(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-09
(45)【発行日】2022-03-17
(54)【発明の名称】高金属粉末含有アルミニュウム複合体の製造方法、プリフォームの作製方法及び高金属粉末含有アルミニュウム複合体
(51)【国際特許分類】
B22F 3/26 20060101AFI20220310BHJP
B22F 3/24 20060101ALI20220310BHJP
B22D 19/00 20060101ALI20220310BHJP
C22C 1/10 20060101ALI20220310BHJP
【FI】
B22F3/26 C
B22F3/24 C
B22D19/00 F
C22C1/10 G
(21)【出願番号】P 2021116133
(22)【出願日】2021-07-14
【審査請求日】2021-10-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515243372
【氏名又は名称】アドバンスコンポジット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100168033
【氏名又は名称】竹山 圭太
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【氏名又は名称】岡田 薫
(72)【発明者】
【氏名】林 睦夫
(72)【発明者】
【氏名】勝亦 修平
(72)【発明者】
【氏名】落合 翔梧
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-091267(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0060682(US,A1)
【文献】韓国公開特許第2003-0035639(KR,A)
【文献】特開平10-280082(JP,A)
【文献】特開2010-133029(JP,A)
【文献】特開2001-262249(JP,A)
【文献】特開2001-123234(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 3/26
C22C 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属含有率が高い金属粉末成型体(プリフォーム)を得るためのプリフォームの作製工程と、得られたプリフォームに溶融したアルミニュウム又はアルミニュウム合金を含浸或いは浸透させるアルミニュウム等の含浸工程を有する高金属粉末含有アルミニュウム複合体の製造方法であって、
前記プリフォームの作製工程で、平均粒子径が1μm以上200μm以下の金属粉末材料から、平均粒子径が互いに異なる2種以上の金属粉末材料を選択してプリフォーム用の金属原料とし、該金属原料に、
液状のもの或いは液状にした状態の、シリコーン樹脂、Siアルコキシド及びAlアルコキシドからなる群から選ばれる少なくともいずれかの有機無機バインダーを添加混合してなる混合物を用いて成形し、且つ、得られた成形物を、300℃以上800℃以下の温度で焼成
することで、前記成形物中の有機物分が除かれ、且つ、無機物分が無機バインダーとして働き、前記金属原料の含有率(体積率)が55v%以上である金属粉末成型体を得、
前記アルミニュウム等の含浸工程で、前記プリフォームの作製工程で得た金属粉末成型体に、アルミニュウム又はアルミニュウム合金の溶湯を、10MPa~200MPaの高圧で含浸させることを特徴とする高金属粉末含有アルミニュウム複合体の製造方法。
【請求項2】
金属含有率が高い金属粉末成型体(プリフォーム)を得るためのプリフォームの作製工程と、得られたプリフォームに溶融したアルミニュウム又はアルミニュウム合金を含浸或いは浸透させるアルミニュウム等の含浸工程を有する高金属粉末含有アルミニュウム複合体の製造方法であって、
前記プリフォームの作製工程で、平均粒子径が1μm以上200μm以下の金属粉末材料(但し、Mg粉末、AlMg粉末、ZnMg粉末、ZnAl粉末及びMg
2Si粉末の各粉末材料を除く)から、平均粒子径が互いに異なる2種以上の金属粉末材料を選択してプリフォーム用の金属原料とし、該金属原料100質量部に対し、Mg粉末、AlMg粉末、ZnMg粉末、ZnAl粉末及びMg
2Si粉末からなる群から選ばれる1種以上の粉末を、0.2~5質量部の範囲内の量で添加し、さらに、
液状のもの或いは液状にした状態の、シリコーン樹脂、Siアルコキシド及びAlアルコキシドからなる群から選ばれる少なくともいずれかである有機無機バインダーを添加混合してなる混合物を用いて成形し、且つ、得られた成形物を
300℃以上500℃以下の温度で焼成
することで、前記成形物中の有機物分が除かれ、且つ、無機物分が無機バインダーとして働き、前記金属原料の含有率(体積率)が55v%以上である金属粉末成型体を得、
前記アルミニュウム等の含浸工程で、前記プリフォームの作製工程で得た金属粉末成型体に、アルミニュウム又はアルミニュウム合金を、窒素雰囲気中で非加圧浸透させることを特徴とする高金属粉末含有アルミニュウム複合体の製造方法。
【請求項3】
前記金属粉末が、シリコン粉末又はシリコンを含むシリコン系合金粉末、チタン粉末、鉄粉末又は鉄を含む鉄系合金粉末及びニッケル粉末又はニッケルを含むニッケル系合金粉末から選ばれる1種又は2種以上である請求項1又は2に記載の高金属粉末含有アルミニュウム複合体の製造方法。
【請求項4】
前記含有率(体積率)が、55v%以上、85v%以下である請求項1~3のいずれか1項に記載の高金属粉末含有アルミニュウム複合体の製造方法。
【請求項5】
前記平均粒子径が互いに異なる2種以上の金属粉末は、少なくとも、平均粒子径が10μm以下の金属粉末Aと、平均粒子径が40μm以上の金属粉末Bを含み、前記金属粉末Aを、質量基準で、金属粉末の総量中に少なくとも3%含み、且つ、前記金属粉末Bを50%以上含む請求項1~4のいずれか1項に記載の高金属粉末含有アルミニュウム複合体の製造方法。
【請求項6】
前記有機無機バインダーが
、Siアルコキシド及びAlアルコキシドからなる群から選ばれる少なくともいずれかである請求項1~5のいずれか1項に記載の高金属粉末含有アルミニュウム複合体の製造方法。
【請求項7】
溶融したアルミニュウム又はアルミニュウム合金を高圧で含浸させて高金属粉末含有アルミニュウム複合体金属を得る際に用いる、金属粉末の含有率が高い金属粉末成型体(プリフォーム)を得るためのプリフォームの作製方法であって、
平均粒子径が1μm以上200μm以下の金属粉末材料から、少なくとも、平均粒子径が10μm以下の金属粉末Aと、平均粒子径が40μm以上の金属粉末Bを含み、前記金属粉末Aを、質量基準で、金属粉末の総量中に少なくとも3%含み、且つ、前記金属粉末Bを50%以上含む、平均粒子径が互いに異なる2種以上の金属粉末材料を選択してプリフォーム用の金属原料とし、該金属原料に、
液状のもの或いは液状にした状態の、シリコーン樹脂、Siアルコキシド及びAlアルコキシドからなる群から選ばれる少なくともいずれかの有機無機バインダーを添加混合してなる混合物を用いて成形し、且つ、得られた成形物を、300℃以上800℃以下の温度で焼成
することで、前記有機無機化合物の構造中の有機物分は燃焼除去され、且つ、無機物分が無機バインダーとして働き、前記金属原料の含有率(体積率)が55v%以上である金属粉末成型体を得ることを特徴とするプリフォームの作製方法。
【請求項8】
溶融したアルミニュウム又はアルミニュウム合金を窒素雰囲気中で非加圧浸透させて高金属粉末含有アルミニュウム複合体金属を得る際に用いる、金属粉末の含有率が高い金属粉末成型体(プリフォーム)を得るためのプリフォームの作製方法であって、
平均粒子径が1μm以上200μm以下の金属粉末材料(但し、Mg粉末、AlMg粉末、ZnMg粉末、ZnAl粉末及びMg
2Si粉末の各粉末材料を除く)から、少なくとも、平均粒子径が10μm以下の金属粉末Aと、平均粒子径が40μm以上の金属粉末Bを含み、前記金属粉末Aを、質量基準で、金属粉末の総量中に少なくとも3%含み、且つ、前記金属粉末Bを50%以上含む、平均粒子径が互いに異なる2種以上の金属粉末材料を選択してプリフォーム用の金属原料とし、該金属原料100質量部に対し、Mg粉末、AlMg粉末、ZnMg粉末、ZnAl粉末及びMg
2Si粉末からなる群から選ばれる1種以上の粉末を、0.2~5質量部の範囲内の量で添加し、さらに、
液状のもの或いは液状にした状態の、シリコーン樹脂、Siアルコキシド及びAlアルコキシドからなる群から選ばれる少なくともいずれかの有機無機バインダーとして添加混合してなる混合物を用いて成形し、且つ、得られた成形物を
300℃以上500℃以下の温度で焼成
することで、前記成形物中の有機物分が除かれ、且つ、無機物分が無機バインダーとして働き、前記金属原料の含有率(体積率)が55v%以上である金属粉末成型体を得ることを特徴とするプリフォームの作製方法。
【請求項9】
鋳巣などの内部欠陥が極めて少ない高金属粉末含有アルミニュウム複合体であって、請求項1
、請求項3~6のいずれか1項に記載の、高圧含浸を利用する高金属粉末含有アルミニュウム複合体の製造方法で得られたことを特徴とする高金属粉末含有アルミニュウム複合体。
【請求項10】
製品形状に近いニアネットの高金属粉末含有アルミニュウム複合体であって、請求項2
~6のいずれか1項に記載の、窒素雰囲気中で非加圧浸透を利用する高金属粉末含有アルミニュウム複合体の製造方法で得られたことを特徴とする高金属粉末含有アルミニュウム複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高金属粉末含有アルミニュウム複合体の製造方法、プリフォームの作製方法及び高金属粉末含有アルミニュウム複合体に関し、詳しくは、高い体積充填率の金属粉末からなるプリフォームに金属アルミニュウム又はアルミニュウム合金が良好に含浸してなる高金属粉末含有アルミニュウム複合体を提供すると共に、該複合材料の生産性及び品質の飛躍的な向上をもたらすことができる新たな技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、金属とAl合金等を複合化させた材料は、軽量、高強度、高ヤング率、高熱伝導、低熱膨張の材料として、例えば、ヒートシンク、放熱スプレッダー、電子部品パッケージ製品等の電子材料、或いは、XYスライダー、真空チャック等の半導体装置部材として注目されている。これらの材料は、いわゆるMMC(Metal Matrix Composite)の一種である。従来は、金属マトリックスにセラミックス粉末を複合化したMMCが一般的であったが、近年、金属粉末とAl合金等からなる複合体材料が注目されようになってきた。例えば、高ヤング率で低熱膨張なシリコンとAl合金等の複合素材や、高強度なチタンや鉄粉末にAl合金等を複合化させることが提案されている。また、下記に述べるように、金属粉末とAl合金等の複合体は、加工性に優れていることからも注目されている。
【0003】
例えば、シリコン金属は熱膨張係数が小さいことから、電子部品や、半導体部品として使用されているが、非常に脆いことに加え、複雑、大型の部品が製造できないという弱点がある。このため、Al合金等とのシリコンアルミニュウム複合体が開発されつつある。上記した理由から、第一に、シリコン粉末をできるだけ多く含有したアルミニュウムとの複合体が望まれ、しかも、加工性を保ちつつ、熱膨張係数が小さく、ヤング率が大きい複合体の出現が求められている。具体的には、例えば、シリコン成分が70v%以上、望ましくは80v%程度のシリコンアルミニュウム複合体が製造できれば、熱膨張係数が小さい電子部品を搭載する、ヒートシンクや電子部品パッケージへの応用が飛躍的に広まると予想される。
【0004】
チタン金属は、熱膨張係数が小さく、軽量、高剛性な金属として多種多様な機械部品として使用されている。しかし、硬度が高く、難加工性材料であり、この点で用途が限定されている面がある。したがって、チタン金属にアルミニュウム金属を複合化させて加工性をよくすることができれば、応用範囲を益々拡大できるので、チタンアルミニュウム複合体の開発が要望され、進められている。
【0005】
ここで、金属粉末とAl合金等の複合体の製造方法としては、以下に例示する方法が一般的である。
(高シリコンアルミニュウム合金の鋳造方法)
この方法は、シリコン成分を含んだ通称シルミンと呼ばれるシリコン含有アルミニュウム合金(シリコンアルミ合金とも呼ぶ)粉末を溶解して、砂型や金型に鋳造する方法である。しかし、この方法では、シリコン成分が高くなると、合金流れ性が低下して鋳造できなくなるので、シリコン成分の含有量は、最大20v%程度が一般的である。したがって、上記した鋳造方法で、要望されているような金属成分の含有率が高い、高シリコンアルミニュウム複合体を製造することは困難である。
【0006】
(スプレイフォーミング法)
この方法は、シリコンとアルミニュウムを高い温度で溶解し、溶融物をスプレイ噴霧して得た粉末堆積体のビュレットを作製し、熱間押し出しでシリコンアルミニュウム複合体を製造する方法であり、「スプレイフォーミング法」と呼ばれている。スプレイフォーミング法では、高い温度で金属を溶解して、シリコンとアルミニュウムの比率を自由に変えた複合原料粉末を作製することができる。このため、金属成分の含有比率が高い高シリコン含有アルミニュウム複合体を製造することは、理論的には可能である。しかし、シリコンの含有比率が50v%以上の複合材料を製造するためには、1000℃以上で材料を溶解する必要がある。また、噴霧冷却過程で、シリコンが先に析出してしまい、均一な複合体が得られないことから、製品化されているのは、シリコン成分が約50v%程度のものまでであり、シリコン成分の含有比率がより高いシリコンアルミニュウム複合体を得ることは、できていない。また、溶融物をスプレイ噴霧して粉末堆積体のビュレットを作製する凝固堆積過程で空隙が発生するので、製品にするためには、得られたビュレットを半溶融して高圧押し出しする、或いは、HIP処理して空隙を押しつぶす必要がある。この点で、「スプレイフォーミング法」は、製造コストが非常に高くなり、経済性に劣るという工業上の重大な問題もある。
【0007】
(シリコン粉末充填体へのアルミニュウムの非加圧浸透法)
特許文献1には、シリコン粉末の充填率が50~70体積%の充填体または成形体に、溶融したアルミニウムまたはアルミニウム合金を、マグネシウム蒸気を含む窒素雰囲気中の700℃~1000℃の温度下で非加圧浸透させてなるシリコン-アルミニウム複合金属が提案されている。特許文献1には、窒素雰囲気中にマグネシウム蒸気を含ませることで、溶融したAl合金の充填体への浸透を早くできることが開示されている。また、その実施例に、平均粒径が5μmのシリコン粉末100質量部に、マグネシウム粉末を2質量部加えて混合したものを容器に充填した充填体を用いること、シリコンの充填率が50体積%であることが記載されている。上記実施例に対して、必要であれば、平均粒径1~100μmのシリコン粉末にするとしたことが記載されている。
【0008】
上記したように、特許文献1に開示されていることは、1種のシリコン粉末に、マグネシウム粉末を加え、これを容器に充填し、該充填体に、常圧の窒素雰囲気下(非加圧)で溶融したAl合金を浸透させて複合金属を作製することである。しかしながら、本発明者らの検討によれば、シリコン粉末の単なる充填体は、不均一であったり、内部にポアが残存する恐れがある。そして、このような充填体に非加圧でアルミニュウムの溶湯を含浸させた場合、亀裂や欠陥が発生したり、シリコン粉末が、均一な状態で十分充填された充填体が得られないという問題がある。このため、前記した充填体を用いての非加圧浸透法では、製品に求められているような金属成分の含有比率が高く均一な、金属粉体-アルミニュウム複合体を製造することはできない。
【0009】
また、特許文献2には、シリコン粉末等の金属粉末に、バインダーとしてPVA(ポリビニルアルコール)を加えて得た、金属粉末の成型体又は仮焼体に、溶融したアルミニュウムなどの金属を非加圧で浸透することが記載されている。その実施例に、平均粒径20μmのシリコン粉末にバインダーとしてPVAを加えた材料を用い、プレス成形して得た成形体に、マグネシウムが存在する窒素雰囲気炉で、溶融したAl合金を常圧で含浸させて複合金属を得ること、2種類の金属粉末を用いることや、金属粉末にセラミックス粉末を混合することなどが記載されている。しかし、特許文献2に記載の技術は、金属粉末にセラミックス粉末を混合していることからもわかるように、溶融した金属を非加圧浸透させて複合化させる相手である、金属粉末の成型体又は仮焼体を金属含有率が高いものにすることを目的とした技術ではない。
【0010】
本発明者らの検討によれば、例えば、シリコン粉末を高含有率で充填させた充填体に、アルミニュウム合金等を高圧含浸或いは非加圧浸透させた場合、含浸過程で充填体とAl合金等との接触面に応力が発生して、Al合金等の溶湯の含浸時に金属粉末成型体に亀裂等が発生したり、亀裂によって毛管現象が損なわれて未含浸の欠陥が生じる場合がある。これに対し、上記した従来技術は、いずれも、亀裂等や欠陥が極めて少ない、金属含有率が高い高金属粉末-アルミニュウム複合体を如何にして得るかについて検討したものでも、そのような複合体を提供したものでもない。例えば、上記した従来技術のように、シリコン粉末充填体や、プレス成形しただけの成形体に非加圧でアルミニュウム金属を浸透させた場合にも、シリコン粉末充填体とAl合金等との接触面に応力が発生して、Al合金等の溶湯の含浸時に亀裂等が発生したり、未含浸の欠陥が生じる場合がある。
【0011】
ここで、上記した従来技術において行われている、非加圧浸透でAl合金等の溶湯を充填体または成形体に含浸させることによるメリットは、金属粉末をプレス成形等して得た成型体(プリフォーム)の形状のまま、Al合金等の溶湯が成型体内に毛管現象で静かに含浸して、含浸後に製品形状に近い金属粉末-アルミニュウム複合体が製造できることである。すなわち、成型体に溶融した金属を含浸させた後に製品形状に近い複合体を得ることができれば、通常、その後に必要になる機械加工を少なくできるので、製造コストを低減するメリットがある。
【0012】
このことは、Al合金等の溶湯を非加圧浸透させた場合に、亀裂や欠陥が発生しない強固な成型体(プリフォーム)が得られれば、製品価値とコストメリットは飛躍的に大きくなることを意味する。また、得られる金属粉末-アルミニュウム複合体のシリコン等の金属粉末材料の含有量を高くできれば、より低熱膨張で高ヤング率な金属粉末-アルミニュウム複合体が得られる。例えば、シリコン50v%超のシリコン粉末-アルミニュウム複合体の製造方法が確立できれば、その用途は格段に大きくなる。
【0013】
上記に対し、粒径が細かい金属粉末の成型体を、金属の溶融温度よりもやや低い温度で焼結させて粉末の仮焼結法でプリフォームを製造することが広く行われている。しかし、本発明者らの検討によれば、この方法では、焼結により成型体(プリフォーム)を製造するが、焼結中に、成型体が収縮してプリフォームが変形したり、プリフォーム内の空隙が外部と遮断された閉気孔となって、後に行うAl合金等の含浸工程で、良好な含浸が行われず、不均一な金属粉末アルミニュウム複合体となる恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特開2005-036253号公報
【文献】特開2004-052011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、本発明の目的は、例えば、シリコン、シリコンアルミ合金、鉄、チタン、銅、ニッケル、フェロシリコン等の粉末で代表される金属粉末の強固な成型体(プリフォーム)を作製し、目標性能に応じて金属粉末の充填率を高くでき、しかも、内部に欠陥が極めて少なく、均一なプリフォームを作製する技術を確立し、得られたプリフォームに、アルミニュウム又はアルミニュウム合金(Al合金等)を、高圧含浸させた場合も、非加圧浸透させた場合も、亀裂や欠陥の発生が極めて少ない、金属含有率が高い、高金属粉末含有アルミニュウム複合体の製造方法及び該製造方法で得られる高金属粉末含有アルミニュウム複合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の目的は、以下の、金属含有率が高い、高金属粉末含有アルミニュウム複合体を製造する技術によって達成される。すなわち、本発明は、以下の高金属粉末含有アルミニュウム複合体の製造方法を提供する。
第1の発明として、Al合金等を高圧含浸させて高金属粉末含有アルミニュウム複合体を得る下記の製造方法を提供する。
[1]金属含有率が高い金属粉末成型体(プリフォーム)を得るためのプリフォームの作製工程と、得られたプリフォームに溶融したアルミニュウム又はアルミニュウム合金を含浸或いは浸透させるアルミニュウム等の含浸工程を有する高金属粉末含有アルミニュウム複合体の製造方法であって、
前記プリフォームの作製工程で、平均粒子径が1μm以上200μm以下の金属粉末材料から、平均粒子径が互いに異なる2種以上の金属粉末材料を選択してプリフォーム用の金属原料とし、該金属原料に、有機無機バインダーを添加混合してなる混合物を用いて成形し、且つ、得られた成形物を、300℃以上800℃以下の温度で焼成して、前記金属原料の含有率(体積率)が55v%以上である金属粉末成型体を得、
前記アルミニュウム等の含浸工程で、前記プリフォームの作製工程で得た金属粉末成型体に、アルミニュウム又はアルミニュウム合金の溶湯を、10MPa~200MPaの高圧で含浸させることを特徴とする高金属粉末含有アルミニュウム複合体の製造方法。
【0017】
第2の発明として、Al合金等を非加圧浸透させて高金属粉末含有アルミニュウム複合体を得る下記の製造方法を提供する。
[2]金属含有率が高い金属粉末成型体(プリフォーム)を得るためのプリフォームの作製工程と、得られたプリフォームに溶融したアルミニュウム又はアルミニュウム合金を含浸或いは浸透させるアルミニュウム等の含浸工程を有する高金属粉末含有アルミニュウム複合体の製造方法であって、
前記プリフォームの作製工程で、平均粒子径が1μm以上200μm以下の金属粉末材料(但し、Mg粉末、AlMg粉末、ZnMg粉末、ZnAl粉末及びMg2Si粉末の各粉末材料を除く)から、平均粒子径が互いに異なる2種以上の金属粉末材料を選択してプリフォーム用の金属原料とし、該金属原料100質量部に対し、Mg粉末、AlMg粉末、ZnMg粉末、ZnAl粉末及びMg2Si粉末からなる群から選ばれる1種以上の粉末を、0.2~5質量部の範囲内の量で添加し、さらに、有機無機バインダーを添加混合してなる混合物を用いて成形し、且つ、得られた成形物を500℃以下の温度で焼成して、前記金属原料の含有率(体積率)が55v%以上である金属粉末成型体を得、
前記アルミニュウム等の含浸工程で、前記プリフォームの作製工程で得た金属粉末成型体に、アルミニュウム又はアルミニュウム合金を、非加圧で浸透させることを特徴とする高金属粉末含有アルミニュウム複合体の製造方法。
【0018】
上記した本発明の高金属粉末含有アルミニュウム複合体の製造方法の好ましい形態としては、下記が挙げられる。
[3]前記金属粉末が、シリコン粉末又はシリコンを含むシリコン系合金粉末、チタン粉末、鉄粉末又は鉄を含む鉄系合金粉末及びニッケル粉末又はニッケルを含むニッケル系合金粉末から選ばれる上記[1]又は[2]に記載の高金属粉末含有アルミニュウム複合体の製造方法。
[4]高金属粉末含有アルミニュウム複合体の金属粉末の体積含有率が、55v%以上、85v%以下である上記[1]~[3]のいずれかに記載の高金属粉末含有アルミニュウム複合体の製造方法。
[5]前記平均粒子径が互いに異なる2種以上の金属粉末は、少なくとも、平均粒子径が10μm以下の金属粉末Aと、平均粒子径が40μm以上の金属粉末Bを含み、前記金属粉末Aを、質量基準で、金属粉末の総量中に少なくとも3%含み、且つ、前記金属粉末Bを50%以上含む上記[1]~[4]のいずれかに記載の高金属粉末含有アルミニュウム複合体の製造方法。
[6]前記有機無機バインダーが、シリコーン樹脂、Siアルコキシド及びAlアルコキシドからなる群から選ばれる少なくともいずれかである上記[1]~[5]のいずれかに記載の高金属粉末含有アルミニュウム複合体の製造方法。
【0019】
また、本発明は、別の実施形態として、前記第1の発明の高金属粉末含有アルミニュウム複合体の製造方法に好適に用いられる、下記のプリフォームの作製方法を提供する。
[7]溶融したアルミニュウム又はアルミニュウム合金を高圧で含浸させて高金属粉末含有アルミニュウム複合体金属を得る際に用いる、金属粉末の含有率が高い金属粉末成型体(プリフォーム)を得るためのプリフォームの作製方法であって、
平均粒子径が1μm以上200μm以下の金属粉末材料から、少なくとも、平均粒子径が10μm以下の金属粉末Aと、平均粒子径が40μm以上の金属粉末Bを含み、前記金属粉末Aを、質量基準で、金属粉末の総量中に少なくとも3%含み、且つ、前記金属粉末Bを50%以上含む、平均粒子径が互いに異なる2種以上の金属粉末材料を選択してプリフォーム用の金属原料とし、該金属原料に、有機無機バインダーを添加混合してなる混合物を用いて成形し、且つ、得られた成形物を、300℃以上800℃以下の温度で焼成して、前記金属原料の含有率(体積率)が55v%以上である金属粉末成型体を得ることを特徴とするプリフォームの作製方法。
【0020】
また、本発明は、別の実施形態として、前記第2の発明の高金属粉末含有アルミニュウム複合体の製造方法に好適に用いられる、下記のプリフォームの作製方法を提供する。
[8]溶融したアルミニュウム又はアルミニュウム合金を非加圧で浸透させて高金属粉末含有アルミニュウム複合体金属を得る際に用いる、金属粉末の含有率が高い金属粉末成型体(プリフォーム)を得るためのプリフォームの作製方法であって、
平均粒子径が1μm以上200μm以下の金属粉末材料(但し、Mg粉末、AlMg粉末、ZnMg粉末、ZnAl粉末及びMg2Si粉末の各粉末材料を除く)から、少なくとも、平均粒子径が10μm以下の金属粉末Aと、平均粒子径が40μm以上の金属粉末Bを含み、前記金属粉末Aを、質量基準で、金属粉末の総量中に少なくとも3%含み、且つ、前記金属粉末Bを50%以上含む、平均粒子径が互いに異なる2種以上の金属粉末材料を選択してプリフォーム用の金属原料とし、該金属原料100質量部に対し、Mg粉末、AlMg粉末、ZnMg粉末、ZnAl粉末及びMg2Si粉末からなる群から選ばれる1種以上の粉末を、0.2~5質量部の範囲内の量で添加し、さらに、有機無機バインダーを添加混合してなる混合物を用いて成形し、且つ、得られた成形物を500℃以下の温度で焼成して、前記金属原料の含有率(体積率)が55v%以上である金属粉末成型体を得ることを特徴とするプリフォームの作製方法。
【0021】
また、本発明は、別の実施形態として、下記の高金属粉末含有アルミニュウム複合体を提供する。
[9]鋳巣などの内部欠陥が極めて少ない高金属粉末含有アルミニュウム複合体であって、上記[1]、[3]~[6]のいずれかに記載の、高圧含浸を利用する高金属粉末含有アルミニュウム複合体の製造方法で得られたことを特徴とする高金属粉末含有アルミニュウム複合体。
[10]製品形状に近いニアネットの高金属粉末含有アルミニュウム複合体であって、上記[2]~[6]のいずれかに記載の、非加圧浸透を利用する高金属粉末含有アルミニュウム複合体の製造方法で得られたことを特徴とする高金属粉末含有アルミニュウム複合体。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、例えば、シリコン、シリコンアルミ合金、鉄、チタン、銅、ニッケル及びフェロシリコン等の粉末で代表される金属粉末の成型体(プリフォーム)の作製において、目標性能に応じて金属粉末の体積充填率を55v%以上に高くすることができ、しかも、得られるプリフォームを、内部に欠陥が極めて少なく、均一なものにすることが実現でき、その結果、当該プリフォームに、Al合金等を、高圧含浸させた場合も、非加圧浸透させた場合も、いずれも、亀裂や欠陥の発生が低減した、金属の体積含有率が高い、高品質の高金属粉末含有アルミニュウム複合体が得られる優れた、高金属粉末含有アルミニュウム複合体の製造方法が提供される。また、本発明によれば、鋳巣等の内部欠陥が極めて少ない高品位の高金属粉末含有アルミニュウム複合体が提供される。これらの複合体は、例えば、半導体、液晶製造装置、電子顕微鏡、光通信用パッケージ等における真空部品として利用できる。また、本発明によれば、製品形状に近いニアネットの高金属粉末含有アルミニュウム複合体を製造することができるので、その後に必要になる機械加工工程及び該工程にかかるコストの低減、さらに複合体の大型化が可能であることから、例えば、ロボットアーム、形状測定装置架台、XYテーブルなど大型構造部品としての使用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の高金属粉末含有アルミニュウム複合体の製造方法で利用する、プリフォームへAl合金等の溶湯を加圧して浸透させる加圧浸透法を説明するための模式図である。
【
図2】本発明の高金属粉末含有アルミニュウム複合体の製造方法で行う非加圧浸透法によって、プリフォームへAl合金等の溶湯が毛細現象で浸透し、含浸する様子を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、好ましい実施形態を挙げて本発明の説明をするが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0025】
[金属粉末成型体(プリフォーム)の作製]
上記した従来技術に鑑み、本発明者らは、金属の体積含有率が高く、内部に欠陥が少ない均一な、多様な用途への利用が期待できる高金属粉末含有アルミニュウム複合体の製造方法を鋭意検討した結果、金属の体積含有率が高く、しかも、内部に空隙の少ない金属粉末成型体(プリフォーム)を簡便に作製することができる方法を確立することが重要であるとの結論に至った。そして、まず、本発明者らは、最終的に得られる複合体材料の欠陥の原因となる空隙の少ない金属製のプリフォームを得るには、粒子径が同じ群の金属粉体を材料とするのではなく、平均粒子径が互いに異なる金属粉末を、2種類又は3種類以上組合わせて混合した材料を用いて作製することが有効であることを見出した。すなわち、このように構成すれば、平均粒子径が大きな粒子の間に、平均粒子径が小さい細かい粒子が入り、その結果、本発明の効果が得られることがわかった。本発明では、平均粒子径が互いに異なる金属粉末を2種類以上選定し、これらを混合してなる混合物を、プリフォーム用の金属原料として用いる。
【0026】
(金属粉末材料)
本発明では、プリフォームを作製するための金属粉体材料として、平均粒子径が1μm以上200μm以下の範囲内の材料を用いる。好ましくは3μ以上180μm以下の範囲内、より好ましくは3μm以上100μm以下の範囲内の金属粉末を用いる。本発明を構成するプリフォームは、このような範囲内の平均粒子径を有する金属粉末の中から、平均粒子径が互いに異なる2種以上の金属粉末を選択して混合してなる混合物で作製することを要する。平均粒子径が1μm未満の材料のみでは、粒子が細かすぎて、金属粉末の表面酸化相が多くなってしまい、金属粉末としての性能が落ちる恐れがある。一方、使用する金属粉末が200μm超のみであると、粒子径が大きすぎて、プレス成形、CIP成形型、沈降成形等を行うための粒子充填性が悪くなり、好ましくない。
【0027】
本発明において、プリフォームを作製するための平均粒子径が互いに異なる2種以上の金属粉末材料を選択する場合、大きい粒子径の金属粉末と、小さい粒子径の金属粉末を組合わせてなる混合物を用いることが好ましい。例えば、少なくとも、平均粒子径が10μm以下の金属粉末Aと、平均粒子径が40μm以上の金属粉末Bを含み、前記金属粉末Aを、質量基準で、金属粉末の総量中に少なくとも3%含み、且つ、前記金属粉末Bを50%以上含むようにすることが好ましい。
【0028】
例えば、平均粒子径が互いに異なる45μm、5μmのシリコン粉末を、それぞれ単独でプレス成形した場合、その体積充填率(v%:Vf)は、それぞれ47%、52%である。本発明者らの検討によれば、45μm、5μmの各シリコン粉末を、質量基準で70:30の割合で混合して、該混合物物を用いてプレス成形等することにより、最終的にはVf=73v%の成形体を得ることができる。同様に、70μm、25μm、5μmのシリコン粉末を、質量基準で、70:25:5の割合で混合して、該混合物物を用いてプレス成形等することにより、Vf=78v%(体積%)のシリコン成形体を得ることができる。
【0029】
シリコン粉末等の金属粉末は、その平均粒子径、粒子形状、粒度分布等によって充填率が変わるので、所望の高い体積充填率(v%)を得る方法として、例えば、カーボンベッセル等に入れ、できるだけ高充填率になるように、入念に振動を加えて、できるだけ空隙がないように詰めた充填物とする方法もある。しかし、本発明者らの検討によれば、この振動を利用した方法では、金属粉末原料の含有率が55v%以上の充填物を得ることが容易ではなく、また、得られたとしても、その後に充填物にAl合金等の溶湯を高圧含浸させた場合に、亀裂が生じたり、筋状の欠陥が生じたりして、高品質の高金属粉末含有アルミニュウム複合体を得ることができないことがわかった。
【0030】
本発明者らは、上記した知見から鋭意検討した結果、平均粒子径が互いに異なる金属粉末材料を2種以上用いて、配合した混合粉末を、プレス成形、CIP成形、沈降法等の成形方法を採用して、できるだけ金属粉末が隙間なく詰まるようにして成形することで、金属原料の含有率が55v%以上と、より高充填率で、Al合金等の溶湯を高圧含浸した場合にも耐え得る強固なプリフォームの作製が可能になることを見出した。さらに、プリフォームの強度をより高めるため、上記のようにして構成した金属粉末の混合物に有機無機バインダーを添加混合し、得られた混合物からなる成形物を300℃以上800℃以下の温度で焼成することが有効であることを見出した。これらの点については後述する。
【0031】
また、本発明者らは、非加圧でAl合金等の溶湯を浸透させることが可能な、金属粉末原料の含有率が55v%以上のプリフォームの作製について鋭意検討した。その結果、質量基準で、金属粉末材料100質量部に対して、金属Mg粉末や、Al-Mg系合金粉末、Zn-Mg系合金粉末及びZn-Al系合金粉末等のマグネシウム系合金や、マグネシウムの含有量が高いMg2Si粉末等の化合物から選ばれる1種以上の粉末(これらをMg成分含有金属粉末等とも呼ぶ、また、Mg成分として説明する場合もある)を、0.2~5質量部を添加した混合物を用い、該混合物に特有の有機無機バインダーを添加し、これらの混合物からなる成形物を500℃以下の温度で焼成して得られるプリフォームを用いることで、Al合金等の溶湯を、非加圧で良好な状態に浸透させることができ、高品質の高金属粉末含有アルミニュウム複合体が得られることを見出した。すなわち、例えば、プリフォーム中に存在させたMg成分は、後述する、非加圧浸透を行う際の窒素雰囲気内でMg3N2を生成し、また、金属粉末表面の金属酸化物をMgのテルミット反応により還元金属化して、金属粉末とAl合金等の溶湯との濡れ性を向上させる。本発明によれば、これらのMg成分の働きによって、作製したプリフォーム内に、非加圧で良好な状態にAl合金等の溶湯を浸透させることが実現できたものと考えられる。
【0032】
上記に挙げたMg成分含有金属粉末等は、平均粒子径が、0.5μm以上、150μm以下の粉末を使用することが好ましい。150μm超の粉末では粗すぎて、先に述べた金属粉末材料と均一に混合できない場合があるので、好ましくない。更に、粒子径が粗いとMg成分の表面積が小さくなり、プリフォーム内に含有させたMgが雰囲気内の窒素と反応して窒化された後のMg3N2の生成量が少なくなる。ここでMg3N2の生成量が少ないと、プリフォームへのAl合金等の浸透速度が遅くなるので好ましくない。一方、Mg成分は、細かい程表面積が大きくなり、空気中の酸素で酸化され易くなってMgOとなり、Mg量が少なくなるので好ましくない。このため、平均粒子径が0.5μm以上のMg成分含有金属粉末等を用いることが望ましい。また、平均粒子径が150μm超では、全体の表面積が小さくなり、先に述べたように、Mg3N2の生成量が少なくなるので好ましくない。
【0033】
Mg成分含有金属粉末等の添加混合量としては、質量基準で、金属粉末100質量部に対し、Mg換算で、0.2~5質量部の範囲内で使用する。より好ましくは、0.5~5質量部の範囲内で使用する。Mg成分含有金属粉末等の量が0.2質量部未満と少ないと、Mg3N2の生成量が少なくなり、Al合金等の溶湯の浸透速度が十分に促進されないので好ましくない。一方、Mg成分含有金属粉末等の量が5質量部超であると、これらの原料で作製したプリフォーム中におけるMg成分の分布状態が局部的に多くなり、このことに起因して浸透したAl合金等の量が不均一になる恐れがあるので、好ましくない。先に挙げたようなMg系合金やMg含有化合物を用いる場合は、これらに含まれるMgに換算して、混合量を決定すればよい。
【0034】
本発明で使用する金属粉末としては、特に限定されず、例えば、シリコン粉末、シリコンアルミ合金粉末、フェロシリコン合金粉末、鉄又は鉄系粉末、チタン粉末、ニッケル又はニッケル系粉末等に代表される金属粉末が挙げられる。先に述べたように、非加圧で、プリフォーム内に良好な状態にAl合金等の溶湯を含浸させるようにするためには、プリフォーム内にMg成分を存在させるようにすることが好ましい。このため、非加圧浸透に用いられるプリフォームを作製する際の混合物は、上記に挙げた金属粉末に加え、1種以上のMg成分含有金属粉末等を、0.2~5質量部の範囲内の量で添加することを要し、さらに、成形物を500℃以下の温度で焼成する。このため、非加圧浸透に用いるプリフォームを作製する際は、平均粒子径が互いに異なる2種以上の金属粉末材料として、Mg成分含有金属粉末等のいずれについても使用しないようにする必要がある。
【0035】
上記に対し、プリフォームが、高圧含浸に用いるためのものである場合は、プリフォームを作製する際における、平均粒子径が互いに異なる2種以上の金属粉末材料として、Mg成分含有金属粉末等を用いても問題ない。なお、この場合は、混合物を成形した成形物を300℃以上800℃以下の温度で焼成してプリフォームを作製するので、500℃を超える温度で焼成した場合は、Mg成分含有金属粉末等の中の、例えばMgは、酸化されてMgOになり、プリフォーム内に、非加圧浸透の際に重要になるMg成分が存在しないものになる。また、800℃を超える温度では、金属粉末が酸化され金属本来の性質が損なわれることが生じる。
【0036】
(有機無機バインダー)
Al合金等の溶湯をプリフォーム内に高圧で含浸、或いは、非加圧で浸透させることから、使用するプリフォームは、Al合金等の溶湯の含浸・浸透で生じる応力に耐えるための強度が必要である。本発明の第1の発明では、Al合金等の溶湯を高圧含浸することを要し、具体的には、溶融Al合金等を数十MPaで含浸するので、特に、この場合に使用するプリフォームは、高圧に耐え得るだけのより高い強度が必要になる。また、本発明の第2の発明のプリフォームに非加圧浸透で溶融Al合金等を浸透させる場合であっても、Al合金等の溶湯がプリフォームと接触する面には応力が発生する。本発明者らの検討によれば、単に振動等の方法で充填させた金属粉末の充填相に、Al合金等の溶湯を高圧で、或いは、非加圧で浸透すると、亀裂や欠陥が発生することがある。このため、Al合金等の溶湯をいずれの方法で含浸・浸透させる場合も、より強固なプリフォームを作製して、該プリフォームにAl合金等を含浸するように構成することが望まれる。
【0037】
通常、セラミックス粉末等から強度の高いプリフォームを作製して、セラッミクス-Al合金等の複合体を得るためには、セラッミクスにコロイダルシリカ等の無機バインダーを添加混合して成形し、得られた成形体を約1000℃以上の温度で焼成してプリフォームを作製する必要がある。しかし、本発明の複合体は、金属粉末とAl合金等との複合体であり、上記した従来技術を利用することはできない。すなわち、強度の高いプリフォームを得る目的で、金属粉末に無機バインダーを添加混合して得た成形体を1000℃の温度で焼成すると、金属粉末が酸化され、金属としての性能が損なわれるので、従来方法は採用できなかった。これに対し、本発明では、本発明で規定するように、金属粉末に有機無機バイダーを添加混合して成形体を得ることで、300℃~800℃の低い温度域での焼成で、強固な、高含有率で金属粉末を含むプリフォームを作製できるようになり、その結果、本発明の顕著な効果を得ている。
【0038】
上記要望に対し、本発明者らは鋭意開発を進めた結果、先述した平均粒子径が互いに異なる2種以上の金属粉末材料に、有機無機バインダーを添加混合してなる混合物を用いることが、より強固なプリフォームを得るための手段として効果的であることを見出した。その経緯について説明する。
【0039】
プリフォームを強固にするには、先に説明したプレス、CIP、沈降法等で、金属粉末をできるだけ密に詰めて圧力をかけて成形すると共に、原料の金属混合粉末にバインダーを添加することが望まれる。一般的に、セラミックス等の成形に使用するバインダーとしてはポリビニルアルコール(PVA)やポリビニルブチラール(PVB)で代表される有機物が使用されている。しかし、これらの有機バインダーを使用して作製したプリフォームに、溶融したAl合金等を高圧で含浸又は非加圧で浸透するとガスが発生し、Al合金等の含浸が阻害される恐れがある。この問題を防止するためには、プリフォームを予め焼成し、ガス発生源となる有機物を焼成除去しなければならない。このことは、PVAやPVB等の有機バインダーは、焼成後のプリフォームを強固にするためのバインダーとしては機能し得ないので、使用できないことを意味する。一方、金属粉末材料に、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ等の無機バインダーを添加し、プレス、CIP等で成形後、焼成してプリフォームを強固にすることが考えられる。そして、これらの無機バインダーによって強度を発現したプリフォームを得るためには、プリフォームを1000℃以上で焼成する必要がある。しかし、この温度で焼成した場合は、主原料である金属粉末が酸化されて金属としての機能が阻害される。したがって、コロイダルシリカや、コロイダルアルミナ等の一般的無機バインダーは使用できない。
【0040】
上記に対し、本発明者らは、鋭意検討した結果、2種以上の金属粉末材料に、有機無機バインダーを添加混合した混合物を用いて成形し、得られた成形物を、溶融したAl合金等の含浸方法に応じて、特定の温度で焼成してプリフォームを作製することで、Al合金等の溶湯の加圧或いは非加圧での含浸がいずれも良好な状態で実現可能になる、強固なプリフォームを得ることができることを見出した。
【0041】
本発明で用いる有機無機バインダーとしては、シリコーン樹脂や、Si-O-R(R:有機物)の化学構造を持つSiアルキシド等のシリコン有機誘導体や、或いは、Al-O-R(R:有機物)の化学構造を持つアルミニュウムアルコキシド等のアルミニュウム有機誘導体を使用することができる。本発明者らの検討によれば、まず、上記に挙げたような有機無機化合物をバインダーとして添加した金属粉体の混合物を使用することで、常温で強固な成形物を作製することができる。そして、本発明者らの検討によれば、その後、得られた成形物を、金属粉末が酸化されない800℃以下の、300℃以上800℃以下の温度で焼成してプリフォームを作製することで、前記成形物中の有機物分が焼成除去されるにもかかわらず、焼成後に強固な金属粉末成型体(プリフォーム)が得られることがわかった。本発明者らは、このような効果が得られた理由について、下記のように考えている。まず、上記に挙げたような有機無機化合物は、金属粉末に添加して成形すると、常温では一般的な有機バインダーと同様に、いわゆる糊剤として強度を発揮する。さらに、300℃以上で加熱すると、有機無機化合物の有機物分は燃焼除去されるが、有機無機化合物の構造中の無機物分が、無機バインダーとして働き、焼成後に得られるプリフォームを強固にする。下記に、有機無機バインダーを用いたことによって得られる効果をより具体的に説明する。
【0042】
先述したように、一般的な、コロイダルシリカや、コロイダルアルミナ等の無機バインダーは、1000℃以上の温度で焼成しないと、プリフォームの強度の発現に寄与できない。一方、本発明で使用する有機無機バインダーは、焼成した場合、300℃以上の焼成温度で、有機物分が焼成除去され、焼成後に残ったSiO2成分やAl2O3成分等がアモルファス(無定形)のまま、金属粉末と結合する。このため、例えば、300℃程度の低い温度でも焼成後のプリフォームは、強度を発現したものになる。また、本発明者らの検討によれば、800℃以下の高い温度で焼成した場合でも金属粉末は酸化されないので、十分強固なプリフォームが製造できる。また、上記に挙げたような有機無機バインダーは、300℃の温度で、有機物分が分解除去されるので、Al合金等の溶湯の含浸時に、有機物による有機ガスの発生がないのも長所である。上記した効果が得られた理由は、本発明で使用する有機無機バインダーの、例えば、Siアルキシド等は、その分子構造がSi-O-R(R:有機物)であるので、一般的な有機バイダーに比べ、300~800℃の温度でも有機物分が炭化残留しにくく、有機物分が燃焼除去され易いため、焼成後の成形体においてSiO2の無機バインダーとして機能し、この結果、得られるプリフォームが強度を発揮したものになったと思われる。また、本発明で使用することを要する無機有機バインダーは、エタノール、IPA、トルエン等の有機性溶媒で使用できるので、金属粉末と水との反応による劣化が抑えられるといった利点もある。
【0043】
上記したように、本発明の第1の発明及び第2の発明のいずれの場合も、比較的に低温度で有機物分が分解除去されて、強固なプリフォームが得られる。下記に述べるように、このことは、得られたプリフォームが、高圧又は非加圧でAl合金等の溶湯を良好な状態に含浸されるための重要な要素となる。すなわち、本発明の第1の発明で行う高圧含浸の場合、具体的には、プリフォームを800℃以下の温度で予熱後、該プリフォームに、700℃~800℃の温度のAl合金等の溶湯を高圧で含浸するが、その際に、このような高い温度の溶湯に対してもプリフォームは十分な強度を発揮できる。さらに、除去しにくいプリフォーム内部からの発生ガスがないので、Al合金等の溶湯が内部まで含浸することができる。
【0044】
一方、本発明の第2の発明で行う非加圧浸透の場合、先に述べたように、Mg成分含有金属粉末等をプリフォーム内に所定量混合されるように構成するが、これらのMg成分含有金属粉末等は、例えば、金属Mg粉末やMg含有合金粉末であれば、500℃超でMgOに酸化されてしまうので、プリフォームを500℃以下の温度で焼成する必要がある。本発明者らの検討によれば、プリフォームを500℃以下の低い温度で焼成することに加えて、金属粉末材料を混合して成形物を得る際に先に説明した有機無機バインダーを所望の量添加することで、成形物を焼成した場合にMg成分含有金属粉末等が酸化されず、しかも、Al合金等の溶湯を非加圧浸透させた際に時くずれない強固なプリフォームを製造することができる。
【0045】
本発明で用いる有機無機バインダーは、固体状のものの場合は、エタノールやIPA等の有機溶媒に溶かして添加するとよい。また、液状のものの場合は、そのまま、或いは、エタノールやIPA等の有機溶媒で希釈して添加することができる。金属粉末原料と有機無機バインダーとを混合しやすいように、エタノールやIPA等の有機溶剤を適当量添加して混合してもよい。本発明で用いる有機無機バインダーは、その添加量を、SiO2やAl2O3に換算して、金属粉末原料100質量部に対して、例えば、0.3~5.0質量部程度となる範囲で添加して混合することが好ましい。上記した範囲よりも少ない添加量であると、少な過ぎて所望するプリフォームの強度が十分に得られない場合がある。上記した範囲内よりも多い添加量の場合は、最終的に得られるアルミニュウム複合体が、SiO2やAl2O3等の無機物量が多いものになってしまい、本発明が目的とする金属含有率が高い高金属粉末含有アルミニュウム複合体が得られないことが懸念され、製品の性能が低下するので好ましくない。
【0046】
(成形物の調製方法)
本発明では、平均粒子径が互いに異なる2種以上の金属粉末材料を選択してプリフォーム用の金属原料とし、該金属原料に、上記に挙げたような有機無機バインダーを添加混合してなる混合物を用いて成形して成形物を得、得られた成形物を特定の温度で焼成することで、強度の高いプリフォームを作製する。具体的には、平均粒子径が互いに異なる2種以上の金属粉末材料に、上記したような有機無機バインダーを混合した金属粉末混合物を成形して成形物を得る。
【0047】
成形物の成形方法は、特に限定されないが、例えば、下記の方法が挙げられる。金属粉末混合物を乾燥して、プレス成形やCIP等の乾式成形をして成形体を得る方法や、有機溶媒を用いて金属粉末混合物をスラリー状にして振動沈降成形や、石膏型で鋳込み成形して成形体を得る方法等が挙げられる。金属粉末混合物をスラリー状にする場合は、水の使用量を低減して有機溶媒でスラリーを作成することが好ましい。水分が多いと、金属粉末と水が反応して、金属粉末が水酸化物等に変化して劣化する恐れがあるためである。例えば、金属粉末がシリコン粉末である場合は、下記の反応が進みシリコンが劣化する恐れがある。
Si+4H2O⇒Si(OH)4+2H2
【0048】
また、金属粉末がチタン粉末の場合も、下記の反応が進み、チタンが劣化する恐れがある。すなわち、Ti+2H2O→TiO2+2H2の反応で、チタンが酸化物となる。他の金属粉末の場合も水と反応して酸化物となるので、基本的に水を使用するのは好ましくない。この問題を抑えるには、アルコール等の有機溶媒を用いるか、水と、アルコール等の親水性の有機溶媒との混合溶媒を使用するようにする。この場合も、上記反応を抑えるため、混合溶媒中の水分量を少なくすることが好ましい。本発明者らの検討によれば、有機溶媒100重量部に対して水分が30重量部以下で有れば、上記のような反応は起こらない。
【0049】
金属粉末混合物を乾燥して、プレス成形やCIP等の乾式成形することで成形物を得た場合は、上記したような問題は生じない。粉末材料の成形物を得る方法として汎用されているプレス成形を利用することで、容易に本発明で所望する成形物を得ることができる。また、CIP成形を利用することで、得られる成形体の密度を均質化することができるので、CIP成形を利用して成形物を得ることも好ましい。例えば、プレス成形で仮成形をし、その後にCIP成形することも好ましい方法である。
【0050】
(成形物の焼成)
本発明では、上記のようにして得た成形物を焼成(仮焼)して、金属含有率が高い金属粉末成型体(プリフォーム)を得る。その場合に、プリフォームに、Al合金等の溶湯を、10MPa~200MPaの高圧で含浸させる場合は、300℃以上800℃以下の温度で焼成する。また、プリフォームに、Al合金等の溶湯を非加圧で浸透させる場合は、500℃以下の温度で、例えば、300℃以上500℃以下の温度で焼成する。まず、成形物を上記した温度で焼成することで、成形物に含まれる有機無機バインダー等に由来する有機物分が除かれる。成形物に有機物分が残っていると、成形物にAl合金等を浸透させると、高温のAl合金等の湯と有機物分が接触してガスが発生し、Al合金等の浸透が阻害されることがあるので、焼成することにより有機物分を除去する必要がある。
【0051】
さらに、成形物を上記した温度で焼成してプリフォームを作製することで、本発明が本来目的とする、プリフォームに、溶解したAl合金等を高圧或いは非加圧のいずれの条件で含浸させた場合においても十分な強度を与えることが可能になる。また、先に述べたように、本発明によって、製品形状に近いニアネットの高金属粉末含有アルミニュウム複合体を製造することができれば、加工コストを大幅に低減でき、非常に有用である。この目的を達成するためには、溶解したAl合金等を含浸する前に、プリフォームを、機械加工が可能な強度を有するものにする必要があり、この目的を実現させるためにも成形物を焼成してプリフォームを作製することは重要である。
【0052】
金属含有率が高い金属粉末成型体(プリフォーム)を得る際の温度条件は、この後の工程における、プリフォームに溶融したAl合金等を含浸する際の方法として、高圧含浸を行うか、非加圧浸透を行うかによって異なる。高圧含浸に供するプリフォームを得る場合は、Al合金等の溶湯を10MPa~100MPa程度の比較的大きな圧力で含浸するので、使用するプリフォームは、これに耐える強度が必要である。しかし、本発明者らの検討によれば、焼成温度が高すぎると、プリフォームの原料である金属粉末が酸化するので、酸化を抑えるため、800℃以下の温度で焼成する必要がある。また、金属粉末に添加した有機無機バインダー等に由来する有機物分を十分に除くためには、300℃以上の温度で焼成することを要する。本発明者らの検討によれば、高圧含浸に供するプリフォームを得る場合は、500℃超で800℃以下の温度で焼成することが好ましい。より好ましくは、700℃以上800℃以下の温度で焼成するとよい。
【0053】
本発明者らの検討によれば、非加圧浸透に供するプリフォームを得る場合は、非加圧浸透で、プリフォームのAl合金等の溶湯が接触する部分に応力が発生するので、これに耐え得るプリフォーム強度のものが必要になる。このため、高圧含浸に供するプリフォームと同様に、焼成することで、成形物中の有機物分の除去と、得られるプリフォーム強度を向上させる。しかし、非加圧浸透の場合は、先に説明したように、非加圧でAl合金等の溶湯を良好な状態に浸透させるためには、浸透に供するプリフォームが、先に説明したMg金属粉末等のMg成分含有金属粉末等が添加された状態であることを要する。これに対し、例えば、Mg金属粉末は500℃超になると空気中の酸素と反応し、MgOとなり、非加圧浸透に必要なMg成分が不足することになる。このため、焼成温度は500℃以下で実施する必要がある。本発明者らの検討によれば、非加圧浸透に供する場合、300℃以上450℃以下の温度での焼成で、有機物分を十分に焼成除去でき、且つ、金属含有率が高いプリフォームを非加圧浸透に耐え得る強固なものにすることが可能になる。
【0054】
[高金属粉末含有アルミニュウム複合体の作製]
次に、本発明の高金属粉末含有アルミニュウム複合体を得る際に行う、アルミニュウム等の含浸工程について説明する。該工程では、上記で説明した構成によって得られる、金属含有率が高い、強度に優れるプリフォームに、溶融したアルミニュウム又はアルミニュウム合金(Al合金等)を含浸或いは浸透させる。以下、高圧含浸による方法と、非加圧浸透による方法について、それぞれ説明する。
【0055】
(プリフォームへのAl合金等の高圧含浸方法)
図1に、高圧含浸の概念図を模式的に示した。
図1(A)に示したように、金属含有率が高いプリフォームを、300℃~800℃に加熱して予熱したプレス機の枠型に装填する。プリフォームを予熱した状態にして装填する理由は、プリフォームにAl合金等の溶湯を高圧含浸する場合、プリフォームの温度が低いと、高圧含浸の途中でAl合金等が冷却固化してプリフォーム内部まで含浸しないことが起こり得るので、これを防止するためである。枠型は、同じくAl合金等が含浸途中で冷却固化しないように、200~400℃にバーナー等で加温(予熱)しておくとよい。
【0056】
上記のようにしてプリフォームを装填した容器に、600℃~800℃に溶融したAl合金等を注湯し、
図1(B)に示したように、上パンチで荷重をかけプレスし、等方的にAl合金等の溶湯をプリフォーム内に含浸させる。プレス圧は、10Mpa~200Mpaで行う。10MPa未満では圧力が低過ぎて、プリフォームにAl合金等の溶湯が含浸しない場合があるので好ましくはない。200Mpa超の、より高圧で含浸させても構わないが、本発明の複合体を得るための装置の能力としては、上記した範囲のプレス圧が得られれば十分である。このようにして得たプレス含浸体を冷却し、プリフォーム周囲のアルミニュウムを除去して、本発明が目的とする高金属粉末含有アルミニュウム複合体とする。
【0057】
(プリフォームへのAl合金等の非加圧浸透方法)
図2に、非加圧浸透の段階的な概念図を模式的に示した。まず、Mg金属粉末などの、Mg成分含有金属粉末等を含んでなる、金属含有率が高いプリフォームを、下記に説明するようにして窒素雰囲気が確保できる電気炉に装填する。プリフォームの下部には、好ましくは、プリフォームと同材の小片を浸透道として配置する。浸透に供する固体のAl合金等をプリフォームに接触しないようにして近傍に設置する。プリフォームとAl合金等は電気炉内部の部材と反応しないように、
図2に示したように、カーボン製ベッセル等に設置する。
【0058】
上記のようにプリフォームと固体のAl合金等を上記したように配置した後、電気炉内部の窒素雰囲気を保ちながら徐々に昇温して、700~900℃で2時間~5時間保持する。この間に、
図2に段階的に示したように、溶けたAl合金等が浸透道を介してプリフォームに非加圧で浸透し、高金属粉末含有アルミニュウム複合体が得られる。
【0059】
以下、Mg成分含有金属粉末等がMg粉末である場合を例にとって説明する。上記した非加圧浸透の原理は、Mgと窒素が反応し、Mg3N2が生成し、プリフォーム内に析出して、Al合金等との濡れ性が向上するか、または、Mgがテルミット反応を起こし、プリフォームを構成している金属粉末の表面酸化物を還元して、金属粉末とAl合金等の濡れ性が向上したためと思われる。先に説明したように、従来技術では、プレス成形等して得た成形物を焼成せずに非加圧浸透に用いており、また、Al合金等を非加圧浸透させる場合、Mg粉末を含まない成形物を用い、これを、マグネシウム蒸気を含む窒素雰囲気に置きAl金属を浸透させる方法が行われている。しかし、本発明者らの検討によれば、この方法であると、雰囲気中のMg蒸気と窒素で反応して、プリフォームの表面にMg3N2が生成し、この状態でAl合金等が浸透していくことになるので、プリフォーム全体にアルミニュウムを含浸させるには長時間が必要である。また、プリフォームの表面に均一にMg3N2が生成しないので、不均一にAl合金等が浸透し、プリフォーム全体に均一に含浸しないことが起こる場合があった。
【0060】
本発明の技術によれば、上記した従来技術の場合と異なり、プリフォーム内にMg粉末を均一に混合することができるのでMg3N2がプリフォーム全体に生成するので、Al合金等の含浸速度は飛躍的に早くなると共に、プリフォーム全体均一に含浸することができる。また、非加圧浸透を利用した場合、プリフォームの形状のままAl合金等を浸透させることができるので、製品形状に近いニアネットで、高金属粉末含有アルミニュウム複合体を製造できるという、二次加工を低減できるという大きなメリットがある。
【実施例】
【0061】
以下、実施例及び比較例を挙げて、前述の一実施形態のさらなる具体例を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。文中、w%とあるのは質量基準であり、v%とあるのは容積基準である。本明細書中における平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定器で測定した値である。
【0062】
[実施例1](高圧含浸法を利用)
まず、下記の手順で、金属含有率が高い金属粉末成型体(プリフォーム)を作製した。本実施例では、プリフォームを作製するため、平均粒子径が異なる3種のシリコン(ケイ素)粉末を下記の配合で組合わせて、撹拌混合して使用した。具体的には、平均粒子径が45μmのシリコン粉末を1820g、平均粒子径が25μmのシリコン粉末を780g、平均粒子径が5μmのシリコン粉末を100g、で配合した合計2700gの、平均粒子径が互いに異なる3種のシリコン粉末の混合物を用いた。この混合物に、SiO2換算でケイ素分(シリコン)を40w%含む、有機無機バインダーであるエチルシリケートを130g添加して、更に、撹拌機で15分間撹拌混合して、本実施例で用いる混合粉体を得た。
【0063】
上記で得た混合粉末を、内寸が、200mm×200mm×150mm(深さ)のプレス金型に全量入れ、300kg/cm2全圧120tで、プレス成形を行った。そして、得られたプレス成形品を電気炉内に入れ、昇温速度50℃/hrで700℃まで昇温し、この温度で3時間保持し、その後、室温まで冷却して、シリコン金属製のプリフォームを作製した。このプリフォームの重量と外形寸法を測定し、嵩密度を算出したところ、体積充填率(Vf)が77%であるシリコンプリフォームあった。
【0064】
上記で得たプリフォームを電気炉で500℃に予熱し、予熱したプリフォームを、高圧含浸を行うための、高圧含浸用プレス機のバーナーで250℃に加熱した300mmΦ×250mm深さの金型に、装填した。この金型に、750℃で溶解したアルミニュウム合金(AC4C)を、該金型の上20mm程度まで入れ、上側からプレスパンチを金型に押し込み、100Mpaの圧力で10分保持して、先に得たシリコンプリフォームに、溶解したアルミニュウムを高圧含浸させた(
図1参照)。
【0065】
冷却した後、前記プリフォームの周囲のアルミニュウムを加工除去して、シリコン-アルミニュウム複合体の製品部を取り出した。該製品部は、小さなポア(鋳巣)や、亀裂もなく、アルミニュウムが均一に含浸したシリコン-アルミニュウム複合体(以下、シリコンアルミ複合体とも呼ぶ)であった。重量測定と外形寸法測定から嵩比重を算出したところ、シリコンが78v%、アルミ合金が22v%のシリコンアルミ複合体であった。
【0066】
[実施例2](非加圧浸透法を利用)
以下の手順で、本実施例で使用する金属含有率が高い金属粉末成型体(プリフォーム)を作製した。実施例1で用いたと同様の配合になるように秤取った、平均粒子径が互いに異なる3種類のシリコン粉末の合計2700gに、平均粒子径が80μmのMg粉末を50g加えた。更に、この混合物に、実施例1と同じくエチルシリケートを130g添加して、撹拌機で10分間混合した。
【0067】
上記で得た混合粉末を、内寸が、200mm×200mm×150mm(深さ)のプレス金型に全量入れ、150kg/cm2全圧60tで、プレス成形を行った。これを金型から外し、得られたプレス品を、通常の空気雰囲気電気炉に入れ、昇温速度50℃/hrで450℃まで昇温し、この温度で3時間保持し、その後、冷却してプリフォームを作製した。実施例1と同様にして、嵩密度を算出したところ、体積充填率(Vf)は73%であった。
【0068】
上記で得たプリフォームを、
図2に模式的に示した「非加圧浸透原理図」となるようにカーボン製のベッセル内に配置した。具体的には、上記で得たプリフォームと同じ材質で調製してなる、30mm×30mm×30mmの大きさの浸透道を、上記プリフォームの下に接地させた状態で4個置き、さらに、プリフォームの横に、2500gの固体のアルミニュウム合金(AC4A)を配置した。そして、プリフォーム等を上記のように配置させたカーボンベッセル全体を窒素雰囲気炉に入れ、50℃/hrで昇温し、800℃で5時間保持した後、冷却した。
【0069】
冷却後、浸透道を外して、プリフォームの表面及び内部を加工して観察したところ、プリフォーム内に、アルミニュウムが完全に含浸された状態のシリコンアルミ複合体であることを確認した。得られたシリコンアルミ複合体の重量と、外形の測定値から算出した嵩比重から、該複合体は、シリコンが73v%、アルミニュウム合金が26v%で、ポアや亀裂がないシリコンアルミ複合体であった。
【0070】
[実施例3](高圧含浸法を利用)
以下の手順で、本実施例で使用する金属含有率が高い金属粉末成型体(プリフォーム)を作製した。平均粒子径が80μmのシリコン粉末を1820gと、平均粒子径が25μmのシリコン粉末を780gと、平均粒子径が3μmのシリコン粉末を100gで配合した合計2700gの、平均粒子径が互いに異なる3種のシリコン粉末の混合物を用いた。この混合物に、シリコーン樹脂(信越化学社製、商品名:KR-220L)を30w%となるように溶解したイソプロピルアルコール溶液180gを加え、撹拌機で15分撹拌した後、実施例1と同じようにプレス金型に全量を装填し、実施例1と同じ条件でプレス成形した。そして、得られたプレス成形品を電気炉内に入れ、昇温速度70℃/hrで750℃まで昇温し、この温度で焼成して、体積充填率が78v%のプリフォームを得た。なお、体積充填率は、実施例1と同様にして得た。
【0071】
上記で得たプリフォームに、実施例1で行ったと同じ条件と手順で、高圧含浸用プレス機で、溶解したアルミニュム合金の含浸を行った。冷却後、周りのアルミニュウムを加工除去し、製品部を取り出して、その重量と外形測定を行って、嵩比重を算出した。その結果、得られた複合体は、シリコン78v%、アルミ合金22v%で、ポア(鋳巣)や亀裂がないシリコンアルミ複合体であることを確認した。
【0072】
[実施例4](非加圧浸透法を利用)
以下の手順で、本実施例で使用する金属含有率が高い金属粉末成型体(プリフォーム)を作製した。実施例2で行ったのと同じ手順で作製した、Mg粉末を含有してなる、形状が200mm×200mm×40mmのプリフォームに、フライスによる機械加工を行って、この成型体に、75mm×75mm×25mm(深さ)のキャビティーが4個均等に配された、リブ構造のプリフォームを得た。得られたプリフォームは、機械加工可能な強度を持つ強固なプリフォームであった。
【0073】
上記で得たプリフォームを用い、実施例2と同じようにして、カーボン製のベッセル内に配置したプリフォームの下の浸透道から、アルミニュウム合金(AC4A)の非加圧浸透を行った。そして、実施例2で行ったと同じように、浸透道を除去して、かさ比重を測定した結果、シリコンが73v%、アルミ合金が27v%で、ポアや、亀裂がない、シリコンアルミ複合体が得られたことを確認した。また、キャビティー内部には、アルミ合金の染み出しもなく、プリフォームの形状のままニアネットで、シリコンアルミ複合体が製造できていた。
【0074】
[実施例5](高圧含浸法を利用)
以下の手順で、本実施例で使用する金属含有率が高い金属粉末成型体(プリフォーム)を作製した。平均粒子径が80μmの鉄粉1400gと、10μmの鉄粉600gに、SiO2換算で、ケイ素分(シリコン)を40w%含むエチルシリケート80gを添加して、15分間撹拌混合した。この混合粉末を、内寸が200mm×200mm×150mm(深さ)のプレス金型に入れ、150kg/cm2全圧60tでプレス成形を行った。そして、該プレス成形品を電気炉に入れ、昇温速度50℃/hrで700℃まで昇温し、この温度を3時間保持し、その後、室温まで冷却して、鉄金属製のプリフォームを作製した。得られたプリフォームの重量と外形寸法を測定し、嵩密度を算出したところ、体積充填率(Vf)が73%の鉄粉末プリフォームあった。
【0075】
上記で得たプリフォームを電気炉で500℃に予熱して、高圧含浸を行うために、高圧含浸用プレス機のバーナーで250℃に加熱した、300mmΦ×250mm深さの金型に装填した。この金型に750℃で溶解したアルミニュウム合金(AC4C)を金型の上20mm程度まで入れ、上側からプレスパンチを金型に押し込み、100Mpaの圧力で10分保持して高圧含浸を行った。
【0076】
冷却した後、周囲のアルミニュウムを加工除去して、鉄アルミニュウム合金複合体(以下、鉄アルミ複合体とも呼ぶ)の製品部を取り出した。製品部は、小さなポア(鋳巣)や、亀裂もなく、鉄粉末製のプリフォームに、アルミニュウムが均一に含浸した鉄アルミ複合体であった。重量測定と外形寸法測定から嵩比重を算出したところ、鉄が73v%、アルミ合金が27v%の、鉄アルミ複合体であった。
【0077】
[比較例1](バインダー不使用、高圧含浸法を利用)
実施例1と同じ配合及び重量のシリコン混合粉末を、シリコーン樹脂やエチルシリケート等のバインダーを添加せず、粉末のまま200mm×200mm×100mmの鉄箱に入れ、箱全体を振動機に乗せ、20分振動をかけて充填を行った。そして、この箱ごと、実施例1と同じようにアルミニュウムの高圧含浸を行い、冷却後、複合体を切り出した。
【0078】
切り出した複合体の加工面を観察したところ、筋状のアルミニュウム欠陥が多数見られた。これは、高圧含浸途中に金属粉末充填体に亀裂が生じ、この亀裂にアルミニュウム合金が侵入したためと思われる。亀裂のない部分を切り出し、嵩比重を算出した結果、シリコンの充填率は62v%であり、実施例1のプリフォームを作製したものと比較してシリコンの充填率が低かった。上記の結果は、シリコン粉末の粒子をそのまま充填しただけでは、シリコンの充填率が低く、また、シリコン充填相の強度が十分なものにならず、アルミニュウム溶湯を高圧含浸する途中で充填相が割れ、アルミニュウムが侵入した欠陥が生じたことを示している。
【0079】
[比較例2](バインダー不使用、プレス成形でプリフォーム作製)
実施例1と同じ配合及び重量のシリコン混合粉末に、エチルシリケートを添加することなく、該混合粉末を用いて、同じ手順でプレス成形を行った。しかし、得られた成形体は強度が不足しており、金型から取り外す際にくずれてしまい、複合体の製造に使用可能なプリフォームを作製することはできなかった。上記の結果から、シリコン混合粉末材料を用いてプレス成形する場合には、粉体材料中へのバイダーの添加が必須であることが分かった。
【0080】
[比較例3](バインダー不使用、沈降成形でプリフォーム作製)
実施例3と同じ配合及び重量のシリコン混合粉末を使用し、シリコーン樹脂やエチルシリケート等のバインダーを添加せずにスラリーを調製し、該スラリーを用いて沈降成型を行った。これを乾燥したところ、得られた成型体は、強度不足であり、手で触るとすぐに崩れるような脆弱な成型体であった。また、成型体の一部を実施例1と同様に、700℃に昇温加熱したところ、強度がほとんどなく、すぐに崩れる程脆弱であり、当然のことながら、高圧含浸や非加圧浸透に使用できるようなものではなかった。
【0081】
[比較例4](有機物のバインダー使用、プレス成形及び仮焼でプリフォーム作製)
実施例1の配合及び重量のシリコン混合粉末に、固形分20w%のポリビニルブチラール(以下、PVBと略記)のエタノール溶液を用い、シリコン混合粉末に対して、PVBが2w%の割合になるように添加した後、実施例1で行ったと同じ操作で、プレス成形により成形体を作製した。得られた成形体を750℃で仮焼したところ、触ると崩れる程脆弱になった。この理由は、PVBは、常温ではシリコン混合粉末のバインダーとして機能するものの、仮焼したことで焼失してしまったためと思われる。上記の結果から、有機物のバインダーは、プレス成形品の形状保持には使用できるが、それ以降の工程の焼成でプリフォームの強度が保てなくなることを確認した。
【0082】
[比較例5](有機無機バインダー使用、850℃で仮焼してプリフォーム作製、非加圧浸透法を利用)
実施例1で使用した、平均粒子径が互いに異なる3種のシリコン粉末の混合物に、有機無機バインダーのエチルシリケートを同じ量添加して撹拌混合して調製したシリコン混合粉末を同じ量用いて、実施例1と同じ方法でプレス成形を行った。得られたプレス成形品を電気炉内に入れ、昇温速度50℃/hrで850℃まで昇温し、この温度で3時間保持して焼成し、その後、室温まで冷却してシリコンプリフォームを作製した。
【0083】
上記で得た焼成体の表面を観察したとところ、シリコンが酸化されてSiO2となり白っぽく変色していた。また、シリコンがSiO2となり体積が増えたため、応力が表面に発生して微小なクラック生成し、欠陥のないプリフォームを得ることができなかった。
【0084】
[比較例6](Mg粉末と有機無機バインダーを使用、570℃で仮焼してプリフォーム作製)
実施例2で使用したと同様の、平均粒子径が互いに異なる3種のシリコン粉末に、平均粒子径が80μmのMg粉末を加え、この混合物にエチルシリケートを添加して撹拌機で混合した混合物を用い、実施例2と同様にプレス成形を行ってプレス品を得た。そして、上記で得たプレス成形品を、570℃で、3時間焼成脱脂して、プリフォーム(焼成体)を作製した。
【0085】
上記で得たプリフォーム(焼成体)に、実施例2と同じ方法で、アルミニュウム合金の溶湯で非加圧浸透を試みた。しかし、アルミニュウム合金は、プリフォーム(焼成体)に非加圧では浸透しなかった。その理由は、570℃での焼成によって、プレス品内に添加したMgが酸化してMgOとなり、非加圧浸透に寄与できなかったためと思われる。
【0086】
[比較例7~9](各平均粒子径のシリコン粉末を単独で使用してプリフォーム作製)
実施例1でシリコン粉末の混合物に使用した、平均粒子径が45μm、25μm、5μmの各シリコン粉末を、それぞれ単味で2700g使用したこと以外は実施例1と同様の手順でプレス成形し、プレス成形品を焼成してプリフォームを作製した。そして、得られた45μm、25μm、5μmの各平均粒子径のシリコン粉末を単味で用いて得られたプリフォームについて、実施例1で行ったと同様にして、体積充填率(Vf)を算出した。その結果、45μmのシリコン粉末を用いた場合のプリフォームでは充填率が50v%、25μmのシリコン粉末を用いた場合のプリフォームでは充填率が52v%、5μmのシリコン粉末を用いた場合のプリフォームでは充填率が53v%であった。このように、各平均粒子径のシリコン粉末を単味で用いて得たいずれのプリフォームの場合も、実施例のプリフォームの場合と比べて充填率が低くなることが確認され、高含有率のプリフォームを作製するためには、平均粒子径が互いに異なるシリコン等の金属粉末を混合して使用する必要あることが分かった。
【0087】
表1に、実施例と比較例において行ったプリフォームの製造条件と、Al合金等の含浸方法及び得られた高金属粉末含有アルミニュウム複合体の性状等をまとめて示した。
【0088】
【要約】
【課題】金属粉末の充填率を高くでき、しかも内部に欠陥がなく均一なプリフォームが得られる作製技術を確立し、該プリフォームにAl合金等を高圧含浸或いは非加圧浸透させた場合に、亀裂や欠陥が少ない金属含有率が高い、高金属粉末含有アルミニュウム複合体を得る技術の提供。
【解決手段】プリフォームの作製工程で、平均粒子径が1~200μmの金属粉末材料から、粒子径が異なる2種以上の材料を選択し、これらの金属原料に、有機無機バインダーを添加混合した材料から得られた成形物を、300~800℃の温度で焼成し、金属原料の含有率が55v%以上のプリフォームを得、得られたプリフォームに、アルミニュウム合金等の溶湯を高圧で含浸させる高金属粉末含有アルミニュウム複合体の製造方法等。
【選択図】 なし