(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-09
(45)【発行日】2022-03-17
(54)【発明の名称】ベッド型殺菌装置
(51)【国際特許分類】
A61L 9/00 20060101AFI20220310BHJP
【FI】
A61L9/00 Z
(21)【出願番号】P 2018009019
(22)【出願日】2018-01-23
(62)【分割の表示】P 2014188030の分割
【原出願日】2014-09-16
【審査請求日】2018-02-19
【審判番号】
【審判請求日】2020-01-29
(73)【特許権者】
【識別番号】507356545
【氏名又は名称】エアロシールド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113930
【氏名又は名称】鮫島 正洋
(74)【代理人】
【識別番号】230114214
【氏名又は名称】和田 祐造
(74)【代理人】
【識別番号】100205224
【氏名又は名称】杉尾 雄一
(72)【発明者】
【氏名】木原 寿彦
(72)【発明者】
【氏名】賀来 満夫
【合議体】
【審判長】日比野 隆治
【審判官】金 公彦
【審判官】関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-171067(JP,A)
【文献】特開2011-202907(JP,A)
【文献】特開2011-202857(JP,A)
【文献】特開2011-247480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00- 9/22
A61G 9/00-15/12
A61G99/00
A61G 7/00- 7/16
F24F 7/04- 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
就寝時の使用者の頭部側に設けられる頭部側部材と、
就寝時の使用者の足下側に設けられる足下側部材と、
空気が含む細菌又はウイルスを殺菌する殺菌部とを備えるベッド型殺菌装置であって、
前記頭部側部材に設けられた第1の開口部と、
前記足下側部材に設けられた第2の開口部とを備え、
前記第1の開口部と前記第2の開口部が前記殺菌部を介して連通され、前記第1の開口部又は前記第2の開口部の一方から空気が吸引され、前記第1の開口部又は前記第2の開口部の他方から空気が排出されるベッド型殺菌装置において、
前記第1の開口部又は前記第2の開口部の一方に空気を吸引する空気吸引手段を備え、前記第1の開口部又は前記第2の開口部の他方に空気を排出する空気排出手段を備え
、
前記第1の開口部と前記第2の開口部は対向し、
前記足下側部材から見て、前記第1の開口部は、就寝時の使用者の身体の両側部から上部にかけて配置され、
前記頭部側部材から見て、前記第2の開口部は、就寝時の使用者の身体の両側部から上部にかけて配置されるベッド型殺菌装置。
【請求項2】
前記頭部側部材と前記足下側部材とを接続する本体部を備え、
前記殺菌部は前記本体内部に設けられた、請求項1記載のベッド型殺菌装置。
【請求項3】
寝具を載置する座面部材を備え、
前記頭部側部材および前記足下側部材のそれぞれは、前記座面部材の前記寝具の載置面より上方に設けられた、請求項1又は2記載のベッド型殺菌装置。
【請求項4】
前記本体部は、前記空気吸引手段及び空気排出手段と連通し、前記頭部側部材の両側及び前記足下側部材の両側のそれぞれとを接続する第1ダクト及び第2ダクトを備え、
前記殺菌装置は、前記第1ダクト及び第2ダクトのそれぞれの内部に備えられた、請求項2に記載のベッド型殺菌装置。
【請求項5】
前記第1の開口部又は前記第2の開口部の他方から、前記殺菌部で殺菌された空気が排出される、請求項1から4のいずれか記載のベッド型殺菌装置。
【請求項6】
前記第1の開口部から空気が吸引され、前記第2の開口部から空気が排出される、請求項1から5のいずれか記載のベッド型殺菌装置。
【請求項7】
前記頭部側部材と前記足下側部材とを接続する本体部を備え、
前記第1の開口部又は前記第2の開口部の一方から吸引し、本体内部に流入した空気を、前記第1の開口部又は前記第2の開口部の他方へ排出する排出手段を前記本体内部に設けた、請求項1又は請求項3から5のいずれか記載のベッド型殺菌装置。
【請求項8】
前記空気吸引手段は、空気を吸入する吸引ファンである、請求項1から7のいずれか記載のベッド型殺菌装置。
【請求項9】
前記空気排出手段は、空気を排出する排出ファンである、請求項1から8いずれか記載のベッド型殺菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病床用ベッド、介護施設用ベッド、家庭用ベッド、宿泊施設用ベッドなどの様々なベッドに適用できるベッド型殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
以前より、病院では、不特定多数の人が集まることや、病人の存在などによって、衛生環境の保持が求められている。あるいは最近では、一般家庭においても、新型インフルエンザ等々のウイルスや細菌対策が求められるようになっている。病院においては、入院や通院患者が生じさせる病原菌や、見舞客等によって持ち込まれる病原菌などが存在している。家庭内においても、住人が外部から病原菌を持ち帰ることもありえるし、来客が病原菌を持ち込むこともありえる。
【0003】
一つにおいては、病院では、当然に多くの入院患者がいる。入院患者は、病院に設置されている病床用ベッドを使用する。病床用ベッドは、病室に設置されているが、隔離された個室や無菌室のような特殊な病室以外においては、多人数の大部屋であったり、第三者が出入りする病室であったりする。第三者の出入りは、特殊な個室でなければ、個室であっても生じうる。
【0004】
このような大部屋や第三者(見舞客、医療従事者、その他)が出入りする病室においては、入院患者自身だけでなく、同室の他の入院患者や出入りする第三者によって細菌やウイルスが持ち込まれることがある。もちろん、入院患者自身が保有する最近やウイルスが咳やくしゃみ、あるいは他の生理現象によって自身の周囲に排出されることもある。このため、病床用ベッドの周囲は、多くの細菌やウイルスが存在している状態になりやすい。
【0005】
これは入院用病室に限ったことではなく、一時的な時間で使用される治療や診察用ベッドでも、患者、医療従事者、第三者、その他の事由によって治療用ベッドや診察用ベッドの周囲にも、多くの細菌やウイルスが存在している状態になりやすい。
【0006】
また、病院での入院患者だけに限らず、長期治療や寝たきり患者などの要介護状態となって、自宅での長期治療を必要とする患者も存在する。このような自宅治療患者も、病院での入院患者と同じように、自身が保有する細菌やウイルスを排出したり、家族や見舞客などが運び込んだりしたりする細菌やウイルスが、治療用ベッドの周囲に存在する状態となりやすい。
【0007】
あるいは、病院や自宅だけでなく、介護施設や老人施設などの介護用ベッドなどにおいても同様の状況は生じやすい。介護施設や老人施設に入居している要介護者や高齢者は、細菌やウイルスを保有していることも多く、不特定の第三者による細菌やウイルスの持ち込みも多い。
【0008】
ここで述べた入院患者、自宅治療患者、要介護者、高齢者などは、細菌やウイルスに対する免疫力が弱まっており、その治療への悪影響が懸念される。また、近年、体力や免疫力が弱まっている状態での院内における二次感染という深刻な問題も発生している。
【0009】
このため、病床用ベッド、治療用ベッド、診察用ベッド、自宅治療用ベッド、介護施設等の介護ベッドなどの周囲に、多くの細菌やウイルスが存在したり、入れ替わったりすることは、入院患者、外来患者、自宅治療患者、要介護者、高齢者などにとって、好ましくないことである。
【0010】
また、入院患者、自宅治療患者、要介護者のように体力や免疫力が落ちている人だけでなく、自身で健康と思っている一般人であっても、就寝中に細菌やウイルスが周囲に多く存在することは好ましくない。就寝中は、免疫力が低下している状態であり、就寝中の自身の周囲に多くの細菌やウイルスが存在することは、健康な一般人にとっても好ましいことではない。
【0011】
しかしながら、自宅であっても本人や家族が外部から細菌やウイルスを持ち込むこともあり得る。あるいは、家族や来訪者が細菌やウイルスを持ち込むことがあり得る。あるいは、自宅ではなく宿泊施設などでも、宿泊者がベッドにおいて就寝する。宿泊施設では清掃が行われているとはいえ、不特定多数の宿泊者が入れ替わり宿泊する場所である。このため、宿泊者の中には、健康状態の悪い宿泊者もいる可能性があり、宿泊室に細菌やウイルスが持ち込まれる可能性もある。
【0012】
宿泊室は限られた密室空間であることが多く、持ち込まれた細菌やウイルスが、室内に滞留しやすい。このとき、宿泊用ベッドに就寝している宿泊者は、就寝中にこの細菌やウイルスの悪影響を受ける可能性は高い。悪影響を受けると、当然、健康体の宿泊者であっても、何らかの病気を発症する可能性もある。
【0013】
このように、様々な場所において、多くの人がベッドに就寝(あるいは治療や介護のためにベッド上で生活)をすることが多い。このベッドの周囲には、上述のとおり、多くの細菌やウイルスが存在している。この細菌やウイルスによって、健康を害したり、治療や治癒に悪影響が生じたり、院内感染によるよりシビアな事態が発生したりなどの問題も生じうる。
【0014】
このように、様々な場所(特に病院、介護施設、高齢者施設、自宅療養など)のベッドの周囲での細菌やウイルスの悪影響を低減することは、健康維持のみならず、治療や治癒の促進、院内感染の防止などの観点で非常に重要な問題となってきている。
【0015】
このような病室などでの細菌やウイルスの悪影響を防止することが求められており、いくつかの技術が提案されている。室内の空気中に存在する細菌やウイルスを滅菌したり殺菌したりする種々の殺菌装置が提供されている(例えば、特許文献1~3参照)。また、箱型の殺菌装置も提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】特開2003-220122号公報
【文献】特開2005-106296号公報
【文献】特開平11-192405号公報
【文献】特開平11-47257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
特許文献1~3は、吸気によって空気を取り込んで、殺菌装置内部を循環する空気を紫外線や光触媒で殺菌する殺菌装置を開示する。
【0018】
特許文献1は、吸引ファンによって取り込んだ空気を、紫外線と光触媒とによって殺菌する脱臭方法を開示する。職場、病院、家庭などに設置されて、室内の空気を脱臭することに用いられる。
【0019】
しかしながら、特許文献1に開示される脱臭方法とこの装置は、非常に大掛かりであって室内における設置場所が限られる問題点もある。また、特許文献1に開示される装置は、あくまでも脱臭装置(殺菌装置)としての機能を果たすだけに過ぎず、例えば隣接する席や人同士を仕切る間仕切りとして使用できるわけではない。室内の細菌やウイルス対策としては、殺菌だけに限らず、必要な場所における空気の往来の遮断も必要となる。しかしながら、特許文献1に開示される装置は、空気の往来を遮断できない。
【0020】
特許文献2は、クリーンルームなどの特殊環境において、室内全体の空気を吸引し、殺菌してから空気を戻す空調システムを開示する。室内全体の空気の殺菌や微生物処理が可能となる点では優れているが、一般的な職場、病院、家庭に設置するのは困難である。また、これらの一般的な室内においては、室内全体の空気を吸引して殺菌することまでが求められているものでもない。
【0021】
このため、特許文献2に開示される空調システムは、一般的な室内において適用ができない問題を有している。
【0022】
特許文献3は、空調機器の空気導入路に装着される光触媒ユニットであって、空調機器の動作時に吸引される室内の空気を殺菌する光触媒ユニットを開示する。
【0023】
しかしながら、特許文献3に開示される光触媒ユニットは、空調機器に装着されるしか、室内に設置の方法がない問題がある。すなわち、設置場所を選び空気の往来の遮断ができない問題を有している。もちろん、空調機器が停止中には、空気の吸引がなされないので、殺菌機能が働かない問題もある。すなわち、特許文献3に開示される光触媒ユニットは、空調機器と連動しなければ使用が困難である問題もある。
【0024】
特許文献1~3に開示される技術は、室内の空気を殺菌することはできるが、病院、職場、家庭のような一般的な室内において容易に設置しつつ、空気の往来の遮蔽機能をも実現できるものではない。
【0025】
特許文献4は、特許文献1~3と同様に、空気を吸引して紫外線や光触媒によって吸引した空気を殺菌する殺菌装置を開示する。特許文献1~3と異なり、殺菌装置が箱型であるので、設置が多少容易となるメリットがある。
【0026】
しかしながら、特許文献4に開示される殺菌装置も、設置する場所の容易性が高まるだけで、空気の往来を遮蔽する機能を有するわけではない。
【0027】
以上のように、特許文献1~4などに表される従来技術は、殺菌という大きな概念を実行する技術を開示しているが、様々な場所におけるベッドでの細菌やウイルスによる悪影響を低減する概念を考慮していない。このため、従来技術は次のような問題を有していた。
【0028】
(問題1)室内全体を大まかに殺菌するだけであり、入院患者、治療患者、要介護者といった体力、免疫力の衰えた病人等の生活空間であるベッド周囲での、集中的な細菌やウイルスの対策ができない。
【0029】
(問題2)仕切りなどによって入院患者、治療患者等の生活空間への細菌等の侵入を抑えることができても、就寝中や治療中といった、人間の身体対応能力が衰えている場所であるベッドでの細菌やウイルスの対応が不十分である。
【0030】
(問題3)従来技術をベッド近辺での殺菌などに応用しようとしても、ベッドに寝ている入院患者、治療患者、要介護者などの周囲空間内部の細菌やウイルスを集中的に除去・死滅・防御することが難しい。特に、殺菌が不十分となったり、侵入を容易としたり、侵入した細菌等を早い段階で死滅させたりすることが難しいという問題を有している。
【0031】
(問題4)問題1から問題3が相まって、入院患者、治療患者、要介護者、一般人などにとって細菌やウイルスの影響を最も受けやすい場所であるベッドでの、細菌やウイルス対策が不十分である。
【0032】
本発明は、これらの問題に鑑み、入院患者、治療患者、要介護者、一般人などにとって細菌やウイルスの影響を最も受けやすい場所であるベッドでの細菌やウイルス対策を確実に行えるベッド型殺菌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0033】
かかる課題を解決するために、本発明のベッド型殺菌装置は、就寝時の使用者の頭部側に設けられる頭部側部材と、 就寝時の使用者の足下側に設けられる足下側部材と、空気が含む細菌又はウイルスを殺菌する殺菌部とを備えるベッド型殺菌装置であって、前記頭部側部材に設けられた第1の開口部と、前記足下側部材に設けられた第2の開口部とを備え、前記第1の開口部と前記第2の開口部が前記殺菌部を介して連通され、前記第1の開口部又は前記第2の開口部の一方から空気が吸引され、前記第1の開口部又は前記第2の開口部の他方から空気が排出される。
【0034】
本発明のベッド型殺菌装置は、さらに、前記頭部側部材と前記足下側部材とを接続する本体部を備え、前記殺菌部は前記本体内部に設けることが望ましい。
【0035】
本発明のベッド型殺菌装置は、さらに、寝具を載置する座面部材を備え、前記頭部側部材および前記足下側部材のそれぞれは、前記座面部材の前記寝具の載置面より上方に設けられることが望ましい。
【0036】
前記第1の開口部と前記第2の開口部は対向することが望ましい。
【0037】
前記第1の開口部又は前記第2の開口部の他方から、前記殺菌部で殺菌された空気が排出されることが望ましい。
【0038】
前記第1の開口部から空気が吸引され、前記第2の開口部から空気が排出されることが望ましい。
【0039】
前記第1の開口部又は前記第2の開口部の一方から空気を吸引する空気吸引部と、前記第1の開口部又は前記第2の開口部の他方から空気を排出する空気排出部とを備えることが望ましい。
【0040】
前記空気吸引部は、前記第1の開口部又は前記第2の開口部の一方に対応する吸引ファンであることが望ましい。
【0041】
前記空気排出部は、前記第1の開口部又は前記第2の開口部の一方に対応する排出ファンであることが望ましい。
【発明の効果】
【0042】
本発明のベッド型殺菌装置は、ベッドの周囲の細菌やウイルスを周囲の空気と一緒に強制的に吸引して、ベッドの構造体内部を移動する際に確実に殺菌する。特に、吸引と排出とをベッドの対向する離隔位置で実行することで、ベッドの構造体内部に吸引した空気を効率的に移動させることができる。この移動の際に、吸引した空気中の細菌やウイルスを死滅させることで、ベッド周囲の空気中の細菌やウイルスを減少させることができる。
【0043】
また、ベッドの対向する離隔位置で、空気の吸引と排出が行われることで、ベッドでの就寝状態の使用者の周囲および上部の空気の細菌やウイルスの殺菌が、効率的に実行される。
【0044】
これらの結果、ベッドにおいて使用者が就寝している際に、使用者の周囲に疑似的な無菌空間が形成されて、患者等への細菌やウイルスの影響を低減できる。この疑似的な無菌空間は、物理的なカーテンなどによって形成されるものではないので、使用者の生理的・精神的圧迫感もなく、医療従事者による治療や介護者による介護での不便も生じない。
【0045】
これらの結果、病床用ベッド、治療用ベッド、介護用ベッド、家庭用ベッド、宿泊施設用ベッドなど様々なベッドを使用する使用者の健康維持が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】本発明の実施の形態1におけるベッド型殺菌装置の斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態1におけるベッド型殺菌装置のモックアップの写真である。
【
図3】本発明の実施の形態1における座面部材を設置したベッド型殺菌装置のモックアップの写真である。
【
図4】本発明の実施の形態1におけるベッド型殺菌装置の空気の流れを示す斜視図である。
【
図5】本発明の実施の形態2におけるベッド型殺菌装置の側面図である。
【
図6】本発明の実施の形態2における頭部側部材の外側から見た斜視図である。
【
図7】本発明の実施の形態2における頭部側部材の内側から見た斜視図である。
【
図8】本発明の実施の形態2におけるベッド型殺菌装置の側面図である。
【
図9】本発明の実施の形態2における足下側部材の外側から見た斜視図である。
【
図10】本発明の実施の形態2における足下側部材の内側から見た斜視図である。
【
図11】殺菌空間の形成と維持を確認する実験の一連の流れと結果を示す写真である。
【
図12】殺菌空間の形成と維持を確認する実験の一連の流れと結果を示す写真である。
【
図13】殺菌空間の形成と維持を確認する実験の一連の流れと結果を示す写真である。
【
図14】殺菌空間の形成と維持を確認する実験の一連の流れと結果を示す写真である。
【
図15】殺菌空間の形成と維持を確認する実験の一連の流れと結果を示す写真である。
【
図16】殺菌空間の形成と維持を確認する実験の一連の流れと結果を示す写真である。
【
図17】殺菌空間の形成と維持を確認する実験の一連の流れと結果を示す写真である。
【
図18】本発明の実施の形態3における実験空間を示す写真である。
【
図19】本発明の実施の形態3の実験2でのベッド型殺菌装置での計測位置を示す模式図である。
【
図20】落下菌検査を行っている状況を示す写真である。
【
図21】この空気の回収の状態を示している写真である。
【
図22】日本病院設備協会規格 HEAS-02(1998)に基づく規格である。
【
図23】日本建築学会環境基準 AJIES-A002‐2005に基づく規格である。
【
図24】本発明の実施の形態3における実験2の落下菌検査の結果を示す表である。
【
図26】本発明の実施の形態3における実験2の浮遊菌検査の実験結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明の第1の発明に係るベッド型殺菌装置は、就寝が可能なベッド形状を有するベッド型殺菌装置であって、
就寝時に使用者の頭部側となる頭部側部材と、
就寝時に使用者の足下側となる足下側部材と、
頭部側部材と足下側部材とを接続する、本体部と、
頭部側部材および足下側部材の一方に設けられる空気吸引部と、
頭部側部材および足下側部材の他方に設けられる空気排出部と、
本体部内部に設けられる殺菌部と、を備え、
空気吸引部、本体部、空気排出部とは、吸引された空気が移動可能に連通状態であり、当該連通状態で移動する空気が、殺菌部で殺菌される。
【0048】
この構成により、ベッドの頭部側もしくは足下側のいずれかからベッドの周囲の空気を吸引して殺菌し、殺菌した空気をベッドの周囲に排出できる。結果として、殺菌された空間や層が形成できる。
【0049】
本発明の第2の発明に係るベッド型殺菌装置では、第1の発明に加えて、使用者の就寝する座面部材が取り付け可能であり、頭部側部材および足下側部材のそれぞれは、座面部材の表面より上方に突出している。
【0050】
この構成により、殺菌した空気の層が、ベッドの上方に形成できる。
【0051】
本発明の第3の発明に係るベッド型殺菌装置では、第2の発明に加えて、空気吸引部は、座面部材の表面の上方であって、座面部材側から空気を吸引する。
【0052】
この構成により、ベッドに就寝等している使用者の周囲の空気を中心に殺菌できる。
【0053】
本発明の第4の発明に係るベッド型殺菌装置では、第2の発明に加えて、空気排出部は、座面部材の表面の上方であって座面部材側に、空気を排出する。
【0054】
この構成により、ベッドに就寝等している使用者の周囲の空気を中心に殺菌できる。結果として、ベッドの上方に殺菌された空間や層を形成できる。この空間は、ベッドの使用者の呼吸空間に重複しており、使用者への細菌やウイルスの影響を低減できる。
【0055】
本発明の第5の発明に係るベッド型殺菌装置では、第4の発明に加えて、空気排出部は、殺菌部で殺菌された空気を排出し、空気吸引部と空気排出部とは、座面部材の上方に、殺菌された空気の空間および層の少なくとも一方を形成可能である。
【0056】
この構成により、ベッドの使用者が就寝状態などである場合の呼吸空間を殺菌空間にできる。
【0057】
本発明の第6の発明に係るベッド型殺菌装置では、第5の発明に加えて、空気吸引部は、頭部側部材に設けられ、空気排出部は、足下側部材に設けられる。
【0058】
この構成により、使用者の頭部側から殺菌した空気が排出(供給)され、使用者に触れて細菌等が混入した空気が、そのまま足下側から再び殺菌動作に回される。結果として、使用者への細菌やウイルスの影響を更に低減できる。
【0059】
本発明の第7の発明に係るベッド型殺菌装置では、第2から第6のいずれかの発明に加えて、空気吸引部は、頭部側部材もしくは足下側部材の座面部材側に設けられた複数の開口部と、複数の開口部のそれぞれに対応する吸引ファンと、複数の吸引ファンのそれぞれで吸引された空気を本体部に移動させる吸引連通部と、を有する。
【0060】
この構成により、空気吸引部は、吸引した空気を、本体部に確実に移動させて殺菌させることができる。
【0061】
本発明の第8の発明に係るベッド型殺菌装置では、第2から第7のいずれかの発明に加えて、空気排出部は、頭部側部材もしくは足下側部材の座面部材側に設けられた複数の開口部と、複数の開口部のそれぞれに対応する排出ファンと、複数の開口部のそれぞれに本体部内部と連通する排出連通部と、を有する。
【0062】
この構成により、空気排出部は、本体部の内部空間で殺菌された空気を、確実に外部に排出できる。結果として、殺菌された空気の循環が、確実に形成できる。
【0063】
本発明の第9の発明に係るベッド型殺菌装置では、第8の発明に加えて、本体部は、吸引連通部および排出連通部と連通する内部空間を有し、空気吸引部で吸引された空気は、内部空間を空気排出部に向けて移動し、殺菌部は、内部空間の移動時に空気を殺菌する。
【0064】
この構成により、吸引した空気は、隔離された内部空間で確実に殺菌される。
【0065】
本発明の第10の発明に係るベッド型殺菌装置では、第2から第9のいずれかの発明に加えて、座面部材は、本体部に組み合わせ可能である。
【0066】
この構成により、ベッド型殺菌装置は、ベッドの骨格部分だけにでき、ベッドとしての様々なバリエーションを実現できる。
【0067】
本発明の第11の発明に係るベッド型殺菌装置では、第8から第10のいずれかの発明に加えて、本体部は、頭部側部材の両端のそれぞれと足下側部材の両端のそれぞれとを接続する2列である第1ダクトと第2ダクトを有しており、第1ダクトおよび第2ダクトのそれぞれは、吸引連通部および排出連通部と連通する内部空間を有し、第1ダクトおよび第2ダクトのそれぞれの内部空間は、殺菌部を備える。
【0068】
この構成により、ベッドの骨格部分だけで殺菌を可能とできる。また吸引した空気を狭い断面である第1ダクトと第2ダクトに分離して移動させることで、殺菌能力を高めることができる。
【0069】
本発明の第12の発明に係るベッド型殺菌装置では、第11の発明に加えて、第1ダクトおよび第2ダクトは、ベッド型殺菌装置のベッドの両側面を形成可能である。
【0070】
この構成により、ベッドの骨格に合わせた本体部となり、ベッドの両側面で、吸引した空気を殺菌できる。
【0071】
本発明の第13の発明に係るベッド型殺菌装置では、第11または第12の発明に加えて、第1ダクトおよび第2ダクトが対向して生じる空間は、座面部材を設置可能である。
【0072】
この構成により、骨格だけであるベッド型殺菌装置に座面部材が取り付けられて、病床用ベッドや介護用ベッドなど様々な用途のベッドが実現できる。
【0073】
本発明の第14の発明に係るベッド型殺菌装置では、第11から第13のいずれかの発明に加えて、第1ダクトおよび第2ダクトの少なくとも一方は、吸引連通部から排出連通部への空気移動を生じさせる送風ファンを更に備える。
【0074】
この構成により、第1ダクトおよび第2ダクトでの空気の移動をスムーズにでき、殺菌能力を高めることができる。
【0075】
本発明の第15の発明に係るベッド型殺菌装置では、第11から第14のいずれかの発明に加えて、吸引連通部に入った空気は、第1ダクトおよび第2ダクトのそれぞれに分配されて移動し、第1ダクトおよび第2ダクトのそれぞれに分配されて移動した空気は、排出連通部で合わさる。
【0076】
この構成により、吸引した空気は2列で効率的に殺菌され、殺菌された空気は混合して排出される。
【0077】
本発明の第16の発明に係るベッド型殺菌装置では、第7から第15のいずれかの発明に加えて、空気吸引部が吸引した空気を、第1ダクトおよび第2ダクトに拡散させる、屈曲空気通路および拡散ファンの少なくとも一つを、空気吸引部は更に備える。
【0078】
この構成により、空気吸引部が吸引した空気は、第1ダクトおよび第2ダクトに、効率的に拡散させつつ移動させることができる。
【0079】
本発明の第17の発明に係るベッド型殺菌装置では、第8から第16のいずれかの発明に加えて、第1ダクトおよび第2ダクトからの空気を、空気排出部全体に拡散させる、屈折空気通路および拡散ファンの少なくとも一つを、空気排出部は更に備える。
【0080】
この構成により、第1ダクトおよび第2ダクトで殺菌された空気は、幅方向に広がりを持って空気排出部に拡散される。これによって、空気排出部は、ベッドの座面部材全体を覆うような範囲に対して、殺菌された空気を排出できる。
【0081】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0082】
(実施の形態1)
【0083】
(全体概要)
図1は、本発明の実施の形態1におけるベッド型殺菌装置の斜視図である。
図1は、ベッド型殺菌装置1において、いわゆる使用者が就寝に使用する座面部材が取り外された状態を示している。ベッド型殺菌装置1は、使用者がそのまま就寝できる完成状態で用意されてもよいし、
図1に示されるように座面部材が後から取り付けられて完成する状態で用意されてもよい。もちろん、実際の就寝や治療に必要となるシーツ、マット、布団などは、別途準備されればよい。
【0084】
本発明におけるベッド型殺菌装置1は、このように、実際に就寝可能な状態のベッドとして完成した状態でのものであってもよいし、ベッドの骨格のみの状態で、就寝に必要となる他の部材と後から組み合わされる状態のものであってもよい。例えば、本発明のベッド型殺菌装置1が、病床用ベッド、治療用ベッド、介護用ベッドなどにそのままもしくは座面部材などの他の部材と組み合わされるだけで使用されてもよい。あるいは、本発明のベッド型殺菌装置1は、ベッドの骨格だけであり(当然に後述する殺菌機能を有している)、ベッドとして必要な様々な部材や用具と組み合わされて初めてベッドとして使用されるものであってもよい。
【0085】
前者の場合には、ベッド型殺菌装置1がすぐに病床用ベッド、治療用ベッド、介護用ベッドなどの様々なベッドに使用できるメリットがある。後者の場合には、殺菌という新しい機能を実現できる骨格をベースに、使用者の必要性、状況、好みなどに合わせたベッドを実現できるメリットがある。
【0086】
また、本発明のベッド型殺菌装置1は、病床用ベッド、治療用ベッド、診察用ベッド、介護用ベッド、家庭用ベッド、宿泊施設用ベッドなど、様々な場面で適用が可能である。いずれの場面でも、就寝(あるいは治療のために寝た状態となっている使用者)状態にある使用者の周囲、特にその呼吸器系につながる上方に、細菌やウイルスが減少された層や空間を作ることができる。この結果、就寝や横たわった状態となっている使用者の呼吸空間や接触空間での細菌やウイルスによる悪影響を、極めて低減することができる。
【0087】
もちろん、本発明のベッド型殺菌装置1は、病床用ベッドや介護用ベッドなどが設置されている室内の空気を吸引して殺菌するので、室内全体の細菌やウイルスを低減できる効果もある。しかし、室内全体の細菌やウイルスを殺菌して低減させることは、効率や能力的に難しいことも多い。このように室内全体の細菌やウイルスを低減させるために、殺菌装置を大がかりにしたり、複雑にしたり、数を多くしたりすることは、コストや設置上の問題(例えば消防法との関連)から難しい場合もある。
【0088】
また、このような室内で必要とされる殺菌レベルと、使用者が就寝や横たわった状態である際の呼吸空間や接触空間で必要とされる殺菌レベルとは異なることが多い。もちろん、後者のほうがより高い殺菌レベルが必要とされる。このため、室内全体については、より簡便あるいは別の手段でのそれなりのレベルでの殺菌で済ませても問題ないことも多い。一方で、上述のとおり、使用者が長時間を過ごすベッドでの就寝状態や横たわった状態での呼吸空間や接触空間で必要とされる殺菌は、高いレベルが要求される。
【0089】
本発明のベッド型殺菌装置1は、このようなベッドでの使用者の就寝状態や横たわった状態での呼吸空間や接触空間での細菌やウイルスの低減を効率的かつ確実に実現する。言い換えれば、例えば従来はベッドの周囲に形成されていた無菌テントや防御カーテンを、物理的な膜や素材を用いずに、形成することを実現する。
【0090】
(全体構成)
ベッド型殺菌装置1は、使用者が就寝可能なベッド形状を有している。上述のとおり、ベッドとしての完成状態であってもよいし骨格のみの状態であってもよい。
【0091】
ベッド型殺菌装置1は、頭部側部材2、足下側部材3、本体部6、空気吸引部4、空気排出部5、殺菌部9と、を備える。
図1に示されるように、頭部側部材2と足下側部材3とは、離隔して対向している。この2つの部材が、ベッド型殺菌装置1のベッドとしての骨格の頭部側と足下側を形成する。一方、本体部6は、ここでは、第1ダクト7と第2ダクト8で構成されている。第1ダクト7と第2ダクト8とは、ベッド型殺菌装置1のベッドとしての骨格の側面を形成できる。すなわち、頭部側部材2、第1ダクト7、足下側部材3、第2ダクト8とが四辺で連結する状態によって、
図1のようにベッドの骨格を形成できる。
【0092】
なお、上述のとおり、
図1では本体部6が第1ダクト7と第2ダクト8とを有した構成を有しているが、第1ダクト7と第2ダクト8(およびこれに関係する部材)全体が、本体部6として把握されればよい。本体部6は、
図1のように、離隔して対向する一対となった第1ダクト7と第2ダクト8とで構成されず、一つの部材として構成されてもよい。
【0093】
頭部側部材2は、使用者が就寝時に頭部側となる部材であり、ベッド型殺菌装置1のベッドとしての骨格の一つを形成する。足下側部材3は、使用者が就寝時に足下側となる部材であり、ベッド型殺菌装置1のベッドとしての骨格の一つを形成する。頭部側部材2と足下側部材3とは、相互に対向した状態で離隔している。
【0094】
空気吸引部4は、頭部側部材2および足下側部材3の一方に設けられ、ベッド型殺菌装置1の周囲の空気を吸引する。すなわち、ベッド型殺菌装置1に就寝あるいは横たわっている使用者の周囲の空気を吸引する。
【0095】
空気排出部5は、頭部側部材2および足下側部材3の他方に設けられる。すなわち、空気排出部5は、頭部側部材2と逆側に設けられる。言い換えれば、空気吸引部4と空気排出部5とは、対向した一対の状態となる。空気排出部5は、本体部6の内部空間を移動した空気を排出する。
【0096】
本体部6(
図1では、第1ダクト7と第2ダクト8)は、内部空間を有する。また、この内部空間は、空気吸引部4および空気排出部5と空気が移動可能に連通している。すなわち、空気吸引部4、本体部6(の内部空間)および空気排出部5とは、吸引された空気が移動可能に連通状態である。
【0097】
図1では、本体部6を構成する第1ダクト7が内部空間71を有し、第2ダクト8が内部空間81を有する。このため、空気吸引部4で吸引された空気は、第1ダクト7の内部空間71および第2ダクト8の内部空間81のそれぞれを移動して、最終的に空気排出部5に移動して、外部に排出される。
【0098】
本体部6の内部空間、すなわち
図1では、第1ダクト7の内部空間71および第2ダクト8の内部空間81のそれぞれは、細菌やウイルスを殺傷する殺菌部9を有している。このため、第1ダクト7の内部空間71および第2ダクト8の内部空間81を移動する空気は、移動する際に殺菌される。結果的に、空気排出部5に到達して外部に排出される空気は、吸引時に含んでいた細菌やウイルスを減少させた状態である。
【0099】
このようにして、ベッド型殺菌装置1は、就寝状態である頭部側もしくは足下側から吸引された空気が、ベッド内部である本体部6の内部空間を移動する間に殺菌されて、頭部側もしくは足下側の逆側から排出される。このようにして、ベッドとして使用されるベッド型殺菌装置1の座面部材に就寝あるいは横たわっている使用者の上方空間に、細菌やウイルスが低減された層や空間が形成される。この形成される層や空間は、就寝や横たわっている使用者の呼吸空間や接触空間である。すなわち、上述したように、実施の形態1におけるベッド型殺菌装置1は、使用者の呼吸空間や接触空間に、物理的な膜やカーテンを使用することなく、細菌やウイルスの低減された空間を形成できる。
【0100】
ここで、殺菌部9は、所定の波長の紫外線を発光する。細菌やウイルスの種類によって適切な波長の紫外線を発することで、本体部6の内部空間を移動する空気中に含まれる細菌やウイルスを殺傷でき、低減できる。もちろん、場合によっては死滅させることもできる。全体としては、空気吸引部4で吸引された空気中に含まれる細菌やウイルスの数を著しく減少させることができる。
【0101】
図1のベッド型殺菌装置1では、本体部6は、第1ダクト7および第2ダクト8を有している。このため、空気吸引部4で吸引された空気は、第1ダクト7と第2ダクト8とに分離して空気排出口5へ移動する。第1ダクト7は、内部空間71を有している。この内部空間71は、殺菌部9Aを備えている。同様に、第2ダクト8は、内部空間81を有している。この内部空間81は、殺菌部9Bを備えている。これら殺菌部9A、9Bが、内部空間71、81を移動する空気中の細菌やウイルスを殺傷して低減する。
【0102】
本体部6がベッドの底部全体である場合と比較して、ベッドの両側面に狭い断面積である第1ダクト7と第2ダクト8が設けられる場合のほうが、吸引された空気の移動がより効率的になる。断面積が小さいことで、移動する空気が空気吸引部4から空気排出部5へ移動しきれずに、本体部6内部で滞留してしまうことが少なくなるからである。あるいは、逆流することも減少する。この結果、空気吸引部4から空気排出部5への空気の流れがスムーズになる。これは、ベッド型殺菌装置1を、いわゆる就寝や治療・介護のために横たわる生活空間のベッドとしてみなした場合に、使用者の上方であるベッドの上方の空気を、常に吸引と排出で入れ替えつつ、空気の流れによる目に見えないカーテン(膜や層に対応する)を形成できるようになる。
【0103】
また、紫外線を発光する殺菌部9A、9Bの照射範囲が、内部空間71、81全体に届きやすくなり、殺菌能力が高まるメリットがある。このように、本体部6が、
図1に示されるように第1ダクト7と第2ダクト8とに分離されて構成されることで、殺菌能力も高まる。
【0104】
空気の流れの効率化(ベッド内部でもベッド外部においても)と殺菌の効率化とが相まって、第1ダクト7と第2ダクト8とに分離された本体部6は、細菌やウイルスを、ベッドとして使用する使用者の就寝時や横たわっている状態での、呼吸空間や接触空間での細菌やウイルスの低減状態を実現しつつ維持できる。
【0105】
(ベッド型殺菌装置の構成例)
図2は、本発明の実施の形態1におけるベッド型殺菌装置のモックアップの写真である。
図2は、ベッド型殺菌装置1のモックアップを斜めから撮像した状態を示している。
【0106】
図2のモックアップでのベッド型殺菌装置1は、
図1で示したものと同じく、本体部6が、第1ダクト7と第2ダクト8とで構成されている。ベッド型殺菌装置1は、ベッドとして使用可能な骨格で構成されている。
【0107】
このため、頭部側部材2は、就寝時の使用者が頭を置く側となり、ベッドの骨格としての支持部となる。同様に足下側部材3は、就寝時の使用者が足を置く側となり、ベッドの骨格としての支持部の一つとなる。頭部側部材2と足下側部材3とは、ベッドの使用者の身長や余裕度を想定して、一定の距離離れて対向する状態となる。
【0108】
第1ダクト7および第2ダクト8のそれぞれは、ベッド型殺菌装置1のベッドとしての骨格の側面の辺を構成する。すなわち、第1ダクト7および第2ダクト8のそれぞれは、ベッドとしての骨格となる側面側の支持部の一つとなる。また、第1ダクト7および第2ダクト8のそれぞれは、頭部側部材2および足下側部材3のそれぞれと接続している。
【0109】
このような構成によって、頭部側部材2、足下側部材3、第1ダクト7、第2ダクト8の4つの部材によって、ベッドとしての四辺が構成される。この四辺の構成によって、ベッドとしての骨格が形成される。このように、ベッド型殺菌装置1は、ベッドとしての完成品の手前である骨格部材のみで、上述したようなベッドを使用する使用者の呼吸空間や接触空間の空気の殺菌を実現できる。
【0110】
図3は、本発明の実施の形態1における座面部材を設置したベッド型殺菌装置のモックアップの写真である。
図3の写真に示されるベッド型殺菌装置1は、
図2のベッド型殺菌装置の骨格によって形成される中央の空間に、使用者の就寝する座面部材10が取り付けられた状態を示している。すなわち、
図2から
図3の状態とされることで、ベッド型殺菌装置1は、ベッドとしての使用ができるようになる(もちろん、シーツや布団などの追加は必要である)。
【0111】
ベッド型殺菌装置1が、病床用ベッド、治療用ベッド、介護用ベッド、家庭用ベッドなど様々なベッドに適用される場合であっても、座面部材10が取り付けられることで、使用者が実際にベッドとしての使用を行えるようになる。
【0112】
(呼吸空間の形成と殺菌)
使用者は、必要となるシーツやマットなどが座面部材10に敷かれることで、その上に就寝したり横たわったりする。この状態で、座面部材10の上方(使用者の上方)に呼吸空間100が形成される。呼吸空間100は、就寝状態や横たわった状態の使用者が、直接的に呼吸を行うのに使用する空気が存在している空間である。また、使用者が物理的に身体に接触する接触空間でもある。
【0113】
ベッド型殺菌装置1は、既述した通り、この呼吸空間100を中心かつ効率的に、殺菌する。
【0114】
このような座面部材10の上方の殺菌される呼吸空間100を形成するために、頭部側部材2および足下側部材3のそれぞれは、座面部材10の表面より上方に突出していることが好適である。
図3では、この状態が示されている。ベッド型殺菌装置1は、頭部側と足下側が高くなった骨格構造を有している。
【0115】
このような構造により、空気吸引部4も座面部材10の表面の上方に位置する。このような位置に設置されることにより、空気吸引部4は、座面部材10の上方の位置から空気を吸引する。空気吸引部4は、頭部側部材2および足下側部材3の一方に設けられるので、空気吸引部4が、座面部材10の表面の上方に位置するように構成されることは可能である。
【0116】
同様に、空気排出部5も、座面部材10の表面の上方に位置する。このような位置に設置されることにより、空気排出部5は、底面部材10の上方の位置から空気を排出する。空気排出部5は、頭部側部材2および足下側部材3の一方で合って、空気吸引部4と逆側に設けられるので、空気排出部5が、底面部材10の表面の上方に位置するように構成されることは可能である。
【0117】
また、空気吸引部4および空気排出部5のそれぞれは、座面部材10側を向いている。すなわち、空気吸引部4は、座面部材10の上方であって座面部材10側から空気を吸引する。一方、空気排出部5は、座面部材10の上方であって、座面部材10側に、空気を排出できる。
【0118】
すなわち、空気吸引部4と空気排出部5とは、座面部材10を挟んで対向して、向き合う形態で空気の吸引と空気の排出とを行う。この向き合った形での空気の吸引と排出の組み合わせにより、座面部材10の上方において、空気の流れが生じる。この座面部材10の上方での空気の流れによって、座面部材10の上方に呼吸空間100を形成できる。空気吸引部4と空気排出部5との高さを、座面部材10との関係で適切にすることで、座面部材10に就寝したり横たわったりしている使用者の上方の呼吸空間100を形成できる。
【0119】
同様に、空気吸引部4と空気排出部5とを、頭部側部材2および足下側部材3の横方向(すなわち座面部材10の横方向)に広げることで、座面部材10に就寝したり横たわったりしている使用者の上方であって側面にかかる空間を、呼吸空間100として形成できる。すなわち、座面部材10を基準にした平面方向の範囲と、空気吸引部4と空気排出部5との高さで座面部材10を基準とした高さ方向の範囲に、立体的空間である呼吸空間100を形成できる。
【0120】
ここで、空気吸引部4は、この呼吸空間100およびその周囲の空気を吸引する。吸引する空気は、外気とつながっているので細菌やウイルスを含んでいる。空気吸引部4は、この細菌やウイルスを含んでいる、呼吸空間100およびその周囲の空気を吸引する。吸引された空気は、第1ダクト7および第2ダクト8の備える殺菌部9A,9Bによって殺菌される。この殺菌された空気を、空気排出部5は、排出する。
【0121】
空気排出部5は、殺菌された空気を排出する。この排出先は、呼吸空間100およびその周囲である。すなわち、呼吸空間100とその周辺には、殺菌された空気が供給される状態が継続される(ベッド型殺菌装置1が動作している状態において)。
【0122】
この結果、呼吸空間100は、殺菌された空気の空間もしくは層として形成される。使用者は、ベッドの座面部材10に就寝していたり横たわっていたりする場合には、この呼吸空間100内部にいる状態である。このため、使用者は、殺菌された空気の層であり空間である呼吸空間100において、生理動作を行うことができる。これらの結果、使用者が入院患者であったり、治療患者であったり、要介護者や高齢者であったりする場合でも、病室などの空気中に含まれる細菌やウイルスの影響を受けにくくなる。
【0123】
もちろん、これは家庭用や宿泊施設などのベッドを使用する健康な使用者でも同様である。
【0124】
(殺菌された呼吸空間)
以上のように、実施の形態1におけるベッド型殺菌装置1は、殺菌された呼吸空間100を形成できる。この殺菌された呼吸空間100は、要は、座面部材10の上方および平面方向の範囲の立体空間での、殺菌された空気の空間および層の少なくとも一方である。物理的な膜やカーテンなどを使用せずに、ベッドでの使用者の呼吸空間100や接触空間に、殺菌された減菌空間を形成できる。
【0125】
図4は、本発明の実施の形態1におけるベッド型殺菌装置の空気の流れを示す斜視図である。図中の矢印は、空気の流れを示している。
【0126】
ここで、空気吸引部4は、頭部側部材2および足下側部材3の一方に設けられる。また、空気排出部5は、空気吸引部4と逆側に設けられる。
【0127】
空気吸引部4と空気排出部5のそれぞれは、頭部側部材2および足下側部材3のいずれに設けられてもよいが、使用者が就寝状態あるいは横たわっている状態では、呼吸するのは頭部側である。このため、呼吸する頭部側に殺菌された空気が供給されることが好ましい。
【0128】
また、使用者の呼吸系のある頭部側に殺菌された空気が供給された後でも、使用者が病人等であれば、吐き出す息や身体に触れた後の空気は、新たに細菌やウイルスを含みやすい。もちろん、呼吸空間100が減菌された空間として形成されたとしても、外気との接触により細菌やウイルスが混入してくる可能性がある。
【0129】
このため、頭部側に比較して足下側の空気は、細菌やウイルスが多い可能性が高い。このような細菌やウイルスを殺菌することが目的であるので、より細菌やウイルスの多い可能性のある空気を吸引することが適当である。
【0130】
以上のことから、
図4に示されるように、空気吸引部4は、足下側部材3に設けられることが適当である。同様に、空気排出部5は、頭部側部材2に設けられることが適当である。この結果、足下側から細菌やウイルスを含んだ空気が、使用者の身体に悪影響を与えることなく吸引される。吸引された空気は、第1ダクト7および第2ダクト8の殺菌部9A、9Bで殺菌されて、殺菌された空気が使用者の頭部側から排出される。この結果、殺菌された空気が、常に使用者の呼吸器系のある頭部側に供給されて、使用者への細菌やウイルスの悪影響が低減できる。
【0131】
また、後述するように空気吸引部4および空気排出部5は、ファンなどの空気を移動させる機構を使用することが多い。このファンなどによって吸引される際に空気吸引部4を形成する部材との接触や摩擦で、音が生じる。同様に、ファンなどによって排出される際に空気排出部5を形成する部材との接触や摩擦で音が生じる。
【0132】
これらの音においては、相対的なものであるし部材や機構の構造に依存するが、空気吸引部4での音が、空気排出部5での音よりもやや大きい。この点でも、頭部側部材2に空気排出部5が設けられることは、使用者の就寝動作にとって好ましい。就寝時に頭部(耳)の周囲での音による不快感が減少するからである。
【0133】
(動作詳細)
【0134】
動作詳細を説明する。
ベッド型殺菌装置1は、
図4のような構成と形状を一例として有している。既述したように、本体部6が第1ダクト7と第2ダクト8との2つに分離している
図4のような例でもよいし、一体であってもよいし、3以上のダクト(通路)に分かれていてもよい。
【0135】
(空気の吸引)
足下側部材3に空気吸引部4が設けられる。空気吸引部4は、吸引ファンなどを用いて、呼吸空間100付近の空気を吸引する。空気吸引部4の空気吸引力は、音や殺菌部9での殺菌能力、第1ダクト7などの空気移動能力などを考慮して、定められれば良い。
【0136】
ここで、空気吸引部4の空気吸引力は、吸引ファンの回転数、数、羽の大きさなどによっても調節できるし、空気吸引部4が有する開口部42の面積、数、配置などによっても調節できる。
【0137】
また、これらのパラメータで調節できる空気吸引力は、制御装置によって人為的かつ事後的に変更可能であることも好適である。
【0138】
このように、空気吸引力が調節された上で、空気吸引部4は、開口部42から呼吸空間100周辺の空気を吸引する。吸引された空気は、矢印Aの方向に従い、空気吸引部4より下方に移動する。下方に第1ダクト7および第2ダクト8が設けられているからである。
【0139】
(第1ダクトおよび第2ダクトへの移動)
矢印Aに従って、空気吸引部4で吸引された空気は、第1ダクト7および第2ダクト8に移動する。このとき、空気吸引部4は、第1ダクト7の内部空間71と第2ダクトの内部空間81とのそれぞれと空気が移動可能に連通する吸引連通部41を有する。この吸引連通部41を介して、空気吸引部4で吸引された空気が、次第に第1ダクト7の内部空間71および第2ダクト8の内部空間81とに移動していく。
【0140】
矢印B、矢印Cは、この吸引連通部41から内部空間71および内部空間81への空気の移動を示している。吸引ファンの力によって、吸引された空気は、第1ダクト7の内部空間71と第2ダクト8の内部空間81とのそれぞれに分離しながら、移動していく。
【0141】
ここで、第1ダクト7の内部空間71と第2ダクト8の内部空間81との体積、断面積、開口面積によって、空気吸引部4で吸引された空気は、それぞれに対応した分量で分離しながら移動する。
【0142】
(第1ダクトおよび第2ダクトでの移動)
第1ダクト7の内部空間71に入った空気は、空気吸引部4による吸引力の圧力と空気排出部5による排出力による圧力とによって、内部空間71を、矢印Dの方向に移動する。すなわち、内部空間71を、空気は、空気吸引部4側から空気排出部5側に移動する。
【0143】
内部空間71は、紫外線を発光する殺菌部9Aを備えている。もちろん、殺菌部9Aは、紫外線照射機能以外の機能による殺菌機能を備えていてもよい。また、紫外線の波長を変化させたり照射強度を変化させたりすることができる。
【0144】
内部空間71を移動する空気は、この移動の際に、紫外線の照射などを受けて殺菌される。すなわち、空気が含む細菌やウイルスが殺傷されて、空気が含む細菌やウイルスが減少する。
【0145】
また、紫外線等の照射による殺菌部9Aのみならず、内部空間71の内面が光触媒などで塗布されていることも好適である。光触媒の塗布によって、紫外線の照射と相まって、空気の殺菌が更に進むメリットがある。また、紫外線等の照射による殺菌部9A以外の手段による殺菌機構が、内部空間71に設けられたり、内部空間71の内面に設けられたりすることで、殺菌が更に効率的になることもよい。
【0146】
同様に、第2ダクト8の内部空間81に入った空気は、空気吸引部4による吸引力の圧力と空気排出部5による排出力による圧力とによって、内部空間81を、矢印Eの方向に移動する。すなわち、内部空間81を、空気は、空気吸引部4側から空気排出部5側に移動する。
【0147】
内部空間81は、紫外線を発光する殺菌部9Bを備えている。もちろん、殺菌部9Bは、紫外線照射機能以外の機能による殺菌機能を備えていてもよい。また、紫外線の波長を変化させたり照射強度を変化させたりすることができる。
【0148】
内部空間81を移動する空気は、この移動の際に、紫外線の照射などを受けて殺菌される。すなわち、空気が含む細菌やウイルスが殺傷されて、空気が含む細菌やウイルスが減少する。
【0149】
また、紫外線等の照射による殺菌部9Bのみならず、内部空間81の内面が光触媒などで塗布されていることも好適である。光触媒の塗布によって、紫外線の照射と相まって、空気の殺菌が更に進むメリットがある。また、紫外線等の照射による殺菌部9B以外の手段による殺菌機構が、内部空間81に設けられたり、内部空間81の内面に設けられたりすることで、殺菌が更に効率的になることもよい。
【0150】
(第1ダクトおよび第2ダクトから空気排出部への移動)
第1ダクト7の内部空間71および第2ダクト8の内部空間81のそれぞれを移動した空気は、空気排出部5へ移動する。このとき、内部空間71と内部空間81と、空気排出部5とを連通させる排出連通部51を通じて、空気は空気排出部5へ移動する。
【0151】
空気排出部5も、空気吸引部4と同様に排出ファンなどの空気を排出する圧力を付与する機構を備えており、この圧力によって、内部空間71、81からの空気が、空気排出部5へ移動する。この圧力を付与する機構は、排出ファンだけでなく、圧力ポンプ、圧力弁などの様々な部材で実現されればよい。
【0152】
(空気排出部からの空気の排出)
内部空間71、81を経由して空気排出部5に到達した空気は、殺菌部9A,9Bによって細菌やウイルスが低減されている。
【0153】
空気排出部5は、上述のように、排出ファンなどの排出のための圧力を付与する機構を備えており、到達して殺菌された空気を排出する。このとき、空気排出部5は、座面部材10の上方であって座面部材10側に向けて殺菌した空気を排出する。
【0154】
矢印Fは、この空気の排出方向を示す。
【0155】
空気排出部5も、空気吸引部4と同様に、開口部を有しており、この開口部から殺菌された空気を排出できる。矢印Fから分かるように、この殺菌された空気の排出は、やがて対向する空気吸引部4に到達して吸引される。すなわち、矢印Fのように、空気は座面部材10の上方で循環する。この循環が、殺菌された空気の空間や層を形成し、この空間や層は、使用者の呼吸空間100や接触空間に対応する。
【0156】
ここで、空気排出部5は、開口部の面積、開口部の数、開口部の配置などによって、殺菌された空気の排出の速度、範囲、高さ、幅、流量などを調節できる。また、排出ファンなどによる圧力の調節によっても、殺菌された空気の排出の速度、範囲、高さ、幅、流量などを調節できる。両者が組み合わされてもよい。
【0157】
これらの調節は、制御機構によって、事後的に行えることが好ましい。この結果、使用者の病状、状態、体型などに合わせた、殺菌された呼吸空間100の形成が可能となる。
【0158】
(空気吸引部による再度の空気吸引)
上述したように、矢印Fにあるように、空気排出部5から排出された空気は、対向する空気吸引部4で吸引される。もちろん、空気吸引部4は、この排出された空気以外の周辺の空気も合せて吸引する。
【0159】
これら吸引する空気は、使用者の呼吸や身体との接触、呼吸空間100以外の空気との接触などによって、再び細菌やウイルスを含んでいる可能性がある。この細菌やウイルスを再び含んだ空気は、空気吸引部4によってふたたび吸引されて、上述のサイクルを繰り返して、殺菌して排出されるとのサイクルを繰り返す。このサイクルの繰り返しが行われている間、呼吸空間100を、物理的な膜やカーテンを使用せずに細菌やウイルスを減少させた状態に保つことができる。
【0160】
以上のように、実施の形態1におけるベッド型殺菌装置1は、使用者が座面部材10に就寝状態や横たわっている状態で、呼吸空間100や接触空間の範囲を、物理的な膜やカーテンを使用することなく、減菌した状態に維持できる。結果として、病床用ベッド、治療用ベッド、診察用ベッド、介護用ベッドなどを使用する病人、要介護者、高齢者など、細菌やウイルスへの免疫力が弱くなった人への悪影響を低減できる。
【0161】
あるいは、家庭用ベッドや宿泊施設用ベッドに適用される場合には、不測の事態による健康を害することを防止できる。
【0162】
(実施の形態2)
【0163】
次に、実施の形態2について説明する。
【0164】
実施の形態2では、各部のさらなる工夫などについて説明する。
【0165】
(頭部側部材および空気排出部)
図5は、本発明の実施の形態2におけるベッド型殺菌装置の側面図である。
図6は、本発明の実施の形態2における頭部側部材の外側から見た斜視図である。
図7は、本発明の実施の形態2における頭部側部材の内側から見た斜視図である。
図5~
図7は、頭部側部材2の構造と、頭部側部材2に組み込まれた空気排出部5の構造と機能を示している。
【0166】
図5から明らかな通り、頭部側部材2に空気排出部5が設けられることが好ましい。
図5の矢印のとおり、殺菌された空気が使用者が就寝等している座面部材10側に向けて排出されるからである。この排出によって、殺菌された空気が、常に使用者に供給される。
【0167】
図6は、空気排出部5の内部詳細を示している。空気排出部5は、
図2などで説明した通り、複数の開口部52を備えていることが好適である。一つの開口部から殺菌された空気が排出されるよりも、複数に区分された複数の開口部52のそれぞれから空気が排出されるほうが、呼吸空間100全体に均一的に殺菌した空気を排出できるからである。
【0168】
この複数の開口部52全体に対して、第1ダクト7、第2ダクト8を移動してきた殺菌された空気を排出する大型の単体の排出ファンが設けられてもよい。この場合には、この大型の排出ファンの圧力によって、第1ダクト7および第2ダクト8を移動して排出連通部51から出てくる殺菌された空気を、開口部52から排出できるようになる。
【0169】
一方で、大型かつ単体の排出ファンのみで複数の開口部52から殺菌された空気を排出しようとすると、騒音などの問題が生じる。あるいは、排出能力の問題や消費電力増加の問題も生じる。
【0170】
そこで、複数の開口部52のそれぞれに対応する個別の排出ファン53が設けられることも好適である。
図6は、この開口部52のそれぞれに対応する個別の排出ファン53が設けられている状態を示している。
【0171】
もちろん。排出ファン53は、すべての開口部52に対応して設けられていなくてもよい。いくつかの開口部52には、排出ファン53が設けられていない状態であってもよい。あるいは、一つの排出ファン53が、2以上の開口部52に対応して設けられてもよい。
【0172】
このように、複数の開口部52のそれぞれもしくはいくつかに対応して個別に排出ファン53が設けられることで、騒音や消費電力を抑えることができる。また、頭部側部材2の小型化も実現できる。さらには、開口部52からの殺菌された空気の排出効率を向上させ、呼吸空間100に広く均一化された状態で、殺菌された空気を排出できる。
【0173】
図7は、複数の開口部52から殺菌された空気が排出される状態を示している。開口部52から示されている矢印は、殺菌された空気の排出方向を示している。
図6と
図7とを合わせてみれば、個別の排出ファン53のそれぞれが、対応する開口部52を有しており、個別の排出ファン53の排出圧力によって、開口部52から殺菌された空気を排出できる。このため、排出ファン53は、ファン部分と開口部52とを一体化した構造を有してもよい。
【0174】
また、排出連通部51は、屈曲した屈曲空気通路54を更に備えていてもよい。屈曲空気通路54は、排出連通部51から移動してきた空気を、排出ファン53の領域に移動させる。このとき、屈曲空気通路54は、屈曲した経路を有しているので、矢印Gのように排出連通部51から移動してきた空気を幅方向に拡散できる。
【0175】
殺菌された空気は、ベッド型殺菌装置1の両側面の第1ダクト7と第2ダクト8とを通じて移動して排出連通部51に到達する。一方で、最終的に空気排出部5から排出される殺菌された空気は、座面部材10の高さ方向および幅方向に均一に広がって排出されることが好ましい。このために、複数の開口部52とこれに対応する複数の排出ファン53が設けられている。
【0176】
このため、排出ファン53の領域に排出連通部51から移動する空気は、この屈曲空気通路54で、幅方向に広がることが好ましい。第1ダクト7、第2ダクト8のみからそのまま排出ファン53の領域に到達するよりも、広がっているからである。
【0177】
このように、より広い範囲での排出を実現するために、屈曲空気通路54が設けられて、矢印Gのように、排出連通路51からの空気が幅方向に広がってから、排出ファン53によって排出されることが適当である。
【0178】
また、この屈曲空気通路54での拡散を補助する拡散ファン55が備えられていることも好適である。
図7は、拡散ファン55を示している。屈曲空気通路54に合せて、幅方向において設けられて、排出連通路51からの空気を、上方の排出ファン53の領域に、空気を移動させる。
【0179】
この空気の移動によって、幅方向に広がって複数の排出ファン53のすべてを効率よく稼働させると共に、空気の勢いを落とすことなく、排出連通路51から排出ファン53の領域に空気を移動させることができる。
【0180】
以上のような構成を有することで、第1ダクト7および第2ダクト8の2つに分離して移動して殺菌された空気を、再度、頭部側部材2の幅および高さ方向に広げて排出できるようになる。結果として、呼吸空間100に対応する範囲を、殺菌された空気の空間や層として実現できる。
【0181】
(足下側部材と空気吸引部)
次に、足下側部材3とこれに装着される空気吸引部4の詳細について、
図8~
図10を用いて説明する。
図8は、本発明の実施の形態2におけるベッド型殺菌装置の側面図である。
図9は、本発明の実施の形態2における足下側部材の外側から見た斜視図である。
図10は、本発明の実施の形態2における足下側部材の内側から見た斜視図である。
図8~
図10は、足下側部材3の構造と、足下側部材3に組み込まれた空気吸引部4の構造と機能を示している。
【0182】
図8から明らかな通り、足下側部材3に空気吸引部4が設けられることが好ましい。
図8の矢印のとおり、呼吸空間100やその周辺の空気、および空気排出部5から排出された後で、細菌やウイルスを含んだ空気が、吸引されて再び殺菌されるようになるからである。
【0183】
この空気吸引部4が足下側部材3に設けられ、上述のとおり空気排出部5が頭部側部材2に設けられることで、殺菌された空気の空間や層が、使用者の呼吸空間100や接触空間に重なるようになる。この結果、使用者の呼吸や生理活動での、細菌やウイルスの影響を大きく低減できる。
【0184】
図9は、空気吸引部4の内部詳細を示している。空気吸引部4は、
図2などで説明した通り、複数の開口部42を備えていることが好適である。一つの開口部から空気が吸引されるよりも、複数に区分された複数の開口部42のそれぞれから空気が吸引されるほうが、殺菌された呼吸空間100やその周辺からの空気を均一に吸引しやすくなるからである。空気排出の均一性と合せて空気吸引の均一性が対応することで、ベッド型殺菌装置1の座面部材10の上方および幅方向での殺菌された空間や層が、確実かつ広く形成されるからである。
【0185】
この複数の開口部42全体に対して、第1ダクト7、第2ダクト8への空気を吸引する大型の単体の吸引ファンが設けられてもよい。この場合には、この大型の吸引ファンの圧力によって、第1ダクト7および第2ダクト8へ、吸引連通部41を通じて空気が吸引される。
【0186】
一方で、大型かつ単体の吸引ファンのみで複数の開口部42から空気を吸引しようとすると、騒音などの問題が生じる。あるいは、吸引能力の問題や消費電力増加の問題も生じる。
【0187】
そこで、複数の開口部42のそれぞれに対応する個別の吸引ファン43が設けられることも好適である。
図9は、この開口部42のそれぞれに対応する個別の吸引ファン43が設けられている状態を示している。
【0188】
もちろん、吸引ファン43は、すべての開口部42に対応して設けられていなくてもよい。いくつかの開口部42には、吸引ファン43が設けられていない状態であってもよい。あるいは、一つの吸引ファン43が、2以上の開口部42に対応して設けられてもよい。
【0189】
このように、複数の開口部42のそれぞれもしくはいくつかに対応して個別に吸引ファン43が設けられることで、騒音や消費電力を抑えることができる。また、足下側部材3の小型化も実現できる。さらには、開口部42からの殺菌された空気の吸引効率を向上させ、呼吸空間100から広く均一的に空気を吸引できる。
【0190】
図10は、複数の開口部42から空気が吸引される状態を示している。開口部42から示されている矢印は、空気の吸引方向を示している。
図9と
図10とを合わせてみれば、個別の吸引ファン43のそれぞれが、対応する開口部42を有しており、個別の吸引ファン43の吸引圧力によって、開口部42から空気を吸引できる。このため、吸引ファン43は、ファン部分と開口部42とを一体化した構造を有してもよい。
【0191】
また、吸引連通部41は、屈曲した屈曲空気通路44を更に備えていてもよい。屈曲空気通路44は、吸引ファン43から移動してきた空気を、吸引連通部41に効率的に移動させる。このとき、屈曲空気通路44は、屈曲した経路を有しているので、矢印Hのように吸引ファン43の領域から移動してきた空気を幅方向に拡散できる。
【0192】
吸引ファン43によって吸引された空気は、ベッド型殺菌装置1の両側面に設けられた第1ダクト7および第2ダクト8に分離して移動させられる。このとき、第1ダクト7および第2ダクト8に均一に移動させられることが好ましい。このとき、屈曲空気通路44によって矢印Hのように幅方向に拡散されることで、吸引ファン43によって吸引された空気は、均一性を持って第1ダクト7および第2ダクト8に効率的に分配されて移動される。
【0193】
なお、ここでの均一とは、空気量の絶対的な均一性に限定されるのではなく、第1ダクト7および第2ダクト8とのそれぞれに、空気が移動することであればよい。
【0194】
空気は、ベッド型殺菌装置1の両側面の第1ダクト7と第2ダクト8とを通じて移動して排出連通部51に到達する。この移動の中で、殺菌部9A,9Bによって細菌やウイルスの低減が実現される。
【0195】
このように、屈曲空気通路44が設けられることで、矢印Hのように、吸引ファン43から吸引連通路41へ空気が幅方向に広がってから、第1ダクト7と第2ダクト8とに空気が効率的に移動できる。
【0196】
また、この屈曲空気通路44での拡散を補助する拡散ファン45が備えられていることも好適である。
図10は、拡散ファン45を示している。屈曲空気通路44に合せて、幅方向において設けられて、吸引ファン43からの空気を、幅方向に拡散して、第1ダクト7および第2ダクト8に移動させる。
【0197】
この空気の移動によって、第1ダクト7と第2ダクト8の両方での殺菌を効率よくかつ平均的に行うことができ、空気の殺菌能力を向上できる。
【0198】
(第1ダクト、第2ダクト)
【0199】
本体部6が、第1ダクト7および第2ダクト8によって構成されてもよいことを説明した。
図2などに示されるように、第1ダクト7と第2ダクト8が本体部6を構成することで、ベッド型殺菌装置1の両側面の骨格となり、内部部分が座面部材10を装着する空間として活用できるからである。
【0200】
この第1ダクト7は内部空間71を有し、第2ダクト8は、内部空間81を有している。この内部空間71および内部空間81を空気が移動して、移動する空気に対して、内部空間71、81に設けられている殺菌部9A,9Bのそれぞれが殺菌機能を発揮する。
【0201】
ここで、第1ダクト7および第2ダクト8は、それぞれ内部空間71、81を有する部材である。空気吸引部4と空気排出部5との圧力によって、内部空間71、81の内部を空気が移動する。この空気の移動の速度を調節する送風ファンを、内部空間71、81が備えることも好適である。
【0202】
送風ファンは、内部空間71、81を移動する空気を効率よく高い速度で移動させることもできるし、速度を遅くすることも可能である。殺菌効率を考慮した移動速度を実現できる。
【0203】
いずれにしても、送風ファンは、内部空間71、81のそれぞれでの空気の移動の効率の増減を調節し、殺菌能力の発揮および空気移動の停滞防止などを実現できる。
【0204】
以上、実施の形態2のベッド型殺菌装置1は、空気の吸引、排出、殺菌空間の形成能力の向上、殺菌能力の向上などを、最適化できる。
【0205】
(実施の形態3)
【0206】
次に実施の形態3について説明する。実施の形態3では、発明者が実際にベッド型殺菌装置を製作して、殺菌効果や呼吸空間100での殺菌状態の維持(呼吸空間100が殺菌空間として維持されている状態)などを実験により確認したことを説明する。
【0207】
(実験1:呼吸空間100が殺菌空間として維持されていることの実験)
発明者は、実施の形態1、2で説明したベッド型殺菌装置を製作し、座面部材10の上の呼吸空間100が、殺菌された空間として形成・維持されているかを、実験によって確認した。
【0208】
当該実験は、実際に製作したベッド型殺菌装置を動作させて、空気の流れを可視化する実験を行って確認した。
図11から
図17は、殺菌空間の形成と維持を確認する実験の一連の流れと結果を示す写真である。
【0209】
(
図11)
図11は、頭部側部材の空気排出部から、殺菌された空気が排出し始めた状態を示している。なお、
図11~
図17においては、必要に応じて殺菌された空間が、座面部材に就寝や横たわっている状態の使用者の呼吸空間に対応していることを明確にするため、実際の使用者が横たわっている写真を含んでいる。
【0210】
図11に示されるように、殺菌された空気が排出され始めた状態では、使用者の頭部側であって上方において排出される空気の流れが見えている。
【0211】
(
図12)
図12は、排出された殺菌された空気が、足下側部材の空気吸引部に到達している状態を示している。排出された空気は、頭部側部材と対向する足下側部材に設けられる空気吸引部によって吸引圧力を受ける。この吸引圧力によって、頭部側から足下側にかけて、殺菌された空気の流れがつながる。この空気の流れがつながることで、呼吸空間において殺菌空間が形成される。すなわち、呼吸空間が、殺菌された空間や層によって形成されて、使用者の呼吸や動作空間が、殺菌された状態になされる。
【0212】
(
図13)
図13は、
図11を縦方向から見た状態を示している。
図11と同じく、頭部側部材の空気排出部から殺菌された空気が排出されている状態が示されている。
【0213】
(
図14)
図14は、
図12を縦方向から見た状態を示している。
図12と同じく、呼吸空間が殺菌空間として形成されるように、殺菌された空気がベッドの上方を覆っている状態が示されている。
【0214】
(
図15)
図15は、医師や看護師などの医療従事者や家族がこの呼吸空間に手を入れたりする場合を想定した写真である。殺菌空間である呼吸空間に手を入れたとしても、殺菌されて循環している空気の流れは、妨げられていない。頭部側から排出された殺菌された空気は、挿入された手に妨げられることなく、足下側の空気吸引部まで到達して循環している。
【0215】
(
図16)
図16は、使用者が座面部材に横たわっている状態でくしゃみをした場合の、くしゃみによる飛沫の状態を示している。
図16では、ベッド型殺菌装置1が動作していないので、空気の流れと層が形成されていない。この場合には、くしゃみの飛沫は天井近くまで飛び散り、病人からの他社への細菌やウイルスの拡散が懸念される。
【0216】
これに対して、ベッド型殺菌装置1が動作して、
図15のように空気の流れによる殺菌空間が形成されている場合には、飛沫は抑えられる。
【0217】
(
図17)
図17は、ベッドの外(特に上方から)から細菌やウイルスを含んでいる可能性のある空気が入り込もうとするのを、殺菌された空気の循環による殺菌空間が防止している状態を示している。
【0218】
矢印は、上方からの空気の移動経路を示しているが、殺菌された空気の循環の層によって、殺菌空間すなわち呼吸空間に入り込めない。このため、ベッド型殺菌装置によって形成される殺菌空間は、使用者の呼吸空間において殺菌状態を維持して、外部からの細菌等の流入も防止している。言い換えれば、殺菌空間は常に維持されている。
【0219】
(実験2:殺菌効果の確認)
次に発明者は、実施の形態1、2で説明したベッド型殺菌装置を実際に製作し、殺菌効果の実験を行った。
図18は、本発明の実施の形態3における実験空間を示す写真である。5m × 5m × 3mの大きさの空間内部にベッド型殺菌装置1を設置して検査を行った。
【0220】
(その1:検査準備)
検査の種類:落下菌および浮遊菌検査
測定機器:エアーサンプラーBIOSAMP(浮遊菌検査)
サンプリング量:250リットル(浮遊菌検査)
培地:一般細菌用培地(SCD培地)
培養条件:30℃ 48時間培養
算出方法:コロニーカウント方式
比較基準:日本病院設備協会規格HEAS-02‐1998 日本建築学会環境基準AJIES-A002‐2005
【0221】
(その2:検査位置)
ベッド型殺菌装置1の複数の位置において、計測位置を設置した上で、各計測位置での採取した微生物をコロニーで培養した結果の微生物数を測定することにより、殺菌効果を計測した。
図19は、本発明の実施の形態3の実験2でのベッド型殺菌装置での計測位置を示す模式図である。
【0222】
(その3:検査方法)
【0223】
<1>落下菌検査
まず、ベッド型殺菌装置を稼働させる前と稼働させた後(殺菌された呼吸空間である殺菌空間がベッドの座面部材上に形成される)とで、落下菌の数を比較した。落下菌については、
図19に示される各計測位置のA、B、C、D,Eの各地点での落下菌定量計測を行った。なお、落下菌の定量計測としては、コロニー培地での所定時間での培養した後での、1m3当たりの微生物数を計測することで、その計測内容とした。
【0224】
図20は、落下菌検査を行っている状況を示す写真である。このように、A~Eの各計測地点での微生物数を計測している状況を示している。
【0225】
<2>浮遊菌検査 ベッド型殺菌装置1の横に、空気を回収する回収容器(エアーサンプラー)で空気を回収して、回収した空気をコロニー培地で培養した後の微生物数(細菌数)を計測した。
【0226】
図21は、この空気の回収の状態を示している写真である。ここでも、ベッド型殺菌装置1の稼働前と稼働後のそれぞれでの比較を行った。
【0227】
(その4:判定基準)
浮遊菌検査の判定基準として、
図22、
図23に示される基準を採用した。
図22は、日本病院設備協会規格 HEAS-02(1998)に基づく規格であり、
図23は、日本建築学会環境基準 AJIES-A002‐2005に基づく規格である。
【0228】
浮遊菌検査では、これらの基準を前提に、良否を判断した。
【0229】
(その5:落下菌検査の実験結果)
図24は、本発明の実施の形態3における実験2の落下菌検査の結果を示す表である。
図25は、
図24をグラフにしたものである。
【0230】
図24、
図25から明らかな通り、ベッド型殺菌装置1の稼働前に比べて、稼働後においては、著しく落下菌が減少している。特に、ベッドの座面部材の各計測位置A~Eのいずれにおいても落下菌が減少しており、ベッドを実際に使用者が使用する場合において、使用者の就寝状態や横たわった状態が様々であったり、使用者が座面部材上で動いたりした場合でも、落下菌の影響を受けにくいことが実験からも確かめられた。
【0231】
図25のグラフとしてみると、稼働前と稼働後での差は歴然としている。このように、病院や介護施設などで問題となる院内感染の原因の一つとして考えられている落下菌を、無菌テントなどの大がかりな装置を用いずに低減・防止できる。ベッド型殺菌装置は、殺菌された空気の層と空間により、減菌テントと同様の効果を奏している。
【0232】
(その6:浮遊菌検査の実験結果)
図26は、本発明の実施の形態3における実験2の浮遊菌検査の実験結果を示す表である。
図27は、
図26の表をグラフ化したものである。
図26、
図27から明らかな通り、ベッド型殺菌装置1の稼働前に比べて、稼働後においては浮遊菌が著しく減少している。
【0233】
浮遊菌が減少していることで、ベッドの上方はもちろんのこと、このようなベッド型殺菌装置が複数設置された病室などの全体での浮遊菌も減少して、病室などの全体での細菌やウイルスの減少が実現できる。この結果、病室などが清潔かつ衛生的に保たれやすくなり、入院患者や要介護者への細菌やウイルスの影響を抑えることができる。
【0234】
すなわち、ベッド型殺菌装置1は、ベッドの上方に減菌された空間を形成するだけでなく、結果的に室内全体の細菌やウイルスをも減少させて、全体の衛生レベルを上げることができる。
【0235】
例えば、日本病院設備協会規格にあてはめると、浮遊菌数は「基準外」から「一般清浄区域」レベルまで改善されている。これだけのレベル改善を図ろうとすると、室内全体を殺菌する別の大がかりな装置が必要であったり、室内そのものに殺菌装置を取り付けたり、室内の出入り口での隔離的な対応が必要となる。もちろん、これらの対応は、費用、実現性、患者等のユーザビリティ、医療従事者の作業性などの面から好ましくない。
【0236】
これに対して、ベッド型殺菌装置1は、これらの好ましくない点を生じさせることなく、病室等の室内の衛生レベルを上述のように向上させることができる。
【0237】
以上、実験1、2より、ベッド型殺菌装置1は、ベッドの上方における呼吸空間100を殺菌空間として形成でき、さらには、ベッドが置かれている病室などの室内全体の殺菌効果も実現できることが確認された。
【0238】
なお、実施の形態1~3で説明されたベッド型殺菌装置は、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。
【符号の説明】
【0239】
1 ベッド型殺菌装置
2 頭部側部材
3 足下側部材
4 空気吸引部
41 吸引連通部
42 開口部
43 吸引ファン
44 屈曲空気通路
45 拡散ファン
5 空気排出部
51 排出連通部
52 開口部
53 排出ファン
54 屈曲空気通路
55 拡散ファン
6 本体部
7 第1ダクト
71 内部空間
8 第2ダクト
81 内部空間
9 殺菌部
10 座面部材
100 呼吸空間