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  • 特許-マスクおよびマスクの製造方法 図1
  • 特許-マスクおよびマスクの製造方法 図2
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  • 特許-マスクおよびマスクの製造方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-09
(45)【発行日】2022-03-17
(54)【発明の名称】マスクおよびマスクの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/11 20060101AFI20220310BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
A41D13/11 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020107787
(22)【出願日】2020-06-23
(65)【公開番号】P2022003178
(43)【公開日】2022-01-11
【審査請求日】2020-06-26
(73)【特許権者】
【識別番号】599077409
【氏名又は名称】日本特装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】深町 至
【審査官】森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-103924(JP,A)
【文献】特開2020-041254(JP,A)
【文献】特開2011-025115(JP,A)
【文献】再公表特許第2004/091753(JP,A1)
【文献】特開平09-299399(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口を覆う被覆部を有し、前記被覆部は外層と、前記外層に覆われる内層と、を備えるマスクの製造方法であって、
煙草のフィルターに使用される繊維状部材を準備し、
前記繊維状部材を可塑剤とともに水溶液にし、
前記水溶液を加熱した状態で分散させ、
分散した前記水溶液を冷却することで前記繊維状部材によって前記内層を形成し、
前記内層と前記外層とを一体にして前記被覆部を形成するマスクの製造方法。
【請求項2】
前記繊維状部材は、前記冷却の時点で層状に一体化した状態となる請求項1に記載のマスクの製造方法。
【請求項3】
前記内層は、ジアセチルセルロースを含む請求項1または2に記載のマスクの製造方法。
【請求項4】
前記被覆部が口の部分を覆った状態に維持する耳掛け部を前記被覆部に取り付ける請求項1~3のいずれか1項に記載のマスクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクおよびマスクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
新型コロナウイルスの影響により、マスクは気温が低く、乾燥した従来の時期よりも広範囲の期間にわたって必要となる可能性が増してきている。最近ではこの影響を受けてマスクの製造を始めるメーカーが増えてきている。マスクを構成する材料としては不織布が用いられることが多い(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-093285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように従来のメーカー以外に新たなメーカーが参入し、マスクの製造を行うと従来から使用されているマスクの材料は枯渇し、供給が需要に追いつきにくくなる。本発明者は、このような事態を防止または低減すべく、日本国内等の原料による安定的な供給に寄与しうるマスクを提供することについて鋭意検討を行っている。
【0005】
本発明は、日本国内等の原料による安定的な供給に寄与しうるマスクおよびマスクの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
また、本発明の一態様は、口を覆う被覆部を有し、被覆部は外層と、外層に覆われる内層と、を備えるマスクの製造方法である。当該方法では、煙草のフィルターに使用される繊維状部材を準備する。そして、繊維状部材を可塑剤とともに水溶液にする。そして、水溶液を加熱した状態で分散させる。そして、分散した水溶液を冷却することで繊維状部材によって内層を形成する。そして、内層と外層とを一体にして被覆部を形成する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様に係るマスクの製造方法によれば、日本国内の原料による安定的な供給に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係るマスクを示す正面図である。
図2図1に係るマスクの構造を示す図である。
図3図1に係るマスクに含まれる繊維状部材を示す図である。
図4】本発明の一実施形態に係るマスクの製造方法を示すフローチャートである。
図5図4のマスクの製造方法において繊維状部材を水溶液にするイメージを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。ここで示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するために例示するものであって、本発明を限定するものではない。よって、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者などにより考え得る実施可能な他の形態、使用方法および運用技術などは全て本発明の範囲、要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0011】
また、本明細書に添付する図面は、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺、縦横の寸法比、形状などについて、実物から変更し模式的に表現される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0012】
図1は本発明の一実施形態に係るマスク100を示す正面図である。図2図1に係るマスク100の構造を示す図である。図3図1に係るマスク100を構成する内層12の繊維状部材Sを示す図である。
【0013】
本実施形態に係るマスク100は、一例として家庭用マスクとして利用することができる。マスク100は、図1に示すように被覆部10と、耳掛け部20と、を有する。以下、詳述する。
【0014】
<被覆部10>
被覆部10は装着状態において使用者の口とその周辺を包囲する。被覆部10は図2に示すように外層11と、内層12と、を備える。
【0015】
外層11は、被覆部10において外方に配置される。外層11は内層12と層をなすように、少なくとも内層12より顔面側に接近して配置するとともに、内層12より顔面から離間して配置する三層構造とすることができる。
【0016】
外層11は、一例としてマスク100が顔面の輪郭に合わせて装着することで顔面から離れるように膨らむ、いわゆるプリーツ型となるように構成することができる。すなわち、外層11は、包装材などによって包装されている時点(流通時等)において平型にすることができる。ただし、外層の構成はこれに限定されず、包装材に包装されている時点においてカップ型のような形状であってもよい。なお、図2では図示の便宜上、外層11のプリーツ形状を簡略化している。
【0017】
外層11は、ポリプロピレン、ポリエチレン等の繊維からなる不織布を含むことができるが、これに限定されない。
【0018】
内層12は外層11によって覆われる。内層12は後述する方法により生成することができる。内層12は、一例として煙草のフィルターに使用されるジアセチルセルロースから生成した繊維状部材S(図3参照)を含む。繊維状部材Sは図2に示すように層状に一体化した状態となるように構成している。繊維状部材Sは、ジアセチルセルロース以外にアセテート系繊維、ポリエステル系繊維、ポリプロピレン系繊維、レーヨン系繊維、ナイロン系繊維、羊毛系繊維、コットン系繊維、ウレタン系繊維およびポリエチレン系繊維等を含み得る。
【0019】
また、内層12は繊維状部材Sのほかにポリオールエステル化合物等の可塑剤を含む。また、可塑剤は添加物として活性炭粉末、ホタテ貝焼成粉末を含み得る。また、可塑剤は添加物として金属粉末(銅、銀、チタン、コバルト、アルミニウム、ニッケル、亜鉛、パラジウム、モリブデン、スズ、タンタル、白金、バナジウム、ジルコニウム等の純金属、酸化化合物、亜硫酸化合物、炭化化合物、塩化化合物)等を含み得る。
【0020】
耳掛け部20は、被覆部10の側部に取り付けられ、被覆部10が口の部分を覆った状態に維持する。耳掛け部20は、ゴム紐等を含むように構成できる。
【0021】
<マスクの製造方法>
次に本実施形態に係るマスク100の製造方法について説明する。図4は本実施形態に係るマスク100の製造方法を示すフローチャートである。図5はマスク100の製造方法において繊維状部材Sを水溶液にするイメージを示す図である。
【0022】
本実施形態に係るマスク100の製造方法では、まず、図4に示すように繊維状部材Sを準備する(S01)。本実施形態において繊維状部材Sは煙草のフィルターに使用されるジアセチルセルロース等を含む上述した材料を用いることができる。
【0023】
次に繊維状部材Sを可塑剤とともに300度程度に加熱して水溶液にする(S02、図5参照)。そして、繊維状部材Sは水溶液となった状態で製造工程に使用される反応槽等の設備に分散した状態にさせられる(S03)。
【0024】
次に、分散した水溶液を5度程度に温度管理された空間内に収容し、2、3時間冷却を行う(S04)。この時点で繊維状部材Sは水溶液から繊維状の構造であって、層状に一体化した状態となる。これにより、繊維状部材Sを内層12として利用することができる。
【0025】
内層12ができたら、内層12の両側に外層11を構成する不織布を配置して外層11の周囲を縫製などして内層12を外層11により包囲する(S05)。これにより、内層12と外層11とが一体化され、被覆部10が形成される。
【0026】
被覆部10が形成できたら、被覆部10の側部に耳掛け部20を配置して、縫製または融着等により被覆部10と一体化させる(S06)。これにより、マスク100が形成される。
【0027】
以上説明したように本実施形態に係るマスク100は、口を覆う被覆部10を有し、被覆部10は外層11と外層11に覆われる内層12とを備える。外層11は不織布を含み、内層12は煙草のフィルターに使用される繊維状部材Sを含むように構成している。
【0028】
このように内層12を構成する材料は煙草のフィルターに使用される材料を用いるように構成している。煙草のフィルターは日本国内等でも調達できるため、このように構成することによって、マスク100に使用する材料を日本国内において調達してマスク100を消費者に安定して供給することに寄与できる。
【0029】
また、内層12は繊維状部材Sが層状に一体化した状態となるように構成している。このように構成することによってマスク100としてのフィルタリング機能を向上させることができる。
【0030】
また、内層12はジアセチルセルロースを含むように構成している。このように内層12が煙草のフィルターに含まれ得る材料を含むように構成することによってマスク100の製造に必要な材料を調達しやすくし、マスク100を安定して消費者に提供することに寄与することができる。
【0031】
また、マスク100は、被覆部10に取り付けられ、被覆部10が使用者の口の部分を覆った状態に維持する耳掛け部20を有するように構成している。そのため、マスク100が使用者の口元を覆った状態を維持しやすくすることができる。
【0032】
また、本実施形態に係るマスク100の製造方法ではマスク100は口を覆う被覆部10を有し、被覆部10が外層11と外層11に覆われる内層12とを備える。マスク100の製造方法では煙草のフィルターに使用される繊維状部材Sを準備する。そして、繊維状部材Sを可塑剤とともに水溶液にする。そして、水溶液を加熱した状態で分散させる。そして、分散した水溶液を冷却することで繊維状部材Sによって内層12を形成する。そして、内層12と外層11とを一体にして被覆部10を形成する。
【0033】
このように構成することによってマスク100の製造に必要な材料を煙草のフィルターから調達し、消費者にマスク100を安定して供給することに寄与することができる。
【0034】
また、繊維状部材Sは、上記冷却の時点で層状に一体化した状態となるように構成している。これにより、マスク100においてフィルタリング機能に寄与しうる内層12を容易に形成することができる。
【0035】
また、内層12はジアセチルセルロースを含むように構成している。このように、内層12を煙草のフィルターに含まれる材料を含めて形成することでマスク100を消費者に安定して供給することに寄与することができる。
【0036】
また、マスク100は被覆部10が口の部分を覆った状態に維持する耳掛け部20を被覆部10に取り付けることによって形成される。このように構成することによって、マスク100が使用者の口元を覆った状態を維持しやすくすることができる。
【0037】
なお、本発明は上述した実施形態にのみ限定されず、特許請求の範囲において種々の変更が可能である。上記ではマスク100が耳掛け部20を有すると説明したが、マスクによって使用者の口元を覆うことができれば、本発明はこれに限定されない。上記以外にもマスクにはいわゆるバフのように円筒の側面形状に相当し、伸縮自在であることで使用者の口元から首の少なくとも一部を被覆する場合も本発明の一実施形態に含まれる。
【符号の説明】
【0038】
10 被覆部、
11 外層、
12 内層、
100 マスク、
20 耳掛け部
S 繊維状部材。
図1
図2
図3
図4
図5