(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-09
(45)【発行日】2022-03-17
(54)【発明の名称】モールおよびカウンター
(51)【国際特許分類】
A47B 77/06 20060101AFI20220310BHJP
A47B 77/00 20060101ALI20220310BHJP
【FI】
A47B77/06
A47B77/00
(21)【出願番号】P 2017193895
(22)【出願日】2017-10-03
【審査請求日】2020-08-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000104973
【氏名又は名称】クリナップ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000349
【氏名又は名称】特許業務法人 アクア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 祥馬
(72)【発明者】
【氏名】手塚 隆太郎
【審査官】中村 百合子
(56)【参考文献】
【文献】実開昭52-159346(JP,U)
【文献】特開2017-164048(JP,A)
【文献】実開昭55-074454(JP,U)
【文献】実開昭62-182649(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 77/00-77/06
A47B 96/18
A47K 1/00
A47B 67/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納部が下方に配置されたモール付きカウンターであって、
前記カウンターは、上面及び下面が平坦に形成されていることによって水かえし及び前垂れを有しておらず、
前記モールは、前記カウンターの下面の外縁に沿って配置され、前記カウンターの外縁より後退した位置に配置された縦壁と、前記縦壁の下端から前方に向かって延びる底板とを備え、
前記底板は、奥側より先端側が上方に上がっていて、該底板全体に水受けとして機能する窪みが形成さ
れ、
前記縦壁は、前記底板へと水を誘導するものであり、
前記モールが、該モールを前記カウンターの下面に固定するために前記縦壁の上端から奥側に向かって延びる固定部をさらに備える、モール付きカウンター。
【請求項2】
前記底板の先端が、前記カウンターの先端よりも奥側に配されている、請求項
1に記載のモール付きカウンター。
【請求項3】
前記モールは、前記縦壁の上端から前方に向かって延びる上板を有し、
前記カウンターの下面と前記上板の上面との間に挟まれたパッキンが設けられており、
前記モールが、前記固定部を貫通するねじによって前記カウンターに固定されている、請求項
1又は
2に記載のモール付きカウンター。
【請求項4】
前記底板の先端の下面には、下方に突出した水切り用のかえしが形成されていることを特徴とする請求項1乃至
3のいずれか1項に記載のモール付きカウンター。
【請求項5】
前記上板の下面は、前記カウンターの外縁から前記縦壁に向かって斜めに下がる傾斜になっていることを特徴とする請求項
3に記載のモール付きカウンター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、システムキッチン等の下方に収納部を有するカウンターの下面の外縁に沿って配置されるモール、およびこれを備えたカウンターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、システムキッチンのカウンター(ワークトップ)には、上面の外縁に沿って水かえしが設けられていた。水かえしとはカウンターの主表面よりわずかに高く盛り上げた構造であり、カウンター上にこぼれた水をせき止める役割を有している。しかし多量の水がカウンター上にこぼれると、水かえしを乗り越えてしまう。そこで、カウンターの側周面に前垂れを形成して、前垂れの下端を幕板や収納部の前板の上辺近傍まで下げている。これにより、流れ落ちる水がカウンターの表面を伝って、幕板や収納部の前板の上を通り越してキャビネットの中に侵入することを防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許4940516号公報
【文献】特許4479517号公報
【文献】特許4669383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水かえしはカウンターより上に寸法を伸ばすものであり、前垂れはカウンターより下に寸法を伸ばすものである。したがってこれらはいずれも、カウンターの見かけ上の厚みを増すものである。一方、近年のデザイン性の向上により、カウンターの厚みを減らしたいという要請がある。カウンターしたがって、水かえしや前垂れに代わる水の侵入防止構造が望まれている。
【0005】
カウンターからの水の侵入防止構造を考えるとき、カウンターの下面の外縁に沿ってモールを配置し、このモールによって何らかの対策を講じることが考えられる。
【0006】
特許文献1には、カウンターの下面と箱体の上端部との間の隙間にレール部材(モールに相当する)が嵌め込まれ、レール部材にスライド式のタオル掛けなどを取り付ける構成が提案されている。
【0007】
特許文献2には、カウンタの側周面に、物品を保持する保持具を左右方向に移動自在に支持する支持レールが延設された構成が記載されている。
【0008】
特許文献3には、収納部の上方にある幕板に、他の機能を有する機能部品を取り付ける断面H型形状の取付部が形成された構成が記載されている。
【0009】
特許文献1から特許文献3のいずれの構成にあっても、カウンターの下側に配置される構成ではあるものの、水の侵入を防止できる構造は有していない。したがって本発明が課題とするカウンター表面を伝って収納部内に水が侵入することを防止することはできない。
【0010】
本発明は、このような課題に鑑み、水かえしや前垂れがなくてもカウンター表面を伝って収納部内に水の侵入を防止することが可能なモール、およびこれを備えたカウンターを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の代表的な構成は、収納部を下方に有するカウンターの下面の外縁に沿って配置されるモールであって、カウンターの外縁より後退した位置に配置された縦壁と、縦壁の下端から前方に向かって伸びる底板とを備え、底板は奥側より先端側が上方に上がっていて、該底板全体に水受けとして機能する窪みが形成されていることを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、カウンター上にこぼした水がカウンターの縁からしたたり落ちたとき、ある程度の量まではモールの水受けに溜めることができ、布巾などで拭きとることができるし、そのままであったとしてもここで蒸発させることができる。したがって、カウンター上に水かえしや前垂れを設ける必要がなくなり、カウンターの見かけ上の厚みを薄くすることができる。またカウンターを縁まで平坦にすることができる。これらのことから、カウンターの美観を向上させることができる。
【0013】
底板の先端の下面には、下方に突出した水切り用のかえしが形成されていてもよい。これにより、モールの水受けからあふれた水を底板の先端から直下にしたたらせることができる。したがって、水が収納部の内部に回り込むことを効果的に防止することができる。
【0014】
縦壁の上端から前方に向かって伸びる上板を備え、上板の下面は、カウンターの外縁から縦壁に向かって斜めに下がる傾斜になっていてもよい。これにより、カウンターの縁からしたたり落ちた水を、上板の下面、縦壁と伝わせて、効果的に底板の水受けまで導くことができる。
【0015】
本発明にかかるカウンターの代表的な構成は、下面の外縁に沿って上記のモールを備えたことを特徴とする。このカウンターに置いては、カウンターに水かえしや前垂れを設けずとも、カウンターからこぼれた水の収納部内への侵入を防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、水かえしや前垂れがなくてもカウンター表面を伝って収納部内に水を侵入することを防止することが可能なモール、およびこれを備えたカウンターを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】システムキッチンの全体構成およびモールの拡大図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0019】
図1は、システムキッチンの全体構成およびモールの拡大図を示す図である。
図1(a)に示すキッチン100は、収納部であるキャビネット120の上にカウンター110を備えている。キャビネットの側面には側板130が取り付けられている。カウンター110はL型となっていて、外角110a、内角110b、および部屋の壁につけられる端部角110cを有している。
【0020】
図1(a)および
図1(b)に示すように、カウンター110の下面の外縁に沿って、モール200が取り付けられている。すなわちモール200は、縦方向においてカウンター110と幕板124との間に、カウンター110と引出126との間に、またはカウンターと側板130との間に配置される。
【0021】
図2はモール200のパーツ構成を示す図である。モール200はカウンター110の直線部(角部以外の部分)に配置される部材であって、
図2では極端に短く描いている。カウンター110の外角110aに対応する位置には外角キャップ240が配置される。カウンター110の内角110bに対応する位置には内角キャップ250が配置される。カウンター110の端部角110cに対応する位置には端部キャップ左220、または端部キャップ右230が配置される。
【0022】
図3はモール200を説明する図である。モール200は同一断面の押し出し成形品であり、その長さはカウンター110の辺の長さに合わせて適宜切断して使用される。モール200は樹脂またはアルミニウム合金で成形することができる。
【0023】
モール200は、カウンター110の下面に固定するための固定部202を備える。固定部202はカウンター110の下面に沿う平坦な板である。固定部202の両面には、ねじを揉み込むためのガイド溝202a、202bが形成されている。ガイド溝202a、202bは、ねじの先端がすべらないようにガイドする役割と共に、固定部202の肉厚を薄くすることによってねじを貫通しやすくする役割を有している。
【0024】
縦壁204は、固定部202から下方に垂れ下がるように設けられている。縦壁204はカウンター110の外縁より後退した位置(奥まった位置)に配置される。
【0025】
底板206は、縦壁204の下端から前方(外側)に向かって伸びるように設けられている。底板206は奥側より先端206a側が上方に上がっていて、該底板全体に水受け208として機能する窪みが形成されている。底板206の先端206aの下面には、下方に突出した水切り用のかえし206bが形成されている。
【0026】
上板210は、縦壁204の上端から前方に向かって伸びるように設けられている。上板の下面210aは、カウンター110の外縁から縦壁204に向かって斜めに下がる傾斜になっている。これにより、カウンターの縁からしたたり落ちた水を、縦壁204に伝わせることができる。上板の上面210bはカウンター110の下面と平行になっていて、これらの間に防水用のパッキン212が圧縮して挟まれる。
【0027】
図4はモール200の機能を説明する図であって、
図4(a)は本実施形態にかかるキッチン100の要部を説明する図、
図4(b)は比較例として従来技術のキッチン300の要部を説明する図である。
【0028】
図4(a)に示すように、カウンター110は水かえしも前垂れもない平坦な形状をしている。これによりカウンターの厚みがそのまま使用者に観察される厚みとなり、従来に比して薄く感じられる。またカウンター110の天面が縁まで平坦であるため、シンプルな形状となっている。これらのことから、カウンターの美観を向上させることができる。
【0029】
カウンター110の上に水がこぼれた場合、水はカウンター110の縁をつたってモール200へと流れていく。このとき上板の下面210aが傾斜していることから、水は切れることなく縦壁204を介して底板206へとつたい、効果的に底板206の水受け208まで導くことができる。水受け208の容積は
図4(a)ではわずかなように見えるが、実際はカウンター110の直線部に沿って長く連通しているため、相応に大きな容積を有している。したがって、カウンター110上にこぼした水がカウンター110の縁からしたたり落ちたとき、ある程度の量まではモール200の水受け208に溜めることができ、ここで蒸発させることができる。
【0030】
また、こぼれた水が水受け208の容積を超えた場合であっても、底板の先端206aの下面にかえし206bが形成されていることにより、あふれた水を底板の先端206aから直下に(幕板124の外側に)したたらせることができる。したがって、水がキャビネット120の内部に回り込むことを効果的に防止することができる。なお、かえし206bは幕板124の前面よりも手前側に位置している。
【0031】
図4(b)に示す従来技術のキッチン300では、カウンター310の上面の外縁に沿って水かえし312が設けられている。カウンター310の上にこぼれた水は、まず水かえし312によってせき止められる。さらにカウンター310の側周面には前垂れ314が形成されている。前垂れ314の下端は幕板124や引出の前板の上辺近傍まで下げている。これにより、流れ落ちる水がカウンターの表面を伝って、幕板や収納部の前板の上を通り越してキャビネットの中に侵入することを防いでいる。
【0032】
図4(b)の構成では、使用者から観察されるカウンター310の厚みは、水かえし312から前垂れ314までの高さであり、本来のカウンター310の厚みよりもはるかに厚く見える。このためデザイン上の制約が生じ、美観の向上を図る上で障害の一つとなってしまう。
【0033】
これに対し本発明のように、カウンター110の外周を上に盛り上げたり下に垂らしたりする必要がなければ、カウンター110の厚みをそのまま薄く見せることもできるし、デザインに応じて厚くすることもできる。したがってデザイン設計上の自由度を増すことができ、カウンターの美観を向上させることができる。
【0034】
図5は端部キャップ左220を説明する図であって、
図5(a)は外側斜視図、
図5(b)は内側斜視図である。端部キャップ右230については左右対称であるため図示および説明を省略する。
【0035】
端部キャップ左220はモール200の切り落とした端面を隠す役割を有していて、外観を向上させるために取り付けられる。端部キャップ左220は、モール200の端部の外側を覆うカバー部222と、カウンター110の下面に固定するための固定部224を備える。固定部224はカウンター110の下面に沿う平坦な板である。固定部224には、固定用のねじを通すねじ穴226が設けられている。
【0036】
図6は外角キャップ240を説明する図であって、
図6(a)は外側斜視図、
図6(b)は内側斜視図である。外角キャップ240は、外角110aの下でモール200が突き合わされた端面を隠す役割を有している。外角キャップ240は、モール200の端部の外側を覆うカバー部242と、カウンター110の下面に固定するための固定部244を備える。固定部244はカウンター110の下面に沿う平坦な板である。固定部244には、固定用のねじを通すねじ穴246が設けられている。
【0037】
図7は内角キャップ250を説明する図であって、
図7(a)は外側斜視図、
図7(b)は内側斜視図である。内角キャップ250は、内角110bの下でモール200が突き合わされた端面を隠す役割を有している。内角キャップ250は、モール200の端部の外側を覆うカバー部252と、カウンター110の下面に固定するための固定部254を備える。固定部254はカウンター110の下面に沿う平坦な板である。固定部254には、固定用のねじを通すねじ穴256が設けられている。
【0038】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。例えば、洗面化粧台のようにカウンター上で水を取扱うもので、カウンターの下方に収納部を設けたものであれば本発明は有用に適用される。また、キッチン周辺の収納家具のカウンターのように、カウンター上に水を入れたものを載置したものであって、不意にこぼしてしまったときに、収納部への水の侵入を防ぐことができる。この他、当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、カウンターの下面の外縁に沿って配置されるモール、およびこれを備えたカウンターとして利用することができる。
【符号の説明】
【0040】
100…キッチン、110…カウンター、110a…外角、110b…内角、110c…端部角、120…キャビネット、124…幕板、126…引出、130…側板、200…モール、202…固定部、202a…固定部上面のガイド溝、202b…固定部下面のガイド溝、204…縦壁、206…底板、206a…先端、206b…かえし、208…水受け、210…上板、210a…上板の下面、210b…上板の上面、220…端部キャップ左、222…カバー部、224…固定部、226…ねじ穴、230…端部キャップ右、240…外角キャップ、244…固定部、246…ねじ穴、250…内角キャップ、252…カバー部、254…固定部、300…キッチン、310…カウンター、312…水かえし、314…前垂れ