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特許7037879二次製品用早強混和材および二次製品用早強コンクリート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-09
(45)【発行日】2022-03-17
(54)【発明の名称】二次製品用早強混和材および二次製品用早強コンクリート
(51)【国際特許分類】
   C04B 22/08 20060101AFI20220310BHJP
   B28C 7/04 20060101ALI20220310BHJP
   C04B 22/06 20060101ALI20220310BHJP
   C04B 22/10 20060101ALI20220310BHJP
   C04B 22/14 20060101ALI20220310BHJP
   C04B 24/06 20060101ALI20220310BHJP
   C04B 28/04 20060101ALI20220310BHJP
【FI】
C04B22/08 Z
B28C7/04
C04B22/06 Z
C04B22/10
C04B22/14 B
C04B24/06 A
C04B28/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2016129773
(22)【出願日】2016-06-30
(65)【公開番号】P2018002524
(43)【公開日】2018-01-11
【審査請求日】2019-05-23
【審判番号】
【審判請求日】2020-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】宇部興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(72)【発明者】
【氏名】石田 剛朗
(72)【発明者】
【氏名】夏目 実穂
(72)【発明者】
【氏名】伊勢島 佳
(72)【発明者】
【氏名】大和 功一郎
(72)【発明者】
【氏名】戸田 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】貫田 誠
(72)【発明者】
【氏名】橋村 雅之
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 明植
【合議体】
【審判長】宮澤 尚之
【審判官】河本 充雄
【審判官】後藤 政博
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-278652(JP,A)
【文献】特開昭49-007331(JP,A)
【文献】特開昭63-129051(JP,A)
【文献】特開平01-230455(JP,A)
【文献】特開2006-298661(JP,A)
【文献】特開2011-195413(JP,A)
【文献】特開2013-095624(JP,A)
【文献】特開2012-206879(JP,A)
【文献】特開平11-199285(JP,A)
【文献】特開平11-322400(JP,A)
【文献】特開2008-162836(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0025613(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00-32/02
B28C 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナセメントと、無水石膏と、半水石膏と、消石灰と、遅延剤とを含む二次製品用早強混和材であって、
前記アルミナセメントが、CaO、SiO、Al、およびFeを含有し、Al量が30~60質量%、Fe量が0.5~20質量%であり、
前記アルミナセメントの含有割合が47~57質量%、前記無水石膏の含有割合が29~33質量%、前記半水石膏の含有割合が1~5.5質量%、前記消石灰の含有割合が8~12質量%、前記遅延剤の含有割合が1~6質量%であり、
前記アルミナセメントのブレーン比表面積が3800~4600cm/g、
前記アルミナセメントと、前記無水石膏と前記半水石膏との合計との比率が、「アルミナセメント:(無水石膏+半水石膏)」の質量比で58:42~62:38であることを特徴とする二次製品用早強混和材。
【請求項2】
前記アルミナセメントのAl量が30~38.1質量%、Fe量が16.7~20質量%である請求項1に記載二次製品用早強混和材。
【請求項3】
前記遅延剤が、重炭酸ナトリウムおよび/または酒石酸ナトリウムである請求項1または2に記載の二次製品用早強混和材。
【請求項4】
請求項1~のいずれかに記載の二次製品用早強混和材と、結合材と、練り混ぜ水と、細骨材と、粗骨材と、化学混和剤とを含む二次製品用早強コンクリートであって、
前記混和材/(前記混和材+前記結合材)の質量比が10~40%であり、
前記練り混ぜ水/(前記混和材+前記結合材)の質量比が30~55%である二次製品用早強コンクリート。
【請求項5】
前記コンクリート1m中に、
前記混和材を50~150kg/m
前記結合材としてのポルトランドセメントを250~350kg/m
前記練り混ぜ水を120~190kg/m
前記細骨材を500~1500kg/m、および、
前記粗骨材を500~1500kg/m含む、
請求項に記載の二次製品用早強コンクリート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、常温時および高温時のいずれにおいても早期強度発現に優れる、二次製品用早強混和材、およびこのような二次製品用早強混和材を用いて得られる二次製品用早強コンクリートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、緊急工事や補修用途向けのセメント組成物として、カルシウムアルミネート等を用いた速硬性(急硬性)のセメント系組成物が知られている。
【0003】
このような速硬性のセメント系組成物として、たとえば、特許文献1では、カルシウムアルミネート20~60重量%、ポルトランドセメント20~70重量%、II型無水石膏0.5~30重量%、消石灰2~10重量%、炭酸リチウム0.1~3.0重量%を含み、SO/Alのモル比が1.4~0.8であり、炭酸リチウムの平均粒径が10μm以下でかつ結晶度指数が半値幅で0.20以上であることを特徴とする水硬性組成物が開示されている。この特許文献1では、自己収縮率の低減のほか、低温時の強度発現性や安定性の改善に焦点が置かれている。
【0004】
また、特許文献2では、β型半水石膏(B)と無水石膏(C)を質量比(C/B)=2~20で含有し、かつβ型半水石膏と無水石膏の合計含有量100質量部に対し、カルシウムアルミネート70~200質量部を含有する速硬剤が開示されている。この特許文献2のように、カルシウムアルミネート等を用いた速硬性のセメント系組成物においては、作業時間確保を目的として、可使時間を延長させるために、有機系の凝結遅延剤が使用されるのが一般的である。これに対し、特許文献2においては、このような有機系の凝結遅延剤を用いなくとも、作業時間を確保できるとともに、初期および中・長期の強度発現が確保できる点に特徴がある。
【0005】
特許文献3では、CaOとAlとの含有モル比(CaO/Al)が0.9以上1.5未満のカルシウムアルミネート、凝結遅延剤、二水石膏および炭酸リチウムを含有してなる急硬性混和材が開示されている。この特許文献3によれば、30~40℃の高温環境であっても瞬結することなく長い可使時間の確保が可能とされている。しかしながら、この特許文献3においては、35℃環境においても120分以上の可使時間が確保されているものの、6時間での圧縮強度は0.4N/mmを下回っている。
【0006】
以上のように、カルシウムアルミネート等を用いた速硬性のセメント系組成物においては、使用される温度域に応じて、必要とされる可使時間の確保と、強度発現を両立させることが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第4307187号公報
【文献】特開2006-62888号公報
【文献】特開2013-95624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一方で、工期短縮ニーズの増加、現場での技能労働者の不足等により、従来、現場施工されていた部材がプレキャスト化され、二次製品の形態にて用いられるケースが増加している。このため、このような二次製品を製造するための二次製品工場においては、生産性の向上のため、型枠回転数を増やす等、省力化に関するニーズが高まりつつある。
【0009】
そこで、本発明は、二次製品工場での使用条件を想定し、常温および蒸気養生を想定した高温域のいずれにおいても、作業に必要な可使時間を確保したうえで、3~4時間といった早期に11N/mm程度以上の強度発現を実現可能な、二次製品用早強混和材および二次製品用早強コンクリートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、ブレーン比表面積が3800~4600cm/gの範囲にあるアルミナセメントと、無水石膏と、半水石膏と、消石灰と、遅延剤とを、特定の割合で含有する混和材により、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明によれば、アルミナセメントと、無水石膏と、半水石膏と、消石灰と、遅延剤とを含む二次製品用早強混和材であって、前記アルミナセメントの含有割合が47~57質量%、前記無水石膏の含有割合が29~33質量%、前記半水石膏の含有割合が1~5.5質量%、前記消石灰の含有割合が8~12質量%、前記遅延剤の含有割合が1~6質量%であり、前記アルミナセメントのブレーン比表面積が3800~4600cm/g、前記アルミナセメントと、前記無水石膏と前記半水石膏との合計との比率が、「アルミナセメント:(無水石膏+半水石膏)」の質量比で58:42~62:38であることを特徴とする二次製品用早強混和材が提供される。
【0012】
本発明によれば、このような二次製品用早強混和材をセメントに置換して用いることにより、常温および高温域の両方において、作業に必要な可使時間を確保したうえで、3~4時間といった早期に11N/mm程度以上の強度発現の実現が可能となる。これにより、二次製品工場において生産を行う際において、蒸気養生の有無に関わらず、型枠回転数を増加させることができ、結果として、十分な強度を有する二次製品を高い生産性にて得ることが可能となる。
【0013】
本発明の二次製品用早強混和材において、前記遅延剤が、重炭酸ナトリウムおよび/または酒石酸ナトリウムであることが好ましい。
【0014】
また、本発明によれば、上記本発明の二次製品用早強混和材と、結合材と、練り混ぜ水と、細骨材と、粗骨材と、化学混和剤とを含む二次製品用早強コンクリートであって、前記混和材/(前記混和材+前記結合材)の質量比が10~40%であり、前記練り混ぜ水/(前記混和材+前記結合材)の質量比が30~55%である二次製品用早強コンクリートが提供される。
【0015】
本発明の二次製品用早強コンクリートにおいて、前記コンクリート1m中に、前記混和材を50~150kg/m、前記結合材としてのポルトランドセメントを250~350kg/m、前記練り混ぜ水を120~190kg/m、前記細骨材を500~1500kg/m、および、前記粗骨材を500~1500kg/m含むものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、常温および蒸気養生を想定した高温域のいずれにおいても、作業に必要な可使時間を確保したうえで、3~4時間といった早期に11N/mm程度以上の強度発現を実現可能な、二次製品用早強混和材および二次製品用早強コンクリートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態について詳しく説明する。
【0018】
<二次製品用早強混和材>
本発明の二次製品用早強混和材は、アルミナセメントと、無水石膏と、半水石膏と、消石灰と、遅延剤とを含む二次製品用早強混和材であって、
前記アルミナセメントの含有割合が47~57質量%、前記無水石膏の含有割合が29~33質量%、前記半水石膏の含有割合が1~5.5質量%、前記消石灰の含有割合が8~12質量%、前記遅延剤の含有割合が1~6質量%であり、
前記アルミナセメントのブレーン比表面積が3800~4600cm/g、
前記アルミナセメントと、前記無水石膏と前記半水石膏との合計との比率が、「アルミナセメント:(無水石膏+半水石膏)」の質量比で58:42~62:38である。
【0019】
アルミナセメントとしては、鉱物組成の異なるものが数種知られ市販されているが、いずれも主成分はモノカルシウムアルミネート(CA)であり、市販品などはその種類によらず使用することができる。アルミナセメントとしては、たとえば、CaO・Al、CaO・2Al、3CaO・Al、12CaO・7Al等のカルシウムアルミネート類、4CaO・Al・Fe等のカルシウムアルミノフェライト類、2CaO・SiO等のカルシウムシリケート類、3CaO・3Al・CaSO、CaO・TiO等の種々の鉱物を含むことができる。
【0020】
本発明で用いる、アルミナセメントは、ブレーン比表面積が3800~4600m/gであり、好ましくは3900~4500cm/g、より好ましくは4000~4400cm/gである。アルミナセメントのブレーン比表面積は、JIS R 5201:1995「セメントの物理試験方法」に準じて求めることができる。アルミナセメントのブレーン比表面積が小さすぎると、高温条件において養生した際における、早期での強度発現が出来なくなってしまう。一方、アルミナセメントのブレーン比表面積が大きすぎると、可使時間や流動性の確保においてに劣るものとなってしまう。また、化学分析値として求められるアルミナセメント中のAl量は、30~60質量%が好ましく、Fe量は、0.5~20質量%が好ましい。本発明の二次製品用早強混和材中における、アルミナセメントの含有割合は、47~57質量%であり、好ましくは48~56質量%、より好ましくは49~55質量%である。アルミナセメントの含有割合が少なすぎても、また、多すぎても、十分な圧縮強度が得られなくなる。
【0021】
無水石膏としては、排煙脱硫やフッ酸製造工程等で副産される無水石膏、又は天然に産出される無水石膏のいずれも使用することができる。これらのなかでも、安定供給が可能という観点より、排煙脱硫やフッ酸製造工程等で副産されるフッ酸無水石膏が好ましく、フッ酸II型無水石膏がより好ましい。無水石膏としては、ブレーン比表面積が4000~5000cm/gのものを用いることが好ましく、4200~4800cm/gのものを用いることがより好ましい。無水石膏のブレーン比表面積は、JIS R 5201:1995「セメントの物理試験方法」に準じて求めることができる。本発明の二次製品用早強混和材中における、無水石膏の含有割合は、29~33質量%であり、好ましくは29~32質量%である。無水石膏の含有割合が少なすぎると、常温において養生した際における、早期での強度発現が出来なくなってしまう。一方、無水石膏の含有割合が多すぎると、高温条件において養生した際における、早期での強度発現が出来なくなってしまう。
【0022】
半水石膏としては、結晶構造の異なるα型、β型が挙げられ、いずれも使用することができる。これらのなかでも、入手の容易さの点より、β型半水石膏が好ましい。半水石膏としては、ブレーン比表面積が2500~3500cm/gのものを用いることが好ましく、2700~3300cm/gのものを用いることがより好ましい。半水石膏のブレーン比表面積は、JIS R 5201:1995「セメントの物理試験方法」に準じて求めることができる。本発明の二次製品用早強混和材中における、半水石膏の含有割合は、1~5.5質量%であり、好ましくは1.5~5.5質量%、より好ましくは2~5.5質量%である。半水石膏の含有割合が少なすぎると、高温条件において養生した際における、早期での強度発現が出来なくなってしまう。一方、半水石膏の含有割合が多すぎると、常温において養生した際における、早期での強度発現が出来なくなってしまう。
【0023】
また、本発明の二次製品用早強混和材において、アルミナセメントと、無水石膏と半水石膏との合計との比率は、「アルミナセメント:(無水石膏+半水石膏)」の質量比で58:42~62:38であり、好ましくは59:41~61:39である。アルミナセメントの割合が多すぎても、あるいは、無水石膏と半水石膏との合計の割合が多すぎても、いずれの場合も、圧縮強度が不十分となってしまう。
【0024】
また、本発明の二次製品用早強混和材は、消石灰を、8~12質量%、好ましくは9~11質量%、より好ましくは10~11質量%の割合で含有する。消石灰の含有割合が少なすぎると、可使時間が短くなり、生産性が低下してしまうるとともに、常温および高温条件のいずれの条件において養生した場合でも、早期での強度発現が出来なくなってしまう。一方、消石灰の含有割合が多すぎると、可使時間が短くなってしまい、生産性が低下してしまう。
【0025】
遅延剤としては、凝結遅延効果を奏するものであればよく特に限定されないが、その添加効果が大きいことから、重炭酸ナトリウムおよび/または酒石酸ナトリウムが好ましく、本発明においては、遅延剤として、重炭酸ナトリウムおよび酒石酸ナトリウムの両方を用いることが好ましい。本発明の二次製品用早強混和材中における、遅延剤の含有割合は、1~6質量%であり、好ましくは1~5質量%、より好ましくは1~4質量%である。
【0026】
また、本発明の二次製品用早強混和材は、アルミナセメント、無水石膏、半水石膏、消石灰、および遅延剤に加えて、これら以外の他の配合剤を含有していてもよい。このような他の配合剤としては、たとえば、凝結促進剤、増粘剤、消泡剤、収縮低減剤、樹脂粉末等が挙げられる。
【0027】
凝結促進剤は、凝結を促進する作用を奏するものであり、凝結促進剤としては、公知の凝結を促進する成分を用いることができる。凝結促進剤としては、たとえば、凝結促進効果を有するリチウム塩、硫酸アルミニウムおよび塩化カルシウムを好適に用いることができ、これらを数種組み合わせて使用することができる。リチウム塩の一例として、炭酸リチウム、塩化リチウム、硫酸リチウム、硝酸リチウムおよび水酸化リチウム等の無機リチウム塩や、シュウ酸リチウム、酢酸リチウム、酒石酸リチウム、リンゴ酸リチウムおよびクエン酸リチウム等の有機酸有機リチウム塩を挙げることができる。特に炭酸リチウムは、凝結促進効果、入手容易性および価格の面から好ましい。本発明の二次製品用早強混和材中における、凝結促進剤の含有割合は、好ましくは0~4質量%、より好ましくは0~3質量%である。
【0028】
<二次製品用早強コンクリート>
本発明の二次製品用早強コンクリートは、上述した本発明の二次製品用早強混和材と、結合材と、練り混ぜ水と、細骨材と、粗骨材と、化学混和剤とを含む。
【0029】
本発明の二次製品用早強コンクリート中における、二次製品用早強混和材と、結合材との含有割合は、二次製品用早強混和材/(二次製品用早強混和材+結合材)の質量比で、10~40%の範囲であることが好ましく、15~35%の範囲であることがより好ましい。
【0030】
また、本発明の二次製品用早強コンクリート中における、二次製品用早強混和材および結合材の含有量に対する、練り混ぜ水の含有割合は、練り混ぜ水/(二次製品用早強混和材+結合材)の質量比で、30~55%の範囲であることが好ましく、30~50%の範囲であることがより好ましい。
【0031】
結合材としては、特に限定されないが、通常、ポルトランドセメントが用いられる。ポルトランドセメントとしては、たとえば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメントおよび耐硫酸塩ポルトランドセメントなどが挙げられる。これらのなかでも、流動保持時間と速硬性の観点から、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメントが好ましく、普通ポルトランドセメントが特に好ましい。
【0032】
細骨材としては、川砂、陸砂、海砂、砕砂、珪砂、石灰石骨材、高炉スラグ細骨材、銅スラグ細骨材、電気炉酸化スラグ細骨材等を併用することができる。
また、化学混和剤としては、減水剤、空気量調整剤、消泡剤、収縮低減剤、凝結促進剤、凝結遅延剤、増粘剤などが挙げられ、求められる性能に応じてこれらのうち、一種を単独で使用してもよいし、複数を組み合わせて使用してもよい。これらのなかでも、減水剤、および空気量調整剤を用いることが好ましい。
【0033】
なお、本発明の二次製品用早強コンクリートとしては、常温および蒸気養生を想定した高温域のいずれにおいても、作業に必要な可使時間を確保しながら、早期に強度発現を可能とするという効果をより高めることができるという観点より、各成分の割合を、
コンクリート1m中に、
二次製品用早強混和材を50~150kg/m
結合材としてのポルトランドセメントを250~350kg/m
練り混ぜ水を120~190kg/m
細骨材を500~1500kg/m、および、
粗骨材を500~1500kg/m
の割合とすることが好ましく、
コンクリート1m中に、
二次製品用早強混和材を75~125kg/m
結合材としてのポルトランドセメントを275~325kg/m
練り混ぜ水を130~180kg/m
細骨材を700~1300kg/m、および、
粗骨材を700~1300kg/m
の割合とすることがより好ましい。
【0034】
本発明の二次製品用早強コンクリートは、上記本発明の二次製品用早強混和材を用いて得られるものであるため、常温および蒸気養生を想定した高温域のいずれにおいても、作業に必要な可使時間を確保したうえで、3~4時間といった早期に11N/mm程度以上(好ましくは12N/mm程度以上、より好ましくは12.5N/mm程度以上)の強度発現を実現可能であり、二次製品用途に好適である。具体的には、常温および高温域のいずれにおいても、早期に強度発現が可能であるため、二次製品工場において生産を行う際において、蒸気養生の有無に関わらず、型枠回転数を増加させることができるものであり、そして、これにより、十分な強度を有する二次製品を高い生産性にて得ることが可能となる。
【実施例
【0035】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明の内容をさらに詳しく説明する。なお、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0036】
[1.使用材料]
以下に示す材料を使用した。
(1)セメント
・普通ポルトランドセメント(密度3.16g/cm、宇部三菱セメント社製)
(2)早強混和材
・アルミナセメント(通常ブレーン品、密度3.18g/cm、CaO量37.5質量%、SiO量4.6質量%、Al量39.1質量%、Fe量15.2質量%、ブレーン比表面積3190cm/g、フォンジュ、ケルネオス社製) ブレーン比表面積は、JIS R 5201:1995「セメントの物理試験方法」に準拠して測定した値である。
・アルミナセメント(ハイブレーン品、密度3.20g/cm、CaO量37.0質量%、SiO量4.3質量%、Al量38.1質量%、Fe量16.7質量%、ブレーン比表面積4250cm/g、ターナルSE、ケルネオス社製) ブレーン比表面積は、JIS R 5201:1995「セメントの物理試験方法」に準拠して測定した値である。
・無水石膏(フッ酸II型無水石膏、密度2.93g/cm、ブレーン比表面積4490cm/g、セントラル硝子社製) ブレーン比表面積は、JIS R 5201:1995「セメントの物理試験方法」に準拠して測定した値である。
・半水石膏(β型、密度2.63g/cm、ブレーン比表面積3040cm/g、ケルネオス社製) ブレーン比表面積は、JIS R 5201:1995「セメントの物理試験方法」に準拠して測定した値である。
・消石灰(宇部マテリアルズ社製)
・酒石酸ナトリウム(遅延剤)
・重炭酸ナトリウム(遅延剤)
・炭酸リチウム(促進剤)
(3)細骨材
・海砂(密度2.57g/cm、粗粒率2.97、福岡県産)
・砕砂(密度2.68g/cm、粗粒率2.71、硬質砂岩、福岡県産)
(4)粗骨材
・砕石(最大寸法20mm、密度2.70g/cm、粗粒率6.64、硬質砂岩、山口県産)
(5)化学混和剤
・商品名:マイテイ21VS、高性能減水剤、花王社製
・商品名:マイクロエア404、空気量調整剤、BASFジャパン社製
(6)練混ぜ水
・上水道水
【0037】
[2-1.コンクリートの配合]
上記各材料を用いて、下記の表1に示す配合No.1~No.11の配合にてコンクリートの調製を行った。表1中に、配合の態様および1m当たりの単位量(kg/m)を示す。また、具体的な調製方法については、後述の「2-2.コンクリートの調製および試験方法]にて説明する。
【0038】
【表1】
【0039】
なお、表1において、アルミナセメント(通常ブレーン品)、すなわち、通常ブレーンのアルミナセメントは「AC」、無水石膏は「AG」、消石灰は「CH」、酒石酸ナトリウムは「酒石酸Na」、重炭酸ナトリウムは「重炭酸Na」、炭酸リチウムは「炭酸Li」、水は「W」、セメントは「C」と表記した。なお、表1の「W」は化学混和剤を含めた値であり、配合No.1~No.11においては、セメント(C)として、普通ポルトランドセメントを使用した。また、細骨材としては、海砂と砕砂とを体積比で4:6の割合で混合したものを使用した。
【0040】
配合No.1~No.6においては、二次製品用早強混和材(以下、適宜、「早強混和材」とする。)の総量を一定とし、早強混和材を構成する成分のうち、通常ブレーンのアルミナセメント(AC)と無水石膏(AG)との質量比を変化させることで、これらの影響を確認した。なお、水(W)/(セメント(C)+早強混和材)の質量比は33.3質量%で一定とした。
【0041】
配合No.7~No.11においては、早強混和材を構成する成分のうち、消石灰(CH)の量を変化させることで、消石灰(CH)の影響を確認した。なお、消石灰(CH)の量の変動により、水(W)/(セメント(C)+早強混和材)の質量比は32.5~34.5質量%の範囲となった。
【0042】
[2-2.コンクリートの調製および試験方法]
(1)コンクリートの練り混ぜ
表1に示した配合No.1~No.11のコンクリートの練り混ぜは、次の手順で行った。すなわち、まず、早強混和材を構成する各成分を混合して、早強混和材を得て、次いで、水平二軸強制練りミキサ内に、細骨材、粗骨材、セメントおよび、得られた早強混和材を投入して30秒間空練りした後、水(化学混和剤を含む)を加えて90秒間練り混ぜた。
【0043】
(2)コンクリートのフレッシュ性状
そして、上記にて練り混ぜを行った配合No.1~No.11について、フレッシュコンクリートの性状試験として、スランプおよび空気量を測定した。スランプ試験はJIS A 1101「コンクリートのスランプ試験方法」に準じて実施した。また、供試体の成形が可能な流動性を保持している期間を測定し、これを可使時間と定義した。
【0044】
(3)コンクリート供試体の養生
コンクリート供試体の養生は、20℃の恒温室で3時間の封緘養生にて行った。
【0045】
(4)圧縮強度試験
JIS A 1108「コンクリートの圧縮強度試験方法」に準じて、材齢3時間でのコンクリート供試体の圧縮強度を測定した。
【0046】
[2-3.試験結果]
表2に、配合No.1~No.11についてのフレッシュ性状および圧縮強度の測定結果を示す。
【0047】
【表2】
【0048】
[2-4.評価]
表2より、通常ブレーンのアルミナセメント(AC)と無水石膏(AG)との質量比が、AC:AG=60:40近傍、消石灰(CH)量が10~15kg/m近傍が、可使時間の確保および常温(20℃)での強度発現および可使時間の観点から、好適であると評価できる。
【0049】
[3-1.コンクリートの配合]
以上のように、配合No.1~No.11の結果より好適であると判断された、通常ブレーンのアルミナセメント(AC)と無水石膏(AG)の質量比AC:AG=60:40近傍、および消石灰(CH)量10~15kg/m近傍をベース配合として、下記の表3に示す配合No.12~No.17の配合にてコンクリートの調製を行った。また、表4として、配合No.12~No.17における、早強混和材中の各成分の質量比率(%)を示した。
【0050】
【表3】
【0051】
【表4】
【0052】
表3および表4において、通常ブレーンのアルミナセメントは「AC」、ハイブレーンのアルミナセメント(ハイブレーン品)、すなわち、ハイブレーンのアルミナセメントは「HBAC」、無水石膏は「AG」、半水石膏は「HG」、消石灰は「CH」、酒石酸ナトリウムは「酒石酸Na」、重炭酸ナトリウムは「重炭酸Na」、水は「W」、セメントは「C」と表記した。なお、配合No.12~No.17においては、凝結促進剤である炭酸リチウムは、高価であるため不使用とした。また、細骨材としては、海砂と砕砂とを体積比で4:6の割合で混合したものを使用した。
【0053】
配合No.12、No.13においては、半水石膏を使用せず、配合No.12では通常ブレーンのアルミナセメントを、配合No.13ではハイブレーンのアルミナセメントを使用している。また、配合No.14~No.17においては、無水石膏と半水石膏との合計量を一定とし、無水石膏と半水石膏の使用量を適宜変化させている。なお、配合No.14では消石灰を使用しておらず、また、配合No.14~No.17においては、ハイブレーンのアルミナセメントを使用している。水/(セメント+早強混和材)の質量比は、配合No.12、No.13、No.15~No.17では35.2質量%、配合No.14では36.2質量%であった。
【0054】
[3-2.コンクリートの調製および試験方法]
(1)コンクリートの練り混ぜ
表3に示した配合No.12~No.17のコンクリートの練り混ぜは、次の手順で行った。すなわち、まず、早強混和材を構成する各成分を混合して、早強混和材を得て、次いで、水平二軸強制練りミキサ内に、細骨材、粗骨材、セメントおよび、得られた早強混和材を投入して30秒間空練りした後、水(化学混和剤を含む)を加えて90秒間練り混ぜた。
【0055】
(2)コンクリートのフレッシュ性状
そして、上記にて練り混ぜを行った配合No.12~No.17について、フレッシュコンクリートの性状試験として、スランプおよび空気量を測定した。スランプ試験はJIS A 1101「コンクリートのスランプ試験方法」に準じて実施した。また、供試体の成形が可能な流動性を保持している期間を測定し、これを可使時間と定義した。
【0056】
(3)コンクリート供試体の養生
コンクリート供試体の養生については、室温(20℃)および蒸気養生を想定した高温(50℃)の条件にて、それぞれ行った。室温(20℃)の条件としては、20℃の恒温室で4時間の封緘養生を行った。
また、蒸気養生を想定した高温(50℃)の条件においては、まず、20℃の恒温室で30分間の前置きを行い、次いで、50℃の恒温槽で3時間、および、50℃の恒温槽から取り出し後に20℃の恒温室で30分間、の計4時間の封緘養生を行った。
【0057】
(4)圧縮強度試験
JIS A 1108「コンクリートの圧縮強度試験方法」に準じて行い、室温の条件にて養生を行った供試体、および高温(50℃)の条件にて養生を行った供試体について、材齢4時間でのコンクリート供試体の圧縮強度を測定した。
【0058】
[3-3.試験結果]
表5に、配合No.12~No.17についてのフレッシュ性状および圧縮強度の測定結果を示す。
【0059】
【表5】
【0060】
[3-4.評価]
表5より、通常ブレーンのアルミナセメントを使用し、半水石膏を使用しなかった配合No.12では、常温(20℃)での強度発現に優れるものの、高温(50℃)では常温(20℃)に比べ強度が55%に低下している。一方、ハイブレーンのアルミナセメントを使用し、半水石膏を使用しなかった配合No.13では、常温(20℃)での強度は配合No.12に劣るものの、高温(50℃)での強度は10N/mmを超えており改善が見られるが、依然として不十分である。
【0061】
これに対し、ブレーン比表面積が3800~4600cm/gの範囲にあるハイブレーンのアルミナセメントを使用し、無水石膏と半水石膏とを特定の使用量にて併用した配合No.15、No.16では、常温(20℃)での強度および高温(50℃)での強度がいずれも11N/mmを上回る結果となった。
【0062】
一方で、消石灰を使用しなかった配合No.14では常温(20℃)および高温(50℃)いずれの強度も10N/mmを下回る結果となった。また、半水石膏の配合量が多すぎる配合No.17では、常温(20℃)での強度が10N/mmを下回る結果となった。
【0063】
以上のように、早強混和材中のアルミナセメント、無水石膏、半水石膏、消石灰、遅延剤の割合が適切で、さらにアルミナセメントとして、ブレーン比表面積が3800~4600cm/gの範囲にあるハイブレーンのアルミナセメントを使用した配合No.15、No.16では、常温(20℃)および高温(50℃)の双方で強度発現性が良好であることが確認できる。特に、これら配合No.15、No.16では、炭酸リチウムなどの凝結促進剤を使用しなくても、常温(20℃)および高温(50℃)のいずれにおいても早期に強度発現できるものであった。これは、各材料の溶解が阻害されることなく、早期強度発現に寄与するエトリンガイトが円滑に生成されるためと考えられる。