特許 7037979 エアバッグ装置

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】

(24)【登録日】2022-03-09

(45)【発行日】2022-03-17

(54)【発明の名称】エアバッグ装置

(51)【国際特許分類】

   B60R 21/207 20060101AFI20220310BHJP

   B60N 2/427 20060101ALI20220310BHJP

   B60R 21/015 20060101ALI20220310BHJP

【ＦＩ】

B60R21/207

B60N2/427

B60R21/015 312

B60R21/015 311

【請求項の数】 7

(21)【出願番号】P 2018060990

(22)【出願日】2018-03-28

(65)【公開番号】P2019171998

(43)【公開日】2019-10-10

【審査請求日】2021-02-22

(73)【特許権者】

【識別番号】000005348

【氏名又は名称】株式会社ＳＵＢＡＲＵ

(74)【代理人】

【識別番号】110000383

【氏名又は名称】特許業務法人エビス国際特許事務所

(72)【発明者】

【氏名】鐘ヶ江 将太

(72)【発明者】

【氏名】上林 貴

【審査官】田邉 学

(56)【参考文献】

【文献】特開２０１６－０４３８１３（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２００９－０５６８３６（ＪＰ，Ａ）

【文献】米国特許第８９８５６２２（ＵＳ，Ｂ１）

【文献】特開２００８－２２２２００（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１７－０６５５５７（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１７－１７８１４９（ＪＰ，Ａ）

(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)

Ｂ６０Ｒ ２１／２０７

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

車両が衝突する衝突情報を検出する衝突検出部と、
前記車両のシートに着座する乗員の姿勢および体格のうち少なくとも１つを含む乗員情報を検出する乗員情報検出部と、
面状に形成された支持面を有し、衝突に伴って側方に移動する前記乗員を支持するように前記シートの側部に前記支持面が対向する支持位置と、前記支持位置から退避した退避位置との間を移動可能に前記シートに配置された支持体と、
前記支持面の異なる位置にそれぞれ配置され、前記支持体と前記乗員との間に展開して前記乗員を受け止める複数のエアバッグと、
前記乗員情報検出部で検出された前記乗員情報に基づいて、前記乗員の所定の部位が衝突に伴って移動する予測位置を算出する予測位置算出部と、
前記衝突検出部で検出される前記衝突情報に基づいて、前記支持体が前記支持位置に移動するように前記支持体の移動を制御すると共に、前記複数のエアバッグのうち前記予測位置算出部で算出された前記予測位置に対応する対応エアバッグで前記乗員の前記所定の部位を受け止めるように前記複数のエアバッグの展開を制御する展開制御部とを備えることを特徴とするエアバッグ装置。

【請求項2】

前記展開制御部は、前記複数のエアバッグのうち前記対応エアバッグのみを展開するように制御して前記乗員の前記所定の部位を前記対応エアバッグで受け止める請求項１に記載のエアバッグ装置。

【請求項3】

前記複数のエアバッグに注入された展開ガスを放出するための開閉部をさらに有し、
前記展開制御部は、前記複数のエアバッグを展開した後、前記対応エアバッグを除く非対応エアバッグから前記開閉部を介して前記展開ガスを放出するように制御して前記乗員の前記所定の部位を前記対応エアバッグで受け止める請求項１に記載のエアバッグ装置。

【請求項4】

前記複数のエアバッグは、前記シートに対して上下方向に並ぶように前記支持体に配置され、
前記予測位置算出部は、前記乗員の前記所定の部位が上下方向に変位する予測位置を算出する請求項１～３のいずれか一項に記載のエアバッグ装置。

【請求項5】

前記複数のエアバッグは、前記シートに対して前後方向に変位する前記乗員の前記所定の部位を受け止めるように前後方向に延びるように形成される請求項１～４のいずれか一項に記載のエアバッグ装置。

【請求項6】

前記予測位置算出部は、さらに、前記衝突検出部で検出された前記衝突情報に基づいて前記予測位置を算出する請求項１～５のいずれか一項に記載のエアバッグ装置。

【請求項7】

前記支持体は、前記シートの一方の側部および他方の側部にそれぞれ対応する一対の支持体からなり、
前記複数のエアバッグは、前記一対の支持体にそれぞれ配置される請求項１～６のいずれか一項に記載のエアバッグ装置。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

この発明は、エアバッグ装置に係り、特に、自動車等の車両のシートに着座する乗員の側方にエアバッグを展開させるエアバッグ装置に関する。

【背景技術】

【0002】

従来から、自動車のシートに着座する乗員の側方にエアバッグを展開して、自動車の衝突に伴って側方に移動する乗員を保護するエアバッグ装置が用いられている。しかしながら、近年、自動車のシートは、向きを大きく変えられるものが提案されており、エアバッグを自動車の車体に配置すると、シートの向きによっては乗員を確実に受け止めることができないおそれがあった。そこで、衝突に伴ってシートの側方に移動する乗員をシートの向きによらずにエアバッグで確実に受け止めるエアバッグ装置が求められている。

【0003】

例えば、特許文献１には、車両衝突時における乗員の車幅方向側方への移動を効果的に抑制する車両用シートが提案されている。この車両用シートは、シートに収納されたテンションクロスおよびサイドエアバッグを有し、シートの側部に沿ってテンションクロスが展開され、そのテンションクロスと乗員との間にサイドエアバッグが展開する。このように、エアバッグがシートに配置されているため、シートの向きによらずに乗員をエアバッグで確実に受け止めることができる。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0004】

【文献】特開２０１３－２１２７７５号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0005】

しかしながら、特許文献１の車両用シートは、乗員の姿勢、乗員の体格およびシート位置などに関わらず、自動車が衝突すると所定の位置にサイドエアバッグを展開させるため、乗員の適切な部位のみを拘束することが困難であり、乗員に無用な圧力を与えるおそれがあった。

【0006】

この発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、乗員をエアバッグで適切に受け止めるエアバッグ装置を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0007】

この発明に係るエアバッグ装置は、車両が衝突する衝突情報を検出する衝突検出部と、車両のシートに着座する乗員の姿勢および体格のうち少なくとも１つを含む乗員情報を検出する乗員情報検出部と、面状に形成された支持面を有し、衝突に伴って側方に移動する乗員を支持するようにシートの側部に支持面が対向する支持位置と、支持位置から退避した退避位置との間を移動可能にシートに配置された支持体と、支持面の異なる位置にそれぞれ配置され、支持体と乗員との間に展開して乗員を受け止める複数のエアバッグと、乗員情報検出部で検出された乗員情報に基づいて、乗員の所定の部位が衝突に伴って移動する予測位置を算出する予測位置算出部と、衝突検出部で検出される衝突情報に基づいて、支持体が支持位置に移動するように支持体の移動を制御すると共に、複数のエアバッグのうち予測位置算出部で算出された予測位置に対応する対応エアバッグで乗員の所定の部位を受け止めるように複数のエアバッグの展開を制御する展開制御部とを備えるものである。

【0008】

ここで、展開制御部は、複数のエアバッグのうち対応エアバッグのみを展開するように制御して乗員の所定の部位を対応エアバッグで受け止めることができる。

【0009】

また、複数のエアバッグに注入された展開ガスを放出するための開閉部をさらに有し、展開制御部は、複数のエアバッグを展開した後、対応エアバッグを除く非対応エアバッグから開閉部を介して展開ガスを放出するように制御して乗員の所定の部位を対応エアバッグで受け止めることもできる。

【0010】

また、複数のエアバッグは、シートに対して上下方向に並ぶように支持体に配置され、予測位置算出部は、乗員の所定の部位が上下方向に変位する予測位置を算出することが好ましい。
また、複数のエアバッグは、シートに対して前後方向に変位する乗員の所定の部位を受け止めるように前後方向に延びるように形成されることが好ましい。

【0011】

また、予測位置算出部は、さらに、衝突検出部で検出された衝突情報に基づいて予測位置を算出することが好ましい。

【0012】

また、支持体は、シートの一方の側部および他方の側部にそれぞれ対応する一対の支持体からなり、複数のエアバッグは、一対の支持体にそれぞれ配置することができる。

【発明の効果】

【0013】

この発明によれば、展開制御部が、衝突検出部で検出される衝突情報に基づいて、支持体が支持位置に移動するように支持体の移動を制御すると共に複数のエアバッグのうち予測位置算出部で算出された予測位置に対応する対応エアバッグで乗員の所定の部位を受け止めるように複数のエアバッグの展開を制御するので、乗員をエアバッグで適切に受け止めるエアバッグ装置を提供することが可能となる。

【図面の簡単な説明】

【0014】

【図1】この発明の実施の形態１に係るエアバッグ装置の構成を示す図である。

【図2】上下方向の変位量が小さい乗員の肩を対応エアバッグで受け止める様子を示す図である。

【図3】上下方向の変位量が大きい乗員の肩を対応エアバッグで受け止める様子を示す図である。

【図4】体格が小さい乗員の肩を対応エアバッグで受け止める様子を示す図である。

【図5】実施の形態２に係るエアバッグ装置の構成を示す図である。

【図6】実施の形態３に係るエアバッグ装置の構成を示す図である。

【図7】実施の形態４に係るエアバッグ装置の要部を示す図である。

【発明を実施するための形態】

【0015】

以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施の形態１
図１に、この発明の実施の形態１に係るエアバッグ装置の構成を示す。このエアバッグ装置は、自動車のシートＳの一方の側部Ｓａ近傍に支持体１が配置され、その支持体１に３つのエアバッグ２ａ，２ｂおよび２ｃが配置されている。また、エアバッグ装置は、乗員情報検出部３および衝突検出部４を有し、この乗員情報検出部３および衝突検出部４に予測位置算出部５、展開制御部６、３つのインフレータ７ａ，７ｂおよび７ｃが順次接続されている。さらに、予測位置算出部５は、展開制御部６を介して駆動部８に接続されている。そして、インフレータ７ａ，７ｂおよび７ｃがエアバッグ２ａ，２ｂおよび２ｃにそれぞれ接続され、駆動部８が支持体１に接続されている。

【0016】

支持体１は、衝突に伴って側方に移動する乗員Ｒを支持するもので、シートＳの側部Ｓａに沿って上下方向Ｄ１に延びる矩形の平板形状を有し、面状に形成された支持面１ａが乗員Ｒ側に配置されている。シートＳの下部には、シートに対して前後方向Ｄ２に延びるレール９が設けられており、このレール９に沿って支持体１が前後方向Ｄ２に移動可能に取り付けられている。これにより、支持体１は、レール９を介してシートＳに取り付けられることになる。

【0017】

ここで、支持体１は、衝突に伴って側方に移動する乗員Ｒを支持するようにシートＳの側部Ｓａに支持面１ａが対向する所定の支持位置Ｐ１と、支持位置Ｐ１から退避した退避位置Ｐ２との間を移動可能にレール９に取り付けられている。具体的には、支持位置Ｐ１はシートバックの前側において支持面１ａが乗員Ｒの側部に対向するように設定され、退避位置Ｐ２は支持体１が乗員Ｒの後方に退避するように設定されている。なお、支持面１ａは、衝突に伴う乗員Ｒの移動において前後方向Ｄ２への変位に対応するように前後方向Ｄ２に幅広に形成されている。また、支持体１は、衝突に伴って移動する乗員Ｒを支持可能な強度を有し、例えば樹脂などから構成することができる。
駆動部８は、支持体１をレール９に沿って前後方向Ｄ２に移動させるもので、例えばモータなどから構成することができる。

【0018】

エアバッグ２ａ～２ｃは、衝突に伴って側方に移動する乗員Ｒを受け止めるもので、支持体１において支持面１ａの異なる位置にそれぞれ収納されている。具体的には、エアバッグ２ａ～２ｃは、上下方向Ｄ１に並ぶように支持体１に配置され、支持体１と乗員Ｒとの間に上下方向Ｄ１に異なる位置で展開するように形成されている。また、エアバッグ２ａ～２ｃは、衝突に伴う乗員Ｒの移動において前後方向Ｄ２への変位に対応して前後方向Ｄ２に延びるように形成されている。
インフレータ７ａ～７ｃは、エアバッグ２ａ～２ｃに展開ガスを注入してエアバッグ２ａ～２ｃを展開させるものである。

【0019】

乗員情報検出部３は、シートＳに着座する乗員Ｒの姿勢および体格などの乗員情報を検出するものである。乗員情報検出部３としては、例えばカメラなどを用いることができる。
衝突検出部４は、自動車が衝突する衝突情報を検出するものである。例えば、衝突検出部４は、衝突物の位置、方向および大きさなどの衝突情報を衝突前に検出すると共に自動車の衝突位置などの衝突情報を衝突時に検出する。衝突検出部４としては、例えばカメラなどを用いることができる。

【0020】

予測位置算出部５は、乗員情報検出部３で検出された乗員情報および衝突検出部４で検出された衝突情報に基づいて、乗員の所定の部位が衝突に伴って移動してシートＳの外側に到達する予測位置を算出する。

【0021】

展開制御部６は、エアバッグ制御部１０および支持体制御部１１を有する。支持体制御部１１は、衝突検出部４で検出される衝突情報に基づいて、支持体１が退避位置Ｐ２から支持位置Ｐ１に移動するように駆動部８を介して支持体１の移動を制御する。続いて、エアバッグ制御部１０が、予測位置算出部５で算出された予測位置に基づいて３つのエアバッグ２ａ～２ｃのうち予測位置に対応する対応エアバッグを選択し、その対応エアバッグで乗員Ｒの所定の部位を受け止めるようにインフレータ７ａ～７ｃを介してエアバッグ２ａ～２ｃの展開を制御する。

【0022】

次に、この実施の形態の動作について説明する。
まず、図１に示すように、シートＳに乗員Ｒが着座した状態で自動車が走行される。このとき、支持体１は、退避位置Ｐ２に配置されている。自動車に側方から衝突物が接近すると、衝突検出部４が、衝突物の位置、方向および大きさなどの衝突情報を順次検出する。また、乗員情報検出部３が、シートＳに着座する乗員Ｒの姿勢および体格などの乗員情報を順次検出する。
衝突検出部４により検出された衝突情報と乗員情報検出部３により検出された乗員情報は、予測位置算出部５に出力される。また、図示しない自動車の制御部が、自動車の走行情報を予測位置算出部５に順次出力する。走行情報としては、例えば、自動車の走行方向および速度などが挙げられる。

【0023】

衝突情報、乗員情報および走行情報が予測位置算出部５に入力されると、予測位置算出部５は、乗員情報に基づいて乗員の所定の部位、例えば肩Ｈの位置を求める。そして、予測位置算出部５は、衝突情報および走行情報に基づいて、自動車の衝突に伴って肩Ｈが側方に移動し、シートＳの外側に到達、具体的にはレール９の真上に到達する予測位置を算出する。ここで、予測位置算出部５は、乗員Ｒの肩Ｈが側方において上下方向Ｄ１に変位する予測位置を算出する。

【0024】

予測位置算出部５は、衝突検出部４、乗員情報検出部３および図示しない自動車の制御部から出力される衝突情報、乗員情報および走行情報に基づいて予測位置を順次算出する。そして、予測位置算出部５は、算出された予測位置と衝突検出部４から入力される衝突情報を展開制御部６に出力する。
予測位置算出部５から展開制御部６に予測位置と衝突情報が入力されると、展開制御部６は、衝突情報に基づいて自動車が衝突する可能性を判定する。展開制御部６は、自動車が衝突する可能性が高いと判定すると、支持体制御部１１が駆動部８を駆動して支持体１を退避位置Ｐ２から支持位置Ｐ１に移動させる。そして、エアバッグ制御部１０が、３つのエアバッグ２ａ～２ｃのうち予測位置に対応する対応エアバッグを選択し、その対応エアバッグのみを展開するようにインフレータ７ａ～７ｃを制御する。

【0025】

続いて、自動車の側方に衝突物に衝突すると、衝突に伴って乗員Ｒが側方に移動する。
例えば、図２に示すように、衝突に伴って側方に移動する乗員Ｒの肩Ｈの上下方向Ｄ１の変位量が小さい場合には、上下方向Ｄ１に高い予測位置Ｎ１が予測位置算出部５により算出されており、エアバッグ制御部１０は、インフレータ７ａを制御して、予測位置Ｎ１に対応する対応エアバッグ２ａを展開させる。
一方、図３に示すように、衝突に伴って側方に移動する乗員Ｒの肩Ｈの上下方向Ｄ１の変位量が大きい場合には、上下方向Ｄ１に低い予測位置Ｎ２が予測位置算出部５により算出されており、エアバッグ制御部１０は、インフレータ７ｃを制御して、予測位置Ｎ２に対応する対応エアバッグ２ｃを展開させる。

【0026】

なお、予測位置算出部５は、乗員Ｒの肩Ｈの上下方向Ｄ１の変位量に基づいて予測位置を算出するものに限られるものではなく、例えば、乗員Ｒの体格に基づいて予測位置を算出することもできる。例えば、図４に示すように、乗員Ｒが体格の小さい子供である場合には、その肩Ｈの位置に基づいて上下方向Ｄ１に低い予測位置Ｎ３を算出し、エアバッグ制御部１０が予測位置Ｎ３に対応する対応エアバッグ２ｃを展開させることができる。

【0027】

このように、乗員Ｒの肩Ｈの位置に対応しない非対応エアバッグは展開せずに、乗員Ｒの肩Ｈに対応する対応エアバッグのみを展開させるため、乗員Ｒの脇腹など損傷しやすい部位に非対応エアバッグから無用な圧力が加わることを抑制し、圧力で損傷しにくい乗員Ｒの肩Ｈを対応エアバッグで適切に受け止めることができる。また、エアバッグ２ａ～２ｃは、支持体１により支持されるため、エアバッグ２ａ～２ｃが乗員と共に側方に移動することを抑制し、乗員Ｒを確実に受け止めることができる。
さらに、支持体１およびエアバッグ２ａ～２ｃは、シートＳに取り付けられているため、シートＳの方向が大きく変化、例えば９０度変化した場合でも、衝突によりシートＳに対して側方に移動する乗員Ｒを確実に受け止めることができる。

【0028】

なお、展開制御部６は、対応エアバッグで乗員Ｒの肩Ｈを適切に受け止めることができる場合には、自動車が衝突物に衝突した後で、支持体１を支持位置Ｐ１に移動させて対応エアバッグを展開させてもよい。これにより、予測位置算出部５は、衝突した直後に検出された衝突情報、乗員情報および走行情報に基づいて予測位置を算出できるため、予測位置を正確に算出することができ、展開制御部６が正確な予測位置に基づいて対応エアバッグを展開させることができる。

【0029】

また、エアバッグ２ａ～２ｃは、衝突に伴う乗員Ｒの前後方向Ｄ２への変位に対応して前後方向Ｄ２に延びるように形成されている。このため、エアバッグ２ａ～２ｃは、例えば乗員Ｒが斜め前方に大きく移動した場合でも、支持体１を前方に移動させることなく、乗員Ｒを確実に受け止めることができる。

【0030】

本実施の形態によれば、展開制御部６は、支持体１が支持位置Ｐ１に移動するように支持体１の移動を制御すると共にエアバッグ２ａ～２ｃのうち予測位置算出部５で算出された予測位置に対応する対応エアバッグで乗員Ｒの肩Ｈを受け止めるようにエアバッグ２ａ～２ｃの展開を制御するため、非対応エアバッグを展開して乗員Ｒに無用な圧力を加えることを抑制し、対応エアバッグで乗員Ｒを適切に受け止めることができる。

【0031】

実施の形態２
上記の実施の形態１では、展開制御部６は、エアバッグ２ａ～２ｃのうち対応エアバッグのみを展開するように制御して乗員Ｒの肩Ｈを対応エアバッグで受け止めたが、対応エアバッグで乗員Ｒの肩Ｈを受け止めることができればよく、対応エアバッグのみを展開させるものに限られるものではない。

【0032】

例えば、図５に示すように、実施の形態１のエアバッグ制御部１０に換えてエアバッグ制御部２１を配置すると共に３つのインフレータ７ａ～７ｃに換えて１つのインフレータ２２を配置し、インフレータ２２とエアバッグ２ａ～２ｃとの間に開閉部２３を新たに配置することができる。開閉部２３は、エアバッグ２ａ～２ｃにそれぞれ対応して配置された３つの開閉弁２３ａ，２３ｂおよび２３ｃを有する。インフレータ２２は、開閉弁２３ａ～２３ｃを介してエアバッグ２ａ～２ｃに接続されている。

【0033】

インフレータ２２は、エアバッグ２ａ～２ｃに展開ガスを注入してエアバッグ２ａ～２ｃを展開させるものである。ここで、インフレータ２２は、エアバッグ２ａ～２ｃの全てを展開させる量の展開ガスを注入する。
開閉弁２３ａ～２３ｃは、エアバッグ２ａ～２ｃに注入された展開ガスを放出するためのものである。開閉弁２３ａ～２３ｃを閉じることでインフレータ２２からエアバッグ２ａ～２ｃに展開ガスを注入する流路が形成され、開閉弁２３ａ～２３ｃを開くことでエアバッグ２ａ～２ｃに注入された展開ガスが外部に放出される。
エアバッグ制御部２１は、開閉部２３に接続されており、インフレータ２２を制御してエアバッグ２ａ～２ｃを展開させた後、開閉弁２３ａ～２３ｃを制御して対応エアバッグを除く非対応エアバッグから展開ガスを放出させる。

【0034】

このような構成により、実施の形態１と同様に、展開制御部６が自動車の衝突する可能性が高いと判定すると、支持体制御部１１が駆動部８を介して支持体１を退避位置Ｐ２から支持位置Ｐ１に移動させる。続いて、エアバッグ制御部２１が、インフレータ２２を介して３つのエアバッグ２ａ～２ｃを展開させる。そして、エアバッグ制御部２１は、予測位置算出部５で算出された予測位置に対応する対応エアバッグを選択する。

【0035】

例えば、衝突に伴って側方に移動する乗員Ｒの肩Ｈの上下方向Ｄ１の変位量が小さい場合には、エアバッグ制御部２１は、エアバッグ２ａ～２ｃのうち対応エアバッグ２ａを選択する。そして、エアバッグ制御部２１は、開閉弁２３ｂおよび２３ｃを開いて、対応エアバッグ２ａを除く非対応エアバッグ２ｂおよび２ｃから展開ガスを放出させる。
これにより、乗員Ｒの肩Ｈの位置に対応しない非対応エアバッグ２ｂおよび２ｃから展開ガスを外部に放出して、乗員Ｒの肩Ｈを対応エアバッグ２ａで適切に受け止めるため、乗員Ｒの脇腹などに非対応エアバッグ２ｂおよび２ｃから無用な圧力が加わることを抑制し、乗員Ｒの肩Ｈを対応エアバッグ２ａで確実に受け止めることができる。

【0036】

本実施の形態によれば、エアバッグ制御部２１が、エアバッグ２ａ～２ｃを展開した後、対応エアバッグ２ａを除く非対応エアバッグ２ｂおよび２ｃから開閉弁２３ｂおよび２３ｃを介して展開ガスを放出するように制御するため、非対応エアバッグ２ｂおよび２ｃが乗員Ｒに無用な圧力を加えることを抑制し、対応エアバッグ２ａで乗員Ｒを適切に受け止めることができる。

【0037】

実施の形態３
上記の実施の形態１および２では、複数のエアバッグ２ａ～２ｃは、シートＳに対して上下方向Ｄ１に並ぶように支持体１に配置されたが、複数のエアバッグを支持面１ａの異なる位置に配置できればよく、上下方向Ｄ１に限られるものではない。

【0038】

例えば、図６に示すように、実施の形態１のエアバッグ２ａ～２ｃに換えてエアバッグ３１ａ，３１ｂおよび３１ｃを配置することができる。
エアバッグ３１ａ～３１ｃは、前後方向Ｄ２に並ぶように支持面１ａに配置され、支持体１と乗員Ｒとの間に前後方向Ｄ２に異なる位置で展開するように形成されている。また、エアバッグ３１ａ～３１ｃは、衝突に伴って側方に移動する乗員Ｒの上下方向Ｄ１への変位に対応して上下方向Ｄ１に延びるように形成されている。

【0039】

このような構成により、実施の形態１と同様に、予測位置算出部５から予測位置と衝突情報が展開制御部６に入力されると、支持体制御部１１が支持体１を退避位置Ｐ２から支持位置Ｐ１に移動させる。続いて、エアバッグ制御部１０が、３つのエアバッグ３１ａ～３１ｃのうち、前後方向Ｄ２における予測位置に対応する対応エアバッグを選択し、インフレータ７ａ～７ｃを介してその対応エアバッグを展開させる。

【0040】

このように、衝突に伴って側方に移動する乗員Ｒの肩Ｈの前後方向Ｄ２の変位に対応する対応エアバッグを展開させるため、乗員Ｒの肩Ｈを的確に受け止めることができる。また、エアバッグ３１ａ～３１ｃは、乗員Ｒの上下方向Ｄ１への変位に対応して上下方向Ｄ１に延びるように形成されているため、乗員Ｒの肩Ｈが上下方向Ｄ１に変位した場合でも確実に受け止めることができる。

【0041】

本実施の形態によれば、展開制御部６は、シートＳに対して前後方向Ｄ２に並ぶように支持体１に配置された３つのエアバッグ３１ａ～３１ｃのうち予測位置算出部５で算出された予測位置に対応する対応エアバッグを展開させるため、非対応エアバッグを展開して乗員Ｒに無用な圧力を加えることを抑制し、対応エアバッグで乗員Ｒをより適切に受け止めることができる。

【0042】

実施の形態４
上記の実施の形態１～３では、支持体１は、シートＳの一方の側部Ｓａのみに対応して配置されたが、シートＳの一方の側部Ｓａおよび他方の側部にそれぞれ対応する一対の支持体を配置することもできる。
例えば、図７に示すように、実施の形態１において支持体４１、３つのエアバッグ４２ａ～４２ｃおよびレール４３を新たに配置することができる。

【0043】

支持体４１は、実施の形態１の支持体１と同様の構成を有し、シートＳの他方の側部Ｓｂに対応して配置される。この支持体４１が、衝突に伴って側方に移動する乗員Ｒを支持するようにシートＳの側部Ｓｂに支持面４１ａが対向する支持位置と、支持位置から退避した退避位置との間を移動可能となるように、レール４３が前後方向Ｄ２に延びるように設けられている。
エアバッグ４２ａ～４２ｃは、実施の形態１のエアバッグ２ａ～２ｃと同様の構成を有し、支持体４１に上下方向Ｄ１に並ぶように配置されている。

【0044】

このような構成により、衝突によりシートＳの側部Ｓａ側に移動する乗員Ｒだけでなく、シートＳの側部Ｓｂ側に移動する乗員Ｒを対応エアバッグで適切に受け止めることができる。

【0045】

本実施の形態によれば、シートＳの側部Ｓａに対応する支持体１にエアバッグ２ａ～２ｃを配置すると共にシートＳの側部Ｓｂに対応する支持体４１にエアバッグ４２ａ～４２ｃを配置するため、衝突により様々な方向に移動する乗員Ｒを適切に受け止めることができる。

【0046】

なお、上記の実施の形態１～４では、衝突検出部４は、自動車の衝突前に衝突情報を検出したが、自動車の衝突情報を検出することができればよく、衝突前に衝突情報を検出するものに限られるものではない。
例えば、実施の形態１において、衝突検出部４は、自動車が衝突したか否かの衝突情報のみを検出してもよい。乗員情報検出部３で検出される乗員情報に基づいて、予測位置算出部５が乗員Ｒの肩Ｈが衝突に伴って移動する予測位置を算出する。衝突検出部４で衝突情報が検出されると、支持体制御部１１が駆動部８を介して支持体１を支持位置Ｐ１に移動させ、エアバッグ制御部１０がインフレータ７ａ～７ｃを介して予測位置算出部５で算出された予測位置に対応する対応エアバッグを展開させる。これにより、乗員Ｒを対応エアバッグで適切に受け止めることができる。

【0047】

また、上記の実施の形態１～４では、支持体は、乗員Ｒの後方の退避位置Ｐ２に退避されたが、支持位置Ｐ１から退避した位置であればよく、乗員Ｒの後方に限られるものではない。例えば、支持体は、シートＳの下部に設定された退避位置Ｐ２からシートＳの側部に沿って上方に移動するように構成することもできる。また、支持体は、支持面がシートＳの後面に対向する退避位置Ｐ２に退避させることもできる。
また、上記の実施の形態１～４において、支持体は、支持位置Ｐ１に位置する支持形状から変形させた状態で退避位置Ｐ２に配置することもできる。例えば、支持体は、ロール状に変形させた状態で退避位置Ｐ２に配置し、その前縁部を引き出すようにして支持位置Ｐ１に移動させることができる。これにより、支持体を退避位置Ｐ２にコンパクトに配置することができる。

【0048】

また、上記の実施の形態１～４では、支持体は、平板状に形成されたが、衝突に伴って側方に移動する乗員Ｒを支持可能な形状であればよく、平板形状に限られるものではない。例えば、支持体は、湾曲するように形成することもできる。
また、上記の実施の形態１～４では、支持体の支持面は、平面状に形成されたが、面状に形成、すなわち広がりを有する形状に形成されてエアバッグを支持できればよく、平面形状に限られるものではない。例えば、支持面は、枠状および網状などに形成することもできる。

【符号の説明】

【0049】

１，４１ 支持体、１ａ，４１ａ 支持面、２ａ，２ｂ，２ｃ，３１ａ，３１ｂ，３１ｃ，４２ａ，４２ｂ，４２ｃ エアバッグ、３ 乗員情報検出部、４ 衝突検出部、５ 予測位置算出部、６ 展開制御部、７ａ，７ｂ，７ｃ，２２ インフレータ、８ 駆動部、９，４３ レール、１０，２１ エアバッグ制御部、１１ 支持体制御部、２３ 開閉部、２３ａ，２３ｂ，２３ｃ 開閉弁、Ｓ シート、Ｓａ，Ｓｂ シートの側部、Ｄ１ 上下方向、Ｄ２ 前後方向、Ｒ 乗員、Ｈ 肩、Ｐ１ 支持位置、Ｐ２ 退避位置、Ｎ１，Ｎ２，Ｎ３ 予測位置。

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】