(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-09
(45)【発行日】2022-03-17
(54)【発明の名称】寒冷地用の量水器収納構造
(51)【国際特許分類】
E03B 9/10 20060101AFI20220310BHJP
E03B 7/07 20060101ALI20220310BHJP
E03B 7/12 20060101ALI20220310BHJP
G01F 1/00 20220101ALI20220310BHJP
G01F 15/18 20060101ALI20220310BHJP
G01F 15/10 20060101ALI20220310BHJP
【FI】
E03B9/10 A
E03B9/10 F
E03B7/07 A
E03B7/12 G
G01F1/00 G
G01F15/18
G01F15/10
(21)【出願番号】P 2018091246
(22)【出願日】2018-05-10
【審査請求日】2021-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000154233
【氏名又は名称】株式会社富士計器
(74)【代理人】
【識別番号】100085257
【氏名又は名称】小山 有
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 正志
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特公昭63-038507(JP,B2)
【文献】特開平08-277551(JP,A)
【文献】特開昭62-202133(JP,A)
【文献】実開平01-160059(JP,U)
【文献】実開昭52-169956(JP,U)
【文献】実開昭53-147567(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03B 1/00-11/16
G01F 1/00
G01F 15/18
G01F 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部が閉じられ上部の開口が取外し可能な蓋体で閉じられた円筒状収納ボックスと、この円筒状収納ボックス内の底部に螺旋状に折り畳まれた状態で収納され途中に量水器が設けられた樹脂製の水道配管とを備えた寒冷地用の量水器収納構造であって、前記円筒状収納ボックスの上部または前記蓋体にバッテリとの接続部を設け、この接続部を介してバッテリから給電される加熱手段を
前記水道配管自体または折り畳まれた状態の
前記水道配管の近傍に配置したことを特徴とする寒冷地用の量水器収納構造。
【請求項2】
請求項1に記載の寒冷地用の量水器収納構造において、前記加熱手段は
前記水道配管の外周面に巻回されるか、円筒状収納ボックスの底部内側面または円筒状収納ボックスの底部中央で折り畳まれた状態の
前記水道配管の内側に配置したことを特徴とする寒冷地用の量水器収納構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は寒冷地における量水器(水道メーター)を収納する構造に関する。
【背景技術】
【0002】
寒冷地においては、冬季における凍結を避けるために、地域別に凍結深度を基にした給水管の埋設深度が定められ、この深度に量水器を埋設しなければならない。一方、量水器に関しては一定の年数が経過したならば交換することが決められている。交換する場合に、埋設した深度まで掘り下げるのは多大の労力を必要とするため、特許文献1に開示される構造が提案された。
【0003】
特許文献1には、円筒状の収納ボックスを地中に埋設し、この収納ボックスの底部に量水器(止水栓も含む)に接続されるポリエチレン製の水道配管を螺旋状に折り畳んで収納し、量水器の交換時には螺旋状に折りたたまれた水道配管を量水器とともに上方に引き上げることで、穴掘り作業をしなくて済むようにしている。この特許文献1には円筒状の収納ボックス底部に折りたたんだ状態の水道配管の内側に膨出部が位置し、この膨出部に地熱流入用の穴が形成されている。
この上記特許文献1を改良した先行技術として、特許文献2~7が提案されている。
【0004】
特許文献2には、水道配管を螺旋状に折り畳む代わりに、テレスコーピック式に径の異なるパイプをつなぎ合わせて上下方向に伸縮自在にした構造が提案され、また水道配管を蛇腹状とすることで上下方向に伸縮自在にした構造が提案されている。
【0005】
特許文献3及び特許文献4には、円筒状の収納ボックスの本体下部の内側に、本体上部をスライド可能に配置し、凍上現象が発生した際に本体上部のみが上昇することで、大気温が氷点下(摂氏0度以下)となった場合に、収納ボックス全体が地表から持ち上げられる現象(凍上現象)を防止する構造が提案されている。
【0006】
特許文献5には、円筒状の収納ボックス(収納管)の外周面を断熱素材により形成された挿通保持体で覆うことによって膨張土圧を吸収するようにした構造が提案されている。
【0007】
特許文献6には、螺旋状に折りたたまれた水道配管(螺回コイル)の給水管並びに給出管の端縁延長線と量水器並びに水栓の端縁延長線との交叉角が50乃至85度となる範囲で適宜に曲折された連結管具により給水管並びに給出管と量水器(止水栓)とを連結することで、著しい低温化による水道管、量水器および止水栓等の凍結や破裂・破損・故障を防止する構造が提案されている。
【0008】
特許文献7には、円筒状の収納ボックスの底部近傍の外周に、水道配管の引出し用の膨出部を形成し、この膨出部内に螺旋状に湾曲した水道配管の他端部を配設することで、螺旋状に巻回した水道配管の量水器筐体の外方への引き出し負荷を小さくした構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特公昭63-038507号公報
【文献】実公平1-041807号公報
【文献】特許第5165931号公報
【文献】実用新案登録第313514号公報
【文献】特許第3980309号公報
【文献】実用新案登録第3083921号公報
【文献】特許第4200065号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記先行文献に開示される水道配管はポリエチレン製である。ポリエチレン等の樹脂は温度が低下するとその硬度が増し、量水器交換などの際に量水器とともに螺旋状に折りたたまれた水道配管を引き上げるのに多大の労力が必要になる。
【0011】
特許文献1では、底板に螺旋状に折りたたまれた水道配管の内側に位置する上方への膨出部を設け、この膨出部に地熱流入用の穴を形成しているが、地熱が流入しても温度は氷点下にはならずに単に凍結を防ぐだけで、ポリエチレン製の水道配管を引き上げる際の労力を軽減できる程の熱を供給できるものではない。
【0012】
特許文献2に開示されるテレスコ―ピック構造は、所定の深さに量水器を収納するにはテレスコ―ピックの段数を多くしなければならず、伸ばした場合と収納した場合の配管内の体積が変化し、量水器の計測値に影響を与えてしまう。
【0013】
特許文献3及び4は収納ボックス全体が地表から持ち上げられる現象(凍上現象)を防止するものであるが、螺旋状に折りたたまれた水道配管を引き上げる労力を軽減するものではない。
【0014】
特許文献5のように、収納ボックス(収納管)の外周面を断熱素材で覆ったとしても、寒冷時のポリエチレン製水道配管自体の硬さを改善するものではない。
また特許文献6及び特許文献7では、量水器交換の際の労力軽減について、何らの提案もされていない。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため本発明に係る寒冷地用の量水器収納構造は、底部が閉じられ上部の開口が取外し可能な蓋体で閉じられた円筒状収納ボックスと、この円筒状収納ボックスの底部に螺旋状に折り畳まれた状態で収納され途中に量水器が設けられた樹脂製の水道配管とを備え、前記円筒状収納ボックスの上部または前記蓋体にバッテリとの接続部を設け、この接続部を介してバッテリから給電される加熱手段を水道配管自体または折り畳まれた状態の水道管の近傍に配置した。
【0016】
前記加熱手段は水道管の外周面に巻回されるか、円筒状収納ボックスの底部内側面または円筒状収納ボックスの底部中央で折り畳まれた状態の水道管の内側に配置することが考えられる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、量水器の交換作業、量水器や止水栓の不具合の修理、点検或いは配管の破裂や破損、漏水など止水措置を開始する直前、例えば道具を揃える準備作業の際に、バッテリからの給電部にバッテリを接続(装着)することにより瞬時に樹脂製水道管を温めて柔らかくすることができ、螺旋状に折り畳んで収納されている水道管を小さな労力で引き上げることができ、作業者の負担が軽減される。
【0018】
バッテリは量水器交換作業時のみ接続し、普段は外しておくため、漏電による電力消費などの問題が生じない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係る寒冷地用の量水器収納構造を説明した図
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1に示すように、本発明に係る量水器収納構造は、土中に埋設される樹脂製の円筒状収納ボックス1と、この円筒状収納ボックス1内の底部に螺旋状(コイル状)に折り畳まれた状態で収納される水道配管2を備え、水道配管2の途中には量水器3と止水栓4が設けられている。
【0021】
円筒状収納ボックス1は高さが60~200cmで直径が30~40cm、厚さが20mm程度の樹脂製若しくは金属製で、樹脂としてはポリエチレンやポリエステル或いはポリカーボネートが好適である。
【0022】
この円筒状収納ボックス1の下端は底板5で塞がれ、底板5の上面には台5aが設けられ、この台5a上に折り畳まれた状態の水道配管2がセットされる。
【0023】
収納ボックス1の上端は開放され、その周囲には装着リング6が取付けられ、この装着リング6を介して蓋体7が着脱自在に載置されている。装着リング6は土壌凍結に伴う膨張土圧の揚向力による収納ボックス1の地表面への突出(凍上)を防止するため、中空状とすることが好ましい。
【0024】
前記水道配管2はポリエチレン製であり、量水器3よりも上流側の給水側配管2aと量水器3よりも下流側の給出側配管2bからなり、折り畳まれた状態の水道配管2の上端部には門型をなす引上げ金具8が取付けられている。この引上げ金具8を握るかフックを掛けるなどして折り畳まれた状態の水道配管2とともに量水器3(止水栓4)を上方に引き上げる。尚、上方に引き上げられる際には、前記給水側配管2aと給出側配管2bとが対をなすように上下方向に移動する。
【0025】
また前記ポリエチレン製の水道配管2は
図3に示すように、外周に加熱手段としてもニクロム線9が巻回され、更にその外側を樹脂製外皮10で覆われている。ニクロム線9には収納ボックス1の内側面に沿って配線した給電線11が接続され、この給電線11の上端の端子12は長さを余らせた状態で、前記蓋体7の下面に止着されている。
【0026】
量水器3の交換作業、量水器3や止水栓4の不具合の修理、点検などを行うために、螺旋状(コイル状)に折り畳まれた状態の水道配管2を引き上げるには、
図2に示すように、道具などを揃える時間を利用して、蓋体7を取外し、裏面の端子12を別途用意したバッテリ13に接続する。すると、ニクロム線8への通電加熱によって水道配管2が短時間のうちに加熱され柔らかくなり容易に上方に引き上げることができるようになる。
【0027】
図4は別実施例を示す図であり、この実施例にあっては円筒状収納ボックス1の下部内周面に加熱手段としてのパネルヒータ14を配置している。この実施例の前記実施例と同様に、量水器3の交換作業などを行う前にバッテリ13に接続することで短時間のうちに水道配管2を加熱し、柔らかくすることができる。
【0028】
図5は更なる別実施例を示す図であり、この実施例にあっては台5aの中央部に加熱手段としての赤外線ヒータ15を配置している。この実施例の前記実施例と同様に、量水器3の交換作業などを行う前にバッテリ13に接続することで短時間のうちに水道配管2を加熱し、柔らかくすることができる。
【0029】
図5に示した別実施例は、特許文献1に開示される地熱流入用の穴を形成した膨出部と同じ位置に設けられているが、地熱流入用の穴を形成しても凍上抑制の効果は若干認められても、ポリエチレン製水道配管2を簡単に引き上げることができる程度に柔らかくすることはできない。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明に係る寒冷地用の量水器収納構造は、冬季における作業のみでなく、比較的温度が低下する夜間などにも、効果が認められる。
【符号の説明】
【0031】
1…円筒状収納ボックス
2…水道配管、2a…給水側配管、2b…給出側配管
3…量水器
4…止水栓
5…底板、5a…台
6…装着リング
7…蓋体
8…引上げ金具
9…ニクロム線
10…樹脂製外皮
11…給電線
12…端子
13…バッテリ
14…パネルヒータ
15…赤外線ヒータ