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特許7037731フォノンバンド端発光に基づく全固体大出力スラブレーザ
<図1>
  • 特許-フォノンバンド端発光に基づく全固体大出力スラブレーザ 図1
  • 特許-フォノンバンド端発光に基づく全固体大出力スラブレーザ 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-09
(45)【発行日】2022-03-17
(54)【発明の名称】フォノンバンド端発光に基づく全固体大出力スラブレーザ
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/16 20060101AFI20220310BHJP
   H01S 3/0941 20060101ALI20220310BHJP
   H01S 3/109 20060101ALI20220310BHJP
   G02F 1/37 20060101ALI20220310BHJP
【FI】
H01S3/16
H01S3/0941
H01S3/109
G02F1/37
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019558672
(86)(22)【出願日】2019-03-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-09-24
(86)【国際出願番号】 CN2019076480
(87)【国際公開番号】W WO2020001050
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2019-10-28
(31)【優先権主張番号】201811508679.X
(32)【優先日】2018-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】594196624
【氏名又は名称】山東大学
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】于 浩海
(72)【発明者】
【氏名】張 懐金
(72)【発明者】
【氏名】杜 金恒
(72)【発明者】
【氏名】王 継揚
【審査官】淺見 一喜
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105071217(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104184041(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102044834(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104485571(CN,A)
【文献】特表2001-501776(JP,A)
【文献】特開2007-266120(JP,A)
【文献】特開2004-296671(JP,A)
【文献】特表2004-507891(JP,A)
【文献】Qiannan Fang, Dazhi Lu, Haohai Yu, Huaijin Zhang and Jiyang Wang,Self-frequency-doubled vibronic yellow Yb:YCOB laser at the wavelength of 570 nm,Optics Letters,米国,Optical Society of America,2016年02月26日,Vol.41, No.5,pp.1002-1005
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00-3/30
G02F 1/37
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ源、集束システム、共振空洞、及び共振空洞に位置する自己周波数逓倍結晶を備え、前記ポンプ源、集束システム、共振空洞は、光路に沿って順次に配列され、前記共振空洞は、前記集束システムの出力側に位置し、前記自己周波数逓倍結晶は、イッテルビウムイオンドープ希土類金属・カルシウム・オキシボレート結晶であり、
共振空洞は、1020-1080nm波帯のレーザ発振を抑制し、1120-1200nm波帯のレーザ発振を実現するように、それぞれ誘電体膜がコーティングされる入力空洞ミラーと出力空洞ミラーとからなるフォノンバンド端発光に基づく全固体大出力スラブレーザにおいて、
前記自己周波数逓倍結晶は、光透過面の幅が厚みより大きく、位相整合方向に沿ってスラブ状に切断され、前記位相整合方向が、結晶屈折率が最大の主軸方向(Z軸)に対して(120°±10°)となる範囲であって結晶屈折率が最小の主軸方向(X軸)に対して-(40°±10°)となる範囲であって、前記自己周波数逓倍結晶の2つの大きな面はヒートシンクで冷却し、
前記ポンプ源は、880nm-980nmのレーザダイオードアレイであり、前記ポンプ源から発光したポンプ光が前記集束システムによって矩形スポットとなって前記共振空洞に位置する自己周波数逓倍結晶の光透過面に集束し、光透過方向がスラブ状結晶の長手方向であり、
560-600nmの黄色光レーザの出力を得る
ことを特徴とするフォノンバンド端発光に基づく全固体大出力スラブレーザ。
【請求項2】
前記集束システムは、
a.1つの平凸シリンドリカルレンズまたは複数の平凸シリンドリカルレンズの組み合わせ、
b.1つの平凸レンズまたは複数の平凸レンズの組み合わせ、
c.1つの両凸レンズまたは複数の両凸レンズの組み合わせ、
d.平凸レンズと平凸シリンドリカルレンズ、平凹シリンドリカルレンズとの組み合わせ、
e.両凸レンズと平凸シリンドリカルレンズ、平凹シリンドリカルレンズとの組み合わせのうちの1つであることを特徴とする請求項1に記載のフォノンバンド端発光に基づく全固体大出力スラブレーザ。
【請求項3】
集束システムの焦点距離は、1cm-30cmであり、前記集束システムは、ポンプ源から出射されたポンプ光を矩形スポットとなるように集束することを特徴とする請求項1に記載のフォノンバンド端発光に基づく全固体大出力スラブレーザ。
【請求項4】
前記自己周波数逓倍結晶は、光透過面が矩形であり、光透過方向が結晶の長手方向であり、長さが0.5mm-50mmであり、結晶の厚みが0.4mm-2mmである特徴とする請求項1に記載のフォノンバンド端発光に基づく全固体大出力スラブレーザ。
【請求項5】
前記入力空洞ミラーは、入力レンズに誘電体膜Aをコーティングして形成され、又は前記自己周波数逓倍結晶の光入射端面に誘電体膜Aをコーティングして形成され、前記誘電体膜Aは、ポンプ光880nm-980nmに対して高透過性でありかつ1020-1080nmに対して高透過性である誘電体膜を有し、又は880nm-1100nmに対して高透過性である誘電体膜を少なくとも有することを特徴とする請求項1に記載のフォノンバンド端発光に基づく全固体大出力スラブレーザ。
【請求項6】
前記出力空洞ミラーは、出力レンズに誘電体膜Bをコーティングして形成され、又は前記自己周波数逓倍結晶の光出射端面に誘電体膜Bをコーティングして形成され前記誘電体膜Bは、ポンプ光880nm-980nmに対して高反射性であって1020-1080nmに対して高透過性である誘電体膜を有し、又は、ポンプ光880nm-980nmに対して高反射性であって980-1100nmに対して透過性である誘電体膜を少なくとも有することを特徴とする請求項1に記載のフォノンバンド端発光に基づく全固体大出力スラブレーザ。
【請求項7】
前記入力空洞ミラーには、1100nm-1200nmと560nm-600nm波帯に対して高反射性である誘電体膜がさらにコーティングされており、出力空洞ミラーには、1100nm-1200nmに対して高反射性であって560nm-600nmに対して高透過性である誘電体膜がコーティングされていることを特徴とする請求項6に記載のフォノンバンド端発光に基づく全固体大出力スラブレーザ。
【請求項8】
光路方向に沿って順次に配列されるポンプ源、集束システム、入力空洞ミラー、自己周波数逓倍結晶、及び出力空洞ミラーを備え、前記ポンプ源は、波長880nm-980nmのレーザダイオードアレイであり、前記自己周波数逓倍結晶は、イッテルビウムイオンドープカルシウム・オキシボレートでありかつ結晶の実効的非線形係数が最大の方向に沿ってスラブ状に切断され、前記自己周波数逓倍結晶は、集束システムの焦点に位置し、前記入力空洞ミラーと出力空洞ミラーは、レーザ共振空洞を構成し、入力空洞ミラーは、入力レンズに880-1100nmに対して高透過性であって1100-1200nmと560-600nmに対して高反射性である誘電体膜Aがコーティングされ、出力空洞ミラーは、出力レンズに880-980nmと1100-1200nmに対して高反射性であって980-1100nmと560-600nmに対して高透過性である誘電体膜Bがコーティングされていることを特徴とする請求項1に記載のフォノンバンド端発光に基づく全固体大出力スラブレーザ。
【請求項9】
光路方向に沿って順次に配列されるポンプ源、集束システム、入力空洞ミラー、自己周波数逓倍結晶、及び出力空洞ミラーを備え、前記ポンプ源は、波長880nm-980nmのレーザダイオードアレイであり、前記自己周波数逓倍結晶は、イッテルビウムイオンドープ希土類金属・カルシウム・オキシボレート結晶でありかつ結晶の実効的非線形係数が最大の方向に沿ってスラブ状に切断され、前記自己周波数逓倍結晶は、集束システムの焦点に位置し、入力空洞ミラーは、自己周波数逓倍結晶の入射端面に880-1100nmに対して高透過性であって1100-1200nmと560-600nmに対して高反射性である誘電体膜Aをコーティングして形成され、出力空洞ミラーは、自己周波数逓倍結晶の出射端面に880-980nmと1100-1200nmに対して高反射性であって980-1100nmと560-600nmに対して高透過性である誘電体膜Bをコーティングして形成され、前記誘電体膜Aと誘電体膜Bは、レーザ共振空洞を構成することを特徴とする請求項1に記載のフォノンバンド端発光に基づく全固体大出力スラブレーザ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォノンバンド端発光に基づく全固体大出力スラブレーザに関し、レーザ技術分野に属し、レーザ及び非線形結晶デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
フォノンバンド端発光は、電子とフォノンとのカップリング効果により電子が異なるエネルギー準位間に遷移するときにフォノンと相互作用することでエネルギー準位間隔を減少させてレーザ放射波長を増大するという放射形態である。フォノンバンド端発光によって、希土類イッテルビウムに1200nm波長までの放射を発生させ、レーザの自己周波数逓倍効果が相まって(すなわちレーザと周波数逓倍を共通結晶に完了させる)、波長560-600nmの黄色レーザが得られる。
【0003】
中国特許CN105071217Aは、黄色光の出力を実現可能なイッテルビウムイオンドープ希土類金属・カルシウム・オキシボレートの自己周波数逓倍結晶型の全固体レーザを開示しており、該特許に記載のレーザは、従来のレーザの構成を用い、すなわち、励振源から出射されたポンプ光を前記集束システムでコリメートして集束し、入力空洞ミラーを介して前記自己周波数逓倍結晶に注入するものであり、このような方式は、モードマッチングが良好で、効率が高いなどの長所を有し、ワットレベルの小出力レーザの出力[Opt. Lett. 41, 1002(2016)]に向いている。フォノンバンド端の基本的概念からわかるように、フォノンの関与によりレーザプロセス中の熱効果が強くなり、特に該発明に記載のレーザ結晶では温度勾配方向が光伝播方向に垂直であるため、熱負荷条件で運転するとき、深刻な熱レンズ効果と熱的歪み効果や光歪み効果が発生し、ビームの品質を低下させ、ひいては結晶の割れを引き起こし、それによって、レーザ出力の更なる向上が制限される。
【0004】
スラブレーザの特徴は、レーザ作動物質がスラブ状であり、ポンプのスポットが長尺状であることであり、有効ポンプ体積を大幅に向上でき、長尺方向でのモードマッチングが必要とされず、また、このようなレーザでは、温度勾配がスラブの厚手方向に発生し(スラブの短手方向の両側面が熱絶縁され)、放熱面積の増大及びレーザポンプスポットの増大により、熱レンズ効果と熱的歪み効果や光歪み効果を大体回避でき、レーザ出力を大幅に向上させる。スラブの設計、フォノンバンド端発光及び自己周波数逓倍の効果に基づき、大出力の黄色光レーザ出力を実現できる。現在、スラブレーザは、大出力レーザの分野に適用されているが、フォノンバンド端発光型レーザ、特に自己周波数逓倍型レーザへの適用がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】中国特許CN105071217A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術に存在する不備及び発展現状に対して、本発明は、フォノンバンド端発光に基づく全固体大出力スラブレーザ、特に自己周波数逓倍黄色光レーザを提供している。本発明は、発光波長560nm-600nmの、イッテルビウムイオンドーピング希土類金属・カルシウム・オキシボレート結晶に基づくレーザである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の技術案は、以下のとおりである。
ポンプ源、集束システム、共振空洞及び共振空洞に位置する自己周波数逓倍結晶を備え、前記ポンプ源、集束システム、共振空洞は、光路に沿って順次に配列され、前記共振空洞は、前記集束システムの出力側に位置し、前記自己周波数逓倍結晶は、イッテルビウムイオンドープ希土類金属・カルシウム・オキシボレート結晶であり、
共振空洞は、1020-1080nm波帯のレーザ発振を抑制し、1120-1200nm波帯のレーザ発振を実現するように、それぞれ誘電体膜がコーティングされる入力空洞ミラーと出力空洞ミラーからなるフォノンバンド端発光に基づく全固体大出力スラブレーザにおいて、
前記自己周波数逓倍結晶は、結晶の実効的非線形係数が最大の方向に沿ってスラブ状に切断され、
前記ポンプ源は、880nm-980nmのレーザダイオードアレイであり、前記ポンプ源から発光したポンプ光が前記集束システムによって矩形スポットとなって前記共振空洞に位置する自己周波数逓倍結晶の光透過面に集束し、前記光透過方向がスラブ状結晶の長手方向であることを特徴とするフォノンバンド端発光に基づく全固体大出力スラブレーザ。
【0008】
本発明のフォノンバンド端発光に基づく全固体大出力スラブレーザにおいて、560-600nmの黄色光レーザの出力を実現する。
【0009】
前記自己周波数逓倍結晶は、入力空洞ミラーと出力空洞ミラーとの間に位置し、集束システムの焦点に位置する。この箇所では、光量密度が大きく、スポットが小さく、自己周波数逓倍結晶のポンプ光に対する吸収に寄与する。
【0010】
本発明によれば、好ましくは、前記入力空洞ミラーは、入力レンズに誘電体膜Aをコーティングして形成され、又は前記自己周波数逓倍結晶の光入射端面に誘電体膜Aをコーティングして形成される。前記誘電体膜Aには、ポンプ光880nm-980nmに対して高透過性である誘電体膜及び1020-1080nmに対して高透過性である誘電体膜がある。それにより、ポンプ光に対する効果的な吸収を増加するとともに、1020-1080nm波帯のレーザ発振を抑制する。又は、コーティングを簡単化させるために、前記誘電体膜Aは、880nm-1100nmに対して高透過性である誘電体膜を少なくとも有する。
【0011】
本発明によれば、好ましくは、前記出力空洞ミラーは、出力レンズに誘電体膜Bをコーティングして形成され、又は前記自己周波数逓倍結晶の光出射端面に誘電体膜Bをコーティングして形成され、前記誘電体膜Bには、ポンプ光880nm-980nmに対して高反射性である誘電体膜及び1020-1080nmに対して高透過性である誘電体膜がある。それにより、ポンプ光に対する効果的な吸収を増加するとともに、1020-1080nm波帯のレーザ発振を抑制する。又は、コーティングを簡単化させるために、前記誘電体膜Bは、880nm-980nmに対して高反射性であって980-1100nmに対して透過性である誘電体膜を少なくとも有する。
【0012】
更に好ましくは、黄色光を効果的に出力し、ポンプ光の損失を減少させるために、前記入力空洞ミラーは、1100nm-1200nmと560nm-600nm波帯に対して高反射性である誘電体膜をさらにコーティングし、出力空洞ミラーは、1100nm-1200nmに対して高反射性であって560nm-600nmに対して高透過性である誘電体膜をコーティングする必要があり、その中でも、1100nm-1200nm波帯に対して高反射性である誘電体膜は、1120-1200nm波帯のレーザ発振を実現できる。
【0013】
更に好ましくは、前記誘電体膜Aは、880-1100nmに対して高透過性であって1100-1200nmと560-600nmに対して高反射性である誘電体膜である。
【0014】
更に好ましくは、前記誘電体膜Bは、880-980nmと1100-1200nmに対して高反射性であって980-1100nmと560-600nmに対して高透過性である誘電体膜である。
【0015】
本発明に係るポンプ源は、波長880nm-980nmのレーザダイオードアレイである。このレーザは、出射波長が安定し、出射スポットが整形しやすい矩形であり、高い出力を有する。
【0016】
本発明によれば、好ましくは、前記集束システムは、
a.1つの平凸シリンドリカルレンズまたは複数の平凸シリンドリカルレンズの組み合わせ、
b.1つの平凸レンズまたは複数の平凸レンズの組み合わせ、
c.1つの両凸レンズまたは複数の両凸レンズの組み合わせ、
d.平凸レンズと平凸シリンドリカルレンズ、平凹シリンドリカルレンズとの組み合わせ、
e.両凸レンズと平凸シリンドリカルレンズ、平凹シリンドリカルレンズとの組み合わせのうちの1つである。
【0017】
集束システムの組み合わせは、それらに限られず、スポットを集束して矩形スポットにすることを目的とする。集束システムの焦点距離は、1cm-30cmであり、使用の場面によって決定すればよいが、好ましくは、1~10cmである。
【0018】
本発明によれば、誘電体膜Aを自己周波数逓倍結晶の入射端面にコーティングし、誘電体膜Bを自己周波数逓倍結晶の出射端面にコーティングする実施態様において、前記誘電体膜Aと誘電体膜Bは、レーザ共振空洞を構成する。
【0019】
本発明によれば、入力空洞ミラーと出力空洞ミラーに980-1100nmに対して高透過性、1100nm-1200nm波帯に対して高反射性である誘電体膜がコーティングされるのは、1020-1080nm波帯の発振を抑制し、1120-1200nm波帯のレーザ発振を実現し、基本周波数レーザを発生させることを目的とし、入力空洞ミラーには、880nm-980nm波帯に対して高透過性である誘電体膜がさらにコーティングされ、出力空洞ミラーには、880nm-980nm波帯に対して高反射性である誘電体膜がさらにコーティングされるのは、自己周波数逓倍結晶のポンプ源ポンプ光に対する有効吸収を増加させることを目的とする。
【0020】
本発明のレーザ共振空洞では、ポンプ光(900nm付近)の損失を減少させ、1020-1080nm波帯の発振を抑制するために、入力空洞ミラーと出力空洞ミラーに1020-1080nm波帯に対して高透過性である誘電体膜をコーティングする必要があり、すなわち入力空洞ミラーの光透過方向に880-1100nmに対して高透過性である誘電体膜がコーティングされ、出力空洞ミラーには、980-1100nmに対して高透過性である誘電体膜がコーティングされる。黄色光波帯の有効出力を実現するために、入力空洞ミラーには、1100-1200nmと560-600nmに対して高反射性である誘電体膜がさらにコーティングされ、出力空洞ミラーには1100-1200nmに対して高反射性であって560-600nmに対して高透過性である誘電体膜がコーティングされ、結晶のポンプ光に対する有効吸収を増加させるために、出力空洞ミラーにも、880-980nmに対して高反射性である誘電体膜がコーティングされる。
【0021】
本発明によれば、好ましくは、前記イッテルビウムイオンドープ希土類金属・カルシウム・オキシボレート結晶は、イッテルビウムドープガドリニウム・カルシウム・オキシボレート、イッテルビウムドープランタン・カルシウム・オキシボレート、イッテルビウムドープイットリウム・カルシウム・オキシボレートのうちの1種であり、又はイッテルビウムドープガドリニウム・カルシウム・オキシボレート、イッテルビウムドープランタン・カルシウム・オキシボレート、イッテルビウムドープイットリウム・カルシウム・オキシボレートのうちの2種または3種からなる混晶であり、好ましくは、前記イッテルビウムイオンドープ希土類金属・カルシウム・オキシボレート結晶のイッテルビウムイオンドープ濃度は、1at.%~50at.%であり、最も好ましくは、6at.%~10at.%である。
【0022】
本発明によれば、前記イッテルビウムイオンドープ希土類金属・カルシウム・オキシボレート結晶は、市販品として入手し、又は従来技術により製造される。
【0023】
本発明によれば、好ましくは、前記自己周波数逓倍結晶の光透過面は、矩形である。光透過面に研磨を施した後に誘電体膜をコーティングしまたは誘電体膜をコーティングしない。自己周波数逓倍結晶は、光透過方向が結晶の長手方向であり、長さが0.5mm-50mmであり、結晶の厚みは、0.4mm-2mmであり、自己周波数逓倍結晶の幅は、結晶の厚みより大きい。更に好ましくは、自己周波数逓倍結晶は、長さ6mm-10mm、結晶幅6-12mm、厚み0.5-1mmである。結晶の長さを変えると、レーザ出力波帯に影響を与えないが、レーザの効率に影響を与え、結晶の長さが6mm-10mmである場合、効率が最も高く、特に自己周波数逓倍結晶の長さが8mmである場合、効率が最も高い。
【0024】
本発明によれば、好ましくは、前記自己周波数逓倍結晶の2つの大きな面(すなわち光透過面に垂直な2つの大きな面)をヒートシンクで冷却させる。レーザの放熱に寄与する。
【0025】
本発明によれば、好ましくは、前記自己周波数逓倍結晶の光透過方向は、自己周波数逓倍の位相整合方向であり、すなわち結晶の非主平面の実効的非線形係数が最大の方向に沿って切断され、最適な位相整合方向は、結晶屈折率が最大の主軸方向Z軸に対して(120°±10°)となる範囲であって結晶屈折率が最小の主軸方向X軸に対して-(40°±10°)となる範囲にある。該角度は、黄色光自己周波数逓倍の方向に対する角度であり、560-600nmの自己周波数逓倍だけを実現できるという効果を奏し、結晶のカット方向を変えることで位相整合を実現し、黄色光レーザの出力を得ることである。
【0026】
本発明によれば、好適な実施形態は、以下のとおりである。
【0027】
フォノンバンド端発光に基づく全固体大出力スラブレーザであって、光路方向に沿って順次に配列されるポンプ源、集束システム、入力空洞ミラー、自己周波数逓倍結晶、及び出力空洞ミラーを備え、前記ポンプ源は、波長880nm-980nmのレーザダイオードアレイであり、前記自己周波数逓倍結晶は、イッテルビウムイオンドープカルシウム・オキシボレートでありかつ結晶の実効的非線形係数が最大の方向に沿ってスラブ状に切断され、前記自己周波数逓倍結晶は、集束システムの焦点に位置し、前記入力空洞ミラーと出力空洞ミラーは、レーザ共振空洞を構成し、入力空洞ミラーは、880-1100nmに対して高透過性であって1100-1200nmと560-600nmに対して高反射性である誘電体膜Aを入力レンズにコーティングして形成され、出力空洞ミラーは、880-980nmと1100-1200nmに対して高反射性であって980-1100nmと560-600nmに対して高透過性である誘電体膜Bを出力レンズにコーティングして形成される。
【0028】
本発明によれば、他の好適な実施形態は、以下のとおりである。
【0029】
フォノンバンド端発光に基づく全固体大出力スラブレーザであって、光路方向に沿って順次に配列されるポンプ源、集束システム、入力空洞ミラー、自己周波数逓倍結晶、及び出力空洞ミラーを備え、前記ポンプ源は、波長880nm-980nmのレーザダイオードアレイであり、前記自己周波数逓倍結晶は、イッテルビウムイオンドープ希土類金属・カルシウム・オキシボレート結晶でありかつ結晶の実効的非線形係数が最大の方向に沿ってスラブ状に切断され、前記自己周波数逓倍結晶は、集束システムの焦点に位置し、入力空洞ミラーは、自己周波数逓倍結晶の入射端面に880-1100nmに対して高透過性であって1100-1200nmと560-600nmに対して高反射性である誘電体膜Aをコーティングして形成され、出力空洞ミラーは自己周波数逓倍結晶の出射端面に880-980nmと1100-1200nmに対して高反射性であって980-1100nmと560-600nmに対して高透過性である誘電体膜Bをコーティングして形成され、前記誘電体膜Aと誘電体膜Bは、レーザ共振空洞を構成する。
【0030】
本発明のフォノンバンド端発光に基づく全固体大出力スラブレーザは、特殊なレーザであり、結晶の形状を変え、すなわち結晶としてスラブ状結晶を用いるだけではなく、ポンプ光スポットとして均一に分布する矩形スポットを用い、それにより結晶の熱効果と放熱方式が本質的に変わり、すなわち入射端面の熱分布が結晶の厚手方向でのみ異なり、つまり熱効果が一次元に存在し、また、結晶の2つの大きな面の放熱により、結晶の放熱面積を大幅に増大し、したがって、ポンプ出力向上による結晶の熱効果を効果的に抑制することができ、出力を大幅に向上できる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の技術的特徴及び有益な効果は、以下のとおりである。
1、自己周波数逓倍結晶は、イッテルビウムイオンドープ希土類金属・カルシウム・オキシボレート結晶を用い、自己周波数逓倍レーザプロセスがレーザと周波数逓倍の効果を統合した自己周波数逓倍結晶に基づいており、量産のニーズを満たすように自己周波数逓倍結晶の研究開発にはコストや製造の容易さを配慮しなければならない。従って、自己周波数逓倍大出力黄色光スラブレーザの設計及び開発中、さらに、自己周波数逓倍結晶の成長方法を配慮する必要があり、たとえば、フラックス法で結晶を成長する場合、周期が長く、コストが高く、一方、引き上げ法で結晶を成長する場合、短時間で大サイズの結晶を取得でき、自己周波数逓倍結晶のコストをその分削減できる。本発明のイッテルビウムイオンドープ希土類金属・カルシウム・オキシボレート結晶は、従来の引き上げ法によって製造できる。引き上げ法は、結晶成長によく使用されている方法であり、短時間で大サイズかつ高品質の結晶を製造でき、実施しやすく、生産の難度を低下させ、コストを低下させる。
【0032】
2、本発明では、ポンプ源から出射されたポンプ光を集束システムにより速軸方向にコリメートして集束し、次に入力空洞ミラーを介して自己周波数逓倍結晶に入射し、結晶がポンプエネルギーを吸収してエネルギー準位の間に遷移し、コーティング手段により1120-1200nm波帯のレーザ発振を実現し、基本周波数レーザとなり、基本周波数レーザは、前記自己周波数逓倍結晶の周波数逓倍効果を利用して周波数逓倍を行い、560-600nmの黄色光レーザの出力を実現する。
【0033】
3、本発明のフォノンバンド端発光に基づく全固体大出力スラブレーザは、レーザと周波数逓倍の効果を統合したイッテルビウムイオンドープ希土類金属・カルシウム・オキシボレート結晶を用い、コーティングにより周波数を選択して黄色光の出力を実現するレーザである。出力の点では、従来のレーザが大出力を実現しにくいという現状を突破し、安定的で大出力のレーザ出力を実現でき、構造的には、従来の大出力の黄色光レーザでは、少なくとも2つ(または複数)の結晶を必要とする特徴をなくし、構造の簡素化、安定化、コンパクト化、小型化などの長所を有し、さらに、生産デバッグ及び加工の難度を低下させ、取り付けやデバッグがしやすく、生産の一致性を確保し、量産が容易にあり、レーザプロセスの点では、従来のレーザの複雑な和周波発生を解消し、共振空洞の設計を簡素化させ、レーザ閾値が低く、実現しやすいなどの長所を有する。共振空洞は、直線空洞となり、安定性と確実性が高く、素子の交換やデバッグが容易である。
【0034】
4、本発明の自己周波数逓倍結晶は、イッテルビウムイオンドープ希土類金属・カルシウム・オキシボレート結晶であり、前記自己周波数逓倍結晶の光透過方向は、自己周波数逓倍の位相整合方向であり、すなわち結晶の非主平面の実効的非線形係数が最大の方向に沿って切断され、自己周波数逓倍結晶の光透過面が矩形であり、結晶の2つの大きな面がヒートシンクで冷却され、また、ポンプ光が結晶の短手方向に均一に分布し、従って、熱効果は一次元である(結晶の大きな面に垂直な方向にのみ存在する)。従来のロッド状レーザ結晶に比べて、熱効果が大幅に減少し、従って、このレーザは、より大きなポンプ出力を受け、より大出力のレーザを出力することができる。現在、黄色光では、5W以上のレーザ出力が実現されており、従来の自己周波数逓倍黄色光の1.08Wの出力よりも顕著に向上した。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】スラブ状結晶の模式図であり、左側は、入射端面であり、Pumping Laserは、ポンプ光の入射方向を示し、Wは、結晶の幅を示し、tは、結晶の厚みを示し、W×tの2つの面は、結晶の光透過面であり、幅Wが厚みtより大きく、結晶の長さLは、結晶の光透過方向であり、右側は、出射端面であり、Output Laserは、レーザの出射方向を示す。
図2】実施例1におけるフォノンバンド端発光に基づく全固体大出力スラブレーザの構造模式図であり、1はポンプ源、2は集束システム、3は誘電体膜A、4は自己周波数逓倍結晶、5は誘電体膜B、6はレーザ出力である。
図3図2の斜視図である。
図4】実施例1におけるフォノンバンド端発光に基づく全固体大出力スラブレーザのレーザ出力スペクトルであり、横座標は波長(nm)、縦座標は強度である。
図5】実施例9におけるフォノンバンド端発光に基づく全固体大出力スラブレーザの構造模式図であり、7は入力空洞ミラー、8は出力空洞ミラーである。3-1は880-1100nmに対して高透過性である誘電体膜、3-2は1100-1200nmと560-600nmに対して高反射性である誘電体膜、5-1は880-980nmと1100-1200nmに対して高反射性誘電体膜、5-2は980-1100nmと560-600nmに対して高透過性である誘電体膜である。
図6図5の斜視図である。
図7】実施例1におけるフォノンバンド端発光に基づく全固体大出力スラブレーザの結晶の放熱構造であり、9はヒートシンク、10はインジウム箔である。
図8】実施例9におけるフォノンバンド端発光に基づく全固体大出力スラブレーザのレーザ出力スペクトルであり、横座標は波長(nm)、縦座標は強度である。
図9】実施例17におけるフォノンバンド端発光に基づく全固体大出力スラブレーザのレーザ出力スペクトルであり、横座標は波長(nm)、縦座標は強度である。
図10】実施例18におけるフォノンバンド端発光に基づく全固体大出力スラブレーザのレーザ出力スペクトルであり、横座標は波長(nm)、縦座標は強度である。
図11】実施例19におけるフォノンバンド端発光に基づく全固体大出力スラブレーザのレーザ出力スペクトルであり、横座標は波長(nm)、縦座標は強度である。
図12】実施例20におけるフォノンバンド端発光に基づく全固体大出力スラブレーザのレーザ出力スペクトルであり、横座標は波長(nm)、縦座標は強度である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面及び実施例を参照しながら、本発明について更に説明するが、これらに限られない。実施例で用いられる部材は、特に断らない限り、いずれも従来技術によるものであるである。
【0037】
(発明の要約)
本発明は、結晶の実効的非線形係数が最大の方向に沿ってスラブ状に切断された結晶であり、コーティングにより1120-1200nm波帯のレーザ発振を実現し、発光周波数を制御するとともに、自己周波数逓倍結晶としてのイッテルビウムイオンドープ希土類金属・カルシウム・オキシボレート結晶の切断角度を変えることにより、実現可能な周波数逓倍黄色光の有効出力を選択し、また、ポンプ光のスポットとして均等に分布する矩形スポットを用いるので、結晶の熱効果及び放熱方式が本質的に変わり、すなわち入射端面の熱分布が結晶の厚手方向でのみ異なり、すなわち熱効果が一次元に存在し、このように、結晶の熱効果を効果的に抑制し、出力を大幅に向上させ、それにより大出力の黄色光レーザ出力を取得する。
【0038】
(用語の説明)
高反射性とは、特定の波長または波帯の光に対する反射率が99%より大きいことを意味する。
高透過性とは、特定の波長または波帯の光に対する透過率が99%より大きいことを意味する。
ヒートシンクとは、熱伝導率の高い材料(たとえば銅、銀等)を特定の形状に加工して結晶に被覆するとともに、その内部にチャンネルを構成して所定温度のクーラントを流すことで結晶を放熱させ、又はその外部に冷却装置で材料の温度を一定に維持することで結晶を放熱させる目的を実現することを意味する。
スラブ状結晶とは、図1に示すように、結晶の光透過面が矩形であり、光透過面の幅(図においてWで示される)が厚み(図においてtで示される)より大きいことを意味し、結晶の長さである結晶の光透過方向が図においてLで示され、上下の2つの面が結晶の2つの大きな面となり、ヒートシンクで冷却される。
【0039】
実施例1
フォノンバンド端発光に基づく全固体大出力スラブレーザは、図2、3に示すように、ポンプ源1、集束システム2、自己周波数逓倍結晶4が光路に沿って順次に配列されるように構造されている。ポンプ源1は、発光中心波長976nmのレーザダイオードアレイであり、集束システム2は、焦点距離6.35cmの平凸シリンドリカルレンズからなり、自己周波数逓倍結晶4は、イッテルビウムイオンドープ濃度が20at.%のイットリウム・カルシウム・オキシボレート結晶であり、光透過方向の結晶長さが8mmであり、光透過面が12×1mmの研磨された矩形のものであり、結晶の2つの大きな面がヒートシンク9で冷却され(図7に示す)、カット方向として実効的非線形係数が最大の位相整合方向に沿って切断され、最適な位相整合方向は、Z軸に対して(120°±1°)、X軸に対して-(38°±2°)となり、前記自己周波数逓倍結晶4は、集束システムの焦点に位置し、図2における3に示されるように、自己周波数逓倍結晶4の入射端面には、880-1100nmに対して高透過性であって1100-1200nmと560-600nmに対して高反射性である誘電体膜Aがコーティングされ、図2の5に示されるように、出射端面には、880-980nmと1100-1200nmに対して高反射性であって980-1100nmと560-600nmに対して高透過性である誘電体膜Bがコーティングされ、誘電体膜A3と誘電体膜B5は、レーザ共振空洞を構成する。
【0040】
ポンプ源1を起動させ、ポンプ出力を増大したところ、65Wのポンプ出力で5W大出力の568.7nm波帯の黄色光レーザ出力を実現し、出力波長を図4に示した。
【0041】
実施例2-4
フォノンバンド端発光に基づく全固体大出力スラブレーザであって、実施例1において、自己周波数逓倍結晶4として、イッテルビウムイオンドープイットリウム・カルシウム・オキシボレート結晶の光透過方向の長さがそれぞれ4mm、6mm及び10mmである以外、残りの条件及び部材は、実施例1の記載と同様であった。ポンプ源1を起動させ、ポンプ出力を増大したところ、いずれも約570nmの黄色光レーザ出力を実現できた。
【0042】
実施例5-8
フォノンバンド端発光に基づく全固体大出力スラブレーザであって、実施例1において、自己周波数逓倍結晶4として、イッテルビウムイオンドープイットリウム・カルシウム・オキシボレート結晶光透過面がそれぞれ6×1mm、8×1mm、10×1mm、及び12×0.5mmである以外、残りの条件及び部材は、実施例1の記載と同様であった。いずれも約570nm波帯の黄色光レーザ出力を実現できた。4つの光透過面の長さが異なり、異なるポンプ源で集束したスポットの大きさに対応でき、スポット長さは、結晶の幅に相当するように維持された。
【0043】
実施例9
フォノンバンド端発光に基づく全固体大出力スラブレーザであって、図5、6に示すように、ポンプ源1、集束システム2、入力空洞ミラー7、自己周波数逓倍結晶4、出力空洞ミラー8が光路に沿って順次に配列されるように構造されている。
【0044】
ポンプ源1は、発光中心波長976nmのレーザダイオードアレイであり、集束システム2は、焦点距離6.35cmの平凸シリンドリカルレンズからなり、入力空洞ミラー7と出力空洞ミラー8は、レーザ共振空洞を構成した。入力空洞ミラー7は、平平レンズであり、かつ光透過面には880-1100nmに対して高透過性である誘電体膜(図5の3-1に示される)であって1100-1200nmと560-600nmに対して高反射性である誘電体膜(図5の3-2に示される)がコーティングされ、2種の膜系は、共同で誘電体膜Aを構成し(図2の3に示される)、自己周波数逓倍結晶4は、イッテルビウムイオンドープ濃度が20at.%のイットリウム・カルシウム・オキシボレート結晶であり、光透過方向の結晶長さが8mmであり、光透過面が12×1mmの矩形であり、結晶の2つの大きな面がヒートシンク9で冷却され、かつ光透過面は、研磨されるとともに880nm-1200nmと560nm-600nmに対して高透過性である誘電体膜がコーティングされ、カット方向として、実効的非線形係数が最大の位相整合方向に沿って切断され、切断角度は、Z軸に対して(120°±1°)、X軸に対して-(38°±2°)になる。かつ、前記自己周波数逓倍結晶4は、集束システムの焦点に位置し、出力空洞ミラー8には、880-980nmと1100-1200nmに対して高反射性である誘電体膜(図5の5-1に示される)であって980-1100nmと560-600nmに対して高透過性である誘電体膜(図の5-2に示される)がコーティングされ、2種の膜系は、共同で誘電体膜Bを構成した(図2の5に示される)。
【0045】
ポンプ源1を起動させ、ポンプ出力を増大したところ、レーザ共振空洞と自己周波数逓倍結晶4を調整し、569.2nm波帯のレーザ出力を実現し、出力波長を図8に示した。
【0046】
実施例10-12
フォノンバンド端発光に基づく全固体大出力スラブレーザであって、実施例9において、自己周波数逓倍結晶4として、イッテルビウムイオンドープイットリウム・カルシウム・オキシボレート結晶の光透過方向の長さがそれぞれ4mm、6mm及び10mmである以外、残りの条件及び部材は、実施例9の記載と同様であった。ポンプ源1を起動させ、ポンプ出力を増大したところ、いずれも約570nm波帯の黄色光レーザ出力を実現できた。
【0047】
実施例13-16
フォノンバンド端発光に基づく全固体大出力スラブレーザであえって、実施例9において、自己周波数逓倍結晶4として、イッテルビウムイオンドープイットリウム・カルシウム・オキシボレート結晶光透過面がそれぞれ6×1mm、8×1mm、10×1mm、及び12×0.5mmである以外、残りの条件及び部材は、実施例9の記載と同様であった。ポンプ源1を起動させ、ポンプ出力を増大したところ、いずれも約570波帯黄色光レーザ出力を実現できた。光透過面の長さが異なり、異なるポンプ源で集束したスポットの大きさに対応できた。
【0048】
実施例17
フォノンバンド端発光に基づく全固体大出力スラブレーザであって、実施例1において、自己周波数逓倍結晶として、イッテルビウムイオンドープイットリウム・カルシウム・オキシボレート結晶の切断角度が、Z軸に対して(120°±1°)、X軸に対して-(34°±2°)となる以外、残りの条件及び部材は、実施例1の記載と同様であった。ポンプ源1を起動させ、ポンプ出力を増大したところ、590nm波帯の黄色光レーザ出力を実現できた。出力波長は590.2nmであり、図9に示した。
【0049】
実施例18
フォノンバンド端発光に基づく全固体大出力スラブレーザであって、実施例1において、自己周波数逓倍結晶がイッテルビウムドープガドリニウム・カルシウム・オキシボレート結晶であり、イッテルビウムイオンのドープ濃度が1at.%である。結晶切断角度は、Z軸に対して(120°±1°)、X軸に対して-(46°±2°)となる以外、残りの条件及び部材は、実施例1の記載と同様であった。ポンプ源1を起動させ、ポンプ出力を増大したところ、580nm波帯の黄色光レーザ出力を実現できた。出力波長は582.7nmであり、図10に示した。
【0050】
実施例19
フォノンバンド端発光に基づく全固体大出力スラブレーザであって、実施例1において、自己周波数逓倍結晶イッテルビウムイオンドープイットリウム・カルシウム・オキシボレート結晶の切断角度として、結晶が1120nm実効的非線形係数が最大の位相整合方向に沿って切断される以外、残りの条件及び部材は、実施例1の記載と同様であった。ポンプ源1を起動させ、ポンプ出力を増大したところ、560nm波帯の黄色光レーザ出力を実現できた。出力波長は560.1nmであり、図11に示した。
【0051】
実施例20
フォノンバンド端発光に基づく全固体大出力スラブレーザであって、実施例1において、自己周波数逓倍結晶イッテルビウムイオンドープイットリウム・カルシウム・オキシボレート結晶の切断角度として、結晶が1200nm実効的非線形係数が最大の方向である位相整合方向に沿って切断される以外、残りの条件及び部材は実施例1の記載と同様であった。ポンプ源1を起動させ、ポンプ出力を増大したところ、600nm波帯の黄色光レーザ出力を実現できた。出力波長は599.8nmであり、図12に示した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12