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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-08
(45)【発行日】2022-03-16
(54)【発明の名称】二重ループ縫合の方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/06 20060101AFI20220309BHJP
   A61F 2/08 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
A61B17/06 510
A61F2/08
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021518686
(86)(22)【出願日】2019-03-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-28
(86)【国際出願番号】 US2019021772
(87)【国際公開番号】W WO2020072092
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-05-25
(31)【優先権主張番号】16/151,591
(32)【優先日】2018-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521186993
【氏名又は名称】ウィンター イノベイションズ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウィンター、リア、リン
【審査官】北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第08192462(US,B2)
【文献】米国特許出願公開第2015/0142040(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0051833(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0264138(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0058959(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0338696(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/06
D05B 85/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸を縫製材料に通して、前記縫製材料を通って延びる前記糸から縫い目を形成するための縫い針であって、
第1の針部分と、
第2の針部分であって、該第2の針部分の端部を前記第1の針部分の受入部に挿入することにより前記第1の針部分に取外し可能に接続されるように構成された、前記第2の針部分と、
前記第1の針部分に設けられた針先であって、前記第1の針部分と前記第2の針部分とが接続されて前記縫製材料を通って挿入されるときに、前記針先が、前記縫製材料に直接に接触し、前記第2の針部分の前記端部が前記第1の針部分内に位置し、前記縫製材料に直接に接触しないように構成された、前記針先と、
前記針先の反対側の前記第1の針部分に配置され、且つ、糸の第1の部分に固定して接続されて前記糸の第1の部分を運んで前記縫製材料を通り抜けるように構成された、第1の糸接続部と、
前記第1の針部分と前記第2の針部分とが接続されるときに、前記第1の針部分に挿入される前記端部の反対側の前記第2の針部分に配置され、且つ、糸の第2の部分に固定して接続されて前記糸の第2の部分を運んで前記縫製材料を通り抜けるように構成された、第2の糸接続部と、
を備え、
前記第2の針部分が前記第1の針部分に取外し可能に接続されたときに、前記第1の糸接続部および前記第2の糸接続部が、前記第1の針部分及び前記第2の針部分により、前記縫製材料を通り抜けるように構成され、それにより前記糸の第1の部分と前記糸の第2の部分との間に位置する糸の第3の部分が、前記第1の針部分および前記第2の針部分の後ろを通って、前記縫製材料を通って延在するようになっている、縫い針。
【請求項2】
前記針先が、前記第1の針部分の端部と一体に形成されている、請求項1に記載の針。
【請求項3】
前記第1の針部分の前記受入部が、前記第1の針部分に形成された開口部を有し、
前記第2の針部分の前記端部が、前記第1の針部分に取外し可能に接続するために前記開口部を介して前記第1の針部分の前記受入部に滑り込むためのサイズ及び構成を有する、請求項1に記載の針。
【請求項4】
前記針先の近位且つ前記開口部の反対側に配置された閉じられた端部を有する細長い中空の受入部を備える、請求項3に記載の針。
【請求項5】
前記第2の針部分の前記端部が、前記受入部内への前記第2の針部分の挿入を支援するために、前記受入部の前記開口部に最初に係合するように構成された細められた先端を備える、請求項3に記載の針。
【請求項6】
前記第2の針部分の前記端部が、第2の針先を備える、請求項3に記載の針。
【請求項7】
前記針が、その長さに沿って直線状である、請求項1に記載の針。
【請求項8】
前記針の少なくとも一部分が、その長さに沿って曲線状である、請求項1に記載の針。
【請求項9】
前記第1及び第2の糸接続部の少なくとも一方が、カシメ加工される(即ち、針孔がない)、請求項1に記載の針。
【請求項10】
前記第1及び第2の糸接続部のうちの少なくとも一方が、針孔を開けられている、請求項1に記載の針。
【請求項11】
前記第1の糸接続部を介して前記第1の針部分に接続される第1の端部と、前記第2の糸接続部を介して前記第2の針部分に接続される第2の端部とを有する糸をさらに備える、請求項1に記載の針。
【請求項12】
前記糸が、取外し不可能なカシメ加工された接続部により前記第1の糸接続部及び第2の糸接続部に接続される、請求項11に記載の針。
【請求項13】
人体に使用するのに適した外科用等級の材料から形成される、請求項1に記載の針。
【請求項14】
テキスタイルの縫製のために二重ループ縫い目を提供する方法であって、
A.第1の針部分、前記第1の針部分に設けられた針先、第2の針部分であって、該第2の針部分の端部を前記第1の針部分の受入部に挿入することにより前記第1の針部分に取外し可能に接続されるように構成された第2の針部分、前記針先の反対側の前記第1の針部分に配置された第1の糸接続部、前記第1の針部分と前記第2の針部分とが接続されるときに前記第1の針部分に挿入される前記端部の反対側の前記第2の針部分に配置された第2の糸接続部を有する針を用意するステップと、
B.前記第1の糸接続部を介して前記第1の針部分に固定して接続される第1の端部、及び前記第2の糸接続部を介して前記第2の針部分に固定して接続される第2の端部を有する糸を用意するステップと、
C.近位部分、遠位部分、第1の面、前記第1の面とは反対側の第2の面、第1の側縁部、及び前記第1の側縁部とは反対側の第2の側縁部を有する縫製材料を用意するステップと、
D.離間された接続場所を有する定置支持体を用意するステップと、
E.前記縫製材料の前記近位部分と前記遠位部分との間の前記縫製材料の一部分が前記定置支持体の前記離間された接続場所間に延在するように、前記縫製材料の前記近位部分及び前記遠位部分を前記定置支持体の前記離間された接続場所に接続するステップと、
F.前記針が前記第1の面に入って前記第2の面から出るように、および、前記糸の前記第1及び第2の端部も前記縫製材料に通されるように、前記針を第1の方向において前記縫製材料に通すことにより、第1の縫い目を形成するステップであって、前記第1の針部分と前記第2の針部分とが接続されて前記縫製材料を通って挿入されるときに、前記針先が、前記縫製材料に直接に接触し、前記第2の針部分の前記端部が前記第1の針部分内に位置し、前記縫製材料に直接に接触しない、前記第1の縫い目を形成するステップと、
G.前記第1の針部分を前記第2の針部分から外し、且つ、前記糸の前記第1及び第2の端部を分離するステップと、
H.前記第1の針部分及び前記糸の前記第1の端部を第2の方向において前記縫製材料の前記第1の側縁部の外側を通すステップと、
I.前記第2の針部分及び前記糸の前記第2の端部を第2の方向において前記縫製材料の前記第2の側縁部の外側を通すステップと、
J.前記第1の針部分を前記第2の針部分に接続するステップと、
K.前記針が前記第1の面に入って前記第2の面から出るように、および、前記糸の第1及び第2の端部も前記縫製材料に通されるように、前記針を第1の方向において前記縫製材料に通すことにより、後続の縫い目を形成するステップと、
L.前記縫製材料の前記近位部分及び前記遠位部分を前記定置支持体の前記離間された接続場所から取り外すステップと、
を含む、方法。
【請求項15】
M.ステップ(F)の前に、前記離間された接続場所間に延在する前記縫製材料の前記部分を、前記第1の針部分が前記第2の針部分に接続されたときに前記糸により前記糸の前記第1及び第2の端部間に形成されるループ内に配置するステップと、
N.ステップ(F)の後で、前記ループの一部分が前記縫製材料の前記第2の面に接触するように、前記糸を引っ張って前記縫製材料を通過させるステップと、
をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記糸の前記第2の端部が、前記糸の第1の端部が前記縫製材料を通り抜ける前に前記縫製材料を通り抜ける、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記糸の前記第2の端部が、前記糸の前記第1の端部が前記縫製材料を通り抜けるのと同時に前記縫製材料を通り抜ける、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記後続の縫い目が、前記縫製材料の長手に沿って前記第1の縫い目から長手方向に離間される、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、外科的縫合のための方法及び装置に関する。より具体的には、本発明は、かがり縫いされた軟組織移植片を使用して靱帯再建手術を行うための改善された方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
靱帯の置換又は修復は、運動選手や活発な人たちにはとてもよくあることである。一般に負傷して置換又は修復を必要とする靱帯の2つの実例は、前十字靱帯(ACL:anterior cruciate ligament)及び後十字靱帯(PCL:posterior cruciate ligament)である。ACL及びPCLは、膝関節に位置するものであり、また、脛骨を大腿骨に接続するものである、繊維組織の帯である。これらの靱帯は、脚の屈曲及び伸張を制御するのに役立ち、運動に関連する最も一般的な損傷として、特にACLに対する捻挫及び裂傷がある。ACLに対する損傷は、運動選手が走行中又は跳躍中に急に旋回又は移動したときによく起こる。損傷の性質及び重症度に応じて、断裂又は緊張したACL又はPCLの治療は、手術を必要とする場合もあれば必要としない場合もある。非外科的な方法には、副木当て(bracing)及び理学療法が含まれる。他方では、傷害がより深刻な場合、断裂したACL又はPCLは、縫合糸を使用して元通りに縫い合わせられ得る。靱帯を縫い合わせることができないさらに深刻な場合、靱帯は、典型的には全体的に置換される。
【0003】
図1及び2を最初に参照すると、ACL置換処置を受け入れた後の膝100が示されている。典型的なACL置換手術では、断裂した靱帯は、患者自身の体から又は提供者から採取され得る軟組織移植片102に置換される。移植片は一般に、膝、膝腱、又は四頭筋から採取される。次いで、外科医は、針と丈夫な非分解性縫合糸とを使用して、移植片の端部を補強する。次いで、移植片は、断裂したACLが断裂する前に果たしていたのと同じ解剖学的機能を果たすように、膝に植え込まれて添着される。より具体的には、移植片は、新たな靱帯が成長することを可能にする支持構造を提供する。処置中、第1のステップは、断裂した靱帯を取り除くことである。次に、移植片は、膝への挿入のために準備される。とりわけ、この準備は、置換用の腱を折り重ねて層状の組織のストランド(図2)を形成し、次いでそのストランドを縫い合わせて適切な強度及び正確な長さを有する1つ又は複数の縫合された区間104を含む移植片102を作り出すことを含み得る。移植片102が準備されると、穴又は「トンネル」106が、脛骨108及び大腿骨110に開けられる。次いで、移植片102の端部112が、トンネル106に挿入されて、所定の位置に固定される。上記の移植片準備のためのプロセスは、当技術分野において知られており、例えば「Whip Stitched Graft Construct and Method of Making the Same」と題された米国特許第8,298,284号(以下、「Arthrex」)で論じられている。
【0004】
Arthrexで説明されているような従来の移植片準備プロセスが、図3A~3Eに示されている。示された方法によれば、移植片116の(遠位端部114などの)一方の端部が、定置ワーク・ステーション118によってしっかりと保持される。針122を有する縫合材料120の連続的な又は閉じたループが、移植片がそのループを通過するように、移植片116の周りに配置される。移植片116の近位端部124が、手によって又は使用者の手の中のツールによって保持される。移植片116の近位端部124は、ワーク・ステーション118に接続されず、むしろ、近位端部は、典型的には、止血鉗子、鉗子、などによって把持される。次に、針122は、移植片116の第1の側(例えば、移植片の底部)から挿入され、針及び縫合糸120は、移植片の第2の側(例えば、移植片の頂部)へと引っ張り通される。そこから、移植片116の第1の側から針122を挿入し次いで針及び縫合糸120を移植片の第2の側へと引っ張り通すプロセスは、所望の数の縫い目が作り出されるまで複数回繰り返される。理想的には、針122は、ひと縫いごとに移植片116の同じ側に入る。次の縫い付けに備えて移植片の底部へ針122を戻すために、移植片116の近位端部124は、縫合材料120のループに通される。別の言い方をすれば、縫合材料116のループは、移植片116の近位端部124の周りを通過する。このステップは、典型的には、近位端部がループを通過することができるように、使用者が移植片116の近位端部124を持つ手を離すことを必要とする。移植片116の近位端部124の周りに縫合材料116のループを通すことは、ループを広げて第1のループ部分126及び第2のループ部分128を形成することを必要とする。針122が移植片116の下方に戻されるとき、第1のループ部分126は、移植片116の最も左側の縁部を通り越し、縫合材料の第2のループ部分128は、移植片の最も右側の縁部を通り越す。これらのループ部分126、128は、移植片116の下方で再び一緒になる。そこから、針122及び縫合材料120は、移植片116の少なくとも一部分に沿って延在する縫い目のパターンを作り出すために移植片116を通して繰返し挿入され、この縫い目のパターンは、「かがり縫い」パターンと呼ばれることが多い。
【0005】
上述の従来の移植片準備プロセスに関する1つの問題は、かがり縫いパターンを作り出すときに移植片116の遠位端部114のみが固定されて動かないことである。これは、縫合プロセス中に移植片116の固定されていない近位端部124が移動することを可能にする。縫合プロセス中の移植片116の移動は、不均一な縫い目の位置決め及び間隔をもたらす可能性があり、そのことが最終的には移植片の不具合につながり、結果として修正(即ち、追跡)外科的処置が必要とされる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第8,298,284号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、移植片の両端部が動かずに固定されたままでいる間に靱帯移植片に二重ループ縫い目を作り出すための方法及び装置が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明を説明する文脈における用語「a」、「an」、「the」及び類似の用語の使用は、そうでないことが本明細書において指示されていない限り、又は文脈によって明らかに矛盾していない限り、単数形及び複数形の両方を含むように解釈されるべきである。用語「備えている(comprising)」、「有している(having)」、「含んでいる(including)」及び「含有している(containing)」は、別段の記載がない限り、制限のない用語(即ち、「~を含むがこれに限定されない」を意味する)として解釈されるべきである。用語「実質的に(substantially)」、「一般に(generally)」、及び程度に関する他の用語は、そのように修飾される特徴からの許容可能な差異を示すことが意図された相対修飾語である。本発明の物理的又は機能的な特徴を説明する際のそのような用語の使用は、用語が修飾する絶対値にそのような特徴を限定するように意図されたものではなく、むしろ、そのような物理的又は機能的な特徴の値の近似値を提供するように意図されたものである。
【0009】
「取り付けられた(attached)」、「接続された(connected)」及び「相互接続された(interconnected)」などの、取付けや結合などに関する用語は、本明細書において指定されていない限り、又は文脈によって明確に指示されていない限り、構造体同士が直接に又は介在する構造を介して間接的に固着される又は取り付けられる関係性、並びに可動の取付け又は関係性、及び固定した取付け又は関係性のどちらをも意味する。用語「動作可能に接続された(operatively connected)」は、関係する構造体がその関係性によって意図されたように作動することを可能にするような取付け、結合、又は接続である。
【0010】
本明細書におけるありとあらゆる実例又は例示的な用語(例えば、「などの(such as)」及び「好ましくは(preferably)」)の使用は、本発明及びその好ましい実施例をより明らかにするように意図されたものにすぎず、本発明の範囲を制限するように意図されたものではない。本明細書のいかなる内容も、特殊性とともにそのように述べられていない限り、任意の要素を本発明の実践に不可欠なものとして示すと解釈されてはならない。
【0011】
本明細書において開示される装置及び方法は、衣類などの製造におけるファブリック又はテキスタイルの接合などの慣例的な縫製プロセス、外科的処置における慣例的な縫製プロセス、及び他の類似のプロセスのために使用され得る。用語「糸(thread)」は、慣例的な縫製プロセスにおいて使用されるテキスタイル型のストランド、外科手術を行うのに用いる医療用縫合糸、などを意味するために広範に使用される。同様に、用語「縫製(sewing)」は、針と糸とを使用する慣例的な縫製型のプロセス又は外科的処置を意味するために広範に使用される。最後に、用語「縫製材料(sewing material)」は、慣例的な縫製型のプロセスで使用されるテキスタイル型の材料若しくは他の型の材料を意味するために、又は外科的処置で使用される靱帯などの材料を意味するために、広範に使用される。
【0012】
上記その他の要求は、糸を縫製材料に通すための裁い針によって満たされる。針は、前述の縫製材料を最初に通過するように構成された針先と、針先とは反対側の針の端部に配置された後端部(trailing end)とを含む。針先は、第1の針部分の端部に一体に形成されることが好ましい。第1の針部分が、針先に追随して前述の縫製材料を通り抜け、第2の針部分が、第1の針部分に取外し可能に接続され、且つ、針先に追随して前述の縫製材料を通り抜ける。針はまた、前述の糸の第1の部分を運んで縫製材料を通り抜けるように構成された、第1の針部分に配置された第1の糸接続部と、前述の糸の第2の部分を運んで縫製材料を通り抜けるように構成された、第2の針部分に配置された第2の糸接続部とを含む。
【0013】
いくつかの実施例では、針は、第1の針部分上に形成された開口部を有する受入部を含む。第2の針部分を第1の針部分に取外し可能に接続するために、開口部を介して第1の針部分の受入部内に滑り込むためのサイズ及び構成とされた端部が、第2の針部分に形成される。いくつかの実施例では、受入部は、針先の近位且つ開口部の反対側に配置された閉じられた端部を有する細長い中空の受入部である。第2の針部分の端部は、受入部内への第2の針部分の挿入を支援するために、受入部の開口部に最初に係合するように構成された細められた先端を備え得る。特定の例では、第2の針部分の端部は、第2の針先である。針は、直線状の針、又は曲線状の針であってよい。さらに、いくつかの実施例では、第1及び第2の糸接続部のうちの少なくとも一方は、カシメ加工される(即ち、針孔がない)。さらに、又はその代わりに、第1及び第2の糸接続部のうちの少なくとも一方は、針孔を開けられる。使用に向けて針を準備するために、糸が針に接続され得る。より具体的には、糸の第1の端部が、第1の糸接続部を介して第1の針部分に接続され、糸の第2の端部が、第2の糸接続部を介して第2の針部分に接続され得る。糸は、取外し不可能なカシメ加工された接続部により針に接続されてもよい。最後に、針及び糸は、ヒトの(又は他の)身体での使用に適した外科用等級の材料を使用する外科的用途において、又は、テキスタイルの製造若しくは操作などの非外科的な用途において、使用され得る
【0014】
本明細書では、目下開示されている2部品針を使用してACL再建手術で使用される移植片などの縫製材料に二重ループ縫い目を提供する方法も開示される。移植片の一部分は、縫製材料の一部分が定置支持体の接続場所間に延在するように、定置支持体の接続場所に固定して取り付けられる。針が第1の面に入って第2の面から出るように、また、糸の第1及び第2の端部も縫製材料に通されるように、針を第1の方向において縫製材料に通すことにより、接続場所同士の間の部分に第1の縫い目が形成される。針が縫製材料を通過した後、第1の針部分は、第2の針部分から外され、糸の第1及び第2の端部は、分離される。第1の針部分、及び糸の第1の端部は、縫製材料の第1の側縁部の外側を通されることにより、縫製材料の第1の面へ戻される。同様に、第2の針部分、及び糸の第2の端部は、縫製材料の第2の側縁部の外側を通されることにより、縫製材料の第1の面へ戻される。次に、第1の針部分は、第2の縫い目の形成に備えて、第2の針部分に再接続される。上記のプロセスは、必要とされる数の縫い目を移植片の長さに沿って形成するために繰り返される。必要とされる全ての縫い目が形成された後、縫製材料は定置支持体から取り外され得る。
【0015】
特定の実施例では、第1の縫い目を形成する前に、縫製材料の周りに糸のループが形成され得る。その場合、離間された接続場所間に延在する縫製材料の部分は、第1の針部分が第2の針部分に接続されたときに糸により糸の第1及び第2の端部間に形成されるループ内に配置される。特定の実施例では、糸の第2の端部は、糸の第1の端部が縫製材料を通過する前に、縫製材料を通過する。他の実施例では、糸の第2の端部は、糸の第1の端部が縫製材料を通過するのと実質的に同時に、縫製材料を通過する。特定の実施例によれば、後続の縫い目は、縫製材料の長さに沿って第1の縫い目から長手方向に離間される。第2の針部分が第2の針先を備えるいくつかの実施例では、2つの針先は、特注の縫い目パターンを作り出すために、異なる位置において互いに別々に縫製材料を通過され得る。
【0016】
本発明の目下好ましい実施例は、全体にわたって同様の参照番号が同様の部品を表わす添付の図面に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】ACL再建処置後の膝を示す図である。
図2】ACL再建処置のための準備において折り畳まれ且つ縫合されている腱を示す側面図である。
図3A】縫われる材料が一方の端部においてのみ固定される、二重ループ縫合を提供するための従来の方法を示す図である。
図3B】縫われる材料が一方の端部においてのみ固定される、二重ループ縫合を提供するための従来の方法を示す図である。
図3C】縫われる材料が一方の端部においてのみ固定される、二重ループ縫合を提供するための従来の方法を示す図である。
図3D】縫われる材料が一方の端部においてのみ固定される、二重ループ縫合を提供するための従来の方法を示す図である。
図3E】縫われる材料が一方の端部においてのみ固定される、二重ループ縫合を提供するための従来の方法を示す図である。
図4】本発明の一実施例による、第1の針部分と第1の針部分の細長い中空の受入部に挿入された第2の針部分とによって形成された針を示す断面図である。
図5図4の第1の針部分を示す断面図である。
図6図4の第2の針部分を示す断面図である。
図7】分離された構成における2部品針の第1の針部分と第2の針部分とを接続する糸を示す斜視図である。
図8】分離された構成における2部品針の第1の針部分と第2の針部分とを接続する糸を示す斜視図である。
図9】第1の針部分内に部分的に挿入された図7及び8の第2の針部分を示す図である。
図10】両端部において固定され且つ本発明の方法による二重ループ縫い目が設けられた部分を有する移植片を含む、移植片準備ステーションの図である。
図11A】本発明の方法による、両端部において固定された材料に2部品針を使用して二重ループ縫い目を提供するためのプロセスを示す図である。
図11B】本発明の方法による、両端部において固定された材料に2部品針を使用して二重ループ縫い目を提供するためのプロセスを示す図である。
図11C】本発明の方法による、両端部において固定された材料に2部品針を使用して二重ループ縫い目を提供するためのプロセスを示す図である。
図11D】本発明の方法による、両端部において固定された材料に2部品針を使用して二重ループ縫い目を提供するためのプロセスを示す図である。
図11E】本発明の方法による、両端部において固定された材料に2部品針を使用して二重ループ縫い目を提供するためのプロセスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の好ましい実施例に関するこの説明は、本発明の全記述の一部と考慮されるべき添付の図面とともに読まれることが意図されている。図面は、必ずしも原寸に比例しておらず、また、本発明のいくつかの特徴は、明瞭さ及び簡潔さのために、縮尺が誇張されて示されるか又はある程度概略的に示される場合がある。
【0019】
次に図4~9を参照すると、糸402を縫製材料に通すための2部品縫い針400が提供されている。縫い針400は、前述の縫製材料を最初に通過するように構成された針先404を含む。後端部406が、針先404とは反対側の針400の端部に配置され、また、後端部406は一般に、縫製材料を通過するための針400の最後の部分である。この場合、針400は、その長さに沿って(即ち、針先404と後端部406との間に延びる線に沿って)実質的に直線状である。しかし、他の場合では、針の少なくとも一部分が、その長さに沿って曲線状とされる。針400は、針先404に追随して縫製材料を通り抜けるように構成された第1の針部分408を含む。好ましい実施例では、針先404は、第1の針部分408の端部に一体に形成される。さらに、針400は、第1の針部分408に取外し可能に接続されるように、また、針先404に追随して縫製材料を通り抜けるように構成された、第2の針部分410を含む。第1及び第2の針部分408、410のそれぞれの寸法(例えば、長さ)に応じて、針400の後端部406は、第1の針部分又は第2の針部分に配置され得る。
【0020】
連続的な糸402は、第1及び第2の針部分408、410の両方に接続される。第1の糸接続部412が、第1の針部分408に配置され、且つ、前述の糸402の第1の部分402Aを運んで縫製材料を通り抜けるように構成される。同様に、第2の糸接続部414が、第2の針部分410に配置され、且つ、前述の糸402の第2の部分402Bを運んで縫製材料を通り抜けるように構成される。示された実施例では、単一ストランドの糸402が、糸ストランドの一方の端部が第1の糸接続部412に固定され、且つ、糸ストランドのもう一方の端部が第2の糸接続部414に固定された状態で、第1の針部分408と第2の針部分410との間に延在する。しかし、糸402は、糸の少なくとも2つのストランドが第1の針部分408と第2の針部分410との間に延在するように、両方のねじ接続部412、414を通過する連続的なループを形成してもよい。連続的なループの利点は、針部分408、410が、糸402に沿って「浮く」ことができ、且つ、縫製プロセス中に糸上で再び中心に位置することができることである。さらに、示された糸接続部412、414は、糸402が通される開口部(又は、針孔)である。他の実施例では、糸接続部412、414は、カシメ加工された(又は、針孔のない)接続部であり、その場合、糸402は、針部分408、410の端部と一体に形成される。
【0021】
針400及び糸402は、テキスタイルの製造又は操作などにおけるような慣例的な縫製作業のために使用され得る。他の実施例では、針400及び糸402は、外科的処置のために使用され、且つ、外科用等級の材料から作られる。外科的処置のために使用される場合、カシメ加工された端部の設計の利点は、患者の外傷が減少することである。
【0022】
第1の針部分408及び第2の針部分410は、それらが実質的に同時に縫製材料を通り抜けるように、選択的且つ取外し可能に互いに接続するように構成される。受入部416が、第1の針部分408上に配置され、且つ、第1及び第2の針部分を取外し可能に互いに接続するために、第2の針部分410を受け入れるためのサイズ及び構成とされる。この特定の実施例では、受入部416は、第1の針部分408に機械加工(例えば、穴開け)され且つ第1の針部分408の長さの少なくとも一部分に沿って延在する、完全に囲まれた細長い管路である。受入部146は、一方の端部に位置する開口部424と、反対側の端部に配置された止め部420とを有する。この特定の事例では、止め部420は、細長い受入部416を第1の針部分408に部分的にのみ穴開けすることによって作り出される。
【0023】
第2の針部分410に形成される端部422は、開口部424を介して受入部416に滑り込むためのサイズとされる。第2の針部分410が受入部416に滑り込むときに、端部422は、止め部420に接触し、止め部は、第2の針部分が第1の針部分408を完全に通過するのを防ぐ。有利には、端部422と止め部402とを接触させることにより、第2の針部分410が第1の針部分408に完全に挿入されて第1の針部分408内で正しく配置されたことを保証する触覚フィードバックが、使用者に提供される。第2の針部分410の端部422は、受入部内への第2の針部分の挿入及び案内を支援するために、受入部416の開口部424に最初に係合するように構成された細められた先端を備えることが好ましい。例えば、いくつかの実施例では、第2の針部分410の端部422は、第2の針先を備える。しかし、他の実施例では、端部422は、不注意な負傷を防ぐのに役立つように、鈍く(即ち、鋭くなく)される。
【0024】
いくつかの実施例では、開口部424を越えて延在する、部分的に囲まれた(即ち、凹状の)柱区間426が、第1の針部分408に形成される。柱区間426の1つの目的は、開口部424を越えて延在する第2の針部分410の部分を支持及び保護することである。柱区間426の凹状側は、第2の針部分への容易なアクセスを依然として可能にしながら、第2の針部分410の周りに部分的に延在して、第2の針部分を損傷(例えば、曲がること)から保護するのに役立つ。柱区間426はまた、柱区間の端部近くに形成される第1の糸接続部412のための場所を提供する。柱区間426は、第2の針部分410が第1の針部分408の受入部416に完全に挿入されたときに第1の糸接続部412が完全に露出されるようなサイズとされることが好ましい。同様に、第2の糸接続部414もまた、第2の針部分410が第1の針部分408の受入部416に完全に挿入されたときに、完全に露出されることが好ましい。
【0025】
上記の2部品針400は、ACL再建手術などの医療処置での移植片の準備を特に含む、かがり縫い目を作り出すための改善された方法を行う際に使用され得る。次に図10を参照すると、かがり縫いされた区間432を有する例示的なACL移植片430を含む移植片準備ステーション428が示されている。移植片430の各端部434A、434Bは、移植片準備ステーション428の移植片クランプ436によってしっかりと保持され、その結果、クランプと移植片との間に延在する移植片の部分が、動かされずに僅かな張力下で保持される。クランプ436間に移植片430を位置決めすることにより、縫製処置中に針400が通過しなければならない移植片の頂面438及び底面440にアクセスし易くなる。
【0026】
図11A~11Eでは、針400を使用して腱430(明瞭さのために拡大されている)をかがり縫いするプロセスが示されている。最初に図11Aを参照すると、縫合プロセスを始めるために、移植片430は、移植片の両端部434A、434Bが移植片クランプ436によってしっかりと保持されるように、上記で論じられたような移植片ステーション内に設置される。糸402が、糸の第1の部分402Aが第1の針部分408に接続されまた糸の第2の部分402Bが第2の針部分410に接続されるように、針400に接続される。次いで、第1及び第2の針部分408、410が互いに接続されるように、接続された構成で配置された針400は、針が移植片の第1の部分(例えば、底面440)に入って第2の部分(例えば、頂面438)から出るように、第1の方向において移植片430を通して挿入される。針400を引っ張って移植片430に通すことにより、両方の針部分408、410及び両方の糸部分402A、402Bもまた、移植片を通して運ばれる。
【0027】
図11Bを参照すると、針400が引っ張られて移植片430を通り抜けて第1の縫い目を形成すると、第1の針部分408は、第2の針部分410から分離され、それにより、糸部分402A、402Bも分離される。糸部分402A、402Bは、分離されると、第2の縫い目の形成に備えて、移植片430の外側を回り込んで第1の部分(例えば、底面440)付近へ戻される。示されたプロセスでは、第1の糸部分402Aは、移植片430の右縁部を通り過ぎ、第2の糸部分402Bは、移植片の左側を通り過ぎる。図11Cに示されるように、糸部分402A、402Bが移植片430の第1の部分(例えば、底面440)付近へ戻るように移動されると、第1及び第2の針部分408、410は、再接続される。図11D及び11Eに示されるように、第1及び第2の針部分408、410が再接続されると、針400は、上記のプロセスを繰り返すことにより移植片の長さに沿って第2の縫い目及び後続の縫い目を形成する状態にある。必要な数の縫い目が提供された後、移植片430はクランプ436から取り外される。示されたプロセスでは、縫い目は、移植片430の一方の端部434Aにのみ提供される。しかし、同じプロセスを使用することで、移植片430の端部434A、434Bのどちらか又は両方に縫い目が提供され得る。
【0028】
前述のように、従来のかがり縫い法では、縫い目の形成後、針及び糸は、移植片準備ステーションに固定されていない移植片の自由端部を通り越すことにより、移植片の第1の面へ戻される(例えば、図3C参照)。したがって、移植片のその端部は、準備プロセス中に自由に動き、それにより、移植片が損傷する場合があり、また、一貫性のない縫い目がもたらされる場合がある。この一貫性のなさは、移植片の強度及び品質に影響する可能性があり、最終的には、外科手術の失敗率に影響する可能性がある。対照的に、上記の2部品針及び縫合方法を使用すると、移植片の両端部が、移植片準備プロセス全体を通じて固定されたままである。これは、縫合プロセスが従来の方法と比べてより容易にまたより一貫して行われることを可能にする。
【0029】
この説明は多くの具体例を含むが、それらは本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではなく、本発明の目下好ましい実施例のうちのいくつかの例示、及び本発明を実施するのに最適であると本発明者によって企図される態様を提供するにすぎないものと解釈されるべきである。本発明は、本明細書において説明されたように、本発明が関係する当業者によって理解されるであろう様々な修正及び翻案を受け入れる余地がある。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E