(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-09
(45)【発行日】2022-03-17
(54)【発明の名称】ホース継手及びそのホース固定部材
(51)【国際特許分類】
F16L 33/22 20060101AFI20220310BHJP
A62C 33/00 20060101ALI20220310BHJP
F16L 37/248 20060101ALI20220310BHJP
【FI】
F16L33/22
A62C33/00 C
F16L37/248
(21)【出願番号】P 2018058263
(22)【出願日】2018-03-26
【審査請求日】2021-02-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000215822
【氏名又は名称】帝国繊維株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000240673
【氏名又は名称】ヨネ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【氏名又は名称】徳本 浩一
(72)【発明者】
【氏名】桝谷 徹
(72)【発明者】
【氏名】米田 哲三
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】西独国特許出願公告第01027021(DE,B)
【文献】登録実用新案第3167260(JP,U)
【文献】特開2006-329393(JP,A)
【文献】特開2018-013185(JP,A)
【文献】特開2008-029420(JP,A)
【文献】特開2005-083433(JP,A)
【文献】韓国登録実用新案第20-0386493(KR,Y1)
【文献】米国特許第05518278(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0201215(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0245443(US,A1)
【文献】特開2018-053960(JP,A)
【文献】特開2019-090486(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 33/22
A62C 33/00
F16L 37/248
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部を流体が流通可能な略円筒状で、ホースを取付け可能なホース取付部が一方の軸方向端部に設けられている継手本体と、該継手本体に着脱可能に取り付けられる複数のセグメントとを有し、
前記複数のセグメントを周方向に連結して一つの円環状部材を構成し、該円環状部材によって前記ホースを前記ホース取付部に固定するように構成されたホース継手において、
前記継手本体は、他の継手に連結可能な連結部を有し、該連結部は、前記ホース取付部に軸方向に隣接するように一体的に設けられており、
少なくとも一つの前記セグメントの軸方向端面には、周方向に沿って延びている2つのハンドル部が周方向に間隔を空けて取り付けられ、2つの前記ハンドル部は、互いに近接する周方向端部を中心として回動可能であり、
2つの前記ハンドル部が回動することにより径方向外側に延びる起立状態となり、起立状態の2つのハンドル部は、互いに当接して1つのハンドル対を構成し、
前記連結部を前記他の継手に当接させ、前記起立状態の前記ハンドル対を把持して周方向に回転させることにより、前記連結部と前記他の継手とが連結されるように構成されていることを特徴とするホース継手。
【請求項2】
前記円環状部材は、周方向長さが等しい3個の前記セグメントにより構成され、
前記セグメントのそれぞれに、2つの前記ハンドル部が設けられ、1つのハンドル対が構成可能であることを特徴とする請求項1に記載のホース継手。
【請求項3】
前記セグメントの前記軸方向端面には、軸方向に突出可能な係合部が設けられ、
前記ハンドル部には、前記係合部に対応する位置に凹部が設けられ、
前記係合部が前記凹部に係合するとき、前記ハンドル部
の収容状態が保持されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のホース継手。
【請求項4】
内部を流体が流通可能な2個の継手によって構成されており、
前記各継手は、略円筒状で、ホースを取付け可能なホース取付部が一方の軸方向端部に設けられている継手本体と、該継手本体に着脱可能に取り付けられる複数のセグメントとを有し、
前記複数のセグメントを周方向に連結して一つの円環状部材を構成し、該円環状部材によって前記ホースを前記ホース取付部に固定するように構成されたホース継手において、
前記各継手本体は、互いに連結可能な連結部を有し、該連結部は、前記ホース取付部に軸方向に隣接するように一体的に設けられており、
前記各連結部の軸方向端部には、軸方向に突出している複数の爪部が周方向に間隔を空けて設けられ、爪部には、周方向に延びている溝部が設けられ、
前記各継手における前記複数のセグメントのうちの少なくとも一つの前記セグメントの軸方向端面には、周方向に沿って延びている2つのハンドル部が周方向に間隔を空けて取り付けられ、2つの前記ハンドル部は、互いに近接する周方向端部を中心として回動可能であり、
2つの前記ハンドル部が回動することにより径方向外側に延びる起立状態となり、起立状態の2つのハンドル部は、互いに当接して1つのハンドル対を構成し、
前記2個の継手のうちの一方の継手の前記爪部が、他方の継手の前記溝部に軸方向に挿入され、前記起立状態の前記ハンドルが把持され、周方向に締め付けられることによって、前記爪部が前記溝部内を周方向に移動し、前記爪部が前記溝部内に嵌合するように構成されていることを特徴とするホース継手。
【請求項5】
円筒状のホース継手に着脱可能な複数のセグメントを有し、前記複数のセグメントを周方向に連結することによって一つの円環を構成し、ホースを取り囲んで前記ホース継手に固定するように構成されたホース固定部材において、
少なくとも一つの前記セグメントの軸方向端面には、周方向に沿って延びている2つのハンドル部が周方向に間隔を空けて取り付けられ、2つの前記ハンドル部は、互いに近接する周方向端部を中心として回動可能であり、
2つの前記ハンドル部が回動することにより径方向外側に延びる起立状態となり、起立状態の2つのハンドル部は、互いに当接して1つのハンドル対を構成し、
前記ホース継手を他の継手に当接させ、前記起立状態の前記ハンドルが把持されて前記ハンドルを周方向に回転させることにより、前記ホース継手と前記他の継手とが連結されるように構成されていることを特徴とするホース固定部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば消防用のホースを連結するためのホース継手及びそのホース固定部材に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば2本の消防用ホースを連結するためのホース継手には、特許文献1に開示されているように、雄雌の区別がなく、同一構造の2個の継手によって構成されている一対のホース継手が知られている。当該ホース継手は、各継手が2本の消防用ホースのそれぞれの端部に取り付けられ、これらの継手が連結可能に構成されている。
【0003】
消防用ホースを連結する作業は、火災等の消火活動のために行われるため、緊急に行われることが多い。そのため、上記のようなホース継手を用いることによって、消防用ホースを連結するときに、雄型継手が取り付けられたホース端部と、雌型継手が取り付けられたホース端部を探す工程を省くことができる。その結果、ホース連結の作業効率が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記例において、直径150mmを超えるような消防用ホースに取り付けられているホース継手を連結する場合には、スパナ等の締結用工具を用いて行うのが一般的である。この場合、締結用工具を常備しておく必要がある。緊急時において、締結用工具を設置している場所が、消防用ホースを連結する場所に対して離れている場合には、当該締結用工具を準備する時間を要してしまう。その結果、消防用ホースの連結が完了するまでの時間が長くなってしまう可能性がある。
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、例えば消防用の2本のホースを連結するときに、別途準備されている締結用工具を用いることなく、効率よく連結作業を行うことをできるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明に係るホース継手は、内部を流体が流通可能な略円筒状で、ホースを取付け可能なホース取付部が一方の軸方向端部に設けられている継手本体と、該継手本体に着脱可能に取り付けられる複数のセグメントとを有し、前記複数のセグメントを周方向に連結して一つの円環状部材を構成し、該円環状部材によって前記ホースを前記ホース取付部に固定するように構成されている。当該ホース継手において、前記継手本体は、他の継手に連結可能な連結部を有し、該連結部は、前記ホース取付部に軸方向に隣接するように一体的に設けられており、少なくとも一つの前記セグメントの軸方向端面には、周方向に沿って延びている2つのハンドル部が周方向に間隔を空けて取り付けられ、2つの前記ハンドル部は、互いに近接する周方向端部を中心として回動可能であり、2つの前記ハンドル部が回動することにより径方向外側に延びる起立状態となり、起立状態の2つのハンドル部は、互いに当接して1つのハンドル対を構成し、前記連結部を前記他の継手に当接させ、前記起立状態の前記ハンドル対を把持して周方向に回転させることにより、前記連結部と前記他の継手とが連結されるように構成されている。
【0008】
また、本発明に係る一態様では、前記円環状部材は、周方向長さが等しい3個の前記セグメントにより構成され、2つの前記セグメントのそれぞれに、2つの前記ハンドル部が設けられ、1つのハンドル対が構成可能である。
【0009】
また、本発明に係る一態様では、前記セグメントの前記軸方向端面には、軸方向に突出可能な係合部が設けられ、前記ハンドル部には、前記係合部に対応する位置に凹部が設けられ、前記係合部が前記凹部に係合するとき、前記ハンドル部の前記収容状態が保持される。
【0010】
また、本発明に係るホース継手は、内部を流体が流通可能な2個の継手によって構成されており、前記各継手は、略円筒状で、ホースを取付け可能なホース取付部が一方の軸方向端部に設けられている継手本体と、該継手本体に着脱可能に取り付けられる複数のセグメントとを有し、前記複数のセグメントを周方向に連結して一つの円環状部材を構成し、該円環状部材によって前記ホースを前記ホース取付部に固定するように構成されている。当該ホース継手において、前記各継手本体は、互いに連結可能な連結部を有し、該連結部は、前記ホース取付部に軸方向に隣接するように一体的に設けられており、前記各連結部の軸方向端部には、軸方向に突出している複数の爪部が周方向に間隔を空けて設けられ、爪部には、周方向に延びている溝部が設けられ、前記各継手における前記複数のセグメントのうちの少なくとも一つの前記セグメントの軸方向端面には、周方向に沿って延びている2つのハンドル部が周方向に間隔を空けて取り付けられ、2つの前記ハンドル部は、互いに近接する周方向端部を中心として回動可能であり、2つの前記ハンドル部が回動することにより径方向外側に延びる起立状態となり、起立状態の2つのハンドル部は、互いに当接して1つのハンドル対を構成し、前記2個の継手のうちの一方の継手の前記爪部が、他方の継手の前記溝部に軸方向に挿入され、前記起立状態の前記ハンドルが把持され、周方向に締め付けられることによって、前記爪部が前記溝部内を周方向に移動し、前記爪部が前記溝部内に嵌合するように構成されている。
【0011】
また、本発明に係るホース継手のホース固定部材は、円筒状のホース継手に着脱可能な複数のセグメントを有し、前記複数のセグメントを周方向に連結することによって一つの円環を構成し、ホースを取り囲んで前記ホース継手に固定するように構成されている。当該ホース固定部材において、少なくとも一つの前記セグメントの軸方向端面には、周方向に沿って延びている2つのハンドル部が周方向に間隔を空けて取り付けられ、2つの前記ハンドル部は、互いに近接する周方向端部を中心として回動可能であり、2つの前記ハンドル部が回動することにより径方向外側に延びる起立状態となり、起立状態の2つのハンドル部は、互いに当接して1つのハンドル対を構成し、前記ホース継手を他の継手に当接させ、前記起立状態の前記ハンドルが把持されて前記ハンドルを周方向に回転させることにより、前記ホース継手と前記他の継手とが連結されるように構成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、例えば2本の消防用ホースを連結するときに、別途準備されている締結用工具を用いることなく、効率よく連結作業を行うことが可能となる。さらに、ハンドルが起立状態でないとき、ホースを固定するためのセグメントに軸方向に横倒しの状態で取り付けられているため、連結作業を行わないときは、ハンドルが他の部材に干渉することを抑制できる。その結果、安全に消防用ホースを使用することが可能となる。また、ハンドル部を剛性に高いセグメントに取り付けることにより、ハンドル部の剛性も高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る2個のホース継手のそれぞれに消防用ホースが取り付けられ、2個のホース継手が連結された状態を示す正面図であり、ハンドル部が収容状態を示す。
【
図2】
図1の第1のホース継手に第1の消防用ホースが取り付けられ、ハンドル部が収容状態を示す正面図である。
【
図3】
図2を第1のホース継手を左方から見たときの側面図である。
【
図4】
図2の2つのハンドル部を起立状態にして、ハンドル対を構成している状態を示す斜視図である。
【
図5】
図2の3個のセグメントを示す正面図で、ハンドル部が収容状態を示す。
【
図6】
図5のホース固定部材を左方から見たときの側面図であり、仮想的にハンドルの起立状態を示す。
【
図7】
図6のセグメントからハンドル部が取り外された状態を示す側面図である。
【
図8】
図2の第1のホース継手の継手本体を単体で示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るホース継手の一実施形態について、図面(
図1~
図8)を参照して説明する。本実施形態では、
図1に示すように、同一構造の2個のホース継手(第1のホース継手10及び第2のホース継手20)が、流体が流通可能に軸方向に連結されており、第1のホース継手10には、第1の消防用ホース31が取り付けられ、第2のホース継手20には、第2の消防用ホース32が取り付けられている。
【0015】
本実施形態における第1のホース継手10及び第2のホース継手20は、同一の形状を有する同一部材である。したがって、第1のホース継手10で説明した構造の特徴は、第2のホース継手20も有している。
【0016】
先ず、第1のホース継手10の構造について説明する。第1のホース継手10は、
図1~
図3に示すように、継手本体11とホース固定部材(円環状部材)16を備えている。継手本体11は、
図8に示すように、円筒状の部材で、内部に流体が流通可能な流路を備えており、一方の軸方向端部(
図8の左側端部)には、第2のホース継手20に連結する連結部13が設けられ、反対側の軸方向端部(
図8の右側端部)には、第1の消防用ホース31が着脱可能に取り付けられるホース取付部12が設けられている。
図8に示すホース取付部12に、第1の消防用ホース31が取り付けられ、
図2に示す状態になる。
【0017】
ホース取付部12は、
図8に示すように、軸方向端部が軸方向中間部に比べて径大となっており、さらに、第1の消防用ホース31が滑り動くことを抑制するための凸部12aを有している。凸部12aは、ホース径方向外側に突出し、周方向に沿って延びている。第1の消防用ホース31は、ホース取付部12にホース径方向外側から被さった状態で取り付けられる。すなわち、第1の消防用ホース31の内部に、ホース取付部12が挿入される。第1の消防用ホース31は、ホース固定部材16によって、ホース取付部12に固定される。ホース固定部材16による固定方法については、後で説明する。
【0018】
連結部13は、ホース取付部12と一体的に形成されており、継手本体11の軸方向端部に設けられている。この例における連結部13は、12個の爪部14と、各爪部14に対応する12個の溝部15と、爪部14に周方向に隣接する突出部15aとを有している。さらに、連結部13は係止機構19を備えている。
【0019】
12個の爪部14は、
図3に示すように、周方向に等間隔に、すなわち30度毎に配置されており、それぞれの爪部14は、
図8に示すように、継手本体11の軸方向端部(
図8の左側端部)から軸方向に突出している。この例では、爪部14の根本は、継手本体11の
図8の左端(当接面11a)よりも反対側(
図8の右側)の軸方向にややシフトした位置に配置されている。すなわち、爪部14のホース径方向内側の一部は、連結部13の外周面に重なっている。当接面11aは、第2のホース継手20が連結されるときに、第2のホース継手20に当接する面である。
【0020】
また、
図8に示すように、爪部14の軸方向先端面14aは、軸方向に直交する平面である。また、爪部14は、軸方向先端面14aのホース径方向外側の端から、爪部14における平らな外面14cに向かうに従いホース径方向外側に傾斜する先端側の傾斜面14bと、外面14cから爪部14の根本に向かうに従いホース径方向内側に傾斜する根本側の傾斜面14dとを有している。さらに、爪部14は、根本側の傾斜面14dから継手本体11の外周面に向かって延びる根本側の平面14eを有している。
【0021】
溝部15は、
図8に示すように、各爪部14のホース径方向内側に設けられている。当該溝部15は、爪部14の一方の周方向端面から周方向に凹んでいる。
図4に示すように、溝部15は
図4における反時計回り方向の端面から時計回りに向かって凹んでいる。また、
図4及び
図8に示すように、溝部15のホース径方向内側は開口している。この例では、溝部15の内部において軸方向に対向する先端側面15bと根本側面15cとの間の軸方向距離は、周方向の奥側(
図3における時計回りの周方向)に向かうに従って小さくなる。本実施形態では、根本側面15cは、当接面11cと面一となるように形成されている。すなわち、根本側面15c及び当接面11cの軸方向位置は同じである。
【0022】
また、溝部15は、第2のホース継手20の突出部(図示せず)が挿入可能に構成されている。第2のホース継手20の突出部は、第1のホース継手10の溝部15に挿入され、さらに、溝部15の内部における周方向端部に向かって周方向に進むと、溝部15の先端側面15bと根本側面15cとの間に挟まれて、溝部15に嵌合する。
【0023】
図3及び
図4に示すように、第1のホース継手10の突出部15aは、各爪部14に一方の周方向(
図3における反時計回り方向)に隣接している。本実施形態では、突出部15aは、溝部15に対して爪部14における軸方向根本側に配置され、爪部14の一方の周方向端面(
図3における反時計回り方向の端面)から反時計回り方向に突出している。突出部15aの軸方向における先端側の端面(
図8の左端面)は、当接面11aと、溝部15aの根本側面15cと面一となるように形成されている。
【0024】
突出部15aにおけるホース径方向幅は、爪部14のホース径方向幅よりも小さい。また、突出部15aのホース径方向幅は、溝部15のホース径方向幅に対して同等または小さい。この例では、突出部15aのホース径方向外側の面は、溝部15のホース径方向外側の面15dよりやや径方向内側に配置されている。
【0025】
突出部15aの軸方向に突出する量(軸方向幅)は、第2のホース継手20の溝部(図示せず)の入口付近の軸方向幅よりもやや小さく設定され、第2のホース継手20の溝部の奥側の軸方向幅よりもやや大きく設定されている。ここで溝部15の軸方向幅は、上記した軸方向に対向する先端側面15bと根本側面15cとの間の軸方向距離である。上記したように、突出部15aは、第2のホース継手20の溝部の入口付近では、該溝部に挿入可能であり、第2のホース継手20の溝部の内部における周方向端部では、対向する先端側面と根本側面とによって挟まれる。これにより、突出部15aは、第2のホース継手20の溝部に嵌合する。また、この例では、突出部15aの周方向長さは、第1のホース継手10の溝部15及び第2のホース継手20の溝部の周方向長さよりも短い。
【0026】
また、突出部15aと、反対方向の周方向(
図3における時計回り方向)に隣り合う爪部14との間には間隙Sを設けている。当該間隙Sの周方向長さは、爪部14の周方向長さに対して、ほぼ同等になるように設定されている。
【0027】
係止機構19は、一つの爪部14に設けられており、ストッパー19aと、ねじりコイルばね19bを有している。ストッパー19aは、爪部14の周方向側面に配置され、ばね19bは、爪部14の根本付近にボルト(図示せず)により取り付けられているとともに、ストッパー19aに接続されている。ストッパー19aは、ねじりコイルばね19bを爪部14に取り付けているボルトを中心に回動可能で、ホース径方向外側に延びる突出状態と、軸方向に延びる係止状態を有する。
【0028】
係止状態のストッパー19aは、第2のホース継手20が、第1のホース継手10に連結されるとき、ストッパー19aが設けられている第1のホース継手10の爪部14と、当該ストッパー19aに隣接する第2のホース継手20の爪部24との間に配置され、爪部14,25が周方向に移動することを防ぐことができる。
【0029】
次に、ホース固定部材16について説明する。ホース固定部材16は、
図3及び
図6に示すように、円環状の部材であり、3個の弧状のセグメント(第1のセグメント16a、第2のセグメント16b及び第3のセグメント16c)を有している。ホース固定部材16は、第1~第3のセグメント16a~16cを周方向に連結することにより、一つの円環を構成する。
【0030】
第1~第3のセグメント16a~16cのそれぞれは、中心角が120度の円弧形状で、金属材料により形成される剛性の高い部材である。また、
図5及び
図7に示すように、第1~第3のセグメント16a~16cには、各セグメント16a~16cを繋いでボルト37により締結するための締結部16fが設けられている。締結部16fは、セグメント16a~16cの外周面における周方向端部に配置され、外周面からホース径方向内側に凹む凹形状であり、該凹形状の内側には、周方向に貫通する貫通穴が形成されている。
【0031】
例えば、第1のセグメント16aの一方の周方向端部の締結部16fと、第2のセグメント16bの一方の周方向端部の締結部16fとが締結される。詳細には、各締結部16fの貫通穴にボルト37を貫通させナットで締め付けることにより、第1のセグメント16aの締結部16fと第2のセグメント16bの締結部16fが、締結される。同様に、第1のセグメント16aと第3のセグメント16cが締結され、第2のセグメント16bと第3のセグメント16cが締結される。各締結部16fが締結されることにより、円環状のホース固定部材16が構成される。
【0032】
円環状のホース固定部材16は、ホース取付部12に取り付けられている第1の消防用ホース31をホース径方向の外側から取り囲むように配置される。このとき、ホース固定部材16は、ホース取付部12の凸部12aよりも連結部13に近い方に配置される。その後、各セグメント16a~16cを繋ぐ締結部16fのボルト37及びナットを締め付け、これにより、ホース固定部材16の直径が小さくなる。その結果、ホース固定部材16の内周が第1の消防用ホース31を押圧することにより、第1の消防用ホース31は、ホース取付部12に固定される。
【0033】
ホース固定部材16の軸方向端面のうち、連結部13が配置される方の軸方向端面(連結部側軸方向端面16e)は、連結部13の根本側の平面14eに対して軸方向に間隔を空けて配置されている。
【0034】
本実施形態における第1のセグメント16a、第2のセグメント16b及び第3のセグメント16cのそれぞれは、1つのハンドル対18を構成する第1のハンドル部17A及び第2のハンドル部17Bを有している。先ず、第1のセグメント16aに設けられたハンドル対18を構成する第1のハンドル部17Aについて説明する。
【0035】
第1のハンドル部17Aは、
図4に示すように、第1のセグメント16aの連結部側軸方向端面16eに取り付けられている。第1のハンドル部17Aは、第1のセグメント16aの周方向に沿って延びている金属製の部材であり、第1のセグメント16aの連結部側軸方向端面16eに直交する第1の軸部材17aを中心に、回動可能に構成されている。すなわち、第1のハンドル部17Aは、第1のセグメント16aの周方向に沿って延びる収容状態と、第1のセグメント16aに対してホース径方向に突出する起立状態との、2つの状態になることができる。
【0036】
第1の軸部材17aは、
図7に示す連結部側軸方向端面16eに設けられた軸取付部16hに取り付けられている。この例の軸取付部16hには、例えばベアリングが設けられており、当該ベアリングに第1の軸部材17aが取り付けられている。
【0037】
先ず、収容状態について説明する。
図2、
図5及び
図6に示すように、収容状態の第1のハンドル部17Aは、第1のセグメント16aの外周面よりもホース径方向の内側に配置されおり、外周面よりもホース径方向外側に突出しない状態が保持される。連結部側軸方向端面16eには、連結部側軸方向端面16eから軸方向に突出可能な係合部16gが設けられている。また、第1のハンドル部17Aの連結部側軸方向端面16eに対向する側面には、貫通孔17cが設けられている。この例の貫通孔17cは、軸方向に貫通する貫通孔としているが、底を有する凹部としてもよい。第1のハンドル部17Aが収容状態のとき、係合部16gが貫通孔17cに挿入され、第1のハンドル部17Aの収容状態が保持される。
【0038】
この例の係合部16gは、軸方向に往復移動可能で、連結部側軸方向端面16eから突出する状態と、連結部側軸方向端面16eから突出しない状態を有する。係合部16gには、例えば、ボールプランジャー等が適用されてもよい。この場合、第1のハンドル部17Aの上記側面がボールプランジャーのボール(図示せず)に重なっているときは、ボールプランジャーのボールは連結部側軸方向端面16eから突出していない状態となる。当該ボールが貫通孔17cの開口に重なるとき、当該ボールは連結部側軸方向端面16eから突出し、貫通孔17cに挿入され、その結果、第1のハンドル部17Aの収容状態が保持される。
【0039】
続いて、起立状態について説明する。第1のハンドル部17Aは、上記したように、第1の軸部材17aを中心に回動可能に構成されており、収容状態から、第1のハンドル部17Aの先端がホース径方向の外側に移動するように回動することができる。このとき、第1のハンドル部17Aの貫通孔17cは、連結部側軸方向端面16eに設けられた係合部16gから外れる。すなわち、第1のハンドル部17Aを作業者が把持して回動させることにより、貫通孔17cと係合部16gの係合が解除され、第1のハンドル部17Aは起立状態になることができる。
【0040】
続いて、第2のハンドル部17Bについて説明する。第2のハンドル部17Bは、第1のハンドル部17Aと同様の構造を有している。第2のハンドル部17Bの第2の軸部材17bは、第1のハンドル部17Aの第1の軸部材17aに対してホース周方向に間隔を空けて隣り合うように配置されている。第1のハンドル部17Aの先端と第2のハンドル部17Bの先端は、収容状態のとき、第1及び第2の軸部材17a,17bを間に置いてホース周方向に間隔を空けて配置されている。すなわち、収容状態の第1及び第2のハンドル部17A,17Bは、第1及び第2の軸部材17a,17bを中心にホース周方向の両方向に延びて配置されている。
【0041】
第1のセグメント16aに取り付けられた第1及び第2のハンドル部17A,17Bが起立状態のとき、第1及び第2のハンドル部17A,17Bの外面が互いに当接する。当接する外面は、第1及び第2のハンドル部17A,17Bが収容状態のとき、ホース径方向外側を臨む面であり、当接する部分には、滑り止めの凹凸17dが形成されている。
【0042】
第1及び第2のハンドル部17A,17Bが回動すると、第1及び第2のハンドル部17A,17Bの先端がホース径方向外側に向かう方向に回動し、第1及び第2のハンドル部17A,17Bの先端が互いに近づき、外面が互いに当接する。起立状態の第1及び第2のハンドル部17A,17Bが対をなしてハンドル対18を構成する。ハンドル対18は、作業者が把持して締め付け力(回転力)を作用させることが可能になっている。
【0043】
第2のセグメント16bは、第1のセグメント16aと同様に、第1及び第2のハンドル部17A,17Bによって構成されるハンドル対18を有する。また、第3のセグメント16cも、2つのハンドル対18を備えている(
図6)。
【0044】
また、第2のホース継手20は、第1のホース継手10と同様に構成され、連結部23とホース固定部材26を有している。ホース固定部材26は、第1のホース継手10のホース固定部材16と同様に、第1のセグメント26a、第2のセグメント(図示せず)及び第3のセグメント26cを有している。また、第1~第3のセグメント26a,26cは、第1のハンドル部27A及び第2のハンドル部27Bを有し、それぞれのセグメント26a,26cは、第1及び第2のハンドル部27A,27Bが起立状態になって構成される1つのハンドル対(図示せず)が設けられる。
【0045】
続いて、第1のホース継手10と第2のホース継手20の連結作業について説明する。
【0046】
第1のホース継手10のホース取付部12には、ホース固定部材16によって第1の消防用ホース31が取り付けられており、第2のホース継手20のホース取付部(図示せず)には、ホース固定部材26によって第2の消防用ホース32が取り付けられている。
【0047】
第1のホース継手10のホース固定部材16の各セグメント16a,16b,16cの第1及び第2のハンドル部17A,17Bは、全て収容状態である。第2のホース継手20の第1及び第1のハンドル部27A,27Bも同様である。この状態から、以下の手順で、第1のホース継手10と第2のホース継手20を連結する。本実施形態では、当該連結作業は2人の作業者によって行われる。
【0048】
先ず、
図3に示すように、第1のホース継手10の第1及び第2のセグメント16a,16bの第1及び第2のハンドル部17A,17Bを起立状態にして、2つのハンドル対18を構成する。同様に、第2のホース継手20もハンドル部27A,27Bを起立状態にして、2つのハンドル対を構成する。
【0049】
このとき、第1のホース継手10の第1のセグメント16aのハンドル対18と第2のセグメント16bのハンドル対18は、互いに120度又はそれに近い角度をなす周方向位置で、ホース径方向に突出している。第2のホース継手20の2つのハンドル対も同様である。また、このとき、第1のホース継手10及び第2のホース継手20のそれぞれの係止機構19,29のストッパー19a,29aは、係止状態である。
【0050】
一方の作業者は、第1のホース継手10の2方向に突出する2つのハンドル対18を把持する。他方の作業者は、第2のホース継手20の2つのハンドル対を把持する。
【0051】
次に、第1のホース継手10の連結部13と、第2のホース継手20の連結部23を対向配置させる。このとき、第1のホース継手10の係止機構19と、第2のホース継手20の係止機構29が対応するように配置する。その後、第2のホース継手20の連結部23における爪部24を、第1のホース継手10の隣接する爪部14の間の間隙Sに軸方向に挿入する。このとき、第1のホース継手10の突出部15aの軸方向先端面と、第2のホース継手20の軸方向先端面が当接し、第1のホース継手10の突出部15aは、第2のホース継手20の溝部の入口付近に配置され、同様に、第2のホース継手20の突出部は、第1のホース継手10の溝部15の入口付近に配置される。
【0052】
また、第2のホース継手20の連結部23における爪部24を、第1のホース継手10の隣接する爪部14の間の間隙Sに軸方向に挿入すると、第1のホース継手10のストッパー19aの軸方向先端面は、爪部24に軸方向に押圧され、起立状態になる。同様に、第2のホース継手20のストッパーの軸方向先端面は、第1のホース継手10の爪部14に軸方向に押圧され、起立状態になる。
【0053】
この状態から、第1のホース継手10及び第2のホース継手20を反対方向に回転させる。なお、一方のホース継手を固定しておいて、他方のホース継手を回転させてもよい。回転方向は、第1のホース継手10の突出部15aが、第2のホース継手20の溝部に入り込む方向である。このように回転させることにより、第2のホース継手20の突出部も、第1のホース継手10の溝部15に入り込む方向に移動する。
【0054】
第1のホース継手10のハンドル対18及び第2のホース継手20のハンドル対が作業者によって把持され回転させることにより、周方向に締め付けられる。例えば、第2のホース継手20の溝部の内部に挿入される第1のホース継手10の突出部15aは、第2のホース継手20の溝部の内部おいて対向する先端側面と根本側面との距離が小さくなる位置で、嵌合状態となる。同様に、第1のホース継手10の溝部15の内部に挿入される第2のホース継手20の突出部は、第1のホース継手20の溝部15の内部おいて対向する先端側面15bと根本側面15cとの距離が小さくなる位置で、嵌合状態となる。
【0055】
嵌合状態になると、ストッパー19aは、ねじりコイルばね19bの弾性力により回動され、第1のホース継手10の爪部14とこれに隣接する第2のホース継手20の爪部24との間に入り込み、再び係止状態になる。ストッパー19aが係止状態になることにより、爪部14,24の相対位置が固定される。
【0056】
このように、溝部と、対応する突出部が嵌合することにより、第1のホース継手10と第2のホース継手20が連結され、第1の消防用ホース31と第2の消防用ホース32が、流体が流通可能な状態で連結される。
【0057】
以上の説明からわかるように本実施形態のホース継手によれば、第1及び第2の消防用ホース31,32を連結するときに、別途準備されているスパナ等の締結用工具を用いることなく、効率よく、より短時間で連結作業を行うことが可能となる。
【0058】
第1及び第2のホース継手10,20は、一般的には、第1及び第2の消防用ホース31,32に、常時取り付けられている。ハンドル17aは、起立状態でないとき、すなわち、収容状態では、周方向に延びた状態で固定されている。そのため、消防用ホース31,32の連結作業を行わないときに、ハンドル17a,27aが他の作業時に邪魔になることはない。また、ハンドル17a,27aが他の部材に干渉することもないので、消防用ホース31,32をより安全な状態で使用することが可能となる。また、ハンドル部17A,17B,27A,27Bを、剛性の高いホース固定部材16,26のセグメントに設けているので、ハンドル部17A,17B,27A,27Bの剛性を高くすることも可能となる。
【0059】
上記実施形態の説明は、本発明を説明するための例示であって、特許請求の範囲に記載の発明を限定するものではない。また、本発明の各部構成は上記実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
【0060】
例えば、本実施形態では、爪部14が30度毎に等間隔に配置されているが、これに限らない。例えば90度ごとに4個の爪部14を配置してもよい。また、3個の爪部14を120度ごとに配置してもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、第1のホース継手10の2つのハンドル対18を一方の作業者が把持し、第2のホース継手20の2つのハンドル対を他方の作業者が把持しているが、これに限らない。外径の小さいホースを連結する場合には、1人の作業者で、連結作業を行うこともできる。
【0062】
例えば、第1のホース継手10において、第1のセグメント16aの2つのハンドル部17A,17Bを起立状態にして1つのハンドル対18を構成し、第2のホース継手20も1つのハンドル対を構成し、1人の作業者が各ハンドル対を把持して締め付け作業を行えばよい。
【0063】
また、本実施形態では、第1及び第2のセグメント16a,16bの各ハンドル対18は、第1のセグメント16aの第1及び第2のハンドル部17A,17Bの外面が当接する当接部とホース径中心とを結ぶ直線と、第2のセグメント16bの第1及び第2のハンドル部17A,17Bの外面が当接する当接部とホース径中心とを結ぶ直線とでなす角度は、120度である。しかし、作業性を考慮すると、当該なす角度は、180度に近いことが望ましい。当該角度を180度に近い角度に設定するためには、ホース固定部材16を、4個のセグメントで構成すればよい。
【0064】
また、本実施形態では、ハンドル部の収容状態を保持するために、連続部側軸方向端面に突出部を設け、突出部を軸方向に往復移動可能に構成しているがこれに限らない。ハンドル部が収容状態のときにホース径方向内側となる面に溝を設けて、突出部を溝に嵌合させることにより、ハンドル部の収容状態を保持するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0065】
10 第1のホース継手
11 継手本体
12 ホース取付部
12a 凸部
13 連結部
14 爪部
14a 軸方向先端面
14b 先端側の傾斜面
14c 外面
14d 根本側の傾斜面
14e 根本側の平面
15 溝部
15a 突出部
15b 先端側面
15c 根本側面
15d 径方向外側面
16 ホース固定部材(円環部材)
16a 第1のセグメント
16b 第2のセグメント
16c 第3のセグメント
16f 締結部
16e 連結部側軸方向端面
16h 軸取付部
16g 係合部
17A 第1のハンドル部
17a 第1の軸部材
17B 第2のハンドル部
17b 第2の軸部材
17c 貫通孔(凹部)
17d 凹凸
18 ハンドル対
19 係止機構
19a ストッパー
19b ねじりコイルばね
20 第2のホース継手
23 連結部
24 爪部
26 ホース固定部材
26a 第1のセグメント
26c 第3のセグメント
27A 第1のハンドル部
27B 第2のハンドル部
29 係止機構
31 第1の消防用ホース
32 第2の消防用ホース
37 ボルト