(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-09
(45)【発行日】2022-03-17
(54)【発明の名称】セントルフォーム取り扱い用治具およびセントルフォームの取り扱い方法
(51)【国際特許分類】
E21D 11/10 20060101AFI20220310BHJP
【FI】
E21D11/10 Z
(21)【出願番号】P 2020122117
(22)【出願日】2020-07-16
【審査請求日】2021-03-05
(31)【優先権主張番号】P 2019132048
(32)【優先日】2019-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】315014567
【氏名又は名称】有限会社 伊藤
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】土田 実
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-052240(JP,A)
【文献】特開平06-080398(JP,A)
【文献】特開平08-232595(JP,A)
【文献】特開2017-075502(JP,A)
【文献】特開平09-235817(JP,A)
【文献】特開2015-071452(JP,A)
【文献】特開2001-288999(JP,A)
【文献】特開2004-300884(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セントルフォームのサイドプレートに対して着脱可能にした治具本体と、
その治具本体に設けられ、他部材を連結可能にした連結部と
を有するセントルフォーム取り扱い用治具。
【請求項2】
前記連結部を環状に形成した請求項1に記載のセントルフォーム取り扱い用治具。
【請求項3】
前記治具本体と前記サイドプレートとの間に介在され、サイドプレートより軟質の材料よりなるスペーサを有する請求項1または2に記載のセントルフォーム取り扱い用治具。
【請求項4】
請求項3に記載のセントルフォーム取り扱い用治具を用いて、セントルフォームに対して加工を施すセントルフォームの取り扱い方法。
【請求項5】
前記セントルフォーム取り扱い用治具の下端に、車輪を有する車輪ユニットを取り付けて、その車輪をレール上を走行させることにより、セントルフォームを搬送する請求項4に記載のセントルフォームの取り扱い方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル覆工コンクリートを成形するためのセントルにおいて、そのセントルを構成するセグメントであるセントルフォームを取り扱うための治具およびセントルフォームの取り扱い方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、トンネル覆工コンクリートを成形するためのセントルフォームが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記セントルフォームは鋼板によって構成されるが、全体が湾曲していることもあって、搬送や保管、あるいは塗装などの加工の際の取扱いが簡単ではない。特に、トンネル覆工コンクリートの成形面となるスキンプレートの表面は損傷しないように保護される必要がある。例えば、複数枚のセントルフォームを近接状態で搬送したり、セントルフォームに対して塗装などの加工を施したりする場合は、フォームのスキンプレートを保護するための保護板や保護シートなどを設ける必要があるため、セントルフォームの取扱いが面倒である。
【0005】
本発明の目的は、セントルフォームの取扱いを容易にするためのセントルフォーム取扱い用の治具およびセントルフォーム取り扱い方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明のセントルフォーム取り扱い用治具においては、セントルフォームのサイドプレートに対して着脱可能にした治具本体と、その治具本体に設けられ、他部材を連結可能にした連結部とを有することを特徴とする。
【0007】
また、本発明のセントルフォームの取り扱い方法においては、前記セントルフォーム取り扱い用治具を用いて、セントルフォームに対して加工を施すことを特徴とする。
本発明においては、治具本体をセントルフォームのサイドプレートに取付けることにより、セントルフォームの取扱いにおいては、その治具を扱えばよく、セントルフォームの取扱いが容易になる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、セントルフォームの取扱いが容易になるという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】(a)はセントルの構築状態を示す正断面図、(b)は同じく側断面図、(c)はセントルフォームの斜視図。
【
図9】(a)は第1連結金具の斜視図、(b)は同じく側面図。
【
図10】(a)は第2連結金具の斜視図、(b)は同じく側面図。
【
図11】(a)は第3連結金具の斜視図、(b)は同じく側面図。
【
図12】第1実施形態の治具をセントルフォームに取付けた状態を示す一部側断面図。
【
図13】第1実施形態の治具をセントルフォームに取付けた状態を示す一部平断面図。
【
図14】セントルフォームをフォークですくい上げた状態を示す斜視図。
【
図15】セントルフォームをフォークで吊り下げた状態を示す斜視図。
【
図16】セントルフォームを積層した状態を示す斜視図。
【
図17】セントルフォームを積層した状態を示す一部斜視図。
【
図20】同じく治具の取り付け状態を示す側断面図。
【
図25】(a)は同じく治具とレールとの関係を示す斜視図、(b)はレールおよび車輪を示す簡略図。
【
図27】セントルフォームの積層状態を示す斜視図。
【
図28】
図27とは異なる形態のセントルフォームの積層状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
はじめに、セントル及びそのセントルを構成するセントルフォーム(以下、単にフォームという)について説明する。
図1(a)および同図(b)に示すように、セントルSは、トンネルTの覆工コンクリートCを成形するためのものであって、支持装置(図示しない)上に全体としてドーム状をなすフォームユニットUを備えている。フォームユニットUはトンネルTの長さ方向に延長されている。そして、フォームユニットUの外周面が覆工コンクリートCの成形面Fを構成し、フォームユニットUとトンネルTの内周面との間に覆工コンクリートCが成形される。フォームユニットUは大きさなどが異なる複数種類のフォーム101をトンネルTの延長方向および周方向に連結して構成されている。
【0011】
図1(c)に示すように、各フォーム101は、その両側を構成するサイドプレート102と、両サイドプレート102間に位置する円弧状のスキンプレート104とを有する。スキンプレート104の円弧外周側が覆工コンクリートCを成形するための成形面Fである。フォーム101には、前記成形面Fを除く全体に塗装が施されている。成形面Fの全体にはショットピーニングが施されており、そのショットピーニングによって形成された多数の凹部には、覆工コンクリートCの成形に際してその覆工コンクリートCからのフォーム101の離型性を確保するための離型剤が保持される。
【0012】
(第1実施形態)
以下に、
図2~
図17に基づいて本発明の第1実施形態を説明する。
本実施形態の治具10は、
図2~
図8に示す全体としてほぼ井桁形状の治具本体11と、
図9(a),(b)、
図10(a),(b)、
図11(a),(b)に示す3種類の連結金具12(121,122,123)と、
図13に示す連結ピン13と、
図12に示す固定ロッドとしてのボルト14と、同じく
図12に示す座金15とを備えている。本実施形態において、前記連結金具12は、3種類用意されており、それらを
図9(a),(b)に示す第1連結金具121,
図10(a),(b)に示す第2連結金具122,
図11(a),(b)に示す第3連結金具123とする。連結金具12は連結部および連結手段を構成している。
【0013】
前記治具本体11は以下のように構成されている。すなわち、
図2~
図4に示すように、治具本体11は、相互間隔をおいて平行をなす一対の第1枠21と、その第1枠21の両端部に固着された平行をなす一対の第2枠22とを備えている。第1枠21及び第2枠22は角パイプ材によって構成されている。
【0014】
図12に示すように、第1枠21の長さ方向に中間部には互いに対向する透孔23,24が透設されている。両透孔23,24間の位置において、第1枠21の内部には、雌ねじ管25が溶接固定されており、この雌ねじ管25の一端が一方の透孔23から外部に突出するとともに、雌ねじ管25の他端に固定したほぼ板状の嵌合部材27が他方の透孔24に嵌合されている。雌ねじ管25の内周面には雌ねじ26が刻設されている。この雌ねじ26に前記ボルト14が螺入される。
【0015】
治具本体11の第1枠21と第2枠22との間の内コーナには掛環28が固着されている。
第1枠21の両端外側面には、保持部としての長四角環状の保持部材31が短辺部において溶接固定されている。
図5に示すように、保持部材31の外側の両短辺部及び第1枠21には、互いに対向する各一対のピン孔32が透設されている。この各ピン孔32に前記連結ピン13が外側から挿通される。この保持部材31、連結ピン13は、それぞれ連結部および連結手段を構成している。
【0016】
図9(a),(b)に示す第1連結金具121は、1枚の基板41と、その基板41の両側面から上下に突出するX状の保持板42とを備えており、保持板42の4枚の突出部43の上下位置にはそれぞれ保持孔44が透設されている。基板41にはX状の装着溝411が透設されており、前記保持板42はその装着溝411内に
図9(a),(b)の上下方向中間部において装着されて基板41に溶接されている。
【0017】
図10(a),(b)に示す第2連結金具122は、上下に相互間隔をおいた平行な2枚の基板41と、両基板41のX状の装着溝411に装着されて両基板41に溶接され、両基板41の上下両面から突出する一対の保持板42とを備えている。第2連結金具122の保持板42は、基板41間の間隔に相当する分だけ第1連結金具121の保持板42より上下方向に長く形成されている。各保持板42の4枚の突出部43には上下位置にはそれぞれ保持孔44が透設されている。
【0018】
図11(a),(b)に示す第3連結金具123は、1枚の基板41と、その基板41の装着溝411に下端において装着されて溶接されたX状をなすひとつの保持板42とを備えており、保持板42には一対の保持孔44が透設されている。
【0019】
以上のように構成された治具10の使用方法を説明する。
治具10は、
図12,
図13に示すように、フォーム101の両サイドプレート102の外面に治具本体11を当てて、その治具本体11の一対の雌ねじ管25をサイドプレート102の挿通孔103内に嵌合して、治具本体11をサイドプレート102に位置決めする。この状態で、サイドプレート102の内面に座金15を当てて、ボルト14をサイドプレート102の内面側から座金15の中心孔を通して雌ねじ管25の雌ねじ26に螺入させ、ボルト14の頭部を座金15に圧接させる。このようにすれば、座金15と治具本体11との間にサイドプレート102が挟持されて、フォーム101の両サイドプレート102の外面に治具10が固定状態でセットされる。
【0020】
このため、
図14に示すように、両治具10の下側の第2枠22をフォークリフト110のフォーク111によってすくい上げれば、治具10を持ち上げて、フォーム101を搬送することができる。また、
図15に示すように、保持部材31にフォークリフト110のフォーク111を通して連結することにより、フォーム101を治具10を介して吊り下げて搬送することができる。
【0021】
図16及び
図17に示すように、治具10を上下に重ねた状態において、上下に隣接する治具10の上下に対向する保持部材31内に対して、1基の第1連結金具121の保持板42の上部側または下部側をそれぞれ収容する。そして、両保持部材31の外側から、連結ピン13を同保持部材31のピン孔32,保持板42の保持孔44及び第1枠21のピン孔32に挿通させる。このようにすれば、上下に隣接する保持部材31間に第1連結金具121の基板41が介在された状態で、第1連結金具121を介して上下の保持部材31が連結固定されて、上下に隣接する治具10がはしご状をなすように連結される。
【0022】
また、下端の保持部材31には、第3連結金具123が下側から収容されて、その第3連結金具123は、保持部材31及び第1枠21のピン孔32及び第3連結金具123の保持孔44を通る連結ピン13によって前記と同様に固定される。その結果、治具10が第1連結金具121,連結ピン13によって上下に連結されて、フォーム101が上下に相互間隔をおいた状態で、安定した積層状態になる。この場合、下端の第3連結金具123が基板41において地面などの設置面に設置される。
【0023】
フォーム101が上下方向に厚いものであれば、保持部材31間を連結する連結金具12として、第2連結金具122を用いる。この第2連結金具122は、保持板42が上下に長く、一対の基板41間に間隔が存在するために、上下に隣接する保持部材31間において間隔を確保できる。このため、上下の治具10間を離間させて治具10間に間隔を確保できる。従って、フォーム101が厚いものであっても、積層されるフォーム101の相互間隔を保持できる。
【0024】
ところで、保持孔44の内径は、連結ピン13の太さよりかなり大きいが、連結ピン13は左右に保持孔44内を保持孔44の軸線に対して斜めに挿通するため、連結ピン13が保持孔44の内周面に係合して、連結ピン13と連結金具121,122,123との間のガタ付きを防ぐことができる。
【0025】
なお、掛環28にフックや索を掛ければ、その掛環28を介して、治具10を介して1または複数のフォーム101を吊り上げて、フォーム101を搬送できる。
以上のようにして、1基のフォーム101あるいは積層状態の複数のフォーム101を損傷することなく、効率的に搬送したり、保管したりすることができる。そして、
図1(a)および同図(b)に示すように、フォーム101によってセントルSを組み立てて、覆工コンクリートCを施工する現場において、治具10がフォーム101から取り外される。
【0026】
本実施形態においては、以下の効果がある。
(1)フォーム101のサイドプレート102に治具10を取付けることができる。これにより、フォーム101のスキンプレート104に接触することなく、
図14に示すように、フォークリフト110のフォーク111などによってフォーム101をすくい上げたり、
図15に示すように、吊り下げたりすることができる。従って、フォーム101のスキンプレート104を損傷することなく、フォーム101を容易に搬送できる。
【0027】
(2)治具10において、フォーム101に取付けられる雌ねじ管25が第1枠21の長さ方向の中間部に配置されている。また、治具10どうしを連結する保持部材31が第1枠21の両端に配置されている。従って、フォーム101のサイドプレート102に取付けられた治具10を連結金具121,123や連結ピン13を介して上下方向に連結することにより、
図16及び
図17に示すように、フォーム101を相互間隔をおいて積層できる。従って、フォーム101の積層状態において、フォーム101のスキンプレート104が他のフォーム101に接触して損傷することを防止できる。このため、フォーム101間に緩衝用の保護板や保護シートなどを介在させる必要がなく、積層されたフォーム101の取扱いが容易である。
【0028】
(3)複数のフォーム101を積層できるため、フォーム101を嵩張ることなく、コンパクトな状態にして設置したり、搬送したりすることができる。従って、保管場所が狭くても、多数枚のフォーム101を整然と保管できる。また、トラックの荷台に多数枚のフォーム101を倒れたり、相互干渉したりすることなく積載できる。このため、フォーム101を損傷することなく、効率的に運搬することができる。これらのフォーム101の保管や運搬に際しては、下端の保持部材31に第3連結金具123を収容して連結すれば、その第3連結金具123の基板41が床面やトラック荷台などに対する安定した設置面となる。
【0029】
(4)治具10のフォーム101に対する取付けは、フォーム101のサイドプレート102の挿通孔103に雌ねじ管25を挿通して、その雌ねじ管25にボルト14を螺入させればよいため、容易である。従って、前記フォーム101からの治具10の取り外しも容易である。
【0030】
(5)隣接する治具10どうしの連結は、保持部材31内に連結金具121,122を収容して、ピン孔32及び保持孔44に連結ピン13を通すのみでよいため、その連結は容易である。従って、隣接する治具10の分離も容易である。
【0031】
(6)第3連結金具123の基板41の下面に車輪を取付ければ、車輪の転動により、フォーム101を床面やレール上においてスムーズに移動させることができる。従って、フォーム101の搬送に便利である。また、フォーム101に対する加工のライン上を前記車輪によって移動できて、フォーム101に対する加工が容易になる。
【0032】
(第2実施形態)
次に、本実施形態の第2実施形態を
図18以降の図面に基づいて説明する。
本実施形態の取り扱い用の治具10は、フォーム101に対する塗装などの加工時においても、フォーム101の取り扱いを容易にする機能を有する。すなわち、本実施形態の治具10は、フォーム101の塗装などの加工前にフォーム101に取り付けられるとともに、加工中および後述の加工ステーション間の搬送や加工終了後の搬送などのフォーム取り扱い中には取り付け状態に維持される。そして、治具10は、フォーム101がセントルSとして組み付けられる前に、フォーム101から取り外される。
【0033】
本実施形態の治具10は、前記第1実施形態の治具10と比較して、以下の構成が相違する。
すなわち、本実施形態の治具10においては、
図18~
図21に示すように、治具本体11が井桁状をなすものの、第2枠22の中央間に補強用の中枠51が架設されている。また、第1枠21は第2枠22の両端部間に位置している。
【0034】
図22および
図23に示す連結金具12は、前記実施形態と同様に第1~第3連結金具121,122,123の3種類(第3連結金具123は図示しない)である。本実施形態の第2連結金具122の一対の基板41の一端部間には補強枠52が介在されている。第1~第3連結金具121~123の保持孔44は、前記第1実施形態とは異なって、保持板42の突出部43の一端部に形成されている。
【0035】
保持部材31は、第1実施形態と同様に、治具本体11の両端部に配置されている。ただし、本実施形態の保持部材31は、治具本体11の第1枠21に沿って延長された角筒状のものであって、軽量化のための複数の透孔53を有している。第1~第3連結金具121,122,123の保持部材31おける前記保持孔44と対向するピン孔32は、保持部材31の前後(
図19および
図21の上下)に対向する側板に透設されている。
【0036】
図21に示すように、連結ピン13には短いものが使用されており、その一端には頭部55が形成されるとともに、他端には、掛止片56が回動可能に支持されている。頭部55側にはスプリング57が外嵌されている。そして、第1~第3連結金具121,122,123が保持部材31の端部内に配置されて、連結ピン13がピン孔32および保持孔44内に挿入された状態において、スプリング57が頭部55と保持部材31の外側面との間に位置する。このため、スプリング57のバネ力により、掛止片56が保持部材31の他の外側面に当接して、第1~第3連結金具121,122,123と保持部材31との連結状態が維持される。掛止片56の回動により、連結ピン13をピン孔32および保持孔44に対して抜くことができて、第1~第3連結金具121,122,123と保持部材31との連結状態を解除できる。
【0037】
掛環28は保持部材31と第2枠22との間に配置されている。
図20に示すように、先端が第1枠21から突出する本実施形態の雌ねじ管25は、基端に頭部251を有するものである。
【0038】
本実施形態においては、
図24に示すように、治具10には、治具本体11と別体であって、治具10の一部を構成するメインスペーサ61およびサブスペーサ62が備えられている。このメインスペーサ61およびサブスペーサ62は、ポリアミド樹脂によって構成されている。メインスペーサ61は、長孔63を有する長円状をなしており、サブスペーサ62は長孔63内に嵌合可能にした大きさを有するとともに、ボルト挿通孔64を有する。
【0039】
また、
図18,
図25(a),同図(b)および
図26に示すように、本実施形態においては、車輪ユニット65を有しており、この車輪ユニット65は、取り付け枠66と、その取り付け枠66に支持された車輪67と、取り付け枠66に支持された位置保持装置68とを備えている。この位置保持装置68は、昇降可能にした保持ロッド681を有するとともに、保持ロッド681を下方に向かって付勢するスプリング(図示しない)と、保持ロッド681をスプリングの付勢力に抗して上昇位置に保持するロック機構(図示しない)とを備えている。
【0040】
以上のように構成された本実施形態の治具10の使用方法を説明する。
本実施形態においては、
図20に示すように、前記第1実施形態と同様に、フォーム101の両サイドプレート102の外面に治具本体11を位置させて、その治具本体11の一対の雌ねじ管25をサイドプレート102の挿通孔103内に嵌合して、治具本体11をサイドプレート102に位置決めする。この状態で、サイドプレート102の内面に座金15を当てて、ボルト14をサイドプレート102の内面側から座金15の中心孔を通して雌ねじ管25の雌ねじ26に螺入させ、ボルト14の頭部を座金15に圧接させる。このようにすれば、座金15と治具本体11との間にサイドプレート102が挟持されて、フォーム101の両サイドプレート102の外面に治具10が固定される。
【0041】
そして、本実施形態においては、このとき、治具本体11とサイドプレート102との間において、雌ねじ管25にサブスペーサ62を外嵌するとともに、そのサブスペーサ62がメインスペーサ61の長孔63内に位置するようにする。このようにすれば、メインスペーサ61およびサブスペーサ62を治具本体11とサイドプレート102との間に介在される。従って、ボルト14を締め付ければ、メインスペーサ61およびサブスペーサ62が治具本体11とサイドプレート102との間に挟圧される。このとき、メインスペーサ61をその長孔63の長さの範囲内において
図20の上下方向に位置調節して、メインスペーサ61の下端がスキンプレート104側に突出しないようにする。
【0042】
このため、第1実施形態の
図14に示した場合と同様に、両治具10の第2枠22をフォークリフト110のフォーク111によってすくい上げれば、治具10を持ち上げて、フォーム101を搬送することができる。また、第1実施形態の
図15に示した場合と同様に、保持部材31にフォークリフト110のフォーク111を通して連結することにより、フォーム101を治具10を介して吊り下げて搬送することができる。
【0043】
図27に示すように、治具10を上下に重ねた状態において、上下に隣接する治具10の上下に対向する保持部材31内に対して、第1連結金具121の保持板42の上部側または下部側をそれぞれ収容する。そして、両保持部材31の外側から、連結ピン13を、その掛止片56を連結ピン13の長さ方向に沿わせて、同保持部材31のピン孔32および保持板42の保持孔44に挿通させる。その後、掛止片56を保持部材31の外側面に添わせる。このようにすれば、上下に隣接する保持部材31間に第1連結金具121の基板41が介在された状態で、第1連結金具121を介して上下の保持部材31が連結固定されて、上下に隣接する治具10がはしご状をなすように連結される。
【0044】
また、下端の保持部材31には、第3連結金具が下側から収容されて、同様に連結ピン13によって固定される。その結果、下端の第3連結金具が地面などの設置面に設置される。
【0045】
フォーム101が上下方向に厚いものであれば、
図28に示すように、保持部材31間を連結する連結金具として、第2連結金具122を用いる。一対の基板41間に間隔が存在するために、上下の治具10間を離間させて治具10間に間隔を確保できる。従って、フォーム101が厚いものであっても、積層されるフォーム101の相互間隔を保持できる。第3連結金具は、必要に応じて、保持部材31の設置部となる最下端に取り付けられる。
【0046】
掛環28にフックや索を掛ければ、その掛環28を介して、治具10及びフォーム101を吊り上げて、フォーム101を搬送できる。
本実施形態の治具10は、フォーム101に対する塗装などの加工に際して機能を発揮する。
【0047】
すなわち、治具10の取り付けに先立って、サイドプレート102の外側面における治具10の取り付け位置に対して、部分的に塗装が行われる。この塗装は、例えば、ローラを用いた塗布方法が採用される。
【0048】
次いで、メインスペーサ61およびサブスペーサ62を介して治具10がサイドプレート102の外側面に取り付けられる。この場合、メインスペーサ61およびサブスペーサ62が鋼材より軟質の合成樹脂製であるため、サイドプレート102や塗装面に傷がつくことはほとんどない。
【0049】
また、サイドプレート102に対する治具10の取り付けと相前後して、治具10の保持部材31の下端には車輪ユニット65が取り付けられる。車輪ユニット65の取り付けは、取り付け枠66が保持部材31の下端に対して第3連結金具に代えて図示しないボルトによって行われる。
【0050】
そして、フォーム101がその掛環28においてクレーン(図示しない)によってフォーム101の加工工程間に敷設されたレール71上に載置される。このようにして、フォーム101は第1加工ステーションに位置する。
【0051】
この第1ステーションにおいて、位置保持装置68のロック機構によるロックが解除されて、スプリングの付勢力により、昇降ロッド681が下方へ移動されて、床面(図示しない)押し当てられる。このため、ブレーキ機能が作用されることによりフォーム101の搬送移動が阻止されてフォーム101が位置保持される。そして、エアガンなどによって、スキンプレート104の成形面Fを除くフォーム101全体が清掃される。
【0052】
清掃終了後、位置保持装置68の昇降ロッド681がスプリングの付勢力に抗して床面から押し上げられて、ロック機構によるロック状態になり、車輪67がレール71上を走行できる状態になる。そして、フォーム101は、レール71上を第2ステーションまで搬送される。この第2ステーションにおいては、フォーム101は再度位置保持装置68のロック解除による昇降ロッド681の下降によって位置保持される。そして、その位置保持状態において、スキンプレート104の成形面Fを除いてフォーム101全体に対して噴霧塗装が施される。
【0053】
塗装終了後、前記と同様に、位置保持装置68の昇降ロッド681が上昇位置に移動されて、車輪67がレール71上を走行可能になる。そして、フォーム101は、レール71上を第3ステーションまで搬送される。この第3ステーションにおいては、フォーム101は再度位置保持装置68によって位置保持される。そして、その状態において、スキンプレート104の成形面F全体に対してショットピーニングが施される。このショットピーニングは、
図20に示すショットノズル73からスキンプレート104の成形面Fに対して投射材が吹き付けられることにより実行される。このため、成形面Fに対して凹凸加工が施され、その凹凸加工によって成形面Fには離型剤を保持するための多数の凹部(図示しない)が形成される。従って、覆工コンクリートCの成形に際して、成形面Fの離型性が向上して、覆工コンクリートCの表面の良好な仕上がり品質を確保できる。
【0054】
ショットピーニングが終了したフォーム101はレール71に沿って第3ステーションから搬送される。そして、フォーム101は加工工程から撤去されて、車輪ユニット65が取り外される。その後、必要に応じて、保持部材31の下端に対して第3連結金具が取り付けられる。
【0055】
本実施形態においては、前記第1実施形態に加えて、以下の効果を発揮する。
(7)フォーム101に対する洗浄,塗装およびショットピーニングの加工に先立って、フォーム101のサイドプレート102に治具10が取り付けられる。そして、この治具10に車輪ユニット65を取り付けて、レール71上を移動させることにより、フォーム101を前記洗浄,塗装およびショットピーニングの各加工ステーションに円滑に搬入させることができる。従って、フォーム101の加工ステーション間の移動が容易になって、フォーム101に対する各種の加工を効率的に実行できる。
【0056】
(8)各加工ステーションにおいて、フォーム101を安定状態に位置保持させるための位置保持装置68が車輪ユニット65に設けられている。このため、フォーム101に対する洗浄等の加工を安定して能率よく実行できる。
【0057】
(9)治具本体11とサイドプレート102との間に、軟質のメインスペーサ61およびサブスペーサ62が介在されている。このため、サイドプレート102のレール71上の移動などにより、治具10に振動や衝撃が加わった際に、その振動などがサイドプレート102に対して直接作用することを回避できて、サイドプレート102の損傷を防止できる。
【0058】
(10)
図20に示すように、治具本体11とサイドプレート102との間にメインスペーサ61およびサブスペーサ62が設けられるため、治具本体11とサイドプレート102との間に、メインスペーサ61およびサブスペーサ62の厚さ相当分の間隔が形成される。これによって、スキンプレート104の成形面Fに対するショットピーニングをむらなく均一に実行できる。これに対して、
図20に示す状態とは異なり、メインスペーサ61およびサブスペーサ62が存在することなく、治具本体11がサイドプレート102に密着している場合には以下のようなおそれがある。すなわち、スキンプレート104の成形面Fと治具本体11との間における内コーナにおいて、成形面Fの端縁には投射材が到達し得ないために、その端縁には凹凸面が形成されない。この反面、その端縁のわずかに外側(成形面Fの中央側)には、ショットノズル73から投射された投射材に加えて、治具本体11に衝突して反射した投射材が当たることになる。このため、前記の端縁のわずかに外側の部分には、他の部分より多くのショット材が当たることになり、成形面Fにむらが生じることになる。このように、成形面Fにむらが生じると、そのむらが覆工コンクリートCの表面に転写されて、その表面の品質が低下する。
【0059】
(11)メインスペーサ61が長円状に形成されて、長孔63が形成されているため、メインスペーサ61をその長さ方向に位置調節すれば、一種類のメインスペーサ61であってもメインスペーサ61が成形面F側に突出しない位置,言い換えればショットピーニングに悪影響を与えない位置に配置できる。従って、フォーム101のサイドプレート102の幅が複数種類であっても、一種類のメインスペーサ61で対応できる。
【0060】
(12)フォーム101に対する加工前に、フォーム101に対して治具10を取り付ければ、フォーム101の各加工ステーションにおける加工や、加工ステーション間の搬送などの取り扱いが容易になる。そして、加工終了後、治具10の取付状態を維持すれば、その治具10の機能により、フォーム101のフォームリフトなどによる搬送などを効率よく実行できる。従って、この治具10により、フォーム101の加工から搬送や保管を経てフォームユニットUの構築前までの取り扱いを容易に行うことができる。
【0061】
(変更例)
前記第1,第2実施形態は、以下のように変更して実施することができる。そして、各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0062】
・治具10の治具本体11を1枚または複数枚の板材によって構成すること。
・連結ピン13の本数を図示の本数から変更すること。
・治具10の治具本体11内に補強のための筋交いを設けること。
【0063】
・雌ねじ管25を省略すること。この構成においては、フォーム101のサイドプレート102の内面に当てられた座金15の中心孔を通る固定ロッドとしてのボルトを第1枠21の透孔23,24を挿通させて、第1枠21を介したサイドプレート102の反対側において前記ボルトにナットを螺着させること。
【0064】
・前記第2実施形態において、メインスペーサ61として、長さの異なるものを複数種類用意し、フォーム101のサイドプレート102の幅に応じた長さのメインスペーサ61を選択使用すること。
【0065】
・車輪ユニット65において、車輪67に対してブレーキを付与するためのブレーキ装置を設けること。このようにすれば、ブレーキ装置が位置保持装置となり、車輪ユニット65の位置保持装置68が不要になる。
【0066】
(他の技術的思想)
前記第1,第2実施形態および変更例から把握される技術的思想は以下の通りである。
(A)前記治具本体は、各一対の第1枠及び第2枠によって井桁状に形成されている請求項1~3のうちのいずれか一項に記載のセントルフォーム取り扱い用の治具。このようにすれば、治具本体を頑丈なものとすることができる。
【0067】
(B)前記治具本体の下部に着脱可能にした車輪ユニットを設けた請求項1~3のうちのいずれか一項に記載のセントルフォーム取り扱い用の治具。このようにすれば、セントルフォームを容易かつ円滑に移動できる。
【0068】
(C)前記車輪ユニットには、車輪によるフォームの移動を阻止する位置保持装置を設けた前記技術的思想(B)項に記載のセントルフォーム取り扱い用の治具。このようにすれば、セントルフォームの位置が定まり、セントルフォームに対するショットピーニングなどの加工が容易になる。
【0069】
(D)サイドプレートの治具取り付け部分に塗装を施した後、その部分にスペーサ介して治具を取り付け、次いで、セントルフォームのスキンプレートの成形面を除いて、セントルフォーム全体に塗装を施すセントルフォームの加工方法。このようにすれば、セントルフォーム全体にむらなく塗装を施すことができる。
【0070】
(E)セントルフォーム全体に塗装を施した後に、スキンプレートの成形面にショットピーニングを施す前記技術的思想(D)項に記載のセントルフォームの加工方法。このようにすれば、成形面に離型剤のための凹部を多数形成できる。
【0071】
(F)治具に車輪ユニットを取り付けて、セントルフォームを加工するための加工ステーション間を移動させる前記技術的思想(D)項または(E)項に記載のセントルフォームの加工方法。このようにすれば、セントルフォームを加工ステーション間において容易に移動できて、セントルフォームに対する加工を効率よく行うことができる。
【符号の説明】
【0072】
10…治具
11…治具本体
21…第1枠
22…第2枠
31…保持部材
61…メインスペーサ
62…サブスペーサ
65…車輪ユニット
67…車輪
71…レール
102…サイドプレート