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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-09
(45)【発行日】2022-03-17
(54)【発明の名称】水上構造物の構築
(51)【国際特許分類】
   E02B 3/06 20060101AFI20220310BHJP
   E01D 1/00 20060101ALI20220310BHJP
   E01D 21/00 20060101ALI20220310BHJP
   E02B 17/00 20060101ALI20220310BHJP
【FI】
E02B3/06
E01D1/00 C
E01D1/00 D
E01D21/00 B
E02B17/00 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019238650
(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公開番号】P2021107631
(43)【公開日】2021-07-29
【審査請求日】2020-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】592086880
【氏名又は名称】丸栄コンクリート工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081628
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 桂
(72)【発明者】
【氏名】棚橋 肇
(72)【発明者】
【氏名】水野 克基
(72)【発明者】
【氏名】川井 敦史
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-230994(JP,A)
【文献】特開2011-220058(JP,A)
【文献】特開2005-248661(JP,A)
【文献】特開2000-017642(JP,A)
【文献】特開平09-013347(JP,A)
【文献】特開昭56-093916(JP,A)
【文献】特開2010-013799(JP,A)
【文献】特開2016-180250(JP,A)
【文献】特開昭57-089027(JP,A)
【文献】特開平08-277514(JP,A)
【文献】特開昭63-181805(JP,A)
【文献】特開昭63-040010(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0202120(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/06
E01D 1/00
E01D 21/00
E02B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水底に打ち込んだ杭の頭部に、地上で製作したプレキャストコンクリート版と現場打ちコンクリートを一体化した構造物を構築する方法において、
プレキャストコンクリート版は、上面と下面の間に杭孔を貫通し、外周りに足場を取り付け、上側に吊下げ基体を配置し、吊下げ基体と吊り棒で連結し、
足場は、プレキャストコンクリート版の側面から外側に張り出した床にし、床上で作業者が作業をすることができる作業床にし、また、プレキャストコンクリート版の外周りに沿って作業者が移動することができる通路にしており、
吊下げ基体は、クレーン船のクレーンで吊り上げ、下側に足場付のプレキャストコンクリート版を吊り棒で吊り下げた状態で、杭の上方位置に移送して下降させ、プレキャストコンクリート版の杭孔に杭の頭部を差し込んでプレキャストコンクリート版の上に杭の上端を突き出し、吊下げ基体を杭の上端に載せ、足場付のプレキャストコンクリート版を、杭の上に載った吊下げ基体から吊り棒で吊り下げた状態にし、
次に、プレキャストコンクリート版は底型枠にし、底型枠の周縁に側型枠を設置して型枠を構成し、型枠にコンクリートを打ち込み、型枠内のコンクリートにプレキャストコンクリート版上に突き出た杭の頭部、吊下げ基体と吊り棒を埋没し、型枠内のコンクリートの上面を均し、
型枠内のコンクリートの養生後、側型枠を取り外し、底型枠のプレキャストコンクリート版を残置し、残置底型枠のプレキャストコンクリート版と現場打ちコンクリートを一体化して構造物を構築し、
その後、プレキャストコンクリート版から足場を取り外すことを特徴とする水上構造物の構築方法。
【請求項2】
側型枠は、プレキャストコンクリートパネルにし、取り外しせずに残置し、残置側型枠のプレキャストコンクリートパネル、残置底型枠のプレキャストコンクリート版と現場打ちコンクリートを一体化して構造物を構築することを特徴とする請求項1に記載の水上構造物の構築方法。
【請求項3】
側型枠をプレキャストコンクリート版の周縁に設置して型枠を構成する作業は、プレキャストコンクリート版を杭に水上輸送する前に、陸上で行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の水上構造物の構築方法。
【請求項4】
型枠内に配筋して鉄筋をコンクリートに埋没し、現場打ちコンクリートを鉄筋コンクリートにすることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の水上構造物の構築方法。
【請求項5】
プレキャストコンクリート版は、下面に重ねて漏れ止め板を取り付け、漏れ止め板を杭孔に向けて前進させて凹状の前縁部を杭孔に突き出し可能にし、
コンクリート打ちの前に、漏れ止め板を、杭孔に貫通した杭に向けて前進させ、凹状の前縁部を杭の外周面に嵌めて接触させ、凹状の前縁部で、杭孔の内周面と杭の外周面との間の隙間の下端開口を閉鎖することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の水上構造物の構築方法。
【請求項6】
足場は、プレキャストコンクリート版の側面に床受け梁を片持ち梁状に外側に張り出して取り付け、床受け梁を、複数にし、間隔を置いて配列し、それらの床受け梁の上に床板を掛け渡して敷き並べており、
床受け梁は、プレキャストコンクリート版から取外し可能にしていることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の水上構造物の構築方法
【請求項7】
足場は、作業者の落水を防止する安全防護柵を床、通路の外縁に沿って取り付けていることを特徴とする請求項6に記載の水上構造物の構築方法
【請求項8】
請求項1~5のいずれかに記載の水上構造物の構築方法において使用する吊下げ基体であって、
プレキャストコンクリート版の上に載置用横棒部材を配置し、載置用横棒部材の上に吊下げ用横棒部材を載せ、吊下げ用横棒部材と載置用横棒部材を結合し、
載置用横棒部材は杭の上に載せる構成にし、吊下げ用横棒部材はプレキャストコンクリート版を吊り棒で吊り下げる構成にし、
クレーンで載置用横棒部材を吊り上げると、吊下げ用横棒部材が上昇してプレキャストコンクリート版が持ち上がる構成にしていることを特徴とする吊下げ基体。
【請求項9】
吊下げ用横棒部材は、貫通孔を上下方向に設け、貫通孔に吊り棒を上下方向に移動可能に通し、
吊り棒は、下端部を、吊下げ用横棒部材の下に突き出し、載置用横棒部材の下面位置より下に配してプレキャストコンクリート版の上面に連結し、吊り棒の上端部は、ネジ軸にし、吊下げ用横棒部材の上に突き出し、ナットを螺合し、
クレーンで載置用横棒部材を吊り上げると、上昇途中の吊下げ用横棒部材の上面にナットが当たり、吊下げ用横棒部材と一緒にナットと吊り棒が上昇してプレキャストコンクリート版が持ち上がる構成にしていることを特徴とする請求項8に記載の吊下げ基体。
【請求項10】
載置用横棒部材は、複数にし、間隔を置いて並列し、吊下げ用横棒部材は、複数にし、間隔を置いて並列し、
各吊下げ用横棒部材は、それぞれ、各載置用横棒部材と交差させて配列していることを特徴とする請求項8又は9に記載の吊下げ基体。
【請求項11】
請求項5に記載の水上構造物の構築方法において使用するコンクリート漏れ止め構造であって、
プレキャストコンクリート版は、下面にインサートのネジ穴を開け、
漏れ止め板は、前縁部を杭の外周面に嵌って接する凹状にし、上面と下面の間にボルト孔を貫通し、プレキャストコンクリート版の下面に重ね、ボルト孔をネジ穴に連通し、
ボルトは、座金に通し、ボルト孔を経てネジ穴に捩じ込み、ボルトと座金で漏れ止め板をプレキャストコンクリート版の下面に取り付け、
ボルト孔は漏れ止め板の移動を可能にする形状寸法にし、座金はボルト孔を覆う形状寸法にし、
ボルトの捩じ込みを強くすると、ボルトの頭が座金を介して漏れ止め板をプレキャストコンクリート版の下面に強く押し付け、漏れ止め板が固定される構成にし、
ボルトの捩じ込みを弱くすると、漏れ止め板は、移動可能になり、杭孔に向けて前進可能になって、凹状の前縁部が杭孔に突き出し可能になることを特徴とするコンクリート漏れ止め構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水底に打ち込んだ杭の頭部にコンクリートの構造物を構築する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
桟橋、岸壁、海上橋、海上空港施設、海上風力発電施設などの水上構造物を構築する工事では、水上での作業が必要になる。水上作業は、地上作業に比べて、作業者の足場が悪く、作業者の安全性や作業能率が高くない。
【0003】
特許文献1に開示の技術は、岸壁のような水上構造物を構築する工事において、水上でのコンクリート打ちの際、プレキャストコンクリート版を足場と底型枠として使用する、とのことである。構築現場の水底に杭を打ち込む一方、地上でプレキャストコンクリート版と形鋼の吊下げ用梁部材を製作する。
【0004】
プレキャストコンクリート版は、上面と下面の間に杭孔を貫通し、上面に吊下げフックを突出して設ける。吊下げ用梁部材は、上面と下面の間にボルト孔を貫通する。ボルト孔には吊下げボルトを通す。吊下げボルトは、フック状下端部を吊下げ用梁部材の下に突出する。ネジ上端部を吊下げ用梁部材の上に突出する。ネジ上端部にナットを螺合する。吊下げフック、ボルト孔、吊下げボルトとナットからなる連結機構は、多数にし、間隔を置いて配置する。
【0005】
プレキャストコンクリート版と結合する杭が4本である場合、杭孔は4個にし、吊下げ用梁部材は2本にする。1枚のプレキャストコンクリート版と2本の吊下げ用梁部材は、港に地上輸送し、クレーン船で杭打ち現場に水上輸送する。杭打ち現場で、プレキャストコンクリート版は、クレーン船のクレーンで吊り上げ、杭の上方位置に移送する。そして、水平姿勢を維持して下降させ、杭孔に杭の頭部を差し込む。プレキャストコンクリート版の上面から杭の頭部が突き出した状態にする。その状態を維持する一方、クレーン船の別のクレーンで1本目の吊下げ用梁部材を杭の上方位置に移送する。そして、1本目の吊下げ用梁部材は、水平姿勢を維持して下降させ、杭の上端に載せる。1本目の吊下げ用梁部材は、2本の隣り合う杭の上に掛け渡す。次に、吊下げボルトは、フック状下端部をプレキャストコンクリート版上面の吊下げフックに引っ掛ける。次に、残りの2本目の吊下げ用梁部材も、同様にして、残り2本の隣り合う杭の上に掛け渡し、吊下げボルトのフック状下端部をプレキャストコンクリート版上面の吊下げフックに引っ掛ける。プレキャストコンクリート版は、4本の杭の上に載った2本の吊下げ用梁部材の下に、吊下げボルトと吊下げフックで吊り下がった状態にする。
【0006】
その後、プレキャストコンクリート版は、その上にコンクリートを打設する。すると、プレキャストコンクリート版と現場打ちコンクリートが一体化して水上構造物が構築される、とのことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開昭56-93916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
[課 題]
1.水上のコンクリート打ち
水上構造物を上記のように構築する工事では、水上でのコンクリート打ちの際、底型枠にするプレキャストコンクリート版の周縁に側型枠を設置する型枠組立作業の外に、型枠にコンクリートを打ち込む作業と、型枠内のコンクリートの上面を均す作業がある。コンクリートの養生後には、側型枠を取り外す作業がある。これらの作業では、底型枠のプレキャストコンクリート版を足場として使用することができない。従って、水上のコンクリート打ち作業において、作業者の安全性や作業能率が高いとは言い難い。
【0009】
2.クレーン船のクレーン操作
水上構造物を上記のように構築する工事では、プレキャストコンクリート版は、クレーン船のクレーンで吊り下げ、上面の上に杭の上端が突き出した状態を維持している間に、2本の吊下げ用梁部材を、順次、クレーン船の別のクレーンで吊り下げ、杭の上方位置に移送して下降し、杭の上に載せる。従って、クレーン船のクレーンは、プレキャストコンクリート版用と吊下げ用梁部材用との2基が必要となる。その上、プレキャストコンクリート版を移送して下降する操作と、2本の吊下げ用梁部材を順次移送して下降する操作が掛る。3度のクレーン操作が必要になる。従って、作業能率が高いとは言い難い。
【0010】
3.杭周りの隙間からのコンクリート漏れ
水上構造物を上記のように構築する工事では、水底に打ち込んだ杭は上端の水平位置が設計位置からずれることが多い。杭の打込み誤差を考慮して、プレキャストコンクリート版は杭孔の径を杭の外径より大きくしている。杭孔に杭が貫通した状態では、杭孔の内周面と杭の外周面との間に隙間が生ずる。杭周りの隙間が広いと、コンクリート打ちの際、コンクリートがその隙間に流入して流下し、水中に流入することがある。杭周りの隙間からのコンクリート漏れを防ぐには、杭孔の径を杭の外径に近づける一方、杭の打込み誤差を少なくする必要がある。杭の正確な打込みには多くの手間が掛る。作業能率が高いとは言い難い。
【0011】
[構 想]
1.プレキャストコンクリート版の外周りの足場
水上のコンクリート打ち作業における安全性や作業能率を高めるため、底型枠にするプレキャストコンクリート版は、外周りに作業者の足場を取り付けることにする。足場の取付け作業は地上で行う。足場付のプレキャストコンクリート版をクレーン船で杭打ち現場に水上輸送する。プレキャストコンクリート版に付属の足場の上で水上作業を行う。
足場は、プレキャストコンクリート版の側面から外側に張り出した床にし、床上で作業者が作業をすることができる作業床にする。また、プレキャストコンクリート版の外周りに沿って作業者が移動することができる通路にする。
【0012】
2.クレーン船のクレーン操作
クレーン船のクレーン操作の作業能率を高めるため、プレキャストコンクリート版の上に吊下げ基体を配置し、上下のそれらを吊り棒で連結する。そして、吊下げ基体は、クレーンで吊り上げ、下にプレキャストコンクリート版が吊り棒で吊り下がった状態にする。その状態で、杭の上方位置に移送して下降させる。プレキャストコンクリート版は、杭孔に杭の頭部を差し込み、上面の上に杭の上端を突き出す。吊下げ基体は、杭の上端に載せる。プレキャストコンクリート版は、杭の上に載った吊下げ基体から吊り棒で吊り下がった状態になる。
クレーン船のクレーンは、プレキャストコンクリート版と吊下げ基体を一緒にして取り扱うので、1基で済み、操作の手間が一度で済む。
【0013】
3.水上構造物の構築
プレキャストコンクリート版は、地上で、上記のように、外周りに足場を設け、上側に吊下げ基体を配置し、吊下げ基体と吊り棒で連結する。そして、上記のように、クレーン船のクレーン操作で、足場付のプレキャストコンクリート版は、杭の上に載った吊下げ基体から吊り棒で吊り下がった状態にする。そして、作業者は、プレキャストコンクリート版に付属の足場の上で作業する。底型枠のプレキャストコンクリート版は、周縁に側型枠を設置して型枠を構成する。型枠にはコンクリートを打ち込む。コンクリートには、プレキャストコンクリート版の上に突き出た杭の頭部、吊下げ基体と吊り棒を埋没する。型枠内のコンクリートは、上面を均す。コンクリートの養生後には、側型枠を取り外す。底型枠のプレキャストコンクリート版は、取り外しせずに残置する。すると、残置底型枠のプレキャストコンクリート版と現場打ちコンクリートが一体化して構造物が構築される。その後、足場は、プレキャストコンクリート版から取り外す。
なお、側型枠は、プレキャストコンクリートパネルにして現場打ちコンクリートと一体化し、取り外しせずに残置することもできる。また、側型枠をプレキャストコンクリート版の周縁に設置して型枠を構成する作業は、プレキャストコンクリート版を杭に水上輸送する前に、陸上で行うこともできる。
更に、型枠内に配筋して鉄筋を現場打ちコンクリートに埋没し、現場打ちコンクリートを鉄筋コンクリートにすることもできる。
【0014】
4.コンクリートの漏れ止
プレキャストコンクリート版は、下面に重ねて漏れ止め板を取り付ける。漏れ止め板は、杭孔に向けて前進可能にし、前縁部を杭孔に突き出し可能にする。漏れ止め板の前縁部は、杭の外周面に嵌って接する凹状にする。
コンクリート打ちの前に、漏れ止め板は、杭孔に貫通した杭に向けて前進させ、凹状の前縁部を杭の外周面に嵌めて接触させる。すると、漏れ止め板の凹状の前縁部が杭孔の内周面と杭の外周面との間の隙間の下端開口を閉鎖することになる。杭周りの隙間を閉鎖した後、コンクリート打ちを行う。杭周りの隙間からコンクリートが漏れ出さない。
漏れ止め板をプレキャストコンクリート版の下面に取り付ける作業は、プレキャストコンクリート版を杭に水上輸送する前に、陸上で行う。水上で行うこともできる。
【0015】
[具体的な構造例]
1.足場の構造
足場の具体的な構造例は、プレキャストコンクリート版の側面に床受け梁を片持ち梁状に外側に張り出して取り付ける。床受け梁は、複数にし、間隔を置いて配列する。それらの床受け梁の上には床板を掛け渡して敷き並べる。床受け梁と床板でプレキャストコンクリート版の外周りに床、通路を構成する。床受け梁は、プレキャストコンクリート版から取外し可能にする。好ましくは、床板は、床受け梁から取外し可能にする。
また、好ましくは、作業者の落水を防止するため、安全防護柵を床、通路の外縁に沿って取り付ける。
【0016】
2.吊下げ基体の構造
吊下げ基体の具体的な構造例は、プレキャストコンクリート版の上に載置用横棒部材を配置し、載置用横棒部材の上に吊下げ用横棒部材を載せる。載置用横棒部材は、杭の上に載せる構成にする。吊下げ用横棒部材は、プレキャストコンクリート版を吊り棒で吊り下げる構成にする。
吊下げ用横棒部材は、貫通孔を上下方向に設ける。貫通孔には、吊り棒を上下方向に移動可能に通す。吊り棒は、下端部を、吊下げ用横棒部材の下に突き出し、載置用横棒部材の下面位置より下に配してプレキャストコンクリート版の上面に連結する。吊り棒の上端部は、ネジ軸にし、吊下げ用横棒部材の上に突き出し、ナットを螺合する。
載置用横棒部材は、複数にし、間隔を置いて並列する。吊下げ用横棒部材は、複数にし、間隔を置いて並列する。各吊下げ用横棒部材は、それぞれ、各載置用横棒部材と交差させて配列する。
吊下げ基体は、載置用横棒部材をクレーンで吊り上げると、吊下げ用横棒部材が上昇し、上昇途中で吊下げ用横棒部材の上面にナットが当たり、吊下げ用横棒部材と一緒にナットと吊り棒が上昇して足場付のプレキャストコンクリート版が持ち上がる構成にする。
【0017】
3.コンクリート漏れ止めの構造
コンクリート漏れ止めの具体的な構造例は、漏れ止め板の前縁部を杭の外周面に嵌って接する凹状にする。なお、杭が円形断面であると、凹状は円弧凹状になる。漏れ止め板は、上面と下面の間にボルト孔を貫通する。プレキャストコンクリート版は、下面にインサートのネジ穴を開ける。漏れ止め板は、プレキャストコンクリート版の下面に重ね、ボルト孔をネジ穴に連通する。ボルトは、座金に通し、ボルト孔を経てネジ穴に捩じ込む。すると、ボルトと座金で漏れ止め板がプレキャストコンクリート版の下面に取り付けられる。ボルト孔は、漏れ止め板を移動可能にする形状寸法にする。座金は、ボルト孔を覆う形状寸法にする。ボルト孔と座金は、通常より大きくなる。
ボルトの捩じ込みを強くすると、ボルトの頭が座金を介して漏れ止め板をプレキャストコンクリート版の下面に強く押し付け、漏れ止め板が固定される。ボルトの捩じ込みを弱くすると、漏れ止め板が移動可能になる。漏れ止め板は、杭孔に向けて前進可能にし、凹状の前縁部を杭孔に突き出し可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
1.水底に打ち込んだ杭の頭部に、地上で製作したプレキャストコンクリート版と現場打ちコンクリートを一体化した構造物を構築する方法において、
プレキャストコンクリート版は、上面と下面の間に杭孔を貫通し、外周りに足場を取り付け、上側に吊下げ基体を配置し、吊下げ基体と吊り棒で連結し、
足場は、プレキャストコンクリート版の側面から外側に張り出した床にし、床上で作業者が作業をすることができる作業床にし、また、プレキャストコンクリート版の外周りに沿って作業者が移動することができる通路にしており、
吊下げ基体は、クレーン船のクレーンで吊り上げ、下側に足場付のプレキャストコンクリート版を吊り棒で吊り下げた状態で、杭の上方位置に移送して下降させ、プレキャストコンクリート版の杭孔に杭の頭部を差し込んでプレキャストコンクリート版の上に杭の上端を突き出し、吊下げ基体を杭の上端に載せ、足場付のプレキャストコンクリート版を、杭の上に載った吊下げ基体から吊り棒で吊り下げた状態にし、
次に、プレキャストコンクリート版は底型枠にし、底型枠の周縁に側型枠を設置して型枠を構成し、型枠にコンクリートを打ち込み、型枠内のコンクリートにプレキャストコンクリート版上に突き出た杭の頭部、吊下げ基体と吊り棒を埋没し、型枠内のコンクリートの上面を均し、
型枠内のコンクリートの養生後、側型枠を取り外し、底型枠のプレキャストコンクリート版を残置し、残置底型枠のプレキャストコンクリート版と現場打ちコンクリートを一体化して構造物を構築し、
その後、プレキャストコンクリート版から足場を取り外すことを特徴とする水上構造物の構築方法。
2.上記1の水上構造物の構築方法において、
側型枠は、プレキャストコンクリートパネルにし、取り外しせずに残置し、残置側型枠のプレキャストコンクリートパネル、残置底型枠のプレキャストコンクリート版と現場打ちコンクリートを一体化して構造物を構築することを特徴とする。
3.上記1又は2の水上構造物の構築方法において、
側型枠をプレキャストコンクリート版の周縁に設置して型枠を構成する作業は、プレキャストコンクリート版を杭に水上輸送する前に、陸上で行うことを特徴とする。
4.上記1、2又は3の水上構造物の構築方法において、
型枠内に配筋して鉄筋をコンクリートに埋没し、現場打ちコンクリートを鉄筋コンクリートにすることを特徴とする。
5.上記1~4のいずれかの水上構造物の構築方法において、
プレキャストコンクリート版は、下面に重ねて漏れ止め板を取り付け、漏れ止め板を杭孔に向けて前進させて凹状の前縁部を杭孔に突き出し可能にし、
コンクリート打ちの前に、漏れ止め板を、杭孔に貫通した杭に向けて前進させ、凹状の前縁部を杭の外周面に嵌めて接触させ、凹状の前縁部で、杭孔の内周面と杭の外周面との間の隙間の下端開口を閉鎖することを特徴とする。
6.上記1~5のいずれかの水上構造物の構築方法において、
足場は、プレキャストコンクリート版の側面に床受け梁を片持ち梁状に外側に張り出して取り付け、床受け梁を、複数にし、間隔を置いて配列し、それらの床受け梁の上に床板を掛け渡して敷き並べており、
床受け梁は、プレキャストコンクリート版から取外し可能にしていることを特徴とする。
7.上記6の水上構造物の構築方法において、
足場は、作業者の落水を防止する安全防護柵を床、通路の外縁に沿って取り付けていることを特徴とする。
8.上記1~5のいずれかの水上構造物の構築方法において使用する吊下げ基体であって、
プレキャストコンクリート版の上に載置用横棒部材を配置し、載置用横棒部材の上に吊下げ用横棒部材を載せ、吊下げ用横棒部材と載置用横棒部材を結合し、
載置用横棒部材は杭の上に載せる構成にし、吊下げ用横棒部材はプレキャストコンクリート版を吊り棒で吊り下げる構成にし、
クレーンで載置用横棒部材を吊り上げると、吊下げ用横棒部材が上昇してプレキャストコンクリート版が持ち上がる構成にしていることを特徴とする。
9.上記8の吊下げ基体において、
吊下げ用横棒部材は、貫通孔を上下方向に設け、貫通孔に吊り棒を上下方向に移動可能に通し、
吊り棒は、下端部を、吊下げ用横棒部材の下に突き出し、載置用横棒部材の下面位置より下に配してプレキャストコンクリート版の上面に連結し、吊り棒の上端部は、ネジ軸にし、吊下げ用横棒部材の上に突き出し、ナットを螺合し、
クレーンで載置用横棒部材を吊り上げると、上昇途中の吊下げ用横棒部材の上面にナットが当たり、吊下げ用横棒部材と一緒にナットと吊り棒が上昇してプレキャストコンクリート版が持ち上がる構成にしていることを特徴とする。
10.上記8又は9の吊下げ基体において、
載置用横棒部材は、複数にし、間隔を置いて並列し、吊下げ用横棒部材は、複数にし、間隔を置いて並列し、
各吊下げ用横棒部材は、それぞれ、各載置用横棒部材と交差させて配列していることを特徴とする。
11.上記5の水上構造物の構築方法において使用するコンクリート漏れ止め構造であって、
プレキャストコンクリート版は、下面にインサートのネジ穴を開け、
漏れ止め板は、前縁部を杭の外周面に嵌って接する凹状にし、上面と下面の間にボルト孔を貫通し、プレキャストコンクリート版の下面に重ね、ボルト孔をネジ穴に連通し、
ボルトは、座金に通し、ボルト孔を経てネジ穴に捩じ込み、ボルトと座金で漏れ止め板をプレキャストコンクリート版の下面に取り付け、
ボルト孔は漏れ止め板の移動を可能にする形状寸法にし、座金はボルト孔を覆う形状寸法にし、
ボルトの捩じ込みを強くすると、ボルトの頭が座金を介して漏れ止め板をプレキャストコンクリート版の下面に強く押し付け、漏れ止め板が固定される構成にし、
ボルトの捩じ込みを弱くすると、漏れ止め板は、移動可能になり、杭孔に向けて前進可能になって、凹状の前縁部が杭孔に突き出し可能になることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
水底に打ち込んだ杭の頭部にコンクリートの構造物を構築するに当たり、水上のコンクリート打ち作業は、プレキャストコンクリート版に付属の足場の上で行うことができる。作業者の安全性や作業能率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態における水上構造物の杭を示す平面図。
図2】同正面図。
図3】同側面図。
図4】同水上構造物のプレキャストコンクリート版と吊下げ基体を示す平面図。
図5図4のA-A線断面図。
図6図4のB-B線断面図。
図7】同プレキャストコンクリート版と吊下げ基体を同杭の上側に配置した状態を示す正面図。
図8】同側面図。
図9】同吊下げ基体を同杭に載せた状態を示す平面図。
図10図9のC-C線断面図。
図11図9のD-D線断面図。
図12】同プレキャストコンクリート版に側型枠を設置して型枠を構成した状態を示す平面図。
図13図12のE-E線断面図。
図14図12のF-F線断面図。
図15】同型枠にコンクリートを打ち込んだ状態を示す平面図。
図16図15のG-G線断面図。
図17図15のH-H線断面図。
図18】同側型枠と足場を取り外した状態を示す平面図。
図19図18のI-I線断面図。
図20図18のJ-J線断面図。
図21】同プレキャストコンクリート版の杭孔部分の拡大底面図。
図22】同杭孔部分の拡大縦断面図。
図23図21と同様な拡大底面図であって杭周りの隙間を閉鎖した状態を示す図。
図24図22と同様な拡大縦断面図であって杭周りの隙間を閉鎖した状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
実施形態は、水底に打ち込んだ杭1の頭部にコンクリートの構造物33を構築する。構造物33は、地上で製作したプレキャストコンクリート版6と現場打ちコンクリート32を一体化している。
【0022】
杭1は、図1図3に示すように、水底に打ち込む。杭1の上端面には嵌め込み溝2を径方向に貫通して設ける。杭1は、4本にし、前後左右の位置、方形の角の位置に配置する。前後左右の杭1は、それぞれ、嵌め込み溝2の貫通方向を左右方向にする。前側の左右の嵌め込み溝2の貫通方向が一直線上になる。また、後側の左右の嵌め込み溝2の貫通方向が一直線上になる。
杭1は、図示例では頭部が水上に露出しているが、水に浸かっている場合もある。また、杭1は、実施例では円形断面の鋼管杭にしているが、その他の形状、構造や材質の杭にすることができる。
【0023】
プレキャストコンクリート版6は、図4図6に示すように、方形状の板盤にし、上面と下面の間に円形状の杭孔7を貫通している。杭孔7は、4個にし、方形の角の位置に配置している。4個の杭孔7の配置位置は、4本の杭1と同様な前後左右の位置、杭1の設計水平位置と同じにしている。杭孔7の径は、杭1の打込み誤差を考慮して、杭1の外径より大きくしている。
また、プレキャストコンクリート版6は、図4図6に示すように、外周りに作業者の足場8を取外し可能に取り付けている。足場8は、プレキャストコンクリート版6の側面から外側に張り出した作業床にし、プレキャストコンクリート版6の外周りに沿って作業者が移動することができる通路にしている。
【0024】
具体的には、プレキャストコンクリート版6の側面に床受け梁9を片持ち梁状に外側に張り出して取り付けている。床受け梁9は、固定端にフランジを固定し、フランジにボルト孔を貫通している。ボルトは、ボルト孔に差し込んで、プレキャストコンクリート版側面のインサートのネジ穴に捩じ込んでいる。ボルトを緊締して床受け梁9の固定端をプレキャストコンクリート版6の側面に固定している。ボルトを捩じ戻して抜き外すと、床受け梁9がプレキャストコンクリート版6から分離する。床受け梁9は、複数にし、間隔を置いて配列している。それらの床受け梁9の上に床板10を掛け渡して敷き並べて固定している。床受け梁9と床板10でプレキャストコンクリート版6の外周りに床、通路を構成している。床受け梁9は、プレキャストコンクリート版6から取外し可能にしている。床板10は、床受け梁9から取外し可能にしている。また、床、通路の外縁に沿って作業者の落水を防止する安全防護柵11を取外し可能に取り付けている。
【0025】
吊下げ基体16は、図4図6に示すように、プレキャストコンクリート版6の上に載置用横棒部材17を配置し、その上に吊下げ用横棒部材18を載せている。上下の吊下げ用横棒部材17と載置用横棒部材18は、結合している。載置用横棒部材17は、杭1の上に載せて、嵌め込み溝2に嵌め込む構成にしている。吊下げ用横棒部材18は、プレキャストコンクリート版6を吊り棒19で吊り下げる構成にしている。
【0026】
吊下げ用横棒部材18は、貫通孔を上下方向に設け、貫通孔に吊り棒19を通している。吊り棒19は、上下方向に移動可能にしている。吊り棒19の下端部は、吊下げ用横棒部材18の下に突き出し、更に載置用横棒部材17の下面位置より下に配置している。この下端部は、プレキャストコンクリート版6の上面に連結している。詳細には、吊り棒19の下端部はネジ軸にしている。プレキャストコンクリート版6の上面にはインサートのネジ穴を開けている。そして、吊り棒19のネジ下端部は、プレキャストコンクリート版6の上面のネジ穴に螺合して緊締している。吊り棒19の上端部は、ネジ軸にし、吊下げ用横棒部材18の上に突き出している。吊り棒19のネジ上端部は、ナット20を螺合している。ナット20は、吊下げ用横棒部材18の上面の上方に位置している。貫通孔、吊り棒19、ネジ穴とナット20からなる連結機構は、多数にし、間隔を置いて配置している。
【0027】
載置用横棒部材17は、2本にし、間隔を置いて並列している。1本の載置用横棒部材17は、プレキャストコンクリート版6の前側の左右の2個の杭孔7を左右方向に横断する位置に配置している。他の載置用横棒部材17は、プレキャストコンクリート版6の後側の左右の2個の杭孔7を左右方向に横断する位置に配置している。吊下げ用横棒部材18は、複数、多数にし、間隔を置いて並列している。各吊下げ用横棒部材18は、それぞれ、各載置用横棒部材17と交差させて配列している。交差角度は、実施例では直角にしているが、直角強や直角弱にすることができる。
【0028】
載置用横棒部材17と吊下げ用横棒部材18は、それぞれ、実施例では形鋼、H形鋼にしているが、その他の形状、構造や材質の棒部材にすることができる。
【0029】
吊下げ基体16は、図7図8に示すように、前後の載置用横棒部材17の左右の端部に、それぞれ、クレーンの吊り索26を連結する。そして、クレーンを上昇操作すると、載置用横棒部材17と吊下げ用横棒部材18が上昇し、上昇途中で吊下げ用横棒部材18の上面にナット20が当たる。すると、吊下げ用横棒部材18と一緒にナット20と吊り棒19も上昇して足場付のプレキャストコンクリート版6が持ち上がる。吊下げ基体16の下に足場付のプレキャストコンクリート版6が吊り棒19で吊り下がった状態になる。そのプレキャストコンクリート版6が水平姿勢から傾いているのであれば、幾つかのナット20の上下位置を調節して水平姿勢にする。
【0030】
吊下げ基体16と足場付のプレキャストコンクリート版6は、上記のようにクレーン船のクレーンに吊り下げた状態で杭打ち現場に水上輸送する。図7図8に示すように、杭1の上方位置に移送する。前後左右の杭1の真上に前後左右の杭孔7を配置する。そして、水平姿勢を維持して下降させる。図9図11に示すように、杭孔7に杭1の水上の頭部を差し込む。吊下げ基体16は杭1の上端に載せる。載置用横棒部材17は、嵌め込み溝2に嵌め込む。前側の左右の2個の杭孔7には、前側の左右の2本の杭1の頭部を差し込む。前側の左右の2本の杭2には、前側の載置用横棒部材17を掛け渡して載せる。後側の左右の2個の杭孔7には、後側の左右の2本の杭1の頭部を差し込む。後側の左右の2本の杭1には、後側の置用横棒部材17を掛け渡して載せる。すると、杭1の上に吊下げ基体16が載り、吊下げ基体16から足場付のプレキャストコンクリート版6が吊り棒19で吊り下がった状態になる。その後、クレーンの吊り索26は、吊下げ基体16から取り外す。
【0031】
次に、作業者はプレキャストコンクリート版6に付属の足場8の上で、型枠の組立、コンクリートの打込みと上面均しの作業を行う。コンクリートの養生後には脱型の作業を行う。プレキャストコンクリート版6は、図12図14に示すように、底型枠にし、周縁に側型枠31を設置して型枠を構成する。型枠には、図15図17に示すように、コンクリート32を打ち込む。プレキャストコンクリート版6の上に突き出た杭1の頭部、吊下げ基体の載置用横棒部材17、吊下げ用横棒部材18、吊り棒19とナット20は、コンクリート32に埋没する。型枠内のコンクリート32は上面を均す。コンクリート32を養生する。その後には、図18図20に示すように、側型枠31を取り外す。底型枠のプレキャストコンクリート版6は残置する。残置底型枠のプレキャストコンクリート版6と現場打ちコンクリート32が一体化して、方形の厚板形状のコンクリート構造物33になる。杭1の頭部に厚板形状のコンクリート構造物33が固定した水上構造物、ドルフィン構造体、橋梁基礎が構築される。その後、コンクリート構造物33の外周りの足場8を取り外す。
【0032】
なお、コンクリートの打込み作業の前には、杭周りの隙間を閉鎖するコンクリート漏れ止め作業をする。プレキャストコンクリート版6は、杭に水上輸送する前に陸上で、図21図22に示すように、下面に重ねて漏れ止め板36を取り付けている。コンクリート打ちの前に、図23図24に示すように、漏れ止め板36は、杭孔7に貫通した杭1に向けて前進させ、円弧凹状の前縁部37を杭1の外周面に嵌めて接触させる。そして、その位置でプレキャストコンクリート版6の下面に固定する。すると、円弧凹状の前縁部37で、杭孔7の内周面と杭1の外周面との間の隙間38の下端開口が閉鎖する。その後、その隙間38には無収縮モルタル39を詰める。4個所の杭周りの隙間38を閉鎖した後に、コンクリート打ちを行う。
【0033】
コンクリート漏れ止めの構造は、次のようにしている。漏れ止め板36は、前縁部37を杭1の外周面に嵌って接する円弧凹状にし、上面と下面の間にボルト孔40を貫通している。プレキャストコンクリート版6は、下面にインサートのネジ穴を開けている。漏れ止め板36は、プレキャストコンクリート版6の下面に重ね、ボルト孔40をネジ穴に連通している。ボルト41は、座金42に通し、ボルト孔40を経てネジ穴に捩じ込んでいる。ボルト41と座金42で漏れ止め板36をプレキャストコンクリート版6の下面に取り付けている。ボルト孔40は、漏れ止め板36の移動を可能にする形状寸法にしている。座金42は、ボルト孔40を覆う形状寸法にしている。ボルト孔40と座金42は、通常より大きくしている。ボルト41の捩じ込みを強くすると、ボルト41の頭が座金42を介して漏れ止め板36をプレキャストコンクリート版6の下面に強く押し付け、漏れ止め板36が固定される。ボルト41の捩じ込みを弱くすると、漏れ止め板36が移動可能になる。漏れ止め板36は、杭孔7に向けて前進可能にし、円弧凹状の前縁部37を杭孔7に突き出し可能にしている。この漏れ止め板36は、4枚にし、杭孔7の周りに配置している。
【0034】
なお、杭1の上端開口は、載置用横棒部材17が横切っていて、載置用横棒部材17の下が閉じられ、載置用横棒部材17の両側が開いている。杭1は、内部に吊り底型枠を配置している。コンクリート32は、杭1内に流入して吊り底型枠の上側部分に充満している。杭1の頭部は、内外がコンクリート32に接合している。
【0035】
[変形例]
本発明は、上記の実施形態に限定されない。次のような変形が例示される。
1.上記の実施形態において、杭1は、4本にしているが、その他の本数にする。
2.上記の実施形態において、プレキャストコンクリート版6、コンクリート構造物33は、長方形の板形状にしているが、その他の形状にする。
3.上記の実施形態において、吊下げ基体16は、載置用横棒部材17を2本にしているが、その他の本数にする。
4.上記の実施形態において、吊下げ基体16は、1本の載置用横棒部材17を載せる杭1を2本にしているが、その他の本数にする。
5.上記の実施形態において、漏れ止め板36は、4枚にしているが、その他の枚数にする。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、海上橋、湾岸道路橋、海上空港施設、海上基地、石油掘削用海上足場、水上パイプライン、桟橋、岸壁、係船杭、海上灯台、海洋レクリエーション施設、杭式防波堤や、海上風力発電施設などの構築に利用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 杭
2 嵌め込み溝
6 プレキャストコンクリート版
7 杭孔
8 作業者の足場、足場
9 床受け梁
10 床板
11 安全防護柵
16 吊下げ基体
17 載置用横棒部材
18 吊下げ用横棒部材
19 吊り棒
20 ナット
26 クレーンの吊り索
32 コンクリート、現場打ちコンクリート
31 側型枠
33 コンクリート構造物
36 漏れ止め板
37 円弧凹状の前縁部、前縁部
38 隙間、杭周りの隙間
39 無収縮モルタル
40 ボルト孔
41 ボルト
42 座金
図1
図2
図3
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