(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-09
(45)【発行日】2022-03-17
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池用の複合微細構造集電体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/70 20060101AFI20220310BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20220310BHJP
B23D 1/12 20060101ALI20220310BHJP
B23B 27/00 20060101ALN20220310BHJP
【FI】
H01M4/70 A
H01M4/66 A
B23D1/12
B23B27/00 A
(21)【出願番号】P 2020554880
(86)(22)【出願日】2018-10-31
(86)【国際出願番号】 CN2018113218
(87)【国際公開番号】W WO2019196393
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2020-10-06
(31)【優先権主張番号】201810329828.X
(32)【優先日】2018-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】512000569
【氏名又は名称】華南理工大学
(74)【代理人】
【識別番号】100104662
【氏名又は名称】村上 智司
(74)【代理人】
【識別番号】100184631
【氏名又は名称】大久保 隆
(72)【発明者】
【氏名】ユアン ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】チウ ジチャン
(72)【発明者】
【氏名】パン パオイウ
(72)【発明者】
【氏名】ルオ チエン
(72)【発明者】
【氏名】ホアン シーミン
(72)【発明者】
【氏名】タン ヨン
【審査官】鈴木 雅雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-099512(JP,A)
【文献】特開2007-323990(JP,A)
【文献】特開平07-335208(JP,A)
【文献】特開平10-106580(JP,A)
【文献】特開2005-040889(JP,A)
【文献】特開2005-081476(JP,A)
【文献】特開2006-305667(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/70
H01M 4/66
B23D 1/12
B23B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン電池用の複合微細構造集電体であって、
滑らかな下
面と、複合微細構造を有する上面とを含み、
前記複合微細構造は、
前記上面
に設けられたマイクロボ
スと
、
前記上面に格子状に形成されて、各格子の内側部分が前記マイクロボスを構成するトレン
チと、
前記各格子の内側の各マイクロボ
スの上面に
形成された、
第一凹
部、鱗状バリ及び
第二凹部と、
を含み、
前記第一凹部及び第二凹部は、互いに平行に延びる一対のトレンチの間において、該トレンチの延設方向に並んで配置され、
前記第一凹部の端縁には前記鱗状バリが存在していない一方、
前記第二凹部における前記一対のトレンチに沿って延びる一対の端縁にはそれぞれ、前記鱗状バリが、該一対の端縁の内側に突出するように形成されている、ことを特徴とするリチウムイオン電池用の複合微細構造集電体。
【請求項2】
請求項1に記載のリチウムイオン電池用の複合微細構造集電体の製造方法であって、
プラウ切削ナイフの設計及び銅シートの前処理のステップ(1)と、
当該銅
シートの表面
にプラウ切削加工
を行うことで前記複合微細構造を得るステップ(2)とを含む、ことを特徴とする
、製造方法。
【請求項3】
前記プラウ切削ナイフの設計及び
前記銅シートの前処理では、
前記プラウ切削ナイフの前角α=40°~50°、後角κ=20°~30°、押し出し刃の傾斜角β=15°~30°、成形角θ=10°~20°、プラウ切削ナイフの幅B0=10~20mm及び厚さLt=2~4mmとするプラウ切削ナイフ設計のステップ(1)と、
サンドペーパーで
前記銅シートを研磨して、
該銅シートの両面を平坦にした後、
該銅シートを銅張積層板表面洗浄剤に入れて浸し、連続的に撹拌して
該銅シートの両面を滑らかにする、銅シート前処理のステップ(2)と、を含む、ことを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記プラウ切削ナイフの材料が
中国国家標準で規定される高速工具鋼のW18Cr4Vである、ことを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記銅シートが円状である、ことを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
【請求項6】
前記銅シートの厚さが0.5~1mmである、ことを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
【請求項7】
前記の浸漬・連続撹拌の時間が3~5minである、ことを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
【請求項8】
前記銅
シートの表面
に前記複合微
細構造
を得るために行うプラウ切削加工は、
前記プラウ切削ナイフを平削り盤にクランピングして、金属
用接着剤を用いて
前記銅シートをステンレス製
の正方状テーブルに貼り付け、次に、
該正方状テーブルを平削り盤の万力に固定し、その後、
前記プラウ切削ナイフの垂直方向及び
前記銅シートの表面をダイヤルゲージで校正
し、
前記プラウ切削ナイフをクランピングして
前記銅シートを固定するステップ(1)と、
前記プラウ切削ナイフの作動ストロークが
前記銅シートの輪郭をカバーするように平削り盤の作動ストロークを設定し、次にツール設定を行
い、
該平削り盤の作動パラメータを調整するステップ(2)と、
切削深さを100~150μm、
前記銅シートの送り量を250~400μmに調節して、
前記銅シートの縁部から一次プラウ切削を行うことで、
前記銅シートの表面に
格子状
の前記トレンチを形成する、一次プラウ切削-押し出しのステップ(3)と、
正方状テーブルを回転させ、ダイヤルゲージで
前記銅シートの平面を再度校正し、ツール設定後、
前記ステップ(3)の前記切削深さ及び送り量で二次プラウ切削-押し出しを行い、二次プラウ切削-押し出しにより
前記銅シートの基体に切削を行うとともに、一次プラウ切削-押し出しによるトレンチに対して、二次プラウ切削-押し出しを垂直に行い、トレンチ、
第一凹
部及び第二凹部、
並びに鱗状バリ
を含む前記複合微細構造を得る、二次プラウ切削-押し出しのステップ(4)と、
プラウ切削後の
前記銅シートを正方状テーブルから取り出し、正方状テーブルを送風乾燥オーブンに入れて加熱し、次に室温に降温すると、接着剤が機能しなくなり、加工済みの
前記銅シートを取り出し、アルコールで洗浄し、複合微細構造集電体を得る、プラウ切削済み
銅シートに対する処理のステップ(5)と、を含む、ことを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項9】
ステップ(4)の前記回転角度が90°である、ことを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
ステップ(5)では、前記加熱の温度が100~120℃であり、加熱の時間が10~15minである、ことを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池の技術分野に関し、具体的には、リチウムイオン電池用の複合微細構造集電体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、30年未満しか使用されていないが、バルブ調整式鉛蓄電池、充電式ニッケルカドミウム電池又はニッケル水素電池と比較して、リチウムイオン電池は、高い単位エネルギー密度、幅広い用途、優れた大電流放電性能などの優位性を備えるため、これらの二次電池の中で人気が最も高い。新世紀の初期で、新エネルギー動力車の開発・開発に伴い、エネルギー消費による環境汚染の低減や化石燃料に基づく従来のエネルギー構造の代替を目的としたエネルギー改革が進められており、リチウムイオン電池を中核とするエネルギー構造は、幅広く認められて受け入れられている。
【0003】
リチウムイオン電池の集電体は、軽量、高機械的強度、大きな表面積、電解液での良好な電気化学的安定性、及び活物質との良好な接触性などの利点がある。現在市販されている銅箔集電体は、両面艶出し、片面マット化、両面マット化の電解銅箔であり、その表面構造が単一である。活物質は、特殊な表面構造のない集電体に直接塗布されて、両者が単純に機械的に結合されるので、結合強度が低く、結合有効面積が小さいなどの欠点があり、その結果、活物質と集電体の間の接触抵抗が大きすぎ、それにより電池の可逆容量が低下し、レート特性が劣化し、容量安定性が悪くなるなどの問題を引き起こし、電池の全体的なパフォーマンスに悪影響を及ぼす。
【0004】
リチウムイオン電池の性能を改善するために、いくつかの研究者はテンプレート法を使用して3次元多孔質銅箔集電体を製造するか、フレキシブルカーボン紙と高効率導電紙を銅箔集電体に置き換える。集電体を製造するためのこれらの材料及び方法については、さらなる研究が必要である。活物質と集電体の結合接合強度及び電極の導電性を向上させるために、特殊な表面機能構造を有する集電体及びその主要な製造技術手法を研究し、集電体と活物質粒子が密に噛み合う界面を形成するようにすることで、活物質と集電体との間の接触抵抗を低減し、活物質の体積変化による容量減衰の問題を低減することは非常に重要なことである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高集電体と活物質の結合強を向上させ、両方の間の接触抵抗を減少させ、電極の導電性を高め、さらにリチウムイオン電池の充放電容量及びその安定性を向上させるために、本発明の目的は、リチウムイオン電池用の複合微細構造集電体及びその製造方法を提供することである。前記複合微細構造銅集電体は、トレンチ、凹孔、鱗状バリ、窪みなどの複合微細構造を有する。前記凹孔、鱗状バリ及び窪み構造は集電体の上面におけるマイクロボスにあり、前記マイクロボスはトレンチにより取り囲まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は以下の技術案により実現される。
【0007】
リチウムイオン電池用の複合微細構造集電体であって、滑らかな下面9と、複合微細構造を有する上面とを含み、前記上面はマイクロボス10とトレンチ11を含み、前記マイクロボス10がトレンチ11により囲まれており、前記マイクロボス10には、凹孔(第一凹部に相当)、鱗状バリ、及び窪み構造(第二凹部に相当)が設けられる。
【0008】
前記リチウムイオン電池用の複合微細構造集電体の製造方法であって、プラウ切削ナイフの設計及び銅シートの前処理のステップ(1)と、銅集電体の表面微構造のプラウ切削加工のステップ(2)とを含む。
【0009】
好ましくは、前記プラウ切削ナイフの設計及び銅シートの前処理では、
プラウ切削ナイフの前角α=40°~50°、後角κ=20°~30°、押し出し刃の傾斜角β=15°~30°、成形角θ=10°~20°、プラウ切削ナイフの幅B0=10~20mm及び厚さLt=2~4mmとするプラウ切削ナイフ設計のステップ(1)と、
サンドペーパーで銅シートを研磨して、銅シートの両面を平坦にした後、銅シートを銅張積層板表面洗浄剤に入れて浸し、連続的に撹拌して銅シートの両面を滑らかにする銅シートの前処理のステップ(2)と、を含む。
【0010】
さらに好ましくは、前記プラウ切削ナイフの材料がW18Cr4Vである。
【0011】
さらに好ましくは、前記銅シートが円状である。
【0012】
さらに好ましくは、前記銅シートの厚さが0.5~1mmである。
【0013】
さらに好ましくは、前記の浸漬・連続撹拌の時間が3~5minである。
【0014】
好ましくは、前記銅集電体の表面微構造のプラウ切削加工は、
プラウ切削ナイフを平削り盤にクランピングして、金属用502接着剤を用いて銅シートをステンレス製正方状テーブルに貼り付け、次に、正方状テーブルを平削り盤の万力に固定し、その後、ナイフの垂直方向及び銅シートの表面をダイヤルゲージで校正する、ナイフをクランピングしてワークを固定するステップ(1)と、
プラウ切削ナイフの作動ストロークが銅シートの輪郭をカバーするように平削り盤の作動ストロークを設定し、次にツール設定を行う、平削り盤の作動パラメータを調整するステップ(2)と、
切削深さを100~150μm、ワーク送り量を250~400μmに調節して、銅シートの縁部から一次プラウ切削を行うことで、銅シートの表面にアレイ状トレンチ構造を形成する、一次プラウ切削-押し出しのステップ(3)と、
正方状テーブルを回転させ、ダイヤルゲージで銅シートの平面を再度校正し、ツール設定後、ステップ(3)の前記切削深さ及び送り量で二次プラウ切削-押し出しを行い、二次プラウ切削-押し出しにより銅シートの基体に切削を行うとともに、一次プラウ切削-押し出しによるトレンチに対して、二次プラウ切削-押し出しを垂直に行い、トレンチ、凹孔、鱗状バリ、窪みなどの複合微細構造を得る、二次プラウ切削-押し出しのステップ(4)と、
プラウ切削後のワークを正方状テーブルから取り出し、正方状テーブルを送風乾燥オーブンに入れて加熱し、次に室温に降温した後、接着剤が機能しなくなると、加工済みの銅シートを取り出し、アルコールで洗浄し、複合微細構造集電体を得る、プラウ切削済みワークに対する処理のステップ(5)と、を含む。
【0015】
さらに好ましくは、ステップ(4)の前記回転角度が90°である。
【0016】
さらに好ましくは、ステップ(5)では、前記加熱の温度が100~120℃であり、加熱の時間が10~15minであり、より好ましくは、加熱の温度が100℃であり、加熱の時間が10minである。
【発明の効果】
【0017】
従来技術に比べて、本発明は以下の利点を有する。
(1)本発明の集電体の複合微細構造の表面上のトレンチ、凹孔、鱗状バリ、窪みなどの複合微細構造は、活物質の体積変化のための緩衝空間を提供し、活物質と集電体の結合力を高め、それにより電池の可逆容量と容量安定性を向上させる。
(2)本発明の複合微細構造集電体の構造は、集電体と活物質との間の接触表面積を増加させ、活物質の担持量を増加させ、電極の導電性を改善し、電池インピーダンスを低下させ、それにより容量を増加させて、レート特性を向上させるという目的を達成させる。
(3)本発明は、簡単なプラウ切削機械加工法を用いて、複合微細構造を有する集電体を加工するものであり、他の化学加工法に比べて、加工が簡単であり、低コストであり、環境に優しいなどの特徴を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は複合微細構造集電体のマクロ構造の模式図である。
【
図3】
図3は複合微細構造集電体の走査型電子顕微鏡像である。
【
図4】
図4は複合微細構造の加工ナイフパラメータの模式図である。
【
図5】
図5は複合微細構造の加工プロセスの模式図である。
【
図6】
図6は複合微細構造集電体を備えたリチウムイオン半電池の組み立ての模式図である。
【
図7】
図7は複合微細構造集電体を備えたリチウムイオン半電池、及び構造集電体のないリチウムイオン半電池のサイクル充放電試験の曲線図である。
【
図8】
図8は複合微細構造集電体を備えたリチウムイオン半電池、及び構造集電体のないリチウムイオン半電池のレート充放電試験の曲線図である。
【
図9】
図9は複合微細構造集電体を備えたリチウムイオン半電池、及び構造集電体のないリチウムイオン半電池の交流インピーダンス試験の曲線図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明をさらに理解するために、以下、図面及び実施例を参照しながら本発明をさらに説明するが、なお、本発明によって特許される保護の範囲は実施例に記載の範囲に限定されない。
【0020】
実施例1
リチウムイオン電池用の複合微細構造集電体及びその製造方法であって、下記ステップ(1)~ステップ(7)を含む。
(1)ナイフの設計
ナイフの材料はW18Cr4Vである。主なナイフの角度には、前角α=40°、後角κ=20°、押し出し刃傾斜角β=30°及び成形角θ=20°が含まれる。ほかのナイフパラメータとしては、ナイフ幅B0=20mmと厚さLt=4mmが含まれる(
図4参照)。
(2)円状銅シートの表面前処理
サンドペーパーで0.5mm厚の銅シートを研磨して、その両面を平坦にした。次に、銅シートを銅張積層板表面の洗浄剤に入れて浸し、5min連続して撹拌し、銅シートの両面を滑らかにする。
(3)ナイフのクランピング及びワークの固定
プラウ切削ナイフを平削り盤にクランピングし、金属用502接着剤を用いて円状銅シートをステンレス正方状テーブルに貼り付けた後、正方状テーブルを平削り盤の万力に固定し、次に、ナイフの垂直方向以及び円状銅シートの表面をダイヤルゲージで校正する。
(4)平削り盤の作動パラメータの調整
プラウ切削ナイフの作動ストロークが銅シートの輪郭をカバーするように、平削り盤の作動ストロークを設定し、次にツール設定を行う。
(5)一次プラウ切削-押し出し
切削深さを150μm、ワーク送り量を250μmに調節して、銅シートの縁部から一次プラウ切削を行うことで、銅シートの表面にアレイ状トレンチ構造を形成する。
(6)二次プラウ切削-押し出し
正方状テーブルを90°回転させ、ダイヤルゲージで
銅シートの平面を再度校正し、ツール設定後、同じ切削深さ及び送り量で二次プラウ切削-押し出しを行った。二次プラウ切削-押し出しは銅シートの基体を切削するだけでなく、一次プラウ切削一押し出しによるトレンチに対して二次プラウ切削-押し出しを垂直に行い、最終的にトレンチ、凹孔、鱗状バリ、窪みなどの複合微細構造が得られ、製造プロセスは
図5に示される。
(7)プラウ切削済みワークの処理
正方状テーブルを取り外し、正方状テーブルを送風乾燥オーブンに入れて100℃で10min加熱し、室温に降温すると、接着剤が機能できなくなり、次に、加工済みの円状銅シートを取り出して、アルコールで洗浄し、複合微細構造集電体を得る。
【0021】
本実施例で得られる複合微細構造銅集電体は、滑らかな下面9と複合微細構造を有する上面とを含み、前記上面はマイクロボス10とトレンチ11とを含み、前記マイクロボス10はトレンチ11により取り囲まれており、前記マイクロボス10には、凹孔、鱗状バリ及び窪み構造が設けられる。マクロ構造の模式図を
図1、実物図を
図2、複合微細構造の走査型電子顕微鏡像を
図3に示す。
【0022】
図6に示すように、本実施例で得られた複合微細構造集電体は、電極板8に作製され、下部電池ケース7上に配置され、電解液6は、前記電極板8上の活物質を直接濡らし、前記電解液6は、電極板8、下部電池ケース7及びセパレータ5で構成されるキャビティ全体を満たしている。リチウムシート4は前記セパレータ5に密着しており、前記リチウムシート4の上面には、ガスケット3と弾性シート2が下から上へ順に配置され、前記ガスケット3と弾性シート2は圧力調整の役割を果たす。前記弾性シート2は、上部電池ケース1と密接に接触して、接触抵抗を低減し、電池内部の良好な導電性を確保する。電極板8が組み立てられて
図2に示すようなリチウムイオン半電池となった後、前記リチウムイオン半電池の放電時に、リチウムシート4が脱リチウムを開始し、リチウムイオンがセパレータ5を介して電解液6に入り、次に電極板8上の活物質と接触して、リチウム挿入反応が起こる。同時に、電子が、ガスケット3、弾性シート2及び上部電池ケース1を順次通って下部電池ケース7に入り、下部電池ケース7が電極板8と密に接触しているため、電子は次に電極板8上の活物質に入り、リチウムイオンと電荷を中和し、このように、リチウムイオン半電池の放電プロセスが完了する。前記リチウムイオン半電池の充電時に、リチウムイオンがまず電極
板8上の活物質から脱離し、電解液6に入り、次にセパレータ5を介してリチウムシート4と接触する。電子は、電極板8上の活物質から移動し、下部電池ケース7、上部電池ケース1、弾性シート2、ガスケット3を通過してリチウムシート4上のリチウムイオンと電荷平衡を取り、それにより、充電プロセスが完了する。前記リチウムイオン半電池の充電・放電プロセス中に、前記銅集電体の表面にあるトレンチ、凹孔、鱗状バリ、窪みなどの複合微細構造が、活物質の体積変化のための緩衝空間を提供して、活物質と集電体の結合力を高め、それにより電池の可逆容量と容量安定性を向上させる。また、前記複合微細構造は、銅集電体と活物質の接触表面積を増加させ、活物質の担持量を増加させ、電極の導電性を改善し、電池のインピーダンスを低減させ、それにより容量を増加させ、レート特性を向上させるという目的を達成させる。
本実施例で提供されるリチウムイオン電池用の銅集電体を用いて、リチウムイオン半電池を構成し、LAND電池試験システムCT2001Aを用いて、前記リチウムイオン半電池に対してサイクル充放電試験を行い、得られた試験曲線を
図7に示す。同図から分かるように、複合微細構造銅集電体を備えたリチウムイオン電池は、初期放電容量が345.0mAh g-1であり、安定した容量が364.9mAh g-1と高く、集電体にこのような構造がないリチウムイオン電池は、初期放電容量が294.6mAh g-1であり、安定した容量が304.7mAh g-1である。レート試験における特性を
図8に示し、同図から分かるように、複合微細構造集電体を備えたリチウムイオン電池は、0.1C、0.2C、0.5C、0.1Cのレートでは、安定した容量が順次372、374.3、276.9、379.8mAh g-1であり、一方、集電体にこのような構造がないリチウムイオン電池は、0.1C、0.2C、0.5C、0.1Cのレードでは、安定した容量が287.2、284、116.6、292.8mAh g-1であり、このことから、複合微細構造集電体を備えたリチウムイオン電池は、0.2C及び0.5Cでは、レート充放電前に対する容量維持率が100.61%及び74.43%であり、一方、集電体にこのような構造がないリチウムイオン電池は、0.2C及び0.5Cでは、レート充放電前に対する容量維持率が98.89%及び40.60%であることが示されている。交流インピーダンス試験を
図9に示し、複合微細構造集電体を備えたリチウムイオン電池のインピーダンスが小さいことは明らかである。
【0023】
本発明の上記実施例は、本発明を明瞭に説明するための例に過ぎず、本発明の実施形態を限定するものではない。当業者であれば、上記説明に基づいて、他の異なる形態の変更又は変化を行うことができる。ここにすべての実施形態を列挙する必要はなく、また不可能なことである。本発明の精神及び原理を逸脱することなく行われるすべての修正、同等の置換及び改良などは、本発明の特許請求の範囲の特許範囲に含まれるものとする。