(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-09
(45)【発行日】2022-03-17
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/68 20060101AFI20220310BHJP
【FI】
B60N2/68
(21)【出願番号】P 2018049894
(22)【出願日】2018-03-16
【審査請求日】2020-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】特許業務法人航栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】塚田 充
(72)【発明者】
【氏名】明珍 恵多
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 達哉
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/073484(WO,A1)
【文献】特開2008-105593(JP,A)
【文献】特開2012-162224(JP,A)
【文献】特開2017-218006(JP,A)
【文献】特開2003-252251(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗り物のボディに固定されるシートクッション及びシートバックを備え、
前記シートバックは、
板状に形成された第1部材と、
前記第1部材の厚み方向片面にフランジ部が接触するハット断面形状の第2部材と、
前記第1部材の中央部に設けられた中央部ビードと、を有し、
前記第1部材の厚み方向に沿った平面視において、前記第2部材と前記中央部ビードの長手方向端部とが重複して
おり、
前記第1部材は、前記第2部材に向かって隆起するように前記中央部ビードが形成され、
前記第2部材は、前記中央部ビードに対応して前記第2部材のフランジ部及び縦壁部の一部にトンネル部が設けられている乗り物用シート。
【請求項2】
請求項
1に記載の乗り物用シートであって、
前記第1部材における平面部および前記第2部材の前記フランジ部が相互に固定されている乗り物用シート。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の乗り物用シートであって、
前記ボディにおける前記乗り物の前進方向側方において前記第1部材の上方を着脱可能に接続するための第1接続部と、
前記ボディにおける前記乗り物の前進方向側方において前記第1部材の下方を回動可能に接続するための第2接続部と、
前記第2接続部に隣り合うとともに前記第1部材の下方を回動可能に接続するための第3接続部と、を有し、
前記中央部ビードは、前記第1接続部及び第3接続部を結ぶ線に対して交差する線に沿う乗り物用シート。
【請求項4】
請求項1ないし請求項
3のうちのいずれか1項に記載の乗り物用シートであって、
前記第2部材は、平面視枠状である乗り物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に搭載される乗物用シートとして、シートクッションに対して傾倒可能なシートバックを有するものが知られている。このような乗り物用シートにおいては、シートバックは、下端部において回動、固定可能に支持されるとともに、上端部の幅方向端部において解放可能に車体に固定される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているような乗り物用シートにおいては、シートバックの上端が点で支持されるため、シートバックの剛性を上げるために、シートバックの強度部材をリブ付きの板部材で構成するだけではなく、パイプフレームで補強することが行われている。
【0005】
ところで、上述した乗り物用シートとは異なりパイプフレームを用いない構造においては、シートバックの板部材を補強するために、板部材の表面や裏面から突出する多数のビードを設ける場合がある。このような構造の場合には、ビードの長手方向端部においては剛性が不足して、板部材の変形の起点となる虞がある。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みなされたものであり、シートバックの板部材がビードの長手方向端部において変形するのを防止できる乗物用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様の乗物用シートは、乗り物のボディに固定されるシートクッション及びシートバックを備え、前記シートバックは、板状に形成された第1部材と、前記第1部材の厚み方向片面にフランジ部が接触するハット断面形状の第2部材と、前記第1部材の中央部に設けられた中央部ビードと、を有し、前記第1部材の厚み方向に沿った平面視において、前記第2部材と前記中央部ビードの長手方向端部とが重複しており、前記第1部材は、前記第2部材に向かって隆起するように前記中央部ビードが形成され、前記第2部材は、前記中央部ビードに対応して前記第2部材のフランジ部及び縦壁部の一部にトンネル部が設けられている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、シートバックの板部材がビードの長手方向端部において変形するのを防止できる乗物用シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の乗り物用シートとしての後部座席を示す斜視図である。
【
図2】シートバックのバックフレームを前方から見た正面図である。
【
図3】(A)は第1部材の平面部に第2部材を取付けた状態を示す断面図であり、(B)は中央部ビードが第2部材の内部まで伸びた位置における断面図である。
【
図4】第2部材を透視したバックフレームの正面図である。
【
図6】第1部材に設けられた収容ビードと収容ビードを収容する第2部材を示す断面図である。
【
図8】本発明の第2実施形態の乗り物用シートにおける左バックフレームの正面図である。
【
図9】本発明の第3実施形態の乗り物用シートにおいて軸部に対応する第1部材と第2部材との間に板部材を介装した状態を示すバックフレームの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
図1は、本発明の実施形態を説明するための乗り物用シート10の全体を示す。
なお、以後の説明において、車両の前側を「前」、車両の後側を「後」、車両の前方に向かって右側を「右」、左側を「左」、上側を「上」、下側を「下」と示すこととする。
【0011】
図1には、例えば乗用車の後部座席(2列目)を乗り物用シート10として示してある。乗り物用シート10は、自動車等のボディ100に搭載され主に乗員が着座可能であるシートクッション20と、着座している乗員の背中を支持するシートバック30とを有する。
【0012】
シートクッション20は、車幅方向(左右方向)に一体のベンチシートであり、クッションフレーム(図示省略)及びクッションフレームの上に設けられたクッション材(図示省略)を有し、表面を繊維や皮革等のクッション表皮21によって覆われている。シートクッション20は、ボディ100のフロアFに取り付けられる。
なお、シートクッション20は、左右に分割可能であってもよい。
【0013】
図2に示すように、シートバック30は、左右に分割可能な分割式であり、右シートバック30R及び左シートバック30Lを有する。右シートバック30Rと左シートバック30Lの左右方向長さの比率は、ここでは、4:6の場合について説明するが、これに限定するものではなく、例えば、6:4や5:5であってもよい。
【0014】
シートバック30は、板状のバックフレーム40及びバックフレーム40の前側に取り付けられたクッション材(図示省略)を有しており、表面を繊維や皮革等のバック表皮31によって覆われている(
図1参照)。
なお、以下の説明においては、共通する部位には同じ符号を付すが、特に右シートバック30R及び左シートバック30Lを区別する際には、それぞれ「R」、及び「L」を付して区別することとする。また、シートバック30を立てた状態で上側を「上」、下側を「下」で表示することとする。
【0015】
右シートバック30Rを構成する右バックフレーム40R及び左シートバック30Lを構成する左バックフレーム40Lの下端左右両端には軸部(第2接続部、ヒンジ部)41及び軸部(第3接続部、ヒンジ部)42が設けられており、ボディ100に設けられている軸受部101によって回動可能に支持される。
なお、軸受部101には、シートバック30をシートクッション20に対して所望の角度で傾斜して固定可能なリクライニング装置が設けられる場合もある。
【0016】
また、右バックフレーム40R及び左バックフレーム40Lの上端におけるボディ100の幅方向外側端部には、各バックフレーム40R、40Lをボディ100に固定するためのシートバック固定部(第1接続部)43が各々設けられている。また、各シートバック30R、30Lの上側には、ヘッドレスト32が着脱可能に取付けられており(
図1参照)、各バックフレーム40R、40Lの上部には、ヘッドレスト32を取付けるためのヘッドレスト取付部44が設けられている。
【0017】
図2に示すように、バックフレーム40は、厚さ例えば0.7mm以下の金属板からなる板状の第1部材50と、第1部材50の厚み方向片面(ここでは前面(平面部)51)に取り付けられ厚さ例えば0.7mm以下の金属板からなる第2部材60を有する。
なお、右バックフレーム40R及び左バックフレーム40Lにおいて同様の構造を有するので、特に必要な場合を除いて、以下の説明においては面積が大きな左バックフレーム40Lについて説明することとする。
【0018】
第2部材60は、第1部材50の外周縁に沿って閉じた枠状に取り付けられている。これにより、第1部材50の全体を確実に補強することができる。
なお、枠状に限らず、C字形状や、一対のC字が対向して向かい合うような形状に設けることも可能である。
【0019】
図3(A)及び
図3(B)に示すように、第2部材60は、両側に設けられたフランジ部61と、フランジ部61の内側縁から立ち上がる一対の縦壁部62と、一対の縦壁部62の上端(前端)を結ぶ平面状の天板(平面部)63を有しており、内部に中空部64を有するハット断面形状を呈している。第2部材60は、フランジ部61の下面が第1部材50の前面51に接触するように溶接により取り付けられる。
【0020】
図2に示すように、左シートバック30L使用時には、左バックフレーム40Lは、下端部における左右一対の軸部41、42と、上端部における幅方向外側の1個のシートバック固定部43によって3点支持される。
【0021】
このため、第1部材50は、シートバック固定部43と、シートバック固定部43と対角線上にある軸部42とを結ぶ仮想線(線)L1において折れ曲がる方向に外力が作用する。この外力に抵抗するために、第1部材50において第2部材60の内側である中央部には、中央部ビード52が複数個平行に設けられており、この中央部ビード52は、仮想線L1に略直交する方向に平行に設けられている。これにより、左バックフレーム40Lが3点接続の場合でも、確実に強度を確保できる。
【0022】
中央部ビード52は、第1部材50を製造する際に、プレス加工により同時に形成できる。中央部ビード52は、例えば部分円弧状や台形等の断面とすることができ、第2部材60側、すなわち前方へ突出するように形成する。これにより、第1部材50の後面(前面51と反対側面)には中央部ビード52が突出しないので、シートバック30を倒してシートクッション20に積層した状態で、フラットな荷室面を確保できる。
【0023】
そして、中央部ビード52は、第1部材50の厚み方向に沿った平面視において、長手方向端部に第2部材60と重複した重複部521を有する。すなわち、
図3(B)に示すように、第2部材60には、中央部ビード52に対応してフランジ部61及び縦壁部62の一部にトンネル部65が設けられており、中央部ビード52はトンネル部65を貫通して重複部521を形成している。これにより、左バックフレーム40Lの第1部材50が中央部ビード52の長手方向端部において変形するのを防止できる。
なお、トンネル部65においては、中央部ビード52の重複部521と第2部材60とは溶接による接合を行っておらず、応力の逃げを図っている。
【0024】
重複部521は、中央部ビード52の両端に設けてもよいが、
図2に示すように、一方の端部のみに設けることができる。また、重複部521は、全ての中央部ビード52に設けることもできるが、ここでは一部の中央部ビード52に設けている。
【0025】
また、
図3(B)に示すように、重複部521は、第2部材60の中空部64にまで達しているが、中空部64に達しないでフランジ部61まででもよい。
なお、
図2において、右バックフレーム40Rの第1部材50の中央部ビード52には重複部521が設けられていないが、左バックフレーム40Lと同様に重複部521を設けることもできる。
【0026】
図2及び
図4に示すように、第1部材50の前面51上部には、第2部材60のフランジ部61を第1部材50の前面51に沿って下方へ延長した半円形の舌状のフランジ延長部611が設けられている。このフランジ延長部611には、シートベルトを巻き取ったり緊急時にロックさせたりするリトラクタを取付けるためのリトラクタ固定部(固定部)71が設けられている。また、リトラクタ固定部71の上方に対応する第2部材60の天板63には、シートベルトをガイドするベルトガイド部72が設けられている。
【0027】
第2部材60の半円形状のフランジ延長部611の外側の第1部材50には、包囲ビード54がフランジ延長部611に沿って半円形状に設けられている。これにより、リトラクタ固定部71に対応する第1部材50を補強するので、部品点数が増加して組立工数が増加するのを防止して、リトラクタ固定部71の強度を増すことができる。また、リトラクタ固定部71は、第2部材のフランジ延長部611を介して第1部材50に取り付けられるので、一層、リトラクタ固定部71の強度が増す。
【0028】
図4及び
図5に示すように、第1部材50において第2部材60に覆われる位置には、複数の収容ビード55が、第2部材60の中空部64に収容されるように設けられている(
図6参照)。そして、隣接する収容ビード55との間には、所定の大きさの間隔Sが設けられている。
【0029】
これにより、収容ビード55が連続している場合に比して、収容ビード55の変形を抑止することができる。
なお、
図5に示すように、中央部ビード52aでは、重複部521が収容ビード55aに連続しているが、収容ビード55aを第2部材60の設置方向に沿って見ると、隣接する収容ビード55との間には間隔Sが設けられており、分離されている。
【0030】
図6に示すように、収容ビード55は、第2部材60に向かって隆起するように形成されており、フランジ部551、縦壁部552及び平面部553を有する。そして、平面部553には、貫通孔554が設けられている。貫通孔554には、バック表皮31を取付けるためのトリムクリップ74が取り付けられる。このとき、トリムクリップ74の頭部741が第1部材50側に突出しないように、収容ビード55の隆起寸法Hは、頭部741の厚さよりも大きく設定する。
なお、バック表皮31を取付けるのに必要ない箇所(例えば、第1部材50の上縁端部)に位置する収容ビード55には、貫通孔554を設ける必要はない。
【0031】
図4及び
図5に示すように、第1部材50の下端部には、第1部材50及び第2部材60の間や上に当接するように、所定個所に板部材80が設けられている。板部材80の厚みは、第1部材50及び第2部材60の板厚(例えば、0.7mm以下)よりも大きく、例えば、1.2~5mm程度とすることができる。これにより、第1部材50の所定個所を容易かつ確実に補強することができる。
【0032】
図4及び
図5に示すように、第1部材50において最も大きな負荷がかかる右の軸部42(
図2参照)には、第1部材50と第2部材60との間に平板状の第1板部材81が介装されている。第1板部材81は、第2部材60のフランジ部61から外部に露出する露出部812を有しており、露出部812に対応する第1部材50の第2部材60とは反対側に、軸部42が設けられている。これにより、軸部42を第1部材50に強固に取り付けることができる。
【0033】
第1板部材81は、平面視L字形状を呈しており、幅方向中央には、第1部材50に設けられている収容ビード55との干渉を避けるために、下面側に内部空間を有する板部材ビード811が第2部材60側に突出するように設けられている。これにより、収容ビード55との干渉を回避するとともに、第1板部材81の剛性を高めることができる。
【0034】
第1部材50、第2部材60及び第1板部材81は、3枚重ねた状態で、レーザ溶接またはスポット溶接により一度に溶接することができる。これにより、工数を削減して作業効率を向上させるとともに、第1部材50、第2部材60及び第1板部材81を確実に接合することができる。
【0035】
このとき、第1部材50側から溶接を行い、第1板部材81を貫通して第2部材60を接合する際に、第2部材60のフランジ部61を貫通しないように、溶接条件を調整する。
なお、第2部材60側から溶接を行うことも可能だが、この場合には、第1部材50を貫通しないようにする。溶接としては、例えばレーザを用いた溶接を行うことができる。また、溶接は、第2部材60のフランジ部61に沿って長手方向に連続して行うのではなく、所定の長さを超えないように非溶接部分を設けるようにするのが望ましい。
【0036】
図2及び
図5に示すように、第1板部材81が設けられている位置における第2部材60の天板63には、平面部ビード66が設けられている。平面部ビード66は、第2部材60及び第1板部材81の隅角部に対応した位置に設けられている第1平面部ビード661と、第1平面部ビード661を挟んだ両側に設けられた第2平面部ビード662を有する。
【0037】
第1平面部ビード661は、天板63の表面側に突出した凸ビードであり、第2部材60の角部に向かう方向に設けられている。一方、第2平面部ビード662は、天板63の内面側に突出した凹ビードであり、枠状の第2部材60に沿った方向に設けられている。このように、平面部ビード66のビード方向を凹凸凹としたのは、仮想線L1において折れる方向へ力が作用すると、凹凸の方向が一定のビードでは折れを抑制しきれない虞があるが、このように平面部ビード66のビード方向が一定にならないように凹凸凹とした。これにより、折れを確実に防止することができる。
【0038】
図4及び
図5に示すように、左の軸部41(
図2参照)に対応して、第1部材50の前面51及び第2部材60のフランジ部61の表面、縦壁部62の表面、天板63の表面に沿ったクランク状の第2板部材82が設けられている。第2板部材82の表面には、第1部材50から離れる方向に隆起する板部材ビード821が設けられている。これにより、FRM全体の剛性を高めることができ、第1部材50を確実に補強することができる。
【0039】
第2板部材82は、第2部材60のフランジ部61から外部に露出する露出部822を有しており、露出部822に対応する第1部材50の第2部材60とは反対側に、軸部41が設けられている(
図2参照)。これにより、軸部41を第1部材50に強固に取り付けることができる。
【0040】
図7には、右バックフレーム40Rの分解斜視図が示されている。右バックフレーム40Rは、左バックフレーム40Lと比べて左右方向の寸法が小さいため、左バックフレーム40Lにおける軸部42のように大きな力が作用することはない。このため、右バックフレーム40Rにおいては、下端部における左右両端とも左バックフレーム40Lにおける軸部41と同様の構造が用いられている。
【0041】
従って、
図7においては、
図5に示した左バックフレーム40Lと同様の構造には、同じ符号を付して、重複する説明を省略する。
なお、右バックフレーム40Rの第1部材50に設けられている中央部ビード52は、仮想線L2(
図2参照)と交差または直交する方向に設けられている。
【0042】
(第2実施形態)
図8には、本発明の第2実施形態の乗り物用シート11における左バックフレーム40Lの正面図が示されている。
なお、以下の説明においては、前述した第1実施形態の乗り物用シート10と共通する部位には同じ符号を付して、重複する説明を省略することとする。
【0043】
図8に示すように、第2実施形態の乗り物用シート11の左バックフレーム40Lでは、第2部材60の上端部における左右方向中央部を下方へU字形状に延長した第2部材延長部67が設けられている。第2部材延長部67は、内側(中心部)にフランジ部61と同一面の延長面671を有しており、この延長面671にリトラクタ固定部71を取付ける。また、延長面671の外側には、第2部材60の縦壁部62と同様の延長縦壁部672が設けられており、延長縦壁部672の上端には天板63を延長した延長天板673がU字形状に設けられている。
【0044】
すなわち、リトラクタ固定部71は、前述した第1部材50の包囲ビード54に代わって、第2部材60の延長縦壁部672及び延長天板673により包囲されている。これにより、リトラクタ固定部71を確実に保護できるとともに、第2部材60の成形時に同時に設けることができるので、部品点数が削減できる。
【0045】
(第3実施形態)
図9には、本発明の第3実施形態の乗り物用シート12における左バックフレーム40Lの要部の正面図が示されている。
なお、以下の説明においては、前述した第1実施形態の乗り物用シート10及び第2実施形態の乗り物用シート11と共通する部位には同じ符号を付して、重複する説明を省略することとする。
【0046】
図9に示すように、第3実施形態の乗り物用シート12の左シートバック30Lの左バックフレーム40Lでは、前述した第1実施形態の乗り物用シート10及び第2実施形態の乗り物用シート11において軸部41(
図2参照)に対応して設けた第2板部材82に代わって、板部材80として第3板部材83を設けた。第3板部材83は、第2板部材82と異なり平板状を呈しており、第3板部材83は第1部材50と第2部材60との間に介装されている。
【0047】
第3板部材83の表面には、第1部材50から離れる方向(すなわち、前方)に隆起する板部材ビード831が設けられており、板部材ビード831は第2部材60側に突出しているため、板部材ビード831に対応する第2部材60のフランジ部61及び縦壁部62には、切欠きや凹部を設けて、干渉しないようにする。
【0048】
また、第3板部材83における第1部材50の角部に対応する位置には、第2部材60から露出する露出部832が設けられており、露出部832に対応する第1部材50の第2部材60とは反対側には、軸部41が設けられている(
図2参照)。
なお、第3板部材83は、前述した第1板部材81と同様に、第1部材50、第2部材60及び第3板部材83を3枚重ねた状態でレーザ溶接またはスポット溶接により一度に溶接することができる。
【0049】
このように構成しても、前述した第1実施形態の乗り物用シート10と同様の作用効果を得ることができる。
【0050】
以上、本発明のシート10、11、12について、具体的な実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は、前述した具体的な実施形態に限定されるものでなく、本発明の技術思想を逸脱しない範囲における様々な変形及び改良を行ってもよいことは言うまでもない。
例えば、前述した実施形態においては、乗用車について説明したが、その他の車両についても同様に適用可能である。
【0051】
以上、説明したとおり、本明細書に開示された乗物用シートは、乗り物のボディに固定されるシートクッション及びシートバックを備え、前記シートバックは、板状に形成された第1部材と、前記第1部材の厚み方向片面にフランジ部が接触するハット断面形状の第2部材と、前記第1部材の中央部に設けられた中央部ビードと、を有し、前記第1部材の厚み方向に沿った平面視において、前記第2部材と前記中央部ビードの長手方向端部とが重複している。
【0052】
また、本明細書に開示された乗物用シートは、前記第1部材は、前記第2部材に向かって隆起するように前記中央部ビードが形成され、前記第2部材は、前記中央部ビードに対応して前記第2部材のフランジ部及び縦壁部の一部にトンネル部が設けられている。
【0053】
また、本明細書に開示された乗物用シートは、前記第1部材における平面部および前記第2部材の前記フランジ部が相互に固定されている。
【0054】
また、本明細書に開示された乗物用シートは、前記ボディにおける前記乗り物の前進方向側方において前記第1部材の上方を着脱可能に接続するための第1接続部と、前記ボディにおける前記乗り物の前進方向側方において前記第1部材の下方を回動可能に接続するための第2接続部と、前記第2接続部に隣り合うとともに前記第1部材の下方を回動可能に接続するための第3接続部と、を有し、前記中央部ビードは、前記第1接続部及び第3接続部を結ぶ線に対して交差または直交する線に沿う。
【0055】
また、本明細書に開示された乗物用シートでは、前記第2部材は、平面視枠状である。
【0056】
以上、説明したとおり、本明細書に開示された乗物用シートは、乗り物のボディに固定されるシートクッション及びシートバックを備え、前記シートバックは、板状に形成された第1部材と、前記第1部材の厚み方向片面にフランジ部が接触するハット断面形状の第2部材と、前記第1部材及び前記第2部材のうちの一方に支持され、リトラクタを固定可能な固定部と、を有し、前記第1部材および前記第2部材の積層方向に沿った平面視において、前記固定部を囲む包囲ビードが前記第1部材および前記第2部材のうちの一方に設けられている。
【0057】
また、本明細書に開示された乗物用シートは、前記包囲ビードが前記第1部材に設けられている。
【0058】
また、本明細書に開示された乗物用シートは、前記包囲ビードが前記第2部材に連続している。
【0059】
また、本明細書に開示された乗物用シートは、前記第1部材の中央部に設けられた中央部ビードと、前記ボディにおける前記乗り物の前進方向側方において前記第1部材の上方を着脱可能に接続するための第1接続部と、前記ボディにおける前記乗り物の前進方向側方において前記第1部材の下方を回動可能に接続するための第2接続部と、前記第2接続部に隣り合うとともに前記第1部材の下方を回動可能に接続するための第3接続部と、を有し、前記中央部ビードは、前記第1接続部及び第3接続部を結ぶ線に対して交差または直交する線に沿う。
【0060】
また、本明細書に開示された乗物用シートは、前記第2部材は、平面視枠状である。
【0061】
以上、説明したとおり、本明細書に開示された乗物用シートは、乗り物のボディに固定されるシートクッション及びシートバックを備え、前記シートバックは、板状に形成された第1部材と、前記第1部材の厚み方向片面にフランジ部が接触するハット断面形状の第2部材と、前記第1部材における前記第2部材に覆われる位置に設けられた複数の収容ビードと、を有し、前記第1部材および前記第2部材の積層方向に沿った平面視において、前記収容ビードは、前記第2部材の連続方向に沿って所定間隔を空けて設けられている。
【0062】
また、本明細書に開示された乗物用シートは、前記収容ビードは、前記第2部材に向かって隆起するように形成され、前記収容ビードの平面部に貫通孔が設けられている。
【0063】
また、本明細書に開示された乗物用シートは、前記第1部材の中央部に設けられた中央部ビードと、前記ボディにおける前記乗り物の前進方向側方において前記第1部材の上方を着脱可能に接続するための第1接続部と、前記ボディにおける前記乗り物の前進方向側方において前記第1部材の下方を回動可能に接続するための第2接続部と、前記第2接続部に隣り合うとともに前記第1部材の下方を回動可能に接続するための第3接続部と、を有し、前記中央部ビードは、前記第1接続部及び第3接続部を結ぶ線に対して交差または直交する線に沿う。
【0064】
また、本明細書に開示された乗物用シートは、前記第2部材は、平面視枠状である。
【0065】
以上、説明したとおり、本明細書に開示された乗物用シートは、乗り物のボディに固定されるシートクッション及びシートバックを備え、前記シートバックは、板状に形成された第1部材と、前記第1部材の厚み方向片面にフランジ部が接触するハット断面形状の第2部材と、前記第1部材及び前記第2部材間に設けられた板部材と、を有する乗り物用シート。
【0066】
また、本明細書に開示された乗物用シートは、前記板部材は、前記第1部材の平面部及び前記第2部材のフランジ部間に介装されている。
【0067】
また、本明細書に開示された乗物用シートは、前記第2部材の平面部における前記板部材に対応する位置に平面部ビードが設けられている。
【0068】
また、本明細書に開示された乗物用シートは、前記第1部材の平面部、前記第2部材の前記フランジ部及び前記板部材は、前記板部材の厚み方向に沿って一体的に溶接されている。
【0069】
また、本明細書に開示された乗物用シートは、前記板部材は、前記第2部材のフランジ部から外部に露出する露出部を有し、前記第1部材は、前記露出部に対応する箇所であるとともに前記第2部材とは反対側にヒンジ部が設けられている。
【0070】
また、本明細書に開示された乗物用シートは、前記板部材は、前記第1部材の平面部及び前記第2部材のフランジ部の表面、縦壁部の表面、平面部の表面に沿って配置されている。
【0071】
また、本明細書に開示された乗物用シートは、前記板部材は、前記第1部材から離れる方向に隆起する板部材ビードが設けられている。
【0072】
また、本明細書に開示された乗物用シートは、前記第1部材は、前記板部材が沿う前記平面部における前記第2部材とは反対側にヒンジ部が設けられている。
【0073】
また、本明細書に開示された乗物用シートは、前記第1部材の中央部に設けられた中央部ビードと、前記ボディにおける前記乗り物の前進方向側方において前記第1部材の上方を着脱可能に接続するための第1接続部と、前記ボディにおける前記乗り物の前進方向側方において前記第1部材の下方を回動可能に接続するための第2接続部と、前記第2接続部に隣り合うとともに前記第1部材の下方を回動可能に接続するための第3接続部と、を有し、前記中央部ビードは、前記第1接続部及び第3接続部を結ぶ線に対して交差または直交する線に沿う。
【0074】
また、本明細書に開示された乗物用シートは、前記第2部材は、平面視枠状である。
【符号の説明】
【0075】
10、11、12 乗り物用シート
20 シートクッション
30 シートバック
41 軸部(第2接続部)
42 軸部(第3接続部)
43 シートバック固定部(第1接続部)
50 第1部材
51 後面(第1部材における平面部)
52 中央部ビード
60 第2部材
61 フランジ部
62 縦壁部
65 トンネル部
101 ボディ
L1、L2 仮想線(結ぶ線)