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特許7038119光バイオリアクタ及び関連する光バイオリアクタのためのモジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-09
(45)【発行日】2022-03-17
(54)【発明の名称】光バイオリアクタ及び関連する光バイオリアクタのためのモジュール
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20220310BHJP
【FI】
C12M1/00 C
C12M1/00 D
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019528580
(86)(22)【出願日】2017-11-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-12-12
(86)【国際出願番号】 EP2017080380
(87)【国際公開番号】W WO2018096107
(87)【国際公開日】2018-05-31
【審査請求日】2020-10-08
(31)【優先権主張番号】1661496
(32)【優先日】2016-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】510073202
【氏名又は名称】セントレ ナショナル デ ラ リシェルシェ サイエンティフィック(セ・エン・エル・エス)
(73)【特許権者】
【識別番号】516293716
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ ド ナント
(73)【特許権者】
【識別番号】513128051
【氏名又は名称】エコール ナシオナル シュプリエール ド シミエ ド クレモン-フェランド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】プリュボ,ジェレミー
(72)【発明者】
【氏名】ルグラン,ジャック
(72)【発明者】
【氏名】コルヌ,ジャン‐フランソワ
【審査官】西垣 歩美
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-511411(JP,A)
【文献】特表2016-515387(JP,A)
【文献】特開平10-150974(JP,A)
【文献】特開2001-231538(JP,A)
【文献】国際公開第2010/126002(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00ー3/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一の隣接するモジュールとともに組み立てられるように適合される光バイオリアクタモジュールであって、以下の:
第1側面及び該第1側面と対向する第2側面を有するパネルであって、前記第1側面は、隣接するパネルの前記第2側面とともに、モジュールが組み立てられるときに、培地を収容するのに適するキャビティの範囲を定め、前記キャビティの厚さは、1ミリメートル~2センチメートルの間で構成され、ここで、前記パネルは2つの透明なプレートを含み;かつ
気泡が前記パネルの側面を上昇するように、前記キャビティ内に含まれる前記培地へガス気泡を注入するのに適したガス注入装置であって、前記ガス注入装置は、前記透明プレートのうちの一方の中へ切って入れられるガス注入チャネルを含む;
を含む、光バイオリアクタモジュール。
【請求項2】
キャビティ内に収容された培地を照明するのに適した照明装置を備え、前記照明装置は、織布光ファイバウェブ又は拡散プレート又は発光ダイオード型光源が集積されるプレートを備える、請求項1に記載のモジュール。
【請求項3】
照明装置が2つの透明プレートの間に延びている、請求項2に記載のモジュール。
【請求項4】
各透明プレートは、ポリ(メタクリル酸メチル)、ガラス又はいかなる他の透明材料で作られる、請求項3に記載のモジュール。
【請求項5】
パネルは、いくつかのモジュールが組み立てられるときにキャビティ間の流体連通を可能にする開口部を備える、請求項1~4のいずれか一項に記載のモジュール。
【請求項6】
パネルの第1及び/又は第2側面は、キャビティを形成する凹部を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のモジュール。
【請求項7】
モジュール間の密着性を形成するように配置されるガスケットを備える、請求項1~6のいずれか一項に記載のモジュール。
【請求項8】
パネルのエッジに沿って延びてパネルを補強するフレームを備える、請求項1~7のいずれか一項に記載のモジュール。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のいくつかのモジュールのアセンブリを備え、各モジュールが、隣接するモジュールとともに、培地を収容するのに適したキャビティを画定する、光バイオリアクタ。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のいくつかのモジュールのアセンブリを備え、キャビティ内に収容される培地へのガス気泡の注入を、前記キャビティの幅の第1部分に対して、次いで前記キャビティの幅の第2部分に対して交互に制御するように構成される制御ユニットを更に備える、光バイオリアクタ。
【請求項11】
モジュールを互いに対して所定の場所に保持するように前記モジュールを支持するガイドレールを含むフレームを備える、請求項9又は10に記載の光バイオリアクタ。
【請求項12】
モジュールを互いに密接させて保持するようにアセンブリを押圧する装置を備える、請求項9~11のいずれか一項に記載の光バイオリアクタ。
【請求項13】
押圧する装置は、モジュールがその間に配置される第1エンドプレート及び第2エンドプレートと、第2プレートを第1プレートに近づけるために前記第2プレートに圧力を加えるのに適したアクチュエータとを備える、請求項12に記載の光バイオリアクタ。
【請求項14】
培地の温度を制御する装置を備える、請求項9~13のいずれか一項に記載の光バイオリアクタ。
【請求項15】
モジュールは、計装モジュールを含み、前記計装モジュールは、培地に接触する1つ以上のセンサを含む、請求項9~14のいずれか一項に記載の光バイオリアクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中に浮遊する光合成微生物を生産するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
光バイオリアクタは、多細胞植物、配偶体のような小植物、光合成細菌、シアノバクテリア、真核微細藻類、単離された大型藻類細胞及びコケ原糸体のように、水中に浮遊する光合成微生物を生産するシステムである。
【0003】
この生産は、照明下の水性媒地内で、最も多くはクローン性の培養を含む。数百立方メートルまでの産業体積への拡大は、1つの工程の体積を使用して次の体積を植え付けるという連続的な工程で行われる。微生物集団を収穫してバイオマス生産を確実にするために、各工程の体積は、毎日部分的に更新(連続培養)されるか又は完全に変更(バッチ培養)される可能性がある。これらの工程は、体積が増加する光バイオリアクタに対応する。
【0004】
光合成微生物は、最小放射照度Gcよりも大きい、放射照度と呼ばれる光エネルギーを受け取ったときにのみバイオマスを生産する。しかしながら、藻類培養は光を減衰する吸収性媒質であるため、光は指数関数的法則に従って培養の厚さとともに減少する。
【0005】
培養系のバイオマス生産性を向上させるためには、光エネルギーの供給を増加させ、かつ/又は所与の照明表面に対する培養体積を減少させる(すなわち、照明される比表面を増加させる)ことが望ましい。したがって、培養体積に関する生産性(すなわち、体積生産性(volume productivity))は、通常、照明される表面に関する生産性(すなわち、表面生産性(surface productivity))と区別される。
【0006】
上述の工程の間に光バイオリアクタの体積を変更し、かつ微生物が受け取る放射照度を標準化するために、非特許文献1は、強い入射光を弱めて、その光をリアクタ内で均一に拡散する多層光バイオリアクタを提案した。層を光バイオリアクタに徐々に追加して、光バイオリアクタの体積を変化させることを可能にすることができる。
【0007】
しかしながら、この原理に基づいて設計されたシステムは、大きな限界に直面する。すなわち、バイオフィルムと呼ばれる堆積物を照明壁上に形成するという傾向に直面する。バイオフィルムは、時間の経過とともにリアクタ体積内の光強度を減少させ、したがって、生産効率を減少させる。この現象は、培養の厚さ(すなわち、光プレート間の距離)が小さいほど大きくなる。媒地(medium)の閉じ込め(confinement)は、比照明表面積の増加に起因して、実際に増加し、バイオマス濃度も増加し、より高い体積生産性につながる。
【0008】
バイオフィルムの形成を避けるために、媒地を受け取るキャビティ内に機械的洗浄装置を挿入することが提案されているが、そのような洗浄装置は薄いキャビティには適合しない。したがって、実際には、培養の厚さは少なくとも数センチメートル、典型的には1cmより大きいものでなければならず、これにより、高い体積生産性が得られない。
【0009】
結局、水中照明プレートの原理に基づいて設計されるこれらのシステムは、体積生産性が低く、腐敗する傾向が強い。
【0010】
高い体積生産性を可能にする技術に関して、一例が特許文献1であり、特許文献1は、溶液が流れる傾斜方向の平均勾配で傾斜した照明パネルを含む、光バイオリアクタを説明している。これは、数ミリメートルの最小厚さを得ること、よって、高い体積生産性を得ることを可能にする。したがって、照明パネルは培養に接触せず、バイオフィルムを防止する。しかしながら、このような溶液は、内部照明を有するモジュラー光バイオリアクタには適合しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】仏国特許発明2950899号明細書
【非特許文献】
【0012】
【文献】Toshihiko Kondo著「Efficient hydrogen production using a multi-layered photobioreactor and a photosynthetic bacterium mutant with reduced pigment」
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の1つの目的は、バイオマスの強化された効率的な体積生産性を維持しながら、光バイオリアクタの体積を変えることを可能にする溶液を提案することである。
【0014】
この目的は、本発明の文脈において、同一の隣接するモジュールとともに組み立てられるように適合される光バイオリアクタモジュールによって達成される。この光バイオリアクタモジュールは、
- 第1側面及び該第1側面と対向する第2側面を有するパネルであって、第1側面は、モジュールが組み立てられるときに、隣接するパネルの第2側面とともに、培地を含有するのに適したキャビティの範囲を定め、該キャビティは、1ミリメートル~2センチメートルの間で構成される厚さを有するパネルと、
- 気泡がパネルの側面を上昇するように、キャビティ内に含まれる培地にガス気泡を注入するのに適したガス注入装置と、
を含む。
【0015】
プレート間のスペースによって定義される培養の厚さは非常に低く、これは高い体積生産性を可能にする。バイオフィルムの形成は、2つのプレート間の効果的な発泡によって防止される。実際、キャビティの薄さのために、パネルの側面を上昇するガス気泡は、それらが通過するときに、パネルを機械的に洗浄する。微生物の培養(栄養の供給)に必要なガスの注入は、培地の移動を促進することも助け、これは、キャビティ内に存在する微生物の放射照度を標準化することを可能にする。
【0016】
また、モジュールは、一定の体積生産性及び表面生産性を保証するようにも設計される。光バイオリアクタのモジュール式の性質は、実際、光に対する微生物の最適な露出を維持するモジュールを追加することによって、単純かつ線形的方法で生産能力を増加させることを可能にする。モジュールを光バイオリアクタに追加して、光バイオリアクタの体積を数リットルから数mに変えることができる。キャビティの薄さと両側面上の照明(したがって、培養の厚さはキャビティの厚さの半分に等しい)により、このようなモジュールは、組み立てられるモジュールの数に関係なく、体積生産性の高い光バイオリアクタを製造することを可能にする。
【0017】
図8は、800μmol・m-1・s-1(実線)の光束(PFD)及び200μmol・m-1・s-1(点線)の光束(PFD)について、1日当たりの体積生産性Pv(logプロット)を培養厚Lの関数として示す。このグラフは、本発明が、先行技術の10倍以上の生産を可能にすることを示している。
【0018】
本発明は、有利には、個々に又は技術的に可能な組み合わせのいずれか1つで取られる以下の特徴によって完成される。
- キャビティ内に含まれる培地を照明するのに適した照明装置を備え、該照明装置は、織布光ファイバウェブ(woven optical fiber web)又は拡散ガラスプレートを備える。
- パネルは、照明装置がその間に延在する2つの透明プレートを備える。
- 各透明プレートは、ポリ(メタクリル酸メチル)、ガラス又は任意の他の透明材料で作られる。
- ガス注入装置は、透明プレートのうちの一方に切断又は挿入されるガス注入チャネルを含む。
- パネルは、いくつかのモジュールが組み立てられるときにキャビティ間の流体連通を可能にする開口部を備える。
- パネルの第1及び/又は第2側面は、キャビティを形成する凹部を有する。
- モジュール間の密着性(tight contact)を形成するように配置されるガスケットを備える。
- パネルのエッジに沿って延びてパネルを補強するフレームを備える。
【0019】
本発明はまた、上述したようないくつかのモジュールのアセンブリを含み、各モジュールは、隣接するモジュールとともに、培地を含有するのに適したキャビティを画定する光バイオリアクタにも関する。
【0020】
光バイオリアクタは、いくつかのモジュールのアセンブリと、キャビティ内に含まれる培地へのガス気泡の注入を、キャビティの幅の第1部分に対して、次いでキャビティの幅の第2部分に対して交互に制御するように構成される制御ユニットを含む。
【0021】
光バイオリアクタは、モジュールを互いに対して所定の場所に保持するようにモジュールを支持するガイドレールを有するフレームを備える。
【0022】
光バイオリアクタは、モジュールを互いに密着させて保持するようにアセンブリを押圧する装置を備える。
【0023】
押圧装置は、モジュールがその間に配置される第1エンドプレート及び第2エンドプレートと、第2プレートを第1プレートに近づけるために第2プレートに圧力を加えるのに適したアクチュエータとを備える。
【0024】
光バイオリアクタは、培地の温度を制御する装置を含む。
【0025】
モジュールは、計装モジュール(instrumented module)を含み、計装モジュールは、培地に接触する1つ以上のセンサを含む。
【図面の簡単な説明】
【0026】
他の目的、特徴及び利点は、非限定的な例示として与えられる図面を参照して、以下の詳細な説明から明らかになる。
図1】本発明の一実施形態による光バイオリアクタを示す図である。
図2】本発明の一実施形態によるモジュールを示す図である。
図3】本発明の一実施形態によるモジュールの断面図である。
図4】モジュールアセンブリの断面図である。
図5】本発明の一実施形態によるモジュールの断面図である。
図6】本発明の一実施形態による光バイオリアクタの分解図である。
図7】計装モジュールを有するモジュールアセンブリの断面図である。
図8】培養厚の関数として1日当たりの体積生産性(対数でプロット)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1を参照すると、光バイオリアクタ100は、フレーム4及び一連のモジュール1を含む。
【0028】
図4を参照すると、各光バイオリアクタモジュール10は、同一の隣接するモジュールとともに組み立てられ、上部に設けられた開口部8を有し、培地を含有するのに適したキャビティ14を、隣接するモジュールとともに画定するよう適合される。各モジュール10は、パネル1と、ガス注入装置2を備える。
【0029】
2つのパネル1の間の距離はキャビティ14の厚さを画定し、一方、パネル1の幅はキャビティ14の幅を画定し、パネル1の高さはキャビティ14の高さを画定する。
【0030】
図2図3及び図4を参照すると、各パネル1は、第1側面11と、該第1側面11に対向する第2側面12を有する。第1側面11は、モジュール10が組み立てられるときに、隣接するパネル1の第2側面12とともに、培地を含有するのに適したキャビティ14の範囲を定める。キャビティ14は、1ミリメートル~2センチメートルの間、好ましくは1ミリメートル~9ミリメートルの間、例えば6ミリメートルからなる厚さeを有する。
【0031】
図3を参照すると、各パネル1は、2つの透明プレート17a、17bを含む。透明プレート17a、17bは、ガラス又は硬質プラスチック(例えばメタクリル酸メチル(PMMA)又はポリカーボネート)のような材料で、あるいは可撓性プラスチックフィルム(例えばポリエチレン、ポリウレタン又は塩化ビニル-PVC)で作られる。各モジュール10は、パネルのエッジに沿って延びてパネルを補強するフレーム16を備える。パネル1の第1側面11と第2側面12は、キャビティ14を形成する凹部17を有する。より正確には、プレート17a及び17bの各々は、単一の材料片に形成され、凹部17は、プレート17a及び/又はプレート17b内に形成される。
【0032】
図4を参照すると、各モジュール10は、組み立てられるときにモジュール10の間の密着性を形成するように配置されるガスケット15を含む。
【0033】
図3を参照すると、ガス注入装置2は、気泡がパネル1の側面11及び12を上昇するように、キャビティ14に含まれる培地へガス気泡を注入するのに適している。注入されるガスは二酸化炭素を含み、典型的には反応からの空気又はガスであり、工場から出てきて収集される。
【0034】
ガス注入装置2は、パネル1の下部のキャビティ14の幅にわたって分布するガス注入チャネル21を含む。ガス注入チャネル21は、各モジュール10の透明プレート17a、17bの一方の中に切って入れられるか又は2つの透明プレート17a、17bの間に配置される。ガス注入装置2は、典型的には、圧力下で注入されるべきガスを含むタンク22を備え、タンクは、ガス注入チャネル21と連通する出口を有する。
【0035】
ガス注入装置2は、微生物が必要とする二酸化炭素が充填されたガスを、ガス注入チャネル21を介してキャビティ14へ注入する。注入されたガスは、パネル1の側面11、12を上昇する気泡を形成する。気泡が上昇するにつれて、気泡は、微生物によって生成された光合成酸素で充填される。微生物によって生成された光合成酸素を充填したガスは、パネルの上部に設けられた開口部8を通して排気される。
【0036】
ガス注入装置2は、微生物によって消費された二酸化炭素を新しくして、微生物によって生成された光合成酸素を除去する。実際、高すぎる酸素濃度及び低すぎる二酸化炭素濃度は、光合成反応を阻害する。
【0037】
パネルの側面11及び12を上昇することにより、気泡はキャビティ14の内壁を機械的に洗浄し、リアクタ体積内の光強度を減少させることになるバイオフィルムの発達を防止する。
【0038】
また、ガスの注入は、微生物の放射照度の均一性を改善するために培地の移動も促進する。
【0039】
ガス注入装置2は、有利には、形成バイオフィルムに対するせん断効果を増大させるために、パルス化された逐次的な方法でガスを注入するように適合される。
【0040】
キャビティ14内に含まれる培地へのガス気泡の注入を制御するよう構成される制御ユニット23は、キャビティ14の幅の第1部分S1にわたって分布するガス注入チャネル21、次いでキャビティ14の幅の第2部分S2にわたって分布するガス注入チャネル21へと交互に気泡の注入を制御する。
【0041】
制御ユニット23はまた、キャビティ14の第1グループの第1部分S1にわたって分布するガス注入チャネル21、次いでキャビティ14の第2グループの第2部分S2にわたって分布するガス注入チャネル21を交互に制御するように構成されることも可能である。
【0042】
制御ユニット23はまた、キャビティ14の第1グループの第1部分S1にわたって分布するガス注入チャネル21及びキャビティ14の第2グループの第2部分S2にわたって分布するガス注入チャネル21、次いで、キャビティ14の第1グループの第2部分S2にわたって分布するガス注入チャネル21及びキャビティ14の第2グループの第1部分S1にわたって分布するガス注入チャネル21を交互に制御するように構成されることも可能である。
【0043】
キャビティ14の幅の第1部分S1は、典型的に、キャビティ14の幅の第2部分S2に相補的である。
【0044】
このために、制御ユニット23は、以下のシーケンスに従って気泡の注入を制御する:
キャビティ14の幅の第1部分S1にわたって分布するガス注入チャネル21を通る気泡の注入、
キャビティ14の幅の第2部分S2にわたって分布するガス注入チャネル21を通る気泡の注入。
【0045】
注入シーケンスは、キャビティ14の幅の第1部分S1にわたって分布するガス注入チャネル21を通る気泡の注入と、キャビティ14の幅の第2部分S2にわたって分布するガス注入チャネル21を通る気泡の注入を同時に行うステップを更に含んでもよい。
【0046】
本発明者らは、キャビティ14の幅の一方の部分S1に対して、次いで、キャビティ14の幅の他方の部分S2に対してガス気泡を交互に注入することにより、洗浄効率が実質的に改善されたことを示している。
【0047】
実際、気泡の注入は、液体を上方に同伴する。この上方への移動は、液体の下方への移動によって補償される。しかしながら、この液体の下方移動は、気泡のせん断効果を妨害する。
【0048】
気泡がキャビティ14の幅のある部分上のみに注入されるとき、気泡は、キャビティ14の幅のその部分上の上方に液体を同伴し、液体はキャビティ14の幅の相補的な部分へ下降して周期的な移動を形成する。したがって、液体の下方移動は、気泡のせん断効果を妨げない。次いで、キャビティ14の幅の相補部分の洗浄は、ガス気泡をキャビティ14の幅の相補部分に注入することによって行われる。したがって、キャビティ14は、最終的にその全体の幅にわたって洗浄される。
【0049】
さらに、ガス注入装置2は、有利には、形成バイオフィルムに対するせん断効果を増大させるために、厚さeと同程度の大きさのサイズを有する気泡を形成するように適合される。
【0050】
図5を参照すると、各モジュール10は、キャビティ14内に含まれる培地を照明するのに適した照明装置3を備え、照明装置3は、光源32及び光拡散装置31を備える。
【0051】
光源32は、典型的に、発光ダイオードである。それは典型的に、光合成変換を改善するように適合されたスペクトル範囲内の白色光を放射する。
【0052】
光源32は、すべてのモジュール10に共通のものとすることができる。特に、光源32は、太陽光であってよい。この場合、光源32は、太陽光束(solar flux)を捕捉し、その光束を光拡散装置31へ透過させるためのシステムを備える。
【0053】
光拡散装置31は、2つの透明プレート17a、17bの間に延在する。内部照明は、放射された光束の全吸収、光減衰条件の制御を可能にし、したがって生物学的変換の制御及び低エネルギー消費を可能にする。
【0054】
光拡散装置31は、典型的に、横方向拡散織布光ファイバウェブ(laterally diffused woven optical fiber web)又は拡散ガラスプレートのような側方拡散装置(side-diffusion device)、あるいは発光ダイオード(LED)のストリップが集積される薄いポリマーシートである。
【0055】
図5を参照すると、パネル1は、いくつかのモジュール10が組み立てられるときに、キャビティ14の間の流体連通を可能にする開口部18を含む。したがって、キャビティ14が流体連通状態になるように、モジュール10を一緒に組み立てることができる。
【0056】
図6を参照すると、フレーム4は、典型的に、モジュール10を互いに対して所定の場所に保持するように、モジュール10が支持されるガイドレール41を備える。光バイオリアクタ100は、モジュール10を互いに密接させて保持するようアセンブリを押圧する装置5を更に含む。押圧装置5は、その間にモジュール10が配置される第1エンドプレート51及び第2エンドプレート52と、第2プレート52を第1プレート51に近づけるために第2プレート52に圧力を加えるのに適したアクチュエータ53とを備える。加えられる圧力は、異なるモジュール10の間の水密性を保証する。アクチュエータ53は、典型的に、ポンプ(例えば遠心力又はダイヤフラム)によって駆動される油圧ジャックである。
【0057】
図4を参照すると、光バイオリアクタ100は、培養温度を光バイオリアクタの最適温度に維持するように、培養培地の温度を制御するための装置6を更に含む。実際、高密度の培養は赤外線を吸収するので、過剰な熱が除去されなければ微生物に致死的な温度をもたらす可能性がある。
【0058】
このために、温度制御装置6は、例えば冷却液用の循環管61と冷却モジュール62を備える流回路(flow circuit)を備え、循環管61は冷却モジュール62を貫通して延びている。循環管61は、例えばモジュール10を通って又はプレート17a、17bを通って延在する。冷却剤は、例えば水とすることができる。
【0059】
図7を参照すると、光バイオリアクタ100は、少なくとも1つの計装モジュール7を更に含む。計装モジュール7は、他のモジュール10と類似しており、例えば温度センサ又は酸素濃度センサ等のような、培地に接触する1つ以上のセンサ71を含む。これらのセンサからの情報は、培養の生産性を最適化するために、キャビティ内の条件、特に温度、照明及び溶液組成をモニタするために使用される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8