(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-09
(45)【発行日】2022-03-17
(54)【発明の名称】モータ用ステータ
(51)【国際特許分類】
H02K 3/50 20060101AFI20220310BHJP
H02K 3/18 20060101ALI20220310BHJP
【FI】
H02K3/50 A
H02K3/18 J
(21)【出願番号】P 2018059242
(22)【出願日】2018-03-27
【審査請求日】2021-02-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000144810
【氏名又は名称】株式会社山田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 聡史
(72)【発明者】
【氏名】桐生 大輔
(72)【発明者】
【氏名】星野 雅彦
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-060368(JP,A)
【文献】国際公開第2017/026436(WO,A1)
【文献】特開2017-127146(JP,A)
【文献】特開2008-017584(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0270934(US,A1)
【文献】特開2009-268207(JP,A)
【文献】特開2008-312435(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/50
H02K 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアと、このコアに取付けられたインシュレータと、このインシュレータに巻きつけられたコイルと、前記インシュレータの周壁部に
差し込み可能な差込部を有するターミナルと、からなり、
前記周壁部には、前記ターミナルの近傍において、前記ターミナルが延びている方向に突出している突出部が設けられ、
前記コイルから引き出された導線は、前記突出部に掛けられることにより前記ターミナルへ案内されている共に、前記ターミナルの接続部に電気的に接続されている、モータ用ステータにおいて、
前記突出部の先端部のなかの、前記ターミナルに対して反対側の面の一角には、段差状に切り欠かれた切り欠き部が形成されてなり、
この切り欠き部には、前記導線が掛けられて
おり、
前記接続部は、U字状を呈して前記導線を挟み込んでおり、
前記切り欠き部は、前記突出部の突出方向に沿った第1の切り欠き側面と、この第1の切り欠き側面から前記ターミナルとは反対側へ延びた第2の切り欠き側面と、からなり、
前記接続部のU字状の内周面は、前記導線が当接している底部を有しており、
前記周壁部のうち、前記ターミナルの前記差込部が差し込まれた差込穴が形成された面を基準面とすると、
前記基準面から前記第2の切り欠き側面までの高さと、前記基準面から前記接続部の前記底部までの高さとは、等しく設定されていることを特徴とするモータ用ステータ。
【請求項2】
前記ターミナルは
、前記突出部の側面に当接可能な当接
部を有することを特徴とする
請求項1に記載のモータ用ステータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイルから引き出された導線が接触する突出部を有するモータ用ステータに関する。
【背景技術】
【0002】
モータのステータは、コアと、コアに取付けられるインシュレータと、インシュレータに巻きつけられているコイルと、コイルから引き出された導線(コイル端末)が接続されているターミナルと、を有する。このようなステータに関する従来技術として特許文献1の技術がある。
【0003】
特許文献1のインシュレータは、周壁部に、ターミナルに沿って突出した柱状の突出部が設けられている。コイルから引き出された導線は、突出部の側面に接触しつつ、ターミナルに接続されている。
【0004】
コイルからターミナルに直線的に導線を延ばす場合と比較すると、導線は、突出部を経由しており、弛みやすくなる。そのため、導線が引っ張られる場合、例えば、ステータを他の部品に組み付ける際に、ターミナルと部品が接触し、ターミナルが傾いて導線が引っ張られるような場合であっても、導線に引張力が作用しにくい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の1つの実施例では、導線は、突出部の側面に接触しているのみである。導線は、上下方向に変位可能なため、定位置からずれやすい。
【0007】
特許文献1の他の実施例では、導線は、突出部の側面に形成された溝に収納されている。そのため、導線は定位置に保持される。一方で、溝が形成された突出部を成形するための金型の形状は複雑となる。
【0008】
本発明は、形状が簡素で、しかも定位置に導線を保持することが可能な突出部を有するモータ用ステータの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1による発明によれば、コアと、このコアに取付けられたインシュレータと、このインシュレータに巻きつけられたコイルと、前記インシュレータの周壁部に差し込み可能な差込部を有するターミナルと、からなり、
前記周壁部には、前記ターミナルの近傍において、前記ターミナルが延びている方向に突出している突出部が設けられ、
前記コイルから引き出された導線は、前記突出部に掛けられることにより前記ターミナルへ案内されている共に、前記ターミナルの接続部に電気的に接続されている、モータ用ステータにおいて、
前記突出部の先端部のなかの、前記ターミナルに対して反対側の面の一角には、段差状に切り欠かれた切り欠き部が形成されてなり、
この切り欠き部には、前記導線が掛けられており、
前記接続部は、U字状を呈して前記導線を挟み込んでおり、
前記切り欠き部は、前記突出部の突出方向に沿った第1の切り欠き側面と、この第1の切り欠き側面から前記ターミナルとは反対側へ延びた第2の切り欠き側面と、からなり、
前記接続部のU字状の内周面は、前記導線が当接している底部を有しており、
前記周壁部のうち、前記ターミナルの前記差込部が差し込まれた差込穴が形成された面を基準面とすると、
前記基準面から前記第2の切り欠き側面までの高さと、前記基準面から前記接続部の前記底部までの高さとは、等しく設定されていることを特徴とするモータ用ステータが提供される。
【0011】
請求項2に記載のごとく、好ましくは、前記ターミナルは、前記突出部の側面に当接可能な当接部を有する。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明では、突出部の先端の一角には、段差状の切り欠き部が形成されている。切り欠き部には、コイルから引き出された導線が掛けられている。そのため、切り欠き部の定位置に導線を保持することができる。加えて、突出部の先端のみが切り欠かれているため、突出部を含むインシュレータを成型するための金型の形状は簡素である。
【0013】
加えて、接続部は、U字状を呈し導線を挟み込んでいる。切り欠き部は、ターミナルと反対側へ延びた第2の切り欠き側面を有する。さらに、第2の切り欠き側面と、接続部とは、ステータの軸線方向について、同じ高さに設定されている。そのため、ヒュージングにより導線をターミナルの接続部に接続する際に、切り欠き部から接続部に導線を架け渡すと、導線は水平に延びる。即ち、導線は、ターミナルの接続部に対して垂直に入射するように、配置される。接続部は導線を確実に挟み込むことができるため、接続部での導線のヒュージングの精度が高くなる。
【0014】
請求項2に係る発明では、ターミナルは、突出部の側面に当接可能な当接部を有する。そのため、ターミナルをインシュレータの周壁部に差し込む際に、突出部の側面を差込ガイドとして利用できる。ターミナルは、インシュレータに対して取付け易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施例1によるモータ用ステータの斜視図である。
【
図5】本発明の実施例2によるモータ用ステータを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
<実施例1>
図1には、本発明の実施例1によるモータ用ステータ10が示されている。このモータ用ステータ10は、積層された多数の電磁鋼板からなるコア11と、このコア11の一面に取付けられた第1のインシュレータ12と、コア11の他面に取付けられて第1のインシュレータ12と共にコア11を挟み込んでいる第2のインシュレータ13と、第1のインシュレータ12及び第2のインシュレータ13に巻きつけられた第1のコイルU1、V1、W1、第2のコイルU2、V2、W2と、を有する。
【0017】
このモータ用ステータ10は、3相6スロットのタイプである。コイルU1~W2に巻かれた巻線の経路についての説明は省略する。
【0018】
第1のインシュレータ12は、薄板状の環状部12aと、この環状部12aに周方向に断続的に形成されている第1の長壁部21~第6の長壁部26と、これらの第1の長壁部21~第6の長壁部26の間に形成されている6つの短壁部27~27と、からなる。
【0019】
第1の長壁部21は、ステータ10の軸中心CLを基準として、第1のコイルU1よりも径方向外側に位置している。同様に、第2の長壁部22(周壁部22)は、第1のコイルV1よりも径方向外側に位置している。第3の長壁部23は、第1のコイルW1よりも径方向外側に位置している。
【0020】
第1の長壁部21~第3の長壁部23には、それぞれ、第1のターミナル31~第3のターミナル33が取付けられている。
【0021】
第1の長壁部21~第3の長壁部23の形状及び大きさは、同一である。第1のターミナル31~第3のターミナル33の形状及び大きさは、同一である。以下、第2の長壁部22及び第2のターミナル32について説明する。第2の長壁部22及び第2のターミナル32についての説明は、第1の長壁部21及び第1のターミナル31、第3の長壁部23及び第3のターミナル33の構成に適宜読み替えることができる。
【0022】
図2を参照する。第2の長壁部22は、環状部12aから上方に延びる基部40と、基部40の上面部41に形成され第2のターミナル32が差し込まれている差込穴42と、差込穴42の近傍において、差込穴42の深さ方向と反対の方向に上面部41から突出している突出部50と、からなる。突出部50は、第2のターミナル32の近傍において、第2のターミナル32が延びている方向に突出しているともいえる。
【0023】
突出部50の先端部51のなかの、第2のターミナル32に対して反対側の面の一角には、段差状に切り欠かれた切り欠き部60が形成されている。切り欠き部60は、突出部50の突出方向に沿った第1の切り欠き側面61と、この第1の切り欠き側面61から第2のターミナル32と反対側へ延びた第2の切り欠き側面62と、からなる。換言すると、突出部50は、上面部41から突出している第1の突出部52と、この第1の突出部52の上面のターミナル側の一部からさらに突出している第2の突出部53とからなる、ともいえる。
【0024】
第2のターミナル32は、長板状の本体部35と、本体部35の一方の側面から突出部50側に延出している当接部36と、本体部35の他方の側面から当接部36と反対側に延出している接続部37と、からなる。
【0025】
本体部35は、差込穴42に差し込まれている差込部38を有している。コイルV1から引き出された導線14、14は、突出部50に掛けられることにより第2のターミナル32の接続部37へ案内されている。詳細には、導線14、14は、第1の切り欠き側面61と第2の切り欠き側面62の境界63付近に接触している。さらに、導線14、14は、U字状を呈する接続部37に挟み込まれて接続されている。詳細には、導線14、14は、U字状の内周面の底部37aに当接していると共に、ヒュージングにより接続部37に固定されている。
【0026】
図3を参照する。第2の切り欠き側面62と、接続部37とは、モータ用ステータ10の軸線CL(
図1)方向において、同じ位置に設定されている。詳細には、第2のターミナル32が、差込穴42に差し込まれた状態において、基部40の上面部41から第2の切り欠き側面62までの高さH1と、基部40の上面部41から接続部37の底部37aまでの高さH2とは、等しい。
【0027】
図4を参照する。突出部50の側面は、内径側の内面部55と、外径側の外面部56と、を有する。第2のターミナル32の当接部36は、外面部56に当接している。
【0028】
次に、実施例の効果について説明する。
【0029】
図2を参照する。突出部50の先端部51の一角には、段差状の切り欠き部60が形成されている。切り欠き部60には、コイルV1から引き出された導線14、14が掛けられている。導線14、14は切り欠き部60に保持される。加えて、突出部50の先端のみが切り欠かれているため、突出部50を含む第1のインシュレータ12を成型するための金型の形状は簡素である。
【0030】
図3を参照する。加えて、第2のターミナル32が、差込穴42に差し込まれた状態において、基部40の上面部41から第2の切り欠き側面62までの高さH1と、基部40の上面部41から接続部37の底部37aまでの高さH2とは、等しい。そのため、ヒュージングにより導線14、14を第2のターミナル32の接続部37に接続する際に、切り欠き部60から接続部37に導線14、14を架け渡すと、導線14、14は水平に延びる。即ち、導線14、14は、第2のターミナル32の接続部37に対して垂直に入射するように、配置される。接続部37は導線14、14を確実に挟み込むことができるため、接続部37での導線14、14のヒュージングの精度が高くなる。
【0031】
図4を参照する。第2のターミナル32は、差込穴42に差し込まれた差込部38と、突出部50の外面部56に当接している当接部36を有する。即ち、第2のターミナル32を差込穴42に差し込む際に、突出部50の外面部56を差込ガイドとして利用できる。第2のターミナル32は、第2の長壁部22に対して取付け易くなる。
【0032】
<実施例2>
図5を参照する。実施例2によるモータ用ステータ10Aは、第2のターミナル32Aが実施例1と異なる。その他の構成については、実施例1のモータ用ステータ10と同様であり、符号を流用すると共に説明を省略する。
【0033】
ターミナルAの当接部36Aの先端面71は、第2の切り欠き側面62に沿って、第1の切り欠き側面61から突出している。導線14、14は、当接部36Aの下面72の下方に位置している。
【0034】
モータ用ステータ10Aも、本発明所定の効果を得ることができる。さらに、モータ用ステータ10Aによれば、上記の構成により、以下の特有の効果を得ることができる。
【0035】
導線14、14は、第2の切り欠き側面62と、当接部36の下面72とに挟まれている。導線14、14は、当接部36Aの下部と第2の切り欠きとの間に保持される。導線14、14の上下方向への移動が規制されるため、導線を定位置に保持することができる。
【0036】
加えて、実施例1と比較すると、基部40の上面部41から当接部36Aの下面72までの距離Lは、長くなっている。そのため、第2のターミナル32が内径側(
図1参照)に倒れにくくなる。
【0037】
なお、本発明の作用及び効果を奏する限りにおいて、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0038】
10…モータ用ステータ
11…コア
12…第1のインシュレータ
14…導線
21~26…第1の長壁部~第6の長壁部
31~33…第1のターミナル~第3のターミナル
35…本体部
36…接続部
37…当接部
38…差込部
40…基部
41…上面部
42…差込穴
50…突出部
51…先端部
52…第1の突出部
53…第2の突出部
55…内面部
56…外面部
60…切り欠き部
61…第1の切り欠き側面
62…第2の切り欠き側面
63…境界
U1、V1、W1…第1のコイル
U2、V2、W2…第2のコイル
CL…軸線