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特許7037911取付架台、クライミングクレーンおよびクレーン本体の上昇方法
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  • 特許-取付架台、クライミングクレーンおよびクレーン本体の上昇方法 図1
  • 特許-取付架台、クライミングクレーンおよびクレーン本体の上昇方法 図2
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  • 特許-取付架台、クライミングクレーンおよびクレーン本体の上昇方法 図4
  • 特許-取付架台、クライミングクレーンおよびクレーン本体の上昇方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-09
(45)【発行日】2022-03-17
(54)【発明の名称】取付架台、クライミングクレーンおよびクレーン本体の上昇方法
(51)【国際特許分類】
   B66C 23/32 20060101AFI20220310BHJP
【FI】
B66C23/32 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017209461
(22)【出願日】2017-10-30
(65)【公開番号】P2019081629
(43)【公開日】2019-05-30
【審査請求日】2020-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000154901
【氏名又は名称】株式会社北川鉄工所
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】野島 昌芳
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭48-068373(JP,U)
【文献】実開昭59-030078(JP,U)
【文献】特開2016-137955(JP,A)
【文献】特開2009-073599(JP,A)
【文献】米国特許第03302749(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 23/00 - 23/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クライミングクレーンのクレーン本体を上昇させるための取付架台であって、
上記クレーン本体を鉛直下方から支持するインナーマストの下部に取付けられる取付基部を備えたインナーマスト取付部と、
上記インナーマストの周囲に設置されるアウターマストの下部に取付けられる第1取付架台と、
上記アウターマストの上部に取付けられる第2取付架台と、を備え、
上記インナーマスト取付部は、上記取付基部の周囲に配置された脚部を備え、
上記取付基部と上記脚部とを分割することが可能となっており、
記取付基部は、上記脚部から分割されることで、上記第1取付架台が配置されている第1位置から上記第2取付架台が配置されている第2位置に移動することが可能となっており、
上記脚部は、上記取付基部から分割されることで上記第2取付架台の上面に配置されることを特徴とする取付架台。
【請求項2】
上記アウターマストが、複数のアウターマスト単位から構成されており、
上記第2取付架台は、2つの上記アウターマスト単位を、当該第2取付架台を介して上下に結合することが可能となっていることを特徴とする請求項1に記載の取付架台。
【請求項3】
上記取付基部が上記第1位置から上記第2位置に移動するまでの間に、上記取付基部から分割された上記脚部が上記上面に仮固定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の取付架台。
【請求項4】
上記取付基部が上記第1位置から上記第2位置に移動した状態において、上記取付基部から分割された上記脚部が上記第1位置に残っており、
上記上面に仮固定された脚部と、上記第1位置に残った脚部と、が異なることを特徴とする請求項3に記載の取付架台。
【請求項5】
請求項1からのいずれか1項に記載の取付架台を備えていることを特徴とするクライミングクレーン。
【請求項6】
クライミングクレーンのクレーン本体を上昇させるための取付架台を用いた上記クレーン本体の上昇方法であって、
上記取付架台は、
上記クレーン本体を鉛直下方から支持するインナーマストの下部に取付けられる取付基部を備えたインナーマスト取付部と、
上記インナーマストの周囲に設置されるアウターマストの下部に取付けられる第1取付架台と、
上記アウターマストの上部に取付けられる第2取付架台と、を備え、
上記インナーマスト取付部は、上記取付基部の周囲に配置された脚部を備え、
上記取付基部と上記脚部とを分割することが可能となっており、
記取付基部を、上記脚部から分割することで、上記第1取付架台が配置されている第1位置から上記第2取付架台が配置されている第2位置に移動させ
上記脚部を、上記取付基部から分割することで上記取付架台の上面に配置することを特徴とするクレーン本体の上昇方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クライミングクレーンのクレーン本体を上昇させるための取付架台、該取付架台を備えたクライミングクレーンおよび該取付架台を用いたクレーン本体の上昇方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クライミングクレーンのクライミング方式は、フロアクライミング方式と、マストクライミング方式と、に大別される。フロアクライミング方式は、建築物の中央に形成した開口(「ダメ穴」と称される場合もある)にマストを通過させ、建築物の床の反力を利用してクレーン全体を上層階にせり上げていく方式である。
【0003】
より具体的には、まず、図5の(a)に示すように、建築物の最頂部にクレーンcを設置して昇降フレームを固定し、ベース架台bの基礎ボルトを開放する。次に、図5の(b)に示すように、昇降装置の油圧シリンダーを作動させてマストmを引き上げ、ベース架台bを途中階に固定する。次に、図5の(c)に示すように、昇降装置の油圧シリンダーを作動させて、クレーンcの旋回体部分をマストmの最上部までクライミングさせる。以上の図5の(a)~(c)に示す各工程を必要回数繰り返し、図5の(d)に示すように建築物を建築していく。
【0004】
一方、マストクライミング方式は、地上にベース架台bを設置し、建築済みの階層における最頂部の位置に合せてマストmを順次継ぎ足しながらクレーンcの本体部分をせり上げていく方式である。より具体的には、例えば、図5の(e)に示すように、マストmを順次継ぎ足しながらクレーンcの本体部分をせり上げていく。この方式では、同図に示すように、一定間隔毎にマスト支えを建築物側へ設ける必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したフロアクライミング方式では、建築物の中央に開口を形成する必要があり、この開口をクレーンが上昇した後で塞ぐ必要があり、クレーン解体時にはクライミングクレーンのクレーン本体とは別に該クレーン本体を解体するための解体用のクレーンを組み立てる必要があるため、建築物の工期が延びてしまうという問題点がある。
【0006】
一方、マストクライミング方式では、図5の(e)に示すように、建築物からマスト支えを高さ方向に一定間隔で設ける必要がある。また、この方式では、図5の(f)に示すように、建築物側のブラケット、マストステー、およびマストバンドが必要となる。さらに、この方式では、建築物の形状が平坦でなく、曲面や傾斜が存在している場合には、それぞれの形状に応じたマスト支えの構造が必要となり、作業期間が長期化し建築コストが嵩んでしまう場合がある。
【0007】
本発明は、以上の問題点に鑑みて為されたものであり、その目的は、建築物を簡易かつ短期間で建築することができる取付架台などを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る取付架台は、クライミングクレーンのクレーン本体を上昇させるための取付架台であって、上記クレーン本体を鉛直下方から支持するインナーマストの下部に取付けられる取付基部を備えたインナーマスト取付部と、上記インナーマストの周囲に設置されるアウターマストの下部に取付けられる第1取付架台と、上記アウターマストの上部に取付けられる第2取付架台と、を備え、少なくとも上記取付基部は、上記第1取付架台が配置されている第1位置から上記第2取付架台が配置されている第2位置に移動することが可能になっている構成である。
【0009】
上記構成によれば、取付架台を設置するだけで、インナーマストを上昇させてクレーン本体を上昇させることができる。フロアクライミング方式では、建築物の中央に開口を形成し、この開口をクレーンが上昇した後で塞ぐ必要があったが、上記構成によれば、このような作業は不要である。このため、フロアクライミング方式と比較して、建築物の工期を短縮することができる。すなわち、本発明の一態様に係る取付架台によれば、建築物を簡易かつ短期間で建築することができる。
【0010】
また、本発明の一態様に係る取付架台は、上記アウターマストが、複数のアウターマスト単位から構成されており、上記第2取付架台は、2つの上記アウターマスト単位を、当該第2取付架台を介して上下に結合することが可能となっていても良い。上記構成によれば、第2取付架台を介してアウターマスト単位を次々と継ぎ足していくだけで、アウターマストの上端の位置を簡易により高くすることができる。
【0011】
また、本発明の一態様に係る取付架台は、上記インナーマスト取付部は、上記取付基部の周囲に配置された脚部を備え、上記取付基部と上記脚部とを分割することが可能となっており、上記取付基部は、上記脚部から分割されることで上記第1位置から上記第2位置に移動し、上記脚部は、上記取付基部から分割されることで上記第2取付架台の上面に配置されていても良い。上記構成によれば、取付基部から分割された脚部を第1位置から第2位置に移動させるだけで取付基部を脚部に固定させることが可能となり、インナーマスト取付部をより簡易に第2取付架台に配置させることができる。
【0012】
また、本発明の一態様に係る取付架台は、上記インナーマスト取付部は、上記取付基部の周囲に配置された折り畳み式の脚部を備え、上記インナーマスト取付部は、上記脚部を折り畳むことで上記第1位置から上記第2位置に移動することが可能となっており、上記脚部の一部は、折り畳んだ上記脚部を元の形態となるように開くことで上記第2取付架台の上面に配置されていても良い。上記構成によれば、脚部を折り畳んだり、折り畳んだ脚部を元の形態となるように開いたりすることを繰り返すことで、インナーマスト取付部をより簡易に第2取付架台に配置させることができる。
【0013】
また、本発明の一態様に係る取付架台は、上記インナーマスト取付部は、上記取付基部の周囲に配置された伸縮式の脚部を備え、上記インナーマスト取付部は、上記脚部が縮まることで上記第1位置から上記第2位置に移動することが可能となっており、上記脚部の一部は、上記脚部が上記第2位置に移動した後に伸びることで、上記第2取付架台の上面に配置されていても良い。上記構成によれば、脚部の伸縮を繰り返すことで、インナーマスト取付部をより簡易に第2取付架台に配置させることができる。
【0014】
また、本発明の一態様に係るクライミングクレーンは、上記取付架台を備えていることが好ましい。上記構成によれば、建築物を簡易かつ短期間で建築するクライミングクレーンを実現できる。
【0015】
また、本発明の一態様に係るクレーン本体の上昇方法は、クライミングクレーンのクレーン本体を上昇させるための取付架台を用いた上記クレーン本体の上昇方法であって、上記取付架台は、上記クレーン本体を鉛直下方から支持するインナーマストの下部に取付けられる取付基部を備えたインナーマスト取付部と、上記インナーマストの周囲に設置されるアウターマストの下部に取付けられる第1取付架台と、上記アウターマストの上部に取付けられる第2取付架台と、を備え、少なくとも上記取付基部を、上記第1取付架台が配置されている第1位置から上記第2取付架台が配置されている第2位置に移動させる方法である。上記方法によれば、建築物を簡易かつ短期間で建築することができる。
【0016】
また、本発明の一態様に係る取付架台は、上記インナーマスト取付部は、上記第1取付架台に対する水平方向の向きを回転させることが可能になっており、上記インナーマスト取付部は、上記第1位置における配置位置において、水平方向に90度回転することで、上記第1位置から上記第2位置に移動することが可能となっても良い。上記構成によれば、第1取付架台に対する向きを水平方向に適切に回転させることで、インナーマスト取付部をより簡易に第2取付架台に配置させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一態様に係る取付架台またはクレーン本体の上昇方法によれば、建築物を簡易かつ短期間で建築することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】(a)は、クライミングクレーンの初回作業時における状態を示す側面図であり、(b)は、本発明の実施の一形態に係る取付架台(高自立架台)を組立てたときのクライミングクレーンの状態を示す側面図であり、(c)は、フロアクライミング中のクライミングクレーンの状態を示す側面図であり、(d)は、高自立作業時におけるクライミングクレーンの状態を示す側面図であり、(e)は、2回目に取付架台を組立てたときのクライミングクレーンの状態を示す側面図である。
図2】(a)は、インナーマスト取付部、第1取付架台および基礎の構造を示す側面図であり、(b)は、基礎に対する第1取付架台の設置状態を示す側面図である。
図3】(a)は、インナーマスト取付部および第1取付架台の一例の構造を示す上面図であり、(b)は、取付基部および脚部の接続状態を示す側面図である。
図4】(a)は、インナーマスト取付部および第1取付架台の別の例の構造を示す上面図であり、(b)は、インナーマスト取付部および第1取付架台のさらに別の例の構造を示す上面図であり、(c)は、インナーマスト取付部および第1取付架台のさらに別の例の構造を示す上面図である。
図5】(a)~(d)は、従来のフロアクライミング方式の工法を説明するための図であり、(e)および(f)は、従来のマストクライミング方式の工法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〔クライミングクレーンの構造〕
図1に示すように、クライミングクレーン100は、インナーマスト構造体(インナーマスト)1、インナーマスト取付部2、第1取付架台3a、第2取付架台3b、ベースフレーム固定具4、クレーン本体5、アウターマスト構造体(アウターマスト)6、横梁7、基礎8、および、第1取付架台固定具9を備える。クライミングクレーン100は、建築物の高さの増加に伴って後述のクレーン本体5を上昇させていくクライミングを行うクレーンである。なお、本明細書にてクライミングとは、後述する高自立架台を設置して、クレーン本体5を備えるインナーマスト構造体1を上昇させることを言う。
【0020】
また、本明細書にて、後述する第1位置は、図1の(b)に示す第1取付架台3aが配置されている位置のことであり、第2位置は、同図に示す第2取付架台3bが配置されている位置のことである。
【0021】
インナーマスト構造体1は、クレーン本体5を鉛直下方から支持する柱であり、建築物(不図示)の高さに応じて、複数のインナーマスト1aおよび1b(インナーマスト単位)を継ぎ足して使用する。なお、本実施形態では、5つのインナーマスト1aおよび1bが継ぎ足されている。最も鉛直下側に配置されるインナーマスト1aの下部には、後述の取付基部2aが取付けられる。本発明の実施の形態においてインナーマスト1aおよび1bを5つ有したインナーマスト構造体1を示したが、本発明はこれに限定されない。
【0022】
インナーマスト取付部2は、インナーマスト構造体1を支え、第1取付架台3aまたは第2取付架台3bの上面にベースフレーム固定具4によって固定される。インナーマスト取付部2の脚部2bと、第1取付架台3aとは、図2の(a)に示すようにベースフレーム固定具4により固定される。図3に示す例では、インナーマスト取付部2は分割面2cにおいて取付基部2aと脚部2bとに分割することができるようになっている。しかしながら、インナーマスト取付部2の構造は、図4の(a)~(c)に示すように、インナーマスト取付部2を第2取付架台3bの上方に移動させ固定することができるものであれば、その構造に特に制限はない。
【0023】
第1取付架台3aは、第1取付架台固定具9により基礎8に固定され、インナーマスト取付部2およびアウターマスト構造体6を固定することができる。第1取付架台固定具9による第1取付架台3aの固定の詳細は図2の(b)に示す通りである。同図に示すように、基礎8に埋め込まれた第1取付架台固定具9のメス側に、第1取付架台3aを貫通した第1取付架台固定具9のオス側を挿入し、押え金10を用いて、第1取付架台3aを基礎8に固定する。
【0024】
第2取付架台3bは、アウターマスト構造体6の上面に設置され、クライミングクレーン100が高自立作業時にインナーマスト取付部2を固定する。第2取付架台3bはアウターマスト構造体6の上面に設置可能な構造であり、インナーマスト取付部2を固定できる構造であれば、その構造に制限はない。また、インナーマスト構造体1を昇降時に、クレーン本体5を第2取付架台3bの上面に固定するため、第2取付架台3bを設置する面はインナーマスト構造体1の高さより低くなる。したがって、アウターマスト構造体6の高さはインナーマスト構造体1の高さより低くなるよう制限されるが、第2取付架台3bの鉛直上下にアウターマスト6aおよび6b(アウターマスト単位)をジョイント可能な構造とすることによりアウターマスト構造体6の高さを制限なく高くすることができる。
【0025】
ベースフレーム固定具4は、インナーマスト取付部2の脚部2bと、第1取付架台3aとを固定するために用いられる。クレーン本体5は公知のものを用いることができる。
【0026】
アウターマスト構造体6は、第1取付架台3aに固定され、アウターマスト構造体6の上面で第2取付架台3bを固定する。本実施形態では、3つのアウターマスト6aおよび6bを継ぎ足して形成されたアウターマスト構造体6が使用されている。なお、アウターマスト構造体6を形成するために継ぎ足されるアウターマスト6aおよび6bの数は、3つに限定されるものではない。そして、アウターマスト構造体6を複数用いることによりアウターマスト構造体6の高さを調整することができる。
【0027】
横梁7は、インナーマスト構造体1のクライミング時に、クレーン本体5を固定するために第2取付架台3bの上面に設置される。本発明の実施の形態において第2取付架台3bの上面に円柱状の横梁7を示しているが、ベル受け架台5bを第2取付架台3b上面に固定できれば、横梁7の構造に特に制限はない。
【0028】
本実施形態のクライミングクレーン100は、クレーン本体5を上昇させるための取付架台20(高自立架台)が設置される。取付架台20は、インナーマスト取付部2を備えるものであり、このインナーマスト取付部2に備えられる取付基部2aは、クレーン本体5を鉛直下方から支持するインナーマスト構造体1の下部に取付けられる。
【0029】
また、取付架台20は、さらに、第1取付架台3aと第2取付架台3bとを備えており、第1取付架台3aはインナーマスト構造体1の周囲に設置されるアウターマスト構造体6の下部に取付けられ、第2取付架台3bはアウターマスト構造体6の上部に取付けられる。少なくとも取付基部2aは、第1取付架台3aが配置されている第1位置から、第2取付架台3bが配置されている第2位置に移動することが可能になっている。
【0030】
上記構成によれば、取付架台20を設置するだけで、インナーマスト構造体1を上昇させてクレーン本体5を上昇させることができる。フロアクライミング方式では、建築物の中央に開口を形成し、この開口をクレーンが上昇した後で塞ぐ必要があったが、上記構成によれば、このような作業は不要である。このため、フロアクライミング方式と比較して、建築物の工期を短縮することができる。すなわち、本実施形態の取付架台20によれば、建築物を簡易かつ短期間で建築することができる。
【0031】
また、取付架台20は、アウターマスト構造体6が、複数のアウターマスト6aおよび6bから構成されており、第2取付架台3bは、2つのアウターマスト6aおよび6bを、第2取付架台3bを介して上下に結合することが可能となっている。これにより、第2取付架台3bを介してアウターマスト6aおよび6bを次々と継ぎ足していくだけで、アウターマスト構造体6の上端の位置を簡易により高くすることができる。
【0032】
また、図3の(a)および(b)に示すように、インナーマスト取付部2は、取付基部2aの周囲に配置された脚部2bを備え、取付基部2aと脚部2bとを分割面2cにおいて分割することが可能となっている。また、取付基部2aは、脚部2bから分割されることで、第1取付架台3aが配置されている第1位置から、第2取付架台3bが配置されている第2位置に移動する。また、脚部2bは、取付基部2aから分割されることで、第2取付架台3bの上面に配置される。これにより、取付基部2aから分割された脚部2bを第1位置から第2位置に移動させるだけで、取付基部2aを脚部2bに固定させることが可能となり、インナーマスト取付部2をより簡易に第2取付架台3bに配置させることができる。
【0033】
〔クライミングクレーンを用いる建築物の工法について〕
上述した構造のクライミングクレーン100を用いる建築物の工法について、図1の(a)から図1の(e)を基に説明する。
【0034】
(クライミングクレーンの概要)
図1の(a)に示すように、クレーン本体5が取付けられたインナーマスト構造体1は、インナーマスト取付部2を介して第1取付架台3aに固定され、さらに第1取付架台3aを介して基礎8に固定される。そして、図1の(b)に示すように、インナーマスト構造体1の周囲にアウターマスト構造体6を設置する。
【0035】
(フロアクライミング)
まず、アウターマスト構造体6の上面に第2取付架台3bを設置し、第2取付架台3bの上面に横梁7を設置する。
【0036】
次に、図1の(c)に示すように、クレーン本体5を下降させ、ベル受け架台5bと横梁7とを固定する。ベル受け架台5bを横梁7に固定することにより、クレーン本体5がアウターマスト構造体6に固定される。ベル受け架台5bを固定後、インナーマスト取付部2を分割面2cにおいて取付基部2aと脚部2bとに分割する。図1の(c)では分割された脚部2bがベースフレーム固定具4により第1取付架台3aに固定され、そのまま残っている状態を示すが、脚部2bとベースフレーム固定具4とをすぐに撤去してもよい。
【0037】
そして、インナーマスト取付部2から脚部2bを分割することにより、インナーマスト取付部2に固定されたインナーマスト構造体1は、クレーン本体5に支えられ鉛直方向に自由に移動することができる。そこで、インナーマスト取付部2に固定されたインナーマスト構造体を上昇させ、第2取付架台3bの上方に固定した脚部2bを取付基部2aにジョイントさせる。このとき、第2取付架台3bの上面にベースフレーム固定具4により脚部2bを仮固定しておくことが望ましい。なぜなら、事前に脚部2bをベースフレーム固定具4に仮固定することにより取付基部2aと脚部2bとのジョイント時に位置合わせが容易となるためである。また、インナーマスト構造体1を持ち上げる際、取付基部2aと脚部2bとが接触してフロアクライミングの障害とならないよう、取付基部2aの位置を調整することもできるためである。
【0038】
(高自立作業)
図1の(d)および(e)に示すように、インナーマスト構造体1を第2取付架台3b上方に固定後、クレーン本体5の固定を解除し、クレーン本体5を上昇させる。この時、図1の(e)に示すように、第2取付架台3bをアウターマスト構造体6の上面に設置できる構造にするだけではなく、第2取付架台3bにアウターマスト構造体6を固定する機能(換言すればアウターマスト構造体6とアウターマスト構造体6とをジョイントする機能)を備えることが好ましい。なぜなら、第2取付架台3bがアウターマスト構造体6を固定する機能を備えることにより、フロアクライミングを複数回行うことができるからである。さらに、クライミングクレーン100の高さを容易に調節することもできるためである。
【0039】
(クライミングクレーンに適用可能なインナーマスト取付部の構造)
次に、図4の(a)~(c)を参照して、本発明のクライミングクレーン100に適用可能なインナーマスト取付部2の他の例について説明する。
【0040】
(折り畳み式の脚部)
図4の(a)に示すインナーマスト取付部2は、折り畳み式の脚部2bが取付基部2aの四隅に取付けられ、折り畳みおよび折り畳んだ脚部2bを元の形態となるように開くことが可能な構造となっている。脚部2bを第2取付架台3bへ接触しない角度へ折り曲げることにより、インナーマスト取付部2を第2取付架台3bへ接触させずにインナーマスト構造体1を昇降させることができる。また、脚部2bがインナーマスト取付部2から分割されないため、インナーマスト取付部2の第2取付架台3bへの固定が容易となる。
【0041】
また、インナーマスト取付部2は、脚部2bを折り畳むことで上記第1位置から上記第2位置に移動することが可能となる。一方、脚部2bの一部は、折り畳んだ脚部2bを元の形態となるように開くことで、第2取付架台3bの上面に配置される。これにより、脚部2bを折り畳んだり、折り畳んだ脚部2bを元の形態となるように開いたりすることを繰り返すことで、インナーマスト取付部2をより簡易に第2取付架台3bに配置させることができる。
【0042】
(伸縮式の脚部)
図4の(b)に示すインナーマスト取付部2は、取付基部2aの内部または取付基部2aの周辺に脚部2bを収納する構造である。インナーマスト構造体1を昇降させる際に脚部2bを収納することにより、インナーマスト取付部2を第2取付架台3bへ接触させずにインナーマスト構造体1を昇降させることができる。
【0043】
インナーマスト取付部2は、取付基部2aの周囲に配置された伸縮式の脚部2bを備える。また、インナーマスト取付部2は、脚部2bが縮まる(収納される)ことで上記第1位置から上記第2位置に移動することが可能となる。一方、脚部2bが上記第2位置に移動した後に、脚部2bの一部が伸ばされて第2取付架台3bの上面に配置される。このように脚部2bの伸縮を繰り返すことで、インナーマスト取付部2を簡易に第2取付架台3bに配置することができる。
【0044】
(回転式のインナーマスト取付部)
図4の(c)に示すインナーマスト取付部2は、取付基部2aの周囲に配置された脚部2bを備えている。また、インナーマスト取付部2は、インナーマスト取付部2の脚部2bが、第2取付架台3bに接触した状態から、インナーマスト取付部2の脚部2bが第2取付架台3bに接触しない状態に回転させる(同図に示す破線の状態から実線の状態に回転させる)構造である。インナーマスト取付部2の向きを脚部2bが第2取付架台3bに接触しない状態に回転させることにより、インナーマスト取付部2の脚部2bが第2取付架台3bに接触しないので、インナーマスト構造体1を上昇させることができる。インナーマスト取付部2の第2取付架台3bに対する向きを回転させる構造とすることにより分割面2cのような構造上弱い点がなくなり、インナーマスト取付部2の強度を上げることができる。
【0045】
すなわち、インナーマスト取付部2は、第1取付架台3aに対する水平方向の向きを回転させることが可能になっている。インナーマスト取付部2は、上記第1位置における配置位置において、(破線に示す状態から)水平方向に90度回転することで、インナーマスト取付部2の脚部2bが、第2取付架台3bに接触した状態から第2取付架台3bに接触しない状態となる。これにより、インナーマスト取付部2の脚部2bが第2取付架台3bに接触しないので、インナーマスト取付部2を上記第1位置から上記第2位置にすることが可能となる。また、第1取付架台3aに対する向きを水平方向に適切に回転させることで、インナーマスト取付部2を簡易に第2取付架台3bに配置させることができる。
【0046】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 インナーマスト構造体(インナーマスト)
1a,1b インナーマスト
2 インナーマスト取付部
2a 取付基部
2b 脚部
2c 分割面
3a 第1取付架台
3b 第2取付架台
4 ベースフレーム固定具
5 クレーン本体
6 アウターマスト構造体(アウターマスト)
6a,6b アウターマスト(アウターマスト単位)
7 横梁
8 基礎
9 第1取付架台固定具
10 押え金
100 クライミングクレーン
図1
図2
図3
図4
図5