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特許7038173正極活物質およびこれを含むリチウム二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-09
(45)【発行日】2022-03-17
(54)【発明の名称】正極活物質およびこれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20220310BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20220310BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20220310BHJP
   H01M 4/1391 20100101ALI20220310BHJP
   H01M 4/131 20100101ALI20220310BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/36 C
H01M4/1391
H01M4/131
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020173365
(22)【出願日】2020-10-14
(65)【公開番号】P2021068700
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2020-10-22
(31)【優先権主張番号】10-2019-0129755
(32)【優先日】2019-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517113750
【氏名又は名称】エコプロ ビーエム カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ECOPRO BM CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100128668
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 正巳
(74)【代理人】
【識別番号】100096943
【氏名又は名称】臼井 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100217825
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 博喜
(72)【発明者】
【氏名】チェ ムン ホ
(72)【発明者】
【氏名】スー ジュン ウォン
(72)【発明者】
【氏名】ユン ジン キョン
(72)【発明者】
【氏名】リー ジュン ハン
(72)【発明者】
【氏名】ユン ミ ヒエ
(72)【発明者】
【氏名】チェ スン ウー
(72)【発明者】
【氏名】チェ ワン ソク
(72)【発明者】
【氏名】ヤン イェ リ
(72)【発明者】
【氏名】ベ ジョン ホ
【審査官】近藤 政克
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-022676(JP,A)
【文献】特開2015-214464(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/525
H01M 4/505
H01M 4/36
H01M 4/1391
H01M 4/131
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムの吸蔵および放出が可能な一次粒子および前記一次粒子が凝集した二次粒子を含み、
前記二次粒子の外周面に沿って前記二次粒子内ニッケル、コバルトおよびマンガンから選ばれる1つの元素の濃度が増加する第1濃度勾配区間と、前記元素の濃度が減少する第2濃度勾配区間が存在し、
ニッケル、コバルトおよびマンガンから選ばれ、前記元素ではない、1つの濃度は前記第1濃度勾配区間において減少し、
ニッケル、コバルトおよびマンガンから選ばれ、前記元素ではない、1つの濃度は前記第2濃度勾配区間において増加する
正極活物質。
【請求項2】
前記第1濃度勾配区間および前記第2濃度勾配区間は、前記二次粒子の表面部に存在する、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項3】
前記二次粒子の外周面に沿って前記第1濃度勾配区間および前記第2濃度勾配区間が繰り返し存在する、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項4】
前記第1濃度勾配区間および前記第2濃度勾配区間は、前記二次粒子の中心部から前記二次粒子の表面部に向かう方向(縦方向)に垂直な方向(横方向)に沿って存在する、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項5】
前記元素がコバルトであり、前記第1濃度勾配区間内コバルトは、前記二次粒子内コバルトの平均含量より高い濃度に増加する、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項6】
前記元素がコバルトであり、前記第2濃度勾配区間内コバルトは、前記二次粒子内コバルトの平均含量方向に減少する、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項7】
前記二次粒子の外周面に沿って前記第1濃度勾配区間および前記第2濃度勾配区間を含む濃度増減部と、前記元素の濃度が維持される濃度維持部が存在する、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項8】
前記濃度維持部内前記元素の濃度変化率は、0.1μm当たり5wt%以下である、請求項7に記載の正極活物質。
【請求項9】
前記一次粒子間の界面および前記二次粒子の表面のうち少なくとも一部をカバーするコーティング層を含み、
前記コーティング層は、下記の化学式で表される少なくとも1つの酸化物を含む、請求項1に記載の正極活物質。
Li
(ここで、
Aは、Ni、Mn、Co、Fe、Cu、Nb、Mo、Ti、Al、Cr、Zr、Zn、Na、K、Ca、Mg、Pt、Au、B、P、Eu、Sm、W、Ce、V、Ba、Ta、Sn、Hf、Ce、GdおよびNdから選ばれる少なくとも1つであり、
0≦a≦6、0≦b≦4、2≦c≦8である。)
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の正極活物質、導電材およびバインダーを含む、正極スラリー組成物。
【請求項11】
請求項10に記載の正極スラリー組成物を集電体にコートして形成された正極を含むリチウム二次電池。
【請求項12】
リチウムの吸蔵および放出が可能な一次粒子および前記一次粒子が凝集した二次粒子を含み、
前記二次粒子の外周面に沿って前記二次粒子内ニッケル、コバルトおよびマンガンから選ばれる少なくとも1つの濃度が増加する第1濃度勾配区間と、前記二次粒子内ニッケル、コバルトおよびマンガンから選ばれる少なくとも1つの濃度が減少する第2濃度勾配区間が存在し、
前記二次粒子の外周面に沿って前記第1濃度勾配区間および前記第2濃度勾配区間を含む濃度増減部と、前記二次粒子内ニッケル、コバルトおよびマンガンから選ばれる少なくとも1つの濃度が維持される濃度維持部が存在し、
さらに、前記濃度維持部内ニッケル、コバルトおよびマンガンから選ばれる少なくとも1つの濃度変化率は、0.1μm当たり5wt%以下である、
正極活物質。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正極活物質および前記正極活物質が含まれた正極を使用するリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電池は、正極と負極に電気化学反応が可能な物質を使用することによって、電力を貯蔵するものである。このような電池のうち代表的な例としては、正極および負極でリチウムイオンがインターカレーション/デインターカレーションされるときの化学電位(chemical potential)の差異によって電気エネルギーを貯蔵するリチウム二次電池がある。
【0003】
前記リチウム二次電池は、リチウムイオンの可逆的なインターカレーション/デインターカレーションが可能な物質を正極と負極活物質として使用し、前記正極と負極との間に有機電解液またはポリマー電解液を充填させて製造する。
【0004】
リチウム二次電池の正極活物質としては、リチウム複合酸化物が使用されており、その例として、LiCoO、LiMn、LiNiO、LiMnO等の複合酸化物が研究されている。
【0005】
前記正極活物質のうちLiCoOは、寿命特性および充放電効率に優れていて、最も多く使用されているが、原料として使用されるコバルトの資源的限界によって高価なので、価格競争力に限界があるという短所を有している。
【0006】
LiMnO、LiMn等のリチウムマンガン酸化物は、熱的安全性に優れ、価格が安いという長所があるが、容量が小さくて、高温特性が悪いという問題点がある。また、LiNiO系正極活物質は、高い放電容量の電池特性を示しているが、Liと遷移金属との間のカチオンミキシング(cation mixing)問題に起因して合成が難しく、これにより、レート(rate)特性に大きな問題点がある。
【0007】
また、このようなカチオンミキシングの深化程度に応じて多量のLi副産物が発生することとなり、これらのLi副産物の大部分は、LiOHおよびLiCOの化合物からなるので、正極ペーストの製造時にゲル(gel)化する問題点と電極の製造後に充放電の進行によるガス発生の原因となる。残留のLiCOは、セルのスウェリング現象を増加させて、サイクルを減少させると共に、バッテリーが膨らむ原因となる。
【0008】
一方、最近には、正極活物質としてNi、Co、Mnおよび/またはAlが複合化したリチウム系複合酸化物が開発されてきた。一般的に、このようなリチウム系複合酸化物は、LiNiO系正極活物質と同様に、Ni含量が増加するほどエネルギー密度が高くなり、出力特性が向上する利点があるが、反面、抵抗特性が増加する問題が伴う。これに伴い、Ni、Co、Mnおよび/またはAlが複合化したリチウム系複合酸化物において、LiNiOの優れた可逆容量を維持しながらも、抵抗特性および寿命特性の低下を防止できる正極活物質の開発が要求されるのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
リチウム二次電池の市場では、電気自動車用リチウム二次電池の成長が市場の牽引役としての役割をしている中で、リチウム二次電池に使用される正極活物質の需要もやはり持続的に変化している。
【0010】
例えば、従来には、安全性の確保等の観点からLFPを使用したリチウム二次電池が主に使用されてきたが、最近になってLFPに比べて重量当たりエネルギー容量が大きいニッケル系リチウム複合酸化物の使用が拡大する傾向にある。
【0011】
このような正極材の動向に符合して、本発明は、自動車用セルの高容量化実現のためのhigh-Niタイプのリチウム複合酸化物および/または前記リチウム複合酸化物を含む正極活物質を提供することを目的とする。ただし、今まで知られたhigh-Niタイプのリチウム複合酸化物の場合、Niの含量が増加するほど抵抗が高くなり、これに伴い、寿命が劣化する問題がある。
【0012】
したがって、本発明は、リチウム複合酸化物内電荷移動チャネルを形成することによって、Ni含量の増加による抵抗向上問題を解決することが可能なリチウム複合酸化物および/または前記リチウム複合酸化物を含む正極活物質を提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明の他の目的は、本願で定義された正極活物質を含む正極スラリー組成物を提供することにある。
【0014】
また、本発明のさらに他の目的は、本願で定義された正極スラリー組成物を集電体にコートして形成された正極を含むリチウム二次電池を提供することにある。
【0015】
本発明の目的は、以上で言及した目的(例えば、電気自動車用)に制限されず、言及されていない本発明の他の目的および長所は、下記の説明により理解され得、本発明の実施例によりさらに明らかに理解されるだろう。また、本発明の目的および長所は、特許請求範囲に示した手段およびその組合せにより実現され得ることを容易に知ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一態様によれば、リチウムの吸蔵および放出が可能な一次粒子および前記一次粒子が凝集した二次粒子を含む正極活物質が提供される。
【0017】
ここで、前記二次粒子は、前記二次粒子の外周面に沿って前記二次粒子内ニッケル、コバルトおよびマンガンから選ばれる少なくとも1つの濃度が増加する第1濃度勾配区間および前記二次粒子内ニッケル、コバルトおよびマンガンから選ばれる少なくとも1つの濃度が減少する第2濃度勾配区間を含むことができる。
【0018】
一実施例において、前記第1濃度勾配区間および前記第2濃度勾配区間は、前記二次粒子の表面部に選択的に存在し得る。
【0019】
また、前記二次粒子の外周面に沿って前記第1濃度勾配区間および前記第2濃度勾配区間が繰り返し存在し得る。
【0020】
本発明の他の態様によれば、本願に定義された正極活物質、導電材およびバインダーを含む正極スラリー組成物が提供される。
【0021】
本発明のさらに他の態様によれば、本願に定義された正極スラリー組成物を集電体にコートして形成された正極を含むリチウム二次電池が提供される。
【発明の効果】
【0022】
本発明の多様な実施例による正極活物質は、二次粒子の表面部にニッケル、コバルトおよびマンガンから選ばれる少なくとも1つの濃度が増加する第1濃度勾配区間およびニッケル、コバルトおよびマンガンから選ばれる少なくとも1つの濃度が減少する第2濃度勾配区間を含むことによって、正極活物質内電荷移動チャネルを形成することができる。
【0023】
このように、異種の濃度勾配区間の存在によって形成された電荷移動チャネルは、Ni含量の増加による正極活物質の抵抗問題を解決することができる。これに伴い、正極活物質の寿命特性および効率特性等のような電気化学的特性の向上に寄与することができる。
【0024】
上述した効果と共に、本発明の具体的な効果は、以下に発明を実施するための具体的な事項を説明しつつ、一緒に記述する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施例による正極活物質と前記正極活物質内金属元素の濃度勾配を概略的に示すものである。
図2】本発明の一実施例による正極活物質(二次粒子)の一部分(表面部)に対する断面SEMイメージを示すものである。
図3図2に示された正極活物質(二次粒子)の一部分(表面部)のうち前記二次粒子の中心部から前記二次粒子の表面部に向かう方向(縦方向)に垂直な方向(横方向)に沿って存在する金属元素(Ni、Co、Mn)の含量を示すグラフ(line sum spectrum)である。
図4図2に示された正極活物質(二次粒子)の一部分(表面部)のうち前記二次粒子の中心部から前記二次粒子の表面部に向かう方向(縦方向)に垂直な方向(横方向)に沿って存在する金属元素(Ni、Co、Mn)の含量を示すグラフ(line sum spectrum)である。
図5図2に示された正極活物質(二次粒子)の一部分(表面部)のうち前記二次粒子の中心部から前記二次粒子の表面部に向かう方向(縦方向)に垂直な方向(横方向)に沿って存在する金属元素(Ni、Co、Mn)の含量を示すグラフ(line sum spectrum)である。
図6】本発明の他の実施例による正極活物質(二次粒子)の一部分(表面部)に対する断面SEMイメージを示すものである。
図7図6に示された正極活物質(二次粒子)の一部分(表面部)のうち前記二次粒子の中心部から前記二次粒子の表面部に向かう方向(縦方向)に垂直な方向(横方向)に沿って存在する金属元素(Ni、Co、Mn)の含量を示すグラフ(line sum spectrum)である。
図8図6に示された正極活物質(二次粒子)の一部分(表面部)のうち前記二次粒子の中心部から前記二次粒子の表面部に向かう方向(縦方向)に垂直な方向(横方向)に沿って存在する金属元素(Ni、Co、Mn)の含量を示すグラフ(line sum spectrum)である。
図9図6に示された正極活物質(二次粒子)の一部分(表面部)のうち前記二次粒子の中心部から前記二次粒子の表面部に向かう方向(縦方向)に垂直な方向(横方向)に沿って存在する金属元素(Ni、Co、Mn)の含量を示すグラフ(line sum spectrum)である。
図10】本発明のさらに他の実施例による正極活物質(二次粒子)の一部分(表面部)に対する断面SEMイメージを示すものである。
図11図10に示された正極活物質(二次粒子)の一部分(表面部)に対するTEM/EDX Mappingにより測定された金属元素(Ni、Co、Mn)の分布を示すものである。
図12図10に示された正極活物質(二次粒子)の一部分(表面部)に対するTEM/EDX Mappingにより測定された金属元素(Ni、Co、Mn)の分布を示すものである。
図13図10に示された正極活物質(二次粒子)の一部分(表面部)に対するTEM/EDX Mappingにより測定された金属元素(Ni、Co、Mn)の分布を示すものである。
図14図10に示された正極活物質(二次粒子)の中心部に対する断面SEMイメージを示すものである。
図15図14に示された正極活物質(二次粒子)の中心部に対するTEM/EDX Mappingにより測定された金属元素(Ni、Co、Mn)の分布を示すものである。
図16図14に示された正極活物質(二次粒子)の中心部に対するTEM/EDX Mappingにより測定された金属元素(Ni、Co、Mn)の分布を示すものである。
図17図14に示された正極活物質(二次粒子)の中心部に対するTEM/EDX Mappingにより測定された金属元素(Ni、Co、Mn)の分布を示すものである。
図18】常用NCM811の一部分に対する断面SEMイメージを示すものである。
図19図18に示された正極活物質(二次粒子)の一部分のうち前記二次粒子の中心部から前記二次粒子の表面部に向かう方向(縦方向)に垂直な方向(横方向)に沿って存在する金属元素(Ni、Co、Mn)の含量を示すグラフ(line sum spectrum)である。
図20図18に示された正極活物質(二次粒子)の一部分のうち前記二次粒子の中心部から前記二次粒子の表面部に向かう方向(縦方向)に垂直な方向(横方向)に沿って存在する金属元素(Ni、Co、Mn)の含量を示すグラフ(line sum spectrum)である。
図21図18に示された正極活物質(二次粒子)の一部分のうち前記二次粒子の中心部から前記二次粒子の表面部に向かう方向(縦方向)に垂直な方向(横方向)に沿って存在する金属元素(Ni、Co、Mn)の含量を示すグラフ(line sum spectrum)である。
図22】本発明の一実施例および比較例による正極活物質のEIS測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明をさらに容易に理解するために、便宜上、特定の用語を本願に定義する。本願で別途定義しない限り、本発明に使用された科学用語および技術用語は、当該技術分野における通常の知識を有する者により一般的に理解される意味を有する。また、文脈上、特に指定しない限り、単数形態の用語は、それの複数形態も含むものであり、複数形態の用語は、それの単数形態をも含むものと理解されなければならない。
【0027】
以下、本発明による正極活物質および前記正極活物質を含む正極を使用するリチウム二次電池についてさらに詳細に説明することとする。
【0028】
正極活物質
本発明の一態様によれば、リチウムの吸蔵および放出が可能な一次粒子および前記一次粒子が凝集した二次粒子を含む正極活物質が提供される。
【0029】
ここで、一次粒子は、1つの結晶粒(grain or crystallite)を意味し、二次粒子は、複数の一次粒子が凝集して形成された凝集体を意味する。前記二次粒子を構成する前記一次粒子の間には、空隙および/または結晶粒界(grain boundary)が存在し得る。
【0030】
ここで、前記二次粒子は、前記二次粒子の外周面に沿って前記二次粒子内ニッケル、コバルトおよびマンガンから選ばれる少なくとも1つの濃度が増加する第1濃度勾配区間と、前記二次粒子内ニッケル、コバルトおよびマンガンから選ばれる少なくとも1つの濃度が減少する第2濃度勾配区間とを含むことができる。
【0031】
本願で定義した前記第1濃度勾配区間と前記第2濃度勾配区間は、ニッケル、コバルトおよびマンガンから選ばれる少なくとも1つの濃度が増加する領域と減少する領域とを区分するために使用される用語であって、濃度勾配区間を修飾する序数に制限されて解される必要はない。
【0032】
上述したように、前記二次粒子には、ニッケル、コバルトおよびマンガンから選ばれる少なくとも1つの濃度は、連続的または不連続的に増加および減少する濃度勾配を示す第1濃度勾配区間および第2濃度勾配区間が存在することによって、正極活物質内電荷移動チャネルが形成され得る。このような異種の濃度勾配区間が前記二次粒子内存在することによって、形成された電荷移動チャネルは、Ni含量の増加による正極活物質の抵抗問題を解決することができる。これに伴い、正極活物質の寿命特性および効率特性等のような電気化学的特性の向上に寄与することができる。
【0033】
前記第1濃度勾配区間および前記第2濃度勾配区間内でニッケル、コバルトおよびマンガンから選ばれる少なくとも1つの濃度は、連続的または不連続的に変わる濃度勾配を示すことができる。
【0034】
これに伴い、前記第1濃度勾配区間内でニッケル、コバルトおよびマンガンから選ばれる少なくとも1つの濃度は、連続的または不連続的に増加する濃度勾配を示すことができ、前記第2濃度勾配区間内でニッケル、コバルトおよびマンガンから選ばれる少なくとも1つの濃度は、連続的または不連続的に減少する濃度勾配を示すことができる。
【0035】
前記第1濃度勾配区間内ニッケル、コバルトおよびマンガンから選ばれる少なくとも1つは、前記二次粒子内ニッケル、コバルトおよびマンガンから選ばれる少なくとも1つの平均含量より高い濃度に増加することができる。
【0036】
例えば、図4を参照すると、前記第1濃度勾配区間(a)内濃度勾配を形成する金属元素がコバルトである場合、前記第1濃度勾配区間(a)内でコバルトは、前記二次粒子内コバルトの平均含量(Avg)より高い濃度に増加し得る。すなわち、前記第1濃度勾配区間(a)内コバルトの最高含量は、前記二次粒子内コバルトの平均含量(Avg)より高くてもよい。
【0037】
一実施例において、前記第1濃度勾配区間および前記第2濃度勾配区間内濃度勾配を形成する金属元素は、コバルト、コバルトおよびマンガンまたはニッケル、コバルトおよびマンガンであり得る。この際、前記第1濃度勾配区間および前記第2濃度勾配区間内ニッケルは、コバルトまたはコバルトおよびマンガンと反対になる傾向の濃度勾配を示すことができる。
【0038】
すなわち、前記第1濃度勾配区間内でコバルトまたはコバルトおよびマンガンの濃度が連続的または不連続的に増加する濃度勾配を示す場合、前記第2濃度勾配区間内でニッケルの濃度は、連続的または不連続的に減少する濃度勾配を示すことができる。反対に、前記第2濃度勾配区間内でコバルトまたはコバルトおよびマンガンの濃度が連続的または不連続的に減少する濃度勾配を示す場合、前記第2濃度勾配区間内でニッケルの濃度は、連続的または不連続的に増加する濃度勾配を示すことができる。
【0039】
また、前記第1濃度勾配区間内ニッケル、コバルトおよびマンガンから選ばれた少なくとも1つの濃度増加率は、0.1μm当たり5wt%以上であり得るが、必ずこれに制限されるものではない。すなわち、前記第1濃度勾配区間内ニッケル、コバルトおよびマンガンから選ばれた少なくとも1つ(以下、特定金属元素という)は、前記二次粒子内特定金属元素の平均含量方向または平均含量より高い濃度に増加するものであっても十分である。
【0040】
ここで、平均含量方向とは、前記二次粒子内特定金属元素の濃度変化を示すline sum spectrum上で前記二次粒子内特定金属元素の濃度が前記二次粒子内平均含量に向かって増加または減少するときの傾き(ベクトル)方向を意味し得る。
【0041】
反面、前記第2濃度勾配区間内ニッケル、コバルトおよびマンガンから選ばれる少なくとも1つは、前記二次粒子内ニッケル、コバルトおよびマンガンから選ばれる少なくとも1つの平均含量より低い濃度に減少し得る。
【0042】
例えば、図4を参照すると、前記第2濃度勾配区間(b)内濃度勾配を形成する金属元素がコバルトである場合、前記第2濃度勾配区間(b)内でコバルトは、前記二次粒子内コバルトの平均含量(Avg)方向に減少し得る。
【0043】
ここで、前記第2濃度勾配区間(b)内でコバルトが前記二次粒子内コバルトの平均含量(Avg)方向に減少するというのは、前記第2濃度勾配区間(b)内任意の地点でコバルトの含量が前記二次粒子内コバルトの平均含量(Avg)より多い場合、前記第2濃度勾配区間(b)内任意の地点でコバルトの含量が前記二次粒子内コバルトの平均含量(Avg)水準に減少することを意味する。
【0044】
また、前記第1濃度勾配区間内ニッケル、コバルトおよびマンガンから選ばれた少なくとも1つの濃度減少率は、0.1μm当たり5wt%以上であり得るが、必ずこれに制限されるものではない。すなわち、前記第2濃度勾配区間内ニッケル、コバルトおよびマンガンから選ばれた少なくとも1つ(以下、特定金属元素という)は、前記二次粒子内特定金属元素の平均含量方向に減少するものであれば十分である。
【0045】
一方、前記二次粒子の外周面に沿って前記第1濃度勾配区間および前記第2濃度勾配区間が存在するというのは、前記二次粒子の中心部から前記二次粒子の表面部に向かう方向に沿って濃度勾配が存在することと異なる概念と理解されなければならない。
【0046】
例えば、前記二次粒子が球形またはほぼ球形に近い形態である場合、前記第1濃度勾配区間と前記第2濃度勾配区間は、前記二次粒子の円周方向に沿って存在し得る。
【0047】
これに伴い、前記第1濃度勾配区間では、ニッケル、コバルトおよびマンガンから選ばれる少なくとも1つの濃度が前記二次粒子の外周面に沿う方向に増加し、前記第2濃度勾配区間では、ニッケル、コバルトおよびマンガンから選ばれる少なくとも1つの濃度が前記二次粒子の外周面に沿う方向に減少し得る。
【0048】
一実施例において、前記二次粒子は、前記二次粒子の中心から前記二次粒子の全体体積のうち1vol%~90vol%に該当する中心部と、前記中心部の外部を取り囲む表面部とを含むことができる。
【0049】
この際、前記第1濃度勾配区間と前記第2濃度勾配区間は、前記表面部に選択的に存在したり、前記中心部および前記表面部の両方共に存在してもよい。
【0050】
前記表面部に前記第1濃度勾配区間と前記第2濃度勾配区間が選択的に存在することによって、前記第1濃度勾配区間と前記第2濃度勾配区間は、前記二次粒子の表面部から前記二次粒子の中心部に向かって所定の深さだけ存在し得る。
【0051】
すなわち、前記二次粒子の外周面に沿ってニッケル、コバルトおよびマンガンから選ばれる少なくとも1つの濃度が連続的または不連続的に増加または減少する濃度勾配は、前記二次粒子の表面部に制限的に示され、前記二次粒子の中心部には、ニッケル、コバルトおよびマンガンから選ばれる少なくとも1つの濃度が連続的または不連続的に増加または減少する濃度勾配が示されないことがある。このような濃度勾配区間の制限的な形成によって前記正極活物質内電荷移動チャネルを効果的に形成することができる。
【0052】
ここで、前記二次粒子のうち前記中心部と前記表面部は、前記二次粒子に存在する前記第1濃度勾配区間と前記第2濃度勾配区間の存在および位置を説明するために導入された用語であって、これが前記二次粒子内前記中心部と前記表面部を区分する境界が存在することを意味しない。すなわち、前記二次粒子内前記中心部と前記表面部は、境界なしに連続的に存在する領域であり得る。
【0053】
一実施例において、前記二次粒子の外周面に沿って前記第1濃度勾配区間および前記第2濃度勾配区間が繰り返し存在し得る。
【0054】
前記実施例によれば、前記二次粒子の外周面に沿って前記第1濃度勾配区間と前記第2濃度勾配区間が繰り返し存在するものの、前記第1濃度勾配区間と前記第2濃度勾配区間が交互に形成され得る。
【0055】
これに伴い、前記二次粒子の外周面に沿ってニッケル、コバルトおよびマンガンから選ばれる少なくとも1つの濃度は、増加および減少を繰り返すことができる。
【0056】
前記第1濃度勾配区間および前記第2濃度勾配区間内でニッケル、コバルトおよびマンガンから選ばれる少なくとも1つの濃度は、連続的または不連続的に変わる濃度勾配を示すことができる。
【0057】
これに伴い、前記第1濃度勾配区間内でニッケル、コバルトおよびマンガンから選ばれる少なくとも1つの濃度は、連続的または不連続的に増加する濃度勾配を示すことができ、前記第2濃度勾配区間内でニッケル、コバルトおよびマンガンから選ばれる少なくとも1つの濃度は、連続的または不連続的に減少する濃度勾配を示すことができる。
【0058】
また、前記二次粒子の外周面に沿って存在する複数の第1濃度勾配区間内ニッケル、コバルトおよびマンガンから選ばれる少なくとも1つの濃度勾配の傾き値は、互いに独立的であり得る。
【0059】
例えば、前記二次粒子の外周面に沿ってコバルトの濃度が増加および減少を繰り返す第1濃度勾配区間(A)、第2濃度勾配区間(B)、第1濃度勾配区間(A’)、第2濃度勾配区間(B’)…が存在すると仮定するとき、第1濃度勾配区間(A)内コバルトの濃度勾配の傾き値と第1濃度勾配区間(A’)内コバルトの濃度勾配の傾き値は、互いに独立的であり得る。
【0060】
同様に、前記二次粒子の外周面に沿って存在する複数の第2濃度勾配区間内ニッケル、コバルトおよびマンガンから選ばれる少なくとも1つの濃度勾配の傾き値は、互いに独立的であり得る。
【0061】
例えば、前記二次粒子の外周面に沿ってコバルトの濃度が増加および減少を繰り返す第1濃度勾配区間(A)、第2濃度勾配区間(B)、第1濃度勾配区間(A’)、第2濃度勾配区間(B’)…が存在すると仮定するとき、第2濃度勾配区間(B)内コバルトの濃度勾配の傾き値と第2濃度勾配区間(B’)内コバルトの濃度勾配の傾き値は、互いに独立的であり得る。
【0062】
上述した例示は、前記二次粒子の外周面に沿って存在する複数の第1濃度勾配区間および複数の第2濃度勾配区間が互いに独立的な濃度勾配の傾き値を有することを説明するためのものであって、前記第1濃度勾配区間および前記第2濃度勾配区間では、コバルトの代わりにニッケルおよび/またはマンガンの濃度が濃度勾配を有してもよい。
【0063】
また、上述したように、前記二次粒子が球形またはほぼ球形に近い形態である場合、前記第1濃度勾配区間と前記第2濃度勾配区間は、前記二次粒子の円周方向に沿って存在し得る。
【0064】
この際、前記二次粒子の一部分において前記円周方向は、前記二次粒子の中心部から前記二次粒子の表面部に向かう方向(本願では縦方向と定義する)に垂直な方向(本願では、横方向と定義する)と一致することができる。
【0065】
すなわち、前記第1濃度勾配区間と前記第2濃度勾配区間は、前記二次粒子の中心部から前記二次粒子の表面部に向かう縦方向に垂直な横方向に沿って存在し得る。
【0066】
これに伴い、前記第1濃度勾配区間でニッケル、コバルトおよびマンガンから選ばれる少なくとも1つの濃度は、前記二次粒子の中心部から前記二次粒子の表面部に向かう縦方向に垂直な横方向に沿って連続的または不連続的に増加し得る。また、前記第2濃度勾配区間でニッケル、コバルトおよびマンガンから選ばれる少なくとも1つの濃度は、前記二次粒子の中心部から前記二次粒子の表面部に向かう縦方向に垂直な横方向に沿って連続的または不連続的に減少し得る。
【0067】
他の実施例において、前記二次粒子は、前記二次粒子の外周面に沿って前記第1濃度勾配区間および前記第2濃度勾配区間を含む濃度増減部と、前記二次粒子内ニッケル、コバルトおよびマンガンから選ばれる少なくとも1つの濃度が維持される濃度維持部とを含むことができる。図4を参照すると、前記濃度増減部は、前記第1濃度勾配区間(a)および前記第2濃度勾配区間(b)を含む領域として定義され得、前記濃度維持部は、互いに隣り合った濃度増減部の間に位置し、前記二次粒子内ニッケル、コバルトおよびマンガンから選ばれる少なくとも1つの濃度が維持される領域(c)として定義され得る。
【0068】
ここで、前記濃度増減部内前記第1濃度勾配区間および前記第2濃度勾配区間に対する定義は、上述した通りである。
【0069】
前記濃度維持部内ニッケル、コバルトおよびマンガンから選ばれた少なくとも1つの濃度は、前記濃度増減部とは異なって、前記二次粒子の中心部から前記二次粒子の表面部に向かう縦方向に垂直な横方向に沿う濃度変化の幅が大きくないことがある。前記濃度維持部内ニッケル、コバルトおよびマンガンから選ばれた少なくとも1つの濃度変化率は、0.1μm当たり5wt%以下であり得るが、必ずこれに制限されるものではない。
【0070】
すなわち、前記濃度維持部内ニッケル、コバルトおよびマンガンから選ばれた少なくとも1つ(以下、特定金属元素という)は、前記第1濃度勾配区間および前記第2濃度勾配区間と区別され得るほど濃度変化率が小さいものであれば十分である。
【0071】
このように、前記二次粒子には、ニッケル、コバルトおよびマンガンから選ばれる少なくとも1つの濃度は、連続的または不連続的に増加および減少する濃度勾配を示す(すなわち、ニッケル、コバルトおよびマンガンから選ばれる少なくとも1つの濃度の変化量が大きい)前記濃度増減部と、ニッケル、コバルトおよびマンガンから選ばれる少なくとも1つの濃度の変化量が小さい前記濃度維持部が存在することによって、正極活物質内電荷移動チャネルがより効果的に形成され得る。
【0072】
また、前記二次粒子の外周面に沿って前記濃度増減部と前記濃度維持部が繰り返し存在するものの、前記濃度増減部と前記濃度維持部が交互に形成され得る。
【0073】
前記二次粒子を形成する前記一次粒子は、下記の化学式1で表されるリチウム複合酸化物として定義され得る。
【0074】
LiNi1-(x+y+z)CoM1M2 [化学式1]
【0075】
(ここで、
M1は、MnおよびAlから選ばれる少なくとも1つであり、
M2は、Mn、B、Ba、Ce、Hf、Ta、Cr、F、Mg、Al、Cr、V、Ti、Fe、Zr、Zn、Si、Y、Nb、Ga、Sn、Mo、W、P、Sr、Ge、Nd、GdおよびCuから選ばれる少なくとも1つであり、
M1とM2は、互いに異なる元素であり、
0.5≦w≦1.5、0.01≦x≦0.40、0.01≦y≦0.40、0.001≦z≦0.30である。)
【0076】
ここで、前記一次粒子の平均直径は、0.1μm~3.0μmであり得、前記二次粒子の平均直径は、3.0μm~20.0μmであり得る。この際、前記一次粒子は、隣り合った一次粒子と互いに接して結晶粒界を形成せず、内部空隙と接することによって、前記二次粒子の内部に存在する表面を形成することができる。一方、前記二次粒子の最表面に存在する前記一次粒子が外気に露出した面は、前記二次粒子の表面を形成することとなる。
【0077】
また、前記二次粒子の表面部に存在するM3は、前記二次粒子の中心部に向かって減少する濃度勾配を示すことができる。すなわち、M3の濃度勾配の方向は、前記二次粒子の表面部から前記二次粒子の中心部に向かう方向であり得る。
【0078】
この際、前記二次粒子は、M3の濃度が互いに異なる第1領域および第2領域を含むことができる。
【0079】
ここで、前記第1領域は、前記M3が前記二次粒子の中心部に向かって減少する濃度勾配を示す領域であり得る。
【0080】
例えば、前記リチウム複合酸化物を形成する前記二次粒子の最表面から前記二次粒子の中心までの距離をRというとき、前記二次粒子の最表面からの距離(R’)が0~0.02Rである領域を第1領域と定義すると、前記第1領域内存在するM3は、前記二次粒子の中心部に向かって減少する濃度勾配を示すことができる。
【0081】
反面、前記第1領域内存在するNiは、M3と反対に前記二次粒子の中心部に向かって増加する濃度勾配を示すことができる。ここで、前記二次粒子の中心部は、前記二次粒子の正中心のことを言う。
【0082】
この際、前記第1領域内存在するM3の濃度変化率は、50%以上、好ましくは60%以上であり得るが、必ずこれに制限されるものではない。
【0083】
また、前記第1領域を除いた残りの領域が第2領域として定義され得る。
【0084】
例えば、前記二次粒子の最表面からの距離(R’)が0~0.02Rである領域を第1領域と定義すると、前記二次粒子の最表面からの距離(R’)が0.02R超過1.0Rである領域を第2領域と定義することができる。ここで、前記第2領域内存在するM3は、前記一次粒子内で一定方向に濃度が増加または減少する形態の濃度勾配を有しなくてもよい。
【0085】
また、前記第2領域内存在するM3が一定水準の濃度勾配を有する場合でも、前記第2領域内濃度勾配の傾き値は、前記第1領域内M3の濃度勾配のの傾き値より小さくてもよい。
【0086】
他の実施例において、前記第2領域内存在するM3の濃度変化率は、49%以下、好ましくは30%以下、より好ましくは15%以下であり得る。
【0087】
また、他の実施例において、正極活物質は、前記一次粒子(例えば、前記一次粒子間の界面)および/または前記一次粒子が凝集して形成された二次粒子の表面のうち少なくとも一部をカバーするコーティング層を含むことができる。
【0088】
例えば、前記コーティング層は、前記一次粒子の露出した表面のうち少なくとも一部をカバーするように存在し得る。特に、前記コーティング層は、前記二次粒子の最外郭に存在する前記一次粒子の露出した表面のうち少なくとも一部をカバーするように存在し得る。
【0089】
これに伴い、前記コーティング層は、前記一次粒子および/または前記一次粒子が凝集して形成された前記二次粒子の表面を連続的または不連続的にコーティングする層として存在し得る。前記コーティング層が不連続的に存在する場合、アイランド(island)形態で存在し得る。
【0090】
このように存在するコーティング層は、正極活物質の物理的および電気化学的特性の向上に寄与することができる。
【0091】
また、前記コーティング層は、前記一次粒子および/または前記一次粒子が凝集して形成された前記二次粒子と境界を形成しない固溶体の形態で存在することもできる。
【0092】
前記コーティング層は、下記の化学式2で表される少なくとも1つの酸化物を含むことができる。すなわち、前記コーティング層は、下記の化学式2で表される酸化物が存在する領域として定義され得る。
【0093】
Li [化学式2]
【0094】
(ここで、
Aは、Ni、Mn、Co、Fe、Cu、Nb、Mo、Ti、Al、Cr、Zr、Zn、Na、K、Ca、Mg、Pt、Au、B、P、Eu、Sm、W、Ce、V、Ba、Ta、Sn、Hf、Ce、GdおよびNdから選ばれる少なくとも1つであり、
0≦a≦6、0≦b≦4、2≦c≦8である。)
【0095】
また、前記コーティング層は、1つの層内異種の酸化物が同時に存在したり、前記の化学式2で表される異種の酸化物がそれぞれ別個の層に存在する形態であり得る。
【0096】
前記の化学式2で表される酸化物は、前記の化学式1で表される一次粒子と物理的および/または化学的に結合した状態であり得る。また、前記酸化物は、前記の化学式1で表される一次粒子と固溶体を形成した状態で存在することもできる。
【0097】
本実施例による正極活物質は、前記一次粒子(例えば、前記一次粒子間の界面)および/または前記一次粒子が凝集して形成された二次粒子の表面のうち少なくとも一部をカバーするコーティング層を含むことによって、構造的な安定性が高くなり得る。また、このような正極活物質をリチウム二次電池に使用する場合、正極活物質の高温貯蔵安定性および寿命特性が向上することができる。また、前記酸化物は、前記正極活物質内残留リチウムを低減させると同時に、リチウムイオンの移動経路(pathway)として作用することによって、リチウム二次電池の効率特性を向上させるのに影響を与えることができる。
【0098】
また、場合によって、前記酸化物は、前記一次粒子間の界面および前記二次粒子の表面のうち少なくとも一部だけでなく、前記二次粒子の内部に形成された内部空隙にも存在し得る。
【0099】
前記酸化物は、リチウムとAで表される元素が複合化した酸化物であるか、Aの酸化物であって、前記酸化物は、例えば、Li、LiZr、LiTi、LiNi、Li、W、Zr、TiまたはB等であり得るが、上述した例は、理解を助けるために便宜上記載したものに過ぎず、本願で定義された前記酸化物は、上述した例に制限されない。
【0100】
他の実施例において、前記酸化物は、リチウムとAで表される少なくとも2種の元素が複合化した酸化物であるか、リチウムとAで表される少なくとも2種の元素が複合化した酸化物をさらに含むことができる。リチウムとAで表される少なくとも2種の元素が複合化した酸化物は、例えば、Li(W/Ti)、Li(W/Zr)、Li(W/Ti/Zr)、Li(W/Ti/B)等であり得るが、必ずこれに制限されるものではない。
【0101】
ここで、前記酸化物は、前記二次粒子の表面部から前記二次粒子の中心部に向かって減少する濃度勾配を示すことができる。これに伴い、前記酸化物の濃度は、前記二次粒子の最表面から前記二次粒子の中心部に向かって減少し得る。
【0102】
上述したように、前記酸化物が前記二次粒子の表面部から前記二次粒子の中心部に向かって減少する濃度勾配を示すことによって、前記正極活物質の表面に存在する残留リチウムを効果的に減少させて、未反応の残留リチウムによる副反応を未然に防止することができる。また、前記酸化物により前記正極活物質の表面内側領域での結晶性が低くなるのを防止することができる。また、電気化学反応中に前記酸化物により正極活物質の全体的な構造が崩壊されるのを防止することができる。
【0103】
追加的に、前記コーティング層は、前記の化学式2で表される少なくとも1つの酸化物を含む第1酸化物層と前記の化学式2で表される少なくとも1つの酸化物を含むものの、前記第1酸化物層に含まれた酸化物と異なる酸化物を含む第2酸化物層を含むことができる。
【0104】
例えば、前記第1酸化物層は、前記二次粒子の最外郭に存在する前記一次粒子の露出した表面のうち少なくとも一部をカバーするように存在し得、前記第2酸化物層は、前記第1酸化物層によりカバーされない前記一次粒子の露出した表面および前記第1酸化物層の表面のうち少なくとも一部をカバーするように存在し得る。
【0105】
リチウム二次電池
本発明のさらに他の態様によれば、正極集電体と、前記正極集電体上に形成された正極活物質層とを含む正極が提供され得る。ここで、前記正極活物質層は、本発明の多様な実施例による正極活物質を含むことができる。したがって、正極活物質は、上記で説明したことと同一なので、便宜上、具体的な説明を省略し、以下では、残りの前述しない構成のみについて説明することとする。
【0106】
前記正極集電体は、電池に化学的変化を誘発せず、導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えばステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素またはアルミニウムやステンレススチールの表面に炭素、ニッケル、チタン、銀等で表面処理したもの等が使用され得る。また、前記正極集電体は、通常、3~500μmの厚みを有し得、前記集電体の表面上に微細な凹凸を形成して、正極活物質の接着力を高めることもできる。例えばフィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体等多様な形態で使用され得る。
【0107】
前記正極活物質層は、前記正極活物質と共に、導電材および必要に応じて選択的にバインダーを含む正極スラリー組成物を前記正極集電体に塗布して製造され得る。
【0108】
この際、前記正極活物質は、正極活物質層の総重量に対して80~99wt%、より具体的には、85~98.5wt%の含量で含まれ得る。上記した含量範囲で含まれるとき、優れた容量特性を示すことができるが、必ずこれに制限されるものではない。
【0109】
前記導電材は、電極に導電性を付与するために使用されるものであって、構成される電池において、化学変化を引き起こさず、電子伝導性を有するものであれば、特別な制限なしに使用可能である。具体的な例としては、天然黒鉛や人造黒鉛等の黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、炭素繊維等の炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀等の金属粉末または金属繊維;酸化亜鉛、チタン酸カリウム等の導電性ウィスカー;酸化チタン等の導電性金属酸化物;またはポリフェニレン誘導体等の導電性高分子等が挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用され得る。前記導電材は、正極活物質層の総重量に対して0.1~15wt%で含まれ得る。
【0110】
前記バインダーは、正極活物質粒子間の付着および正極活物質と集電体との接着力を向上させる役割をする。具体的な例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化-EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、またはこれらの多様な共重合体等が挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用され得る。前記バインダーは、正極活物質層の総重量に対して0.1~15wt%で含まれ得る。
【0111】
前記正極は、上記した正極活物質を利用することを除いて、通常の正極の製造方法により製造され得る。具体的に、上記した正極活物質および選択的に、バインダーおよび導電材を溶媒中に溶解または分散させて製造した正極スラリー組成物を正極集電体上に塗布した後、乾燥および圧延することによって製造することができる。
【0112】
前記溶媒としては、当該技術分野において一般的に使用される溶媒であってもよく、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide、DMSO)、イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)、N-メチルピロリドン(NMP)、アセトン(acetone)または水等が挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用され得る。前記溶媒の使用量は、スラリーの塗布厚み、製造収率を考慮して前記正極活物質、導電材およびバインダーを溶解または分散させ、以後、正極の製造のための塗布時に優れた厚み均一度を示すことができる粘度を有するようにする程度であれば十分である。
【0113】
また、他の実施例において、前記正極は、前記正極スラリー組成物を別の支持体上にキャストした後、該支持体から剥離して得られたフィルムを正極集電体上にラミネーションすることによって製造されることもできる。
【0114】
また、本発明のさらに他の態様によれば、上述した正極を含む電気化学素子が提供され得る。前記電気化学素子は、具体的に電池、キャパシタ等であってもよく、より具体的には、リチウム二次電池であってもよい。
【0115】
前記リチウム二次電池は、具体的に、正極と、前記正極と対向して位置する負極と、前記正極と前記負極との間に介在される分離膜および電解質とを含むことができる。ここで、前記正極は、上記で説明したことと同一なので、便宜上、具体的な説明を省略し、以下では、前述しない残りの構成のみについて具体的に説明する。
【0116】
前記リチウム二次電池は、前記正極、前記負極および前記分離膜の電極組立体を収納する電池容器および前記電池容器を密封する密封部材を選択的にさらに含むことができる。
【0117】
前記負極は、負極集電体と、前記負極集電体上に位置する負極活物質層とを含むことができる。
【0118】
前記負極集電体は、電池に化学的変化を誘発することなく、高い導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面に炭素、ニッケル、チタン、銀等で表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金等が使用され得る。また、前記負極集電体は、通常、3μm~500μmの厚みを有し得、正極集電体と同様に、前記集電体の表面に微細な凹凸を形成して、負極活物質の結合力を強化させることもできる。例えば、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体等多様な形態で使用され得る。
【0119】
前記負極活物質層は、前記負極活物質と共に、導電材および必要に応じて選択的にバインダーを含む負極スラリー組成物を前記負極集電体に塗布して製造され得る。
【0120】
前記負極活物質としては、リチウムの可逆的なインターカレーションおよびデインターカレーションが可能な化合物が使用され得る。具体的な例としては、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛化炭素繊維、非晶質炭素等の炭素質材料;Si、Al、Sn、Pb、Zn、Bi、In、Mg、Ga、Cd、Si合金、Sn合金またはAl合金等リチウムと合金化が可能な金属質化合物;SiOβ(0<β<2)、SnO、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物のようにリチウムをドープおよび脱ドープし得る金属酸化物;またはSi-C複合体またはSn-C複合体のように、前記金属質化合物と炭素質材料を含む複合物等が挙げられ、これらのうちいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用され得る。また、前記負極活物質として金属リチウム薄膜が使用されることもできる。また、炭素材料は、低結晶性炭素および高結晶性炭素等がすべて使用され得る。低結晶性炭素としては、軟化炭素(soft carbon)および硬化炭素(hard carbon)が代表的であり、高結晶性炭素としては、無定形、板状、鱗片状、球形状または繊維状の天然黒鉛または人造黒鉛、キッシュ黒鉛(Kish graphite)、熱分解炭素(pyrolytic carbon)、液晶ピッチ系炭素繊維(mesophase pitch based carbon fiber)、炭素微小球体(meso-carbon microbeads)、液晶ピッチ(Mesophase pitches)および石油と石炭系コークス(petroleum or coal tar pitch derived cokes)等の高温焼成炭素が代表的である。
【0121】
前記負極活物質は、負極活物質層の全体重量を基準として80~99wt%で含まれ得る。
【0122】
前記バインダーは、導電材、活物質および集電体間の結合に助力する成分であって、通常、負極活物質層の全体重量を基準として0.1~10wt%で添加され得る。このようなバインダーの例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化-EPDM、スチレン-ブタジエンゴム、ニトリル-ブタジエンゴム、フッ素ゴム、これらの多様な共重合体等が挙げられる。
【0123】
前記導電材は、負極活物質の導電性をさらに向上させるための成分であって、負極活物質層の全体重量を基準として10wt%以下、好ましくは5wt%以下で添加され得る。このような導電材は、当該電池に化学的変化を誘発することなく、導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛等の黒鉛;アセチレンブラック、ケチェンブラック、チャネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維等の導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末等の金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウム等の導電性ウィスカー;酸化チタン等の導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体等の導電性素材等が使用され得る。
【0124】
一実施例において、前記負極活物質層は、負極集電体上に負極活物質、および選択的にバインダーおよび導電材を溶媒中に溶解または分散させて製造した負極スラリー組成物を塗布し乾燥することによって製造されたり、または前記負極スラリー組成物を別の支持体上にキャストした後、該支持体から剥離して得られたフィルムを負極集電体上にラミネーションすることによって製造され得る。
【0125】
また、他の実施例において、前記負極活物質層は、負極集電体上に負極活物質、および選択的にバインダーおよび導電材を溶媒中に溶解または分散させて製造した負極スラリー組成物を塗布し乾燥したり、または前記負極スラリー組成物を別の支持体上にキャストした後、該支持体から剥離して得られたフィルムを負極集電体上にラミネーションすることによって製造されることもできる。
【0126】
一方、前記リチウム二次電池において、分離膜は、負極と正極を分離し、リチウムイオンの移動通路を提供するものであって、通常、リチウム二次電池において分離膜として使用されるものであれば、特別な制限なしに使用可能であり、特に電解質のイオン移動に対して低抵抗でありかつ電解液含浸能力に優れていることが好ましい。具体的には、多孔性高分子フィルム、例えばエチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体およびエチレン/メタクリレート共重合体等のようなポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルムまたはこれらの2層以上の積層構造体が使用され得る。また、通常の多孔性不織布、例えば高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維等からなる不織布が使用されることもできる。また、耐熱性または機械的強度の確保のためにセラミック成分または高分子物質が含まれたコートされた分離膜が使用されることもでき、選択的に単層または多層構造で使用され得る。
【0127】
また、本発明において使用される電解質としては、リチウム二次電池の製造時に使用可能な有機系液体電解質、無機系液体電解質、固体高分子電解質、ゲル状高分子電解質、固体無機電解質、溶融型無機電解質等が挙げられ、これらに限定されるものではない。
【0128】
具体的に、前記電解質は、有機溶媒およびリチウム塩を含むことができる。
【0129】
前記有機溶媒としては、電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動できる媒質の役割をすることができるものであれば、特別な制限なしに使用され得る。具体的に、前記有機溶媒としては、メチルアセテート(methyl acetate)、エチルアセテート(ethyl acetate)、γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone)、ε-カプロラクトン(ε-caprolactone)等のエステル系溶媒;ジブチルエーテル(dibutyl ether)またはテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)等のエーテル系溶媒;シクロヘキサノン(cyclohexanone)等のケトン系溶媒;ベンゼン(benzene)、フルオロベンゼン(fluorobenzene)等の芳香族炭化水素系溶媒;ジメチルカーボネート(dimethylcarbonate、DMC)、ジエチルカーボネート(diethylcarbonate、DEC)、メチルエチルカーボネート(methylethylcarbonate、MEC)、エチルメチルカーボネート(ethylmethylcarbonate、EMC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate、PC)等のカーボネート系溶媒;エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒;R-CN(Rは、炭素数2~20の直鎖状、分岐状または環状構造の炭化水素基であり、二重結合の芳香環またはエーテル結合を含むことができる)等のニトリル類;ジメチルホルムアミド等のアミド類;1,3-ジオキソラン等のジオキソラン類;またはスルホラン(sulfolane)類等が使用され得る。これらの中でも、カーボネート系溶媒が好ましく、電池の充放電性能を高めることができる高いイオン伝導度および高誘電率を有する環状カーボネート(例えば、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネート等)と、低粘度の線状カーボネート系化合物(例えば、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネートまたはジエチルカーボネート等)の混合物がより好ましい。この場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートは、約1:1~約1:9の体積比で混合して使用することが、電解液の性能が優秀に現れることができる。
【0130】
前記リチウム塩は、リチウム二次電池において使用されるリチウムイオンを提供できる化合物であれば、特別な制限なしに使用され得る。具体的に前記リチウム塩は、LiPF、LiClO、LiAsF、LiBF、LiSbF、LiAl0、LiAlCl、LiCFSO、LiCSO、LiN(CSO、LiN(CSO、LiN(CFSO、LiCl、LiI、またはLiB(C等が使用され得る。前記リチウム塩の濃度は、0.1~2.0Mの範囲内で使用することが好ましい。リチウム塩の濃度が前記範囲に含まれる場合、電解質が適切な伝導度および粘度を有するので、優れた電解質性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動することができる。
【0131】
前記電解質には、前記電解質構成成分の他にも、電池の寿命特性の向上、電池容量減少の抑制、電池の放電容量の向上等を目的として例えば、ジフルオロエチレンカーボネート等のようなハロアルキレンカーボネート系化合物、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グライム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノールまたは三塩化アルミニウム等の添加剤が1種以上さらに含まれることもできる。この際、前記添加剤は、電解質の総重量に対して0.1~5wt%で含まれ得る。
【0132】
上記のように、本発明による正極活物質を含むリチウム二次電池は、優れた放電容量、出力特性および寿命特性を安定的に示すので、携帯電話、ノートパソコン、デジタルカメラ等の携帯用機器、およびハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicle、HEV)等の電気自動車分野等に有用である。
【0133】
本発明によるリチウム二次電池の外形は、特別な制限がないが、缶を使用した円筒形、角形、パウチ(pouch)形またはコイン(coin)形等になり得る。また、リチウム二次電池は、小型デバイスの電源として使用される電池セルに使用され得ると共に、多数の電池セルを含む中大型電池モジュールに単位電池としても好ましく使用され得る。
【0134】
本発明のさらに他の態様によれば、前記リチウム二次電池を単位セルとして含む電池モジュールおよび/またはこれを含む電池パックが提供され得る。
【0135】
前記電池モジュールまたは前記電池パックは、パワーツール(Power Tool);電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車、およびプラグインハイブリッド電気自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)を含む電気車;または電力貯蔵用システムのうちいずれか1つ以上の中大型デバイス電源として用いられる。
【0136】
以下では、実施例を通じて本発明をより詳細に説明する。ただし、これらの実施例は、ただ本発明を例示するためのものであって、本発明の範疇がこれらの実施例により制限されるものと解されないと言える。
【0137】
実験例1.
(1)正極活物質の製造
実施例1
まず、硫酸ニッケル、硫酸コバルト、および硫酸マンガンを準備し、共沈反応を行って水酸化物前駆体を合成し、合成された前駆体にLiOHを添加した後、焼成して、リチウム複合酸化物を製造した。具体的に、前駆体にLiOHを混合した後、焼成炉でO雰囲気を維持しつつ、分当たり2℃で昇温して690℃で10時間熱処理した後、10℃/min以上でquenchingして、リチウム複合酸化物を得た。
【0138】
次に、前記リチウム複合酸化物に蒸留水を投入した後、1時間の間水洗し、水洗したリチウム複合酸化物を濾過した後、乾燥した。乾燥は、同じ焼成炉でO雰囲気を維持しつつ、分当たり2℃で昇温して300℃で8時間熱処理した後、自然冷却して、リチウム複合酸化物を得た。前記正極活物質の断面SEMイメージは、図2に示した。
【0139】
実施例2
最終生成されたリチウム複合酸化物にAl、Ti、Zrを含んでいるように、実施例1のリチウム複合酸化物とAl、TiOおよびZrOを混合して追加熱処理したことを除いて、実施例1と同一にリチウム複合酸化物を製造した。前記正極活物質の断面SEMイメージは、図6に示した。
【0140】
実施例3
最終生成されたリチウム複合酸化物にBを含んでいるように、実施例1のリチウム複合酸化物とB含有原料物質であるHBOを混合して追加熱処理したことを除いて、実施例1と同一にリチウム複合酸化物を製造した。前記正極活物質の断面SEMイメージは、図10に示した。
【0141】
実施例4
最終生成されたリチウム複合酸化物にAl、Ti、Zr、Bを含んでいるように、実施例1のリチウム複合酸化物とAl、TiO、ZrOおよびHBOを混合して追加熱処理したことを除いて、実施例1と同一にリチウム複合酸化物を製造した。
【0142】
比較例1
前駆体にLiOHを混合した後、焼成炉で熱処理した後、別途のquenchingなしに自然冷却したことを除いて、実施例1と同一にリチウム複合酸化物を製造した。前記正極活物質の断面SEMイメージは、図14に示した。
【0143】
比較例2
比較例1のリチウム複合酸化物にCo含有原料物質(Co)と共にミキサーを使用して混合した。Co含有原料物質(Co)は、正極活物質の総含量に対して30モル%になるように混合された。Coコートしたことを除いて、比較例1と同一にリチウム複合酸化物を製造した。
【0144】
(2)正極活物質のTEM/EDX(Energy-dispersive X-ray spectroscopy)分析
実施例および比較例による正極活物質(二次粒子)それぞれをFIB(Ga-ion source)を用いて断面処理した後、TEMイメージを得た(図2図6図10および図14参照)。
【0145】
図3図5は、図2に示された実施例1による正極活物質(二次粒子)の一部分(表面部)のうち前記二次粒子の中心部から前記二次粒子の表面部に向かう方向(縦方向)に垂直な方向(横方向)に沿って存在する金属元素(Ni、Co、Mn)の含量を示すグラフ(line sum spectrum)である。図3図5に示された金属元素(Ni、Co、Mn)の濃度勾配方向は、図1に示されたLine Dataに対応する方向である。
【0146】
図3を参照すると、コバルトの濃度は、前記二次粒子の外周面に沿う方向、すなわち前記二次粒子の中心部から前記二次粒子の表面部に向かう方向(縦方向)に垂直な方向(横方向)に沿って前記二次粒子内コバルトの平均含量(Avg)方向または平均含量(Avg)より高い濃度を有する方向に増加する第1濃度勾配区間(a)および前記二次粒子内コバルトの平均含量方向(Avg)または平均含量(Avg)より低い濃度を有する方向に減少する第2濃度勾配区間(b)に沿って濃度が変わることを確認することができる。
【0147】
また、図4を参照すると、前記第1濃度勾配区間(a)および前記第1濃度勾配区間(a)の最高点と接する前記第2濃度勾配区間(b)を濃度増減部と定義するとき、隣り合った濃度増減部の間には、前記コバルトの濃度が維持される濃度維持部(c)が存在することを確認することができる。すなわち、前記コバルトの濃度は、濃度増減部および濃度維持部により定義される濃度勾配傾向性を示すことによって、前記二次粒子内電荷移動チャネルを形成することができる。
【0148】
図5を参照すると、マンガンの濃度もやはり前記コバルトの濃度に対応する位置で第1濃度勾配区間と第2濃度勾配区間を有することを確認することができる。一方、図4を参照すると、ニッケルは、前記図4および図5に示されたコバルトおよびマンガンと反対になる傾向の濃度勾配を示すことを確認することができる。すなわち、前記ニッケルの濃度は、前記コバルトの第1濃度勾配区間で前記二次粒子内ニッケルの平均含量方向または平均含量より低い濃度を有する方向に減少し、前記コバルトの第2濃度勾配区間で前記二次粒子内ニッケルの平均含量方向または平均含量より高い濃度を有する方向に増加することを確認することができる。
【0149】
図7図9は、図6に示された実施例2による正極活物質(二次粒子)の一部分(表面部)のうち前記二次粒子の中心部から前記二次粒子の表面部に向かう方向(縦方向)に垂直な方向(横方向)に沿って存在する金属元素(Ni、Co、Mn)の含量を示すグラフ(line sum spectrum)である。図7図9に示された金属元素(Ni、Co、Mn)の濃度勾配方向は、図5に示されたLine Dataに対応する方向である。図7図9に示された金属元素(Ni、Co、Mn)の濃度勾配傾向は、図3図5に示された実施例1と類似していることを確認することができる。
【0150】
また、図10に示された実施例3による正極活物質(二次粒子)の一部分(表面部)に対するTEM/EDX Mappingにより測定された金属元素(Ni、Co、Mn)の分布を示す図11図13を参照すると、前記二次粒子の外周面に沿う方向に前記二次粒子内ニッケル、コバルトおよびマンガンの濃度勾配が存在することを確認することができる。また、前記ニッケル、コバルトおよびマンガンの濃度勾配方向は互いに異なるものの、特に前記コバルトおよび前記マンガンの濃度勾配方向は同一であるが、前記コバルトおよび前記マンガンが形成された濃度勾配方向は、前記ニッケルと異なることを確認することができる。
【0151】
図10に示された実施例3による正極活物質(二次粒子)の中心部に対するTEMイメージである図14と、図14に示された実施例3による正極活物質(二次粒子)の中心部に対するTEM/EDX Mappingにより測定された金属元素(Ni、Co、Mn)の分布を示す図15図17を参照すると、前記二次粒子の中心部には、前記二次粒子の表面部とは異なって前記二次粒子内ニッケル、コバルトおよびマンガンの濃度勾配が存在しないことを確認することができる。
【0152】
一方、図18に示された常用NCM811の一部分(表面部)のうち前記二次粒子の中心部から前記二次粒子の表面部に向かう方向(縦方向)に垂直な方向(横方向)に沿って存在する金属元素(Ni、Co、Mn)の含量を示すグラフ(line sum spectrum)である図19図21を参照すると、実施例1~実施例3による正極活物質に現れた傾向性が示されない。
【0153】
(3)正極活物質のXPS分析
各実施例および比較例による正極活物質それぞれに対してXPS分析を行って正極活物質のうちコーティング層が存在するか否かを確認した。XPS分析は、K-Alpha+(ThermoFisher Scientific)(加速電圧:0.5~2keV、エネルギー分解能:約0.5eV、最小分析領域:30micro、Monatomic and Gas cluster ion source)を使用して行われた。
【0154】
下記表1および表2は、それぞれ実施例および比較例による正極活物質に対するXPS分析結果を記載したものである。
【0155】
【表1】
【0156】
【表2】
【0157】
前記表1の結果を参考にすると、実施例1による正極活物質の場合、XPS分析結果、Al2p、B1s、Ti2pまたはZr3d peakを示さない反面、実施例2の場合、Al2p、Ti2pおよびZr3d peakを示し、実施例3の場合、B1s peakを示し、実施例4の場合、Al2p、B1s、Ti2pおよびZr3d peakを示した。これに伴い、実施例2~実施例4による正極活物質は、リチウム複合酸化物の表面にそれぞれXPS分析結果上、示されたpeakに対応する酸化物コーティング層が形成されたことが分かる。
【0158】
一方、比較例1および比較例2によるXPS分析結果を示した表2の結果を参考にすると、比較例2による正極活物質のCo2p peakのサイズが比較例1に比べて高いことを通じて、比較例2による正極活物質は、リチウム複合酸化物の表面にCo含有酸化物コーティング層が形成されたことが分かる。
【0159】
ただし、比較例1だけでなく、リチウム複合酸化物の表面にCo含有酸化物コーティング層が形成された比較例2も、いずれも、実施例1~実施例4に示されるCoまたはMn等による濃度勾配区間が示されなかった。このような結果は、本発明の多様な実施例による正極活物質で発見された二次粒子の外周面に沿う方向に存在する金属元素の濃度勾配は、リチウム複合酸化物の表面に存在するコーティング層によるものではないという点を確認することができる。
【0160】
実験例2.
(1)リチウム二次電池の製造
実施例1、比較例1および比較例2によって製造された正極活物質それぞれ94wt%、カーボンブラック(carbon black)3wt%、PVDFバインダー3wt%をN-メチル-2ピロリドン(NMP)3.5gに分散させて正極スラリーを製造した。前記正極スラリーを厚み20μmの正極集電体であるアルミニウム(Al)薄膜に塗布および乾燥し、ロールプレス(roll press)を実施して正極を製造した。正極のローディングレベルは、7mg/cmであり、電極密度は、3.2g/cmであった。
【0161】
前記正極とリチウムホイルをカウンター電極とし、多孔性ポリエチレン膜(Celgard 2300、厚み:25μm)をセパレーターとし、エチレンカーボネートおよびエチルメチルカーボネートが3:7の体積比で混合された溶媒にLiPFが1.15Mの濃度で溶けている液体電解液を使用して通常的に知られている製造工程によりコイン電池を製造した。
【0162】
(2)リチウム二次電池インピーダンス(EIS;Electrochemical Impedence Spectroscopy)特性の評価
前記で製造されたリチウム二次電池(コインセル)の抵抗を電気化学インピーダンス分光法(EIS;Electrochemical Impedance Spectroscopy)を用いて周波数(10kHz~0.01Hz)の範囲内で測定した。
【0163】
前記インピーダンス分光法により測定された抵抗測定結果を示す図22を参照すると、比較例1および比較例2によって製造された正極活物質を含むリチウム二次電池の場合、実施例によって製造された正極活物質を含むリチウム二次電池に比べてRct(電荷移動抵抗)値が顕著に高いことを確認することができる。
【0164】
すなわち、前記結果から二次粒子の外周面に沿って前記二次粒子内ニッケル、コバルトおよびマンガンから選ばれる少なくとも1つの濃度が増加する第1濃度勾配区間と、前記二次粒子内ニッケル、コバルトおよびマンガンから選ばれる少なくとも1つの濃度が減少する第2濃度勾配区間とを含む正極活物質を使用することによって、、リチウム二次電池の抵抗特性が向上したことを確認することができる。
【0165】
以上、本発明の実施例について説明したが、当該技術分野における通常の知識を有する者なら、特許請求範囲に記載された本発明の思想を逸脱しない範囲内で、構成要素の付加、変更、削除または追加等により本発明を多様に修正および変更させることができ、これも、本発明の権利範囲内に含まれるといえる。
図1
図2
図3
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図5
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図10
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