(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-09
(45)【発行日】2022-03-17
(54)【発明の名称】ロボット及び外皮の固定方法
(51)【国際特許分類】
B25J 19/00 20060101AFI20220310BHJP
A63H 11/00 20060101ALI20220310BHJP
A63H 3/36 20060101ALI20220310BHJP
【FI】
B25J19/00 Z
A63H11/00 Z
A63H3/36 A
(21)【出願番号】P 2017066219
(22)【出願日】2017-03-29
【審査請求日】2020-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】507415266
【氏名又は名称】有限会社浅草ギ研
(74)【代理人】
【識別番号】100098899
【氏名又は名称】飯塚 信市
(74)【代理人】
【識別番号】100163865
【氏名又は名称】飯塚 健
(72)【発明者】
【氏名】石井 孝佳
【審査官】臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0249510(US,A1)
【文献】特開2003-117257(JP,A)
【文献】特開2002-035440(JP,A)
【文献】特開2014-100753(JP,A)
【文献】登録実用新案第3154004(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2007/0038331(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0087354(US,A1)
【文献】米国特許第05664983(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0099876(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0360810(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102006051828(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 5/00-19/06
A63H 3/00-11/00
A41F 1/00
A44B 17/00
B29C 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、
弾性素材から成り前記支持体を被覆する外皮と、
前記支持体に設けられ、前記外皮へと沿うように所定の変位動作を行う動作部と、
前記外皮と前記動作部との間に設けられて両者を結合し、前記所定の変位動作を前記外皮へと伝達して前記外皮の一部又は全体を弾性変形させる着脱自在な結合片対と、を備え、
前記結合片対は、磁力により結合されている、ロボット。
【請求項2】
前記結合片対は、所定の位置決め構造を介して結合している、請求項1に記載のロボット。
【請求項3】
前記所定の位置決め構造は、前記結合片対の結合面における位置決めボスとボス穴との嵌め合い構造である、請求項2に記載のロボット。
【請求項4】
変位量の比較的大きい動作部に対応する結合片対の位置決めボスとボス穴の嵌め合い深さは、変位量の比較的少ない動作部に対応する結合片対の位置決めボスとボス穴の嵌め合い深さよりも大きい、請求項3に記載のロボット。
【請求項5】
前記結合片対の各結合片は、いずれも前記結合片同士の接触面の背面側に配置された磁石を有している、請求項1に記載のロボット。
【請求項6】
前記磁石は、ネオジム磁石である、請求項
5に記載のロボット。
【請求項7】
前記ロボットは、さらに、
前記支持体へと固定されたアクチュエータと、
前記アクチュエータへと固定されたアーム部材と、を備え、
前記動作部は、前記アーム部材の先端部に備えられ、前記アーム部材の動作に合わせて変位動作を行う、請求項1に記載のロボット。
【請求項8】
前記ロボットは、さらに、
前記支持体へと固定されたアクチュエータと、
前記支持体へと固定されたガイドパイプと、
前記ガイドパイプへと挿通され、一端が前記アクチュエータ、他端が前記動作部と結合されたワイヤと、を有し、
前記ワイヤが前記アクチュエータにより駆動されて送り出され又は引き込まれることにより、前記動作部が変位動作を行う、請求項1に記載のロボット。
【請求項9】
支持体と、弾性素材から成り前記支持体を被覆する外皮と、前記支持体に設けられ前記外皮へと沿うように所定の変位動作を行う動作部と、前記外皮と前記動作部との間に設けられて両者を結合し前記所定の変位動作を前記外皮へと伝達して前記外皮の一部又は全体を弾性変形させる着脱自在な結合片対と、を備え、前記結合片対は、磁力により結合されている、ロボットにおいて、前記支持体へと前記外皮を固定するための方法であって、
前記結合片対の前記外皮との接触面となる面に接着剤を塗布するステップと、
前記接着剤が生乾き状態であることを利用して前記支持体へと前記外皮をあてがって位置合わせを行うステップと、
前記接着剤を乾燥固化させることにより前記結合片対の外側面を前記外皮の裏面へと固定するステップと、を備える方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ロボットに関し、特に、所定の支持体へと弾性素材の外皮を被せて成るロボット、及び、当該ロボットにおける支持体への外皮の固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、娯楽や福祉等の分野において、人間等の表情をより写実的に表現することが可能なロボットの開発が待たれている。例えば、特許文献1には、ロボットの眉体を磁力により動作させることで顔表情を表出しようとするロボットが開示されている。
【0003】
また、近年、動作する支持体にシリコン素材等から成る弾性素材の外皮を被せ、人間類似の肌の質感を再現しつつ写実的な表情を表出するロボットの開発も試みられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、シリコン素材等から成る弾性素材の外皮は、人間の肌の質感等を再現する上では好適であるものの、経年劣化が比較的に生じやすく、従って、1年乃至数年の使用により疲労してしまうという問題点があった。このような問題は、この種のロボットの実用・普及の大きな妨げとなるものである。
【0006】
本発明は、上述の技術的背景の下になされたものであり、その目的とすることころは、外皮の経年劣化の問題が生じた場合であっても、実用に耐え得るロボット、及び、当該ロボットにおける外皮の固定方法を提供することにある。
【0007】
本発明のさらに他の目的並びに作用効果については、明細書の以下の記述を参照することにより、当業者であれば容易に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の技術的課題は、以下の構成を有するロボットにより解決することができる。
【0009】
すなわち、本発明に係るロボットは、支持体と、弾性素材から成り前記支持体を被覆する外皮と、前記支持体に設けられ、前記外皮へと沿うように所定の変位動作を行う動作部と、前記外皮と前記動作部との間に設けられて両者を結合し、前記所定の変位動作を前記外皮へと伝達して前記外皮の一部又は全体を弾性変形させる着脱自在な結合片対と、を備えている。
【0010】
このような構成によれば、支持体と外皮とは着脱自在な結合片対を介して結合しているので、外皮が使用により経年劣化した場合であっても、一方の結合片を備えた外皮のみを捨てて、新たな外皮へと交換することができる。これにより、外皮の経年劣化等の問題が生じた場合であっても容易に外皮を交換でき、実用に耐え得るロボットを提供することができる。
【0011】
また、前記結合片対は、所定の位置決め構造を介して結合していてもよい。
【0012】
このような構成によれば、結合片対は位置決め構造を介して結合していることから、常に一定の位置に外皮を被覆させることができる。そのため、例えばメンテナンス等が容易となる。
【0013】
さらに、前記所定の位置決め構造は、前記結合片対の結合面における位置決めボスとボス穴との嵌め合い構造であってもよい。
【0014】
このような構成によれば、外皮を支持体へと被覆する際に、結合片対が直接見えなくとも、感覚的かつ容易に適切な位置に外皮を配置することができる。
【0015】
また、変位量の比較的大きい動作部に対応する結合片対の位置決めボスとボス穴の嵌め合い深さは、変位量の比較的少ない動作部に対応する結合片対の位置決めボスとボス穴の嵌め合い深さよりも大きくてもよい。
【0016】
このような構成によれば、動作部と外皮とを結合している結合片対が、動作部の変位量の大きさに耐えられず外れてしまうことを防止することができる。
【0017】
さらに、前記結合片対は、磁力により結合されていてもよい。
【0018】
このような構成によれば、結合片同士の着脱が容易であり、また、外皮を被覆させる際の位置決め等を容易に行うことができる。
【0019】
また、前記結合片対の各結合片は、いずれも前記結合片同士の接触面の背面側に配置された磁石を有していてもよい。
【0020】
このような構成によれば、磁石同士が直接的に隣り合わないことから、外皮の交換の際などに意図せず磁石と結合片とが分離してしまうことを防止することができる。
【0021】
さらに、前記磁石は、ネオジム磁石であってもよい。
【0022】
このような構成によれば、結合片対の間で、外皮の弾性変形という機能は担保しつつも、 外皮の交換が容易といった程度の適度な結合を実現することができる。
【0023】
また、前記ロボットは、さらに、前記支持体へと固定されたアクチュエータと、前記アクチュエータへと固定されたアーム部材と、を備え、前記動作部は、前記アーム部材の先端部に備えられ、前記アーム部材の動作に合わせて変位動作を行うものであってもよい。
【0024】
このような構成によれば、実際に変位する箇所と動作源となるアクチュエータとをアームを介して離間させることができるので、多数の変位動作部が集中する箇所等が存在する場合であっても、支持体空間内に各部品を無理なく配置することができる。
【0025】
さらに、前記ロボットは、さらに、前記支持体へと固定されたアクチュエータと、前記支持体へと固定されたガイドパイプと、前記ガイドパイプへと挿通され、一端が前記アクチュエータ、他端が前記動作部と結合されたワイヤと、を有し、前記ワイヤが前記アクチュエータにより駆動されて送り出され又は引き込まれることにより、前記動作部が変位動作を行うものであってもよい。
【0026】
このような構成によれば、実際に変位する箇所と動作源となるアクチュエータとをワイヤを介して離間させることができるので、多数の変位動作部が集中する箇所等が存在する場合であっても、支持体空間内に各部品を無理なく配置することができる。
【0027】
また、本発明は外皮の固定方法としても観念することもできる。すなわち、本発明に係る方法は、支持体と、弾性素材から成り前記支持体を被覆する外皮と、前記支持体に設けられ前記外皮へと沿うように所定の変位動作を行う動作部と、前記外皮と前記動作部との間に設けられて両者を結合し前記所定の変位動作を前記外皮へと伝達して前記外皮の一部又は全体を弾性変形させる着脱自在な結合片対と、を備えるロボットにおいて、前記支持体へと前記外皮を固定するための方法であって、前記結合片対の前記外皮との接触面となる面に接着剤を塗布するステップと、前記接着剤が生乾き状態であることを利用して前記支持体へと前記外皮をあてがって位置合わせを行うステップと、前記接着剤を乾燥固化させることにより前記結合片対の外側面を前記外皮の裏面へと固定するステップと、を備えている。
【0028】
このような構成によれば、外皮が使用により経年劣化した場合であっても、外皮のみを容易に交換することができるような形態で、外皮を固定することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、外皮の経年劣化等の問題が生じた場合であっても容易に外皮を交換できるので、実用に耐え得るロボットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は、ロボット頭部の全体構成について示す図である。
【
図5】
図5は、ガイドパイプを備えた支持体の斜視図である。
【
図9】
図9は、アーム部材付結合片の拡大図である。
【
図17】
図17は、上唇の両脇部動作部の部分分解斜視図である。
【
図18】
図18は、下唇の両脇部動作部の部分分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係るロボットの実施の一形態を、添付の図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0032】
<1.全体構成>
<1.1 外皮と支持体の構成>
図1~
図5を参照しつつ、ロボット頭部1の構成について説明する。
【0033】
図1は、ロボット頭部1の全体構成について示す図である。ロボット頭部1は、骨組み及び動作部としての機能を有し人間の頭部類似の形状を有する支持体50に、シリコン等の弾性素材から成る外皮10を被せることにより構成されている。なお、同図において、外皮10は、理解の容易のため、部分的に破断した状態にて示されている。また、外皮10と支持体50とは、後述するように基本的に支持体50の動作部を介して結合している。しかしながら、支持体50上における外皮10の張力の維持や安定的な配置のため、外皮10と支持体50との間に、支持体50の一部へと着脱可能に結合されるものの外皮10とは接着等されない補助支持部材30を設けてもよい。
【0034】
図2は、支持体50の正面図である。同図から明らかな通り、支持体50は、人間の首に相当する位置から支持体50の中央部へと至る中央構造部材501と、中央構造部材501の上端に設けられた台部502と、台部502上に配置されアクチュエータ等の後述の種々の部材を取り付けることが可能な左側構造部材503と右側構造部材504とを有している。
【0035】
支持体50は、外皮10と接着され、変位動作を行うことにより外皮10の一部を弾性変形させる複数の動作部を有している。すなわち、支持体50の眉に相当する位置の周辺には、左右一対に、外皮10の眉に相当する位置周辺を略上下に動作させる右側眉周辺部動作部508及び左側眉周辺部動作部509が設けられている。支持体50の左右の眼球部512、513の直下周辺には、左右一対に、外皮10の眼の直下位置周辺を略上下に動作させる右眼直下位置動作部514及び左眼直下位置動作部515が設けられている。支持体50の頬の上部には、左右一対に、外皮10の頬上部周辺を略上下に動作させる右頬上部動作部516及び左頬上部動作部517が設けられている。支持体50の頬の下部には、左右一対に、外皮10の頬下部周辺を略上下に動作させる右頬下部動作部518及び左頬下部動作部519が設けられている。支持体50の上唇の中央には、外皮10の上唇の中央を略上下に動作させる上唇中央部動作部524が設けられている。支持体50の下唇の中央には、外皮10の下唇の中央を略上下に動作させる下唇中央部動作部525が設けられている。支持体50の上唇の両脇上部周辺には、左右一対に、外皮10の上唇の両脇上部を略水平方向に動作させる上唇右上部動作部520及び上唇左上部動作部521が設けられている。支持体50の下唇の両脇下部周辺には、左右一対に、外皮10の下唇の両脇下部を略水平方向に動作させる下唇右下部動作部522及び下唇左下部動作部523が設けられている。なお、支持体50の左右の眼球部512、513には、左右一対に、瞼の開閉動作を行う左眼瞼動作部510及び右目瞼動作部511が設けられている。また、支持体50の前面の中央上部には、補助支持部材30との結合部となる第1の補助支持部材結合片526及び第2の補助支持部材結合片527が設けられている。
【0036】
また、支持体50の額及び顎に相当する部分には、外皮10との結合部となり、ロボット頭部1の前面周囲に沿って半円弧状の形状を有する額部結合部品505及び顎部結合部品506が配置されている。これらの結合部品はともに、後述するように、動作はしないもののその内面側において支持体50と磁力により結合され、その外面側において外皮10と接着される。
【0037】
図3は、顎部結合部品506の分解斜視図である。顎部結合部品506は、支持体50の顎部に設けられた支持体側顎部結合片506bと、その外面を外皮10に接着される外皮側顎部結合片506aとから成る。外皮側顎部結合片506aは、その中央及び左右の所定箇所に、外皮10との接着面側に磁石を有する中央部磁力結合部5061a、左側磁力結合部5063a、及び、右側磁力結合部5062aを備え、一方、支持体側顎部結合片506bは、その中央及び左右の所定箇所に、外皮側顎部結合片506aとの接触面の背面側(支持体側)に磁石を有する中央部磁力結合部5061b、左側磁力結合部5063b、及び、右側磁力結合部5062bとを備え、それらが磁力を介して互いに結合することにより、外皮側顎部結合片506aと支持体側顎部結合片506bとは結合される。なお、中央部磁力結合部5061bは、外皮側顎部結合片506aとの接触面に2つのボスを有しており、このボスが外皮側顎部結合片506aの中央部磁力結合部5061aに設けられた対応する図示しない2つのボス穴と嵌合することにより、位置決めが実現される。
【0038】
図4は、額部結合部品505(
図2参照)の分解斜視図である。額部結合部品505は、支持体側に設けられ、後述する中央部磁力結合部5051a、左側磁力結合部5053a、及び、右側磁力結合部5052aとから成る支持体側額部結合片505bと、外皮10とその外面を接着される外皮側額部結合片505aとから成る。外皮側額部結合片505aは、その中央及び左右側面の所定箇所に、外皮10との接着面側に磁石を有する中央部磁力結合部5051a、左側磁力結合部5053a、及び、右側磁力結合部5052aを備え、それらが中央部磁力結合部5051a、左側磁力結合部5053a、及び、右側磁力結合部5052aと、それぞれ、磁力を介して結合されることにより、外皮側額部結合片505aと支持体側額部結合片505bとは結合される。なお、中央部磁力結合部5051bは、外皮側額部結合片505aとの接触面に2つのボス穴を有しており、このボス穴が外皮側額部結合片505aの中央部磁力結合部5051aに設けられた対応する図示しない2つのボスと嵌合することにより位置決めが行われる。また、外皮側額部結合片505aの右側磁力結合部5052aと左側磁力結合部5053aは、それぞれ2つのボスを有しており、このボスが、支持体50に設けられた右側磁力結合部5052bと左側磁力結合部5053bに設けられた図示しない2つボス穴と、それぞれ嵌合することにより位置決めが行われる。
【0039】
上述のボスとボス穴を利用した位置決め機構によれば、一旦外皮10を取り外した場合であっても、容易に、元の位置に外皮10を被せることができる。
【0040】
なお、
図2~
図4に記載の支持体50は、理解の容易化のため簡略化されており、一部の動作部をワイヤ駆動させるためのワイヤと当該ワイヤをガイドするガイドパイプの記載が省略されている。
【0041】
図5は、ワイヤとガイドパイプを明示した支持体50の斜視図である。同図において、支持体50の上唇中央に配置される外皮側上唇中央結合片524aは、V字形状の支持体側上唇中央結合片524bの一端と嵌合して一体となっている(
図13参照)。また、V字形状の支持体側上唇中央結合片524bの他端は、所定の締結具を介してワイヤ524cと接続されている(
図13参照)。ワイヤ524cは、支持体50へと固定され所定の形状保持力を有するガイドパイプ524dによりその途中を被覆され、図示しないアクチュエータ524eの出力部と接続されている。
【0042】
また、
図5において、外皮側の上唇右上部結合片520a及び上唇左上部結合片521aは、支持体50側の上唇右上部結合片520b(
図17参照)及び上唇左上部結合片521b(
図17参照)と、それぞれ磁力を介して結合している。上唇右上部結合片520bと上唇左上部結合片521bとは、その一部に設けられた歯車部を介して連動するよう構成されており、上唇左上部結合片521bは端部においてワイヤ521eと接続されている。ワイヤ521eは、その途中を支持体50へと固定され所定の形状保持力を有するガイドパイプ521dに被覆され、支持体50の中央部から側部へと延び、アクチュエータ521fの出力部へと接続されている。
【0043】
さらに、
図5において、支持体50の下唇中央に配置される外皮側下唇中央結合片525aは、所定の係止構造を介して支持体50側の支持体側下唇中央結合片525b(
図15参照)と一体となっている。支持体側下唇中央結合片525bは、その端部においてワイヤ525eと所定の締結具を介して接続される。ワイヤ525eは、支持体50へと固定され所定の形状保持力を有するガイドパイプ525dにより顎下から側頭部に至る経路を被覆され、アクチュエータ525fの出力部に接続される。
【0044】
さらに、
図5において、外皮側の下唇右下部結合片522a及び下唇左下部結合片523aは、支持体50側の下唇右下部結合片522b(
図18参照)及び下唇左下部結合片523b(
図18参照)と、それぞれ磁力を介して結合している。同図においては明示的な図示はないものの、下唇右下部結合片522bと下唇左下部結合片523bとは、上唇の両脇部と同様に、歯車部を介して連動するよう構成されており、下唇左下部結合片522bは端部においてワイヤ522eと接続されている。また、明示的図示はないものの、ワイヤ522eは、その途中を支持体50へと固定され所定の形状保持力を有するガイドパイプ522dに被覆され、支持体50の中央部から右側部へと延び、右側面に設けられた図示しないアクチュエータ522fの出力部へと接続されている。
【0045】
加えて、
図5において、外皮側の左頬下部結合片519aは、支持体側の左頬下部結合片519b(
図12参照)と磁力を介して結合されている。左頬下部結合片519bは、直方体形状を有する延長部519cと一体形成されており、当該延長部519cは、その中央に断面四角形状のガイド孔を有するガイド片519dへと挿通されている。延長部519cは、その端部においてワイヤ519eと所定の締結具を介して接続され、ワイヤ519eは支持体50へと固定され所定の形状保持力を有するガイドパイプ519fで被覆されつつ、アクチュエータ519gの出力部と接続されている。図示はないものの、右頬下部も左右対称に同様の構成を有している。
【0046】
なお、下唇中央結合片525a、下唇右下部結合片522a及び下唇左下部結合片523aは、顎部結合片506bと連動するよう構成されている。そのため、顎部結合片506bがアクチュエータにより作動されて下方へ変位し口が開くと、下唇中央結合片525a、下唇右下部結合片522a及び下唇左下部結合片523aが、共に下方へ移動することとなる。
【0047】
<1.2 外皮の固定方法及び着脱方法>
次に、
図6~
図8を参照しつつ、支持体50への外皮10の固定方法について説明する。
【0048】
図6は、外皮10を支持体50へと接着する際の支持体50の接着面に関する説明図である。同図から明らかな通り、外皮10側の各結合片508a~509a、514a~525a、及び、外皮側の額部結合片505a及び顎部結合片506aは、支持体側の各結合片508b~509b、514b~525b、及び、支持体側の額部結合片505b及び顎部結合片506bと対応し、これらは初期状態において互いに磁力を介して結合された状態にある。
【0049】
この外皮10側の各結合片508a~509a、514a~525a、及び、外皮側の額部結合片505a及び顎部結合片506aの外側面、すなわち、外皮10との接触面側(同図中ではハッチング又は斜線にて表示された部分)に対して接着剤を塗布する。このとき用いる接着剤は瞬間的に固化する性質のものではなく、外皮10との位置合わせを行うことを可能にする程度の固化時間を有するものが望ましい。また、接着剤としては公知の種々のものを利用することができるが、例えば、外皮10がシリコン系材料であればシリコン系の接着剤を用いることが好適である。
【0050】
その後、外皮側の各結合片508a~509a、514a~525a、及び、外皮側の額部結合片505a及び顎部結合片506aの外側面に塗布された接着剤が、未だ生乾き状態となっているうちに、支持体50へと弾性素材から成る外皮10を被せる。このとき、接着剤は、外皮10との位置合わせを行うことを可能にする程度の固化時間を有することから、両者を適当に摺り動かすことで各接着面を外皮10に対して適切な位置、すなわち、頬周辺の接着面は頬周辺の適切な位置に、口元の接着面は口元周辺の適切な位置に、眼の周囲の接着面については目の周囲の適切な位置に等、適切に配置することができる。各接着面を外皮10の適切な位置に配置した後、所定時間放置することで、接着剤が乾燥固化し、各接着面と外皮10との間が固定される。
【0051】
このような固定方法によれば、支持体50と外皮10とは着脱自在な結合片対を介して結合しているので、外皮が使用により経年劣化した場合等であっても、一方の結合片を備えた外皮のみを捨てて、新たな外皮へと交換することができる。これにより、外皮の経年劣化等の問題が生じた場合であっても容易に外皮を交換でき、実用に耐え得るロボットを提供することができる。
【0052】
次に、
図7及び
図8を参照しつつ、上述の工程により支持体50に対して固定された外皮10を一時的に取り外した場合の外皮10及び支持体50の態様について説明する。
【0053】
図7は、上述の構成により支持体50に対して固定された外皮10を支持体50から取り外した様子について示すロボット頭部1の分解斜視図である。なお、同図においては、支持体50の一部へと着脱可能に結合されるものの外皮10とは接着等されない補助支持部材30が外皮10と支持体50との間に配置されている。同図から明らかな通り、ロボット頭部1を分解すると、外皮10側の各結合片508a~509a、514a~525a、及び、外皮側の額部結合片505a及び顎部結合片506aは、支持体50との磁力による結合を解除されて、外皮10の裏面へと付随する。一方、支持体50側の各結合片508b~509b、514b~525b、及び、支持体50側の額部結合片505b及び顎部結合片506bは支持体50側に留まることとなる。
【0054】
図8は、外皮側の各結合片508a~509a、514a~525a、及び、外皮側の額部結合片505a及び顎部結合片506aが付随した状態の外皮10の裏面についての説明図である。同図から明らかな通り、外皮10の裏面の額部分には外皮側額部結合片505aが、顎部分には外皮側顎部結合片506aが、眉に相当する位置周辺には左右に右側眉周辺部結合片508aと左側眉周辺部結合片509aが、眼の下位置周辺には左右に右眼直下位置結合片514aと左眼直下位置結合片515aが、頬上部周辺には左右に右頬上部結合片516aと左頬上部結合片517aが、頬下部周辺には左右に右頬下部結合片518aと左頬下部結合片519aが、口の周囲には上唇右上部結合片520a、上唇左上部結合片521a、下唇右下部結合片522a、下唇左下部結合片523a、上唇中央部結合片524a、下唇中央部結合片525aが、それぞれ接着固定されている。なお、上述した通り、各結合片同士は互いにボスとボス穴の嵌め合い構造を利用して位置決めを行いつつ磁力を介して結合可能に構成されている。また、同図から明らかな通り、外皮10の眼と口の部分には切り込みが設けられており、それらの周囲の動作部により弾性変形してそれらの切り込みは開閉可能に構成されている。
【0055】
このような構成によれば、各結合片対は位置決め構造を介して結合していることから、常に一定の位置に外皮10を被覆させることができ、例えば、メンテナンス等が容易となる。また、結合片同士の間では特にボスとボス穴との嵌め合い構造を採用していることから、外皮10を支持体50へと被覆する際に、結合片対が直接見えなくとも、感覚的かつ容易に適切な位置に外皮10を配置することができる。
【0056】
<2.各部の動作>
次に、
図9~
図18を参照しつつ、各部の構成と動作について詳細に説明する。
【0057】
<2.1 アーム部材を用いた動作>
本実施形態に係るロボット頭部1は種々の態様により動作する。
図9は、左頬上部動作部517の駆動方法について説明する図であり、特に、アクチュエータ517cによりアーム部材付駆動片517bを変位動作させる例について示している。
【0058】
同図から明らかな通り、アクチュエータ(サーボモータ)517cの出力部は、アーム部材付結合片517bの一端と接続されており、アーム部材付結合片517bの他端は外皮側に接着される左頬上部結合片517aとボスを利用した位置決め構造を介して磁力により結合されている。
【0059】
図10(a)及び
図10(b)は、左頬上部結合片517aとアーム部材付結合片517bを2つの異なる角度から観察した場合の分解斜視図である。左頬上部結合片517aは、結合片本体5171aと、結合片本体5171aの一面に設けられた2つの孔部に埋設固定された2つのネオジム磁石5172aと、結合片本体5171aの他方の面に設けられた2つのボス5173aとから構成されている。一方、アーム部材付結合片517bの左頬上部結合片517aとの結合箇所には略長円形状の結合片本体部5171bが設けられ、結合片本体部5171bの左頬上部結合片517aとの結合面側には2つのボス5173aの位置と対応して2つのボス穴5173b、他方の面には前述の2つのネオジム磁石5172aの位置と対応する位置に配置された2つの孔部に埋設された2つのネオジム磁石5172bが固定されている。また、結合片本体部5171bは、鈍角を為して屈曲したアーム部5174bと一体に形成されており、当該アーム部5174bは結合片本体部5171bの他端側において環状をなしてアクチュエータ517cの出力部と結合している。
【0060】
図11は、左頬上部動作部517bの駆動方法について説明する図である。まず、所定の制御部へと接続されたアクチュエータ517cが駆動されると、アクチュエータ517cの出力部は、図面中央の矢印の通り時計方向へ回転する。アクチュエータ517cの出力部と接続されたアーム部材付結合片517bは、当該出力部の出力軸を中心として時計方向へ回転し、左頬上部結合片517aを時計方向へと回転させ(図面中央左の時計周り方向の矢印)、これにより、外皮10を略上方向へと引き上げることとなる。
【0061】
なお、このとき、アーム長を長くする程、アーム先端部の結合片が描く軌道の曲率半径は大きくなり、結合片の変位動作はより垂直な上下動へと近似することとなる。また、アクチュエータ517cを逆方向へと回転させると、上述の回転とは逆方向の回転処理がなされる。
【0062】
以上のようにアームを用いた動作方法によれば、実際に変位する箇所と動作源となるアクチュエータとをアームを介して離間させることができるので、多数の変位動作部が集中する箇所(例えば、微妙な表情の表出を求められるような箇所)等が存在する場合であっても、頭部空間内に各部品を無理なく配置することができる。
【0063】
なお、ここでは左頬上部結合片517aを取り上げて例示を行ったものの、本実施形態においては、右頬上部動作部516、眼の下周辺の動作部514及び515、眉に相当する位置周辺の動作部508及び509についても、同種のアームを用いた動作方法が採用されている。
【0064】
<2.2 ガイドパイプとワイヤを用いた動作>
次に、
図12を参照しつつ、ガイドパイプとワイヤとを用いた左頬下部結合片519aの動作について説明する。
【0065】
図12は、支持体50の左側面図であり、左頬下部結合片519aの動作に関する説明図である。
【0066】
まず、アクチュエータ519gが作動すると、アクチュエータ519gの出力部が、時計周り方向へと回転する。この回転に伴って、アクチュエータ519gの出力部へと所定の締結具を介して接続されたワイヤ519eが、支持体10へと固定され所定の形状保持力を有するガイドパイプ519f内を摺動する。ワイヤ519eの他端は、所定の締結具を介して延長部519cと接続され、ワイヤ519eがガイド片519dのガイド孔に直交してガイドパイプ519f内を摺動することで、左頬下部結合片519a及び519bが略後方へと変位する。また、この逆に、アクチュエータが半時計周り方向に回転すると、左頬下部結合片519a及び519bは略前方へと変位することとなる。
【0067】
以上のようにワイヤを用いた動作方法によれば、実際に変位する箇所と動作源となるアクチュエータとをワイヤを介して離間することができるので、多数の変位動作部が集中する箇所(例えば、微妙な表情の表出を求められるような箇所)等が存在する場合であっても、頭部空間内に各部品を無理なく配置することができる。
【0068】
また、ワイヤは所定の形状保持力を有するガイドパイプにより、その経路をガイドされているので、例えば、アクチュエータによりワイヤを引き込む又は送り出す場合であっても、変位動作部とアクチュエータとの間を結ぶ経路は常に一定となるので、アクチュエータによるワイヤの引き込み量又は送り出し量を直接的に変位動作量へと変換することができる。
【0069】
なお、同図からは必ずしも明らかでないものの、右頬下部結合片518aについても、左右対称に同様の構成が採用されている。また、本実施形態においては、ワイヤとガイドパイプを用いた駆動方法は、口周辺の各動作部、すなわち、上唇右上部動作部520、上唇左上部動作部521、下唇右下部動作部522、下唇左下部動作部523、上唇中央部動作部524、下唇中央部動作部525でも採用されている。
【0070】
<2.2 上唇中央の動作>
次に、
図13~
図14を参照しつつ、上唇中央部動作部524の動作について説明する。上唇中央部動作部524の構造も基本的にはガイドパイプとワイヤとを用いた駆動であるが、特に、支持体50側の上唇中央結合片524bの形状及び動作において特徴がある。
【0071】
図13は、上唇中央部動作部524の分解斜視図である。外皮10側の上唇中央結合片524aは、一面に後述する係合部5241bとの係合部を備え他方の面にネオジム磁石5242aを埋設するための埋設孔を有し先端に外皮10との接着面5243aを有する略鍵型形状の結合片本体5241aと、結合片本体5241aの埋設孔へと埋設されて固定されるネオジム磁石5242aとから構成されている。一方、支持体50側の上唇中央結合片524bは、上述の係合部と嵌め合いにより係合する係合部5241bと、嵌め合い面の背面側に埋設固定されるネオジム磁石5242bと、V字形状を有し中央構造部材501の一端においてそのV字の頂点を水平に軸止されV字の一端の先端をワイヤ524cと、他方の先端を係合部5241bと接続したV字動力伝達部5243bとを有している。
【0072】
図14は、上唇中央動作部524の動作について説明する図である。図示しないアクチュエータ524eによりワイヤ524cが図面上方向に引き込まれると、V字動力伝達部5243bは、V字の頂点を中心に回転し、その一端に延在する係合部5241bとそれと係合した上唇中央結合片524aを図中の矢印の通り時計周り方向に回転させる。このように回転することで、末端の外皮10との接着面5243aが回転し、すなわち、外皮10を備えたロボット頭部1の上唇中央部は上方向に引き上げられるに連れて前方へと突き出るような変位を行うこととなる。
【0073】
このような構成によれば、口を前方へと突き出す、或いは窄めるような動作を写実的又は自然に表現することができる。これは、特に、例えば、「う」や「お」などを発音する際の表情などを再現しようとした場合に顕著である。
【0074】
また、このように比較的に変位量が大きい口元の中央部分については、磁力のみではなく嵌め合いによる係合を採用することで、より確実に駆動側からの変位動作を伝達することができる。
【0075】
<2.3 下唇中央の動作>
次に、
図15及び
図16を参照しつつ、下唇中央部動作部525の構成及び動作について説明する。
【0076】
図15は、下唇中央部動作部525の組立状態及び分解状態の斜視図である。外皮10側の下唇中央結合片525aは、接着面5251aと、接着面5251aの裏面から延び後述の係合部525bへと嵌め合いにより係合する係合部5252aとから構成されている。一方、支持体側の下唇中央結合片525bは、アクチュエータ525fにより駆動され上方に向けて延在するワイヤ525eの末端に所定の締結具を用いて接続された係合部525bを有している。なお、ワイヤ525eの略垂直方向の上下動を保証するため、ワイヤ525eは下唇中央部の直下にてガイド部525cが設けられている。また、ワイヤ525eは図示しないガイドパイプ525dによりその途中を被覆されている。
【0077】
図16は、下唇中央部動作部525の動作について説明する図である。アクチュエータ525f(
図5参照)の出力部へと接続されたワイヤ525eがガイドパイプ525d内を摺動すると、下唇中央結合片525a、525bが図中の矢印の通り上下動する。これにより、外皮10の下唇中央部は略上下に変位することとなる。
【0078】
このように比較的に変位量が大きい口元の中央部分については、磁力ではなく嵌め合いによる係合を採用することで、より確実に駆動側からの変位動作を伝達することができる。
【0079】
<2.4 上唇の両脇の動作>
次に、
図17を参照しつつ、上唇右上部動作部520と上唇左上部動作部521の構成と動作について説明する。
【0080】
同図から明らかな通り、上唇右上部結合片520aは、一の面に外皮10との接着面、他方の面に2つのボス5203aを有し内部にネオジム磁石5202aを内包する空間を有する結合片本体5201aと、ネオジム磁石5202aとを有している。また、上唇右上部結合片520bは、上唇右上部結合片520aとの結合面に2つのボス穴を有し内部にネオジム磁石5203bを内包するための空間を有する結合片本体5202bと、結合片本体5202bの背面に連結されたアーム部5204bと、アーム部5204bに連結され円周上の一部が歯車形状を有する歯車部5205bとを有している。
【0081】
一方、上唇左上部結合片521aは、一の面に外皮10との接着面、他方の面に2つのボス5213aを有し内部にネオジム磁石5212aを内包する空間を有する結合片本体5211aと、ネオジム磁石5212aとを有している。また、上唇左上部結合片521bは、上唇左上部結合片521aとの結合面に2つのボス穴5211bを有し内部にネオジム磁石5213bを内包するための空間を有する結合片本体5212bと、結合片本体5212bの背面に連結されたアーム部5214bと、アーム部5214bに連結され円周上の一部が歯車形状を有する歯車部5215bとを有している。
【0082】
なお、上唇右上部結合片520bの歯車部5205bと上唇左上部結合片521bの歯車部5215bとは適切に歯車同士が噛み合うように(例えば、歯車のピッチ円が接するように)その中心を離間して配置されている。また、上唇左上部結合片521bの歯車部5215bの一部はワイヤ521eと接続されている。
【0083】
また、上述のボス5203a及びボス5213aと、ボス穴5201b及び5211bの嵌め合い深さは、他の動作部(左側眉周辺部動作部509、右側眉周辺部動作部508、左眼直下位置動作部515、右眼直下位置動作部514、左頬上部動作部517、右頬上部動作部516、左頬下部動作部519、右頬下部動作部518)におけるボスとボス穴の嵌め合い深さよりも深いよう構成されている。
【0084】
このような構成によれば、変位量が比較的に大きい口周辺の動作部と外皮とを結合している結合片対が、動作部の変位量の大きさに耐えられず外れてしまうことを防止することができる。
【0085】
次に動作について説明する。アクチュエータ521f(
図5参照)が作動すると、ワイヤ521eが引き込まれ或いは繰り出される。このワイヤ521eがガイドパイプ521f内を摺動すると同時に歯車部5215bが回転する。上唇右上部結合片520bと上唇左上部結合片521bとは歯車部を介して連動するよう構成されているため、上唇右上部結合片520aと上唇左上部結合片521aとは、互いに離れる方向又は互いに近づく方向に略水平方向に変位する。
【0086】
上述の通り、上唇右上部結合片520aと上唇左上部結合片521aとは連動する構成となっているので、口の動きは通常左右対称であるから、口の動きを効率的かつ十分に表出することができる。
【0087】
<2.5 下唇の両脇の動作>
次に、
図18を参照しつつ、下唇右下部動作部522と下唇左下部動作部523の構成と動作について説明する。
【0088】
同図から明らかな通り、下唇右下部結合片522aは、一の面に外皮10との接着面、他方の面に2つのボス5223aを有し内部にネオジム磁石5222aを内包する空間を有する結合片本体5221aと、ネオジム磁石5222aとを有している。また、下唇右下部結合片522bは、下唇右下部結合片522aとの結合面に2つのボス穴5221bを有し内部にネオジム磁石5223bを内包するための空間を有する結合片本体5222bと、結合片本体5222bの背面に連結されたアーム部5224bと、アーム部5224bに連結され円周上の一部が歯車形状を有する歯車部5225bとを有している。
【0089】
一方、下唇左下部結合片523aは、一の面に外皮10との接着面、他方の面に2つのボス5233aを有し内部にネオジム磁石5232aを内包する空間を有する結合片本体5231aと、ネオジム磁石5232aとを有している。また、下唇左下部結合片523bは、上唇左上部結合片523aとの結合面に2つのボス穴5231bを有し内部にネオジム磁石5233bを内包するための空間を有する結合片本体5232bと、結合片本体5232bの背面に連結されたアーム部5234bと、アーム部5234bに連結され円周上の一部が歯車形状を有する歯車部5235bとを有している。
【0090】
なお、下唇右下部結合片522bの歯車部5225bと下唇左下部結合片523bの歯車部5235bとは適切に歯車同士が噛み合うように(例えば、歯車のピッチ円が接するように)その中心を離間して配置されている。また、下唇左下部結合片522bの歯車部5225bの一部はワイヤ522eと接続されている。
【0091】
次に動作について説明する。アクチュエータ522fが作動すると、ワイヤ522eが引き込まれ或いは繰り出される。このワイヤ522eがガイドパイプ522f内を摺動すると同時に歯車部5225bが回転する。下唇右下部結合片522bと下唇左下部結合片522bとは歯車部を介して連動するよう構成されているため、下唇右下部結合片522aと下唇左下部結合片523aとは、互いに離れる方向又は互いに近づく方向に略水平方向に変位する。
【0092】
上述の通り、下唇右下部結合片522aと下唇左下部結合片523aとは連動する構成となっているので、口の動きは通常左右対称であるから、口の動きを効率的かつ十分に表出することができる。
【0093】
また、唇の周囲は、外皮10の裏面から、上唇右上部動作部520、上唇中央部動作部524、上唇左上部動作部521、下唇右下部動作部522、下唇中央部動作部525、下唇左下部動作部523の6点により支持されている。そのため、適切な制御により、中央部は略垂直方向、両脇部は略水平左右方向に弾性変形し、又、それらの弾性変形が組み合わされるので、人間のような写実的な口の動きを再現させることができる。
【0094】
さらに、上述の唇周辺の6点の動作に合わせて、右頬下部動作部518、左頬下部動作部519の頬に沿った前後方向の動作を合わせることで、口元だけでなく頬の動きまで含めた写実的な口の動きを再現することができる。
【0095】
<3.動作例>
次に、
図19を参照しつつ、口周辺の各動作部を協調させて動作させた場合の口の動作例について説明する。
【0096】
図19(a)は、日本語の母音の「あ」を発声する際の口の形、すなわち、口を上下に開く口の形を再現する際の各動作部の動き方について矢印を用いて示したものである。「あ」を発声する際、顎部結合部品506が下方に変位する。そのため、下唇右下部動作部522と、下唇左下部動作部523と、下唇中央部動作部525が全体として顎部結合部品506と共に下方に変位する。
【0097】
図19(b)は、日本語の母音の「い」を発声する際の口の形、すなわち、口を左右に引き付ける口の形を再現する際の各動作部の動き方について矢印を用いて示したものである。「い」を発声する際、右頬下部動作部518、上唇右上部動作部520、下唇右下部動作部522は所定量だけ右方向(外側方向)へ、左頬下部動作部519、上唇左上部動作部521、下唇左下部動作部523は所定量だけ左方向(外側方向)へ変位する。
【0098】
図19(c)は、日本語の母音の「う」を発声する際の口の形、すなわち、口を突き出す或いは窄めた形を再現する際の各動作部の動き方について矢印を用いて示したものである。「う」を発声する際、上唇右上部動作部520、下唇右下部動作部522は所定量だけ左方向(内側方向)へ、上唇左上部動作部521、下唇左下部動作部523は所定量だけ右方向(内側方向)へ、上唇中央部動作部524及び下唇中央部動作部525は上方へ所定量だけ変位する。
【0099】
図19(d)は、日本語の母音の「え」を発声する際の口の形、すなわち、口を上下に開くと共に軽く頬を左右に引き付ける口の形を再現する際の各動作部の動き方について矢印を用いて示したものである。「え」を発声する際、顎部結合部品506は下方に、右頬下部動作部518は所定量だけ右方向(外側方向)へ、左頬下部動作部519は所定量だけ左方向(外側方向)へ変位する。
【0100】
図19(e)は、日本語の母音の「お」を発声する際の口の形、すなわち、口を窄めつつ上下へ開いた形を再現する際の各動作部の動き方について矢印を用いて示したものである。「お」を発声する際、上唇右上部動作部520、下唇右下部動作部522は所定量だけ左方向(内側方向)へ、上唇左上部動作部521、下唇左下部動作部523は所定量だけ右方向(内側方向)へ、上唇中央部動作部524は所定量だけ上方へ、下唇中央部動作部525は所定量だけ下方へ変位する。
【0101】
以上のように、適切な制御により、中央部は略垂直方向、両脇部は略水平左右方向に弾性変形し、又、それらの弾性変形が組み合わされるので、人間のような写実的な口の動きを再現させることができる。さらに、上述の唇周辺の6点の動作に合わせて、右頬下部動作部518、左頬下部動作部519の頬に沿った前後方向の動作を合わせることで、口元だけでなく頬の動きまで含めた写実的な口の動きを再現することができる。
【0102】
<4.変形例>
本発明は、上述の実施形態に限定されない。従って、種々の変形が可能である。
【0103】
上述の実施形態では、下唇右下部動作部520と下唇左下部動作部521とは、歯車同士の噛み合いを介して連動するよう構成されている。しかしながら、本発明はこのような構成に限定されない。従って、例えば、
図20に示すように、左右独立に動作するよう構成してもよい。
図20は、変形例に係る支持体50の左側面図である。同図から明らかな通り、磁力を介して結合された下唇左下部結合片530a、530bから延びるワイヤ530gは、第1のガイドパイプ支持片530cと第2のガイドパイプ支持片530fの間を結ぶガイドパイプ530dへと挿通され、その末端は所定の締結具を介してアクチュエータ530hの出力部へと接続されている。なお、同図中の拡大図からも明らかな通り、ガイドパイプ530dの両端は、第1のガイドパイプ支持片530c内部の所定の面、及び第2のガイドパイプ支持片530f内部の所定の面と当接し、固定されている。すなわち、このような構成によれば、アクチュエータ530hを作動させ、ワイヤを送り出し又は引き込むことで、下唇左下部結合片530a、530bを略水平左右方向に変位させることができる。このような構成を左右に配置することで、下唇右下部動作部520と下唇左下部動作部521とを独立に動作させることが可能となる。なお、これは上唇の両脇部でも同様である。
【0104】
また、上述の実施形態では、各結合片に設けられた磁石の磁力を介して各結合片同士を結合させる構成とした。しかしながら、磁力による結合を行うにあたっては、必ずしも両結合片に磁石を設ける必要はない。従って、例えば、結合片の一方に磁石を設け、他方を所定の金属等から成る磁性体として磁力による結合を実現してもよい。
【0105】
さらに、上述の実施形態においては、磁石としてネオジム磁石を採用した。ネオジム磁石は、その強い結合力の観点から採用されたものではあるが、本発明は必ずしもこのような構成に限定されない。従って、例えば、他の希土類磁石であるサマリウムコバルト磁石、ブラセオジム磁石、サマリウム鉄窒素磁石等を採用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明は、ロボット、特に、所定の支持体へと弾性素材の外皮を被せて成るロボットを製造等する産業等にて利用可能である。
【符号の説明】
【0107】
1 ロボット頭部
10 外皮
50 支持体
501 中央構造部材
502 台部
503 左側構造部材
504 右側構造部材
505 額部結合部品
506 顎部結合部品
508 右側眉周辺部動作部
509 左側眉周辺部動作部
510 左眼瞼動作部
511 右目瞼動作部
512 右眼球部
513 左眼球部
514 右眼直下位置動作部
515 左眼直下位置動作部
516 右頬上部動作部
517 左頬上部動作部
518 右頬下部動作部
519 左頬下部動作部
520 上唇右上部動作部
521 上唇左上部動作部
522 下唇右下部動作部
523 下唇左下部動作部
524 上唇中央部動作部
525 下唇中央部動作部
530 下唇左下部動作部(変形例)