(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-09
(45)【発行日】2022-03-17
(54)【発明の名称】フィンガー移動装置、プレス装置及びフィンガー移動方法
(51)【国際特許分類】
B21D 43/05 20060101AFI20220310BHJP
B21D 43/10 20060101ALI20220310BHJP
【FI】
B21D43/05 Q
B21D43/05 B
B21D43/05 F
B21D43/05 G
B21D43/10 B
B21D43/10 C
(21)【出願番号】P 2018002945
(22)【出願日】2018-01-11
【審査請求日】2020-11-27
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(74)【代理人】
【識別番号】100123559
【氏名又は名称】梶 俊和
(74)【代理人】
【識別番号】100177437
【氏名又は名称】中村 英子
(73)【特許権者】
【識別番号】000128876
【氏名又は名称】株式会社アマダプレスシステム
(74)【代理人】
【識別番号】100123559
【氏名又は名称】梶 俊和
(74)【代理人】
【識別番号】100177437
【氏名又は名称】中村 英子
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(72)【発明者】
【氏名】村田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】小林 亮平
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-174739(JP,A)
【文献】特開平06-142996(JP,A)
【文献】実開昭57-007633(JP,U)
【文献】実開平05-024284(JP,U)
【文献】特開2017-202491(JP,A)
【文献】特開平05-169169(JP,A)
【文献】実開平03-126242(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 43/05
B21D 43/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを把持するフィンガーを載置するための、交換可能な金型と一体的に設けられたフィンガー台座、を有するプレス装置と、
前記プレス装置の側方に位置し、前記ワークの搬送方向における上流側から下流側に前記ワークを把持して搬送するための前記フィンガーが着脱される着脱部、及び、前記着脱部が両端に設けられたアーム、を有する搬送装置と、
の間で前記フィンガーを移動させるフィンガー移動装置であって、
前記フィンガーを保持し、前記フィンガー台座と前記着脱部との間を移動する保持部を備えたことを特徴とする、フィンガー移動装置。
【請求項2】
前記プレス装置は、上下移動するスライドを有し、
前記金型は、前記スライド側に設けられた上型と、前記上型と対に設けられた下型と、を有し、
前記フィンガー台座は、上下方向において前記下型の上面よりも下にあることを特徴とする、請求項1に記載のフィンガー移動装置。
【請求項3】
前記保持部を前記搬送方向に移動させる搬送方向駆動部と、
前記保持部を上下方向に移動させる上下方向駆動部と、
を備えたことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のフィンガー移動装置。
【請求項4】
前記着脱部の高さと前記フィンガー台座の高さとは異なることを特徴とする、請求項2又は請求項3に記載のフィンガー移動装置。
【請求項5】
前記フィンガーは、複数の穴部を有し、
前記保持部は、前記複数の穴部にそれぞれ嵌合する複数のガイドピンを有し、
前記複数のガイドピンは、前記保持部が前記フィンガー台座に移動した際に、前記フィンガーが前記フィンガー台座へ載置される動作又は前記フィンガー台座から前記フィンガーを受け取る動作を妨げないように配置されていることを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のフィンガー移動装置。
【請求項6】
前記フィンガーは、前記複数の穴部とは異なる複数の穴部を有し、
前記フィンガー台座は、前記複数の穴部とは異なる複数の穴部にそれぞれ嵌合する複数のガイドピンを有することを特徴とする、請求項5に記載のフィンガー移動装置。
【請求項7】
前記プレス装置は、ストレートサイド型のプレス装置であることを特徴とする、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のフィンガー移動装置。
【請求項8】
前記プレス装置は、前記プレス装置に対して着脱可能なプレートを有し、
前記フィンガー台座が、前記プレートを介して前記金型と一体的に設けられたことを特徴とする、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のフィンガー移動装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のフィンガー移動装置を側面に備えたことを特徴とする、プレス装置。
【請求項10】
ワークを把持するフィンガーを載置するための、交換可能な金型と一体的に設けられたフィンガー台座、を有するプレス装置と、
前記プレス装置の側方に位置し、前記ワークの搬送方向における上流側から下流側に前記ワークを把持して搬送するための前記フィンガーが着脱される着脱部、及び、前記着脱部が両端に設けられたアーム、を有する搬送装置と、
の間で前記フィンガーを移動させるフィンガー移動装置によるフィンガー移動方法であって、
前記フィンガー移動装置は、前記フィンガーを保持し、前記フィンガー台座と前記着脱部との間を移動する保持部を備え、
前記フィンガーを前記着脱部に装着する際に、前記フィンガー移動装置によって前記フィンガー台座から前記着脱部に前記フィンガーを移動させる工程と、
前記フィンガーを前記着脱部から取り外した後に、前記フィンガー移動装置によって前記着脱部から前記フィンガー台座に前記フィンガーを移動させる工程と、
の少なくともいずれか一方を含むことを特徴とする、フィンガー
移動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィンガー移動装置、プレス装置及びフィンガー移動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワークに対して複数の加工を行う加工技術として、トランスファー型、順送型、タンデム型等のプレス装置を用いたシステムがある。小型のプレス装置を複数台(例えば、6~10数台)並べて一連の加工を行うタンデム型のシステムにおいては、プレス装置の間にワークを搬送する搬送装置が配置される。搬送装置は、ワークを搬送方向に搬送するためのアームと、アームの搬送方向における両端に設けられワークを保持(把持)する着脱可能なフィンガーと、ワークを一時的に載置する中間台と、を有する。搬送装置は、一方のフィンガーによって所定のプレス装置によって加工が終了したワークをプレス装置から中間台に搬送し、他方のフィンガーによって中間台から次の加工を行うプレス装置にワークを搬送する。
【0003】
所定の加工が終了し、所定の加工とは異なる次の加工を行う前に、金型の交換が行われる。また、金型を交換する際には、搬送装置のアームの両端に装着されているフィンガーも一緒に交換される。例えば、特許文献1には、トランスファプレスにおいて、金型及びフィンガーをともに搬出・搬入する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、タンデム型の小型のプレス装置及び搬送装置のシステムにおいて、搬送装置のフィンガーの交換は交換の全工程が手動によって行われることがある。その場合、金型及びフィンガーの交換に例えば20~30分の時間を要している。金型及びフィンガーの交換は、例えば1日に7~8回以上行われる場合もあり、金型及びフィンガーの交換に要する時間が全体の工程に占める割合が無視できないものとなっている。このため、フィンガーの交換の一部を自動で行うために、例えば、フィンガーをプレス装置側のフィンガー台座に自動で移動させるような機能を搬送装置側に有するようにすることが考えられる。すなわち、終了した加工に用いられたフィンガーを取り外してフィンガー台座に置いたり、次の加工で用いられるフィンガーが載せられたフィンガー台座からフィンガーを取り付けたりすることを、搬送装置が自動で行うことが考えられる。しかし、フィンガー台座は金型の下型よりも低い位置に設けられているため、搬送装置によって自動でフィンガーの移動を実現するためには、搬送装置の加工中における上下方向のストロークの範囲を、フィンガーの移動のためだけにフィンガー台座に合わせて大きくする必要がある。搬送装置において上下方向のストロークが大きくなることで搬送装置のアームの動作の俊敏性が低下し、搬送装置の加工中における生産性が低下してしまう。また、搬送装置によって自動でフィンガーの移動を行うような機能を有するようにしたとしても、フィンガーの移動は片方ずつしかできず、アームの両端のフィンガーの移動を一度に行うことはできない。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、複数のプレス装置及び複数の搬送装置を用いて加工を行う際のフィンガーの交換に要する時間を低減することができるフィンガー移動装置、プレス装置及びフィンガー移動方法を提供することを例示的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の趣旨を有する。
【0008】
[趣旨1]
ワークを把持するフィンガーを載置するための、交換可能な金型と一体的に設けられたフィンガー台座、を有するプレス装置と、
前記プレス装置の側方に位置し、前記ワークの搬送方向における上流側から下流側に前記ワークを把持して搬送するための前記フィンガーが着脱される着脱部、及び、前記着脱部が両端に設けられたアーム、を有する搬送装置と、
の間で前記フィンガーを移動させるフィンガー移動装置であって、
前記フィンガーを保持し、前記フィンガー台座と前記着脱部との間を移動する保持部を備えた、フィンガー移動装置である。
【0009】
[趣旨2]
前記金型は、前記スライド側に設けられた上型と、前記上型と対に設けられた下型と、を有し、
前記フィンガー台座は、上下方向において前記下型の上面よりも下にある、フィンガー移動装置であってもよい。
【0010】
[趣旨3]
前記保持部を前記搬送方向に移動させる搬送方向駆動部と、
前記保持部を上下方向に移動させる上下方向駆動部と、
を備えた、フィンガー移動装置であってもよい。
【0011】
[趣旨4]
前記着脱部の高さと前記フィンガー台座の高さとは異なる、フィンガー移動装置であってもよい。
【0012】
[趣旨5]
前記フィンガーは、複数の穴部を有し、
前記保持部は、前記複数の穴部にそれぞれ嵌合する複数のガイドピンを有し、
前記複数のガイドピンは、前記保持部が前記フィンガー台座に移動した際に、前記フィンガーが前記フィンガー台座へ載置される動作又は前記フィンガー台座から前記フィンガーを受け取る動作を妨げないように配置されている、フィンガー移動装置であってもよい。
【0013】
[趣旨6]
前記フィンガーは、前記複数の穴部とは異なる複数の穴部を有し、
前記フィンガー台座は、前記複数の穴部とは異なる複数の穴部にそれぞれ嵌合する複数のガイドピンを有する、フィンガー移動装置であってもよい。
【0014】
[趣旨7]
前記プレス装置は、ストレートサイド型のプレス装置である、フィンガー移動装置であってもよい。
【0015】
[趣旨8]
前記プレス装置は、前記プレス装置に対して着脱可能なプレートを有し、
前記フィンガー台座が、前記プレートを介して前記金型と一体的に設けられた、フィンガー移動装置であってもよい。
【0016】
[趣旨9]
趣旨1から趣旨8のいずれか1項に記載のフィンガー移動装置を側面に備えた、プレス装置である。
【0017】
[趣旨10]
ワークを把持するフィンガーを載置するための、交換可能な金型と一体的に設けられたフィンガー台座、を有するプレス装置と、
前記プレス装置の側方に位置し、前記ワークの搬送方向における上流側から下流側に前記ワークを把持して搬送するための前記フィンガーが着脱される着脱部、及び、前記着脱部が両端に設けられたアーム、を有する搬送装置と、
の間で前記フィンガーを移動させるフィンガー移動装置によるフィンガー移動方法であって、
前記フィンガー移動装置は、前記フィンガーを保持し、前記フィンガー台座と前記着脱部との間を移動する保持部を備え、
前記フィンガーを前記着脱部に装着する際に、前記フィンガー移動装置によって前記フィンガー台座から前記着脱部に前記フィンガーを移動させる工程と、
前記フィンガーを前記着脱部から取り外した後に、前記フィンガー移動装置によって前記着脱部から前記フィンガー台座に前記フィンガーを移動させる工程と、
の少なくともいずれか一方を含む、フィンガー交換方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、複数のプレス装置及び複数の搬送装置を用いて加工を行う際のフィンガーの交換に要する時間を低減することができるフィンガー移動装置、プレス装置及びフィンガー移動方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態のプレス装置と搬送装置とを有するシステムを示す斜視図
【
図3】実施形態の搬送装置の構成を示す(a)正面図、(b)斜視図、(c)端部拡大図
【
図5】実施形態のフィンガー移動装置の構成を示す斜視図
【
図6】実施形態のプレート、フィンガー台座及びフィンガー移動装置を示す(a)上面図、(b)正面図
【
図7】実施形態の(a)装着工程を説明する図、(b)取り外し工程を説明する図、(c)〔2〕又は〔2〕’の要部の状態を示す斜視図
【
図8】実施形態の
図7(a)〔1〕の状態を示す(a)正面図、(b)斜視図
【
図9】実施形態の
図7(a)〔2〕の状態を示す(a)正面図、(b)斜視図
【
図10】実施形態の
図7(a)〔3〕の状態を示す(a)正面図、(b)斜視図
【
図11】実施形態の
図7(a)〔4〕の状態を示す(a)正面図、(b)斜視図
【
図12】実施形態の
図7(a)〔5〕の状態を示す(a)正面図、(b)斜視図
【
図13】実施形態の
図7(a)〔6〕の状態を示す(a)正面図、(b)斜視図
【発明を実施するための形態】
【0020】
[実施形態]
以下の実施形態において、プレス装置による加工の対象物であるワークの搬送方向(以下、単に搬送方向という)をX軸方向、上下方向をZ軸方向ともいう。また、プレス装置の正面に向かって前後方向、すなわち搬送方向(X軸方向)及び上下方向(Z軸方向)に直交する方向をY軸方向ともいう。
【0021】
(プレス装置、搬送装置及びフィンガー移動装置を用いたシステム)
図1は、複数(例えば、6~10数台)の小型のプレス装置100を、搬送方向に並べて一連の加工を行うタンデム型のシステムを示す図である。このシステムは、複数のプレス装置100と、複数のプレス間搬送機200と、複数のフィンガー移動装置300と、システム用制御装置400と、を備えている。
【0022】
各プレス装置100間には、所定のプレス装置100から搬送方向における下流側に位置する次のプレス装置100にワークを搬送するための搬送装置であるプレス間搬送機200が配置されている。言い換えれば、2つのプレス間搬送機200の間に、プレス装置100が配置されている。
図1では、1台のプレス装置100と2台のプレス間搬送機200を図示しているが、実際には
図1の両端に複数のプレス装置100及び複数のプレス間搬送機200が搬送方向に並べられているものとする。
【0023】
また、プレス装置100の両側面(右側面及び左側面)には、それぞれフィンガー移動装置300が取り付けられている。すなわち、1台のプレス装置100には2台のフィンガー移動装置300が取り付けられる。所定の加工が終了して所定の加工とは異なる加工を行う前に、後述するプレス装置100の金型が自動で取り外しされ、自動で装着される。なお、金型は公知の自動の交換方法によって交換されるものとする。また、本実施形態では、金型だけでなく、フィンガー移動装置300によって、プレス間搬送機200のフィンガーが自動で取り外され、プレス間搬送機200からプレス装置100に自動で移動され、後述するフィンガー台座に載せられる。また、フィンガー移動装置300によって、フィンガー台座上のフィンガーがプレス装置100からプレス間搬送機200に自動で移動され、プレス間搬送機200に自動で装着される。以降、フィンガーの取り外し、移動、フィンガー台座への載置、又は、フィンガー台座からの移動、フィンガーの装着を、フィンガーの交換という。ここでいう交換の工程には、後述するプレス装置100のプレートを金型及びフィンガーと一緒に引き出す工程、プレートを保管場所に運搬する工程、プレートを保管場所から運搬してくる工程、及び、プレートを金型及びフィンガーと一緒に装着する工程は含まれない。
【0024】
以上のことから、本実施形態では、1台のプレス装置100から見れば、両端に設けられた2つのフィンガー移動装置300によって、両側に隣接する2台のプレス間搬送機200のそれぞれ片方のフィンガーが交換される。また、1台のプレス間搬送機200から見れば、両側に隣接する2台のプレス装置100のそれぞれのフィンガー移動装置300から、両端のフィンガーが一度に交換されることとなる。
【0025】
システム用制御装置400は、複数のプレス装置100及び複数のプレス間搬送機200を用いて一連の加工を行う際の同期信号を各プレス装置100及び各プレス間搬送機200に通信線(破線)を介して送信する。これにより、複数のプレス装置100及び複数のプレス間搬送機200が、システム用制御装置400から送信された同期信号に同期して一連の加工を行うことができる。また、システム用制御装置400は、フィンガーの交換を行う際にも、複数のフィンガー移動装置300に通信線(破線)を介して同期信号を送信する。これにより、複数のフィンガー移動装置300は、システム用制御装置400から送信された同期信号に同期して一斉にフィンガーの交換を行うことができる。
以下に、プレス装置100、プレス間搬送機200及びフィンガー移動装置300の構成を詳細に説明する。
【0026】
(プレス装置の説明)
図2は、例えば、一体型ストレートサイドフレーム型又はCフレーム型のプレス装置100の概略図である。プレス装置100は、筐体2の内外に、駆動モータ4(駆動手段)、伝達機構6、クランク軸8、コンロッド10、スライド12を有して構成される。また、プレス装置100は、コントローラ14、記憶部15、表示部16、入力部18、を有している。
【0027】
駆動モータ4は、例えばサーボ制御されるサーボモータであり、回転量及び回転方向を制御しつつ伝達機構6、クランク軸8、コンロッド10を介して後述する金型3を上下移動させるものである。伝達機構6は、例えばギアやベルト等の伝達部材を有して構成され、駆動モータ4のモータ軸の回転をクランク軸8へと伝達するものである。駆動モータ4への制御信号はコントローラ14から送られるようになっている。
【0028】
クランク軸8及びコンロッド10は、伝達機構6により伝達されたモータ軸の回転移動を往復移動(本実施形態では、上下移動。)に変換するためのものである。モータ軸の回転によりクランク軸8が回転し、クランク軸8に一端近傍が連結されたコンロッド10にその回転が伝達されてコンロッド10が上下移動(昇降移動)するようになっている。
【0029】
コンロッド10の他端近傍にはスライド12が連結されている。コンロッド10の上下移動に伴いスライド12がギブ(不図示)に沿って上下移動するようになっている。プレス装置100においては、スライド12と対向するようにボルスタ22が配置されている。スライド12のボルスタ22と対向する側の面(本実施形態では下面。)に金型3の一部としての上型3aが装着される。ボルスタ22のスライド12と対向する側の面(本実施形態では上面。)に金型3の一部として、上型3aと対になる下型3bが装着される。
【0030】
上型3aと下型3bとの間に加工の対象物としてのワークWを配置し、上型3aと下型3bとで押圧することにより、プレス装置100によるワークWに対するプレス加工が行われる。詳しくは、コントローラ14により制御されて駆動モータ4が回転する。駆動モータ4の回転が伝達機構6、クランク軸8を介してコンロッド10へと伝達され、スライド12が上下移動する。スライド12の下方移動によって上型3aと下型3bとが押圧され、ワークWのプレス加工が行われる。すなわち、プレス装置100において、駆動モータ4、伝達機構6、クランク軸8、コンロッド10、スライド12がプレス部を構成する。伝達機構6には、クランク軸8の回転数を検知するための回転数検知手段であるロータリーエンコーダ25が設けられている。
【0031】
コントローラ14は、記憶部15に記憶されている各種プログラムに従ってプレス装置100を制御する。コントローラ14は、システム用制御装置400から送信された同期信号に従って所定の加工を行う。表示部16は、プレス装置100の状態を示すデータを表示する。入力部18は、プレス装置100を操作するために必要なデータを入力するために用いられる。
【0032】
プレス装置100は、更に、フィンガー台座40a、40bと、プレート50と、を有する。フィンガー台座40a、40bは、金型3の下型3bの上面よりも上下方向における下に位置する。フィンガー台座40a、40bは、受け面42a、42bと、ピン44a、44b(
図6参照)と、を有する。受け面42a、42bには、後述するフィンガー230a、230bが載置される(
図3参照)。ピン44a、44bは、後述するフィンガー230a、230bの台座用穴233a、233bに嵌合するための穴である。ピン44a、44bは、例えばそれぞれ2本設けられており、フィンガー230a、230bの交換の際に、後述するフィンガー移動装置300のガイドピン311と互いに干渉しない位置に設けられている(
図6参照)。
【0033】
プレート50は、金型3(3a、3b)とフィンガー台座40a、40bとを、加工の種類に応じて一緒に交換するためのもので、プレス装置100に対して着脱可能に設けられている。プレート50は、例えばプレス装置100の正面から手前(-Y方向)に引くことでプレス装置100から引き出すことが可能であり、奥に押す(+Y方向)ことでプレス装置100に装着することが可能である。下型3bとプレート50とは、例えば一体に設けられている。フィンガー台座40a、40bは、例えばプレート50にボルト46a、46b(
図6参照)によって締結されている。また、フィンガー台座40a、40bは、例えばプレート50と一体に形成されていてもよい。なお、プレート50がプレス装置100に対して着脱されるときに、プレート50とともに金型3(3a、3b)及びフィンガー台座40a、40bが着脱される構成であればよい。
【0034】
プレート50上に所定の加工に用いられる金型3(3a、3b)とともにフィンガー230a、230bを保持するフィンガー台座40a、40bを設けることで、金型3とフィンガー230a、230bの交換を一緒に行うことができ、かつ、一緒に保管することができる。
【0035】
ここで、プレス装置100がストレートサイドフレーム型である場合、プレス装置100の両サイドにフレームがあるため、プレート50を手前方向に引き抜く際の障害となる。このため、フィンガー台座40a、40bのX軸方向における位置は、プレス装置100のフレームよりも金型3に近い位置に設ける必要がある。本実施形態では、プレート50は、プレス装置100からの着脱の際に、フレームと干渉しないような幅(搬送方向における長さ)となっており、かつ、フィンガー台座40a、40bも、プレート50をプレス装置100から着脱する際にフレームと干渉しないような位置に設けられている。プレート、フィンガー台座40a、40b及びフィンガー移動装置300については、
図6を用いて後述する。
【0036】
なお、一連の加工を行うために複数のプレス装置100が搬送方向に沿って並べられているため、所定のプレス装置100をプレス装置100_Nと表記し、プレス装置100_Nよりも上流側に配置されたプレス装置100を100_N-1と表記し、プレス装置100_Nよりも下流側に配置されたプレス装置100を100_N+1と表記する場合もある。ここで、Nは複数台並べられたプレス装置の台数を示し、2≦Nであり、加工の種類に応じて決定される値(台数)である。
【0037】
(プレス間搬送機の説明)
図3は、プレス間搬送機200の概略図であり、(a)はプレス間搬送機200の正面図、(b)はプレス間搬送機200の斜視図、(c)はプレス間搬送機200の一方の端部の拡大斜視図である。プレス間搬送機200としては例えば2軸直交ロボット等がある。プレス間搬送機200は、アーム210と、フィンガー着脱部220a、220bと、フィンガー230a、230bと、中間台240と、搬送機制御部270と、駆動部(不図示)と、を有する。
【0038】
アーム210は、駆動部(不図示)によって駆動され、搬送方向(X軸方向)及び上下方向(Z軸方向)に移動することが可能である。アーム210は、プレス装置100_N-1と中間台240との間又は中間台240とプレス装置100_Nとの間を移動する際に、搬送方向に移動する。アーム210は、中間台240又は下型3bからワークWを持ち上げたり、中間台240又は下型3bにワークWを置いたりする際に、上下方向に移動する。
【0039】
フィンガー着脱部220aは、アーム210の搬送方向における上流側(プレス間搬送機200に向かって左側)の端部に設けられ、少なくとも加工が行われている間は、フィンガー230aが締結され、フィンガー230aが落下しないようにロック機構によりロックされている。所定の加工が終了して次の加工が開始される前には、ロックが解除され、フィンガー230aがフィンガー着脱部220aから取り外される。フィンガー着脱部220bは、アーム210の搬送方向における下流側(プレス間搬送機200に向かって右側)の端部に設けられ、少なくとも加工が行われている間は、フィンガー230bが締結され、フィンガー230bが落下しないようにロック機構によりロックされている。所定の加工が終了して次の加工が開始される前に、ロックが解除され、フィンガー230bがフィンガー着脱部220bから取り外される。
【0040】
フィンガー着脱部220a、220bは、それぞれ位置決めピン250a、250bを有する。
図3(c)に、フィンガー着脱部220bの位置決めピン250bを示す。位置決めピン250a、250bは、例えば2本設けられており、後述するフィンガー230a、230bの搬送機用穴231a、231bに嵌合することで、フィンガー着脱部220a、220bとフィンガー230a、230bとの締結時の位置決めを容易にする。なお、フィンガー着脱部220a、220bとフィンガー230a、230bとの締結(取り付け)と分離(取り外し)や上述したロック機構は、例えば、公知のツールチェンジャーを用いエアの圧力を制御することによって行われる構成とすればよい。
中間台240は、プレス装置100_
N-1とプレス装置100_
Nとの間でワークWを搬送する際のワークWの一時的な載置場所として用いられる。
【0041】
ここで
図3は、アーム210が停止しているときの位置を示している。このとき、プレス間搬送機200の搬送方向における中央位置からフィンガー着脱部220aまでの距離と中央位置からフィンガー着脱部220bまでの距離とが略等しい状態となっている。また、アーム210は、上下方向においては、上下方向の稼働範囲における最も低い位置に位置している。以下、この状態を搬送方向及び上下方向の定位置(ホームポジション)という。アーム210の搬送方向の稼働範囲は、フィンガー230b側で、プレス間搬送機200の搬送方向における中央位置からプレス装置100_
Nの下型3bの搬送方向における中央位置までの間であり、他方でも同様である。また、アーム210の上下方向の稼働範囲は、加工の種類によるが、例えば100mm程度である。
【0042】
(フィンガーの説明)
フィンガー230a、230bは同じ構成を有するため、以下、フィンガー230bの説明を行う。
図4は、フィンガー230bの構成を示す上面図である。フィンガー230bは、搬送機用穴231bと、台座用穴233bと、移動装置用穴235bと、バキュームパッド237bと、を有する。
【0043】
搬送機用穴231bは、上述したプレス間搬送機200のフィンガー着脱部220bの2本の位置決めピン250bと嵌合するための2つの穴である。台座用穴233bは、上述したフィンガー台座40bの例えば2本のピン44bと嵌合するための2つの穴である。フィンガー台座40bのピン44bがフィンガー230bの台座用穴233bと嵌合することにより、フィンガー230bがフィンガー台座40b上に固定して載置される。
【0044】
移動装置用穴235bは、後述するフィンガー移動装置300が有する保持部310のガイドピン311と嵌合するための穴である。フィンガー230bを交換する際に、ガイドピン311が移動装置用穴235bに嵌合することで、フィンガー着脱部220bからフィンガー230bを取り外す動作を容易にする。
【0045】
バキュームパッド237bは、加工中のワークWをプレス装置100間で搬送する際に、ワークWを保持(把持)するためのパッドである。バキュームパッド237bによるワークWの吸着及び解放は、例えば上述したツールチェンジャーのエアを用いて行う等、公知の方法を用いればよい。
【0046】
フィンガー230aは、プレス装置100_N-1によって加工が施されたワークWを把持して下型3bから持ち上げ、中間台240に搬送してワークWを解放し中間台240上にワークWを一時的に置く。フィンガー230bは、中間台240に一時的に置かれたワークWを把持して持ち上げ、プレス装置100_Nの下型3bに搬送してワークWを解放し下型3b上に置く。
【0047】
(フィンガー移動装置の説明)
図5は、本実施形態の特徴であるフィンガー移動装置300の構成を示す斜視図である。フィンガー移動装置300は、保持部310と、シリンダ320と、モータ330と、移動装置制御部340と、アーム350と、を有する。
【0048】
保持部310は、金型3及びフィンガー230a、230bを交換する工程において、フィンガー230a、230bを移動させるためにフィンガー230a、230bを保持するための部材である。保持部310は、例えば3本のガイドピン311を有する。ガイドピン311は、ガイドピン311と同数のフィンガー230a、230bに設けられた移動装置用穴235a、235bに嵌合し、フィンガー230a、230bをプレス間搬送機200のフィンガー着脱部220a、220bから分離するとき、又はフィンガー台座40a、40bから持ち上げるときに、位置決めを容易にするとともに、保持部310の移動中に、フィンガー230a、230bが保持部310上で動いたり保持部310から落下したりしないようにしている。
【0049】
また、ガイドピン311の先端部は、先端に向かって細くなるテーパー形状であるテーパー部313を有し、フィンガー230a、230bの移動装置用穴235a、235bとの位置決め及び嵌合が容易となるような形状である。フィンガー230a、230bの移動装置用穴235a、235bの直径は、テーパー部313の中で最も大きい部分の直径よりも大きく、ガイドピン311の直径(テーパー部313を除いた部分の直径)よりも小さくなっている。このため、フィンガー230a、230bは、上下方向における所定の位置で3本のガイドピン311によって支持される。すなわち、保持部310がフィンガー230a、230bを保持している状態では、保持部310の面(XY平面に平行な面)とフィンガー230a、230bの面(XY平面に平行な面)との間に、空間が形成される。
【0050】
シリンダ320は、保持部310を搬送方向に移動させるための駆動源であり、例えばエアシリンダである。保持部310は、搬送方向において、プレス間搬送機200のフィンガー着脱部220a、220bとプレス装置100のフィンガー台座40a、40bとの間をシリンダ320により駆動されることで、移動することができる。
【0051】
モータ330は、保持部310を上下方向に移動させるための駆動源であり、例えばサーボモータである。保持部310は、上下方向において、プレス間搬送機200のフィンガー着脱部220a、220bとプレス装置100のフィンガー台座40a、40bとの間をモータ330により駆動されることで、移動することができる。ここで、上述したプレス間搬送機200の定位置から、プレス間搬送機200のフィンガー着脱部220a、220bまでの上下方向の高さと、プレス装置100のフィンガー台座40a、40bまでの上下方向の高さは異なり、フィンガー着脱部220a、220bの方がフィンガー台座40a、40bよりも高くなっている。
【0052】
移動装置制御部340は、例えばCPU(不図示)、RAM(不図示)、ROM(不図示)を有する。移動装置制御部340は、システム用制御装置400から送信された同期信号に従い、予めROMに記憶されたプログラムに従ってRAMを一時的な作業領域として使用しながら、フィンガー230a、230bの交換処理を実行する。フィンガー230a、230bの交換の際に、移動装置制御部340は、シリンダ320及びモータ330を制御して保持部310を搬送方向又は上下方向に移動させる。
【0053】
アーム350は、シリンダ320とフィンガー台座40a、40b(言い換えれば保持部310)との前後方向(Y軸方向)における位置の差を吸収するために設けられている。ここで、プレス間搬送機200のフィンガー着脱部220a、220bとプレス装置100のフィンガー台座40a、40bとの前後方向における位置は略同じである。一方、プレス装置100に取り付けられるフィンガー移動装置300のシリンダ320とプレス間搬送機200のフィンガー着脱部220a、220b及びプレス装置100のフィンガー台座40a、40bとの前後方向における位置には、フィンガー移動装置300の取り付け場所に応じて差が生じる。このため、アーム350を設けることにより、フィンガー移動装置300の保持部310とプレス間搬送機200のフィンガー着脱部220a、220b及びプレス装置100のフィンガー台座40a、40bとが、前後方向において略同じ位置となるようにしている。
【0054】
(プレート、フィンガー台座及びフィンガー移動装置の説明)
図6は、プレート50、フィンガー台座40a、40b及びフィンガー移動装置300を示す図であり、(a)は上面図、(b)は正面図である。なお、プレート50上の金型3等の描画は省略している。フィンガー台座40a、40bは、プレート50の左右両端(搬送方向における2つの端部)に例えばボルト46a、46bにより取り付けられている。
【0055】
また、フィンガー台座40a、40bは、受け面42a、42bに設けられたピン44a、44bが、フィンガー移動装置300の保持部310に設けられた3本のガイドピン311と干渉しないように、プレート50上に取り付けられている。
図6(a)に示すように、ピン44a、44bは、Y軸方向において、1つのガイドピン311aと2つのガイドピン311bとの間に位置するように設けられている。このため、後述する装着工程及び取り外し工程において、保持部310及びガイドピン311が左右方向からそれぞれ搬送方向に移動してきて、更に、フィンガー台座40a、40bの受け面42a、42bの下側から上昇してきても、互いに干渉することなく、フィンガー230a、230bを保持部310によって受け面42a、42bから受け取ったり、受け面42a、42bに置いたりすることができる。
【0056】
更に、
図6(b)に示すように、フィンガー台座40a、40bは、少なくともフィンガー移動装置300の保持部310及びガイドピン311が受け面42a、42bの下側に入り込める高さを有している。フィンガー移動装置300の3本のガイドピン311の上下方向の長さは、少なくともフィンガー台座40a、40bのピン44a、44bの上下方向の長さよりも長くなっている。このため、フィンガー移動装置300の保持部310がフィンガー台座40a、40bの受け面42a、42bの下側から上昇して、フィンガー230a、230bの移動装置用穴235a、235bとガイドピン311とが嵌合した状態となっても、ピン44a、44bはフィンガー移動装置300の保持部310及びフィンガー230a、230bの搬送方向における移動を妨げない。これは、フィンガー移動装置300の保持部310上からフィンガー台座40a、40bの受け面42a、42b上にフィンガー230a、230bを置く場合についても同様である。
【0057】
(フィンガー交換動作の説明)
図7、
図8~
図13は、フィンガー移動装置300によるフィンガー230a、230bの交換の動作(以下、フィンガー交換動作という)を説明する図である。なお、
図8~
図13では、プレス間搬送機200の中間台240や、プレス装置100の上型3aから上部の構成物品の記載を省略している。
【0058】
フィンガー交換動作には、フィンガー230a、230bを装着する装着工程と、フィンガー230a、230bを外す取り外し工程とがある。
図7(a)、(b)は、フィンガー230a、230bの装着工程、取り外し工程を簡易に説明する図であり、横軸に搬送方向の位置を示し、縦軸に上下方向の位置を示す。黒丸は搬送方向及び上下方向におけるフィンガー移動装置300の保持部310の定位置である。また、
図8~
図13は、1台のプレス装置100と、プレス装置100の両側に隣接する2台のプレス間搬送機200を示す図であり、(a)に正面図、(b)に斜視図をそれぞれ示す。
【0059】
フィンガー移動装置300の保持部310は、プレス装置100の加工中には定位置にある。より詳細には、フィンガー移動装置300の保持部310は、所定の加工が終了したとき又は所定の加工に続く次の加工の開始前には定位置にある。定位置とは、搬送方向においてはプレス間搬送機200のフィンガー着脱部220b(又は220a)の位置であり、上下方向においては稼働範囲における最も低い位置(下降端ともいう)である。
【0060】
(装着工程)
図7(a)、
図8~
図13を用いて、フィンガー230a、230bの装着工程について説明する。プレス装置100では、所定の加工に続く次の加工に用いるために、金型3及びフィンガー230a、230bがプレート50ごと置き換えられている。フィンガー台座40a、40bには次の加工用のフィンガー230a、230bが載置されている。なお、フィンガー230aとフィンガー230bの交換は、搬送方向における保持部310の移動方向が逆になる点を除いては同様であるため、フィンガー230b(プレス間搬送機200に向かって右側のフィンガー)の交換について説明する。
【0061】
図7(a)の〔1〕では、フィンガー移動装置300の保持部310は、搬送方向においてはプレス間搬送機200のフィンガー着脱部220bの位置にあり、上下方向においては上下方向の稼働範囲における下降端の位置にある。すなわち、フィンガー移動装置300は定位置にある。このとき、
図8に示すように、プレス間搬送機200のフィンガー着脱部220a、220bにフィンガー230a、230bは装着されていない。また、プレス装置のフィンガー台座40a、40bには、次の加工に用いられるフィンガー230a、230bが載置されている。フィンガー台座40a、40bのピン44a、44bはフィンガー230a、230bの台座用穴233a、233bに嵌合している。
【0062】
移動装置制御部340がシリンダ320を制御して保持部310を搬送方向に移動させ、保持部310をプレス装置100のフィンガー台座40bの位置に移動させると、保持部310は
図7(a)の〔2〕の位置に移動する。
図9に示すように、保持部310は、上下方向においてはフィンガー台座40bの受け面42bよりも低い位置にある。保持部310は、フィンガー台座40bの下に潜り込んでフィンガー230bを受け取りにいく。このとき、上下方向においては、フィンガー230bの下にフィンガー台座40bの受け面42bがあり、受け面42bの下にフィンガー移動装置300の保持部310が位置する。なお、
図7(c)は、〔2〕の位置に保持部310があるときのフィンガー移動装置300近傍を拡大した斜視図である。
【0063】
移動装置制御部340がモータ330を制御して保持部310を上下方向に移動させる、すなわち、上昇させる。このとき、保持部310は搬送方向には移動しない。保持部310は
図7(a)の〔3〕の位置に移動する。〔3〕の上下方向の高さを搬送高さともいう。このとき、
図10に示すように、保持部310のガイドピン311は、フィンガー台座40bのピン44bと干渉することなく、フィンガー230bの移動装置用穴235bに嵌合する。また、保持部310のガイドピン311のテーパー部313によって、ガイドピン311が移動装置用穴235bに案内され容易に嵌合するようになっている。この動作により、保持部310はフィンガー台座40bからフィンガー230bを受け取る。
【0064】
移動装置制御部340がシリンダ320を制御して保持部310を搬送方向に移動させ、保持部310をプレス装置100のフィンガー台座40bの位置からプレス間搬送機200のフィンガー着脱部220bの位置に移動させる。保持部310は
図7(a)の〔4〕の位置に移動する。
図11に示すように、フィンガー台座40b上にはフィンガーは載置されていない。なお、〔3〕から〔4〕への移動が開始されるとき、フィンガー台座40bの受け面42bは、上下方向においてフィンガー230bと保持部310との間から抜ける。
【0065】
移動装置制御部340がモータ330を制御して保持部310を上下方向に移動させる、すなわち、上昇させる。このとき、保持部310は搬送方向には移動しない。保持部310は
図7(a)の〔5〕の位置に移動する。〔5〕の上下方向の高さを着脱高さともいう。このとき、
図12に示すように、フィンガー着脱部220bのピン250bは、保持部310のガイドピン311と干渉することなく、フィンガー230bの搬送機用穴231bに嵌合する。また、このとき、上述した公知のツールチェンジャー等によってフィンガー着脱部220bとフィンガー230bとの締結が行われ、ロックされる。
【0066】
移動装置制御部340がモータ330を制御して、保持部310を上下方向に移動させる、すなわち、下降させる。このとき、保持部310は搬送方向には移動しない。保持部310は
図7(a)の〔6〕の位置、すなわち下降端に移動する。このとき、
図13に示すように、プレス間搬送機200のフィンガー着脱部220a、220bにフィンガー230a、230bが装着された状態となっている。フィンガー移動装置300の保持部310上及びプレス装置100のフィンガー台座40a、40b上には、フィンガーは載置されていない。
【0067】
以上の装着工程によって、フィンガー230a、230bがプレス間搬送機200のフィンガー着脱部220a、220bに装着される。なお、〔1〕~〔6〕の動作において、搬送方向及び上下方向の移動量は予め製造工程等で測定され、シリンダ320及びモータ330を制御する際のデータとしてROM等に記憶されているものとする。
【0068】
(取り外し工程)
図7(b)はフィンガー230a、230bの取り外し工程を示す図である。なお、フィンガー230a、230bの取り外し工程は、装着工程を逆に動作させる工程である。すなわち、移動装置制御部340は、モータ330によって保持部310を定位置の〔6〕’(
図13)から〔5〕’(
図12)の着脱高さの位置に上昇させ、プレス間搬送機200のフィンガー着脱部220bに締結されているフィンガー230bの移動装置用穴235bに保持部310のガイドピン311を嵌合させる。フィンガー230bは、上述した公知のツールチェンジャー等によってロックが解除される。
【0069】
次に、移動装置制御部340は、モータ330によって保持部310を〔5〕’(
図12)の着脱高さの位置から〔4〕’(
図11)の搬送高さの位置に下降させ、フィンガー230bをフィンガー着脱部220bから分離させる。移動装置制御部340は、シリンダ320によって、フィンガー230bを保持した保持部310を〔4〕’(
図11)から〔3〕’(
図10)に移動させる。このとき、フィンガー230bと保持部310との間に、フィンガー台座40bの受け面42bが入り込む。
【0070】
次に、移動装置制御部340は、モータ330によって保持部310を〔3〕’(
図10)の搬送高さの位置から〔2〕’(
図9)の下降端の位置に下降させることで、フィンガー230bをフィンガー台座40bの受け面42bに載置する。このとき、フィンガー台座40bのピン44bがフィンガー230bの台座用穴233bに嵌合する。最後に、移動装置制御部340は、シリンダ320によって保持部310を〔2〕’(
図9)から〔1〕’(
図8)の位置に移動させ、定位置に戻す。なお、
図7(c)は、〔2〕’の位置に保持部310があるときのフィンガー移動装置300近傍を拡大した斜視図でもある。
【0071】
複数のプレス装置100と複数のプレス間搬送機200とを備える一連の加工を行うシステムにおいて、所定の加工から次の加工を行うために、金型3及びフィンガー230a、230bを交換する際に、複数のフィンガー移動装置300によって上述した取り外し工程及び装着工程を実施することで、短時間で全ての金型3及びフィンガー230a、230bを自動で交換することができる。1台のプレス間搬送機200について2つのフィンガー230a、230bを略同時に自動で移動させる工程を含むことにより、手動のみで交換を行っていた場合に比較して、短い時間で金型3及びフィンガー230a、230bの交換を行うことができる。例えば、金型3及びフィンガー230a、230bの交換を複数の作業員により手動で行っていたシステムでは20~30分程度の時間を要していたのに対し、本実施形態のフィンガー移動装置300を用いてフィンガー230a、230bの自動の移動を含む交換を行うシステムでは、所定の加工が終了してから次の加工を開始するまでの、金型3及びフィンガー230a、230bの交換を含む時間が、例えば4分以内の時間で済む。
【0072】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、その要旨の範囲内で様々な変形や変更が可能であり、例えば以下のような変形例がある。
【0073】
プレス間搬送機200の位置決めピン250a、250b及びフィンガー230a、230bの搬送機用穴231a、231bのピンの数及びピンに対応する穴の数は、上述した数に限定されない。
【0074】
フィンガー台座40a、40bのピン44a、44b及びフィンガー230a、230bの台座用穴233a、233bのピンの数及び穴の数は、上述した数に限定されない。
【0075】
フィンガー台座40a、40bは、プレート50と一体に設けられる構成としたが、例えば、金型3の下型3bと一体に設けられる構成としてもよい。
【0076】
フィンガー移動装置300のガイドピン311とフィンガー230a、230bの移動装置用穴235a、235bのピンの数及び穴の数は、上述した数に限定されない。
【0077】
システム用制御装置400が、複数のフィンガー移動装置300に同期信号を送信することにより、フィンガーの交換を一斉に行う構成とした。しかし、例えば、いずれか1台のフィンガー移動装置300がマスターとなり、他のフィンガー移動装置300の移動装置制御部340にフィンガーを交換するトリガとなる信号を送信する等してもよい。
【0078】
以上、本実施形態によれば、複数のプレス装置及び複数の搬送装置を用いて加工を行う際のフィンガーの交換に要する時間を低減することができるフィンガー移動装置、プレス装置及びフィンガー移動方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0079】
2 筐体
3a 上型
3b 下型
4 駆動モータ
6 伝達機構
8 クランク軸
10 コンロッド
12 スライド
14 コントローラ
15 記憶部
16 表示部
18 入力部
22 ボルスタ
25 ロータリーエンコーダ
40a、40b フィンガー台座
42a、42b 受け面
42b 受け面
44a、44b ピン
46a、46b ボルト
50 プレート
100 プレス装置
200 プレス間搬送機(搬送装置)
210 アーム
220a、220b フィンガー着脱部(着脱部)
230a、230b フィンガー
231a、231b 搬送機用穴
233a、233b 台座用穴
235a、235b 移動装置用穴
237a バキュームパッド
240 中間台
250a、250b ピン
270 搬送機制御部
300 フィンガー移動装置
310 保持部
311 ガイドピン
311a、311b ガイドピン
313 テーパー部
320 シリンダ(搬送方向駆動部)
330 モータ(上下方向駆動部)
340 移動装置制御部
350 アーム
400 システム用制御装置
W ワーク