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特許7037706複数の運動モードを有する再構成可能な二足歩行ロボット
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  • 特許-複数の運動モードを有する再構成可能な二足歩行ロボット 図1
  • 特許-複数の運動モードを有する再構成可能な二足歩行ロボット 図2
  • 特許-複数の運動モードを有する再構成可能な二足歩行ロボット 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-08
(45)【発行日】2022-03-16
(54)【発明の名称】複数の運動モードを有する再構成可能な二足歩行ロボット
(51)【国際特許分類】
   B25J 5/00 20060101AFI20220309BHJP
【FI】
B25J5/00 F
B25J5/00 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021546670
(86)(22)【出願日】2020-09-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-21
(86)【国際出願番号】 CN2020115412
(87)【国際公開番号】W WO2021103750
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2021-08-09
(31)【優先権主張番号】202010255320.7
(32)【優先日】2020-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521162399
【氏名又は名称】之江実験室
(74)【代理人】
【識別番号】100128347
【弁理士】
【氏名又は名称】西内 盛二
(72)【発明者】
【氏名】黄 冠宇
(72)【発明者】
【氏名】孔 ▲令▼雨
(72)【発明者】
【氏名】蔡 建▲東▼
(72)【発明者】
【氏名】姜 ▲紅▼建
(72)【発明者】
【氏名】▲謝▼ 安桓
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 丹
【審査官】杉田 隼一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-266337(JP,A)
【文献】特開2007-290054(JP,A)
【文献】特開平5-285864(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104029745(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105667622(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の運動モードを有する再構成可能な二足歩行ロボットであって、
該二足歩行ロボットは左右対称構造であり、胴体部材、左股部、右股部、左腿及び右腿を備え、前記胴体部材は胴体部材の両側に対称的に配置される左股部及び右股部に回転可能に接続され、前記左腿及び右腿はそれぞれ左股部及び右股部に回転可能に接続され、
前記左腿は上腿部材、下腿部材、フレキシブル衝撃吸収部材、足裏部材、足指部材、バランスリンク部材、主動輪部材及び従動輪部材を備え、
前記上腿部材は一端が回転関節により前記左股部に接続され、他端が回転関節により下腿部材の一端に接続され、下腿部材の他端が回転関節により足裏部材の中央部に接続され、足裏部材は一端が回転関節により足指部材の中央部に接続され、他端が回転関節によりバランスリンク部材の一端に接続され、主動輪部材は回転関節によりバランスリンク部材の他端に接続され、従動輪部材は回転関節により足指部材の一端に接続され、
前記フレキシブル衝撃吸収部材は前記上腿部材と足裏部材との間に接続され、
前記左股部及び右股部の構造は同じであり、左腿及び右腿の構造は同じであり、
二足歩行ロボットを駆動する駆動関節を調整することにより、前記足指部材が着地し前記主動輪部材と従動輪部材が離地する場合、前記二足歩行ロボットが二足運動モードであり、前記主動輪部材と従動輪部材が着地し前記足指部材が離地する場合、前記二足歩行ロボットが輪型運動モードであることを特徴とする複数の運動モードを有する再構成可能な二足歩行ロボット。
【請求項2】
前記フレキシブル衝撃吸収部材は順に接続される上腿上端リンク部材、弾性部材及び足裏リンク部材を備えることを特徴とする請求項1に記載の複数の運動モードを有する再構成可能な二足歩行ロボット。
【請求項3】
前記二足歩行ロボットは更に足指下端リンク部材及び足指上端リンク部材を備え、前記足指下端リンク部材の一端は回転関節により足指部材の他端に接続され、前記足指上端リンク部材の一端は回転関節により足裏部材に接続され、足指下端リンク部材の他端と足指上端リンク部材の他端は回転関節により接続されることにより、従動輪部材を調整するリンク構造を形成することを特徴とする請求項1に記載の複数の運動モードを有する再構成可能な二足歩行ロボット。
【請求項4】
前記左股部は股部垂直回転ロッド、股部水平回転部材及び股部固定部材を備え、前記胴体部材は回転関節により股部垂直回転ロッドに接続され、前記股部垂直回転ロッドは回転関節により股部水平回転部材に接続され、前記股部固定部材は前記股部水平回転部材に剛性接続され、前記胴体部材は股部垂直回転ロッド及び股部水平回転部材により横転及び偏向を実施することを特徴とする請求項1に記載の複数の運動モードを有する再構成可能な二足歩行ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は足型ロボット分野に関し、特に複数の運動モードを有する再構成可能な二足歩行ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
輪型ロボットに比べて、足型ロボットは地形適応性の面で顕著な優位性を有し、階段の上り下り、溝を跨ぐ及び障害物を迂回する等の動作を実現することができる。従って、野外探査、災害後の救助、資材輸送等のシーンでは、足型ロボットが大きな潜在的な用途を持っている。しかしながら、輪型ロボットはエネルギー効率及び速度等の面でより高い優位性を有し、どのように2種類のロボットの利点を組み合わせて、地形適応性が高く、速度が高く、エネルギー効率が高い再構成可能な二足歩行ロボットを設計するのは、現在の二足歩行ロボットのホットスポットの研究方向となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の二足歩行ロボットは速度が比較的低く、エネルギー効率が比較的低いという問題に対して、本発明は複数の運動モードを有する再構成可能な二足歩行ロボットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の目的は以下の技術案により実現される。
【0005】
複数の運動モードを有する再構成可能な二足歩行ロボットであって、
該二足歩行ロボットは左右対称構造であり、胴体部材、左股部、右股部、左腿及び右腿を備え、前記胴体部材は胴体部材の両側に対称的に配置される左股部及び右股部に回転可能に接続され、前記左腿及び右腿はそれぞれ左股部及び右股部に回転可能に接続され、
前記左腿は上腿部材、下腿部材、フレキシブル衝撃吸収部材、足裏部材、足指部材、バランスリンク部材、主動輪部材及び従動輪部材を備え、
前記上腿部材は一端が回転関節により前記左股部に接続され、他端が回転関節により下腿部材の一端に接続され、下腿部材の他端が回転関節により足裏部材の中央部に接続され、足裏部材は一端が回転関節により足指部材の中央部に接続され、他端が回転関節によりバランスリンク部材の一端に接続され、主動輪部材は回転関節によりバランスリンク部材の他端に接続され、従動輪部材は回転関節により足指部材の一端に接続され、
前記フレキシブル衝撃吸収部材は前記上腿部材と足裏部材との間に接続され、
前記左股部及び右股部の構造は同じであり、左腿及び右腿の構造は同じであり、
二足歩行ロボットを駆動する駆動関節を調整することにより、前記足指部材が着地し前記主動輪部材と従動輪部材が離地する場合、前記二足歩行ロボットが二足運動モードであり、前記主動輪部材と従動輪部材が着地し前記足指部材が離地する場合、前記二足歩行ロボットが輪型運動モードである複数の運動モードを有する再構成可能な二足歩行ロボット。
【0006】
更に、前記フレキシブル衝撃吸収部材は順に接続される上腿上端リンク部材、弾性部材及び足裏リンク部材を備える。
【0007】
更に、前記二足歩行ロボットは足指下端リンク部材及び足指上端リンク部材を更に備え、前記足指下端リンク部材の一端は回転関節により足指部材の他端に接続され、前記足指上端リンク部材の一端は回転関節により足裏部材に接続され、足指下端リンク部材の他端と足指上端リンク部材の他端は回転関節により接続されることにより、従動輪部材を調整するリンク構造を形成する。
【0008】
更に、前記左股部は股部垂直回転ロッド、股部水平回転部材及び股部固定部材を備え、前記胴体部材は回転関節により股部垂直回転ロッドに接続され、前記股部垂直回転ロッドは回転関節により股部水平回転部材に接続され、前記股部固定部材は前記股部水平回転部材に剛性接続され、前記胴体部材は股部垂直回転ロッド及び股部水平回転部材により横転及び偏向を実施する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の有益な効果は以下のとおりである。
【0010】
本発明で設計された二足歩行ロボットは、外部状況に応じて輪型又は足型運動方式を選択し、ロボットの地形への適応性及び速度を向上させることができ、二足歩行ロボットと輪型ロボットの利点を組み合わせることにより、環境適合性が高く、作業効率が高い。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は二足歩行ロボットの足型運動モードの模式図である。
図2図2は二足歩行ロボットの輪型運動モードの模式図である。
図3図3は二足歩行ロボットの腿部構造の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら好適な実施例によって本発明を詳しく説明し、本発明の目的及び効果は明らかになる。以下、図面を参照しながら実施例によって本発明を更に詳しく説明する。理解されるように、ここで説明される具体的な実施例は本発明を解釈するためのものであって、本発明を制限するためのものではない。
【0013】
図1に示すように、本発明に係る複数の運動モードを有する再構成可能な二足歩行ロボットは、胴体部材1、股部垂直回転ロッド2、股部水平回転部材3、股部固定部材4、上腿部材5、下腿部材6、上腿上端リンク部材7、フレキシブル部材8、上腿下端リンク部材9、足裏部材10、足指部材11、バランスリンク部材12、足指下端リンク部材13、足指上端リンク部材14、主動輪部材15及び従動輪部材16を備える。
【0014】
図1~3に示すように、股部垂直回転ロッド2はそれぞれ軸線が互いに直交する回転関節によって胴体部材1及び股部水平回転部材3に接続され、1つのユニバーサルジョイントヒンジを形成し、それが二足歩行ロボットにz軸及びy軸回りに回転する自由度を提供し、ユニバーサルジョイントヒンジを駆動することにより、股部固定部材4が胴体部材1に対してz軸及びy軸回りに適切に回転することが実現される。股部固定部材4は股部水平回転部材3に固定され、回転関節により上腿部材5に接続され、二足歩行ロボットにx軸回りに回転する自由度を提供する。該回転関節を駆動することにより、上腿部材5が胴体部材1に対してx軸、y軸及びz軸回りに適切に回転することが実現される。このような接続方式に限らず、球ジョイントにより胴体部材1と上腿部材5を接続することは同様のゲイン効果を得ることもできる。
【0015】
上腿部材5、下腿部材6、上腿上端リンク部材7、上腿下端リンク部材9及び足裏部材10はいずれも回転関節により互いに接続されるが、フレキシブル部材8の両端はそれぞれ上腿上端リンク部材7及び上腿下端リンク部材9に固定して接続され、これにより、これらの6本のロッドはフレキシブルを持つ平面マルチロッド構造を形成する。該平面マルチロッド構造は二足歩行ロボットの構造剛性を向上させるだけでなく、フレキシブル部材を導入することにより二足歩行ロボットの末端と地面との衝撃力を軽減し、且つ一定のエネルギーを貯めて振動の低減及びエネルギー効率の向上の効果を得ることができる。股部固定部材4と上腿部材5との間の回転関節及び上腿部材5と下腿部材6との間の回転関節を駆動することにより、二足歩行ロボットの歩行作業を実現することができ、具体的に図3に示される。このような接続方式に限らず、1本のフレキシブルロッドを使用して直接上腿部材5と足裏部材10を接続することは同様のゲイン効果を得ることもできる。
【0016】
二足歩行ロボットの駆動関節を適切に駆動することにより、二足歩行ロボットの二足運動モードと輪型運動モードとの間の切り替えを実現することができる。バランスリンク部材12の両端は回転関節によりそれぞれ足裏部材10及び主動輪部材15に接続され、二足運動モードにおいて、バランスリンク部材12の振れ角度、速度及び加速度、並びに主動輪部材15の回転速度を能動的に制御することにより、ロボットの静的バランス及び動的バランスを実現することができるが、輪型運動モードにおいて、バランスリンク部材12を能動的に制御することにより、衝撃を吸収する、障害物を迂回する等の役割を果たすことができる。
【0017】
足裏部材10、足指部材11、足指下端リンク部材13及び足指上端リンク部材14はいずれも回転関節により互いに接続され、これにより、平面4ロッド構造を形成するが、足指部材11の他端は回転関節により従動輪部材16に接続され、これにより従動輪部材16を自在に回転させる。図3に示すように、二足運動モードでは、該平面4ロッド構造により足指部材11の駆動をシフトアップし、二足歩行ロボットが異なる地形に適応する条件下で、二足歩行ロボットの慣性モーメントを軽減してその運動性能を向上させることができる。輪型運動モードでは、該4ロッド構造の運動により従動輪部材16の位置を調整し、従動輪部材16をより良く主動輪部材15の運動に追従させ、二足歩行ロボットの輪型運動モードにおける運動性能を更に向上させることができる。
【0018】
本発明は輪と足を組み合わせた構造を用い、二足歩行状態では、導入されたフレキシブル部材により衝撃を軽減してエネルギーを貯める役割を果たすことができ、上腿部材、下腿部材、フレキシブル衝撃吸収部材及び足裏部材により形成されたマルチリンク構造によって二足歩行ロボット本体の剛性を向上させ、歩行安定性を向上させる。バランスリンク部材の揺動及び主動輪部材の回転によって二足歩行ロボットの二足歩行状態における能動的なバランスを実現し、足裏部材及び足指部材によって二足歩行ロボットの異なる地形への能動的な適応性を実現し、二足歩行ロボットの腿部構造を調整することにより二足歩行ロボットの足型運動モードと輪型運動モードとの間の切り替えを実現し、輪型運動モードでは、バランスリンク部材及び足指部材を調整することにより主動輪部材及び従動輪部材の地形への能動的な衝撃吸収を実現する。
【0019】
当業者であれば理解されるように、以上の説明は本発明の好適な実施例であって、本発明を制限するためのものではない。上記実施例を参照して発明を詳しく説明したが、当業者であれば、依然として上記各実施例に記載される技術案を修正したり、その中の一部の技術的特徴に対して等価置換を行ったりすることができる。本発明の趣旨や原則内に行った修正や等価置換等はいずれも発明の保護範囲内に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0020】
1 胴体部材
2 股部垂直回転ロッド
3 股部水平回転部材
4 股部固定部材
5 上腿部材
6 下腿部材
7 上腿上端リンク部材
8 フレキシブル部材
9 上腿下端リンク部材
10 足裏部材
11 足指部材
12 バランスリンク部材
13 足指下端リンク部材
14 足指上端リンク部材
15 主動輪部材
16 従動輪部材
図1
図2
図3