(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-09
(45)【発行日】2022-03-17
(54)【発明の名称】電熱放射管の温度制御方法
(51)【国際特許分類】
G05D 23/22 20060101AFI20220310BHJP
【FI】
G05D23/22 A
(21)【出願番号】P 2019547106
(86)(22)【出願日】2019-05-21
(86)【国際出願番号】 CN2019087869
(87)【国際公開番号】W WO2020199323
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2019-08-23
(31)【優先権主張番号】201910264271.0
(32)【優先日】2019-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519307436
【氏名又は名称】上海頤柏科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI YIBAI SCIENCE AND TECHNOLOGY CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.6,No.525,Yuanjiang Road,Minhang District,Shanghai 202153,China
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】楊 景峰
(72)【発明者】
【氏名】沈 鵬
(72)【発明者】
【氏名】汪 海斌
【審査官】藤崎 詔夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-075264(JP,A)
【文献】特開平09-119616(JP,A)
【文献】特表平11-505662(JP,A)
【文献】特開2009-070700(JP,A)
【文献】特開2017-154414(JP,A)
【文献】特開昭59-015829(JP,A)
【文献】特開2002-050581(JP,A)
【文献】米国特許第04675826(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 23/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電熱放射管の温度制御方法は、以下のステップを含み、
ステップ1において、熱処理炉内に複数対の電熱放射管(1)を設置して、前記電熱放射管(1)内部に前記電熱放射管(1)の内部の温度を監視する第1の熱電対(2)を設置して、前記電熱放射管(1)の管壁に前記電熱放射管(1)の管壁の温度を監視する第2の熱電対(3)を設置して、前記電熱放射管(1)の外部の作業エリアに熱処理炉の作業エリアの温度を監視する第3の熱電対(4)を設置すること、
ステップ2において、前記第3の熱電対(4)によって検出された温度
を温度制御装置に送信して、前記温度制御装置が制御プログラムを実行して計算を行い、前記熱処理炉の作業状態が昇温段階であるか或いは保温段階であるかを判断し、作業状態が昇温段階である場合には、前記第3の熱電対(4)によって実測された温度と目標温度との差を用いて、前記電熱放射管(1)の入力パワーを制御すること、
ステップ3において、保温段階において、前記第2の熱電対(3)によって検出された温度を前記温度制御装置に送信し、前記温度制御装置は、設定された目標温度により自動的に前記電熱放射管(1)の電源の切り替えを制御することを通して、設定された目標温度に基づいて、対応する温度制御エリアの温度を調整し、昇温段階において、前記第2の熱電対(3)が前記熱処理炉の温度の制御に関与しないこと、
ステップ4において、第1の熱電対(2)によって検出された温度を前記温度制御装置に送信して、前記温度制御装置は、設定されたアラーム温度に基づいて、前記熱処理炉内の温度制御エリアの温度がアラーム温度を超えているかどうかを判断し、アラーム温度を超える場合には、前記温度制御装置の前記目標温度に応じて前記電熱放射管(1)の電源の切り替えを自動的に制御することによって、温度がアラーム温度より小さくなるようにすることを特徴とする電熱放射管の温度制御方法。
【請求項2】
請求項
1の電熱放射管の温度制御方法において、前記ステップ(2)と、ステップ(3)とステップ(4)に、前記第3の熱電対(4)によって実測された温度と前記温度制御エリアの目標温度との差により、前記熱処理炉内の各温度制御エリアの作業状態は昇温段階であるか保温段階であるかを判断することを特徴とする電熱放射管の温度制御方法。
【請求項3】
請求項
2の電熱放射管の温度制御方法において、前記作業エリアにおける前記第3の熱電対(4)によって検出された温度が前記目標温度よりはるかに低い場合には、前記作業エリアに対応する前記熱処理炉の温度制御エリアは昇温段階におり、前記作業エリアにおける前記第3の熱電対(4)によって検出された温度が前記目標温度より大きい或いは同じである場合には、前記作業エリアに対応する前記熱処理炉の温度制御エリアは保温段階にあることを特徴とする電熱放射管の温度制御方法。
【請求項4】
請求項
2の電熱放射管の温度制御方法において、前記熱処理炉が昇温段階にある場合には、前記第3の熱電対(4)によって実測された温度と当該の温度制御エリアの目標温度との差に基づいて、PIDアルゴリズムによって前記熱処理炉の温度を制御し、前記熱処理炉が保温段階にある場合には、前記第2の熱電対(3)によって実測された温度と当該の温度制御エリアの目標温度との差に基づいて、PIDアルゴリズムによって熱処理炉の温度を制御することを特徴とする電熱放射管の温度制御方法。
【請求項5】
請求項
1の電熱放射管の温度制御方法において、前記ステップ(3)に、前記電熱放射管(1)から発生したジュール熱の一部が自身の温度を上昇させ、他の一部が伝熱、放射、及び対流を介して環境に伝達され、熱処理炉の周囲温度を上げ、
前記電熱放射管の外径をφ,壁厚さをδ,抵抗をRとし,電流が前記放射管を通過する際に発生されたジュール熱は、
【数17】
前記電熱放射管(1)の抵抗Rは、前記放射管の材質と幾何学的なサイズを組み合わせることによって決定され、
【数18】
ここで、ρは前記放射管の抵抗率、Lは前記放射管の長さ、Aは前記放射管の断面積であり、
熱収支によれば、各部分の熱量の合計はジュール熱に等しく、
【数19】
ここで、Qはジュール熱、Q1は前記放射管自体の熱によって吸収された熱、Q2は前記放射管が外部環境(熱処理炉)に伝達する熱、Q3は前記放射管が管内環境に伝える熱であり、
【数20】
ここで、mは前記放射管の質量、Cpは定圧熱容量、
【数21】
は平均定圧熱容量、Trは放射管の温度、Tmは室温であり、
【数22】
【数23】
方程式(5)と方程式(6)において、h
oは前記放射管と管外環境との間の伝熱係数、h
iは上記放射管と管内環境との間の伝熱係数、T
foは管外環境の温度、T
rは管壁の温度、T
fiは管内環境の温度であり、
前記温度制御装置は、方程式(3)に基づいて、以下の方程式(7)によって当該の温度制御エリアの温度を調整し、
【数24】
ここで、T
foは前記熱処理炉の作業エリアにおける温度、T
rは前記放射管の管壁温度、T
fiは熱電対によって測定された前記放射管内の温度であり、
前記温度制御装置は、T
fo、T
r、(T
r-T
fo)および(T
r-T
fi)の値に基づいて、PIDアルゴリズムを採用して、リアルタイム温度と目標温度との偏差を算出して制御量を出力することによって、熱処理炉の昇温段階と保温段階の温度を正確に制御することを特徴とする電熱放射管の温度制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一つの熱処理装置を加熱するときの温度制御装置に関し、特に一つの電熱放射管温度制御装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属熱処理の分野において、放射管を用いて間接的に加熱する方法がますます広く用いられてきた。既存の熱処理炉において、熱処理炉の温度制御モードは、作業エリアにおける熱電対によって測定された温度信号によって温度が制御される。このような温度制御方法は、熱電対の挿入位置の変化と熱処理炉内の気体の流動変化が、測定された温度信号に大きく影響し、測定される温度信号の変動、不正確さ及び遅れなどを引き起こすことが問題となっている。そのため、既存技術の欠陥に対して、温度制御に対する応答が早い上、制御精度が高い熱処理炉の温度制御装置を開発することが大いに必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、既存の熱処理炉における温度を測定する過程で生じる大きな温度変動範囲、不正確性及び遅れなどの問題を解決するために、電熱放射管温度制御装置及びその制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記目的を達成するために、本発明は、以下の技術方案を採用する。
【0005】
本発明の第1の方案は、熱処理炉内に挿入して放熱する少なくとも1つの電熱放射管を含む電熱放射管温度制御装置を提供し、さらに、
前記電熱放射管内に配置され、加熱するエリアの温度制御のために用いられる第1の熱電対と、
前記電熱放射管の管壁にはめ込まれ、保温段階の温度制御のために、及び昇温時の過熱アラームのために用いられる第2の熱電対と、
前記熱処理炉の作業エリアに配置され、昇温段階の温度制御のために用いられる第3の熱電対と、を含み、
前記第1の熱電対と、第2の熱電対と第3の熱電対とがそれぞれ温度制御装置と電気的に接続されており、前記温度制御装置は、各熱電対によって監視された温度に基づいて、PIDアルゴリズムにより電熱放射管の電源の切り替えを制御することによって、熱処理炉の各段階の温度を正確に制御することを特徴とする。
【0006】
さらに、前記電熱放射管温度制御装置において、前記電熱放射管自体が発熱体であり、内蔵された発熱体がないことを特徴とする。
【0007】
さらに、前記電熱放射管温度制御装置において、前記電熱放射管の側壁にガイド孔が設けられていることを特徴とする。
【0008】
さらに、前記電熱放射管温度制御装置において、前記電熱放射管の底部に開口があることを特徴とする。
【0009】
さらに、前記電熱放射管温度制御装置において、前記電熱放射管は複数本であり、各2本の電熱放射管の間に接続片を介して直列に接続されていることを特徴とする。
【0010】
さらに、前記電熱放射管温度制御装置において、前記電熱放射管は、前記熱処理炉の上部に設置され、その壁厚さは上の方が下より大きいことを特徴とする。
【0011】
本発明の第2の方案は、電熱放射管の温度制御方法を提供することであり、以下のステップを含み、
ステップ1において、熱処理炉内に複数対の電熱放射管を設置して、電熱放射管内部に電熱放射管の内部の温度を監視する第1の熱電対を設置して、電熱放射管の管壁に電熱放射管の管壁の温度を監視する第2の熱電対を設置して、電熱放射管の外部の作業エリアに熱処理炉の作業エリアの温度を監視する第3の熱電対を設置すること、
ステップ2において、第3の熱電対によって検出された温度を温度制御装置に送信して、前記温度制御装置が制御プログラムを実行して計算を行い、熱処理炉の作業状態が昇温段階であるか或いは保温段階であるかを判断し、作業状態が昇温段階である場合には、第3の熱電対によって実測された温度と目標温度との差を用いて、前記電熱放射管の入力パワーを制御すること、
ステップ3において、保温段階において、第2の熱電対によって検出された温度を温度制御装置に送信し、前記温度制御装置は、設定された目標温度により自動的に前記電熱放射管の電源の切り替えを制御することを通して、設定された目標温度に基づいて、対応する温度制御エリアの温度を調整し、昇温段階において、前記第2の熱電対が熱処理炉の温度の制御に関与しないこと、
ステップ4において、第1の熱電対によって検出された温度を前記温度制御装置に送信して、前記温度制御装置は、設定されたアラーム温度に基づいて、前記熱処理炉内の温度制御エリアの温度がアラーム温度を超えているかどうかを判断し、アラーム温度を超える場合には、前記温度制御装置は、前記目標温度に応じて前記電熱放射管の電源の切り替えを自動的に制御することによって、温度がアラーム温度より小さくなるようにすることを特徴とする。
【0012】
さらに、前記電熱放射管の温度制御方法において、前記ステップ(2)と、ステップ(3)とステップ(4)に、第3の熱電対によって実測された温度とその温度制御エリアの目標温度との差により、前記熱処理炉内の各温度制御エリアの作業状態は昇温段階であるか保温段階であるかを判断することを特徴とする。
【0013】
さらに好ましくは、前記電熱放射管の温度制御方法において、作業エリアにおける前記第3の熱電対によって検出された温度が前記目標温度によりはるかに低い場合には、前記作業エリアに対応する熱処理炉の温度制御エリアは昇温段階におり、前記作業エリアにおける第3の熱電対によって検出された温度が前記目標温度より大きい或いは同じである場合には、その作業エリアに対応する熱処理炉の温度制御エリアは保温段階にあることを特徴とする。
【0014】
さらに好ましくは、前記電熱放射管の温度制御方法において、熱処理炉が昇温段階にある場合には、前記第3の熱電対によって実測された温度と当該の温度制御エリアの目標温度との差に基づいて、PIDアルゴリズムによって熱処理炉の温度を制御し、熱処理炉が保温段階にある場合には、前記第2の熱電対によって実測された温度と当該の温度制御エリアの目標温度との差に基づいて、PIDアルゴリズムによって熱処理炉の温度を制御することを特徴とする。
【0015】
さらに、前記電熱放射管の温度制御方法において、ステップ(3)に、前記電熱放射管から発生したジュール熱の一部が自身の温度を上昇させ、他の一部が伝熱、放射、及び対流を介して環境に伝達され、熱処理炉の周囲温度を上げる。
前記電熱放射管の外径をφ,壁厚さをδ,抵抗をRとし,電流が放射管を通過する際に発生されたジュール熱は、
【数1】
前記電熱放射管(1)の抵抗Rは、放射管の材質と幾何学的なサイズを組み合わせることによって決定される。
【数2】
ここで、ρは放射管の抵抗率、Lは放射管の長さ、Aは放射管の断面積である。
熱収支によれば、各部分の熱量の合計はジュール熱に等しい。
【数3】
ここで、Qはジュール熱、Q1は放射管自体の熱によって吸収された熱、Q2は放射管が外部環境(熱処理炉)に伝達する熱、Q3は放射管が管内環境に伝える熱である。
【数4】
ここで、mは放射管の質量、Cpは定圧熱容量、
【数5】
は平均定圧熱容量、Trは放射管の温度、Tmは室温である。
【数6】
【数7】
方程式(5)と方程式(6)において、h
oは放射管と管外環境との間の伝熱係数、h
iは放射管と管内環境との間の伝熱係数、T
foは管外環境の温度、T
rは管壁の温度、T
fiは管内環境の温度である。
前記温度制御装置は方程式(3)に基づいて、以下の方程式(7)によって当該の温度制御エリアの温度を調整する。
【数8】
ここで、T
foは熱処理炉の作業エリアにおける温度、T
rは放射管の管壁温度、T
fiは熱電対によって測定された放射管内の温度である。
前記温度制御装置は、T
fo、Tr、(T
r-T
fo)および(T
r-T
fi)の値に基づいて、PIDアルゴリズムを採用して、リアルタイム温度と目標温度との偏差を算出して制御量を出力することによって、熱処理炉の昇温段階と保温段階の温度を正確に制御することを特徴とする。
【0016】
さらに、前記電熱放射管の温度制御方法において、前記昇温段階では作業エリアにおける温度によって温度が制御され、保温段階になると、放射管の管壁の温度信号によって温度が制御されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、前記技術方案を採用して、以下の技術的な効果を奏する。
【0018】
(1)採用した電熱放射管内に電熱線がなく、直接的に放射管を発熱体とし、回路を接続する時、電流が放射管を通過する時に発生したジュール熱は放射管の温度を急速に上昇させる。放射管を直接的に加熱することの利点は、電熱リンクと熱抵抗が減少し、伝熱効率が改善され、同じ作業温度で発熱体の表面温度が低下し、放射管の耐用年数が延びることにある。
【0019】
(2)電熱放射管温度制御装置の温度制御モードに基づいて、各熱電対をそれぞれ放射管内部に配置し、放射管の管壁に配置し、熱処理炉の作業エリアに配置し、異なる段階で異なる温度制御方式を採用して、昇温段階では作業エリアの熱電対の信号によって温度が制御され、保温段階に入った後、放射管の管壁の温度信号によって温度が制御される。熱電対の位置が固定されており、気流の影響を受けることが少ないため、PIDアルゴリズムによってリアルタイム温度と設定温度との偏差を算出して制御量を出力することによって、抵抗炉の温度を正確に制御できる。よって、熱処理炉の温度信号の安定性、均一性、正確性と感度が保証されうる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は本発明の電熱放射管温度制御装置の概略構造図である。
【
図2】
図2は本発明の電熱放射管温度制御装置の一部を拡大する概略構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明をよりよく理解するために、以下の具体的な実施形態を通して、本発明を具体的に説明するが、以下の実施形態は本発明の範囲を限定するものではない。
【0022】
図1に示すように、本実施形態は、電熱放射管温度制御装置を提供し、熱処理炉内に挿入して放熱する少なくとも1つの電熱放射管1を含み、さらに、前記電熱放射管1内に配置され、加熱するエリアの温度制御のために用いられる第1の熱電対2と、前記電熱放射管1の管壁にはめ込まれ、保温段階の温度制御のため、及び昇温時の過熱アラームのために用いられる第2の熱電対3と、前記熱処理炉の作業エリアに配置され、昇温段階の温度制御のために用いられる第3の熱電対4とを含む。前記第1の熱電対2と、第2の熱電対3と第3の熱電対4とはそれぞれ温度制御装置と電気的に接続されており、前記温度制御装置は各熱電対によって監視された温度に基づいて、PIDアルゴリズムにより電熱放射管1の電源の切り替えを制御することで、熱処理炉の各段階の温度を正確に制御する。
【0023】
本実施形態の電熱放射管温度制御装置において、温度制御装置は、各熱電対によって実測された温度に基づいて、PIDアルゴリズムにより電熱放射管1の電源の切り替えを制御して、熱処理炉における温度を制御する。当該の電熱放射管温度制御装置は新しい温度制御モードを提案して、各熱電対が電熱放射管の内部、放射管の管壁、熱処理炉の作業エリアにそれぞれ配置され、異なる段階に対して異なる温度制御方式を採用する。昇温段階では、作業エリアの温度によって温度が制御され、作業エリアの温度と管壁の温度との差を参照して全体的に温度が制御される。保温段階に入った後、放射管の管壁の温度信号によって温度が制御され、管壁の温度と作業エリアの平均温度との差を参照して温度が制御される。熱電対の位置が固定されており、気流の影響を受けることが少ないため、PIDアルゴリズムによってリアルタイム温度と設定温度との偏差を算出して制御量を出力して、抵抗炉の温度の正確な制御が実現される。よって、熱処理炉の温度信号の安定性、均一性、正確性と感度が保証される。
【0024】
好ましい実施形態として、従来の放射管とは異なり、本実施形態に採用された前記電熱放射管1の内には電熱線がなく、電熱放射管自体は発熱体であり、内蔵される発熱体はない。
図2に示すように、前記電熱放射管1の側壁にはガイド孔5が設けられており、かつ底部に開口6が設けられており、ガス対流熱伝達に有利である。具体的には、該電熱放射管1の内部には抵抗糸が巻かれておらず、放射管1自体が発熱体であり、放射管1が電源に接続されている場合には、放射管の内壁と外壁にジュール熱が発生して、加熱に用いられる。電熱放射管1は電熱合金で作られ、しかも放射管1の表面積(直径、長さと壁厚さ)などの幾何学的なサイズは加熱炉のパワーにより確定されている。電熱放射管1の一端は電極であり、電極の両端はそれぞれ熱処理炉の殻の外側と熱処理炉の内側の保温層に固定されている。
【0025】
従来の電熱放射管の構造において、放射管の内部に一組の抵抗糸の巻線がある。抵抗糸は伝熱と放射などの方法で熱を放射管に伝えて放射管の温度を上昇させ、更に放射管は伝熱、放射と対流を通じてワークを加熱する。一方、本実施例で採用した電熱放射管1の内部には電熱線がなく、直接放射管を発熱体とし、回路を接続する時に、電流が放射管を通過する時に発生したジュール熱は放射管の温度を急速に上昇させる。直接放射管を加熱することの利点は、伝熱リンクと熱抵抗が減少し、伝熱効率が改善され、同じ作業温度で発熱体の表面温度が低下し、放射管の耐用年数が延びることにある。
【0026】
好ましい実施形態として、前記電熱放射管1は複数本であり、2つずつの電熱放射管1の間に接続片7を介して直列に接続されている。
図1に示すように、電熱放射管1は2本であり、その間は接続片7を介して直列に接続されている。また、この電熱放射管1は、前記熱処理炉の上部に取り付けられ、かつその管壁の厚さは上の方が下より大きく、放射管が上部から下部にかけて単位面積当たりの重力がほぼ等しくなるようにして、電熱放射管の高温条件での不均一なクリープを軽減する。
【0027】
他の好ましい実施形態として、前記伝熱放射管の温度制御装置に基づく電熱放射管の温度制御方法を提供し、具体的には以下のステップを含み、
ステップ1において、熱処理炉内に複数対の電熱放射管を設置して、電熱放射管内部に電熱放射管の内部の温度を監視する第1の熱電対を設置して、電熱放射管の管壁に電熱放射管の管壁の温度を監視する第2の熱電対を設置して、電熱放射管の外部の作業エリアに熱処理炉の作業エリアの温度を監視する第3の熱電対を設置すること、
ステップ2において、第3の熱電対によって検出された温度を温度制御装置に送信して、前記温度制御装置が制御プログラムを実行して計算を行い、熱処理炉の作業状態が昇温段階であるか或いは保温段階であるかを判断し、作業状態が昇温段階である場合には、第3の熱電対によって実測された温度と目標温度との差を用いて、前記電熱放射管の入力パワーを制御すること、
ステップ3において、保温段階において、第2の熱電対によって検出された温度を温度制御装置に送信し、前記温度制御装置は、設定された目標温度により自動的に前記電熱放射管の電源の切り替えを制御することを通して、設定された目標温度に基づいて、温度制御エリアの温度を調整し、昇温段階において、前記第2の熱電対が熱処理炉の温度の制御に関与しないこと、
ステップ4において、第1の熱電対によって検出された温度を前記温度制御装置に送信し、前記温度制御装置は、設定されたアラーム温度に基づいて、前記熱処理炉内の温度制御エリアの温度がアラーム温度を超えているかどうかを判断し、アラーム温度を超える場合には、前記温度制御装置の前記目標温度に応じて前記電熱放射管の電源の切り替えを自動的に制御することによって、温度がアラーム温度より小さくなるようにする。
【0028】
本実施形態において、前記ステップ(2)と、ステップ(3)とステップ(4)に、第3の熱電対4によって実測された温度とその温度制御エリアの目標温度との差により、前記熱処理炉内の各温度制御エリアの作業状態は昇温段階であるか保温段階であるかを判断する。
【0029】
本実施形態において、作業エリアにおける前記第3の熱電対4によって検出された温度が前記目標温度よりはるかに低い場合には、前記作業エリアに対応する熱処理炉の温度制御エリアは昇温段階にある。前記作業エリアにおける第3の熱電対4によって検出された温度が前記目標温度より大きい或いは同じである場合には、その作業エリアに対応する熱処理炉の温度制御エリアは保温段階にある。
【0030】
本実施形態において、熱処理炉が昇温段階にある場合には、前記第3の熱電対4によって実測された温度と当該の温度制御エリアの目標温度との差に基づいて、PIDアルゴリズムを介して熱処理炉の温度が制御される。熱処理炉が保温段階にある場合には、前記第2の熱電対3によって実測された温度と当該の温度制御エリアの目標温度との差によって、PIDアルゴリズムによって熱処理炉の温度が制御される。
【0031】
本実施形態において、ステップ(3)に、前記電熱放射管1から発生したジュール熱の一部が自身の温度を上昇させ、他の一部が伝熱、放射、及び対流を介して環境に伝達され、熱処理炉の周囲温度を上げる。その中で、
前記電熱放射管1の外径をφ,壁厚さをδ,抵抗をRとし,電流が放射管を通過する際に発生したジュール熱は、
【数9】
前記電熱放射管(1)の抵抗Rは、放射管の材質と幾何学的なサイズを組み合わせることによって決定される。
【数10】
ここで、ρは放射管の抵抗率、Lは放射管の長さ、Aは放射管の断面積である。
熱収支によれば、各部分の熱量の合計はジュール熱に等しい。
【数11】
ここで、Qはジュール熱、Q1は放射管自体の熱によって吸収された熱であり、Q2は放射管が外部環境(熱処理炉)に伝達する熱であり、Q3は放射管が管内環境に伝わる熱である。
【数12】
ここで、mは放射管の質量、Cpは定圧熱容量、
【数13】
は平均定圧熱容量、Trは放射管の温度、Tmは室温である。
【数14】
【数15】
方程式(5)と方程式(6)において、h
oは放射管と管外環境との間の伝熱係数で、h
iは放射管と管内環境との間の伝熱係数で、T
foは管外環境の温度で、T
rは管壁の温度で、T
fiは管内環境の温度である。
前記温度制御装置は方程式(3)に基づいて、以下の方程式(7)によって当該の温度制御エリアの温度を調整する。
【数16】
ここで、T
foは熱処理炉の作業エリアにおける温度であり、T
rは放射管の管壁温度であり、T
fiは熱電対によって測定された放射管内の温度である。熱処理炉の安定作業段階では温度値T
fo,T
rとT
fiの平均値は変化せず、相互に明確な対応関係がある。プロセス検証試験時に、実測された放射管壁と管内側と管外側の温度対応曲線に基づいており、このような対応関係は実験により確定されうる。次に、温度制御装置を採用して、T
fo、T
r、(T
r―T
fo)と(T
r―T
fi)を用いて、PIDアルゴリズムによってリアルタイム温度と設定温度との偏差を算出して制御量を出力し、熱処理炉の昇温段階と保温段階での温度の正確な制御が実現される。
【0032】
また、上記昇温段階では、作業エリアの実測温度と当該エリアの目標温度との差に基づいて温度が制御され、作業エリアの温度と管壁の温度との温度差を参照して目標温度に到達するように総合的に温度が制御される。保温段階では、放射管の管壁の実測温度と当該エリアの目標温度との差に基づいて温度が制御される。
【0033】
現在、従来の熱処理炉の温度は作業エリアにおける熱電対によって測定された温度信号によって制御され、このような制御温度方式に存在する問題は、熱電対の挿入位置の変化と熱処理炉内の気体の流動変化が、測定された温度信号に大きく影響し、測定される温度信号の変動、不正確さ及び遅れなどを引き起こすことが問題となっている。従来技術と比較して、本発明で提出した電熱放射管温度制御装置の制御温度モードは、熱電対は放射管の内部、放射管の管壁と、熱処理炉の作業エリアに配置され、異なる段階で異なる温度制御方式が採用され、昇温段階では作業エリアの熱電対の信号制御温度に応じて温度が制御され、保温段階に入った後、放射管の管壁の温度信号によって温度が制御される。熱電対の位置が固定されているため、気流の影響を受けることが少なく、PIDアルゴリズムによってリアルタイム温度と設定温度との偏差を算出して制御量を出力して、抵抗炉温度の正確な制御が実現されうる。熱処理炉の温度信号の安定性、均一性、正確性と感度が保証されうる。
【0034】
以上のように、放射管自体の発熱を利用して、従来の抵抗糸より放射管の構造を簡略化し、放射管の伝熱リンクと熱抵抗を減らし、加熱効率と速度を高め、寿命を延長した。また、本発明で提案した温度制御方法において、熱電対の位置が固定されているため、気流の影響を受けることが少なく、PIDアルゴリズムを用いてリアルタイム温度と設定温度とのずれを算出して制御量を出力して、抵抗炉の温度の正確な制御が実現されうる。熱処理炉の温度信号の安定性、均一性、正確性と感度を保証することができる。
【0035】
以上は、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明したが、これは例示にすぎず、本発明は上記で説明した具体的な実施例に限定されるものではない。当業者にとっても、本発明に対する均等の修正および置換は、全部本発明の範囲内にある。したがって、本発明の旨と保護範囲から逸脱することなく行われる均等修正及び置換は、すべて本発明の範囲内に含まれるべきである。