(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-09
(45)【発行日】2022-03-17
(54)【発明の名称】希少細胞を同定する組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
G01N 1/28 20060101AFI20220310BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20220310BHJP
G01N 33/483 20060101ALI20220310BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20220310BHJP
C12Q 1/04 20060101ALI20220310BHJP
【FI】
G01N1/28 J
G01N33/48 M
G01N33/48 P
G01N33/483 C
G01N33/53 Y
C12Q1/04
(21)【出願番号】P 2018547924
(86)(22)【出願日】2017-03-06
(86)【国際出願番号】 US2017020905
(87)【国際公開番号】W WO2017155869
(87)【国際公開日】2017-09-14
【審査請求日】2020-03-05
(32)【優先日】2016-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518316712
【氏名又は名称】エックス-ゼル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】特許業務法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バークディ,セバスチャン,チャクリット,プンヤラタバンデュ
【審査官】西浦 昌哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-158365(JP,A)
【文献】特表2008-516189(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0295404(US,A1)
【文献】特表2015-533210(JP,A)
【文献】特表2008-526226(JP,A)
【文献】特表2014-517324(JP,A)
【文献】特開2004-271497(JP,A)
【文献】特表2008-502913(JP,A)
【文献】米国特許第05104640(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00- 1/44
G01N 33/48-33/98
C12Q 1/00- 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞を固定する試薬系であって、
アルコールで希釈された少なくとも3%(重量/体積)のポリビニルピロリドン
を含む第1の固定バッファー、
少なくとも5%(体積/体積)のグリセロール、
少なくとも0.01%(体積/体積)の界面活性剤であって、ポリソルベート界面活性剤、ポリソルベート20、サポニン、トリトンX-100、トリトンX-114、ツイーン-40、ツイーン-80、ジギトニン、CHAPS、CHAPSO、n-ドデシル-β-D-マルトシド、ドデシル硫酸ナトリウム又はこれらの組み合わせを含む、界面活性剤、及び
少なくとも0.005%(重量/体積)のクロムミョウバン
を含む第2の固定バッファー
を含み、前記グリセロール、界面活性剤、及びクロムミョウバンが、生理食塩水で希釈された、
試薬系。
【請求項2】
細胞を固定する試薬系であって、
メタノールで希釈された3%~20%(重量/体積)のポリビニルピロリドン
を含む第1の固定バッファー、
5%~30%(体積/体積)のグリセロール、
0.01%~1%(体積/体積)の界面活性剤であって、該界面活性剤は、ポリソルベート界面活性剤、ポリソルベート20、サポニン、トリトンX-100、トリトンX-114、ツイーン-40、ツイーン-80、ジギトニン、CHAPS、CHAPSO、n-ドデシル-β-D-マルトシド、ドデシル硫酸ナトリウム又はこれらの組み合わせを含む、界面活性剤、及び
0.005%~1%(重量/体積)のクロムミョウバン、
を含む第2の固定バッファー
を含み、前記グリセロール、界面活性剤、及びクロムミョウバンが、生理食塩水で希釈された、試薬系。
【請求項3】
細胞を固定する試薬系であって、
5%(重量/体積)の、アルコールで希釈されたポリビニルピロリドン
を含む第1の固定バッファー、
15%(体積/体積)のグリセロール、
0.4%(体積/体積)の界面活性剤であって、該界面活性剤は、ポリソルベート界面活性剤、ポリソルベート20、サポニン、トリトンX-100、トリトンX-114、ツイーン-40、ツイーン-80、ジギトニン、CHAPS、CHAPSO、n-ドデシル-β-D-マルトシド、ドデシル硫酸ナトリウム又はこれらの組み合わせを含む、界面活性剤、及び
0.01%(重量/体積)のクロムミョウバン、
を含む第2の固定バッファー
を含み、前記グリセロール、界面活性剤、及びクロムミョウバンが、生理食塩水で希釈された、試薬系。
【請求項4】
前記細胞が循環腫瘍細胞である請求項1に記載の試薬
系。
【請求項5】
前記細胞が組織切片に包埋される請求項1に記載の試薬
系。
【請求項6】
前記試薬系が、非特異的な染色を減らすために染色の前に細胞上又は細胞内の非特異的な結合部位をブロックする試薬をさらに含み、該試薬は、
ポリビニルピロリドン又はグリセロール、
ポリソルベート界面活性剤、ポリソルベート20、サポニン、トリトンX-100、トリトンX-114、ツイーン-40、ツイーン-80、ジギトニン、CHAPS、CHAPSO、n-ドデシル-β-D-マルトシド、ドデシル硫酸ナトリウム又はこれらの組み合わせを含む、界面活性剤、及び
加水分解コラーゲン
をさらに含み、前記ポリビニルピロリドン又はグリセロール、界面活性剤、及び加水分解コラーゲンが生理食塩水で希釈される、請求項1記載の試薬
系。
【請求項7】
前記試薬系が、非特異的な染色を減らすために染色の前に細胞上又は細胞内の非特異的な結合部位をブロックする試薬をさらに含み、該試薬は、
少なくとも1%(体積/体積)のポリビニルピロリドン又はグリセロール、
少なくとも0.01%(体積/体積)の界面活性剤であって、該界面活性剤は、ポリソルベート界面活性剤、ポリソルベート20、サポニン、トリトンX-100、トリトンX-114、ツイーン-40、ツイーン-80、ジギトニン、CHAPS、CHAPSO、n-ドデシル-β-D-マルトシド、ドデシル硫酸ナトリウム又はこれらの組み合わせを含む、界面活性剤、及び
少なくとも0.1%(重量/体積)の加水分解コラーゲン
をさらに含み、前記ポリビニルピロリドン又はグリセロール、界面活性剤、及び加水分解コラーゲンが生理食塩水で希釈される、請求項1記載の試薬
系。
【請求項8】
前記試薬系が、少なくとも0.01Mグリシンをさらに含む請求項7に記載の試薬
系。
【請求項9】
非特異的な染色を減らすために染色の前に細胞上又は細胞内の非特異的な結合部位をブロックする試薬
系であって、
該試薬系が、
1%~50%(体積/体積)のポリビニルピロリドン又はグリセロール、
0.01%~2%(体積/体積)の界面活性剤であって、該界面活性剤は、ポリソルベート界面活性剤、ポリソルベート20、サポニン、トリトンX-100、トリトンX-114、ツイーン-40、ツイーン-80、ジギトニン、CHAPS、CHAPSO、n-ドデシル-β-D-マルトシド、ドデシル硫酸ナトリウム又はこれらの組み合わせを含む、界面活性剤、及び
0.1%~10%(重量/体積)の加水分解コラーゲン
を含み、前記ポリビニルピロリドン又はグリセロール、界面活性剤、及び加水分解コラーゲンが生理食塩水で希釈される、請求項7記載の試薬
系。
【請求項10】
前記試薬系が、0.01M~1Mグリシンをさらに含む請求項9に記載の試薬
系。
【請求項11】
非特異的な染色を減らすために染色の前に細胞上又は細胞内の非特異的な結合部位をブロックする試薬
系であって、
該試薬系が、
15%(体積/体積)のポリビニルピロリドン又はグリセロール、
0.4%(体積/体積)の界面活性剤であって、該界面活性剤は、ポリソルベート界面活性剤、ポリソルベート20、サポニン、トリトンX-100、トリトンX-114、ツイーン-40、ツイーン-80、ジギトニン、CHAPS、CHAPSO、n-ドデシル-β-D-マルトシド、ドデシル硫酸ナトリウム又はこれらの組み合わせを含む、界面活性剤、及び
2%(重量/体積)の加水分解コラーゲン
を含み、前記ポリビニルピロリドン又はグリセロール、界面活性剤、及び加水分解コラーゲンが生理食塩水で希釈される、請求項7記載の試薬
系。
【請求項12】
前記試薬系が、0.3Mグリシンをさらに含む請求項11に記載の試薬
系。
【請求項13】
前記加水分解コラーゲンがブタ由来である請求項11に記載の試薬
系。
【請求項14】
細胞を固定する方法であって、
アルコールで希釈された3%~20%(重量/体積)の第1のポリビニルピロリドン、
を含む第1の固定バッファーを前記細胞に-5℃より低い温度で加えること、並びに
5%~30%(体積/体積)のグリセロール、
0.01%~1%(体積/体積)の界面活性剤であって、該界面活性剤は、ポリソルベート界面活性剤、ポリソルベート20、サポニン、トリトンX-100、トリトンX-114、ツイーン-40、ツイーン-80、ジギトニン、CHAPS、CHAPSO、n-ドデシル-β-D-マルトシド、ドデシル硫酸ナトリウム又はこれらの組み合わせを含む、界面活性剤、及び
0.005%~1%(重量/体積)のクロムミョウバン、
を含む第2の固定バッファーを前記細胞に加えること
を含み、前記グリセロール、界面活性剤、及びクロムミョウバンが生理食塩水で希釈される方法。
【請求項15】
1%~50%(体積/体積)のポリビニルピロリドン又はグリセロール、
0.01%~2%(体積/体積)の界面活性剤であって、該界面活性剤は、ポリソルベート界面活性剤、ポリソルベート20、サポニン、トリトンX-100、トリトンX-114、ツイーン-40、ツイーン-80、ジギトニン、CHAPS、CHAPSO、n-ドデシル-β-D-マルトシド、ドデシル硫酸ナトリウム又はこれらの組み合わせを含む、界面活性剤、及び
0.1%~10%(重量/体積)の加水分解コラーゲン、
を含むブロッキングバッファーを前記細胞に加えること
をさらに含み、前記ポリビニルピロリドン又はグリセロール、界面活性剤、及び加水分解コラーゲンが、生理食塩水で希釈される請求項14に記載の方法。
【請求項16】
3%~30%(体積/体積)のポリビニルピロリドン、及び
0.005%~1%(重量/体積)のクロムミョウバン、
を含むバッファーに覆われている前記細胞をスライド上で細胞遠心分離すること
をさらに含み、前記ポリビニルピロリドン又はグリセロール及びロムミョウバンが生理食塩水で希釈される請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記スライドがゼラチンでコーティングされる請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記スライドがクロムミョウバンでさらにコーティングされる請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記細胞が循環腫瘍細胞である請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記細胞が組織切片に包埋される請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記細胞を標識一次抗体で染色すること
をさらに含む請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年3月7日に出願された"Systems and Methods for Fixing Cells"と題する米国仮特許出願第62/304,452号に基づく優先権を主張し、該開示は参照によりその全体が組み込まれる。
【0002】
さらに本出願は、2016年3月25日に出願された"Systems, Methods, and Compositions for Fixing and Staining Cells"と題する米国仮特許出願第62/313,250号に基づく優先権を主張し、該開示は参照によりその全体が組み込まれる。
【0003】
さらに本出願は、2016年3月25日に出願された"Systems and Methods for Fixing Cells"と題する米国仮特許出願第62/313,366号に基づく優先権を主張し、該開示は参照によりその全体が組み込まれる。
【0004】
さらに本出願は、2016年12月6日に出願された"Compositions and Methods for Identifying Circulating Tumor Cells"と題する米国仮特許出願第62/430,542号に基づく優先権を主張し、該開示は参照によりその全体が組み込まれる。
参照による援用
【0005】
本明細書中で言及される全ての刊行物及び特許出願は、個々の刊行物または特許出願が参照によりその全体が本明細書に組み込まれるように具体的かつ個別に示されているかのように、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0006】
本開示は、全体として、分子生物学及び顕微鏡法の分野に関する。本明細書に記載されるのは、細胞を固定及び染色し、細胞の異数性を検出するための装置、系、及び方法である。
【背景技術】
【0007】
循環腫瘍細胞(CTC)は、原発腫瘍から流出し、血管またはリンパ管の循環に入ったがん細胞である。CTCには、がんの増殖に資する体内の微環境に埋め込まれ、転移性がんをもたらすものがある。そのような転移性がんは、90%のがん関連死の原因である(Fidler, IJ. (2003) “The pathogenesis of cancer metastasis: the 'seed and soil' hypothesis revisited. Nat Rev Cancer 3, 453-458)。
【0008】
CTCは転移性疾患の病因において鍵となる役割を果たすので、研究が精力的且つ活発に行われている領域となっている。従来は、CTCは、密度及び細胞の大きさなどの物理的性質、細胞表面関連マーカー、並びに/又はCTCの免疫学的性質を用いて同定されてきた。残念なことに、そのような物理的性質、細胞表面関連マーカー、及び免疫学的性質は、疾患に寄与しない健康な細胞を同定することもあり、関連する病原性CTCを検出できないこともある。例えば、Veridex社のCellSearch(商標)は、上皮細胞接着分子(EpCAM)とサイトケラチンの両方に対する陽性染色を用いて、乳がん、結腸直腸がん及び前立腺がんにおけるCTCを同定する。しかし、50個の乳がん細胞株をEpCAM発現について調べたところ、20%の細胞株はEpCAMのレベルが低く、この20%はCellSearch(商標)法で見逃されているであろうことが示唆された(Punnoose et al., (2010) 'Molecular biomarker analyses using circulating tumor cells.' PLoS One 5, el2517.)。
【0009】
CTCを同定及び分析するための他の方法又は技術には制限があり、スループットが限定される、偽陽性の頻度が高い、細胞透過処理が必要である(その後の分析のほとんどで細胞が使えない)、EpCAM(上記を参照されたい)に依存する、非常に変わりやすいマーカー若しくは性質(例えば、大きさ、密度)に依存する、又は細胞が該方法の最後にはもはや生存してない。
【0010】
さらに、分析用に細胞を調製する方法は、典型的には、細胞及び/又は組織を損傷し、希少細胞集団を不明瞭にする可能性がある、アーティファクト、自家蛍光破片、又は細胞物質、及び/又は壊れた細胞膜の出現をもたらす。そのような方法では、架橋固定剤(例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドなど)又は沈殿固定剤(例えば、エタノール、メタノールなど)を含む固定剤を使用される。また、これらの固定剤は、細胞のリボ核酸(RNA)を保つことができず、その後の遺伝的解析及びトランスクリプトーム解析を、不可能ではないにしても困難にする。
【0011】
くわえて、複数の細胞バイオマーカーを染色し、染色された特徴又は生物学的特徴を染色されていない細胞の特徴とはっきりと区別することは困難である場合が多い。染色特異性を向上し、バックグラウンド染色を減少させ、信号対ノイズ比をよくするために、ブロッキングバッファーが一般的に使用される。ミルクから正常な血清や高度に精製されたタンパク質まで多岐にわたる物質が、細胞上の遊離部位に結合し、染色における抗体の非特異的結合を減らすためにブロッキングバッファー中に用いられている。しかし、一般的に使用されるブロッキングバッファーは、希少細胞、多抗体染色、及び4つ超える蛍光色素分子を必要とする染色には不十分である。
【0012】
分子レベルでCTCを解析して特徴付ける能力を上げることは、がんのスクリーニングと治療を強化し、生検などの侵襲的処置の必要性を減らすことになる。
【発明の概要】
【0013】
本開示の1つの態様は、細胞を固定する試薬系対象とする。幾つかの実施形態では、試薬系は、アルコールで希釈された少なくとも3%(重量/体積)の第1の親水性ポリマーを含む第1の固定バッファー、並びに少なくとも5%(体積/体積)の第2の親水性ポリマー、少なくとも0.01%(体積/体積)の界面活性剤、及び少なくとも0.005%(重量/体積)のクロムミョウバンを含む第2の固定バッファーを含む。幾つかの実施形態では、第2の親水性ポリマー、界面活性剤、及びクロムミョウバンは、生理食塩水で希釈される。幾つかの実施形態では、第1の固定バッファーは細胞に-5℃より低い温度で加えられる。
【0014】
本開示の別の態様は、細胞を固定する試薬系を対象とする。幾つかの実施形態では、試薬系は、アルコールで希釈された3%~20%(重量/体積)の第1の親水性ポリマーを含む第1の固定バッファー、並びに5%~30%(体積/体積)の第2の親水性ポリマー、0.01%~1%(体積/体積)の界面活性剤、及び0.005%~1%(重量/体積)のクロムミョウバンを含む第2の固定バッファーを含む。幾つかの実施形態では、第2の親水性ポリマー、界面活性剤、及びクロムミョウバンは、生理食塩水で希釈される。幾つかの実施形態では、第1の固定バッファーは細胞に-90℃~-5℃の温度で加えられる。
【0015】
本開示の別の態様は、細胞を固定する試薬系を対象とする。幾つかの実施形態では、試薬系は、アルコールで希釈された5%(重量/体積)の第1の親水性ポリマーを含む第1の固定バッファー、並びに15%(体積/体積)の第2の親水性ポリマー、0.4%(体積/体積)の界面活性剤、及び0.01%(重量/体積)のクロムミョウバンを含む第2の固定バッファーを含む。幾つかの実施形態では、第2の親水性ポリマー、界面活性剤、及びクロムミョウバンは、生理食塩水で希釈される。幾つかの実施形態では、第1の固定バッファーは細胞に-15℃より低い温度で加えられる。
【0016】
幾つかの実施形態では、第1の親水性ポリマーはポリビニルピロリドン及びグリセロールのうちの1つである。
【0017】
幾つかの実施形態では、第2の親水性ポリマーはグリセロール及びポリビニルピロリドンのうちの1つである。
【0018】
幾つかの実施形態では、アルコールはメタノールである。
【0019】
幾つかの実施形態では、界面活性剤はポリソルベート界面活性剤である。幾つかの実施形態では、界面活性剤はポリソルベート20である。
【0020】
幾つかの実施形態では、第1及び第2の親水性ポリマーは同じである。幾つかの実施形態では、第1及び第2の親水性ポリマーは異なる。
【0021】
本開示の別の態様は、細胞を固定するための試薬を対象とする。幾つかの実施形態では、試薬は、アルコールで希釈された少なくとも3%(重量/体積)の親水性ポリマーを含む。幾つかの実施形態では、試薬は細胞に-5℃より低い温度で加えられる。
【0022】
幾つかの実施形態では、細胞は循環腫瘍細胞である。幾つかの実施形態では、細胞は組織切片に包埋される。
【0023】
本開示の別の態様は、非特異的な染色を減らすために染色の前に細胞上又は細胞内の非特異的な結合部位をブロックする試薬を対象とする。幾つかの実施形態では、試薬は、親水性ポリマー、界面活性剤、及び加水分解コラーゲンを含む。幾つかの実施形態では、親水性ポリマー、界面活性剤、及び加水分解コラーゲンは、生理食塩水で希釈される。
【0024】
本開示の別の態様は、非特異的な染色を減らすために染色の前に細胞上又は細胞内の非特異的な結合部位をブロックする試薬を対象とする。幾つかの実施形態では、試薬は、少なくとも1%(体積/体積)の親水性ポリマー、少なくとも0.01%(体積/体積)の界面活性剤、及び少なくとも0.1%(重量/体積)の加水分解コラーゲンを含む。幾つかの実施形態では、親水性ポリマー、界面活性剤、及び加水分解コラーゲンは、生理食塩水で希釈される。
【0025】
幾つかの実施形態では、試薬は少なくとも0.01Mグリシンをさらに含む。
【0026】
本開示の別の態様は、非特異的な染色を減らすために染色の前に細胞上又は細胞内の非特異的な結合部位をブロックする試薬を対象とする。幾つかの実施形態では、試薬は、1%~50%(体積/体積)の親水性ポリマー、0.01%~2%(体積/体積)の界面活性剤、及び0.1%~10%(重量/体積)の加水分解コラーゲンを含む。幾つかの実施形態では、親水性ポリマー、界面活性剤、及び加水分解コラーゲンは、生理食塩水で希釈される。
【0027】
幾つかの実施形態では、試薬は0.01M~1Mのグリシンをさらに含む。
【0028】
本開示の別の態様は、非特異的な染色を減らすために染色の前に細胞上又は細胞内の非特異的な結合部位をブロックする試薬を含む。幾つかの実施形態では、試薬は、15%(体積/体積)の親水性ポリマー、0.4%(体積/体積)の界面活性剤、及び2%(重量/体積)の加水分解コラーゲンを含む。幾つかの実施形態では、親水性ポリマー、界面活性剤、及び加水分解コラーゲンは、生理食塩水で希釈される。
【0029】
幾つかの実施形態では、試薬0.3Mグリシンをさらに含む。
【0030】
幾つかの実施形態では、加水分解コラーゲンはブタ由来である。
【0031】
本開示の別の態様は、細胞を循環腫瘍細胞として同定する方法を対象とする。幾つかの実施形態では、該方法は、細胞試料の画像を撮って対象となる細胞を特定すること、染色された核領域の第1のピクセル強度を測定すること、バックグラウンド領域の第2のピクセル強度を測定すること、第2のピクセル強度を第1のピクセル強度から減算することによって対象となる細胞の倍数性状態を計算すること、及び対象となる細胞が循環腫瘍細胞であるかどうかを倍数性状態に基づいて判定することを含む。
【0032】
幾つかの実施形態では、対象となる細胞を特定することは、CD45陰性及びビメンチン陽性細胞を特定することを含む。
【0033】
幾つかの実施形態では、細胞試料は1つ以上の細胞を含む。
【0034】
幾つかの実施形態では、該方法は、細胞試料を核染色剤で染色して、対象となる細胞の染色された核領域を特定することをさらに含む。
【0035】
幾つかの実施形態では、バックグラウンド領域は対象となる細胞を含まない。
【0036】
幾つかの実施形態では、対象となる細胞は、倍数性状態が1未満である場合に、循環腫瘍細胞であると判定される。幾つかの実施形態では、対象となる細胞は、倍数性状態が2より大きい場合に、循環腫瘍細胞であると判定される。幾つかの実施形態では、対象となる細胞は増殖マーカーに対して陰性であり、倍数性状態が1と2の間の場合に、循環腫瘍細胞であると判定される。
【0037】
幾つかの実施形態では、該方法は、1つ以上の細胞をビメンチン染色剤及びCD45染色剤で染色することをさらに含む。
【0038】
幾つかの実施形態では、核染色剤は、DRAQ5、4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール、ヨウ化プロピジウム、ヘマトキシリン、ケルンエヒトロート色素、ヘキスト、及びメチルグリーンからなる群より選択される。
【0039】
幾つかの実施形態では、該方法は、1つ以上のアポトーシス細胞を除外することをさらに含む。
【0040】
幾つかの実施形態では、該方法は、1つ以上のアポトーシス細胞をカスパーゼ3に対する陽性染色によって特定することをさらに含む。
【0041】
幾つかの実施形態では、該方法は、1つ以上の有糸分裂細胞を除外することをさらに含む。
【0042】
幾つかの実施形態では、該方法は、リン酸化ヒストンH3又はKi-67に対する陽性染色によって1つ以上の有糸分裂細胞を特定することをさらに含む。
【0043】
本開示の別の態様は、細胞を循環腫瘍細胞として同定するコンピューター実装方法を対象とする。幾つかの実施形態では、該方法は、対象となる細胞の画像を得ること、対象となる細胞と関連する特徴が、核領域若しくはマーカー、細胞質領域若しくはマーカー、膜領域若しくはマーカー、細胞領域若しくはマーカー、又はそれらの組み合わせを含むように、特徴を特定すること、対象となるパラメーターが、蛍光強度、細胞の大きさ、細胞形状、細胞面積、細胞質面積、核面積、又はそれらの組み合わせを含むように、特徴を処理して対象となるパラメーターを抽出すること、対象となるパラメーターを解析すること、及び対象となるパラメーターが所定の閾値より大きいか又は小さい場合に、対象となる細胞を循環腫瘍細胞に分類することを含む。
【0044】
幾つかの実施形態では、特徴は核領域であり、対象となるパラメーターは核領域の蛍光強度である。
【0045】
幾つかの実施形態では、対象となるパラメーターが2より大きい場合、対象となる細胞は循環腫瘍細胞に分類される。幾つかの実施形態では、対象となるパラメーターが1未満である場合、対象となる細胞は循環腫瘍細胞に分類される。幾つかの実施形態では、対象となるパラメーターが1と2の間である場合、対象となる細胞は増殖マーカーに対して陰性であり、循環腫瘍細胞に分類される。
【0046】
幾つかの実施形態では、該方法は、画像を処理して画像の信号対ノイズの質をよくすることをさらに含む。
【0047】
幾つかの実施形態では、該方法は、対象となる細胞をビメンチン染色剤、CD45染色剤、及び核染色剤で染色することをさらに含む。
【0048】
幾つかの実施形態では、対象となる細胞は、CD45陰性及びビメンチン陽性である。
【0049】
幾つかの実施形態では、核染色剤は、DRAQ5、4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール、ヨウ化プロピジウム、ヘマトキシリン、ケルンエヒトロート色素、ヘキスト、及びメチルグリーンからなる群より選択される。
【0050】
幾つかの実施形態では、該方法は、対象となる細胞をアポトーシス細胞として除外することをさらに含む。幾つかのそのような実施形態では、該方法は、アポトーシス細胞をカスパーゼ3陽性として特定することをさらに含みうる。
【0051】
幾つかの実施形態では、該方法は、対象となる細胞を有糸分裂細胞として除外することをさらに含む。幾つかのそのような実施形態では、該方法は、有糸分裂細胞をリン酸化ヒストンH3又はKi-67として特定することをさらに含みうる。
【0052】
幾つかの実施形態では、解析は機械学習を用いて行われる。幾つかのそのような実施形態では、機械学習技術は、分類木、判別分析、k近傍法、単純ベイズ、サポートベクターマシン、深層学習、又は畳み込みニューラルネットワークを含む。
【0053】
幾つかの実施形態では、該方法は、対象となる細胞の分類の信頼スコアを計算することをさらに含む。
【0054】
本開示の別の態様は、細胞を固定する方法を含む。幾つかの実施形態では、該方法は、アルコールで希釈された3%~20%(重量/体積)の第1の親水性ポリマーを含む第1の固定バッファーを細胞に-5℃より低い温度で加えること、並びに5%~30%(体積/体積)の第2の親水性ポリマー、0.01%~1%(体積/体積)の界面活性剤、及び0.005%~1%(重量/体積)のクロムミョウバンを含む第2の固定バッファーを細胞に加えることを含む。幾つかの実施形態では、第2の親水性ポリマー、界面活性剤、及びクロムミョウバンは、生理食塩水で希釈される。
【0055】
幾つかの実施形態では、該方法は、ブロッキングバッファーを細胞に加えることをさらに含み、そのブロッキングバッファーは、1%~50%(体積/体積)親水性ポリマー、0.01%~2%(体積/体積)の界面活性剤、及び0.1%~10%(重量/体積)加水分解コラーゲンを含む。幾つかの実施形態では、第3の親水性ポリマー、界面活性剤、及び加水分解コラーゲンは、生理食塩水で希釈される。
【0056】
幾つかの実施形態では、第1、第2、及び第3の親水性ポリマーは同じである。幾つかの実施形態では、第1、第2、及び第3の親水性ポリマーは異なる。幾つかの実施形態では、第1、第2、及び第3の親水性ポリマーはグリセロール及びポリビニルピロリドンのうちの1つである。
【0057】
幾つかの実施形態では、該方法は細胞遠心分離することをさらに含む。幾つかのそのような実施形態では、細胞は、3%~30%(体積/体積)の第1の親水性ポリマー及び0.005%~1%(重量/体積)のクロムミョウバンを含むバッファーで覆われる。幾つかの実施形態では、第1の親水性ポリマー及びクロムミョウバンは生理食塩水で希釈される。
【0058】
幾つかの実施形態では、スライドはゼラチンでコーティングされる。幾つかの実施形態では、スライドはクロムミョウバンでさらにコーティングされる。
【0059】
幾つかの実施形態では、細胞は循環腫瘍細胞である。幾つかの実施形態では、細胞は組織切片に包埋される。
【0060】
幾つかの実施形態では、該方法は前記細胞を蛍光色素分子タグ抗体で染色することをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0061】
上記は概要であり、したがって必然的に詳細に制限がある。添付の図面を参照して、本技術の上記の態様、並びに他の態様、特徴、及び利点を、さまざまな実施形態に関連して以下に説明する。
【
図1】
図1は、細胞を固定する方法の1つの実施形態のフローチャートである。
【
図2】
図2は、循環腫瘍細胞としての細胞を同定する方法の1つの実施形態のフローチャートである。
【
図3】
図3は、細胞を循環腫瘍細胞として同定するコンピューター実装方法の1つの実施形態のフローチャートである。
【
図4】
図4は、
図1~3の方法を実行するように構成されたコンピューティングデバイスの概略図である。
図5A~8Bは、A549細胞を抗サイトケラチンフィコエリスリン(PE)で染色し、緑色で示した実験の結果を示す。
【
図5】
図5Aは、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で希釈した0%(重量/体積)PVP及び0.01%(重量/体積)硫酸クロムカリウムを含むバッファー中で細胞を細胞遠心分離した実験の結果の一例を示す。
図5Bは、PBSで希釈した1%(重量/体積)PVP及び0.01%(重量/体積)硫酸クロムカリウムを含むバッファー中で細胞を細胞遠心分離した実験の結果の一例を示す。
図5Cは、PBSで希釈した10%(重量/体積)PVP及び0.01%(重量/体積)硫酸クロムカリウムを含むバッファー中で細胞を細胞遠心分離した実験の結果の一例を示す。
図5Dは、PBSで希釈した20%(重量/体積)PVP及び0.01%(重量/体積)硫酸クロムカリウムを含むバッファー中で細胞を細胞遠心分離した実験の結果の一例を示す。
【
図6-1】
図6Aは、-10℃で100%メタノールを含む細胞外固定剤を用いて細胞を固定した実験の結果の一例を示す。
図6Bは、ドライアイス上で100%メタノールを含む細胞外固定剤を用いて細胞を固定した実験の結果の一例を示す。
図6Cは、-10℃で、メタノールで希釈した1%(重量/体積)PVPを含む細胞外固定剤を用いて細胞を固定した実験の結果の一例を示す。
図6Dは、ドライアイス上で、メタノールで希釈した1%(重量/体積)PVPを含む細胞外固定剤を用いて細胞を固定した実験の結果の一例を示す。
【
図6-2】
図6Eは、-10℃で、メタノールで希釈した5%(重量/体積)PVPを含む細胞外固定剤を用いて細胞を固定した実験の結果の一例を示す。
図6Fは、ドライアイス上で、メタノールで希釈した5%(重量/体積)PVPを含む細胞外固定剤を用いて細胞を固定した実験の結果の一例を示す。
図6Gは、-10℃で、メタノールで希釈した10%(重量/体積)PVPを含む細胞外固定剤を用いて細胞を固定した実験の結果の一例を示す。
図6Hは、ドライアイス上で、メタノールで希釈した10%(重量/体積)PVPを含む細胞外固定剤を用いて細胞を固定した実験の結果の一例を示す。
【
図7】
図7A~7Fは、A549細胞を抗サイトケラチン(緑色で示される)及び抗CD45(黄色で示される)で染色した実験の結果を示す。
図7Aは、PBSで希釈した15%(体積/体積)グリセロール及び0.01%(重量/体積)硫酸クロムカリウムを含む細胞内固定剤を用いて室温で細胞を固定した実験の結果の一例を示す。
図7Bは、PBSで希釈した15%(体積/体積)グリセロール及び0.01%(重量/体積)硫酸クロムカリウムを含む細胞内固定剤を用いて塩氷上(例えば、約-2℃)で細胞を固定した実験の結果の一例を示す。
図7Cは、PBSで希釈した8%(体積/体積)グリセロール及び0.01%(重量/体積)硫酸クロムカリウムを含む細胞内固定剤を用いて塩氷上(例えば約-2℃)で細胞を固定した実験の結果の一例を示す。
図7Dは、PBSで希釈した25%(体積/体積)グリセロール及び0.01%(重量/体積)硫酸クロムカリウムを含む細胞内固定剤を用いて塩氷上(例えば、約-2℃)で細胞を固定した実験の結果の一例を示す。
図7Eは、PBSで希釈した15%(体積/体積)グリセロール及び0%(重量/体積)硫酸クロムカリウムを含む細胞内固定剤を用いて塩氷上(例えば、約-2℃)で細胞を固定した実験の結果の一例を示す。
図7Fは、PBSで希釈した15%(体積/体積)グリセロール及び0.01%(重量/体積)硫酸クロムカリウムを含む細胞内固定剤を用いて塩氷上(例えば、約-2℃)で細胞を固定した実験の結果の一例を示す。
【
図8】
図8Aは、細胞をブロッキングバッファーでブロックした後に染色した実験の結果の一例を示す。ブロッキングバッファーには2%(重量/体積)のウシ血清アルブミン(BSA)が含まれた。
図8Bは、細胞をブロッキングバッファーでブロックした後に染色した実験の結果の一例を示す。ブロッキングバッファーには2%(重量/体積)の加水分解コラーゲンが含まれた。
【
図9】
図9Aは、10%(重量/体積)PVPと0.01%(重量/体積)硫酸クロムカリウムで
図1に記載の方法に従って固定したA549細胞でスパイクし、DRAQ5(パネルA)、AlexaFluor488-ビメンチン(パネルB)、AlexaFluor594-pan-サイトケラチン(パネルC)、PE-EpCam(パネルD)、Pacific Orange-CD45(パネルE)、及びBV421-CD14(パネルF)で染色した白血球を示す。
図9Bは、4%パラホルムアルデヒドで固定したA549細胞でスパイクし、DRAQ5(パネルA)、AlexaFluor488-ビメンチン(パネルB)、AlexaFluor594-pan-サイトケラチン(パネルC)、PE-EpCam(パネルD)、Pacific Orange-CD45(パネルE)、及びBV421-CD14(パネルF)で染色した白血球を示す。
【
図10】
図10は、ナノグラムの50万個の新鮮な細胞、又はパラホルムアルデヒド、メタノールを用いて、若しくは
図1に記載の方法に従って固定した細胞の全RNA含有量を示すヒストグラムを示す。
【
図11-1】
図11Aは、前立腺がん細胞試料のBV421-CD45染色の顕微鏡画像を示す。
図11Bは、前立腺がん細胞試料のDyLight594-ビメンチン染色の顕微鏡画像を示す。
【
図11-2】
図11Cは、前立腺がん細胞試料中の細胞のバックグラウンド領域と核領域を特定する顕微鏡画像を示す。核領域はDRAQ5で染色されている。
図11Dは、対象となる細胞の倍数性状態を示すヒストグラムを示す。
【
図12-1】
図12Aは、前立腺がん細胞試料のBV421-CD45染色の顕微鏡画像を示す。
図12Bは、前立腺がん細胞試料のDyLight594-ビメンチン染色の顕微鏡画像を示す。
【
図12-2】
図12Cは、前立腺がん細胞試料中の細胞のバックグラウンド領域と核領域の特定を含む顕微鏡画像の分析を示す。核領域はDRAQ5で染色されている。
図12Dは、対象となる細胞の倍数性状態を示すヒストグラムを示す。
【
図13-1】
図13Aは、前立腺がん細胞試料のBV421-CD14染色の顕微鏡画像を示す。
図13Bは、前立腺がん細胞試料のPacific Orange-CD45染色の顕微鏡画像を示す。
【
図13-2】
図13Cは、前立腺がん細胞試料のAlexaFluor488-ビメンチン染色の顕微鏡画像を示す。
図13Dは、前立腺がん細胞試料中の細胞のバックグラウンド領域と核領域の特定を含む顕微鏡画像の分析を示す。核領域はDRAQ5で染色されている。
図13Eは、対象となる細胞の倍数性状態を示すヒストグラムを示す。
【
図14-1】
図14Aは、前立腺がん細胞試料のBV421-CD14染色の顕微鏡画像を示す。
図14Bは、前立腺がん細胞試料のPacific Orange-CD45染色の顕微鏡画像を示す。
【
図14-2】
図14Cは、前立腺がん細胞試料のAlexaFluor488-ビメンチン染色の顕微鏡画像を示す。
図14Dは、前立腺がん細胞試料中の細胞のバックグラウンド領域と核領域の特定を含む顕微鏡画像の分析を示す。核領域はDRAQ5で染色されている。
図14Eは、対象となる細胞の倍数性状態を示すヒストグラムを示す。
【
図15-1】
図15Aは、前立腺がん細胞試料のAlexaFluor488-CD45染色の顕微鏡画像を示す。
図15Bは、前立腺がん細胞試料のPE-リン酸化セリン10ヒストンH3染色の顕微鏡画像を示す。
【
図15-2】
図15Cは、前立腺がん細胞試料のAlexaFluor488-ビメンチン染色の顕微鏡画像を示す。
図15Dは、前立腺がん細胞試料中の細胞のバックグラウンド領域と核領域の同定を含む顕微鏡画像の分析を示す。核領域はDRAQ5で染色されている。
図15Eは、対象となる細胞の倍数性状態を示すヒストグラムを示す。
【
図16-1】
図16Aは、前立腺がん細胞試料のBV421-CD34染色の顕微鏡画像を示す。
図16Bは、前立腺がん細胞試料のPacific Orange-CD45染色の顕微鏡画像を示す。
【
図16-2】
図16Cは、前立腺がん細胞試料のAlexaFluor488-ビメンチン染色の顕微鏡画像を示す。
図16Dは、前立腺がん細胞試料中の細胞のバックグラウンド領域と核領域の同定を含む顕微鏡画像の分析を示す。核領域はDRAQ5で染色されている。
図16Eは、対象となる細胞の倍数性状態を示すヒストグラムを示す。
【
図17-1】
図17Aは、前立腺がん細胞試料のBV421-CD14染色の顕微鏡画像を示す。
図17Bは、前立腺がん細胞試料のPacific Orange-CD45染色の顕微鏡画像を示す。
図17Cは、前立腺がん細胞試料のAlexaFluor488-ビメンチン染色の顕微鏡画像を示す。
【
図17-2】
図17Dは、前立腺がん細胞試料中の細胞のバックグラウンド領域と核領域の同定を含む顕微鏡画像の分析を示す。核領域はDRAQ5で染色されている。
図17Eは、対象となる細胞の倍数性状態を示すヒストグラムを示す。
【0062】
示された実施形態は単なる例であり、本開示を限定することを意図するものではない。概略図は、特徴及び概念を説明するために描かれており、必ずしも縮尺通りに描かれていない。
【発明を実施するための形態】
【0063】
上記は概要であり、したがって必然的に詳細に制限がある。本技術の上記の態様、並びに他の態様、特徴、及び利点を、さまざまな実施形態に関連して以下に説明する。以下の実施形態を含むことは、本開示をこれらの実施形態に限定することを意図するのではなく、当業者が企図された発明を作製し、使用することを可能にすることを意図する。本明細書に提示される発明の対象の趣旨又は範囲から逸脱することなく、他の実施形態を利用し、改変を行うことができる。本開示の態様は、本明細書に記載及び例示されているように、すべてが明示的に企図され、本開示の一部をなすさまざまな異なる組成(formulations)で構成、組み合わせ、改変、及び設計することができる。
【0064】
明細書及び請求項で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」には、文脈から明らかにそうでないことが示されない限り、単数と複数の両方の参照が含まれる。例えば、「細胞」という用語は、複数の細胞を包含しうるか、又は複数の細胞を含むことが企図される。時には、請求項及び開示は、「複数の」、「1つ以上の」、又は「少なくとも1つの」などの用語を含むことができるが、そのような用語がないことは、複数が考えられていないこと意味するものではなく、複数が考えられていないことを意味すると解釈されるべきではない。
【0065】
「約」又は「およそ」という用語は、(例えば長さ又は圧力を定める)数字の指定又は範囲の前に使用される場合、値が(+)又は(-)5%、1%、又は0.1%変動しうる近似値を指す。本明細書で提供される数値範囲はすべて、記述された始めの数と終わりの数を含む。「実質的に」という用語は、物質、組成物、又は方法の大部分(すなわち、50%超)又は本質的にすべてを示す。
【0066】
本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」又は「含む(comprises)」という用語は、組成物及び方法が列挙された要素を含み、くわえて任意の他のany other要素を含みうることを意味することを意図する。「から本質的になる(Consisting essentially of)」とは、組成物及び方法が列挙された要素を含み、記述された目的のための組み合わせに本質的に重要な他の要素を除外することを意味するものとする。したがって、本明細書で定められる要素から本質的になる組成物又は方法は、特許請求される開示の基本的及び新規の特徴に実質的に影響を与えない他の材料、特徴、又はステップを排除しないことになる。「からなる(Consisting of)」とは、組成物及び方法が列挙された要素を含み、些細な又は重要でない要素又はステップ以上のいずれのものを排除することを意味するものとする。これらの移行句の各々によって定義される実施形態は本開示の範囲内である。
【0067】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載の組成物、方法、及び系は、細胞を固定及び/又は染色するために使用される。例えば、細胞としては有核細胞が挙げられうる。幾つかの実施形態では、有核細胞としては、白血球、成熟細胞の前駆体、幹細胞、骨髄細胞、循環腫瘍細胞、がん細胞、体細胞、生殖系列細胞、懸濁液中の細胞、表面に付着した細胞、組織若しくは組織切片中の細胞、又はその他の形の細胞が挙げられる。
【0068】
幾つかの実施形態では、細胞は1つ以上の固定剤又は固定バッファーで固定される。固定バッファーは、架橋固定剤、沈殿固定剤、酸化剤、水銀剤、及び/又はピクリン酸塩を含みうる。幾つかの実施形態では、固定剤は、メタノール、エタノール、プロパノール、その他のアルコール、又は混合された2つ以上のアルコールうちの1つ以上である。例えば、2つのアルコールは、5%:95%の第1のアルコール:第2のアルコール~95%:5%の第1のアルコール:第2のアルコールの範囲の比で混合することができる。幾つかの実施形態では、固定剤はアセトン単独又はアルコールとの組み合わせである。例えば、アルコールとアセトンは、5%:95%アセトン:アルコール~95%:5%アセトン:アルコールの範囲の比で混合することができる。
【0069】
幾つかの実施形態では、固定剤は、生体適合性の保湿剤、親水性ポリマー、又は吸湿性ポリマーを含みうる。例えば、固定剤としては、グリセロール、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)、デキストラン、メチルセルロース、ポリオキシエチレン(POE)、ゼラチン、又はその他の吸湿性若しくは親水性ポリマーが挙げられうる。
【0070】
幾つかの実施形態では、1つ以上の試薬、固定剤、又はアルコールは、希釈剤、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、生理食塩水、水、緩衝生理食塩水、又は任意の他のタイプの生物学的バッファーで希釈される。幾つかの実施形態では、希釈剤のpHは中性である。幾つかの実施形態では、pHは6.5~8である。1つの実施形態では、pHは実質的に又は約7である。1つの実施形態では、pHは実質的に又は約7.4である。
【0071】
幾つかの実施形態では、1つ以上の試薬、固定剤、又はアルコールは、重量/体積(w/v)パーセント、体積/体積(v/v)パーセント、モル濃度、総体積若しくは総重量のパーセント、オンス、ミリリットル、ミリグラム、若しくはグラム、又は用途に適したその他の測定単位によって測定される。
【0072】
幾つかの実施形態では、細胞は、容器内又はその上で固定及び/又は染色することができる。例えば、容器としては、試験管、マイクロタイタープレート、キャピラリープレート、又はキャピラリーギャップ染色用カバープレート付き若しくは該カバープレート無しスライド、又はその他の装置(apparatus)若しくは装置(device)が挙げられる。
【0073】
幾つかの実施形態では、容器はコーティングされておらず、その結果細胞は容器の表面に結合する。幾つかの実施形態では、容器はコーティングされており、その結果細胞の容器への結合がコーティングによって促進される。例えば、コーティングとしては、ゼラチン、ポリ-L-リジン、コラーゲン、ラミニン、エンタクチン、ヘパリン硫酸、及び/又はプロテオグリカンが挙げられうる。1つのそのような実施形態では、容器はゼラチンでコーティングされる。ゼラチンは、固定剤、例えばクロムミョウバン又はクロム(III)塩を含みうる。
【0074】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載の本発明の1つ以上のバッファー、固定剤、容器、又は他の構成要素は、個別に、又は試薬系として若しくはキットでセットになって、販売、商品化、市販、宣伝、又はそうでなければ包装される。試薬系又はキットは、1つ以上のバッファー、固定剤、1つ以上の細胞を受ける容器、1つ以上の染色剤、1つ以上の抗体、及び/又は本明細書に記載の方法のすべて若しくは一部を完了するためのその他の構成要素を含みうる。
【0075】
本明細書では、細胞試料中の希少細胞を同定する方法が開示される。幾つかの実施形態では、希少細胞は循環腫瘍細胞(CTC)である。CTCとしては、循環腫瘍由来内皮細胞、腫瘍関連マクロファージ、又は他の腫瘍由来又は関連細胞が挙げられうる。CTCは、細胞試料、例えば、限定されないが、血液試料、リンパ試料、組織試料若しくは切片、生検試料、又は他の体液若しくは組織試料中で同定されうる。細胞試料としては、生細胞、透過処理した細胞、固定細胞、染色した細胞、又は他の処理済み細胞型が挙げられうる。
組成物
【0076】
本明細書に記載されるように、細胞を固定するための試薬系又はキットは、1つ以上の試薬、バッファー、及び/又は固定剤を含む。試薬系は、細胞を保存し、並びに/又は染色及び/若しくは分析のために細胞を調製する働きをする。幾つかの実施形態では、試薬系は、第1の固定バッファー又は細胞外固定剤を含む。幾つかの実施形態では、試薬系は、第2の固定バッファー又は細胞内固定剤を含む。1つの実施形態では、細胞外固定剤と細胞内固定剤をあわせて1つのバッファー又は試薬が作られる。1つの実施形態では、細胞外固定剤と細胞内固定剤は、別々に、連続して又は実質的に同時に使用される。
【0077】
幾つかの実施形態では、試薬系又はキットは細胞外固定剤を含む。細胞外固定剤は、細胞の外表面又は細胞外膜を固定又は保存する働きをする。細胞外固定剤は、アルコール又はアセトン及び親水性又は吸湿性ポリマーを含む。アルコールの例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、及びペンタノールが挙げられる。親水性又は吸湿性ポリマーの例としては、グリセロール、PVP、PEG、デキストラン、メチルセルロース、POE、コラーゲン、及びゼラチンが挙げられる。幾つかの実施形態では、細胞外固定剤中のアルコールは、2つ以上のアルコールの混合物を含む。幾つかの実施形態では、親水性又は吸湿性ポリマーは、2つ以上の親水性又は吸湿性ポリマーの混合物を含む。
【0078】
幾つかの実施形態では、細胞外固定剤は、アルコールで希釈された親水性ポリマーを含む。親水性ポリマーは、固定過程の間に細胞内の水分を保ち、固定過程の間及びその後の細胞の完全性を向上する働きをする。幾つかの実施形態では、細胞外固定剤は、少なくとも3%重量/体積(w/v)の親水性ポリマーを含む。幾つかの実施形態では、細胞外固定剤は、少なくとも5%(重量/体積)の親水性ポリマーを含む。幾つかの実施形態では、細胞外固定剤は、3%~20%(重量/体積)の親水性ポリマーを含む。幾つかの実施形態では、細胞外固定剤は、5%~20%(重量/体積)の親水性ポリマーを含む。1つの実施形態では、細胞外固定剤は、アルコールで希釈された5%(重量/体積)の親水性ポリマーを含む。幾つかの実施形態では、細胞外固定剤は、1%、3%、5%、10%、15%、又は20%(重量/体積)の親水性ポリマーを含む。例えば、親水性ポリマーとしては、PVP、グリセロール、PEG、又は2つ以上の組み合わせを挙げることができ、アルコールとしては、メタノール、エタノール、又は両方の組み合わせを挙げることができる。幾つかの実施形態では、アルコールは、アセトンと置き換えられるか、又はアセトンと組み合わせて使用される。
【0079】
幾つかの実施形態では、細胞外固定剤は、-5℃より低い又は-5℃未満の温度で細胞に加えられる。幾つかの実施形態では、細胞外固定剤は、-10℃未満の温度で細胞に加えられる。幾つかの実施形態では、細胞外固定剤は、-20℃未満又は-20℃に等しい温度で細胞に加えられる。幾つかの実施形態では、細胞外固定剤は、-10℃、-60℃の温度、又はその間の任意の温度で細胞に加えられる。幾つかの実施形態では、細胞外固定剤は、-15℃と-30℃を含むその間の温度で細胞に加えられる。例えば、幾つかの実施形態では、細胞外固定剤は、-15℃、-20℃、-25℃、-30℃、-40℃、-50℃、-60℃、-70℃、-80℃、-90℃、-100℃、又は-110℃に等しい、実質的に等しい、又はおおよそ等しい温度で細胞に加えられる。1つの実施形態では、細胞外固定剤は、-15℃未満又は-15℃より低い温度で細胞に加えられる。1つの実施形態では、細胞外固定剤は、-60℃未満又は-60℃より低い温度で細胞に加えられる。幾つかの実施形態では、目標温度又は温度範囲は、細胞又は細胞を含む容器を、ドライアイス、液体窒素、目標温度に調整された冷凍庫、又は目標温度に調整された冷凍装置に置くことによって達成される。
【0080】
幾つかの実施形態では、試薬系又はキットは細胞内固定剤を含む。細胞内固定剤は、細胞の細胞内区画又は細胞内領域を固定又は保存し、染色剤又は抗体が細胞の細胞内区画又は領域に達することができる手段、経路、又は穴を提供する働きをする。細胞内固定剤は、親水性又は吸湿性ポリマー、界面活性剤、乳化剤、又は界面活性剤(surfactant)、及び固定剤を含む。親水性又は吸湿性ポリマーの例としては、グリセロール、PVP、PEG、デキストラン、メチルセルロース、POE、コラーゲン、及びゼラチンが挙げられる。幾つかの実施形態では、親水性又は吸湿性ポリマーは2つ以上の親水性又は吸湿性ポリマーの混合物を含む。幾つかの実施形態では、界面活性剤は、非イオン性、イオン性(すなわち、カチオン性若しくはアニオン性)、又は双性イオン性である。界面活性剤の例としては、サポニン、トリトンX-100、トリトンX-114、ツイーン-20(すなわち、ポリソルベート20)、ツイーン-40、ツイーン-80、CHAPS、CHAPSO、及びドデシル硫酸ナトリウム(SDS)が挙げられる。固定剤の例としては、重クロム酸アンモニウム、硫酸クロムカリウム(すなわちクロムミョウバン)、クロム酸、塩化クロミル、クロム酸カリウム、重クロム酸カリウム、カルボジイミド(すなわちメタンジイミン)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)、及びカルボキシメチルセルロース(CMC)が挙げられる。
【0081】
幾つかの実施形態では、細胞内固定剤は親水性ポリマーを含む。幾つかの実施形態では、細胞内固定剤は、生理食塩水、水、リン酸緩衝生理食塩水、又は任意の緩衝溶液(buffer solution)で希釈された少なくとも5%(重量/体積)の親水性ポリマーを含む。幾つかの実施形態では、細胞内固定剤は、少なくとも10%(重量/体積)の親水性ポリマーを含む。幾つかの実施形態では、細胞内固定剤は、少なくとも15%(重量/体積)の親水性ポリマーを含む。幾つかの実施形態では、細胞内固定剤は、5%~30%(重量/体積)の親水性ポリマーを含む。幾つかの実施形態では、細胞内固定剤は、10%~30%(重量/体積)の親水性ポリマーを含む。幾つかの実施形態では、細胞内固定剤は、15%~30%(重量/体積)の親水性ポリマーを含む。幾つかの実施形態では、細胞内固定剤は、8%、15%、20%、25%、又は30%(重量/体積)の親水性ポリマーを含む。1つの実施形態では、細胞内固定剤は、生理食塩水で希釈された15%(重量/体積)の親水性ポリマーを含む。例えば、親水性ポリマーとしては、PVP、グリセロール、PEG、又は2つ以上の組み合わせが挙げられうる。
【0082】
幾つかの実施形態では、細胞内固定剤は界面活性剤を含む。界面活性剤は、細胞の細胞外膜に穴をあけ、細胞の細胞内区画又は領域に到達するようにバッファー、抗体、又は染色剤の経路、手段、又は経路を提供する働きをする。細胞内固定剤は、生理食塩水、水、リン酸緩衝生理食塩水、又は任意の緩衝溶液で希釈された少なくとも0.01%(容積/容積)(v/v)の界面活性剤を含む。幾つかの実施形態では、細胞内固定剤は、少なくとも0.2%(体積/体積)の界面活性剤を含む。幾つかの実施形態では、細胞内固定剤は、少なくとも0.4%(体積/体積)の界面活性剤を含む。幾つかの実施形態では、細胞内固定剤は、0.01%~1%(体積/体積)の界面活性剤を含む。幾つかの実施形態では、細胞内固定剤は、0.2%~0.6%(体積/体積)の界面活性剤を含む。幾つかの実施形態では、細胞内固定剤は、0.4%~1%(体積/体積)の界面活性剤を含む。1つの実施形態では、細胞内固定剤は、生理食塩水で希釈された0.4%(体積/体積)の界面活性剤を含む。幾つかの実施形態では、細胞内固定剤は、0.1%、0.2%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、又は1%(体積/体積)の界面活性剤を含む。例えば、界面活性剤としては、ツイーン-20、ツイーン-80、トリトンX-100、ジギトニン、サポニン、n-ドデシル-β-D-マルトシド、その他の任意の界面活性剤、又は2つ以上の界面活性剤の組み合わせが挙げられうる。
【0083】
幾つかの実施形態では、細胞内固定剤は固定剤をさらに含む。固定剤は、細胞の内部又は細胞内領域若しくは区画を固定又は保存する働きをする。細胞内固定剤は、生理食塩水、水、リン酸緩衝生理食塩水、又は任意の緩衝溶液で希釈された少なくとも0.005%(重量/体積)の固定剤を含む。幾つかの実施形態では、細胞内固定剤は、少なくとも0.008%(重量/体積)の固定剤を含む。幾つかの実施形態では、細胞内固定剤は、少なくとも0.01%(重量/体積)の固定剤を含む。幾つかの実施形態では、細胞内固定剤は、0.008%~0.5%(重量/体積)の固定剤を含む。幾つかの実施形態では、細胞内固定剤は、0.01%~0.1%(重量/体積)の固定剤を含む。1つの実施形態では、細胞内固定剤は、生理食塩水で希釈された0.01%(重量/体積)の固定剤を含む。幾つかの実施形態では、細胞内固定剤は、0.005%、0.006%、0.007%、0.008%、0.009%、0.01%、0.2%、0.3%、0.4%、又は0.5%(重量/体積)の固定剤を含む。例えば、固定剤としては、重クロム酸アンモニウム、硫酸クロムカリウム(すなわち、クロムミョウバン)、塩化クロミル、クロム酸カリウム、重クロム酸カリウム、カルボジイミド(すなわち、メタンジイミン)、EDC、CMC、又は2つ以上の固定剤の組み合わせが挙げられうる。
【0084】
幾つかの実施形態では、細胞内固定剤は、凍結温度未満の温度(例えば0℃未満)の温度で細胞に加えられる。幾つかの実施形態では、細胞内固定剤は、1℃より低い又は1℃未満の温度で細胞に加えられる。幾つかの実施形態では、細胞内固定剤は、0℃と-10℃を含む又はその間の温度で細胞に加えられる。幾つかの実施形態では、細胞内固定剤は、1℃と-5℃を含む又はその間の温度で細胞に加えられる。1つの実施形態では、細胞内固定剤は、実質的に0℃に等しい又約0℃の温度で細胞に加えられる。幾つかの実施形態では、細胞内固定剤は、-5℃、-4℃、-3℃、-2℃、-1℃、0℃、又は1℃で細胞に加えられる。幾つかの実施形態では、目標温度又は温度範囲は、細胞又は細胞を含む容器を、氷、塩氷、液体窒素、目標温度に調整された冷凍庫、又は目標温度に調整された冷凍装置に置くことによって達成される。
【0085】
幾つかの実施形態では、細胞外固定剤に使用される親水性ポリマーは、細胞内固定剤に使用される親水性ポリマーと同じである。幾つかの実施形態では、細胞外固定剤に使用される親水性ポリマーは、細胞内固定剤に使用される親水性ポリマーと異なる。
【0086】
幾つかの実施形態では、試薬系又はキットは、ブロッキングバッファーを含む。ブロッキングバッファーは、細胞の表面又は細胞内の非特異的な抗体又は染色剤結合部位をブロック又はそれらの部位に結合する働きをする。ブロッキングバッファーは、生理食塩水、水、リン酸緩衝生理食塩水、又は任意の緩衝溶液で希釈された親水性ポリマー、界面活性剤、及び加水分解コラーゲンを含む。
【0087】
幾つかの実施形態では、ブロッキングバッファーは、生理食塩水、水、リン酸緩衝生理食塩水、又は任意の緩衝溶液で希釈された少なくとも1%(重量/体積)の親水性ポリマーを含む。幾つかの実施形態では、ブロッキングバッファーは少なくとも10%(重量/体積)の親水性ポリマーを含む。幾つかの実施形態では、ブロッキングバッファーは少なくとも20%(重量/体積)の親水性ポリマーを含む。幾つかの実施形態では、ブロッキングバッファーは少なくとも30%(重量/体積)の親水性ポリマーを含む。幾つかの実施形態では、ブロッキングバッファーは1%~50%(重量/体積)の親水性ポリマーを含む。幾つかの実施形態では、ブロッキングバッファーは10%~45%(重量/体積)の親水性のものを含む。幾つかの実施形態では、ブロッキングバッファーは20%~40%(重量/体積)の親水性ポリマーを含む。1つの実施形態では、ブロッキングバッファーは、生理食塩水で希釈された30%(重量/体積)の親水性ポリマーを含む。幾つかの実施形態では、ブロッキングバッファーは、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、又は50%(重量/体積)の親水性ポリマーを含む。例えば、親水性ポリマーとしては、PVP、グリセロール、PEG、又は2つ以上の組み合わせが挙げられうる。
【0088】
幾つかの実施形態では、ブロッキングバッファーは界面活性剤を含む。幾つかの実施形態では、ブロッキングバッファーは、生理食塩水、水、リン酸緩衝生理食塩水、又は任意の緩衝溶液で希釈された少なくとも0.01%(体積/体積)の界面活性剤を含む。幾つかの実施形態では、ブロッキングバッファーは少なくとも0.2%(体積/体積)の界面活性剤を含む。幾つかの実施形態では、ブロッキングバッファーは少なくとも0.4%(体積/体積)の界面活性剤を含む。幾つかの実施形態では、ブロッキングバッファーは0.01%~1%(体積/体積)の界面活性剤を含む。幾つかの実施形態では、ブロッキングバッファーは0.2%~0.6%(体積/体積)の界面活性剤を含む。幾つかの実施形態では、ブロッキングバッファーは0.4%~1%(体積/体積)の界面活性剤を含む。1つの実施形態では、ブロッキングバッファーは、生理食塩水で希釈された0.4%(体積/体積)の界面活性剤を含む。幾つかの実施形態では、ブロッキングバッファーは、0.01%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、又は1%(体積/体積)の界面活性剤を含む。例えば、界面活性剤としては、ツイーン-20、ツイーン-80、トリトンX-100、ジギトニン、サポニン、n-ドデシル-β-D-マルトシド、その他の界面活性剤、又は2つ以上の界面活性剤の組み合わせが挙げられる。
【0089】
幾つかの実施形態では、ブロッキングバッファーは加水分解コラーゲンを含む。加水分解コラーゲンは、細胞外表面上若しくは細胞内の非特異的な抗体若しくは染色剤結合部位に対する親和性をもつタンパク質又はそれらの部位に結合できるタンパク質として働く。幾つかの実施形態では、ブロッキングバッファーは少なくとも0.1%(重量/体積)の加水分解コラーゲンを含む。幾つかの実施形態では、ブロッキングバッファーは少なくとも0.5%(重量/体積)の加水分解コラーゲンを含む。幾つかの実施形態では、ブロッキングバッファーは少なくとも1%(重量/体積)の加水分解コラーゲンを含む。幾つかの実施形態では、ブロッキングバッファーは少なくとも2%(重量/体積)の加水分解コラーゲンを含む。幾つかの実施形態では、ブロッキングバッファーは0.1%~10%(重量/体積)の加水分解コラーゲンを含む。幾つかの実施形態では、ブロッキングバッファーは0.5%~5%(重量/体積)の加水分解コラーゲンを含む。幾つかの実施形態では、ブロッキングバッファーは1%~3%(重量/体積)の加水分解コラーゲンを含む。1つの実施形態では、ブロッキングバッファーは、生理食塩水で希釈された2%(重量/体積)の加水分解コラーゲンを含む。幾つかの実施形態では、ブロッキングバッファーは、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、1.25%、1.5%、1.75%、2%、2.25%、2.5%、2.75%、又は3%(重量/体積)の加水分解コラーゲンを含む。幾つかの実施形態では、加水分解コラーゲンは動物源に由来する。1つの実施形態では、加水分解コラーゲンはブタ(pig)又はブタ(porcine)に由来する。1つの実施形態では、加水分解コラーゲンはウシ(cow)又はウシ(bovine)由来する。1つの実施形態では、加水分解コラーゲンは魚に由来する。
【0090】
幾つかの実施形態では、ブロッキングバッファーはグリシンを含む。グリシンは、普通ならバックグラウンド又はアーティファクトの増加をもたらす抗体又は染色剤に結合することになるタンパク質の遊離アルデヒド基に結合する働きをする。幾つかの実施形態では、ブロッキングバッファーは少なくとも0.01Mグリシンを含む。幾つかの実施形態では、ブロッキングバッファーは少なくとも0.1Mグリシンを含む。幾つかの実施形態では、ブロッキングバッファーは少なくとも0.3Mグリシンを含む。幾つかの実施形態では、ブロッキングバッファーは0.01M~1Mグリシンを含む。幾つかの実施形態では、ブロッキングバッファーは0.1M~0.5Mグリシンを含む。1つの実施形態では、ブロッキングバッファーは0.3Mグリシンを含む。幾つかの実施形態では、ブロッキングバッファーは0.01M、0.05M、0.1M、0.15M、0.2M、0.25M、0.3M、0.35M、0.4M、0.45M、又は0.5Mグリシンを含む。
【0091】
幾つかの実施形態では、試薬系又はキットは細胞遠心分離バッファーを含む。細胞遠心分離バッファーは、細胞を保護し、及び/又は細胞が、例えば細胞遠心分離機を用いて容器に加えられる媒体を提供する働きをする。細胞遠心分離バッファーは、生理食塩水、水、リン酸緩衝生理食塩水、又は任意の緩衝溶液で希釈された親水性ポリマー及び固定剤を含む。
【0092】
幾つかの実施形態では、細胞遠心分離バッファーは少なくとも3%(重量/体積)の親水性ポリマーを含む。幾つかの実施形態では、細胞遠心分離バッファーは少なくとも5%(重量/体積)の親水性ポリマーを含む。幾つかの実施形態では、細胞遠心分離バッファーは少なくとも10%(重量/体積)の親水性ポリマーを含む。幾つかの実施形態では、細胞遠心分離バッファーは1%~20%(重量/体積)の親水性ポリマーを含む。幾つかの実施形態では、細胞遠心分離バッファーは5%~15%(重量/体積)の親水性ポリマーを含む。1つの実施形態では、細胞遠心分離バッファーは、生理食塩水で希釈された10%(重量/体積)の親水性ポリマーを含む。幾つかの実施形態では、細胞遠心分離バッファーは、1%、3%、5%、7%、9%、10%、12%、15%、17%、又は20%(重量/体積)の親水性ポリマーを含む。
【0093】
幾つかの実施形態では、細胞遠心分離バッファーは、生理食塩水、水、リン酸緩衝生理食塩水、又は任意の緩衝溶液で希釈された少なくとも0.005%(重量/体積)の固定剤を含む。幾つかの実施形態では、細胞遠心分離バッファーは少なくとも0.008%(重量/体積)の固定剤を含む。幾つかの実施形態では、細胞遠心分離バッファーは少なくとも0.01%(重量/体積)の固定剤を含む。幾つかの実施形態では、細胞遠心分離バッファーは0.008%~0.5%(重量/体積)の固定剤を含む。幾つかの実施形態では、細胞遠心分離バッファーは0.01%~0.1%(重量/体積)の固定剤を含む。1つの実施形態では、細胞遠心分離バッファーは、生理食塩水で希釈された0.01%(重量/体積)の固定剤を含む。幾つかの実施形態では、細胞遠心分離バッファーは、0.0005%、0.008%、0.01%、0.05%、0.2%、0.25%、0.3%、0.35%、0.4%、0.45%、又は0.5%(重量/体積)の固定剤を含む。例えば、固定剤としては、重クロム酸アンモニウム、硫酸クロムカリウム(すなわち、クロムミョウバン)、塩化クロミル、クロム酸カリウム、重クロム酸カリウム、カルボジイミド(すなわち、メタンジイミン)、EDC、及びCMCが挙げられうる。
【0094】
幾つかの実施形態では、試薬系又はキットは、抗体結合バッファーを含む。抗体結合バッファーは、細胞の細胞外表面又は細胞内表面への抗体又は染色剤の結合を向上又は促進する働きをする。抗体結合バッファーは親水性ポリマー及び界面活性剤を含む。
【0095】
幾つかの実施形態では、抗体結合バッファーは、生理食塩水、水、リン酸緩衝生理食塩水、又は任意の緩衝溶液で希釈された少なくとも5%(重量/体積)の親水性ポリマーを含む。幾つかの実施形態では、抗体結合バッファーは、少なくとも10%(重量/体積)の親水性ポリマーを含む。幾つかの実施形態では、抗体結合バッファーは、少なくとも15%(重量/体積)の親水性ポリマーを含む。幾つかの実施形態では、抗体結合バッファーは、5%~30%(重量/体積)の親水性ポリマーを含む。幾つかの実施形態では、抗体結合バッファーは、10%~30%(重量/体積)の親水性ポリマーを含む。幾つかの実施形態では、抗体結合バッファーは、15%~30%(重量/体積)の親水性ポリマーを含む。1つの実施形態では、抗体結合バッファーは、生理食塩水で希釈された15%(重量/体積)の親水性ポリマーを含む。幾つかの実施形態では、抗体結合バッファーは、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、又は40%(重量/体積)の親水性ポリマーを含む。例えば、親水性ポリマーとしては、PVP、グリセロール、PEG、又は2つ以上の組み合わせが挙げられうる。
【0096】
幾つかの実施形態では、抗体結合バッファーは界面活性剤を含む。幾つかの実施形態では、抗体結合バッファーは、生理食塩水、水、リン酸緩衝生理食塩水、又は任意の緩衝溶液で希釈された少なくとも0.01%(体積/体積)の界面活性剤を含む。幾つかの実施形態では、抗体結合バッファーは、少なくとも0.2%(体積/体積)の界面活性剤を含む。幾つかの実施形態では、抗体結合バッファーは、少なくとも0.4%(体積/体積)の界面活性剤を含む。幾つかの実施形態では、抗体結合バッファーは、0.01%~1%(体積/体積)の界面活性剤を含む。幾つかの実施形態では、抗体結合バッファーは、0.2%~0.6%(体積/体積)の界面活性剤を含む。幾つかの実施形態では、抗体結合バッファーは、0.4%~1%(体積/体積)の界面活性剤を含む。1つの実施形態では、抗体結合バッファーは、生理食塩水で希釈された0.4%(体積/体積)の界面活性剤を含む。幾つかの実施形態では、抗体結合バッファーは、0.01%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、又は1%(体積/体積)の界面活性剤を含む。例えば、界面活性剤としては、ツイーン-20、ツイーン-80、トリトンX-100、ジギトニン、サポニン、n-ドデシル-β-D-マルトシド、他の任意の界面活性剤、又は2つ以上の界面活性剤の組み合わせが挙げられうる。
【0097】
幾つかの実施形態では、試薬系又はキットは、細胞を、固定、染色、観察、及び/又は分析するための1つ以上の容器、例えばスライドを含む。容器の表面への細胞の接着を向上又は促進するために、1つ以上の容器は、ゼラチン、コラーゲン、又は別の細胞結合試薬でコーティングすることができる。ゼラチンの例としては、タイプA(すなわち酸硬化組織由来)及びタイプB(すなわち石灰硬化組織由来)が挙げられる。幾つかの実施形態では、ゼラチンはカチオン試薬を含む。カチオン試薬の例としては、硫酸クロムカリウム十二水和物、重クロム酸アンモニウム、硫酸クロムカリウム(すなわち、クロムミョウバン)、塩化クロミル、クロム酸カリウム、重クロム酸カリウム、カルボジイミド(すなわち、メタンジイミン)、EDC、及びCMCが挙げられる。カチオン試薬は、容器を正に帯電させて、負の電荷を有する細胞及び/又は組織切片の容器への引力及び付着を向上する働きをする。
【0098】
幾つかの実施形態では、試薬系又はキットは容器洗浄バッファーを含む。容器洗浄バッファーは、容器の1つ以上の表面から破片及び/又は自家蛍光粒子を取り除く働きをする。幾つかの実施形態では、容器洗浄バッファーは、ある比率で酸とアルコールを含む。アルコールの例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、及びペンタノールが挙げられる。酸の例としては、塩酸、酢酸、フッ化水素酸、臭化水素酸、及びヨウ化水素酸が挙げられる。幾つかの実施形態では、アルコールの酸に対する比は、5%:95%、10%:90%、15%:85%、20%:80%、25%:75%、30%:70%、35%:65%、40%:60%、45%:55%、50%:50%、55%:45%、60%:40%、65%:35%、70%:30%、75%:25%、80%:20%、85%:15%、90%:10%、又は95%:5%である。1つの実施形態では、アルコールの酸に対する比は50%:50%である。1つの実施形態では、アルコールの酸に対する比は40%:60%である。1つの実施形態では、アルコールの酸に対する比は60%:40%である。
方法
【0099】
図1に示されるように、細胞を固定する方法100は、アルコールで希釈した親水性ポリマーを含む第1の固定バッファーを細胞に加えることS110、並びに親水性ポリマー、界面活性剤、及び加水分解コラーゲンで希釈した親水性ポリマーを含む第2の固定バッファーを細胞に加えることS120を含む。この方法は、染色、観察、及び/又は分析するために細胞を固定又は保存する働きをする。
【0100】
幾つかの実施形態では、第1の固定バッファーを細胞に加えることは、S120に記載のように、第1の固定バッファー又は細胞外固定剤を-5℃より低い又は-5℃未満の温度で細胞に加えることを含む。幾つかの実施形態では、第1の固定バッファー又は細胞外固定剤は-10℃未満の温度で細胞に加えられる。幾つかの実施形態では、細胞外固定剤は-15℃未満の温度で細胞に加えられる。幾つかの実施形態では、細胞外固定剤は-20℃未満の温度で細胞に加えられる。幾つかの実施形態では、細胞外固定剤は-30℃未満の温度で細胞に加えられる。幾つかの実施形態では、細胞外固定剤は-40℃未満の温度で細胞に加えられる。幾つかの実施形態では、細胞外固定剤は-50℃未満の温度で細胞に加えられる。幾つかの実施形態では、細胞外固定剤は-60℃未満の温度で細胞に加えられる。親水性ポリマーと組み合わせた氷点下の温度は、細胞の完全性を保ち、アーティファクト又は細胞に関連する自家蛍光特性を減らす働きをする。幾つかの実施形態では、ブロック(block)S120は、細胞を細胞外固定剤とインキュベーションすることを含む。幾つかの実施形態では、インキュベーション時間は少なくとも5分である。幾つかの実施形態では、インキュベーション時間は少なくとも10分である。幾つかの実施形態では、インキュベーション時間は少なくとも15分である。1つの実施形態では、インキュベーション時間は15分である。幾つかの実施形態では、インキュベーション時間は5分~30分である。
【0101】
ブロックS130において、第2の固定バッファーを細胞に加えることは、第2の固定バッファー又は細胞内固定剤を4℃より低い又は4℃未満の温度で細胞に加えることを含みうる。幾つかの実施形態では、細胞内固定剤は1℃未満の温度で細胞に加えられる。幾つかの実施形態では、細胞内固定剤は0℃未満の温度で細胞に加えられる。幾つかの実施形態では、細胞内固定剤は-2℃未満の温度で細胞に加えられる。親水性ポリマーと組み合わせた凍結温度は、細胞の完全性を保ち、アーティファクト又は細胞に関連する自家蛍光特性を減らす働きをする。幾つかの実施形態では、ブロックS130は、細胞を細胞内固定剤中でインキュベーションすることを含む。幾つかの実施形態では、インキュベーション時間は少なくとも20分である。幾つかの実施形態では、インキュベーション時間は少なくとも30分である。幾つかの実施形態では、インキュベーション時間は少なくとも60分である。幾つかの実施形態では、インキュベーション時間は少なくとも120分である。幾つかの実施形態では、インキュベーション時間は少なくとも180分である。幾つかの実施形態では、インキュベーション時間は少なくとも240分である。1つの実施形態では、インキュベーション時間は30分である。幾つかの実施形態では、インキュベーション時間は15分~300分である。
【0102】
幾つかの実施形態では、方法100は、細胞をスライド上に細胞遠心分離することを記載するブロックS110を随意に含む。ブロックS110は、さらなる処理及び/又は分析のために細胞を容器に結合又は付着する働きをする。スライド又は容器は、物質又は試薬、例えば、カチオン性物質、コラーゲン、又はゼラチンでコーティングすることができる。幾つかの実施形態では、ブロックS110は、細胞をスライド又は容器上に細胞遠心分離する前に、容器又はスライドを洗浄することを含む。スライド又は容器は、本明細書の他の箇所に記載のように、容器洗浄バッファーで洗浄することができる。幾つかの実施形態では、ブロックS110は、細胞遠心分離の前に、本明細書の他の箇所に記載のように、細胞を細胞遠心分離バッファー中に懸濁させることを含む。幾つかの実施形態では、ブロックS110は、細胞遠心分離後に容器又はスライドを乾燥させて、過剰の細胞遠心分離バッファーを容器又はスライドの表面から取り除くことを含む。
【0103】
幾つかの実施形態では、方法100は、ブロッキングバッファーを細胞に加えることを記載するブロックS140を随意に含み、ブロッキングバッファーは、本明細書の他の箇所に記載のように、親水性ポリマー、界面活性剤、及び加水分解コラーゲンを含む。ブロックS140は、非特異的結合部位を無関係なタンパク質(例えば加水分解コラーゲン)で飽和させることによって、非特異的抗体又は染色剤の結合を減らす働きをする。幾つかの実施形態では、ブロックS140は、定められた温度で定められた時間、細胞をブロッキングバッファーとインキュベーションすることを含む。幾つかの実施形態では、その時間は少なくとも30分である。幾つかの実施形態では、その時間は少なくとも45分である。幾つかの実施形態では、その時間は少なくとも60分である。幾つかの実施形態では、その時間は30~90分である。幾つかの実施形態では、その時間は45~75分である。1つの実施形態では、その時間は60分である。幾つかの実施形態では、定められた温度は5℃より低い。幾つかの実施形態では、定められた温度は4℃より低い。幾つかの実施形態では、定められた温度は2℃より低い。幾つかの実施形態では、定められた温度は0℃より低い。幾つかの実施形態では、定められた温度範囲は-5℃~5℃である。幾つかの実施形態では、定められた温度範囲は0℃~4℃である。1つの実施形態では、定められた温度は約-2℃又は実質的に-2℃である。
【0104】
幾つかの実施形態では、方法100は、細胞を染色することを記載するブロックS150を随意に含む。ブロックS150は、細胞のさまざまな特徴又は領域を目立たせる又は対比によって引き立たせる働きをする。幾つかの実施形態では、染色としては、免疫蛍光染色、免疫組織化学、インサイチュハイブリダイゼーション、又はその他の染色技術が挙げられる。幾つかの実施形態では、染色は、目的のタンパク質又は核酸を認識する非標識又はタンパク質結合(例えばビオチン)一次抗体で細胞をタグ付けすること、及び一次抗体を認識する標識(例えば蛍光色素分子)又は酵素活性(例えばストレプトアビジン)二次抗体で一次抗体を標識することを含む。幾つかの実施形態では、染色は、目的のタンパク質又は核酸を認識する標識一次抗体で細胞を標識することを含む。標識としては、蛍光色素分子、酵素(例えばストレプトアビジン、西洋ワサビペルオキシダーゼなど)、生物発光分子、又は顕微鏡を使って視覚化できるその他のタイプの標識が挙げられうる。幾つかの実施形態では、細胞の染色は0℃未満の温度で行われる。幾つかの実施形態では、細胞の染色は-1℃未満の温度で行われる。幾つかの実施形態では、細胞の染色は-2℃未満の温度で行われる。幾つかの実施形態では、細胞の染色は-3℃未満の温度で行われる。幾つかの実施形態では、細胞の染色は、実質的に-2℃、-3℃、またはそれらの間の温度で行われる。
【0105】
図2に示されるように、循環腫瘍細胞として細胞を同定する方法200の1つの実施形態は、ブロックS210において細胞試料の画像を撮って対象となる細胞を特定すること、ブロックS220において染色された核領域の第1のピクセル強度を測定すること、ブロックS230においてバックグラウンド領域の第2のピクセル強度を測定すること、ブロックS240において第1のピクセル強度から第2のピクセル強度を減算することによって対象となる細胞の倍数性状態を計算すること、及びブロックS250において対象となる細胞が循環腫瘍細胞であるかどうかを倍数性状態に基づいて判定することを含む。この方法は、細胞が、正倍数性、異数性、高異数倍数性、低異数倍数性であるかどうか、その他の点で異常なDNA量を有するかどうかを判定するために、染色された領域のピクセル強度又は蛍光強度を測定する働きをする。幾つかの実施形態では、該方法は、細胞試料中の循環腫瘍細胞を同定する働きをする。該方法は、がん生物学分野で使用されるが、顕微鏡検査、細胞分析、細胞周期研究、又はその他の好適な用途、例えば研究用途又は教育用途に、付加的又は代替的に使用することができる。
【0106】
図2に示されるように、細胞を循環腫瘍細胞として同定する方法200の1つの実施形態は、細胞試料の画像を撮って対象となる細胞を特定することを記載するブロックS210を含む。ブロックS210は、画像を処理して対象となる細胞を特定するために、細胞試料中の1つ以上の細胞を顕微鏡で観察す働きをする。幾つかの実施形態では、該方法は、細胞試料を、1つ以上の染色剤、抗体、DNA組み込み色素で、直接的又は間接的に(例えば二次抗体を用いて)、細胞内又は細胞外のいずれか又は両方で染色することを含む。細胞試料を染色することは、対象となる細胞上の1つ以上の目的のマーカーを目立たせること又は分析から除外するために1つ以上の細胞を目立たせることを含みうる。1つのそのような実施形態では、該方法は、細胞試料を核染色剤で染色して、対象となる細胞の染色された核領域を特定することを含む。核染色剤の非限定的な例としては、DRAQ5、ヨウ化プロピジウム(PI)、4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)、ヘマトキシリン、ケルンエヒトロート色素、ヘキスト、メチルグリーン、化学量論的なDNA結合を示す他の核色素、又は任意のそれらの組み合わせが挙げられる。さらに幾つかの実施形態では、対象となる細胞を同定することは、CD45陰性細胞、ビメンチン陽性細胞、EpCAM陽性細胞、EpCAM陰性細胞、リン酸化セリン10ヒストンH3陰性細胞、核増殖マーカー陰性細胞、Ki-67陰性細胞、カスパーゼ3陰性細胞、アポトーシスマーカー陰性細胞、CD14陰性細胞、CD34陽性細胞、CD34陰性細胞、又はそれらのいずれかの組み合わせを同定することを含む。幾つかの実施形態では、該方法は、例えば、細胞死若しくはDNA複製の正常又は健康な過程を経ている1つ以上のアポトーシス細胞、有糸分裂細胞、又はその他の細胞、又はがん若しくはがん性形質転換を示すその他のマーカーを示さない1つ以上の細胞を除外することを含む。
【0107】
図2に示されるように、細胞を循環腫瘍細胞として同定する方法200の1つの実施形態は、染色された核領域の第1のピクセル強度を測定することを記載するブロックS220を含む。ブロックS220は、染色された核領域を手動で又は自動的に特定し、前記染色された核領域のピクセル強度を測定する働きをする。幾つかの実施形態では、該方法は、染色された核領域(すなわち、核周辺部)の第1の周辺部を特定することを含み、周辺部に含まれる領域のピクセル強度を測定することによって第1のピクセル強度が得られる。幾つかのそのような実施形態では、該方法は、核周辺部によって画定される面積に第1のピクセル強度を乗算することを含む。幾つかの実施形態では、該方法は第2の周辺部を特定することを含み、第2の周辺部は細胞の細胞膜(すなわち膜周辺部)を特定し、例えば細胞の大きさを決める。1つのそのような実施形態では、該方法は、第1の周辺部を第2の周辺部と比較して、核領域、細胞質領域、全細胞領域、又はそれらの間の比率を決めることを含む。
【0108】
図2に示されるように、細胞を循環腫瘍細胞として同定する方法200の1つの実施形態は、バックグラウンド領域の第2のピクセル強度を測定することを記載するブロックS230を含む。ブロックS230は、手動で又は自動的にバックグラウンド領域を特定し、前記バックグラウンド領域のピクセル強度を測定する働きをする。幾つかの実施形態では、バックグラウンド領域は複数のバックグラウンド領域を含む。幾つかの実施形態では、該方法は、細胞又は他の細胞物質を欠くが、非特異的染色又はバックグラウンド染色を含みうるバックグラウンド領域を画定することを含む。さらに該方法は、バックグラウンド周辺部と呼ばれる、バックグラウンド領域の周りの周辺部を画定することを含みうる。したがって、該方法は、バックグラウンド周辺部によって画定される面積にバックグラウンド領域の第2のピクセル強度を乗算することを含みうる。
【0109】
図2に示されるように、細胞を循環腫瘍細胞として同定する方法200の1つの実施形態は、第1のピクセル強度から第2のピクセル強度を減算することによって対象となる細胞の倍数性状態を計算することを記載するブロックS240を含む。ブロックS240は、第1のピクセル強度からバックグラウンドに由来する第2のピクセル強度を減算することによって、第1のピクセル強度から非特異的染色又はバックグラウンド染色のピクセル強度を除く働きをする。幾つかの実施形態では、倍数性状態は1又は実質的に1であり、正常又は健康量のDNAを示す。幾つかの実施形態では、倍数性状態は1未満であり、アポトーシス細胞若しくは壊死細胞又は異常に低い量のDNAを含むがん細胞を示す。幾つかの実施形態では、倍数性状態は2を超え、異常に高い量のDNAを含むがん性細胞を示す。幾つかの実施形態では、倍数性状態は1と2の間又はちょうど2である。幾つかのそのような実施形態では、細胞が増殖マーカー又は有糸分裂マーカーに対して陰性である場合、細胞は異常に高い量のDNAを含むがん細胞である可能性が高い。代替的に、幾つかのそのような実施形態では、細胞が増殖マーカー又は有糸分裂マーカーに対して陽性である場合、細胞は有糸分裂を介して進行する細胞である可能性が高い。幾つかの実施形態では、該方法は、アポトーシスマーカー、例えばカスパーゼ3をもつ細胞を対比染色することによって細胞がアポトーシス性又は壊死性である可能性を減らすことを含む。幾つかの実施形態では、該方法は、増殖マーカー又は有糸分裂マーカー、例えばKi-67又はリン酸化セリン10ヒストンH3をもつ細胞を対比染色することによって細胞が有糸分裂性である可能性を減らすことを含む。
【0110】
図2に示されるように、細胞を循環腫瘍細胞として同定する方法200の1つの実施形態は、対象となる細胞が循環腫瘍細胞であるかどうかを倍数性状態に基づいて決定することを記載するブロックS250を含む。幾つかの実施形態では、該方法は、倍数性状態が1未満である場合に、対象となる細胞を循環腫瘍細胞として同定することを含む。幾つかの実施形態では、該方法は、倍数性状態が2を超える場合に、対象となる細胞を循環腫瘍細胞として同定することを含む。幾つかの実施形態では、該方法は、細胞が増殖又は有糸分裂マーカーに対して陰性である場合、且つ、細胞が1と2の間の倍数性状態を有する場合に、循環腫瘍細胞として対象となる細胞を同定することを含む。
【0111】
幾つかの実施形態では、該方法は、本明細書の他の箇所に記載の組成物及び方法を用いて、細胞試料又は対象となる細胞を固定することを含む。
【0112】
幾つかの実施形態では、該方法は、対象となる細胞を処理又は溶解して、DNA、RNA、又はタンパク質を抽出することを含む。幾つかの実施形態では、該方法は、細胞を処理又は分析して、組織、がん、腫瘍、位置、環境、又は起源の系統を同定することを含む。
【0113】
幾つかの実施形態では、該方法は、疾患をもつ患者を対象となる細胞の同定に基づいて診断することを含む。
【0114】
図3に示されるように、細胞を循環腫瘍細胞として同定するコンピューター実装方法300の1つの実施形態は、ブロックS310において対象となる細胞の画像を得ること、ブロックS320において対象となる細胞と関連する特徴が、核領域若しくはマーカー、細胞質領域若しくはマーカー、膜領域若しくはマーカー、細胞領域若しくはマーカー、又はそれらの組み合わせを含むように、特徴を特定すること、ブロックS330において対象となるパラメーターが、蛍光強度、細胞の大きさ、細胞形状、細胞面積、細胞質面積、核面積、又はそれらの組み合わせを含むように、特徴を処理して対象となるパラメーターを抽出すること、ブロックS340において対象となるパラメーターを解析すること、及びブロックS350において対象となるパラメーターが、所定の閾値より大きいか又は小さい場合に、対象となる細胞を循環腫瘍細胞に分類することを含む。該方法は、細胞が、正倍数性、異数性、高異数倍数性、低異数倍数性である、そうでなければ異常なDNA量を有するとして、細胞試料中の対象となる細胞を自動的に特定する働きをする。幾つかの実施形態では、該方法は、細胞試料中の循環腫瘍細胞を同定する働きをする。該方法は、がん生物学分野で使用されるが、顕微鏡検査、細胞分析、細胞周期研究、又はその他の好適な用途、例えば研究用途又は教育用途に、付加的又は代替的に使用することができる。
【0115】
図3に示されるように、細胞を循環腫瘍細胞として同定するコンピューター実装方法300の1つの実施形態は、対象となる細胞の画像を得ることを記載するブロックS310を含む。画像のタイプの非限定的な例としては、顕微鏡画像、共焦点画像、蛍光画像、フローサイトメトリー画像、又は別のタイプの画像が挙げられる。
【0116】
図3に示されるように、細胞を循環腫瘍細胞として同定するコンピューター実装方法300の1つの実施形態は、対象となる細胞と関連する特徴が、核領域若しくはマーカー、細胞質領域若しくはマーカー、膜領域若しくはマーカー、細胞領域若しくはマーカー、又はそれらの組み合わせを含むように、特徴を特定することを記載するブロックS320を含む。幾つかの実施形態では、特徴は、細胞領域若しくはマーカー又は他の細胞特徴の非存在又は陰性染色に基づいて特定され、他の実施形態では、特徴は、細胞マーカー又は他の細胞特徴の存在又は陽性染色に基づいて特定される。幾つかの実施形態では、特徴を特定することは、ピクセル強度を測定すること、染色の位置を決定すること、例えば染色又は位置に基づいて核領域を特定すること、例えば染色又は位置に基づいて細胞質領域を特定すること、画像を処理してノイズを減らす若しくはコントラストを上げること、又は他の方法若しくは処理を含む。幾つかの実施形態では、特徴を特定することは、画像認識を使用することを含む。
【0117】
図3に示されるように、細胞を循環腫瘍細胞として同定するコンピューター実装方法300の1つの実施形態は、対象となるパラメーターは、蛍光強度、細胞の大きさ、細胞形状、細胞面積、細胞質面積、核面積、又はそれらの組み合わせを含むように、特徴を処理して対象となるパラメーターを抽出することを記載するブロックS330を含む。幾つかの実施形態では、特徴は核領域であり、対象となるパラメーターは核領域の蛍光強度である。幾つかのそのような実施形態では、処理は、核の蛍光又はピクセル強度からバックグラウンドの蛍光又はピクセル強度を減算することを含む。さらに幾つかの実施形態では、処理は、核領域の面積を計算して、例えば、その面積にピクセル強度を掛けて核領域の総蛍光密度を計算することを含む。幾つかの実施形態では、処理は、第1の細胞の第1の核領域の第1のピクセル強度を第2の細胞の第2の核領域の第2のピクセル強度と比較して、例えば細胞全体にわたって染色強度を正規化すること、又は希少細胞、例えば循環腫瘍細胞を示す1つ以上の異常値を明らかにすることを含む。幾つかの実施形態では、この方法は、画像の信号対ノイズの質をよくするために画像を処理することを含む。処理の非限定的な例としては、利得を調整すること、オフセットを調整すること、各ピクセルの複数のスキャンを平均してピクセルの強度を決定すること、又はその他の方法が挙げられる。
【0118】
図3に示されるように、細胞を循環腫瘍細胞として同定するコンピューター実装方法300の1つの実施形態は、対象となるパラメーターを解析することを記載するブロックS340を含む。幾つかの実施形態では、解析は機械学習技術を用いて行われる。幾つかのそのような実施形態では、機械学習技術は、分類木、判別分析、k近傍法、単純ベイズ、サポートベクターマシン、深層学習、又は畳み込みニューラルネットワークを含む。1つの実施形態では、機械学習技術は深層学習を含む。別の実施形態では、機械学習技術は畳み込みニューラルネットワークを含む。幾つかの実施形態では、解析の結果は、例えばフィードバックループを用いて、系にフィードバックされ、その結果、系は、特徴を特定する能力及び/又は前記特徴を処理して対象となるパラメーターを抽出する能力を向上する。幾つかの実施形態では、解析は、ユーザーによって監視され、したがってユーザーは、例えば、偽陽性又は陰性を識別して、対象となる特徴及びパラメーターの解析の精度を高めることができる。
【0119】
図3に示されるように、細胞を循環腫瘍細胞として同定するコンピューター実装方法300の1つの実施形態は、対象となるパラメーターが所定の閾値より大きいか又は小さい場合に、対象となる細胞を循環腫瘍細胞に分類することを記載するブロックS350を含む。幾つかの実施形態では、対象となるパラメーターが2より大きく、異常に高いDNA量を示す場合、対象となる細胞は循環腫瘍細胞に分類される。幾つかの実施形態では、対象となるパラメーターが1未満であり、異常に低いDNA量を示す場合、対象となる細胞は循環腫瘍細胞に分類される。幾つかの実施形態では、対象となる細胞が増殖マーカーに対して陰性であり、対象となるパラメーターが1と2の間である場合、対象となる細胞は循環腫瘍細胞に分類される。幾つかの実施形態では、該方法は、増殖マーカー及び/又は有糸分裂マーカーに対して陽性である試料中の細胞を除外することによって有糸分裂細胞を除外することを含む。幾つかの実施形態では、該方法は、例えば、アポトーシス及び/又は壊死の作製者にとって陽性である試料中の細胞を除外することによってアポトーシス細胞又は壊死細胞を除外することを含む。
【0120】
幾つかの実施形態では、該方法は、対象となる細胞の分類の信頼スコア又は対象となる細胞が循環腫瘍細胞である確率を計算することを含む。
装置
【0121】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、コンピューター可読命令を記憶するコンピューター可読媒体を受けるように構成された機械として少なくとも部分的に具現化及び/又は実施することができる。命令は、システムと統合されたコンピューター実行可能構成部品と、プロセッサーによる実行のためのコンピューター可読命令を含むアプリケーションで構成されたコンピューティングデバイス上のプロセッサーの1つ以上の部分によって実行されうる。コンピューター可読媒体は、RAM、ROM、フラッシュメモリー、EEPROM、光学デバイス(例えばCD若しくはDVD)、ハードドライブ、フロッピードライブ、又は任意の好適な装置などの任意の好適なコンピューター可読媒体に記憶することができる。コンピューター実行可能構成部品は、汎用若しくは特定用途向けプロセッサー、デジタルシグナルプロセッサー、又は他のプログラマブルロジックデバイスであってよいが、任意の好適な専用ハードウェア又はハードウェア/ファームウェアの組み合わせが、代替的又は付加的に命令を実行することができる。
【0122】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載の方法は手動で実施することができ、幾つかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、例えばコンピューティングデバイス2000によって、部分的に又は完全に自動的に実行することができる。コンピューティングデバイス2000は、据置型又はモバイルコンピューティングデバイスであってもよい。据置型コンピューティングデバイスの非限定的な例としては、ワークステーション、デスクトップ、又はその他の非ポータブルコンピューティングデバイスが挙げられる。モバイルコンピューティングデバイスの非限定的な例としては、ラップトップ、ネットブック、ノートブック、携帯電話、ウェアラブルデバイス、又はその他の好適なモバイルコンピューティングデバイスが挙げられる。幾つかの実施形態では、
図4に示されるように、細胞を循環腫瘍細胞として同定するコンピューティングデバイス2000は、プロセッサー2010、メモリー2020、及び随意にメモリー2020に記憶された1つ以上のアプリケーション2030を含む。プロセッサー2010は、1つ以上のデータバスを介してメモリー2020に接続される。プロセッサー2010は、メモリー2020から情報を読み出し、そのメモリーに情報を書き込む働きをする。メモリー2020は、プロセッサーによる実行のためのコンピューター可読命令を記憶するいずれの型のコンピューター可読媒体であってよい。コンピューター可読媒体の非限定的な例としては、RAM、ROM、フラッシュメモリー、EEPROM、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ、又はその他の好適なバイスが挙げられる。幾つかの実施形態では、コンピューター可読命令は、非一過性のフォーマットで記憶されたソフトウェアを含む。幾つかの実施形態では、コンピューター可読命令は、メモリー2020にプログラムされてもよいし、アプリケーション2030としてメモリー2020にダウンロードされてもよい。プロセッサー2010は、1つ以上の命令セットを実行して、コンピューターの機能を達成することができ、例えば、オペレーティングシステムを実行すること、1つ以上のアプリケーションを実行すること、又は細胞を循環腫瘍細胞として同定する方法を実行することができる。幾つかのそのような方法は本明細書の他の箇所でより詳細に記載される。
【0123】
幾つかの実施形態では、
図4に示されるように、コンピューティングデバイス2000はグラフィカルユーザインターフェース(GUI)2040を含む。幾つかのそのような実施形態では、GUI2040は、プロセッサー2010によって解析される1つ以上の細胞又は細胞集団を表示して、1つ以上の細胞を循環腫瘍細胞として同定しうる。代替的又は付加的に、GUI2040は、1つ以上のパラメーター、ソフトウェアの機能、又はGUI外観を変更する1つ以上のコントロールを含んでもよい。幾つかの実施形態では、GUI2040は、例えば、薄膜トランジスタ液晶ディスプレイ(LCD)、インプレーススイッチングLCD、抵抗膜タッチスクリーンLCD、静電容量タッチスクリーンLCD、有機発光ダイオード(LED)、アクティブマトリクス型有機LED(AMOLED)、スーパーAMOLED、Retinaディスプレイ、触覚(Haptic)/触覚(Tactile)タッチスクリーン、Gorilla Glass、又は量子ドットディスプレイを含むようにタッチ感応性能を含む。
【0124】
幾つかの実施形態では、
図4に示されるように、コンピューティングデバイス2000は電源2050を含む。電源2050は、コンセントからの交流を介してコンピューティングデバイス2000に電力を供給することができる。代替的に、電源2050は、例えば再充電可能なバッテリー(例えばリチウムイオン)などのバッテリーを含んでもよい。
【0125】
幾つかの実施形態では、コンピューティングデバイス2000は集積回路2060を含む。幾つかのそのような実施形態では、集積回路は、オペアンプ、ローパス、ハイパス、若しくはバンドパスフィルター、アナログ-デジタル変換器、及び/又は他の信号処理回路構成要素を含み、細胞の画像をフィルタリング、増幅、デジタル化、またはその他の方法で処理して、本明細書の他の箇所に記載のように、1つ以上のピクセル強度又は1つ以上の対象となるパラメーターを抽出することができる。
固定と染色 - 実施例
【0126】
以下は、細胞試料中の細胞を固定及び染色し、循環腫瘍細胞を同定するための本明細書の他の箇所に記載の方法の使用例である。試料は、本明細書の他の箇所に記載の方法及び組成物に従って調製した。特定の例が用いられるが、本明細書に記載の方法が、本明細書に提示のもの以外の例において使用されうることは当業者に理解されよう。
【0127】
実験設定
末梢静脈血を健康なボランティアから採取した。塩化アンモニウム溶解バッファーを用いて赤血球を溶解した。白血球をPBSで2回洗浄した。がん細胞株A549を、T75細胞培養フラスコで、10%FBSを含むRPMI中で5%CO2にて培養した。トリプシン/EDTAを用いて細胞を採取した。
【0128】
各実験では、別段の指示がない限り、2万個のがん細胞を20万個の白血球にスパイクした。次いで、示されているさまざまな細胞遠心分離バッファーに細胞を再懸濁した。ゼラチンコーティングガラススライドをCytofuge IIチャンバーに載せ、Medite CytofugeII(Germany)で600rpmにて10分間回転させた。次いで、チャンバーをCytofugeから取り出し、スライドを取り外した。沈着した細胞を含むスライドを完全に乾燥させないように注意した。次に、示されているさまざまな細胞外固定バッファーでスライドをインキュベーションした。30分後、スライドを取り出し、過剰の液体を、スライドを直立状態に保持しながら短時間ろ紙上に吸い取り、示されているさまざまな細胞内固定バッファーに浸した。さらに60分後、スライドを細胞内固定バッファーから取り出し、Coverplates(Thermofisher)上にマウントし、示されているようにブロック及び染色した。
固定及び染色 - 実施例1
【0129】
細胞遠心分離バッファー
固定及び染色方法は変えずに、細胞遠心分離バッファー中の親水性ポリマー(例えばPVP)の量を変化させた。
図5A、5B、及び5Dに示されるように、細胞遠心分離バッファーは、PVPをそれぞれ0%、1%、又は20%含む。すべての条件は、細胞遠心分離バッファー中に一定量の固定剤、0.01%(重量/体積)硫酸クロムカリウムを含んだ。
図5A、5B、及び5Dに示されるように、細胞は、破壊された細胞外膜、細胞外膜小疱(すなわち細胞の細胞膜の突起又は突出)、及び細胞内に現れる染色アーティファクトを伴って不整であるように見える。対照的に、
図5Cに示されるように、細胞遠心分離バッファーが10%PVPを含む場合、細胞は、細胞外膜破壊又は小疱形成は極僅かで、球形及びインタクトであるように見える。
固定及び染色 - 実施例2
【0130】
細胞外固定剤
細胞内固定剤、細胞遠心分離バッファー、及び染色方法は変えずに、細胞外固定剤中の親水性ポリマーの量及び細胞を細胞外固定剤で固定する温度を変化させた。
図6A、6C、6E、及び6Gに示されるように、細胞固定剤を用いて細胞を固定する間、-10℃の温度を用いた。
図6B、6D、6F、及び6Hに示されるように、細胞をドライアイス上(例えば、実質的に又は約-60℃~-110℃)で細胞外固定剤を用いて固定した。
図6Fに示されるように、メタノールで希釈した5%(重量/体積)親水性ポリマー(例えばPVP)を用いてドライアイス上で固定した細胞は、より少ない(
図6A~6D)若しくはより多い(
図6G~6H)親水性ポリマーを含む細胞外固定剤で固定した細胞又はドライアイス上(
図6B、6D、6F、及び6H)の代わりに-10℃(
図6A、6C、6E、及び6G)で固定した細胞と比較して、完全性が向上し、アーティファクトが減り、染色が増強されている。
固定及び染色 - 実施例3
【0131】
細胞内固定剤
細胞外固定剤、細胞遠心分離バッファー、及び染色方法は変えずに、細胞内固定剤中の親水性ポリマー(例えばグリセロール)の量及び細胞を細胞内固定剤で固定する温度を変化させた。
図7A~7Dに示されるように、細胞内固定剤には一定量の界面活性剤及び硫酸クロムカリウムが存在した。0.4%(体積/体積)ツイーン20及び0.01%(重量/体積)硫酸クロムカリウム。
図7Aに示されるように、細胞を室温で固定したとき、大部分の細胞が失われ、少数の残存細胞は完全性が低下し、分解が増加し、アーティファクトが増加している。
図7Bに示されるように、細胞を実質的又は約-2℃で固定したとき、細胞は細胞外膜がインタクトであり、アーティファクトが減少し、染色が向上している。
図7A及び7Bに示されるように、細胞の消失(例えば、アポトーシス、細胞死など)を防ぎ、細胞の完全性を向上及び/又は維持するのに、細胞内固定剤による固定の間の凍結温度(例えば約0℃)又はわずかに氷点下の温度(例えば-1℃~-4℃)は有利である。
図7C及び7Dに示されるように、より高い濃度のグリセロールによって細胞形態がよくなる。
図7E及び7Fに示されるように、固定剤(例えば硫酸クロムカリウム)の量を変化させ、親水性ポリマー及び界面活性剤の量は変えなかった:15%(体積/体積)グリセロール及び0.4%(体積/体積)ツイーン20。
図7Eに示されるように、クロムカリウムを省略すると、結果として細胞が失われ、細胞形態の保持が悪くなる。
図7Fに示されるように、0.01%(重量/体積)硫酸クロムカリウムを含む15%(体積/体積)グリセロールは、細胞細部の最適の解像度をもたらし、実質的に細胞消失が生じない。
固定及び染色 - 実施例4
【0132】
ブロッキングバッファー
無関係なタンパク質の種類を
図8Aと8Bとで変え、その一方で、無関係なタンパク質、親水性ポリマー、界面活性剤、及びアミノ酸の量は一定のままにした:2%(重量/体積)無関係なタンパク質、15%(体積/体積)親水性ポリマー(例えばグリセロール)、0.4%(体積/体積)界面活性剤(例えばツイーン20)、及び0.3Mグリシン。
図8Aに示されるように、ブロッキングバッファー中にウシ血清アルブミンを使用した場合、染色がくすみ、特異的染色はバックグラウンド染色の強度を有し、特異的に染色された特徴の特定を困難にする。
図8Bに示されるように、加水分解コラーゲンをした場合、染色は明るく、高染色の特異的領域は、バックグラウンド染色と比較して容易に特定可能である。
固定及び染色 - 実施例5
【0133】
免疫蛍光染色
図9Aに示されるように、細胞を標準的な実験スライド上で細胞遠心分離し、
図1及び本明細書の他の箇所に記載の方法で処理した。細胞を、
図9AのパネルAに示されるDRAQ5(核)、
図9AのパネルBに示されるAlexaFluor488-ビメンチン、
図9AのパネルCに示されるAlexaFluor594-pan-サイトケラチン、
図9AのパネルDに示されるPE-EpCam、
図9AのパネルEに示されるPacific Orange-CD45、及び
図9AのパネルFに示されるBV421-CD14で染色した。
図9Aに示されるように、核及び細胞構造が保存されている。ビメンチン(
図9A、パネルB)、サイトケラチン(
図9A、パネルC)、及びEpCam(
図9A、パネルD)は、著しく異なる細胞分布及び構造を示す。さらに、WBC及びCD14(
図9A、パネルF)陽性細胞は、がん細胞と容易に区別することができる。
【0134】
図9Bに示されるように、
図9Aと同じドナー及び同じ細胞培養バッチからの細胞を、同じ日に、4%パラホルムアルデヒドで固定し、0.5%サポニンで穴をあけ、ブロックし、
図9BのパネルAに示されるDRAQ5(核)、
図9BのパネルBに示されるAlexaFluor488-ビメンチン、
図9BのパネルCに示されるAlexaFluor594-pan-サイトケラチン、
図9BのパネルDに示されるPE-EpCam、
図9BのパネルEに示されるPacific Orange-CD45、及び
図9BのパネルFに示されるBV421-CD14で染色した。
図9Bに示されるように、WBCの核(
図9B、パネルA)は拡散したように見え、サイトケラチン(
図9B、パネルC)及びEpCam(
図9B、パネルD)の形態及び分布は非常に類似したように見え、WBC陽性及びCD14陽性(
図9B、パネルF)細胞の形態は奇形であった。さらに、
図9BのパネルBに示されるように、ビメンチンは染色されない。また、
図9BのパネルDに示されるように、PEチャネルではWBCの高い自家蛍光が観察される。
固定及び染色 - 実施例6
【0135】
RNA回収
肺がん細胞株A549の50万個の細胞を、Cytofuge 2(Statspin、USA)を用いてスライド上で回転させ、10%(重量/体積)PVP及び0.01%(重量/体積)硫酸クロムカリウムで固定し、
図1に記載の方法に従って染色した後のRNA回収を、2つの最も多用される方法であるパラホルムアルデヒド(PFA)固定とメタノール固定に対して比較した。
【0136】
PFA固定では、スライドを室温で5分間乾燥させ、4%PFAに10分間浸し、PBSで洗浄し、PBS/サポニン0.5%で10分間インキュベーションし、再びPBSで洗浄した。次いで、スライドをPBS/BSA1%/ツイーン20 0.1%/グリシン0.3M中で30分間ブロックし、PBS/BSA1%で60分間モック染色し、PBSで洗浄した後、カバーガラスを載せた。
【0137】
メタノール固定では、スライドを室温で5分間乾燥させ、-20℃に冷やした100%メタノールに10分間浸した。次いで、PBS/BSA1%/ツイーン20 0.1%/グリシン0.3M中で30分間ブロックし、PBS/BSA1%で60分間モック染色し、PBSで洗浄した後、カバーガラスを載せた。
【0138】
RNA量の分析のためにカバースリップを取り除くまで、すべてのスライドを4℃で48時間維持した。
【0139】
RNA抽出では、市販のRNA抽出キットを使用した(Jena bioscience、Germany)。カバーガラスを取り除き、疎水性インクの円をスライド上の細胞の周りに描いた。500マイクロリットルの溶解バッファーを加え、室温で5分間インキュベーションした。試料を吸引し、300マイクロリットルのイソプロパノールと混合した。ミニスピンカラムを製造業者の取扱説明書に従って活性化バッファーを用いて調製し、試料をカラムに加えた。10,000gで30秒間遠心分離した後、フロースルーを捨て、カラムを製造業者から供給された洗浄バッファーで2回洗浄した。次に、スピンカラムを新しいマイクロ遠心チューブに入れた。40マイクロリットル溶出バッファーを各カラムに加え、室温で1分間インキュベーションした。次に、カラムを10,000gで1分間遠心分離し、フロースルーに得られたRNAをQbit Fluorometer 3.0(Thermo Fisher)で測定した。RNA量を、他の試料の固定と同じ日に同じ培養から得た新鮮な細胞から得た全RNAと比較し、その後、10%FBSを含むRPMI1640培地に4℃で48時間保存した。新鮮な細胞をPBSで洗浄し、再計数した後にRNAを抽出した。
【0140】
図10に示されるように、
図1及び本明細書の他の箇所に記載の方法は、新鮮な細胞と比較して最高で70%のRNAを保存し、それに対してメタノール固定及びPFA固定ではRNAが実質的に失われる。したがって、本明細書に記載の方法及び組成物は、下流の(downstream)分子生物学的方法、例えば、遺伝子解析、トランスクリプトーム解析、及び次世代RNAシークエンシングを容易にする独自の利点をもたらす。
CTCの同定 - 実施例
【0141】
以下は、細胞試料中の循環腫瘍細胞を同定するための本明細書の他の箇所に記載の方法の使用例である。試料は、本明細書の他の箇所に記載の方法及び組成物に従って調製した。特定の例が使用されるが、本明細書に記載の方法は、本明細書に提示されているもの以外の例において使用されうることは当業者に理解されよう。
【0142】
対象となる細胞の核領域の総蛍光密度又は総ピクセル強度は、循環するがん細胞を同定するための貴重なマーカーである。細胞のDNA量は、膜(CD45、CD34、CD14、白血球マーカー)、細胞質基質(ビメンチン)、及び/又は核抗原(例えば、H3Ser10、有糸分裂マーカー、カスパーゼ-3、アポトーシスマーカー)の免疫染色と組み合わせて悪性腫瘍を確認又は除外する重要な指標として役立ちうる。
【0143】
本明細書の他の箇所に示され、記載されるように、有糸分裂を経ている健康な白血球(WBC)で核DNA量が2倍の増加を見出すことができる。しかし、有糸分裂を経るWBCは、健常個体において非常に稀なことである(例えば、50万個のWBC当たり1細胞未満)。正常な(Healthy)有糸分裂性のWBCは、WBCマーカーCD45及び/又はCD14及び/又は他の発現並びにヒストン3のセリン10でのリン酸化を特徴とし、文献で広く報告されており、時として有糸分裂細胞を検出するために日常診断で使用される。
【0144】
しかし、ヒストン3のセリン10のリン酸化を伴わない(抗H3Ser10抗体の結合がない)核DNA量のいずれの2倍増加も、又は2倍以外のいずれの増加、特に2倍を超えるいずれの増加も、循環中に見出される細胞の悪性腫瘍に対する強い指標である。核DNA含の減少はいずれも、CD34などの造血幹細胞マーカーとともに評価され、カスパーゼ-3などのアポトーシスマーカーとともに評価され、臨床状況では、例えば、サラセミア又は循環内のアポトーシス細胞の頻度の上昇につながる他の疾患を除外して評価されなければならない。全血の長期保存は、アポトーシス細胞の頻度を増加させることにもつながりうることに留意されたい。
CTCの同定 - 実施例1
【0145】
図11Aは、前立腺がん細胞試料のBV421-CD45染色の顕微鏡画像を示し、
図11Bは、同じ前立腺がん細胞試料のDyLight594-ビメンチン染色の顕微鏡画像を示す。
図11A~11Bを比較すると、染色が、ビメンチン(
図11B)に対しては陽性であるが、CD45(
図11A)に対しては陰性である対象となる細胞400が存在する。
図11Cに示されるDRAQ5での対象となる細胞400の核染色は、
図2~3及び本明細書の他の箇所に記載のように対象となる細胞400と細胞試料中の他の細胞410をバックグラウンド420に対して正規化したとき、対象となる細胞400は、
図11Dのヒストグラムに示されるように、他の細胞410と比べてDNA量が減少する(0.79×)ことを示す。これらのデータは、対象となる細胞が、循環腫瘍細胞又はアポトーシス性のいずれかであることと一致する。これら2つの可能性を区別するためには、1つ以上のアポトーシスマーカーを用いたさらなる分析が必要とされることになる。
CTCの同定 - 実施例2
【0146】
図12Aは、前立腺がん細胞試料のBV421-CD45染色の顕微鏡画像を示し、
図12Bは、同じ前立腺がん細胞試料のDyLight594-ビメンチン染色の顕微鏡画像を示す。
図12A~12Bを比較すると、染色が、ビメンチン(
図12B)に対しては陽性であるが、CD45(
図12A)に対しては陰性である対象となる細胞500が存在する。
図12Cに示されるDRAQ5での対象となる細胞500の核染色は、
図2~3及び本明細書の他の箇所に記載のように対象となる細胞500と細胞試料中の他の細胞510をバックグラウンド520に対して正規化したとき、対象となる細胞500は、
図12Dのヒストグラムに示されるように、他の細胞510と比べてDNA量が増加する(1.45×)ことを示す。これらのデータは、対象となる細胞が、異数性細胞又は循環腫瘍細胞のいずれかであることと一致する。細胞が正常な有糸分裂を経ていないことを確認するためには、増殖マーカー又は有糸分裂マーカーでの染色が必要とされることになる。
CTCの同定 - 実施例3
【0147】
図13Aは、前立腺がん細胞試料のBV421-CD14染色の顕微鏡画像を示し、
図13Bは、同じ前立腺がん細胞試料のPacific Orange-CD45染色の顕微鏡画像を示し、
図13Cは、同じ前立腺がん細胞試料のAlexaFluor488-ビメンチン染色の顕微鏡画像を示す。
図13A~13Cを比較すると、染色が、ビメンチン(
図13C)に対しては陽性であるが、CD45(
図13B)とCD14(
図13A)に対しては陰性である対象となる細胞600が存在する。
図13Dに示されるDRAQ5での対象となる細胞600の核染色は、
図2~3及び本明細書の他の箇所に記載のように対象となる細胞600と細胞試料中の他の細胞610をバックグラウンド620に対して正規化したとき、対象となる細胞600は、
図13Eのヒストグラムに示されるように、他の細胞610と比べてDNA量が増加する(1.44×)ことを示す。これらのデータは、対象となる細胞が、異数性細胞又は循環腫瘍細胞のいずれかであることと一致する。細胞が正常な有糸分裂を経ていないことを確認するためには、増殖マーカー又は有糸分裂マーカーでの染色が必要とされることになる。
CTCの同定 - 実施例4
【0148】
図14Aは、前立腺がん細胞試料のBV421-CD14染色の顕微鏡画像を示し、
図14Bは、同じ前立腺がん細胞試料のPacific Orange-CD45染色の顕微鏡画像を示し、及び
図14Cは、同じ前立腺がん細胞試料のAlexaFluor488-ビメンチン染色の顕微鏡画像を示す。
図14A~14Cを比較すると、染色が、ビメンチン(
図14C)に対しては陽性であるが、CD45(
図14B)とCD14(
図14A)に対しては陰性である2つの対象となる細胞700A、700Bが存在する。
図14Dに示されるDRAQ5での対象となる細胞700A、700Bの核染色は、
図2~3及び本明細書の他の箇所に記載のように対象となる細胞700A、700Bと細胞試料中の他の細胞710をバックグラウンド720に対して正規化したとき、対象となる細胞700A、700Bは、
図14Eのヒストグラムに示されるように、他の細胞710と比べてDNA量が増加する(それぞれ1.77×及び1.76×)ことを示す。これらのデータは、対象となる細胞が、異数性細胞又は循環腫瘍細胞のいずれかであることと一致する。細胞が正常な有糸分裂を経ていないことを確認するためには、増殖マーカー又は有糸分裂マーカーでの染色が必要とされることになる。
CTCの同定 - 実施例5
【0149】
図15Aは、前立腺がん細胞試料のPacific Orange-CD45染色の顕微鏡画像を示し、
図15Bは、同じ前立腺がん細胞試料のPE-リン酸化セリン10ヒストンH3染色(すなわち増殖マーカー)の顕微鏡画像を示し、及び
図15Cは、同じ前立腺がん細胞試料のAlexaFluor488-ビメンチン染色の顕微鏡画像を示す。
図15A~15Cを比較すると、染色が、ビメンチン(
図15C)、リン酸化セリン10ヒストンH3(
図15B)、及びCD45(
図15A)に対して陽性である対象となる細胞800が存在し、細胞が良性で有糸分裂の過程を経ていることを示唆する。
図15Dに示されるDRAQ5での対象となる細胞800の核染色は、
図2~3及び本明細書の他の箇所に記載のように対象となる細胞800と細胞試料中の他の細胞810をバックグラウンド820に対して正規化したとき、対象となる細胞800は、
図15Eのヒストグラムに示されるように、他の細胞810と比べてDNA量が増加する(2.02×)ことを示す。これらのデータは、対象となる細胞が良性で有糸分裂の過程にあることと一致する。
CTCの同定 - 実施例6
【0150】
図16Aは、前立腺がん細胞試料のBV421-CD34染色の顕微鏡画像を示し、
図16Bは、同じ前立腺がん細胞試料のPacific Orange-CD45染色の顕微鏡画像を示し、及び
図16Cは、同じ前立腺がん細胞試料のAlexaFluor488-ビメンチン染色の顕微鏡画像を示す。
図16A~16Cを比較すると、染色が、ビメンチン(
図16C)に対しては陽性、CD34(
図16A)に対しては弱い陽性であるが、CD45(
図16B)に対しては陰性である対象となる細胞900が存在する。
図16Dに示されるDRAQ5での対象となる細胞900の核染色は、
図2~3及び本明細書の他の箇所に記載のように対象となる細胞900と細胞試料中の他の細胞910をバックグラウンド920に対して正規化したとき、対象となる細胞900は、
図16Eのヒストグラムに示されるように、他の細胞910と比べてDNA量が減少する(0.83×)ことを示す。これらのデータは、対象となる細胞が異数性及び悪性であることと一致する。
CTCの同定 - 実施例7
【0151】
図17Aは、前立腺がん細胞試料のBV421-CD14染色の顕微鏡画像を示し、
図17Bは、同じ前立腺がん細胞試料のPacific Orange-CD45染色の顕微鏡画像を示し、及び
図17Cは、同じ前立腺がん細胞試料のAlexaFluor488-ビメンチン染色の顕微鏡画像を示す。
図17A~17Cを比較すると、染色が、ビメンチン(
図17C)に対しては陽性、CD45(
図17B)に対しては弱い陽性であるが、CD14(
図17A)に対しては陰性である対象となる細胞1000が存在する。
図17Dに示されるDRAQ5での対象となる細胞1000の核染色は、
図2~3及び本明細書の他の箇所に記載のように対象となる細胞1000と細胞試料中の他の細胞1010をバックグラウンド1020に対して正規化したとき、対象となる細胞1000は、
図17Eのヒストグラムに示されるように、他の細胞1010と比べてDNA量が減少する(0.74×)ことを示す。これらのデータは、対象となる細胞が異数性及び悪性であることと一致する。
【0152】
本明細書に含まれる例及び説明は、限定ではなく例として、発明の対象が実施されうる特定の実施形態を示す。本開示の範囲から逸脱することなく構造的及び論理的な置換及び変更がなされうるように、他の実施形態を利用し、及びそれらから誘導することができる。本発明の対象のそのような実施形態は、単に便宜上、且つ、2つ以上が実際に開示される場合、本出願の範囲をいずれの単一の発明又は発明の概念にも自発的に(voluntarily)限定することを意図せずに、本明細書において、個々に又は集合的に、「発明」という用語で呼ばれる。したがって、特定の実施形態を本明細書に図示及び記載してきたが、同じ目的を達成するために計画されるいずれの構成も、示された特定の実施形態に置き換えることができる。本開示は、さまざまな実施形態のあらゆる改変又は変形を網羅することを意図している。上記の実施形態の組み合わせ、及び本明細書に具体的に記載されていない他の実施形態は、上記記載を検討することにより当業者ならば明らかであろう。