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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-08
(45)【発行日】2022-03-16
(54)【発明の名称】燃焼設備
(51)【国際特許分類】
   F23N 5/00 20060101AFI20220309BHJP
   F23N 1/02 20060101ALI20220309BHJP
   F23N 5/24 20060101ALI20220309BHJP
   F23N 5/20 20060101ALI20220309BHJP
   F23D 14/28 20060101ALI20220309BHJP
   F23K 5/00 20060101ALI20220309BHJP
   F23N 5/26 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
F23N5/00 J
F23N1/02 K
F23N5/24 101A
F23N5/20 G
F23N5/20 H
F23D14/28 Z
F23K5/00 304
F23N5/26 101E
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021159100
(22)【出願日】2021-09-29
【審査請求日】2021-09-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516047175
【氏名又は名称】三菱重工パワーインダストリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】津村 俊一
(72)【発明者】
【氏名】高嶋 洋平
(72)【発明者】
【氏名】冠木 豊
(72)【発明者】
【氏名】上妻 富明
(72)【発明者】
【氏名】田口 雄三
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-118359(JP,A)
【文献】特開2004-138266(JP,A)
【文献】特開2009-264108(JP,A)
【文献】特開2014-037810(JP,A)
【文献】特開2014-214932(JP,A)
【文献】特表2008-540990(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102304370(CN,A)
【文献】特開2018-096616(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23N 5/00
F23N 1/02
F23C 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
火炉と、
水素を含むガス燃料を前記火炉に供給するガスバーナと、
前記火炉に接続され、前記ガス燃料の燃焼によって発生する排ガスが流通する排ガス流路を含む煙道と、
前記排ガス流路の上部を流通する前記排ガスに含まれる水素の濃度を水素濃度とすると、前記水素濃度を取得する水素濃度取得装置と、
前記ガスバーナの燃焼用空気の量を第1制御量とすると、前記水素濃度取得装置によって取得された前記水素濃度に基づいて、前記第1制御量を制御する制御装置と、を備える、
燃焼設備。
【請求項2】
前記排ガス流路の流路断面の下端を前記流路断面の鉛直方向の長さに対する0%の位置とし、前記流路断面の上端に向かうにつれて増加し、前記流路断面の前記上端を前記流路断面の鉛直方向の長さに対する100%の位置とすると、
前記水素濃度取得装置は、前記流路断面の鉛直方向の長さに対する70%以上100%以下の範囲内を流通する前記排ガスに含まれる水素の濃度を取得する、
請求項1に記載の燃焼設備。
【請求項3】
前記水素濃度が予め設定されている第1閾値を超えると、警報を発生する警報装置をさらに備える、
請求項1又は2に記載の燃焼設備。
【請求項4】
前記制御装置は、前記水素濃度が予め設定されている第1閾値を超えると、前記第1制御量を増やす、
請求項1から3の何れか一項に記載の燃焼設備。
【請求項5】
前記第1制御量は、一次空気の量及び二次空気の量の両方を含み、
前記制御装置は、前記水素濃度が前記第1閾値を超えると、前記一次空気の量を増やし、前記水素濃度が前記第1閾値より小さくならない場合には、前記二次空気の量を増やす、
請求項に記載の燃焼設備。
【請求項6】
前記二次空気は、前記排ガス流路を流通する前記排ガスの一部を前記火炉に循環させる循環ガスを含む、
請求項に記載の燃焼設備。
【請求項7】
前記ガスバーナが前記火炉に供給する前記ガス燃料の量を第2制御量とすると、
前記制御装置は、前記水素濃度が前記第1閾値より予め大きく設定されている第2閾値を超えると、前記第2制御量を減らす、
請求項4から6の何れか一項に記載の燃焼設備。
【請求項8】
前記制御装置は、前記水素濃度が前記第2閾値を超えると、前記第2制御量をゼロに減らす、
請求項に記載の燃焼設備。
【請求項9】
前記排ガス流路を流通する前記排ガスに含まれる酸素の濃度を酸素濃度とすると、
前記制御装置は、前記水素濃度が前記第1閾値以下である場合、前記酸素濃度が1%未満となるまで前記第1制御量を減らす、
請求項4から8の何れか一項に記載の燃焼設備。
【請求項10】
前記水素濃度取得装置とは別に設けられ、前記排ガス流路を流通する前記排ガスに含まれる水素以外の成分の濃度を取得する排ガス分析装置をさらに備える、請求項1からの何れか一項に記載の燃焼設備。
【請求項11】
火炉と、
水素を含むガス燃料を前記火炉に供給するガスバーナと、
前記火炉に接続され、前記ガス燃料の燃焼によって発生する排ガスが流通する排ガス流路を含む煙道と、
前記排ガス流路の上部を流通する前記排ガスに含まれる水素の濃度を水素濃度とすると、前記水素濃度を取得する水素濃度取得装置と、
前記水素濃度取得装置とは別に設けられ、前記排ガス流路を流通する前記排ガスに含まれる水素以外の成分の濃度を取得する排ガス分析装置と、を備え、
前記排ガス流路の流路断面の下端を前記流路断面の鉛直方向の長さに対する0%の位置とし、前記流路断面の上端に向かうにつれて増加し、前記流路断面の前記上端を前記流路断面の鉛直方向の長さに対する100%の位置とすると、
前記水素濃度取得装置は、前記流路断面の鉛直方向の長さに対する60%以上100%以下の範囲内を流通する前記排ガスに含まれる水素の濃度を取得し、
前記排ガス分析装置は、前記流路断面の鉛直方向の長さに対する40%以上60%未満の範囲内を流通する前記排ガスに含まれる水素以外の成分の濃度を取得する、
燃焼設備。
【請求項12】
火炉と、
水素を含むガス燃料を前記火炉に供給するガスバーナと、
前記火炉に接続され、前記ガス燃料の燃焼によって発生する排ガスが流通する排ガス流路を含む煙道と、
前記排ガス流路の上部を流通する前記排ガスに含まれる水素の濃度を水素濃度とすると、前記水素濃度を取得する水素濃度取得装置と、
前記水素濃度取得装置とは別に設けられ、前記排ガス流路を流通する前記排ガスに含まれる水素以外の成分の濃度を取得する排ガス分析装置と、
前記排ガスが前記排ガス流路を流通する流通方向に沿って前記排ガス流路に配置される過熱器、及び再熱器と、を備え、
前記排ガス流路のうち前記過熱器と前記再熱器との間を第1区間とすると、前記水素濃度取得装置は、前記第1区間の上部を流通する前記排ガスに含まれる水素の濃度を取得し、前記排ガス分析装置は、前記第1区間を流通する前記排ガスに含まれる水素以外の成分の濃度を取得する、
燃焼設備。
【請求項13】
火炉と、
水素を含むガス燃料を前記火炉に供給するガスバーナと、
前記火炉に接続され、前記ガス燃料の燃焼によって発生する排ガスが流通する排ガス流路を含む煙道と、
前記排ガス流路の上部を流通する前記排ガスに含まれる水素の濃度を水素濃度とすると、前記水素濃度を取得する水素濃度取得装置と、
前記水素濃度取得装置とは別に設けられ、前記排ガス流路を流通する前記排ガスに含まれる水素以外の成分の濃度を取得する排ガス分析装置と、
前記排ガスが前記排ガス流路を流通する流通方向に沿って前記排ガス流路に配置される再熱器及び節炭器と、を備え、
前記排ガス流路のうち前記再熱器と前記節炭器との間を第2区間とすると、前記水素濃度取得装置は、前記第2区間の上部を流通する前記排ガスに含まれる水素の濃度を取得し、前記排ガス分析装置は、前記第2区間を流通する前記排ガスに含まれる水素以外の成分の濃度を取得する、
燃焼設備。
【請求項14】
火炉と、
水素を含むガス燃料を前記火炉に供給するガスバーナと、
前記火炉に接続され、前記ガス燃料の燃焼によって発生する排ガスが流通する排ガス流路を含む煙道と、
前記排ガス流路の上部を流通する前記排ガスに含まれる水素の濃度を水素濃度とすると、前記水素濃度を取得する水素濃度取得装置と、
前記水素濃度取得装置とは別に設けられ、前記排ガス流路を流通する前記排ガスに含まれる水素以外の成分の濃度を取得する排ガス分析装置と、
前記排ガスが前記排ガス流路を流通する流通方向に沿って前記排ガス流路に配置される節炭器及び空気予熱器と、を備え、
前記排ガス流路のうち前記節炭器と前記空気予熱器との間を第3区間とすると、前記水素濃度取得装置は、前記第3区間の上部を流通する前記排ガスに含まれる水素の濃度を取得し、前記排ガス分析装置は、前記第3区間を流通する前記排ガスに含まれる水素以外の成分の濃度を取得する、
燃焼設備。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃焼設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボイラのような燃焼設備は、火炉と、例えば都市ガスやLPGのようなガス燃料を火炉内で燃焼させるバーナと、を備えており、燃焼効率の向上や燃焼状態の安定化を実現するための技術が知られている。例えば、特許文献1には、バーナの空燃比をバーナの燃焼量、及び火炉の操業状態に応じて変更するように構成される燃焼設備が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-028415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、幾つかの燃焼設備では、代表的な温室効果ガスである二酸化炭素の排出量削減を目的として、化石燃料から脱却する取り組み(脱炭素)が進められている。この脱炭素の1つとして、バーナの燃料として水素を含むガス燃料が適用されることがある。水素は、従来からのガス燃料に含まれる成分(例えば、都市ガスに含まれるメタンやLPGに含まれるプロパン)と比較して、最小着火エネルギーや爆発限界濃度等のような燃焼に関係する特性が大きく異なる。このため、水素の特性を考慮した燃焼設備の設計が求められることがある。しかしながら、特許文献1に記載の技術は、水素の特性について何ら考慮されておらず、水素による意図せぬ不具合が発生する虞がある。
【0005】
本開示は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、水素による意図せぬ不具合の発生を防止することができる燃焼設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示に係る燃焼設備は、火炉と、水素を含むガス燃料を前記火炉に供給するガスバーナと、前記火炉に接続され、前記ガス燃料の燃焼によって発生する排ガスが流通する排ガス流路を含む煙道と、前記排ガス流路の上部を流通する前記排ガスに含まれる水素の濃度を水素濃度とすると、前記水素濃度を取得する水素濃度取得装置と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示の燃焼設備によれば、水素による意図せぬ不具合の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る燃焼設備の構成を概略的に示す図である。
図2】第1実施形態に係る排ガス流路の上部を説明するための図である。
図3】第2実施形態に係る燃焼設備の構成を概略的に示す図である。
図4】第3実施形態に係る燃焼設備の構成を概略的に示す図である。
図5】第3実施形態の変形例に係る燃焼設備の構成を概略的に示す図である。
図6】第4実施形態に係る燃焼設備の構成を概略的に示す図である。
図7】第5実施形態に係る燃焼設備の構成を概略的に示す図である。
図8】第5実施形態に係る排ガス分析装置の構成を説明するための図である。
図9】本開示に係る水素濃度取得装置が水素濃度を取得する位置を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態による燃焼設備について、図面に基づいて説明する。かかる実施の形態は、本開示の一態様を示すものであり、この開示を限定するものではなく、本開示の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0010】
<第1実施形態>
(構成)
図1は、第1実施形態に係る燃焼設備1の構成を概略的に示す図である。図1に例示するように、燃焼設備1は、火炉2と、ガスバーナ4と、煙道6と、水素濃度取得装置8と、を備える。燃焼設備1は、例えば、ボイラであって、水素を含むガス燃料Fの燃焼によって生成した排ガスGから熱を回収することで蒸気を生成する。尚、以下では、ボイラを例にして説明するが、本開示に係る燃焼設備1はボイラに限定されない。例えば、燃焼設備1は、水素自動車の内燃機関や水素を燃料とするガスタービンであってもよい。
【0011】
火炉2は、水素を含むガス燃料F(以下、ガス燃料Fと記載する)が燃焼するように構成される。火炉2は、筒形状を有し、ガス燃料Fが燃焼するための空間が形成されている。ガスバーナ4は、水素を含むガス燃料Fを火炉2に供給する。第1実施形態では、図1に例示するように、燃焼設備1は、火炉2に燃焼用空気Aを導入するための空気導入ライン9と、ガス燃料Fが貯留される燃料タンク10と、ガスバーナ4と燃料タンク10とを接続し、燃料タンク10からガスバーナ4にガス燃料Fを供給するための燃料供給ライン12と、を含む。
【0012】
尚、「水素を含むガス燃料F」には、水素と水素以外の燃料を含むもの(混焼)と、水素のみ(専焼)とがあり、さらに、水素と水素以外の燃料を含むものでも、水素が主たる燃料(水素の体積割合が50%以上)、水素以外の燃料が主たる燃料(水素の体積割合が50%未満)に区分できる。「水素を含むガス燃料」とは、これらの場合をすべて含む。
【0013】
空気導入ライン9は、一端9aが大気に開放され、他端9bがガスバーナ4に接続されている。この空気導入ライン9は、一端9aで大気から空気を吸い込み、この吸い込んだ空気を燃焼用空気Aとしてガスバーナ4に向かって流通させるように構成されている。ガスバーナ4は、燃料タンク10から燃料供給ライン12を介して供給されたガス燃料Fに、燃焼用空気Aを混合させて火炉2内に噴出(導入)し、ガス燃料Fを火炉2内で燃焼させる。
【0014】
煙道6は、火炉2に接続されている。煙道6は、内部にガス燃料Fの燃焼によって発生する排ガスGが流通する排ガス流路16を含む。第1実施形態では、煙道6は、一端6aが火炉2に接続され、他端6bが煙突17に接続されており、火炉2から煙突17に向かって排ガスGが流通するように構成されている。煙突17は、排ガスGを燃焼設備1の外部に排出する。幾つかの実施形態では、煙道6の一端6aは、火炉2の鉛直方向の上部に接続されている。
【0015】
排ガス流路16の上部7を流通する排ガスGに含まれる水素の濃度を水素濃度とすると、水素濃度取得装置8はこの水素濃度を取得する。ここで、排ガス流路16の上部7について具体的に説明する。図2は、第1実施形態に係る排ガス流路16の上部7を説明するための図であって、煙道6の一部(後述する抽気管22の抽出口25が位置する煙道6の一部区間)を煙道6の延在方向から視認した図である。尚、図2に例示する形態では、煙道6の内周面15によって画定される排ガス流路16の流路断面は円形状を有しているが、本開示はこの形態に限定されない。幾つかの実施形態では、排ガス流路16の流路断面は、楕円形状のようなオーバル形状を有する。幾つかの実施形態では、排ガス流路16の流路断面は矩形状を有する。また、排ガス流路16の流路断面は、煙道6の延在方向の全体に亘って同一の形状である必要はない。
【0016】
図2に例示するように、排ガス流路16の流路断面の下端18を排ガス流路16の流路断面の鉛直方向の長さDに対する0%の位置とし、排ガス流路16の流路断面の上端20に向かうにつれて増加し、排ガス流路16の流路断面の上端20を排ガス流路16の流路断面の鉛直方向の長さDに対する100%の位置と定義する。水素濃度取得装置8は、排ガス流路16の流路断面の鉛直方向の長さDに対する70%以上100%以下の範囲内を流通する排ガスGに含まれる水素の濃度を取得する。つまり、第1実施形態において、排ガス流路16の上部7とは、排ガス流路16の流路断面の鉛直方向の長さDに対する70%以上100%以下の範囲である。幾つかの実施形態では、排ガス流路16の上部7は、排ガス流路16の流路断面の鉛直方向の長さDに対する50%以上100%以下の範囲である。
【0017】
図2に例示する形態では、水素濃度取得装置8は、排ガス流路16の上部7を流通する排ガスGの一部を抽出する抽気管22と、この抽気管22によって抽出された排ガスGの一部に含まれる水素の濃度を測定する測定端24と、を備える。測定端24は、煙道6の外部に配置されている。抽気管22は、排ガスGの一部を抽出する抽出口25が煙道6内に位置するよう構成される。つまり、抽気管22の一部が、煙道6内に挿入されている。幾つかの実施形態では、抽気管22は、煙道6の内周面に形成される開口に接続され、この開口を介して、排ガスGの一部を抽出する。幾つかの実施形態では、測定端24が排ガス流路16の上部7に配置される。
【0018】
第1実施形態では、図1に例示するように、燃焼設備1は、警報装置26をさらに備える。警報装置26は、水素濃度取得装置8と電気的に接続されており、水素濃度取得装置8が取得した水素濃度が予め設定されている第1閾値を超えると、警報を発生する。第1閾値は、水素の爆発限界の下限値の25%以下の値であって、例えば、0.05%(500ppm)である。
【0019】
(作用・効果)
第1実施形態に係る燃焼設備1の作用・効果について説明する。水素は、排ガスGに含まれる水素以外の他の成分と比較して軽い。このため、排ガス流路16の上部7を流通する排ガスGに含まれる水素濃度は、排ガス流路16の下部(例えば、排ガス流路16の流路断面の鉛直方向の長さDに対する0%以上30%以下の範囲)や中央部(例えば、排ガス流路16の流路断面の鉛直方向の長さDに対する30%より大きく70%より小さい範囲)を流通する排ガスGに含まれる水素の濃度と比較して大きくなりやすい。そして、水素の濃度が大きくなると、爆発のような意図しない不具合が発生する可能性が高まる。
【0020】
第1実施形態によれば、水素濃度取得装置8は、水素の濃度が大きくなりやすい排ガス流路16の上部7を流通する排ガスGに含まれる水素濃度を取得する。より具体的には、水素濃度取得装置8は、排ガス流路16の流路断面の鉛直方向の長さDに対する70%以上100%以下の範囲内を流通する排ガスGに含まれる水素濃度を取得する。これにより、水素濃度の高い箇所を監視することで、水素による意図せぬ不具合の発生を防止することができる。
【0021】
第1実施形態によれば、燃焼設備1は警報装置26を備えているので、作業員は水素濃度が第1閾値を超えたことを知ることができる。そして、水素濃度が第1閾値を超えたことを知った作業員は、例えば、ガスバーナ4に供給する燃焼用空気Aの量を増やす操作や燃料タンク10からガスバーナに供給されるガス燃料Fの量を減らす操作を行うことで、水素濃度の低減を図る。
【0022】
<第2実施形態>
本開示の第2実施形態に係る燃焼設備1について説明する。第2実施形態では、燃焼設備1が制御装置30をさらに備える点で第1実施形態と異なる。第2実施形態において、第1実施形態の構成要件と同じものは同じ参照符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0023】
(構成)
図3は、第2実施形態に係る燃焼設備1の構成を概略的に示す図である。第2実施形態では、図3に例示するように、燃焼設備1は制御装置30をさらに備える。
【0024】
制御装置30は、ガスバーナ4の燃焼用空気Aの量を第1制御量とすると、水素濃度取得装置8によって取得された水素濃度に基づいて、第1制御量を制御する。制御装置30は、例えば、コンピュータであって、図示しないCPUやGPUといったプロセッサ、ROMやRAMといったメモリ、及びI/Oインターフェイスなどを備える。制御装置30は、メモリにロードされたプログラムの命令に従ってプロセッサが動作(演算等)することで、制御装置30が備える幾つかの機能を実現する。幾つかの実施形態では、制御装置30は、クラウド環境に設けられたクラウドサーバである。
【0025】
制御装置30による第1制御量の制御について具体的に説明する。第2実施形態では、図3に例示するように、燃焼設備1は、空気導入ライン9に設けられ、燃焼用空気Aを火炉2に送風する送風機32を備える。送風機32は、例えば、燃焼用空気Aを火炉2内に送り込む押込送風機である。送風機32は、制御装置30と電気的に接続されており、制御装置30から送信される指示に従って駆動する。例えば、制御装置30は、水素濃度取得装置8によって取得された水素濃度が第1閾値を超えると、送風機32に対して送風量(ファンの回転数)を大きくするように指示する。一方で、制御装置30は、水素濃度取得装置8によって取得された水素濃度が第1閾値未満になると、送風機32に対して送風量を小さくするように指示する。
【0026】
尚、第2実施形態では、警報装置26は、制御装置30を介して、水素濃度取得装置8と電気的に接続されている。この場合、制御装置30は、水素濃度が第1閾値を超えると、警報装置26に対して警報を発するように指示する。警報装置26は、制御装置30の指示に従い警報を発する。一方で、制御装置30は、水素濃度が第1閾値未満になると、警報装置26に対して警報を停止するように指示する。警報装置26は、制御装置30の指示に従い警報を停止する。
【0027】
(作用・効果)
第2実施形態によれば、制御装置30が設けられることで、水素濃度に基づく第1制御量の増減を自動化することができる。尚、第2実施形態では、制御装置30は、第1制御量を制御するために、送風機32の送風量を調整していたが、本開示はこの形態に限定されない。例えば、不図示であるが、燃焼設備1が、空気導入ライン9に設けられ、空気導入ライン9を流通する燃焼用空気Aの流量を調節する空気流量調節弁を備える場合、制御装置30は水素濃度に基づいて空気流量調節弁の開度を調節することで、第1制御量を制御してもよい。
【0028】
第2実施形態によれば、制御装置30は、水素濃度が第1閾値を超えると送風機32の送風量を大きくする(第1制御量を増やす)ので、水素濃度を第1閾値未満まで低減させることができる。
【0029】
<第3実施形態>
本開示の第3実施形態に係る燃焼設備1について説明する。第3実施形態では、第2実施形態で説明した第1制御量をさらに限定している。第3実施形態において、第2実施形態の構成要件と同じものは同じ参照符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0030】
(構成)
図4は、第3実施形態に係る燃焼設備1の構成を概略的に示す図である。第3実施形態では、燃焼用空気Aは一次空気A1(A)、及び一次空気A1より遅れてガス燃料Fに接触させる二次空気A2(A)を含む。つまり、第3実施形態では、第1制御量は、一次空気A1の量及び二次空気A2の量の両方を含む。
【0031】
火炉2は一次空気A1及び二次空気A2のそれぞれが導入されるように構成されている。図4に例示する形態では、一次空気A1は、空気導入ライン9及びガスバーナ4を流通して火炉2に導入される。燃焼設備1は、二次空気A2をガスバーナ4より排ガスGが流通する方向の下流側から火炉2に導入する二次空気ライン34と、二次空気ライン34に設けられ、二次空気A2を火炉2に送風する二次空気用送風機36と、を備える。
【0032】
二次空気ライン34は、一端34aが大気に開放され、他端34bが火炉2に接続されている。この他端34bは、ガスバーナ4より排ガスGが流通する方向の下流側に位置している。二次空気用送風機36は、例えば、二次空気A2を火炉2内に送り込む押込送風機である。二次空気用送風機36が駆動することで、火炉2に二次空気A2が導入される。二次空気用送風機36は、制御装置30と電気的に接続されており、制御装置30から送信される指示に従って駆動する。
【0033】
第3実施形態に係る第1制御量(一次空気A1の量及び二次空気A2の量)の制御の一例について説明する。制御装置30は、水素濃度が第1閾値を超えると、送風機32に対して送風量を大きくするように指示し、一次空気A1の量を増やす。一次空気A1の量を増やしても水素濃度が第1閾値より小さくならない場合には、制御装置30は、二次空気用送風機36に対して送風量を大きくするように指示し、二次空気A2の量を増やす。
【0034】
(作用・効果)
一次空気A1は、二次空気A2に先行してガス燃料Fと混合するため、二次空気A2と比較してガス燃料Fの燃焼に対する影響が大きい。一方で、一次空気A1は、二次空気A2と比較して、火炉2に導入可能な量の幅が小さいことが多い。第3実施形態によれば、制御装置30は、一次空気A1の量を増やすことで水素濃度を第1閾値未満まで低減させることを図ってから、二次空気A2の量を増やす。このため、一次空気A1の量の増加だけで水素濃度を第1閾値未満まで低減させた場合には、少量の一次空気A1の増加で済むので、窒素酸化物の発生を抑制することができる。また、一次空気A1の量の増加だけでは水素濃度を第1閾値未満まで低減させることが難しくても、二次空気A2の量も増加することで水素濃度を第1閾値未満まで低減させることができる。
【0035】
第3実施形態の変形例に係る燃焼設備1について説明する。図5は、第3実施形態の変形例に係る燃焼設備1の構成を概略的に示す図である。図5に例示する形態では、燃焼設備1は、排ガス流路16を流通する排ガスGの一部を循環ガスG1として火炉2に循環させる循環ライン38と、循環ライン38に設けられ、循環ライン38に流通させる循環ガスG1の流量を調節可能な循環ガス量調節装置39と、を含む。
【0036】
循環ライン38は、煙道6と二次空気ライン34とを接続している。より具体的には、循環ライン38は、煙道6と二次空気ライン34のうち二次空気用送風機36より一端34a側の部分(二次空気用送風機36より上流側の部分)とを接続している。尚、図5に例示する形態では、煙道6に接続される循環ライン38の一端38aは、水素濃度取得装置8よりも火炉2側に位置しているが、水素濃度取得装置8よりも煙突17側に位置してもよい。
【0037】
循環ガス量調節装置39は、例えば、電磁弁39A(39)である。電磁弁39Aは、制御装置30と電気的に接続されており、制御装置30から送信される指示に従って開度が調節されるようになっている。この電磁弁39Aの開度が調節されることで、煙道6から循環ライン38に流通させる循環ガスG1の流量が調節される。尚、循環ライン38に流通させる循環ガスG1の流量を調節可能であるならば、循環ガス量調節装置39は、電磁弁39Aに限定されない。
【0038】
ここで、制御装置30による二次空気A2の量の制御、及び循環ガスG1の量の制御の一例について説明する。制御装置30は、一次空気A1の量の増加だけでは水素濃度を第1閾値未満まで低減させることが難しい場合に、火炉2に送風する二次空気A2の量を増やす。幾つかの実施形態では、制御装置30は、火炉2に送風する二次空気A2の量を増やすとともに、煙道6から循環ライン38に流通させる循環ガスG1の流量を減らす、又はゼロにする。
【0039】
そして、制御装置30は、火炉2に送風する二次空気A2の量の増加によって水素濃度が第1閾値未満まで低減すると、煙道6から循環ライン38に流通させる循環ガスG1の流量を増やす。
【0040】
水素濃度を第1閾値未満まで低減させるために一次空気A1の量及び二次空気A2の量を増加すると、窒素酸化物の発生が促進される虞がある。図5に例示する形態によれば、二次空気A2は循環ガスG1を含むので、図4に例示する形態と比較して二次空気A2に含まれる酸素の量が少ない。このため、火炉2への二次空気A2の供給による火炎温度の上昇を抑制し、窒素酸化物の発生を抑制することができる。
【0041】
図5に例示する形態によれば、制御装置30は、水素濃度が第1閾値未満まで低減してから循環ガスG1の流量を増やすので、水素濃度が第1閾値未満である状態を確保してから窒素酸化物の発生を抑制することができる。
【0042】
尚、第3実施形態では、制御装置30は、二次空気A2の量を制御するために、二次空気用送風機36の送風量を調整していたが、本開示はこの形態に限定されない。例えば、不図示であるが、燃焼設備1が、二次空気ライン34に設けられ、二次空気ライン34を流通する二次空気A2の流量を調節する二次空気流量調節弁を備える場合、制御装置30は水素濃度に基づいて二次空気流量調節弁の開度を調節することで、火炉2に導入される二次空気A2の量を制御してもよい。
【0043】
<第4実施形態>
本開示の第4実施形態に係る燃焼設備1について説明する。第4実施形態では、制御装置30が、第1制御量に加え、第2制御量も制御するように構成されている点で第2実施形態と異なる。第4実施形態において、第2実施形態の構成要件と同じものは同じ参照符号を付し、その詳細な説明は省略する。幾つかの実施形態では、第3実施形態に係る制御装置30が、第1制御量に加え、第2制御量も制御するように構成される。
【0044】
図6は、第4実施形態に係る燃焼設備1の構成を概略的に示す図である。第4実施形態では、図6に例示するように、燃焼設備1は、燃料供給ライン12に設けられ、燃料供給ライン12を流通するガス燃料Fの流量を調節するガス燃料量調節弁40を備える。
【0045】
ガス燃料量調節弁40は、制御装置30と電気的に接続されており、制御装置30から送信される指示に従って開度が調整される。制御装置30は、ガスバーナ4が火炉2に供給するガス燃料Fの量を第2制御量とすると、水素濃度が第1閾値より予め大きく設定されている第2閾値を超えると、ガス燃料量調節弁40に対して開度を小さくするように指示し、ガスバーナ4が火炉2に供給するガス燃料Fの量を減らす。第2閾値は、水素の爆発限界の下限値の25%以下の値であって、例えば、1%(10000ppm)である。
【0046】
(作用・効果)
第2制御量(ガス燃料Fの量)は、第1制御量(燃焼用空気Aの量)よりも水素濃度に対する影響が大きい。第4実施形態によれば、制御装置30は、水素濃度が第2閾値を超えると、ガス燃料量調節弁40の開度を小さくして、火炉2に供給されるガス燃料Fの量を減らす。このため、水素濃度を第2閾値未満まで低減させることができる。尚、ガス燃料量調節弁40の開度は、水素濃度を監視している作業員によって調節されてもよい。
【0047】
幾つかの実施形態では、制御装置30は、水素濃度が第2閾値を超えると、ガス燃料量調節弁40に対して閉弁するように指示し、火炉2に供給するガス燃料Fの量(第2制御量)をゼロに減らす。このような構成によれば、火炉2にガス燃料Fが供給されなくなるので、水素濃度を第2閾値未満まで速やかに低減させることができる。
【0048】
<第5実施形態>
本開示の第5実施形態に係る燃焼設備1について説明する。第5実施形態では、燃焼設備1が排ガス分析装置42をさらに備えている点で第4実施形態と異なる。第5実施形態において、第4実施形態の構成要件と同じものは同じ参照符号を付し、その詳細な説明は省略する。幾つかの実施形態では、第2実施形態、又は第3実施形態に係る燃焼設備1が排ガス分析装置42をさらに備える。
【0049】
(構成)
図7は、第5実施形態に係る燃焼設備1の構成を概略的に示す図である。第5実施形態では、図7に例示するように、燃焼設備1は、水素濃度取得装置8とは別に設けられる排ガス分析装置42をさらに備える。排ガス分析装置42は、排ガス流路16を流通する排ガスGに含まれる水素以外の成分の濃度を取得する。例えば、排ガス流路16を流通する排ガスGに含まれる酸素の濃度を酸素濃度とすると、排ガス分析装置42は酸素濃度を取得する。排ガス分析装置42は制御装置30と電気的に接続されており、制御装置30は酸素濃度を取得可能に構成されている。尚、本開示は、排ガス分析装置42が取得する水素以外の成分の濃度を酸素濃度に限定するものではない。幾つかの実施形態では、排ガス分析装置42は、酸素濃度に代わり又は加え、排ガス流路16を流通する排ガスGに含まれる窒素酸化物の濃度、一酸化炭素の濃度などを取得する。
【0050】
排ガス分析装置42の構成について具体的に説明する。図8は、第5実施形態に係る排ガス分析装置42の構成を説明するための図であって、図2に排ガス分析装置42を追加した図である。排ガス流路16の流路断面の鉛直方向の長さDに対する位置の定義、及び水素濃度取得装置8についての説明は、上述しているため省略する。
【0051】
図8に例示するように、排ガス分析装置42は、排ガス流路16の流路断面の鉛直方向の長さDに対する40%以上60%未満(以下、排ガス流路16の中部44とする)の範囲内を流通する排ガスGに含まれる酸素の濃度を取得する。図8に例示する形態では、排ガス分析装置42は、排ガス流路16の中部44を流通する排ガスGの一部を抽出する分析用抽気管46と、この分析用抽気管46によって抽出された排ガスGの一部に含まれる酸素の濃度を測定する分析用測定端48と、を備える。分析用測定端48は、煙道6の外部に配置されている。分析用抽気管46は、排ガスGの一部を抽出する分析用抽出口47が煙道6内に位置するよう構成される。つまり、分析用抽気管46の一部が、煙道6内に挿入されている。幾つかの実施形態では、分析用抽気管46は、煙道6の内周面に形成される開口に接続され、この開口を介して、排ガスGの一部を抽出する。幾つかの実施形態では、分析用測定端48が排ガス流路16の中部44に配置される。
【0052】
尚、図8に例示する形態では、説明を簡略化するため、煙道6の一部(抽気管22の抽出口25が位置する煙道6の一部区間)に分析用抽気管46の分析用抽出口47も位置しているが、本開示はこの形態に限定されない。
【0053】
尚、第5実施形態では、水素濃度取得装置8は、排ガス流路16の流路断面の鉛直方向の長さDに対する70%以上100%以下の範囲内を流通する排ガスGに含まれる水素の濃度を取得していたが、本開示はこの形態に限定されない。第5実施形態の変形例では、水素濃度取得装置8は、排ガス流路16の流路断面の鉛直方向の長さDに対する60%以上70%以下の範囲内を流通する排ガスGに含まれる水素の濃度を取得する。
【0054】
第5実施形態に係る第1制御量の制御の一例について説明する。制御装置30は、水素濃度が第1閾値以下である場合、酸素濃度が1%未満となるまで送風機32の送風量を小さくし、火炉2に導入される燃焼用空気Aの量を減らす。
【0055】
(作用・効果)
排ガスGに含まれる水素の濃度は、水素による意図せぬ不具合の発生を防止するため、排ガス流路16のうち比較的濃度の高くなる部分(排ガス流路16の上部7)から取得されることが望ましい。一方で、排ガスGに含まれる酸素の濃度は、燃焼設備1の燃焼状態を把握するため、排ガス流路16のうち平均的な濃度となる部分(排ガス流路16の中部44)から取得されることが望ましい。第5実施形態によれば、水素濃度取得装置8と排ガス分析装置42とは互いに別体として設けられているので、水素の濃度を取得する位置と酸素の濃度を取得する位置とを互いにずらすことができる。そして、水素濃度取得装置8は、排ガス流路16のうち比較的濃度の高くなる部分から水素の濃度を取得することができる。排ガス分析装置42は、排ガス流路16のうち平均的な濃度となる部分から酸素の濃度を取得することができる。
【0056】
第5実施形態によれば、制御装置30は、水素濃度が第1閾値以下である間は、第1制御量(燃焼用空気Aの量)を減らすので、送風機32の動力を抑制することができる。つまり、酸素濃度を1%未満で運用する高効率運用を実現することができる。
【0057】
不図示であるが、幾つかの実施形態では、燃焼設備1は、1台のガスバーナ4から供給されるガス燃料Fの燃焼によって火炎が発生しているか否かを検出する2台の火炎検出器を備える。酸素濃度を低くする分だけ燃焼設備1の運用の効率を向上可能であるが、失火する可能性が高まる。上述の構成によれば、燃焼設備1は2台の火炎検出器を備えるので、失火の検出精度を高めることができる。
【0058】
幾つかの実施形態では、2台の火炎検出器のそれぞれは警報装置26と電気的に接続されており、警報装置26は一方の火炎検出器が失火を検出すると、警報を発する。火炎検出器は、例えば火炎の熱によって故障し、誤検出する可能性がある。このため、燃焼設備1が1台の火炎検出器を備える場合、失火していないにも関わらず、失火状態に対応する操作が行われることがある。これに対して、上述の構成によれば、一方の火炎検出器が失火を誤検出したとしても、作業員はボイラの運転を止めずに失火判定要因を確認し、要因を除去することができる。よって、不用意に失火状態に対応する操作が行われることを回避することができる。
【0059】
幾つかの実施形態では、排ガス分析装置42は、酸素濃度に加え、排ガス流路16を流通する排ガスGに含まれる窒素酸化物の濃度を取得する。そして、制御装置30は、この窒素酸化物の濃度を考慮して、第1制御量を制御する。このような構成によれば、窒素酸化物の濃度の上昇を抑制することができる。
【0060】
図9は、排ガスGが排ガス流路16を流通する流通方向Xにおいて、本開示に係る水素濃度取得装置8が水素濃度を取得する位置を説明するための図である。図9に例示する形態では、燃焼設備1は、流通方向Xに沿って順に排ガス流路16に配置される過熱器50、再熱器52、節炭器54、及び空気予熱器56を備える。過熱器50、再熱器52、節炭器54、及び空気予熱器56のそれぞれは、蒸気や給水と排ガスGとの間で熱交換を行うことで、排ガスGの熱を回収する熱交換器である。
【0061】
過熱器50は、過熱器50を流通する蒸気が排ガスGによって過熱される。そして、過熱器50で生成された過熱蒸気は、不図示の蒸気タービンに供給され、蒸気タービンを回転駆動する。再熱器52及び節炭器54のそれぞれは、蒸気タービンから排出された排出蒸気が供給される。そして、再熱器52及び節炭器54のそれぞれは、排出蒸気と排ガスGとの間で熱交換を行う。空気予熱器56は、空気導入ライン9と接続されており、排ガスGによって、空気導入ライン9を流通する燃焼用空気Aを予熱する。
【0062】
図9に例示するように、排ガス流路16のうち過熱器50と再熱器52との間を第1区間58とし、排ガス流路16のうち再熱器52と節炭器54との間を第2区間60とし、排ガス流路16のうち節炭器54と空気予熱器56との間を第3区間62とする。
【0063】
幾つかの実施形態では、水素濃度取得装置8は、第1区間58の上部を流通する排ガスGに含まれる水素の濃度を取得する。排ガス分析装置42は、第1区間58を流通する排ガスGに含まれる酸素の濃度を取得する。
【0064】
このような構成によれば、水素濃度取得装置8及び排ガス分析装置42の両方を共通の第1区間58に設けることができるので、燃焼設備1のメンテナンス性を向上させることができる。第1区間58の上部は、第2区間60の上部及び第3区間62の上部と比較して、排ガス流路16の上流側であるため、水素リークを速く検知可能であり、より安全運用が可能となる。このため、第1区間58の上部を流通する水素濃度を監視することで、水素による意図せぬ不具合が発生する可能性をより速く低減することができる。
【0065】
幾つかの実施形態では、水素濃度取得装置8は、第3区間62の上部を流通する排ガスGに含まれる水素の濃度を取得する。排ガス分析装置42は、第3区間62を流通する排ガスGに含まれる酸素の濃度を取得する。
【0066】
このような構成によれば、水素濃度取得装置8及び排ガス分析装置42の両方を共通の第3区間62に設けることができるので、燃焼設備1のメンテナンス性を向上させることができる。第3区間62の上部は、第1区間58の上部及び第2区間60の上部と比較して、温度の低い排ガスGが流通する。このため、水素濃度取得装置8及び排ガス分析装置42の損傷を抑制することができると共に、環境温度が第1区間58より低いことで、作業員による運転中のメンテナンスが容易である。
【0067】
幾つかの実施形態では、水素濃度取得装置8は、第2区間60の上部を流通する排ガスGに含まれる水素の濃度を取得する。排ガス分析装置42は、第2区間60を流通する排ガスGに含まれる酸素の濃度を取得する。
【0068】
このような構成によれば、水素濃度取得装置8及び排ガス分析装置42の両方を共通の第2区間60に設けることができるので、燃焼設備1のメンテナンス性を向上させることができる。さらに、水素濃度取得装置8及び排ガス分析装置42の損傷の抑制と水素による意図せぬ不具合が発生する可能性の低減との両方を図ることができる。
【0069】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0070】
[1]本開示に係る燃焼設備(1)は、
火炉(2)と、
水素を含むガス燃料(F)を前記火炉に供給するガスバーナ(4)と、
前記火炉に接続され、前記ガス燃料の燃焼によって発生する排ガス(G)が流通する排ガス流路(16)を含む煙道(6)と、
前記排ガス流路の上部(7)を流通する前記排ガスに含まれる水素の濃度を水素濃度とすると、前記水素濃度を取得する水素濃度取得装置(8)と、を備える。
【0071】
水素は、排ガスに含まれる水素以外の他の成分と比較して軽い。このため、排ガス流路の上部を流通する排ガスに含まれる水素の濃度(水素濃度)は、排ガス流路の下部や中央部を流通する排ガスに含まれる水素の濃度と比較して大きくなりやすい。そして、水素の濃度が大きくなると、爆発のような意図しない不具合が発生する可能性が高まる。上記[1]に記載の構成によれば、水素濃度取得装置は、水素の濃度が大きくなりやすい排ガス流路の上部を流通する排ガスに含まれる水素濃度を取得する。このため、水素濃度を監視することで、水素による意図せぬ不具合の発生を防止することができる。
【0072】
[2]幾つかの実施形態では、上記[1]に記載の構成において、
前記排ガス流路の流路断面の下端(18)を前記流路断面の鉛直方向の長さ(D)に対する0%の位置とし、前記流路断面の上端(20)に向かうにつれて増加し、前記流路断面の前記上端を前記流路断面の鉛直方向の長さに対する100%の位置とすると、
前記水素濃度取得装置は、前記流路断面の鉛直方向の長さに対する70%以上100%以下の範囲内を流通する前記排ガスに含まれる水素の濃度を取得する。
【0073】
上記[2]に記載の構成によれば、水素濃度取得装置は、流路断面の鉛直方向の長さに対する70%以上100%以下の範囲内を流通する排ガスの水素濃度を取得する。このため、水素濃度を監視することで、水素による意図せぬ不具合の発生を防止することができる。
【0074】
[3]幾つかの実施形態では、上記[1]又は[2]に記載の構成において、
前記水素濃度が予め設定されている第1閾値を超えると、警報を発生する警報装置(26)をさらに備える。
【0075】
上記[3]に記載の構成によれば、水素濃度が第1閾値を超えたことを知ることができる。
【0076】
[4]幾つかの実施形態では、上記[1]から[3]の何れか1つに記載の構成において、
前記ガスバーナの燃焼用空気(A)の量を第1制御量とすると、前記水素濃度取得装置によって取得された前記水素濃度に基づいて、前記第1制御量を制御する制御装置(30)をさらに備える。
【0077】
上記[4]に記載の構成によれば、水素濃度に基づく第1制御量の増減を自動化することができる。
【0078】
[5]幾つかの実施形態では、上記[4]に記載の構成において、
前記制御装置は、前記水素濃度が予め設定されている第1閾値を超えると、前記第1制御量を増やす。
【0079】
上記[5]に記載の構成によれば、水素濃度が第1閾値を超えると第1制御量を増やすので、水素濃度を第1閾値未満まで低減させることができる。
【0080】
[6]幾つかの実施形態では、上記[5]に記載の構成において、
前記第1制御量は、一次空気(A1)の量及び二次空気(A2)の量の両方を含み、
前記制御装置は、前記水素濃度が前記第1閾値を超えると、前記一次空気の量を増やし、前記水素濃度が前記第1閾値より小さくならない場合には、前記二次空気の量を増やす。
【0081】
一次空気は、二次空気に先行してガス燃料と混合するため、二次空気と比較してガス燃料の燃焼に対する影響が大きい。一方で、一次空気は、二次空気と比較して、火炉に導入可能な量の幅が小さいことが多い。上記[6]に記載の構成によれば、制御装置は、一次空気の量を増やすことで水素濃度を第1閾値未満まで低減させることを図ってから、二次空気の量を増やす。このため、一次空気の量の増加だけで水素濃度を第1閾値未満まで低減させた場合には、少量の一次空気の増加だけで済むので、窒素酸化物の発生を抑制することができる。また、一次空気の量の増加だけでは水素濃度を第1閾値未満まで低減させることが難しくても、二次空気の量も増加することで水素濃度を第1閾値未満まで低減させることができる。
【0082】
[7]幾つかの実施形態では、上記[6]に記載の構成において、
前記二次空気は、前記排ガス流路を流通する前記排ガスの一部を前記火炉に循環させる循環ガス(G1)を含む。
【0083】
水素濃度を第1閾値未満まで低減させるために一次空気の量及び二次空気の量を増加すると、窒素酸化物の発生が促進される虞がある。上記[7]に記載の構成によれば、二次空気は循環ガスを含むので、二次空気に含まれる酸素の量が少ない。このため、火炉への二次空気の供給による火炎温度の上昇を抑制することができる。よって、窒素酸化物の発生を抑制することができる。
【0084】
[8]幾つかの実施形態では、上記[5]から[7]の何れか1つに記載の構成において、
前記ガスバーナが前記火炉に供給する前記ガス燃料の量を第2制御量とすると、
前記制御装置は、前記水素濃度が前記第1閾値より予め大きく設定されている第2閾値を超えると、前記第2制御量を減らす。
【0085】
第2制御量(ガス燃料の量)は、第1制御量(燃焼用空気の量)よりも水素濃度に対する影響が大きい。上記[8]に記載の構成によれば、水素濃度が第2閾値を超えると第2制御量を減らすので、水素濃度を第2閾値未満まで低減させることができる。
【0086】
[9]幾つかの実施形態では、上記[8]に記載の構成において、
前記制御装置は、前記水素濃度が前記第2閾値を超えると、前記第2制御量をゼロに減らす。
【0087】
上記[9]に記載の構成によれば、水素濃度が第2閾値を超えると、火炉にガス燃料が供給されなくなるので、水素濃度を第2閾値未満まで速やかに低減させることができる。
【0088】
[10]幾つかの実施形態では、上記[5]から[9]の何れか1つに記載の構成において、
前記排ガス流路を流通する前記排ガスに含まれる酸素の濃度を酸素濃度とすると、
前記制御装置は、前記水素濃度が前記第1閾値以下である場合、前記酸素濃度が1%未満となるまで前記第1制御量を減らす。
【0089】
上記[10]に記載の構成によれば、第1制御量(燃焼用空気の量)を減らすので、燃焼用空気を火炉に供給するための空気供給装置(例えば、送風機)の動力を抑制することができる。つまり、酸素濃度を1%未満で運用する高効率運用を実現することができる。
【0090】
[11]幾つかの実施形態では、上記[1]から[10]の何れか1つに記載の構成において、
前記水素濃度取得装置とは別に設けられ、前記排ガス流路を流通する前記排ガスに含まれる水素以外の成分の濃度を取得する排ガス分析装置(42)をさらに備える。
【0091】
上記[11]に記載の構成によれば、水素濃度取得装置と排ガス分析装置とは互いに別体として設けられているので、水素の濃度を取得する位置と水素以外の成分の濃度を取得する位置とを互いにずらすことができる。
【0092】
[12]幾つかの実施形態では、上記[11]に記載の構成において、
前記排ガス流路の流路断面の下端(18)を前記流路断面の鉛直方向の長さ(D)に対する0%の位置とし、前記流路断面の上端(20)に向かうにつれて増加し、前記流路断面の前記上端を前記流路断面の鉛直方向の長さに対する100%の位置とすると、
前記水素濃度取得装置は、前記流路断面の鉛直方向の長さに対する60%以上100%以下の範囲内を流通する前記排ガスに含まれる水素の濃度を取得し、
前記排ガス分析装置は、前記流路断面の鉛直方向の長さに対する40%以上60%未満の範囲内を流通する前記排ガスに含まれる水素以外の成分の濃度を取得する。
【0093】
排ガスに含まれる水素の濃度は、水素による意図せぬ不具合の発生を防止するため、排ガス流路のうち比較的濃度の高くなる部分(排ガス流路の上部)から取得されることが望ましい。一方で、排ガスに含まれる水素以外の成分(例えば、酸素)の濃度は、燃焼設備の燃焼状態を把握するため、排ガス流路のうち平均的な濃度となる部分から取得されることが望ましい。上記[12]に記載の構成によれば、水素濃度取得装置は、排ガス流路のうち比較的濃度の高くなる部分から水素の濃度を取得することができる。排ガス分析装置は、排ガス流路のうち平均的な濃度となる部分から水素以外の成分の濃度を取得することができる。
【0094】
[13]幾つかの実施形態では、上記[11]又は[12]に記載の構成において、
前記排ガスが前記排ガス流路を流通する流通方向(X)に沿って前記排ガス流路に配置される過熱器(50)、及び再熱器(52)をさらに備え、
前記排ガス流路のうち前記過熱器と前記再熱器との間を第1区間(58)とすると、前記水素濃度取得装置は、前記第1区間の上部を流通する前記排ガスに含まれる水素の濃度を取得し、前記排ガス分析装置は、前記第1区間を流通する前記排ガスに含まれる酸素の濃度を取得する。
【0095】
上記[13]に記載の構成によれば、水素濃度取得装置及び排ガス分析装置の両方を共通の第1区間に設けることができるので、燃焼設備のメンテナンス性を向上させることができる。第1区間の上部は、第2区間の上部及び第3区間の上部と比較して、排ガス流路の上流側であるため、水素リークを速く検知可能であり、より安全運用が可能となる。このため、第1区間の上部を流通する水素濃度を監視することで、水素による意図せぬ不具合が発生する可能性をより速く低減することができる。
【0096】
[14]幾つかの実施形態では、上記[11]から[13]の何れか1つに記載の構成において、
前記排ガスが前記排ガス流路を流通する流通方向に沿って前記排ガス流路に配置される再熱器及び節炭器(54)をさらに備え、
前記排ガス流路のうち前記再熱器と前記節炭器との間を第2区間(60)とすると、前記水素濃度取得装置は、前記第2区間の上部を流通する前記排ガスに含まれる水素の濃度を取得し、前記排ガス分析装置は、前記第2区間を流通する前記排ガスに含まれる酸素の濃度を取得する。
【0097】
上記[14]に記載の構成によれば、水素濃度取得装置及び排ガス分析装置の両方を共通の第2区間に設けることができるので、燃焼設備のメンテナンス性を向上させることができる。さらに、水素濃度取得装置及び排ガス分析装置の損傷の抑制と水素による意図せぬ不具合が発生する可能性の低減との両方を図ることができる。
【0098】
[15]幾つかの実施形態では、上記[11]から[14]の何れか1つに記載の構成において、
前記排ガスが前記排ガス流路を流通する流通方向に沿って前記排ガス流路に配置される節炭器及び空気予熱器(56)をさらに備え、
前記排ガス流路のうち前記節炭器と前記空気予熱器との間を第3区間(62)とすると、前記水素濃度取得装置は、前記第3区間の上部を流通する前記排ガスに含まれる水素の濃度を取得し、前記排ガス分析装置は、前記第3区間を流通する前記排ガスに含まれる酸素の濃度を取得する。
【0099】
上記[15]に記載の構成によれば、水素濃度取得装置及び排ガス分析装置の両方を共通の第3区間に設けることができるので、燃焼設備のメンテナンス性を向上させることができる。第3区間の上部は、第1区間の上部及び第2区間の上部と比較して、温度の低い排ガスGが流通する。このため、水素濃度取得装置及び排ガス分析装置の損傷を抑制することができると共に、作業員による運転中のメンテナンスが容易である。
【符号の説明】
【0100】
1 燃焼設備
2 火炉
4 ガスバーナ
6 煙道
7 排ガス流路の上部
8 水素濃度取得装置
16 排ガス流路
18 流路断面の下端
20 流路断面の上端
26 警報装置
30 制御装置
42 排ガス分析装置
50 過熱器
52 再熱器
54 節炭器
56 空気予熱器
58 第1区間
60 第2区間
62 第3区間

A 燃焼用空気
A1 一次空気
A2 二次空気
D 流路断面の鉛直方向の長さ
F ガス燃料
G 排ガス
G1 循環ガス
X 流通方向

【要約】
【課題】水素による意図せぬ不具合の発生を防止することができる。
【解決手段】燃焼設備は、火炉と、水素を含むガス燃料を火炉に供給するガスバーナと、火炉に接続され、ガス燃料の燃焼によって発生する排ガスが流通する排ガス流路を含む煙道と、排ガス流路の上部を流通する排ガスに含まれる水素の濃度を水素濃度とすると、水素濃度を取得する水素濃度取得装置と、を備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9