(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-09
(45)【発行日】2022-03-17
(54)【発明の名称】センサヘッド及び電流センサ
(51)【国際特許分類】
G01R 1/22 20060101AFI20220310BHJP
G01R 15/18 20060101ALI20220310BHJP
【FI】
G01R1/22 B
G01R15/18 C
(21)【出願番号】P 2018058019
(22)【出願日】2018-03-26
【審査請求日】2021-01-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596157780
【氏名又は名称】横河計測株式会社
(74)【上記1名の代理人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】今里 紀子
(72)【発明者】
【氏名】横島 潔
(72)【発明者】
【氏名】品川 貴宣
【審査官】田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-134233(JP,A)
【文献】特開2012-068187(JP,A)
【文献】特開2016-125839(JP,A)
【文献】特開昭63-210782(JP,A)
【文献】特開2018-165621(JP,A)
【文献】特開2015-187591(JP,A)
【文献】特開2003-215169(JP,A)
【文献】特開2002-098714(JP,A)
【文献】特開2011-128094(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 1/00-1/04、
1/08-5/00、
5/10-9/08、
15/00-17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性体からなり両端部が厚さ方向に重ねられて円状に形成される補強体と、
前記補強体上に設けられ、両端部が厚さ方向に重ねられて円状に形成される帯状磁性体と、を有し、
円状の前記補強体の中心軸に平行な軸を中心に前記補強体を開閉自在とすることにより、前記帯状磁性体の両端部が接離自在となるセンサヘッドにおいて、
前記軸は、前記帯状磁性体の両端部が重ねられた状態で、当該両端部と前記帯状磁性体の中心とを通る直線上からずれた位置に設けられていることを特徴とするセンサヘッド。
【請求項2】
非磁性体からな
る第1補強部材及び第2補強部材と、
前記第1補強部材
上に設けられた第1帯状磁性体と、
前記第2補強部材上に設けられ
た第2帯状磁性体と、を有し、
前記第1補強部材の一端部の外面及び前記第2補強部材の他端部の内面が対向して重ねられ、前記第1補強部材の他端部の内面及び前記第2補強部材の一端部の外面が対向して重ねられることで、前記第1補強部材と前記第2補強部材から円状の補強部材が構成され、前記第1帯状磁性体の一端と前記第2帯状磁性体の一端が厚さ方向に重ねられて接触し、前記第1帯状磁性体の他端と前記第2帯状磁性体の他端が厚さ方向に重ねられて接触し、前記第1帯状磁性体及び前記第2帯状磁性体から円状の帯状磁性体が構成され、
前記円状の
補強部材の中心軸に平行な軸を中心に前記
円状の補強部材を開閉自在とすることにより、前記第1帯状磁性体
の前記一端及び前記第2帯状磁性体
の前記一端が接離自在となるセンサヘッドにおいて、
前記軸は、前記第1帯状磁性体
の前記一端及び前記第2帯状磁性体
の前記一端が重ねられた状態で、
前記第1帯状磁性体の前記一端及び前記第2帯状磁性体の前記一端が重ねられた部分と前記
円状の帯状磁性体の中心とを通る直線上からずれた位置に設けられていることを特徴とするセンサヘッド。
【請求項3】
非磁性体からなり両端部が厚さ方向に重ねられて円状に形成される補強体と、
前記補強体上に設けられ、両端部が厚さ方向に重ねられて円状に形成される帯状磁性体と、を有し、
円状の前記補強体の中心軸に平行な軸を中心に前記補強体を開閉自在とすることにより、前記帯状磁性体の両端部が接離自在となるセンサヘッドにおいて、
前記補強体は、当該補強体の両端部間にある中間部が円に沿って形成され、前記両端部が前記中間部により形成された前記円から外れるように形成されていることを特徴とするセンサヘッド。
【請求項4】
非磁性体からな
る第1補強部材及び第2補強部材と、
前記第1補強部材
上に設けられた第1帯状磁性体と、
前記第2補強部材上に設けられ
た第2帯状磁性体と、を有し、
前記第1補強部材の一端部の外面及び前記第2補強部材の他端部の内面が対向して重ねられ、前記第1補強部材の他端部の内面及び前記第2補強部材の一端部の外面が対向して重ねられることで、前記第1補強部材と前記第2補強部材から円状の補強部材が構成され、前記第1帯状磁性体の一端と前記第2帯状磁性体の一端が厚さ方向に重ねられて接触し、前記第1帯状磁性体の他端と前記第2帯状磁性体の他端が厚さ方向に重ねられて接触し、前記第1帯状磁性体及び前記第2帯状磁性体から円状の帯状磁性体が構成され、
前記円状の
補強部材の中心軸に平行な軸を中心に前記
円状の補強部材を開閉自在とすることにより、前記第1帯状磁性体
の前記一端及び前記第2帯状磁性体
の前記一端が接離自在となるセンサヘッドにおいて、
前記第1補強部材は、
前記第1補強部材の前記一端部及び前記他端部の間にある中間部が円に沿って形成され、
前記第1補強部材の前記一端部及び前記他端部が前記中間部により形成された前記円から外れるように形成され
、
前記第2補強部材は、前記第2補強部材の前記一端部及び前記他端部の間にある中間部が円に沿って形成され、前記第2補強部材の前記一端部及び前記他端部が前記第2補強部材の前記一端部及び前記他端部の間にある中間部により形成された前記円から外れるように形成されていることを特徴とするセンサヘッド。
【請求項5】
前記帯状磁性体の両端部を互いに近づける方向に付勢する弾性部材をさらに備えたことを特徴とする請求項1又は3に記載のセンサヘッド。
【請求項6】
前記第1帯状磁性体
の前記一端及び前記第2帯状磁性体の
前記一端を互いに近づける方向に付勢する弾性部材をさらに備えたことを特徴とする請求項2又は4に記載のセンサヘッド。
【請求項7】
請求項1~6何れか1項に記載されたセンサヘッドと、
前記センサヘッドに貫通された被測定対象物に流れる電流を検出する電流検出手段と、
を備えたことを特徴とする電流センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサヘッド及び電流センサに関する。
【背景技術】
【0002】
上述した電流センサとして例えば特許文献1に記載された貫通型の非接触電流センサが知られている。特許文献1に記載された電流センサは、環状の励磁コアに被測定対象物を貫通させ、励磁コアに巻かれた励磁コイルに流れる電流、電圧を測定することにより、被測定対象物に流れる電流を測定している。
【0003】
電流測定方法として、励磁コイルに流れる電流又は電圧から電流信号を得るフラックスゲート型電流検出方法が知られている。さらに、その際の電流信号を、励磁コイルの外側に巻かれた帰還コイルに流して、帰還コイルに流れる電流から電流信号を得るゼロフラックス法も知られている。
【0004】
上述した励磁コアとして、性能の向上、コストダウンを図るためアモルファスのような薄帯状の磁性体を用いることが考えられる。このような場合、一般的には、その薄帯状磁性体を複数回巻きつけるような形で、何層かに重ねることによって励磁コアを作成するという方法が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような励磁コアは分割クランプ型の非接触電流センサには採用できない。薄帯状磁性体から構成された励磁コアを分割させてしまうと、励磁コアとしての性能を失ってしまうからである。一つ目の要因は、機械的強度の問題である。薄帯状磁性体を巻きつけた励磁コアを分割させた場合、その断面は薄帯状磁性体が数層重っているだけであり、しかも、各層の断面は線状になっている。そのため、分割クランプ型の非接触電流センサに採用した場合には、薄帯状磁性体の機械的強度が開閉の動作に耐えられず、すぐに接触不良を起こしてしまうという問題が生じることとなる。
【0007】
二つ目の要因は、電流測定値の再現性の問題である。前述のとおり分割させた励磁コアの断面には線状の磁性体が数層分存在するだけであるため、これを採用した分割クランプ型の非接触電流センサのクランプ部分の開閉操作において、断面部の磁性体どうしの接触は、実質的には線接触となってしまう。これは、磁性体どうしの接触面積が小さいことを意味する。このような場合、クランプ部分の開閉に伴う接触部分における磁気結合の再現性が得にくくなるので、結果として電流測定値の再現性を得ることができないという問題もまた生じることとなる。
【0008】
このような事情から、分割クランプ型の非接触電流センサの励磁コア構造には薄帯状磁性体を採用することができないという課題があった。
【0009】
本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものであり、分割クランプ型の励磁コアとして薄帯状磁性体を採用することができるセンサヘッド及び電流センサを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するため、本発明のセンサヘッドは、非磁性体からなり両端部が厚さ方向に重ねられて円状に形成される補強体と、前記補強体上に設けられ、両端部が厚さ方向に重ねられて円状に形成される帯状磁性体と、を有し、円状の前記補強体の中心軸に平行な軸を中心に前記補強体を開閉自在とすることにより、前記帯状磁性体の両端部が接離自在となるセンサヘッドにおいて、前記軸は、前記帯状磁性体の両端部が重ねられた状態で、当該両端部と前記帯状磁性体の中心とを通る直線上からずれた位置に設けられていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明のセンサヘッドは、非磁性体からなり両端部同士が厚さ方向に重ねられて円状に形成される第1補強部材及び第2補強部材と、前記第1補強部材及び前記第2補強部材上に設けられ、両端部同士が厚さ方向に重ねられて円状に形成される第1帯状磁性体及び第2帯状磁性体と、を有し、円状の前記第1補強部材及び前記第2補強部材の中心軸に平行な軸を中心に前記第1補強部材及び前記第2補強部材を開閉自在とすることにより、前記第1帯状磁性体及び前記第2帯状磁性体、の両端部同士が接離自在となるセンサヘッドにおいて、前記軸は、前記第1帯状磁性体及び前記第2帯状磁性体の両端部同士が重ねられた状態で、当該両端部と前記第1帯状磁性体及び前記第2帯状磁性体の中心とを通る直線上からずれた位置に設けられていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明のセンサヘッドは、非磁性体からなり両端部が厚さ方向に重ねられて円状に形成される補強体と、前記補強体上に設けられ、両端部が厚さ方向に重ねられて円状に形成される帯状磁性体と、を有し、円状の前記補強体の中心軸に平行な軸を中心に前記補強体を開閉自在とすることにより、前記帯状磁性体の両端部が接離自在となるセンサヘッドにおいて、前記補強体は、当該補強体の両端部間にある中間部が円に沿って形成され、前記両端部が前記中間部により形成された前記円から外れるように形成されていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明のセンサヘッドは、非磁性体からなり両端部同士が厚さ方向に重ねられて円状に形成される第1補強部材及び第2補強部材と、前記第1補強部材及び前記第2補強部材上に設けられ、両端部同士が厚さ方向に重ねられて円状に形成される第1帯状磁性体及び第2帯状磁性体と、を有し、円状の前記第1補強部材及び前記第2補強部材の中心軸に平行な軸を中心に前記第1補強部材及び前記第2補強部材を開閉自在とすることにより、前記第1帯状磁性体及び前記第2帯状磁性体の両端部同士が接離自在となるセンサヘッドにおいて、前記第1補強部材及び前記第2補強部材各々は、当該第1補強部材及び当該第2補強部材の両端部間にある中間部が円に沿って形成され、前記両端部が前記中間部により形成された前記円から外れるように形成されていることを特徴とする。
【0014】
また、前記帯状磁性体の両端部を互いに近づける方向に付勢する弾性部材をさらに備えてもよい。
【0015】
また、前記第1帯状磁性体及び前記第2帯状磁性体の両端部同士を互いに近づける方向に付勢する弾性部材をさらに備えてもよい。
【0016】
また、本発明の電流センサは、上述したセンサヘッドと、前記センサヘッドに貫通された被測定対象物に流れる電流を検出する電流検出手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
上述した発明によれば、帯状磁性体の両端部が厚さ方向に重ねられて接触している。これにより、帯状磁性体の開閉動作に対し、十分な接触面積を保つことができるため、クランプ型の励磁コアとして薄帯状磁性体を採用することができる。
【0018】
また、上述した発明によれば、第1帯状磁性体及び第2帯状磁性体の両端部同士が厚さ方向に重ねられて接触している。これにより、第1帯状磁性体及び第2帯状磁性体の開閉動作に対し、十分な接触面積を保つことができるため、分割クランプ型の励磁コアとして薄帯状磁性体を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態における本発明の非接触型の電流センサを示すブロック図である。
【
図2】
図1のセンサヘッドのA-A線概略断面図である。
【
図3】クランプ時における
図1に示す励磁コアの斜視図である。
【
図5】クランプ時における
図1に示す励磁コアの概略側面図である。
【
図6】非クランプ時における
図1に示す励磁コアの概略側面図である。
【
図7】第1実施形態の第1変形例におけるクランプ時の励磁コアの概略側面図である。
【
図8】第1実施形態の第1変形例における非クランプ時の励磁コアの概略側面図である。
【
図9】第2実施形態におけるクランプ時の励磁コアの側面図である。
【
図11】第2実施形態の変形例における励磁コアの側面図である。
【
図12】第2実施形態の変形例における励磁コアの側面図である。
【
図13】第2実施形態の変形例における励磁コアの側面図である。
【
図14】第2実施形態におけるクランプ時の補強体の概略側面図である。
【
図15】非クランプ時における
図14に示す補強体の概略側面図である。
【
図16】第2実施形態におけるクランプ時の励磁コアの概略側面図である。
【
図17】非クランプ時における
図16に示す励磁コアの概略側面図である。
【
図18】第2実施形態の変形例におけるクランプ時の励磁コアの概略側面図である。
【
図19】非クランプ時における
図18に示す励磁コアの概略側面図である。
【
図20】第2実施形態の変形例におけるクランプ時の補強体の側面図である。
【
図21】非クランプ時における
図20に示す補強体の側面図である。
【
図22】第2実施形態の変形例におけるクランプ時の補強体の側面図である。
【
図23】非クランプ時における
図22に示す補強体の側面図である。
【
図24】第3実施形態における本発明の非接触型の電流センサを示すブロック図である。
【
図25】
図24に示す励磁コアを構成する補強体の分解斜視図である。
【
図27】クランプ時における
図26に示す励磁コアの概略側面図である。
【
図28】非クランプ時における
図26に示す励磁コアの概略側面図である。
【
図29】非クランプ時における
図24に示すセンサヘッドの斜視図である。
【
図30】非クランプ時における
図24に示すセンサヘッドの側面図である。
【
図31】クランプ時における
図24に示すセンサヘッドの斜視図である。
【
図32】第3実施形態の変形例における励磁コアの概略側面図である。
【
図33】非クランプ時における
図32の励磁コアを有するセンサヘッドの斜視図である。
【
図34】非クランプ時における
図32の励磁コアを有するセンサヘッドの側面図である。
【
図35】クランプ時における
図32の励磁コアを有するセンサヘッドの斜視図である。収容
【
図36】第4実施形態における励磁コアの概略側面図である。
【
図37】第4実施形態の変形例における励磁コアの概略側面図である。
【
図38】第1~第4実施形態の変形例における非クランプ時の励磁コアの部分断面図である。
【
図39】クランプ時における
図38に示す励磁コアの部分断面図である。
【
図40】第1~第4実施形態の変形例における非クランプ時の励磁コアの部分断面図である。
【
図41】クランプ時における
図38に示す励磁コアの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
第1実施形態における非接触型の電流センサの一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、
図1では、図が煩雑になることを避けるために帰還コイル8は、コア部20L、20Rの一部のみを巻いた状態を示すが、実際はコア部20L、20Rの円周方向に沿って全体を巻くのが一般的である。
【0021】
電流センサ1は、センサヘッド2と、電流検出手段としての電流検出回路10と、を備えている。センサヘッド2は、
図1及び
図2などに示すように、円環状の励磁コア3Aと、励磁コア3Aに巻回された励磁コイル4と、励磁コア3Aの内側及び外側に設けられた集磁体としての内側集磁体5及び外側集磁体6と、これら励磁コア3A、励磁コイル4、内側集磁体5及び外側集磁体6を収容する収容ケース7(
図29~
図31参照)と、収容ケース7に巻回された帰還コイル8と、を備えている。励磁コア3Aの中心には、電線などの被測定対象物9が通されている。
【0022】
また、電流検出回路10は、励磁回路11と、検波回路12と、LPF回路13と、増幅回路14と、帰還回路15と、I/V回路16と、を備えている。励磁コイル4は、励磁回路11と接続されており、交流励磁電流により交流的に励磁される。励磁コイル4の励磁電圧もしくは励磁電流は、被測定対象物9に流れる電流(以下被測定電流)の作用により変化する。検波回路12はその励磁電圧もしくは励磁電流の変化を検出し、LPF回路13を通すことにより、被測定電流に比例した信号を得る。
【0023】
続いて、この信号を増幅回路14で増幅し、帰還回路15を経由して帰還コイル8に流れる電流を生む。帰還コイル8に流れる電流により帰還コイル8内部に磁界を発生させ、結果として、励磁コア3A、内側集磁体5、外側集磁体6に磁束を生じる。帰還コイル8の巻き線の方向は、帰還コイル8に流れる電流による磁束が、被測定電流により生じた磁束を打ち消す作用をする向きである。そのため、この構成により、帰還コイル8内部の励磁コア3A、内側集磁体5、外側集磁体6の磁束はほぼゼロになり、帰還コイル8に流れる電流が被測定電流に比例する為、帰還コイル8に流れる電流をI/V回路16により電流電圧変換して、最終的な被測定電流の推定値であるところの、出力電圧を得る。
【0024】
次に、上記励磁コア3Aの構成について
図3及び
図4を参照して以下説明する。励磁コア3Aは、補強体3A1と、帯状磁性体3A2と、を備えている。補強体3A1は、帯状の非磁性材料(例えばプラスチック)からなり、両端部が厚さ方向に重ねられて円環状に形成されている。補強体3A1は、別部品で構成された第1補強部材3A11及び第2補強部材3A12から構成されている。第1補強部材3A11及び第2補強部材3A12は各々、円に沿った略U字状に形成されている。第1補強部材3A11及び第2補強部材3A12の一端部T11及びT21には、ヒンジ部3A13が設けられている。
【0025】
ヒンジ部3A13は、第2補強部材3A12の一端部T21に設けられた軸としての軸部3A14と、第1補強部材3A11の一端部T11に設けられた軸受部3A15と、から構成されている。軸部3A14は、略円柱状に設けられ、第2補強部材3A12の一端部T21の端面にその軸方向が円環状の補強体3A1の中心軸に平行になるように突設されている。軸受部3A15は、第1補強部材3A11の一端部T11の端面に凹状に形成され、軸部3A14が挿入される。これにより、第1補強部材3A11及び第2補強部材3A12は軸部3A14を中心に回転自在となり、その他端部T12、T22が軸部3A14周りに接離自在となる。
【0026】
第1補強部材3A11及び第2補強部材3A12の他端部T12及びT22は、補強体3A1の両端部に相当し、近づけると、
図4に示すように、厚さ方向に重ねられる。本実施形態では、第1補強部材3A11の他端部T12の外面上に第2補強部材3A12の他端部T22の内面が重ねられている。以下、第1補強部材3A11及び第2補強部材3A12の他端部T12及びT22が厚さ方向に重ねられて円環状の励磁コア3Aを形成した状態を「クランプ」又は「閉」といい、第1補強部材3A11及び第2補強部材3A12の他端部T12及びT22が離れた状態を「非クランプ」又は「開」という。
【0027】
第2補強部材3A12にはその中間に段差部3A17が設けられている。そして、第2補強部材3A12の段差部3A17よりも他端部T22側は、第1補強部材3A11及び第2補強部材3A12の段差部3A17よりも一端部T21に対して円環状の外側に突出して設けられている。即ち、第1補強部材3A11と、第2補強部材3A12の段差部3A17よりも一端部T21側と、は同じ径の円に沿って設けられている。一方、第2補強部材3A12の段差部3A17の他端部T22側は、第1補強部材3A11や第2補強部材3A12の段差部3A17よりも一端部T21側に対して大きい径の円に沿って設けられている。
【0028】
本実施形態では、第2補強部材3A12の段差部3A17の他端部T22側の内面と、第1補強部材3A11の外面及び第2補強部材3A12の段差部3A17よりも一端部T21側の外面と、が同じ径の円に沿うように設けられている。そして、この段差部3A17には、環状の中心周りに沿って貫通する貫通孔3A16が設けられている。貫通孔3A16は、補強体3A1の幅方向に沿って長尺の長方形状に設けられている。
【0029】
帯状磁性体3A2は、軟磁性材料から構成され、例えばその厚さが100μm以下の薄帯形状(リボン形状)であり、柔軟性がある。帯状磁性体3A2は、補強体3A1の両端部間に亘って設けられる。帯状磁性体3A2は、貫通孔3A16を通って段差部3A17よりも他端部T22側の第2補強部材3A12の内面上、段差部3A17よりも一端部T21側の第2補強部材3A12及び第1補強部材3A11の外面上に這わせる、或いは、貼り付けて設けられている。
【0030】
詳しく説明すると、帯状磁性体3A2は、貫通孔3A16に通され、その一端部T31が第1補強部材3A11の他端部T12の外面上に設けられ、その他端部T32が第2補強部材3A12の他端部T22の内面上に設けられている。これにより、
図4に示すように、補強体3A1の両端部(即ち、第1補強部材3A11及び第2補強部材3A12の他端部T12及びT22)が重ねられると、帯状磁性体3A2の両端も厚さ方向に重ねられて接触する。
【0031】
以上の励磁コア3Aによれば、軸部3A14を中心として補強体3A1を開閉自在とすることにより帯状磁性体3A2の両端部T31、T32を接離自在にすることができる。
【0032】
次に、上記軸部3A14の位置について詳しく説明する。軸部3A14は、
図5に示すように、帯状磁性体3A2の両端部が重ねられた状態で、両端部と円環状の帯状磁性体3A2の中心O
1を通る直線L
1上からずれた位置に設けられている。
【0033】
本実施形態では、軸部3A14は、補強体3A1が形成する円上であって、直線L1上の位置Aよりも第2補強部材3A12の他端部T22側、かつ、段差部3A17よりも第2補強部材3A12の他端部T22から離れた側に設けられている。このため、第2補強部材3A12の一端部T21から他端部T22までの長さは、第1補強部材3A11の一端部T11から他端部T12までの長さよりも短くなっている。
【0034】
内側集磁体5は、
図1に示すように、2分割された第1集磁器としての第1内側集磁器51及び第2集磁器としての第2内側集磁器52から構成されている。第1内側集磁器51は、第1補強部材3A11の内側に配置され、第2内側集磁器52は、第2補強部材3A12の内側に配置される。第1内側集磁器51及び第2内側集磁器52は帯板状に設けられ、長手方向の両端部が厚さ方向に相対するように略U字状に形成されている。内側集磁体5は、第1内側集磁器51及び第2内側集磁器52の両端部同士が接触して円環状に形成されている。
【0035】
外側集磁体6は、2分割された第1集磁器としての第1外側集磁器61及び第2集磁器としての第2外側集磁器62から構成されている。第1外側集磁器61は、第1補強部材3A11の外側に配置され、第2外側集磁器62は、第2補強部材3A12の外側に配置される。第1外側集磁器61及び第2外側集磁器62は帯板状に設けられ、長手方向の両端部が相対するように略U字状に形成されている。外側集磁体6は、第1外側集磁器61及び第2外側集磁器62の両端部同士が接触して円形の環状に形成されている。
【0036】
また、上述した第1補強部材3A11、第1補強部材3A11上の帯状磁性体3A2、第1内側集磁器51及び第1外側集磁器61が左コア部20Lを構成し、第2補強部材3A12、第2補強部材3A12上の帯状磁性体3A2、第2内側集磁器52及び第2外側集磁器62が右コア部20Rを構成している。
【0037】
収容ケース7は、
図29~
図31に示す、後述する第3実施形態と同等のものである。同図に示すように、収容ケース7は、別部品で構成された第1ケース部71と、第2ケース部72と、から構成されている。第1ケース部71及び第2ケース部72は各々、四角筒状に形成されると共に、その筒長さ方向が円に沿った略U字状に形成されている。この第1ケース部71内に上記第1補強部材3A11が収容されて固定され、第2ケース部72内に上記第2補強部材3A12が収容されて固定される。
【0038】
以上の構成によれば、
図6に示すように、補強体3A1の厚さ方向に重ねられている両端部T12、T22を離すように軸部3A14を中心に第1補強部材3A11及び第2補強部材3A12を回転する。これにより、補強体3A1の両端部T12、T22及び当該補強体3A1上に設けられた帯状磁性体3A2の両端部T31、T32が離れて、非クランプ状態となる。この時、第1内側集磁器51及び第2内側集磁器52、第1外側集磁器61及び第2外側集磁器62は、その両端が上記補強体3A1の動きを許容するようにその両端が互いに離れる。その後、離れた補強体3A1の両端部T12、T22間の隙間から被測定対象物9を通した後、補強体3A1の両端部T12、T22を近づけるように軸部3A14を中心に第1補強部材3A11及び第2補強部材3A12を回転すると、
図3~
図5に示すように、補強体3A1の両端部T12、T22及び帯状磁性体3A2の両端部T31、T32が厚さ方向に重ねられて、クランプ状態となる。
【0039】
上述した第1実施形態によれば、帯状磁性体3A2の両端部T31、T32が厚さ方向に重ねられて接触している。これにより、帯状磁性体3A2の開閉動作に対し、十分な接触面積を保つことができるため、クランプ型の励磁コア3Aとして薄帯状磁性体3A2を採用することができる。また、帯状磁性体3A2が接触する箇所が1箇所であるため、1箇所だけの接触を良好にすればよく、センサ性能を容易に維持することができる。
【0040】
また、第1実施形態によれば、帯状磁性体3A2は、両端部T12、T22が厚さ方向に重ねて接触して円環状に形成されると共に、両端部T12、T22が接離自在な補強体3A1上に設けられている。これにより、柔軟性のある帯状磁性体3A2であっても、形状を維持することができるため、励磁コア3Aの特性に影響を及ぼすことなく、機械的強度を図ることができる。
【0041】
また、第1実施形態によれば、軸部3A14が、帯状磁性体3A2の両端部T31、T32が重ねられた状態で、当該両端部T31、T32と帯状磁性体3A2の中心O1とを通る直線L1からずれた位置に設けられている。これにより、補強体3A1の両端部T12、T22を近づけてクランプする際に、帯状磁性体3A2の両端部T31、T32同士が擦れるのを低減できる。
【0042】
詳しく説明すると、直線L
1を通る位置A(
図5)に軸部3A14を設けると、補強体3A1は、位置Aを中心に回転するため、第1、第2補強部材3A11、3A12の他端部T12、T22が擦れるようにして近づく。このため、帯状磁性体3A2の両端部(接触面)が摩耗し表面状態が変化する。結果、測定値がばらつき、測定値の再現性が低下したり、センサ特性が低下する恐れがあった。また、センサヘッド2をクランプする際に、上記摩擦力を上回る必要があり、センサヘッド2をクランプする際の操作性が低下する恐れがあった。
【0043】
上述した第1実施形態によれば、第1、第2補強部材3A11、3A12の他端部T12、T22が擦れて近づくのを抑制することができ、測定値のばらつき、測定値の再現性の低下、操作性の低下を抑制することができる。
【0044】
また、第1実施形態によれば、帯状磁性体3A2は、貫通孔3A16に通され、その一端部T31が第1補強部材3A11の他端部T12(=補強体3A1の一端部)の外面上に、他端部T32が第2補強部材3A12の他端部T22(=補強体3A1の他端部)の内面上にそれぞれ設けられている。これにより、補強体3A1に貫通孔3A16を設けるだけで、簡単に帯状磁性体3A2の両端部が厚さ方向に重なるように、帯状磁性体3A2を支持することができる。
【0045】
また、第1実施形態によれば、補強体3A1は、段差部3A17が設けられている。また、第2補強部材3A12の段差部3A17よりも他端部T22側が、第1補強部材3A11及び第2補強部材3A12の段差部3A17よりも一端部T21側に対して環状の外側に突出するように設けられている。また、段差部3A17に、貫通孔3A16が形成されている。これにより、帯状磁性体3A2を貫通孔3A16に通しても変形するのを防ぐことができ、励磁コア3Aの特性の向上を図ることできる。
【0046】
また、第2補強部材3A12の段差部3A17の他端部T22側の内面と、第1補強部材3A11の外面及び第2補強部材3A12の段差部3A17よりも一端部T21側の外面と、が同じ径の円に沿うように設けられている。これにより、貫通孔3A16を通しても帯状磁性体3A2の形状を円形に保つことができる。
【0047】
また、第1実施形態によれば、補強体3A1が、別部品で構成された第1補強部材3A11及び第2補強部材3A12から構成され、第1補強部材3A11及び第2補強部材3A12の一端部T11及びT21には、ヒンジ部3A13が設けられ、軸部3A14を中心に開閉自在に取り付けられ、第1補強部材3A11及び第2補強部材3A12の他端部T12及びT22が、厚さ方向に重ねられている。これにより、簡単な構成で帯状磁性体3A2を保持して、その両端部を開閉する構成にできる。
【0048】
なお、上述した第1実施形態によれば、軸部3A14は、補強体3A1が形成する円上に設けられていたが、これに限ったものではない。軸部3A14としては、直線L
1からずれた位置に設けられていればよく、
図7及び
図8に示すように、軸部3A14を補強体3A1が形成する円の外側に設けてもよい。この場合、第1補強部材3A11、第2補強部材3A12の一端部T11、T21に円環の外側に突出する突出部3A15、3A16を設け、この突出部3A15、3A16にヒンジ部3A13を設ければよい。また、第1補強部材3A11、第2補強部材3A12にヒンジ部3A13を設けずに、第1補強部材3A11、第2補強部材3A12が収容される収容ケース7に設けたヒンジ部を補強体3A1が形成する円の外側に設けるようにしてもよい。
【0049】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の非接触型の電流センサを図面に基づいて説明する。第1実施形態と第2実施形態とで異なる点は励磁コア3Bの構成であり、電流検出回路10は第1実施形態と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0050】
励磁コア3Bは、
図9に示すように、補強体3B1と、帯状磁性体3B2と、を備えている。第1実施形態の補強体3A1と、第2実施形態の補強体3B1と、で異なる点は、軸部3B14(ヒンジ部3B13)の位置である。第1実施形態では、軸部3A14は、
図5に示すように、帯状磁性体3A2の両端部T31、T32が重ねられた状態で、両端部T31、T32と円環状の帯状磁性体3A2の中心O
1を通る直線L
1上からずれた位置に設けられている。これに対して、第2実施形態において、ヒンジ部3B13(軸部3B14、軸受部3B15)は、
図10に示すように、帯状磁性体3B2の両端部T31、T32が重ねられた状態で、両端部T31、T32と円環状の帯状磁性体3B2の中心O
1を通る直線L
1上に設けられている。
【0051】
また、第1実施形態の補強体3A1と、第2実施形態の補強体3B1と、で異なる点は、補強体3B1の両端部T12、T22の形状である。第1実施形態では、補強体3A1の両端部T12、T22は、円に沿って設けられていたが、第2実施形態では、補強体3B1の両端部T12、T22は、
図10に示すように、両端部T12、T22間にある中間部により形成された円から外れるにように形成されている。
【0052】
本実施形態では、補強体3B1の両端部T12、T22のうち一方(他端部T12)は、円より内側に曲げられ、直線上に沿うように形成されている。また、他方(他端部T22)は、円より外側に曲げられ、直線上に沿うように形成されている。帯状磁性体2B2は、この補強体3B1上に配置されている。
【0053】
上述した第2実施形態によれば、補強体3B1の両端部T12、T22は、
図10に示すように、両端部T12、T22間にある中間部により形成された円から外れるにように形成されている。このように構成しても、補強体3B1の両端部T12、T22を近づけてクランプする際に、帯状磁性体3B2の両端部T31、T32同士が擦れるのを低減できる。
【0054】
なお、第2実施形態によれば、補強体3B1の軸部3B14は、直線L
1上に設けられていたが、これに限ったものではない。補強体3B1の軸部3B14は、
図11に示すように、第1実施形態と同様に、直線L
1上からずれた位置であってもよいし、補強体3B1が形成する円の外側に設けてもよい。
【0055】
また、第2実施形態によれば、補強体3B1の端部T12を補強体3B1が形成する円より内側に曲げ、端部T22を円より外側に曲げ、これにより、補強体3B1の両端部T12、T22が、円から外れるようにしていたが、これに限ったものではない。補強体3B1の両端部T12、T22は、円から外れ、かつ、互いに厚さ方向に重なる形状であればよく、例えば、
図12、
図13に示す補強体3C1、3D1のように形成してもよい。
図12に示す補強体3C1は、その両端部T12、T22が双方とも円より内側に曲げられている。
図12に示す補強体3D1は、その両端部T12、T22が双方とも円より外側に曲げられている。
【0056】
ところで、上述した第2実施形態において、
図14及び
図15に示すように、ヒンジ部3B13を挟んだ第1補強部材3B11及び第2補強部材3B12の外面上の2点をA、Bとし、内側面上の2点をA´、B´とする。そして、クランプ時の2点A、B間の距離をL
CAB、2点A´、B´間の距離をL
CA´B´とし(
図14参照)、非クランプ時の2点A、B間の距離をL
OAB、2点A´、B´間の距離をL
OA´B´とする(
図15参照)。これら距離には下記のような不等式(1)、(2)が成り立つ。
L
CAB>L
OAB …(1)
L
CA´B´<L
OA´B´ …(2)
【0057】
即ち、ヒンジ部3B13の外面上に帯状磁性体3B2が設け、軸部3B14を、補強体3B1の内面と外面との間に設けることにより、上記式(1)、(2)が成り立つ。これにより、
図17に示すように、非クランプ時において、帯状磁性体3B2には、補強体3B1に沿えない変形(たわみ)Dが発生する。しかしながら、
図16に示すように、クランプ時において、帯状磁性体3B2には、補強体3B1に沿って配置され、変形(たわみ)Dが発生することがない。これにより、クランプ時に帯状磁性体3B2の形状を対称にすることができる。このため、被測定対象物9の帯状磁性体3B2の中心からの位置ズレや、外部磁界の影響に強くなり、センサ性能を向上させることができる。なお、上述した
図14~
図17及びこれから説明する
図18~
図23については、説明を簡単にするために段差部3B17を省略している。
【0058】
また、上述した第1、第2実施形態によれば、補強体3A1、3B1に段差部3A17、3B17を設けていたが、これに限ったものではない。段差部3A17、3B17は必須ではなく、補強体3A1、3B1に径方向に沿った貫通孔を設けてもよい。
【0059】
また、上述した第1、第2実施形態によれば、ヒンジ部3A13、3B13の外面上に帯状磁性体3A2、3A2が設けられていたが、
図18及び
図19に示すように、ヒンジ部3B13の内面上に帯状磁性体3B2が設けられていてもよい。この場合、貫通孔は、第1補強部材3B11に設けられている。
【0060】
また、上述した第1、第2実施形態によれば、補強体3A1、3A2の内面と外面との間に軸部3A14、3B14が設けられていたが、これに限ったものではない。
図20及び
図21に示すように、補強体3B1が形成する円環よりも外側に軸部3B14を設けてもよい。
【0061】
また、
図22及び
図23に示すように、補強体3B1が形成する円環よりも内側に軸部3B14を設けてもよい。なお、この場合、距離L
CAB、L
CA´B´、L
OAB、L
OA´B´には下記のような不等式(3)、(4)が成り立つ。
L
CAB>L
OAB …(3)
L
CA´B´>L
OA´B´ …(4)
【0062】
この場合、帯状磁性体3B2を第1補強部材3B11及び第2補強部材3B12の一端部T11及びT21の外面に設けても、内面に設けても、非クランプ時に変形Dが発生し、クランプ時に変形Dが発生することがない。
【0063】
また、上述した第1、第2実施形態では、励磁コア3A、3Bが1つの例について説明したが、これに限ったものではない。励磁コア3A、3Bを複数、帯幅方向に並べ、複数の励磁コア3A、3Bの中心に被測定対象物9を通すようにしてもよい。この場合は、検波回路12は、各励磁コア3A、3Bに巻回された励磁コイル4の励磁電圧もしくは励磁電流を加算して、LPF回路13を通す。
【0064】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態における非接触型の電流センサの一実施形態を図面に基づいて説明する。電流センサ1は、センサヘッド2と、電流検出回路10と、を備えている。第1実施形態と第3実施形態とで異なる点はセンサヘッド2の構成であり、電流検出回路10は第1実施形態と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0065】
センサヘッド2は、
図24などに示すように、円環状の励磁コア3Eと、励磁コア3Eに巻回された励磁コイル4と、励磁コア3Eの内側及び外側に設けられた内側集磁体5及び外側集磁体6と、これら励磁コア3E、励磁コイル4、内側集磁体5及び外側集磁体6を収容する収容ケース7(
図29~
図31)と、収容ケース7に巻回された帰還コイル8と、を備えている。励磁コイル4、内側磁性体5、外側磁性体6及び帰還コイル8は、第1実施形態とほぼ同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0066】
次に、上記励磁コア3Eの構成について
図25及び
図26を参照して以下説明する。励磁コア3Eは、補強体3E1と、第1帯状磁性体3E2と、第2帯状磁性体3E3と、を備えている。補強体3E1は、2つに分割可能な非磁性材料(例えばプラスチック)からなるU字状の第1補強部材3E11及び第2補強部材3E12から構成されている。第1補強部材3E11及び第2補強部材3E12は、両端部同士が重ねられて円環状に形成されている。第1補強部材3E11及び第2補強部材3E12は各々、半円に沿ったU字状に形成されている。
【0067】
第1補強部材3E11及び第2補強部材3E12は帯板状に設けられ、長手方向の両端部が厚さ方向に相対するようにU字状に形成されている。第1補強部材3E11及び第2補強部材3E12は、同じ大きさ、同じ形状に設けられ、長手方向の中心に、後述する第1帯状磁性体3E2及び第2帯状磁性体3E3が通される貫通孔3E13が設けられている。そして、
図26に示すように、第1補強部材3E11の一端部T11の外面及び第2補強部材3E12の他端部T22の内面が対向して重ねられ、第1補強部材3E11の他端部T12の内面及び第2補強部材3E12の一端部T21の外面が対向して重ねられ、環状の補強体3E1を形成している。
【0068】
2つに分割された第1帯状磁性体3E2及び第2帯状磁性体3E3は、第1、第2実施形態と同様に、例えばその厚さが100μm以下の薄帯形状であり、柔軟性がある。
図26に示すように、第1帯状磁性体3E2は、第1補強部材3E11の貫通孔3E13を通って第1補強部材3E11の一端部T11の外面上及び第1補強部材3E11の他端部T12の内面上に這わされ、或いは、貼り付けて設けられている。第2帯状磁性体3E3は、第2補強部材3E12の貫通孔3E13を通って第2補強部材3E12の一端部T21の外面上及び第2補強部材3E11の他端部T22の内面上に這わされ、或いは、貼り付けて設けられている。
【0069】
第1帯状磁性体3E2は、第1補強部材3E11の両端部T11、T12に亘って設けられている。第2帯状磁性体3E3も、第2補強部材3E12両端部T21、T22に亘って設けられている。これにより、
図27に示すように、第1補強部材3E11及び第1補強部材3B12の両端部T11、T12、T21、T22同士が重ねられると、第1帯状磁性体3B2及び第2帯状磁性体3B3の両端部T11、T12、T21、T22同士が厚さ方向に重ねられて接触している。
【0070】
これら励磁コア3Eは、
図29~
図31に示す収容ケース7内に収容されている。収容ケース7は、同図に示すように、別部品で構成された第1ケース部71と、第2ケース部72と、から構成されている。第1ケース部71及び第2ケース部72は各々、四角筒状に形成されると共に、その筒長さ方向が円に沿った略U字状に形成されている。この第1ケース部71内に第1補強部材3E11が収容されて固定され、第2ケース部72内に第2補強部材3E12が収容されて固定される。
【0071】
第1ケース部71及び第2ケース部72の一端部T41及びT51には、ヒンジ部73が設けられている。ヒンジ部73は、軸部73Aが励磁コア3Eの中心軸に平行に設けられている。これにより、第1ケース部71及び第2ケース部72は、ヒンジ部73の軸部73Aを中心に回転自在となり、その他端部T42、T52がヒンジ部73周りに接離自在となる。このヒンジ部73の軸部73Aは、
図27及び
図28に示すように、収容ケース7に収容された第1帯状磁性体3E2及び第2帯状磁性体3E3の両端部同士が重ねられた状態で、両端部と円環状の第1帯状磁性体3E2及び第2帯状磁性体3E3の中心O
1を通る直線L
1上からずれた位置に設けられている。
【0072】
本実施形態では、軸部73Aは、補強体3E1が形成する円上であって、直線L
1上の位置Aよりも第2補強部材3E12の他端部T22側に設けられている。以上の構成によれば、
図27及び
図28に示すように、第1補強部材3E11及び第2補強部材3E12は、ヒンジ部73の軸部73Aを中心に開閉自在となる。
【0073】
上述した構成によれば、第1ケース部71及び第2ケース部72の他端部T42、T52を離すようにヒンジ部73を中心に第1ケース部71及び第2ケース部72を回転させる。これにより、収容ケース7に収容された第1補強部材3E11及び第2補強部材3E12が、
図28に示すように、軸部73Aを中心に回転して、その両端部同士が離れる。これら第1補強部材3E11及び第2補強部材3E12上に設けられた第1帯状磁性体3E2及び第2帯状磁性体3E3の両端部同士も同様に離れて、非クランプ状態となる。その後、離れた第1補強部材3E11及び第2補強部材3E12の他端部T12、T22の隙間から被測定対象物9を通す。
【0074】
次に、第1ケース部71及び第2ケース部72の他端部T42、T52を近づけるように、ヒンジ部73を中心に第1ケース部71及び第2ケース部72を回転させる。これにより、収容ケース7に収容された第1補強部材3E11及び第2補強部材3E12が、
図27に示すように、軸部73Aを中心に回転して、その両端部同士が近づいて厚さ方向に重ねられる。これにより、これら第1補強部材3E11及び第2補強部材3E12上に設けられた第1帯状磁性体3E2及び第2帯状磁性体3E3の両端部同士も厚さ方向に重ねられ、クランプ状態となる。
【0075】
なお、
図30に示すように、第1ケース部71及び第2ケース部72の他端部T42、T52からは各々、励磁コア3Eの両端部が突出している。そして、第1ケース部71及び第2ケース部72の他端部T42、T52を近づけると、励磁コア3Eの両端部が厚さ方向に重ねられると共に、
図31に示すように、第1ケース部71及び第2ケース部72の他端部T42、T52の端面同士が当接する。
【0076】
上述した第3実施形態によれば、第1帯状磁性体3E2及び第2帯状磁性体3E3の両端部同士が厚さ方向に重ねられて接触している。これにより、第1帯状磁性体3E2及び第2帯状磁性体3E3の開閉動作に対し、十分な接触面積を保つことができるため、分割クランプ型の励磁コア3Eとして薄帯状磁性体を採用することができる。
【0077】
上述した第3実施形態によれば、第1帯状磁性体3E2が、第1補強部材3E11上に設けられ、第2帯状磁性体3E3が、第2補強部材3E12上に設けられている。これにより、柔軟性のある第1帯状磁性体3E2及び第2帯状磁性体3E3であっても、形状を維持することができるため、励磁コア3Eの特性に影響を及ぼすことなく、機械的強度を図ることができる。
【0078】
上述した第3実施形態によれば、第1実施形態と同様に、第1帯状磁性体3E2、第2帯状磁性体3E3を支持する第1補強部材3E11、第2補強部材3E12が、軸部73Aを中心に開閉自在に設けられている。また、軸部73Aが、第1帯状磁性体3E2、第2帯状磁性体3E3の両端部及び励磁コア3Eの円環の中心O1を通る直線L1からずれた位置に設けられている。これにより、クランプする際に、第1帯状磁性体3E2、第2帯状磁性体3E3の両端部同士が擦れるのを低減できる。
【0079】
なお、上述した第3実施形態によれば、軸部73Aは、励磁コア3Eが形成する円上に設けられていたが、これに限ったものではない。軸部73Aとしては、直線L
1からずれた位置に設けられていればよく、
図32に示すように、軸部73Aを励磁コア3Aが形成する円の外側に設けてもよい。
【0080】
この場合、
図33~
図35に示すように、第1ケース部71、第2ケース部72の一端部T41、T51に円環の外側に突出する突出部711、712を設け、この突出部711、712にヒンジ部73を設ければよい。
【0081】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態の非接触型の電流センサを図面に基づいて説明する。第3実施形態と第4実施形態とで異なる点は励磁コア3Fの構成であり、電流検出回路10は第1実施形態と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0082】
センサヘッド2は、
図36に示すように、補強体3F1と、第1帯状磁性体、第2帯状磁性体(
図36からは省略)と、を備えている。第3実施形態と、第4実施形態と、で異なる点は、軸部73A(ヒンジ部73)の位置である。第3実施形態では、軸部73Aは、
図27に示すように、直線L
1上からずれた位置に設けられている。これに対して、第2実施形態において、軸部73Aは、
図36に示すように、第1、第2帯状磁性体が形成する円上であって、直線L
1上に設けられている。
【0083】
また、第3実施形態の第1補強部材3E11及び第2補強部材3E12と、第4実施形態の第1補強部材3F11及び第2補強部材3F12と、で異なる点は、第1補強部材3F11及び第2補強部材3F12の両端部T11、T12、T21、T22の形状である。第3実施形態では、第1補強部材3F11及び第2補強部材3F12の両端部T11、T12、T21、T22は、円に沿って設けられていたが、第4実施形態では、第1補強部材3F11及び第2補強部材3F12の両端部T11、T12、T21、T22は、
図36に示すように、両端部間にある中間部により形成された円から外れるにように形成されている。
【0084】
本実施形態では、第1補強部材3F11の他端部T12及び第2補強部材3F12の一端部T21は、円より内側に曲げられ、直線上に沿うように形成されている。また、第1補強部材3F11の一端部T11及び第2補強部材3F12の他端部T22は、円より外側に曲げられ、直線上に沿うように形成されている。図示しない第1、第2帯状磁性体は各々、この第1補強部材3F11、第2補強部材3F12上に配置されている。
【0085】
上述した第4実施形態によれば、第1、第2補強部材3F11、3F12の両端部は、
図36に示すように、両端部間にある中間部により形成された円から外れるにように形成されている。このように構成しても、第1、第2補強部材3F11、3F12の両端部を近づけてクランプする際に、これら第1、第2補強部材3F11、3F12上の第1、第2帯状磁性体の両端部同士が擦れるのを低減できる。
【0086】
なお、第4実施形態によれば、軸部73Bは、直線L
1上に設けられていたが、これに限ったものではない。軸部73Bは、
図37に示すように、第3実施形態と同様に、直線L
1上からずれた位置であってもよい。
【0087】
(変形例)
なお、上述した第1~第4実施形態では、励磁コア3A~3Fに
図38及び
図39に示すクッション材(弾性部材)3A31、3A41を設けていなかったが、クッション材3A31、3A41を設けるようにしてもよい。
図38及び
図39は、第1実施形態の励磁コア3Aにクッション材3A31、3A41を設けた実施形態を示す。同図に示すように、第1補強部材3A11の他端部T12は、その外面が他端部T12以外の部分の外面よりも円環上内側になるように、他端部T12以外の部分よりも厚さが薄く設けられている。
【0088】
第2補強部材3A12の他端部T22は、その内面が他端部T22以外の部分の内面よりも円環上外側になるように、他端部T22以外の部分よりも厚さが薄く設けられている。そして、薄く設けられた他端部T12、T22とこの他端部T12、T22上に設けられる帯状磁性体3A2との間にそれぞれクッション材3A31、3A41が設けられている。なお、クッション材3A31は、第1補強部材3A11の端部T12上に設けた状態で、その外面が第1補強部材3A11の端部T12以外の外面より円の外側に突出するように設けられている。クッション材3A41は、第2補強部材3A12の端部T22上に設けた状態で、その内面が第1補強部材3A11の端部T22以外の内面より円の内側に突出するように設けられている。
【0089】
クッション材3A31、3A41は、シリコンゴム、ウレタンや発泡材などの弾性部材から構成され、
図39に示すように帯状磁性体3A2の両端部を重ねると、当該両端部を近づける方向に付勢する。これにより、帯状磁性体3A2の両端部の接触が良好となり、より特性の向上を図ることができる。
【0090】
このクッション材3A31、3A41を設ける構成は、第2~第4実施形態にも適用することができる。なお、第3、第4実施形態においては、第1補強部材3E11、3F11の両端部T11、T12、第2補強部材3E12、3F12の両端部T11、T12にそれぞれクッション材を設けると、第1帯状磁性体3E2、第2帯状磁性体3E3の両端部同士の接触を良好にすることができる。
【0091】
また、
図38及び
図39は、第1補強部材3A11の他端部T12、第2補強部材3A12の他端部T22の双方にクッション材3A31、3A41を設けていたが、これに限ったものではない。
図40及び
図41に示すように、第1補強部材3A11の他端部T12、第2補強部材3A12の他端部T22の何れか一方にクッション材3A31、3A41を設ける構成としても同様の効果を得ることができる。なお、
図40及び
図41は、第2補強部材3A12の他端部T22にクッション材3A41を設けた実施例を示す図である。
【0092】
図40及び
図41に示す構成は、第2~第4実施形態にも適用することができる。なお、第3、第4実施形態においては、第1補強部材3E11、3F11の両端部T11、T12の一方、第2補強部材3E12、3F12の両端部T11、T12の一方にそれぞれクッション材を設けると、第1帯状磁性体3E2、第2帯状磁性体3E3の両端部同士の接触を良好にすることができる。
【0093】
また、
図38~
図39は、クッション材3A31、3A41を第1補強部材3A11、第2補強部材3A12上に設けていたが、これに限ったものではない。クッション材3A31、3A41としては、帯状磁性体3A2の両端部を互いに近づける方向に付勢できるように設ければよく、例えば、第1補強部材3A11の他端部T11、第2補強部材3A12の他端部T12と収容ケース7との間に設けてもよい。
【0094】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0095】
1 電流センサ
2 センサヘッド
3A1~3F1 補強体
3A2、3B2 帯状磁性体
3A41 クッション材(弾性部材)
3A42 クッション材(弾性部材)
3A14、3B14 軸部(軸)
3E11、3F11 第1補強部材
3E12、3F12 第1補強部材
3E2 第1帯状磁性体
3E3 第2帯状磁性体
10 電流検出回路(電流検出手段)
73A 軸部(軸)
O1 中心
L1 直線