に、三フッ化N,N-ジエチルアミノ硫黄(76μL、0.58mmol)を加えて3時間撹拌した。シリカゲルを用いてその混合物を濾過して酢酸エチル(20mL×3)で洗浄した。濾液を減圧下濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)で精製することにより、標記化合物(22mg)を白色アモルファスとして得た(収率11%)。
【0252】
【表33】
【0253】
実施例7
7-[4-(3-エトキシカルボニル-2-ヒドロキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン(化合物7-1)
【0254】
アルゴンガス雰囲気下、無水テトラヒドロフラン(8.0mL)とN,N-ジイソプロピルアミン(0.95mL、6.8mmol)の混合液にn-ブチルリチウム1.6Mヘキサン溶液(4.2mL、6.7mmol)を氷冷下で加えて30分間撹拌した。この混合物を-78℃に冷却して、酢酸エチル(0.66mL、6.8mmol)を添加して1時間撹拌した。この混合物に、8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-[4-(メトキシカルボニルメチル)オキシ-2-メトキシフェニル]-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン(参考化合物6-1、2.4g、4.6mmol)の無水テトラヒドロフラン(8mL)溶液を5分間で滴下した。この混合物を温度上昇を伴いながら2.5時間撹拌し、-16℃で1N塩酸(15mL)を添加した。この混合物に水(50mL)を加えて、酢酸エチル(100mL)で抽出した。有機層を飽和塩化アンモニウム水溶液(50mL)、飽和食塩水(50mL)で洗浄した。その有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過した。濾液を減圧下濃縮し、得られた中間体(7-[4-(3-エトキシカルボニル-2-オキソプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン)をテトラヒドロフラン(25mL)に溶解させた。氷冷下、この溶液に水素化ホウ素ナトリウム(0.35g、9.3mmol)を加えて15分間撹拌した。この混合物に水(50mL)、1N塩酸(15mL)を加えて、酢酸エチル(100mL)で抽出した。有機層を飽和塩化アンモニウム水溶液(50mL)、飽和食塩水(50mL)で洗浄した。その有機層を減圧下濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)で精製することにより、標記化合物(1.4g)を白色アモルファスとして得た(収率54%)。
【0255】
【表34】
【0256】
化合物7-1の製造方法に準じて、参考化合物6-1および市販化合物を使用することにより、化合物7-2を得た。
【0257】
7-[4-(3-t-ブトキシカルボニル-2-ヒドロキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン(化合物7-2)
【0258】
【表35】
【0259】
実施例8
7-[4-(3,3-ジメチル-2-ヒドロキシブチル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン(化合物8-1)
【0260】
氷冷下、7-[4-(3,3-ジメチル-2-オキソブチル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン(参考化合物5―6、55mg、0.10mmol)のメタノール(1.0mL)溶液に、水素化ホウ素ナトリウム(9.0mg、0.24mmol)を加えて1時間撹拌した。この混合物に1N塩酸(20mL)を加えて、酢酸エチル(15mL×2)で抽出した。有機層を合わせて飽和重層水(20mL)、飽和食塩水(20mL)で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過した。濾液を減圧下濃縮することにより、標記化合物(51mg)を桃色アモルファスとして得た(収率92%)。
【0261】
【表36】
【0262】
実施例9
7-[4-(3-カルボキシ-2-ヒドロキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン(化合物9-1)
7-[4-(3-エトキシカルボニル-2-ヒドロキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン(化合物7-1、1.9g、3.3mmol)、4N水酸化ナトリウム水溶液(10mL)およびメタノール(15mL)の混合物を50℃で終夜撹拌した。室温で放冷後、その混合物に1N塩酸(45mL)を加えた。析出した固体をろ取し、水(50mL)で洗浄した。得られた固体を40℃で4時間減圧下乾燥することにより、標記化合物(1.6g)を赤褐色固体として得た(収率88%)。
【0263】
【表37】
【0264】
実施例10
8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-[4-[3-(N-ピロリジルカルボニル)-2-ヒドロキシプロピル]オキシ-2-メトキシフェニル]-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン(化合物10-1)
【0265】
7-[4-(3-カルボキシ-2-ヒドロキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン(化合物9-1、110mg、0.20mmol)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(48mg、0.31mmol)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(59mg、0.31mmol)、ピロリジン(33μL、0.40mmol)、N-メチルモルホリン(88μL、0.80mmol)およびN,N-ジメチルホルムアミド(2.0mL)の混合物を室温で終夜撹拌した。この混合物に飽和食塩水(10mL)を加えて、酢酸エチル(10mL×2)で抽出した。有機層を飽和食塩水(20mL)で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過した。濾液を減圧下濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール)で精製することにより、標記化合物(24mg)を淡褐色アモルファスとして得た(収率20%)。
【0266】
【表38】
【0267】
化合物10-1の製造方法に準じて、化合物9-1および市販化合物を使用することにより、化合物10-2および10-3を得た。
【0268】
8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-[4-[3-(N-モルホリノ)カルボニル-2-ヒドロキシプロピル]オキシ-2-メトキシフェニル]-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン(化合物10-2)
【0269】
【表39】
【0270】
8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-[4-[3-(N-ピペリジノ)カルボニル-2-ヒドロキシプロピル]オキシ-2-メトキシフェニル]-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン(化合物10-3)
【0271】
【表40】
【0272】
実施例11
(S)-7-[4-[2-(N,N-ジメチルアミノアセトキシ)プロピル]オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン(化合物11-1)
【0273】
(S)-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-[4-(2-ヒドロキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン(化合物1-1、509mg、1.00mmol)、N,N-ジメチルグリシン(207mg、2.01mmol)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(388mg、2.02mmol)および4-ジメチルアミノピリジン(10.6mg、0.087mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド-塩化メチレン混合液(1:1、12mL)に加えて、50℃で6時間撹拌した。放冷後、その混合物を酢酸エチル(100mL)で希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL)、飽和塩化アンモニウム水溶液(50mL)および飽和食塩水(50mL)で洗浄した。有機層を減圧下濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)で精製することにより、標記化合物(205mg)を白色アモルファスとして得た(収率35%)。
【0274】
【表41】
【0275】
8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-[4-[(2S)-[(2S)-ピロリジルカルボニルオキシ]プロピル]オキシ-2-メトキシフェニル]-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン塩酸塩(化合物11-2)
【0276】
(S)-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-[4-(2-ヒドロキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン(化合物1-1、306mg、0.60mmol)、N-t-ブトキシカルボニル-L-プロリン(258mg、1.2mmol)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(234mg、1.2mmol)、4-ジメチルアミノピリジン(9.9mg、0.081mmol)および塩化メチレン(6.0mL)の混合物を室温で終夜撹拌した。その混合物を減圧下濃縮し、得られた残渣を酢酸エチル(50mL)で希釈し、水(50mL)で洗浄した。有機層を減圧下濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)で精製した。得られた中間体(7-[4-[(2S)-[(S)-N-(t-ブトキシカルボニル)ピロリジン-2-イルカルボニルオキシ]プロピル]オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン)に4N塩酸-1,4-ジオキサン溶液(8.0mL)を添加し、室温で終夜撹拌した。この混合物を減圧下濃縮し、得られた残渣にジエチルエーテル(10mL)および酢酸エチル(10mL)を加えた。析出した固体を濾取し、酢酸エチル(10mL)で洗浄した。得られた固体を40℃減圧下で3.5時間乾燥することにより、標記化合物(284mg)を白色固体として得た(収率74%)。
【0277】
【表42】
【0278】
化合物11-1または11-2の製造方法に準じて、化合物1-1および市販化合物を使用することにより、化合物11-3~11-5を得た。
【0279】
(R)-7-[4-[2-(N,N-ジメチルアミノアセトキシ)プロピル]オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン(化合物11-3)
【0280】
【表43】
【0281】
(S)-7-[4-(2-アミノアセトキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン塩酸塩(化合物11-4)
【0282】
【表44】
【0283】
7-[4-[(2S)-[(2S)-アミノ-3-メチルブタノイルオキシ]プロピル]オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン塩酸塩(化合物11-5)
【0284】
【表45】
【0285】
実施例12
(S)-7-[4-[2-(3-カルボキシプロパノイルオキシ)プロピル]オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン(化合物12-1)
【0286】
(S)-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-[4-(2-ヒドロキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン(化合物1-1、52mg、0.10mmol)、コハク酸無水物(16mg、0.16mmol)、4-ジメチルアミノピリジン(触媒量)およびピリジン(0.5mL)の混合物を室温で終夜撹拌した。コハク酸無水物(65mg、0.65mmol)を追加して、さらに終夜撹拌した。この混合物を酢酸エチル(10mL)で希釈し、有機層を1N塩酸(15mL×2)、飽和食塩水(5mL)で洗浄した。この有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過した。濾液を減圧下濃縮することにより、標記化合物(58mg)を白色アモルファスとして得た(定量的)。
【0287】
【表46】
【0288】
実施例13
(S)-7-[4-[2-(2,3-ジヒドロキシプロパノイル)オキシプロピル]オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン(化合物13-1)
【0289】
(S)-7-[4-[2-(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イルカルボニルオキシ)プロピル]オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン(参考化合物8-2、70mg、0.11mmol)、2N塩酸(1.0mL)およびメタノール(4.0mL)の混合物を50℃で1時間撹拌した。室温で放冷後、この混合物を減圧下濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)で精製することにより、標記化合物(35mg)を白色固体として得た(収率54%)
【0290】
【表47】
【0291】
化合物13-1の製造方法に準じて、参考化合物8-3を使用することにより、化合物13-2を得た。
【0292】
7-[4-[(2S)-[(2S)-アミノ-3-ヒドロキシプロパノイルオキシ]プロピル]オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン(化合物13-2)
【0293】
【表48】
【0294】
実施例14
(S)-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-[4-(2-ホスホノヒドロキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン(化合物14-1)
【0295】
氷冷下、(S)-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-[4-(2-ヒドロキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン(化合物1-1、100mg、0.20mmol)、1H-テトラゾール(62mg、0.89mmol)、ジ-t-ブトキシ(ジイソプロピルアミノ)ホスフィン(0.19mL、0.60mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(3.0mL)溶液に、m-クロロ過安息香酸(41mg、0.24mmol)の塩化メチレン(3.0mL)溶液を滴下して、1時間撹拌した。この混合物に飽和重層水(5mL)および水(50mL)を加えて、酢酸エチル(50mL×2)で抽出した。この有機層を合わせて、飽和食塩水(50mL)で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過した。濾液を減圧下濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)で精製した。得られた中間体((S)-7-[4-[2-(ジ-t-ブチルホスホノヒドロキシ)プロピル]オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン)を無水塩化メチレン(1mL)で溶解した。氷冷下、この溶液にトリフルオロ酢酸(1mL)を加えて、室温で30分間撹拌した。この混合物を減圧下濃縮し、得られた残渣にヘキサン-ジエチルエーテル(1:1、2mL)を加えた。析出した固体を濾取し、ヘキサン-ジエチルエーテル(1:1、5mL)で洗浄した。得られた固体を乾燥することにより、標記化合物(49mg)を白色固体として得た(収率42%)。
【0296】
【表49】
【0297】
化合物14-1の製造方法に準じて、化合物1-5、5-2および市販化合物を使用することにより、化合物14-2および14-3を得た。
【0298】
(S)-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-[4-(2-ホスホノヒドロキシブチル)オキシ-2-メトキシフェニル]-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン(化合物14-2)
【0299】
【表50】
【0300】
(S)-7-[4-(3-シアノ-2-ホスホノヒドロキシプロピル)オキシ-2-メトキシフェニル]-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オン(化合物14-3)
【0301】
【表51】
【0302】
[薬理試験]
薬理試験を実施する上で、本発明化合物との効果の比較として、前記の特許文献2(特開2008-74829号公報)を参考に、対照化合物B、対照化合物C、対照化合物D、対照化合物Eおよび対照化合物Fを調製し、試験に使用した。
【0303】
対照化合物Bは、以下の構造
【化12】

を有する8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-(5-ヒドロキシメチル-2-メトキシフェニル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オンである。
【0304】
対照化合物Cは、以下の構造
【化13】

を有する8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-(5-ヒドロキシ-2-メトキシフェニル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オンである。
【0305】
対照化合物Dは、以下の構造
【化14】

を有する7-(4-ブチリルオキシ-2-メトキシフェニル)-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オンである。
【0306】
対照化合物Eは、以下の構造
【化15】

を有する7-(2,4-ジメトキシフェニル)-8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オンである。
【0307】
対照化合物Fは、以下の構造
【化16】

を有する8-(5-フルオロ-2-メチルフェノキシメチル)-7-(2-メトキシ-4-メトキシメトキシフェニル)-1,3,3-トリメチル-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-2-オンである。
【0308】
[薬理試験]
1.GR結合活性評価試験
本発明化合物のGRに対する結合活性を評価するために、偏光蛍光法によるGR受容体競合アッセイを実施した。アッセイにはGR競合アッセイキット(Invitrogen社製、Cat No.P2816)を使用して、本キットに添付のプロトコールに準じて行った。以下にその具体的な方法を記載する。
【0309】
(試薬の調製)
GRスクリーニング緩衝液:10mMリン酸カリウム(pH7.4)、20mMモリブデン酸ナトリウム(NaMoO)、0.1mMエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、5mMジチオスレイトール(DTT)、0.1mM安定化ペプチドおよび2%ジメチルスルホキシドの緩衝液を調製した。
【0310】
4×GS1溶液:蛍光グルココルチコイドリガンドであるFluormoneTM GS1をGRスクリーニング緩衝液で希釈して、4nMの溶液を調製した。
【0311】
4×GR溶液:リコンビナントヒトGRをGRスクリーニング緩衝液で希釈して、16nMの溶液を調製した。
【0312】
(被験化合物溶液およびデキサメタゾン(以下、「DEX」ともいう。)溶液の調製)
被験化合物をジメチルスルホキシドに溶解した後、この溶液をGRスクリーニング緩衝液で希釈し、20μMの被験化合物溶液を調製した。また、DEXを同様に溶解して200μM濃度のDEX溶液を調製し、この溶液をGRスクリーニング緩衝液で希釈し、2mMのDEX溶液を調製した。DEXは陽性対照として用いた。
【0313】
(試験方法および測定方法)
1)384穴プレートに被験化合物溶液を10μL/wellずつ添加した。
2)4×GS1溶液および4×GR溶液を各々5μL/wellずつ添加した。
3)被験化合物溶液の代わりにGRスクリーニング緩衝液を10μL/wellずつ添加したものを陰性対照とした。
4)被験化合物溶液の代わりに2mMのDEXを10μL/wellずつ添加したものを陽性対照とした。
5)暗所かつ室温で2時間インキュベートし、蛍光偏光を測定した。
【0314】
(GR結合率の算出)
GR結合率(%)は以下の式により算出した。
GR結合率(%)=100×{1-(各被験化合物溶液の蛍光偏光-陽性対照溶液の蛍光偏光平均値)/(陰性対照溶液の蛍光偏光平均値-陽性対照溶液の蛍光偏光平均値)}
【0315】
(試験結果および考察)
被験化合物として、化合物1-1、化合物1-3、化合物1-4、化合物1-6、化合物2-1、化合物2-2、化合物3-1、化合物4-1、化合物4-2、化合物4-3、化合物5-1、化合物5-2、化合物7-1、化合物7-2、化合物9-1、化合物10-1、化合物10-2、化合物10-3、化合物11-1、化合物11-5、化合物14-1、対照化合物B、対照化合物C、対照化合物D、対照化合物Eおよび対照化合物Fを使用した場合のGR結合率(%)を表Iに示す。
【0316】
GR結合活性評価試験の結果、本発明化合物は優れたGR結合活性を示した。
【0317】
(表I)
【表52】
【0318】
2.IL-6産生抑制作用評価試験
本発明化合物のGRアゴニストとしての作用を評価するために、LPS刺激後のヒト角膜上皮細胞株におけるIL-6産生抑制作用を検討した。IL-6産生量の測定にはHTRF法(Cisbio Bioassays社製、Cat No.62IL6PEB)を使用し、添付のプロトコールに準じて行った。以下にその具体的な方法を記載する。
【0319】
(試薬の調製)
LPS調製液:LPSをPBS(-)に溶解後、培養液で希釈して1μg/mL濃度のLPS溶液を調製した。
【0320】
(被験化合物溶液およびDEX溶液の調製)
被験化合物をジメチルスルホキシドに溶解した後、この溶液を10%FBS-DMEM/Ham’s F12培地で希釈して100μMの被験化合物溶液を調製した。IC50値を算出する場合は、100μM溶液を1%ジメチルスルホキシド含有10%FBS-DMEM/Ham’s F12培地で希釈し、10μM、3μM、1μM、0.3μM、0.1μMおよび0.01μMの被験化合物溶液をそれぞれ調製した。また、DEXを同様に溶解して100μM濃度のDEX溶液を調製し、DEXのIL-6産生抑制率を測定し、Efficacy(%DEX)の算出に用いた。
【0321】
(使用細胞および培養方法)
使用細胞:ヒト角膜上皮細胞株(HCE-T)(理化学研究所)
培養方法:
1)サブコンフルエントな状態まで増殖したHCE-TをPBS(-)で洗浄し、trypsin-EDTA処理により細胞を剥離した。
2)SHEM培地(supplemented hormone epithelial medium:15%FBS、5μg/mL insulin、10ng/mL human EGF、40μg/mL gentamicin含有DMEM/Ham’s F12)を添加し、trypsinを不活性化した。
3)上記懸濁液を回収し、1000rpmで5分間遠心後の細胞沈渣を得た。
4)細胞沈渣をSHEM培地で懸濁し、培養フラスコに播種後、COインキュベーター(温度:37℃、CO濃度:5%)内で培養した。本方法により、継代培養を続けた細胞を試験に使用した。
【0322】
(試験方法および測定方法)
1)継代培養したHCE-Tを回収し、96穴平底培養プレートに細胞を2.0×10cells/0.1mL/wellずつ播種した。
2)一晩培養した後、培地を除去し、10%FBS-DMEM/Ham’s F12培地を80μL/wellずつ添加した。
3)各被験化合物溶液を10μL/wellずつ添加した。
4)LPS溶液を10μL/wellずつ添加した。
5)各被験化合物溶液の代わりに1%ジメチルスルホキシド含有10%FBS-DMEM/Ham’s F12培地を10μL/wellずつ添加し、LPS溶液の代わりに10%FBS-DMEM/Ham’s F12培地を添加したものを陰性対照とした。
6)各被験化合物溶液の代わりに1%ジメチルスルホキシド含有10%FBS-DMEM/Ham’s F12培地を10μL/wellずつ添加したものを陽性対照とした。
7)4時間の培養終了後、上清を回収し、上清中に遊離しているIL-6量をHTRF human IL-6 Kitを用いて測定した。
8)以下の計算式に従いIL-6産生抑制率を算出した。
【0323】
(IL-6産生抑制率の算出)
IL-6産生抑制率(%)は以下の式により算出した。
IL-6産生抑制率(%)=100×{1-(各被験化合物溶液のIL-6産生量-陰性対照群のIL-6産生量平均値)/(陽性対照群のIL-6産生量平均値-陰性対照群のIL-6産生量平均値)}(%)
【0324】
さらに、DEX処置群を100としたときのIL-6産生抑制率(Efficacy(%DEX))を算出した。
Efficacy(%DEX)=100×{(各被験化合物溶液のIL-6産生抑制率の平均値)/(DEX処置群IL-6産生抑制率の平均値)}(%)
【0325】
また、常法に従いIC50を算出した。計算にはIDBS XLfit4を用いた。
【0326】
(試験結果および考察)
被験化合物として、化合物1-1、化合物1-4、化合物1-6、化合物2-1、化合物5-1、化合物5-2、化合物7-2、化合物11-4、化合物11-5、対照化合物B、対照化合物C、対照化合物D、対照化合物Eおよび対照化合物Fを使用した場合のIL-6産生抑制率(%DEX)およびIC50(μM)を表IIに示す。
【0327】
IL-6産生抑制作用評価試験の結果、本発明化合物は優れたIL-6産生抑制作用を示した。
【0328】
(表II)
【表53】
【0329】
3.TNFα産生抑制作用評価試験
本発明化合物のGRアゴニストとしての作用を評価するために、ex vivoでLPS刺激したラット全血におけるTNFα産生抑制作用を検討した。TNFα産生量の測定にはELISA法(R&D systems社製、Cat No.RTA00)を使用し、添付のプロトコールに従って行った。以下にその具体的な方法を記載する。
【0330】
(試薬の調製)
LPS調製液:LPSをPBS(-)に溶解後、RPMI1640で希釈して2μg/mL濃度のLPS溶液を調製した。
【0331】
(被験化合物溶液およびDEX溶液の調製)
被験化合物をジメチルスルホキシドに溶解した後、この溶液をPBS(-)で希釈して200μMの被験化合物溶液を調製した。また、DEXを同様に溶解して200μMのDEX溶液を調製し、DEXのTNFα産生抑制率を測定し、Efficacy(%DEX)の算出に用いた。
【0332】
(試験方法および測定方法)
1)3~5匹のラットより、イソフルラン麻酔下にて腹部大動脈よりヘパリン処理した注射筒を用いて採血した。ラットは全採血致死させた後、死亡を確認した。
2)96穴丸底培養プレートに3~5匹分をプールした血液を180μL/wellずつ播種した。
3)約1時間、培養した(37℃、5%CO、95% air)。
4)各被験化合物溶液を10μL/wellずつ添加し、1時間培養した。
5)LPS溶液を10μL/wellずつ添加した。
6)各被験化合物溶液の代わりに2%ジメチルスルホキシド含有PBS(-)を10μL/wellずつ添加し、LPS溶液の代わりにRPMI1640を10μL/wellずつ添加したものを陰性対照とした。
7)各被験化合物溶液の代わりに2%ジメチルスルホキシド含有PBS(-)を10μL/wellずつ添加したものを陽性対照とした。
8)20時間の培養終了後、上清を回収し、上清中に遊離しているTNFα量をELISA Kitを用いて測定した。
9)以下の計算式に従いTNFα産生抑制率を算出した。
【0333】
(TNFα産生抑制率の算出)
TNFα産生抑制率(%)は以下の式により算出した。
TNFα産生抑制率(%)=100×{1-(各被験化合物溶液のTNFα産生量―陰性対照群のTNFα産生量平均値)/(陽性対照群のTNFα産生量平均値―陰性対照群のTNFα産生量平均値)}(%)
【0334】
さらに、DEX処置群を100としたときのTNFα産生抑制率(Efficacy(%DEX))を算出した。
Efficacy(%DEX)=100×{(各被験化合物溶液のTNFα産生抑制率の平均値)/(DEX処置群TNFα産生抑制率の平均値)}(%)
【0335】
(試験結果および考察)
被験化合物として、化合物1-1、化合物1-2、化合物1-3、化合物1-4、化合物2-1、化合物2-2、化合物5-2、化合物10-2、化合物14-1、対照化合物B、対照化合物Eおよび対照化合物Fを使用した場合のTNFα産生抑制率(Efficacy(%DEX))を表IIIに示す。
【0336】
TNFα産生抑制作用評価試験の結果、本発明化合物は優れたTNFα産生抑制作用を示した。
【0337】
(表III)
【表54】
【0338】
4.IL-2およびIL-4産生抑制作用評価試験
本発明化合物のGRアゴニストとしての作用を評価するために、抗CD3/CD28抗体刺激後の正常ヒトCD4T細胞におけるIL-2およびIL-4産生抑制作用を検討した。IL-2およびIL-4産生量の測定にはELISA法(R&D systems社製、Cat No.D2050、HS400)を使用し、添付のプロトコールに従って行った。以下にその具体的な方法を記載する。
【0339】
(試薬の調製)
Dynabeads(登録商標) Human T-Activator CD3/CD28(4×10 beads/mL)(Dynabeads)を使用し、添付されたプロトコールに従って調製した。
【0340】
(被験化合物溶液の調製)
被験化合物をジメチルスルホキシドに溶解した後、この溶液をRPMI培地で希釈して400μMの被験化合物溶液を調製した。この溶液を4%ジメチルスルホキシド含有RPMI培地で希釈して40μMの被験化合物溶液を調製した。
【0341】
(使用細胞および培養方法)
使用細胞:正常末梢血ヒトCD4T細胞(ヒトCD4T細胞)(Lonza)
培養方法:
1)凍結ヒトCD4T細胞を37℃温水槽にて融解し、RPMI培地(10%FBS、100U/mL Penicillin、100μg/mL Streptomycin含有RPMI1640)に添加した。
2)上記懸濁液を回収し、900rpmで10分間遠心後の細胞沈渣を得た。
3)細胞沈渣をRPMI培地で懸濁し、2)の操作を行った。
4)細胞沈渣をRPMI培地で4×10cells/mLに調製した。
5)上記懸濁液をCOインキュベーター(温度:37℃、CO濃度:5%)内で1時間以上培養した。
【0342】
(試験方法および測定方法)
1)培養したヒトCD4T細胞を回収し、96穴平底培養プレートに細胞を8.0×10cells/0.2mL/wellずつ播種した。
2)各被験化合物溶液を5μL/wellずつ添加した。
3)調製したDynabeadsを2μL/wellずつ添加した。
4)各被験化合物溶液の代わりに4%ジメチルスルホキシド含有RPMI培地を5μL/wellずつ添加し、Dynabeadsの代わりにRPMI培地を2μL/wellずつ添加したものを陰性対照とした。
5)各被験化合物溶液の代わりに4%ジメチルスルホキシド含有RPMI培地を5μL/wellずつ添加したものを陽性対照とした。
6)24時間の培養終了後、上清を回収し、上清中に遊離しているIL-2およびIL-4量をELISA Kitを用いて測定した。
7)以下の計算式に従いIL-2およびIL-4産生抑制率をそれぞれ算出した。
【0343】
(IL-2およびIL-4産生抑制率の算出)
IL-2およびIL-4産生抑制率(%)は以下の式によりそれぞれ算出した。
IL-2、IL-4産生抑制率(%)=100×{1-(各被験化合物溶液のIL-2、IL-4産生量-陰性対照群のIL-2、IL-4産生量平均値)/(陽性対照群のIL-2、IL-4産生量平均値-陰性対照群のIL-2、IL-4産生量平均値)}(%)
【0344】
(試験結果および考察)
被験化合物として、化合物1-1、化合物2-1、化合物11-1、対照化合物B、対照化合物C、対照化合物D、対照化合物Eおよび対照化合物Fを使用した場合のIL-2およびIL-4産生抑制率(%of1μM)を表IVに示す。
【0345】
IL-2およびIL-4産生抑制作用評価試験の結果、本発明化合物は優れたIL-2およびIL-4産生抑制作用を示した。
【0346】
(表IV)
【表55】
【0347】
5.MCP-1産生抑制作用評価試験
本発明化合物のGRアゴニストとしての作用を評価するために、LPS刺激後のヒト単球細胞におけるMCP-1産生抑制作用を検討した。サンプル中のMCP-1産生量の測定にはELISA法(R&D systems社製、Cat No.DCP00)を使用し、添付のプロトコールに従って行った。以下にその具体的な方法を記載する。
【0348】
(試薬の調製)
LPS調製液:LPSをPBS(-)に溶解後、10%FBS含有RPMI1640で希釈して40μg/mL濃度のLPS溶液を調製した。
【0349】
(被験化合物溶液の調製)
被験化合物をジメチルスルホキシドに溶解した後、この溶液をRPMI培地で希釈して400μMの被験化合物溶液を調製した。この溶液を4%ジメチルスルホキシド含有RPMI1640培地で希釈して40μMの被験化合物溶液を調製した。
【0350】
(使用細胞および培養方法)
使用細胞:ヒト単球細胞(THP-1)(ATCC)
培養方法:
1)継代培養したTHP-1を回収し、1100rpmで5分間遠心後の細胞沈渣を得た。
2)RPMI培地(10%FBS、100U/mL penicillin、100μg/mL streptomycin、55μM 2-Mercaptoethanol、10ng/mL human EGF、40μg/mL gentamicin含有RPMI1640)を添加した。
3)上記懸濁液を培養フラスコに播種後、COインキュベーター(温度:37℃、CO濃度:5%)内で培養した。本方法により、継代培養を続けた細胞を試験に使用した。
【0351】
(試験方法および測定方法)
1)継代培養したTHP-1を回収し、96穴丸底培養プレートに細胞を1.9×10cells/0.19mL/wellずつ播種した。
2)各被験化合物溶液を5μL/wellずつ添加し、2時間培養した。
3)LPS溶液を5μL/wellずつ添加した。
4)各被験化合物溶液の代わりに4%ジメチルスルホキシド含有RPMI培地を5μL/wellずつ添加し、LPS溶液の代わりに10%FBS-RPMI1640を各5μL/wellずつ添加したものを添加したものを陰性対照とした。
5)各被験化合物溶液の代わりに4%ジメチルスルホキシド含有RPMI培地を5μL/wellずつ添加したものを陽性対照とした。
6)18時間の培養終了後、上清を回収し、上清中に遊離しているMCP-1量をELISA Kitを用いて測定した。
7)以下の計算式に従いMCP-1産生抑制率を算出した。
【0352】
(MCP-1産生抑制率の算出)
MCP-1産生抑制率(%)は以下の式により算出した。
MCP-1産生抑制率(%)=100×{1-(各被験化合物溶液のMCP-1産生量-陰性対照群のMCP-1産生量平均値)/(陽性対照群のMCP-1産生量平均値-陰性対照群のMCP-1産生量平均値)}(%)
【0353】
(試験結果および考察)
被験化合物として、化合物1-1、化合物2-1、化合物11-1、対照化合物B、対照化合物C、対照化合物Eおよび対照化合物Fを使用した場合のMCP-1産生抑制率(% of 1 μM)を表Vに示す。
【0354】
MCP-1産生抑制作用評価試験の結果、本発明化合物は優れたMCP-1産生抑制作用を示した。
【0355】
(表V)
【表56】
【0356】
以上の結果より、本発明化合物は対照化合物よりもGRアゴニストとして有用であり、ステロイド類などのGRアゴニストが有効とされる疾患、特に炎症性疾患(骨・関節疾患、眼炎症性疾患など)の予防または治療剤として有用であることが確認された。
【0357】
6.結膜炎モデル評価試験
本発明化合物の結膜炎に対する抗炎症作用を評価するため、ラットのカラゲニン惹起結膜炎モデルにおける浮腫形成に対する抑制効果を検討した。なお、本効果は基剤投与群(コントロール群)の浮腫重量と被験化合物投与群の浮腫重量から浮腫形成抑制率を算出した。
【0358】
(被験化合物点眼液の調製)
被験化合物に一般的な添加剤を含む基剤を加えて、0.001%(W/V)、0.003%(W/V)、0.01%(W/V)および1%(W/V)の被験化合物懸濁液を調製した。
【0359】
(カラゲニン惹起結膜炎モデルの作製および評価方法)
雄性Wistar/STラットを用い、ウレタン溶液を投与して全身麻酔を施した後、カラゲニン1.0%(W/V)を溶解した生理食塩液を両眼の上眼瞼結膜内にそれぞれ50μL/眼ずつ注射することにより、炎症を惹起した。
【0360】
化合物1-1は惹起30分前に、両眼に1回点眼(点眼量:5μL/回)した。なお、基剤投与群(コントロール群)には、基剤を同様に点眼した。対照化合物BおよびCは惹起1時間前から1時間間隔で惹起3時間後までの計5回点眼(点眼量:5μL/回)した。なお、基剤投与群(コントロール群)には、基剤を同様に点眼した。
【0361】
惹起4時間後、全身麻酔下のラットを断頭法により屠殺し、両眼の結膜浮腫部域を摘出し、それぞれの重量を測定した。浮腫重量の平均値から浮腫形成抑制率を算出した。
【0362】
(抑制率の算出)
基剤投与群(コントロール群)の浮腫重量の平均値を基準にして下記計算式により被験化合物懸濁液点眼群の浮腫形成抑制率を算出した。
【0363】
浮腫形成抑制率(%)=100×{1-(被験化合物点眼群の浮腫重量の平均値)/(基剤投与群(コントロール群)の浮腫重量の平均値)}(%)
【0364】
(試験結果および考察)
被験化合物として、化合物1-1、対照化合物B、対照化合物C、既存の点眼液である市販薬A(有効成分:エタボン酸ロテプレドノール0.5%)および市販薬B(有効成分:フルオロメトロン0.1%)を使用した場合の浮腫形成抑制率(%)を表VIに示す。なお、浮腫重量の平均値は各8-10眼(4-5匹)である。
【0365】
結膜炎モデル評価試験の結果、本発明化合物は優れた浮腫形成抑制効果を示した。
【0366】
(表VI)
【表57】
【0367】
以上の結果より、本発明化合物は前眼部炎症性疾患治療剤、特に角膜炎、角結膜炎、結膜炎、眼瞼炎による炎症などの眼炎症性疾患の予防または治療剤として有用であることが確認された。
【0368】
7.前眼部炎症モデル評価試験
本発明化合物の前眼部炎症に対する抗炎症作用を評価するため、ウサギの前房穿刺眼炎症モデルにおける房水中浸潤細胞数に対する抑制効果を検討した。なお、本効果は基剤投与群(コントロール群)の房水中浸潤細胞数と被験化合物投与群の房水中浸潤細胞数から抑制率を算出した。
【0369】
(被験化合物点眼液の調製)
被験化合物に一般的な添加剤を含む基剤を加えて、3%(W/V)の被験化合物懸濁液を調製した。
【0370】
(前房穿刺眼炎症モデルの作製および評価方法)
1)雄性JWウサギに0.4%オキシブプロカイン塩酸塩(商品名:ベノキシール点眼液0.4%)で局所麻酔を施し、ツベルクリン用シリンジを用いて虹彩に触れないように前房水を約0.1mL採取して1次穿刺し、炎症反応を惹起した。
2)1次穿刺の30分前に、ヘパリンを約50単位/kgになるように静脈内投与した。
3)被験化合物懸濁液を1次穿刺210分前、60分前、15分後および90分後の計4回、両眼に点眼(点眼量:50μL/回)した。基剤投与群(コントロール群)には、基剤を同様に点眼した。
4)1次穿刺120分後、ウサギ耳静脈より約1.5mL/kgのペントバルビタールナトリウム(商品名:ソムノペンチル)を静脈内投与した。その後、ツベルクリン用シリンジを用いて、約0.1mLの前房水を採取し、サンプルは氷中で保存した。
5)TC10全自動セルカウンター(Bio-Rad)を用いて房水中浸潤細胞数を計測した。
【0371】
(計算式)
被験化合物投与群の房水中細胞浸潤抑制率(%)=100×{1-(被験化合物点眼群の房水中浸潤細胞数の平均値)/(基剤投与群(コントロール群)の房水中浸潤細胞数の平均値)}(%)
【0372】
(試験結果および考察)
被験化合物として、化合物11-1を使用した場合の房水中浸潤細胞数抑制率(%)は37%を示した。なお、スコアの平均値は各7眼(14匹)である。
【0373】
前眼部炎症モデル評価試験の結果、本発明化合物は優れた房水中浸潤細胞数抑制効果を示した。
【0374】
以上の結果より、本発明化合物は前眼部炎症性疾患治療剤、特にぶどう膜炎、術後炎症および眼組織移植拒絶反応による炎症などの眼炎症性疾患の予防または治療剤として有用であることが確認された。
【0375】
8.眼球乾燥症候群(ドライアイ)モデル評価試験
本発明化合物の眼球乾燥症候群(ドライアイ)に伴う角膜障害の治療効果を評価するため、眼窩外涙腺摘出ラットドライアイモデルにおける角膜障害に対する治療効果を検討した。本モデルは、Fujiharaらの方法(Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.,42(1):96-100(2001))に準じて作製した。なお、本効果は村上らの方法(あたらしい眼科 21(1):87-90(2004))に準じて、角膜障害の程度をスコア化し、基剤投与群(コントロール群)の角膜障害スコア、被験化合物投与群の角膜障害スコアおよび正常ラットの角膜障害スコアから改善率を算出した。
【0376】
(被験化合物点眼液の調製)
被験化合物に一般的な添加剤を含む基剤を加えて、0.03%(W/V)および0.1%(W/V)の被験化合物懸濁液を調製した。また、市販薬Aに基剤を加えて、0.05%(V/V)の希釈溶液を調製した。
【0377】
(眼窩外涙腺摘出ドライアイモデルの作製および評価方法)
1)雄性SDラットを用い、ソムノペンチルを投与して全身麻酔を施した後、眼窩外涙腺を摘出し、その後8週間かけて角膜障害を誘発させた。
2)被験化合物懸濁液を両眼に1日4回、14日間点眼(点眼量:5μL/回)した。なお、基剤投与群(コントロール群)には基剤を同様に点眼し、市販薬Aおよびその希釈液も同様に点眼した。
3)点眼開始14日後、角膜をフルオレセインにて染色した。角膜の上部、中間部および下部のそれぞれについて、フルオレセインによる染色の程度を下記の基準に従ってスコア判定し、それらのスコアの合計の平均値を算出した。なお、0、1、2、3の各スコア間に中間値として0.5を設けた。
【0378】
《判定基準》
0:染色されていない
1:染色が疎であり、各点状の染色部分は離れている
2:染色が中程度であり、点状の染色部分の一部が隣接している
3:染色が密であり、各点状の染色部分はほとんど隣接している
【0379】
(計算式)
被験化合物投与群の角膜障害改善率(%)=(Ao-Ax)/(Ao-An)×100
Ao:基剤投与群(コントロール群)の角膜障害スコア平均値
Ax:被験化合物投与群の角膜障害スコア平均値
An:正常ラットの角膜障害スコア平均値
【0380】
(試験結果および考察)
被験化合物として、化合物1-1、化合物2-1、化合物11-1、化合物12-1、化合物13-1、既存の点眼液である市販薬A(有効成分:エタボン酸ロテプレドノール 0.5%)およびその市販薬Aの希釈溶液を使用した場合の角膜障害改善率(%)を表VIIに示す。なお、スコアの平均値は各8眼(4匹)である。
【0381】
眼球乾燥症候群(ドライアイ)モデル評価試験の結果、本発明化合物は優れた角膜障害改善率を示した。
【0382】
(表VII)
【表58】
【0383】
以上の結果より、本発明化合物は前眼部炎症性疾患治療剤、特に角膜炎、角結膜炎、結膜炎、眼瞼炎、眼球乾燥症候群(ドライアイ)などの眼炎症性疾患の予防または治療剤として有用であることが確認された。
【0384】
9.アレルギー性結膜炎モデル評価試験
本発明化合物のアレルギー性結膜炎に対する抗アレルギー作用を評価するため、ウサギのオボアルブミン能動感作アレルギー性結膜炎モデルにおける充血に対する抑制効果を検討した。なお、本効果は基剤投与群(コントロール群)のスコアと被験化合物投与群のスコアから抑制率を算出した。
【0385】
(被験化合物点眼液の調製)
被験化合物に一般的な添加剤を含む基剤を加えて、1%(W/V)および3%(W/V)の被験化合物懸濁液を調製した。
【0386】
(オボアルブミン能動感作アレルギー性結膜炎モデルの作製および評価方法)
雄性JWウサギを用い、水酸化アルミニウムゲルに吸着したオボアルブミン(200μg/mL/生理食塩液)を、ウサギの両眼の眼球結膜下にそれぞれ200μL/眼ずつ注射し、能動感作を行った。
【0387】
感作14日以降に、被験化合物懸濁液を1日4回、4日間点眼後、翌日1回、両眼に点眼(点眼量:50μL/回)した。なお、基剤投与群(コントロール群)には、基剤を同様に点眼した。
【0388】
被験化合物懸濁液を最終点眼した1時間後に、オボアルブミン0.02%(W/V)含有生理食塩液溶液をウサギ1kgあたり1.5mLの投与量で、ウサギの耳翼辺縁静脈から投与して、アレルギー性結膜炎を惹起させた。
【0389】
惹起の0.5時間後に、ウサギの両眼球結膜の充血症状の程度を下記の基準に従って、スコア判定し、それらのスコアの合計の平均値を算出した。
【0390】
《判定基準》
0:所見なし
1:眼球上直筋または角膜輪部の一部に、細い血管の拡張が数本認められる状態
2:眼球上直筋に拡張した血管が多数認められる状態。または、眼球上直筋に細い血管が数本拡張及び角膜輪部の一部に、細い血管の拡張が数本認められる状態
3:眼球上直筋及び角膜輪部の一部に、拡張した血管が多数認められる状態
4:眼球上直筋及び角膜輪部の全周に、拡張した血管が多数認められる状態
5:眼球上直筋、角膜輪部の全周及びこれら以外の眼球結膜上に、拡張した血管が認められる状態
【0391】
(計算式)
被験化合物投与群の充血抑制率(%)={(Ao-Ap1)-(Ax-Ap2)}/(Ao-Ap1)×100
Ao:基剤投与群(コントロール群)の充血スコア平均値
Ax:被験化合物投与群の充血スコア平均値
Ap1:基剤投与群のpre値の充血スコア平均値
Ap2:被験化合物投与群のpre値の充血スコア平均値
【0392】
(試験結果および考察)
被験化合物として、化合物1-1、化合物2-1、化合物5-2、化合物11-1および化合物14-1を使用した場合の充血抑制率(%)を表VIIIに示す。なお、スコアの平均値は各8眼(8匹)である。
【0393】
アレルギー性結膜炎モデル評価試験の結果、本発明化合物は優れた充血抑制効果を示した。
【0394】
(表VIII)
【表59】
【0395】
以上の結果より、本発明化合物は前眼部炎症性疾患治療剤、特に角膜炎、角結膜炎、結膜炎、眼瞼炎、眼球乾燥症候群(ドライアイ)、アレルギー性結膜炎などの眼炎症性疾患の予防または治療剤として有用であることが確認された。
【0396】
10.網膜血管透過性亢進モデル評価試験
本発明化合物のVEGF惹起網膜血管透過性亢進に対する抑制効果を評価するため、ウサギのVEGF惹起網膜血管透過性亢進モデルにおける本発明化合物の網膜血管透過性亢進抑制効果を検討した。なお、本効果は基剤投与群(非惹起群)の蛍光色素漏出量、基剤投与群(コントロール群)の蛍光色素漏出量および被験化合物投与群の蛍光色素漏出量とから算出した。
【0397】
(被験化合物懸濁溶液または被験化合物溶液の調製)
被験化合物に0.01%ポリソルベート80/0.5%カルボキシメチルセルロースナトリウム/PBS(以下「基剤A」という。)を加えて、2%(W/V)または8%(W/V)の被験化合物懸濁液を調製した。または被験化合物にPEG400(以下「基剤B」という。)を加えて、6%(W/W)の被験化合物溶液を調製した。
【0398】
(試薬の調製)
VEGF投与液:humanVEGF165をPBSで溶解して、50μg/mL VEGF投与液を調製した。
【0399】
(VEGF惹起網膜血管透過性亢進モデルの作製および評価方法)
1)ウサギ(Dutch雄性ウサギ)に5%塩酸ケタミン注射液と2%塩酸キシラジン注射液の7:1混合液(1mL/kg)を筋肉内投与し、全身麻酔した。
2)トロピカミド・塩酸フェニレフリン点眼液(商品名:ミドリンP)を点眼して散瞳させた後、VEGF投与液を硝子体内投与した。なお、基剤投与群(非惹起群)にはPBSを硝子体内投与した。
3)VEGFを硝子体内投与の2日後にフルオレセインを静脈内投与した。フルオレセイン静脈内投与の2時間後にフルオロフォトメーターを用いて硝子体内の漏出蛍光色素量を測定した。
【0400】
(試験方法)
1)VEGF惹起の1週間前もしくは4週間前に、被験化合物懸濁液(基剤Aによる調製)は1回50μLを、被験化合物溶液(基剤Bによる調製)は1回5μLを硝子体内投与した。なお、基剤投与群(非惹起群)および基剤投与群(コントロール群)には被験化合物懸濁液に代えて基剤Aを、または被験化合物溶液に代えて基剤Bを用いた。
2)以下の計算式に従って、網膜血管透過性亢進の抑制率を算出した。
【0401】
(計算式)
被験化合物投与群の網膜血管透過性亢進抑制率(%)=100×{1-(被験化合物投与群の漏出蛍光色素量平均値-基剤投与群(非惹起群)の漏出蛍光色素量平均値)/(基剤投与群(コントロール群)の漏出蛍光色素量平均値-基剤投与群(非惹起群)の漏出蛍光色素量平均値)}
【0402】
(試験結果および考察)
被験化合物として、化合物1-1、化合物2-1、化合物5-2、化合物11-2、化合物14-3、対照化合物B、対照化合物Dおよび対照化合物Eを使用した場合の血管透過性亢進抑制率(%)を表IXに示した。なお、漏出蛍光色素量の平均値は各4-6眼(2-3匹)である。
【0403】
網膜血管透過性亢進モデル評価試験の結果、本発明化合物は優れた網膜血管透過性亢進に対する抑制効果を示した。
【0404】
(表IX)
【表60】
【0405】
以上の結果より、本発明化合物は後眼部炎症性疾患治療剤、特に加齢黄斑変性、糖尿病黄斑浮腫、網膜中心静脈閉塞症、網膜静脈分枝閉塞症などの眼炎症性疾患の予防または治療剤として有用であることが確認された。
【0406】
[製剤例]
本発明化合物の一般的な製剤例を以下に示す。
(製剤例1:錠剤)
150mg中
本発明化合物 1mg
乳糖 100mg
トウモロコシデンプン 40mg
カルボキシメチルセルロースカルシウム 4.5mg
ヒドロキシプロピルセルロース 4mg
ステアリン酸マグネシウム 0.5mg
【0407】
上記処方の錠剤にコーティング剤(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マクロゴール、シリコーン樹脂などの通常使用されるコーティング剤)3mgを用いて、コーティングを施し、目的とする錠剤を得ることができる。また、本発明化合物、添加物の種類および/または添加物の量を適宜変更することで、所望の錠剤を得ることもできる。
【0408】
(製剤例2:カプセル剤)
150mg中
本発明化合物 5mg
乳糖 135mg
カルボキシメチルセルロースカルシウム 4.5mg
ヒドロキシプロピルセルロース 4mg
ステアリン酸マグネシウム 1.5mg
【0409】
本発明化合物、添加剤の種類およびまたは添加剤の量を適宜変更することで、所望のカプセル剤を得ることができる。
【0410】
(製剤例3:点眼剤)
100mL中
本発明化合物 100mg
塩化ナトリウム 900mg
ポリソルベート80 500mg
水酸化ナトリウム 適量
塩酸 適量
滅菌精製水 適量
【0411】
(製剤例4:硝子体内投与剤)
100mL中
本発明化合物 1000mg
ポリエチレングリコール400 適量
【0412】
本発明化合物、添加物の種類および/または添加剤の量を適宜変更することで、所望の点眼剤を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0413】
本発明による新規な[4-(1,3,3-トリメチル-2-オキソ-3,4-ジヒドロ-1H-キノキサリン-7-イル)フェノキシ]エチルオキシ化合物またはその塩は、グルココルチコイド受容体アゴニスト活性を有し、医薬として、特にグルココルチコイド受容体が関与する疾患の予防または治療剤として有用である。