(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-09
(45)【発行日】2022-03-17
(54)【発明の名称】医薬品有効成分の連続的な錯体化
(51)【国際特許分類】
A61K 47/69 20170101AFI20220310BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20220310BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220310BHJP
【FI】
A61K47/69
A61K9/14
A61K45/00
(21)【出願番号】P 2018539297
(86)(22)【出願日】2017-01-27
(86)【国際出願番号】 GB2017050210
(87)【国際公開番号】W WO2017129988
(87)【国際公開日】2017-08-03
【審査請求日】2019-12-09
(32)【優先日】2016-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】PT
(73)【特許権者】
【識別番号】315015195
【氏名又は名称】ホビオネ サイエンティア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091443
【氏名又は名称】西浦 ▲嗣▼晴
(74)【代理人】
【識別番号】100130720
【氏名又は名称】▲高▼見 良貴
(74)【代理人】
【識別番号】100130432
【氏名又は名称】出山 匡
(72)【発明者】
【氏名】リスボア,ヒューゴ
(72)【発明者】
【氏名】テンテン,マルチョ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンセンテ,ジョアン
(72)【発明者】
【氏名】サントス,フィリパ
【審査官】高橋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-169379(JP,A)
【文献】米国特許第06555139(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0086061(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0091627(US,A1)
【文献】国際公開第2002/056883(WO,A1)
【文献】HAN-KUEI LIU,Physicochemical characterizations of osthole-hydroxypropyl-β-cyclodextrin inclusion complexes with high-pressure homogenization method,Journal of Food and Drug Analysis,2010年,Vol.18,No. 6,391-397
【文献】J. Jpn. Soc. Colour Mater. (2005), 78 (1), p.28-33
【文献】L.Srinivas,Preparation and evaluation of itraconazole cyclodextrin complexes to enhance their solubility and dissolution parameters,Am.J.PharmTec Res,2014年,4(2),p.827-847
【文献】Aditya Kulkarni,Microfluidic assembly of cationic-β-cyclodextrin:hyaluronic acid-adamantane host:guest pDNA nanoparticles,Biomater Sci.,2013年,1(10),p.1029-1033
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00
A61K 47/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のシクロデキストリンと少なくとも1種の医薬品有効成分との錯体の調製プロセスであって、
a.α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、スルホブチルエーテル-ベータ-シクロデキストリン、ヒドロプロピル-ベータ-シクロデキストリン、メチル-ベータ-シクロデキストリン及び/又はマルトシル-ベータ-シクロデキストリン及びこれらの組み合わせからなる群から選択された少なくとも1種のシクロデキストリンと少なくとも1種の溶媒とを含む第1の溶液(溶液A)を調製するステップと;
b.溶解した、部分的に溶解した、又は懸濁した少なくとも1種の医薬品有効成分を含む第2の溶液(溶液B)を調製するステップと;
c.少なくとも1種の前記錯体の溶液及び/又は懸濁液を生成するために、マイクロ流動化システムにより前記溶液A及び前記溶液Bを混合するステップであって、マイクロ流動化は、他の混和性又は非混和性の液体と混合された液体、あるいは固体化合物と混合された液体を、少なくとも1つのマイクロチャネル又はマイクロ反応器中に混合して移動させることができる少なくとも1つの増圧ポンプを含むシステム中で生ずるステップと;
d.前記溶液及び/又は前記懸濁液を単離し、及び/又は任意にそれを乾燥するステップと;
e.粉末形態の錯体を任意に収集するステップを含む調製プロセス。
【請求項2】
前記調製プロセスは、バッチプロセス又は連続プロセスである請求項1に記載の調製プロセス。
【請求項3】
前記溶液Aは、任意の置換基及び任意のキャビティサイズを含む少なくとも1種の前記シクロデキストリン、及び/又は高分子医薬賦形剤を含む請求項1又は2に記載の調製プロセス。
【請求項4】
前記シクロデキストリンはスルホブチルエーテル-ベータ-シクロデキストリンである請求項1に記載の調製プロセス。
【請求項5】
前記溶液Aは少なくとも1種の以下の溶媒:水、エタノール、メタノール、イソプロパノール、ジクロロメタンアセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアルデヒド又はジメチルアセトアミドを含む請求項1乃至4のいずれか1項に記載の調製プロセス。
【請求項6】
前記溶液A中の前記シクロデキストリンの濃度は、1重量%から50重量%までの範囲である請求項1乃至5のいずれか1項に記載の調製プロセス。
【請求項7】
高分子医薬賦形剤が前記溶液A中に1重量%から20重量%までの濃度で存在する請求項1乃至6のいずれか1項に記載の調製プロセス。
【請求項8】
前記溶液AのpHは1から14までの範囲である請求項1乃至7のいずれか1項に記載の調製プロセス。
【請求項9】
前記pHは6から8までである請求項8に記載の調製プロセス。
【請求項10】
前記溶液Aは、ジャケット付き撹拌反応器を用い、前記反応器に少なくとも1種の前記溶媒を添加し、及び同じ前記反応器に少なくとも1種の前記シクロデキストリンを添加し、及び/又は同じ前記反応器に少なくとも1種の高分子医薬賦形剤を添加し、続いてpHを調整することにより調製する請求項1乃至9のいずれか1項に記載の調製プロセス。
【請求項11】
前記成分の添加の順序は限定されず、どのような順序でもよい請求項10に記載の調製プロセス。
【請求項12】
前記溶液Bは、1種以上の溶媒に溶解され、1種以上の溶媒に部分的に溶解され、又は1種以上の溶媒に懸濁された、少なくとも1種の医薬品有効成分を含む請求項1乃至11のいずれか1項に記載の調製プロセス。
【請求項13】
前記医薬品有効成分又は該医薬品有効成分の薬学的に許容される誘導体は、チオエーテル、アルコール、チオール、アルデヒド、ケトン、チオケトン、硝酸エステル、リン酸エステル、チオリン酸エステル、エステル、チオエステル、硫酸エステル、カルボン酸、ホスホン酸、スルホン酸、アミド、一級アミン、二級アミン、アンモニア、三級アミン、イミン、チオシアン酸塩、シアナミド、オキシム、ニトリル、ジアゾ、有機ハロゲン化物、ニトロ、S-複素環、チオフェン、N-複素環、ピロール、O-複素環、フラン、エポキシド、過酸化物、ヒドロキサム酸、イミダゾール及びピリジンから選択された少なくとも1つの官能基を有する請求項12に記載の調製プロセス。
【請求項14】
前記溶液Bは、少なくとも1つの以下の前記溶媒:水、エタノール、メタノール、イソプロパノール、ジクロロメタン、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアルデヒド又はジメチルアセトアミドを含む請求項1乃至13のいずれか1項に記載の調製プロセス。
【請求項15】
前記溶液B中の1種以上の前記溶媒は、前記溶液A中の前記溶媒と同じ又は異なっており、異なる溶媒の場合には相互に混和性でも非混和性でもよい請求項1乃至14のいずれか1項に記載の調製プロセス。
【請求項16】
前記溶液B中の前記医薬品有効成分の濃度は0.01から100重量%の範囲である請求項1乃至15のいずれか1項に記載の調製プロセス。
【請求項17】
前記溶液Bは、ジャケット付き撹拌反応器を用い、前記反応器に少なくとも1種の前記溶媒を添加し、少なくとも1種の前記医薬品有効成分を添加することにより調製する請求項12乃至16のいずれか1項に記載の調製プロセス。
【請求項18】
成分の添加の順序は限定されず、どのような順序でもよい請求項17に記載の調製プロセス。
【請求項19】
固体医薬品有効成分が、スクリュー型供給システム又は空気圧システムのような容積式設備により連続的に供給される請求項17又は18に記載の調製プロセス。
【請求項20】
前記固体医薬品有効成分はホッパーを使用して連続的に供給される請求項19に記載の調製プロセス。
【請求項21】
前記マイクロチャネル又は前記マイクロ反応器は、1000
マイクロメートル以下の横寸法を有する連続フロー反応器である請求項1に記載の調製プロセス。
【請求項22】
前記横寸法は200
マイクロメートル以下である請求項21に記載の調製プロセス。
【請求項23】
前記プロセスの流体力学的動圧は1バールから1500バールまでの範囲である請求項21又は22に記載の調製プロセス。
【請求項24】
前記プロセスの流体力学的動圧は250バールから1000バールまでの範囲である請求項23に記載の調製プロセス。
【請求項25】
前記溶液Bに対する前記溶液Aの供給流量比は0.1から10kg/kgの範囲である請求項1乃至24のいずれか1項に記載の調製プロセス。
【請求項26】
前記溶液Aと添加された前記固体APIの総量との供給流量比は0.01から10kg/kgの範囲である請求項1乃至25のいずれか1項に記載の調製プロセス。
【請求項27】
前記プロセスの温度は0℃から90℃の範囲である請求項1乃至26のいずれか1項に記載の調製プロセス。
【請求項28】
前記錯体の溶液及び/又は前記懸濁液からの前記錯体の単離は、1以上の乾燥技術を含む請求項1乃至27のいずれか1項に記載の調製プロセス。
【請求項29】
前記乾燥技術はスプレードライを含む請求項28に記載の調製プロセス。
【請求項30】
前記錯体の溶液及び/又は懸濁液からの前記錯体の単離は、バッチプロセス又は連続プロセスである請求項28又は29に記載の調製プロセス。
【請求項31】
前記錯体は粉末形態で単離される請求項28乃至30のいずれか1項に記載の調製プロセス。
【請求項32】
溶液及び/又は懸濁液、又は粉末形態で得られた前記錯体が、薬学的目的で使用されることを特徴とする請求項1乃至31のいずれか1項に記載の調製プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に医薬品有効成分(active pharmaceutical ingredients )(API’s)の錯体(complexes)に関し、特に1以上のシクロデキストリン系錯体、及びこの錯体を提供するための改良されたプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
いくつかの医薬品有効成分は低い水溶性を有し、これは体液中での医薬品有効成分の生物学的利用能(bioavailability)及び溶解度を低減する。現在、この課題を克服するためにいくつかの技術、例えば非晶質固体分散体(amorphous solid dispersions)、共結晶(co-drystals)、塩形成(salt formation)又はシクロデキストリン錯体化(cyclodextrin complexation)が使用できる。
【0003】
シクロデキストリンは、6、7又は8の反復単位の環状オリゴ糖化合物であり、拡大された疎水性キャビティ径(hydrophobic cavity diameter)を有する。これらは反復単位の数によってアルファ、ベータ又はガンマで表すことができる。シクロデキストリンは、例えば、デンプン(starch)の酵素変換(enzymatic conversion)により調製することができる。その外面の基は親水性であり、化学的に装飾され得る一方、その内面のキャビティは疎水性にすることができ、これにより例えば水溶性が低減した医薬品有効成分のような親油性分子(lipophilic molecules)の包接(inclusion)を可能にする。
【0004】
内面のシクロデキストリンキャビティ中の水溶性が低減された医薬品有効成分の包接、又はシクロデキストリン/医薬品有効成分錯体の形成は、水溶性の高い化合物、及びその結果として体液中での高い生物学的利用能につながる。
【0005】
現在の可溶性/生物学的利用能の課題を克服するシクロデキストリンの利点及び応用のより詳細な説明は、他の文献、すなわちLima Guedes 及びその他の2008年の刊行物「Ciclodextrinas: como adjuvante tecnologico para melhorar a biodisponiblidade de farmacos」中に見出される。このレビューは、一般論として、長年にわたるシクロデキストリンの医薬賦形剤としての利用の重要性を報告し、シクロデキストリンの主要な化学誘導体、その錯体化のメカニズム及びその生物製剤的及び毒性学的な意味合い(biopharmaceutical and toxicological implications)を詳細に説明している。
【0006】
シクロデキストリン/医薬品有効成分錯体の形成に使用される最も一般的な方法は、通常、シクロデキストリンを水に溶解し、次に固体形態の医薬品有効成分を先の溶液に添加するプロセスで特徴付けられる。例えば、撹拌及び/又は加熱を使用することにより、医薬品有効成分は水に部分的に溶解し、次にシクロデキストリンとの錯体が形成されて、溶液中にさらなる医薬品有効成分の溶解が可能になる。粉末形態の錯体を得るためには、例えば、ろ過又は沈殿のステップを要し、その後に乾燥する。
【0007】
文献に提示されている方法はいくつかの問題及び欠点を有する。すなわち水の大量の使用量、少量の錯体が形成されることによる低収率、及び高い工程所要時間(high process times)であり、最大の錯体濃度を達成するために24-172時間を必要とする。よって溶液中の医薬品有効成分の安定時間も超過してしまう。これらの欠点は、低いスループット(throughput)のために、シクロデキストリンの工業的利用の魅力を薄くしていると考えられる。さらに、このようなプロセスのスケールアップは一般に困難且つ煩雑である。2005年発行の米国特許第6884885号において、著者はシクロデキストリン濃度を増加させることにより第1の問題を解決することをクレームしているが、残りの問題に対する解決策を提供する他の指示は与えられていない。
【0008】
米国特許第5646131号及び他の多くの学術論文において、1以上の親水性ポリマーが、形成された錯体の濃度を増加させるために使用されている。これによりプロセスの費用が高くつき、また不利であると考えられる遊離ポリマー(free polymer)が最終の粉末中に存在することになる。
【0009】
米国公開第2003/0012774号及び国際公開第2008/052410号においては均質化プロセスが使用されており、γ-シクロデキストリン中のコエンザイムQ10の錯体化を増加させるための均質化によるエネルギーの導入について述べられている。両方の特許出願において、コエンザイムQ10は固体状態で添加され、可溶化及びその次の錯体化が必要となる。均質化に使用されるエネルギーは、コエンザイムQ10を、特に粒径を減少させることにより、シクロデキストリン溶液中に可溶化することに役立つ。
【0010】
国際公開第2015/114320号において、著者は医薬品有効成分及び/又は賦形剤の粒径及び粒径分布を制御可能な新規の大規模化可能なプロセスをクレームする。このプロセスは:当該医薬品有効成分及び/又は賦形剤が当該溶媒の一つの中に部分的に可溶である溶媒の混合物中に懸濁液を調製し;例えば均質化プロセスを使用して該懸濁液中の粒子のサイズを減少し;懸濁液を熟成し;溶媒の混合物を除去することにより熟成を停止することを含む。熟成ステップが粒径分布を制御するためのキーであることが示されたが、医薬品有効成分包接錯体の形成のためにはこのステップは不利になり得る。この錯体は急速に解離するからである。一般に、シクロデキストリン/API錯体の形成及び解離の速度は近似しており、その半減期は溶液中でほんの数千秒(a few thousands of second)である。これは、この錯体が連続的に形成され且つ解離していることを意味する[Lima Guedes et al., 2008]。
【0011】
刊行物「Physicochemical Characterizations of Ostholehydroxypropyl-β-cyclodextrin Inclusion Complexes with High-Pressure Homogenization Method」において、Liu及びその他は2010年に、マイクロ流動化(microfluidization)システムを利用した、医薬品有効成分としてオストール(Osthol)を含むヒドロキシプロピル-シクロデキストリン錯体化について報告している。この場合、高圧均質化装置(high pressure homogenizer)の次はろ過ステップ及び乾燥ステップが続く。この方法論は、高圧均質化装置の前の混合物や、高圧均質化装置中の3サイクル及び乾燥前のろ過の、より多くのプロセスステップを含むので、本発明よりも非効率である。
【0012】
前述の刊行物においては、シクロデキストリン溶液中での医薬品有効成分の溶解度が低いにも拘わらず、シクロデキストリンが存在するため、著者はその条件下で医薬品有効成分を溶解しようと試みている。これは時間の無駄、エネルギーの浪費と考えられる。また、参照した刊行物のいずれも、プロセスの経済性にとって重要な特徴である連続的なプロセスを提供していない。
【0013】
米国特許第6555139号、米国公開第2002/0086061号及び米国公開第2003/0091627号において、著者は、非溶媒、シクロデキストリンを溶解した水を使用して活性医薬成分を粉砕するマイクロ流動化システムを使用している。これらの刊行物の目的は、医薬品有効成分を錯体化せず、粒子サイズを減少させることである。これらの場合、医薬品有効成分はその固体形態を失わないが、本発明においては自発的な粒径の減少が医薬品有効成分とシクロデキストリンとの錯体化のために重要になる。これらの刊行物におけるシクロデキストリンは、液体の特定の特性を付与するためにのみ使用されており、医薬品有効成分の錯体化のためではない。
【0014】
Kulkarni及びその他の2013年の刊行物「Microfluidic Assembly of Cationic-β-Cyclodextrin:Hyaluronic Acid-Adamantane Host:Guest pDNA Nanoparticles」において、著者はマイクロ流体反応器(microfluidic reactor)を使用して全ての成分を混合し、生成した錯体の固体ナノ粒子をフラッシュナノ沈殿法(flash nanoprecipitation)を使用して沈殿させている。本発明は、錯体の溶液を得ることが、注射可能なシステムに液体状態で使用することができ、且つ任意に乾燥して経口送達に適した粒子を得ることができるため、有利であるということを考慮している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】米国特許第6884885号
【文献】米国特許第5646131号
【文献】米国公開第2003/0012774号
【文献】国際公開第2008/052410号
【文献】国際公開第2015/114320号
【文献】米国特許第6555139号
【文献】米国公開第2002/0086061号
【文献】米国公開第2003/0091627号
【非特許文献】
【0016】
【文献】Ciclodextrinas: como adjuvante tecnologico para melhorar a biodisponiblidade de farmacos (2008)
【文献】Physicochemical Characterizations of Ostholehydroxypropyl-β-cyclodextrin Inclusion Complexes with High-Pressure Homogenization Method (2010), 34: 1039-1048
【文献】Microfluidic Assembly of Cationic-β-Cyclodextrin:Hyaluronic Acid-Adamantane Host:Guest pDNA Nanoparticles (2013)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、公知のプロセスの欠点を伴わずに、シクロデキストリンと医薬品有効成分との間で錯体化するための改良されたプロセスを提供することにある。このプロセスは、所望の錯体を、より少ない時間、より高い錯体濃度、より低い溶媒量で、医薬品有効成分/シクロデキストリンの比率を増加できる可能性を有しつつ得ることができ、またエネルギー入力が自発的な方法で生じる。これら全ての要因は、プロセスの全体的な経済性に貢献する。
【0018】
現在の最新技術とは異なり、本発明は、高度な混合及び自発的な発熱(high levels of mixing and spontaneous heat generation)を伴うマイクロ流動化システムを使用して適当な溶媒中に溶解したシクロデキストリンと医薬品有効成分とから成る錯体を得る連続的なプロセスを提示する。これは、驚くべきことに、より短い時間で、高い錯体化効率を伴いつつ錯体を得ることを可能にし、また任意に、続いてスプレードライして固体材料を得ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、特に、短縮された時間でシクロデキストリン/医薬品有効成分錯体を得る、連続的な又は連続的でないプロセスを記述する。
【0020】
本発明によると、少なくとも1種のシクロデキストリンと少なくとも1種の医薬品有効成分との錯体の調製プロセスが提供され、当該調製プロセスは、
a.少なくとも1種のシクロデキストリンと少なくとも1種の溶媒とを含む第1の溶液(溶液A)を調製するステップと;
b.溶解した、部分的に溶解した、又は懸濁した少なくとも1種の医薬品有効成分を含む第2の溶液(溶液B)を調製するステップと;
c.マイクロ流動化システムにより溶液A及び溶液Bを混合して、少なくとも1種の錯体の溶液及び/又は懸濁液を生成するステップと;
d.溶液及び/又は懸濁液を単離し、及び/又は任意に乾燥するステップと;
e.任意に粉末形態の錯体を収集するステップ:を含んでいる。
【0021】
従って本発明は、好ましくはマイクロ流動化システムを使用してシクロデキストリンと医薬品有効成分との錯体を連続的に形成することによる医薬品有効成分(API)の増強された生物学的利用能に関する。別案として、調製プロセスは粉末形態の錯体を単離するスプレードライと組み合わせることもできる。より具体的には、本発明は、シクロデキストリンの第1の溶液を、医薬品有効成分(API)の第2の溶液、部分的な溶液、又は懸濁液、あるいは固体形態の医薬品有効成分(API)に、マイクロ流動化により組み合わせる連続的又は非連続的な錯体化方法に関する。第1の溶液と第2の溶液(又は部分的な溶液、懸濁液、固体等)とは、混和性でも非混和性でもよい。また本発明は、このような錯体を得るための時間の短縮に関し、及び錯体化ステップとその後に続くスプレードライステップとの組み合わせに関する。これは、高い錯体化効率を伴いつつ、本発明を連続的なプロセスにすることを可能にする。この得られた錯体を含む粉末は、高い薬物負荷(drug loading)を有する。従って本発明は、工程所要時間の短縮に関して利益を示す。
【0022】
この方法はバッチプロセスでも連続プロセスでもよい。
【0023】
溶液Aは、好ましくは、いずれかの置換基及びいずれかのキャビティサイズを含む少なくとも1種のシクロデキストリン、及び/又は高分子医薬賦形剤(a polymeric pharmaceutical excipient)を含む。シクロデキストリンは、例えば1種以上のα-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、スルホブチルエーテル-ベータ-シクロデキストリン(sulfobutylether・beta・cyclodextrin)、ヒドロプロピル-ベータ-シクロデキストリン(hydropropyl ・ beta- cyclodextrin)、メチル-ベータ-シクロデキストリン及び/又はマルトシル-ベータ-シクロデキストリン(maltosyl ・ beta ・ cyclodextrin)でもよい。特に好ましいシクロデキストリンはスルホブチルエーテル-ベータ-シクロデキストリンある。
【0024】
溶液Aは、好ましくは少なくとも1種の以下の溶媒:水、エタノール、メタノール、イソプロパノール、ジクロロメタンアセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアルデヒド又はジメチルアセトアミドを含む。
【0025】
溶液A中のシクロデキストリンの濃度は、好ましくは1重量%から50重量%までの範囲である。
【0026】
所望により、高分子医薬賦形剤が溶液A中に、例えば1重量%から20重量%までの濃度で、存在していてもよい。
【0027】
溶液AのpHは、一般的に1から14の範囲であり、好ましいpHは6から8までである。
【0028】
本発明の方法において、溶液Aは好ましくは、ジャケット付き撹拌反応器(jacketed reactor with agitation)を用い、反応器に少なくとも1種の溶媒を添加し、及び同じ反応器に少なくとも1種のシクロデキストリンを添加し、及び/又は同じ反応器に少なくとも1種の高分子医薬賦形剤を添加し、一般的には続いてpHを調整することにより、調製する。上記成分の添加の順序は限定されず、どのような順番でもよい。
【0029】
溶液Bは好ましくは、1種以上の溶媒に溶解され、1種以上の溶媒に部分的に溶解され、又は1種以上の溶媒に懸濁された、少なくとも1種の医薬品有効成分を含む。好ましくは、医薬品有効成分又はその薬学的に許容される誘導体は、チオエーテル(thiother)、アルコール、チオール、アルデヒド、ケトン、チオケトン、硝酸エステル、リン酸エステル、チオリン酸エステル、エステル、チオエステル、硫酸エステル、カルボン酸、ホスホン酸、スルホン酸、アミド、一級アミン、二級アミン、アンモニア、三級アミン、イミン、チオシアン酸塩、シアナミド、オキシム、ニトリル、ジアゾ、有機ハロゲン化物、ニトロ、S-複素環、チオフェン、N-複素環、ピロール、O-複素環、フラン、エポキシド、過酸化物、ヒドロキサム酸、イミダゾール及びピリジンから選択された少なくとも1つの官能基を有する。
【0030】
好ましい医薬品有効成分の例は、限定するものではないが、難溶性の(poorly soluble)有効化合物を含む。難溶性の化合物の例としては、限定するものではないが、フルコナゾール(fluoconazole)、テルコナゾール(terconazole)、ケトコナゾール(ketoconazole)又はサペルコナゾール(saperconazole)等のような、イトラコナゾール(itraconazole)又は関連薬物のような抗真菌剤(antifungal agents);グリセオフルビン(griseofulvin)及び関連化合物(例えばグリセオベルジン(griseoverdin))のような抗感染薬(anti-infective drugs);抗マラリア薬(例えばアトバコン(Atovaquone));アファチニブ(Afatinib)、アキシチニブ(Axitinib)、ボスチニブ(Bosutinib)、セツキシマブ(Cetuximab)、クリゾチニブ(Crizotinib)、ダサチニブ(Dasatinib)、エルロチニブ(Erlotinib)、フォスタマチニブ(Fostamatinib)、ゲフィチニブ(Gefitinib)、イブルチニブ(Ibrutinib)、イマチニブ(Imatinib)、ゼムラセニブ(Zemurasenib)、ラパチニブ(Lapatinib)、レンバチニブ(Lenvatinib)、ムブリチニブ(Mubritinib)またはニロチニブ(Nilotinibのようなプロテインキナーゼ阻害薬(protein kinase inhibitors);免疫システム変調薬(immune system modulators)(例えばシクロスポリン(cyclosporine));心臓血管薬[cardiovascular drugs](例えばジゴキシン(digoxin)及びスピロノラクトン(spironolactone));イブプロフェン(ibuprofen);ステロール(sterols)又はステロイド(steroids);ダナゾール(danazol)、アシクロビル(acyclovir)、ダプソン(dapsone)、インジナビル(indinavir)、ニフェジピン(nifedipine)、ニトロフラントイン(nitrofurantion)、フェニトイン(phentytoin)、リトナビル(ritonavir)、サキナビル(saquinavir)、スルファメトキサゾール(sulfamethoxazole)、バルプロ酸(valproic acid)、トリメトプリム(trimethoprin)、アセタゾールアミド(acetazolamide)、アザチオプリン(azathioprine)、イオパノ酸(iopanoic acid)、ナリジクス酸(nalidixic acid)、ネビラピン(nevirapine)、プラジカンテル(praziquantel)、リファンピシン(rifampicin)、アルベンダゾール(albendazole)、アミトリプチリン(amitrptyline)、アルテムエーテル(artemether)、ルメファントリン(lumefantrine)、クロロプロマジン(chloropromazine)、シプロフロキサシン(ciprofloxacin)、クロファジミン(clofazimine)、エファビレンツ(efavirenz)、ロピナビル(iopinavir)、葉酸(folic acid)、グリベンクラミド(glibenclamide)、ハロペリドール(haloperidol)、イベルメクチン(ivermectin)、メベンダゾール(mebendazole)、ニクロサミド(niclosamide)、ピランテル(pyrantel)、ピリメタミン(pyrimethamine)、レチノールビタミン(retinol vitamin)、スルファジアジン(sulfadiazine)、スルファサラジン(sulfasalazine)、トリクラベンダゾール(triclabendazole)、及びシンナリジン(cinnarizine)を含む群からの薬物が含まれる。
【0031】
溶液Bは好ましくは、少なくとも1つの以下の溶媒:水、エタノール、メタノール、イソプロパノール、ジクロロメタン、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド(di-methyl sulfoxyde)、ジメチルホルムアルデヒド(di-methyl formaldehyde)又はジメチルアセトアミドを含む。
【0032】
本発明において、溶液B中の1種以上の溶媒は、溶液A中の溶媒と同じでも異なっていてもよく、異なる場合には相互に混和性でも非混和性でもよい。
【0033】
溶液B中の医薬品有効成分の濃度は、好ましくは0.01重量%から100重量%までの範囲である。
【0034】
溶液Bは一般に、ジャケット付き撹拌反応器を用い、この反応器に少なくとも1種の溶媒を添加し、少なくとも1種の医薬品有効成分を添加することにより調製される。成分の添加の順序は限定されておらず、どのような順番でもよい。
【0035】
一つの態様においては、所望により、固体医薬品有効成分が、例えば、スクリュー型供給システム(screw-based feeding system)又は空気圧システム(pneumatic system)のような容積式設備(positive displacement equipment)により、連続的に供給されてもよい。
【0036】
一つの好ましい態様においては、3種の固体医薬品有効成分が、好ましくはホッパーを使用して連続的に供給される。
【0037】
マイクロ流動化は好ましくは、他の混和性又は非混和性の液体と混合された液体、あるいは固体化合物と混合された液体を、少なくとも1つのマイクロチャネル又はマイクロ反応器(micro-channel or micro-reactor)中に混合して移動させる(mix and displace)ことができる少なくとも1つの増圧ポンプ(intensifier pump)を含むシステム中で起きる。所望により、2以上のマイクロチャネル又はマイクロ反応器を使用できる。
【0038】
好ましくはマイクロチャネル又はマイクロ反応器は連続フロー反応器(continuous flow reactor)であり、好適には1000マイクロメートル以下の横寸法(lateral dimension)を有する。横寸法は200マイクロメートル以下でもよい。
【0039】
本プロセスの流体力学的圧力は、好ましくは1バールから1500バールまでの範囲であり、好適には250バールから1000バールまでの範囲でもよい。
【0040】
本発明の好ましい態様においては、溶液B又は固体医薬品有効成分に対する溶液Aの供給流量比は、約0.1から10kg/kgの範囲である。溶液Aと添加された医薬品有効成分の総量との供給流量比は、0.01から10kg/kgの範囲である。
【0041】
プロセス温度(process temperature)は、含まれる成分を考慮して、いずれかの適当な温度とすることができ、好適には0℃から90℃の範囲である。
【0042】
錯体の溶液及び/又は懸濁液からの錯体の単離は、どのような手段でもよいが、好ましくは1つ以上の乾燥技術を含む。特に好適な乾燥技術の一つはスプレードライを含む。
【0043】
本発明のプロセスにおいて、錯体の溶液及び/又は懸濁液からの錯体の単離は、バッチプロセスでも連続プロセスでもよい。
【0044】
好ましい態様においては、錯体は粉末形態で単離される。
【0045】
本発明のプロセスにより生成された錯体は、例えば医薬組成物の一部として、医療において利用できることが認識されるだろう。よって本発明は、溶液及び/又は懸濁液、又は粉末形態で得られた錯体が薬学的目的で使用されることにより特徴付けられる、これらの使用方法あるいはプロセスを提供する。
【0046】
好ましい態様においては、本発明は少なくとも1種のシクロデキストリンと少なくとも1種の医薬品有効成分との錯体の調製プロセスが提供され、調製プロセスは、
a)1種以上の溶媒中に少なくとも1種のシクロデキストリンを含む溶液Aの調製ステップ;
b)少なくとも1種の溶解又は懸濁した医薬品有効成分を含む溶液Bの調製。溶媒は溶液Aと同じでも異なっていてもよく、異なっている場合は混和性でも非混和性でもよい。別案として医薬品有効成分は、好ましくはホッパーやスクリュー型供給器である容積式設備を用いて、固体状態で添加するステップ;
c)キャビテーション(cavitation)を引き起こすように高圧チャンバに全ての成分を吸い出して混合する増圧ポンプを含むマイクロ流動化システムを使用しての前記溶液Aと溶液B又は固体状態の医薬品有効成分との連続混合し、次に混合物を少なくとも1つのマイクロチャネルに移動させ、錯体溶液を形成するステップ;
d)任意の、結晶化、ろ過又は乾燥、好ましくはスプレードライのようないずれかの分離方法による、任意の溶液からの錯体の連続的又は連続的でない分離のステップ;
を含む。
【0047】
本発明は、シクロデキストリンと少なくとも1種の医薬品有効成分との間の錯体を形成するための、より短い錯体化時間を提示する。このことは、驚くべきことに、所望の錯体の高い濃度を引き起こす高度な混合及び自発的な発熱のために、本発明をシクロデキストリン錯体の連続的な製造に使用することを可能にしている。例えば、スプレードライを組み合わせれば、同じ錯体を含む粉末を得ることができる。
【0048】
また本発明は、他の公知のプロセスよりも短い時間で、シクロデキストリンと錯体化した医薬品有効成分を高濃度で含む粉末を得るプロセスを提示する。
【0049】
優先的には、本発明はシクロデキストリン/医薬品有効成分錯体の連続的な生成、及びスプレードライを用いたそれらの連続的な単離を可能にする。
【0050】
本発明はマイクロ流動化システムを含む。マイクロ流動化システムは一般的に、他の混和性又は非混和性の液体と混合した液体、又は別案として固体化合物と混合した液体を、マイクロチャネルの組み合わせの中に混合して移動させる増圧ポンプを含む。マイクロチャネルは一般的に1000μm未満の横寸法の連続フロー反応器である。
【0051】
優先的には、本発明は2つの異なるセットアップ(setup)を用いている。
【0052】
セットアップAは、
a)溶液Aを調製する反応器;
b)固体医薬品有効成分を反応器a)に移動させるホッパー及びスクリュー型供給器のような容積式設備;
c)増圧ポンプ;
d)少なくとも1つのマイクロチャネルの組み合わせを含む。
任意に、スプレードライヤー、及び粉末の錯体を収集するサイクロン。
【0053】
セットアップBは、
a)溶液Aを調製する反応器;
b)溶液Bを調製する反応器;
c)増圧ポンプ;
d)少なくとも1つのマイクロチャネルの組み合わせ。
任意に、スプレードライヤー、及び粉末の錯体を収集するサイクロン。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1】本発明のプロセスの概略フローチャートである。
【
図2】セットアップAの概略図であり、a)は混合反応器、b)は容積式設備、c)は増圧ポンプ、d)は少なくとも1つのマイクロチャネルの組み合わせ、e)は乾燥チャンバ、及びf)はサイクロンである。
【
図3】セットアップBの概略図であり、a)は混合反応器、b)は第2の混合反応器、c)は増圧ポンプ、d)は少なくとも1つのマイクロチャネルの組み合わせ、e)は乾燥チャンバ、及びf)はサイクロンである。
【
図4】時間に対する形成された錯体濃度の表示を示す。点線は実施例1の方法を表す。1点鎖線は実施例2の方法を表す。実線は実施例3の方法を表す。
【
図5】
図4の実施例2(破線)及び3(実線)の最初の3時間の「ズームイン」に相当する。
【発明を実施するための形態】
【0055】
本発明は、シクロデキストリンと少なくとも1種の医薬品有効成分との錯体化のための連続的又は連続的でないプロセスを提示し、任意にその次に乾燥ステップが続く。乾燥ステップは、例えばスプレードライプロセスであるが、他の適当な乾燥プロセスが利用されうる。
【0056】
より具体的には、本発明は、少なくとも1種の溶解したシクロデキストリンを含む溶液Aと、少なくとも1種の医薬品有効成分が溶解又は懸濁した溶液Bとの、又は別案として好ましくはスクリュー型供給器を備えたホッパー設備であって、ストリームBを形成する、容積式設備により供給される固体医薬品有効成分との混合により、シクロデキストリンと少なくとも1種の医薬品有効成分との連続的又は連続的でない(すなわち非連続的な)錯体化のプロセスを提示する。次に増圧ポンプを使用して、ポンプ高圧チャンバ内にストリームAとストリームBを引き出してこれらを混合してキャビテーションを引き起こし、次に混合したストリームを少なくとも1つのマイクロチャネルに移動させる。これは、高せん断力混合を生じ、キャビテーションにより医薬品有効成分を粉砕すると摩擦により自発的に発熱し、そして驚くべきことに高濃度の錯体を含む錯体溶液が生成される。
【0057】
スプレードライステップを組み合わせた場合には、得られた錯体溶液は連続的又は連続的でなく乾燥され、粉末形態のシクロデキストリンと医薬品有効成分との錯体が生成される。
【0058】
溶液Aは、1種以上の溶媒を含む溶液であり、溶媒は好ましくは水、エタノール、メタノール、イソプロパノール、ジクロロメタン、アセトン、メチルエチルケトン、テトラハイドロフラン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアルデヒド又はジメチルアセトアミドから選択される。また溶液Aは、1種以上の溶解したシクロデキストリン又はシクロデキストリン置換体(substituted cyclodextrins)を含む。いずれのシクロデキストリン又はシクロデキストリン置換体も使用できるが、好ましい化合物は、例えば、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、スルホブチルエーテル-ベータ-シクロデキストリン、ヒドロプロピル-ベータ-シクロデキストリン、メチル-ベータ-シクロデキストリン及び/又はマルトシル-ベータ-シクロデキストリンを含む。また、いずれかの適当な医薬賦形剤は、例えば1重量%から20重量%の濃度で、溶液Aに添加可能である。1種以上のシクロデキストリンの濃度は、好ましくは1重量%から50重量%までである。溶液Aは1から14の範囲のpH値を有し、好ましくは6から8までのpH値である。溶液Aは、例えばジャケット付き撹拌反応器を使用して、反応器に溶媒を添加し、同じ反応器にシクロデキストリンを添加し、次にpH調整することにより、調製することができる。添加の順序は限定されず、どのような順番でもよい。
【0059】
溶液Bは1以上の溶媒を使用した溶液又は懸濁液からなり、溶媒は好ましくは水、エタノール、メタノール、イソプロパノール、ジクロロメタン、アセトン、メチルエチルケトン、テトラハイドロフラン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアルデヒド又はジメチルアセトアミドから選択される。また溶液Bは、溶媒中に溶解し、部分的に溶解し又は懸濁した少なくとも1種の医薬品有効成分(API)を含む。医薬品有効成分は好ましくは0.01重量%から100重量%までの濃度で存在する。別案として、医薬品有効成分は固体形態(solid form)で使用することもできる。溶液Bは、例えばジャケット付き撹拌反応器を使用し、1種以上の溶媒と少なくとも1種の医薬品有効成分を反応器に添加して調製される。添加の順序は限定されず、どのような順番でもよい。
【0060】
別案として、少なくとも1種の固体形態の医薬品有効成分を混合物に直接添加することもできる。好ましくは、固体形態の医薬品有効成分は、好ましくはホッパー又はスクリュー型供給器のような容積式設備により、又は空気圧手段により添加される。
【0061】
本発明によると、溶液Aと溶液Bとの間の最適な供給流量比(an optimum feed flow ratio)が存在する。従って、例えば、マイクロ流動化システムへの溶液Aの供給流量は、マイクロ流動化システムへの溶液Bの供給量の0.1から10倍とすることができる。0.5から5の比率、又は0.5から3、又は1から3の比率でも使用することができる(上記の定義の通り)。
【0062】
別案として、本発明においては、溶液Aの供給流量と添加される固体医薬品有効成分の総量との間の最適な比率が存在する。従って、例えばマイクロ流体設備への溶液Aの供給流量は添加される固体医薬品有効成分の総量の0.01から10倍とすることができる。0.1から10の比率、又は0.1から5、0.5から3又は1から3でも使用することができる(上記の定義の通り)。
【0063】
本発明によると、全ての化合物及び錯体の混合は、マイクロ流動化システム中で実行される。「マイクロ流動化」は当業者に理解されている用語である。用語「マイクロ反応」は、マイクロ反応器、マイクロミキサ、マイクロチャネル又はその他のマイクロ流体場(microfluidic field)を内部に有する構成物中における物理的及び/又は化学的な反応を含む技術を指す。用語「マイクロ流動化」は、これらのマイクロチャネルを通じての、高せん断力、キャビテーション、及びメソ-及びマイクロミキシングの範囲内の(in the meso- and micromixing range)均一な混合を含む、連続的な液体処理を包含する。マイクロ流動化システムは、例えば、連続的又は連続的でなく(すなわち非連続的に)、ポンプチャンバ内に、ストリームAと溶液B又は少なくとも1種の固体形態の医薬品有効成分を引き出し、次に流れの混合物を少なくとも1つのマイクロチャネルを通して押し出して、高圧、自発的な発熱、摩擦、キャビテーション、高レイノルズ数の高せん断混合、及び医薬品有効成分が固体状態の場合には粉砕を生じる増圧ポンプを含む。我々は、驚くべきことに、この加圧された経路の終端で、高濃度の錯体が得られることを見出した。錯体の形成は、少なくとも1種の医薬品有効成分の溶解、及びその結果としての少なくとも1種のシクロデキストリンのキャビティ中への包含を含む。マイクロチャネルの数は限定されないが、少なくとも1つ、好ましくは1から10の範囲である。マイクロチャネルの横寸法は約1000μm未満であり、好適には約200μm以下である。ポンプは1バールから1500バールまでの範囲の圧力を生み出し(好ましいサブレンジをご教示下さい)、混合液体の温度は自発的に上昇する。これは、混合液体を乾燥するのに費やすエネルギーが少なくて済むので、効率が向上することを表す。プロセスの最後には、シクロデキストリン/医薬品有効成分錯体の高濃度の溶液が、以前に報告されていたよりも短い時間で得られる。
【0064】
得られた溶液は、所望により、スプレードライヤー中に連続的に、又は連続的でなく、供給される。例えば、スプレードライヤーは錯体溶液を噴霧して小滴にするノズルを備えており、1から2000Kg/hの流速で乾燥ガスを通し、0から200度の範囲の温度を用いて、錯体溶液の小滴を乾燥して、サイクロン(cyclone)中に収集される固体の粒子とする。スプレードライ作業が終了すると、高い含有量のシクロデキストリン/医薬品有効成分錯体の粉末が得られる。
【0065】
本発明は連続的なプロセス又は連続的でないプロセスのどちらも可能である。例えば、連続的でない実施例、セットアップ(setup)Aにおいては、溶液Aと溶液B又は固体医薬品有効成分とを反応器中で予備混合し、マイクロ流動化し、次に同じ反応器に戻して再利用して、錯体溶液を生成する。任意に、この実施例による錯体溶液は、例えばスプレードライ又はフリーズドライを用いて乾燥される。
【0066】
連続的な実施例、例えばセットアップBにおいては、本発明は、溶液Aと溶液B又は固体医薬品有効成分とをマイクロ流動化して錯体溶液を生成する方法を開示する。任意に、錯体溶液は、例えばスプレードライヤーのような連続乾燥器に連続的に供給される。
【0067】
本発明は、工程時間ごとに得られる固体錯体の総量が増加することによる高いスループットを有する。これは、3つの主要な効果により達成される。すなわち:溶液A及び溶液Bにおける成分の短縮された溶解時間;錯体溶液中の錯体濃度を増加する、混合、粉砕及び自発的な温度のレベルの向上による短縮された錯体化時間;そして最後に、任意に、固体錯体を得るための、スプレードライヤーへの前記錯体溶液の連続的な供給である。
【0068】
<実施例>
実施例1:
60グラムの水を撹拌反応器に添加した。反応器に40グラムのスルホブチルエーテル-β-シクロデキストリンを添加した。懸濁液を、澄んだ溶液が形成されるまで連続的に撹拌した。次に1gの医薬品有効成分(ここではモデル薬物としてイトラコナゾールを使用した)を前記溶液に加えて、直ちにタイマーをセットした。形成した懸濁液を25℃で連続的に撹拌した。懸濁液は毎日2gをろ過してHPLCにより分析し、錯体濃度を測定した。結果を
図4に示す(破線)。
【0069】
実施例2:
水60グラムを撹拌反応器に添加した。この反応器に40グラムのスルホブチルエーテル-β-シクロデキストリンを添加した。懸濁液を澄んだ溶液が形成されるまで連続的に撹拌した。セットアップAを使用して、10グラムの医薬品有効成分(イトラコナゾール)を溶液に添加して、直ちにタイマーをセットした。形成した懸濁液を、圧力550バールで、室温で1時間、増圧ポンプに供給した。10分ごとに、懸濁液からの2gの試料をろ過し、HPLCにより分析して、錯体濃度を測定した。1時間後、溶液をスプレードライして粉末材料を生成した。結果を
図4に示す(一点鎖線)。
【0070】
実施例3:
水60グラムを撹拌反応器に添加した。この反応器に400グラムのスルホブチルエーテル-β-シクロデキストリンを添加した。懸濁液を澄んだ溶液が形成されるまで連続的に撹拌した。セットアップAを使用して、10グラムの医薬品有効成分(イトラコナゾール)を溶液に添加して、直ちにタイマーをセットした。形成した懸濁液を、圧力550バールで、室温で3時間、増圧ポンプに供給した。10分ごとに、懸濁液から2gの試料をろ過し、HPLCにより分析して、錯体濃度を測定した。3時間後、溶液をスプレードライして粉末材料を生成した。結果を
図4に示す(実線)。
【0071】
実施例4:
水60グラムを撹拌反応器に添加した。この反応器に40グラムのスルホブチルエーテル-β-シクロデキストリンを添加した。他の反応器に90グラムのジクロロメタンを添加した。この反応器に10グラムの医薬品有効成分(イトラコナゾール)を添加した。両方の溶液を澄んだ溶液が形成されるまで連続的に撹拌した。セットアップBを使用して、両方の溶液を、溶液Bにつき溶液Aが10kg/kg(10 kg/kg of solution A per solution B)の供給流量比で増圧ポンプに供給し、50℃で圧力1000バールを生じさせた。得られた溶液から試料を抽出して、錯体濃度を測定した。溶液はスプレードライして粉末材料を形成した。
【図 】