(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-09
(45)【発行日】2022-03-17
(54)【発明の名称】脆性柱状体用トレー及びその製造方法、並びに梱包体
(51)【国際特許分類】
B65D 81/133 20060101AFI20220310BHJP
B65D 5/50 20060101ALI20220310BHJP
B65D 77/26 20060101ALI20220310BHJP
B65D 85/20 20060101ALI20220310BHJP
【FI】
B65D81/133 A
B65D5/50 101Z
B65D77/26 S
B65D85/20 Z
B65D5/50 A
(21)【出願番号】P 2018017648
(22)【出願日】2018-02-02
【審査請求日】2020-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】白木 浩次
(72)【発明者】
【氏名】堀 義明
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-037469(JP,A)
【文献】特開平08-156944(JP,A)
【文献】特開2008-150067(JP,A)
【文献】特開2015-214354(JP,A)
【文献】中国実用新案第202499394(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/133
B65D 5/50
B65D 77/26
B65D 85/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレート状の基部と、
前記基部に形成された、脆性柱状体の端面側の少なくとも一部を収容するための1つ以上のポケット部と
を備え、
前記ポケット部は底面に1つ以上のリブを有し、且つ前記リブは前記底面と接する部分にR部が形成されて
おり、
前記リブは上面及び側面を有し、前記上面と前記側面とが接する部分にR部が形成されており、
前記脆性柱状体が、第1端面から第2端面まで貫通して流体の流路を形成する複数のセルを区画形成する隔壁を有する柱状ハニカム構造体である脆性柱状体用トレー。
【請求項2】
前記ポケット部は底部外周に前記底面を有する、請求項
1に記載の脆性柱状体用トレー。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の脆性柱状体用トレーの製造方法であって、
前記基部側が凹部となる凹状金型を用いて樹脂シートを真空成形する、脆性柱状体用トレーの製造方法。
【請求項4】
請求項1
又は2に記載の2つの脆性柱状体用トレーと、
2つの前記脆性柱状体用トレーの間に挟まれる前記脆性柱状体を収容する箱と
を備える梱包体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脆性柱状体用トレー及びその製造方法、並びに梱包体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の排ガスを浄化するための触媒体やフィルタとして、ハニカム構造を有する柱状体が用いられている。この柱状体を製品として出荷する場合、梱包して輸送、保管などの作業が行われるが、この柱状体は、脆性材料であるセラミックスから形成されているため、作業に伴う揺れによって衝撃を受け、破損し易いという問題がある。この問題は、ガラス、プラスチックなどの他の脆性材料から形成された柱状体でも生じ易い。
【0003】
そこで、本出願人は、トレーのポケット部の底面と側面とが接する隅部以外に立上部を形成する技術を提案した。この技術によれば、脆性柱状体のエッジ部(脆性柱状体の端面と周面とが接する部分)がトレーと接触しないため、最も破損し易いと考えられるエッジ部の破損を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、ポケット部の形状と脆性柱状体のエッジ部の破損との関係について検討した結果、脆性柱状体のエッジ部の破損がポケット部の底面と脆性柱状体の端面外周部との接触に主に起因していることを見出した。そこで、まず、ポケット部の底面にリブを設けることにより、脆性柱状体の端面外周部をポケット部の底面に接触し難くすることにより、脆性柱状体のエッジ部の破損を抑制することを試みた。しかしながら、ポケット部の底面にリブを設けた場合、梱包体の多段積み保管時や輸送時の衝撃により、リブが潰れてしまい、脆性柱状体の端面外周部がポケット部の底面に接触してしまうという新たな問題が生じた。
【0006】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、ポケット部の底面に設けたリブの強度が高く、脆性柱状体の端面外周部をポケット部の底面に接触し難くすることにより、保管時又は輸送時に脆性柱状体を破損させることなく収容することが可能な脆性柱状体用トレー及びその製造方法、並びに梱包体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の問題を解決すべく更なる検討を行った結果、ポケット部の底面に設けられたリブの、ポケット部の底面と接する部分にR部を形成することにより、リブの強度を高めることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、プレート状の基部と、
前記基部に形成された、脆性柱状体の端面側の少なくとも一部を収容するための1つ以上のポケット部と
を備え、
前記ポケット部は、底面に1つ以上のリブを有し、且つ前記リブは前記底面と接する部分にR部が形成されており、
前記リブは上面及び側面を有し、前記上面と前記側面とが接する部分にR部が形成されており、
前記脆性柱状体が、第1端面から第2端面まで貫通して流体の流路を形成する複数のセルを区画形成する隔壁を有する柱状ハニカム構造体である脆性柱状体用トレーである。
【0009】
また、本発明は、前記脆性柱状体用トレーの製造方法であって、
前記基部側が凹部となる凹状金型を用いて樹脂シートを真空成形する、脆性柱状体用トレーの製造方法である。
【0010】
さらに、本発明は、2つの前記脆性柱状体用トレーと
2つの前記脆性柱状体用トレーの間に挟まれる前記脆性柱状体を収容する箱と
を備える梱包体である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ポケット部の底面に設けたリブの強度が高く、脆性柱状体の端面外周部をポケット部の底面に接触し難くすることにより、保管時又は輸送時に脆性柱状体を破損させることなく収容することが可能な脆性柱状体用トレー及びその製造方法、並びに梱包体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る脆性柱状体用トレーの平面図(上面図)である。
【
図3】
図2に示されるポケット部の部分拡大図である。
【
図4】ポケット部の底面に設けられるリブの具体例(上面図)である。
【
図5】2つ一組の脆性柱状体用トレーで脆性柱状体を挟んだ状態を示す斜視図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る梱包体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の脆性柱状体用トレー及びその製造方法、並びに梱包体の好適な実施の形態について、図面を参酌しながら、具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されて解釈されるべきものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、改良などを行うことができる。各実施形態に開示されている複数の構成要素は、適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよいし、異なる実施形態の構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0014】
図1は、本実施形態に係る脆性柱状体用トレーの平面図(上面図)である。
図2は、
図1におけるAA断面の断面図である。
図3は、
図2に示されるポケット部の部分拡大図である。
本実施形態に係る脆性柱状体用トレー1は、プレート状(「板状」ともいう)の基部2と、基部2に形成された、脆性柱状体10の端面側の少なくとも一部を収容するためのポケット部3とを備えている。
【0015】
ここで、本明細書において「トレー」とは、お盆、浅い箱、周壁を備える皿などの浅い容器を意味する。また、「ポケット部3」とは、窪み、浅い穴などの凹部を意味する。
なお、
図1では、2つのポケット部3を基部2に形成した例を示しているが、ポケット部3の数は、1つ以上であれば特に限定されない。また、ポケット部3の開口面の形状も特に限定されず、脆性柱状体10の軸方向に直交する断面形状に対応させればよい。例えば、ポケット部3の開口面の形状は、円形状、楕円形、四角形などにすることができる。
【0016】
ポケット部3は、底面4にリブ5を有しており、リブ5の上面で脆性柱状体10の端面を支えることができる。また、ポケット部3は底部外周7が底面4となるため、脆性柱状体10の端面外周部が底面4と接触することを防止することができる。
ここで、本明細書において「リブ5」とは、ポケット部3において、底面4から隆起した部分(凸部)のことを意味する。
【0017】
リブ5は、底面4と接する部分にR部6が形成されている。このような構成とすることにより、リブ5の強度(特に、圧縮強度)を高めることができる。そのため、梱包体の多段積み保管時や輸送時の衝撃によってリブ5が潰れるのを抑制し、保管時又は輸送時に脆性柱状体10を破損させることなく収容することができる。
【0018】
好ましい実施形態において、リブ5は上面及び側面を有し、上面と側面とが接する部分にもR部6が形成されている。このような構成とすることにより、リブ5の強度をより一層高くすることができると共に、上面と側面とが接する部分がR部6となることによって脆性柱状体10の端面が破損することを防止することができる。
【0019】
R部6の曲率半径としては、リブ5の形状に応じて適宜調整すればよく特に限定されないが、リブ5の強度を確保する観点から、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1mm以上である。また、R部6の曲率半径は、リブ5の上面の面積を確保する観点から、好ましくは4mm以下、より好ましくは3mm以下である。
【0020】
リブ5の形状、位置及び数としては、特に限定されず、公知の各種トレーと同様にすることができる。また、複数のリブ5がポケット部3の底面4に設けられる場合、個々のリブ5の形状は同一であっても異なっていてもよい。
ここで、ポケット部3の底面4に設けられるリブ5の形状の具体例を
図4に示す。
図4は、ポケット部3の平面部(上面図)である。
【0021】
リブ5の高さとしては、リブ5の形状に応じて適宜調整すればよく特に限定されないが、脆性柱状体10の端面外周部を底面4と接触し難くする観点から、好ましくは2mm以上である。また、リブ5の高さは、リブ5の強度を確保する観点から、好ましくは5mm以下、より好ましくは4mm以下である。
なお、リブ5の幅及び長さなどは、リブ5の形状に応じて適宜調整する必要があり、一義的に定義することは難しい。
【0022】
本実施形態に係る脆性柱状体用トレー1の材質としては、特に限定されず、各種材料を用いることができる。脆性柱状体用トレー1の材質の例としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの樹脂材料、塩化ビニル、鉄、アルミニウム、紙などが挙げられる。これらの材質は、単独で用いても複数を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
好ましい実施形態において、脆性柱状体用トレー1の材質は、PP、PE、PET又はそれらの組み合わせである。このような樹脂材料は安価であるため、脆性柱状体用トレー1の製造コストを低減することができる。
また、別の好ましい実施形態において、脆性柱状体用トレー1の材質は、発泡性樹脂であってもよい。発泡性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。発泡性樹脂によって脆性柱状体用トレー1を形成することにより、衝撃が吸収され易くなるため、脆性柱状体10の破損を抑制する効果が高くなる。
【0024】
本実施形態に係る脆性柱状体用トレー1の厚みは、脆性柱状体10の重量などに応じて適宜調整すればよく、特に限定されない。脆性柱状体用トレー1の典型的な厚みは、0.3~2.0mmである。
【0025】
本実施形態に係る脆性柱状体用トレー1は、セラミックス、ガラス、プラスチックなどの脆性材料から形成されている脆性柱状体10を収容するために用いることができる。
好ましい実施形態において、脆性柱状体用トレー1は、第1端面から第2端面まで貫通して流体の流路を形成する複数のセルを区画形成する隔壁を有する柱状ハニカム構造体を収容するために用いることができる。
【0026】
上記のような特徴を有する本実施形態に係る脆性柱状体用トレー1は、真空成形、射出成形など公知の方法を用いて製造することができる。
好ましい実施形態では、脆性柱状体用トレー1は、基部2側が凹部となる凹状金型を用いて樹脂シートを真空成形することによって製造される。ポケット部3側が凸部となる凸状金型を用いて真空成形を行った場合、ポケット部3内の脆性柱状体用トレー1の厚みが薄くなり易くなるため、リブ5の強度が低下する傾向にある。これに対して、基部2側が凹部となる凹状金型を用いて真空成形を行うことにより、ポケット部3内の脆性柱状体用トレー1の厚み(特に、リブ5の厚み)を維持し易いため、リブ5の強度が向上する。
【0027】
真空成形に用いられる樹脂シートの厚みとしては、特に限定されないが、典型的に0.3~2.0mmである。また、樹脂シートの種類も、特に限定されないが、典型的にPPシート、PEシート、PETシートなどである。
【0028】
本実施形態に係る脆性柱状体用トレー1は、単体で用いることができるが、2つ一組で用いてもよい。脆性柱状体用トレー1を2つ一組で用いる場合、2つの脆性柱状体用トレー1のポケット部3に脆性柱状体10の2つの端面側をそれぞれ収容することにより、2つの脆性柱状体用トレー1の間に脆性柱状体10が挟まれるようにすればよい。
図5は、2つ一組の脆性柱状体用トレー1で脆性柱状体10を挟んだ状態を示す斜視図である。
【0029】
本実施形態に係る梱包体は、2つの脆性柱状体用トレー1と、2つの脆性柱状体用トレー1の間に挟まれる脆性柱状体10を収容する箱11とを備える。
図6は、この梱包体を示す斜視図である。このような梱包体とすることにより、脆性柱状体10の保管又は輸送がし易くなる。
【実施例】
【0030】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
(実施例1)
厚みが0.35mmのPPシートを、基部2側が凹部となる凹状金型を用いて真空成形することにより、
図4(a)に示すリブ形状(リブ5が底面4と接する部分にR部6を有する)を有するポケット部3を備えた脆性柱状体用トレー1を作製した。ここで、ポケット部3の開口部は直径120mmの円形、R部6の曲率半径は2mm、リブ5の高さは2.5mmにそれぞれ設定した。
【0031】
(比較例1)
凹状金型を変更したこと以外は実施例1と同様にして、
図4(a)に示すリブ形状(ただし、リブ5が底面4と接する部分にR部6を有さない)を有するポケット部3を備えた脆性柱状体用トレー1を作製した。
【0032】
(実施例2)
凹状金型を変更したこと、及びポケット部3の開口部の直径を78mmに変更したこと以外は実施例1と同様の条件にて、
図4(b)に示すリブ形状(リブ5が底面4と接する部分にR部6を有する)を有するポケット部3を備えた脆性柱状体用トレー1を作製した。
【0033】
(比較例2)
凹状金型を変更したこと以外は実施例2と同様にして、
図4(b)に示すリブ形状(ただし、リブ5が底面4と接する部分にR部6を有さない)を有するポケット部3を備えた脆性柱状体用トレー1を作製した。
【0034】
上記の実施例及び比較例で得られた脆性柱状体用トレー1のポケット部3に対し、JIS Z0212(包装貨物及び容器-圧縮試験方法)に準拠して、リブ5の最大応力を測定した。具体的には、アルミ製の冶具(実施例1及び比較例1の場合:直径115mm×高さ30mm;実施例2及び比較例2の場合:直径73mm×高さ30mm)を取り付けた圧縮試験機を用い、脆性柱状体用トレー1のポケット部3に該冶具を挿入し、初期荷重10N、圧縮速度2mm/分の条件で圧縮して最大応力を測定した。その結果を表1に示す。
【0035】
【0036】
表1において、実施例1と比較例1との対比及び実施例2と比較例2との対比からわかるように、リブ5が底面4と接する部分にR部6を形成することにより、リブ5の最大応力を飛躍的に高めることができた。
したがって、本発明によれば、ポケット部3の底面4に設けたリブ5の強度が高く、脆性柱状体10の端面外周部をポケット部3の底面4に接触し難くすることにより、保管時又は輸送時に脆性柱状体10を破損させることなく収容することが可能な脆性柱状体用トレー1及びその製造方法、並びに梱包体を提供することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 脆性柱状体用トレー
2 基部
3 ポケット部
4 底面
5 リブ
6 R部
7 底部外周
10 脆性柱状体
11 箱