(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-09
(45)【発行日】2022-03-17
(54)【発明の名称】金属化フィルムコンデンサの端面メタルスプレー用亜鉛合金線の作製方法
(51)【国際特許分類】
B21C 1/00 20060101AFI20220310BHJP
B21C 1/16 20060101ALI20220310BHJP
B22D 11/00 20060101ALI20220310BHJP
C22C 18/04 20060101ALI20220310BHJP
C22F 1/16 20060101ALI20220310BHJP
C23C 4/08 20160101ALI20220310BHJP
C23C 4/131 20160101ALI20220310BHJP
H01G 4/252 20060101ALI20220310BHJP
H01G 4/32 20060101ALI20220310BHJP
C22F 1/00 20060101ALN20220310BHJP
【FI】
B21C1/00 L
B21C1/00 B
B21C1/16 A
B22D11/00 D
B22D11/00 G
C22C18/04
C22F1/16 B
C23C4/08
C23C4/131
H01G4/252 C
H01G4/32 510
H01G4/32 530
H01G4/32 550
C22F1/00 613
C22F1/00 625
C22F1/00 630A
C22F1/00 640A
C22F1/00 650A
C22F1/00 681
C22F1/00 682
C22F1/00 683
C22F1/00 684C
C22F1/00 685A
C22F1/00 685Z
C22F1/00 691B
C22F1/00 691C
C22F1/00 692Z
(21)【出願番号】P 2020214025
(22)【出願日】2020-12-23
【審査請求日】2020-12-23
(31)【優先権主張番号】202010493615.8
(32)【優先日】2020-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520508550
【氏名又は名称】銅陵龍峰新材料有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】李 鋒
(72)【発明者】
【氏名】宋 振亜
(72)【発明者】
【氏名】彭 孜
(72)【発明者】
【氏名】▲いぇん▼ 鳴
(72)【発明者】
【氏名】金 ▲せん▼超
(72)【発明者】
【氏名】戴 登峰
(72)【発明者】
【氏名】傅 珠栄
(72)【発明者】
【氏名】葛 ▲しん▼
【審査官】▲来▼田 優来
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-006071(JP,A)
【文献】特開2018-016845(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101254513(CN,A)
【文献】特開昭59-143315(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21C1/00-1/34
H01G4/00-4/40
B23K35/00-35/40
C23C4/08,4/131
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属化フィルムコンデンサの端面メタルスプレー用亜鉛
アルミニウム合金線の作製方法であって、
原料配合する工程と、
配合された原料を中周波炉内で融化させた後、連続鋳造により、一定の線径の連続キャストロッドを得る工程と、
キャストロッドを連続のワイヤーブランクとなるように縮径加工する工程と、
炉温275~320°C、保温時間0.45~1.5hで、ワイヤーブランクを熱処理する工程と、
熱処理されたワイヤーブランクを20℃以上の環境で自然冷却させる工程と、
自然冷却されたワイヤーブランクを引抜縮径する工程とを含む、作製方法。
【請求項2】
前記原料配合として、アルミニウムは10~22%wt、残りは亜鉛である、請求項1に記載の金属化フィルムコンデンサの端面メタルスプレー用亜鉛合金線の作製方法。
【請求項3】
前記引抜縮径では、先に二連式ローラーダイスで引抜縮径を行ってから、伸線ダイスで完成品引抜縮径を行う、請求項1又は2に記載の金属化フィルムコンデンサの端面メタルスプレー用亜鉛合金線の作製方法。
【請求項4】
前記完成品引抜縮径では、引抜の前に、伸線ダイスに潤滑油を塗布する、請求項3に記載の金属化フィルムコンデンサの端面メタルスプレー用亜鉛合金線の作製方法。
【請求項5】
前記潤滑油は、50℃での運動粘度が60~70(
mm
2)/sであり、表面潤滑油含有量が線材重量の0.008~0.015%wtを占める、請求項4に記載の金属化フィルムコンデンサの端面メタルスプレー用亜鉛合金線の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属化フィルムコンデンサ生産の領域に関し、具体的に、金属化フィルムコンデンサの端面メタルスプレー用亜鉛合金線の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンデンサは、自己修復機能、高信頼性の稼働、安定した容量、長寿命等の特別な利点を持ち、その用途がますます広まっており、特に新エネルギー領域で幅広く利用されている。コンデンサの製造時は、先ず、表面に亜鉛やアルミニウムといった金属が蒸着されたプラスチックフィルムを用いて、積層巻回等のプロセスでコンデンサのコアを形成し、次いで、コアの2つの端面に、コンデンサの2つの電極板として、アーク式メタルスプレープロセスで0.4~0.6mmの厚さのメタルスプレー層をそれぞれ製作し、最後に、メタルスプレー層上にコンデンサの2つのリード線を溶接する。
【0003】
コアを火傷させないために、アーク式メタルスプレーによってコンデンサの端面メタルスプレー層を製作するための合金は、低融点である必要があり、現在、主な材料として、スズ亜鉛系合金になっているが、このような合金のコストは高い。そして、上記材料は、そのメタルスプレー層とコア端面との結合強度及び作動温度が、新エネルギーのダブル「85」の要件、即ちコンデンサが85%の湿度、85℃の条件下で長期間安定して作動するという要件を満たせない。すると、コンデンサは、使用中に振動や、熱膨張または収縮等の原因で、メタルスプレー層とコア端面とが剥がれてコンデンサの故障を招き易く、コンデンサが高信頼性で長寿命という新エネルギーの要件を満たすことが困難である。技術の進歩につれ、プラスチックフィルムの耐温性能が向上されているため、現在、メタルスプレー材料としては、純亜鉛も多く用いられている。
【0004】
長期研究の結果、純亜鉛やスズ亜鉛系合金の代わりに、亜鉛アルミニウム合金を用いてメタルスプレー層を製作した場合、当該メタルスプレー層とコア端面の亜鉛アルミニウムめっき層の膨張係数が近いため、結合強度及び作動温度が高まり、コンデンサの信頼性が高まり、損失が少なくなる等の一連の利点がある。そして、アルミニウム資源が豊富で、合金のコストも低いため、メタルスプレー層の新材料としては、大きな発展の可能性を極めている。しかし、亜鉛アルミニウム合金は、使用中にガン詰り及び火花飛散が発生し易いという難題を抱えており、コンデンサ領域での応用が制約されている。
【0005】
亜鉛アルミニウム合金線は、防食スプレー業界に広く使用されているため、通常の生産プロセスとして、亜鉛アルミニウム合金成分の調製、注湯による押出塊の形成、押出塊を前方押出機で押し出すことによるワイヤーブランクの形成、ワイヤーブランクを伸線ダイスで引抜縮径することによる亜鉛アルミニウム合金線の完成品の形成となる。該プロセスで加工された亜鉛アルミニウム合金線は、通常、15kgで梱包され、線径が一般的にΦ3.0mm以上であり、主にスプレーガンを手持ちした手動スプレー作業に用いられ、スプレー継続時間がそれほど長くなく、線径も太いため、ガン詰り現象は、それほど深刻ではなく、且つガン詰りによる作業過程及び品質への影響は、非常に深刻な程に至っていない。従って、防食スプレー業界では、ガン詰りが重視されていない。
【0006】
その一方、コンデンサ製造領域では、用いられる亜鉛アルミニウム合金線材の線径が小さく(一般的にΦ2mm以下)、各梱包の重量が一般的に100~200kgであり、メタルスプレー過程が全自動とされるため、火花飛散及びガン詰りは、作業過程及びコンデンサの品質に深刻な影響を与えてしまう。
【0007】
上記問題に対して、現在、一部の解決案もあり、例えば公開番号CN101985704には、重量パーセントの成分含有量としてアルミニウムが0.2~0.6%、混合希土類が0.01~0.10%、残りが亜鉛及び総量0.1%以下の不純物となる高強度亜鉛合金線が開示されている。前記アルミニウムの重量パーセント含有量は、0.3~0.5%である。前記混合希土類の重量パーセント含有量は、0.02~0.05%である。前記不純物において、重量パーセント含有量で、鉛≦0.01%、カドミウム≦0.001%である。当該発明には、前記高強度亜鉛合金線の作製方法が更に提供されており、当該作製方法は、1)成分比に従う原料調製、2)溶製、3)鋳造、4)熱間押出、5)熱処理、6)延伸といった工程を含む。当該発明による高強度亜鉛合金線は、強度が大きくて硬度が高く、価格が低いため、従来の亜鉛線の代わりに、亜鉛ショットの製作及びスプレー防食工事の表面処理等の領域に用いられる。当該発明による前記高強度亜鉛合金線の作製方法によれば、亜鉛合金線の強度が向上される。その技術案に焼入熱処理方法が用いられているが、亜鉛とアルミニウムとを主成分とした合金が非加工硬化材料であるため、焼入によって強度を顕著に向上させる可能性がなく、焼入処理が、その強度、特に150~200℃の温度での強度を顕著に向上できないことは、試験からも裏付けられている。
【0008】
更に、公開番号CN101935779Aには、亜鉛アルミニウム合金に微量元素を添加した、金属化フィルムコンデンサの端面メタルスプレー用亜鉛アルミニウム合金線が開示され、添加された微量元素が、常温での亜鉛アルミニウム合金の強度を少し向上できると開示されているが、150~200℃の温度では、合金強度の維持にあまり寄与しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の解決しようとする課題の1つは、コンデンサの端面メタルスプレー用亜鉛アルミニウム合金線の作製方法であって、作製された亜鉛アルミニウム合金線が、150~200℃の温度範囲内でも、高強度を維持することができ、アーク式メタルスプレーによるコンデンサの端面メタルスプレー層の製作に用いられた場合、アーク式メタルスプレー中にガン詰りが発生せず、スムーズな自動メタルスプレー過程が効果的に確保される作製方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に用いられた技術案としては、金属化フィルムコンデンサの端面メタルスプレー用亜鉛合金線の作製方法であって、原料配合する工程と、配合された原料を中周波炉内で融化させた後、連続鋳造により、一定の線径の連続キャストロッドを得る工程と、キャストロッドを連続のワイヤーブランクとなるように縮径加工する工程と、炉温275~320°C、保温時間0.45~1.5hで、ワイヤーブランクを熱処理する工程と、熱処理されたワイヤーブランクを20℃以上の環境で自然冷却させる工程と、自然冷却されたワイヤーブランクを引抜縮径する工程とを含む、作製方法である。
【0011】
本発明の更なる改良として、原料配合として、アルミニウムは10~22%wt、残りは亜鉛である。
【0012】
本発明のより一層更なる改良として、前記引抜縮径では、先に二連式ローラーダイスで引抜縮径を行ってから、伸線ダイスで完成品引抜縮径を行う。
【0013】
本発明の更なる改良として、完成品引抜縮径では、引抜の前に、伸線ダイスに潤滑油を塗布する。
【0014】
本発明のより一層更なる改良として、前記潤滑油は、50℃での運動粘度が60~70(mm
2)/sであり、表面潤滑油含有量が線材重量の0.008~0.015%wtを占める。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、以下の有益な効果がある。即ち、本発明の作製方法によれば、合金本来の細かくて押出/引抜方向に沿って分布していた粒状組織を適切な粗大ラメラ状組織に転化させ、熱処理温度及び時間に従って最適な数の粗大ラメラ状組織を得て、150~200℃での強度要件を満たしている。本発明により作製された亜鉛アルミニウム合金線は、150~200℃での降伏強度が40MPa超であり、アーク式メタルスプレー中にガン詰り及び火花飛散が発生し難く、メタルスプレー作業の円滑な進行が保証される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施例と比較例により作製された亜鉛アルミニウム合金線の使用効果の比較図である。
【
図2】本発明の比較例2における3000倍拡大された亜鉛アルミニウム合金の組織形態である。
【
図3】本発明の比較例5における3000倍拡大された亜鉛アルミニウム合金の組織形態である。
【
図4】本発明実施例8における3000倍拡大された亜鉛アルミニウム合金の組織形態である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施例と比較例に基づいて、本発明を更に説明する。
【0018】
亜鉛アルミニウム合金線のアーク式メタルスプレー中のガン詰り及び火花飛散の原因について詳しく分析することで、主に以下の(1)及び(2)の原因があることを見出した。(1)アーク式メタルスプレー中に発生するアークゾーンの温度は、千度以上にも到達してしまい、この間、亜鉛アルミニウム合金線とスプレーガンのコンタクトチップ及びコンタクトチューブを大電流が通過し、熱放射及び大電流抵抗熱により、コンタクトチップ及びコンタクトチューブが発熱し、その内部を通過する線材は、アークゾーンに入る前に150~200℃に加熱され、線供給ロールの押し送り作用の下で、コンタクトチューブ(電気的接触性能を向上させるために、10°程度の湾曲角度をなすものが一般的である)内の線材は、一定以上の高温強度がないと、捻じれて詰まりやすく、ひいては、コンタクトチップからスムーズに導出できなかったり、2本の線材の速度が一致しなくて火花飛散が発生し、コンデンサの品質に影響を与えてしまうか、或いは、最終的にコンタクトチップ内に詰まり、アークが切れ、メタルスプレーが中断されてしまい、即ち、「ガン詰り」が発生することになる。
【0019】
研究によると、従来技術で生産された亜鉛アルミニウム合金線は、温度が上昇すると急速に軟化し、且つ押出塊の間のはんだ接合部が熱を受けて分岐したり泡立て易くなり、アーク式メタルスプレーが長時間続くことで、スプレーガンの内部温度が150~200℃まで上昇し、この温度では、従来の亜鉛アルミニウム合金線が軟化して捻じれが発生し易くなることで、最初には、頻繁な火花飛散が発生し、最終的には、線詰りが発生してメタルスプレーが中断されてしまい(即ちガン詰り)、それに、分岐及び泡立ち現象により、ガン詰りを悪化させており、メタルスプレーがスムーズという自動化生産ラインの要件を満たせなくなる。
【0020】
(2)亜鉛アルミニウム合金は、溶製時に水素を吸収し易く、その後の急速な凝固により、溶融物内の水素原子が速やかに逃げ出すことができず、水素原子の形で合金内に存在し、放置時間の延長に伴って、これらの水素原子は、線材表層下の微細な穴や割れ目等の欠陥へと徐々に拡散して結合することで水素ガスが形成され、穴の中の水素ガスの圧力が大きくなるにつれ、線材表面に膨らみが徐徐に形成され、これらの膨らみが一定以上に増大すると、線材がコンタクトチップを通過できず、線詰りが発生してアーク式メタルスプレーが中断され、ガン詰りが発生してしまう。
【0021】
亜鉛アルミニウム合金が150~200℃で変形すると、主に結晶粒界と相境界の滑り及び回転によって材料全体の変形を実現し、結晶粒寸法を適切に増加させ、結晶粒界と相境界が占める体積割合を減少させるため、高い成形性を維持しながら、結晶粒界と相境界の滑り及び回転変形の抵抗の増加に寄与すること、即ち、常温で亜鉛アルミニウム合金線の強度を過度に向上させないことを前提として(強度が高すぎる場合も、スムーズな線供給に影響を与えてしまう)、材料の150~200℃での強度の向上に寄与することは、研究で見出された。
【0022】
また、亜鉛アルミニウム合金線を一定時間高温に保つことで、事前に線材表面に膨らみを生じさせておくことが可能であり、これらの膨らみが後続の引抜縮径において殆ど除去できることは、研究で見出された。このような処理によれば、線材完成品の放置中に表層の膨らみの発生に起因して、アークスプレー中にガン詰りが発生してしまうことを回避できる。
【0023】
従って、亜鉛アルミニウム合金線がスムーズなアーク式メタルスプレーを実現できるように保証するために、150~200℃でも、その高い強度を維持して、熱による軟化に起因した捻じれや線詰りを回避する必要がある。その一方、線材内の水素原子を除去して、線材表面での膨らみの発生を回避する必要もある。
【0024】
金属化フィルムコンデンサの端面メタルスプレー用亜鉛合金線の作製方法は、
原料配合する工程と、
配合された原料を中周波炉内で融化させた後、連続鋳造により、一定の線径の連続キャストロッドを得る工程と、
キャストロッドを連続のワイヤーブランクとなるように縮径加工する工程と、
炉温275~320°C、保温時間0.45~1.5hで、ワイヤーブランクを熱処理する工程と、
熱処理されたワイヤーブランクを20℃以上の環境で自然冷却させる工程と、
自然冷却されたワイヤーブランクを引抜縮径する工程とを含む。
【0025】
さらに、前記原料配合として、アルミニウムは10~22%wt、残りは亜鉛である。
【0026】
さらに、前記引抜縮径では、先に二連式ローラーダイスで引抜縮径を行ってから、伸線ダイスで完成品引抜縮径を行う。
【0027】
さらに、前記完成品引抜縮径では、引抜の前に、伸線ダイスに潤滑油を塗布する。
【0028】
さらに、前記潤滑油は、50℃での運動粘度が60~70(mm
2)/sであり、表面潤滑油含有量が線材重量の0.008~0.015%wtを占める。
【0029】
275℃~320℃の保温により、線材内の水素原子が線材表層下の欠陥に拡散して水素ガスが形成されることで、線材表面に一定の膨らみを生じさせているが、後続の引抜では、これらの膨らみが殆ど除去されたり、縮小されるため、亜鉛アルミニウム合金線材の線径安定性が保証され、後続のアーク式メタルスプレーの円滑な進行が確保される。また、完成品の引抜縮径時に適量の潤滑油を表面に塗布すると、一部の潤滑油が線の表面に残留し、適量の潤滑油であれば、線材と線供給チューブとの摩擦力を低減し、線供給中の線材の抵抗を低下させることが可能であり、スムーズなメタルスプレー作業に寄与する。その反面、潤滑油が適量でなければ、ガイドチューブ内に潤滑油が溜まり、メタルスプレーほこりや異物が多く付着して、線供給抵抗が増えてしまう。
【0030】
実施例1:金属化フィルムコンデンサの端面メタルスプレー用亜鉛合金線の作製方法
重量パーセントでアルミニウム(Al)が10%wt、残りが亜鉛(Zn)となる原料を中周波炉内で融化させた後、連続鋳造の方法で、線径Φ14mmの連続キャストロッドを得る工程と、縮径加工による連続圧延で、Φ14mmのキャストロッドを連続のΦ4.0mmのワイヤーブランクとなるように加工する工程と、ワイヤーブランクを熱処理炉内に入れ、炉温275℃、保温時間0.45hで処理する工程と、ワイヤーブランクを炉内から取り出し、20℃以上の空気中で自然冷却させる工程と、熱処理されて冷却されたワイヤーブランクをΦ1.66mmの線径となるように二連式ローラーダイスで引抜縮径する工程であって、連続の引抜縮径中の温度が70℃以下とされる工程と、完成品をΦ1.60mmの規格寸法となるように伸線ダイスで引き抜く工程であって、引き抜くと同時に、線材表面に潤滑油を塗布して、伸線ダイスの前に、50℃での運動粘度が60~70(mm
2)/sの潤滑油を、潤滑油含有量が0.008%wtとなるように添加する工程とを含む。
【0031】
実施例2:
実施例1に比べて、その違いは、ワイヤーブランクの熱処理の保温時間が1.5hとされる点と、完成品を伸線ダイスで引き抜く時の潤滑油含有量が0.009%wtとされる点にある。
【0032】
実施例3:
実施例1に比べて、その違いは、ワイヤーブランクの熱処理の炉温が320℃とされる点と、保温時間が1.5hとされる点にある。
【0033】
実施例4:
実施例3に比べて、その違いは、先にワイヤーブランクをΦ2.10mmの線径となるように二連式ローラーダイスで引抜縮径してから、完成品をΦ2.00mmの規格寸法となるように伸線ダイスで引き抜く点と、潤滑油含有量が0.005%wtとされる点にある。
【0034】
実施例5:
実施例1に比べて、その違いは、原料配合としてアルミニウム(Al)が15%wt、残りが亜鉛(Zn)とされる点と、先にワイヤーブランクをΦ1.68mmの線径となるように二連式ローラーダイスで引抜縮径してから、完成品をΦ1.60mmの規格寸法となるように伸線ダイスで引き抜く点と、潤滑油含有量が0.005%wtとされる点にある。
【0035】
実施例6:
実施例5に比べて、その違いは、ワイヤーブランクの熱処理の保温時間が1.5hとされる点にある。
【0036】
実施例7:
実施例5に比べて、その違いは、ワイヤーブランクの熱処理の炉温が320℃とされる点と、先にワイヤーブランクをΦ1.65mmの線径となるように二連式ローラーダイスで引抜縮径してから、完成品を伸線ダイスで引き抜く点と、潤滑油含有量が0.010%wtとされる点にある。
【0037】
実施例8:
実施例7に比べて、その違いは、先にワイヤーブランクをΦ1.68mmの線径となるように二連式ローラーダイスで引抜縮径してから、完成品をΦ2.00mmの規格寸法となるように伸線ダイスで引き抜く点と、潤滑油含有量が0.0005%wtとされる点にある。
【0038】
実施例9:
実施例1に比べて、その違いは、原料配合としてアルミニウム(Al)が22%wt、残りが亜鉛(Zn)とされる点と、先にワイヤーブランクをΦ1.66mmの線径となるように二連式ローラーダイスで引抜縮径する点と、潤滑油含有量が0.007%wtとされる点にある。
【0039】
実施例10:
実施例9に比べて、その違いは、ワイヤーブランクの熱処理の保温時間が1.5hとされる点と、潤滑油含有量が0.006%wtとされる点にある。
【0040】
実施例11:
実施例10に比べて、その違いは、ワイヤーブランクの熱処理の炉温が320°Cとされる点と、先にワイヤーブランクをΦ2.09mmの線径となるように二連式ローラーダイスで引抜縮径する点と、潤滑油含有量が0.006%wtとされる点にある。
【0041】
実施例12:
実施例11に比べて、その違いは、完成品をΦ2.00mmの規格寸法となるように伸線ダイスで引き抜く点と、潤滑油含有量が0.0005%wtとされる点にある。
【0042】
比較例1:
アルミニウム(Al)が10%wt、残りが亜鉛(Zn)となる原料を中周波炉内で融化させた後、連続鋳造の方法で、線径Φ14mmの連続キャストロッドを得て、連続圧延で、Φ14mmのキャストロッドを連続のΦ4.5mmのワイヤーブランクとなるように加工し、伸線ダイスによる引抜で、Φ2.00mmの完成品とされる。
【0043】
比較例2:
アルミニウム(Al)が15%wt、残りが亜鉛(Zn)となる原料を中周波炉内で融化させた後、連続鋳造の方法で、線径Φ14mmの連続キャストロッドを得て、連続圧延で、Φ14mmのキャストロッドを連続のΦ4.5mmのワイヤーブランクとなるように加工し、伸線ダイスによる引抜で、Φ2.00mmの完成品とされる。
【0044】
比較例3:
アルミニウム(Al)が22%wt、残りが亜鉛(Zn)となる原料を中周波炉内で融化させた後、連続鋳造の方法で、線径Φ14mmの連続キャストロッドを得て、連続圧延で、Φ14mmのキャストロッドを連続のΦ4.5mmのワイヤーブランクとなるように加工し、伸線ダイスによる引抜で、Φ2.00mmとされる。
【0045】
比較例4:従来の亜鉛アルミニウム合金線の作製方法
アルミニウム(Al)が10%wt、残りが亜鉛(Zn)となる原料を中周波炉内で融化させた後、注湯により押出塊を形成し、前方押出機で押出塊をΦ4.5mmのワイヤーブランクとなるように押出し、伸線ダイスによる引抜で、Φ2.00mmの完成品とされる。
【0046】
比較例5:従来の亜鉛アルミニウム合金線の作製方法
アルミニウム(Al)が15%wt、残りが亜鉛(Zn)となる原料を中周波炉内で融化させた後、注湯により押出塊を形成し、前方押出機で押出塊をΦ4.5mmのワイヤーブランクとなるように押出し、伸線ダイスによる引抜で、Φ2.00mmの完成品とされる。
【0047】
比較例6:従来の亜鉛アルミニウム合金線の作製方法
アルミニウム(Al)が22%wt、残りが亜鉛(Zn)となる原料を中周波炉内で融化させた後、注湯により押出塊を形成し、前方押出機で押出塊をΦ4.5mmのワイヤーブランクとなるように押出し、伸線ダイスによる引抜で、Φ2.00mmの完成品とされる。
【0048】
上記実施例と比較例では、不純物総量≦0.007%であり、上記実施例と比較例により作製された亜鉛アルミニウム合金線の使用効果は、下表の通りに比較される。
【0049】
本発明の作製方法によれば、合金本来の細かくて押出/引抜方向に沿って分布していた粒状組織を適切な粗大ラメラ状組織に転化させ、熱処理温度及び時間に応じて最適な数の粗大ラメラ状組織を得て、150~200℃での強度要件を満たしている、
図4に示すように、粗大のラメラ状組織を呈しており、結晶粒界と相境界面の体積割合が減少され、結晶粒界と相境界の滑り及び回転が困難となり、実施例と比較例の比較から分かるように、本発明により作製された亜鉛アルミニウム合金は、その結晶粒界と相境界に高融点のパーティクルが存在し、150~200℃では、結晶粒界と相境界がピン止めされ、結晶粒界と相境界の滑り及び回転抵抗が増え、更に、常温での合金の強度を過度に増加させることなく、合金材料の150~200℃での強度が向上される。
【0050】
亜鉛アルミニウム合金線の150~200℃での降伏強度が40MPa未満の場合、ガン詰り及び火花飛散現象が発生し易いことは、多くの試験で裏付けられている。本発明の亜鉛アルミニウム合金線材は、150~200℃での降伏強度が40MPa超であり、アーク式メタルスプレー中にガン詰り及び火花飛散が発生し難く、メタルスプレー作業の円滑な進行が保証される。
【0051】
当業者であれば、本発明の保護範囲は上記の実施例に限定されず、上記実施例に基づいて様々なアレンジや組み合わせと置換を行うことも可能であり、本発明の精神から逸脱することなく、本発明に対して為された様々な置換は、全て本発明の保護範囲内に含まれることとする。