(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-09
(45)【発行日】2022-03-17
(54)【発明の名称】化粧料の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/92 20060101AFI20220310BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20220310BHJP
A61Q 1/02 20060101ALI20220310BHJP
A61Q 1/06 20060101ALI20220310BHJP
A61Q 1/08 20060101ALI20220310BHJP
A61Q 1/10 20060101ALI20220310BHJP
【FI】
A61K8/92
A61K8/02
A61Q1/02
A61Q1/06
A61Q1/08
A61Q1/10
(21)【出願番号】P 2018059094
(22)【出願日】2018-03-26
【審査請求日】2020-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】592042750
【氏名又は名称】株式会社アルビオン
(74)【代理人】
【識別番号】100122541
【氏名又は名称】小野 友彰
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 将哉
(72)【発明者】
【氏名】深沢 良太郎
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-216678(JP,A)
【文献】特開平01-146812(JP,A)
【文献】特開平05-201832(JP,A)
【文献】特開2012-148990(JP,A)
【文献】特開2018-024605(JP,A)
【文献】特開2017-086478(JP,A)
【文献】特開2019-108309(JP,A)
【文献】特開2019-108308(JP,A)
【文献】特開2019-038769(JP,A)
【文献】特開2019-038768(JP,A)
【文献】特開2018-168233(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
A45D 33/00-40/30
B05D 1/00-7/26
B41M 1/00-3/18、7/00-9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動状態とされた油性化粧料を容器に充填する充填工程と、
充填済み化粧料を再加熱して前記充填済み化粧料の表面を平滑化する再加熱工程と、
前記充填済み化粧料を固化させる固化工程と、
加熱により溶融状態とされた油性化粧料である加飾用化粧料を、
前記充填済み化粧料の表面に対して液滴状態で連続的に吐出し、前記充填済み化粧料の表面に連続的に着弾させることにより、前記充填済み化粧料の表面から立体的に突出する凸条の模様を形成する模様形成工程
と、を有
しており、
前記模様形成工程では、連続的に吐出される液滴状態の前記加飾用化粧料同士が部分的に重なって前記充填済み化粧料の表面に着弾することによって前記凸条の模様が形成されること
を特徴とする化粧料の製造方法。
【請求項2】
前記模様形成工程は、前記加飾用化粧料を連続的に定量吐出することを特徴とする請求項1に記載の化粧料の製造方法。
【請求項3】
前記加飾用化粧料は、前記充填済み化粧料とは異なる組成であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の化粧料の製造方法。
【請求項4】
前記凸条の幅は、0.7mm以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうち、いずれか1に記載の化粧料の製造方法。
【請求項5】
前記凸条の幅は、0.3mm以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうち、いずれか1に記載の化粧料の製造方法。
【請求項6】
前記模様形成工程は、吐出装置の1つのノズルから1秒間あたり10mg~20mgの吐出量で、前記加飾用化粧料を吐出することを特徴とする請求項1乃至請求項5のうち、いずれか1に記載の化粧料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料の製造方法及び化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
ファンデーション、チーク、口紅などの化粧料の表面に対して、図形や文字等の模様を形成する方法として、モールドを用いた型抜きによって模様を形成したり(特許文献1、特許文献2参照)、レーザー光により焼損させて模様を形成したり(特許文献3参照)、静電スクリーン印刷法により印刷用紛体を化粧料表面に転写させて模様を形成することが行われている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-326908号公報
【文献】特開2008-174474号公報
【文献】特開2000-247832号公報
【文献】特開2005-144935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1又は特許文献2に開示されるようなモールドを用いた型抜きでは、細い線による文字や図形等の模様を形成することが困難であり、特に1mm以下の線幅の文字や図形等の模様を型抜きすることは極めて難しい。また、スティック状の口紅のように略円柱形状の化粧料の曲面部分に対して凹凸模様を施すには、単一のモールドでは困難であり、分割可能なモールドを用いたり、特許文献2のように単一の弾性モールドを展開させる機構を設けたりするなど、製造装置や製造方法が複雑化する。更に、模様ごとに異なるモールドを作製しなければならない。
【0005】
また、特許文献3に開示されるようなレーザー光による模様の形成では、化粧料の表面に対して凸状の模様を形成することや、化粧料と異なる色彩の模様を形成することができない。
【0006】
また、特許文献4に開示されるような静電スクリーン印刷法による模様の形成では、例えば略円柱形状の化粧料の曲面部分に対して模様を形成すると、曲面形状に応じて模様が伸びて印刷されてしまい、所望の模様を形成することが困難である。
【0007】
そこで、本発明の目的とするところは、充填済み化粧料表面から突出する、微細な文字や図形を含む模様を鮮明かつ容易に形成する、化粧料の製造方法及び化粧料を提供することにあり、特に化粧料への応用を考慮されていなかった液体定量吐出手段(ディスペンサー)を適用しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の化粧料の製造方法は、加飾用化粧料を、充填済み化粧料の表面に対して液滴状態で吐出し、前記充填済み化粧料の表面から突出する模様を形成する模様形成工程を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の化粧料の製造方法において、前記模様形成工程は、前記加飾用化粧料を連続的に定量吐出することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の化粧料の製造方法において、前記模様形成工程は、前記充填済み化粧料の表面に対して、液滴状態で吐出された前記加飾用化粧料を連続的に着弾させることにより凸条の模様を形成することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の化粧料の製造方法において、前記加飾用化粧料は、前記充填済み化粧料とは異なる組成であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の化粧料の製造方法において、前記加飾用化粧料は、加熱により溶融状態とされた油性化粧料であり、前記充填済み化粧料は油性固形化粧料であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の化粧料の製造方法において、前記凸条の幅は、0.7mm以下であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の化粧料の製造方法において、前記凸条の幅は、0.3mm以下であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の化粧料は、加飾用化粧料が液滴状態で吐出されてなる、充填済み化粧料の表面から突出する模様を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、既存の製造装置及び工程によって所望の器等に充填された後の充填済み化粧料の表面に対して、その表面が平滑面、曲面、凹凸面であるかを問わず、充填済み化粧料の表面から突出する微細な文字や図形を含む模様を鮮明かつ容易に形成でき、既存設備の大きな変更を伴うことなく、化粧料の高付加価値化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る化粧料を示す図であり、(a)は斜視図、(b)はA-A線における端面図、(c)はB-B部分拡大図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る模様の例を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る化粧料を示す斜視図である。
【
図4】本発明に係る化粧料の製造方法を模式的に示す図である。
【
図5】本発明に係る化粧料の製造システムを模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係る化粧料の製造方法、製造システム、及び化粧料について、図面を参照して説明する。
【0019】
本実施形態に係る化粧料の製造方法、製造システム、及び化粧料について
図1乃至
図6を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る化粧料を示す図であり、(a)は斜視図、(b)はA-A線における端面図、(c)はB-B部分拡大図、
図2は、本発明の実施形態に係る模様の例を示す図、
図3は、本発明の実施形態に係る化粧料を示す斜視図、
図4は、本発明に係る化粧料の製造方法を模式的に示す図、
図5は、本発明に係る化粧料の製造システムを模式的に示す斜視図、
図6は、油性化粧料の吐出状態を示す模式図である。
【0020】
図1(a)に示すように、化粧料1は、一例として、円形に形成された底面と、当該底面から立設される側面とを有して、上面が開口した皿状の容器3に収容された化粧料である。なお、本発明において、容器3の形状は特に限定されるものではない。本実施形態に係る化粧料1は、容器3に充填されて固化されている油性固形化粧料2(充填済み化粧料)と、後述するように、加熱により溶融状態とされた油性化粧料(加飾用化粧料)を油性固形化粧料2の表面2aに対して液滴状態で吐出して形成された模様4と、を有している。
【0021】
模様4は、油性固形化粧料2の表面2aから突出するように、凸条に形成されている。
図1においては、模様4はローマ文字「abcdefg」及び「ABCD&EFGI」を2段併記してなる例を図示している。
図1(b)及び(c)に示すように、模様4であるローマ文字「abcdefg」及び「ABCD&EFGI」は、油性固形化粧料2の表面2aから突出するように、一画ごとに凸条に形成されている。模様4は、油性固形化粧料2の表面2aから突出するように形成されていれば、文字(記号を含む。)に限定されず、
図2(a)に示すような線描き状の図形であってもよく、どのような形状の模様であってもよいことは言うまでもない。また、
図2(b)に示すように、複数の凸条を隣接させることにより、全部又は一部の線幅が太く看取されるように模様4を形成してもよい。
【0022】
本実施形態に係る充填済み化粧料である油性固形化粧料2、及び、加飾用化粧料である模様4を構成する油性化粧料は、一例としては、口紅、リップグロス、リップクリーム、コンシーラー、ファンデーション、アイカラー、チークカラー等、油性成分が含まれる化粧料であり、所定温度以上に加熱すると溶融状態となり、常温において形状を維持できる種々の油性化粧料が含まれる。また、油性固形化粧料2(充填済み化粧料)、及び、模様4を構成する油性化粧料(加飾用化粧料)は、同一の組成であってもよいし、例えば色彩や、パール剤含有の有無などにおいて異なる組成としてもよい。
【0023】
図1及び
図2においては、模様4は、油性固形化粧料2の平滑な表面2aに形成される例を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図3に示すように、スティック状の口紅のように、繰り出し容器の構成部材としての容器3に充填された、略円柱形状の油性固形化粧料1の曲面でなる表面2aに対して、模様4(
図3に示す例ではローマ文字「ABCD&EFGI」)が形成されてもよいし、その他、モールド等により成形された油性固形化粧料の凹凸面でなる表面に対して模様4が形成されてもよい。
【0024】
[充填工程・充填装置]
まず、油性固形化粧料2を形成するため、所定温度で加熱して溶解された流動状態の油性化粧料(バルク)を、脱気等の処理を経て充填装置(不図示)のホッパー(不図示)に貯留しておき、この油性化粧料を充填装置のノズル6から容器3の内側に充填する(
図4(a)参照)。なお、容器3に充填された油性化粧料に対して、滑らかな表面2aを得るために、任意に再加熱(リヒート)処理を行ってもよい。
【0025】
[固化工程・固化装置]
前記充填工程(充填装置)により充填された油性化粧料を固化させ、油性固形化粧料2とする(
図4(b)参照)。固化の方法は特に限定されず、例えば、任意の冷却手段により冷却対象物に対して強制的に冷却処理を施す冷却工程を実施したり、冷却対象物を放置して室温まで冷却する放冷工程を実施したりしてもよい。上記の固化工程により、容器3内に充填・固化された、平滑な表面2aを有する油性固形化粧料2が得られる。
【0026】
なお、上記した充填工程及び固化工程では、扁平な皿状の容器3内において平滑な表面2aを備えた油性固形化粧料2を充填する場合について説明したが、その他、缶や、ガラス瓶などのジャー容器に油性固形化粧料を充填してもよく、本発明における油性固形化粧料2はこれに限定されない。例えば、任意の凹凸面を型取り可能なモールドを用い、いわゆるホットバック等の手法により、当該モールドに対応した立体的な凹凸面が型取られた表面を備える油性固形化粧料2を容器3に充填させるようにしてもよい。また、容器3から突出する立体的形状(例えば、
図3に示すような曲面でなる表面2a)を備える油性固形化粧料2を成形するようにしてもよい。
【0027】
[模様形成工程・模様形成装置]
加熱により溶融状態とされた油性化粧料(加飾用化粧料)を、油性固形化粧料2(充填済み化粧料)の表面2aに対して液滴状態で吐出し、油性固形化粧料2の表面2aから突出する模様4を形成する(
図4(c)参照)。
【0028】
油性固形化粧料2の表面2aに対する油性化粧料の吐出は、
図5に示すように、吐出装置8と、駆動装置9と、制御装置(不図示)と、を含む製造システム7により実行することが好ましい。
【0029】
吐出装置8は、加飾用化粧料を貯留する貯留部8aを有し、貯留部8a内の加飾用化粧料を液滴状態としてノズル8bから塗布対象物に向けて飛ばすことにより、塗布対象物に非接触で加飾用化粧料を吐出する装置である。なお、液滴状態は、ノズル8bから吐出された加飾用化粧料が、微細な粒子となって、ノズル8b及び塗布対象物のいずれにも接触することなく、空間中を移動する状態である。すなわち、吐出装置8は、いわゆる非接触式ディスペンサーであることが好ましい。エアパルスやモーター駆動により液体材料を押し出す方式や、チューブをしごいてチューブ内の液体材料を送るチュービング方式等の接触式ディスペンサーでは、Z軸方向(垂直方向)の駆動制御(設定)が必須であるが、非接触式ディスペンサーによれば、Z軸方向の制御が任意となり、塗布タクトを格段に向上させることができる。なお、非接触式ディスペンサーにおいてZ軸方向の制御を行ってもよいことは言うまでもない。
【0030】
吐出装置8による加飾用化粧料の吐出の開始及び停止は、制御装置により制御される。また、吐出装置8は、貯留部8aやノズル8bにヒーター(不図示)を備えており、制御装置によってヒーターの温度管理が可能に構成されている。これにより、加飾用化粧料として油性化粧料を用いる場合、吐出直前まで溶融状態に保つことができる。
【0031】
塗布対象物である油性固形化粧料2の表面2aとノズル8bとの距離は、1.5~2.0mm程度が好適である。
【0032】
吐出装置8は、加熱により溶融状態とされた油性化粧料(加飾用化粧料)を連続的に定量吐出する。一例として、1秒間あたりの吐出量は10~20mgであることが好ましい。吐出装置8のノズル8bから液滴状態で連続的に吐出される溶融状態の油性化粧料は、塗布対象物である油性固形化粧料2の表面2aに着弾するまでの間に冷却され、表面2aへの着弾とともに次々と表面2a上に固着する。これにより、所望のデザインによる模様4を、油性固形化粧料2の表面2aに形成することができる。
【0033】
また、塗布対象物である油性固形化粧料2(充填済み化粧料)の表面2aに対して、液滴状態で吐出された油性化粧料(加飾用化粧料)を連続的に着弾させて打点することにより凸条の模様4を形成する。
図6に示すように、液滴状態で吐出された油性化粧料(加飾用化粧料)を連続的に油性固形化粧料2(充填済み化粧料)の表面2aに着弾させることにより、表面2aから突出した線状(直線及び曲線を含む)の凸条の模様4が形成される。その線幅Wは、0.7mm以下であることが好ましく、更には0.3mm以下であることが好ましい。
【0034】
図5に示すように、駆動装置9は、基台9aと、基台9aの上でY軸方向に水平駆動が可能に設けられたステージ9bと、ステージ9bを跨ぐように基台9aに固定されたアーム9cと、を備える。アーム9cには、ノズル8bをステージ9bに対して対向させた状態で、吐出装置8をX軸方向に水平駆動が可能に取り付けることができるようになっている。駆動装置9による吐出装置8及びステージ9aの駆動は、制御装置により制御される。
【0035】
駆動装置9は、吐出装置8のX軸方向への駆動、及び、ステージ9aのY軸方向への駆動のうちいずれか一方のみを実行し又は同時に実行することで、ステージ9aに載置される塗布対象物の表面のうち所望の部分に対する加飾用化粧料の吐出を可能としている。
【0036】
制御装置は、吐出装置8及び駆動装置9の動作を制御する制御手段であり、吐出圧力、吐出回数、ヒーター温度などを含む種々の設定及び制御が可能である。制御装置に対して、油性固形化粧料2の表面2aに形成する模様4に関するパターンデータを予め入力しておく。そのパターンデータに基づいて、制御装置は吐出装置8及び駆動装置9を駆動させ、パターンデータ通りの模様4を表面2aに形成する。
【0037】
一例として、
図1(a)に示すような模様4を形成する場合には、上段のローマ文字「abcdefg」のフォント・大きさ・位置、下段のローマ文字「ABCD&EFGI」のフォント・大きさ・位置、上段の文字列と下段の文字列との間隔などを予め設定したパターンデータを、制御装置に入力しておく。当該パターンデータに基づいて、制御装置は吐出装置8及び駆動装置9を駆動させ、パターンデータ通りの模様4を形成するように、油性固形化粧料2の表面2aに対して加飾用化粧料を吐出していく(
図4(c)参照)。
【0038】
なお、上記した模様形成工程において、ステージ9b上に載置した油性固形化粧料2が、ステージ9b上で位置ズレが生じないようにするために、ステージ9bの表面部材を摩擦係数の高い素材で形成したり、ステージ9bに固定された保持部材(不図示)に油性固形化粧料2を収容している容器3を保持させたりすることが好ましい。なお、
図3に示すような略円柱形状に成形された油性固形化粧料2の曲面でなる側面に対して模様4を形成する場合には、ステージ9b上で転がらないように、前記保持部材により容器3を保持するようにする。
【0039】
上記のように、所望のパターンデータに基づく模様4が形成されることにより、加熱により溶融状態とされた油性化粧料が液滴状態で吐出されてなる、油性固形化粧料2の表面2aから突出する模様4を有する化粧料1が得られる(
図4(d)参照)。
【0040】
上記した本発明の実施形態による化粧料の製造方法によれば、以下の効果を奏する。
(1)加熱により溶融状態とされた油性化粧料を微細な粒子として高精度に吐出する吐出装置によって模様4を形成するので、従来のようにモールドを用いた型抜きでは極めて困難であった線幅1mm以下の細い凸条の模様4を正確に形成することや、そのような模様4を曲面や凹凸面に対して形成することが極めて容易になり、化粧料1のデザインの選択の幅が広がり、繊細な模様4を備えた付加価値の高い化粧料1を製造することができる。
【0041】
(2)また、加熱により溶融状態とされた油性化粧料を微細な粒子として高精度に吐出する吐出装置によって模様4を形成するので、Z軸方向の駆動制御が任意となり、模様4の形成のための塗布タクトを格段に向上させることができる。
【0042】
(3)また、模様4の形成に際しては、所望のデザインによるパターンデータを制御装置に設定すればよいため、従来のモールドを用いた型抜きによる模様の形成のように、所望の模様ごとにモールドを製作したり、モールドを付け替えたりする必要がなく、化粧料1の製造の容易化を図ることができる。
【0043】
(4)また、加飾用化粧料を、油性固形化粧料2(充填済み化粧料)とは異なる色彩で構成することにより、従来のようなモールドを用いた型抜きやレーザー光による模様の形成では成し得なかった多色かつ細い模様4を形成することができ、かつ、化粧料1のユーザーは、異なる色彩からなる加飾用化粧料及び油性固形化粧料2が混ざり合った色の化粧料として使用ができるという、付加価値の高い化粧料1を製造することができる。
【0044】
上記の実施形態においては、加飾用化粧料及び充填済み化粧料として、所定温度以上に加熱すると溶融状態となり、常温において形状を維持できる油性化粧料を用いる例を説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、充填済み化粧料としては、(a)加圧されて固化された粉末化粧料、(b)粉末化粧料に所定の溶媒を添加したスラリーを所定の容器に充填後、前記溶媒の少なくとも一部を除去して固化させた粉末化粧料、更には、(c)クリーム状化粧料であってもよい。同様に、加飾用化粧料としては、クリーム状化粧料や、粉末化粧料に所定の溶媒を添加したスラリーであってもよい。
【0045】
本発明について上記実施形態を参照しつつ説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、改良の目的または本発明の思想の範囲内において改良または変更が可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 化粧料
2 油性固形化粧料(充填済み化粧料)
2a 表面
3 容器
4 模様
6 ノズル
7 製造システム
8 吐出装置
8a 貯留部
8b ノズル
9 駆動装置
9a 基台
9b ステージ
9c アーム
W 線幅