(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-09
(45)【発行日】2022-03-17
(54)【発明の名称】フリース生地、フリース生地を製造する方法、及びフリース生地で製造された物品。
(51)【国際特許分類】
D03D 25/00 20060101AFI20220310BHJP
D06C 11/00 20060101ALI20220310BHJP
D06C 27/00 20060101ALI20220310BHJP
D03D 15/20 20210101ALI20220310BHJP
D03D 15/33 20210101ALI20220310BHJP
【FI】
D03D25/00 102A
D06C11/00 Z
D06C27/00 B
D03D15/20 200
D03D15/33
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017014062
(22)【出願日】2017-01-30
【審査請求日】2019-10-10
(32)【優先日】2016-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507343327
【氏名又は名称】サンコ テキスタイル イスレットメレリ サン ベ ティク エーエス
【氏名又は名称原語表記】SANKO TEKSTIL ISLETMELERI SAN. VE TIC. A.S.
【住所又は居所原語表記】Organize Sanayi Bolgesi 3. Cadde 16400 Inegol-Bursa(TR)
(74)【代理人】
【識別番号】100060759
【氏名又は名称】竹沢 荘一
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】トゥンジャイ キリジェカン
(72)【発明者】
【氏名】エルトゥグ エルクシュ
(72)【発明者】
【氏名】エルドアン バルシュ オッデン
【審査官】橋本 有佳
(56)【参考文献】
【文献】特開昭48-092650(JP,A)
【文献】特開昭52-091963(JP,A)
【文献】特開2006-342436(JP,A)
【文献】特開昭61-089368(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D1/00-27/18
D06B1/00-23/30
D06C3/00-29/00
D06G1/00-5/00
D06H1/00-7/24
D06J1/00-1/12
A41D31/00-31/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面(1a)及び第2の面(1b)を有する生地(1)であって、
前記生地(1)は、パターンに織られた横糸ヤーン(2、3)及び縦糸ヤーン(4)を含んでおり、横糸又は縦糸ヤーン(2、3、4)の少なくとも幾本かは、何本かの縦糸ヤーン(4)又は横糸ヤーン(2、3)の上で浮糸となり、かつ、何本かの縦糸ヤーン(4)又は横糸ヤーン(2、3)の下で浮糸となって、横糸又は縦糸は、前記第1の面(1a)における山形部分(2a,3a)及び前記第2の面(1b)における谷形部分(2b,3b)を形成しており、ヤーンの前記谷形部分(2b,3b)及び/又は前記山形部分(2a,3a)は、ループ(5)を形成している生地(1)であって、前記ループ(5)を形成する前記ヤーン(2、3、4)の少なくとも幾本かは、サブフィラメント(6a)に開裂可能な複数本のフィラメント(6)を含む複合ヤーン(2)であり、かつ前記複合ヤーン(2)の前記ループ(5)は、少なくとも3本の隣接する縦糸又は横糸ヤーンの長さに亘って延びており、
前記横糸ヤーン(2、3)および/または前記縦糸ヤーン(4)は、複合ヤーン(2)および標準ヤーン(3)を含み、
前記複合ヤーン(2)は、サブフィラメント(6a)からなる複数の分割可能なフィラメント(6)および支持-サブフィラメント(6b)を含み、
前記フィラメント(6)は、
前記サブフィラメント(6a、6b)に開裂可能であり、
前記標準ヤーン(3)および前記複合ヤーン(2)は、少なくとも1つの標準ヤーン(3)と交互に配置された少なくとも1つの複合ヤーン(2)を含む、所定の配置に配置されていることを特徴とする生地(1)。
【請求項2】
前記サブフィラメント(6a)の少なくとも一部を、相互に分離し、前記サブフィラメント(6a)の少なくとも一部をカットして、複数の開放端を形成し、生地(1)の本体から突出させて、フリース層を形成してなる、請求項1に記載の生地(1)。
【請求項3】
前記複合ヤーン(2)は、20~1800デニール、好ましくは75~600デニール、より好ましくは150~450デニールの番手を有している、請求項1又は2に記載の生地(1)。
【請求項4】
前記サブフィラメント(6a)は、0.01~0.5デニールの間の番手を有している、請求項1~3のいずれか1項に記載の生地(1)。
【請求項5】
前記開裂可能なフィラメント(6)は、3~100の間の本数のサブフィラメント(6a)から構成されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の生地(1)。
【請求項6】
前記複合ヤーン(2)及び前記標準ヤーン(3)は、横糸ヤーンで、前記標準ヤーン(3)は、好ましくは弾性がある、請求項1~5のいずれか1項に記載の生地(1)。
【請求項7】
前記複合ヤーン(2)のように配向された標準ヤーン(3)を含み、前記複合ヤーン(2)の本数に対する標準ヤーン(3)の本数の比は、2:1(2及び1を含む)と1:5(1及び5を含む)の間、好ましくは1:2(1及び2を含む)と1:3(1及び3を含む)の間である、請求項1~6のいずれか1項に記載の生地(1)。
【請求項8】
前記複合ヤーン(2)の谷形部分は、前記ループ(5)を規定し、前記複合ヤーン(2)の山形部分は、接続部分を規定し、ループ(5)の側を通過する縦糸ヤーン(4)の本数は、接続部分(7)の側を通過する縦糸ヤーン(4)の本数の少なくとも3倍であり、好ましくは、接続部分(7)の側を通過する縦糸ヤーン(4)の本数の24倍未満である、請求項1~7のいずれか1項に記載の生地(1)。
【請求項9】
製織後、但し収縮前、縦糸密度及び横糸密度は、それぞれ20と70縦糸/cm(20及び70を含む)の間及び20と70横糸/cm(20及び70を含む)の間であり、3回の家庭での洗濯後の縦糸密度及び横糸密度は、それぞれ20と80縦糸/cmの間及び20と80横糸/cmの間である、請求項1~8のいずれか1項に記載の生地(1)。
【請求項10】
生地は、デニム生地である、請求項1~9のいずれか1項に記載の生地(1)。
【請求項11】
前記デニム生地は、第1の面は、デニムの外観を有しており、第2の面はフリース層を有している、請求項1~10のいずれか1項に記載の生地(1)。
【請求項12】
前記縦糸ヤーン(4)は、Ne4とNe100の間(4及び100を含む)イギリス綿番手を有している、請求項1~11のいずれか1項に記載の生地(1)。
【請求項13】
ループ(5)関して生地の反対側の面において、複合ヤーン(2)が、横糸ヤーン又は縦糸ヤーンを横切るとき、複合ヤーン(2)に隣接している標準ヤーン(3)は、次から選択される緯糸ヤーンまたは経糸ヤーンを横切る、すなわち、
-複合ヤーン(2)が横切った横糸ヤーンまたは縦糸ヤーンと同じ横糸ヤーンまたは縦糸ヤーン、
-複合ヤーン(2)が横切った横糸ヤーンまたは縦糸ヤーンに隣接する横糸ヤーンまたは縦糸ヤーン、である請求項1~11のいずれか1項に記載の生地(1)。
【請求項14】
ループ(5)がある面において、複合ヤーン(2)のループ(5)の長さは、対応する標準ヤーン(3)の谷形部分又は山形部分の長さより長く、好ましくは、標準ヤーン(3)の谷形部分又は山形部分の長さの少なくとも1.5倍である、請求項1~13のいずれか1項に記載の生地(1)。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の生地(1)を含む物品。
【請求項16】
(a)縦糸ヤーン(4)を提供する工程
と、
(b)横糸ヤーン(2、3)を提供する工程
と、
(c)前記複合ヤーン(2)
の谷形部分(2b)及び/又は山形部分(2a)と共に、少なくとも3本の隣接する縦糸/横糸ヤーン(2、3、4)の長さに亘って延びているループ(5)を形成する工程
とを含み、
前記縦糸ヤーン(4)の少なくとも一部及び/又は前記横糸ヤーン(2、3)の少なくとも一部は、複合ヤーン(2)であり、
前記複合ヤーン(2)は、開裂して一束のサブフィラメント(6a)になり、前記縦糸又は横糸ヤーン(2、3、4)に関して前記谷形部分(2b)及び前記山形部分(2a)を形成する複数の開裂性フィラメントを備え、
前記横糸ヤーン(2、3)および/または前記縦糸ヤーン(4)は、複合ヤーン(2)および標準ヤーン(3)を備え、
前記複合ヤーン(2)は、サブフィラメント(6a)からなる複数の分割可能なフィラメント(6)および支持-サブフィラメント(6b)を備え、
前記フィラメント(6)は、前記サブフィラメント(6a、6b)に開裂可能であり、
前記標準ヤーン(3)および前記複合ヤーン(2)は、少なくとも1つの標準ヤーン(3)と交互に配置された少なくとも1つの複合ヤーン(2)を備える、所定の配置に配置されていることを特徴とする生地(1)を製造する方法。
【請求項17】
更に、下記(d)及び(e)の工程を含む、請求項16に記載した生地(1)を製造する方法:
(d)前記複合フィラメント(6)の少なくとも一部を開裂して、サブフィラメント(6a)にする工程;及び
(e)工程(d)で開裂した前記サブフィラメント(6a)の少なくとも一部をカッティングしてフリースを形成する工程。
【請求項18】
前記工程(d)及び(e)の前又は後で、前記生地を、物品、好ましくは衣料品に仕立てる、請求項17に記載した方法。
【請求項19】
前記標準ヤーン(3)及び前記複合ヤーン(2)は、横糸方向に配置されている、請求項18に記載した方法。
【請求項20】
前記工程(d)及び/又は(e)は、ストーンウォシング、パーライトウォシング、サンドブラスト、ハンドスクラッピング、レーザー処理、漂白、アルカリ収縮ウォシング、酵素-バイオストンニング、化学処理、熱処理、機械的処理、生地の摩滅から選択された少なくとも一つで実施される、請求項17~19のいずれか1項に記載した方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フリース生地、フリース生地を製造する方法、及びフリース生地で製造された物品に関する。
【背景技術】
【0002】
フリースは、ワイヤー・ブラシュ、又はトリミングによってパイル・編織を形成するループによって、繊維をナッピングすることによって製造された厚手のディープ・パイルを少なくとも一方の面に有した生地である。フリースは、主として、合成ポリエステル、羊毛、又は綿ヤーンを、平織、パイル、又は編生地として製造される。フリース生地は、空気を絶縁する空隙を有していて、比較的軽量で、毛布、セーター、帽子、ジョギング用パンツ/セーター、ジム用衣服、フード、及び高性能野外衣服等の物品に広範に使用されている。
【0003】
然しながら、フリース生地には、いくつかの欠点がある。フリースは、深いパイル地で、嵩張った布である。そのために、幾つかの限られた用途にしか向いていない。また、嵩張っているので、例えば、フリース生地から衣服及び物品を製造するとき、取り扱いに問題が発生する。他の問題は、生地の見栄えと、生地のナップ(パイル)が、最期には、すり減ってしまうことである。
【0004】
特許文献1は、前面及び背面に、種々の繊維を有するフリース生地の製造方法を記載している。特許文献1に記載の方法は、生地の地糸としてのコットン又はシルク等天然繊維を織る工程、及びシンカー装置で、生地の前面に、シンカーループを形成する工程を含んでいて、ループの先端はカットされ、カット・パイルを形成し、次いで、カット・パイルを繊維群の中に引き上げ、トリミングしている。
【0005】
特許文献2は、メリヤス生地の感触と外観をもった織物の製造方法を記載している。その横糸は、山形部分及び谷形部分の両方に縦糸を供給する強糸と弾性糸を有している。前記織物を、例えば、織機から取り外したとき、又は洗濯した後に、縮んだ場合、弾性糸の方が、強糸より縮み方が大きい。上方及び/又は谷形部分の強糸が十分長い場合(少なくとも縦糸6本分)、これら上方及び/又は谷形部分は、メリヤス編みの様な方法でループを形成する。従って、織物からメリヤスを製造することができる。然しながら、特許文献2は、フリース生地に関しては記載していない。
【0006】
特許文献3は、外観が変化する織物を記載している。生地は、横糸及び縦糸から織られていて、生地のベース層を形成している。生地の更なる層は、生地の一方の面において、横糸のループで形成されている。この生地の更なる層は、構造的機能を有していないので、生地のベース層を損傷させずに、容易に開裂される。その結果、開裂される前に、更なる層が、少なくとも部分的に、ベース層を覆って、生地に最初の外観を与える。更なる層のループが壊され、取り外されると、さらに別の層のループが壊されず、そのままの場合、ベース層はもはや覆われず、生地は、第一の外観とは異なった第二の外観を呈する。
【0007】
ループの除去又は開裂は、生地の特徴を変えるだけで、織布としての外観は、維持されている。特許文献3はフリースについて記載していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】欧州特許第1925702号明細書
【文献】国際公開第2011/104022号
【文献】国際公開第2015/01481号
【文献】英国特許第1016862号明細書
【文献】国際公開2008/130563号
【文献】国際公開2012/062480号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする第1の課題は、少なくとも一方の面に、フリースを有しており、かつ前述した課題を解決する生地を提供することである。
【0010】
本発明が解決しようとする第2の課題は、少なくとも一方の面に、フリースを有しており、かつ前述した課題を解決する生地を、従来の方法より低コストで製造する方法を提供することである。
【0011】
これらの課題は、生地、物品、及び独立請求項に記載した方法に関する本発明によって解決される。好ましい態様は、従属請求項に記載されている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明により、第1の面及び第2の面を有しており、かつ横糸ヤーンと縦糸ヤーンをパターンに織った生地が提供される。前記生地において、横糸ヤーン又は縦糸ヤーンの少なくとも幾本かは、幾本かの縦糸ヤーン又は横糸ヤーン、前記第1の面において、山形部分及び前記第2の面において谷形部分を形成し、それによって、ヤーンの前記谷形部分及び山形部分は、ループを形成するようになっており、前記ループを形成するヤーンの少なくとも数本は、複数本のフィラメントを含んだ複合ヤーンであって、前記複数本のフィラメントを含んだ複合ヤーンは、一束のサブフィラメントに開裂されること、及び前記複合ヤーンのループは、少なくとも3本の隣接する縦糸/横糸ヤーンの長さに亘って延びていることを特徴としている。
【0013】
好ましい態様では、複合ヤーンのループは、サブフィラメントに開裂され、かつ、少なくとも一部、好ましくは総べてのサブフィラメントが開裂されて、サブフィラメントの長さに応じて、フリース状の表面、又はスエード状の表面が形成される。
【0014】
より詳細に説明すると、本発明は、生地、好ましくは、少なくとも片面にループが形成された生地に関する。以下の記載は生地に関するが、本発明の権利範囲を制限するものではない。
【0015】
生地の中に形成されるループは、複数本の開裂可能なフィラメントを含むか、又は複数本の開裂可能なフィラメントで製造された複合ヤーンから製造される。本明細書における用語「複合ヤーン」は、数本の開裂可能なフィラメントで製造されたヤーン、又は数本の開裂可能なフィラメントを含むヤーンを意味している。多数の開裂可能なフィラメントは、周知の方法で、一緒にされて、複合ヤーンに成形される。本発明における用語「開裂可能なフィラメント」は、複合されて、即ち、一緒に結合されて、1本のフィラメントになるような支持サブフィラメントを含んでいてもよい細いサブフィラメントから構成されているフィラメントと同義である。
【0016】
通常、複合フィラメントは、異なる熱可塑性樹脂材料を、同時押出によって製造される。或る態様では、支持フィラメントは、いわゆる、並列(サイド・バイ・サイド)配置される。本発明で有用なサブフィラメントの全ての態様において、サブフィラメントは、一時的に、一緒に維持されていて、開裂され、部分開裂され、そして必要に応じて、フリースに成形される。サブフィラメントの打込み数は、0.01~0.5デニールである。
【0017】
開裂可能なフィラメントは、当業界において周知で(参照:特許文献4)、通常、不織布製造に使用されている。不織布は、市場、例えば、Reifenhauser 又はFareから入手できる機械で製造することができる。従来技術では、フィラメントは、接合した後、開裂して、不織布の嵩を大きくしている。このようにして製造された生地の代表的な用途は、濾過技術である。フィラメントの開裂は、周知の方法で、カットせずに、実施されている。即ち、開裂は、サブフィラメントを、ヤーンに向かって長手向に開裂するためだけに行なわれている。本発明の好ましい態様では、開裂工程に加えて、フィラメントのカッティング工程がある。フィラメントのカッティング工程では、少なくても、ヤーンを構成する幾本かのサブフィラメントをカットする。即ち、サブフィラメントを、長手方向に切断して、もはや、生地全体にサブフィラメントを形成しないようにする。ヤーンのサブフィラメントの少なくとも一部のカット、即ち、切断は、ループに対して行なわれる。即ち、本発明の目的に沿う十分の長さがある複合ヤーンの山形部分又は谷形部分に対して行なわれる。
【0018】
本発明では、複合ヤーンを織って、非複合ヤーンを含んでいない生地を製造する。生地は、好ましくは、織布である。開裂可能な複合ヤーンは、縦糸方向及び/又は横糸方向に織られる。好ましい態様では、複合ヤーンは、横糸方向に織られる。以下の説明は、横糸方向に織る態様に関する。然しながら、本発明はこの態様に限定されない。本発明の特許請求の範囲は、横方向ヤーンに限定されない。本発明は、複合ヤーンを、縦方向ヤーンとして、及び、縦方向及び横方向の両方向で織った生地も包含する。ヤーンの方向に拘らず、本発明は、横(又は縦)方向において、ヤーンは、複合ヤーン及び標準ヤーンを含む、即ち、ヤーンは、複合ヤーンだけではないということである。標準ヤーンは、主要構造、即ち、生地の本体を形成する。他方、複合ヤーンは、複合ヤーンを形成している開裂可能なサブフィラメントの少なくとも一部をカットすると、ただちに、フリースを提供する。
【0019】
本発明において、用語「フリース」、「パイル」及び「フリース生地」又は「パイル生地」は、複合ヤーンを有する糸を織って、開裂させ、前記ヤーンの少なくとも一部をカットして複数のサブフィラメントにすることによって製造された生地を意味する。ヤーンの開裂及びカットは、ヤーンの谷形部分及び山形部分の長さが、[開裂+カット]工程を実施するのに十分の長さの複数の箇所で行なわれる。好ましい態様では、「筬(おさ)の上」で測ったループの長さは、好ましくは、少なくとも2mm、より好ましくは少なくとも2.5mmである。このことは、ループの長さは、「筬(おさ)の上」、即ち、生地を製造する間、織機から取り外すまで、ループの長さは、少なくとも2.5mmであったことを意味する。筬(おさ)の上で長さを測定する方法は以下の通りである:縦糸端部が総計5256本の生地の場合、11個の縦糸端部を通過するループが形成され、生地は、長さが1950mmの筬(おさ)の上に配置される。この場合、1950mmの中に5256個の縦糸端部が存在するので、11個の縦糸を通過する「筬(おさ)の上」のループの長さは、約4mm、即ち、[11×1950mm]/5256である。ループの長さに依存して、フリースの外観は変化する。上述したループの長さが、2.0~2.5mm~3.5mmの場合、フリースの外観は、スエード調の生地になる。ループが3.5mm以上の生地は、一層フリースの外観をもった生地になる。
【0020】
フリースとして、一層好ましい外観と、柔軟さの他に、断熱性が改良される。
【0021】
標準ヤーンは、好ましくは、複合ヤーンに変えられて、[標準ヤーンの本数/複合ヤーンの本数]の比率が、2:1~1:5(2:1及び1:5を含む)の範囲、より好ましくは1:2~1:3の範囲になる。即ち、好ましい生地は、標準ヤーン1に対して、2~3の複合ヤーンを有している。本発明の一態様では、横糸が交互に織られて、反復模様を形成し、例えば、生地の全体で、1本の標準ヤーン、2本の複合ヤーン、1本の標準ヤーン等々となる。
【0022】
本発明で有用な標準ヤーンは、当業界で周知のものであって、通常生地を製造するのに使用されている。標準ヤーンは、弾性又は実質的に非弾性でよい。本発明の態様において、標準ヤーンは弾性繊維で、複合ヤーンは非弾性繊維である。標準ヤーンと複合ヤーン間に収縮率の差があると、高さHが高いル-プを製造することができる(ここで、ル-プの高さHは、ループが浮動状態にある横糸/縦糸から、長くなった距離である)。一般に、標準ヤーンが、織機から離れたところで、複合ヤーンに対して収縮すればするほど、ループの高さHは、高くなる。高さが高いループは、高さが低いループに対して、ルーズになる。そうでなくて、標準ヤーンの収縮率が、複合ヤーンの収縮率と実質的に同じような場合、ループの高さは低くなる。換言すれば、ループの高さHは、一般的に、複合ヤーンに対する標準ヤーンの収縮率の差の関数で、その差が大きくなれば、ループの高さが高くなる。
【0023】
要約すると、ループは、「ルーズ」ループ、或いは生地に近接したものと言える。複合ヤーンに対する標準ヤーンの収縮率の差は、ループの高さ、即ち、生地の平面からの曲線の頂点の距離を引用して表現することができる。より一般的には、ループの形状の相違は、標準ヤーン及び複合ヤーンの弾性(即ち、収縮率)を選択することによって得られる。ループが、例えば、9本の縦糸を通過する横糸の場合のループの構造において、標準横糸と複合横糸が、同じ又は似た弾性を有している場合、ループは、実質的にフラットになる。標準ヤーンが、より以上に弾性で、従って、織機から取り外されたとき、及び最終工程で、複合ヤーン以上に収縮する場合、複合ヤーンで製造されたループは、両方の横糸の収縮率が同じ場合に製造されたループに比べて、深さが深くなる。
【0024】
弾性標準ヤーンの例、即ち、延伸出来、かつ、張力が解除されてシュリンク・バックする弾性標準ヤーンは、市場から入手でき、かつ、例えば、特許文献5及び特許文献6に記載されている。特許文献5は、弾性繊維の周囲に緩く巻回された非弾性繊維から製造されたコアを有する弾性繊維を開示している。特許文献6は、本出願人(Sanko Tekstil)によるもので、弾性伸縮性コアと非弾性のステープルファイバーのシースを有する弾性複合ヤーンを記載している;前記弾性伸縮性コアは、弾性フィラメントと;同時押出、混合又は捻りによって、前記弾性フィラメントと結合された低弾性のフィラメントを有する弾性複合ヤーン;で製造されている。低弾性のフィラメントは、伸張を調整し、回復させ、高弾性と優れた回復特性を有する単一繊維として機能させるものである。上述したように、弾性標準ヤーンが特許文献5及び特許文献6に記載されているが、非弾性標準ヤーンも使用されている。
【0025】
更なる標準ヤーンの例は、例えば、95%のコットン及び5%の「エラスタン(登録商標)」繊維から二重構造ヤーンである。使用に適する標準ヤーンは、弾性ヤーン或いは弾性成分を使用しない他のタイプのヤーンでもよい。他の態様では、標準ヤーンは、100%コットンヤーンである。一般的に、ループは、生地又は衣服の仕上げ処理で、生地の少なくとも一方の側から突出していて、効果的に開裂され、かつ、カットされ、即ち、切断される。
【0026】
標準ヤーンのヤーンサイズは、ステープルファイバーを使用する場合、Ne6~Ne100の範囲である。フィラメントヤーンを使用する場合、標準ヤーンのサイズは、20デニール~600デニールの範囲である。標準ヤーンは、単一ヤーン、或いは諸撚糸(プライヤーン)、又は撚り糸でよく、例えば、本発明では、Ne40/2ヤーンを使用することができる。縦糸Neは、好ましくは、4~100デニールの範囲である。縦糸は、染色されたヤーン、又は生繊維材料/非染色ヤーンでもよい。複合ヤーンのサイズは、20デニール~1800デニールの範囲でよい。
【0027】
標準ヤーンは、複合ヤーンの組織より密な組織の前記縦糸に対する谷形部分及び山形部分に交互に形成する。周知のように、生地において、横糸は、縦糸の山形部分及び谷形部分を交互に通過する。従って、「山形部分」は、縦糸を通過する標準ヤーンの部分であり、「谷形部分」は、縦糸を通過する標準ヤーンの部分である。
【0028】
本発明の態様によって、生地は、第1の面及び第2の面を有していて、一緒に織られて模様を形成する複数本の縦糸と複数の横糸を含んでいる。前述したように、横糸は、標準ヤーンと複合ヤーンを含んでいて、複合ヤーンは、生地の少なくとも一方の側、例えば、第2の面に延展するループ群を有している。それらのループ群は、前記複合ヤーンが、生地の第2の面に沿って、多くの縦糸を通過するときに形成される。同じ複合ヤーンが、生地の第1の面上の縦糸上を浮き糸として浮動しているとき、多くの縦糸を通過する。本明細書では、第1の面上の複合ヤーン部分は、接続部分として定義される。接続部分は、生地の一方の面上のループ群を支持する支持体を提供するとも言える。
【0029】
その結果、生地の第1の面が、生地の第2の面の上に位置していることを考慮すると、複合ヤーンのループ群は、複合ヤーンの「谷形部分」によって形成され、一方、接続部分は、複合ヤーンの「山形部分」によって形成される。ループ群は、好ましくは、ルーズ・ループ(緩いループ)である。ルーズ・ループは、生地に、完全には、接合されていないで、むしろ、添付図面に示したように、収縮によって、生地から突き出ている。
【0030】
各複合ヤーンの場合、ループを通過した縦糸の本数は、少なくとも3本、好ましくは3~24本の範囲、最も好ましくは7~15本の範囲である。各複合ヤーンの場合、接続部通過した縦糸の本数に対する、ループを通過した縦糸の本数の比率は、約3:1~24:1の間、好ましくは7/1~15/1本の間である。前述したように、本発明の態様では、標準ヤーンは弾性ヤーンで、延伸状態で織られて、生地を織機から外して、生地が収縮した時、生地の面にループを形成する。更に、生地の仕上げ及び衣服の洗濯仕上げの間に、収縮が形成される。標準ヤーンが、弾性ヤーンではない場合、生地にとって主要な収縮効果は、生地の仕上げ効果は、仕上げの間に得ることができる。収縮する前の縦糸密度は、20~70縦糸数/cmで、家庭での洗浄・洗濯後は、25~80縦糸数/cmである。好ましい態様では、収縮前の横糸密度は、20~70横糸数/cmの範囲で、家庭での洗浄・洗濯後は、横糸密度は、20~80横糸数/cmの範囲になる。
【0031】
複合ヤーンを含んだ生地を織った後、薬品又は物理的処理によって、生地又は衣服に、細いサブフィラメントが、支持体フィラメントから分離され、無数の細いサブフィラメントが除去される。これらの細いサブフィラメントは、非常に柔らかで、手触りが好い。更に、本発明の態様において、これらの細いサブフィラメントの少なくとも一部は、容易にカットし、そのエッジが、表面の頂部に達し、外観がスエード調又はフリース様になる。
【0032】
幾つかの態様によれば、生地の一方の面が、フリースを有していて、他方の面は、例えば、天然繊維(コットン、リネン、ウール等)、再生繊維(レーヨン、モダール繊維、リヨセル繊維)、合成繊維(ナイロン、アクリル等)等を示している。
【発明の効果】
【0033】
従来技術においては、上述した態様を得るために、先ず、フリース生地を製造して、次いで、それを、望ましい繊維分と、外観をもった他の生地に接着していた、ということに留意すべきである。この従来方法は、複雑、かつ、コスト高である。さらに、サブ・フィラメンを分離するのに、NaOHの浴(約100℃で、4~30度ボーメ)による不連続処理(30~60分間)等重化学処理も知られている。レーヨン、ウール、モダール等の繊維を含む生地にとって、この重化学処理は、非常にリスクがある。事実、これらの繊維の大部分は、この重化学処理を受けて、強度不足を示す(又は、多分、熔解する)。インディゴで染めた縦糸及び複合繊維を含む生地を、前記重化学処理すると、綿糸及び繊維は、多分、損傷を受け、とりわけ、長時間処理すると、処理されている間に、生地が曲がり、生地に、しわができる。さらに、長時間の処理の間に、インディゴが浸出して、インディゴの損失が発生する。
【0034】
本発明の更なる効果は、(少なくとも)片面にフリースを有していて、高比表面積を有している織った生地を簡単に製造できるという事実である。本発明の特徴として、生地の比表面積は、BET表面積試験により少なくとも80m2/gで、好ましくは100m2/g以上である。この値は、通常の生地よりも高い。
【0035】
この特徴は、多種多様な効果をもたらす。一例は、本発明による生地は、抗アレルギー効果を提供するために使用される。より詳細に説明すると、たとえば、ダニ及びその排泄物、及び塵埃が、使用者、特に、アレルギー疾患の使用者に不快感を与えることは周知である。生地の(少なくとも)片面に厚手(即ち、緻密)なフリースが形成されていると、ダニやアレルゲンのバリヤーとなり、ダニやアレルゲンは、生地を簡単には通過することができず、使用者の皮膚にとって心地よい。一例として、そのような生地は、例えば、マットレスのカバー又は枕等に効果的に使用され、抗アレルギー効果を発揮し、心地好い。
【0036】
本発明の態様によって、前述した特徴を一つ以上有する生地、特に高比表面積値を有する生地は、使用者に、化粧品及び/又は薬品を放散する衣料品に効果的に使用することができる。特に、カプセル化した薬品及び/又は化粧品を、生地の表面(即ち、フリ-ス処理した面)に保持させ、次いで使用者の皮膚に放散させることができる。特に、マイクロカプセルは、多種多様な化粧品化合物を含有することができ、これらのマイクロカプセルは、生地に付着される。使用している間に、これら化粧品化合物は、カプセルの破壊又は拡散によって、本発明の生地を身に付けている使用者の皮膚に放散される。この現象は、例えば、予め決めた温度、pH、或いは物理的圧力に達した時に発生する。本発明の生地のフリース側が高比表面積であるので、多数のマイクロカプセルを保持することができ、生地の保持容量を大きくし、その結果、使用者の皮膚に、多量の化粧品等化合物を与える能力が高められる。
【0037】
更に、本発明の態様によって、フリース処理した生地は、高い比表面積を有しているので、バクテリアル・セルロース、コラーゲン・ミクロフィブリル等バイオコーティングとして使用されている有機体(生物)の代謝産物の生物学的成長を高め、かつ、促進する。このように、高比表面積によって、バクテリア及び微生物が増殖する場所が拡大され、代謝産物の成長が促進される。
【0038】
更なる態様においては、複合ヤーンは、導電性ヤーン及び/又は導電性繊維を含んでいる。複合ヤーンに導電性材料を使用して、フリース面を形成すると、高比表面積によって、フリース面に、オーミック接触が確保される。そのため、一例として、生地と使用者との間の電子信号が、効率よく交換される。
【0039】
ブラッシング、エメリー研磨等機械的処理が、通常、生地に適用されて、フリース調又はスエード調外観を与えている。然しながら、これら伝統的な技術には限界があり、熟慮を要する。
【0040】
これら伝統的な技術による処理の間、例えば、エラスタン繊維(ELASTANE)は、損傷を受けるか、又は破壊される。二重構造のエラスタン繊維のみならず、エラスタン繊維混合ヤーンも、リスクを受ける。本発明による方法は、複合ヤーンが、機械的処理されるべき表面を覆い、標準ヤーンが保護し、エラスタン繊維が破壊されないという効果を有している。本発明の更なる効果は、生地の全面に亘って、非常に自然に、フリースが形成されることである。更に、本発明の更なる効果は、生地の製造において、ブラッシング工程が不要なことである。例えば、デニム地のジーンズの場合、ジーンズを洗濯処理する際に、直接フリースが形成される。ストーン・ウオッシング、酵素洗濯、漂白等々の処理の間、洗濯浴の中での摩擦により、フィラメントが開裂し、サブフィラメントがカットされてフリースが形成される。従って、独立した工程として、生地をブラッシングする必要が無い。このために、最終製品を製造するコストが低減する。
【0041】
本発明の生地を、特許文献2に記載されているパターン織り方に従って製造する場合、製造された生地は、メリヤス生地に特有の風合い、及び手触り、見た目、即ち、外観及び表面を有し、かつ通常、フリース効果による衣服の内表面を有している。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】本発明に適した複合ヤーンの開裂可能なフィラメントの断面図。
【
図2】本発明に適した複合ヤーンの開裂可能なフィラメントの断面図。
【
図2A】本発明に適した複合ヤーンの開裂可能なフィラメントの他方の断面の略図。
【
図2B】本発明に適した複合ヤーンの開裂可能なフィラメントの他方の断面の略図。
【
図2C】本発明に適した複合ヤーンの開裂可能なフィラメントの他方の断面の略図。
【
図2D】本発明に適した複合ヤーンの開裂可能なフィラメントの他方の断面の略図。
【
図2E】本発明に適した複合ヤーンの開裂可能なフィラメントの他方の断面の略図。
【
図2F】本発明に適した複合ヤーンの開裂可能なフィラメントの他方の断面の略図。
【
図3】本発明に適した生地の代表的態様の断面見取図。
【
図4A】開裂及びカッティング工程前の生地の代表的態様の断面見取図。
【
図4B】開裂及びカッティング工程後の生地の代表的態様の断面見取図。
【
図5】本発明の好ましい態様による生地の織り方の組織図。
【
図6】本発明の好ましい態様による生地の織り方の組織図。
【
図7】本発明の好ましい態様による生地の織り方の組織図。
【
図8】本発明の好ましい態様による生地の織り方の組織図。
【
図9】本発明の好ましい態様による生地の織り方の組織図。
【
図10】本発明の別の態様による生地の織り方の組織図。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1~4Bにおいて、生地1は、第1の面1aと第2の面1bを有している。生地1は、横糸2、3及び縦糸4から構成されていて、これらが織られて、一緒になって模様を形成している。
【0044】
横糸2、3の少なくとも幾本かは、多数の縦糸4の上で浮き糸となって、第1の面1aにおいて山形部分2a、3aを形成し、下方では、第2の面1bにおいて谷形部分2b、3bを形成している。糸の谷形部分及び/又は山形部分は、ループを形成している。
【0045】
ループを形成するヤーンの少なくとも幾本かは、複合ヤーン2であると有利である。上述したように、ここに示した態様では、複合ヤーン2は、横糸2、3である。然しながら、縦糸が、ループを形成する谷形部分及び/又は山形部を形成し、かつ、これら縦糸ループの部分が、複合ヤーンである態様も可能である。
【0046】
複合ヤーン2は、数本の開裂されたフィラメント6で製造されているか、又は数本の開裂されたフィラメント6を含んでいる。前述したように、生地1を織った後、又は衣料品を作った後に、複号ヤーン2のループ5(以降、「ループ5」と言う)の開裂性フィラメント6が、サブフィラメントに開裂し、カットして、生地に上述したフリース状外観を与える。
【0047】
本発明の代表的な態様による開裂性フィラメント6を、
図1に示してある。本発明の別の態様による開裂性フィラメント6を、
図2に示してある。
図1及び
図2において、同じ要素には同じ符号を付してある。通常、開裂性フィラメント6は、細いサブフィラメント6a及び6bから構成されている。通常、1本以上のサブフィラメント6a及び6bは、他のサブフィラメントより、高い機械特性を有しており、他のサブフィラメントを支持するために使用される。以降、説明を一層明確にするために、支持されているサブフィラメントを、「サブフィラメント6a」と呼び、一方、より弱いサブフィラメントを支持するサブフィラメントを、「支持-サブフィラメント6b」と呼ぶ。サブフィラメント6a及び支持-サブフィラメント6bは、当業界で周知の方法により、同時押し出し工程で、共に、同時押し出しされる。態様に示したように、サブフィラメント6a及び支持-サブフィラメント6bは、当業界で、いわゆる「開裂されたパイ」として知られている断面構造により、同時押し出しされる。然しながら、他の断面構造も可能である。周知の断面構造を、
図2A~2Fに示してある。さらに、本発明では、
図2A~2Fに示した以外の他の断面構造を使用することができる。即ち、本発明の他の態様による複合ヤーンの開裂性フィラメントの断面は、
図2A~
図2Fに示したものとは異なっている。
【0048】
図2Aは、横に並べた断面構造を示している。
図2Aに示してあるように、2本のサブフィラメント6aが、隣接して配置されている。
図2B及び2Cは、コア・シースの構造を示している。サブフィラメント6aは、支持フィラメント6b(
図2A)と共軸関係にあるか、又は支持フィラメント6b(
図2C)に対して偏心している。
図2Dは、「空洞中央パイ」構造を示していて、
図2の一つに似ている。
図2Eは、「開裂可能なパイ」構造を示していて、複数本のサブフィラメント6a(互いに違うこともある)が、隣同士に配置されて、閉鎖断面のフィラメントを形成している(実質的に円形)。
図2Fは、「海中の島」様構造を示していて、複数本のサブフィラメント6a(互いに違うこともある)が、隣同士に配置されて、閉鎖断面のフィラメントを形成しているが、閉鎖した断面を備えている。おそらく、支持フィラメント6bは、この態様の開裂可能なフィラメント6の中に挿入されている。
【0049】
複合ヤーン2の幾つかの箇所には、ポリエステル、ナイロン、ビスコース、リヨセル、アクリル繊維、ポリプロピレン等幾つかの繊維を使用することができる。互換性が無い材料を幾つかの箇所に使用して、開裂可能なフィラメントを製造し、開裂工程を拡大してもよい。この場合、互換性が無い材料は、例えば、ポリアミドとポリエステルの同時押し出し繊維である。
【0050】
好ましくは、細いサブフィラメント6aの打ち込み数は、0.01~0.5デニールの間である。幾つかの態様では、開裂可能なフィラメント6は、3~100本のサブフィラメントから構成されている。
【0051】
図1の態様は、8本のサブフィラメント6aと、中央又は支持サブフィラメント6bを有している。一方、
図2の態様では、4本のサブフィラメント6aと、支持サブフィラメント6bを有している。通常、複数本の開裂可能なフィラメント6が、複合ヤーン2に組み込まれている。この場合、複合ヤーン2のデニールは、好ましくは、20~1800デニールの間である。或る態様では、複合ヤーン2は、ステープル繊維又はフィラメント繊維から製造することができる。複合ヤーン2は、所望する色又は配色で着色してもよい。
【0052】
態様によっては、複合ヤーン2を、撚糸加工、テクスチャー加工、エラスタンと一緒に混合繊維にするか、又は外部の支持フィラメントと一緒に使用することができる。例えば、複合ヤーンを、支持ヤーンとしての20デニールのポリエステルと混合繊維にし、サブフィラメントに開裂されて「フリース」効果を提供することができるのに十分のフィラメントである限り、ステープル又はフィラメントを製造するあらゆるタイプのヤーン製造法で、複合ヤーンを製造することができる。
【0053】
体表的な態様によれば、開裂可能なフィラメント6は、複合紡糸繊維でもよく、及び/又は、異なる収縮特性を有しているサブフィラメント6aを有していてもよく、及び/又は、例えば、前記で引用した従来技術として周知のクリンプを有しているサブフィラメント6aを有していてもよい。
【0054】
複合ヤーン2の体表的な例を、
図1を参照して説明する。
図1は、ポリエステル/ナイロン開裂性フィラメント6の断面図である。この代表的な例において、ナイロンは、支持フィラメント6bとして使用され、開裂性フィラメントの本体を形成している。細いサブフィラメント6aは、ポリエステルベース繊維である。特に、それぞれの開裂性複合フィラメントのコアには、8本の細いポリエステル製サブフィラメントがある。開裂性フィラメント6の組成は、70%ポリエステル30%ナイロンである。72本の開裂性フィラメント6が、複合ヤーン2を形成している。複合ヤーン2のサイズは、150デニールである。その結果、各開裂性フィラメント6の平均デニールは、約2デニール(150デニール/72=2.083デニール)である。ポリエステル組成が70%とした場合、全ポリエステル部分は、2.083の70%;即ち1.45デニールである。各開裂性複合フィラメントが、8本のサブフィラメント6aを有していることを考慮すると、細いサブフィラメント6aの平均番手は約0.18(即ち、1.45デニール/8)である。従来のマイクロポリエステル繊維の繊度が、フィラメント当たり約0.5デニールであることを考慮すると、本発明の態様によるサブフィラメント6aは、従来のポリエステルフィラメントより、約65%細い。その結果、本発明のサブフィラメント6aは、柔軟性があり、かつ、強度が弱いので、容易にカット又は開裂して、ループが形成されている生地の表面に希望するフリースを生成する。
【0055】
代表的な態様によると、横糸は、複合ヤーン2の他に標準ヤーン3を含んでいる。「標準ヤーン」は、縦糸に結合することが出来れば、あらゆる種類の非複合ヤーンでよい。標準ヤーン3及び複合ヤーン2は、予め決められた設計、好ましくは、少なくとも1本の標準ヤーン3と交互に織られた少なくとも1本の複合ヤーンから構成される。
【0056】
一つの態様によれば、同じテストで測定した場合、標準ヤーン3は、複合ヤ-ン2より大きな収縮率を有している。収縮率を測定する装置は、当業界に周知であり、例えば、Uster Tensorapid tester (Uster, CH)(登録商標)を使用して収縮率を測定することが出来る。如何なる場合でも、実質的に同じ収縮率を有する標準ヤーンと複合ヤーンを使用することが出来、例えば、複合ヤーンと標準ヤーンの両者が、エラスタンを含んでいてもよい。
【0057】
代表的な態様においては、標準ヤーンは、実質的に、弾性繊維又は非弾性繊維でよい。好ましい態様においては、複合ヤーン2に対する標準ヤーン3の比率(即ち、標準ヤーンの本数と複合ヤーンの本数の間)は、2:1~1:5(2:1及び1:5を含む)の間である。複合ヤーンに2対する標準ヤーン3の平均比率は、1:2~1:3(1:2及び1:3を含む)の間がより好ましい。更に、標準ヤーン及び/又は複合ヤーンの特性、及び複合ヤーン2に対する標準ヤーン3の比率は一定でなくてもよく、生地全体で同じである必要はない。即ち、異なる面積で異なる比率で、横糸、複合及び/又は標準ヤーンを使用することによって、ディザインされる。
【0058】
上述したように、生地1は、複合ヤーン2がループ5を形成し、ループ5が、当業界で衆知の多様な方法で形成されるような方法で織られる。一例として、上述したように、収縮率の差があると、より緻密なループを形成するのに役立つ。然しながら、ループ5は、上述したように収縮率に差が無くても形成される。
【0059】
一般に、完成した生地を織機から外すとき、即ち、生地には、もはや、張力がかかっていないとき、生地は、収縮して(構造に依存して、主として、その本来の寸法に対して少なくとも10%収縮する)、谷形部分2b、3b及び/又は山形部分2a、3aが、生地の裏面に複数のループを形成する。収縮は、前述したタイプの弾性標準ヤーンを使用することによって、促進される。然しながら、弾性標準ヤーンが無くても、生地又は衣料品を洗濯することによって発生する自然の収縮によって、ルーが形成される。
【0060】
各ループ5を通過する隣接する縦糸4の平均本数は、少なくとも3本であるが、3~24の範囲が非常に好ましい。ただし、各ループ5を通過する縦糸4の本数は、全てのループ5にとって同じである必要はない。厳密には、全ての単一ループ5が、少なくとも縦糸4を通過する必要はない。もし、各複合ヤーン2にとって、各ループ5を通過する縦糸の平均本数が、少なくとも3本の場合、それぞれのループ5を通過する縦糸4の本数は、本発明の範囲から逸脱せずに、変えることが可能である。このことは、当業者のよく知るところである、
【0061】
織り方によって、異なる長さのループが形成される。例えば、第1の複合横糸ヤーンのループが、3本の縦糸ヤーンの上で浮糸になり、他方、他の複合横糸ヤーンのループが、5本の縦糸ヤーンの上で浮糸になる。一般に、幅広のループ5は、より長く、カットされ、突出したサブフィラメント6a、6bを形成し、従って、より強靭な「フリース効果」をあげる。
【0062】
好ましくは、全てのループ5は、生地1の同じ面に形成され、片方の面にフリースを有する生地が製造される。他の代表的な態様では、ループ(及び、形成されたフリース)は、生地の両面に形成される。一例として、
図3及び
図4に示した態様を参照すると、複合ヤーン2が、生地の第2の面1bに沿って、多数の縦糸ヤーン4を通過するとき、ループ5が形成される。同じ複合ヤーン2は、同じ複合ヤーン2が、生地の第1の面で、縦糸ヤーン4の上で浮糸となっている間に、多数の縦糸ヤーン2を通過する。本明細書、特許請求範囲、図面等では、第1の面の複合ヤーンの部分は、「接続部分7」と規定した。接続部分7は、主として、生地の他方の面のループを支持するものである。接続部分7は、ループ5に関して、本数が少なくなった縦糸ヤーン4の上で浮糸になっている。
【0063】
一態様によって、接続部分7を通過する縦糸ヤーン4に対する、ループ5を通過する縦糸ヤーン4の比率は、約3:1~24:1(3:1及び24:1を含む)の間である。好ましくは、生地組織において、標準ヤーン3が、前記縦糸ヤーン4に対して、交互に、谷形部分3b、及び山形部分3aを形成する。これら、谷形部分3b及び山形部分3aは、縦糸ヤーン4に対して、複合ヤーン2が形成する組織より緻密な組織を形成する。
図5~10の組織パターンは、本発明の態様を示している。
【0064】
代表的な態様によれば、複合ヤーン2のループ5は、実質的に、標準ヤーン3が形成する谷形部分3b及び山形部分3aに比べて、張力が小さい。
【0065】
同じく、代表的な態様によれば、製織後で、かつ、収縮前の縦糸密度は、cm当たり約20~70縦糸ヤーン(20及び70を含む)の間である。
【0066】
生地の処理の後、及び家庭での3回の洗濯の後、好ましい縦糸ヤーン密度は、cm当たり、約25~80縦糸ヤーン(25及び80を含む)の間である。家庭での洗濯は、60℃で実施し、次いで、乾燥させ、最後の洗濯と乾燥後、8時間のコンディショニング工程を行なった。これらのテストは、当業界で通常のもので、ASTMD 3776/96 及びBS63302Aに前記テスト法が記載されている。
【0067】
より好ましくは、製織後で、収縮前の縦糸密度は、cm当たり約25~60縦糸ヤーン(25及び60を含む)の間であって、家庭での3回の洗濯後、cm当たり約30~65縦糸ヤーンである。さらに、好ましくは、製織後で、収縮前の縦糸密度は、cm当たり約30~50縦糸ヤーン(30及び50を含む)の間であって、家庭での3回の洗濯後、cm当たり約35~55縦糸ヤーンである。一般に、縦糸及び横糸密度は、65%±5%湿度、及び20%±2%湿度で測定される。
【0068】
縦糸密度と同じく、代表的な態様は、横糸密度を規定することが出来る。製織後、かつ、収縮前の横糸密度は、cm当たり約20~70横糸ヤーン(20及び70を含む)の間である。家庭での3回の洗濯後の横糸密度は、cm当たり約25~88横糸ヤーンの間が好ましい。好ましい態様では、製織後で、収縮前の横糸密度は、cm当たり約30~60横糸ヤーン(30及び60を含む)の間が好ましい。家庭での3回の洗濯後、cm当たり約38~75横糸ヤーンの間が好ましい。より好ましくは、製織後、収縮前の横糸密度は、cm当たり約35~55横糸ヤーン(35及び55を含む)の間が好ましく、家庭での3回の洗濯後の横糸密度は、cm当たり約44~68横糸ヤーンの間が好ましい。
【0069】
本発明の更に代表的な態様では、縦糸ヤーンは、約Ne4及びNe100(4及び100を含む)のイギリス綿番手を有している。
【0070】
同じく、本発明の他の代表的な態様では、標準ヤーン3は、フィラメントヤーンから製造され、かつ、約20~600(20及び600を含む)の間のデニールを有している。他の代表的な態様では、標準ヤーン3は、約Ne6及びNe100(6及び100を含む)の間の番手のステープルファイバーで製造される。前述したように、複合ヤーン2は、約20~1800デニール(20及び1800を含む)、好ましくは、約75~600デニール、最も好ましくは150~450デニールの間のデニールを有している。
【0071】
代表的な態様の製織組織を
図5~10に示した。好ましい態様に従って、製織組織は、複合ヤーン2のループ5が、標準ヤーンの谷形/山形部分3a及び3b(ループ5が形成される生地1の綿に従って)よりも、縦糸ヤーン4から、常に、突出するような構造になっている。このため、特に、生地に機械的処理を施すと、全ての、又は殆どのストレスが、複合ヤーン2のループ5にかかり、ループ5が、よりよく開裂/カットし、良好な「フリース効果」を得ることができる。
【0072】
より詳細に説明すると、本発明の好ましい態様において、ループ5の長さ(即ち、ループが浮き糸となる縦糸ヤーンの数)が、ループが形成されている生地の同じ面に形成された標準ヤーンの谷形/山形部分(即ち、態様に示した谷形部分3b)の長さより長い場合、特に良好なフリース効果を得ることができる。ループ5の長さ、及び/又は谷形/山形部分の長さが、製織組織で一定でない場合、ループ5の長さは、ループ5を形成する複合ヤーン2に隣接して(即ち、図示した態様の真上又は真下)に配置されている標準ヤーンの谷形/山形部分の長さより長いことが好ましい。特に好ましい態様では、ループ5は、標準ヤーン3の谷形/山形部分の長さの少なくとも1.5倍である。
【0073】
製織の組織は、特に良好なフリース効果を奏功するに役立つ。一態様によれば、接続部分7は、複合ヤーンに隣接している標準ヤーン3の谷形/山形部分3a/3b(即ち、接続部分7の同じ面の一つ)に配置されている。換言すれば、ループ5の面に対向する生地の面において、複合ヤーンの接続部分7は、標準ヤーン3の谷形/山形部分の側(即ち、接続部分7の同じ面に配置された標準ヤーン3の部分(図示した態様では、山形部分3a)を通過し、複合ヤーン2に隣接している同じ縦糸ヤーン4を通過する。接続部分7は、複合ヤーン2に隣接している標準ヤーン3の谷形/山形部分の側を通過する縦糸ヤーン4の近傍の縦糸ヤーン4を通過する。用語「近傍」及び「おいて」は、ループ5および標準ヤーン3の長さに応じて変化する。好ましくは、「近傍」及び「おいて」が意味する距離は、2本の縦糸ヤーン4より小さい。
【0074】
図5~
図7において、複合ヤーン2のループ5の長さは、標準ヤーン3の谷形部分の長さより長く、かつ、接続部分7は、隣接するヤーンの山形部分に配置されている。特に、
図5においては、ループ5の長さは、谷形部分3bの長さの5.5倍である。
図6においては、ループ5の長さは、谷形部分3bの長さの2.3倍である。
図7においては、ループ5の長さは、谷形部分3bの長さの2.5倍である。フリース効果は、特に良好である。
【0075】
図8の態様においては、複合ヤーン2のループ5の長さは、標準ヤーン3の谷形部分の長さより長く、かつ、接続部分7は、隣接するヤーンの山形部分に配置されている。特に、ループ5の長さは、谷形部分3bの長さの1.17倍である。フリース効果は良好である。
【0076】
図9の態様においては、複合ヤーン2のループ5の長さは、標準ヤーン3の谷形部分の長さより大幅に長く(即ち、2.5倍)、かつ、接続部分7は、隣接するヤーンの山形部分には配置されていない。フリース効果は良好である。
【0077】
図10の態様においては、複合ヤーン2のループ5の長さは、標準ヤーン3の谷形部分の長さより長く(即ち、1.17倍)、かつ、接続部分7は、隣接するヤーンの山形部分には配置されていない。フリース効果は、容認可/良好である。
【0078】
上述したループ5を有する生地を製織した後、フリースを製造するこが可能である。特に、ループ5の少なくとも一部のフィラメント6が開裂され、サブフィラメント6aの少なくとも一部が、一方から他方へ、及び支持フィラメント6b(もし、支持フィラメント6bが存在する場合は)から分割され、次いで、サブフィラメントがカットされ、即ち、各サブフィラメントが、2つの部分に切断され、生地から、即ち、2本の隣接するループの間の接続部分から突出する。
【0079】
種々の方法によって、生地を延伸させることができる。好ましくは、生地1を、化学又は機械処理して、サブフィラメント6a、できれば支持フィラメント6bも分離し、それらの少なくとも一部をカットする。摩耗が、好ましい物理的処理法である。一例として、衣料品の製造には、ストーン・ウォッシングを使用することができる。サブフィラメント6aを開裂するには、環境温度で60分間のストーン・ウォッシングで十分であることが分かった。また、いくつかの態様では、石無しで、洗濯を行ってもよい。この場合、サブフィラメント6aの分離は、生地と生地の摩擦による。長いループは、カットし易く、フリース効果が大きい。
【0080】
通常、生地にストレスを与え、サブフィラメント6aを分離するのに適していて、かつ、生地1の他の部分に、実質的な、ダメージを与えない、多種多様な方法を使用することができる。
【0081】
サブフィラメント6aをカットすると、上述した「フリ-ス効果」を得ることができる。本発明の態様によって、ループの配列により、実質的に、環境温度で、サブフィラメント6aの分離を実施することができる。逆に、従来の方法では、サブフィラメント6a、6bを、高温下での、複合的な化学処理によって、分離していた。その結果、従来の方法は、エネルギーの無駄が多く、かつ、時間を浪費していた。さらに、分離工程を完了させるには、ブラッシング又はエメリー加工等機械的処理を必要とした。これらの処理は、生地にダメージを与える。
【0082】
逆に、本発明の態様により、簡単で安全な処理によって、サブフィラメント6a、6bを分離(即ち、開裂可能なフィラメント6の開裂)し、分離したサブフィラメント6a、6bをカットして、フリース構造にすることができる。好ましくは、本発明による開裂工程は、本発明による生地から製造された(又は、本発明による生地を含む)衣料品に対して実施される。好ましくは、この開裂工程は、「ストーン仕上げ」、即ち、衣料品に、「使用後」又は「クタクタに着古した」状態を与える工程と一緒に使用される。
【0083】
サブフィラメント6a、6bのループ5にあるフィラメント6の分離とカットは、化学処理、熱処理、機械的処理等適当な方法で、衣料品の形態で行うことができる。一例として、フィラメント6の分離とカットは、ストーンウォシング、パーライトウォシング、サンドブラスト、ハンドスクラッピング、レーザー処理、漂白、アルカリ収縮ウォシング、酵素-バイオストンニング、乾燥生地の摩滅等で例示される方法から選択された少なくとも一つの方法で行うことができる。尚、これらの処理方法は、好ましい例を挙げたもので、本発明を何ら制約するものでない。
【0084】
処理が、機械的処理(ストーン・ウォッシング、ハンドスクラッピング等)の場合、その処理は、好ましくは、ループ5が形成されている面に適用すると、上述した分離を、簡単かつ、迅速に実施できる。例えば、デニム生地の「裏側の面」に複合ヤーン2のループがあるようにディザインされている場合、即ち、複合ヤーン2のループが着用者の方に向くように(即ち、裏側)ディザインされているジーンズの場合、そのような生地で製造された1対のジーンズを、1時間、ストーンウォッシュして、フリース効果を形成し、裏側ではない状態(即ち、「通常の」状態)にすることができる。
【0085】
然しながら、ジーンズを、裏側の状態、(即ち、裏側を露出させた「裏返し」の形)でストーンウォッシュした場合、僅か30分間で、同じストーンウォッシュで、同じフリース効果を得ることができる。これは、アルカリ収縮処理又酵素ウォシングのような化学処理とは、関係がない。
【0086】
上述した簡単、かつ、非攻撃的な処理のどれもが、本発明の同じヤーンで、但し、複合ヤーンのループ5が無いヤーンでディザインした生地に、フリース効果を付与しないということに留意するべきである。上述した分離工程は、生地を仕立てる前に実施することができ、かつ、生地が、既に、衣料品に仕立てられている場合でも、実施することができるということに留意するべきである。換言すれば、分離されていない状態(即ち、ループ5が、カットされていない状態)のサブフィラメントを有する生地で衣料品を製造することができるということである。衣料品又は物品が、生地1で製造された後で、衣料品にストレスを掛けて、サブフィラメントを分離することができる。前述したように、サブフィラメントが分離されると、サブフィラメントは、非常に細いので、容易にカットされ、カットされたサブフィラメント6aは、生地の表面の頂部にエッジを形成し、そのためにフリースが形成される。
【0087】
前述した態様によって、ループ5は、生地1の片面だけに形成される。その結果、生地1の面1a、1bは、他方の面に比べて、非常に異なった外観と感触を有している。一例として、図示した態様では、ループ5は、生地1の第2の面1bに形成されている。その結果、ループ5のサブフィラメント6bを分離した後で、第2の面1bが、フリース状の外観と感触を示す。一方、第1の面1aには、ループ5が形成されていないので、第1の面1aには、フリースが形成されていない。
【0088】
ヤーンと製織パターンによって、生地1は、フリース面(図示した態様では第2の面1b)を有していて、第1の面1aは、例えば、デニム状になっている。表面が「非フリース」のデニムは、好ましい態様である。然しながら、他の解決法、例えば、ギャバジン、チャンバー(chamber)等も採用することができる。
【0089】
一般に、別の態様では、生地の一方の面がフリースタイプで、他方の面が、例えば、天然繊維(木綿、麻、ウール等)、再生繊維(レーヨン、モダール繊維、リヨセル繊維)、合成繊維(ナイロン、アクリル等)等を示すことも可能である。
【0090】
通常、製織パターンに従って、第1の面1a (又は、通常、ループ5が形成されていない面)は、好ましい視覚的効果を有しているが、第1の面1b(又は、通常、ループ5が形成されている面)は、フリース状態である。好ましい態様では、第一の面は、デニム用外観を呈している。
【0091】
他の態様に従えば、生地1の面1a及び1bは、ループ5を有しており、生地1の面1a及び1bの両面に、フリース状の外観と感触を呈している。
【0092】
上記を参照して、以下、本発明の代表的な態様による生地を製造する方法を説明する。
工程の第1の段階は、縦糸ヤーン4を提供することである。この工程は、ヤーンの厚さ及び縦糸の密度を選定することである。当業者には周知のように、縦糸ヤ-ンの他の特徴は、この工程で決定される。この工程は、インディゴで染めた縦糸ヤーンの選択を含んでいる。インディゴで染めた縦糸ヤーンを使用すると、製造された生地に、インディゴ染の固有の特徴の効果が付与される。
【0093】
更なる工程が、横糸ヤーン2、3に加えられる。特に、前記横糸ヤーンの部分が、複合ヤーン2、即ち、お互いに分離し、ストレスが掛かると、ただちにカットする複数本のサブフィラメントで製造された開裂可能なヤーンである。残部のヤーンが、標準ヤーン、即ち、複合ヤーンに適用されたと同じストレスではカットされないヤーンである。複合ヤーンが、サブフィラメントに開裂し、かつ、サブフィラメントをカットした後に、標準ヤーンが、生地に、構造を付与する。
【0094】
上記説明と同じように、この工程が、ヤーンの厚さ、収縮率、弾性、色、横糸密度等当業者に周知の横糸ヤーンの全ての特徴(但し、これらに限定されない)を確定することができる。
【0095】
複合ヤーン2は、ループ5を形成する。特に、好ましい態様によって、複合ヤーン2は、標準ヤーン3と交互に製織され、複合ヤーン2は、一連の山形部分2a及び谷形部分2bを形成する。製織後、生地1を織機から外し、仕上げ工程の間、ヤーンにかかる張力が除去されるので、生地は収縮する。従って、複合ヤーンが、生地の(少なくとも)一方の面に、ループ5を形成する。上述した本発明の態様によると、標準ヤーンは、弾性ヤーンでもよく、最も好ましくは、コアが弾性のヤーンである。これにより、製織後、生地の収縮が大きくなり、従って、ループが高くなり、かつ、フリースが簡単に形成される。
【0096】
製織機から生地を外すと直ぐに、収縮が、自然に発生し、ヤーンには、もはや、張力が掛かっていない。工程の間、生地を湿らすと、更に収縮する。好ましい態様によって、生地1は、物品、主として衣料品に仕立てられる。衣料品は、好ましくは、パンツ、ジーンズ、シャツ、スウェーター、ジャケット、及び他のあらゆる衣料品である。好ましい生地は、デニム又はデニム-外観生地である。好ましい衣料品は、一方の面がデニム-外観又はジーンズ-外観を有しており、他方の面がフリース層を有している、即ち、衣料品の一方の面にフリースが形成されている生地である。
【0097】
好ましくは、デニム製衣料品のフリース面は、衣料品の内側の面である。次いで、前記衣料品は処理されて、ループ5の開裂性フィラメント6のサブフィラメント6aが分離される。他の態様では、生地を物品に仕立てる前に、サブフィラメント6aが分離される。
【0098】
通常、サブフィラメントは、生地又は物品に、機械的又は化学的処理を施すことで分離され、生地1に何ら損傷を与えずに、サブフィラメント6a(おそらく、支持サブフィラメント6bも)は分離される。
【0099】
前述したように、サブフィラメント6aの寸法は、好ましくは、0.01~0.5デニールの範囲である。即ち、サブフィラメントは、非常に細いので、容易にカットされる;サブフィラメントは、複合ヤーンをサブフィラメントに分離するのと同じ工程又は後続工程で、カットされる。サブフィラメントをカットした結果、サブフィラメント6a、6bの短くて、かつ、細い複数本のスタブが形成され、(縦糸ヤーン及び標準ヤーンから製造された)生地1の構造体から突出する。この生地の状態は、生地の一方の面に形成されたフリースの場合を、
図4Bに模式的に示してある。前述したように、生地の両面に同じ構造を得ることができる。
以下、実施例を参照して、本発明をさらに詳細に説明する。但し、実施例は、織布の例を限定するものでない。
【実施例1】
【0100】
表1に示した値に従って、縦糸ヤーン、横糸ヤーン、縦糸密度、横糸密度、及び織機のセットアップを選択した。これらの選択によって、質量が約10~11oz/sqyd (335~375g/cm
2)の生地を製織した。製織組織パターンは、
図5に示した組織図に従って、選択した。横糸選択システムをもったドビー型織機を使用して、製織を行なった。製織後、生地を湿らせて、長手(縦糸)方向へ延伸させた。この過程で、生地は、幅(横糸)方向へ収縮し、弾性ヤーンが、縦糸ヤーンを一緒に引っ張る。複合横糸ヤーンは、弾性ヤーンではないので、本実施例で使用した標準横糸ヤーンと同じほどには収縮せず、生地の片方の面に浮き糸となって、ループを形成し、生地の背面の大部分を覆う。全てのループは、同じ長さ、即ち約4mmであった。
【0101】
収縮後、生地を、サンホライジング処理し、更に選択しても収縮が少なくなるようにした。インディゴ染めした縦糸ヤーンは、縦糸側の生地に、摩耗効果のような仕上げ効果で発揮するようなデニム生地の外観と品質を与えた。
【0102】
生地を裁断して、物品、即ち、内側にループが形成された1対のスウェットパンツに仕立てた。次いで、このスウェットパンツを、裏返し(「内側を表にして」)、40℃、30分間、ストーン・ウオッシングした。
【0103】
ストーン・ウオッシング工程が終了したら、生地の予めループが形成されている面は、染めていない複合ヤーンのサブフィラメントで構成され、白色のフリースで覆われていて、複合フィラメントを開裂することによって得た非常に細い番手のサブフィラメントであるので、極めて柔軟性に富んでいた。フリースのお陰で、インディゴが縦糸ヤーンから出て、当該衣料品を着用しているヒトの皮膚と接触するのを防止し、着用者が発汗しても、インディゴ染料が、滲出するのを防止する。
【0104】
少なくとも一部は、製織組織と標準横糸ヤーンを選択したので、製造された生地は、非常に高い弾性特性を有していた。これらの特性には、横糸方向だけではなく、あらゆる方向に延伸される性能を含んでいた。
【実施例2】
【0105】
表1に示した値に従って、縦糸ヤーン、横糸ヤーン、縦糸密度、横糸密度、及び織機のセットアップを選択した。製織組織パターンは、
図6に示した組織パターンに従って選択した。組織パターンを試験した結果、複合ヤーンに対する標準ヤーンの比率は、実施例1では1:2であったが、実施例2では1:1である。標準ヤーンの谷形部分の長さに対するループ5の長さの比は、7/3、即ち、約2である。
【0106】
製織した生地を使用して、物品、即ち、内面にループが形成されている1対のスキーニー・ジーンズ(細い、ピッタリしたジーンズ)を製造した。このジーンズの内側を露出させて、ストーン・ウオッシングし、ジーンズの内側を摩耗させた。ストーン・ウオッシング工程が終了した時点で、予めループが形成されている生地の面が、複合ヤーンのサブフィラメントの色のため、黒色のフリースで覆われていて、複合ヤーンを開裂して得た非常に細い番手のサブフィラメントのために、極めて柔軟性に富んでいた。
【実施例3】
【0107】
表1に示した値に従って、縦糸ヤーン、横糸ヤーン、縦糸密度、横糸密度、及び織機のセットアップを選択した。製織組織パターンは、
図7に示した組織パターンに従って選択した。組織パターンを試験した結果、複合ヤーンに対する標準ヤーンの比率は、実施例1と同じ1:2であった。標準ヤーンの谷形部分3bの長さに対するループ5の長さの比は、15/6,即ち、2.5である。更に、標準ヤーンの山形部分は、2本の縦糸ヤーンの上に浮き糸になっている。一方、複合ヤーン2の接続部分7は、隣接する縦糸ヤーンである1本の縦糸ヤーンの上で、浮き糸になっている。
【0108】
製織した生地を使用して、物品、即ち、内面にループが形成されているフリース付きジャケットを製造した。このジャケットの内側を露出させて、ストーン・ウオッシングし、ジャケットの内側を摩耗させた。ストーン・ウオッシング工程が終了した時点で、予めループが形成されている生地の面が、複合ヤーンのサブフィラメントの色のため、紫紅色(heather)/メランジ(melange)のフリースで覆われており、複合ヤーンを開裂して得た非常に細い番手のサブフィラメントのために、極めて柔軟性に富んでいた。
表1に、実施例1~3の特性を示す。
【表1】
【0109】
サブフィラメントは、非常に、細くて、弱いので、フリースを形成後、ピリングは問題にならない。何故ならば、繊維球は十分に強くなく、ピリングテスト結果が、荒いデニールを有する従来のヤーンで製造した生地よりもよくないので、繊維球が、表面に落下するからである。
【0110】
ループが形成された後で、かつ、フリースが形成される前、即ち、生地が通常状態(フィラメントが開裂されていない状態)に、上述した実施例の生地の全てに対して、装置MSP18Aで、ピリングドラム試験を実施した。周知のように、この試験方法は、生地が、生地自体の摩擦によって、どの程度反応するかを示すものである。基本的には、小さなシリンダーを、試験に供される生地で被覆し、内部も生地で被覆したドラムの中に置く。次いで、そのドラムを、一定速度で、一定時間回転させ、上述した摩擦を発生させる。試験の結果が、3以下の場合、良好な結果が得られる。上述した結果は、オペレータが視覚により観察して、サンプルと参照画像を比較することで評価される。実施例1,2及び3の生地は、2以下の結果を示した。
【0111】
下記の実施例は、本発明による生地の熱的及び空気透過性が改良されたことを示している。
【実施例4】
【0112】
実施例として、国際公開第2011/104022号による標準生地を、
図5の製織パターンに従って製造した。この生地で、ループを形成する横糸ヤーンは、木綿で製造した。
【0113】
本発明に於いて、(
図5の製織パターンに従って)、即ち、細いサブフィラメントの少なくとも一部分を分離及びカットすることによって、フリースに変換される木綿のル-プの替わりに、複合ヤーンを使用して、同じ生地を製造した。
【0114】
テスト装置TEXTEST FX3300(空気透過性測定用)を使用して、テストEN ISO 1109:2014(耐熱性測定)及びDIN EN ISO 9237:1995-12
4に従って、2種類の生地のテストを行った。2種類の生地のテストの結果を表2に示した。本発明による生地の性能は、標準ヤーンに比べて、顕著に優れていた。即ち、上述した標準ヤーンに比べて、耐熱性は、約75%改良され、空気透過性は、約70%低下していた。このように、両方の生地は、同じ製織組織、及び同じ標準縦糸ヤーンで製造されたものである。
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明によって、片面にフリース生地を簡単に製造できるので、フリース生地の製造コストは大幅に低減する。さらに、本発明によるフリース生地は、高比表面積を有しているので、衣料品として本来の効果である服飾的外観付与効果、耐熱性はもとより、多種多様な副次的効果をもたらす。即ち、適当に処理することによって、抗アレルギー効果、化粧品及び/又は薬品を放散する効果等医療効果を付与することができる。さらに、本発明の更なる効果は、生地の製造において、ブラッシング工程が不要であるので、日常の使用段階で、ストーン・ウオッシング、酵素洗濯、漂白等々の処理の間、洗濯浴の中での摩擦で、直接フリースが形成され、生地をブラッシングする必要が無い。このために、最終製品を製造する製造コストが大幅に削減される。従って、フリース製造業界はもとより、医療関連産業、医薬・化粧品業界等、多岐に亘る産業に貢献することができる。
【符号の説明】
【0116】
1:生地
1a:第1の面
1b:第2の面
2:横糸ヤーン(複合ヤーン)
2a、3a:山形部分
2b、3b: 谷形部分
3:横糸ヤーン(標準ヤーン)
4:縦糸ヤーン
5:ループ
6:フィラメント
6a:サブフィラメント
6b: 支持-サブフィラメント
7:接続部分