IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ TOTO株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-洗浄水タンク装置 図1
  • 特許-洗浄水タンク装置 図2
  • 特許-洗浄水タンク装置 図3
  • 特許-洗浄水タンク装置 図4
  • 特許-洗浄水タンク装置 図5
  • 特許-洗浄水タンク装置 図6
  • 特許-洗浄水タンク装置 図7
  • 特許-洗浄水タンク装置 図8
  • 特許-洗浄水タンク装置 図9
  • 特許-洗浄水タンク装置 図10
  • 特許-洗浄水タンク装置 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-09
(45)【発行日】2022-03-17
(54)【発明の名称】洗浄水タンク装置
(51)【国際特許分類】
   E03D 1/32 20060101AFI20220310BHJP
   E03D 1/33 20060101ALI20220310BHJP
【FI】
E03D1/32
E03D1/33
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017187143
(22)【出願日】2017-09-27
(65)【公開番号】P2019060181
(43)【公開日】2019-04-18
【審査請求日】2020-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(72)【発明者】
【氏名】酒井 洋和
(72)【発明者】
【氏名】京田 寿和
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 団
(72)【発明者】
【氏名】東江 伸治
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-070415(JP,A)
【文献】特開2010-071055(JP,A)
【文献】特開平09-329271(JP,A)
【文献】特開2005-171668(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0265205(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00- 7/00
E03D 11/00-13/00
F16K 33/00
F16K 31/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水を貯水できる洗浄水タンク装置であって、
便器に供給する洗浄水を貯水する洗浄水タンクと、
給水源からの洗浄水を前記洗浄水タンク内の給水口へと給水する給水流路と、
前記給水流路に設けられた弁座と、前記洗浄水タンク内の洗浄水の水位の変動に応じて上下動するフロートと、一方が前記フロートに接続され、他方が前記弁座に接続され、前記フロートが上下動することにより揺動して前記給水流路を開閉動作させる揺動部材とを有するボールタップ式開閉弁装置と、を備え、
前記揺動部材の前記他方には、前記弁座と接続される弁座取付部と、前記弁座と揺動可能に固定される2つの腕部が前記弁座取付部を挟んで設けられ、
前記弁座は、前記腕部に設けられた固定部と嵌合する2つの弁座側固定孔と、前記固定部を前記弁座側固定孔に誘導することで、前記揺動部材が揺動することを規制するガイド 部を有することを特徴とする洗浄水タンク装置。
【請求項3】
前記ガイド部は前記弁座側固定孔と連通する溝であって、前記溝は幅方向がV字状に形成されたV字溝であることを特徴とする請求項1又は2に記載の洗浄水タンク装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器を洗浄する洗浄水を貯水する洗浄水タンク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、便器洗浄のための洗浄タンクには、洗浄タンク内の洗浄水が排水弁の開弁によって放出されることで自動的に洗浄タンク内に給水を行い、洗浄タンク内を満水化するボールタップ式開閉弁装置が備えられている。このボールタップ式開閉弁装置は、洗浄タンク内の水位に連動して昇降するフロートと、給水弁及びその給水弁の下流側の洗浄水タンク内給水流路と、フロートと給水弁とを連繋し、フロートの昇降に連動して給水弁を開閉させる揺動部材と、を有している。
【0003】
そして、洗浄タンク内の洗浄水の放出に伴う洗浄タンク内水位の下降(即ちこれに連動したフロートの下降)により給水弁を開いて洗浄タンク内給水流路を通じ洗浄タンク内に給水を行い、また洗浄タンク内水位の上昇により(即ちこれに連動したフロートの上昇により)給水弁を閉じ、洗浄タンク内への給水を停止する。
【0004】
先行文献1に記載の水洗大便器によれば、給水弁の開閉を行う弁体取付部と、給水弁弁座と固定されるための固定部を備えた2つの腕部とが先端に設けられた揺動部材を備えたボールタップ式開閉弁が開示されている。これによれば、固定部は揺動可能(回転可能)に給水弁に取り付けられており、固定部を支点として揺動することで給水弁の開閉を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-70415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、先行文献1に記載の揺動部材によれば、弁体取付部を挟んで左右に設けられた2つの腕部はある程度の変形が可能であり、給水弁の組み付けの際にはこれらを変形させることで、給水弁弁座の固定孔と揺動部材の固定部を嵌合させて組み付け性を向上させている。
【0007】
しかし、このようなボールタップ式開閉弁装置においては、一方の腕部に形成された固定部が給水弁弁座の固定孔に固定され他方の腕部の固定部が給水弁弁座に固定されていない状態であっても、2つの突出部の支点がある程度同軸上であれば、正常に揺動して給水動作が行われてしまう。これにより、施工者が正常に施工されたと誤認してしまい、このように取り付けられたボールタップ式開閉弁装置においては、振動等による想定外の外力が加わってしまうと揺動部材が脱落してしまい、止水不良となるおそれがある。
【0008】
そこで、本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、施工性が良好で且つ、部品の脱落による止水不良を抑制することができるボールタップ式開閉弁装置を備えた洗浄水タンク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、洗浄水を貯水できる洗浄水タンク装置であって、便器に供給する洗浄水を貯水する洗浄水タンクと、給水源からの洗浄水を洗浄水タンク内の給水口へと給水する給水流路と、給水流路に設けられた弁座と、洗浄水タンク内の洗浄水の水位の変動に応じて上下動するフロートと、一方がフロートに接続され、他方が弁座に接続され、フロートが上下動することにより揺動して給水流路を開閉動作させる揺動部材とを有するボールタップ式開閉弁装置と、を備え、揺動部材の他方には、弁座と接続される弁座取付部と、弁座と揺動可能に固定される2つの腕部が弁座取付部を挟んで設けられ、弁座は、腕部に設けられた固定部と嵌合する2つの弁座側固定孔と、固定部を弁座側固定孔に誘導することで、前記揺動部材が揺動することを規制するガイド部を有する。
【0010】
このように構成された本発明においては、腕部を弁座側固定孔に誘導するためのガイド部が設けられているため、腕部に設けられた固定部と弁座側固定孔とが正常に嵌合するよう誘導することができ施工性が良い。また、ガイド部には、揺動規制部が設けられているため、弁座側固定孔に正常に固定されずガイド部に固定部が位置する場合には、揺動部材が揺動することを規制する。これにより、施工者が正常に施工されたと誤認してしまうことを抑制することができる。したがって、正常にボールタップ式開閉弁装置を施工することができるため、揺動部材の脱落による止水不良を抑制することができる。
【0011】
ここで、本明細書における「揺動する」とは、ある部材が揺れ動く様を指しており、支点に対して回転するように動くものもこれに含むものとする。また、本明細書における「嵌合する」とは一方の部材と他方の部材とが嵌まり合うことを意味しており、接着固定されているものはこれに含まない。
【0012】
本発明において好ましくは、ガイド部は弁座側固定孔と連通する溝形状をしており、前 記ガイド部は前記弁座側固定孔の軸心とは異なる軸心を経由して連通する。
【0013】
このように構成された本発明においては、2つの弁座側固定孔の軸心とは異なる軸心部分を経由するようガイド部が設けられているため、片方のみの固定部と弁座側固定孔とが嵌合した場合には、軸心がずれた状態となるため揺動部材が正常に揺動せず異常な軌跡となる。これにより、施工者が正常に施工されたと誤認してしまうことを抑制することができる。したがって、施工者が正常にボールタップ式開閉弁装置を施工することができるため、揺動部材の脱落による止水不良を抑制することができる。
【0014】
本発明において好ましくは、ガイド部は弁座側固定孔と連通する溝であって、溝は幅方向がV字状に形成されたV字溝である。
【0015】
このように構成された本発明においては、ガイド部の溝がV字に形成されているため、弁座側固定孔に達する前の溝に固定部があるときに、2つの傾斜面と固定部材とが当接することとなり、揺動部材が正常に揺動することを規制する。これにより、施工者が正常に施工されたと誤認してしまうことを抑制することができる。したがって、施工者が正常にボールタップ式開閉弁装置を施工することができるため、揺動部材の脱落による止水不良を抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、施工性が良好で且つ、部品の脱落による止水不良を抑制することができるボールタップ式開閉弁装置を備えた洗浄水タンク装置を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置が適用された水洗大便器の断面図である。
図2】本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置を便器後方左側斜め上方から見た斜視図である。
図3】本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置を左側から見た側面図である。
図4】本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置において洗浄水の水位が満水水位にある状態を示す平面図である。
図5図4のV-V線に沿って見た断面図である。
図6】本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置の給水装置を拡大した拡大図である。
図7】本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置の給水装置を拡大した平面拡大図である。
図8図7のVIII-VIII線に沿って見た断面図である。
図9】本発明の一実施形態における揺動部材と弁座との固定方法を示す斜視図である。
図10】本発明の一実施形態における弁座の拡大斜視図である。
図11】本発明の一実施形態における揺動部材と弁座とが誤施工された状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、本明細書に開示する発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。以下の説明から、当業者にとって、本発明の多くの改良や他の実施の形態が明らかである。従って、以下の説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更することができる。
【0019】
図1に示すように、符号1は水洗大便器を示し、この水洗大便器1は、便器本体2を備え、この便器本体2には、ボウル部4と、導水路6と、ボウル部4の下部と連通する排水トラップ管路8がそれぞれ形成されている。
便器本体2のボウル部4の上縁部には、内側にオーバーハングしたリム10と、導水路6から供給される洗浄水を吐水する第1吐水口12が形成され、この第1吐水口12から吐水された洗浄水は、旋回しながら下降してボウル部を洗浄するようになっている。
【0020】
ボウル部4の下方には、一点鎖線で貯留面W0が示された溜水部14が形成されている。この溜水部14の下方には、排水トラップ管路8の入口8aが開口し、この入口8aから上昇路8bが後方に延びている。この上昇路8bには下降路8cが連続し、下降路8cの下端は排水ソケット(図示せず)を介して床下の排出管(図示せず)に接続されている。また、ボウル部4の貯留面W0の上方位置には、導水路6から供給される洗浄水を吐水する第2吐水口16が形成され、この第2吐水口16から吐水される洗浄水が溜水部14の溜水を上下方向に旋回させる旋回流を生じさせるようになっている。
【0021】
便器本体2の導水路6の上方には、便器本体2に供給する洗浄水を貯水する洗浄水タンク装置18が設けられ、この洗浄水タンク装置18に貯水された洗浄水が便器本体2に供給されるようになっている。この洗浄水タンク装置18は、通常は外装カバー19に覆われ、使用者には、外装カバー19は容易には取り外しにくく、外装カバー19を取り外さないと洗浄水タンク装置18内部が見えないようになっている。この洗浄水タンク装置18は、洗浄水タンク20を備え、この洗浄水タンク20の底部には、上下方向に延びる排水口22が形成され、この排水口22の下端は便器本体2の導水路6と連通し、洗浄水タンク20内の洗浄水が排水口22から便器本体2の導水路6に供給されるようになっている。
【0022】
つぎに、図2乃至図5により、洗浄水タンク装置18の詳細について説明する。 図2は、本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置を便器後方左側斜め上方から見た斜視図であり、図3は、本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置を左側から見た側面図であり、図4は、本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置において洗浄水の水位が満水水位にある状態を示す平面図であり、図5は、図4のV-V線に沿って見た断面図である。なお、図5においては、洗浄水タンクの満水時の満水水位をWL1で示し、洗浄水タンクのボールタップ式開閉弁装置の止水水位をWL2で示し、洗浄水タンクのオーバーフロー管に洗浄水がオーバーフローする水位をWOFで示している
【0023】
排水弁装置24は、オーバーフロー管30と、オーバーフロー管30の下端部に固着された排水弁32と、オーバーフロー管30を上下動させることにより排水弁32を開閉操作する回動装置34を備えている。
また、洗浄水タンク20の排水口22の周辺部には、排水弁32の上下動をガイドし且つ高さ位置を規制するガイド部材36が取り付けられている。
【0024】
オーバーフロー管30は、上下方向に延びる円筒状の管部材である。そして、洗浄水タンク20内の洗浄水の水位が、満水水位WL1を超えてさらに水位WOFまで上昇し、オーバーフロー管30の上端の高さ位置を上回ったときには、洗浄水がオーバーフローし、オーバーフロー管30の上端からその円筒管内を通って洗浄水タンク20の排水口22から便器本体2側に供給されるようになっている。
【0025】
さらに、回動装置34は、DCモータ等の駆動手段を設けた駆動装置である、この回動装置34から延びる回転軸38の先端には、玉鎖40が取り付けられている。この玉鎖40の下方部分は、オーバーフロー管30に取り付けられている。回動装置34が玉鎖40を上方に引き上げるように回転軸38を回転させると、オーバーフロー管30が玉鎖40と共に上昇し、回動装置34が玉鎖40を引き下げるように回転軸38を回転させると、オーバーフロー管30が玉鎖40と共に下降するようになっている。
回動装置34は、停電時に、使用者が操作レバー(図示せず)を直接回転操作して回転軸38を回転させて排水弁32の開閉ができるような手動式の操作機構を備えている。
【0026】
フロートスイッチ26は、洗浄水タンク20の内部の上方に配置され、洗浄水タンク20の頂部よりその軸心部26aが下向きになるように取付けられている。フロートスイッチ26は、所定の満水水位WL1を電気的に検知し、その検知信号をコントローラ(図示せず)に送信するようになっている。
【0027】
つぎに、図6乃至図8により、本発明の一実施形態による給水装置28の具体的な構成について説明する。
図6は本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置の給水装置を拡大した拡大図であり、図7は本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置の給水装置を拡大した平面拡大図であり、図8図7のVIII-VIII線に沿って見た断面図である。
【0028】
図6乃至図8に示すように、給水装置28には、上流側から、外部の水道等の給水源(図示せず)に接続された一次側通水路(給水流路)42と、内部の洗浄水の圧力が変動する圧力室44と、電気によって作動される洗浄水の洗浄水タンク20内への吐水と止水を切り替える電磁弁装置46、電気を使わず機械的に作動される洗浄水の洗浄水タンク20内への吐水と止水を切り替えるボールタップ式開閉弁装置48、主弁体部50と、洗浄水タンク20内部に延びる二次側通水路(給水流路)52と、圧力室44の内部圧力を二次側通水路52に開放する第1のパイロット穴部54と、第1のパイロット穴部54と二次側通水路52とを連通する二次側流路56と、圧力室44の内部圧力を洗浄水タンク20内空間に開放する第2のパイロット穴部58と、第2のパイロット穴部58と圧力室44とを連通する連通流路60と、二次側通水路52からの洗浄水を洗浄水タンク20内部に給水する(吐水する)給水口部62と、が設けられている。また、給水装置28は、フロートスイッチ26で検出された検出信号に基づいて電磁弁装置46を開閉制御する制御手段であるコントローラ(図示せず)を備えている。
図8に概略的に示すように、ボールタップ式開閉弁装置48、第2のパイロット穴部58及び給水口部62等は、洗浄水タンク20内側に配置され、さらに、図2及び図3等に示すように、電磁弁装置46及びこの電磁弁弁体64が着座する第1のパイロット穴部54等は、電子部品が洗浄水タンク20内の湿度の高い空気の影響を受けるのを防ぐように、洗浄水タンク20の外側に配置されている。
第2のパイロット穴部58は、給水装置28において自身の穴部が洗浄水タンク20の内部空間に開口するように形成されており、第2のパイロット穴部58と圧力室44との間にはこれらを連通する連通流路60が形成され、この連通流路60は、第2のパイロット穴部58より内径が大きく形成された拡径部60aを有している。この連通流路60が圧力室44から洗浄水タンク20の内部空間まで比較的長い距離にわたって形成される場合にも、拡径部60aによって連通流路60を通過する洗浄水が圧力損失を受けるのを抑制することができる。連通流路60の拡径部60aは、通過する洗浄水が圧力損失を受けて通過できなくなることを防ぐのに十分な流路内径を有するように形成されている。
【0029】
電磁弁装置46は、電磁弁弁体64と、電磁弁弁体64と接続されたプランジャ66と、非通電時には電磁弁弁体64及びプランジャ66を電磁弁装置46を閉止するように付勢しているばね68とを備えている。電磁弁装置46は、コントローラ(図示せず)の制御信号により通電されるとばね68が縮み電磁弁弁体64及びプランジャ66を電磁弁装置46を開放するように移動させるように構成されている。電磁弁装置46は、フロートスイッチ26が洗浄水タンク20の満水水位WL1を電気的に検知していない場合には、電磁弁装置46が開放状態にされ、フロートスイッチ26が洗浄水タンク20の満水水位WL1を電気的に検知している場合には、電磁弁装置46が閉止状態にされるようになっている。
電磁弁装置46の電磁弁弁体64は、第1のパイロット穴部54上に着座して、第1のパイロット穴部54を閉止できるようになっており、第1のパイロット穴部54を開閉させることにより、主弁体部50を開閉させて、二次側通水路52を開閉させることができる。
なお、ここでは、開閉弁装置に電磁弁装置46を用いた態様について説明したが、、下記に詳述するボールタップ式開閉弁装置48として構成してもよい。
【0030】
ボールタップ式開閉弁装置48は、第2のパイロット穴部58上に着座して、第2のパイロット穴部58を閉止できる弁座70と、洗浄水タンク20内の洗浄水の水位の変動に応じて上下動するフロート72と、一方がフロート72に接続され、且つ他方が弁体70に接続され、フロート72が上下動することにより揺動して弁座70を機械的に開閉動作させる揺動部材74と、を備えている。
ボールタップ式開閉弁装置48の弁座70は、第2のパイロット穴部58を開閉させることにより、後述するように主弁体部50を開閉させて、二次側通水路52を開閉させることができる。
揺動部材74は、フロート72をその高さ調節を可能にしながら支持するフロート支持腕部76と、フロート支持腕部76の基部を形成しフロート支持腕部76の上方上下運動に連動して弁座70を開閉できるように取付ける弁座取付部78とを備えている。具体的には、フロート支持腕部76が上方移動するとき、弁座取付部78が下方移動して弁座7 を第2のパイロット穴部58に押し付けて閉止させ、フロート支持腕部76が下方移動するとき、弁座取付部78が上方移動して弁座70を第2のパイロット穴部58から離間させて開放させるようになっている。
【0031】
主弁体部50は、いわゆるダイヤフラム弁を形成し、二次側通水路(給水流路)52の入口端に設けられた弁体80と、この弁体80に着座して二次側通水路52を閉止する止水状態(閉弁状態)と弁体80から離間して二次側通水路52を開放する給水状態(開弁状態)とを切り替える主弁体82とを備え、さらに、主弁体部50の一部には一次側通水路42と圧力室44とを連通するブリード穴84が形成されている。さらに、主弁体部50は、その中心軸に沿って圧力室44側に、第1のパイロット穴部54を形成しており、第1のパイロット穴部54から二次側通水路52まで連通する二次側流路56を内部に形成している。主弁体82は、圧力室44の内部圧力及び一次側通水路42の水圧力との圧力差により二次側通水路52の入口端の弁体80に向かって当接する方向又は弁体80から離間する方向に移動するように設置されている。主弁体部50に形成されたブリード穴84により、主弁体82が閉弁した状態において、一次側通水路42と圧力室44とが連通して、圧力室44に一次側通水路42からの水圧が作用するようになっている
【0032】
図5に示すように、ボールタップ式開閉弁装置48のフロート72は、フロートスイッチ26よりも低い位置に配置され、洗浄水タンク20が満水水位WL1となる場合には、フロート72の下面がその満水水位WL1に対して水中に入っている状態となり、フロート72の下部が水面の揺らぎによって微動を繰り返すことが無い程度に十分に満水水位WL1に対して水没した状態となっている。別の表現では、フロート72は、満水水位のとき、その下面が、水面の揺らぎに連動しないように、満水水位より低い位置で上昇が停止されるように配置されている。
【0033】
次に、図7図9により、本発明の一実施形態による揺動部材74の具体的な構成に関して説明する。図9弁座70と揺動部材74との固定方法を示す斜視図である。
【0034】
図7に示すように、揺動部材74は、一方側にフロート72をその高さ調節を可能にしながら支持するフロート支持腕部76と、他方側にフロート支持部腕76の上下運動に動して弁座70を開閉できるように取付ける弁座取付部78とを備えている。
【0035】
また、図9に示すように、他方側には弁座取付部78が中央に位置するように2つの腕部90が設けられている。この腕部90は弁座取付部78に対して左右方向から分岐して延在するように構成されており、弁座取付部78の方向に変形可能に設けられている。揺動部材を取り付ける際には、この腕部90を変形させて固定することができる。さらに、それぞれの腕部90の先端には弁座70と篏合する固定部92が左右対称となるように設けられている。
【0036】
ここで、弁座70突起部98を取り囲むように立壁が設けられており、この立壁には固定部92と篏合するための弁座側固定孔94がそれぞれ設けられている。上述した固定部92は円柱状に左右方向に突出するように設けられており、弁座側固定孔94に挿入される形で篏合している。
【0037】
このように、弁座側固定孔94には固定部92が挿入され篏合固定されているため、揺動部材74は固定部92を支点として揺動し、弁座70への着座(閉弁状態)と離間(開弁状態)を切り替えることで止水状態と給水状態とを切り替える。すなわち、立壁に設けられたそれぞれの弁座側固定孔94を繋ぐ直線を軸心として揺動部材74は揺動することとなる。
【0038】
図10は本発明の一実施形態における弁座70の斜視図を示す。図10に示すように、弁座側固定孔94が設けられた立壁には、弁座側固定孔94と連通する溝96(ガイド部)が設けられている。揺動部材74を弁座70へ取り付ける際には、固定部92を溝96に沿わせてy方向に移動させ、弁座側固定孔94と固定部92とを篏合させる。
【0039】
このように構成された本発明の一実施形態においては、溝96(ガイド部)が固定部92を弁座側固定孔94へと誘導するため、腕部90に設けられた固定部92と弁座側固定孔94とを嵌合させることができる。
【0040】
また、図11は揺動部材74が弁座70に誤施工された状態を示す。一方の固定部92は弁座側固定孔94に挿入されており、他方の固定部92は溝96上に位置している。この時、弁座取付部78は正常な取付状態に比べて所定角度傾いた状態となっている。さらに、図10及び図11に示すように、溝96は弁座側固定孔94とはz方向にずれた位置に形成されており、溝96はy方向に延びた後に弁座側固定孔94と連通している。
【0041】
ここで、図11には、弁座側固定孔94にそれぞれ固定部92が挿入され正常に揺動する場合の軸心Aと、溝96上における軸心Bとを示しており、軸心Bは軸心Aとはz方向にずれた位置である。このように、溝96は正常に施工された場合の軸心Aとずれた位置を経由して弁座側固定孔94に連通しているため、図11に示すように一方の固定部92が弁座固定孔94に挿入され、他方の固定部92が正常に挿入されていない場合には、軸心Aと軸心Bがずれているため、揺動部材74が異常な軌跡を示す。すなわち、溝96が揺動部材74の正常な揺動動作を規制する。
【0042】
さらに、図10及び図11に示すように溝96が2つの傾斜面からなるV字状の溝形状となるよう構成されている。このように溝96を形成することで、溝96に沿わせて固定部92を移動させる際(弁座固定孔94に達する前の溝96に固定部92があるとき)に、2つの傾斜面と固定部材92が当接することとなり、固定部92を支点とした揺動動作が正常に行われない。すなわち、溝部96がV字状に形成されているため、揺動部材74の正常な揺動動作を規制する。
【0043】
なお、本明細書では、溝96が直線状に弁座側固定孔94に連通する形態を示したが、これに限るものではなく、例えば曲線状に溝96を弁座固定孔94に連通させることも好ましい。
【0044】
上述のように、本発明の一実施形態によれば、溝部96(ガイド部)は、固定部92が弁座固定孔94に挿入され嵌合した正常な施工状態となるように誘導するものであり、さらに、溝部96上に固定部92がある場合には、揺動部材74が正常に揺動動作を行うことを規制するため、施工者が正常に施工されたと誤認してしまうことを抑制することができる。したがって、施工者が正常にボールタップ式開閉弁装置48を施工することができるため、揺動部材74の脱落による止水不良を抑制することができる。
【0045】
以上、本発明の一実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 水洗大便器
2 便器本体
4 ボウル部
6 導水路
8 排水トラップ管路
10 リム
18 洗浄水タンク装置
20 洗浄水タンク
24 排水弁装置
26 フロートスイッチ
28 給水装置
30 オーバーフロー管
42 一次側通水路
44 圧力室
46 電磁弁装置
48 ボールタップ式開閉弁装置
50 主弁体部
52 二次側通水路
54 第1のパイロット穴部
56 二次側流路
58 第2のパイロット穴部
60a 拡径部
60 連通流路
62 給水口部
64 電磁弁弁体
70 弁座
72 フロート
74 揺動部材
78 弁体取付部
80 弁体
82 主弁体
90 腕部
92 固定部
94 弁座側固定孔
96 溝(ガイド部)
98 突起部
WL1 満水水位
WL2 ボールタップ式弁体止水水位
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11