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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-09
(45)【発行日】2022-03-17
(54)【発明の名称】フラックス及びソルダペースト
(51)【国際特許分類】
   B23K 35/363 20060101AFI20220310BHJP
   B23K 35/26 20060101ALI20220310BHJP
   C22C 13/00 20060101ALN20220310BHJP
   C22C 13/02 20060101ALN20220310BHJP
【FI】
B23K35/363 D
B23K35/363 C
B23K35/363 E
B23K35/26 310A
C22C13/00
C22C13/02
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020158911
(22)【出願日】2020-09-23
【審査請求日】2021-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000143215
【氏名又は名称】株式会社弘輝
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】行方 一博
(72)【発明者】
【氏名】新井 健文
(72)【発明者】
【氏名】三角 友理
【審査官】松岡 徹
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107695565(CN,A)
【文献】特開2019-055428(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 35/363
B23K 35/26
C22C 13/00
C22C 13/02
CAplus(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
はんだ付けに用いられるフラックスであって、
1つの不飽和結合を有する不飽和脂肪族アルコールと、チキソ剤と、溶剤と、樹脂と、を含有し、
前記不飽和脂肪族アルコールがオレイルアルコールを含み、
前記オレイルアルコールの含有量が、フラックス全体に対して、2.0質量%以上12.0質量%以下であ
前記樹脂の含有量が、フラックス全体に対して、30.0質量%以上70.0質量%以下である、フラックス。
【請求項2】
前記オレイルアルコールの含有量が、フラックス全体に対して、4.0質量%以上8.0質量%以下である、請求項1に記載のフラックス。
【請求項3】
前記不飽和脂肪族アルコールがオレイルアルコールからなる、請求項1又は2に記載のフラックス。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載のフラックスと、はんだ合金粉末と、を含有する、ソルダペースト。
【請求項5】
前記はんだ合金粉末の合金が、Sn/Ag/Cu合金である、請求項4に記載のソルダペースト。
【請求項6】
前記Sn/Ag/Cu合金が、さらに、In、Bi、Sb及びNiから選択される少なくとも一種を含有する、請求項5に記載のソルダペースト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はんだ付けに用いられるフラックス、及び、該フラックスを含むソルダペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板等の電子回路基板上に、チップ部品、パッケージ基板等の電子部品を搭載する実装技術には、はんだ合金とフラックスとを混合したソルダペーストが用いられる。具体的には、電子回路基板表面のパッド上に、メタルマスクを用いてソルダペーストをスクリーン印刷した後、電子部品をマウントして加熱(リフロー)することにより、電子回路基板上に電子部品が接合される。
【0003】
近年、電子機器の小型化及び高機能化に伴い電子部品の小型化が進んでおり、このような小型部品には、微細な開口部を有するメタルマスクが用いられている。ところが、車載用基板等への実装においては、小型部品から従来の大型部品まで幅広い大きさの部品が電子回路基板に混載される場合があり、このような場合に微細な開口部を有するメタルマスクを用いると、大型部品へのはんだ供給量が不足して接合強度が低下することが懸念される。一方で、大型部品へのはんだ供給量を確保するためにメタルマスクの厚みを厚くすると、アスペクト比(すなわち、開口側面積に対する開口面積の比)が低くなるため、ソルダペーストがメタルマスクの開口部側面に付着しやすくなり、その結果、小型部品へのはんだ供給量が不足する虞がある。
【0004】
低アスペクト比のメタルマスクを用いた場合にも優れた印刷性を確保するため、例えば、特許文献1には、ベース樹脂としてアルキレン-(メタ)アクリル酸共重合樹脂を所定量含むフラックスを用いたソルダペーストが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020-40095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、電子部品のさらなる小型化に伴い、メタルマスクの開口部はより微細化する傾向にあり、さらにアスペクト比の低いメタルマスクに対する印刷性に優れたソルダペーストが求められている。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、微細な開口部を有し、かつ、低アスペクト比のメタルマスクを用いた際の印刷性を向上させることが可能なフラックス、及び、該フラックスを含むソルダペーストを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るフラックスは、はんだ付けに用いられるフラックスであって、1つの不飽和結合を有する不飽和脂肪族アルコールと、チキソ剤と、溶剤と、を含有し、前記不飽和脂肪族アルコールがオレイルアルコールを含み、前記オレイルアルコールの含有量が、フラックス全体に対して、2.0質量%以上12.0質量%以下である。
【0009】
前記フラックスは、斯かる構成により、メタルマスクの開口部側面に対するソルダペーストの滑り性を向上させ、ソルダペーストをメタルマスクの開口部側面に付着しにくくする。その結果、前記フラックスは、微細な開口部を有し、かつ、低アスペクト比のメタルマスクを用いた際のソルダペーストの印刷性を向上させることができる。
【0010】
本発明に係るフラックスは、前記オレイルアルコールの含有量が、フラックス全体に対して、4.0質量%以上8.0質量%以下であってもよい。
【0011】
斯かる構成により、メタルマスクの開口部側面に対するソルダペーストの滑り性がより向上し、メタルマスクの開口部側面にソルダペーストがより付着しにくくなる。その結果、前記フラックスは、微細な開口部を有し、かつ、低アスペクト比のメタルマスクを用いた際のソルダペーストの印刷性をより向上させることができる。
【0012】
本発明に係るフラックスは、前記不飽和脂肪族アルコールがオレイルアルコールのみから構成されていてもよい。
【0013】
斯かる構成により、メタルマスクの開口部側面に対するソルダペーストの滑り性がより向上し、メタルマスクの開口部側面にソルダペーストがより付着しにくくなる。その結果、前記フラックスは、微細な開口部を有し、かつ、低アスペクト比のメタルマスクを用いた際のソルダペーストの印刷性をより向上させることができる。
【0014】
本発明に係るソルダペーストは、上述のフラックスと、はんだ合金粉末と、を含有する。
【0015】
前記フラックスは、メタルマスクの開口部側面に対するソルダペーストの滑り性を向上させ、ソルダペーストをメタルマスクの開口部側面に付着しにくくする。その結果、前記ソルダペーストは、微細な開口部を有し、かつ、低アスペクト比のメタルマスクを用いた際の印刷性を向上させることができる。
【0016】
本発明に係るソルダペーストは、前記はんだ合金粉末の合金が、Sn/Ag/Cu合金であってもよい。
【0017】
前記ソルダペーストは、広く一般的に使用されているSn/Ag/Cu合金に対しても、微細な開口部を有し、かつ、低アスペクト比のメタルマスクを用いた際の印刷性を向上させることができる。
【0018】
本発明に係るソルダペーストは、前記Sn/Ag/Cu合金が、さらに、In、Bi、Sb及びNiから選択される少なくとも一種を含有していてもよい。
【0019】
前記ソルダペーストは、はんだ合金の冷熱耐久性を向上させる目的でこれらの金属元素を添加したとしても、微細な開口部を有し、かつ、低アスペクト比のメタルマスクを用いた際の印刷性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、微細な開口部を有し、かつ、低アスペクト比のメタルマスクを用いた際の印刷性を向上させることが可能なフラックス、及び、該フラックスを含むソルダペーストを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態に係るフラックス及びソルダペーストについて説明する。
【0022】
<フラックス>
本実施形態に係るフラックスは、1つの不飽和結合を有する不飽和脂肪族アルコールと、チキソ剤と、溶剤と、を含有する。
【0023】
(不飽和脂肪族アルコール)
本実施形態に係るフラックスは、1つの不飽和結合を有する不飽和脂肪族アルコールを含有する。前記不飽和脂肪族アルコールは、オレイルアルコールを含む。好ましくは、前記不飽和脂肪族アルコールは、オレイルアルコールからなる。なお、オレイルアルコールとは、9位に二重結合を有する炭素数18のシス型の直鎖脂肪族アルコールである。
【0024】
オレイルアルコールの含有量は、ソルダペーストの滑り性を向上させる観点から、前記フラックス全体に対して、2.0質量%以上であり、4.0質量%以上であることが好ましい。また、オレイルアルコールの含有量は、前記フラックス全体に対して、12.0質量%以下であり、8.0質量%以下であることが好ましい。
【0025】
前記不飽和脂肪族アルコールは、オレイルアルコール以外のその他の不飽和脂肪族アルコールを含んでいてもよい。その他の不飽和脂肪族アルコールとしては、例えば、trans-2-トリデセン-1-オール、パルミトレイルアルコール、エライジルアルコール等が挙げられる。その他の不飽和脂肪族アルコールの含有量は、メタルマスクの開口部側面に対するソルダペーストの滑り性を向上させる観点から、前記フラックス全体に対して、12.0質量%以下であることが好ましく、8.0質量%以下であることがより好ましく、その他の不飽和脂肪族アルコールを含まないことがさらに好ましい。なお、その他の不飽和脂肪族アルコールは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0026】
(チキソ剤)
本実施形態に係るフラックスは、チキソ剤を含む。チキソ剤としては、例えば、ヒマシ硬化油、脂肪酸アミド、脂肪酸ビスアマイド、ポリアミド化合物、カオリン、コロイダルシリカ、有機ベントナイト、ガラスフリット等が挙げられる。これらの中でも、チキソ剤は、耐熱性の観点から、脂肪酸ビスアマイド(脂肪酸ビスアミド)又はポリアミド化合物であることが好ましい。脂肪酸ビスアマイドとしては、例えば、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビス-12-ヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’-ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’-キシリレンビス-12-ヒドロキシステアリルアミド等が挙げられる。ポリアミド化合物としては、例えば、脂肪族ポリアミド化合物であるターレンVA-79、AMX-6096A、WH-215、WH-255(以上、共栄社化学社製)、SP-10、SP-500(以上、東レ社製)、グリルアミドL20G、グリルアミドTR55(以上、エムスケミ-・ジャパン社製)等、主鎖にベンゼン環、ナフタレン環等の環式化合物含む芳香族ポリアミド化合物(半芳香族ポリアミド化合物又は全芳香族ポリアミド化合物)であるJH-180(伊藤製油社製)等が挙げられる。なお、チキソ剤は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0027】
チキソ剤の含有量は、フラックス全体に対して、1.0質量%以上であることが好ましく、3.0質量%以上であることがより好ましい。また、チキソ剤の含有量は、フラックス全体に対して、7.0質量%以下であることが好ましく、5.0質量%以下であることがより好ましい。なお、チキソ剤が2種以上含まれる場合、前記含有量はチキソ剤の合計含有量である。
【0028】
(溶剤)
本実施形態に係るフラックスは、溶剤を含む。溶剤としては、例えば、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(ヘキシルジグリコール)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(ジブチルジグリコール)、ジエチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル(2エチルヘキシルジグリコール)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルジグリコール)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルトリグリコール)、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールn-ブチルエーテル等のグリコールエーテル類;n-ヘキサン、イソヘキサン、n-ヘプタン等の脂肪族系化合物;酢酸イソプロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等のエステル類;メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、ジエチルケトン等のケトン類;エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール等のアルコール類等の公知の溶剤を用いることができる。なお、溶剤は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0029】
溶剤の含有量は、前記フラックス全体に対して、30.0質量%以上であることが好ましく、40.0質量%以上であることがより好ましい。また、溶剤の含有量は、前記フラックス全体に対して、55.0質量%以下であることが好ましく、47.0質量%以下であることがより好ましい。なお、前記溶剤が2種以上含まれる場合、前記含有量は前記溶剤の合計含有量である。
【0030】
(樹脂)
本実施形態に係るフラックスは、樹脂を含んでいてもよい。樹脂としては、例えば、ロジン系樹脂、合成樹脂等が挙げられる。ロジン系樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、ロジン及びロジン誘導体(例えば、水素添加ロジン、重合ロジン、不均化ロジン、アクリル酸変性ロジン等)から選択される1種以上のロジン系樹脂を用いることができる。また、合成樹脂としては、例えば、テルペンフェノール樹脂等の公知の合成樹脂を用いることができる。なお、樹脂は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0031】
樹脂の含有量は、フラックス全体に対して、30.0質量%以上であることが好ましく、40.0質量%以上であることがより好ましい。また、樹脂の含有量は、フラックス全体に対して、70.0質量%以下であることが好ましく、50.0質量%以下であることがより好ましい。なお、樹脂が2種以上含まれる場合、前記含有量は樹脂の合計含有量である。
【0032】
(飽和脂肪族アルコール)
本実施形態に係るフラックスは、飽和脂肪族アルコールを含んでいてもよい。飽和脂肪族アルコールとしては、特に限定されるものではなく、例えば、1-トリデカノール、セタノール、1-ヘプタデカノール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール等が挙げられる。前記飽和脂肪族アルコールの含有量は、メタルマスクの開口部側面に対するソルダペーストの滑り性を向上させる観点から、前記フラックス全体に対して、8.0質量%以下であることが好ましく、5.0質量%以下であることがより好ましく、飽和脂肪族アルコールを含まないことがさらに好ましい。なお、飽和脂肪族アルコールは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0033】
(活性剤)
本実施形態に係るフラックスは、活性剤を含んでいてもよい。活性剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、有機酸系活性剤、アミン化合物、アミノ酸化合物、アミンハロゲン塩やハロゲン化合物等のハロゲン系活性剤等が挙げられる。なお、活性剤は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0034】
有機酸系活性剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ツベルクロステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸、グリコール酸等のモノカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、ジグリコール酸等のジカルボン酸;ダイマー酸、レブリン酸、乳酸、アクリル酸、安息香酸、サリチル酸、アニス酸、クエン酸、ピコリン酸、トリス(2-カルボキシエチル)イソシアヌル酸、トリス(2-カルボキシプロピル)イソシアヌル酸等のその他の有機酸が挙げられる。
【0035】
ハロゲン化合物としては、トリス(2,3-ジブロモプロピル)イソシアヌル酸、2,3-ジブロモ-2-ブテン-1,4-ジオール、2-ブロモ-3-ヨード-2-ブテン-1,4-ジオール、TBA-ビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル)等が挙げられる。
【0036】
活性剤の含有量は、フラックス全体に対して、0.5質量%以上であることが好ましく、3.0質量%以上であることがより好ましい。また、活性剤の含有量は、フラックス全体に対して、20.0質量%以下であることが好ましく、10.0質量%以下であることがより好ましい。なお、活性剤が2種以上含まれる場合、前記含有量は活性剤の合計含有量である。
【0037】
本実施形態に係るフラックスは、その他の添加剤として、例えば、安定剤、界面活性剤、消泡剤、及び、腐食防止剤から選択される少なくとも一種を含んでいてもよい。その他の添加剤の合計含有量は、特に限定されるものではなく、例えば、フラックス全体に対して、5.0質量%以下とすることができる。
【0038】
本実施形態に係るフラックスは、1つの不飽和結合を有する不飽和脂肪族アルコールと、チキソ剤と、溶剤と、を含有し、前記不飽和脂肪族アルコールがオレイルアルコールを含み、前記オレイルアルコールの含有量が、フラックス全体に対して、2.0質量%以上12.0質量%以下であることにより、メタルマスクの開口部側面に対するソルダペーストの滑り性が向上し、メタルマスクの開口部側面にソルダペーストが付着しにくくなる。その結果、前記フラックスは、微細な開口部を有し、かつ、低アスペクト比のメタルマスクを用いた際のソルダペーストの印刷性を向上させることができる。
【0039】
本実施形態に係るフラックスは、前記オレイルアルコールの含有量が、フラックス全体に対して、4.0質量%以上8.0質量%以下であることにより、メタルマスクの開口部側面に対するソルダペーストの滑り性がより向上し、メタルマスクの開口部側面にソルダペーストがより付着しにくくなる。その結果、前記フラックスは、微細な開口部を有し、かつ、低アスペクト比のメタルマスクを用いた際のソルダペーストの印刷性をより向上させることができる。
【0040】
本実施形態に係るフラックスは、前記不飽和脂肪族アルコールがオレイルアルコールからなることにより、メタルマスクの開口部側面に対するソルダペーストの滑り性がより向上し、メタルマスクの開口部側面にソルダペーストがより付着しにくくなる。その結果、前記フラックスは、微細な開口部を有し、かつ、低アスペクト比のメタルマスクを用いた際のソルダペーストの印刷性をより向上させることができる。
【0041】
<ソルダペースト>
本実施形態に係るソルダペーストは、上述のフラックスと、はんだ合金粉末と、を含有する。前記ソルダペーストは、前記フラックスと前記はんだ合金粉末とを混合することにより得られる。前記フラックスの含有量は、前記ソルダペースト全体に対して、5.0質量%以上20.0質量%以下であることが好ましい。また、前記はんだ合金粉末の含有量は、前記ソルダペースト全体に対して、80質量%以上95質量%以下であることが好ましい。
【0042】
前記はんだ合金粉末の合金としては、鉛フリーはんだ合金、鉛を含む共晶はんだ合金が挙げられるが、環境負荷低減の観点から、鉛フリーはんだ合金であることが好ましい。鉛フリーはんだ合金としては、例えば、スズ、銀、銅、インジウム、亜鉛、ビスマス、アンチモン等を含む合金が挙げられる。より具体的には、Sn/Ag、Sn/Ag/Cu、Sn/Cu、Sn/Ag/Bi、Sn/Bi、Sn/Ag/Cu/Bi、Sn/Sb、Sn/Zn/Bi、Sn/Zn、Sn/Zn/Al、Sn/Ag/Bi/In、Sn/Ag/Cu/Bi/In/Sb、In/Ag等の合金が挙げられる。これらの中でも、前記はんだ合金粉末の合金は、Sn/Ag/Cu合金であることが好ましい。また、Sn/Ag/Cu合金は、さらに、In、Bi、Sb及びNiから選択される少なくとも一種を含有することがより好ましい。また、前記合金には、不可避的不純物が含まれる。不可避的不純物とは、製造過程において不可避的に混入する成分であって、本発明の効果に影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
【0043】
前記はんだ合金粉末の粒子径は、5μm以上45μm以下であることが好ましく、15μm以上39μm以下であることがより好ましい。
【0044】
本実施形態に係るソルダペーストは、上述のフラックスと、はんだ合金粉末と、を含有する。前記フラックスは、メタルマスクの開口部側面に対するソルダペーストの滑り性を向上させ、ソルダペーストをメタルマスクの開口部側面に付着しにくくする。その結果、前記ソルダペーストは、微細な開口部を有し、かつ、低アスペクト比のメタルマスクを用いた際の印刷性を向上させることができる。
【0045】
本実施形態に係るソルダペーストは、前記はんだ合金粉末の合金が、Sn/Ag/Cu合金であってもよい。前記ソルダペーストは、広く一般的に使用されているSn/Ag/Cu合金に対しても、微細な開口部を有し、かつ、低アスペクト比のメタルマスクを用いた際の印刷性を向上させることができる。
【0046】
本実施形態に係るソルダペーストは、前記Sn/Ag/Cu合金が、さらに、In、Bi、Sb及びNiから選択される少なくとも一種を含有していてもよい。前記ソルダペーストは、はんだ合金の冷熱耐久性を向上させる目的でこれらの金属元素を添加したとしても、微細な開口部を有し、かつ、低アスペクト比のメタルマスクを用いた際の印刷性を向上させることができる。
【実施例
【0047】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0048】
<ソルダペーストの作製>
表1及び表2に示す配合量の樹脂、溶剤、不飽和脂肪族アルコール、飽和脂肪族アルコール、チキソ剤、活性剤及び酸化防止剤を加熱容器に投入し、180℃まで加熱することにより、ワニス成分を得た。その後、ワニス成分とその他の成分とを室温で混合させることにより、均一に分散されたフラックスを得た。なお、表1及び表2に示す各配合量は、フラックスに含まれる各成分の含有量と等しい。次に、各フラックスを11.8質量%、表1及び表2に示すはんだ合金粉末を88.2質量%となるように混合して、各実施例及び各比較例のソルダペーストを得た。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
表1及び表2に示すフラックスに含まれる各原料の詳細を表3に示す。また、表1及び表2に示すはんだ合金の詳細を表4に示す。また、表1及び表2に示す不飽和脂肪族アルコールの詳細を表5に示す。なお、表1及び表2のオレイルアルコール有効割合は、表5に示す各不飽和脂肪族アルコールに含まれるオレイルアルコールの含有量から算出した。表1及び表2に示すオレイルアルコールの有効割合は、明細書中におけるオレイルアルコールの含有量と等しい。
【0052】
【表3】
【0053】
【表4】
【0054】
【表5】
【0055】
<印刷性の評価>
各実施例及び各比較例のソルダペーストを、印刷機(YSP、YAMAHA Motor社製)にセッティングしたメタルマスクの上に300g載せ、メタルマスクにソルダペーストをなじませるため、ローリングを4回行った。そして、メタルマスクの版裏を乾式クリーニングした後、下記印刷条件で印刷を2回行った。
【0056】
(印刷条件)
印刷環境:温度が24~26℃、湿度が50~60%RH
印刷スキージ:メタルスキージ
スキージ角度:60°
メタルマスク厚:150μm
印刷速度:40mm/sec
パッドの形状及び大きさ:□形状、0.25mm×0.25mm
パッド数:100(50パッド×n=2)
パッドの材質:OSP処理銅
メタルマスクのアスペクト比(メタルマスクの開口面積(0.0625mm)/メタルマスクの開口側面積(0.15mm)):0.42
【0057】
はんだの転写率は、印刷した各基板の銅パッド上にあるはんだをKOHYOUNG aSPIerで検出し、その体積%を求めることにより算出した。パッド全体(100個)に対する、体積%が100%以上(充填率100%以上)のパッドの割合、体積%が70%以上100%未満(充填率70%以上100%未満)のパッドの割合、及び、体積%が70%未満(充填率70%未満)のパッドの割合を表1及び表2に示す。
【0058】
転写率の評価は、充填率70%以上100%未満の割合が90%以上の場合に「合格」と判定し、それ以外の場合は「不合格」と判定した。結果を表1及び表2に示す。
【0059】
表1の結果から分かるように、本発明の要件をすべて満たす各実施例のソルダペーストは、充填率70%以上100%未満の割合が90%以上であることから、微細な開口部を有し、かつ、低アスペクト比のメタルマスクを用いた際に優れた印刷性を示す。
【0060】
一方、オレイルアルコールを含まない比較例1~3及び比較例5~8、並びに、オレイルアルコールの含有量が12.0質量%を超える比較例4のソルダペーストは、充填率70%以上100%未満の割合が90%未満であることから、微細な開口部を有し、かつ、低アスペクト比のメタルマスクを用いた際の印刷性に劣ることが分かる。
【要約】
【課題】微細な開口部を有し、かつ、低アスペクト比のメタルマスクを用いた際の印刷性を向上させることが可能なフラックス、及び、該フラックスを含むソルダペーストを提供することを課題とする。
【解決手段】本発明に係るフラックスは、はんだ付けに用いられるフラックスであって、1つの不飽和結合を有する不飽和脂肪族アルコールと、チキソ剤と、溶剤と、を含有し、前記不飽和脂肪族アルコールがオレイルアルコールを含み、前記オレイルアルコールの含有量が、フラックス全体に対して、2.0質量%以上12.0質量%以下である。
【選択図】なし