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  • 特許-データ絶縁伝送チップ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-09
(45)【発行日】2022-03-17
(54)【発明の名称】データ絶縁伝送チップ
(51)【国際特許分類】
   G08C 23/04 20060101AFI20220310BHJP
   H01L 31/0232 20140101ALI20220310BHJP
   H01S 5/40 20060101ALI20220310BHJP
   H01S 5/022 20210101ALI20220310BHJP
【FI】
G08C23/04 Z
H01L31/02 D
H01S5/40
H01S5/022
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017156830
(22)【出願日】2017-08-15
(65)【公開番号】P2019036117
(43)【公開日】2019-03-07
【審査請求日】2020-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596157780
【氏名又は名称】横河計測株式会社
(74)【上記1名の代理人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】風間 淳志
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-58731(JP,A)
【文献】特開2008-10837(JP,A)
【文献】特開2000-22256(JP,A)
【文献】特開昭62-28900(JP,A)
【文献】特開2004-72036(JP,A)
【文献】特開2001-242348(JP,A)
【文献】特開2011-130269(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0058976(US,A1)
【文献】特開2008-97569(JP,A)
【文献】特開2009-130610(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08C 13/00-25/04
H01L 31/0232
H01S 5/40、5/022
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数チャンネル分の入力部および出力部を備え、
チャンネル毎に前記入力部と接続したVCSEL出光部と前記出力部と接続したVCSEL受光部とが、光を透過する絶縁層膜を挟んで配置され、
全チャンネルの前記VCSEL出光部と前記VCSEL受光部と前記絶縁層膜とが一体的にモールドされていることを特徴とするデータ絶縁伝送チップ。
【請求項2】
前記VCSEL出光部と前記VCSEL受光部との間に光伝送路が形成され、
隣接するチャンネルの光伝送路同士の間に、光をシールドする壁が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のデータ絶縁伝送チップ。
【請求項3】
前記絶縁層膜を挟む一対のレンズを備えたことを特徴とする請求項1または2に記載のデータ絶縁伝送チップ。
【請求項4】
前記絶縁層膜がレンズ形状であることを特徴とする請求項1または2に記載のデータ絶縁伝送チップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁伝送に関し、特に、デジタルデータを高速に伝送することができる絶縁伝送チップに関する。
【背景技術】
【0002】
数百[V]を超える高電圧の電圧波形や、1[mV]に満たない微小電圧の電圧波形の測定に使用される測定器では、測定データを取得する測定データ取得部(入力部)と取得された測定データのデータ処理を行なうデータ処理部との間の電気的な絶縁が重要である。
【0003】
例えば、高電圧波形の測定では、絶縁する事によりデータ処理部側の保護、ユーザの安全性を確保できる。また、微小電圧波形の測定では、非常に高い測定精度が要求されるため、絶縁する事によりコモンモード電圧のノイズの影響を軽減できる。
【0004】
また、上記絶縁の重要性は、電圧測定の場合に限らず電流・抵抗・圧力・温度等の測定の場合も同様である。測定器の保護および測定精度の向上の観点から、これらの信号を絶縁しつつ伝送することが望まれる。
【0005】
測定値やクロックなどのデジタル信号を絶縁伝送するデジタルデータ絶縁伝送装置として、トランスタイプ、コンデンサタイプ、RFタイプ、GMR(Giant Magnetic Resistance)素子タイプ、フォトカプラタイプ等が挙げられるが、いずれもGbps以上の伝送速度を得ることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-097569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、Gbpsの伝送速度が可能なデジタルデータ絶縁伝送装置として、VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting LASER)を利用した光ASSYモジュールが開発されている。図4は、VCSELを利用した光ASSYモジュール300の構成例を示す図である。
【0008】
本図に示すように、光ASSYモジュール300は、入力部311、レーザドライバ312、TOSA(Transmitter Optical Sub-Assembly)VCSEL313、光導波路である光ファイバ320、ROSA(Receiver Optical Sub-Assembly)VCSEL331、リミッティングアンプ332、出力部333を備えている。
【0009】
VCSELを利用した光ASSYモジュール300は、主に高速信号を伝送するのに適しており、10Gbps以上の伝送も可能としている。外部インタフェースとしては、LVDS、S-LCDS、CML、PECL等が使用される。VCSELは、通常のレーザに比べ、安価に製造できるというメリットも有している。
【0010】
しかしながら、VCSELを利用した光ASSYモジュール300は、光ファイバを光導波路として用いており、多チャンネル化と小型化が難しいという課題がある。
【0011】
そこで、本発明は、高速にデータの絶縁伝送を行なう装置において、多チャンネル化と小型化を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明のデータ絶縁伝送チップは、複数チャンネル分の入力部および出力部を備え、チャンネル毎に前記入力部と接続したVCSEL出光部と前記出力部と接続したVCSEL受光部とが、光を透過する絶縁層膜を挟んで配置され、全チャンネルの前記VCSEL出光部と前記VCSEL受光部と前記絶縁層膜とが一体的にモールドされていることを特徴とする。
ここで、前記VCSEL出光部と前記VCSEL受光部との間に光伝送路が形成され、隣接するチャンネルの光伝送路同士の間に、光をシールドする壁が形成されていてもよい。
また、絶縁層膜を挟む一対のレンズを備えてもよい。
また、前記絶縁層膜がレンズ形状であってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高速にデータの絶縁伝送を行なう装置において、多チャンネル化と小型化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係る高速データ絶縁伝送チップの構成を示す図である。
図2】高速データ絶縁伝送チップの別構成例を示す図である。
図3】高速データ絶縁伝送チップの別構成例を示す図である。
図4】VCSELを利用した光ASSYモジュールの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る高速データ絶縁伝送チップ100の構成を示す図である。本図に示すように、高速データ絶縁伝送チップ100は、1次側と2次側とで絶縁構造なっており、1パッケージ内に複数のチャンネルを構成し、樹脂でモールドした構造となっている。モールドに用いる樹脂は、絶縁性能に優れた材料を用いるものとする。
【0016】
1次側の第1電源101と第1接地102、2次側の第2電源103と第2接地104は、それぞれ独立しており、1次側と2次側とは電気的に完全に絶縁されている。
【0017】
各チャンネルは、LVDS等の高速伝送に対応した差動入力構造の入力部111、レーザドライバ112、TOSA(Transmitter Optical Sub-Assembly)VCSEL113、光を透過する絶縁層膜114、ROSA(Receiver Optical Sub-Assembly)VCSEL115、リミッティングアンプ116、差動出力構造の出力部117を備えている。リミッティングアンプ116は、単にアンプであってもよい。TOSA_VCSEL113の出光側と、ROSA_VCSEL115の受光側とが絶縁層膜114を挟んで対向するように配置する。
【0018】
レーザドライバ112とTOSA_VCSEL113とでVCSEL出光部を構成し、ROSA_VCSEL115とリミッティングアンプ116とでVCSEL受光部を構成している。各チャンネルは、伝送方向に直交する方向に並んでいる。
【0019】
入力部111および出力部117の差動入出力ピンは、チャンネル間の干渉を防ぐため、ある程度の間隔を確保して配置する。
【0020】
絶縁層膜114は、一般的に絶縁材料として使用されている樹脂を用いることができ、例えば、熱硬化性のフェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等とすることができる。また、ガラスや石英などの無機材料も絶縁層膜114として用いることができる。
【0021】
データ伝送方向は、1次側から2次側方向のみならず、Ch-kのように、2次側から1次側方向の構成を含めてもよい。データ伝送速度は、VCSEL(TOSA_VCSEL113、ROSA_VCSEL115)の特性に依存し、例えば、100Mbps~数Gbpsの伝送が可能である。
【0022】
本実施形態の高速データ絶縁伝送チップ100は、光導波路として光ファイバを用いずに絶縁層膜114を用いているため、小型化が可能となっている。また、多チャンネル化も容易である。さらに、全体を一体的にモールドしたチップ形状となっているため、基板等への自動実装を容易に行なうことができる。
【0023】
なお、図2に示すように、各チャンネルにおいて、絶縁層膜114を挟むように集光用のレンズ118を配置してもよい。また、チャンネル間で漏れ光による干渉を防ぐために、隣接するチャンネルの光伝送路(TOSA_VCSEL113とROSA_VCSEL115との間)の間に、光をシールドする壁119を形成してもよい。あるいは、図3に示すように、絶縁層膜114をレンズ形状等としてもよい。
【0024】
高速データ絶縁伝送チップ100を、例えば、測定器に用いることで、絶縁部に搭載されるADコンバータの分解能を高めることができ、また、サンプリング速度を高速にすることが可能となる。すなわち、インバータ等の高電圧の測定対象に対して、高分解能で広帯域のデータ測定を行なうことが可能となる。
【符号の説明】
【0025】
100…高速データ絶縁伝送チップ、101…第1電源、102…第1接地、103…第2電源、104…第2接地、111…入力部、112…レーザドライバ、113…TOSA_VCSEL、114…絶縁層膜、115…ROSA_VCSEL、116…リミッティングアンプ、117…出力部、118…レンズ、119…壁
図1
図2
図3
図4