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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-09
(45)【発行日】2022-03-17
(54)【発明の名称】ロープ径超音波測定治具
(51)【国際特許分類】
   B66B 7/12 20060101AFI20220310BHJP
   B66B 5/00 20060101ALI20220310BHJP
   G01B 17/00 20060101ALI20220310BHJP
【FI】
B66B7/12 Z
B66B5/00 D
B66B5/00 G
G01B17/00 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020106336
(22)【出願日】2020-06-19
(65)【公開番号】P2022001520
(43)【公開日】2022-01-06
【審査請求日】2020-06-19
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 和也
(72)【発明者】
【氏名】松森 伸也
【審査官】吉川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-174758(JP,A)
【文献】特開平08-219756(JP,A)
【文献】特開2009-162652(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00-5/28,7/00-7/12
G01B 17/00-17/08,21/00-21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤロープの直径を測定するために用いられるロープ径超音波測定治具であって、
前記ワイヤロープが嵌合可能な第1ロープ溝が表面に形成された治具本体と、
前記治具本体に取り付けられ、前記第1ロープ溝と重なり合って前記ワイヤロープを挟む第2ロープ溝が形成された蓋体と、
前記治具本体に組み込まれ、前記第1ロープ溝と前記第2ロープ溝に挟まれた前記ワイヤロープがそれぞれ前記第1ロープ溝、前記第2ロープ溝の曲面と接する接点で反射した超音波を検出する超音波センサと、
前記治具本体に接続され、前記超音波センサの検出信号から前記ワイヤロープの直径を算出し、前記直径の測定値を表示する端末装置と、を備え、
前記第1ロープ溝の曲面と接するワイヤロープの接点と、前記第2ロープ溝の曲面と接する前記ワイヤロープの接点と、が前記ワイヤロープの外接円上にあるようにし、
前記第1ロープ溝と前記第2ロープ溝は、それぞれ複数本並列に設けられる
ことを特徴とするロープ径超音波測定治具。
【請求項2】
前記超音波センサは、前記第1ロープ溝の長さ方向に複数配列されることを特徴とする請求項に記載のロープ径超音波測定治具。
【請求項3】
前記ワイヤロープは、既設のエレベータにローピングされているメインロープであり、前記ロープ径超音波測定治具は、巻上機のトラクションシーブの直下に配置されることを特徴とする請求項またはの項に記載のロープ径超音波測定治具。
【請求項4】
請求項1乃至のいずれかの項に記載のロープ径超音波測定治具を用い、
エレベータの巻上機のトラクションシーブの直下に前記ロープ径超音波測定治具を配置し、メインロープを前記治具本体の前記第1ロープ溝と蓋体の前記第2ロープ溝の間に入れ、前記超音波センサにより前記メインロープの直径を測定する
ことを特徴とするロープ径超音波測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ロープ径超音波測定治具に関する。
【背景技術】
【0002】
釣瓶式のエレベータでは、乗りかごはメインロープによって釣り合い重りと接続され、このメインロープは、巻上機のメインシーブに巻き掛けられている。メインロープは、鋼線からなる素線が撚り合わされた複数本のストランドから構成されるワイヤロープである。
【0003】
エレベータの運転を続けていると、メインロープには摩耗、腐食が発生し、これらが進行すると、ロインロープに損傷が生じる。このため、エレベータの点検では、メインロープの健全性を点検することが重要な点検項目になっている。
【0004】
従来、メインロープの点検では、ロープ径の計測や、素線損傷の検知が行われている。ロープ径の測定は、ノギスを使用して測定し、摩耗して痩せていないか点検するものであり、素線の断線については、漏洩磁束法を適用した測定装置を用いて検出される。
その他、メインロープの点検では、ロープの伸び量を測定して、ロープの劣化の程度を判定したり(特許文献1)、メインロープの繊維芯の劣化を評価したりすることも行われている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-119555号公報
【文献】特開2013-193833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
メインロープの直径を測定する場合、ノギスを使用して直接測定することが従来から広く行われている方法である。エレベータでは、メインロープは、複数本が並列にローピングされているため、1本ずつノギスで測定しなければならない。
しかも、複数本のストランドが撚り合わされているというワイヤロープの構造上、ノギスを上手に当てないと、正確な直径を測定することができないため、測定者によって、測定結果にバラツキが生じるという問題があった。
【0007】
本発明は、前記従来技術の有する問題点に鑑みなされたものであって、測定者による測定誤差をなくし、メインロープなどのロープ径を効率良く正確に測定できるロープ径超音波測定治具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、本発明の一実施形態に係るロープ径超音波測定治具は、ワイヤロープの直径を測定するために用いられるロープ径超音波測定治具であって、前記ワイヤロープが嵌合可能な第1ロープ溝が表面に形成された治具本体と、前記治具本体に取り付けられ、前記第1ロープ溝と重なり合って前記ワイヤロープを挟む第2ロープ溝が形成された蓋体と、前記治具本体に組み込まれ、前記第1ロープ溝と前記第2ロープ溝に挟まれた前記ワイヤロープがそれぞれ前記第1ロープ溝、前記第2ロープ溝の曲面と接する接点で反射した超音波を検出する超音波センサと、前記治具本体に接続され、前記超音波センサの検出信号から前記ワイヤロープの直径を算出し、前記直径の測定値を表示する端末装置と、を備え、前記第1ロープ溝の曲面と接するワイヤロープの接点と、前記第2ロープ溝の曲面と接する前記ワイヤロープの接点と、が前記ワイヤロープの外接円上にあるようにし、前記第1ロープ溝と前記第2ロープ溝は、それぞれ複数本並列に設けられることを特徴とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明によるロープ径超音波測定治具の一実施形態を示す斜視図である。
図2】蓋体が開いた状態の治具本体を上から見た平面図である。
図3】蓋体を閉じて第1ロープ溝の曲面と、第2ロープ溝の曲面でメインロープを挟んだ状態を示す図である。
図4】メインロープを挟んだロープ径超音波測定治具を正面から見た図である。
図5】超音波センサによるロープ径の測定原理について説明する図である。
図6】ロープ径超音波測定治具の最適な設置位置を示す図である。
図7】トラクションシーブにメインロープが巻き掛けられる直前、直後の位置それぞれにロープ径超音波測定治具を配置した例を示す図である。
【発明を実施する形態】
【0010】
以下、本発明によるロープ径超音波測定治具の実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態によるロープ径超音波測定治具を示す図である。
図1において、参照番号10は、ロープ径超音波測定治具を示している。このロープ径超音波測定治具10は、箱型の治具本体12と、蓋体13とから構成されている。治具本体12の一面には、複数の第1ロープ溝14が所定の間隔で形成されており、蓋体13にも、同様に、複数の第2ロープ溝15が形成されている。各第1ロープ溝14および第2ロープ溝15は、蓋体13を閉じることで重なり合い、メインロープ20(図3参照)を挟むことが可能な円形の孔をなすようになっている。なお 図1において、参照番号30はロープ径を演算するとともに、測定値を表示するタブレット端末を示す。参照番号17は,測定中であることを示す赤ランプ、18は測定の終了したことを示す青ランプを示している。16は電源スイッチである。
【0011】
ここで、図2は、蓋体13が開いた状態の治具本体12を上から見た平面図である。
乗りかごとメインシーブの間では、メインロープ20が複数本上下に走行するようにローピングされており、この実施形態では、6本メインロープ20を同時に測定することができる。メインロープ20の間隔に合わせて第1ロープ溝14の間隔、第2ロープ溝15の間隔は設定されている。蓋体13は、蝶番19を介して開閉可能に治具本体12に取り付けられている。蓋体13を閉めると、第1ローブ溝14と、第2ロープ溝15が重なって1本のメインロープ20を挟むことができるようになっている。
【0012】
図3は、蓋体13を閉じて第1ロープ溝14の曲面と、第2ロープ溝15の曲面でメインロープ20を挟んだ状態を示している。図4は、メインロープ20を挟んだロープ径超音波測定治具10を正面から見た図である。
本実施形態では、ロープ径(メインロープ20の直径)を検出する超音波センサ22が治具本体12に設けられている。この実施形態では、1本のメインロープ20に対して、複数の、例えば3個の超音波センサ22が割り当てられている。超音波センサ22は、超音波を発信する発振部と、反射して超音波を受信する受信部とを有している超音波センサであり、反射波が戻って来るまでの時間から距離を測定することができる。各メインロープ20に対して、メインロープ20の長さ方向に3つの超音波センサ22が並んでおり、各超音波センサ22は、メインロープ20の半径方向に超音波を発信する。
次に、図5を参照しながら、超音波センサ22によるロープ径の測定原理について説明する。
図5において、測定対象のメインロープ20は、例として、中心の綱芯25に8本のストランド24a乃至24hが撚り合わされたワイヤロープである。蓋体13を閉め、メインロープ20を第1ロープ溝14と、第2ロープ溝15の間に挟むと、メインロープ20の外接円と略等しい曲率の曲面に各ストランド24a乃至24hが接する状態になる。
【0013】
第2ロープ溝15の底部に接するストランド24cと、第1ロープ溝14の底に接するストランド24gは、外接円の直径方向に延びる直線上に位置し、ストランド24gと第1ロープ溝14との接点Aと、ストランド24cと第2ロープ溝15 との接点Bは、外接円上に位置して、距離ABをメインロープ20の直径とみなすことができる。このAB方向に沿って超音波センサ22からメインロープ20に対し長さ方向と垂直に超音波が照射される。
【0014】
この場合、ストランド24gの接点Aで反射して超音波センサ22に戻る超音波と、ストランド24cの接点Bで反射して超音波センサ22に戻る超音波の時間差から接点ABの距離、すなわちメインロープ20の直径を算出することができる。本実施形態では、1本のメインロープ20について、3つの超音波センサ22が割り当てられており、各超音波センサ22での測定値および平均値がタブレット端末30に表示される。なお、適用可能なセンサとしては、超音波センサ以外にも、TOFセンサを用いることが可能である。TOFセンサは、距離センサとして超音波センサと同様な性能をもっている。
【0015】
ここで、図6は、ロープ径超音波測定治具10の最適な設置位置を示す図である。
メインロープ20は、常に、ロープ間隔が一定で平行にねじり無く走っているとは限らない。位置によっては、ロープ間隔が均等にならず、ねじりが生じることがある。
【0016】
ロープ間隔が均等でねじりがないのは、図6に示すように、巻上機のトラクションシーブ26の直下である。トラクションシーブ26の外周面には、巻き付けられるメインロープ20が嵌まる溝が複数形成されているので、この溝に沿って各メインロープ20は巻着きけられるので、トラクションシーブ26の直下では、各メインロープ20は、お互いに平行に引き出され、しかもロープ間隔も一定である。
【0017】
このようなことから、ロープ径超音波測定治具10にあっても、第1ロープ溝14、第2ロープ溝15のロープ間隔をトラクションシーブ26の直下のロープ間隔に合わせてようにして、この位置に設置すれば、蓋体13を安全に閉めて測定が可能になる。なお、トラクションシーブ26の直下とは、ここでは、引き出されるメインロープ20が平行に延びている範囲内で、例えば1メートル下までは直下であるとする。
また、トラクションシーブ26の直下であれば、ロープ径超音波測定治具10に供給する電力の電源も取り易い。このようなトラクションシーブ26の直下に配置できるのは、機械室のあるエレベータに限らず、機械室のないタイプのエレベータにも適用が可能である。
【0018】
以上のような本実施形態によるロープ径超音波測定治具10によれば、次のような効果が得られる。
【0019】
本実施形態によるロープ径超音波測定治具10では、第1ロープ溝14と、第2ロープ溝15に挟まれたメインロープ20の直径を超音波センサ22により計測しているので、ノギスによる測定とは異なり、測定者の技量による誤差は出ずに、ロープ径の正確な値を安定的にも得ることができる。しかも、測定操作自体そのものも、第1ロープ溝14、第2ロープ溝15にメインロープ20を引き込んで、蓋体13を閉じるだけといった単純な操作であり、操作性は良好である。
【0020】
また、本実施形態によるロープ径超音波測定治具10によれば、第1ロープ溝14および第2ロープ溝15が複数本のメインロープ20に対応するように配列しているので、従来のように1本、1本測定する必要はなくなり、メインロープ20の直径測定を一度で行うことができ、測定作業の効率が向上する。
【0021】
さらに、本実施形態によるロープ径超音波測定治具10によれば、超音波センサ22から検出信号を取り込み、測定値を表示するタブレット端末30を接続できるので、測定結果を測定後直ちにその場で確認することができ、摩耗したロープを発見し易くなる。
【0022】
なお、以上の実施形態は、メインロープ20の直径を測定する実施形態であるが、本発明は、メインロープ20に適用が限定されるものではなく、エレベータであればガバナーロープの直径の測定にも適用可能である。また、エレベータ以外にもクレーンなどのワイヤロープにも適用可能である。
【0023】
次に、図7は、トラクションシーブ26にメインロープ20が巻き掛けられる直前、直後の位置(各ロープ径超音波測定治具10についてみれば、その配置位置はトラクションシーブ26の直下にあたる)それぞれにロープ径超音波測定治具10を配置した例を示す。この場合には、第1ロープ径超音波測定治具10A、第2ロープ径超音波測定治具10Bにより同時にメインロープ20の径を測定し、測定誤差による影響をできるだけ排除することになる。
【0024】
第1ロープ径超音波測定治具10Aによる測定データと、第2ロープ径超音波測定治具10Bによる測定データは、メインロープ20の同一の測定点について比較される。この場合、第1ロープ径超音波測定治具10Aによる測定データと、第2ロープ径超音波測定治具10Bによる測定データが同位置同士で比較できるようにデータ処理が行われる。
メインロープ20には、あらかじめの許容範囲を見込んだロープ径の最低限の許容値が定められている。第1ロープ径超音波測定治具10A、第2ロープ径超音波測定治具10Bによるローフ径の測定値が両方とも許容値を上回っていれば、メインロープ20は摩耗等により損耗を受けてしない正常範囲にあるもとする。
【0025】
第1ロープ径超音波測定治具10A、第2ロープ径超音波測定治具10Bによるローフ径の測定値が両方とも許容値を下回っていれば、メインロープ20は摩耗等による損耗が生じており、測定値は、安全に問題のあるロープ径であると判定される。
【0026】
第1ロープ径超音波測定治具10A、第2ロープ径超音波測定治具10Bによるローフ径の測定値が片方だけが許容値を下回っている場合は、安全に問題があるかどうか判定せずに、測定誤差が生じているものとして扱い、再測定を行う。何度も同じ状況が繰り返される状況であれば、保守員が直接測定を行うようにしてもよい。
【0027】
以上、本発明に係るロープ径超音波測定治具について、好適な実施形態を挙げて説明したが、これらの実施形態は、例示として挙げたもので、発明の範囲の制限を意図するものではない。もちろん、明細書に記載された新規な装置、方法およびシステムは、様々な形態で実施され得るものであり、さらに、本発明の主旨から逸脱しない範囲において、種々の省略、置換、変更が可能である。請求項およびそれらの均等物の範囲は、発明の主旨の範囲内で実施形態あるいはその改良物をカバーすることを意図している。
【符号の説明】
【0028】
10…ロープ径超音波測定治具、12…治具本体、13…蓋体、14…第1ロープ溝、15…第2ロープ溝、20…メインロープ、22…超音波センサ、24a~24h…ストランド、30…タブレット端末、
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7