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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-09
(45)【発行日】2022-03-17
(54)【発明の名称】便器洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   E03D 5/01 20060101AFI20220310BHJP
   E03D 11/02 20060101ALI20220310BHJP
   E03D 5/10 20060101ALI20220310BHJP
【FI】
E03D5/01
E03D11/02 B
E03D5/10
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017069137
(22)【出願日】2017-03-30
(65)【公開番号】P2018168672
(43)【公開日】2018-11-01
【審査請求日】2020-01-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(72)【発明者】
【氏名】林 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】福本 治彦
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-214905(JP,A)
【文献】特開2015-068088(JP,A)
【文献】特開2009-084786(JP,A)
【文献】特開2010-156201(JP,A)
【文献】特開2011-208362(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00- 7/00
E03D 11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リム吐水口及びジェット吐水口を有する便器に対して洗浄水を供給して上記便器の洗浄を行なう便器洗浄装置であって、
上記ジェット吐水口へ供給する洗浄水を貯めるタンクと、
上記タンク内に貯めた洗浄水を上記ジェット吐水口へ圧送するポンプと、
上記ポンプのモータを駆動する駆動部と、
上記駆動部に対して指令信号を出力することで上記モータの駆動を制御する制御部と、
を備えており、
上記便器の洗浄時においては、まず上記リム吐水口から水道配管からの洗浄水を吐水させるリム洗浄を行なった後に、上記ジェット吐水口から上記タンク内の洗浄水をポンプで吐水させるジェット吐水を行い、
上記制御部は、上記モータへの電力の供給を開始するとともに、上記モータへの電力の供給から所定時間後に上記ジェット吐水を行うように構成され、かつ、上記制御部は、上記便器の設置場所に伴う圧力損失による上記リム洗浄が行われる時間に基づいて上記モータへの電力の供給を開始するタイミングを変更するよう構成され、更に、上記圧力損失が大きいほど上記モータへの電力の供給を開始するタイミングを遅くし、上記モータへの電力の供給から上記所定時間後に、上記ポンプを実際に駆動させて上記ジェット吐水を行うように構成されていることを特徴とする便器洗浄装置。
【請求項2】
上記駆動部は、上記モータへの電力の供給を切り替えるスイッチ手段を有し、
上記制御部は、上記モータへの電力の供給を開始するとともに、上記モータへの電力の供給から上記所定時間後に上記ジェット吐水を行うように構成され、かつ、上記制御部は、上記便器の上記設置場所に伴う上記圧力損失による上記リム洗浄が行われる時間に基づいて上記スイッチ手段を切り替えて、上記モータへの電力の供給を開始するタイミングを変更するよう構成され、更に、上記圧力損失が大きいほど上記モータへの電力の供給を開始するタイミングを遅くし、上記モータへの電力の供給から上記所定時間後に、上記ポンプを実際に駆動させて上記ジェット吐水を行うように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の便器洗浄装置。
【請求項3】
上記制御部は、上記タンクへの給水時における上記タンク内の水位上昇時間に基づいて上記便器の上記設置場所に伴う上記圧力損失を算出して上記リム洗浄が行なわれる時間の変化を学習する学習制御を行い、
さらに上記制御部は、上記モータへの電力の供給を開始するとともに、上記モータへの電力の供給から上記所定時間後に上記ジェット吐水を行うように構成され、かつ、上記制御部は、上記学習制御によって学習した上記便器の上記設置場所に伴う上記圧力損失による上記リム洗浄が行なわれる時間に基づいて上記モータへの電力の供給を開始するタイミングを変更するよう構成され、更に、上記圧力損失が大きいほど上記モータへの電力の供給を開始するタイミングを遅くし、上記モータへの電力の供給から上記所定時間後に、上記ポンプを実際に駆動させて上記ジェット吐水を行うように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の便器洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンク内の水をポンプによって便器に供給する便器洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、タンクに貯めた洗浄水をポンプによって便器のジェット吐水口に供給する便器洗浄装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-214905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では水洗大便器の多機能化やデザイン性の向上などを目的として、水洗大便器へ搭載される機能部品の小型化の要求が高まっており、便器に洗浄水を供給するポンプについても小型化が求められている。
【0005】
ポンプを所望のタイミングで駆動開始させるためには、ポンプの駆動を開始させるタイミングよりも少し前からポンプモータへ駆動用電力を供給する必要がある。特許文献1に記載されている便器洗浄装置では、便器洗浄スイッチが押されて便器洗浄を開始すると同時にポンプモータへ駆動用電力を供給している。
【0006】
しかしながら、特許文献1の便器洗浄装置では、便器洗浄時において、ポンプを駆動して行なうジェット吐水の前に行なわれるリム洗浄が長く行なわれると、ポンプモータへの電力供給時間が長くなってしまうことがある。特に、近年要求されているポンプの小型化を実現するにあたり、ポンプモータへの電力供給時間が長くなってしまうとポンプの部品が高温化してしまい、周りの部品へ影響を及ぼすおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、ポンプモータへの電力供給時間が長くなってしまい、ポンプの部品が高温化してしまうことによる周りの部品への影響を抑制した便器洗浄装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る便器洗浄装置は、リム吐水口及びジェット吐水口を有する便器に対して洗浄水を供給して上記便器の洗浄を行なう便器洗浄装置であって、上記ジェット吐水口へ供給する洗浄水を貯めるタンクと、上記タンク内に貯めた洗浄水を上記ジェット吐水口へ圧送するポンプと、上記ポンプのモータを駆動する駆動部と、上記駆動部に対して指令信号を出力することで上記モータの駆動を制御する制御部と、を備えており、上記便器の洗浄時においては、まず上記リム吐水口から水道配管からの洗浄水を吐水させるリム洗浄を行なった後に、上記ジェット吐水口から上記タンク内の洗浄水をポンプで吐水させるジェット吐水を行い、上記制御部は、上記モータへの電力の供給を開始するとともに、上記モータへの電力の供給から所定時間後に上記ジェット吐水を行うように構成され、かつ、上記制御部は、上記便器の設置場所に伴う圧力損失による上記リム洗浄が行われる時間に基づいて上記モータへの電力の供給を開始するタイミングを変更するよう構成され、更に、上記圧力損失が大きいほど上記モータへの電力の供給を開始するタイミングを遅くし、上記モータへの電力の供給から上記所定時間後に、上記ポンプを実際に駆動させて上記ジェット吐水を行うように構成されていることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、リム洗浄が行なわれる時間に基づいてポンプのモータへの電力の供給を開始するため、リム洗浄の開始と同時にポンプへの電力供給を開始する場合に比べて、ポンプへの電力供給時間を短くすることができる。したがって、ポンプのモータへの電力供給時間が長くなってしまい、ポンプの部品が高温化してしまうことによる周りの部品への影響を抑制することができる。
【0010】
本発明の一態様に係る便器洗浄装置において、好ましくは、上記駆動部は、上記モータへの電力の供給を切り替えるスイッチ手段を有し、上記制御部は、上記モータへの電力の供給を開始するとともに、上記モータへの電力の供給から上記所定時間後に上記ジェット吐水を行うように構成され、かつ、上記制御部は、上記便器の上記設置場所に伴う上記圧力損失による上記リム洗浄が行われる時間に基づいて上記スイッチ手段を切り替えて、上記モータへの電力の供給を開始するタイミングを変更するよう構成され、更に、上記圧力損失が大きいほど上記モータへの電力の供給を開始するタイミングを遅くし、上記モータへの電力の供給から上記所定時間後に、上記ポンプを実際に駆動させて上記ジェット吐水を行うように構成されていることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、制御部によって、リム洗浄が行なわれる時間に基づいて駆動部に設けられたスイッチ手段のオンオフを切り替えて、ポンプのモータへの電力の供給を開始するため、リム洗浄の開始と同時にポンプへの電力供給を開始する場合に比べて、ポンプへの電力供給時間を短くすることができる。したがって、ポンプのモータへの電力供給時間が長くなってしまい、ポンプの部品が高温化してしまうことによる周りの部品への影響を抑制することができる。
【0012】
本発明の一態様に係る便器洗浄装置において、好ましくは、上記制御部は、上記タンクへの給水時における上記タンク内の水位上昇時間に基づいて上記便器の上記設置場所に伴う上記圧力損失を算出して上記リム洗浄が行なわれる時間の変化を学習する学習制御を行い、さらに上記制御部は、上記モータへの電力の供給を開始するとともに、上記モータへの電力の供給から上記所定時間後に上記ジェット吐水を行うように構成され、かつ、上記制御部は、上記学習制御によって学習した上記便器の上記設置場所に伴う上記圧力損失による上記リム洗浄が行なわれる時間に基づいて上記モータへの電力の供給を開始するタイミングを変更するよう構成され、更に、上記圧力損失が大きいほど上記モータへの電力の供給を開始するタイミングを遅くし、上記モータへの電力の供給から上記所定時間後に、上記ポンプを実際に駆動させて上記ジェット吐水を行うように構成されていることを特徴とする。





【0013】
この構成によれば、タンクへの給水時におけるタンク内の水位上昇時間に基づいて便器の圧力損失を算出し、その算出に基づいて学習したリム洗浄が行なわれる時間に基づいてポンプのモータへの電力供給を開始するため、リム洗浄が行なわれる時間を高い精度で学習することができ、便器によってはポンプへの電力供給時間をより短くすることができる。したがって、ポンプのモータへの電力供給時間が長くなってしまい、ポンプの部品が高温化してしまうことによる周りの部品への影響を抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ポンプへの電源供給時間が長くなってポンプの部品が高温化してしまうことによる周りの部品への影響を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る便器洗浄装置と便器とを含むブロック図である。
図2】本発明の一実施形態に係る便器洗浄装置の電気回路構成を示すブロック図である。
図3】本発明の一実施形態に係る便器洗浄装置のポンプモータ駆動制御系の構成を示す回路図である。
図4】本発明の一実施形態に係る便器洗浄装置の便器圧力損失学習制御を示すフローチャートである。
図5】本発明の一実施形態に係る便器洗浄装置の便器圧力損失学習制御を示すタイムチャートである。
図6】本発明の一実施形態に係る便器洗浄装置のポンプを所定時間駆動して洗浄水をタンクから便器へ供給した後、ポンプの駆動を停止した状態のタンク内の死水水位から止水水位に上昇するまでの水位上昇時間T0を給水流量Q1から算出するための特性図である。
図7】本発明の一実施形態に係る便器洗浄装置の便器洗浄制御を示すフローチャートである。
図8】本発明の一実施形態に係る便器洗浄装置の便器洗浄制御を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照しながら説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0017】
<便器洗浄装置の構成>
まず、図1を参照して、本発明の実施形態に係る便器洗浄装置について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る便器洗浄装置と便器とを含むブロック図である。
【0018】
図1に示すように、本実施形態の便器洗浄装置Sは、リム吐水口5a及びジェット吐水口5cを有する便器5に対して洗浄水を供給して便器5の洗浄を行なうものである。
【0019】
給水路Lが水道配管に接続され、給水路L上には給水電磁弁1が設けられる。給水電磁弁1は、水道配管からの水を流路切替弁2に供給する開位置と、流路切替弁2への供給を遮断する閉位置とに切り替えられる。
【0020】
流路切替弁2は、給水電磁弁1から供給された水を第1の導水路L1に流す状態(以下、リム側位置という)と、第2の導水路L2に流す状態(以下、タンク側位置という)とに切り替えられる。
【0021】
なお、流路切替弁2と第1の導水路L1により便器給水系が構成され、流路切替弁2と第2の導水路L2によりタンク給水系が構成される。
【0022】
第1の導水路L1は、便器5のリム吐水口5aに水を供給するための管路である。リム吐水口5aは便器5のボウル部5bへ洗浄水を供給するものであり、リム吐水口5aに沿って水を流すことで、ボウル部5bの上方から渦巻き状の水流を生じさせることができる。第2の導水路L2は、タンク3に水を供給するための管路である。
【0023】
タンク3には、上部に設けられた給水口3aを通じて第2の導水路L2から水が供給される。これにより、タンク3内に水が貯まる。タンク3内に貯まった水を、以下の説明ではタンク水Wという。
【0024】
タンク3の下部には、ポンプ4の吸込みポート4aが接続されている。ポンプ4としては、渦巻きポンプ、ディフューザポンプ、カスケードポンプ等、様々な種類のポンプを使用することができる。4mはポンプ4を駆動するポンプモータである。
【0025】
ポンプ4の吐出ポート4bから吐出された水は、便器5のボウル部5bの前側下部に形成されたジェット吐水口5cに供給される。ジェット吐水口5cからは、ボウル部5bの後側につながったトラップ排水部5dに向けて水が噴出する。
【0026】
なお、実際には、上記給水路L及び導水路L1,L2には、定流量弁、逆流防止弁、フラッパ弁、絞り、エア逃がし弁、水抜き弁等の部品が設けられているが、図1ではこれらを省略して示している。
【0027】
6はタンク3内の上部に設けられた上方フロートスイッチであり、タンク水Wが満水水位に相当する水量まで貯まったことを検出する満水水位検出器である。タンク3内に洗浄水が供給されてタンク3内のタンク水Wの水位がWL1(以下、「止水水位WL1」)まで上昇すると、上方フロートスイッチ6はオフからオンに切り替わる。
【0028】
7はタンク3内の下部に設けられた下方フロートスイッチであり、タンク水Wが下限水位に相当する水量まで減少したことを検出する下限水位検出器である。洗浄水がタンク3から便器5へ供給されてタンク3内のタンク水Wの水位がWL2(以下、「水位WL2」)まで下降すると、下方フロートスイッチ7はオンからオフに切り替わる。便器5の洗浄動作時において、最終的にタンク3内のタンク水Wの水位はDWL1(以下、「死水水位DWL1」)まで下降する。
【0029】
10はマイクロコンピュータ(CPU)やメモリ等により構成される制御部であり、メモリ内に格納されたコンピュータプログラムに従って給水電磁弁1や流路切換弁2やポンプモータ4mの駆動を制御する。
【0030】
9は制御部10からの出力指令信号に応じてポンプ4(ポンプモータ4m)を駆動するポンプ駆動部である。
【0031】
15は操作パネルであり、便器洗浄を開始させる洗浄スイッチや、洗浄便座部(図示せず)を動作させるためのスイッチが設けられている。洗浄スイッチが操作されると、操作パネル15から制御部10に対して洗浄指令信号が出力される。なお、操作パネル15は、電気配線により制御部10に接続されていてもよいし、制御部10に設けられた受信部(図示せず)に対してリモートコントロール信号としての洗浄指令信号を送信するリモコン操作パネルであってもよい。
【0032】
次に、図2,3を参照して、本発明の実施形態に係るポンプモータの駆動制御系(ポンプモータ駆動制御系)について説明する。図2は、本発明の一実施形態に係る便器洗浄装置の電気回路構成を示すブロック図である。図3は、本発明の一実施形態に係る便器洗浄装置のポンプモータ駆動制御系の構成を示す回路図である。
【0033】
制御部10内には、マイクロコンピュータ10mが設けられており、マイクロコンピュータ10mは、ポンプモータ出力指令部10aと、ポンプモータ出力制御部10bと、ポンプモータ回転数判別部10cと、計時部10dとを含む。ポンプモータ出力指令部10aは、操作パネル15からの洗浄指令信号の入力に応じて、ポンプモータ4mの駆動を制御する(言い換えれば、ポンプモータ駆動部9に対してポンプモータ4mの駆動を指示する)ためのポンプモータ出力指令信号を出力する。
【0034】
ポンプモータ駆動部9は、光結合素子92を有する。ポンプモータ出力指令部10aから出力されたポンプモータ出力指令信号(ON出力)は、光結合素子92で一旦光信号に変換された後、再び電気信号に変換され、CR回路である整流回路93にて整流される。
【0035】
なお、実際には、ポンプモータ出力指令部10aから出力されたポンプモータ出力指令信号は、後述するLED駆動回路に入力されてトランジスタのスイッチング信号として用いられ、また該LED駆動回路からの出力も光結合素子92のスイッチング信号として用いられ、ポンプモータ出力指令部10aからそのままポンプモータ出力指令信号が整流回路93に入力されるわけではないが、本実施形態ではポンプモータ出力指令部10aから出力されたポンプモータ出力指令信号も整流回路93に入力される信号もまとめてポンプモータ出力指令信号と称する。このことは、後述するポンプモータ出力制御信号、ポンプモータ駆動出力、ポンプモータ回転数信号についても同様とする。
【0036】
電源Vccは、スイッチング素子99を介してVaに接続される。このスイッチング素子99は、ポンプモータ出力制御部10bから出力されるポンプモータ出力制御信号に応じてON/OFF切り換えされる。
ポンプモータ出力制御部10bから出力されたポンプモータ出力制御信号(ON出力)によってスイッチング素子99がオンになると、電源VccからVaへ電力が供給される。このVaは、光結合素子92およびポンプモータ4mに接続されており、スイッチング素子99がオンになると電源Vccからポンプモータ4mへ電力が供給されることになる。
【0037】
45は交流電源(商用電源)であり、46は交流電源45からの交流電圧を直流電圧に変換する整流平滑回路である。電力制御回路42は、可変周波数及び可変電圧の交流電圧をポンプモータ4mに供給する。
【0038】
また、ポンプモータ4m内には、ポンプモータ4mの回転数を検出するための回転数検出回路43が設けられている。回転数検出回路43からのポンプモータ回転数出力は、ポンプモータ駆動部9に設けられた回転検出光結合素子97を介してポンプモータ回転数信号としてマイクロコンピュータ10m内のポンプモータ回転数判別部10cに入力される。ポンプモータ出力指令部10aは、ポンプモータ回転数判別部10cにて得られた回転数が目標回転数に一致する又は近づくように、ポンプモータ出力指令信号をコントロールする。
【0039】
図3において、91はマイクロコンピュータ10mからのポンプモータ出力指令信号のON出力に応じて光結合素子92の発光ダイオードを点灯駆動するLED駆動回路である。
【0040】
また、94はマイクロコンピュータ10mからのポンプモータ出力制御信号のON出力に応じてスイッチング光結合素子95の発光ダイオードを点灯駆動するスイッチングLED駆動回路である。
【0041】
計時部10dは、タンク3内の水位が上昇しているときの水位上昇時間を計測することができるものであり、この計時部10dが計測した水位上昇時間に基づいて、詳細は後述する、個々の施工場所に設置される便器5の圧力損失を検知する制御(以下、「便器圧力損失学習制御」)を行なうことができるようになっている。
【0042】
<便器圧力損失学習制御>
次に、図4~6を参照して、本発明の実施形態に係る便器洗浄装置の学習制御について説明する。図4は、本発明の一実施形態に係る便器洗浄装置の便器圧力損失学習制御を示すフローチャートである。図5は、本発明の一実施形態に係る便器洗浄装置の便器圧力損失学習制御を示すタイムチャートである。図6は、本発明の一実施形態に係る便器洗浄装置のポンプを所定時間駆動して洗浄水をタンクから便器へ供給した後、ポンプの駆動を停止した状態のタンク内の死水水位から止水水位に上昇するまでの水位上昇時間T0を給水流量Q1から算出するための特性図である。
【0043】
まず、図4のステップS0で、便器5が所定の設置場所に設置されて施工が完了する。次に、図4のステップS1において、操作パネル15に設けられた便器洗浄を開始するスイッチが押されることで洗浄トリガがオンとなる。これにより、図4のステップS3において、洗浄テストが開始される。本実施形態の便器洗浄装置Sでは、この洗浄テストにおいて計測したタンク3内の水位上昇時間に基づいて便器5の圧力損失を算出する。
【0044】
ここで図5を参照して、洗浄テストにおける動作について説明する。図5の時刻t1では、洗浄トリガがオンとなることで、給水電磁弁1が開位置に切り替えられるとともに、流路切替弁2がタンク側位置に切り替えられて、タンク3への給水が開始される。
【0045】
時刻t1の後にタンク3内の水位が上昇し、まず水位がWL2に到達すると下方フロートスイッチ7がオンとなる。そして、図5の時刻t2では、タンク3内の水位が止水水位WL1に到達し、上方フロートスイッチ6がオンとなる。ここから、便器5へ洗浄水が供給される便器5洗浄テストが開始され、以後、図5の時刻t2から時刻t3まで、便器5の洗浄テストが行なわれる。
【0046】
図5の時刻t3からタンク給水が開始される。時刻t3の時点では、タンク3内の水位は死水水位DWL1となっており、上方フロートスイッチ6および下方フロートスイッチ7はオフとなっている。そして、以後、タンク給水が継続される時刻t5までは、タンク3内の水位は上昇する。
【0047】
図5の時刻t3においてタンク給水が開始された後、時刻t4では、タンク3内の水位が水位WL2に到達して下方フロートスイッチ7がオンとなる。その後、さらにタンク3内の水位が上昇し、図5の時刻t5では、タンク3内の水位が止水水位WL1に到達して上方フロートスイッチ6がオンとなる。これにより、タンク3内が満水状態となり、タンク給水が終了する。
【0048】
図5の時刻t3から時刻t5までの間のタンク給水において、図5の時刻t3から時刻t5までの間は、制御部10の計時部10dが、タンク3内の水位が死水水位DWLから止水水位WL1まで上昇する時間T1(=t5-t3)(以下、「水位上昇時間T1」)を計測し、図5の時刻t4から時刻t5までの間では、制御部10の計時部10dが、タンク3内の水位が所定水位WL2から止水水位WL1まで上昇する時間T2(=t4-t3)(以下、「水位上昇時間T2」)を計測する。
【0049】
ここで図4に戻る。図4のステップS3においては、ステップS2において行なった洗浄テストで計測した、水位上昇時間T1,T2に基づいて便器5の圧力損失を算出して学習する。
【0050】
図4のステップS3において実行される、便器圧力損失算出の方法について説明する。タンク給水時における上方フロートスイッチ6と下方フロートスイッチ7の位置はそれぞれ固定されているため、水位上昇時間T2の間に上昇した水位に相当するタンク3内の容量に等しい給水量V1[l]が定まる。
そして、制御部10は、この水位上昇時間T2と給水量V1により、タンク3内に給水する給水流量Q1[l/min](=V1/T2)を算出する。
【0051】
図6は、ポンプ4を所定時間駆動して洗浄水をタンク3から便器5へ供給した後、ポンプ4の駆動を停止した状態のタンク3内の死水水位DWL1から止水水位WL1に上昇するまでの水位上昇時間T0を給水流量Q1から算出するための特性図である。
【0052】
まず、制御部10は、図6に示す予め実験的に定められた特性図に、算出した給水流量Q1を当てはめる。これにより、基準便器において、ポンプ4を所定時間駆動して洗浄水をタンク3から便器5へ供給した後、ポンプ4の駆動を停止した状態のタンク3内の死水水位DWL1から止水水位WL1に上昇するまでの水位上昇時間T0が算出される。
【0053】
次に、制御部10は、計時部10dによって計測した水位上昇時間T1と図6により算出された基準便器の水位上昇時間T0との比(T1/T0)について、便器圧力損失係数Kとして算出する。
便器圧力損失係数Kが1よりも大きい場合には、水位上昇時間T1が基準便器の水位上昇時間T0よりも上回るため、便器5の方が基準便器よりも死水水位DWL1が低く、貯水タンク4から便器本体2に排水された洗浄水量が多くなり、その分、便器5の圧力損失が基準便器の圧力損失よりも小さいことが確認できる。
一方、便器圧力損失係数Kが1となる場合には、便器5と基準便器の圧力損失が互いに等しいことが確認でき、便器圧力損失係数Kが1よりも小さい場合には、便器5の圧力損失が基準便器の圧力損失よりも大きいことが確認できる。
【0054】
図4のステップS4では、こうして図4のステップS3で算出した便器5の圧力損失に基づいて前リム洗浄が行われる時間を学習し、設定を行なう。
【0055】
<便器洗浄制御>
次に、図7,8を参照して、本発明の実施形態に係る便器洗浄装置の便器洗浄制御について説明する。図7は、本発明の一実施形態に係る便器洗浄装置の便器洗浄制御を示すフローチャートである。図8は、本発明の一実施形態に係る便器洗浄装置の便器洗浄制御を示すタイムチャートである。
【0056】
図7のステップS100において、操作パネル15に設けられた便器洗浄を開始させるスイッチが押される。これにより、図7のステップS101へと進み、便器5のボウル部5bを洗浄するためのリム吐水口5aからの洗浄水の吐水が開始される(以下、「前リム洗浄」)。
図8でいうと、時刻t11において、給水電磁弁1が開位置に切り替わり、前リム洗浄が開始される。
【0057】
次に、前リム洗浄が開始された後に、ステップS102において、便器圧力損失学習制御によって学習した前リム洗浄の時間をもとに、前リム洗浄の次に行われるジェット吐水が開始されるまで2秒未満か否かを制御部10が判断する。ジェット吐水が開始されるまで2秒未満でない場合は、前リム洗浄を継続しながらこのステップS102の判断を繰り返す。そして、ジェット吐水が開始されるまで2秒未満となったときに、ステップS103へと進み、ポンプモータ4mへの電力の供給を開始し、そののちにステップS104においてジェット吐水を開始する。
図8でいうと、ジェット吐水が開始されるまで2秒前である時刻t12において、ポンプモータ出力制御部10bからポンプモータ出力制御信号(ON出力)を出力し、ポンプモータ4mへの電力供給を開始する。そして、時刻t13において、ポンプモータ出力指令部10aからポンプモータ出力指令信号(ON出力)を出力し、ポンプモータ4mの駆動を開始させて、タンク3から便器5のジェット吐水口5cへ洗浄水を供給するジェット吐水を開始させる。
【0058】
その後、ステップS105において、便器5内の封水を形成するためのリム吐水口5aからの洗浄水の吐水が行われ(以下、「後リム洗浄」)、ステップS106において、後リム洗浄を終了してタンク3への給水が行われる。そして、タンク3内のタンク水Wが満水となったとき、ステップS107において、便器洗浄制御を終了する。
図8でいうと、時刻t14において、ポンプモータ出力制御信号およびポンプモータ出力指令信号をオフに切り替え、流路切替弁2をリム側位置に切り替えて後リム洗浄を開始する。その後、時刻t15において、流路切替弁2をタンク側位置に切り替えてタンク給水を開始し、タンク3内のタンク水Wが満水となった時刻t16において、給水電磁弁1を閉位置に切り替え、便器洗浄制御を終了する。
【0059】
<作用効果>
次に、本実施形態における便器洗浄装置の作用効果を説明する。
【0060】
本実施形態における便器洗浄装置Sは、リム吐水口5a及びジェット吐水口5cを有する便器5に対して洗浄水を供給して便器5の洗浄を行なう便器洗浄装置Sであって、ジェット吐水口5cへ供給する洗浄水を貯めるタンク3と、タンク3内に貯めた洗浄水をジェット吐水口5cへ圧送するポンプ4と、ポンプ4のポンプモータ4mを駆動するポンプ駆動部9と、ポンプ駆動部9に対して指令信号を出力することでポンプモータ4mの駆動を制御する制御部10と、を備えており、便器5の洗浄時においては、まずリム吐水口5aから洗浄水を吐水させる前リム洗浄を行なった後に、ジェット吐水口5cから洗浄水を吐水させるジェット吐水を行うものであり、制御部10は、リム洗浄が行なわれる時間に基づいてモータへの電力の供給を開始する。
これにより、前リム洗浄が行なわれる時間に基づいてポンプモータ4mへの電力の供給を開始するため、前リム洗浄の開始と同時にポンプ4への電力供給を開始する場合に比べて、ポンプ4への電力供給時間を短くすることができる。したがって、ポンプへの電力供給時間が長くなってしまい、ポンプの部品が高温化してしまうことによる周りの部品への影響を抑制することができる。
【0061】
また、ポンプ駆動部9は、ポンプモータ4mへの電力の供給を切り替えるスイッチング素子99を有し、制御部10は、前リム洗浄が行なわれる時間に基づいてスイッチング素子99を切り替えて、ポンプモータ4mへの電力の供給を開始する。
これにより、スイッチング素子99の切り替えによりポンプ4への電力供給を制御することができる。
【0062】
また、制御部10は、タンク3給水時におけるタンク3内の水位上昇時間T1,T2に基づいて便器5の圧力損失を算出して前リム洗浄が行なわれる時間を学習する便器圧力損失学習制御を行い、さらに制御部10は、便器圧力損失学習制御によって学習した前リム洗浄が行なわれる時間に基づいてポンプモータ4mへの電力の供給を開始する。
これにより、それぞれの便器5の圧力損失に応じた前リム洗浄が行なわれる時間を高い精度で学習することができる。
【0063】
なお、上記実施形態においては、便器圧力損失学習制御によって学習した前リム洗浄が行なわれる時間に基づいてポンプモータ4mへの電力の供給を開始したが、本発明はこれに限らず、例えば予め設定された前リム洗浄の時間に基づいてポンプモータ4mへの電力の供給を開始するようにしてもよい。
【0064】
前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0065】
1 給水電磁弁
2 流路切替弁
3 タンク
3a 給水口
4 ポンプ
4a 吸込みポート
4b 吐出ポート
4m ポンプモータ(モータ)
5 便器
5a リム吐水口
5b ボウル部
5c ジェット吐水口
5d トラップ排水部
6 上方フロートスイッチ
9 ポンプ駆動部(駆動部)
10 制御部
10a ポンプモータ出力指令部
10b ポンプモータ出力制御部
10c ポンプモータ回転数判別部
10d 計時部
10m マイクロコンピュータ
15 操作パネル
43 回転数検出回路
45 交流電源
46 整流平滑回路
91 LED駆動回路
92 光結合素子
93 整流回路
94 スイッチングLED駆動回路
95 スイッチング光結合素子
97 回転数検出光結合素子
99 スイッチング素子(スイッチ手段)
S 便器洗浄装置
Vcc 電源
L 給水路
L1 第1の導水路
L2 第2の導水路
W タンク水
WL1 止水水位
WL2 水位
DWL1 死水水位
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8