(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-09
(45)【発行日】2022-03-17
(54)【発明の名称】ブレーキ液圧制御装置
(51)【国際特許分類】
B60T 17/04 20060101AFI20220310BHJP
B60T 11/26 20060101ALI20220310BHJP
B60T 13/138 20060101ALI20220310BHJP
B60T 8/42 20060101ALI20220310BHJP
B60T 17/06 20060101ALI20220310BHJP
【FI】
B60T17/04 Z
B60T11/26 Z
B60T13/138 A
B60T8/42
B60T17/06
(21)【出願番号】P 2018033665
(22)【出願日】2018-02-27
【審査請求日】2021-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】520096792
【氏名又は名称】ゼット・エフ・アクティブ・セーフティー・ユーエス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100172041
【氏名又は名称】小畑 統照
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】井澤 平
【審査官】保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-150639(JP,A)
【文献】特開2005-206038(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第10233350(DE,A1)
【文献】米国特許第04441520(US,A)
【文献】実開平02-081265(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T7/12-8/1769
8/32-17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動液を貯溜するリザーバタンクと、
前記リザーバタンクに接続され、ブレーキ操作子の操作によって作動液の液圧を発生させるマスタシリンダと、
前記ブレーキ操作子の操作量に応じて駆動する電動アクチュエータによって作動液の液圧を発生させるスレーブシリンダと、
ホイールシリンダに作用する作動液の液圧を制御する制御弁手段と、
を備えるブレーキ液圧制御装置であって、
前記リザーバタンクと別体のメインタンクを備え、
前記ホイールシリンダに作用する作動液の液圧の減圧制御時に、前記制御弁手段を通じて前記ホイールシリンダから逃がされる作動液が流入する戻り液路と、
前記メインタンクと前記リザーバタンクとを接続する第一接続路と、
前記戻り液路と前記メインタンクとを接続する第二接続路と、
を備え
、
前記メインタンクにおける前記第二接続路の接続口は、前記第一接続路の接続口よりも鉛直方向上側に配置されていることを特徴とするブレーキ液圧制御装置。
【請求項2】
前記第一接続路および前記第二接続路は、ゴムホースからなることを特徴とする請求項1に記載のブレーキ液圧制御装置。
【請求項3】
前記メインタンクは、前記リザーバタンクよりも鉛直方向上側に配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のブレーキ液圧制御装置。
【請求項4】
前記スレーブシリンダには、前記第一接続路を介して前記メインタンクから前記リザーバタンクに供給される作動液が流入することを特徴とする請求項1から請求項
3のいずれか1項に記載のブレーキ液圧制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はブレーキ液圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動アクチュエータの駆動によって作動液の液圧を発生可能なバイワイヤ式のブレーキシステムを備えたブレーキ液圧制御装置が知られている。
例えば特許文献1に記載のブレーキ液圧制御装置では、ホイールシリンダに作用する作動液の液圧を減圧する際、該ホイールシリンダから逃がされる作動液が上流側に設けられたリザーバタンクに直接戻されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の車両用ブレーキシステムでは、ホイールシリンダに作用する作動液を減圧制御する際に、高液圧から開放された作動液にキャビテーションが生じる可能性がある。このため、キャビテーションによる気泡を含んだ作動液がリザーバタンクから供給される可能性があり、ブレーキの昇圧特性が変化してしまうおそれがあった。
【0005】
本発明は、キャビテーションの影響によってブレーキの昇圧特性が変化することを抑制できるブレーキ液圧制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するために創案された本発明のブレーキ液圧制御装置は、作動液を貯溜するリザーバタンクと、前記リザーバタンクに接続され、ブレーキ操作子の操作によって作動液の液圧を発生させるマスタシリンダと、を備えている。また、ブレーキ液圧制御装置は、前記ブレーキ操作子の操作量に応じて駆動する電動アクチュエータによって作動液の液圧を発生させるスレーブシリンダと、ホイールシリンダに作用する作動液の液圧を制御する制御弁手段と、を備えている。さらに、ブレーキ液圧制御装置は、前記リザーバタンクと別体のメインタンクを備えている。そして、ブレーキ液圧制御装置は、前記ホイールシリンダに作用する作動液の液圧の減圧制御時に、前記制御弁手段を通じて前記ホイールシリンダから逃がされる作動液が流入する戻り液路を備えている。前記メインタンクと前記リザーバタンクとは第一接続路で接続され、前記戻り液路と前記メインタンクとは第二接続路で接続されている。
【0007】
かかるブレーキ液圧制御装置では、ホイールシリンダに作用する作動液の液圧の減圧制御時に、制御弁手段を通じてホイールシリンダから逃がされる作動液が別体のメインタンクに戻される。つまり、キャビテーションによる気泡を含んだ作動液が戻された場合でも、これを一旦、メインタンクに流入させることができる。したがって、キャビテーションによる気泡を含んだ作動液がリザーバタンクに直接戻される場合に比べて、キャビテーションの影響を低減でき、キャビテーションに起因したブレーキの昇圧特性が変化することを抑制できる。
また、キャビテーションの影響を低減するために、リザーバタンクを大きく形成したり、ブレーキ液圧制御装置の内部構造(液路構成)を複雑に構成したりしなくても、キャビテーションの抑制が可能となる。
【0008】
また、前記したブレーキ液圧制御装置において、前記第一接続路および前記第二接続路が、ゴムホースからなるのがよい。このように2本のゴムホースを用いて接続するという簡易な構成で、キャビテーションの抑制を実現することができる。
【0009】
また、前記したブレーキ液圧制御装置において、メインタンクは、前記リザーバタンクよりも鉛直方向上側に配置されているのがよい。このように構成することによって、キャビテーションによる気泡を含んだ作動液がメインタンクに戻された場合でも、気泡がメインタンク内に留まり易くなる。したがって、キャビテーションの影響を低減でき、キャビテーションの影響によってブレーキの昇圧特性が変化することを抑制できる。
【0010】
また、前記したブレーキ液圧制御装置において、前記メインタンクにおける前記第二接続路の接続口は、前記第一接続路の接続口よりも鉛直方向上側に配置されているのがよい。このように構成することによって、キャビテーションによる気泡を含んだ作動液がメインタンクに戻された場合でも、気泡がメインタンク内により一層留まり易くなる。したがって、キャビテーションの影響をより低減することができ、キャビテーションの影響によってブレーキの昇圧特性が変化することを効果的に抑制できる。
【0011】
また、前記したブレーキ液圧制御装置において、前記スレーブシリンダには、前記第一接続路を介して前記メインタンクから前記リザーバタンクに供給される作動液が流入するのがよい。このように構成することによって、メインタンクにおいてキャビテーションの影響が低減された作動液をスレーブシリンダに供給することができる。したがって、キャビテーションの影響によってブレーキの昇圧特性が変化することを効果的に抑制できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、キャビテーションの影響によってブレーキの昇圧特性が変化することを抑制できるブレーキ液圧制御装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係るブレーキ液圧制御装置を示す液圧回路図である。
【
図2】メインタンクの作動液補給口と作動液戻り口とを示す模式断面図である。
【
図3】キャビテーションによる気泡が含まれたブレーキ液がメインタンクの貯溜室内に戻されたときの様子を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態を添付した図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0015】
図1に本実施形態のブレーキ液圧制御装置を示す。ブレーキ液圧制御装置は、リザーバタンク15と、リザーバタンク15とは別体とされたメインタンク80とを備えている。リザーバタンク15およびメインタンク80の詳細は後記する。
【0016】
ブレーキ液圧制御装置は、原動機(エンジンや走行用電動モータ等)の起動時に作動するバイワイヤ(By・Wire)式のブレーキシステムと、原動機の停止時などに作動する油圧式のブレーキシステムとの双方を備える。
【0017】
ブレーキ液圧制御装置は、主として、マスタシリンダ10と、スレーブシリンダ20と、制御弁手段30と、を備えている。ブレーキ液圧制御装置は、エンジン(内燃機関)のみを動力源とする自動車の他、モータを併用するハイブリッド自動車やモータのみを動力源とする電気自動車・燃料電池自動車等にも搭載することができる。
【0018】
マスタシリンダ10は、二つのピストン11,12を有するタンデム型である。マスタシリンダ10は、運転者のブレーキペダルP(ブレーキ操作子)の操作によって(操作量に応じて)作動液としてのブレーキ液に液圧を発生させる。マスタシリンダ10で発生した液圧は、車輪ブレーキFL,RR,RL,FRの各ホイールシリンダWに直接作用させることができる。マスタシリンダ10には、ストロークシミュレータ40が接続されている。ストロークシミュレータ40は、ブレーキペダルPに擬似的な操作反力を付与する。
【0019】
スレーブシリンダ20は、ブレーキペダルPの操作量に応じて電動モータ24(電動アクチュエータ)を駆動させることによってブレーキ液に液圧を発生させる。スレーブシリンダ20で発生した液圧は、車輪ブレーキFL,RR,RL,FRの各ホイールシリンダWに作用する。
【0020】
制御弁手段30は、車輪ブレーキFL,RR,RL,FRの各ホイールシリンダWに作用するブレーキ液の液圧を制御し、車両挙動の安定化を支援する。
【0021】
本実施形態のブレーキ液圧制御装置では、マスタシリンダ10、スレーブシリンダ20および制御弁手段30が、一つの金属製の基体1に備わる。また、基体1には、ブレーキ液を貯溜するリザーバタンク15が付設されている。そして、マスタシリンダ10、スレーブシリンダ20、制御弁手段30およびリザーバタンク15は、一体のユニットとして構成されている。
【0022】
基体1内には、第一ブレーキ系統K1および第二ブレーキ系統K2の2つのブレーキ系統が備わる。第一ブレーキ系統K1には、マスタシリンダ10から二つの車輪ブレーキFL,RRに通じる第一液圧路2aが設けられている。また、第二ブレーキ系統K2には、マスタシリンダ10から残りの車輪ブレーキRL,FRに通じる第二液圧路2bが設けられている。
【0023】
また、基体1内には、分岐液圧路3、共通液圧路4、第一連通路5a、第二連通路5b、スレーブシリンダ補給路9a、戻り液路9bが形成されている。第一液圧路2aには、第一圧力センサ6が設けられている。共通液圧路4には、第二圧力センサ7が設けられている。
【0024】
マスタシリンダ10は、有底円筒状のシリンダ穴10aに挿入された第一ピストン11および第二ピストン12と、シリンダ穴10a内に収容された二つの第一弾性部材17aおよび第二弾性部材17bと、を備えている。
【0025】
シリンダ穴10aの底面10bと第一ピストン11との間には第一圧力室16aが形成されている。第一圧力室16aにはコイルばねである第一弾性部材17aが介設されている。
第一ピストン11と第二ピストン12との間には第二圧力室16bが形成されている。また、第二圧力室16bにはコイルばねである第二弾性部材17bが介設されている。
なお、シリンダ穴10aの内周面には、複数のカップシール10c,10cが装着されている。
【0026】
第二ピストン12の端部は、プッシュロッドP1を介してブレーキペダルPに連結されている。第一ピストン11および第二ピストン12は、ブレーキペダルPの踏力を受けてシリンダ穴10a内を摺動し、両圧力室16a,16b内のブレーキ液を加圧する。両圧力室16a,16b内で加圧されたブレーキ液は、シリンダ穴10aに設けられた出力ポート18a,18bを通じて出力される。
出力ポート18aには第一液圧路2aが接続され、出力ポート18bには第二液圧路2bが接続されている。第一液圧路2aおよび第二液圧路2bは、下流側の制御弁手段30に接続されている。
また、マスタシリンダ10には、第二ピストン12のストロークを検出するストロークセンサSTが組み付けられている。
【0027】
ストロークシミュレータ40は、シミュレータピストン42と、二つの弾性部材43,44と、を備えている。シミュレータピストン42は、シミュレータシリンダ穴41に挿入されている。二つの弾性部材43,44は、シミュレータシリンダ穴41の底面41bとシミュレータピストン42との間に介設されている。
【0028】
シミュレータシリンダ穴41内には、圧力室45が形成されている。圧力室45は、導入口46とシミュレータピストン42との間に設けられていて、分岐液圧路3、第二液圧路2bおよび出力ポート18bを介して、マスタシリンダ10の第二圧力室16bに通じている。したがって、ブレーキペダルPを操作してマスタシリンダ10の第二圧力室16bで液圧が発生すると、ストロークシミュレータ40のシミュレータピストン42が弾性部材43,44の付勢力に抗して移動する。これにより、ブレーキペダルPに擬似的な操作反力が付与される。弾性部材43,44が配置される背圧室47には、ポート47aを介してリザーバタンク連通路9が接続されている。リザーバタンク連通路9はマスタシリンダ10のポート19を介してリザーバタンク15に連通している。
【0029】
スレーブシリンダ20は、シリンダ穴21に挿入された一つのピストン22と、シリンダ穴21内に収容された弾性部材23と、電動モータ24と、駆動伝達部25と、を備えている。
【0030】
シリンダ穴21の底部21bとピストン22との間には液圧室26が形成されている。液圧室26にはコイルばねである弾性部材23が配置されている。
液圧室26は、共通液圧路4および第一連通路5aを介して第一液圧路2aに通じるとともに、共通液圧路4および第二連通路5bを介して第二液圧路2bに通じている。
【0031】
電動モータ24は、電動サーボモータである。電動モータ24は、コイル部24aと、ベアリング24bに支持された回転部24cとを備えている。回転部24cには磁石24dが取り付けられている。
回転部24cの内側には、駆動伝達部25が備わる。駆動伝達部25は、電動モータ24の回転駆動力を直線方向の軸力に変換するものである。駆動伝達部25は、ピストン22に当接しているロッド25aと、ロッド25aと回転部24cとの間に配置された複数のボール25bと、を備えている。ロッド25aの外周面には、螺旋状のねじ溝が形成されており、このねじ溝には複数のボール25bが転動自在に収容されている。回転部24cは、複数のボール25bに螺合されている。このように、回転部24cとロッド25aとの間にはボールねじ機構が設けられている。
【0032】
電動モータ24は、基体1に装着される電子制御装置70によって駆動制御される。電動モータ24には、図示しない回転角センサが取り付けられている。回転角センサの検出値は電子制御装置70に入力される。電子制御装置70は、回転角センサの検出値に基づいて、スレーブシリンダ20のピストン22のストローク量を算出する。
【0033】
電動モータ24の回転部24cが回転すると、回転部24cとロッド25aとの間に設けられたボールねじ機構によって、ロッド25aに直線方向の軸力が付与され、ロッド25aが前後方向に進退移動する。
ロッド25aがピストン22側に移動したときには、ピストン22がロッド25aからの入力を受けてシリンダ穴21内を進動(加圧方向に移動)し、液圧室26内のブレーキ液が加圧される。また、ロッド25aがピストン22とは反対側に移動したときには、弾性部材23の付勢力によってピストン22がシリンダ穴21内を退動(減圧方向に移動)し、液圧室26内のブレーキ液が減圧される。
【0034】
制御弁手段30は、車輪ブレーキFL,RR,RL,FRの各ホイールシリンダWに作用するブレーキ液の液圧を適宜制御するものである。制御弁手段30は、アンチロックブレーキ制御を実行し得る構成を備えており、配管を介して各ホイールシリンダWに接続されている。また、制御弁手段30には、戻り液路9bが接続されている。
【0035】
車輪ブレーキFL,RR,RL,FRは、それぞれ配管を介して基体1の出口ポート301に接続されている。そして、通常時は、ブレーキペダルPの踏力に対応してスレーブシリンダ20から出力された液圧が両液圧路2a,2bを通じて各車輪ブレーキFL,RR,RL,FRの各ホイールシリンダWに付与される。
なお、以下では、制御弁手段30において、第一液圧路2aに接続された系統を「第一液圧系統300a」と称し、第二液圧路2bに接続された系統を「第二液圧系統300b」と称する。
【0036】
第一液圧系統300aには、各車輪ブレーキFL,RRに対応して二つの制御弁手段Vが設けられており、同様に、第二液圧系統300bには、各車輪ブレーキRL,FRに対応して二つの制御弁手段Vが設けられている。
【0037】
制御弁手段Vは、スレーブシリンダ20から車輪ブレーキFL,RR,RL,FR(詳細には、ホイールシリンダW)への液圧の行き来を制御する弁である。制御弁手段Vは、ホイールシリンダWに作用する液圧(以下、「ホイールシリンダ圧」という)を増圧、保持または減圧させることができる。そのため、制御弁手段Vは、入口弁31、出口弁32、チェック弁33を備えて構成されている。
【0038】
入口弁31は、第一液圧路2aから各車輪ブレーキFL,RRへ至る二つの液圧路、および第二液圧路2bから各車輪ブレーキRL,FRへ至る二つの液圧路に一つずつ配置されている。入口弁31は、常開型の比例電磁弁(リニアソレノイド弁)であり、入口弁31のコイルに流す駆動電流の値に応じて、入口弁31の上下流の差圧(入口弁31の開弁圧)を調整可能である。入口弁31は、通常時に開いていることで、スレーブシリンダ20から各ホイールシリンダWへ液圧が付与されるのを許容している。また、入口弁31は、車輪がロックしそうになったときに電子制御装置70の制御により閉塞し、各ホイールシリンダWに付与される液圧を遮断する。
【0039】
出口弁32は、各ホイールシリンダWと戻り液路9bとの間に配置された常閉型の電磁弁である。出口弁32は、通常時に閉塞されているが、車輪がロックしそうになったときに電子制御装置70の制御により開放される。出口弁32が開弁すると、各ホイールシリンダWに作用しているブレーキ液が減圧する。
【0040】
チェック弁33は、各入口弁31に並列に接続されている。チェック弁33は、ホイールシリンダW側からスレーブシリンダ20側(マスタシリンダ10側)へのブレーキ液の流入のみを許容する弁である。したがって、入口弁31を閉じた状態にしたときにおいても、チェック弁33は、各ホイールシリンダW側からスレーブシリンダ20側へのブレーキ液の流れを許容する。
【0041】
このような制御弁手段30では、電子制御装置70により入口弁31および出口弁32の開閉状態を制御することで、各ホイールシリンダWのホイールシリンダ圧が調整される。例えば、入口弁31が開、出口弁32が閉となる通常状態において、ブレーキペダルPを踏み込めば、スレーブシリンダ20からの液圧がそのままホイールシリンダWへ伝達してホイールシリンダ圧が増圧する。また、入口弁31が閉、出口弁32が開となる状態であれば、ホイールシリンダWから戻り液路9b側へブレーキ液が流出し、ホイールシリンダ圧が減少して減圧する。さらに、入口弁31と出口弁32がともに閉となる状態では、ホイールシリンダ圧が保持される。
【0042】
次に、基体1内に形成された各液圧路について説明する。
二つの第一液圧路2aおよび第二液圧路2bは、いずれもマスタシリンダ10のシリンダ穴10aを起点とする液圧路である。
第一液圧路2aは、マスタシリンダ10の第一圧力室16aに通じている。一方、第二液圧路2bは、マスタシリンダ10の第二圧力室16bに通じている。第一液圧路2aは、下流側の車輪ブレーキFL,RRに通じている。また、第二液圧路2bは、下流側の車輪ブレーキRL,FRに通じている。
【0043】
分岐液圧路3は、第二液圧路2bからストロークシミュレータ40の圧力室45に至る液圧路である。分岐液圧路3には常閉型電磁弁8が設けられている。常閉型電磁弁8は分岐液圧路3を開閉するものである。
【0044】
二つの第一連通路5aおよび第二連通路5bは、いずれも、スレーブシリンダ20の液圧室26を起点とする液圧路である。第一連通路5aおよび第二連通路5bは、共通液圧路4に合流して、シリンダ穴21につながっている。第一連通路5aは液圧室26から第一液圧路2aに至る流路であり、また、第二連通路5bは液圧室26から第二液圧路2bに至る流路である。
【0045】
第一液圧路2aと第一連通路5aとの連結部位には、三方向弁である第一切替弁51が設けられている。第一切替弁51は、2ポジション3ポートの電磁弁である。第一切替弁51は、
図1に示す非通電時の第一のポジションと、これとは異なる通電時の第二のポジションとを選択可能である。
図1に示す第一のポジションでは、第一液圧路2aの上流側(マスタシリンダ10側)と第一液圧路2aの下流側(制御弁手段30側、車輪ブレーキFL,RR)とが連通し、第一連通路5aへの通路が遮断される。つまり、第一切替弁51が第一のポジションにあるときの車輪ブレーキFL,RRは、マスタシリンダ10と連通するが、スレーブシリンダ20とは遮断される(非連通状態となる)。また、第二のポジションでは、第一液圧路2aの上流側への連通が遮断され、第一連通路5aと第一液圧路2aの下流側とが連通する。つまり、第一切替弁51が第二のポジションにあるときの車輪ブレーキFL,RRは、マスタシリンダ10とは遮断される(非連通状態となる)が、スレーブシリンダ20とは連通した状態となる。
【0046】
一方、第二液圧路2bと第二連通路5bとの連結部位には、三方向弁である第二切替弁52が設けられている。第二切替弁52は、第一切替弁51と同様に2ポジション3ポートの電磁弁である。第二切替弁52は、
図1に示す非通電時の第一のポジションと、これとは異なる通電時の第二のポジションとを選択可能である。
図1に示す第一のポジションでは、第二液圧路2bの上流側(マスタシリンダ10側)と第二液圧路2bの下流側(制御弁手段30側、車輪ブレーキRL,FR)とが連通し、第二連通路5bへの通路が遮断される。つまり、第二切替弁52が第一のポジションにあるときの車輪ブレーキRL,FRは、マスタシリンダ10と連通するが、スレーブシリンダ20とは遮断される(非連通状態となる)。また、第二のポジションでは、第二液圧路2bの上流側への連通が遮断され、第二連通路5bと第二液圧路2bの下流側とが連通する。つまり、第二切替弁52が第二のポジションにあるときの車輪ブレーキRL,FRは、マスタシリンダ10とは遮断される(非連通状態となる)が、スレーブシリンダ20とは連通した状態となる。
【0047】
なお、第一切替弁51および第二切替弁52は、電子制御装置70によってポジションが切り替わる。ちなみに、第一切替弁51および第二切替弁52は、システムの起動時や、マスタシリンダ10からホイールシリンダWに液圧を直接作用させるバックアップモード時には、第一のポジションにある。また、第一切替弁51および第二切替弁52は、スレーブシリンダ20からホイールシリンダWに液圧を作用させる通常のブレーキ制御時等には、第二のポジションにある。
【0048】
第一連通路5aには、第一遮断弁61が設けられている。第一遮断弁61は常開型電磁弁であり、第一連通路5aを開閉する。第一遮断弁61は、非通電時には開弁して、第一連通路5aが連通する。また、第一遮断弁61は、通電時には閉弁して、第一連通路5aが遮断される。第一遮断弁61の開閉は、電子制御装置70によって行われる。
【0049】
第二連通路5bには、第二遮断弁62が設けられている。第二遮断弁62は常開型電磁弁であり、第二連通路5bを開閉する。第二遮断弁62は、非通電時には開弁して、第二連通路5bが連通する。また、第二遮断弁62は、通電時には閉弁して、第二連通路5bが遮断される。第二遮断弁62の開閉は、電子制御装置70によって行われる。
【0050】
第一圧力センサ6および第二圧力センサ7は、いずれも、ブレーキ液の液圧(ブレーキ液圧)の大きさを検知するものである。両圧力センサ6,7で取得された情報(検出値)は電子制御装置70に入力される。
第一圧力センサ6は、マスタシリンダ10と第一切替弁51との間の第一液圧路2aに配置されている。第一圧力センサ6は、マスタシリンダ10で発生した液圧を検知する。
第二圧力センサ7は、共通液圧路4に配置されている。第二圧力センサ7は、スレーブシリンダ20で発生した液圧を検知する。
【0051】
リザーバタンク15は、ブレーキ液を貯溜する貯溜室を内部に有し、基体1の上面に取り付けられている。リザーバタンク15は、3つの補給ポート15a~15cを備えている。補給ポート15aは、マスタシリンダ10の第一圧力室16aに通じており、第一圧力室16aにブレーキ液を補給可能である。また、補給ポート15bは、マスタシリンダ10の第二圧力室16bに通じており、第二圧力室16bにブレーキ液を補給可能である。さらに、補給ポート15cは、これに接続されたスレーブシリンダ補給路9aを介してスレーブシリンダ20の液圧室26に通じており、液圧室26にブレーキ液を補給可能である。
【0052】
リザーバタンク15は、給液口15dを備えている。給液口15dは、配管H1を介してメインタンク80の作動液補給口84に接続されている。配管H1は、ゴムホースからなる。配管H1は、特許請求の範囲における「第一接続路」に相当する。
【0053】
メインタンク80は、車両の図示しないブラケットに保持される。ブラケットは、例えば、車両のエンジンルーム内のエンジンフードの下方において側壁等に支持される。
メインタンク80は、リザーバタンク15(基体1)とは別体とされた別体型タンクとして構成されている。メインタンク80は、図示しない取付フランジや取付フックを介して前記したブラケットに固定され、エンジンルーム内の設置スペースに配置される。メインタンク80は、エンジンルーム内においてリザーバタンク15よりも鉛直方向上側に配置されている。
【0054】
メインタンク80は、硬質の樹脂製のタンク本体81と、キャップ82とを備えている。タンク本体81は、ブレーキ液を貯溜する貯溜室を内部に有しており、前記リザーバタンク15よりもより多くのブレーキ液を貯溜可能である。タンク本体81は、確保すべきブレーキ液の量に応じた寸法に設定されている。タンク本体81は、作動液注入口83、作動液補給口84および作動液戻り口85を備えている。
【0055】
作動液注入口83は、タンク本体81の上部に設けられており、キャップ82で塞がれる。ブレーキ液は、作動液注入口83を通じてタンク本体81の内部に注入される。作動液補給口84および作動液戻り口85は、
図2に示すように、タンク本体81の側部に上下に並べて設けられている。作動液補給口84は作動液戻り口85に対して下側に配置されている。
【0056】
作動液補給口84は、配管H1を介して前記リザーバタンク15の給液口15dに接続されている。これにより、作動液補給口84、配管H1および給液口15dを通じてメインタンク80からリザーバタンク15にブレーキ液が補給される。
一方、作動液戻り口85は、配管H2を介して基体1の戻りポート1aに接続されている。配管H2は、ゴムホースからなる。配管H2は、特許請求の範囲における「第二接続路」に相当する。
【0057】
なお、タンク本体81内には、図示しないフロート室が形成され、液面検出装置が配設されている。液面検出装置は、タンク本体81内のブレーキ液量が適正貯溜範囲の最低レベルとなったこと(タンク本体81内のブレーキ液量異常)を検出するものであり、図示しないフロートと、検出器と、を備えている。
【0058】
フロートは、発泡樹脂材等の軽量材からなり、タンク本体81内のブレーキ液の液面の変動に伴って浮動する(上下動する)。検出器は、フロートが下がってタンク本体81内の液量が適正貯溜範囲の最低レベルとなったときに作動する。
【0059】
戻りポート1aには、戻り液路9bが接続されている。戻り液路9bは、制御弁手段30から戻りポート1aに至る流路である。戻り液路9bには、制御弁手段30の出口弁32を介して各ホイールシリンダWから逃がされたブレーキ液が流入する。戻り液路9bに逃がされたブレーキ液は、戻り液路9bから戻りポート1a、配管H2および作動液戻り口85を通じてメインタンク80に戻される。
【0060】
スレーブシリンダ補給路9aは、リザーバタンク15からスレーブシリンダ20に至る液路である。また、スレーブシリンダ補給路9aは、分岐補給路9cを介して共通液圧路4に接続されている。分岐補給路9cには、リザーバタンク15側から共通液圧路4側(スレーブシリンダ20側)へのブレーキ液の流入のみを許容するチェック弁9dが設けられている。通常時は、スレーブシリンダ補給路9aを通じてリザーバタンク15からスレーブシリンダ20にブレーキ液が補給される。また、後記する吸液制御時には、スレーブシリンダ補給路9a、分岐補給路9cおよび共通液圧路4を通じて、リザーバタンク15からスレーブシリンダ20にブレーキ液が吸液される。
【0061】
電子制御装置70は、内部に制御基板(図示せず)を収容し、基体1の側面等に取り付けられている。電子制御装置70は、両圧力センサ6,7やストロークセンサSTの各種センサから得られた情報(検出値)や予め記憶させておいたプログラム等に基づいて制御を行う。具体的に、電子制御装置70は、常閉型電磁弁8の開閉、電動モータ24の作動、両切替弁51,52の作動、両遮断弁61,62の開閉、および制御弁手段30の制御弁手段Vの開閉を制御する。
【0062】
電子制御装置70は、電動モータ24を駆動制御するとともに、第一切替弁51、第二切替弁52、第一遮断弁61および第二遮断弁62の作動を制御する。
【0063】
また、電子制御装置70は、スレーブシリンダ20で発生した液圧がブレーキペダルPの操作量に対応した液圧まで上昇したか否かを判定する機能を備えている。具体的に、電子制御装置70は、ストロークセンサSTによりブレーキペダルPの操作量を検出する。その後、電子制御装置70は、予め記憶させておいたマップ(図示せず)を参照する。そして、電子制御装置70は、スレーブシリンダ20で発生した液圧がマップのブレーキペダルPの操作量に対応した液圧まで上昇したか否か(予めプログラムされた判定値まで上昇したか否か)を第二圧力センサ7で検出された液圧に基づいて判定する。そして、電子制御装置70は、判定結果に基づいて、スレーブシリンダ20や、両切替弁51,52、および両遮断弁61,62を制御する。
【0064】
また、電子制御装置70は、吸液制御を行う機能を備えている。吸液制御は、スレーブシリンダ補給路9aからスレーブシリンダ20内にブレーキ液を積極的に吸液して、スレーブシリンダ20内のブレーキ液を確保するための制御である。例えば、高液圧領域までスレーブシリンダ20で加圧するためにブレーキ液を確保したい場合や、スレーブシリンダ20の発生液圧が運転者の要求液圧となった状態(定常の状態)で、それ以降の加圧に備えてブレーキ液を予め確保しておく場合などに実行される。
【0065】
次に、ブレーキ液圧制御装置の動作について概略説明する。
(通常のブレーキ制御)
図1に示すように、ブレーキ液圧制御装置では、ブレーキペダルPが操作されたことをストロークセンサSTが検知すると、第一切替弁51および第二切替弁52が励磁されて、前記した第二のポジションに移動する。この移動によって第一液圧路2aの下流側(車輪ブレーキ側)と第一連通路5aとが通じるとともに、第二切替弁52によって第二液圧路2bの下流側と第二連通路5bとが通じる。つまり、マスタシリンダ10とホイールシリンダWとが遮断された状態(非連通状態)になるとともに、スレーブシリンダ20がホイールシリンダWと連通した状態になる。
【0066】
また、分岐液圧路3の常閉型電磁弁8は、システム起動時に開弁される。常閉型電磁弁8が開弁されると、ブレーキペダルPの操作によってマスタシリンダ10で発生した液圧は、ホイールシリンダWには伝達されずに、ストロークシミュレータ40に伝達される。そして、圧力室45の液圧が大きくなり、シミュレータピストン42が弾性部材43,44の付勢力に抗して底面41b側に移動することで、ブレーキペダルPのストロークが許容される。これにより、擬似的な操作反力がブレーキペダルPに付与される。
【0067】
また、ストロークセンサSTによって、ブレーキペダルPの踏み込みが検知される。そうすると、電子制御装置70によりスレーブシリンダ20の電動モータ24が駆動され、スレーブシリンダ20のピストン22が底部21b側に移動する。これにより、液圧室26内のブレーキ液が加圧される。
電子制御装置70は、ストロークセンサSTの検出値に基づいてブレーキペダルPの操作量に応じた液圧に昇圧させる。
【0068】
スレーブシリンダ20の発生液圧は、制御弁手段30を介して各ホイールシリンダWに伝達され、各ホイールシリンダWが作動することにより、ブレーキペダルPの踏み込み量に応じた制動力が各車輪に付与される。
【0069】
ブレーキペダルPの踏み込みが解除されると、電子制御装置70によりスレーブシリンダ20の電動モータ24が逆転駆動され、ピストン22が弾性部材23によって電動モータ24側に戻される。これによって、液圧室26内が降圧され、各ホイールシリンダWの作動が解除される。
【0070】
なお、スレーブシリンダ20が作動しない状態(例えば、イグニッションOFFや、電力が得られない場合など)においては、第一切替弁51,第二切替弁52、常閉型電磁弁8が初期状態に戻る。第一切替弁51,第二切替弁52が初期状態に戻ると、第一液圧路2aが連通するとともに、第二液圧路2bが連通する。この状態では、マスタシリンダ10で発生した液圧が各ホイールシリンダWに直接伝達される。
【0071】
(ホイールシリンダWに作用しているブレーキ液を減圧する減圧制御)
ホイールシリンダWに作用しているブレーキ液を減圧する減圧制御は、アンチロックブレーキ作動時に行われる制御である。具体的に、減圧制御は、入口弁31を閉じて出口弁32を開くことで行われる。減圧制御時には、制御弁手段30に備わる出口弁32を介して該ホイールシリンダWから高液圧のブレーキ液が逃される。そして、ホイールシリンダWから逃された高液圧のブレーキ液は、戻り液路9bに流入し、戻り液路9bから戻しポート1aに接続された配管H2、作動液戻り口85を通じてメインタンク80内に戻される。
【0072】
このとき、
図3に示すように、キャビテーションによる気泡Aが含まれたブレーキ液がメインタンク80の貯溜室内に戻された場合でも、戻されたブレーキ液は、作動液戻り口85を通じて貯溜室内のブレーキ液の液面側に流入する。これによって、ブレーキ液に含まれた気泡Aも貯溜室内のブレーキ液の液面側に流入し、液面側に漂う状態となる(なり易い)。つまり、気泡Aは、作動液補給口84から離れた液面側に存在する状態となり、その後時間の経過により消滅する。
これにより、作動液補給口84から供給されるブレーキ液に気泡Aが混入するのを好適に抑制することができる。
【0073】
以上説明した本実施形態のブレーキ液圧制御装置では、ホイールシリンダWに作用するブレーキ液圧の減圧制御時に、制御弁手段Vを通じてホイールシリンダWから逃がされるブレーキ液が別体のメインタンク80に戻される。つまり、キャビテーションによる気泡Aを含んだブレーキ液が戻された場合でも、これを一旦、メインタンク80に流入させることができる。したがって、キャビテーションによる気泡Aを含んだブレーキ液がリザーバタンク15に直接戻される場合に比べて、キャビテーションの影響を低減できる。これにより、キャビテーションに起因してブレーキの昇圧特性が変化することを抑制できる。
また、キャビテーションの影響を低減するために、リザーバタンク15を大きく形成したり、ブレーキ液圧制御装置の内部構造(液路構成)を複雑に構成したりしなくても、キャビテーションの抑制が可能となる。
【0074】
また、配管H1および配管H2が、ゴムホースからなるので、2本のゴムホースを用いて接続するという簡易な構成で、キャビテーションの抑制を実現することができる。
【0075】
また、メインタンク80は、リザーバタンク15よりも鉛直方向上側に配置されているので、キャビテーションによる気泡Aを含んだブレーキ液がメインタンク80に戻された場合でも、気泡Aがメインタンク80内に留まり易くなる。したがって、キャビテーションの影響を低減でき、キャビテーションの影響によってブレーキの昇圧特性が変化することを抑制できる。
【0076】
また、メインタンク80における作動液戻り口85(配管H2の接続口)は、作動液補給口84(配管H1の接続口)よりも鉛直方向上側に配置されている。したがって、キャビテーションによる気泡Aを含んだブレーキ液がメインタンク80に戻された場合でも、気泡Aがメインタンク80内により一層留まり易くなる。したがって、キャビテーションの影響をより低減することができ、キャビテーションの影響によってブレーキの昇圧特性が変化することを効果的に抑制できる。
【0077】
また、スレーブシリンダ20には、メインタンク80を経由して配管H1によりリザーバタンク15に供給されるブレーキ液が流入する。したがって、メインタンク80においてキャビテーションの影響が低減されたブレーキ液をスレーブシリンダ20に供給することができる。したがって、キャビテーションの影響によってブレーキの昇圧特性が変化することを効果的に抑制できる。
【0078】
以上、本発明について、実施形態に基づいて説明したが、本発明は、前記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができる。
【0079】
例えば、前記実施形態では、作動液補給口84および作動液戻り口85を上下に並べて設けたが、これに限られることはない。例えば、作動液補給口84および作動液戻り口85を左右に並べて設けてもよい。この場合、作動液補給口84と作動液戻り口85との間に、仕切り壁等を設けて気泡Aが作動液戻り口85に流入するのを防止してもよい。
【符号の説明】
【0080】
1 基体
9b 戻り液路
10 マスタシリンダ
15 リザーバタンク
20 スレーブシリンダ
30 制御弁手段
80 メインタンク
H1 配管(第一接続路)
H2 配管(第二接続路)
P ブレーキペダル(ブレーキ操作子)
V 制御弁手段
W ホイールシリンダ