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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-09
(45)【発行日】2022-03-17
(54)【発明の名称】シリコン基板を活性化する方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 18/18 20060101AFI20220310BHJP
   C23C 18/16 20060101ALI20220310BHJP
   C23C 28/00 20060101ALI20220310BHJP
   C23C 28/04 20060101ALI20220310BHJP
   C23C 18/34 20060101ALI20220310BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20220310BHJP
   H01L 21/288 20060101ALI20220310BHJP
【FI】
C23C18/18
C23C18/16 B
C23C28/00 D
C23C28/04
C23C18/34
H01L21/28 301R
H01L21/288 E
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020045263
(22)【出願日】2020-03-16
(62)【分割の表示】P 2017549294の分割
【原出願日】2016-03-18
(65)【公開番号】P2020100901
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2020-04-06
(31)【優先権主張番号】15160122.6
(32)【優先日】2015-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511188635
【氏名又は名称】アトテック ドイチェランド ゲーエムベーハー ウント コ カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・ズーヘントルンク
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・シュヴァルツ
【審査官】▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-510090(JP,A)
【文献】特開2013-151758(JP,A)
【文献】特開2002-317274(JP,A)
【文献】特開2006-009130(JP,A)
【文献】特開2006-057167(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 18/18
C23C 18/16
C23C 28/00
C23C 28/04
C23C 18/34
H01L 21/28
H01L 21/768
H01L 21/288
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン基板を活性化するための活性化組成物であって、パラジウムイオン源及びフッ化物イオン源を含む水溶液であり、前記水溶液が、式(I)及び(II)の芳香族酸から選択される少なくとも2種の芳香族酸を含むことを特徴とする、活性化組成物。
【化1】
[式中、R1~R14は、互いに独立して、水素、アルキル、アリール、ハロゲン化物、アミノ、スルホン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基、ニトロ及びヒドロキシルからなる群から選択され、
但し、R1~R14の少なくとも1つは、スルホン酸基、カルボン酸基又はホスホン酸基であり、
前記活性化組成物における少なくとも2種の芳香族酸のうち少なくとも1種の芳香族酸は、スルホン酸基を含み、かつ、
少なくとも1つのスルホン酸基を含む前記芳香族スルホン酸において、残りのR1~R14の少なくとも1つが、ヒドロキシル及び/又はアミノであることを条件とする。]
【請求項2】
前記少なくとも2種の芳香族酸が、安息香酸、1,2-ベンゼンジカルボン酸(フタル酸)、1,3-ベンゼンジカルボン酸(イソフタル酸)、1,4-ベンゼンジカルボン酸(テレフタル酸)、1,2,3-ベンゼントリカルボン酸(ヘミメリット酸)、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸(トリメシン酸)、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸(ピロメリット酸)、1,2,3,4,5-ベンゼンペンタカルボン酸、1,2,3,4,5,6-ベンゼンヘキサカルボン酸(メリット酸)、2-ニトロ安息香酸、3-ニトロ安息香酸、4-ニトロ安息香酸、2,5-ジニトロ安息香酸、2,6-ジニトロ安息香酸、3,5-ジニトロ安息香酸、2,4-ジニトロ安息香酸、3.4-ジニトロ安息香酸、2-アミノ安息香酸、3-アミノ安息香酸、4-アミノ安息香酸、3,4-ジアミノ安息香酸、3,5-ジアミノ安息香酸、2,3-ジアミノ安息香酸、2,4-ジアミノ安息香酸、サリチル酸、p-トルエンスルホン酸、1-ナフトエ酸、2-ナフトエ酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2-ナフタレンスルホン酸、5-アミノ-1-ナフタレンスルホン酸、5-アミノ-2-ナフタレンスルホン酸、7-アミノ-4-ヒドロキシ-2-ナフタレンスルホン酸及びフェニルホスホン酸からなる群から選択される、請求項1に記載の活性化組成物。
【請求項3】
活性化組成物中における前記少なくとも2種の芳香族酸の濃度が、0.1~1000mg/Lの範囲である、請求項1又は2に記載の活性化組成物。
【請求項4】
活性化組成物中における前記少なくとも2種の芳香族酸の濃度が、1~750mg/Lの範囲である、請求項1から3のいずれか一項に記載の活性化組成物。
【請求項5】
メタンスルホン酸、並びに/又は硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、臭化水素酸、ヨウ化水素、過塩素酸、王水、次亜塩素酸、ヨウ素酸及び亜硝酸からなる群から選択される鉱酸を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の活性化組成物。
【請求項6】
少なくとも1つのシリコン基板を活性化するための方法であって、
(i)少なくとも1つのシリコン基板を準備する工程、
(ii)請求項1から5のいずれか一項に記載の活性化組成物を用いて、前記少なくとも1つのシリコン基板の表面の少なくとも一部を活性化する工程
を所与の順序で含む、方法。
【請求項7】
前記シリコン基板が、酸化ケイ素、ポリシリコン、p-ドープポリシリコン、n-ドープポリシリコン、窒化ケイ素及びオキシ窒化ケイ素で作製された表面を含むことを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
工程(ii)の後に、更なる工程
(iii)活性化された前記シリコン基板上に、金属又は金属合金を無電解めっきする工程
を含むことを特徴とする、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
めっきされる前記金属が、銅、コバルト、ニッケル、銅合金、コバルト合金及びニッケル合金から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
工程(iii)の後に、
(iv)シリコン基板を熱処理し、
それによって金属シリサイドを形成する工程
を更に含むことを特徴とする、請求項8又は9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池及び電子デバイスの製造に関し、特に、無電解メタライゼーションの前にシリコン基板を活性化する方法、並びにトランジスタ(MOS、CMOS)、メモリースティック、MSカード及びSDカードにおいて使用することができるシリサイド相互接続の形成に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、シリサイド相互接続は、適切なシリコン基板上へのニッケル等の金属の無電解めっきと、それに続いて熱処理して金属シリサイドを形成することによって形成される。この熱処理は、通常、高速熱アニーリング(RTA)と呼ばれている。典型的には、この熱処理は、基板を300~750℃の範囲の高温に供することが必要であり、それによって、金属シリサイドの形成の際にシリコン基板に金属が拡散する。シリコン基板上に金属をめっきするには、シリコン基板を活性化することが必要である。特にp-ドープポリシリコンの場合にあてはまる。n-ドープ基板は、強アルカリ無電解ニッケルめっき浴を用いて直接めっきすることができる。しかしながら、強アルカリ性媒体は、ソルダーレジスト等の半導体の製造において使用される基板に損傷を与えることがある。そのため、強アルカリめっき浴の使用は、当技術分野において望ましくない。したがって、GB976,656に開示されているように、パラジウムイオン、及びフッ化水素酸又は他のフッ素化物イオン源を含む組成物を用いてシリコン基板を活性化することは、慣用的な技法である。この種類の活性化のための可能な機構は、US4,297,393に開示されている。
【0003】
US6,406,743B1は、ポリシリコン相互接続におけるニッケルシリサイドの形成に関する。ここで開示された方法は、ニッケル又はニッケル合金のめっきの前に、パラジウム塩、並びにポリシリコンのための活性化組成物として、高濃度のフッ化水素酸及び酢酸を含有する溶液の使用を教示している。そのような濃フッ化水素酸溶液の使用に伴う高い毒性にもかかわらず、そのような組成物を使用すると、非常に粗いパラジウムシードが得られる結果になる。そのような粗いパラジウムシード上に均一なニッケルシリサイド被覆をもたらすためには、その上に厚いニッケルめっきを設ける必要があり、これが今度は現代の半導体技術において使用するには大きすぎる構造をもたらす(例1及び2を参照)。
【0004】
US5,753,304は、アルミニウム表面に対して特に有用な活性化溶液を報告している。前記活性化溶液は、とりわけ、パラジウム塩、アルカリ金属フッ化物又はフッ化水素、及び錯化剤としてカルボン酸を含む。前記カルボン酸は、約10~100ml/lの活性化溶液の量で使用される。
【0005】
US2005/0161338A1は、パラジウム源及び少なくとも1種の酸を含む水溶液を用いて、シリコン表面を活性化する方法を開示している。この開示における有用な酸は、硫酸、硝酸及び塩酸のような鉱酸、又はメタン硫酸等の有機硫酸、若しくはパラトルエンスルホン酸等の芳香族スルホン酸等の種々のものである。しかしながら、1種の脂肪族酸又は芳香族酸の使用では、処理された表面の被覆が非常に不均質なものとなる(例2~4を参照)。
【0006】
WO2014/128420は、半導体基板を活性化するための、アニオン性又は非イオン性界面活性剤、金イオン、及びフッ化物イオンを含む組成物の使用を開示している。界面活性剤の使用は、結果を改善し、より薄いニッケル層の形成を可能にする。この開示によれば、パラジウム及びフッ化物イオンを含有する組成物は、基板上及び基板への次のニッケル層の不均一なめっき及び拡散をもたらす(2、14及び15頁、並びに表1のエントリー1)。金イオンの使用は、コスト等のいくつかの理由から、電子デバイスの製造において望ましくない。
【0007】
これらの方法は、シリコン基板の活性化及びそれに続くニッケルシリサイドの形成のための方法を提供することができるが、それらは、現代の半導体製造の要件を満たしていない。使用される貴金属のシード層は粗すぎ、シリコン基板の表面上の個々のシードの分散は十分に均一ではなく、その結果、非常に厚いニッケル層を基板上にめっきしなければならない。更にまた、貴金属の分散が粗すぎると、個々の貴金属の粒子もより大きくなり、一般的に貴金属の価格が高いためにコストの上昇をもたらす。更により重要なことには、シリコン基板上の金属又は金属層は、非常に薄く、高さが均一であることが必要である。そのため、それらを平らにし滑らかにすることが必要である。そのための必要条件は、下層のパラジウムシード層が、非常に均一であり、大きな凝集粒子が実質的にないことである。パラジウムシードが、その上に形成される所望の金属又は金属合金層と同程度の大きさである(又は更に大きい)場合、特に不利である。そうでなければ、その上に形成される金属又は金属合金層がそれらの大きな粒子上に形成され、特に、5、10、20又は50nmの範囲の金属又は金属合金層が形成される場合には、非常に粗い(谷及び山のような構造を与える)表面が形成され、研磨工程が必要になる。これは、進行中の小型化及びコスト、並びに半導体製造業界における環境意識とは両立しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】GB976,656
【文献】US4,297,393
【文献】US6,406,743B1
【文献】US5,753,304
【文献】US2005/0161338A1
【文献】WO2014/128420
【文献】WO2013/113810
【文献】WO2013/013941
【文献】EP2671969A1
【文献】欧州特許出願番号EP14198380.9
【文献】US7,220,296
【文献】WO2014/154702
【文献】US4,617,205
【文献】US2008/0223253
【文献】WO2013/135396
【文献】US2012/0213914A1
【非特許文献】
【0009】
【文献】G.O.Mallory、J.B.Hajdu、Electroless Plating:Fundamentals And Applications、改版版、American Electroplaters and Surface Finishers Society、289~295頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的は、上記の欠点を克服し、活性化組成物を提供すること、及びシリコン基板上に優れた表面被覆率で非常に薄いパラジウムシード層を形成することを特に可能にする、その使用のための方法を提供することである。
【0011】
したがって、更なる本発明の目的は、無電解メタライゼーションに使用することが可能な、シリコン基板上に均一に被覆されたパラジウムシード層を有するシリコン基板を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、金属シリサイド相互接続の形成方法、特に、ニッケルシリサイド相互接続の形成方法を提供することであり、これは、半導体業界における今日の小型化の要求に応じるものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
これらの目的は、本発明の活性化組成物を使用することによって解決される。シリコン基板を活性化するための本発明の活性化組成物は、パラジウムイオン源及びフッ化物イオン源を含む水溶液であり、前記水溶液は、芳香族カルボン酸、芳香族スルホン酸、芳香族スルフィン酸、芳香族ホスホン酸及び芳香族ホスフィン酸からなる群から選択される(互いに独立した)少なくとも2種の芳香族酸を含むことを特徴とする。
【0014】
これらの目的は、少なくとも1つのシリコン基板を活性化するための本発明の方法であって、
(i)少なくとも1つのシリコン基板を準備する工程、
(ii)パラジウムイオン源、フッ化物イオン源、並びに芳香族カルボン酸、芳香族スルホン酸、芳香族スルフィン酸、芳香族ホスホン酸及び芳香族ホスフィン酸からなる群から選択される(互いに独立した)少なくとも2種の芳香族酸を含む水溶液を、活性化組成物として用いて、前記少なくとも1つのシリコン基板の表面の少なくとも一部を活性化する工程
を所与の順序で含む、方法によって、更に解決される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、フッ化水素酸及びパラジウムイオンからなる比較の水性活性化組成物で処理されたn-ドープシリコン基板のSEM写真である(例1に相当)。
図2図2は、フッ化水素酸、酢酸及びパラジウムイオンからなる比較の水性活性化組成物で処理されたn-ドープシリコン基板のSEM写真である(例2に相当)。
図3図3は、フッ化水素酸、パラジウムイオン、及び1種又は複数種の芳香族酸を含有する本発明の水性活性化組成物で処理されたポリシリコン基板のSEM写真である。図3は、例4aに関する。
図4図4は、フッ化水素酸、パラジウムイオン、及び1種又は複数種の芳香族酸を含有する本発明の水性活性化組成物で処理されたポリシリコン基板のSEM写真である。図4は、例4bに関する。
図5図5は、フッ化水素酸、パラジウムイオン、及び1種又は複数種の芳香族酸を含有する本発明の水性活性化組成物で処理されたポリシリコン基板のSEM写真である。図5は、例4cに関する。
図6図6は、フッ化水素酸、パラジウムイオン、及び1種又は複数種の芳香族酸を含有する本発明の水性活性化組成物で処理されたポリシリコン基板のSEM写真である。図6は、例4dに関する。
図7図7は、フッ化水素酸、パラジウムイオン、及び1種又は複数種の芳香族酸を含有する本発明の水性活性化組成物で処理されたポリシリコン基板のSEM写真である。図7は、例4eに関する。
図8図8は、本発明の活性化溶液で処理され、次に無電解ニッケルめっき浴で処理されたn-ドープポリシリコン基板のAFM写真である(例5aに関する)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
シリコン基板を活性化するための本発明の活性化組成物は、パラジウムイオン源、フッ化物イオン源、並びに芳香族カルボン酸、芳香族スルホン酸、芳香族スルフィン酸、芳香族ホスホン酸及び芳香族ホスフィン酸からなる群から選択される少なくとも2種の芳香族酸を含む、水溶液である。本発明の好ましい実施形態において、少なくとも2種の芳香族酸は、芳香族カルボン酸、芳香族スルホン酸及び芳香族ホスホン酸からなる群から選択される。
【0017】
芳香族カルボン酸は、本発明の文脈において、少なくとも1つのカルボン酸基(-CO2H)を含む芳香族化合物であると理解されるべきである。同様に、芳香族スルホン酸は、少なくとも1つのスルホン酸基(-SO3H)を含む芳香族化合物である。芳香族スルフィン酸は、少なくとも1つのスルフィン酸基(-SO2H)を含む芳香族化合物であり、芳香族ホスホン酸は、少なくとも1つのホスホン酸基(-PO3H2)を含む芳香族化合物であり、芳香族ホスフィン酸は、少なくとも1つのホスフィン酸基(-PO2H2)を含む芳香族化合物である。
【0018】
芳香族化合物は、少なくとも1つの環状の炭化水素基、例えば、フェニル又はナフチルを更に含み、個々の環炭素原子は、N、O及び/又はSによって置き換えられてもよく、例えば、ベンゾチアゾリル又はピリジニル(例えば、ニコチン酸と呼ばれることの多い3-ピリジンカルボン酸)であってもよい。更にまた、芳香族化合物に結合する個々の水素原子は、それぞれの場合において、官能基、例えば、アミノ、ヒドロキシル、ニトロ、アルキル、アリール、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物等のハロゲン化物、カルボニル、前述の酸基のいずれかから誘導されたエステル等によって置き換えられていてもよい。芳香族化合物はまた、十分に高い濃度で水溶性を保証するのに十分な官能基がそこに結合している限り、フェナントレン又はアントラセンのような2つ以上の縮合環からなる少なくとも1つの炭化水素基を含んでいてもよい。有機基としての「ヒドロキシ」及び「ヒドロキシル」という用語は、本明細書において互換的に使用される。基は、当技術分野において、残基又は部分と称されることがある。
【0019】
本明細書及び本特許請求の範囲において「アルキル」という用語が使用される限りにおいて、それは一般化学式CmH2m+1を有する炭化水素基を指し、mは1~約50の整数である。本発明のアルキル基は直鎖状及び/又は分枝状であってもよく、それらは飽和及び/又は不飽和であってもよい。アルキル基が不飽和である場合、対応する一般化学式は、対応して調整されなければならない。好ましくは、mは、1~12の範囲、より好ましくは1~8の範囲、更により好ましくは1~4の範囲である。例えば、C1~C8アルキルとしては、中でも、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、tert-ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル及びオクチルが挙げられる。そのようなアルキル基の1つ又は複数の水素原子はまた、官能基、例えば、アミノ、ヒドロキシ、チオール、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物等のハロゲン化物、カルボニル、カルボキシル、カルボン酸エステル、ホスホネート等によって置き換えられていてもよい。
【0020】
酸基のうち少なくとも1つは、好ましくは、炭素-炭素、炭素-硫黄又は炭素-リンの単結合を介して芳香族化合物のアリール基に直接結合している。より好ましくは、全ての酸基がアリール基に直接結合している。
【0021】
本発明の好ましい実施形態において、少なくとも2種の芳香族酸は、式(I)及び(II)
【0022】
【化1】
【0023】
[式中、R1~R14は、互いに独立して、水素(-H)、アルキル、アリール、塩化物(-Cl)等のハロゲン化物、アミノ(-NH2)、カルボン酸基(-CO2H)、スルホン酸基(-SO3H)、スルフィン酸基(-SO2H)、ホスホン酸基(-PO3H2)、ホスフィン酸基(-PO2H2)、ニトロ(-NO2)及びヒドロキシル(-OH)からなる群から選択され、但し、R1~R14の少なくとも1つは、カルボン酸基(-CO2H)、スルホン酸基(-SO3H)、スルフィン酸基(-SO2H)、ホスホン酸基(-PO3H2)又はホスフィン酸基(-PO2H2)であり、好ましくは、スルホン酸基、カルボン酸基又はホスホン酸基であることを条件とする]の芳香族酸から(互いに独立して)選択される。ここで、互いに独立してとは、式(I)又は(II)の少なくとも2種の芳香族酸が、式(I)から両方、式(II)から両方、又は式(I)から1種及び式(II)から1種を選択することができることを意味する。
【0024】
カルボン酸基(-CO2H)、スルホン酸基(-SO3H)、スルフィン酸基(-SO2H)、ホスホン酸基(-PO3H2)及びホスフィン酸基(-PO2H2)は、本明細書において、「酸基」とまとめる。
【0025】
好ましくは、1種の酸基のみが単一の芳香族酸に含まれる。これは、例えば、芳香族酸が1つ又は複数のカルボン酸基を含む場合、好ましくは、スルホン酸基、スルフィン酸基、ホスホン酸基及びホスフィン酸基のような他の酸基を含まないことを意味する。
【0026】
式(I)~(II)の芳香族酸は、通常、本発明の活性化組成物に使用される水に対して十分に可溶性である。芳香族酸が共溶媒に十分に可溶性でない場合、当業者に公知の界面活性剤を使用して、活性化組成物中における芳香族酸の溶解度を高めてもよい。
【0027】
本発明の更により好ましい実施形態において、活性化組成物における少なくとも2種の芳香族酸のうち少なくとも1種の芳香族酸は、スルホン酸基を含む。本発明の第2の更により好ましい実施形態において、活性化組成物は、カルボン酸基を含む、少なくとも2種の芳香族酸のうち少なくとも1種の芳香族酸を含む。本発明の第3の更により好ましい実施形態において、活性化組成物は、スルホン酸基を含む少なくとも1種の芳香族酸、及びカルボン酸基を含む少なくとも1種の芳香族酸を含有する。
【0028】
結果として少なくとも1つのスルホン酸基を含む、式(I)又は(II)の芳香族スルホン酸において、残りのR1~R14の少なくとも1つが、ヒドロキシル及び/又はアミノであることが好ましい。残りのR1~R14の全てが、互いに独立して、水素、アミノ、及びヒドロキシルから選択されることがより好ましい。活性化組成物におけるそのような酸は、そのような処理されたシリコン基板の表面被覆を改善すると思われる。
【0029】
別の更により好ましい実施形態において、本発明の活性化組成物において使用される少なくとも2種の芳香族酸は、安息香酸、1,2-ベンゼンジカルボン酸(フタル酸)、1,3-ベンゼンジカルボン酸(イソフタル酸)、1,4-ベンゼンジカルボン酸(テレフタル酸)、1,2,3-ベンゼントリカルボン酸(ヘミメリット酸)、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸(トリメシン酸)、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸(ピロメリット酸)、1,2,3,4,5-ベンゼンペンタカルボン酸、1,2,3,4,5,6-ベンゼンヘキサカルボン酸(メリット酸)、2-ニトロ安息香酸、3-ニトロ安息香酸、4-ニトロ安息香酸、2,5-ジニトロ安息香酸、2,6-ジニトロ安息香酸、3,5-ジニトロ安息香酸、2,4-ジニトロ安息香酸、3,4-ジニトロ安息香酸、2-アミノ安息香酸、3-アミノ安息香酸、4-アミノ安息香酸、3,4-ジアミノ安息香酸、3,5-ジアミノ安息香酸、2,3-ジアミノ安息香酸、2,4-ジアミノ安息香酸、サリチル酸、p-トルエンスルホン酸、1-ナフトエ酸、2-ナフトエ酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2-ナフタレンスルホン酸、5-アミノ-1-ナフタレンスルホン酸、5-アミノ-2-ナフタレンスルホン酸、7-アミノ-4-ヒドロキシ-2-ナフタレンスルホン酸、及びフェニルホスホン酸からなる群から選択される。
【0030】
芳香族酸は、遊離酸として、アルカリ塩又はアンモニウム塩等の各塩として、それらの水和物として、又は前述の任意の適切な組み合わせとして、活性化組成物に添加されてもよい。それらはまた、該当する場合、無水物として添加されてもよい(例えば、フタル酸無水物は水性媒体中でフタル酸を形成可能である)。
【0031】
本発明の活性化組成物における2種以上の芳香族酸の使用は、有利には、このようにして処理されたシリコン基板の表面上に微細なパラジウム粒子(シードとも呼ばれる)を形成することを可能にする。2種以上の芳香族酸の添加はまた、シリコン基板の表面上に、このようにしてめっきされたパラジウム粒子の均一性の改善をもたらす。1種の芳香族酸のみ、又は芳香族酸なしでは、パラジウム粒子はより粗く、シリコン基板の表面上への分散の均一性が低い(比較例を参照)。
【0032】
本発明者らは、活性化組成物において、2種以上の芳香族酸を使用すると、シリコン基板の表面被覆がより均一で、個々の粒子がより小さいことを見出した。
【0033】
活性化組成物中における芳香族酸の濃度(これは、本文脈において、全ての使用される芳香族酸の総濃度を意味する)は、好ましくは0.1~1000mg/L、より好ましくは1~750mg/L、更により好ましくは10又は40~500mg/Lの範囲である。前記範囲外の濃度では、いくつかの場合において、得られる本発明の有利な効果(例えば、パラジウムシードを用いて処理された表面の均一な被覆)が低減する。また、いくつかの芳香族酸による溶解性の問題が生じ得る。
【0034】
本発明の活性化組成物は、水溶液である。「水溶液」という用語は、溶液中の溶媒である支配的な液体媒体が水であることを意味する。例えば、水と混和するアルコール及び他の極性有機液体のような、水と混和する更なる液体を添加してもよい。好ましくは、活性化組成物は、溶媒として水のみを含む。
【0035】
本発明の活性化組成物は、パラジウムイオン源を含む。パラジウムイオン源は、任意の水溶性のパラジウム塩又はパラジウム錯体であってもよい。好ましくは、パラジウムイオン源は、塩化パラジウム、硫酸パラジウム、硫酸錯体としての硫酸パラジウム、硝酸パラジウム、及び酢酸パラジウムからなる群から選択され、より好ましくは、塩化パラジウム、硫酸パラジウム、硝酸パラジウム、及び酢酸パラジウムからなる群から選択される。
【0036】
本発明の活性化組成物中におけるパラジウムイオンの濃度は、好ましくは0.001~1g/L、より好ましくは0.005~0.5g/L、更により好ましくは0.05~0.25g/Lの範囲である。
【0037】
本発明の活性化組成物は、フッ化物イオン源を更に含む。このフッ化物イオン源は、任意の水溶性のフッ化物塩、又は任意の水溶性のフッ化物錯体であってもよい。好ましくは、フッ化物イオン源は、フッ化水素酸、フッ化アンモニウム、並びに、フッ化カリウム、フッ化ナトリウム及びフッ化リチウム等のフッ化アルカリから選択される。
【0038】
活性化組成物中に存在するフッ化物イオンの濃度は、好ましくは0.075~4重量%、より好ましくは0.1~2重量%、更により好ましくは0.15~1重量%の範囲である。より高い濃度のフッ化物イオンが、本発明の活性化組成物で処理される基板からのケイ素原子の可溶化の向上をもたらすことは、当技術分野において公知である。したがって、非常に薄くて壊れやすいシリコン基板を処理するためには、本発明の活性化組成物中でより低い濃度のフッ化物イオンを使用することが有利である。
【0039】
本発明の活性化組成物は、好ましくは、pHが7以下、より好ましくは3未満、更により好ましくは0~2.5である。
【0040】
本発明の活性化組成物は、任意選択で、メタンスルホン酸、並びに/又は硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、メタンスルホン酸、臭化水素酸、ヨウ化水素、過塩素酸、王水、次亜塩素酸(hydrochlorous acid)、ヨウ素酸、及び亜硝酸からなる群から選択される鉱酸を含む。好ましくは、任意選択の鉱酸は、硫酸、塩酸及び硝酸から選択される。任意選択の鉱酸(又はメタンスルホン酸)の濃度は、0.01~20重量%、好ましくは0.1~10重量%の範囲である。
【0041】
本発明の活性化組成物は、任意選択で、分子状酸素、硝酸カリウム等の硝酸塩源、及び過酸化水素からなる群から選択される酸化剤を含む。分子状酸素は、活性化組成物にガス供給として添加されてもよい。酸化剤、メタンスルホン酸及び/又は鉱酸の任意選択の添加が、活性化プロセスの促進をもたらし得ることは、当技術分野において公知である。しかしながら、これは、常に望ましいわけではない。
【0042】
本発明の活性化組成物は、任意選択で、カチオン性、非イオン性及びアニオン性界面活性剤からなる群から選択される界面活性剤(当技術分野において湿潤剤とも呼ばれる)を含む。
【0043】
本発明の活性化組成物は、全ての成分を、水性の液体媒体、好ましくは水に溶解することによって調製してもよい。
【0044】
少なくとも1つのシリコン基板を活性化するための本発明の方法は、
(i)少なくとも1つのシリコン基板を準備する工程、
(ii)本発明の活性化組成物を用いて、前記少なくとも1つのシリコン基板の表面の少なくとも一部を活性化する工程
を所与の順序で含む。
【0045】
本発明の方法において使用される少なくとも1つのシリコン基板は、ポリシリコン(p-ドープポリシリコン及びn-ドープポリシリコン等のドープされたポリシリコンを含む)及び単結晶シリコン等のシリコン、酸化ケイ素、窒化ケイ素及びオキシ窒化ケイ素で作製された(1つ又は複数の)表面を含む。シリコン基板は、任意の前述の材料又はそれらの組み合わせでそれらの全体を作製してもよく、或いは、それらは、1つ又は複数の前述の材料で作製された表面のみを含んでいてもよい。
【0046】
ポリシリコンのドープは、通常、ヒ素又はリン等のドナーを用いて行うとn-ドープポリシリコンをもたらし、ホウ素又はアルミニウム等のアクセプターを用いて行うとp-ドープポリシリコンを与える。通常、これらのドナー/アクセプターは、10-4~10-9重量%の間の含有量で使用される。非常に多くの量のドーパント(通常、10-3~10-4重量%)を使用すると、n-及びp-ドープポリシリコンが得られる。n-及びp-ドープポリシリコンは、本発明の文脈において、n-及びp-ドープポリシリコンとしても理解される。上記と同様の方法で、酸化ケイ素、窒化ケイ素及びオキシ窒化ケイ素をドープしてもよい。
【0047】
好ましくは、ポリシリコン、p-ドープポリシリコン及びn-ドープポリシリコンが使用され、より好ましくはp-ドープポリシリコンが本発明の方法において使用される。
【0048】
前記少なくとも1つのシリコン基板の表面の少なくとも一部の活性化を考慮すると、基板又は前記基板の表面が、本発明の活性化組成物と、当技術分野において公知の手段によって接触し(工程(ii)において)、それによって、前記少なくとも1つのシリコン基板の表面が活性化される。シリコン基板の表面及び活性化組成物の間の接触としては、とりわけ、組成物へのシリコン基板の浸漬、又はワイピング、噴霧、或いは他の方法で前記表面上へ活性化組成物をもたらすことが挙げられる。
【0049】
本発明の活性化組成物とのシリコン基板の接触の際に、薄く均一に分散したパラジウムシード層が、シリコン基板の表面上に形成される。この工程は、当技術分野において活性化と呼ばれる。そのため、そのように処理された基板は、「活性化された」と呼ばれる。
【0050】
基板は、活性化組成物を用いて、1秒間~30分間、好ましくは30秒間~10分間、より好ましくは40秒間~5分間、最も好ましくは45秒間~2分間活性化される。活性化される基板の所望の性質に応じて、上記表題の範囲外の接触時間で、適用してもよい。
【0051】
活性化溶液は、シリコン基板と接触する時、好ましくは10~90℃、より好ましくは、15~50℃の範囲の温度である。
【0052】
本発明の文脈において、シリコン基材上に、多くのドープ領域(例えば、ソース及びドレイン、S/D)、絶縁層(例えば、ドープ及び非ドープ酸化ケイ素)及び導電層(例えば、ドープ及び非ドープポリシリコン、金属)を含む半導体基板を使用できることが理解される。本方法は、太陽電池の製造において使用される単結晶又は多結晶シリコンに適用することもできる。
【0053】
シリコン基板を活性化するための本発明の方法は、工程(ii)の後に、更なる工程
(iii)活性化されたシリコン基板上に、金属又は金属合金を無電解めっきする工程
を含んでいてもよい。
【0054】
無電解めっきは、外部からの電子供給の助けがない、金属の連続膜の制御された自己触媒的なめっきである。無電解金属めっき浴の主要な成分は、金属イオン源、錯化剤、還元剤、及び任意の成分として、安定化剤、結晶成長抑制剤及びpH調整剤(酸、塩基、緩衝液)である。錯化剤(当技術分野においてキレート剤とも呼ばれる)は、めっきされる金属をキレート化し、金属が溶液から沈殿する(即ち、水酸化物等として)ことを防ぐために使用される。キレート化した金属は、金属を、金属イオンをそれらの金属の形態に変換する還元剤に使用可能にする。更なる金属めっきの形態は、浸漬めっきである。浸漬めっきは、外部からの電子供給の助けがなく、かつ化学還元剤のない、別の金属めっきである。メカニズムは、浸漬めっき溶液中に存在する金属イオンの下層の基板からの金属の置換に依拠している。本発明の文脈において、無電解めっきは、化学的還元剤(本明細書において「還元剤」という)の助けにより、自己触媒的にめっきすることであると、主に理解されるべきである。
【0055】
無電解金属めっき浴の性質、及びそのような無電解めっき浴を使用した場合に形成される金属又は金属合金めっきの性質を調整するために、無電解めっき浴及び形成される金属又は金属合金めっきの両方の性質を改善するために、無電解めっき浴に添加剤が添加される。一般に、無電解金属めっき浴は、多くの金属及び金属合金に対して、当技術分野において公知である
【0056】
金属又は金属合金は、工程(iii)において、活性化されたシリコン基板上にめっきされる。工程(iii)においてめっきされる金属又は金属合金は、好ましくは、銅、コバルト、ニッケル、銅合金、コバルト合金及びニッケル合金から選択される。めっきされる金属がニッケル又はその合金であることが、本発明のより好ましい実施形態であり、その理由は、ニッケルシリサイドは、チップ作製におけるタンタル又はチタンシリサイドの適切な代替物であるからである。ニッケル又はニッケル合金をめっき可能な無電解金属めっき浴は、本明細書において、無電解ニッケルめっき浴という。
【0057】
無電解ニッケルめっき浴は、少なくとも1種のニッケルイオン源を含有し、これは、任意の水溶性ニッケル塩又は他の水溶性ニッケル化合物であってよい。好ましいニッケルイオン源は、塩化ニッケル、硫酸ニッケル、酢酸ニッケル、メタンスルホン酸ニッケル及び炭酸ニッケルを含む群から選択される。無電解ニッケルめっき浴中のニッケルイオンの濃度は、好ましくは0.1~60g/l(0.0017~1.022mol/l)、より好ましくは2~50g/l(0.034~0.852mol/l)、更により好ましくは4~10g/l(0.068~0.170mol/l)の範囲である。
【0058】
無電解ニッケルめっき浴は、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム及び次亜リン酸アンモニウム等の次亜リン酸塩化合物、ジメチルアミノボラン(DMAB)のようなアミノボラン、NaBH4、KBH4のような水素化ホウ素アルカリ等のホウ素系還元剤、ホルムアルデヒド、ヒドラジン及びこれらの混合物から選択される、還元剤を更に含有する。無電解ニッケルめっき浴中の還元剤の濃度(この濃度は、これに関連して、還元剤の総量を意味する)は、典型的には0.01~1.5mol/lの範囲である。
【0059】
無電解ニッケルめっき浴のpH値は、好ましくは3.5~8.5、より好ましくは4~6の範囲である。めっき溶液は、H3O+イオンの形成により、その操作中に、より酸性になる傾向があるので、浴に可溶性であり浴に適合性であるアルカリ性物質、例えばナトリウム、カリウム又はアンモニウムの、水酸化物、炭酸塩及び重炭酸塩を添加することによって、pHを周期的又は連続的に調整してもよい。めっき溶液の操作pHの安定性は、酢酸、プロピオン酸、ホウ酸等の様々な緩衝液化合物等を30g/lまでの量、より好ましくは2~10g/lの量で添加することによって改善することができる。
【0060】
本発明の1つの実施形態において、カルボン酸、ポリアミン及びスルホン酸又はこれらの混合物が、錯化剤として選択される。有用なカルボン酸としては、モノ-、ジ-、トリ-及びテトラ-カルボン酸が挙げられる。カルボン酸は、ヒドロキシ基又はアミノ基等の様々な置換基で置換されていてもよく、酸は、無電解ニッケルめっき浴に、それらのナトリウム塩、カリウム塩又はアンモニウム塩として導入されてもよい。酢酸等のいくつかの錯化剤は、例えば、緩衝剤としても働くことがあり、そのような添加剤成分の適切な濃度は、それらの二重の機能性を考慮して、任意のめっき溶液に対して最適化することができる。
【0061】
錯化剤として有用なそのようなカルボン酸の例としては、WO2013/113810に開示されたようなイミノコハク酸、イミノジコハク酸、これらの誘導体及びこれらの塩;酢酸、ヒドロキシ酢酸、アミノ酢酸、2-アミノプロパン酸、2-ヒドロキシプロパン酸(乳酸)等のモノカルボン酸;コハク酸、アミノコハク酸、ヒドロキシコハク酸、プロパン二酸、ヒドロキシブタン二酸、酒石酸、リンゴ酸等のジカルボン酸;2-ヒドロキシ-1,2,3-プロパントリカルボン酸等のトリカルボン酸;及びエチレンジアミン四酢酸(EDTA)等のテトラカルボン酸が挙げられる。最も好ましい錯化剤は、モノカルボン酸及びジカルボン酸からなる群から選択される。1つの実施形態において、上記錯化剤の2種以上の混合物が利用される。無電解ニッケルめっき浴中に存在する錯化剤の濃度、又は2種以上の錯化剤が使用される場合における錯化剤の濃度は、全ての錯化剤を合わせた濃度が、好ましくは0.01~2.5mol/l、より好ましくは0.05~1.0mol/lの範囲である。
【0062】
無電解ニッケルめっき浴は、任意選択で、少なくとも1種の安定化剤を含有する。そのような安定化剤は、十分な浴の寿命、適切なめっき速度を提供するため、めっきされたニッケル合金中のリン又はホウ素含有量を制御するために必要である。適切な任意の安定化剤は、カドミウムイオン、タリウムイオン、ビスマスイオン、鉛イオン、及びアンチモンイオン等の重金属イオン、ヨウ素及びヨウ素酸塩等のヨウ素含有化合物、チオシアネート、チオウレア、及び3-メルカプトプロパンスルホン酸のようなメルカプトアルカンスルホン酸、又はWO2013/013941に開示されたようなそれらから誘導されたそれぞれのジスルフィド等の硫黄含有化合物、並びにマレイン酸、及びイタコン酸、EP2671969A1によって教示されたもののような適切な置換アルキン等の不飽和有機酸であるが、限定されない。WO2013/113810に教示されているような、ビスマスイオン、並びにメルカプト安息香酸、メルカプトカルボン酸及び/又はメルカプトスルホン酸等の安定化剤の組み合わせを使用することも本発明の範囲内である。無電解ニッケルめっき浴は、有利には、めっき速度を低下させ、めっき浴を安定化させるために、欧州特許出願番号EP14198380.9に開示されているもの等のめっき速度調整剤を含んでいてもよい。無電解ニッケルめっき浴中の少なくとも1種の任意の安定化剤の濃度は、0.1~100mg/l、好ましくは0.5~30mg/lの範囲である。
【0063】
無電解ニッケルめっき浴は、必須ではないが、湿潤剤、界面活性剤、促進剤、光沢剤、結晶成長抑制添加剤等の更なる添加剤を含んでいてもよい。これらの成分は、当技術分野において公知である。
【0064】
次亜リン酸塩化合物をニッケルのための還元剤として使用する場合において、ニッケル及びリンを含有する合金めっきが得られる。前記合金めっき中のリンの量は、とりわけ、無電解ニッケルめっき浴中の次亜リン酸塩及びニッケルイオンの濃度、並びに任意の安定化剤に依存する。好ましくは、前記合金めっき中のリンの量は、5~15重量%の範囲であり、残りはニッケルである。
【0065】
ホウ素系還元剤をニッケルのための還元剤として使用する場合において、ニッケル及びホウ素を含有する合金めっきが得られる。前記合金めっき中のホウ素の量は、とりわけ、無電解ニッケルめっき浴中のホウ素系還元剤及びニッケルイオンの濃度、並びに任意の安定化剤又はpH値に依存する。好ましくは、前記合金めっき中のホウ素の量は、1~10重量%の範囲であり、残りはニッケルである。
【0066】
1つ又は複数のヒドラジン及びホルムアルデヒドをニッケルのための還元剤として使用する場合において、純粋なニッケルめっきが得られる。
【0067】
無電解ニッケルめっき浴は、任意選択で、モリブデンイオン、レニウムイオン又はタングステンイオン等の第2の金属イオン源を含んでいてもよい。これらの第2の金属イオンは、好ましくは、MoO2(OH)2、ReO2(OH)2、WO2(OH)2、Na2MoO4、Na2ReO4及びNa2WO4、並びにこれらのそれぞれの水和物等の水溶性の塩又は化合物として添加されてもよい。
【0068】
無電解ニッケルめっき浴に添加される第2の金属イオンの量は、好ましくは0.01~0.2mol/l、より好ましくは0.05~0.15mol/lの範囲である。無電解ニッケルめっき浴中の第2の金属イオンの量は、めっきされたニッケル合金中の第2の金属の濃度が4~20重量%に到達するのに十分とすることができる。
【0069】
或いは、銅又は銅合金は、工程(iii)において、活性化されたシリコン基板上に、金属又は金属合金としてめっきされてもよい。銅又はその合金は、通常、太陽電池の製造において、シリコン基板上にめっきされる。無電解銅又は銅合金浴は、銅イオン源、還元剤、錯化剤、及び典型的には安定化剤を含む。US7,220,296、WO2014/154702、G.O.Mallory、J.B.Hajdu、Electroless Plating:Fundamentals And Applications、改版版、American Electroplaters and Surface Finishers Society、289~295頁、US4,617,205、US2008/0223253、及び特に欧州特許出願番号EP14198380.9は、それらの全体が参照によって本明細書に組み込まれ、無電解銅又は銅合金のめっきにおいて使用するための、これらの前述の化合物及び他の適切な添加剤(適用可能な濃度及び有用なパラメーターで)を記載している。
【0070】
コバルト及びその合金は、シリコン基板上のバリア層として使用してもよい。そのようなバリア層は、チップの作製において使用される。それらは、例えば、銅線及びシリコン層の間に配置され、シリコン層に銅が移入することを防ぐ。特に、三元のコバルト-タングステン-リン合金、及びコバルト-モリブデン-リン合金を、この目的のために使用することができる。無電解コバルト又はコバルト合金浴は、コバルトイオン源、還元剤、錯化剤、及び典型的には安定化剤を含む。US2005/0161338、WO2013/135396、及び欧州特許出願番号EP14198380.9は、無電解コバルト又はコバルト合金のめっきにおいて使用するための、これらの前述の化合物及び他の更なる適切な添加剤(適用可能な濃度及び有用なパラメーターで)を記載しており、それらの全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0071】
めっきされた金属又は金属合金層は、好ましくは、厚さが、150nm未満、より好ましくは1~50nmの範囲、更により好ましくは2~20nmの範囲である。
【0072】
少なくとも1つのシリコン基板又はその表面の少なくとも一部は、無電解金属めっき浴及び活性化組成物と、噴霧、ワイピング、液浸、浸漬の手段によって、又は他の適切な手段によって接触してもよい。本発明のプロセスにおける工程(iii)による無電解金属めっきは、水平式、オープンリール式、垂直式、垂直コンベヤ式、又は噴霧式のめっき装置で行うことができる。本発明のプロセスを実施するために使用することができる、特に適切なめっき手段は、US2012/0213914A1に開示されている。
【0073】
シリコン基板は、無電解金属めっき浴と、1秒間~30分間、好ましくは30秒間~10分間、より好ましくは40秒間~3分間、最も好ましくは45秒間~3分間、接触させてもよい。シリコン基板及び活性化組成物の接触時間、並びに活性化されたシリコン基板及び無電解金属又は金属合金めっき浴の接触時間は、得られる金属又は金属合金層の厚さに影響を及ぼす。したがって、当業者は、特定の金属又は金属合金層の厚さを達成するために、両方の工程において必要な接触時間を決定することができる。
【0074】
シリコン基板を活性化するための本発明の方法は、工程(iii)の後に、更なる工程
(iv)シリコン基板を熱処理し、
それによって金属シリサイドを形成する工程
を含んでいてもよい。
【0075】
少なくとも1つのシリコン基板は、窒素又はアルゴン等の不活性ガス中、300~750℃の温度で、30~60秒間、熱処理されてもよい。表面に金属又は金属合金層がめっきされたシリコン基板の熱処理の際に、金属はシリコン基板に拡散し、金属シリサイドが形成される。この熱処理は、当技術分野において十分に確立されており、高速熱アニーリング(一般にRTAとして省略される)を呼ばれることがある。US6,406,743B1は、本発明の文脈において使用し得る、様々な熱処理のプロトコールを教示している。
【0076】
熱処理後にシリコン基板の表面上に残った残存金属又は金属合金は、湿式化学エッチング、化学機械平坦化(又は任意の他の適切な手段)によって除去することができ、それによってシリコン基板上に金属シリサイドが残る。金属又は金属合金を除去する手段は当技術分野において公知である。ニッケル又はその合金は、US6,406,743B1に開示されているような2工程のエッチングによって除去することができる。
【0077】
本発明の方法は、すすぎ、洗浄、エッチング及び前処理工程を更に含んでいてもよく、これらの全ては当技術分野で公知である。
【0078】
本発明の方法は、ニッケルシリサイド相互接続等の金属シリサイドで作製された相互接続を形成するために特に適切である。これらの相互接続は、MOSトランジスタ、CMOSトランジスタ、IC基板(VLSI)の製造において、模範的に使用することができる。そのような相互接続等を含有する製品は、メモリースティック(USBスティック)、MSカード、SDカード、電力ダイオード及び電力トランジスタであってもよい。或いは、本発明の方法は、コバルト合金バリア層等のシリコン基板上のバリア層を形成するために使用することができる。太陽電池の製造において使用されるシリコン基板のメタライゼーションにおいて使用されてもよい。
【0079】
本発明の利点は、層の厚さが10nm未満、又は更に5nm未満の、非常に薄く、均一に分散したパラジウムシード層を得ることができることである。これらのパラジウムシード層は、次いで、50nm若しくは25nm、又は更に15nm以下の極薄の金属又は金属合金層、例えばニッケル又はニッケル合金層をその上にめっきすることを可能にする。非常に薄く、均一に分散したパラジウムシード層により、その上に形成された金属又は金属合金層は、更に平らで滑らかである(これは、例えば、原子間力顕微鏡法及びXRFによって、それぞれ測定することができる;例5を参照)。このようにして形成された金属又は金属合金層は、次いで、化学機械平坦化工程の必要性がないか、又は必要性が減少した化学機械平坦化工程のみにより、金属シリサイドに変換することができる。
【0080】
本発明を、以下の非限定的な例を参照することによって説明する。
【実施例
【0081】
基板を、SEM(Zeiss Ultra Plus、SE2検出器、加速電圧3.0kV又は5.0kV、データを個々の図に示す)によって視覚的に分析した。表面被覆率は、オリンパス社のStreamソフトウェアを使用して測定して、測定されたSEM写真を定量化した。
【0082】
金属(合金)めっきの厚さを、XRF装置Fischerscope XDV-SDD(Helmut Fischer社、ドイツ)を使用して、XRFによって各基板の5点で測定した。めっきの層構造を仮定することによって、そのようなXRFデータから層の厚さを計算することができる。
【0083】
表面の滑らかさ(又は粗さ)を、走査型原子間力顕微鏡(Digital Instruments社、7nm未満のチップ半径のNanosensors社製のPointProbe(登録商標)を備えたNanoScope)により、スキャンサイズ:2×2μmで5回、タッピングモードでのスキャンで測定した。平均粗さ(SA)、最大高低差(ST)及びRSAI値(相対的な表面積の増加)を、これらの測定によって得、以下にそれぞれの例を示す。
【0084】
(例1(比較))
n-ドープポリシリコン基板を、0.1g/lのPd2+イオン(PdSO4から)及び1重量%のHFを含有する水溶液に、室温で120秒間浸漬した。表面は、平均表面被覆率が(32.0±1.3)%で、パラジウム粒子によって不均一に被覆された(図1を参照)。
【0085】
(例2(比較))
n-ドープポリシリコン基板を、0.1g/lのPd2+イオン(PdSO4から)、1重量%のHF及び0.5ml/lの氷酢酸を含有する水溶液に、室温で120秒間浸漬した。表面は、平均表面被覆率が(32.0±1.2)%で、パラジウム粒子によって不均一に被覆された(図2を参照)。
【0086】
(例3)
n-ドープポリシリコン基板を、0.1g/lのPd2+イオン(PdSO4から)、及び表Iに示す芳香族酸を更に含む1重量%のHFの水溶液に、室温で120秒間浸漬した。結果及び処理条件も同表に示す。
【0087】
【表1】
【0088】
比較例a、c及びdは、全て、芳香族酸を含有しない比較例1及び2と比較して、パラジウムによるシリコン表面の顕著に改善された表面被覆率を示した。しかしながら、パラ-トルエンスルホン酸を使用する比較例bは、これらの例よりも更に劣る表面被覆率をもたらした。これとは対照的に、本発明例eにおいて2種以上の芳香族酸を使用した場合、表面被覆率はまさっており、ほぼ完全な被覆率であった。この場合において、浸漬時間は多くの比較例より短く、総濃度は比較例の大部分と同じであったことを念頭に置くべきである。したがって、2種以上の芳香族酸の組み合わせは、相乗的にプロセスを促進し、改善された表面被覆率を得ることを可能にする。
【0089】
(例4)
ポリシリコン基板を、0.1g/lのPd2+イオン(PdSO4から)、1重量%のHF、及び以下の表IIに見出し得るようなそれぞれの濃度で、2種以上の芳香族酸をそれぞれ含有する水溶液に、60秒間又は120秒間浸漬した。
【0090】
【表2】
【0091】
例4の活性化溶液は、全て、比較例1及び2と比較して、基板の改善された表面被覆率を示した。SEM写真に示すように個々の粒子は、(比較例1及び2と比較して)大部分はより小さく、基板の表面全体上にむしろより均一に分散していたが、今日の要求にはまだ十分ではなかった。活性化組成物中において2種以上の芳香族酸を使用する場合のみ、表面上に、更により均一な、被覆及び粒子の分散(表IIのエントリーd及びe)が得られた。本発明例4d及び4eから得られた個々の粒子は、比較例4a~4cと比較して小さく、本発明例から得られた表面は、より大きな凝集粒子を実質的に含まなかったことも分かる。
【0092】
したがって、活性化溶液中における2種以上の芳香族酸の使用によって、相乗的な効果をもたらすことが見出された。
【0093】
(例5(本発明))
n-ドープポリシリコン基板を、例3eの水性活性化組成物に、60秒間(例5a)及び120秒間(例5b)、それぞれ浸漬した。このようにして活性化されたシリコン基板を、それぞれ、pHが4.3で、6g/lのニッケルイオン(硫酸ニッケルとして供給)、錯化剤として、ジカルボン酸、トリカルボン酸及びヒドロキシカルボン酸、並びに還元剤として0.25g/lのジメチルアミノボランを含有する無電解ニッケルめっき浴に、65℃で600秒間浸漬した。
【0094】
シリコン基板は、ニッケルホウ素合金で均一に被覆されていた。厚さ及び粗さを表IIIに表す。
【0095】
【表3】
【0096】
本発明の処理によって、パラジウム及びニッケルホウ素の両方の非常に薄い層が得られた。層は非常に滑らかでもあり、粗さの偏差が非常に少なく、これは現在の半導体デバイスを製造する際に非常に望ましい。例5aのAFM写真を図8に示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8