(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-09
(45)【発行日】2022-03-17
(54)【発明の名称】エピタコ電気泳動を使用する試料分析のための装置
(51)【国際特許分類】
G01N 27/447 20060101AFI20220310BHJP
【FI】
G01N27/447 315A
G01N27/447 315F
(21)【出願番号】P 2020525994
(86)(22)【出願日】2018-11-13
(86)【国際出願番号】 EP2018081049
(87)【国際公開番号】W WO2019092269
(87)【国際公開日】2019-05-16
【審査請求日】2020-06-09
(32)【優先日】2017-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ.ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(72)【発明者】
【氏名】アスティエ,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ベルカ,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】シュレヒト,ウルリヒ
(72)【発明者】
【氏名】フォレット,フランティセク
(72)【発明者】
【氏名】ダティンスカ,ブラディミラ
(72)【発明者】
【氏名】ボラコバ,イボナ
【審査官】櫃本 研太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-003041(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0247935(US,A1)
【文献】特開平01-216248(JP,A)
【文献】国際公開第2008/136057(WO,A1)
【文献】実開昭59-037557(JP,U)
【文献】特開2000-338086(JP,A)
【文献】特開2004-286665(JP,A)
【文献】特開2014-055979(JP,A)
【文献】特開2011-112375(JP,A)
【文献】特開平02-114169(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0069914(KR,A)
【文献】特開昭62-167461(JP,A)
【文献】HJS DAWKINS,Large DNA separation using field alternation agar gel electrophoresis,Journal of Chromatography,1989年,Vol.492,pp.615-639
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/447
JSTPlus/JSTChina/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料分析のための装置であって、
ここで前記装置はエピタコ電気泳動をもたらすのに十分な1つ又は複数の電極の2次元配列を備え、又は前記配列と接触し、
前記1つ又は複数の電極は、
多角形形状に配置された1つ又は複数の電極、および前記装置の中心における電極を含み、
電流が、1つ又は複数の高電圧接続と前記装置の中心における接地接続とを介して印加される、前記装置。
【請求項2】
試料が、前記装置に上部の開口を通して注入される、請求項
1に記載の装置。
【請求項3】
使用中に、集束された試料が前記装置の中心に集まる、請求項1
または2に記載の装置。
【請求項4】
前記装置への電気の印加が、試料に含まれる標的分析物を集束ゾーンに集束させる、請求項1から
3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記装置は、リーディング電解質及びトレーリング電解質をさらに備える、請求項1から
4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記装置は、ゲルによって安定化された、又は他の様式でターミナル電解質から流体力学的に分離されたリーディング電解質を備え、前記ゲルは、任意選択で、pH安定性があり、粘性添加剤である、請求項1から
5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記装置は、管によってコンセントレータに接続されたリーディング電解質リザーバにおける電極を備える、請求項1から
6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記装置は、定電流を使用して動作され、半径rで開始してから距離dにおける速度vを計算するためのエピタコ電気泳動境界速度方程式は、v
(d)=u
LI/2π(r-d)hκ
L=Constant/(r-d)によって与えられる、請求項1から
7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記装置は、定電圧を使用して動作され、半径rで開始してから距離dにおける速度vを計算するためのエピタコ電気泳動境界速度方程式は、v
L=u
LUκ
T/[(r-d)κ
T+κ
Ldによって与えられる、請求項1から
7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記装置は、定電力を使用して動作され、半径rで開始してから距離dにおける速度vを計算するためのエピタコ電気泳動境界速度方程式は、
【数1】
によって与えられる、請求項1から
7のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[001]本開示は、一般に電気泳動の分野に関し、より詳細には、エピタコ電気泳動のための装置及び方法を介する、例えば生体試料などの試料の選択的分離、検出、抽出、及び/又は(予備)濃縮による試料分析に関する。
【背景技術】
【0002】
[002]電気泳動手法は、特定の物質の同定や溶液中の分子のサイズ及びタイプの決定など様々な目的で、試料の分離及び分析に長い間使用されている。例えば、様々な分子生物学の用途で、タンパク質又は核酸を分離し、分子量を決定し、及び/又はさらなる分析のために試料を調製するために、電気泳動を利用してきた。これら及び他の用途において、電気泳動は、一般に、電場の影響下で荷電物質(例えば、分子又はイオン)の移動を伴う。この移動は、他の試料又は物質からの試料の分離を容易にすることができる。試料は、分離されると、光学的又は他の手法を使用して容易に分析され得る。
【0003】
[003]様々な電気泳動に基づく手法は、一般に、実行される分析の特定の必要に応じた異なる用途と関連して使用される。例えば、等速電気泳動(「ITP」)は、異なる電気泳動移動度を有する電解質を利用して、異なるゾーン(「集束ゾーン(focused zone)」)にイオン分析物を集束させ、場合によっては分離する、濃縮及び分離技術である。ITPでは、分析物は、高有効移動度リーディング電解質(「LE」)イオンと低有効移動度トレーリング電解質(「TE」)との間で同時に集束及び分離される。ITPのゾーン境界におけるエレクトロマイグレーションと拡散のバランスにより、典型的には鮮明な移動境界がもたらされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
[004]従来、ITPは、毛細管又はマイクロ流体チャネル設計を特徴とする装置及び方法を使用して行われる。そのような装置及び方法は、分析のために扱うことができる試料が少量(μlスケール)のみであり、そのため、血液及び/又は血漿からの核酸の抽出などの生体試料の分析が困難になり得る。したがって、大きなボリュームを含み得る試料を分析するための装置及び方法のさらなる開発が有益であると見込まれる。試料のより迅速な分析を提供するエピタコ電気泳動方法も有益であろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[005]本開示は、一般に、エピタコ電気泳動をもたらすのに十分な1つ又は複数の電極の配列を備え、又はその配列と接触する、試料分析のための装置に関する。例示的な実施形態では、装置は、円形又は回転楕円形(spheroid)又は多角形の形状を備えてよい。さらなる例示的な実施形態では、上記試料の分析のための装置の使用中に、装置のエピタコ電気泳動ゾーンは、多角形又は円の縁部から多角形又は円の中心に向かって移動することができる。さらに、例示的な実施形態では、上記装置は、1μl以下、1μl以上、10μl以上、100μl以上、1mL以上、4mL以上、5mL以上、10mL以上、又は15mL以上の試料ボリュームを収容する寸法を有し得る。例示的な実施形態では、上記装置は、試料、例えば、生体試料から標的分析物を抽出、濃縮、及び/又は収集するために使用され得る。さらなる例示的な実施形態では、上記装置は、試料からctDNAを抽出するために使用されてよく、及び/又は上記装置は、試料、例えば、妊婦からの血液又は血漿からcfDNAを抽出するために使用されてよい。さらなる例示的な実施形態では、上記装置は、試料、例えば、生体試料から標的分析物を抽出、濃縮、及び/又は収集するために使用されてよく、上記標的分析物は、1つ又は複数の下流in vitro診断用途のために使用されてよい。
【0006】
[006]さらに、本開示は、一般に、上記試料の分析のためにエピタコ電気泳動を行うことを含む試料分析の方法を包含する。例示的な実施形態では、上記方法は、a.エピタコ電気泳動をもたらすための装置を提供するステップと、b.1つ又は複数の標的分析物を含む試料を上記装置上に提供するステップと、c.上記装置上にリーディング電解質及びトレーリング電解質を提供するステップと、d.上記装置を使用してエピタコ電気泳動を行うステップと、e.上記1つ又は複数の標的分析物を収集するステップとをさらに含むことができる。例示的な実施形態では、装置は、円形又は回転楕円形又は多角形の形状を備えてよい。さらなる例示的な実施形態では、上記試料分析の方法の間に、装置のエピタコ電気泳動ゾーンは、多角形又は円の縁部から多角形又は円の中心に向かって移動することができる。さらに、例示的な実施形態では、上記方法は、1μl以下、1μl以上、10μl以上、100μl以上、1mL以上、4mL以上、5mL以上、10mL以上、又は15mL以上の試料ボリュームを使用することができる。例示的な実施形態では、上記方法は、試料、例えば、生体試料からの標的分析物の抽出、濃縮、及び/又は収集を含むことができる。さらなる例示的な実施形態では、上記方法は、試料からのctDNAの抽出を含むことができ、及び/又は上記方法は、試料、例えば、妊婦からの血液又は血漿からのcfDNAの抽出を含むことができる。さらなる例示的な実施形態では、上記方法は、試料、例えば、生体試料からの標的分析物の抽出、濃縮、及び/又は収集を含んでよく、上記標的分析物は、1つ又は複数の下流in vitro診断用途のために使用されてよい。
【0007】
[007]さらに、本開示は、一般に、エピタコ電気泳動をもたらすのに十分な1つ又は複数の電極の配列を備え、又はその配列と接触する、試料分析のための装置であって、試料のエピタコ電気泳動分析のための装置の使用中に装置のエピタコ電気泳動ゾーンが多角形又は円の縁部から多角形又は円の中心に向かって移動するように、多角形又は円形又は回転楕円形の形状を備える装置に関する。さらに、本実施形態は、一般に試料の分析のための装置を包含し、上記装置は、円形又は回転楕円形又は多角形のアーキテクチャを備え、さらに、エピタコ電気泳動をもたらすのに十分な1つ又は複数の電極の配列を備え、又はその配列と接触する。さらに、本開示は、一般に試料の分析のための装置に関連し、上記装置は、エピタコ電気泳動をもたらすのに十分な1つ又は複数の電極の2次元配列を備える。
【0008】
[008]さらに、本開示は、一般に、a.エピタコ電気泳動に十分な電極の配列を備える装置を提供するステップと、b.1つ又は複数の標的分析物を含む試料を上記装置上に提供するステップと、c.上記装置上にリーディング電解質及びトレーリング電解質を提供するステップと、d.上記装置を使用してエピタコ電気泳動を行うステップと、e.上記1つ又は複数の標的分析物を収集するステップとを含む、試料分析の方法に関する。さらに、本実施形態は、一般に、a.エピタコ電気泳動をもたらすのに十分な1つ又は複数の電極の配列を備え、又はその配列と接触する装置を提供するステップであって、装置は、試料の分析のための装置の使用中に装置のエピタコ電気泳動ゾーンが多角形又は円の縁部から多角形又は円の中心に向かって移動するように、多角形又は円形又は回転楕円形の形状を備える、ステップと、b.1つ又は複数の標的分析物を含む試料を上記装置上に提供するステップと、c.上記装置上にリーディング電解質及びトレーリング電解質を提供するステップと、d.上記装置を使用してエピタコ電気泳動を行うステップと、e.上記1つ又は複数の標的分析物を収集するステップとを含む、試料分析の方法を包含する。さらに、本開示は、一般に、a.エピタコ電気泳動をもたらすのに十分な電極の非線形の連続的配列を備える装置を提供するステップと、b.1つ又は複数の標的分析物を含む試料を上記装置上に提供するステップと、c.上記装置上にリーディング電解質及びトレーリング電解質を提供するステップと、d.上記装置を使用してエピタコ電気泳動を行うステップと、e.上記1つ又は複数の標的分析物を収集するステップとを含む、試料分析の方法に関連する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】[009]
図1は、エピタコ電気泳動をもたらすための例示的な装置の概略図である。
【
図2A】[0010]
図2Aは、エピタコ電気泳動をもたらすための例示的な装置の上面概略図である。
図2Aにおいて番号1~8は、1.外側円形電極;2.ターミナル電解質リザーバ;3.任意選択でゲル内に含まれ、又は他の様式でターミナル電解質から流体力学的に分離される、リーディング電解質;4.リーディング電解質電極/収集リザーバ;5.中央電極;6.電力供給部;7.試料イオンが集束されるリーディング電解質とターミナル電解質の間の境界;及び8.底部支持体を示し;記号r及び記号dはそれぞれ、リーディング電解質リザーバ半径、及びLE/TE境界により移動された距離を表すために使用される。
【
図2B】[0011]
図2Bは、エピタコ電気泳動をもたらすための例示的な装置の側面概略図である。
図2Bにおいて番号1~8は、1.外側円形電極;2.ターミナル電解質リザーバ;3.任意選択でゲル内に含まれ、又は他の様式でターミナル電解質から流体力学的に分離される、リーディング電解質;4.リーディング電解質電極/収集リザーバ;5.中央電極;6.電力供給部;7.試料イオンが集束されるリーディング電解質とターミナル電解質の間の境界;及び8.底部支持体を示し;記号r及び記号dはそれぞれ、リーディング電解質リザーバ半径、及びLE/TE境界により移動された距離を表すために使用される。
【
図3】[0012]
図3は、エピタコ電気泳動をもたらすための例示的な装置の概略図である。
【
図4】[0013]
図4は、エピタコ電気泳動をもたらすための例示的な装置の概略図である。
図4において番号1~10は、1.外側円形電極;2.ターミナル電解質リザーバ;3.任意選択でゲル内に含まれ、又は他の様式でターミナル電解質から流体力学的に分離される、リーディング電解質;4.リーディング電解質/収集リザーバへの開口;5.中央電極;6.電力供給部;7.試料イオンが集束されるリーディング電解質とターミナル電解質の間の境界;8.底部支持体;9.装置をリーディング電解質リザーバに接続する管;10.リーディング電解質リザーバを示す。
【
図5】[0014]
図5は、エピタコ電気泳動をもたらすための例示的な装置の概略図であり、ここで、試料は、リーディング電解質とターミナル電解質との間に装填される。
【
図6A】[0015]
図6Aは、エピタコ電気泳動をもたらすための装置の概略図であり、実施例2に説明される方程式に関して参照される。
【
図6B】[0016]
図6Bは、エピタコ電気泳動のための例示的な装置(
図6A)が定電流を使用して動作されたときの、cm単位の移動距離dと距離dにおける相対速度を表すグラフである。
図6Bに示される例では、半径値5及び開始速度値1が使用された。
【
図6C】[0017]
図6Cは、エピタコ電気泳動のための例示的な装置(
図6A)が定電圧を使用して動作されたときの、cm単位の移動距離dと距離dにおける相対速度を表すグラフである。
図6Cに示される例では、半径値5及び開始速度値1が使用された。
【
図6D】[0018]
図6Dは、エピタコ電気泳動のための例示的な装置(
図6A)が定電力を使用して動作されたときの、cm単位の移動距離dと距離dにおける相対速度を表すグラフである。
図6Dに示される例では、半径値5及び開始速度値1が使用された。
【
図7】[0019]
図7は、実施例3に従って試料を濃縮するために使用されたエピタコ電気泳動装置の画像である。
【
図8A】[0020]
図8Aは、実施例4に従って使用されたエピタコ電気泳動のための例示的な装置の画像である。
【
図8B】[0021]
図8Bは、実施例4に従って試料を集束ゾーンに集束させるために使用されたエピタコ電気泳動のための例示的な装置の画像である。
【
図8C】[0022]
図8Cは、実施例4に従って試料を集束ゾーンに集束させるために使用されたエピタコ電気泳動のための例示的な装置の画像である。
【
図9A】[0023]
図9Aは、実施例5に従って使用されたエピタコ電気泳動のための例示的な装置の画像である。
【
図9B】[0024]
図9Bは、実施例5に従って使用されたエピタコ電気泳動のための例示的な装置の概略図である。
図9Bにおいて、数はミリメートル単位の寸法を示す。
【
図9C】[0025]
図9Cは、実施例5に従って試料を集束ゾーンに集束させるために使用されたエピタコ電気泳動のための例示的な装置の画像である。
【
図9D】[0026]
図9Dは、実施例5に従って試料を集束ゾーンに集束させるために使用されたエピタコ電気泳動のための例示的な装置の画像である。
【
図10】[0027]
図10は、実施例5に従って試料を集束ゾーンに集束させるために使用されたエピタコ電気泳動のための例示的な装置の画像である。
【
図11】[0028]
図11は、実施例5に従って2つの異なる試料を分離して集束ゾーンに集束させるために使用されたエピタコ電気泳動のための例示的な装置の画像である。
【
図12】[0029]
図12は、実施例6に従ったエピタコ電気泳動のための例示的な装置の画像である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
定義
[0030]本明細書で使用される場合、文脈で明確な指示がない限り、単数形(「a」、「and」、及び「the」)は複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「細胞」への言及は、複数のそのような細胞を含み、「タンパク質」への言及は、1つ又は複数のタンパク質及び当業者に知られるその等価物への言及を含むなどである。本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、別段の明確な指示がない限り、本発明が属する技術分野の当業者に一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0011】
[0031]「電場」という用語は、電子、イオン、又はプロトンのような、電荷の存在によって、それを取り囲む空間又は媒体のボリュームにおいて生成される効果を意味するために使用される。電荷の分布の各々は、重ね合わせに基づいてある点で場全体に寄与する。空間のボリューム又は周囲の媒体に配置された電荷は、それに加えられる力を有する。電場は、電圧の差によって生成することができ、電圧が高いほど、得られる場はより強くなる。対照的に、磁場は、電流が流れるときに生成することができ、電流が強いほど、磁場は強くなる。電場は、電流が流れていないときも存在することができる。電場は、メートル当たりのボルト(V/m)で測定され得る。いくつかの実施形態では、本方法及び装置において荷電粒子の移動を引き起こすために、好都合な時間枠内で、電場強度は、約1mWから約100Wの範囲の電力で約10Vから約10kVとされ得る。いくつかの実施形態では、最も速い分析のために印加される最大電力は、試料及び電解質溶液の電気抵抗、並びに本明細書に記載の装置の構築に使用され得る材料の冷却性能に依存し得る。
【0012】
[0032]本明細書で使用される場合、「等速電気泳動」という用語は、一般に、電場を使用して材料間(例えば、荷電粒子と溶液中の他の材料との間)の境界又は界面を生成することによる、荷電粒子の分離を指す。ITPは、一般に、複数の電解質を使用し、試料イオンの電気泳動移動度は、ITPの装置内に配置されたリーディング電解質(LE)のそれよりも小さくトレーリング電解質(TE)のそれよりも大きい。リーディング電解質(LE)は、一般に比較的高い移動度のイオンを含み、トレーリング電解質(TE)は、一般に比較的低い移動度のイオンを含む。TEイオン及びLEイオンは、目的の標的分析物イオンよりもそれぞれ低い移動度及び高い移動度を有するように選ばれる。すなわち、分析物イオンの有効移動度は、TEの移動度よりも高く、LEの移動度よりも低い。これらの標的分析物は、LEイオン及びTEイオンと同じ電荷符号を有する(すなわち、共イオン)。印加された電場により、LEイオンがTEイオンから離れるように移動し、TEイオンは後に続く。移動界面が、隣接し連続するTEゾーン及びLEゾーンの間に形成される。これにより、(典型的にはLEの低電場からTEの高電場への)電場勾配の領域を生成する。TEにおける分析物イオンはTEイオンを追い越すがLEイオンを追い越せず、TEとLEの間の界面に蓄積する(「集束する」又は「集束ゾーン」を形成する)。或いは、LEにおける標的イオンがLEイオンに追い越され、やはり界面に蓄積する。LE及びTEの化学的性質の賢明な選択により、ITPは、かなり一般的に適用可能であり、TE電解質及びLE電解質のいずれか又は両方に最初に溶解された試料を用いて達成可能であり、非常に低い導電率のバックグラウンド電解質を必要としない場合がある。
【0013】
[0033]本明細書で使用される場合、「エピタコ電気泳動」という用語は、一般に、円形若しくは回転楕円形及び/又は同心の装置並びに/或いは円形及び/又は同心の電極配列を使用して、例えば、本明細書に記載の円形/同心の装置及び/又は多角形の装置の使用によって行われる電気泳動分離の方法を指す。エピタコ電気泳動中に使用される円形若しくは同心の又は他の多角形の配列のため、従来のエピタコ電気泳動装置とは異なり、イオン及びゾーンの移動中に断面積が変化し、断面積の変化に起因してゾーン移動の速度は時間的に一定ではない。したがって、エピタコ電気泳動配列は、ゾーンが一定の速度で移動する従来の等速電気泳動原理に厳密に従うものではない。本明細書に示されるようなこれらの著しい違いにもかかわらず、エピタコ電気泳動は、電場を用いて、異なる電気泳動移動度を有し得る材料の間(例えば、荷電粒子と溶液中の他の材料との間)の境界又は界面を生成することによって、荷電粒子を効率的に分離し集束させるために使用され得る。ITPでの使用に関して説明されたLE及びTEは、エピタコ電気泳動のために同様に使用され得る。円形又は回転楕円形装置アーキテクチャ、例えば、1つ又は複数の円形電極を含む装置が使用され得る実施形態に関して、定電流、定電圧、及び定電力下のゾーンの移動の説明が、以下の実施例のセクションで提示される。例示的な実施形態では、エピタコ電気泳動は、定電流、定電圧、及び/又は定電力を使用して行われ得る。例示的な実施形態では、エピタコ電気泳動は、変動する電流、変動する電圧、及び/又は変動する電力を使用して行われ得る。例示的な実施形態では、エピタコ電気泳動は、エピタコ電気泳動の基本原理が本明細書に記載されるように達成され得るように、形状が円形又は回転楕円形として一般的に説明され得る電極の装置及び/又は配列の文脈内で行われ得る。いくつかの実施形態では、エピタコ電気泳動は、エピタコ電気泳動の基本原理が本明細書に記載されるように達成され得るように、形状が多角形として一般的に説明され得る電極の装置及び/又は配列の文脈内で行われ得る。いくつかの実施形態では、エピタコ電気泳動は、円形の形状で配置された電極及び/又は多角形の形状で配置された電極のような、電極の任意の非線形の連続的配列によって行われ得る。
【0014】
[0034]本明細書で使用される場合、「in vitro診断アプリケーション(IVDアプリケーション)」及び「in vitro診断方法(IVD方法)」などは、一般に、診断及び/又は監視目的で試料を評価する、例えば、被験者の疾患、任意選択で被験者を同定することができる、任意のアプリケーション及び/又は方法及び/又は装置を指す。例示的な実施形態では、上記試料は、対象からの血液及び/又は血漿を含んでもよい。例示的な実施形態では、上記試料は、対象からの核酸及び/又は標的核酸を含んでよく、任意選択で、上記核酸は、対象からの血液及び/又は血漿に由来する血漿に由来する。例示的な実施形態では、エピタコ電気泳動装置はin vitro診断装置として使用され得る。例示的な実施形態では、エピタコ電気泳動によって濃縮/富化された標的分析物が下流in vitro診断アッセイで使用され得る。例示的な実施形態では、in vitro診断アッセイは、核酸配列決定、例えば、DNA配列決定を含み得る。さらなる例示的な実施形態では、in vitro診断方法は、染色、免疫組織化学染色、フローサイトメトリー、FACS、蛍光活性化液滴選別、画像分析、ハイブリダイゼーション、DASH、分子ビーコン、プライマー伸長、マイクロアレイ、CISH、FISH、ファイバーFISH、定量的FISH、フローFISH、比較ゲノムハイブリダイゼーション、ブロッティング、ウェスタンブロッティング、サザンブロッティング、イースタンブロッティング、ファーウェスタンブロッティング、サウスウェスタンブロッティング、ノースウェスタンブロッティング、ノーザンブロッティング、酵素アッセイ、ELISA、リガンド結合アッセイ、免疫沈降、ChIP、ChIP-seq、ChIP-ChIP、ラジオイムノアッセイ、蛍光偏光、FRET、表面プラズモン共鳴、フィルター結合アッセイ、アフィニティークロマトグラフィー、免疫細胞化学、遺伝子発現プロファイリング、PCRを用いたDNAプロファイリング、DNAマイクロアレイ、遺伝子発現の連続分析、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応、ディファレンシャルディスプレイPCR、RNA-seq、質量分析、DNAメチル化検出、音響エネルギー、リピドミクスベースの分析、免疫細胞の定量化、がん関連マーカーの検出、特定の細胞型のアフィニティー精製、DNA配列決定、次世代配列決定、がん関連融合タンパク質の検出、及び化学療法耐性関連マーカーの検出のうちの任意の1つ又は複数であり得るが、これらに限定されない。
【0015】
[0035]本明細書で使用される場合、「リーディング電解質」及び「リーディングイオン」という用語は、一般に、目的の試料イオン並びに/又はITP及び/若しくはエピタコ電気泳動中に使用されるトレーリング電解質と比較して、より高い有効電気泳動移動度を有するイオンを指す。例示的な実施形態では、カチオン性エピタコ電気泳動と共に使用するためのリーディング電解質は、例えば、ヒスチジン、TRIS、クレアチニンなどの適切な塩基で所望のpHに緩衝された、塩化物、硫酸塩、及び/又はギ酸塩を含み得るが、これらに限定されない。例示的な実施形態では、アニオン性エピタコ電気泳動と共に使用するためのリーディング電解質は、酢酸塩又はギ酸塩を伴うカリウム、アンモニウム、及び/又はナトリウムを含み得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、リーディング電解質の濃度の増加は、試料ゾーンの比例的増加、及び所与の印加された電圧に対する電流(電力)の対応する増加をもたらし得る。典型的な濃度は、一般的に10~20mMの範囲内であり得るが、より高い濃度が使用されてもよい。
【0016】
[0036]本明細書で使用される場合、「トレーリング電解質」、「トレーリングイオン」、「ターミナル電解質」、及び「ターミナルイオン」という用語は、一般に、目的の試料イオン並びに/又はITP及び/若しくはエピタコ電気泳動中に使用されるトレーリング電解質と比較して、より低い有効電気泳動移動度を有するイオンを指す。例示的な実施形態では、カチオン性エピタコ電気泳動と共に使用するためのトレーリング電解質は、MES、MOPS、酢酸塩、グルタミン酸塩、及び他の弱酸のアニオン及び低移動度アニオンを含み得るが、これらに限定されない。例示的な実施形態では、アニオン性エピタコ電気泳動と共に使用するためのトレーリング電解質は、エピタコ電気泳動中の任意の弱酸によって形成されるような移動境界における反応ヒドロキソニウムイオンを含み得るが、これらに限定されない。
【0017】
[0037]本明細書で使用される場合、用語「集束ゾーン」という用語は、一般に、エピタコ電気泳動を行った結果として濃縮された(「集束された」)成分を含む溶液のボリュームを指す。集束ゾーンは、装置から収集又は除去されてよく、上記集束ゾーンは、富化及び/又は濃縮された量の所望の試料、例えば標的分析物、例えば標的核酸を含んでよい。本明細書に記載のエピタコ電気泳動方法では、標的分析物は、一般に、装置、例えば、円形若しくは回転楕円形又は他の多角形の形状の装置の中心に集束されることになる。
【0018】
[0038]「核酸」及び「核酸分子」という用語は、本開示全体を通して交換可能に使用され得る。上記用語は、一般に、ヌクレオチド(例えば、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、ヌクレオチド類似体など)のポリマーを指し、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、DNA-RNAハイブリッド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、アプタマー、ペプチド核酸(PNA)、PNA-DNAコンジュゲート、PNA-RNAコンジュゲートなどを含み、それらは、直鎖状又は分岐状のいずれかで共有結合されたヌクレオチドを含む。核酸は、典型的には、一本鎖又は二本鎖であり、一般的に、ホスホジエステル結合を含むが、いくつかの場合、例えば、ホスホラミド(Beaucage et al. (1993) Tetrahedron 49(10):1925)、ホスホロチオエート(Mag et al. (1991) Nucleic Acids Res. 19:1437及び米国特許第5,644,048号)、ホスホロジチオエート(Briu et al. (1989) J. Am. Chem. Soc. 111:2321)、O-メチルホスホロアミダイト結合(Eckstein, Oligonucleotides and Analogues: A Practical Approach, Oxford University Press (1992)参照)、並びにペプチド核酸骨格及び結合(Egholm (1992) J. Am. Chem. Soc. 114:1895参照)を含む、別の骨格を有し得る核酸類似体が含まれる。他の核酸類似体は、正に荷電された骨格(Denpcy et al. (1995) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92: 6097)、非イオン性骨格(米国特許第5,386,023号、第5,637,684号、第5,602,240号、第5,216,141号、及び第4,469,863号)、及び米国特許第5,235,033号及び第5,034,506号に記載のものを含む非リボース骨格を有する核酸類似体を含む。1つ又は複数の炭素環式糖を含む核酸も、核酸の定義内に含まれ(Jenkins et al. (1995) Chem. Soc. Rev. pp. 169-176参照)、類似体は、例えばRawls, C 8c E News Jun. 2, 1997、35ページにも記載されている。リボース-リン酸骨格のこれらの修飾は、標識などの付加的部分の付加を容易にするために、又は生理学的環境内でそのような分子の安定性及び半減期を変えるために行われ得る。
【0019】
[0039]核酸に典型的に見出せる天然に存在する複素環塩基(例えば、アデニン、グアニン、チミン、シトシン、及びウラシル)に加えて、ヌクレオチド類似体は、天然に存在しない複素環塩基、例えばSeela et al. (1999) Helv. Chim. Acta 82:1640に記載されたものも含み得る。ヌクレオチド類似体に使用される特定の塩基は、融解温度(Tm)修飾剤として作用する。例えば、これらのいくつかは、7-デアザプリン(例えば、7-デアザグアニン、7-デアザアデニンなど)、ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン、プロピニル-dN(例えば、プロピニル-dU、プロピニル-dCなど)などを含み、例えば、米国特許第5,990,303号を参照されたい。他の代表的な複素環塩基は、例えば、ヒポキサンチン、イノシン、キサンチン;2-アミノプリン、2,6-ジアミノプリン、2-アミノ-6-クロロプリン、ヒポキサンチン、イノシン及びキサンチンの8-アザ誘導体;アデニン、グアニン、2-アミノプリン、2,6-ジアミノプリン、2-アミノ-6-クロロプリン、ヒポキサンチン、イノシン及びキサンチンの7-デアザ-8-アザ誘導体;6-アザシチジン;5-フルオロシチジン;5-クロロシチジン;5-ヨードシチジン;5-ブロモシチジン;5-メチルシチジン;5-プロピニルシチジン;5-ブロモビニルウラシル;5-フルオロウラシル;5-クロロウラシル;5-ヨードウラシル;5-ブロモウラシル;5-トリフルオロメチルウラシル;5-メトキシメチルウラシル;5-エチニルウラシル;5-プロピニルウラシルなどを含む。
【0020】
[0040]また、核酸及び核酸分子という用語は、一般に、オリゴヌクレオチド、オリゴ、ポリヌクレオチド、ゲノムDNA、ミトコンドリアDNA(mtDNA)、相補的DNA(cDNA)、細菌DNA、ウイルスDNA、ウイルスRNA、RNA、伝令RNA(mRNA)、転移RNA(tRNA)、リボソームRNA(rRNA)、siRNA、触媒RNA、クローン、プラスミド、M13、PI、コスミド、細菌の人工染色体(BAC)、酵母の人工染色体(YAC)、増幅された核酸、アンプリコン、siRNA、触媒RNA、クローン、細菌人工染色体(BAC)、酵母の工染色体(YAC)、増幅された核酸、アンプリコン、PCR産物及び他のタイプの増幅された核酸、RNA/DNAハイブリッド及びPNAを指すこともあり、これらの全ては、一本鎖又は二本鎖のいずれかの形態である可能性があり、特に限定されない限り、天然に存在するヌクレオチド並びにそれらの組み合わせ及び/又は混合物と同様に機能できる天然ヌクレオチドの既知の類似体を包含する。したがって、「ヌクレオチド」という用語は、天然に存在するヌクレオチドと修飾された/天然に存在しないヌクレオチドとの両方、例えば、ヌクレオシド三リン酸、二リン酸、及び一リン酸、並びにポリ核酸又はオリゴヌクレオチド内に存在する一リン酸モノマーモノマーを指す。ヌクレオチドはまた、リボ、2’-デオキシ、2’,3’-デオキシ、並びに当技術分野で周知の他の広範囲のヌクレオチド模倣体であってもよい。模倣体は、3’-O-メチル、ハロゲン化塩基、又は糖置換などの鎖終結ヌクレオチド;非糖のアルキル環構造を含む代替糖構造;イノシンを含む代替塩基;デアザ修飾;カイ及びプサイ、リンカー修飾;質量標識修飾;ホスホロチオエート、メチルホスホネート、ボラノホスフェート、アミド、エステル、エーテルを含む、ホスホジエステル修飾又は置換;並びに、光切断可能なニトロフェニル部分などの切断結合を含む基本的又は完全なヌクレオチド間置換を含む。
【0021】
[0041]「ヌクレオシド」は、糖部分(リボース糖又はデオキシリボース糖)、糖部分の誘導体、又は糖部分の機能的等価物(例えば炭素環)に共有結合された、塩基又は塩基性基(少なくとも1つの同素環、少なくとも1つの複素環、及び/又は少なくとも1つのアリール基などを含む)を含む核酸成分を指す。例えば、ヌクレオシドが糖部分を含む場合、塩基は、典型的には、その糖部分の1’位に結合される。上述のように、塩基は、天然に存在する塩基又は天然に存在しない塩基であり得る。例示的なヌクレオシドは、リボヌクレオシド、デオキシリボヌクレオシド、ジデオキシリボヌクレオシド、及び炭素環ヌクレオシドを含む。
【0022】
[0042]「プリンヌクレオチド」はプリン塩基を含むヌクレオチドを指し、「ピリミジンヌクレオチド」はピリミジン塩基を含むヌクレオチドを指す。
[0043]「修飾ヌクレオチド」は、希少又はマイナーな核酸塩基、ヌクレオチド、及び従来の塩基又はヌクレオチドの修飾、誘導、又は類似体を指し、修飾された塩基部分及び/又は修飾された糖部分を有する合成ヌクレオチドを含む(Protocols for Oligonucleotide Conjugates, Methods in Molecular Biology, Vol. 26 (Suhier Agrawal, Ed., Humana Press, Totowa, N.J., (1994));及びOligonucleotides and Analogues, A Practical Approach (Fritz Eckstein, Ed., IRL Press, Oxford University Press, Oxford参照)。
【0023】
[0044]本明細書で使用される「オリゴヌクレオチド」は、ホスホジエステル結合又はその類似体によって連結された天然又は修飾ヌクレオシドモノマーの直鎖オリゴマーを指す。オリゴヌクレオチドは、標的核酸に特異的に結合できるデオキシリボヌクレオシド、リボヌクレオシド、これらのアノマー型、PNAなどを含む。通常、モノマーは、ホスホジエステル結合又はその類似体によって連結され、数個のモノマー単位例えば3~4から数十のモノマー単位例えば40~60のサイズの範囲のオリゴヌクレオチドを形成する。オリゴヌクレオチドが、「ATGCCTG」のような文字の配列によって表されるときはいつでも、ヌクレオチドが左から右に5’-3’の順序にあり、特に明記されない限り、「A」がデオキシアデノシンを示し、「C」がデオキシシチジンを示し、「G」がデオキシグアノシンを示し、「T」がデオキシチミジンを示し、「U」がリボヌクレオシド、ウリジンを示すことは理解されよう。通常、オリゴヌクレオチドは、4つの天然デオキシヌクレオチドを含むが、それらはまた、リボヌクレオシド又は非天然のヌクレオチド類似体を含んでもよい。酵素が、活性について、例えば、一本鎖DNA、RNA/DNA二本鎖などの特異的オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド基質要件を有する場合、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド基質のための適切な組成物の選択は、十分に当業者の知識の範囲内である。
【0024】
[0045]本明細書で使用される場合、「オリゴヌクレオチドプライマー」又は単に「プライマー」は、標的核酸鋳型上の配列にハイブリダイズし、標的核酸の検出又は増幅を容易にし得る、ポリヌクレオチド配列を指す。増幅プロセスにおいて、オリゴヌクレオチドプライマーは、核酸合成の開始点の役割をする。非増幅プロセスにおいて、オリゴヌクレオチドプライマーは、切断剤によって切断することができる構造を生成するために使用され得る。プライマーは、様々な長さであってよく、しばしば、50ヌクレオチド長未満、例えば、12~25ヌクレオチド長である。PCRで使用されるプライマーの長さ及び配列は、当業者に知られた原理に基づいて設計され得る。
【0025】
[0046]本明細書で使用される「オリゴヌクレオチドプローブ」という用語は、目的の標的核酸にハイブリダイズ又はアニーリングすることができ、標的核酸の特異的検出を可能にするポリヌクレオチド配列を指す。
【0026】
[0047]核酸は、例えばヌクレオチド組込み生体触媒によって、核酸の3’末端で追加のヌクレオチドが核酸に組み込まれたとき、「伸長」又は「延長」される。
[0048]本明細書で使用される場合、「ハイブリダイゼーション」及び「アニーリング」などの用語は、交換可能に使用され、あるポリヌクレオチドと別のポリヌクレオチド(典型的には逆平行ポリヌクレオチド)の塩基対相互作用を指し、これは、典型的にはハイブリダイゼーション複合体と呼ばれる、二重又は他の高次構造の形成をもたらす。逆平行ポリヌクレオチド分子間の一次相互作用は、典型的には、ワトソン/クリック型及び/又はフーグスティーン型水素結合によって塩基特異的であり、例えばA/T及びG/Cである。ハイブリダイゼーションを達成するために、2つのポリヌクレオチドがそれらの全長にわたって100%の相補性を有することは必須ではない。いくつかの態様では、ハイブリダイゼーション複合体は、分子間相互作用から形成可能であり、又は代替的に分子内相互作用から形成可能である。
【0027】
[0049]「相補的」という用語は、ある核酸が別の核酸分子と同一であるか、又は選択的にハイブリダイズすることを意味する。ハイブリダイゼーションの選択性は、特異性の完全な欠如よりも選択的なハイブリダイゼーションが発生したときに存在する。典型的には、選択的ハイブリダイゼーションは、少なくとも14~25ヌクレオチドのストレッチにわたって少なくとも約55%、好ましくは少なくとも65%、より好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも90%の同一性が存在する場合に発生する。好ましくは、1つの核酸は他の核酸に特異的にハイブリダイズする。M. Kanehisa, Nucleic Acids Res. 12:203 (1984)を参照されたい。
【0028】
[0050]「完全に相補的」なプライマーは、プライマーの全長にわたり完全に相補的な配列を有し、ミスマッチがない。プライマーは、典型的には、標的配列及び/又は標的核酸の一部(部分配列)に対して完全に相補的である。「ミスマッチ」は、プライマーにおけるヌクレオチドと、それと整列される標的核酸におけるヌクレオチドとが相補的でない部位を指す。「実質的に相補的」という用語は、プライマーに関して使用される場合、プライマーがその標的配列と完全には相補的でなく、代わりに、プライマーは、所望のプライマー結合部位においてそれぞれの鎖に選択的にハイブリダイズするのに十分なだけ相補的であることを意味する。
【0029】
[0051]本明細書で使用される「標的核酸」という用語は、その存在が検出され、測定され、増幅され、及び/又はさらなるアッセイ及び分析の対象とされる任意の核酸を意味することが意図される。標的核酸は、任意の一本鎖及び/又は二本鎖の核酸を含み得る。標的核酸は、単離された核酸断片として存在し、又はより大きな核酸断片の一部であり得る。標的核酸は、本質的に任意のソース、例えば、培養微生物、非培養微生物、複雑な生物学的混合物、生体試料、組織、血清、古代の若しくは保存された組織若しくは試料、又は環境分離株などから、誘導又は単離され得る。さらに、標的核酸は、cDNA、RNA、ゲノムDNA、クローニング化ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、酵素的に断片化されたDNA若しくはRNA、化学的に断片化されたDNA若しくはRNA、又は物理的に断片化されたDNA若しくはRNAなどを含み、又はこれらから誘導される。例示的な実施形態では、標的核酸は全ゲノムを含み得る。例示的な実施形態では、標的核酸は、試料及び/又は生体試料の全核酸含有量を含み得る。例示的な実施形態では、標的核酸は、循環又は無細胞のDNA、例えば、がんを有する固体に存在する循環腫瘍DNA(「ctDNA」)、又は妊婦の血漿又は血清に存在する循環胎児若しくは循環母親DNA(「cfDNA」)断片を含み得る。標的核酸は、例えば、単純若しくは複雑な混合物、又は実質的に精製された形態を含む、様々な異なる形態をとることができる。例えば、標的核酸は、他の成分を含有する試料の一部であってよく、又は試料の唯一の成分若しくは主要な成分であってよい。また、標的核酸は、既知の配列又は未知の配列のいずれかを有することもできる。
【0030】
[0052]「増幅反応」という用語は、核酸の標的配列のコピーを増幅するための任意のin vitro手段を指す。
[0053]「増幅」及び「増幅すること」などの用語は、一般に、分子のコピー数又は関連分子のセットのコピー数の増加をもたらす任意のプロセスを指す。増幅反応の成分は、例えば、プライマー、ポリヌクレオチドテンプレート、核酸ポリメラーゼ、ヌクレオチド、dNTPなどを含み得るが、これらに限定されない。「増幅すること」という用語は、典型的には、標的核酸の「指数関数的」増加を指す。しかしながら、本明細書で使用される「増幅すること」は、核酸の選択標的配列の数の線形増加を指すこともできる。増幅は、典型的には少量の標的核酸(例えば、標的核酸の単一コピー)から開始し、増幅された材料は、典型的には検出可能である。標的核酸の増幅は、様々な化学的及び酵素的プロセスを包含する。標的核酸の1つ又は少数のコピーからの複数のDNAコピーの生成は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、ホットスタートPCR、鎖置換増幅(SDA)反応、転写媒介増幅(TMA)反応、核酸配列ベース増幅(NASBA)反応、又はリガーゼ連鎖反応(LCR)によって行われ得る。増幅は、開始標的核酸の厳密な複製に限定されない。例えば、RT-PCRを使用して、試料中の限定された量のウイルスRNAから複数のcDNA分子を生成することは、増幅の一形態である。さらに、転写のプロセス中の単一DNA分子からの複数のRNA分子の生成も、増幅の一形態である。増幅は、任意選択で、追加のステップが続けて行われてよく、例えば、以下に限定されないが、標識、配列決定、精製、単離、ハイブリダイゼーション、サイズ分解、発現、検出、及び/又はクローニングが行われてよい。
【0031】
[0054]本明細書で使用される「標的微生物」という用語は、血液、血漿、他の体液、生体試料などの試料、及び/又は組織、例えば、感染状態又は疾患に関連するものに見られる、任意の単細胞又は多細胞の微生物を意味することが意図される。その例は、細菌、古細菌、真核生物、ウイルス、酵母、真菌、原生動物、アメーバ、及び/又は寄生虫を含む。微生物によって引き起こされる疾患のさらなる例は、以下の表1に見ることができる。したがって、「微生物」という用語は、一般に、疾患が言及されるか疾患を引き起こす微生物が言及されるかにかかわらず、疾患を引き起こし得る微生物を指す。
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
[0055]本明細書で使用される場合、「バイオマーカー」又は「目的のバイオマーカー」という用語は、正常若しくは異常なプロセスの徴候又は状態若しくは疾患(例えば、がん)の徴候である血液、血漿、他の体液、及び/又は組織中に見出される生体分子を指す。バイオマーカーは、疾患又は状態の処置に身体がどれくらいよく反応するかを確認するために使用され得る。がんの文脈では、バイオマーカーは、体内のがんの存在を示す生物学的物質を指す。バイオマーカーは、腫瘍によって分泌される分子、又はがんの存在に対する身体の特異的反応であり得る。遺伝的、エピジェネティック、プロテオミック、グライコミック、及びイメージングバイオマーカーは、がん診断、予後診断、及び疫学のために使用することができる。そのようなバイオマーカーは、血液又は血清のような非侵襲的に収集された生物流体中でアッセイされ得る。いくつかの遺伝子及びタンパク質に基づくバイオマーカーが患者管理において既に使用されており、そのようなバイオマーカーは、以下に限定されないが、AFP(肝臓がん)、BCR-ABL(慢性骨髄性白血病)、BRCA1/BRCA2(乳がん/卵巣がん)、BRAFV600E(メラノーマ/結腸直腸がん)、CA-125(卵巣がん)、CA19.9(膵臓がん)、CEA(結腸直腸がん)、EGFR(非小細胞肺がん)、HER-2(乳がん)、KIT(消化管間質腫瘍)、PSA(前立腺特異抗原)、S100(メラノーマ)、及びその他多数を含む。バイオマーカーは、(早期のがんを同定するための)診断法として、並びに/又は(がんがどの程度侵襲性であるかを予見する、並びに/又は対象がどのように特定の治療に応答するか、及び/若しくはがんがどの程度再発するかを予測するための)予後診断法として有用であり得る。目的のバイオマーカーは、以下に限定されないが、そのような腫瘍バイオマーカーとして、AKAP4、ALK、APC、AR、BRAF、BRCA1、BRCA2、CCND1、CCND2、CCND3、CD274、CDK4、CDK6、CFB、CFH、CFI、DKK1、DPYD、EDNRB、EGFR、ERBB2、EPSTI1、ESR1、FCRL5、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FLT3、FN14、HER2、HER4、HERC5、IDH1、IDH2、IDO1、KIF5B、KIT、KRAS、LGR5、LIV1、LY6E、LYPD3、MACC1、MET、MRD、MSI、MSLN、MUC16、MYC、NaPi3b、NRAS、PDGFRA、PDCD1LG2、RAF1、RNF43、NTRK1、NTSR1、OX40、PIK3CA、RET、ROS1,Septin 9,TERT,TFRC,TROP2,TP53、TWEAK、及びUGT1A1を含む。
【0047】
[0056]目的のさらなる例示的なバイオマーカーは、Her2、bRaf、ERBB2増幅、Pl3KCA突然変異、FGFR2増幅、p53突然変異、BRCA突然変異、CCND1増幅、MAP2K4突然変異、ATR突然変異、若しくは発現が特定のがんに相関する他の任意のバイオマーカー;AFP、ALK、BCR-ABL、BRCA1/BRCA2、BRAF、V600E、Ca-125、CA19.9、EGFR、Her-2、KIT、PSA、S100、KRAS、ER/Pr、UGT1A1、CD30,CD20、F1P1L1-PDGRFα、PDGFR、TMPT、及びTMPRSS2のうちの少なくとも1つ;又は、ABCB5、AFP-L3、アルファ-フェトプロテイン、アルファ-メチルアシル-CoAラセマーゼ、BRCA1、BRCA2、CA15-3、CA242、CA27-29、CA-125、CA15-3、CA19-9、カルシトニン、がん胎児性抗原、がん胎児性抗原ペプチド-1、デス-ガンマカルボキシプロトロンビン、デスミン、早期前立腺がん抗原-2、エストロゲン受容体、フィブリン分解産物、グルコース-6-リン酸イソメラーゼ、vE6、E7、L1、L2若しくはp16INK4aヒト絨毛性ゴナドトロピンなどのHPV抗原、IL-6、ケラチン19、乳酸デヒドロゲナーゼ、ロイシルアミノペプチダーゼ、リポトロピン、メタネフリン、ネプリライシン、NMP22、ノルメタネフリン、PCA3、前立腺特異抗原、前立腺酸性ホスファターゼ、シナプトフィジン、サイログロブリン、TNF、転写因子として、ERG、ETV1(ER81)、FLI1、ETS1、ETS2、ELK1、ETV6(TEL1)、ETV7(TEL2)、GABPα、ELF1、ETV4(E1AF;PEA3)、ETV5(ERM)、ERF、PEA3/E1AF、PU.1、ESE1/ESX、SAP1(ELK4)、ETV3(METS)、EWS/FLI1、ESE1、ESE2(ELF5)、ESE3、PDEF、NET(ELK3;SAP2)、NERF(ELF2)、若しくはFEV.XXXから選択される転写因子、腫瘍関連糖タンパク質72、c-kit、SCF、pAKT、pc-kit、及びビメンチンから選択される少なくとも1つのバイオマーカーを含み得る。代わりに又は加えて、目的のバイオマーカーは、以下に限定されないが、CTLA-4、PDL1、PDL2、PD1、B7-H3、B7-H4、BTLA、HVEM、KIR、TIM3、GAL9、GITR、LAG3、VISTA、KIR、2B4、TRPO2、CD160、CGEN-15049、CHK1、CHK2、A2aR、TL1A、及びB-7ファミリーリガンド、若しくはこれらの組み合わせなどの免疫チェックポイント阻害剤であってよく、又は、CTLA-4、PDL1、PDL2、PD1、B7-H3、B7-H4、BTLA、HVEM、TIM3、GAL9、LAG3、VISTA、KIR、2B4、CD160、CGEN-15049、CHK1、CHK2、A2aR、B-7ファミリーリガンド、若しくはこれらの組み合わせからなる群から選択されるチェックポイントタンパク質のリガンドである。さらなる例示的なバイオマーカーは、以下に限定されないが、急性リンパ性白血病(etv6、am11、シクロフィリンb)、B細胞リンパ腫(Igイディオタイプ)、神経膠腫(E-カドヘリン、α-カテニン、β-カテニン、γ-カテニン、p120ctn)、膀胱がん(p21ras)、胆道がん(p21ras)、乳がん(MUCファミリー、HER2/neu、c-erbB-2)、子宮頸がん(p53、p21ras)、結腸がん(p21ras、HER2/neu、c-erbB-2、MUCファミリー)、結腸直腸がん(結腸直腸関連抗原(CRC)-C017-1A/GA733、APC)、絨毛がん(CEA)、上皮細胞がん(シクロフィリンb)、胃がん(HER2/neu、c-erbB-2、ga733糖タンパク質)、肝細胞がん(α-フェトプロテイン)、ホジキンリンパ腫(Imp-1、EBNA-1)、肺がん(CEA、MAGE-3、NY-ESO-1)、リンパ系細胞由来白血病(シクロフィリンb)、メラノーマ(p5タンパク質、gp75、腫瘍胎児抗原、GM2及びGD2ガングリオシド、Melan-A/MART-1、cdc27、MAGE-3、p21ras、gp100Pmel117)、骨髄腫(MUCファミリー、p21ras)、非小細胞肺がん(HER2/neu、c-erbB-2)、上咽頭がん(Imp-1、EBNA-1)、卵巣がん(MUCファミリー、HER2/neu、c-erbB-2)、前立腺がん(前立腺特異抗原(PSA)及びその抗原エピトープPSA-1、PSA-2、及びPSA-3、PSMA、HER2/neu、c-erbB-2、ga733糖タンパク質)、腎臓がん(HER2/neu、c-erbB-2)、子宮頸部及び食道の扁平上皮がん(ヒトパピローマウイルスタンパク質などのウイルス産物)、精巣がん(NY-ESO-1)、及び/又はT細胞白血病(HTLV-1エピトープ)に関連する任意の1つ又は複数のバイオマーカーを含み得る。
【0048】
[0057]本明細書で使用される「試料」という用語は、核酸及び/又は標的核酸を含む検体又は培養物(例えば、微生物培養物)を含む。「試料」という用語はまた、生体試料と環境試料の両方を含むことを意味する。試料は、合成起源の検体を含み得る。試料は、1つ又は複数の微生物が由来し得る任意のソースからの1つ又は複数の微生物を含み得る。「生体試料」は、以下に限定されないが、全血、血清、血漿、臍帯血、絨毛膜絨毛、羊水、脳脊髄液、脊髄液、洗浄液(例えば、気管支肺胞上皮、胃、腹膜、乳管、耳、関節鏡)、生検試料、尿、糞便、痰、唾液、鼻粘膜、前立腺液、精液、リンパ液、胆汁、涙、汗、母乳、乳房流体、胚細胞、及び胎児細胞を含み得る。生体試料は、血液であってもよく、血漿であってもよい。本明細書で使用される場合、「血液」という用語は、全血、又は従来定義されているような血清や血漿などの血液の任意の画分を包含する。血漿は、抗凝固剤で処理された血液の遠心分離から生じる全血の画分を指す。血清は、血液試料が凝固した後に残る流体の水性部分を指す。環境試料は、表面物質、土壌、水、及び工業試料などの環境境材料、並びに食品及び乳製品加工機器、装置、機器、器具、使い捨て及び非使い捨て要素から得られる試料を含む。
【0049】
[0058]「代表的」試料は、試料の様々な分集団、例えば、腫瘍内に含まれるがん細胞を含む試料を含み得る。或いは、「代表的」試料は、正常試料及び/若しくは対照試料内、例えば、正常細胞又は対照細胞内の異なる分集団を含んでもよく、又は試験及び正常/対照試料、例えば、それぞれ腫瘍細胞及び正常細胞の混合試料を含んでもよい。さらに有利には、これらの代表的試料は、従来の診断アッセイにおける検体を使用する能力を損なうことなく、複数のアッセイ方法で使用され得る。例示的な実施形態では、代表的試料は、本明細書に記載の装置及び方法を使用して、試料、例えば、腫瘍細胞を含む試料を分析することによって作製され得る。いくつかの実施形態では、代表的試料は、本明細書に記載の装置及び方法によって分析され得る。さらに、本明細書に記載の装置及び方法を使用して試料を分析することによって作製される代表的試料は、例えば腫瘍又はリンパ節などの試料内のより小さい分集団の存在を検出するために、同時にいくつかの異なるアッセイ形式で使用され得る。
【0050】
[0059]本明細書で使用される「標的分析物」という用語は、その存在が検出され、測定され、分離され、濃縮され、及び/又はさらなるアッセイ及び分析の対象とされる任意の分析物を意味することが意図される。例示的な実施形態では、上記分析物は、以下に限定されないが、その検出、測定、分離、濃縮、及び/又はさらなるアッセイにおける使用が望まれる任意のイオン、分子、核酸、バイオマーカー、及び細胞又は細胞の集団、例えば所望の細胞などであり得る。例示的な実施形態では、標的分析物は、本明細書に記載の試料のいずれかから得られてよい。
【0051】
[0060]「分析」という用語は、一般に、特徴付け、試験、測定、最適化、分離、合成、追加、ろ過、溶解、又は混合を含む、物理学、化学、生化学、生物学的分析に関わるプロセス又はステップを指す。
【0052】
[0061]「化学物質(chemical)」という用語は、物質、化合物、混合物、溶液、エマルジョン、分散物、分子、イオン、二量体、ポリマー若しくはタンパク質などの高分子、生体分子、沈澱物、結晶、化学部分若しくは基、粒子、ナノ粒子、試薬、反応生成物、溶媒、又は流体を指し、それらのいずれか1つが固体、液体、又は気体の状態で存在することがあり、それは典型的には分析の対象である。
【0053】
[0062]「タンパク質」という用語は、一般に、通常は特定の配列で一緒に連結されたアミノ酸のセットを指す。タンパク質は、天然に存在するか又は人為的につくられるかのいずれかであり得る。本明細書で使用される場合、「タンパク質」という用語は、以下のような部分又は基を含むように修飾されたアミノ酸配列を含み、すなわち、糖、ポリマー、有機金属基、蛍光又は発光基などの部分又は基、分子内又は分子間電子移動などのプロセスを増強する又はそれに関与する部分又は基、タンパク質が特定のコンフォメーション又は一連のコンフォメーションを有するように促進又は誘導する部分又は基、タンパク質が特定のコンフォメーション又は一連のコンフォメーションを有するように促進又は誘導する部分又は基、タンパク質が特定のコンフォメーション又は一連のコンフォメーションを有することを妨害又は抑制する部分又は基、或いはアミノ酸配列に組み込まれその配列の化学、生化学、又は生物学的特性を修正するように意図される他の部分又は基、を含むように修飾されたアミノ酸配列を含む。本明細書で使用される場合、タンパク質は、酵素、構造要素、抗体、ホルモン、電子伝達体、及び細胞プロセス又は活性などのプロセスに関与する他の巨大分子を含むが、これらに限定されない。タンパク質は、典型的には、一次構造、二次構造、三次構造、及び四次構造を含む4つまでの構造レベルを有する。
【0054】
[0063]本開示の目的のために、所与の構成要素、例えば層、領域、液体、又は基板が別の構成要素「上に」、「中に」又は「において」配置又は形成されていると本明細書で言及された場合、その所与の構成要素はその別の構成要素上に直接あり得るが、或いは介在構成要素(例えば、1つ又は複数のバッファー層、中間層、電極、又は接点)も存在してよいことは理解されるであろう。さらに、「上に配置された」及び「上に形成された」という用語は、所与の構成要素が別の構成要素に対してどのように配置され又は位置付けられるかを説明するために交換可能に使用されることが理解されるであろう。したがって、「上に配置された」及び「上に形成された」という用語は、材料輸送、配置、又は作製の特定の方法に関する何らかの限定を導入することは意図されていない。
【0055】
[0064]「通信する」という用語は、本明細書では、2つ以上の構成要素又は要素の間の、構造的、機能的、機械的、電気的、光学的、熱的、若しくは流体的な関係、又はそれらの任意の組み合わせを示すために使用される。したがって、1つの構成要素が第2の構成要素と通信するといわれることは、追加の構成要素が第1の構成要素と第2の構成要素との間に存在し得る、及び/又は第1及び第2の構成要素に動作可能に関連付けられ得る若しくは係合され得る可能性を除外することを意図していない。
【0056】
[0065]本明細書で使用される場合、「対象」は、治療される哺乳動物対象(ヒト、齧歯類、非ヒト霊長類、イヌ、ウシ、ヒツジ、ウマ、ネコなど)、及び/又は生体試料が得られる対象を指す。
【0057】
[0066]「腫瘍」という用語は、それ自体が正常細胞よりも速く成長し、治療されない場合には成長し続けて隣接構造物を損傷することがある、塊又は新生物を指す。腫瘍のサイズは大きく変動し得る。腫瘍は、固体である又は流体で満たされる場合がある。腫瘍は、良性(がん性ではない、一般的に無害)、前悪性(前がん性)、又は悪性(がん性)の増殖を指すことができる。がん性、前がん性、及びがん性の増殖の間の境界線は、常には明らかではない(場合によっては、特に腫瘍がスペクトルの中央にある場合に、どれがどれであるかを決定することは恣意的であり得る)が、各タイプの増殖の一般的な性質が存在する。良性腫瘍は、非悪性/非がん性腫瘍である。良性腫瘍は通常、局在化され身体の他の部分に広がらない(転移しない)。ほとんどの良性腫瘍は、治療によく応答する。しかしながら、未処置のままであれば、一部の良性腫瘍は大きく成長し、そのサイズのために重篤な疾患につながる可能性がある。このように、良性腫瘍は悪性腫瘍によく似る可能性があり、したがって治療されることがある。前悪性又は前がん性腫瘍は、まだ悪性ではないが、そのようになるように準備されている。悪性腫瘍は、がん性の増殖である。それらは治療に対して耐性があることが多く、身体の他の部分に広がり、除去後に再発することがある。「がん」は、悪性増殖(悪性腫瘍又は新生物)に対する別の呼び名である。
【0058】
[0067]様々な腫瘍の病原性は異なる。いくつかの特定のがんは、治療及び/又は治癒が比較的容易であり得るのに対し、他のがんは、より侵襲的である。腫瘍の病原性は、少なくとも部分的に示差的遺伝子発現によって決定され得る。がん性細胞(前悪性及び/又は悪性腫瘍を含む細胞)において、細胞に遺伝子を活性化又は沈黙させる機構が損傷される。結果として、他の組織及び/又は他の発生段階に対し特異的な遺伝子の異常な活性化がしばしば存在する。例えば、肺がんでは、サイレントであるべき精子の生産に特異的な遺伝子を発現する腫瘍細胞が、極端に病原性である(増殖能力の増大及び身体の免疫系から隠れる機能を示す高リスクのがん)。また、ほぼ全てのがんにおいて、生殖系列及び胎盤における数十個の特定の遺伝子が異常に活性化されることが示されている。例えば、Rousseaux et al., Ectopic Activation of Germline and Placental Genes Identifies Aggressive Metastasis-Prone Lung Cancers. Science Translational Medicine (2013) 5(186): 186を参照されたい。したがって、遺伝子の上方制御又は下方制御が特定のがんの病原型と関連し得るので、その発達の初期段階で腫瘍が適切に治療される場合であっても、どのがんが再発のリスクが高く致命的予後を診断段階で有するかを予測することが可能である。
装置及び方法
[0068]本開示では、一般に、エピタコ電気泳動をもたらすことを含む、試料分析のための装置及び方法を説明する。例示的な実施形態では、上記装置及び方法は、従来の等速電気泳動にしばしば使用されることがある毛細管又はマイクロ流体チャネル設計とは対照的に、エピタコ電気泳動をもたらすための同心又は多角形の円盤(例えば円形)設計の使用を含む。本開示の装置及び方法は、本明細書に記載されるように多くの有利な特性及び特徴を与える。例えば、従来の毛細管又はマイクロ流体技術は、一般にマイクロリットル規模のボリュームのみを扱うように装備されるのに対し、エピタコ電気泳動用の装置のアーキテクチャは、大きな試料ボリューム、例えば、15mL以上の試料及び/又は生体試料の分析を可能にする。さらに、本装置及び方法は、試料及び/又は生体試料からの全ゲノム及び/又は全核酸含有量の抽出を可能にするが、そのような抽出は、従来の毛細管又はマイクロ流体ベースの装置及び方法、特にITPベースの毛細管又はマイクロ流体装置及び方法を使用する場合に困難である。さらに、本明細書に記載の装置及び方法の使用によって達成される標的核酸の高度に効率的な抽出は、標的核酸の量、例えばDNA及び/又はRNAの量が上記ダウンストリームIVDアッセイにおいて達成され得る感度に直接相関する下流in vitro診断方法において有用である。場合によっては、核酸の抽出をもたらすために、核酸を表面に結合させるスピンカラム又は磁性ガラス粒子を使用することがある。これらの従来の手法と比較して、本明細書に記載の装置及び方法は、利点として、カラム又はビーズベースの抽出方法と比較してより高い抽出収率(潜在的に損失が減少する);MagNA Pure又は他のベンチトップ機器のより大きなフットプリントと比較してより単純な装置セットアップ;同様の使用に適用される他の装置と比較して潜在的により速い試料ターンアラウンド及び高い並列化可能性;抽出された核酸のダウンストリーム処理のための他のマイクロ流体ベースのシステムとの容易な統合のうちの任意の1つ又は複数を与えることができる。さらに、一般に、平坦なチャネルが本明細書に記載の装置及び方法において使用されてよく、上記チャネルアーキテクチャは、一般に、毛細管及び/又はマイクロ流体装置で一般的に使用され得る狭いチャネルと比較して好ましい熱伝達能力を有することができる。したがって、上記平坦なチャネルの使用は、試料及び/又は集束試料の過熱又は沸騰を防止することができる。さらに、本明細書に記載の装置及び方法は、穏やかな試料収集をしばしば可能にし、これは、全ゲノムの抽出、微生物の抽出、所望の標的細胞、例えば、幹細胞、循環腫瘍細胞などの腫瘍細胞、又は細胞機能性が保持されることが望ましい他の希少細胞、又は他の不安定な分析物の抽出を行うときに重要な特徴であり得る。一般に、従来の全ゲノム抽出は、ゲノムDNAを剪断し得るピペットの使用を特徴とすることがある。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の装置及び方法は、ピペッティングによる試料の損傷が懸念され得るいくつかの例示的な実施形態において潜在的に損傷があるピペッティングを必要とせずに試料を得ることを可能にする。さらなる実施形態では、本明細書に記載の装置及び方法は、全ゲノムのいずれの部分の剪断及び/又は損傷も上記装置及び方法を使用する結果として発生し得ない又は最小であり得る、全ゲノム抽出を可能にし得る。
【0059】
[0069]さらに、本開示は、一般に、試料分析のための装置及び方法に関する。本明細書に記載される試料分析のための装置及び方法は、一般に、上記装置又は方法を使用してエピタコ電気泳動をもたらすことに関連する。エピタコ電気泳動をもたらすための装置は、一般に、上記エピタコ電気泳動をもたらすのに十分な1つ又は複数の電極の配列を備える。例示的な実施形態では、上記装置は、多角形又は円形の形状を備える。試料のエピタコ電気泳動ベースの分析のためのそのような例示的な装置の使用中に、装置のエピタコ電気泳動ゾーンは、多角形又は円の縁部から多角形又は円の中心に向かって移動することができる。上記多角形は、三角形、四角形、五角形、六角形、七角形、八角形、九角形、十角形から選択されてよく、及び/又は上記多角形は、3、4、5、6、7、8、9、10~20、20~50、若しくは50~100個、又はより多数の辺を有してよい。さらに、例示的な実施形態では、エピタコ電気泳動をもたらすための装置は、所望の試料ボリュームの分析を容易にする任意の装置寸法、例えば、直径、例えば、深さを備えてよい。例示的な実施形態では、装置のサイズは、使用されるボリュームによってスケーリングされ得る。いくつかの実施形態では、装置は、約1mm以上から約20mm以上の範囲の直径を備えてよい。
【0060】
[0070]例示的な実施形態では、電流は、1つ又は複数の高電圧接続とシステムの中心における接地接続とを介して上記装置に印加され得る。さらなる例示的な実施形態では、本明細書に記載される試料分析のための装置は、ガラス、セラミック、及び/又はプラスチックを含むことができる。特にガラス及び/又はセラミックを使用する場合、これらの材料は、装置動作中に有益であり得る改善された熱伝達特性をもたらすことができる。例えば、円形又は同心のITP装置の平坦なチャネルは、狭いチャネルと比較して好ましい熱伝達能力を有するので、集束された材料の過熱(又は沸騰)を防止することができる。また、さらなる実施形態では、電流/電圧プログラミングが装置のジュール加熱を調整するのに適していることもある。
【0061】
[0071]例示的な実施形態では、試料分析のための装置は、1つ又は複数の電極の2次元配列を備えることができ、上記配列は、エピタコ電気泳動をもたらすのに十分である。さらなる例示的な実施形態では、上記1つ若しくは複数の電極は、1つ若しくは複数のリング状(円形)電極を含んでよく、及び/又は上記1つ若しくは複数の電極は、多角形形状に配置されてよい。上記多角形は、三角形、四角形、五角形、六角形、七角形、八角形、九角形、十角形から選択されてよく、及び/又は上記多角形は、3、4、5、6、7、8、9、10~20、20~50、若しくは50~100個、又はより多数の辺を有してよい。例示的な実施形態では、上記装置の上記1つ又は複数の電極は、上記配列が約1mmから約20mmの範囲の直径又は幅を有するように配置され得る。さらなる例示的な実施形態では、上記装置の1つ又は複数の電極の配列は、上記装置の中心における電極を含むことができる。いくつかの実施形態では、上記装置の上記1つ又は複数の電極は、白金めっき及び/若しくは金めっきステンレス鋼リング、1つ若しくは複数のステンレス鋼電極、並びに/又は1つ若しくは複数のグラファイト電極を含み得る。さらに、いくつかの実施形態では、上記1つ又は複数の電極はワイヤ電極を含み得る。例示的な実施形態では、1つ又は複数の電極の上記配列は、2つ以上の規則的に離間された電極の配列を含み得る。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の電極の上記配列は、2つ以上の電極の非線形の連続的配列を含み得る。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の電極の上記配列は、所望の形状、例えば、円形に形成された単一のワイヤ電極を含み得る。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の電極の上記配列は、ワイヤ電極のアレイを含み得る。例示的な実施形態では、試料分析のための装置は使い捨て装置であり得る。上記使い捨て装置は、ステンレス鋼電極及び/又はグラファイト電極を備えてよい。他の例示的な実施形態では、試料分析のための装置は、ベンチトップ機器として機能することができ、すなわち、装置は、ワークステーションを備えてよく、及び/又は再利用可能であってよい。
【0062】
[0072]また、さらなる例示的な実施形態では、本明細書に記載される試料分析のための装置は、1μl以下、1μl以上、10μl以上、100μl以上、1mL以上、4mL以上、5mL以上、10mL以上、又は15mL以上の試料ボリュームを収容する寸法を有し得る。例示的な実施形態では、上記ボリュームは約15mLであり得る。例示的な実施形態では、上記試料は、上記装置の上部の開口を通して上記装置に注入され得る。さらなる実施形態では、上記装置の使用は、装置の中心に集まった集束された試料をもたらすことができ、さらにいくつかの実施形態では、上記試料は、上記装置の中心から収集され得る。いくつかの実施形態では、試料は、集束された試料を含有し得る装置の中心におけるゲルを打ち抜くことによって収集され得る。いくつかの実施形態では、試料は、装置の中心に位置する管に収集され得る。いくつかの実施形態では、試料は、集束された試料が装置の中心に達した後にそれをピペッティングすることによって収集され得る。例示的な実施形態では、上記試料は標的分析物を含み得る。さらなる実施形態では、上記装置への電気の印加が、試料に含まれる標的分析物を集束ゾーンに集束させることができ、さらに、上記標的分析物は、エピタコ電気泳動の後に上記装置から収集され得る。さらなる例示的な実施形態では、本明細書に記載の任意の装置又は方法を使用する分析のための試料は、血液及び/又は血漿などの生体試料を含み得る。上記血液及び/又は血漿は、標的分析物、例えば標的核酸を含み得る。いくつかの実施形態では、上記血液及び/又は上記血漿のボリュームは、約4mLであり得る。上記血液及び/又は血漿は、被験体に由来し得る。例示的な実施形態では、本明細書に記載のエピタコ電気泳動の任意の装置又は方法を使用する分析のための試料は、上記装置から分離及び/又は集束及び/又は収集され得る1つ又は複数のバイオマーカーを含み得る。
【0063】
[0073]さらに、上記試料分析のための装置は、例示的な実施形態において、リーディング電解質及びトレーリング電解質をさらに含み得る。例示的な実施形態では、等速電気泳動のために使用される当業者に知られている全ての一般的な電解質は、リーディングイオンが目的の試料イオンよりも高い有効電気泳動移動度を有する場合、本装置と共に使用されてよい。これに対応して、反対のことが、選択されたターミナルイオンについて一般的に当てはまる可能性がある。例示的な実施形態では、上記装置は、カチオン分離/エピタコ電気泳動(ポジティブモード)又はアニオン分離/エピタコ電気泳動(ネガティブモード)のために使用され得る。さらなる例示的な実施形態では、エピタコ電気泳動を使用するアニオン分離のための一般的なリーディング電解質は、例えば、ヒスチジン、TRIS、クレアチニンなどの適切な塩基で所望のpHに緩衝された、例えば、塩化物、硫酸塩、又はギ酸塩を含み得る。さらに、アニオン分離用のエピタコ電気泳動のための上記リーディング電解質の濃度は、リーディングイオンに対して5mM~1Mの範囲であり得る。これに対応して、上記ターミナルイオンは、しばしば、MES、MOPS、HEPES、酢酸塩、グルタミン酸塩、並びに他の弱酸のアニオン及び低移動度アニオンを含み得る。ポジティブモードのエピタコ電気泳動のための上記ターミナル電解質の濃度は、ターミナルイオンに対して5mM~10Mの範囲である。いくつかの実施形態では、上記装置がポジティブモード(カチオン種の分離/濃縮)又はネガティブモード(アニオン種の分離/濃縮)のいずれかで動作され得るので、試料分析のための上記装置は、例えば、小さな無機イオン及び有機イオンから、ペプチド、タンパク質、多糖及びDNA、さらに細菌及びウイルスを含む粒子を含む大きな生体高分子までに及ぶ広い範囲の分析物について有用であり得る。
【0064】
[0074]いくつかの実施形態では、カチオン分離のために、エピタコ電気泳動の一般的なリーディングイオンは一般に、例えば、酢酸塩又はギ酸塩が最も一般的な緩衝対イオンである、カリウム、アンモニウム、又はナトリウムを含み得る。そして、反応ヒドロキソニウムイオン移動境界が、任意の弱酸によって形成されるユニバーサルなターミナル電解質の役割をする。
【0065】
[0075]いくつかの実施形態では、ポジティブとネガティブの両方のモードにおいて、リーディングイオンの濃度の増加は、所与の印加電圧に対する電流(電力)の増加を代償として試料ゾーンの比例的な増加をもたらし得る。典型的な濃度は、一般的に10~20mMの範囲内であるが、より高い濃度が使用されてもよい。
【0066】
[0076]さらなる例示的な実施形態では、試料分析のための装置は、ゲル、粘性添加剤によって安定化された、及び/又は他の様式でターミナル電解質から流体力学的に分離された、リーディング電解質を含むことができる。上記ゲル又は流体力学的分離は、装置動作中のリーディング電解質とターミナル電解質の混合を防止することができる。さらに、上記ゲルは、例えば、アガロース、ポリアクリルアミド、プルラミンなど、ゲルを形成する非荷電材料又は他の任意の材料を含み得る。特に、これは全てのタイプのヒドロゲルを含む。いくつかの実施形態ではゲルは、pHの変化、例えば、酸又は塩基安定性ゲルに対し耐性があり得る。さらなる実施形態では、上記装置は、直径が約10μmから約20mmの厚さ(高さ)の範囲であるリーディング電解質を含むことができる。いくつかの実施形態では、最大厚さは、一般的に、上記厚さの全体にわたって均一な電場をもたらすことができる厚さであり得る。電場が不均一であるような厚さであり得る実施形態では、電場は直線的に変化しないことがあるが、エピタコ電気泳動の基本原理は依然として適用され、標的分析物の分離、濃縮、集束、及び/又は収集は依然として所望に応じて行われ得る。いくつかの実施形態では、20mmを超える厚さが使用されてもよく、湾曲装置アーキテクチャが線形の挙動を得るために使用され得る。いくつかの実施形態では、リーディング及び/又はトレーリング電解質は、所望の緩衝能力を有する電解質を含み得る。例えば、リーディング電解質は、その緩衝能力により、エピタコ電気泳動を行う結果として生じ得るpHの変化を最小限及び/又は無効にして、エピタコ電気泳動ゾーンの全体にわたるpHがほぼ同じか又は同じであるようにする、電解質を含み得る。例えば、所望の緩衝能力を有するリーディング電解質としてHClヒスチジンが使用されてよい。さらに、いくつかの実施形態では、pH安定性ゲルが使用されてよい。
【0067】
[0077]いくつかの実施形態では、上記装置は、管によってコンセントレータに接続されたリーディング電解質リザーバにおける電極を備えることができる。上記管は、直接接続されてよく、又は一方の端部で半透膜によって閉鎖されてもよい。さらに、上記コンセントレータは、例えば、キャピラリー分析器、クロマトグラフィー、PCR装置、酵素反応器などの他の装置にオンラインで接続されてもよい。さらに、上記管は、上記リーディング電解質を含むゲルがない配置において、リーディング電解質の向流の流れを供給するために使用されてもよい。
【0068】
[0078]例示的な実施形態では、試料分析のための装置は、ゲル、又はリーディング電解質を安定化させるために使用され得る他の材料を含むことができる。さらなる実施形態では、試料分析のための装置は、ゲルを備えることができ、上記ゲルは、望ましくない試料汚染を回避するのを助けることができる。例えば、試料分析のための装置は、ctDNAを抽出するために使用されてよく、上記ゲルは、ゲノムDNAによるctDNAの汚染を回避するのを助けるために使用され得る。上記望ましくない汚染を回避するために、ゲルは、ctDNAが上記ゲルを通って移動することを可能にするが、ゲノムDNAは上記ゲルを通って移動できないような組成物とすることができる。そのような原理は、目的の試料/標的分析物の汚染を回避することが有益であり得る他の試料分析に適用され得る。さらなる実施形態では、メッシュポリマー及び/又は多孔質材料、例えば、濾紙又はヒドロゲルなどが、試料分析のための装置におけるゲルと同様に使用され得る。上記メッシュポリマー及び/又は多孔質材料の選択物は、所望の分離/濃縮をもたらすために、及び/又は望ましくない試料汚染を防止するために役立つものであり得る。例えば、タンパク質の通過/移動を可能にしないが標的核酸の通過/移動を可能にできる材料が選択され得る。さらなる例示的な実施形態では、試料分析のための装置は、ゲルを備えなくてよく、それにもかかわらず、標的分析物及び/又は所望の試料の集束及び/又は濃縮及び/又は収集を特徴とすることができる、試料分析のためのエピタコ電気泳動をもたらすことができる。
【0069】
[0079]例示的な実施形態では、試料分析のための装置は、少なくとも1つの電解質リザーバ、少なくとも2つの電解質リザーバ、又は少なくとも3つの電解質リザーバを含むことができる。いくつかの実施形態では、試料は、リーディング電解質と混合され、次いで上記装置内に装填され得る。いくつかの実施形態では、試料は、トレーリング電解質と混合され、次いで上記装置内に装填され得る。さらなる実施形態では、試料は、導電性溶液と混合され、次いで上記装置内に装填され得る。さらに、いくつかの実施形態では、エピタコ電気泳動のための適切なターミナルイオンを含有し得る試料が、上記装置内に装填され得る。そのような試料の使用により、ターミナル電解質ゾーンを除去し得る。
【0070】
[0080]さらなる例示的な実施形態では、上記装置は、例えば、約2倍以上から約1000倍以上に標的分析物を濃縮するために使用され得る。いくつかの実施形態では、上記標的分析物は標的核酸を含み得る。さらなる実施形態では、上記標的分析物は、小さな無機イオン及び有機イオン、ペプチド、タンパク質、多糖、DNA、又は細菌及び/若しくはウイルスなどの微生物を含み得る。
【0071】
[0081]また、さらなる例示的な実施形態では、本明細書に記載される試料分析のための装置は、定電流、定電圧、又は定電力を使用して動作され得る。円形アーキテクチャを使用する装置、例えば、1つ又は複数の円形電極を備える装置を、さらに定電流を使用して動作させるとき、半径rで開始してから距離dにおける速度vを計算するためのエピタコ電気泳動境界速度方程式は、v(d)=uLI/2π(r-d)hκL=Constant/(r-d)によって与えられる。円形アーキテクチャを使用する装置、例えば、1つ又は複数の円形電極を備える装置を、定電圧を使用して動作させるとき、半径rで開始してから距離dにおける速度vを計算するためのエピタコ電気泳動境界速度方程式は、vL=uLUκT/[(r-d)κT+κLdによって与えられる。円形アーキテクチャを使用する装置、例えば、1つ又は複数の円形電極を備える装置を、定電力を使用して動作させるとき、半径rで開始してから距離dにおける速度vを計算するためのエピタコ電気泳動境界速度方程式は、
【0072】
【0073】
によって与えられる。さらなる実施形態では、上記装置でエピタコ電気泳動をもたらすために使用され得る電圧又は電流又は電力は、個別の段階で変更されてよい。例えば、電流又は電圧又は電力は、装置内の電解質及び/若しくは荷電種の分離及びグループ化を可能にするために、及び/又は本明細書に記載の方法のいずれかを行っている間に第1の値で印加されてよく、上記分離及びグループ化が行われた後、電流又は電圧又は電力は、所与の試料の分析のために所望され得るように、エピタコ電気泳動の速度を増大又は低減するために第2の値で印加されてよい。非円形多角形アーキテクチャが使用される実施形態では、電場は、円形又は球状アーキテクチャの場合のように線形的には変化しないことがある。さらに、電極の非連続的配列が使用され得る実施形態では、電場は、電解質及び/又は試料の星形配置を形成するような様式で変化し得る。例えば、円形形状を形成する点ベースの電極のアレイが試料分析のための装置で使用される場合、結果として生じる電解質及び/又は試料のゾーンなどは、点電極ベースのアレイによって生成される電場の結果として、円形ではなく星形を形成し得る。
【0074】
[0082]さらなる例示的な実施形態では、試料分析のための装置は、試料、例えば、生体試料から核酸を抽出するために使用され得る。上記試料は、全血又は血漿を含み得る。上記試料は、全ゲノムなどの標的分析物が採取され得る細胞培養物を含み得る。上記核酸は、1つ又は複数の標的核酸、例えば、腫瘍DNA及び/又はctDNAを含み得る。例示的な実施形態では、試料分析のための装置は、腫瘍DNA及び/若しくは循環腫瘍DNA(ctDNA)、並びに/又は循環cfDNA、例えば妊婦からの血液又は血漿中に存在するもの、並びに/又は核酸配列決定及び/若しくは他のin vitro診断アプリケーションのようなさらなる下流の分析に任意選択で提供され得る特定の条件で過剰発現又は過少発現するタンパク質を発現する循環DNAを、集束及び収集するために使用され得る。そのような下流in vitroアプリケーションは、他の多数の潜在的な用途のうち、例として、がんの診断及び/又はがんの予後及び/又はがんの病期分類などの疾患検出、感染状態の検出、父子鑑定、異数性などの胎児染色体異常の検出、胎児遺伝形質の検出、妊娠関連状態の検出、自己免疫又は炎症状態の検出を含む。
【0075】
[0083]例示的な実施形態では、試料分析のための装置は、標的核酸を集束及び収集するために使用することができ、上記標的核酸は、任意の所望のサイズであってよい。例えば、上記標的核酸は、5nt以下、10nt以下、20nt以下、30nt以下、50nt以下、100nt以下、1000nt以下、10,000nt以下、100,000nt以下、1,000,000nt以下、又は1,000,000nt以上であってよい。いくつかの実施形態では、上記装置は、無細胞DNAから標的核酸を抽出するために使用され得る。さらに、例示的な実施形態では、上記装置は、試料から標的分析物を濃縮及び収集するために使用され得る。上記試料は生体試料を含み得る。さらなる実施形態では、上記標的分析物は、1つ又は複数の下流in vitro診断アプリケーションのために使用され得る。さらに、例示的な実施形態では、試料分析のための装置は、他の装置、例えば、キャピラリー分析器、クロマトグラフィー、PCR装置、酵素反応器など、並びに/又はさらなる試料分析を行うために使用され得る他の任意の装置、例えば、IVDアプリケーションに関連した装置に、オンラインで接続され得る。さらなる例示的な実施形態では、試料分析のための装置は、核酸配列決定ライブラリー調製を伴うワークフローにおいて使用され得る。また、さらなる実施形態では、試料分析のための装置は、上記装置から集束及び/又は収集されたものであり得る試料の下流分析を行うために任意選択で使用され得るリキッドハンドリングロボットと共に使用され得る。
【0076】
[0084]さらなる例示的な実施形態では、上記装置の使用は、カラム又はビーズベースの抽出方法と比較して高い抽出収率(潜在的に損失が減少する);MagNA Pure又は他のベンチトップ機器のより大きなフットプリントと比較して単純な装置セットアップ;同様の使用に適用される他の装置と比較して潜在的に速い試料ターンアラウンド及び高い並列化可能性;抽出された核酸のダウンストリーム処理のための他のマイクロ流体ベースのシステムとの容易な統合のうちの任意の1つ又は複数をもたらすことができる。
【0077】
[0085]さらに、本開示は、一般に、上記試料の分析のためのエピタコ電気泳動をもたらすことを含む方法に関連する。上記方法は、本明細書に記載の試料分析のための装置のいずれかを使用することによって実施され得る。例示的な実施形態では、上記方法は、a.本明細書に記載されるような装置エピタコ電気泳動をもたらすための装置を提供するステップと、b.上記装置上に試料を提供するステップであって、上記試料は1つ又は複数の標的分析物を含む、ステップと、c.上記装置上にリーディング電解質及びトレーリング電解質を提供するステップと、d.上記装置を使用してエピタコ電気泳動を行うステップと、e.上記1つ又は複数の標的分析物を収集するステップとをさらに含む。例示的な実施形態では、上記試料分析のための装置は、多角形又は円形の形状を備えてよい。さらなる例示的な実施形態では、装置のエピタコ電気泳動ゾーンは、エピタコ電気泳動中に、多角形又は円の縁部から多角形又は円の中心に向かって移動することができる。上記多角形は、三角形、四角形、五角形、六角形、七角形、八角形、九角形、十角形から選択されてよく、及び/又は上記多角形は、3、4、5、6、7、8、9、10~20、20~50、若しくは50~100個、又はより多数の辺を有してよい。さらに、例示的な実施形態では、上記装置は、所望の試料ボリュームの分析を容易にする任意の装置寸法、例えば、直径、深さを備えてよい。例示的な実施形態では、上記装置のサイズは、使用されるボリュームによってスケーリングされ得る。例示的な実施形態では、上記装置は、約1mm以上から約20mm以上の範囲の直径を備えてよい。
【0078】
[0086]例示的な実施形態では、上記試料分析の方法は、1つ又は複数の電極の2次元配列を使用することによってもたらされ得るエピタコ電気泳動の使用を含むことができる。いくつかの実施形態では、上記方法は、1つ若しくは複数のリング状(円形)電極を使用することによって、及び/又は多角形形状に配置された1つ若しくは複数の電極を使用することによってエピタコ電気泳動をもたらすステップを含むことができる。上記多角形は、三角形、四角形、五角形、六角形、七角形、八角形、九角形、十角形から選択されてよく、及び/又は上記多角形は、3、4、5、6、7、8、9、10~20、20~50、若しくは50~100個、又はより多数の辺を有してよい。例示的な実施形態では、電極の上記配列の直径又は幅は、約10mmから約20mmの範囲であり得る。さらに、試料分析の上記方法のいくつかの実施形態では、上記方法は、エピタコ電気泳動をもたらすための装置の中心における電極の使用をさらに含むことができる。上記方法の例示的な実施形態では、エピタコ電気泳動をもたらすために使用され得る1つ又は複数の電極は、1つ若しくは複数の白金めっき及び/若しくは金めっきステンレス鋼リング、1つ若しくは複数のステンレス鋼電極、並びに/又は1つ若しくは複数のグラファイト電極を含み得る。上記方法のいくつかの実施形態では、1つ又は複数のワイヤ電極が、エピタコ電気泳動をもたらすために使用され得る。上記方法のいくつかの実施形態では、2つ以上の規則的に離間された電極の配列が、エピタコ電気泳動をもたらすために使用され得る。さらなる実施形態では、電流は、本明細書に記載される試料分析の方法において、1つ又は複数の高電圧接続とシステムの中心における接地接続とを介して上記装置に印加され得る。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の電極の上記配列は、2つ以上の非線形の連続的配列を含み得る。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の電極の上記配列は、所望の形状、例えば、円形に形成された単一のワイヤ電極を含み得る。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の電極の上記配列は、ワイヤ電極のアレイを含み得る。上記方法のいくつかの実施形態では、試料分析の上記方法を実施するための装置は、使い捨て装置であり得る。上記使い捨て装置は、ステンレス鋼電極及び/又はグラファイト電極を備えてよい。上記方法の他の例示的な実施形態では、本明細書に記載の方法による試料分析のための装置は、ベンチトップ機器として機能することができ、すなわち、装置は、ワークステーションを備えてよく、及び/又は再利用可能であってよい。
【0079】
[0087]また、さらなる例示的な実施形態では、上記方法は、1μl以下、1μl以上、10μl以上、100μl以上、1mL以上、4mL以上、5mL以上、10mL以上、又は15mL以上の試料ボリュームを使用し得る。いくつかの実施形態では、上記ボリュームは約15mLであり得る。例示的な実施形態では、本明細書に記載の方法を実施するときに、試料は上部の開口を通して装置に注入され得る。上記方法のさらなる例示的な実施形態では試料は集束されることができ、上記試料は、装置の中心に集まることができる。上記方法のいくつかの実施形態では試料は、集束された試料を含有し得る試料分析のための装置の中心におけるゲルを打ち抜くことによって収集され得る。上記方法のいくつかの実施形態では、試料は、試料分析のための装置の中心に位置する管に収集され得る。上記方法のいくつかの実施形態では、試料は、集束された試料が試料分析のための装置の中心に達した後にそれをピペッティングすることによって収集され得る。例示的な実施形態では、集束された試料は標的分析物を含み得る。上記方法のさらなる例示的な実施形態では、試料は、エピタコ電気泳動の後に装置の中心から収集され得る。さらなる実施形態では、上記方法を行うための電気の印加により、試料に含まれる標的分析物を集束ゾーンに集束させる。そして、上記標的分析物は、エピタコ電気泳動の後に収集され得る。本明細書に記載の方法のさらなる例示的な実施形態では、本明細書に記載のエピタコ電気泳動の任意の装置又は方法を使用する分析のための試料は、血液及び/又は血漿などの生体試料を含み得る。上記血液及び/又は血漿は、標的分析物、例えば標的核酸を含み得る。いくつかの実施形態では、上記血液及び/又は上記血漿のボリュームは、約4mLであり得る。上記血液及び/又は血漿は、被験体に由来し得る。例示的な実施形態では、本明細書に記載のエピタコ電気泳動の任意の方法を使用する分析のための試料は、分離及び/又は集束及び/又は収集され得る1つ又は複数のバイオマーカーを含み得る。
【0080】
[0088]さらなる実施形態では、上記方法は、リーディング電解質及びトレーリング電解質の使用をさらに含み得る。さらに、いくつかの実施形態では、上記エピタコ電気泳動は、カチオン分離/エピタコ電気泳動(ポジティブモード)又はアニオン分離/エピタコ電気泳動(ネガティブモード)のために使用され得る。さらなる例示的な実施形態では、エピタコ電気泳動を使用するアニオン分離のための一般的なリーディング電解質は、例えば、ヒスチジン、TRIS、クレアチニンなどの適切な塩基で所望のpHに緩衝された、塩化物、硫酸塩、又はギ酸塩を含み得る。さらに、アニオン分離用のエピタコ電気泳動のための上記リーディング電解質の濃度は、リーディングイオンに対して5mM~1Mの範囲であり得る。これに対応して、上記ターミナルイオンは、しばしば、MES、MOPS、HEPES、酢酸塩、グルタミン酸塩、並びに他の弱酸のアニオン及び低移動度アニオンを含み得る。ポジティブモードのエピタコ電気泳動のための上記ターミナル電解質の濃度は、ターミナルイオンに対して5mM~10Mの範囲である。いくつかの実施形態では、装置がポジティブモード(分離/カチオン種の分離/濃縮)又はネガティブモード(アニオン種の分離/濃縮)のいずれかで動作され得るので、試料分析のための上記方法は、例えば、小さな無機イオン及び有機イオンから、ペプチド、タンパク質、多糖及びDNA、さらに細菌及びウイルスを含む粒子を含む大きな生体高分子までに及ぶ広い範囲の分析物について有用であり得る。
【0081】
[0089]いくつかの実施形態では、カチオン分離のために、エピタコ電気泳動の一般的なリーディングイオンは一般に、例えば、酢酸塩又はギ酸塩が最も一般的な緩衝対イオンである、カリウム、アンモニウム、又はナトリウムを含み得る。そして、反応ヒドロキソニウムイオン移動境界が、任意の弱酸によって形成されるユニバーサルなターミナル電解質の役割をする。
【0082】
[0090]いくつかの実施形態では、ポジティブとネガティブの両方のモードにおいて、リーディングイオンの濃度の増加は、所与の印加電圧に対する電流(電力)の増加を代償として試料ゾーンの比例的な増加をもたらし得る。典型的な濃度は、一般的に10~20mMの範囲内であり得るが、より高い濃度が使用されてもよい。
【0083】
[0091]いくつかの実施形態では、上記方法は、ゲル、粘性添加剤によって安定化された、及び/又は他の様式でターミナル電解質から流体力学的に分離された、リーディング電解質の使用を含むことができる。上記ゲル又は流体力学的分離は、装置動作中のリーディング電解質とターミナル電解質の混合を防止することができる。さらに、上記ゲルは、例えば、アガロース、ポリアクリルアミド、プルラミンなどの非荷電材料を含み得る。いくつかの実施形態では、上記方法は、直径が約10μmから約20mmの厚さ(高さ)の範囲であるリーディング電解質の使用を含むことができる。いくつかの実施形態では、最大厚さは、一般的に、上記厚さの全体にわたって均一な電場をもたらすことができる厚さであり得る。電場が不均一であるような厚さであり得る実施形態では、電場は直線的に変化しないことがあるが、エピタコ電気泳動の基本原理は依然として適用され、標的分析物の分離、濃縮、集束、及び/又は収集は依然として所望に応じて行われ得る。いくつかの実施形態では、20mmを超える厚さが使用されてもよく、湾曲又は球状装置アーキテクチャが線形の挙動を得るために使用され得る。
【0084】
[0092]本明細書に記載の試料分析のための方法の例示的な実施形態では、試料分析のための方法は、エピタコ電気泳動と関連したゲルの使用を含むことができ、ゲルは、上記方法に従って、試料分析のための装置においてリーディング電解質を安定化するために使用され得る。上記方法のさらなる実施形態では、方法はゲルの使用を含んでよく、上記ゲルは、望ましくない試料汚染を回避するのを助けることができる。例えば、試料分析のための方法は、ctDNAを抽出するために使用されてよく、上記ゲルは、ゲノムDNAによるctDNAの汚染を回避するのを助けるために使用され得る。上記望ましくない汚染を回避するために、ゲルは、ctDNAが上記ゲルを通って移動することを可能にするが、ゲノムDNAは上記ゲルを通って移動できないような組成物とすることができる。そのような原理は、目的の試料/標的分析物の汚染を回避することが有益であり得る他の試料分析に適用され得る。さらなる実施形態では、メッシュポリマー及び/又は多孔質材料、例えば、濾紙又はヒドロゲルなどが、試料分析のための方法においてゲルと同様に使用され得る。上記メッシュポリマー及び/又は多孔質材料の選択物は、所望の分離/濃縮をもたらすために、及び/又は望ましくない試料汚染を防止するために役立つものであり得る。例えば、タンパク質の通過/移動を可能にしないが標的核酸の通過/移動を可能にできる材料が選択され得る。さらなる例示的な実施形態では、試料分析のための方法は、ゲルを備えなくてよく、それにもかかわらず、標的分析物及び/又は所望の試料の集束及び/又は濃縮及び/又は収集を特徴とすることができる、試料分析のためのエピタコ電気泳動をもたらすことができる。
【0085】
[0093]試料分析の方法のさらなる実施形態では、上記エピタコ電気泳動を行った後、キャピラリー分析器、クロマトグラフィー、PCR装置、酵素反応器などが、上記方法から得られた濃縮された試料をさらに評価するために使用され得る。上記方法のいくつかの実施形態では、まず、リーディング電解質が、円形又は同心の等速電気泳動をもたらすための装置内に装填されてよく、続いて、ターミナル電解質と混合された試料が装填されてよい。上記方法のさらなる実施形態では、試料がリーディング電解質と混合され、エピタコ電気泳動をもたらすための装置内に装填されてよく、続いて、ターミナル電解質が装填されてよい。上記方法のさらなる実施形態では、試料は、導電性溶液と混合され、次いで、エピタコ電気泳動をもたらすための装置内に装填され得る。上記方法のいくつかの実施形態では、エピタコ電気泳動のための適切なターミナルイオンを含有し得る試料が、エピタコ電気泳動をもたらすための装置内に装填されてよく、上記試料の使用により、ターミナル電解質ゾーンを除去し得る。
【0086】
[0094]例示的な実施形態では、上記方法は、約2倍以上から約1000倍以上に標的分析物を濃縮することができる。例示的な実施形態では、上記標的分析物は標的核酸を含み得る。さらなる例示的な実施形態では、上記標的分析物は、小さな無機イオン及び有機イオン、ペプチド、タンパク質、多糖、DNA、又は細菌及び/若しくはウイルスなどの微生物を含み得る。
【0087】
[0095]さらなる実施形態では、上記試料分析の方法は、定電流、定電圧、又は定電力を使用することによって実施され得る。定電流を使用し、さらに円形アーキテクチャを備える試料分析のための装置、例えば、1つ又は複数の円形電極を備える装置の使用を含む方法を用いるとき、半径rで開始してから距離dにおける速度vを計算するためのエピタコ電気泳動境界速度方程式は、v(d)=uLI/2π(r-d)hκL=Constant/(r-d)によって与えられる。定電圧を使用し、さらに円形アーキテクチャを備える試料分析のための装置、例えば、1つ又は複数の円形電極を備える装置の使用を含む方法を用いるとき、半径rで開始してから距離dにおける速度vを計算するためのエピタコ電気泳動境界速度方程式は、vL=uLUκT/[(r-d)κT+κLdによって与えられる。定電力を使用し、さらに円形アーキテクチャを備える試料分析のための装置、例えば、1つ又は複数の円形電極を備える装置の使用を含む方法を用いるとき、半径rで開始してから距離dにおける速度vを計算するためのエピタコ電気泳動境界速度方程式は、
【0088】
【0089】
によって与えられる。さらなる実施形態では、エピタコ電気泳動をもたらすために使用され得る電圧又は電流又は電力は、個別の段階で変更されてよい。例えば、電圧又は電流又は電力は、装置内の電解質及び/若しくは荷電種の分離及びグループ化を可能にするために、及び/又は本明細書に記載の方法のいずれかを行っている間に第1の値で印加されてよく、上記分離及びグループ化が行われた後、電圧又は電流又は電力は、所与の試料の分析のために所望され得るように、エピタコ電気泳動の速度を増大又は低減するために第2の値で印加されてよい。非円形多角形アーキテクチャが使用される実施形態では、電場は、円形アーキテクチャの場合のように線形的には変化しないことがある。さらに、電極の非連続的配列が使用され得る実施形態では、電場は、電解質及び/又は試料の星形配置を形成するような様式で変化し得る。例えば、円形形状を形成する点ベースの電極のアレイが試料分析のための方法で使用される場合、結果として生じる電解質及び/又は試料のゾーンなどは、点電極ベースのアレイによって生成される電場の結果として、円形ではなく星形を形成し得る。
【0090】
[0096]さらなる実施形態では、試料分析の方法は、試料、例えば、生体試料からの核酸の抽出を含むことができる。上記試料は、全血又は血漿を含み得る。上記試料は、全ゲノムなどの標的分析物が採取され得る細胞培養物を含み得る。上記核酸は、1つ又は複数の標的核酸、例えば、腫瘍DNA及び/又はctDNAを含み得る。例示的な実施形態では、試料分析のための方法は、腫瘍DNA及び/若しくは循環腫瘍DNA(ctDNA)、並びに/又は配列決定及び/若しくは他のin vitro診断アプリケーションのようなさらなる下流の分析に任意選択で提供され得る循環無細胞DNA、例えば無細胞胎児DNA(cfDNA)を、集束及び収集するステップを含むことができる。例示的な実施形態では、試料分析のための方法は、標的核酸を集束及び収集するステップを含むことができ、上記標的核酸は、任意の所望のサイズであってよい。例えば、上記標的核酸は、5nt以下、10nt以下、20nt以下、30nt以下、50nt以下、100nt以下、1000nt以下、10,000nt以下、100,000nt以下、1,000,000nt以下、又は1,000,000nt以上であってよい。さらなる実施形態では、上記方法は、無細胞DNAから標的核酸を抽出するために使用され得る。さらに、いくつかの実施形態では、上記方法は、試料から標的分析物を濃縮及び収集するために使用され得る。いくつかの実施形態では、上記試料は生体試料を含み得る。さらなる実施形態では、上記標的分析物は、1つ又は複数の下流in vitro診断アプリケーションのために使用され得る。さらに、例示的な実施形態では、試料分析のための方法は、本明細書に記載の方法による試料分析のための装置の使用を含むことができ、さらに、上記装置は、他の装置、例えば、キャピラリー分析器、クロマトグラフィー、PCR装置、酵素反応器など、並びに/又はさらなる試料分析を行うために使用され得る他の任意の装置、例えば、IVDアプリケーションに関連した装置に、オンラインで接続され得る。さらなる例示的な実施形態では、試料分析のための方法は、核酸配列決定ライブラリー調製を伴うワークフローにおいて使用され得る。また、さらなる実施形態では、試料分析のための方法は、上記方法に従って使用される試料分析のための装置から集束及び/又は収集されたものであり得る試料の下流分析を行うために任意選択で使用され得るリキッドハンドリングロボットと共に使用され得る。
【0091】
[0097]例示的な実施形態では、上記方法は、カラム又はビーズベースの抽出方法と比較して高い抽出収率(潜在的に損失が減少する);MagNA Pure又は他のベンチトップ機器のより大きなフットプリントと比較して単純な装置セットアップ;同様の使用に適用される他の装置と比較して潜在的に速い試料ターンアラウンド及び高い並列化可能性;抽出された核酸のダウンストリーム処理のための他のマイクロ流体ベースのシステムとの容易な統合のうちの任意の1つ又は複数をもたらすことができる。
【0092】
[0098]さらなる実施形態では、エピタコ電気泳動のための装置及び/又は方法は、所望の集束及び収集を可能にする任意の所望の量の時間で標的分析物を集束することができ収集することを可能にする。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるような集束及び収集を行うための時間は、約1分から約30分であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるような方法を行うための時間は、約15分であり得る。
装置及び方法の適用例
[0099]さらなる例示的な実施形態では、本明細書に開示の装置及び方法は、本開示による以下の適用例のために使用され、及び/又はそれらと共に使用され得る。
【0093】
[00100]例示的な実施形態では、本明細書に記載の装置及び方法は、代表的試料のIHC分析と関連して使用され得る。例えば、(例えば、外科的に除去されたリンパ節から調製される)リンパ節組織からの代表的試料のIHC分析は、原発腫瘍において陽性であったマーカー、転移細胞の他のマーカー、又は他の診断マーカーを使用して、増殖マーカーと組み合わせた上皮マーカー(例えば、Ki67を用いるサイトケラチン8/18二重IHC)の染色によって極めて小さい腫瘍微小転移を検出することができる。本明細書に記載の装置及び方法は、予め染色された細胞を分析するために使用されてよく、及び/又は選択的に細胞を染色するために使用されてよく、及び/又はいくつかの実施形態において、IHC分析技術と併せて所望のマーカー/染色の存在によって同定される所望の細胞を分離、集束、及び収集するために使用されてよい。さらに、原発腫瘍中に存在する変異を含む、がん関連突然変異を同定するために、次世代シーケンシングパネルを使用することなどによって、転移性腫瘍細胞が核酸において検出されることも可能である。本明細書に記載されているように、例示的な実施形態では、本明細書に開示の装置及び方法が、そのような核酸を分離、集束/濃縮、及び収集をするために使用され得る。さらに、原発及びリンパ節からの代表的サンプリングから精製されたDNA、並びに任意の離れた転移性細胞からの循環腫瘍DNAからのDNAが、例示的な実施形態において分離、集束/濃縮、及び/又は収集され得る。
【0094】
[00101]これらに基づいて、本明細書に記載される本発明の方法及び装置の例示的な実施形態によって得られる代表的試料は、腫瘍組織型、位置、サイズ、又はボリュームにかかわらず、異なるタイプの腫瘍すなわち異なる固形腫瘍の検出、診断、及び/又は病期分類の精度を促進し実質的に改善することができる。また、本方法及び装置は、いくつかの実施形態では、疾患の徴候が現れる前でも、存在し得るがん幹細胞などの希少細胞型を同定するために、想定される正常組織試料又は推定前がん組織(例えば、遺伝的リスク又は以前のがんのため、がんを発症するリスクが高い対象から得られる)から代表的試料を作製するために使用され得る。
【0095】
[00102]一態様では、本明細書に記載の装置及び方法は、腫瘍若しくはリンパ節内の細胞の不均一性を評価する、及び/又は対象における特定のがん性状態の予後を評価する、及び/又はがん性状態を有する対象の適切な治療プロトコールを決定するのに適した生体試料を作製するための方法及び装置を提供することができ、上記方法及び装置は、(i))組織の空間的に異なる領域を含むか又は腫瘍全体若しくはその実質的な部分を含む組織(腫瘍試料又はリンパ節など)を取得すること、(ii)分析のための試料を調製すること、並びに(iii)上記装置及び方法を使用して、上記試料を構成する細胞を分析すること、例えば、所望の細胞を分離、集束/濃縮、及び/又は収集することを含む。
【0096】
[00103]別の態様では、本明細書に記載の装置及び方法は、試料(腫瘍試料又はリンパ節など)内の細胞の不均一性を評価する、及び/又は対象における特定のがん状態の予後を評価するのに適した生体試料を作製するための方法及び装置を提供することができ、上記方法及び装置は、(i)固形腫瘍又はリンパ節から1つ又は複数のインタクトな生検試料を取得することであって、好ましくは、各生検試料が、少なくとも約100~200、200~1000、1000~5000、10、000~100、000、100、000~1、000,000、又はより多くの細胞を含む、取得すること、(ii)分析のための試料を調製すること、並びに(iii)上記装置及び方法を使用して、上記試料を構成する細胞を分析すること、例えば、所望の細胞を分離、集束/濃縮、及び/又は収集することを含む。
【0097】
[00104]別の態様では、本明細書に記載の装置及び方法は、対象が特定のがんの病原性形態を含むかどうか、及び/又はがんを有する対象がその特定のがんの病原性形態を含むかどうかを評価するのに適した生体試料を作製するための方法及び装置を提供することができ、上記方法及び装置は、(i)固形腫瘍又はリンパ節から1つ又は複数のインタクトな生検試料を取得することであって、好ましくは、各生検試料が、少なくとも約100~200、200~1000、1000~5000、10、000~100、000、100、000~1、000,000、又はより多くの細胞を含み、任意選択で、(例えば、ホルマリン、パラフィン、又はエタノール固定又は保存された試料のように)固定又は保存される、取得すること、(ii)分析のための試料を調製すること、並びに(iii)上記装置及び方法を使用して、上記試料を構成する細胞を分析し、例えば、所望の細胞を分離、集束/濃縮、及び/又は収集し、任意選択で、少なくとも1つのバイオマーカーの発現を単離又は検出することを含む。バイオマーカーの上方制御(発現の増加など)又は下方制御(発現の減少など)は、特定のがんの病原性形態と関連する。
【0098】
[00105]さらに別の態様では、本明細書に記載の装置及び方法は、不均一な腫瘍内のランドスケープを特徴付ける、及び/又は不均一な腫瘍内の遺伝的に異なるサブクローンを検出する、及び/又は腫瘍内の低い有病率(prevalence)の事象を同定する、及び/又は腫瘍内の標的の有病率を決定するための装置及び方法を提供することができ、上記装置及び方法は、(i)空間的に異なる領域を包含する腫瘍に1つ又は複数の試料を取得すること、(ii)分析のための試料を調製すること、並びに(iii)上記装置及び方法を使用して、上記試料を構成する細胞を分析し、例えば、標的分析物、例えば、所望の細胞を分離、集束/濃縮、及び/又は収集し、任意選択で、不均一な腫瘍のランドスケープを代表し腫瘍のランドスケープを特徴付けるのに適した試料を作製し、及び/又は不均一な腫瘍内の遺伝的に異なるサブクローンを検出し、及び/又は腫瘍内の低い有病率の事象を同定し、及び/又は腫瘍内の標的の有病率を決定することを含む。
【0099】
[00106]さらに別の態様では、本明細書に記載の装置及び方法は、患者の想定される正常組織又は推定前がん組織における前がん細胞又はがん性細胞、例えば、遺伝的変異又は以前のがんのためにがんを発症するリスクのあるものを検出するための装置及び方法を提供することができ、上記装置及び方法は、(i)患者の想定された正常組織又は推定前がん組織の空間的に異なる領域を包含する想定された正常組織又は推定前がん組織の1つ又は複数の試料を取得すること、(ii)分析のための試料を調製すること、並びに(iii)上記装置及び方法を使用して、上記試料を構成する細胞を分析し、例えば、所望の細胞を分離、集束/濃縮、及び/又は収集することであって、装置及び方法によって作製された所望の細胞の試料は、例えば患者に疾患の徴候が現れる前でも、希少ながん性細胞又はがん幹細胞を検出するのに適する、分析することを含む。
【0100】
[00107]別の態様では、本明細書に記載の装置及び方法は、異なるアッセイ形式で上記のいずれかによって作製される代表的資料及びその一部を使用する装置及び方法を提供することができ、これらのアッセイは、高スループットで行われ、同時に若しくは異なる時間で若しくは異なる位置で、及び/又は自動化(完全自動化若しくは半自動化)によって実行され得る。
【0101】
[00108]別の態様では、上記の装置及び方法のいずれかによって作製される代表的試料又はその一部は、将来の使用のために保存され、例えば凍結される。
[00109]別の態様では、本明細書に記載の装置及び方法は、代表的試料を作製するために使用されてよく、上記代表的試料又はその一部は、患者の特定のがん細胞又は細胞型に特異的な抗体又は抗原を誘導するために使用されてよく、上記抗体又は抗原は、潜在的には、個別化医療、すなわち、治療又は予防がんワクチンの生産に使用されてよい。
【0102】
[00110]例示的な実施形態では、本明細書に記載の装置及び方法のいずれかは、試料における少なくとも1つのバイオマーカー、例えば、少なくとも1つの脂質、タンパク質、又は核酸バイオマーカーの発現を検出するために使用され得る。また、さらなる実施形態では、上記装置及び方法は、試料における腫瘍細胞の割合、又は特定のバイオマーカー若しくはバイオマーカーの組み合わせを発現するその一部若しくは画分を検出することをさらに含むことができる。任意選択で、いくつかの実施形態では、試料又はその一部若しくは画分における腫瘍幹細胞及び/又は腫瘍サブクローンの相対頻度若しくは割合が、検出及び/又は単離され得る。また、さらなる実施形態では、本明細書に記載の装置及び方法は、遺伝子標的(点変異、欠失、付加、転座、遺伝子融合、又は遺伝子の増幅など)を検出するために使用されてもよい。
【0103】
[00111]いくつかの実施形態では、本明細書に記載の上述の装置及び方法のいずれかは、特定の免疫細胞(例えば、Bリンパ球、Tリンパ球、マクロファージ、NK細胞、単球、又はそれらの組み合わせ)を検出、単離、及び/又は定量化するために使用されてもよい。
【0104】
[00112]対象装置及び方法と共に使用される試料は、一般に、1つ又は複数の固形腫瘍に由来する。しかしながら、装置及び方法は、潜在的に、非固形腫瘍、例えば、血液がんに関して実施されてもよい。開示された装置及び方法で使用されるそのような腫瘍又は他の1つ又は複数の組織試料は、例えば、いくつかの実施形態では、乳房、結腸、肺、膵臓、胆嚢、皮膚、骨、筋肉、肝臓、腎臓、子宮頸部、卵巣、前立腺、食道、胃、又は他の臓器に由来し、例えば、乳がん腫瘍、肺がん腫瘍、肝臓腫瘍、前立腺がん腫瘍、結腸がん腫瘍、膀胱がん腫瘍、又は腎臓がん腫瘍であり得る。いくつかの実施形態では、腫瘍試料は、ヒト起源のものであり得る。
【0105】
[00113]さらに、いくつかの実施形態では、上記の装置及び方法のいずれかは、試料又はその一部若しくは画分からの核酸(DNA又はmRNAなど)を精製することをさらに含むことができる。精製された核酸は、ノーザンブロット、DNA配列決定、PCR、RT-PCR、マイクロアレイプロファイリング、ディファレンシャルディスプレイ、又はin situハイブリダイゼーションに供され得る。また、精製された核酸は、ナノ粒子(例えば、量子ドット、常磁性ナノ粒子、超常磁性ナノ粒子、及び金属ナノ粒子、好ましくは合金量子ドット、限定せずに例として、CdSe、ZnSSe、ZnSeTe、ZnSTe、CdSSe、CdSeTe、ScSTe、HgSSe、HgSeTe、HgSTe、ZnCdS、ZnCdSe、ZnCdTe、ZnHgS、ZnHgSe、ZnHgTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、ZnCdSSe、ZnHgSSe、ZnCdSeTe、ZnHgSeTe、CdHgSSe、CdHgSeTe、InGaAs、GaAlAs、及びInGaNを含む)にコンジュゲートされ得る。
【0106】
[00114]また、上記の装置及び方法のいずれも、さらに、試料又はその一部若しくは画分から脂質を精製するために使用され得ることが企図される。精製された脂質は、質量分析又は組織化学法に供せられ得る。
【0107】
[00115]さらに、いくつかの実施形態において、上記の装置及び方法のいずれも、試料又はその一部若しくは画分からタンパク質を精製することをさらに含むことができることも企図される。精製されたタンパク質は、ウェスタンブロット、ELISA、免疫沈降、クロマトグラフィー、質量分析、マイクロアレイプロファイリング、干渉法、電気泳動染色、又は免疫組織化学染色に供され得る。代わりに、又は上記に加えて、精製されたタンパク質は、腫瘍に特異的な抗血清を作製するために使用され得る。
【0108】
[00116]さらに、上記の装置及び方法のいずれも、試料又はその一部若しくは画分に対してゲノム、トランスクリプトーム、プロテオーム及び/又はメタボローム分析を行うことをさらに含むことができることが企図される。
【0109】
[00117]さらに、上記の装置及び方法のいずれも、試料又はその一部若しくは画分からの特定の細胞型をアフィニティー精製することをさらに含むことができることが企図される。特定の細胞型は、目的のバイオマーカーを含むことができる。目的の例示的なバイオマーカーは、Her2、bRaf、ERBB2増幅、Pl3KCA突然変異、FGFR2増幅、p53突然変異、BRCA突然変異、CCND1増幅、MAP2K4突然変異、ATR突然変異、若しくは発現が特定のがんに相関する他の任意のバイオマーカー;AFP、ALK、BCR-ABL、BRCA1/BRCA2、BRAF、V600E、Ca-125、CA19.9、EGFR、Her-2、KIT、PSA、S100、KRAS、ER/Pr、UGT1A1、CD30,CD20、F1P1L1-PDGRFα、PDGFR、TMPT、及びTMPRSS2のうちの少なくとも1つ;又は、ABCB5、AFP-L3、アルファ-フェトプロテイン、アルファ-メチルアシル-CoAラセマーゼ、BRCA1、BRCA2、CA15-3、CA242、CA27-29、CA-125、CA15-3、CA19-9、カルシトニン、がん胎児性抗原、がん胎児性抗原ペプチド-1、デス-ガンマカルボキシプロトロンビン、デスミン、早期前立腺がん抗原-2、エストロゲン受容体、フィブリン分解産物、グルコース-6-リン酸イソメラーゼ、vE6、E7、L1、L2若しくはp16INK4aヒト絨毛性ゴナドトロピンなどのHPV抗原、IL-6、ケラチン19、乳酸デヒドロゲナーゼ、ロイシルアミノペプチダーゼ、リポトロピン、メタネフリン、ネプリライシン、NMP22、ノルメタネフリン、PCA3、前立腺特異抗原、前立腺酸性ホスファターゼ、シナプトフィジン、サイログロブリン、TNF、ERG、ETV1(ER81)、FLI1、ETS1、ETS2、ELK1、ETV6(TEL1)、ETV7(TEL2)、GABPα、ELF1、ETV4(E1AF;PEA3)、ETV5(ERM)、ERF、PEA3/E1AF、PU.1、ESE1/ESX、SAP1(ELK4)、ETV3(METS)、EWS/FLI1、ESE1、ESE2(ELF5)、ESE3、PDEF、NET(ELK3;SAP2)、NERF(ELF2)、若しくはFEV.XXXから選択される転写因子、腫瘍関連糖タンパク質72、c-kit、SCF、pAKT、pc-kit、及びビメンチンから選択される少なくとも1つのバイオマーカーを含み得る。
【0110】
[00118]代わりに又は加えて、目的のバイオマーカーは、以下に限定されないが、CTLA-4、PDL1、PDL2、PD1、B7-H3、B7-H4、BTLA、HVEM、KIR、TIM3、GAL9、GITR、LAG3、VISTA、KIR、2B4、TRPO2、CD160、CGEN-15049、CHK1、CHK2、A2aR、TL1A、及びB-7ファミリーリガンド、若しくはこれらの組み合わせなどの免疫チェックポイント阻害剤であってよく、又は、CTLA-4、PDL1、PDL2、PD1、B7-H3、B7-H4、BTLA、HVEM、TIM3、GAL9、LAG3、VISTA、KIR、2B4、CD160、CGEN-15049、CHK1、CHK2、A2aR、B-7ファミリーリガンド、若しくはこれらの組み合わせからなる群から選択されるチェックポイントタンパク質のリガンドである。
【0111】
[00119]本明細書に記載される装置及び方法はさらに、以下に関連する少なくとも1つのバイオマーカーの検出のために使用され得る:急性リンパ性白血病(etv6、am11、シクロフィリンb)、B細胞リンパ腫(Igイディオタイプ)、神経膠腫(E-カドヘリン、α-カテニン、β-カテニン、γ-カテニン、p120ctn)、膀胱がん(p21ras)、胆道がん(p21ras)、乳がん(MUCファミリー、HER2/neu、c-erbB-2)、子宮頸がん(p53、p21ras)、結腸がん(p21ras、HER2/neu、c-erbB-2、MUCファミリー)、結腸直腸がん(結腸直腸関連抗原(CRC)-C017-1A/GA733、APC)、絨毛がん(CEA)、上皮細胞がん(シクロフィリンb)、胃がん(HER2/neu、c-erbB-2、ga733糖タンパク質)、肝細胞がん(α-フェトプロテイン)、ホジキンリンパ腫(Imp-1、EBNA-1)、肺がん(CEA、MAGE-3、NY-ESO-1)、リンパ系細胞由来白血病(シクロフィリンb)、メラノーマ(p5タンパク質、gp75、腫瘍胎児抗原、GM2及びGD2ガングリオシド、Melan-A/MART-1、cdc27、MAGE-3、p21ras、gp100Pmel117)、骨髄腫(MUCファミリー、p21ras)、非小細胞肺がん(HER2/neu、c-erbB-2)、上咽頭がん(Imp-1、EBNA-1)、卵巣がん(MUCファミリー、HER2/neu、c-erbB-2)、前立腺がん(前立腺特異抗原(PSA)及びその抗原エピトープPSA-1、PSA-2、及びPSA-3、PSMA、HER2/neu、c-erbB-2、ga733糖タンパク質)、腎臓がん(HER2/neu、c-erbB-2)、子宮頸部及び食道の扁平上皮がん(ヒトパピローマウイルスタンパク質などのウイルス産物)、精巣がん(NY-ESO-1)、及び/又はT細胞白血病(HTLV-1エピトープ)。
【0112】
[00120]いくつかの実施形態では、本明細書に記載の装置及び方法はまた、以下から選択される少なくとも1つの検出可能な標識の使用を含み得る:蛍光分子又は蛍光色素(例えば、Invitrogenによって販売され(例えば、The Handbook--A Guide to Fluorescent Probes and Labeling Technologies, Invitrogen Detection Technologies, Molecular Probes, Eugene, Oregを参照されたい)、又はNazarenkoらの米国特許第5,866,366号に開示されている)、例えば、4-アセトアミド-4’-イソチオシアナトスチルベン-2,2’ジスルホン酸、アクリジン及びアクリジンイソチオシアネートなどのアクリジン及び誘導体、5-(2’-アミノエチル)アミノナフタレン-1-スルホン酸(EDANS)、4-アミノ-N-[3-ビニルスルホニル)フェニル]ナフタリミド-3,5ジスルホネート(Lucifer Yellow VS)、N-(4-アニリノ-1-ナフチル)マレイミド、アントラニラミド、Brilliant Yellow、クマリン、7-アミノ-4-メチルクマリン(AMC、クマリン120)、7-アミノ-4-トリフルオロメチルクマリン(クマリン151)などのクマリン及び誘導体;シアノシン;4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI);5’,5’’-ジブロモピロガロール-スルホンフタレイン(Bromopyrogallol Red);7-ジエチルアミノ-3-(4’-イソチオシアナトフェニル)-4-メチルクマリン;ジエチレントリアミンペンタアセテート;4,4’-ジイソチオシアナトジヒドロ-スチルベン-2,2’-ジスルホン酸;4,4’-ジイソチオシアナトスチルベン-2,2’-ジスルホン酸;5-[ジメチルアミノ]ナフタレン-1-スルホニルクロリド(DNS、塩化ダンシル);4-(4’-ジメチルアミノフェニルアゾ)安息香酸(DABCYL);4-ジメチルアミノフェニルアゾフェニル-4’-イソチオシアネート(DABITC);エオシン及びエオシンイソチオシアネートなどのエオシン及び誘導体;エリスロシンB及びエリスロシンイソチオシアネートなどのエリスロシン及び誘導体;エチジウム;5-カルボキシフルオレセイン(FAM)、5-(4,6-ジクロロトリアジン-2-イル)アミノフルオレセイン(DTAF)、2’,7’-ジメトキシ-4’,5’-ジクロロ-6-カルボキシフルオレセイン(JOE)、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、及びQFITC(XRITC)などのフルオレセイン及び誘導体;2’,7’-ジフルオロフルオレセイン(OREGON GREEN(登録商標));フルオレスカミン;IR144;IR1446;マラカイトグリーンイソチオシアネート;4-メチルウンベリフェロン;オルトクレゾールフタレイン;ニトロチロシン;パラロサニリン;Phenol Red;B-フィコエリトリン;o-フタルジアルデヒド;ピレン、ピレンブチラート、及びスクシンイミジル1-ピレンブチラートなどのピレン及び誘導体;リアクティブレッド4(Cibacron(登録商標)、Brilliant Red 3B-A);6-カルボキシ-X-ローダミン(ROX)、6-カルボキシローダミン(R6G)、リサミンローダミンBスルホニルクロリド、ローダミン(Rhod)、ローダミンB、ローダミン123、ローダミンXイソチオシアネート、ローダミングリーン、スルホローダミンB、スルホローダミン101及びスルホローダミン101の塩化スルホニル誘導体(Texas Red)などのローダミン及び誘導体;N、N、N’、N’-テトラメチル-6-カルボキシローダミン(TAMRA);テトラメチルローダミン;テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC);リボフラビン;ロソール酸及びテルビウムキレート誘導体、約617 nmで発光するチオール反応性ユーロピウムキレート(Heyduk and Heyduk, Analyt. Biochem. 248:216-27, 1997; J. Biol. Chem. 274:3315-22, 1999)、並びにGFP、Lissamine(商標)、ジエチルアミノクマリン、フルオレセインクロロトリアジニル、ナフトフルオレセイン、(Leeらの米国特許第5,800,996号に記載されている)4,7-ジクロロローダミン及びキサンテン、及びその誘導体。当業者に知られる他のフルオロフォアが使用されてもよく、例えば、Invitrogen Detection Technologies, Molecular Probes (Eugene, Oreg.)から入手可能なもの、例えば、ALEXA FLUOR(商標)シリーズの色素(例えば、米国特許第5,696,157号、第6,130,101号及び第6、716,97号に記載)、BODIPYシリーズの色素(例えば、米国特許第4,774,339号、第5,187,288号、第5,248,782号、第5,274,113号、第5,338,854号、第5,451,663及び第5,433,896号に記載されたジピロメテンボロンジフルオリド)、Cascade Blue(米国特許第5,132,432号に記載されたスルホン化ピレンのアミン反応性誘導体)及びMarina Blue(米国特許第5,830,912号)、半導体ナノ結晶などの蛍光ナノ粒子、例えば、QUANTUM DOT(商標)(例えば、QuantumDot Corp, Invitrogen Nanocrystal Technologies, Eugene, Oreg.から入手される;米国特許第6,815,064号、第6,682,596号及び第6,649,138号も参照されたい)が使用されてもよい。米国特許第6602671号、Bruchez et. al. (1998) Science 281:2013-6、Chan et al. (1998) Science 281:2016-8、及び米国特許第6,602,671号、米国特許第6,927,069号;第6,914,256号;第6,855,202号;第6,709,929号;第6,689,338号;第6,500,622号;第6,306,736号;第6,225,198号;第6,207,392号;第6,114,038号;第6,048,616号;第5,990,479号;第5,690,807号;第5,571,018号;第5,505,928号;第5,262,357号及び米国特許出願公開第2003/0165951号並びに国際公開第99/26299号(1999年5月27日に公開)に記載された半導体ナノ結晶、放射性同位体(3Hなど)、Gd3+のような放射性又は常磁性金属イオンのDOTA及びDPTAキレート、及びリポソーム、酵素、例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、酸性ホスファターゼ、グルコースオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、β-グルクロニダーゼ又はβラクタマーゼ、例えばInvitrogen Corporation, Eugene Oreg.によって販売されるような検出可能シグナルを生成する発色性、蛍光性又は発光性化合物と組み合わされた酵素。発色性化合物の具体的な例は、特に、ジアミノベンジジン(DAB)、4-ニトロフェニルリン酸(pNPP)、ファストレッド、ブロモクロロインドリルホスフェート(BCIP)、ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)、BCIP/NBT、ファストレッド、APオレンジ、APブルー、テトラメチルベンジジン(TMB)、2,2’-アジノ-ジ-[3-エチルベンゾチアゾリンスルホネート](ABTS)、o-ジアニシジン、4-クロロナフトール(4-CN)、ニトロフェニル-β-D-ガラクトピラノシド(ONPG)、o-フェニレンジアミン(OPD)、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-ガラクトピラノシド(X-Gal)、メチルウンベリフェリル-β-D-ガラクトピラノシド(MU-Gal)、p-ニトロフェニル-α-D-ガラクトピラノシド(PNP)、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-グルクロニド(X-Gluc)、3-アミノ-9-エチルカルバゾール(AEC)、フクシン、ヨードニトロテトラゾリウム(INT)、テトラゾリウムブルー及びテトラゾリウムバイオレットを含む。
【0113】
[00121]本開示はまた、一般に、本明細書に記載の装置及び方法のいずれかによって作製された組成物を包含する。
[00122]さらに、いくつかの実施形態では、上記装置及び方法(希少遺伝的及び/又はエピジェネティックな事象、希少細胞などの検出など)の使用によって得られた結果、又は上記装置及び方法のいずれかによって作製される組成物が、対象を治療するための適切な治療レジメンの選択に使用され得る。治療レジメンは、化学療法、免疫調節剤投与、放射線、サイトカイン投与、外科手術、又はそれらの組み合わせのいずれかを含み得る。さらに、開示の装置及び方法は、上記装置及び/又は方法によって分析される代表的試料の供給源であった腫瘍を有する対象において使用するのに適した、少なくとも1つの治療剤(例えば、少なくとも1つの検出されたバイオマーカーの発現又は機能活性に拮抗する、又はそれを阻害若しくは遮断する、抗体、核酸、小分子又はポリペプチドなど)を選択するために使用され得る。
【0114】
[00123]さらに、上記装置及び/又は方法によって分析される試料、例えば、上記装置及び/又は方法を使用して得られる標的核酸は、将来の薬理学的及び診断的発見並びに個別化医療のために重要であり得る、全ゲノム配列決定などのさらなる診断試験における使用に好適であり得る。上記分析された試料は、希少な腫瘍サブクローンを同定し、ひいては臨床診断及び個別化がん治療を改善するために、様々な診断プロトコールのために使用され得る。また、得られた分析された試料は、治療的又は予防的腫瘍ワクチンの開発において有用な抗体又は抗原を誘導するために使用され得る。
【0115】
[00124]本明細書に記載の装置及び試料分析のための方法と併せて使用する検出手順は、細胞又は細胞区画の発色性染色又は蛍光染色を提供する細胞化学染色手順をさらに含んでもよい。そのような染色手順は当業者に公知であり、例えば、細胞学的標本における、細胞内領域(例えば、核、ミトコンドリア、ゴルジ体、細胞質など)の、(染色体、脂質、糖タンパク質、多糖などの)特定の分子の、好酸性又は好塩基性構造の染色を含むことができる。DAPI、キナクリン、クロママイシンなどの蛍光色素が利用されてもよい。さらに、アザン、アクリジン-オレンジ、ヘマトキシリン、エオシン、スーダン-レッド、チアジン染色(トルイジン-ブルー、チオニン)などの発色性色素が適用されてもよい。他の実施形態では、パップ染色、ギムザ染色、ヘマトキシリン-エオシン染色、ファン・ギーソン染色、シッフ染色(シッフ試薬を使用する)などの染色手順、金属(例えば、硝酸銀を利用する染色手順における銀など)の沈殿を利用する染色手順、又は、例えばターンブル-ブルー(又は他の不溶性金属シアン化物)などの不溶性染色などが使用され得る。指名された色素及び染色方法は、適用可能な方法の例であり、当技術分野で公知の任意の他の方法が、本明細書に記載の試料分析のための装置及び方法と併せて適用され得ることが理解されるべきである。
【0116】
[00125]染色手順は、光学顕微鏡検査のための発色性染色又は蛍光顕微鏡条件下の検査のための蛍光染色を生成し得る。別の実施形態では、試料中での細胞学的状態のイメージング(例えば、(マイクロ)オートラジオグラフィー又は(マイクロ)ラジオグラフィー写真生成などの手段による視覚的印象の生成)のために放射線の透過を減じる物質又は他の造影剤を利用する手順である放射線放出手順が、本明細書に記載される試料分析のための装置及び方法と併せて有用であり得る。
【0117】
[00126]染色及びイメージング手順のいずれも、顕微鏡的手順だけでなく、フローサイトメトリー、自動化顕微鏡(コンピュータ化又はコンピュータ支援)分析、又は染色された細胞学的標本の分析のための他の任意の方法などの自動化分析手順においても、分析のために使用され得る。「自動化」又は「自動」は、実質的にコンピュータ又は機械により駆動され、実質的に人間の介入を含まない活動を意味する。
本明細書に記載の装置及び方法に関連して使用するための追加の方法
[00127]ELISAベースのタンパク質の検出、特定の細胞型のアフィニティー精製などを含むがそれらに限定されない追加の診断方法が、本明細書に記載の装置及び方法により分析される及び/又は分析された試料、並びに、分析される及び/又は分析された試料を含む組成物に適用され得る。本開示の多数の診断的及び治療的適用をさらに例示するために、本出願人らは、本明細書に記載の装置及び方法を使用して分析される又は分析された試料及びそれらから単離されるサブ試料又は成分、例えば、細胞、核酸、タンパク質、脂質などを用いて実施され得る様々な技術のさらなる概説を以下に提供する。
【0118】
[00128]本明細書に記載の装置及び/又は方法により分析される及び/又は分析された試料は、さらなる処理工程に供され得る。これらは、限定されるものではないが、適用可能な場合にさらなる診断アッセイを含む、本開示で詳述される分析技術などのさらなる分析技術を含む。以下の方法は、本明細書に記載の装置及び方法によって分析される及び/又は分析された試料と併せて使用されてよく、これにより、例えば不均一な腫瘍細胞集団に含まれる細胞などの試料の同一性及び生体特性に関する情報を得ることができる。本明細書に記載の装置及び方法と以下に説明される技術によって提供される組み合わされた分析は、試料内、例えば、腫瘍内のわずかなサブクローン集団の識別、検出、又は特徴付けも可能にすることができる。これらの結果は、いくつかの実施形態では、診断、処置方法の選択、及び患者管理のために有益な情報であり得る。
【0119】
[00129]例示的な実施形態では、本明細書に記載の装置及び方法によって分析される試料及び/又は分析された試料は、以下の方法及びステップのうちの1つ又は複数に供され得る:染色、免疫組織化学染色、フローサイトメトリー、FACS、蛍光活性化液滴選別、画像分析、ハイブリダイゼーション、DASH、分子ビーコン、プライマー伸長、マイクロアレイ、CISH、FISH、ファイバーFISH、定量的FISH、フローFISH、比較ゲノムハイブリダイゼーション、ブロッティング、ウェスタンブロッティング、サザンブロッティング、イースタンブロッティング、ファーウェスタンブロッティング、サウスウェスタンブロッティング、ノースウェスタンブロッティング、ノーザンブロッティング、酵素アッセイ、ELISA、リガンド結合アッセイ、免疫沈降、ChIP、ChIP-seq、ChIP-ChIP、ラジオイムノアッセイ、蛍光偏光、FRET、表面プラズモン共鳴、フィルター結合アッセイ、アフィニティークロマトグラフィー、免疫細胞化学、電気泳動アッセイ、核酸電気泳動、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、ネイティブゲル法、フリーフロー電気泳動、等電点電気泳動、免疫電気泳動、電気泳動移動度シフトアッセイ、制限断片長多型分析、ザイモグラフィー、遺伝子発現プロファイリング、PCRを用いたDNAプロファイリング、DNAマイクロアレイ、遺伝子発現の連続分析、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応、ディファレンシャルディスプレイPCR、RNA-seq、質量分析、DNAメチル化検出、音響エネルギー、リピドミクスベースの分析、免疫細胞の定量化、がん関連マーカーの検出、特定の細胞型のアフィニティー精製、DNA配列決定、次世代配列決定、がん関連融合タンパク質の検出、及び化学療法耐性関連マーカーの検出。これらの方法の例示的な実施形態が以下に説明され、これらの技術を例示することが意図される。しかしながら、これらの方法の変形及び代替法並びに他の方法が利用されてもよいことは理解されよう。
【0120】
[00130]染色技術
[00131]流体は、前処理(例えば、タンパク質架橋、核酸の露出など)、変性、ハイブリダイゼーション、洗浄(例えば、ストリンジェンシー洗浄)、検出(例えば、プローブへの視覚的又はマーカー分子の連結)、増幅(例えば、タンパク質、遺伝子などの増幅)、又は対抗染色などに適用され得る。種々の実施形態において、物質は、以下に限定されないが、染色剤(例えば、ヘマトキシリン溶液、エオシン溶液など)、湿潤剤、プローブ、抗体(例えば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体など)、抗原回収流体(例えば、水性又は非水性ベースの抗原回収溶液、抗原回収バッファーなど)、又は溶媒(例えば、アルコール、リモネンなど)を含む。染色剤は、以下に限定されないが、色素、ヘマトキシリン染色、エオシン染色、エオシン染色、抗体若しくは核酸とハプテン、酵素若しくは蛍光部分などの検出可能な標識とのコンジュゲート、又は色を付与し及び/若しくはコントラストを向上させるための他のタイプの物質を含む。それぞれ全体が参照により本明細書に組み込まれるWO2015197742及びWO2015150278を参照されたい。
【0121】
[00132]染色技術は、目的の1つ又は複数の特徴に関するクエリーと共に複数のアッセイ情報を受け取り、解剖学的アッセイからの解剖学的情報を、染色アッセイ、例えば、解剖学的アッセイに一般に登録された免疫組織化学(IHC)アッセイの画像上に投影して、分析に適切な特徴を位置決定又は決定するためのシステム及び方法を利用することができる。解剖学的情報は、1つ又は複数の一般に登録される染色又はIHCアッセイ上に投影されるマスクを生成するために使用され得る。IHCアッセイにおける目的の特徴の位置は、マスクによって提供される解剖学的文脈と相関させることができ、解剖学的マスクと一致する目的の任意の特徴が、分析のために適宜に選択又は指示される。さらに、解剖学的マスクは、複数の領域に分割されてよく、複数のIHCアッセイからの複数の目的の特徴が、これらの領域のそれぞれと個別に相関され得る。したがって、開示されるシステム及び方法は、包括的なマルチアッセイ分析のための体系的、定量的、及び直感的な手法を提供し、それにより、技術水準におけるアドホック又は主観的な視覚分析工程の制限を克服する。参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2015052128を参照されたい。
【0122】
[00133]典型的には、がん試料は、細胞を顕微鏡スライド上に固定し、様々な染色方法(例えば、形態学的又は細胞遺伝学的染色)を使用してそれらを染色することによって、病理学的に検査される。次いで、染色された検体は、異常な又はがん性の細胞及び細胞形態の有無について評価される。一般的な情報を提供するだけであるが、組織学的染色方法は、生体試料中でのがん性細胞の検出のために現在実施されている最も一般的な方法である。がん検出に使用されることが多い他の染色方法には、免疫組織化学染色及び活性染色が含まれる。これらの方法は、がん性細胞における特定の抗原又は酵素活性の有無に基づく。参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2012152747を参照されたい。
【0123】
[00134]曖昧化色素(obfuscating pigments)を含有する試料を処理するための方法、キット、及びシステムが開示される。この方法は、試料内の曖昧化色素が脱色されるように明確化試薬(clarifying reagent)を試料に加えることを含む。曖昧化色素を脱色することにより、試料を検査する病理学者の能力を向上させる。例示的な実施形態では、基体上に取り付けられた試料を処理して、試料内の色素と関連する染色曖昧化を軽減する自動化された方法が開示される。この方法は、試料が取り付けられる基体を自動機器上に配置することと、明確化試薬が試料と接触し試料内の色素が脱色されるように、明確化試薬を加えることとを含む。この方法は、明確化試薬が試料から実質的に除去されるように、すすぎ試薬を加えることと、試料が特異的に染色されるように、発色試薬を加えることとをさらに含む。試料内の色素が明確化試薬によって脱色されるので、特異的に染色された試料が適格な読取り者によって解釈可能になる。他の例示的な実施形態では、試料中の曖昧化色素を脱色するためのキットが開示される。キットは、試薬ビンと、試薬ビンに入れられた明確化試薬とを含む。明確化試薬は、過酸化水素の水溶液を含み、試薬ビンは、自動スライド染色装置に動作可能に連結されるように構成され、それにより、自動スライド染色装置は、明確化試薬が試料に接触するように明確化試薬の適用を制御する。さらなる例示的な実施形態では、色素を含む組織病理学的試料に関する特定のシグナル曖昧化を軽減するためのシステムが開示される。このシステムは、自動機器、明確化試薬、及び発色試薬を含む。自動機器は、基体に付着された組織病理学的試料を受け取り、明確化試薬及び発色試薬を試料に送達し、試料に送達された明確化試薬及び発色試薬に対し加熱及び混合を行うように構成される。明確化試薬は、組織病理学的試料に接触し、曖昧化色素を脱色させるように構成される。発色試薬は、組織病理学的試料に接触し、特異的なシグナルを付着するように構成される。参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2014056812を参照されたい。
【0124】
[00135]免疫染色及びin situ DNA分析は、組織学的診断における有用な手段であり得る。免疫染色は、試料中のエピトープとの抗体の特異的結合親和性、及び特定の型の疾患細胞にのみ存在することがある固有なエピトープと特異的に結合する抗体の利用可能性の増大に依存し得る。免疫染色は、疾患状態の特定の形態学的指標を選択的に強調するための、スライドガラスにマウントされた試料上で行われる一連の処理工程を含むことができる。いくつかの例では、処理工程は、非特異的結合を減少させるための試料の前処理、抗体処理及びインキュベーション、酵素標識された二次抗体の処理及びインキュベーション、酵素との基質反応、並びに対比染色を含むことができる。結果として、抗体と結合するエピトープを有する試料の蛍光又は発色の強調された領域を生成することができる。いくつかの例では、in situDNA分析は、細胞又は試料中におけるヌクレオチド配列とプローブの特異的結合親和性に依存する。免疫組織化学(IHC)又は免疫細胞化学(ICC)は、抗体が可視的マーカーでタグ付けられた特異的抗体-抗原相互作用を検出することによる、in situの細胞成分の可視化を含むことができる。IHCは、組織中での抗原の検出と呼ばれることがあり、ICCは、培養細胞中又は培養細胞上での抗原の検出と呼ばれることがある(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、JAVOIS, Methods in Molecular Medicine, V. 115: Immunocytochemical Methods and Protocols, 2nd edition, (1999) Humana Press, Totowa, New Jersey)が、IHC又はICCとして説明される方法は、同様に適用可能であり得る。可視的マーカーは、蛍光色素、コロイド金属、ハプテン、放射性マーカー、又は酵素であり得る。調製の方法にかかわらず、最適な抗原可視化を得るために、最小のバックグラウンド又は非特異的染色と共に最大のシグナル強度が望ましい可能性がある。参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2013139555を参照されたい。
【0125】
[00136]初期の研究に基づくと、miRNAは、哺乳動物における発生制御及び細胞分化、並びに心臓発生及びリンパ球発生において役割を果たしている。さらに、miRNAは、低酸素状態、アポトーシス、幹細胞分化、増殖、炎症、及び感染に対する応答など、他の生物学的プロセスに関与する。miRNAは、腫瘍形成の重要な特徴である細胞分化、増殖及び生存に関与する経路の複数のエフェクターを同時に標的にするために使用され得る。いくつかのmiRNAは、がんと関連付けられる。結果として、miRNAはがん遺伝子又は腫瘍のリプレッサーとして作用するように考えられるので、miRNAのin situ分析は、がんの診断及び治療に有用であり得る。例えば、多くの腫瘍細胞は、正常組織と比較して異なるmiRNA発現パターンを有する。過剰なc-Myc、すなわち、いくつかのがんに関与する突然変異形態を伴うタンパク質を生産するように遺伝的に変化させたマウスを使用する研究により、miRNAががん発生をもたらすことが確かめられた。miRNA、並びにmiRNAにより翻訳され又は他の様式で調節されるタンパク質を検出するための方法が、特に、効率的かつ迅速な検出のための自動化された方法において非常に望ましい。miRNAを検出するための従来の方法は、同じ試料中でmiRNAとそのタンパク質発現標的(潜在的にmiRNAによって調節される)との両方は検出しない。例示的な方法では、典型的には、核酸標的を露出させるために細胞成分を消化するプロテアーゼベースの細胞の調整の使用を必要とする。さらに、例示的な方法では、ノーザンブロット及びウェスタンブロットを使用して、miRNAのレベルとタンパク質レベルを相関させる。さらに、試料を「粉砕及び結合」する分子的手法が利用され得る。組織ベースの手法は以前に実証されている。これらの方法は、一般的に酵素工程を含む。参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2013079606を参照されたい。
【0126】
[00137]開示される実施態様は、miRNA及びタンパク質の多重化検出に特に適した自動化された方法を利用することができる。例示的な実施形態では、1つ又は複数のタンパク質の発現がmiRNAによって調節され得る。別の実施形態では、この方法は、miRNAとタンパク質との間の細胞状況を同定することを可能にする。この方法は、例えば、自動化されたシステムを使用して、(a)miRNA標的を検出するのに適した試薬、(b)タンパク質標的を検出するのに適した試薬、及び(c)miRNA標的及びタンパク質標的を染色するのに適した試薬を、試料に加えることを含むことができる。本実施態様の一態様は、非酵素的細胞調整を使用して、すなわちプロテアーゼベースの細胞調整を回避して、タンパク質標的を保持することに関する。細胞調整工程は、約7.7から約9のpHを有するTrisベースのバッファーを含む、わずかに塩基性のpHを有するバッファーなどの細胞調整溶液を用いて、約80℃から約95℃などの周囲より高い温度で、試料を処理することを含むことができる。自動化された方法は、miRNA及びタンパク質標的を同時又は連続的に検出することができるが、より良好な染色結果は、典型的には、まずmiRNAを検出及び染色し、次いでタンパク質標的を検出及び染色することによって得られる。より特定的に開示される実施態様では、まず、試料に対して非酵素的細胞調整を行うことを含む。次いで、試料は、特定のmiRNA標的のために選択された核酸特異的結合部分と接触され、続いて、miRNA特異的結合部分を検出する。次いで、試料は、タンパク質標的のために選択されたタンパク質特異的結合部分と接触され、続いて、タンパク質特異的結合部分を検出する。特定の実施形態では、核酸特異的結合部分は、酵素、フルオロフォア、発光団、ハプテン、蛍光ナノ粒子、又はその組み合わせなどの、検出可能部分にコンジュゲートされたロックド核酸(LNA)プローブである。ジゴキシゲニン、ジニトロフェニル、ビオチン、フルオレセイン、ローダミン、ブロモデオキシウリジン、マウス免疫グロブリン、又はその組み合わせなど、特定の好適なハプテンは、当技術分野で一般的である。オキサゾール、ピラゾール、チアゾール、ベンゾフラザン、トリテルペン、尿素、チオ尿素、ロテノイド、クマリン、シクロリグナン、ヘテロビアリール、アゾアリール、ベンゾジアゼピン、及びその組み合わせから選択されるハプテンンを含む他の好適なハプテンが、Ventana Medical Systems, Inc.によって特に開発された。ハプテンは、抗ハプテン抗体を使用して検出され得る。特定の開示される実施形態では、抗ハプテン抗体は、抗種抗体-酵素コンジュゲートによって検出され、ここで、酵素は、アルカリホスファターゼ又はホースラディッシュペルオキシダーゼなどの任意の好適な酵素である。参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2013079606を参照されたい。
【0127】
[00138]対比染色は、1つ又は複数の標的を検出するために薬剤を用いて既に染色された後に試料を後処理して、それらの構造が顕微鏡下でより容易に可視化できるようにする方法である。例えば、対比染料が、任意選択で、免疫組織化学染色をより明確にするためにカバースリッピングの前に使用される。対比染料は、一次染料とは色が異なる。多数の対比染料、例えば、ヘマトキシリン、エオシン、メチルグリーン、メチレンブルー、ギムザ、アルシアンブルー、DAPI、及びニュークリアファストレッドが周知である。いくつかの例では、対比染色を生成するために2つ以上の染料が一緒に混合され得る。これにより、染料を選択するための順応性及び能力がもたらされる。例えば、第1の染料は、特定の特性を有するが異なる所望の特性は有しない混合物に対して選択され得る。第2の染料は、不足した所望の特性を示す混合物に対して添加され得る。例えば、トルイジンブルー、DAPI、及びポンタミンスカイブルーを一緒に混合して対比染料を形成することができる。参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2012116949を参照されたい。
【0128】
[00139]ヘマトキシリンは、ヘマトキシロン属の樹木の赤色の心材に見られる天然に存在する化合物である。ヘマトキシリン自体は水溶液中で無色であり、組織成分を染色する活性成分ではない。むしろ、ヘマトキシリンの酸化生成物であるヘマテインが、特に媒染剤との複合体形成の際に、ヘマトキシリン色素溶液の活性染色成分になる。ヘマテインは、空気及び日光への曝露によって自然に生成される。この自然のプロセスは、「熟成」と呼ばれ、細胞を染色するのに適した溶液を提供するためには3カ月以上かかる可能性がある。自動化染色手順及びシステムは、生体試料に染色液を送達するために機械システムを使用する。標準的ヘマテイン染色手順は、ヘマトキシリン/ヘマテインと媒染剤の両方を含む予め混合されたストックを利用した。参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2012096842を参照されたい。
【0129】
[00140]免疫染色は、典型的には、選択的染色によって疾患状態の特定の形態学的指標を強調するために、スライドガラス上にマウントされた試料に対して行われる一連の処理工程を利用する。典型的な工程は、非特異的結合を減少させるための試料の前処理、抗体処理及びインキュベーション、酵素標識された二次抗体の処理及びインキュベーション、抗体とのエピトープ結合を有する試料のフルオロフォア又は発色団を強調する領域を生成するための酵素との基質反応、並びに対比染色などを含む。これらの工程はそれぞれ、以前の工程から未反応の残留試薬を除去するために複数のすすぎ工程によって隔てられる。インキュベーションは、高温で通常は約40℃で行われ、試料は、典型的には、脱水から連続的に保護される。in situ DNA分析は、試料における固有なヌクレオチド配列とプローブの特異的結合親和性を使用し、同様に、様々な試薬及びプロセス温度要件を用いる一連のプロセス工程を含む。参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2011139976を参照されたい。
【0130】
[00141]免疫組織化学(IHC)染色
[00142]試料の免疫組織化学又はIHC染色(又は免疫細胞化学)は、おそらく、最も一般的に適用される免疫染色技術である。IHC染色の最初の事例では蛍光色素(免疫蛍光を参照のこと)を使用したが、現在では、ペルオキシダーゼ(免疫ペルオキシダーゼ染色を参照のこと)及びアルカリホスファターゼなどの酵素を使用する他の非蛍光方法が使用される。これらの酵素は、光学顕微鏡で容易に検出可能である着色産物を与える反応を触媒することができる。代替的に、放射性元素が標識として使用されてもよく、免疫反応はオートラジオグラフィーによって可視化され得る。調製又は固定化は、細胞形態及び構造の保存に寄与することができる。不適切な又は長期的な固定化は、抗体結合能力を有意に減少させることがある。多くの抗原がホルマリン固定試料において成功裏に示され得る。固定化により形成されるタンパク質架橋のいくらかを破壊して、隠れた抗原部位を露出させることによって作用する抗原回収方法によって、多くの抗原の検出が改善され得る。これは、変動する長さの時間にわたって加熱すること(熱誘導性エピトープ回収若しくはHIER)、又は酵素消化(タンパク質分解誘導性エピトープ回収若しくはPIER)を使用することによって達成することができる。
【0131】
[00143]免疫組織化学(IHC)は、抗原と抗体などの特定の結合剤との相互作用を検出することにより、試料(膵臓がん試料など)中の抗原(タンパク質など)の存在又は分布を決定する方法を指す。抗原(標的抗原など)を含む試料は、抗体-抗原結合を可能にする条件下で抗体と共にインキュベートされる。抗体-抗原結合は、抗体にコンジュゲートされた検出可能な標識(直接検出)を用いて、又は一次抗体に対して生じる二次抗体にコンジュゲートされた検出可能な標識(例えば間接検出)を用いて検出され得る。IHCのために使用され得る例示的な検出可能標識は、放射性同位体、蛍光色素(フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、及びローダミン)、ハプテン、酵素(ホースラディッシュペルオキシダーゼ又はアルカリホスファターゼ)、及び色原体(3,3’-ジアミノベンジジン又はファストレッド)を含むが、これらに限定されない。いくつかの例では、IHCは、試料、例えば、膵臓がん試料中の1つ又は複数のタンパク質の存在を検出し又はその量を決定するために利用される。参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2013019945を参照されたい。
【0132】
[00144]免疫組織化学又はIHCは、試料の細胞中のタンパク質などの抗原を局在化し、抗原を使用して、抗体の特定の抗原に対する特異的結合を促進するプロセスを指す。この検出技術は、試料内に所与のタンパク質が位置する場所を正確に示すことができる利点を有する。それはまた、試料自体を検査するための有効な方法である。抗原及び核酸を検出するためのハプテンなどの小分子の使用は、IHCにおける優れた方法になっている。ハプテンは、抗ハプテン抗体と組み合わせて、特定の分子標的を検出するのに有用である。例えば、一次抗体及び核酸プローブなどの特異的結合部分は、1つ又は複数のハプテン分子を用いて標識されることが可能であり、これらの特異的結合部分がそれらの分子標的に結合されると、それらは、発色ベースの検出システムの一部としての酵素又は蛍光標識などの検出可能な標識を含む抗ハプテン抗体コンジュゲートを使用して検出され得る。試料に対する検出可能抗ハプテン抗体コンジュゲートの結合は、試料中の標的の存在を示す。二次代謝産物としてジギタリス植物に専ら存在するジゴキシゲニンは、様々な分子アッセイで利用されているハプテンの例である。米国特許第4,469,797号は、試験試料における薬剤への抗ジゴキシン抗体の特異的結合に基づいて、血液試料におけるジゴキシン濃度を決定するためにイムノアッセイを使用することを開示する。米国特許第5,198,537号は、イムノアッセイなどの、免疫学的検査において使用されているいくつかのさらなるジゴキシゲニン誘導体を記載する。試料のin situアッセイ、例えば免疫組織化学(IHC)アッセイ及びin situハイブリダイゼーション(ISH)アッセイ、特にそのような試料のマルチプレックスアッセイでは、バックグラウンド干渉なしに所望の結果を提供する方法を特定及び開発することが常に望ましい。1つのそのような方法は、特許された触媒レポーター堆積(CARD)に基づく、チラミドシグナル増幅(TSA)の使用を含む。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第6,593,100号は、CARD又はチラミドシグナル増幅(TSA)方法における酵素の触媒作用を、標識されたフェノールコンジュゲートを酵素と反応させることによって増強させることを開示し、ここで、反応は、増強試薬の存在下で実施される。前述の刊行物のように参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2012003476を参照されたい。
【0133】
[00145]ハプテンコンジュゲートを使用するための方法の実施態様が利用され得る。一般に、この方法は、a)試料中の標的上にペルオキシダーゼを固定化するステップであって、ペルオキシダーゼは、ペルオキシダーゼ-活性化可能アリール部分、例えば、チラミン又はチラミン誘導体と反応することができる、ステップと、b)試料を、ハプテンコンジュゲートを含む溶液と接触させるステップであって、ハプテンコンジュゲートは、上記のペルオキシダーゼ-活性化可能アリール部分に結合されたハプテンを含む、ステップと、c)試料を、過酸化物を含む溶液と接触させるステップであって、それにより、ハプテンコンジュゲートがペルオキシダーゼ及び過酸化物と反応し、固定化ペルオキシダーゼに又は固定化ペルオキシダーゼの近位に共有結合を形成する、ステップと、d)ハプテンを検出することによって試料中の標的を位置決定するステップとを含むことができる。参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2012003476を参照されたい。
【0134】
[00146]フローサイメトリー
[00147]フローサイトメトリーは、細胞を流体の流れに懸濁し、それらを電子検出装置によって通過させることによる、細胞計測、細胞選別、バイオマーカー検出、及びタンパク質操作で利用されるレーザーベースの生物物理学的技術である。それにより、1秒当たり最大数千個の粒子の物理的及び化学的特徴の同時マルチパラメータ分析が可能になる。フローサイトメトリーは、健康障害、特に血液がんの診断において日常的に使用されるが、基礎研究、臨床診療、臨床試験において多くの他の用途を有する。共通の変化は、目的の集団を精製するために、粒子をそれらの特性に基づいて物理的に選別することである。
【0135】
[00148]蛍光活性化細胞選別(FACS)
[00149]蛍光活性化細胞選別(FACS)は、特殊化されたタイプのフローサイトメトリーである。それは、それぞれの細胞の特異的な光散乱及び蛍光特性に基づいて、細胞の不均一な混合物を2つ以上の容器内へ一度に1つの細胞ずつで選別するための方法を提供する。それは、個々の細胞からの蛍光シグナルの迅速で客観的かつ定量的な記録、並びに特定の目的の細胞の物理的分離を提供するので、有用な科学機器である。細胞懸濁液は、急速に流れる狭い液体の流れの中心に引き込まれる。細胞の直径に対して細胞間で大きな分離があるようにフローが配置される。振動機構により、細胞の流れは個々の液滴へと破壊される。システムは、液滴当たり2つ以上の細胞となる確率が低いように調整される。流れが液滴へ破壊される直前に、フローは蛍光測定ステーションを通過し、そこで、各細胞の目的の蛍光特性が測定される。帯電リングが、流れが液滴へ破壊される点にちょうど配置される。直前の蛍光強度測定値に基づいて電荷がリング状に配置され、反対の電荷は、液滴の流れからの破壊につれて液滴上にトラップされる。次いで、帯電した液滴は、静電偏向システムを通して落下し、静電偏向システムは、液滴をそれらの電荷に基づいて容器へ向ける。いくつかのシステムでは、電荷は流れに直接印加され、液滴破壊は流れと同じ符号の電荷を保持する。次いで、液滴が破壊された後、流れはニュートラルに戻される。
【0136】
[00150]単一細胞の蛍光活性化液滴選別
[00151]液滴中の単一細胞の区画化は、細胞から放出され又は細胞により分泌されるタンパク質の分析を可能にし、それにより、従来のフローサイトメトリー及び蛍光活性化細胞選別の主要な制限の1つを克服する。この手法の一例は、単一のマウスハイブリドーマ細胞から分泌される抗体を検出するための結合アッセイである。単一のマウスハイブリドーマ細胞、蛍光プローブ、及び50pl液滴中の抗マウスIgG抗体で被覆された単一のビーズを同時に区画化することによって、分泌された抗体はわずか15分後に検出される。ビーズは分泌された抗体を捕捉し、捕捉した抗体がプローブに結合したとき、蛍光はビーズ上に局在化し、約200Hzでの液滴選別及び細胞濃縮を可能にする明確に識別可能な蛍光シグナルを生成する。説明されているマイクロ流体システムは、他の細胞内、細胞表面、又は分泌タンパク質をスクリーニングするために、また、触媒又は制御活性を定量化するために容易に適合化される。約100万個の細胞をスクリーニングするために、マイクロ流体操作を2~6時間で完了されてよく、マイクロ流体装置及び哺乳動物細胞の調製を含むプロセス全体が5~7日で完了されてよい。参照によりその全体が本明細書に組み込まれるMazutis et al. (2013). “Single-cell analysis and sorting using droplet-based microfluidics”. Nat. Protoc. 8: 870-89を参照されたい。
【0137】
[00152]画像分析
[00153]臨床免疫プロファイル試験において役立つ自動免疫細胞検出のためのシステム及びコンピュータ実装方法によって、試料が分析され得る。自動免疫細胞検出方法は、RGB画像又は生物学的に意味のある非混合画像のようなマルチチャネル画像からの複数の画像チャネルを取得することを含む。参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2015177268を参照されたい。
【0138】
[00154]多重IHCスライド及び/又は蛍光染色スライドのセット画像から免疫スコアを自動的に計算する画像解析アルゴリズム及び/又はシステムが利用され得る。画像解析アルゴリズムは、多重アッセイで染色された単一試料中の細胞の型の数を計数するためのコンピュータ実装方法を含み、この方法は、リンパ球マーカーCD3、CD8、CD20、FoxP3、及び腫瘍検出マーカーを含む、多重アッセイで染色された試料を画像化するステップと、多重アッセイで染色された単一試料の画像を多重アッセイの各マーカーに対する別個の画像チャネル中にアンミキシングするステップと、多重アッセイで染色された単一の組織検体の画像を多重アッセイの各マーカーに対する別個の画像チャネル中にアンミキシングするステップと、単一の代理画像を生成するステップであって、代理画像が全リンパ球マーカーの画像チャネル情報の組み合わせである、ステップと、細胞検出アルゴリズムを適用するステップであって、細胞検出アルゴリズムが膜発見アルゴリズム又は核発見アルゴリズムである、ステップと、各画像チャネル若しくは組み合わされたチャネルの画像、又はグレースケール若しくは吸光度画像等の変換画像、又は代理画像におけるリンパ球及びリンパ球の組み合わせの特徴を同定するステップと、既知のリンパ球及びリンパ球の組み合わせの特徴に基づいて分類アルゴリズムをトレーニングするステップと、偽陽性細胞、CD3のみのT細胞、CD3及びCD8 T細胞、FP3 T細胞、及びCD20B細胞のうちの少なくとも1つとして検出細胞を分類するために同定された、各画像チャネル、又は組み合わされたチャネルの各画像、又はグレースケール若しくは吸光度画像などの変換画像、又は代理画像におけるリンパ球及びリンパ球の組み合わせの特徴に対して、トレーニングされたアルゴリズムを適用するステップと、分類された細胞のそれぞれの異なる型の数を計数するステップと、試料のスコアを生成するステップであって、スコアは、計数された各細胞型の数に基づくステップとを含む。参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2015124737を参照されたい。
【0139】
[00155]例示的な実施形態は、2段階分類方法を含むシステム及び方法を利用することを含むことができる。本明細書に開示の動作は、WS画像を複数のパッチに分割することと、SVMなどの「ソフト」分類を使用して各パッチを第1の分類で分類することと、各パッチの信頼スコア及びラベルを生成することとを含む。分類結果として取得された各パッチの位置、その特徴、そのタイプ、並びにその信頼スコアは、データベースに記憶され得る。第2の分類ステップは、低信頼パッチをデータベース内の高信頼パッチと比較することと、同様のパッチを使用して、データベース内のパッチの空間コヒーレンスを増大させることとを含む。言い換えれば、各低信頼パッチについて、隣接した高信頼パッチが各パッチの標識の改良により大きな寄与をし、それによって、低信頼パッチにおけるセグメント化精度を改善する。訓練データベースを成長させるための既存の適応/能動学習技術とは対照的に、開示される動作は、単一の訓練データベースを成長させることにあまり関係せず、代わりに、分析中の画像のラベル付け信頼情報に基づいて分類精度を適応的に改善しながら、各テスト画像を独立に処理することに焦点を置く。言い換えれば、信頼ラベルパッチデータベースが各画像について生成され、低信頼パッチの分類結果を改良するために類似検索動作が画像内で行われる。参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2015113895を参照されたい。
【0140】
[00156]例示的な実施形態は、MSLNタンパク質発現などのメソテリン(MSLN)発現を検出及びスコアリングする方法を利用することを含むことができる。特定の例では、この方法は、腫瘍細胞を含む試料をMSLNタンパク質特異的結合剤(抗体など)とを接触させるステップを含む。MSLNを発現する例示的な腫瘍は、卵巣がん、肺がん(例えば、非小細胞肺がん、NSCLC)、膵臓がん、及び中皮腫を含むが、これらに限定されない。腫瘍細胞中のMSLNタンパク質の発現は、例えば微鏡及び免疫組織化学(IHC)を使用して、検出又は測定される。試料は、MSLNタンパク質発現について、0から3+のスケールでスコア化される。例えば、試料中の少なくとも10%の腫瘍細胞(腫瘍細胞の少なくとも約10%など)がタンパク質特異的結合剤により染色される(例えば、検出可能なMSLNタンパク質発現を有する)かどうかを決定する。腫瘍細胞の10%未満(約10%未満など)が特異的結合剤により染色される場合、試料にはMSLNタンパク質発現について0のスコアが割り当てられる。試料中の腫瘍細胞の少なくとも10%(腫瘍細胞の少なくとも約10%など)がタンパク質特異的結合剤により染色される(例えば、検出可能なMSLNタンパク質発現を有する)が、腫瘍細胞の10%未満(約10%未満など)が2+以上の強度で特異的結合剤により染色される場合、試料にはMSLNタンパク質発現について1+のスコアが割り当てられる。試料中の腫瘍細胞の少なくとも10%(腫瘍細胞の少なくとも約10%など)が2+以上の強度でタンパク質特異的結合剤により染色され(例えば、検出可能なMSLNタンパク質発現を有し)、染色された腫瘍細胞の大部分が2+の強度で染色される場合、試料にはMSLNタンパク質発現について2+のスコアが割り当てられる。試料中の腫瘍細胞の少なくとも10%(腫瘍細胞の少なくとも約10%など)が2+以上の強度でタンパク質特異的結合剤により染色され(例えば、検出可能なMSLNタンパク質発現を有し)、染色された腫瘍細胞の大部分が3+の強度で染色され、試料中の腫瘍細胞の少なくとも10%(腫瘍細胞の少なくとも約10%など)が3+の強度でタンパク質特異的結合剤により染色される(例えば、検出可能なMSLNタンパク質発現を有する)場合、試料にはMSLNタンパク質発現について3+のスコアが割り当てられる。参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2015032695を参照されたい。
【0141】
[00157]ハイブリダイゼーション
[00158]In situハイブリダイゼーション(ISH)は、中期又は間期の染色体調製物(スライドにマウントされた細胞)の文脈で、標的核酸(例えばゲノム標的核酸)を含む試料を、標的核酸に対して特異的であるか又は特異的にハイブリダイズ可能な標識されたプローブ(例えば、本明細書に開示のプローブの1つ又は複数)と接触させることを含む。スライドは、例えば均一なハイブリダイゼーションを妨害し得る物質を除去するために、任意選択で前処理される。二本鎖核酸を変性させるために、染色体試料とプローブは両方とも、例えば加熱により処理される。(適切なハイブリダイゼーション緩衝液中で調製された)プローブ、及び試料は、ハイブリダイゼーションが起こるのを可能にするような条件下でかつ十分な時間にわたり(典型的には、平衡に到達するまで)混合される。染色体調製物は過剰なプローブを除去するために洗浄され、標的の特異的標識の検出が標準的な技術を用いて行われる。参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2015124702を参照されたい。
【0142】
[00159]がん性細胞を検出する他の方法は、がん性細胞中の染色体異常の存在を利用する。全染色体又は染色体セグメントのコピーの欠失又は増殖、及びゲノムの特定領域の高レベルの増幅は、がんにおいて頻発することである。染色体異常は、ギムザ染色された染色体(G分染法)又は蛍光in situハイブリダイゼーション法(FISH)のような細胞遺伝学的方法を使用してしばしば検出される。参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2012152747を参照されたい。
【0143】
[00160]ここに開示される技術は、がんの分子機構の分析における特異性を増加させる改良方法を提供する。したがって、特定の実施形態では、この技術は、単一細胞又は細胞を含む単一試料における細胞レベルでの分子マーカー及び表現型形態学的マーカーの両方の存在を決定する、多変量がん診断方法であって、
a. 単一細胞又は複数の細胞を含む被験体由来の単一試料から分子マーカーデータを得るステップと、
b. 上記単一試料の多変量解析を提供するためにステップ(a)で使用されたものと同じ単一細胞又は複数の細胞から定量的細胞形態学的データを得るステップであって、多変量データセットがステップ(b)からの定量的細胞形態学的データと工程(a)からの分子マーカーデータとの両方を含むステップと、
c. ステップ(b)で得られた多変量解析データセットを、既知の臨床結果を持つ個体から採られたがん及び非がん細胞試料から分子マーカーデータ及び定量的細胞形態学的データの両方を得ることによってつくられた参照多変量解析データセットと比較するステップと
を含む方法に関する。
【0144】
[00161]工程(c)の比較結果は、参照多変量解析データセットに見られるがん進行、発生、転移又は臨床結果の他の特徴に統計的に関連した特徴とマーカーの特定の組み合わせによって定義される被験体からの臨床結果の予測を提供する。参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2012152747を参照されたい。
【0145】
[00162]例示的な実施形態は、スペクトル分解検出及びデータ前処理を含む特殊化されたイメージング手法と関連して分子マーカーの蛍光標識を使用することによってがんの病理的予後状態を決定するための情報を提供する。この技術は、単一データ獲得サイクル内で試料上の分子特異的プローブの検出のために調製される試料についての核形態を獲得し分析することができるイメージング手法を提供する。このイメージング手法は、標識、獲得、前処理、及び分析技術の組み合わせを利用する。多次元画像を収集し分析して、目的の異なる分析物チャネルを発光波長によって分離し識別する。続く分析物チャネルは、細胞の形態及び遺伝子再構成、遺伝子発現及び/又はタンパク質発現を定量化するデータの異なる態様を表す。参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2012152747を参照されたい。
【0146】
[00163]例示的な実施形態は、核を可視化するためのシステム、方法、及びキットを利用することを含むことができる。試料は、核を透過処理するためにプロテアーゼで前処理され、次いで、ナノ粒子/DNA結合部分コンジュゲートと共にインキュベートされ得る。DNA結合部分は、少なくとも1つのDNA結合分子を含む。コンジュゲートが核内のDNAに結合し、ナノ粒子が可視化され、それにより核を可視化する。コンピュータ及び画像分析技術が、染色体分布、倍数性、形状、サイズ、テクスチャ特徴、及び/又は文脈特徴などの核の特徴を評価するために使用される。この方法は、蛍光in situハイブリダイゼーションを含む試料上の他の多重化された試験と組み合わされて使用され得る。参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2012116949を参照されたい。
【0147】
[00164]蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)は、染色体上の特異的DNA配列の有無を検出及び位置決定するために使用され得る技術である。FISHは、高程度の配列類似性を示す染色体の一部のみに結合する蛍光プローブを使用する。FISHはまた、試料内の特定のmRNA配列を検出するために使用され得る。参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2012116949を参照されたい。
【0148】
[00165]FISH、CISH、及びSISHのための多数の手順が当技術分野で知られる。例えば、FISHを実施するための手順は米国特許第5,447,841号;第5,472,842号;及び第5,427,932号に記載されており、CISHは米国特許第6,942,970号に記載されており、また追加の検出方法が米国特許第6,280,929号で提供されており、これらの開示はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。感度、解像度、又は他の所望の特性を改善するために、多くの試薬及び検出スキームがFISH、CISH、及びSISH手順と組み合わされて利用され得る。上述のように、FISHを実施する場合、フルオロフォア(蛍光色素及び量子ドットを含む)で標識されたプローブが直接的に光学的に検出され得る。代替的には、プローブは、ハプテンなどの非蛍光性分子(例えば、次の非限定的例:ビオチン、ジゴキシゲニン、DNP、及び様々なオキサゾール、ピラゾール、チアゾール、ニトロアリール、ベンゾフラザン、トリテルペン、尿素、チオウレア、ロテノン、クマリン、クマリン系化合物、ポドフィロトキシン、ポドフィロトキシン系化合物、及びそれらの組み合わせ)、リガンド又は他の間接的に検出可能な部分で標識され得る。そのような非蛍光性分子(及びそれらが結合する標的核酸配列)で標識されたプローブは、次いで、試料(例えば、プローブが結合する細胞)を、選択されたハプテン又はリガンドに特異的な抗体(又は受容体若しくは他の特異的な結合パートナー)などの標識された検出試薬と接触させることによって検出され得る。検出試薬は、フルオロフォア(例えば量子ドット)又は他の間接的に検出可能な部分で標識されることが可能であり、又は1つ若しくは複数の追加の特異的結合剤(例えば、二次抗体又は特異的抗体)と接触されて、それによりフルオロフォアで標識されることが可能である。任意選択で、検出可能な標識は、抗体、受容体(又は他の特異的結合剤)に直接付着される。代替的には、検出可能な標識は、ヒドラジドチオールリンカー、ポリエチレングリコールリンカーなどのリンカーを介して、又は同等の反応性を有する他の任意のフレキシブルな付着部分を介して接合剤に付着例えば、抗体、受容体(若しくは他の抗リガンド)、又はアビジンなどの特異的な結合剤は、ヘテロ二官能性ポリエチレングリコール(PEG)リンカーなどのヘテロ二官能性ポリアルキレングリコールリンカーを介して、フルオロフォア(又は他の標識)で共有結合的に修飾され得る。ヘテロ二官能性リンカーは、例えばカルボニル反応性基、アミン反応性基、チオール反応性基、及び光反応性基から選択される2つの異なる反応性基を結合し、これらのうち第1のものは標識に付着し、第2のものは特異的な結合剤に付着する。他の例では、プローブ又は特異的結合剤(例えば、一次抗体などの抗体、受容体又は他の結合剤など)は、蛍光性組成物又は発色性組成物を検出可能な蛍光シグナル、着色シグナル、又は(例えば、SISHで検出可能な金属粒子の沈着などのような)他の検出可能なシグナルに変換することが可能な酵素で標識されている。上記のように、酵素は、リンカーを介して関連するプローブ又は検出試薬に直接的又は間接的に付着され得る。適切な試薬(例えば、結合試薬)及び化学物質(例えば、リンカー及び連結化学物質)の例は、米国特許出願公開第2006/0246524号;第2006/0246523号;及び第2007/0117153号に記載されており、これらの開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2015124702を参照されたい。
【0149】
[00166]上記方法は、複数の(例えば、2、3、4などの)異なる標的の検出を可能にし得る。いくつかの実施形態では、異なる検出可能標識及び/又は検出システムが、各標的が単一の試料中で個々に検出され得るように標的のそれぞれに対して使用され得る。任意の適切な検出可能標識及び/又は検出システムが使用されてよい。より具体的には、明視野in situハイブリダイゼーションのためのシステムが企図される。いくつかの実施形態では、システムは、標的RNAに特異的なX個の一意的2’-O-メチルRNAプローブを含むプローブセットを含み、ここで、X≧2(例えば、X=2、X=3、X=4、X=5など)であり、プローブは標的RNA内のX個の異なる部分を標的とする。各2’-O-メチルRNAプローブは少なくとも1つの検出可能部分とコンジュゲートされ得る。検出可能部分は、シグナル増幅のための反応性色原体コンジュゲート系(例えばチラミド色原体コンジュゲート系)に結合するように適合され得る。いくつかの実施形態では、2’-O-メチルRNAプローブは、それぞれ長さが15から30ヌクレオチド、20から50ヌクレオチド、40から80ヌクレオチド、20から100ヌクレオチド、又は20から200ヌクレオチドを含む。参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2015124738を参照されたい。
【0150】
[00167]標本は、in situハイブリダイゼーション(「ISH」)プロトコールに従って処理された乳房組織試料であり得る。ISHプロトコールは、目的の配列に対してヌクレオチドの相補鎖(例えばプローブ)をハイブリダイズさせることによって、細胞調製において特定の核酸配列(例えばDNA、mRNA等)の可視化を提供することも可能である。ISHプロトコールは、限定せずに、二重SISH及び赤色ISHプロトコール、単一赤色ISHプロトコール、又は単一SISHプロトコールなどを含み得る。参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2013113707を参照されたい。
【0151】
[00168]動的対立遺伝子特異的ハイブリダイゼーション(DASH)
[00169]動的対立遺伝子特異的ハイブリダイゼーション(DASH)遺伝子型決定は、ミスマッチ塩基対の不安定性から生じる、DNAにおける融解温度の差を利用する。このプロセスは大きく自動化可能であり、いくつかの単純な原理を包含する。第1の工程では、ゲノム断片が増幅され、ビオチン化されたプライマーを用いるPCR反応によってビーズが結合される。第2の工程では、増幅産物がストレプトアビジンカラムに結合され、NaOHで洗浄されて、ビオチン化されていない鎖を除去する。次いで、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドが、二本鎖DNAに結合した場合に蛍光を発する分子の存在下で添加される。次いで、融点(Tm)が決定できるまで温度が上昇されて強度が測定される。SNPは、予想されるTmよりも低い結果をもたらすであろう。DASH遺伝子型決定は、Tmの定量可能な変化を測定しているため、SNPだけでなく全ての型の突然変異を測定することができる。DASHの他の利益は、無標識プローブを用いて動作するその能力、並びにその単純な設計及び性能条件を含む。
【0152】
[00170]分子ビーコン
[00171]分子ビーコンは、特別に操作された一本鎖オリゴヌクレオチドプローブを利用する。オリゴヌクレオチドは、各末端に相補的な領域が存在し、プローブ配列がその間に位置するように設計される。この設計は、プローブが、その天然の単離された状態のヘアピン構造又はステムループ構造をとることを可能にする。プローブの一端にはフルオロフォアが取り付けられ、他端には蛍光クエンチャーが取り付けられる。プローブのステムループ構造のため、フルオロフォアはクエンチャーに近接して存在し、したがって、分子が蛍光を放出するのを防止する。また、分子は、アッセイで使用されるゲノムDNAにプローブ配列のみが相補的であるように操作される(Abravaya et al. (April 2003). “Molecular beacons as diagnostic tools: technology and applications”. Clin. Chem. Lab. Med. 41 (4): 468-74))。分子ビーコンのプローブ配列がアッセイ中にその標的ゲノムDNAに遭遇した場合、それはアニールし、ハイブリダイズする。プローブ配列の長さのため、プローブのヘアピンセグメントは、より長くより安定したプローブ-標的ハイブリッドの形成を優先して変性されることになる。このコンフォメーション変化は、フルオロフォア及びクエンチャーがヘアピン結合のためにそれらが緊密に近接しないことを可能にして、分子が蛍光を発することを可能にする。他方で、プローブ配列が、わずか1つの非相補的ヌクレオチドを有する標的配列に遭遇する場合、分子ビーコンは優先的にその天然のヘアピン状態に留まり、フルオロフォアが消光されたままであるので蛍光は観察されない。
【0153】
[00172]プライマー伸長
[00173]プライマー伸長は、最初にSNPヌクレオチドのすぐ上流の塩基へのプローブのハイブリダイゼーション、続いて「ミニ配列決定」反応を含む2段階プロセスであり、その反応において、DNAポリメラーゼが、SNPヌクレオチドに相補的である塩基を付加することによってハイブリダイズしたプライマーを伸長させる。この組み込まれた塩基が検出され、SNP対立遺伝子を決定する(Syvanen, Nat Rev Genet. 2001 Dec;2(12):930-42)。プライマー伸長は高度に正確なDNAポリメラーゼ酵素に基づくので、この方法は一般的に非常に信頼性が高い。プライマー伸長は、非常に類似した反応条件下でほとんどのSNPを遺伝子型決定することができ、それを非常に柔軟にもする。プライマー伸長法は、いくつかのアッセイ形式で使用される。これらの形式は、MALDI-TOF質量分析(Sequenom参照)及びELISAのような方法を含む様々な検出技術を使用する。一般に、蛍光標識されたジデオキシヌクレオチド(ddNTP)又は蛍光標識されたデオキシヌクレオチド(dNTP)のいずれかの組込みを使用する2つの主な手法がある。ddNTPでは、プローブはSNPヌクレオチドのすぐ上流の標的DNAにハイブリダイズし、SNP対立遺伝子と相補的な単一のddNTPは、プローブの3’末端に付加される(ジジオキシヌクレオチド中の欠けている3’-ヒドロキシルは、さらなるヌクレオチドが付加されるのを防止する)。各ddNTPは、異なる蛍光シグナルで標識され、同じ反応中で4つ全ての対立遺伝子の検出を可能にする。dNTPでは、対立遺伝子特異的プローブは、調べられるSNP対立遺伝子のそれぞれと相補的である3’塩基を有する。標的DNAがプローブの3’塩基と相補的な対立遺伝子を含有する場合、標的DNAはプローブに完全にハイブリダイズし、DNAポリメラーゼがプローブの3’末端から伸長することを可能にする。これは、プローブの末端上への蛍光標識されたdNTPの組込みによって検出される。標的DNAがプローブの3’塩基と相補的な対立遺伝子を含有しない場合、標的DNAはプローブの3’末端でミスマッチを生じ、DNAポリメラーゼはプローブの3’末端から伸長することができない。第2の手法の利点は、いくつかの標識されたdNTPが、成長している鎖に組み込まれ、シグナルの増大を可能にし得ることである。
【0154】
[00174]マイクロアレイ
[00175]マイクロアレイの背後にある核となる原理は、2つのDNA鎖の間のハイブリダイゼーションであり、相補的ヌクレオチド塩基対間で水素結合を形成することによって互いに特異的に対合する相補的核酸配列の特性である。ヌクレオチド配列中の相補的塩基対の数が多いと、2つの鎖の間でより緊密な非共有結合をもたらされる。非特異的結合配列を洗浄除去した後、強く対合した鎖のみがハイブリダイズされたままである。プローブ配列に結合する蛍光標識された標的配列は、ハイブリダイゼーション条件(温度など)とハイブリダイゼーション後の洗浄とに依存するシグナルを生成する。スポット(特徴)からのシグナルの総強度は、そのスポット上に存在するプローブに結合する標的試料の量に依存する。マイクロアレイは、相対的定量化を使用し、相対的定量化では、特徴の強度が、異なる条件下で同じ特徴の強度と比較され、特徴の同一性はその位置によって知られる。
【0155】
[00176]核酸アレイ(オリゴヌクレオチドアレイ、DNAマイクロアレイ、DNAチップ、遺伝子チップ、又はバイオチップとしても知られる)は、強力な分析手段となっている。核酸アレイは、本質的には、例えば行及び列における、表面上でのオリゴヌクレオチドの体系的分布である。オリゴヌクレオチドは、表面に物理的又は共有的に接着され得る。オリゴヌクレオチドを表面に物理的に接着するための1つの手法は、それらが表面に接触するときにオリゴヌクレオチド溶液を乾燥させることを含む。乾燥又は他の形式で固定した後、オリゴヌクレオチドは表面上の「スポット」に閉じ込められる。乾燥手法は、「ドットブロット」と称される非常に低密度のアレイの生産から始まった。ドットブロットは、固相表面上にオリゴヌクレオチドの液滴を手動で堆積させ、乾燥することによって作製され得る。ほとんどのドットブロットは、行及び列に配置された約20個未満の異なるオリゴヌクレオチドスポットを含む。過去のドットブロットから進展して、マイクロスポッティング手法は、多数の微視的スポットを作製するために機械システム又はロボットシステムを使用した。小さいサイズのスポットが、はるかにより高いドット密度を可能にした。例えば、顕微鏡スライド上に数万個のスポットを堆積するためにマイクロスポッティングが使用された。異なる手法に従って、オリゴヌクレオチドが基質又は支持体上で直接合成されてきた。マスクレスフォトリソグラフィー及びデジタル光学化学技術は、支持体上で核酸を直接合成するための技術であり、これらの手法は、非常に高密度のアレイを生成するために使用されてきた(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第7,785,863号)。同様に、マスクレスフォトリソグラフィーが、ペプチドアレイを製造するために使用されてきた(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるSingh-Gasson et al. Maskless fabrication of light-directed oligonucleotide microarrays using a digital micromirror array. Nat Biotechnol 1999, 17:974-978参照)。特有のオリゴヌクレオチドの集団をそれぞれ含有する数百万個の離散領域を有するアレイを作製するデジタル光学化学が使用されてきた。核酸及びペプチドアレイは、それぞれの領域が特定のオリゴヌクレオチド又はペプチドのために指定される、基質表面上の(本明細書では「ドット」と呼ばれる)領域のアレイを含む。「アレイ密度」は、本質的には、所与の領域に分布されるドットの行及び列の数である。高密度アレイは、所与の領域に、より多数の行及び列を有する。核酸及びペプチドアレイ産業が発展したので高密度アレイの利用性も増大した。所与の領域内のドット数が増大するにつれて、各ドットのサイズは減少される。例えば、数百万の固有なオリゴヌクレオチド又はペプチドが顕微鏡スライドの領域にわたって分布するアレイにおける1個のドットは、約100pm2である。このドットの小さいサイズは、アレイを使用した結果の読取り及び理解において技術的課題を生じる。例えば、100pm2のドットは分離して視覚的に観察することができるが、人間は拡大なしにごく近接する2個以上の100pm2のドットを視覚的に分解することができない。したがって、高密度アレイの製造及び使用は、ユーザーがもはやアレイを視覚的に読み取ることができない段階まで進んでいる。アレイは小さい領域に多数(数百万)の近接して配列されたドットを含むため、高機能のイメージング装置がアレイからのシグナルを検出し、ソフトウェアがデータを解釈するために使用される。さらに、高感度検出方法が利用されてもよい。蛍光イメージングは、高感度の技術であり、ハイブリダイゼーション事象を検出するための標準的な手法になっている。これらのアレイの蛍光イメージングは、一般的に、フィルター及びカメラを備えた顕微鏡を使用する。蛍光は、一般的に、これらの装置の補助なくしに視覚的に分解され得ない。非常に複雑な蛍光画像は、データの容量が大きく、その提示を認識できないため、ソフトウェアを使用して処理される。例えば、Fiekowslyらの米国特許第6,090,555号では、核酸アレイから獲得された蛍光画像のコンピュータ支援アラインメント及び解析を含む複雑なプロセスを説明している。大規模な並列ゲノム又はプロテオミクス調査を実施する能力は大きな価値があるが、核酸及びペプチドアレイは、結合事象の検出及び解読の困難さによって適用可能性が限定されている。さらに、さらに、蛍光の使用は、経時的な蛍光シグナルの分解及び付随する蛍光検出ハードウェアの複雑性のため、アレイの一般的な適用可能性に対する多くの困難をもたらす。本開示は、標的分子を検出するための装置及びその装置を使用する方法に関し、その装置は、オリゴヌクレオチド又はペプチドアレイを含む。装置は、基質表面に結合された複数の結合分子を含む。結合分子は、標的分子に結合するように設計される。標的及び結合分子の結合は、装置の検査によって同定され得る。いくつかの実施形態では、装置は、標的核酸と固定化オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーション事象の検出を可能にする。他の実施形態では、装置は、標的ポリペプチドと固定化ペプチドとの結合事象の検出を可能にする。例示的な実施形態では、装置は、少なくとも1つの基質表面を有する基質と、基質表面に結合された複数の固定化オリゴヌクレオチド又はペプチドとを含み、複数の固定化オリゴヌクレオチド又はペプチドは、少なくとも1つの光学的に解読可能なパターンを形成するように基質表面上でパターン化される。参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2013110574を参照されたい。
【0156】
[00177]例示的な実施形態は、1つ又は複数の標的化合物の検出のための装置を利用することを含むことができる。特定の目的の標的化合物の1つの型は、標的核酸又は標的オリゴヌクレオチドである。特定の目的の標的化合物の別の型は、標的ポリペプチドである。固定化オリゴヌクレオチドを含む実施態様について、標的核酸は、一般的に標的分子型であると理解される。しかしながら、当業者であれば、固定化オリゴヌクレオチドが他の様々な標的化合物を検出することができるオリゴヌクレオチド結合部分コンジュゲートのための結合パートナーを提供することを認識する。例えば、固定化オリゴヌクレオチドを使用して、抗体-オリゴヌクレオチドコンジュゲートを装置上に固定化して、装置を抗体マイクロアレイに変換することができる。目的のタンパク質標的を検出ために、抗体マイクロアレイが使用され得る。同様に、固定化ペプチドを含む実施態様では、標的分子型は、抗体、タンパク質、又は酵素を含み得る。しかしながら、ペプチド結合部分と分子標的部分のコンジュゲートを使用することによって、基本となるペプチドが改変されてもよい。さらに、本開示は、固定化オリゴヌクレオチド及びペプチドを具体的に開示するが、それらは単に例示的な固定化された検出部分である。本明細書に開示される概念から逸脱することなく、本明細書に記載される装置に組み込まれ得る他の多くの有用な固定化された検出部分が存在する。例えば、検出部分は、アプタマー、リガンド、キレート剤、炭水化物、及びそれらの人工等価物を含み得る。参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2013110574を参照されたい。
【0157】
[00178]CTCを単離する方法は、EpCAM、ERG、PSMA、又はそれらの組み合わせに特異的な抗体の使用を含むことができる。単離されたCTCは、スライドガラス又は他の基質に適用され固定される(例えば、当技術分野で公知の方法を使用する)。本明細書で論じられる前立腺特異的抗体を使用する新規の拡散方法が、CTCを単離し、固定の前にスライドガラスなどの基質に適用するために使用されてもよい。次いで、マウント及び固定されたCTCが、例えば、核酸プローブがCTC中のそれらの相補配列にハイブリダイズするのに十分な条件下で、ERG、PTEN、及びCEN-10に特異的な1つ又は複数の核酸プローブと接触させられる。核酸プローブは、例えば、1つ又は複数の量子ドットで標識される。例えば、ERG、PTEN、及びCEN-10に特異的な核酸プローブが、それぞれ異なる量子ドットで標識しされて、プローブを互いに識別することが可能になる。核酸プローブがERG、PTEN、及びCEN-10にハイブリダイズするのを可能にした後、1つ又は複数の核酸プローブ上の1つ又は複数の量子ドットからのシグナルが、例えば、スペクトルイメージングを使用することによって検出される。次いで、シグナルを分析して、単離されたCTC中で1つ又は複数のERGが再配置されるかどうか、1つ又は複数のPTEN遺伝子が欠失されるかどうか、及びCEN-10が検出されるかどうかを決定する。1つ又は複数のERGが再構成されるかどうか、1つ又は複数のPTEN遺伝子が欠失されるかどうか、及びCEN-10が検出されるかどうかに基づいて、前立腺がんが特徴付けられる。参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2013101989を参照されたい。
【0158】
[00179]発色in situハイブリダイゼーション(CISH)
[00180]発色in situハイブリダイゼーション(CISH)は、免疫組織化学(IHC)技術の発色シグナル検出方法とin situハイブリダイゼーションとを組み合わせる細胞遺伝学的技術である。それは、HER-2/neuがん遺伝子増幅の検出のために蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)の代替手段として、2000年頃に開発された。CISHは、それらが両方ともDNAの特異的領域の有無を検出するために使用されるin situハイブリダイゼーション技術であるという点で、FISHと類似している。しかしながら、CISHは、FISHにおいて使用されるより高価で複雑な蛍光顕微鏡ではなく明視野顕微鏡を使用するので、診断検査室においてはるかに実用的である。
【0159】
[00181]CISHのプローブ設計は、FISHのものと非常に類似してよく、違いは標識化及び検出にある。FISHプローブは、一般的に、様々な異なる蛍光タグで標識され、蛍光顕微鏡下でのみ検出され得るが、CISHプローブはビオチン又はジゴキシゲニンで標識され、他の処理工程が適用された後に明視野顕微鏡を使用して検出され得る。CISHプローブは、約20ヌクレオチド長であり、DNA標的のために設計される。それらは標的にされた配列と相補的であり、変性及びハイブリダイゼーション工程の後にそれに結合する。ごくわずかなCISHプローブのみが市販されており、したがって、ほとんどの用途では、それらは、細菌人工染色体(BAC)から抽出、増幅、配列決定、標識、及びマッピングされなければならない。配列決定のためにヒトDNAの短い断片を単離及び増幅することが必要であったため、BACがヒトゲノムプロジェクト中に開発された。今日では、BACは、UCSC Genome Browserなどの公共データベースを使用してヒトゲノム上で選択及び位置決定され得る。これは、最適な相補性及び配列特異性を確保する。DNAは、BACクローンから抽出され、縮重オリゴヌクレオチドプライマー(DOP)-PCRなどのポリメラーゼベースの技術を使用して増幅される。次に、クローンが配列決定され、ゲノム上でのそれらの位置が検証される。プローブ標識化は、ビオチン又はジゴキシゲニンを組み込むためにランダムプライミング又はニックトランスレーションのいずれかを使用することによって実施され得る。
【0160】
[00182]試料の調製、プローブのハイブリダイゼーション、及び検出:試料は、中間期又は中期の染色体を含み得る。試料は、スライドガラスなどの表面にしっかりと付着される。標的がアクセス可能であることを確実にするために、試料はペプシン消化を受けることができる。10~20μLのプローブが添加され、試料はカバースリップで被覆され、ゴム接着剤で密封され、スライドは、5~10分間で97℃に加熱されて、DNAを変性させる。次いで、プローブがハイブリダイズできるようにするために、スライドは37℃のオーブン内に一晩置かれる。次の日に、試料が洗浄され、非特異的タンパク質結合部位のためのブロッカーが適用される。ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)が使用されようとする場合、内因性ペルオキシダーゼ活性を抑制するために、試料は過酸化水素中でインキュベートされる必要がある。ジゴキシゲニンがプローブ標識として使用された場合、抗ジゴキシゲニンフルオレセイン一次抗体、続いてHRPコンジュゲート抗フルオレセイン二次抗体が適用される。ビオチンがプローブ標識として使用された場合、非特異的結合部位は最初にウシ血清アルブミン(BSA)を使用してブロックされる必要がある。次いで、HRPコンジュゲートストレプトアビジンが検出のために使用される。次いで、HRPは、ジアミノベンジジン(DAB)を不溶性褐色生成物に変換するが、これは、40~60倍の倍率下で明視野顕微鏡で検出され得る。生成物をより見えるようにするために、ヘマトキシリン及びエオシンなどの対抗染色が使用され得る。
【0161】
[00183]発色in situハイブリダイゼーション(CISH)などの分子細胞遺伝学的技術は、染色体の視覚的評価(核型分析)と分子技術とを組み合わせる。分子細胞遺伝学的方法は、細胞内での核酸プローブとその相補的核酸とのハイブリダイゼーションに基づく。特定の染色体領域のためのプローブは、(例えば、試料中の)中期染色体上又は中間期核内のその相補的配列を認識し、それにハイブリダイズする。プローブは様々な診断及び研究目的で開発されている。配列プローブは、特定の染色体領域又は遺伝子中の単一コピーDNA配列にハイブリダイズする。これらは、目的の症候群又は状態と関連する染色体の重要な領域又は遺伝子を同定するために使用されるプローブである。中期染色体上で、そのようなプローブはそれぞれの染色分体にハイブリダイズし、通常は染色体1つ当たり2つの小さな離散的シグナルを与える。反復枯渇プローブ又は固有配列プローブなどの配列プローブのハイブリダイゼーションは、微小欠失症候群、染色体転座、遺伝子増幅及び異数性症候群、新生物疾患、並びに病原体感染などの構成的遺伝子異常を含む、多数の疾患及び症候群と関連する染色体異常の検出を可能にした。最も一般的には、これらの技術は、顕微鏡スライド上の標準的な細胞遺伝学的調製物に適用される。さらに、これらの手順は、固定された細胞又は他の核単離物のスライド上で使用され得る。例えば、これらの技術は、がんの診断と予後診断の両方のために腫瘍細胞を特徴付けるために頻繁に使用される。数多くの染色体異常が、がんの発症に関連している(例えば、特定の骨髄障害に関連するトリソミー8などの異数性;慢性骨髄性白血病におけるBCR/ABR再配置などの転座;及び新生物形質転換に関連する特異的核酸配列の増幅)。分子技術は、そのような獲得された染色体異常の検出及び特徴付けにおいて、標準的な細胞遺伝学的試験を増強することができる。デュアルカラーCISHのためのシステムが導入されている。これらは、Dako DuoCISH(商標)システム及びZyto Vision ZytoDot(登録商標)2Cシステムを含む。これらのシステムの両方は、2色検出工程のために別個の酵素(アルカリホスファターゼ及びホースラディッシュペルオキシダーゼ)を使用する。
【0162】
[00184]いくつかの実施形態は、発色in situハイブリダイゼーション(CISH)のためのシステム及びプロセスに関し、特に、単一のアッセイにおける2つ以上の色検出システムの間の干渉を防止する方法に関し、さらに、ブレイクアパートプローブを利用するスコアリングアッセイのためのプロセスに関する。本明細書にその全体が組み込まれるWO2011133625を参照されたい。
【0163】
[00185]蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)
[00186]蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)は、高程度の配列相補性を有する染色体の部分のみに結合する蛍光プローブを使用する細胞遺伝学的技術である。それは、1980年代初期に生物医学研究者によって開発され、染色体上の特定のDNA配列の有無を検出及び位置決定するために使用される。蛍光顕微鏡は、蛍光プローブが染色体に結合される場所を見つけるために使用され得る。FISHは、遺伝カウンセリング、医薬、及び種の同定における使用のためにDNAにおける特定の特徴を発見するために使用されることが多い。また、FISHは、細胞、循環腫瘍細胞、及び試料中の特定のRNA標的(mRNA、lncRNA及びmiRNAなど)を検出及び位置決定するためにも使用され得る。この文脈では、それは、細胞内の遺伝子発現の空間的-時間的パターンを定義するのに役立つことができる。
【0164】
[00187]プローブ:RNA及びDNA:RNAプローブは、細胞中のmRNA、lncRNA及びmiRNAの可視化のために任意の遺伝子又は遺伝子内の任意の配列について設計され得る。FISHは、任意の染色体異常について、細胞複製周期、特に核の中間期を検査することによって使用される。この技術[FISH]は、類似する染色体を誘引する人工染色体の基礎を有するプローブを作製することによって、指定された染色体をはるかに容易に同定するための大規模な一連のアーカイブ事例の分析を可能にする。核異常が検出されたとき、ハイブリダイゼーションは各プローブについてシグナルを発する。mRNA及びlncRNAの検出のための各プローブは、20個のオリゴヌクレオチド対から構成され、各対は40~50bpの空間をカバーする。miRNAの検出のために、プローブはmiRNAの特異的検出のために独自の化学物質を使用し、全miRNA配列をカバーする。プローブは、ヒトゲノム計画で使用するために単離、精製及び増幅されたDNAの断片に由来することが多い。ヒトゲノムのサイズは、直接的に配列決定され得る長さと比較して非常に大きく、ゲノムを断片に分割する必要があった。(最終的な分析では、配列特異的エンドヌクレアーゼを使用して各断片のコピーをさらに小さい断片に消化し、サイズ排除クロマトグラフィーを使用して各小さい断片のサイズを測定し、その情報を使用して、大きい断片が互いに重複する場所を決定することによって、これらの断片が並べられた。)それら個々のDNA配列を有する断片を保存するために、断片は、連続的に複製する細菌集団の系に添加された。各集団が単一の人工染色体を維持する細菌のクローン集団が、世界中の様々な研究室に保管されている。人工染色体(BAC)は、任意の研究室で増殖、抽出、及び標識され得る。これらの断片は、10万塩基対の規模であり、ほとんどのFISHプローブの基礎である。
【0165】
[00188]調製及びハイブリダイゼーションプロセス-RNA:細胞は、標的接近性を可能にするために透過処理され得る。また、FISHは、固定されていない細胞上で首尾よく行われている。20個のオリゴヌクレオチド対から構成される標的特異的プローブは、標的RNAにハイブリダイズする。別々であるが、適合するシグナル増幅システムは、多重アッセイ(アッセイ1つ当たり2つの標的まで)を可能にする。シグナル増幅は、一連の連続的ハイブリダイゼーション工程によって達成される。アッセイの終わりに、試料は蛍光顕微鏡下で可視化される。
【0166】
[00189]調製及びハイブリダイゼーションプロセス-DNA:まずプローブが構築される。プローブは、その標的と特異的にハイブリダイズするのに十分に大きくなければならないが、ハイブリダイゼーションプロセスを妨げるほど大きくあってはならない。プローブは、フルオロフォアで、抗体のための標的で、又はビオチンで直接的にタグ付けされる。タグ付けは、ニックトランスレーション、又はタグ付きヌクレオチドを使用するPCRなどの様々な方法で行うことができる。次いで、中間期又は中期染色体調製物が生成される。染色体は、基質に、通常はガラスに堅く付着される。反復DNA配列は、DNAの短い断片を試料に添加することによってブロックされなければならない。次いで、プローブが染色体DNAに適用され、ハイブリダイズしながら約12時間にわたってインキュベートされる。いくつかの洗浄工程により、全てのハイブリダイズされていない又は部分的にハイブリダイズされたプローブを除去する。次いで、色素を励起し画像を記録することができる顕微鏡を使用して、結果が可視化及び定量化される。蛍光シグナルが弱い場合、顕微鏡の検出閾値を超えるためにシグナルの増幅が必要であり得る。蛍光シグナル強度は、プローブ標識化効率、プローブの型、及び色素の型などの多くの因子に依存する。蛍光タグ付き抗体又はストレプトアビジンが色素分子に結合される。これらの二次成分は、これらが強いシグナルを有するように選択される。
【0167】
[00190]ファイバーFISH
[00191]中間期又は中期調製の代替技術であるファイバーFISHでは、中間期染色体が従来のFISHと同様に堅くコイルされずに直線で伸長されるか、又は中間期FISHと同様に染色体領域コンフォメーションを採用するような方法で、中間期染色体がスライドに結合される。これは、スライドに固定された後に溶解された細胞に対して、又は精製されたDNAの溶液に対して、スライドの長さに沿って機械的剪断を適用することによって達成される。染色体コーミングとして知られる技術が、この目的のためにますます使用されている。染色体の伸長されたコンフォメーションは、劇的により高い、数キロベースまでの分解も可能にする。
【0168】
[00192]定量的FISH(Q-FISH)
[00193]定量的蛍光in situハイブリダイゼーション(Q-FISH)は、従来のFISH法に基づく細胞遺伝学的技術である。Q-FISHでは、この技術は、ペプチド核酸(PNA)オリゴヌクレオチドと呼ばれる標識された(Cy3又はFITC)合成DNA模倣体を使用して、蛍光顕微鏡及び分析ソフトウェアを用いて染色体DNA中の標的配列を定量化する。
【0169】
[00194]フローFISH
[00195]フローFISHは、フローサイトメトリーと、細胞遺伝学的蛍光in situハイブリダイゼーション染色プロトコールとの組み合わせにより、全細胞集団のゲノムDNA中の特定の反復エレメントのコピー数を定量化するための細胞遺伝学的技術である。フローFISHは、コルセミド、低張ショックで処理された細胞の調製された中期拡散でのテロメア反復を染色するためにフルオレセインフルオロフォアで標識された3’-CCCTAACCCTAACCCTAA-5’配列のペプチド核酸プローブ、及びメタノール/酢酸処理によるスライドへの固定を用いる、テロメア長を分析するための別の技術であるQ-FISHの改変(プロトコールはオンラインで入手可能)として、Ruferらによって1998年に初めて公開された。次いで、得られた蛍光スポットの画像は、蛍光定量値を得るために、専用のコンピュータプログラム(方法及びソフトウェアはFlintbox Networkから入手可能)によって分析されてよく、得られた蛍光定量値は、実際のテロメア長を見積もるために使用され得る。PNAは低イオン塩濃度でホルムアミドの存在下でDNAに優先的に結合するため、プローブ染色によって得られる蛍光は定量的であると考えられ、したがって、DNA二本鎖は、それが一度融解されPNAプローブにアニールされると再形成することができず、プローブがその標的反復配列を飽和させることを可能にし(それが相補鎖上のアンチセンスDNAと競合することによって標的DNAから置き換えられないため)、したがって、未結合のプローブを洗浄除去した後に所与の染色体部位におけるPNAプローブ標的の頻度の信頼できる定量可能な読出しをもたらす。
【0170】
[00196]比較ゲノムハイブリダイゼーション
[00197]比較ゲノムハイブリダイゼーションは、細胞を培養する必要なく、参照試料と比較された試験試料のDNA中の倍数性レベルに対するコピー数変化(CNV)を分析するための分子細胞遺伝学的方法である。この技術の目的は、最も頻繁に密接に関連する2つの供給源から生じる2つのゲノムDNA試料を迅速かつ効率的に比較することであるが、これは、それらが全染色体又はサブ染色体領域(全染色体の一部)の獲得又は喪失に関する差異を含むと疑われるためである。この技術は、固形腫瘍と正常組織試料の染色体相補体間の差異の評価のために当初開発されたものであり、ギムザバンディングのより伝統的な細胞遺伝学的分析技術及び利用される顕微鏡の解像度によって制限される蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)と比較して、5~10メガベースの改善された解像度を有する。
【0171】
[00198]ブロッティング
[00199]利用され得る例示的なブロッティング技術は、ウェスタン、サザン、イースタン、ファーウェスタン、サウスウェスタン、ノースウェスタン、及びノーザンブロッティングを含み、これらは以下のセクションにさらに説明され、また当技術分野で知られているものである。
【0172】
[00200]ウェスタンブロッティング
[00201]ウェスタンブロット(タンパク質イムノブロットと呼ばれることもある)は、試料又は抽出物中の特定のタンパク質を検出するために使われる広く使用されている分析技術である。それは、ゲル電気泳動を使用して、3-D構造によって天然タンパク質を分離し、又はポリペプチドの長さによって変性タンパク質を分離する。次いで、タンパク質が膜(典型的には、ニトロセルロース又はPVDF)に転移され、そこで標的タンパク質に特異的な抗体で染色される。ゲル電気泳動工程は、抗体の交差反応性の問題を解決するためにウェスタンブロット分析に含まれる。
【0173】
[00202]サザンブロッティング
[00203]サザンブロッティングは、電気泳動で分離されたDNA断片のフィルター膜への転移と、プローブハイブリダイゼーションによるその後の断片の検出とを組み合わせる。フィルター膜上での特異的DNA断片へのプローブのハイブリダイゼーションは、この断片がプローブと相補的なDNA配列を含有することを示す。電気泳動ゲルから膜へのDNAの転移工程は、標識されたハイブリダイゼーションプローブの、サイズ分画されたDNAへの結合を容易にすることができる。それはまた、標的-プローブハイブリッドの固定も可能にし、オートラジオグラフィー又は他の検出方法による分析のために利用され得る。制限酵素消化されたゲノムDNAを用いて行われるサザンブロットは、ゲノム中の配列(例えば遺伝子コピー)の数を決定するために使用され得る。制限酵素によって切断されなかった単一のDNAセグメントのみにハイブリダイズするプローブは、サザンブロット上で単一のバンドをもたらすが、プローブがいくつかの高度に類似する配列(例えば、配列複製の結果であり得るもの)にハイブリダイズする場合には複数のバンドが観察される可能性が高い。ハイブリダイゼーション条件の改変(例えば、ハイブリダイゼーション温度の上昇又は塩濃度の低下)は、特異度を増加させ、類似性が100%未満である配列へのプローブのハイブリダイゼーションを減少させために使用され得る。
【0174】
[00204]イースタンブロッティング
[00205]イースタンブロットは、脂質、ホスホ部分、及びグリココンジュゲートなどの、タンパク質翻訳後修飾(PTM)を分析するために使用される生化学的技術である。それは、炭水化物エピトープを検出するために最もよく使用される。したがって、イースタンブロッティングは、ウェスタンブロッティングの生化学的技術の延長であると考えられ得る。複数の技術がイースタンブロッティングの用語によって説明されており、そのほとんどが、SDS-PAGEゲルからPVDF又はニトロセルロース膜上にブロットされたタンパク質を使用する。転移されたタンパク質は、脂質、炭水化物、リン酸化又は他の任意のタンパク質修飾を検出し得るプローブを使用して翻訳後修飾について分析される。PTMとプローブとの特異的相互作用によってそれらの標的を検出する方法に指すために、イースタンブロッティングが使用されるべきであり、それらと標準的なファーウェスタンブロットとを区別する。原理的には、イースタンブロッティングは、レクチンブロッティングに類似する(すなわち、タンパク質又は脂質上の炭水化物エピトープの検出)。
【0175】
[00206]ファーウェスタンブロッティング
[00207]ファーウェスタンブロッティングは、ブロット上の目的のタンパク質をプローブ化するために非抗体タンパク質を利用する。このように、プローブ(又はブロットされた)タンパク質の結合パートナーが同定され得る。プローブタンパク質は、発現クローニングベクターを使用して大腸菌中で生産されることが多い。捕食タンパク質を含有する細胞溶解物中のタンパク質が、SDS又は天然PAGEによってまず分離され、標準的なWBにおけるように膜に転移される。次いで、膜中のタンパク質が変性され復元される。次いで、通常は精製されたベイトタンパク質を用いて、膜がブロックされプローブ化される。ベイトタンパク質と捕食タンパク質が一緒になって複合体を形成する場合、ベイトタンパク質は、捕食タンパク質が位置する膜におけるスポット上で検出される。次いで、プローブタンパク質は、通常の方法によって可視化されることが可能であり、すなわち、それは、放射標識されてもよく;それは、抗体が存在するHis若しくはFLAGのような特異的親和性タグを担持してもよく;又は(プローブタンパク質に対する)タンパク質特異的抗体が存在してもよい。
【0176】
[00208]サウスウェスタンブロッティング
[00209]サザンブロッティング(Edwin Southernによって作出された)の系列に基づき、B.Bowen、J.Steinberg及び共同研究者によって1980年に初めて記載されたサウスウェスタンブロッティングは、特異的オリゴヌクレオチドプローブに結合するそれらの能力によってDNA結合タンパク質(DNAに結合するタンパク質)を同定すること及び特徴付けることを含む実験技術である。タンパク質は、ゲル電気泳動によって分離された後、他の型のブロッティングと同様に、ニトロセルロース膜に転移させる。「サウスウェスタンブロットマッピング」は、DNA結合タンパク質とゲノムDNA上のそれらの特異的部位との両方の迅速な特徴付けのために実施される。タンパク質は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含有するポリアクリルアミドゲル(PAGE)上で分離され、尿素の存在下でSDSを除去することによって復元され、拡散によってニトロセルロース上にブロットされる。目的のゲノムDNA領域は、適切であるが異なるサイズの断片を生産するように選択された制限酵素によって消化された後、末端標識され、分離されたタンパク質に結合させられる。特異的に結合されたDNAは、それぞれ個々のタンパク質-DNA複合体から溶出され、ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分析される。特異的DNA結合タンパク質がこの技術によって検出できるエビデンスが提示されている。さらに、その配列特異的結合は、対応する選択的に結合されたDNA断片の精製を可能にし、DNA調節配列のタンパク質媒介性クローニングを改善することができる。
【0177】
[00210]ノースウェスタンブロッティング
[00211]ノースウェスタンブロットの実行は、ゲル電気泳動によってRNA結合タンパク質を分離することを含み、ゲル電気泳動は、RNA結合タンパク質をそれらのサイズ及び電荷に基づいて分離する。複数の試料を同時に分析するために、個々の試料は、アガロース又はポリアクリルアミドゲル(通常はSDS-PAGE)中に装填され得る。ゲル電気泳動が完了すると、ゲル及び関連したRNA結合タンパク質がニトロセルロース転移用紙に転移される。次いで、新しく転移したブロットがブロッキング溶液中に浸される。無脂肪乳及びウシ血清アルブミンが一般的なブロッキングバッファーである。このブロッキング溶液は、ニトロセルロース膜への一次抗体及び/又は二次抗体の非特異的結合を防止するのを助ける。ブロッキング溶液がブロットとの十分な接触時間を有した後、特異的競合RNAが加えられ、室温でインキュベートする時間を与えられる。この時間中に、競合RNAは、ブロット上にある試料におけるRNA結合タンパク質に結合する。このプロセス中のインキュベーション時間は、加えられた競合RNAの濃度に応じて変化し得るが、インキュベーション時間は、典型的には1時間である。インキュベーションが完了した後、溶液中のRNAを希釈するために、ブロットは通常、洗浄毎に5分間で少なくとも3回洗浄される。一般的な洗浄バッファーとしては、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)又は10%Tween 20溶液が挙げられる。不適切な又は不十分な洗浄は、ブロットの現像の明確性に影響することになる。洗浄が完了すると、典型的には、ブロットはx線又は同様のオートラジオグラフィー法によって現像される。
【0178】
[00212]ノーザンブロッティング
[00213]一般的なノーザンブロッティングは、試料、例えば、細胞からの全RNAの抽出から始まる。次いで、真核mRNAがオリゴ(dT)セルロースクロマトグラフィーの使用により単離され、ポリ(A)尾部を有するRNAのみを単離することができる。次いで、RNA試料は、ゲル電気泳動によって分離される。ゲルは脆く、プローブはマトリックスに進入するには不安定であるため、ここでサイズによって分離されたRNA試料は、キャピラリー又は減圧ブロッティングシステムによってナイロン膜に転移させる。負に帯電した核酸は正電荷を有するナイロン膜に対する高い親和性を有するため、正電荷を有するナイロン膜は、ノーザンブロッティングにおける使用に最も有効である。ブロッティングのために使用される転移バッファーは通常、ホルムアミドを含有するが、なぜならば、それがプローブ-RNA相互作用のアニーリング温度を低下させ、したがってRNA分解を引き起こし得る高温の必要性を排除するためである。RNAが膜に転移されると、それは、UV光又は熱による膜への共有的連結を介して固定化される。プローブが標識された後、それは膜上のRNAにハイブリダイズされる。ハイブリダイゼーションの効率及び特異度に影響し得る実験条件は、イオン強度、粘度、二本鎖の長さ、ミスマッチ塩基対、及び塩基組成を含む。プローブが特異的に結合したことを確実にし、バックグラウンドシグナルが生じるのを防止するために、膜が洗浄される。次いで、ハイブリッドシグナルがX線フィルムによって検出され、密度測定によって定量され得る。ノーザンブロット試料中での比較のためのコントロールを作製するために、目的の遺伝子産物を示さない試料が、マイクロアレイ又はRT-PCRによる決定後に使用され得る。
【0179】
[00214]酵素
[00215]潜在的には自動化染色プラットフォームを使用して試料中の標的を検出するために酵素的ビオチン化を利用する近接検出方法が記載されている。1つの開示される実施態様は、試料を、ビオチンリガーゼ及び第1の標的の近くに結合する第1の特異的結合部分を含む第1のコンジュゲートと接触させるステップと;試料を、ビオチンリガーゼ基質及び第2の標的の近くに結合する第2の特異的結合部分を含む第2のコンジュゲートと接触させるステップと;第1の標的及び第2の標的が近い配置を有する場合、ビオチンリガーゼによるビオチンリガーゼ基質のビオチン化を可能にする条件に試料をかけるステップと;並びにビオチンリガーゼ基質のビオチン化を検出するステップとを含む。基質のビオチン化を可能にする条件は、ビオチン及びATPの添加を含む。この方法はまた、試料を、ストレプトアビジン-酵素コンジュゲートとを接触させるステップを含むこともできる。シグナル増幅が使用されてもよい。参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2014139980を参照されたい。
【0180】
[00216]酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)
[00217]ELISAの実施は、特定の抗原に特異性を有する少なくとも1つの抗体を含む。未知量の抗原を含む試料が、非特異的に(表面への吸着を介して)又は特異的に(「サンドイッチ」ELISAにおいて、同じ抗原に特異的な別の抗体による捕捉を介して)、固体支持体(通常、ポリスチレンマイクロタイタープレート)上に固定化される。抗原が固定化された後、検出抗体が添加され、抗原との複合体を形成する。検出抗体は、酵素に共有的に連結することができ、又はバイオコンジュゲーションを介して酵素に連結された二次抗体によってそれ自体を検出することができる。各工程の間に、プレートは、典型的には、穏やかな界面活性剤溶液で洗浄されて、非特異的に結合したタンパク質又は抗体が除去される、最後の洗浄工程の後、酵素基質を添加して、試料中の抗原の量を示す可視的シグナルを生産させることによって、プレートが現像される。
【0181】
[00218]リガンド結合アッセイ
[00219]循環CTCを含有することが知られる又は疑われる試料を分析する方法が、イメージング工程を含むことができる。一例では、イメージングは、(例えば、使用される各抗体と結合した標識を検出することによって)CTC同定試薬の免疫蛍光を画像化することを含む。別の例では、イメージングは、多スペクトル帯域通過フィルターを使用することを含む。免疫蛍光は、フルオロフォアで直接的若しくは間接的に標識された抗体から発することができ、又は免疫蛍光は、スペクトル的にフィルタリングされた可視光でフルオロフォアを励起することから生じることができる。一実施形態では、スペクトル的にフィルタリングされた可視光は、第1のフルオロフォアを励起するための第1の選択された範囲及び第2のフルオロフォアを励起するための第2の選択された範囲を含み、ここで、第1の選択された範囲は第2のフルオロフォアを有意に励起せず、第2の選択された範囲は第1のフルオロフォアを有意に励起しない。試料のイメージングは、第1の選択された範囲によって励起された試料の第1の免疫蛍光画像を獲得すること、及び第2の選択された範囲によって励起された試料の第2の免疫蛍光画像を獲得すること、(及び2つを超えるCTC同定試薬が使用された場合に各標識についてさらなる免疫蛍光画像を獲得すること)、及び第1の免疫蛍光画像と第2の免疫蛍光画像(及びそのように得られた場合、さらなる画像)を比較するか、又は重ね合わせることを含み得る、CTC同定試薬を位置決定又は可視化することによってCTCを位置決定又は同定することを含むことができる。例えば、第1の免疫蛍光画像のイメージングは、CK+細胞を同定することができ、第2の免疫蛍光画像は、CD45+細胞を同定することができ、比較又は重ね合わせは、CK+及びCD45-である細胞を同定することを含む。別の実施形態では、CTC同定試薬を位置決定することによってCTCを位置決定することが、コンピュータを使用して、第1の免疫蛍光画像及び第2の免疫蛍光画像(及び得られた場合、さらなる免疫蛍光画像)をアルゴリズム分析することを含む。一実施形態では、アルゴリズム分析することは、細胞のサイズ、マーカーの細胞区画局在化、及び/又はマーカー発現の強度を測定するために、画像をデジタル的に問い合わせることを含む。参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2013101989を参照されたい。
【0182】
[00220]免疫沈降(IP)
[00221]免疫沈降(IP)の液相リガンド結合アッセイは、複合体混合物からの抗体を使用して、特定のタンパク質、又はタンパク質の群を、精製又は富化するために使用される方法である。破壊された細胞又は試料の抽出物が、抗原-抗体複合体を生産する、目的の抗原に対する抗体と混合され得る。抗原濃度が低い場合、抗原-抗体複合体沈降には数時間又はさらには数日かかり得るので、形成された少量の沈降物を単離することが困難になる。酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)又はウェスタンブロッティングは、精製された抗原(又は複数の抗原)が取得及び分析できる2つの異なる方法である。この方法は、アガロース樹脂などの固体(ビーズ化された)支持体上の付着された抗体の助けを借りて抗原を精製することを含む。固定化されたタンパク質複合体が単一の工程で又は連続的に達成され得る。また、IPが生合成放射性同位体標識と共に使用され得る。この技術の組み合わせを使用して、特定の抗原が試料によって又は細胞によって合成されるかどうかを決定することができる。
【0183】
[00222]クロマチン免疫沈降(ChIP)
[00223]クロマチン免疫沈降(ChIP)は、細胞中のタンパク質とDNAとの相互作用を調査するために使用される免疫沈降実験技術のタイプである。それは、特定のタンパク質が、プロモーター又は他のDNA結合部位上の転写因子、及び場合によっては規定のシストロームなどの特定のゲノム領域と結合されるかどうかを決定することを目的とする。ChIPはまた、様々なヒストン修飾が関連するゲノム中の特定の位置を決定し、ヒストン修飾剤の標的を示すことを目的とする。
【0184】
[00224]クロマチン免疫沈降配列決定(ChIP-seq)
[00225]ChIP-seqとしても知られるChIP配列決定は、DNAとタンパク質の相互作用を分析するために使用される方法である。ChIP-seqは、クロマチン免疫沈降(ChIP)を大規模並行DNA配列決定と組み合わせて、DNAと結合したタンパク質の結合部位を同定する。それは、目的のタンパク質について正確に全体的な結合部位をマッピングするために使用され得る。ChIP-seqは、表現型に影響する機構に対して転写因子及び他のクロマチン結合タンパク質がどのように影響するかを決定するために主に使用される。どのようにタンパク質がDNAと相互作用して遺伝子発現を調節するかを決定することは、多くの生物学的プロセス及び疾患状態を完全に理解するためには必須である。このエピジェネティックな情報は、遺伝子型及び発現分析と補完的である。ChIP-seq技術は、現在、ハイブリダイゼーションアレイを利用できるChIP-チップの代替手段として主に見られる。アレイは固定された数のプローブに限定されるため、これはいくらかのバイアスを必ず導入する。対照的に、配列決定はバイアスが少ないと考えられるが、異なる配列決定技術の配列決定のバイアスは、依然として完全には理解されない。転写因子及び他のタンパク質と直接的に物理的相互作用している特定のDNA部位が、クロマチン免疫沈降によって単離され得る。ChIPは、in vivoで目的のタンパク質に結合された標的DNA部位のライブラリーを生産する。大規模並行配列分析は、任意のタンパク質とDNAとの相互作用パターン、又は任意のエピジェネティックなクロマチン修飾のパターンを分析するための全ゲノム配列データベースと共に使用される。これは、ChIP可能なタンパク質と、転写因子、ポリメラーゼ及び転写機構、構造タンパク質、タンパク質修飾、及びDNA修飾などの修飾とのセットに適用され得る。特異的抗体への依存性に対する代替手段として、DNase-Seq及びFAIRE-Seqのような、ゲノム中の全てのヌクレオソーム枯渇又はヌクレオソーム破壊活性調節領域のスーパーセットを発見するための様々な方法が開発されている。
【0185】
[00226]ChIP-オンチップ(ChIP-ChIP)
[00227]ChIP-オンチップ(ChIP-チップとしても知られる)は、クロマチン免疫沈降(「ChIP」)をDNAマイクロアレイ(「チップ」)と組み合わせた技術である。通常のChIPと同様、ChIP-オンチップは、in vivoのタンパク質とDNAとの相互作用を調査するために使用される。具体的には、それは、ゲノムワイドベースでのDNA結合タンパク質に関する結合部位の合計であるシストロームの同定を可能にする。全ゲノム分析が実施されて、ほぼ全ての目的のタンパク質の結合部位の位置を決定することができる。その技術の名称が示す通り、そのようなタンパク質は一般的には、クロマチンの文脈で作用するものである。このクラスの最も顕著な代表は、転写因子、起点認識複合体タンパク質(ORC)のような複製関連タンパク質、ヒストン、その変異体、及びヒストン修飾である。ChIP-オンチップの目標は、ゲノム中の機能的エレメントを同定するのに役立ち得るタンパク質結合部位を位置決定することである。例えば、目的のタンパク質としての転写因子の場合では、ゲノムを通してその転写因子結合部位を決定することができる。他のタンパク質は、プロモーター領域、エンハンサー、リプレッサー及びサイレンシングエレメント、インスレーター、境界エレメント、並びにDNA複製を制御する配列の同定を可能にする。ヒストンが目的の対象である場合、修飾の分布及びそれらの局在化が調節機構への新しい洞察を提供し得ると考えられる。ChIP-オンチップが設計された長期目標の1つは、様々な生理学的条件下で全てのタンパク質-DNA相互作用を列挙する(選択された)生物のカタログを確立することである。この知識は、最終的には、遺伝子調節、細胞増殖、及び疾患進行の背後にある機構の理解に役立つであろう。したがって、ChIP-オンチップは、それがエピジェネティクスに関する研究によって広められるため、ヌクレオチドレベルでのゲノムの組織化に関する我々の知識を補完する大きな可能性を提供するだけでなく、より高いレベルの情報及び調節も提供する。
【0186】
[00228]ラジオイムノアッセイ
[00229]ラジオイムノアッセイ(RIA)は、抗体の使用によって抗原の濃度(例えば、血液中のホルモンレベル)を測定するために使用される非常に高感度のin vitroアッセイ技術である。したがって、それは、対応する抗原の使用によって抗体を定量する放射結合アッセイの逆のものとして見られる。古典的には、ラジオイムノアッセイを実施するために、既知量の抗原を、頻繁には、チロシンに結合された125-Iなどのヨウ素のガンマ放射性同位体で標識することにより、その抗原を放射活性にする。次いで、この放射標識された抗原は、その抗原に対する既知量の抗体と混合され、結果として、その2つは互いに特異的に結合する。次いで、未知量の同じ抗原を含有する患者由来の血清の試料が添加される。このため、血清に由来する未標識の(又は「コールド」)抗原は、抗体結合部位について放射標識された抗原(「ホット」)と競合する。「コールド」抗原の濃度が増大されるにつれて、その多くが抗体に結合し、放射標識された変異体を置き換え、抗体に結合した放射標識抗原の、遊離の放射標識抗原に対する比を低下させる。次いで、結合された抗原が、未結合のものから分離され、上清中に残る結合された抗原の放射活性が、ガンマカウンターを使用して測定される。
【0187】
[00230]この方法は、原理的には任意の生物学的分子に対して使用することができ、血清抗原に限定されず、また、捕捉抗原を直接測定する代わりに遊離抗原を測定する間接的方法を使用する必要もない。例えば、目的の抗原又は標的分子を放射標識することが望ましくなく又は可能ではない場合、標的を認識する2つの異なる抗体が利用可能であり、標的が抗体に対する複数のエピトープを提示するのに十分に大きい(例えばタンパク質)場合は、RIAを行うことができる。一方の抗体は上記のように放射標識されるが、他方は未修飾のままである。RIAは、「コールド」未標識抗体を溶液中の標的分子と相互作用させ結合させることから始まる。好ましくは、この未標識抗体は、アガロースビーズへの結合、表面への被覆などの、いくつかの方法で固定化される。次に、「ホット」放射標識抗体が、第1の抗体-標的分子複合体と相互作用できるようになる。よく洗浄した後、結合した放射活性抗体の直接量が測定され、同時にアッセイされた参照量とそれを比較することにより、標的分子の量が定量される。この方法は、原理的には非放射活性サンドイッチELISA法と類似する。
【0188】
[00231]蛍光偏光
[00232]蛍光偏光は、蛍光異方性と同義である。この方法は、蛍光標識リガンドが受容体に結合すると、蛍光標識リガンドの回転速度の変化を測定する。偏光がリガンドを励起するために使用され、放出された光の量が測定される。放出された光の脱分極は、存在するリガンドのサイズに依存する。小さいリガンドが使用される場合、それは大きい脱分極を有し、光を急速に回転させる。利用されるリガンドがより大きいサイズである場合、得られる脱分極は低減される。この方法の利点は、それが1つの標識化工程を含むだけでもよいことである。しかしながら、この方法が低いナノモル濃度で使用される場合、結果は正確であり得る。
【0189】
[00233]フェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)
[00234]フェルスター共鳴エネルギー移動(蛍光共鳴エネルギー移動とも呼ばれる)は、ごく近くにあるドナー分子とアクセプター分子、例えば、ドナーフルオロフォアとアクセプターフルオロフォア、又はフルオロフォアとクエンチャーの間で移動されるエネルギーを利用する。FRETは、FPのような蛍光標識されたリガンドを使用する。FRET内のエネルギー移動は、ドナーを励起することによって始まる。ドナーとアクセプター分子との間の双極子間相互作用は、エネルギーをドナーからアクセプター分子に移動する。ドナーとアクセプターの分子同士又は分子間の相互作用が、進入移動と関連する蛍光スペクトル、又はその非存在を検出することによって監視され得る。例えば、リガンドが受容体-抗体複合体に結合される場合、アクセプターは光を放出する。エネルギー移動は、ドナーとアクセプターとの距離に依存し、したがって移動の有無が分子距離を示す。典型的には、10nm未満の距離は、アクセプターとドナーとの間の効率的なエネルギー移動を可能にするが、関与する特定の分子に応じて、より長い又はより短い距離が使用され得る。
【0190】
[00235]表面プラズモン共鳴(SPR)
[00236]表面プラズモン共鳴(SPR)は、リガンドの標識化を必要としない。代わりに、それは、偏光が表面から反射された角度の変化(屈折率)を測定することによって機能する。その角度は、反射される光を増大させる、共鳴角を変化させるリガンドの固定化などの、質量又は層の厚さの変化と関連する。SPRが誘導される装置は、センサーチップ、フローセル、光源、プリズム、及び固定角度位置検出器を含む。
【0191】
[00237]フィルター結合アッセイ
[00238]フィルターアッセイは、2つの分子間の親和性を測定するためにフィルターを使用する固相リガンド結合アッセイである。フィルター結合アッセイでは、フィルターを使用して、それらを通して培地を吸引することによって細胞膜を捕捉する。この迅速な方法は、見出される画分について濾過及び回収を達成することができる速い速度で行われる。バッファーでフィルターを洗浄することにより、残留する未結合のリガンド、及び結合部位から洗浄除去できる他の任意の存在するリガンドを除去する。フィルターが洗浄される間に存在する受容体-リガンド複合体は、フィルターによって完全に捕捉されるので、有意に解離しない。フィルターの特徴は、各仕事を行うのに重要である。より厚いフィルターは、小さい膜片のより完全な回収を得るのに有用であるが、より長い洗浄時間を必要とし得る。負に荷電した膜片を捕捉するのを助けるために、フィルターを前処理することが推奨される。フィルターに正の表面電荷を与える溶液にフィルターを浸すことにより、負に荷電した膜断片を引き寄せることになる。
【0192】
[00239]アフィニティークロマトグラフィー
[00240]アフィニティークロマトグラフィーは、抗原と抗体の間、酵素と基質の間、又は受容体とリガンドの間などの高度に特異的な相互作用に基づいて生化学的混合物を分離する方法である。固定相は、典型的には、ゲルマトリックスであって、多くの場合、藻類に由来する線状糖分子であるアガロースのゲルマトリックスである。通常、開始点は、細胞溶解物、増殖培地又は血清などの、溶液中の未定義の不均一な分子群である。目的の分子は、周知かつ定義された特性を有し、アフィニティー精製プロセス中に活用され得る。このプロセス自体は、捕捉として考えることができ、標的分子は、固体又は固定相又は媒体上に捕捉されることになる。移動相中の他の分子は、それらがこの特性を有しないので捕捉されるようにならない。次いで、固定相は、混合物から除去され洗浄され、標的分子が、溶出として知られるプロセスで捕捉から解放され得る。おそらく、アフィニティークロマトグラフィーの最も一般的な用途は、組換えタンパク質の精製である。
【0193】
[00241]免疫親和性:この手順の別の用途は、血清に由来する抗体のアフィニティー精製である。血清が特定の抗原に対する抗体を含有することが知られている場合(例えば、血清が当該の抗原に対して免疫された生物に由来する場合)、その血清がその抗原のアフィニティー精製のために使用され得る。これは、免疫親和性クロマトグラフィーとしても知られる。例えば、生物がGST-融合タンパク質に免疫がある場合、それは、融合タンパク質に対する抗体、及び場合によってはGSTタグに対する抗体も同様に生産する。次いで、このタンパク質は、アガロースなどの固体支持体に共有結合され、免疫血清からの抗体の精製におけるアフィニティーリガンドとして使用され得る。完全性のため、GSTタンパク質及びGST-融合タンパク質はそれぞれ別々に結合させることができる。血清は、最初にGSTアフィニティーマトリックスに結合させる。これにより、融合タンパク質のGST部分に対する抗体を除去する。次いで、血清は固体支持体から分離され、GST-融合タンパク質マトリックスに結合させられる。これにより、抗原を認識する抗体が固体支持体上に捕捉されるのを可能にする。目的の抗体の溶出は、グリシンpH2.8などの低いpHのバッファーを使用して達成される場合が最も多い。溶出液は中性のトリス又はリン酸バッファー中に収集されて、低いpHの溶出バッファーを中和し、抗体の活性の分解を停止させる。これは、アフィニティー精製が、初期のGST-融合タンパク質を精製するため、血清から望ましくない抗GST抗体を除去するため、及び標的抗体を精製するために使用されるため、良い例である。ペプチド抗原に対し生成された抗体を精製するために、単純化された戦略が採られることが多い。ペプチド抗原を合成的に生産される場合、末端システイン残基がペプチドのN又はC末端のいずれかに付加される。このシステイン残基は、ペプチドが担体タンパク質(例えば、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH))に容易にコンジュゲートすることを可能にするスルフヒドリル官能基を含有する。また、同じシステイン含有ペプチドは、システイン残基を介してアガロース樹脂上に固定化された後、抗体を精製するために使用される。ほとんどのモノクローナル抗体は、細菌由来の免疫グロブリン特異的プロテインA又はプロテインGに基づくアフィニティークロマトグラフィーを使用して精製されている。
【0194】
[00242]免疫細胞化学(ICC)
[00243]免疫細胞化学(ICC)は、細胞中の特定のタンパク質又は抗原の局在化を、それに結合する特異的一次抗体の使用によって解剖学的に可視化するために使用される一般的な実験技術である。一次抗体は、コンジュゲートされたフルオロフォアを有する二次抗体により結合された場合に、蛍光顕微鏡下のタンパク質の可視化を可能にする。ICCにより、研究者は、特定の試料中の細胞が問題の抗原を発現するか否かを評価することが可能になる。免疫陽性シグナルが認められる場合、ICCにより、研究者は、抗原を発現している細胞内区画を決定することもできる。一次抗体又は抗血清に直接結ばれたものを含む試料上の免疫学的検出を得るための多くの方法が存在する。直接的方法は、抗体に対する直接的な検出可能タグ(例えば、蛍光分子、金粒子など)の使用を含み、その抗体は、細胞中の抗原(例えば、タンパク質)に結合することを可能にされる。代替的に、多くの間接的方法が存在する。1つのそのような方法では、抗原は一次抗体により結合され、次いで、一次抗体に結合する二次抗体の使用によってそれが増幅される。次に、酵素部分を含有する三次試薬が加えられ、二次抗体に結合する。四次試薬、又は基質が加えられた場合、三次試薬の酵素的末端は、基質を色素反応生成物に変換し、元の一次抗体が目的の抗原を認識した同じ位置で色(多くの色が可能である;褐色、黒色、赤色など)を生成する。使用される基質(色素原としても知られる)のいくつかの例は、AEC(3-アミノ-9-エチルカルバゾール)、又はDAB(3,3’-ジアミノベンジジン)である。必要な酵素(例えば、抗体試薬にコンジュゲートされたホースラディッシュペルオキシダーゼ)への曝露後のこれらの試薬の1つの使用は、陽性免疫反応産物を生成する。診断を行うために、又は(例えば、一部のがんにおける)治療に関するさらなる予測情報を提供するために、H&E(ヘマトキシリン及びエオシン)のような特異性の低い染色が使用できない場合、目的の特異的抗原の免疫細胞化学的可視化が使用され得る。或いは、二次抗体は、蛍光顕微鏡又は共焦点顕微鏡中で検出されるフルオロフォア(FITC及びローダミンが最も一般的である)に共有結合的に連結され得る。蛍光の位置は、膜タンパク質については外部、細胞質タンパク質については内部の標的分子に応じて変化する。このように、免疫蛍光は、タンパク質の位置及び動的プロセス(エキソサイトーシス、エンドサイトーシスなど)を研究するために共焦点顕微鏡と組み合わされた場合に強力な技術である。
【0195】
[00244]遺伝子発現プロファイリング
[00245]使用され得る例示的な遺伝子発現プロファイリング技術としては、PCRを用いるDNAプロファイリング、DNAマイクロアレイ、SAGE、リアルタイムPCR、ディファレンシャルディスプレイPCR、及びRNA-seqを含み、これらは以下のセクションにさらに説明され、また当技術分野で知られているものである。
【0196】
[00246]PCRを用いるDNAプロファイリング
[00247]ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プロセスは、DNA複製の生物学的プロセスを模倣するが、それを目的の特定のDNA配列に限定する。PCR技術の発明によって、DNAプロファイリングは、識別力と、非常に小さい(又は分解された)出発試料から情報を回収する能力との両方において大きく躍進した。PCRは、特定のDNA領域の量を大きく増幅する。PCRプロセスでは、DNA試料は、加熱により別個のポリヌクレオチド鎖に変性される。2つのオリゴヌクレオチドDNAプライマーは、各プライマーの活性末端(すなわち3’末端)の通常の酵素的伸長が他方のプライマーに向かって導かれるような様式で、反対のDNA鎖上の2つの対応する近隣部位にハイブリダイズするように使用される。PCRは、熱安定性Taqポリメラーゼなどの高温耐性がある複製酵素を使用する。この様式で、目的の配列の2つの新しいコピーが生成される。この様式での変性、ハイブリダイゼーション、及び伸長の反復により、指数的に増殖する数の目的のDNAのコピーを生成する。熱サイクルを行う機器は、現在では商業的供給源から容易に入手可能である。このプロセスは、2時間以下で所望の領域の100万倍以上の増幅をもたらすことができる。
【0197】
[00248]DNAマイクロアレイ
[00249]マイクロアレイの背後にある核となる原理は、2つのDNA鎖の間のハイブリダイゼーションであり、相補的ヌクレオチド塩基対間で水素結合を形成することによって互いに特異的に対合する相補的核酸配列の特性である。ヌクレオチド配列中の多数の相補的塩基対は、2つの鎖の間のより緊密な非共有結合を意味する。非特異的結合配列を洗浄除去した後、強く対合した鎖のみがハイブリダイズされたままである。プローブ配列に結合する蛍光標識された標的配列は、ハイブリダイゼーション条件(温度など)とハイブリダイゼーション後の洗浄とに依存するシグナルを生成する。スポット(特徴)からのシグナルの総強度は、そのスポット上に存在するプローブに結合する標的試料の量に依存する。マイクロアレイは、相対的定量化を使用し、相対的定量化では、特徴の強度が、異なる条件下で同じ特徴の強度と比較され、特徴の同一性はその位置によって知られる。
【0198】
[00250]遺伝子発現の連続分析(SAGE)
[00251]遺伝子発現の連続分析(SAGE)は、分子生物学者が、目的の試料中のメッセンジャーRNA集団のスナップショットを、それらの転写物の断片に対応する小さなタグの形態で作製するために使用される技術である。簡単に述べると、SAGE実験は以下のように進行する。
【0199】
[00252]入力試料(例えば腫瘍)のmRNAが単離され、逆転写酵素及びビオチン化プライマーが、mRNAからcDNAを合成するために使用される。
[00253]cDNAは、プライマーに結合されたビオチンとの相互作用によりストレプトアビジンビーズに結合され、次いで、固定化酵素(AE)と呼ばれる制限エンドヌクレアーゼを使用して切断される。切断部位の位置、ひいてはビーズに結合された残りのcDNAの長さが、それぞれ個々のcDNA(mRNA)について変化することになる。
【0200】
[00254]次いで、切断部位から下流の切断されたcDNAが廃棄され、切断部位から上流の残りの固定cDNA断片が半分に分割され、結合部位から上流に以下の順序でいくつかの成分を含有する2つのアダプターオリゴヌクレオチド(A又はB)の1つに曝露される:1)切断されたcDNAへの結合を可能にするAE切断部位を有する粘着末端;2)(元のcDNA/mRNA配列内の)当該認識部位の下流の約15ヌクレオチドを切断するタグ付け酵素(TE)として知られる制限エンドヌクレアーゼの認識部位;3)PCRを介したさらなる増幅のために後で使用される、アダプターA又はBのいずれかに特有の短いプライマー配列。
【0201】
[00255]アダプターライゲーションの後、TEを使用してcDNAを切断してビーズからそれらを除去し、元のcDNAの約11ヌクレオチドの短い「タグ」のみ(15ヌクレオチドからAE認識部位に対応する4を引いたもの)を残す。
【0202】
[00256]次いで、切断されたcDNAタグがDNAポリメラーゼで修復されて、平滑末端cDNA断片を生成する。
[00257]これらのcDNAタグ断片(アダプタープライマー並びにAE及びTE認識部位が結合される)はライゲーションされて、2つのタグ配列を一緒にサンドイッチし、いずれかの末端でアダプターA及びBに隣接する。次いで、ダイタグと呼ばれるこれらの新しいコンストラクトは、アンカーA及びBに特異的なプライマーを使用してPCR増幅される。
【0203】
[00258]次いで、ダイタグは、元のAEを使用して切断され、他のダイタグと一緒に連結できるようにされ、cDNAコンカテマーを作るようにライゲーションされ、各ダイタグがAE認識部位により分離される。
【0204】
[00259]次いで、これらのコンカテマーは、細菌複製を介する増幅のために細菌中に形質転換される。
[00260]次いで、cDNAコンカテマーが単離され、近年のハイスループットDNAシーケンサーを使用して配列決定され、これらの配列は、個々のタグの再現を定量化するコンピュータプログラムを用いて分析され得る。
【0205】
[00261]リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応
[00262]リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に基づく分子生物学の実験技術である。それは、従来のPCRのように、標的にされたDNA分子の増幅を、その終わりではなく、PCR中に、すなわちリアルタイムで監視する。リアルタイムPCRは、定量的に(定量的リアルタイムPCR)、半定量的に、すなわち特定の量のDNA分子の上/下で(半定量的リアルタイムPCR)、又は定性的に(定性的リアルタイムPCR)使用され得る。リアルタイムPCRにおけるPCR産物の検出のための2つの一般的方法は、(1)任意の二本鎖DNAにインターカレートする非特異的蛍光色素、及び(2)プローブとその相補的配列とのハイブリダイゼーション後にのみ検出を可能にする蛍光リポーターで標識されたオリゴヌクレオチドからなる配列特異的DNAプローブである。リアルタイムPCRは、少なくとも1つの指定された波長の光のビームを各試料に当て、励起されたフルオロフォアにより放出される蛍光を検出する能力を有するサーマルサイクラーで実行される。サーマルサイクラーはまた、試料を急速に加熱及び冷却し、それにより、核酸及びDNAポリメラーゼの物理化学的特性を利用することが可能である。PCRプロセスは、一般的に、25~50回反復される一連の温度変化からなる。これらのサイクルは通常、以下の3つの段階からなり、第1段階は、約95℃で、二本鎖の分離を可能にし;第2段階は、約50~60℃の温度で、DNA鋳型とプライマーの結合を可能にし;第3段階は、68~72℃で、DNAポリメラーゼにより行われる重合を促進する。断片のサイズが小さいため、このタイプのPCRでは、アライメント段階と変成段階との間の変化の際に酵素がその数を増大することができるので、通常は最後の工程が省略される。さらに、4工程のPCRでは、非特異的色素が使用されるときにプライマーダイマーの存在によって引き起こされるシグナルを低減させるために、例えば80℃の温度で、各サイクルにおいて数秒のみ持続する短い温度フェーズ中に蛍光が測定される。各サイクルに使用される温度及びタイミングは、様々なパラメータ、例えば、DNAを合成するために使用される酵素、反応物中の二価イオン及びデオキシリボヌクレオチド(dNTP)の濃度、並びにプライマーの結合温度などに依存する。
【0206】
[00263]ディファレンシャルディスプレイPCR
[00264]ディファレンシャルディスプレイ(DDRT-PCR又はDD-PCRとも呼ばれる)は、研究者が任意の対の真核細胞試料の間のmRNAレベルでの遺伝子発現の変化を比較及び同定することができる技術である。アッセイは、必要に応じて2つ以上の対に拡張され得る。対にされた試料は、研究者が遺伝子発現パターンを研究することを望み、特定の差異の根本原因又は実験によって影響される特定の遺伝子を解明することを希望する、形態学的、遺伝学的、又は他の実験的な差異を有するであろう。ディファレンシャルディスプレイの概念は、細胞中のほとんどのmRNAを体系的に増幅させ可視化するために、固定されたオリゴ-dTプライマーと組み合わせて、限られた数の短い任意のプライマーを使用することである。1990年代初期のその発明の後、ディファレンシャルディスプレイは、mRNAレベルで示差的に発現される遺伝子を同定するための一般的な技術になった。高い精度及び読出しを提供する、蛍光DDプロセス及び放射性標識を含む様々な合理化されたDD-PCRプロトコールが提案されている。
【0207】
[00265]RNA配列決定(RNA-seq)
[00266]全トランスクリプトームショットガン配列決定(WTSS)とも呼ばれるRNA配列決定(RNA-seq)は、所与の時点のゲノムからのRNAの存在及び量のスナップショットを明示する次世代配列決定の能力を使用する技術である。
【0208】
[00267]RNA「ポリ(A)」ライブラリーRNA-seq:配列ライブラリーの作成は、ハイスループット配列決定においてプラットフォーム間で変化し得るものであり、それぞれ異なるタイプのライブラリーを構築するように設計されたいくつかのキットを有し、得られる配列をその機器の特定の要求に適合させる。しかしながら、分析される鋳型の性質のため、それぞれの技術内に共通性がある。頻繁には、mRNA分析において、コードRNAが非コードRNAから分離されることを確実にするために、3’ポリアデニル化(ポリ(A))テールが標的化される。これは、所与の基質に共有結合されたポリ(T)オリゴを用いて単純に達成され得る。現在、多くの研究では、この工程のために磁気ビーズを利用する。ポリ(A)RNA以外のトランスクリプトームの部分を含む研究は、ポリ(T)磁気ビーズを使用する場合、流出RNA(非ポリ(A)RNA)が、そうでなければ気付かれなかったであろう重要な非コードRNA遺伝子の発見をもたらすことができることを示した。また、リボソームRNAは、所与の細胞内のRNAの90%超に相当するので、プローブハイブリダイゼーションを介するその除去が、トランスクリプトームの残りの部分からデータを取り出す能力を増大させることを研究は示した。次の工程は逆転写である。ランダムプライミング逆転写の5’の偏り、並びにプライマー結合部位に影響する二次構造のため、逆転写前の200~300ヌクレオチドへのRNAの加水分解は、両方の問題を同時に軽減する。しかしながら、この方法にはトレードオフがあり、転写物の全体がDNAに効率的に変換されるが、5’及び3’末端はそれほどでない。研究の目的に応じて、研究者は、この工程を適用するか又は無視するかを選んでよい。
【0209】
[00268]低分子RNA/非コードRNA配列決定:mRNA以外のRNAを配列決定する場合、ライブラリー調製が改変される。細胞RNAが、所望のサイズ範囲に基づいて選択される。miRNAなどの低分子RNA標的については、サイズ選択によってRNAが単離される。これは、サイズ排除ゲルを用いて、又はサイズ選択磁気ビーズを介して、又は商業的に開発されたキットを用いて実施され得る。単離されると、リンカーが3’及び5’末端に付加された後、精製される。最終工程は、逆転写によるcDNA生成である。
【0210】
[00269]直接RNA配列決定:逆転写酵素を使用するRNAのcDNAへの変換が、転写物の適切な特徴付けと定量化の両方を阻害し得る偏り及びアーチファクトを導入することが示されているため、単一分子直接RNA配列決定(DRSTM)技術がHelicos(現在は破産)によって開発されていた。DRSTMは、RNAのcDNAへの変換、又はライゲーション及び増幅など他の偏りをもたらす試料操作を行うことなく、大規模並列様式で直接的にRNA分子を配列決定するものである。cDNAが合成されると、配列決定システムの所望の断片長に達するようにさらに断片化され得る。
【0211】
[00270](タンパク質)質量分析
[00271]タンパク質質量分析は、タンパク質の研究への質量分析の適用を指す。質量分析は、タンパク質の特徴付けのための重要な新しい方法である。全タンパク質のイオン化のための2つの主な方法は、エレクトロスプレーイオン化(ESI)とマトリックス支援レーザー脱離/イオン化(MALDI)である。利用可能な質量分析計の性能及び質量範囲に沿って、タンパク質を特徴付けるために2つの手法が使用される。第1の手法では、インタクトなタンパク質が、上述の2つの技術のいずれかによってイオン化され、次いで質量分析器に導入される。この手法は、タンパク質分析の「トップダウン」戦略と呼ばれる。第2の手法では、トリプシンなどのプロテアーゼを使用して、タンパク質がより小さいペプチドへ酵素的に消化される。続いて、これらのペプチドが質量分析計に導入され、ペプチド質量フィンガープリンティング又はタンデム質量分析によって同定される。したがって、(「ボトムアップ」プロテオミクスとも呼ばれる)この後者の手法は、タンパク質の存在を推測するためにペプチドレベルでの同定を使用する。全タンパク質質量分析は、飛行時間(TOF)MS又はフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(FT-ICR)のいずれかを主に使用して行われる。これらの2つの型の機器は、その広い質量範囲、及びFT-ICRの場合のその高い質量精度のため、ここでは好ましい。タンパク質分解ペプチドの質量分析は、より安価な機器設計が特徴付けのために使用できるため、タンパク質特徴付けのはるかに一般的な方法である。さらに、試料調製は、全タンパク質がより小さいペプチド断片に消化されると、より容易である。ペプチド質量分析のための最も広く使用されている機器は、ペプチド質量フィンガープリント(PMF)の獲得を高いペースで可能にする(1つのPMFを約10秒で分析できる)ため、MALDI飛行時間機器である。多段階四重極飛行時間及び四重極イオントラップも本出願で使用され得る。
【0212】
[00272]質量分析CMSは、生物分析のためにますます使用されている。質量の差異が多くの同時検出チャネルを可能にするため、質量分析は多重化によく適する。しかしながら、DNAなどの複雑な生体分子は、複雑な質量スペクトルを有し、感度が比較的低いため、マトリックス中で検出するのが困難であり得る。MSは、荷電種の質量電荷比を測定する分析技術である。それは、試料又は分子の化学組成を決定するために使用され得る。質量分析によって分析される試料は、荷電分子又は原子を生成するようにイオン化され、それらの質量電荷比に従って分離され、検出される。この技術は、様々な用途に従って定性的及び定量的の両方に使用される。誘導結合プラズマ(ICP)は、電磁誘導すなわち時間変動磁場により生成される電流によってエネルギーが供給される、プラズマ源のタイプである。ICPを、質量分析のためのイオン化源として使用され得る。誘導結合プラズマと質量分析との組み合わせは、ICP-MSと呼ばれる。質量スペクトルイメージング(MSI)は、化学情報を化学的画像又はマップとして可視化できるように、空間情報と共に化学情報を分析することを含む質量分析の適用である。化学マップを生成することにより、試料表面間の組成差が解明され得る。レーザーアブレーションは、固体表面にレーザービームを照射することによって固体表面から材料を除去するプロセスである。レーザーアブレーションは、質量分析、特に、質量スペクトルイメージングのための材料をサンプリングする手段として使用されている。一実施形態によれば、試料質量スペクトルイメージングのためのシステムは、レーザーアブレーションサンプラー、誘導結合プラズマイオン化装置、質量分析計、及びコンピュータを含む。例示的には、レーザーアブレーションサンプラーは、レーザーが、試料プラットフォーム上には配置された試料を照射して、切断された試料を形成することができるように構成された、レーザー、レーザーアブレーションチャンバー、及び試料プラットフォームを備え、レーザーと試料プラットフォームがコンピュータによって調整される。レーザーアブレーションサンプラーと誘導結合プラズマイオン化装置は、切断された試料をレーザーアブレーションサンプラーから誘導結合プラズマイオン化装置内に移すことによって、切断された試料を蒸発、気化、霧化、及びイオン化させて、質量電荷比分布を有する原子イオン集団を形成させることができるように動作可能に接続される。質量分析計は、イオン集団を誘導結合プラズマイオン化装置から質量分析計に移すことができるように誘導結合プラズマイオン化装置に動作可能に接続され、質量分析計は、質量電荷比分布に従ってイオン集団を分離することによって、質量電荷比データを生成する。コンピュータは、位置入力を受け付け、位置入力に従って試料を切断するためにレーザーアブレーションサンプラーと通信するように構成され、それは、質量電荷比データを、位置入力による試料上の位置に関連付けるように構成される。さらなる例示的な実施態様では、システムは、登録システムをさらに備え、登録システムは、試料の位置を決定し、それにより、位置入力と、レーザーが照射するように構成される試料上の位置との自動的関係付けを可能にするように構成される。例示的な実施態様では、多重化された試料LA-ICP-MSアッセイのための組成物が、質量タグ、及び質量タグにコンジュゲートされた特異的結合部分を含む。質量タグは、試料に内在する元素とは検出可能に異なる第1の種類の原子の集団を含む。一実施形態では、第1の種類の原子の集団は、元素の非内在性の安定同位体である。別の実施形態では、原子の集団は、コロイド粒子として構成される。参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2014079802を参照されたい。
【0213】
[00273]試料中の標的を検出するための方法は、試料を、標的を認識するように選択された酵素特異的結合部分コンジュゲートと接触させることに関わる。次いで、試料は、質量タグ前駆体コンジュゲートと接触され、質量タグ前駆体コンジュゲートは、質量タグ前駆体及び酵素基質、チラミン部分又はチラミン誘導体、及び任意選択のリンカーを含む。質量タグ前駆体コンジュゲートは、酵素又は酵素反応の生成物との反応を受けて、沈降した質量タグ、共有結合された質量タグ、又は非共有結合された質量タグを生成する。試料は、質量タグから質量コードを生成するための十分なエネルギーを提供するエネルギー源に曝露される。イオン化の後、質量コードは、質量分析などの検出方法を使用して検出され得る。いくつかの実施形態では、試料は、酵素特異的結合部分コンジュゲートを含む第1の溶液、及び質量タグ前駆体コンジュゲートを含む第2の溶液に曝露される。酵素特異的結合部分の酵素部分は、オキシドレダクターゼ酵素(例えば、ペルオキシダーゼ)、ホスファターゼ(例えば、アルカリホスファターゼ)、ラクタマーゼ(例えば、β-ラクタマーゼ)、及びガラクトシダーゼ(例えば、β-D-ガラクトシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ)から選択され得る。特異的結合部分は、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、ペプチド、核酸、DNA、RNA、オリゴ糖、多糖、及びそれらのモノマーから選択され得る。特定の開示される実施態様は、アルカリホスファターゼ-抗体コンジュゲート及びホースラディッシュペルオキシダーゼ-抗体コンジュゲートを使用することに関する。いくつかの開示される実施態様では、特異的結合部分は標的を認識する。他の開示される実施態様では、特異的結合部分は、標的に結合された一次抗体を認識する。いくつかの実施形態では、質量タグを沈着させることが、標的に酵素を固定化すること、並びに試料を酵素基質部分及び質量タグ前駆体と接触させることを含む。酵素基質部分は、酵素及び質量タグ前駆体と反応して、質量タグを生成し標的で沈着する。2つ以上の標的が試料中に存在する場合、質量タグは上記のようにそれぞれの標的で連続的に沈着される。質量タグが沈着された後、対応する酵素は、後続の標的で後続の質量タグを沈着させる前に、不活性化される。他の開示される実施態様では、酵素は、質量タグ前駆体-チラミンコンジュゲート又は質量タグ前駆体-チラミン誘導体コンジュゲートと反応して、典型的には共有的に、質量タグを標的の近くに沈着させる。いくつかの実施形態では、標的での酵素の固定化は、試料を、特異的結合部分及び酵素を含むコンジュゲートと接触させることを含む。特定の実施形態では、特異的結合部分は抗体である。特異的結合部分は、標的又は標的に予め結合された別の特異的結合部分を認識し、それに直接的に結合することができる。特定の実施態様では、第1の酵素、第2の酵素、及び任意の追加の酵素は同じである。参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2012003478を参照されたい。
【0214】
[00274]DNAメチル化検出
[00275]近年、DNAメチル化の測定によってがんを診断する方法が提案されている。DNAメチル化は主に、特定の遺伝子のプロモーター領域中のCpG島のシトシン上で発生して、転写因子の結合を阻害して遺伝子の発現を沈黙させる。したがって、腫瘍阻害遺伝子のプロモーター中のCpG島のメチル化の検出は、がん研究の大きな助けとなる。近年、がんの診断及びスクリーニングのために、メチル化特異的PCR(以下ではMSPと呼ばれる)又は自動化DNA配列決定などの方法によって、プロモーターのメチル化を決定する試みが活発に行われている。参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2009069984A2を参照されたい。
【0215】
[00276]音響エネルギー
[00277]少なくとも一部の実施態様は、標本を分析するための方法及びシステムに関する。標本は、その特性に基づいて分析され得る。これらの特性は、処理中に静的又は動的であり得る音響特性、機械的特性、光学的特性などを含む。いくつかの実施形態では、いくつかの実施形態では、標本の特性は、標本の状態及び条件を評価するために処理中に連続的又は定期的に監視される。得られた情報に基づいて、処理の一貫性の向上、処理時間の短縮、又は処理品質の改善などをするように処理が制御され得る。試料などの柔らかい物体を分析するために音響学が使用され得る。音響信号が試料と相互作用するとき、伝達信号は、弾性及び堅さなどの、試料のいくつかの機械的特性に依存する。固定剤(例えばホルマリン)に入れられた試料はより重く架橋されることになるので、伝達速度が組織の特性に応じて変化することになる。いくつかの実施形態では、音波の飛行時間に基づいて生体試料の状態が監視され得る。状態は、密集状態、固定状態、又は染色状態などであり得る。監視は、限定されることなく、試料密度、架橋結合、脱灰、又は染色剤着色などの変化の測定を含み得る。生体試料は、骨などの非流体試料又は他のタイプの試料であり得る。いくつかの実施形態では、方法及びシステムは、音響エネルギーを使用して標本を監視することを対象とする。反射及び/又は伝達モードにおける音響エネルギー間の相互作用に基づいて、標本に関する情報が取得され得る。音響測定を行うことが可能である。測定の例は、標本における音響信号の振幅、減衰、散乱、吸収、伝搬時間(TOF)、音波の位相シフト、又はこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、標本は、処理中に変化する特性を有する。いくつかの実施形態では、固定剤が標本に施される。標本がより固定されるにつれて、分子架橋によって機械的特性(例えば、弾性、剛性など)が変化する。これらの変化は、TOFを介して音速測定を使用して監視され得る。測定結果に基づいて、標本の固定状態又は他の組織学的状態が決定され得る。固定不足又は固定過剰を回避するために、試料の静的特性、標本の動的特性、又はその両方が監視され得る。試料の特性は、伝達特性、反射特性、吸収特性、又は減衰特性などを含む。特定の実施形態では、試料を評価するための方法は、試料の処理前、処理中、及び/又は処理後に音波速度を分析するステップを含む。これは、対象から採取された試料に送信機から音波を送ることにより、新鮮な未固定の試料に対するベースライン測定をまず確立することによって達成される。ベースラインTOF音波は、受信機を使用して検出される。試料の処理後又は処理中に、第2の音波が送信機から試料に送られる。第2のTOF音波は、第2の音波が試料中を通った後に受信機を使用して検出される。試料中の音速は、速度の変化を決定するために第1のTOF及び第2のTOFに基づいて比較される。これらの測定値は、分析される各試料について固有であってよく、したがって、各試料についてベースラインを確立するために使用され得る。媒体又は測定チャネルなどに起因するTOFの寄与分を決定するために、追加のTOF測定が使用され得る。いくつかの実施形態では、媒体のベースラインTOFを決定するために、標本が存在しないときに媒体のTOFが測定される。参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2011109769を参照されたい。
【0216】
[00278]リピドミクス
[00279]リピドミクス研究は、数千個の細胞脂質分子種の同定及び定量化、並びに他の脂質、タンパク質、及び他の代謝物とそれらの相互作用を含む。リピドミクスにおける調査者は、細胞脂質の構造、機能、相互作用、及び動態、並びにシステムの摂動中に生じる変化を検査する。リピドミック分析技術は、質量分析(MS)、核磁気共鳴(NMR)分光法、蛍光分光法、二重偏光干渉法、及び計算法を含み得る。リピドミック研究では、異なる脂質分子種の含量及び組成の空間的及び時間的変化を定量的に記述するデータは、その生理学的又は病理学的状態の変化による細胞の摂動の後に得られる。これらの研究から得られる情報は、細胞機能の変化への機構的洞察を容易にする。
【0217】
[00280]免疫細胞の定量化
[00281]試料中の免疫細胞定量化は、エピジェネティックに基づく、定量的リアルタイムPCR支援細胞計数(qPACC)を使用して行うことができる。活発に発現されるか又は沈黙化される遺伝子のクロマチン構造のメチル化状態は、エピジェネティックに基づく細胞同定及び定量化技術の基礎である。ジヌクレオチドシトシンリン酸グアニン中のシトシン塩基の5’炭素からのメチル基の細胞型特異的除去(脱メチル化)の発見は、ほんの少量のヒト血液又は組織試料からの免疫細胞の正確かつ堅牢な定量化を可能にする。ゲノムDNA上に位置するこれらのエピジェネティックなバイオマーカーは、目的の細胞と安定的に関連付けられる。Kleen and Yuan (November 2015). “Quantitative real-time PCR assisted cell counting (qPACC) for epigenetic - based immune cell quantification in blood and tissue”. J. Immunother. Cancer 46 (3)。
【0218】
[00282]がん関連マーカーの検出
[00283]限定されないが、RNA、DNA、又はタンパク質配列決定などの技術を使用する、限定されないが、がんの存在と関連するタンパク質、抗原、酵素、ホルモン、DNA突然変異、及び炭水化物などを含む「腫瘍マーカー」の検出は、がんの型の正確な診断のため、及び適切な治療方法の選択のために重要である。そのようなマーカーは、以下に限定されないが、アルファフェトタンパク質(限定されないが、生殖細胞腫瘍及び肝細胞がんと関連することが多い)、CA15-3(限定されないが、乳がんと関連することが多い)、CA27-29(限定されないが、乳がんと関連することが多い)、CA19-9(限定されないが、膵臓がん、結腸直腸がん及び他の型の消化器がんと関連することが多い)、CA-125(限定されないが、卵巣がん、子宮内膜がん、卵管がん、肺がん、乳がん及び胃腸がんと関連することが多い)、カルシトニン(限定されないが、甲状腺髄様がんと関連することが多い)、カルレチニン(限定されないが、中皮腫、性索/性腺間質腫瘍、副腎皮質がん、滑膜肉腫と関連することが多い)、がん胎児性抗原(限定されないが、消化器がん、頸がん、肺がん、卵巣がん、乳がん、尿路がんと関連することが多い)、CD34(限定されないが、血管周囲細胞腫/単発性線維性腫瘍、多形性脂肪腫、消化管間質腫瘍、隆起性皮膚線維肉腫と関連することが多い)、CD99MIC2(限定されないが、ユーイング肉腫、原始神経外胚葉性腫瘍、血管周囲細胞腫/孤立性線維性腫瘍、滑膜肉腫、リンパ腫、白血病、性索/性腺間質腫瘍と関連することが多い)、CD117(限定されないが、消化管間質腫瘍、肥満細胞症、精上皮腫と関連することが多い)、クロモグラニン(限定されないが、神経内分泌腫瘍と関連することが多い)、第3、7、17、及び9p21染色体(限定されないが、膀胱がんと関連することが多い)、様々な型のサイトケラチン(限定されないが、多くの型のがん腫及びいくつかの型の肉腫と関連することが多い)、デスミン(限定されないが、平滑筋肉腫、骨格筋肉腫、及び子宮内膜間質肉腫と関連することが多い)、上皮膜抗原(限定されないが、様々な型のがん腫、髄膜腫、及びいくつかの型の肉腫と関連することが多い)、第VIII因子/CD31FL1(限定されないが、血管肉腫と関連することが多い)、グリア線維性酸性タンパク質(限定されないが、神経膠腫(星細胞腫、上衣腫)と関連することが多い)、総嚢胞性疾患液タンパク質(限定されないが、乳がん、卵巣がん、及び唾液腺がんと関連することが多い)、HMB-45(限定されないが、メラノーマ、血管周囲類上皮細胞腫瘍(例えば、血管筋脂肪腫)、明細胞がん、副腎皮質がんと関連することが多い)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(限定されないが、妊娠性絨毛性疾患、生殖細胞腫瘍、及び絨毛がんと関連することが多い)、免疫グロブリン(限定されないが、リンパ腫、白血病と関連することが多い)、インヒビン(限定されないが、性索/性腺間質腫瘍、副腎皮質がん、血管芽細胞腫と関連することが多い)、様々な型のケラチン(限定されないが、がん腫、いくつかの型の肉腫と関連することが多い)、様々な型のリンパ球マーカー(限定されないが、リンパ腫、白血病と関連することが多い)、MART-1(Melan-A)(限定されないが、メラノーマ、ステロイド産生腫瘍(副腎皮質がん、性腺腫瘍)と関連することが多い)、MyoD1(限定されないが、横紋筋肉腫、小円形青色細胞腫瘍と関連することが多い)、筋肉特異的アクチン(MSA)(限定されないが、筋肉腫(平滑筋肉腫、横紋筋肉腫)と関連することが多い)、ニューロフィラメント(限定されないが、神経内分泌腫瘍、小細胞肺がんと関連することが多い)、ニューロン特異的エノラーゼ(限定されないが、神経内分泌腫瘍、小細胞肺がん、乳がんと関連することが多い)、胎盤アルカリホスファターゼ(PLAP)(限定されないが、精上皮腫、未分化胚細胞腫、胎児性がんと関連することが多い)、前立腺特異的抗原(限定されないが、前立腺がんと関連することが多い)、PTPRC(CD45)(限定されないが、リンパ腫、白血病、組織球性腫瘍と関連することが多い)、S100タンパク質(限定されないが、メラノーマ、肉腫(神経肉腫、脂肪腫、軟骨肉腫)、星細胞腫、消化管間質腫瘍、唾液腺がん、いくつかの型の腺がん、組織球性腫瘍(樹状細胞、マクロファージ)と関連することが多い)、平滑筋アクチン(SMA)(限定されないが、消化管間質腫瘍、平滑筋肉腫、血管周囲類上皮細胞腫瘍と関連することが多い)、シナプトフィジン(限定されないが、神経内分泌腫瘍と関連することが多い)、サイログロブリン(限定されないが、甲状腺がんの術後マーカーと関連することが多い)、甲状腺転写因子-1(限定されないが、全ての型の甲状腺がん、肺がんと関連することが多い)、腫瘍M2-PK(限定されないが、結腸直腸がん、乳がん、腎細胞がん、肺がん、膵臓がん、食道がん、胃がん、子宮頸がん、卵巣がんと関連することが多い)、ビメンチン(限定されないが、肉腫、腎細胞がん、子宮内膜がん、肺がん、リンパ腫、白血病、メラノーマと関連することが多い)、ALK遺伝子再構成(限定されないが、非小細胞肺がん及び未分化大細胞リンパ腫と関連することが多い)、ベータ-2-ミクログロブリン(B2M)(限定されないが、多発性骨髄腫、慢性リンパ球性白血病、及びいくつかのリンパ腫と関連することが多い)、ベータ-ヒト絨毛性ゴナドトロピン(ベータ-hCG)(限定されないが、絨毛がん及び生殖細胞腫瘍と関連することが多い)、BRCA1及びBRCA2遺伝子突然変異(限定されないが、卵巣がんと関連することが多い)、BCR-ABL融合遺伝子(フィラデルフィア染色体)(限定されないが、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、及び急性骨髄性白血病と関連することが多い)、BRAFV600突然変異(限定されないが、皮膚メラノーマ及び結腸直腸がんと関連することが多い)、CD20(限定されないが、非ホジキンリンパ腫と関連することが多い)、クロモグラニンA(CgA)(限定されないが、神経内分泌腫瘍と関連することが多い)、上皮起源の循環腫瘍細胞(CELLSEARCH(登録商標))(限定されないが、転移性乳がん、前立腺がん、及び結腸直腸がん)、サイトケラチンフラグメント21-1(限定されないが、肺がんと関連することが多い)、EGFR遺伝子突然変異分析(限定されないが、非小細胞肺がんと関連することが多い)、エストロゲン受容体(ER)/プロゲステロン受容体(PR)(限定されないが、乳がんと関連することが多い)、HE4(限定されないが、卵巣がんと関連することが多い)、KRAS遺伝子突然変異分析(限定されないが、結腸直腸がん及び非小細胞肺がんと関連することが多い)、乳酸デヒドロゲナーゼ(限定されないが、生殖細胞腫瘍、リンパ腫、白血病、メラノーマ、及び神経芽細胞腫と関連することが多い)、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)(限定されないが、小細胞肺がん及び神経芽細胞腫と関連することが多い)、核マトリックスタンパク質22(限定されないが、膀胱がんと関連することが多い)、プログラム死リガンド1(PD-L1)(限定されないが、非小細胞肺がんと関連することが多い)、ウロキナーゼプラスミノゲン活性化因子(uPA)及びプラスミノゲン活性化因子阻害剤(PAI-1)(限定されないが、乳がんと関連することが多い)、5-タンパク質シグネチャー(OVA1(登録商標))(限定されないが、卵巣がんと関連することが多い)、21-遺伝子シグネチャー(OncotypeDX(登録商標))(乳がんと関連することが多い)、70-遺伝子シグネチャー(Mammaprint(登録商標))(限定されないが、乳がんと関連することが多い)、並びにHER2/neu遺伝子増幅又は過剰発現(限定されないが、乳がん、卵巣がん、胃食道接合部腺がん、胃がん、非小細胞肺がん及び子宮がんと関連することが多い)を含む。腫瘍と関連するさらなるバイオマーカーは、以下に限定されないが、Pl3KCA突然変異、FGFR2増幅、p53突然変異、BRCA突然変異、CCND1増幅、MAP2K4突然変異、ATR突然変異、若しくは発現が特定のがんに相関する他の任意のバイオマーカー;AFP、ALK、BCR-ABL、BRCA1/BRCA2、BRAF、V600E、Ca-125、CA19.9、EGFR、Her-2、KIT、PSA、S100、KRAS、ER/Pr、UGT1A1、CD30,CD20、F1P1L1-PDGRFα、PDGFR、TMPT、及びTMPRSS2のうちの少なくとも1つ;又は、ABCB5、AFP-L3、アルファ-フェトプロテイン、アルファ-メチルアシル-CoAラセマーゼ、BRCA1、BRCA2、CA15-3、CA242、CA27-29、CA-125、CA15-3、CA19-9、カルシトニン、がん胎児性抗原、がん胎児性抗原ペプチド-1、デス-ガンマカルボキシプロトロンビン、デスミン、早期前立腺がん抗原-2、エストロゲン受容体、フィブリン分解産物、グルコース-6-リン酸イソメラーゼ、vE6、E7、L1、L2若しくはp16INK4aヒト絨毛性ゴナドトロピンなどのHPV抗原、IL-6、ケラチン19、乳酸デヒドロゲナーゼ、ロイシルアミノペプチダーゼ、リポトロピン、メタネフリン、ネプリライシン、NMP22、ノルメタネフリン、PCA3、前立腺特異抗原、前立腺酸性ホスファターゼ、シナプトフィジン、サイログロブリン、TNF、転写因子であって、ERG、ETV1(ER81)、FLI1、ETS1、ETS2、ELK1、ETV6(TEL1)、ETV7(TEL2)、GABPα、ELF1、ETV4(E1AF;PEA3)、ETV5(ERM)、ERF、PEA3/E1AF、PU.1、ESE1/ESX、SAP1(ELK4)、ETV3(METS)、EWS/FLI1、ESE1、ESE2(ELF5)、ESE3、PDEF、NET(ELK3;SAP2)、NERF(ELF2)、若しくはFEV.XXXから選択される転写因子、腫瘍関連糖タンパク質72、c-kit、SCF、pAKT、pc-kit、及びビメンチンから選択される少なくとも1つのバイオマーカーを含み得る。代わりに又は加えて、目的のバイオマーカーは、以下に限定されないが、CTLA-4、PDL1、PDL2、PD1、B7-H3、B7-H4、BTLA、HVEM、KIR、TIM3、GAL9、GITR、LAG3、VISTA、KIR、2B4、TRPO2、CD160、CGEN-15049、CHK 1、CHK2、A2aR、TL1A、及びB-7ファミリーリガンド、若しくはこれらの組み合わせなどの免疫チェックポイント阻害剤であってよく、又は、CTLA-4、PDL1、PDL2、PD1、B7-H3、B7-H4、BTLA、HVEM、TIM3、GAL9、LAG3、VISTA、KIR、2B4、CD160、CGEN-15049、CHK1、CHK2、A2aR、B-7ファミリーリガンド、若しくはこれらの組み合わせからなる群から選択されるチェックポイントタンパク質のリガンドである。追加のマーカーは、限定されないが、以下に関連する少なくとも1つのバイオマーカーの検出を含み得る:急性リンパ性白血病(etv6、am11、シクロフィリンb)、B細胞リンパ腫(Igイディオタイプ)、神経膠腫(E-カドヘリン、α-カテニン、β-カテニン、γ-カテニン、p120ctn)、膀胱がん(p21ras)、胆道がん(p21ras)、乳がん(MUCファミリー、HER2/neu、c-erbB-2)、子宮頸がん(p53、p21ras)、結腸がん(p21ras、HER2/neu、c-erbB-2、MUCファミリー)、結腸直腸がん(結腸直腸関連抗原(CRC)-C017-1A/GA733、APC)、絨毛がん(CEA)、上皮細胞がん(シクロフィリンb)、胃がん(HER2/neu、c-erbB-2、ga733糖タンパク質)、肝細胞がん(α-フェトプロテイン)、ホジキンリンパ腫(Imp-1、EBNA-1)、肺がん(CEA
、MAGE-3、NY-ESO-1)、リンパ系細胞由来白血病(シクロフィリンb)、メラノーマ(p5タンパク質、gp75、腫瘍胎児抗原、GM2及びGD2ガングリオシド、Melan-A/MART-1、cdc27、MAGE-3、p21ras、gp100Pmel117)、骨髄腫(MUCファミリー、p21ras)、非小細胞肺がん(HER2/neu、c-erbB-2)、上咽頭がん(Imp-1、EBNA-1)、卵巣がん(MUCファミリー、HER2/neu、c-erbB-2)、前立腺がん(前立腺特異抗原(PSA)及びその抗原エピトープPSA-1、PSA-2、及びPSA-3、PSMA、HER2/neu、c-erbB-2、ga733糖タンパク質)、腎臓がん(HER2/neu、c-erbB-2)、子宮頸部及び食道の扁平上皮がん(ヒトパピローマウイルスタンパク質などのウイルス産物)、精巣がん(NY-ESO-1)、及び/又はT細胞白血病(HTLV-1エピトープ)。
【0219】
[00284]キナーゼカスケードの特定の態様の正確な標的化が、疾患治療のための以前には達成不可能であった突破口を提供することは現在知られている。タンパク質キナーゼファミリーの重要性は、キナーゼ活性の調節不全に起因して生じる多数の疾患状態によって強調される。これらのタンパク質及び脂質キナーゼの多くによる異常な細胞シグナル伝達は、がんなどの疾患をもたらす可能性がある。いくつかのタンパク質セリン/スレオニン及びチロシンキナーゼは、がん細胞中で活性化され、腫瘍の増殖及び進行を促進することが知られている。本明細書に記載の技術は、1つ又は複数のキナーゼ捕捉剤を利用して、キナーゼ、例えば、ATP依存性キナーゼを富化(又は単離)するための方法を提供する。キナーゼ捕捉剤の例としては、比較的非選択的なタンパク質キナーゼ阻害剤、基質、又は偽基質を含むが、これらに限定されない。この方法は、例えば、タンデム質量分析によるキノームのプロファイリングに有用である。多くの高度に選択的で強力な低分子キナーゼ阻害剤が、本明細書に上述されたように以前に同定されているが、多数の比較的非選択的な低分子キナーゼ阻害剤も同定されている。本明細書に記載の方法に関して、比較的非選択的な低分子キナーゼ阻害剤の使用は、個々のキナーゼのための精製手順を調整する必要性を軽減し、触媒濃度のみで細胞、組織、及び体液中に通常存在する酵素を富化することによって得られる分析シグナルを増幅する。しかしながら、選択的な低分子キナーゼ阻害剤も、これらのキナーゼ分析方法において有用であり得ることが認識されよう。加えて、非選択的及び選択的小分子キナーゼ阻害剤の組み合わせも、これらの方法において有用であり得る。さらに、さらに、キナーゼ捕捉剤(又は複数のキナーゼ捕捉剤)は、ホスファターゼ捕捉剤と組み合わされて、キナーゼとホスファターゼを同時に富化(又は単離)することもできる。本明細書に記載の方法は、単一又は複数の標本からのタンデム質量分析によるタンパク質キナーゼ及び/又はホスファターゼの多重化分析にも適用され得る。本明細書に記載の技術は、キノームなどのキナーゼの集団を分析するための方法を提供する。この方法は、1つ又は複数のキナーゼ捕捉剤を使用して試料からキナーゼを分離するステップと、タンパク質試料を構成ペプチドにタンパク質分解的に消化する(例えば、トリプシンなどのプロテアーゼを用いる)ステップと、得られたペプチドに、切断可能なアスパラギン酸-プロリン(DP)結合を含有する特定のタンパク質キナーゼペプチド配列に関係する合理的に設計されたキャリブレーターペプチドを補充するステップと、キナーゼ集団に由来する天然ペプチドをタンデム質量分析によって定量化するステップとを含む。参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2007131191を参照されたい。
【0220】
[00285]特異的細胞型のアフィニティー精製
[00286]推定循環腫瘍細胞は、AML、CML、多発性骨髄腫、脳腫瘍、乳腺種、メラノーマ、及び前立腺がん、結腸がん、及び胃がんを含む複数のヒト腫瘍において現在報告されている。原理的には、循環腫瘍細胞は、いくつかの実験戦略によって同定され得る。多くの循環腫瘍細胞は、それらの正常な対応物を同定する細胞表面マーカーを発現するように考えられる。この見解は、細胞のフローサイトメトリーに基づく細胞選別又はマイクロビーズに基づくアフィニティー精製のいずれかを利用する比較的単純な富化手順を提供する。Schawb, M. Encyclopedia of Cancer, 3rd edition, Springer-Verlag Berlin Heidelberg, 2011を参照されたい。
【0221】
[00287]DNA配列決定
[00288]さらなる例示的な実施形態では、試料、又は1つ若しくは複数のその細胞がDNA配列決定に供され得る。DNA配列決定は例えば、特定の遺伝子、領域、調節配列、イントロン、エクソン、SNP、潜在的融合物などを標的化して、例えば、がんに関連する、又はその診断に関係する配列を検出することができる。DNA配列決定は、全ゲノム又はその有意な部分に対しても実施され得る。利用され得る例示的な配列決定方法は、以下に限定されないが、サンガー配列決定及びダイターミネーター配列決定、並びに次世代配列決定(NGS)技術、例えば、パイロシーケンシング、ナノポア配列決定、マイクロポアに基づく配列決定、ナノボール配列決定、MPSS、SOLID、Solexa、IonTorrent、Starlite、SMRT、tSMS、合成による配列決定、ライゲーションによる配列決定、質量分析配列決定、ポリメラーゼ配列決定、RNAポリメラーゼ(RNAP)配列決定、顕微鏡ベースの配列決定、マイクロ流体サンガー配列決定、顕微鏡ベースの配列決定、RNAP配列決定、トンネル電流DNA配列決定、及びin vitroウイルス配列決定を含む。それぞれ全体が参照により本明細書に組み込まれるWO2014144478、WO2015058093、WO2014106076、及びWO2013068528を参照されたい。
【0222】
[00289]DNA配列決定技術は、指数関数的に進歩してきた。ごく最近では、ハイスループット配列決定(又は次世代配列決定)技術は、配列決定プロセスを並列化し、数千個ないし数百万個の配列を同時にもたらす。超ハイスループット配列決定では、500,000もの合成時解読法(Sequencing by Synthesis)動作が並列に実行され得る。次世代配列決定は、費用を低下させ、業界標準のダイターミネーター法よりも速度を大きく増大させる。
【0223】
[00290]パイロシーケンシングは、油溶液中の水滴内部でDNAを増幅させ(エマルジョンPCR)、それぞれの液滴が、後にクローンコロニーを形成する単一のプライマーコーティングされたビーズに結合された単一のDNA鋳型を含有する。配列決定装置は、それぞれ、単一のビーズ及び配列決定酵素を含有する、多くのピコリットル容量のウェルを含む。パイロシーケンシングは、ルシフェラーゼを使用して、新生DNAに付加された個々のヌクレオチドの検出のための光を生成し、組み合わせたデータが配列リードアウトを生成するために使用される。参照によりその全体が本明細書に組み込まれるMargulies, M et al. 2005, Nature, 437, 376-380を参照されたい。パイロシーケンシング配列決定は、合成時解読法技術であり、これもパイロシーケンシングを利用する。DNAのパイロシーケンシングは、2つのステップを含む。第1のステップでは、DNAは、約300~800塩基対の断片に剪断され、断片が平滑末端にされる。次いで、オリゴヌクレオチドアダプターが、断片の末端にライゲートされる。アダプターは、断片の増幅及び配列決定のためのプライマーとして働く。断片は、例えば、5’-ビオチンタグを含有するアダプターBを使用して、DNA捕捉ビーズ、例えば、ストレプトアビジンでコーティングされたビーズに付着され得る。ビーズに付着された断片が、油水エマルジョンの液滴内でPCR増幅される。その結果は、各ビーズ上のクローン増幅されたDNA断片の多くのコピーである。第2のステップでは、ビーズがウェル(ピコリットルサイズ)に捕捉する。パイロシーケンシングは、各DNA断片上で並行して行われる。1つ又は複数のヌクレオチドの付加は、配列決定機器におけるCCDカメラにより記録される光シグナルを生成する。シグナル強度は、組み込まれたヌクレオチドの数に比例する。パイロシーケンシングは、ヌクレオチド付加の際に放出されるピロリン酸(PPi)を利用する。PPiは、アデノシン5’ホスホスルフェートの存在下でATPスルフリラーゼによってATPに変換される。ルシフェラーゼはATPを使用してルシフェリンをオキシルシフェリンに変換し、この反応は、検出され分析される光を生成する。別の実施形態では、パイロシーケンシングは、遺伝子発現を測定するために使用される。RNAのパイロシーケンシングは、DNAのピロシーケンシングと同様に適用され、部分的rRNA遺伝子配列決定の適用を微小ビーズに結合させ、次いで、結合物を個々のウェルに入れることによって達成される。次いで、遺伝子発現プロファイルを決定するために、結合された部分的rRNA配列が増幅させる。Sharon Marsh, Pyrosequencing(登録商標) Protocols in Methods in Molecular Biology, Vol. 373, 15-23 (2007)。
【0224】
[00291]使用され得る配列決定技術の別の例は、ナノポア配列決定である(参照によりその全体が本明細書に組み込まれるSoni G V and Meller, A Clin Chem 53: 1996-2001, 2007)ナノポアは、直径1ナノメートル程度の小さい穴である。導電性流体中のナノポアの浸漬及びそれを横断する電位の印加は、ナノポアを通るイオンの伝導に起因してわずかな電流をもたらす。流れる電流の量は、ナノポアのサイズに敏感である。DNA分子がナノポアを通過するときに、DNA分子上の各ヌクレオチドは、異なる程度でナノポアを塞ぐ。このように、DNA分子がナノポアを通過するときにナノポアを通過する電流の変化は、DNA配列の読取りを表す。参照によりその全体が本明細書に組み込まれるBayley, Clin Chem. 2015 Jan;61(1):25-31を参照されたい。
【0225】
[00292]使用され得るDNA及びRNA検出技術の別の例は、SOLiD(商標)技術(AppliedBiosystems)である。SOLiD(商標)技術システムは、DNAとRNAの両方の大規模並列次世代配列決定を実行するために利用され得るライゲーションに基づく配列決定技術である。DNASOLiD(商標)配列決定では、ゲノムDNAが断片へ剪断され、アダプターが断片の5’及び3’末端に結合されて、断片ライブラリーを生成する。代替的には、内部アダプターは、断片の5’及び3’末端にアダプターをライゲーションすること、断片を環状化すること、環状化された断片を消化して内部アダプターを生成すること、並びに得られた断片の5’及び3’末端にアダプターを結合させて、メイトペア(mate-paired)ライブラリーを生成することによって導入され得る。次に、クローンビーズ集団が、ビーズ、プライマー、鋳型、及びPCR成分を含むマイクロリアクターにおいて調製される。PCR後、鋳型が変性され、ビーズが富化されて、鋳型が伸長したビーズは分離される。選択されたビーズ上の鋳型は、スライドガラスへの結合を可能にする3’修飾を受ける。特異的フルオロフォアによって同定された中心決定塩基(又は塩基対)を伴う部分的ランダムオリゴヌクレオチドの連続的なハイブリダイゼーション及びライゲーションによって、配列が決定され得る。色が記録された後、ライゲーションされたオリゴヌクレオチドが切断され除去され、その後、プロセスが反復される。
【0226】
[00293]他の実施形態では、遺伝子発現を測定するために遺伝子発現のSOLiD(商標)連続分析(SAGE)が使用される。遺伝子発現の連続分析(SAGE)は、各転写物について個々のハイブリダイゼーションプローブを提供する必要なく、多数の遺伝子転写物について同時的及び定量的分析を可能にする方法である。第1に、タグが各転写物内の固有な位置から得られるという条件で、転写物を一意に同定するための十分な情報を含む短い配列タグ(約10~14bp)を生成する。次いで、多くの転写物が一緒に連結されて長い連続分子を形成し、これが配列決定されて、複数のタグの同一性を同時に明らかにすることができる。転写物の任意の集団の発現パターンは、個々のタグの存在量を決定し、各タグに対応する遺伝子を同定することによって定量的に評価され得る。さらなる詳細については、例えば、参照によりそれぞれの内容が全体として本明細書に組み込まれるVelculescu et al.,Science 270:484 487 (1995);及びVelculescu et al., Cell 88:243 51 (1997)を参照されたい。
【0227】
[00294]使用され得る別の配列決定技術は、例えば、Helicos True Single Molecule Sequencing (tSMS) (Harris T. D. et al. (2008) Science 320: 106-109)を含む。tSMS技術において、DNA試料は、約100から200ヌクレオチドの鎖へ切断され、ポリA配列は、各DNA鎖の3’末端に付加される。各鎖は、蛍光標識されたアデノシンヌクレオチドの付加によって標識される。次いで、DNA鎖は、フローセル表面に固定化された数百万個のオリゴ-T捕捉部位を含有するフローセルにハイブリダイズされる。鋳型は、約1億個の鋳型/cmの密度であり得る。次いで、フローセルが機器、例えば、HeliScopeシーケンサーにロードされ、レーザーがフローセルの表面を照射し、各鋳型の位置を明示する。CCDカメラが、フローセル表面上の鋳型の位置をマッピングすることができる。次いで、鋳型蛍光標識が切断され洗浄除去される。配列決定反応は、DNAポリメラーゼ及び蛍光標識されたヌクレオチドを導入することにより開始する。オリゴ-T核酸はプライマーとして働く。ポリメラーゼは、標識されたヌクレオチドを鋳型指向的様式でプライマーに組み込む。ポリメラーゼ及び組み込まれなかったヌクレオチドが除去される。蛍光標識されたヌクレオチドの組込みを指示した鋳型は、フローセル表面をイメージングすることによって検出される。イメージング後、切断工程は蛍光標識を除去し、所望の読取り長が達成されるまで、プロセスは、他の蛍光標識されたヌクレオチドを用いて反復される。配列情報は、各ヌクレオチド付加工程で収集される。tSMSのさらなる説明は、例えば、Lapidus et al.(米国特許第7,169,560号)、Lapidus et al.(米国特許出願第2009/0191565号)、Quake et al.(米国特許第6,818,395号)、Harris(米国特許第7,282,337号)、Quake et al.(米国特許出願第2002/0164629号)、及びBraslavsky, et al., PNAS (USA), 100: 3960-3964 (2003)に示されており、それぞれが参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0228】
[00295]使用され得る配列決定技術の別の例は、DNAとRNAの両方を配列決定するためのPacificBiosciencesの単一分子リアルタイム(SMRT)技術を含む。SMRTでは、4つのDNA塩基のそれぞれが、4つの異なる蛍光色素の1つに結合される。これらの色素はホスホ連結される。単一のDNAポリメラーゼが、ゼロモード導波路(ZMW)の底部に、鋳型一本鎖DNAの単一分子を用いて固定化される。ZMWは、ZMWの外部に急速に(マイクロ秒で)拡散する蛍光ヌクレオチドのバックグラウンドに対する、DNAポリメラーゼによる単一ヌクレオチドの組込みの観察を可能にする閉じ込め構造である。ヌクレオチドを成長中の鎖に組み込むには数ミリ秒かかる。この時間に、蛍光標識が励起されて蛍光シグナルを生成し、蛍光タグが切断除去される色素の対応する蛍光の検出は、どの塩基が組み込まれたかを示す。このプロセスが反復される。RNAを配列決定するために、DNAポリメラーゼがZMW中で逆転写酵素と置き換えられ、それに応じてプロセスが行われる。
【0229】
[00296]あり得る配列決定技術の別の例は、DNAを配列決定するための化学感応性電界効果トランジスタ(chemFET)の使用を含む(例えば、米国特許出願公開第20090026082号に記載されている)。この技術の一例では、DNA分子が、反応チャンバーに入れられ、鋳型分子が、ポリメラーゼに結合された配列決定プライマーにハイブリダイズされ得る。配列決定プライマーの3’末端での1つ又は複数の三リン酸の新しい核酸鎖への組込みが、chemFETによる電流の変化によって検出され得る。アレイは、複数のchemFETセンサーを有することができる。別の例では、単一の核酸をビーズに結合することができ、核酸をビーズ上で増幅することができ、個々のビーズを、各チャンバーがchemFETセンサーを有するchemFETアレイ上の個々の反応チャンバーに移すことができ、核酸を配列決定することができる。
【0230】
[00297]使用され得る配列決定技術の別の例は、電子顕微鏡の使用を含む(Moudrianakis E. N. and Beer M. Proc Natl Acad Sci USA. 1965 March; 53:564-71)。この技術の一例では、電子顕微鏡を使用して識別できる金属標識を使用して、個々のDNA分子が標識される。次いで、これらの分子は、平坦な表面上で伸長され、電子顕微鏡を使用して画像化されて、配列が測定される。
【0231】
[00298]DNAナノボール配列決定は、生物の全ゲノム配列を決定するために使用されるハイスループット配列決定技術の一種である。この方法は、ローリングサークル複製を使用して、ゲノムDNAの小断片をDNAナノボールに増幅する。次いで、ライゲーションによる非連鎖配列決定が、ヌクレオチド配列を決定するために使用される。DNA配列決定のこの方法は、1回の実行当たり多数のDNAナノボールを配列決定することを可能にする。それぞれ全体が参照により本明細書に組み込まれるWO2014122548及びDrmanac et al., Science. 2010 Jan 1;327(5961):78-81; Porreca, Nat Biotechnol. 2010 Jan;28(1):43-4を参照されたい。
【0232】
[00299]大規模並列シグネチャー配列決定(MPSS)は、初期の次世代配列決定技術の1つであった。MPSSは、アダプターライゲーションとそれに続くアダプターデコーディングの複雑な手法を使用し、4つのヌクレオチドの増分で配列を読み取る。
【0233】
[00300]ポロニー配列決定は、invitroで対合したタグライブラリーと、エマルジョンPCR、自動化顕微鏡、及びライゲーションベースの配列決定化学とを組み合わせて、大腸菌ゲノムを配列決定する。この技術は、Applied Biosystems SOLiDプラットフォームにも組み込まれた。
【0234】
[00301]Solexa配列決定では、DNA分子とプライマーとを最初にスライドに結合させ、ポリメラーゼを用いて増幅させることにより、最初に作られた「DNAコロニー」である局所クローンコロニーが形成されるようにする。配列を決定するために、4つの型の可逆性ターミネーター塩基(RT-塩基)が付加され、組み込まれなかったヌクレオチドが洗浄除去される。パイロシーケンシングとは異なり、DNA鎖は一度に1ヌクレオチド伸長され、画像の獲得が遅延された時点で実行され、単一のカメラから撮影された連続画像によってDNAコロニーの大きなアレイを捕捉することを可能にする。
【0235】
[00302]SOLiD技術は、ライゲーションによる配列決定を利用する。ここで、固定長の全ての可能なオリゴヌクレオチドのプールが、配列決定された位置に従って標識される。
【0236】
[00303]オリゴヌクレオチドがアニーリング及びライゲーションされ、配列を一致させるためのDNAリガーゼによる選択的ライゲーションが、その位置でのヌクレオチドを示すシグナルをもたらす。配列決定の前に、DNAはエマルジョンPCRによって増幅される。各々が同じDNA分子の単一コピーを含有する、得られるビーズが、スライドガラス上に沈着される。その結果は、Solexa配列決定に匹敵する量及び長さの配列である。
【0237】
[00304]Ion Torrent(商標)配列決定では、DNAは、約300~800塩基対の断片へ剪断され、断片は平滑末端化される。次いで、オリゴヌクレオチドアダプターが断片の末端にライゲーションされる。アダプターは、断片の増幅及び配列決定のためのプライマーとして働く。断片は、表面に結合することができ、断片が個々に分解可能であるような分解能で結合される。1つ又は複数のヌクレオチドの付加は、プロトン(H+)を放出させ、そのシグナルが配列決定機器で検出され記録される。シグナル強度は、組み込まれたヌクレオチドの数に比例する。IonTorrentデータがFASTQファイルとして出力されてもよい。それぞれ全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2009/0026082号、第2009/0127589号、第2010/0035252号、第2010/0137143号、第2010/0188073号、第2010/0197507号、第2010/0282617号、第2010/0300559号、第2010/0300895号、第2010/0301398号、及び第2010/0304982号を参照されたい。
【0238】
[00305]がん関連融合タンパク質の検出
[00306]融合遺伝子は、非融合遺伝子よりもはるかに活発な異常タンパク質を生成し得るため、腫瘍形成に寄与し得る。融合遺伝子は、がんを引き起こすがん遺伝子であることが多く、これらは、BCR-ABL、TEL-AML1((12;21)を有するALL)、AML1-ETO(t(8;21)を有するM2 AML)、及び前立腺がんにおいて生じることが多い第21染色体上の中間部欠失を有するTMPRSS2-ERGを含む。TMPRSS2-ERGの場合、アンドロゲン受容体(AR)シグナル伝達を破壊し、発がん性ETS転写因子によるAR発現を阻害することにより、融合産物が前立腺がんを調節する。ほとんどの融合遺伝子は、血液がん、肉腫、及び前立腺がんから見出される。発がん性融合遺伝子は、2つの融合パートナーに由来する新しい機能又は異なる機能を有する遺伝子産物をもたらし得る。或いは、がん原遺伝子が強力なプロモーターに融合され、それにより、発がん機能が、上流の融合パートナーの強力なプロモーターにより引き起こされる上方制御によって機能するように設定される。後者は、がん遺伝子が免疫グロブリン遺伝子のプロモーターに並置される、リンパ腫において一般的である。また、発がん性融合転写物は、トランススプライシング又はリードスルー事象によって引き起こされ得る。特定の染色体異常及びその結果の融合遺伝子の存在は、正確な診断を行うためにがん診断において一般的に使用される。染色体分染分析、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)、及び逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)は、がん関連融合タンパク質の同定のために診断検査室で利用される一般的な方法である。
【0239】
[00307]化学療法耐性マーカーの検出
[00308]薬物耐性は、悪性腫瘍の化学療法の失敗の原因であり、耐性は、元々存在する(内因性耐性)又は薬物によって誘導される(獲得耐性)のいずれかである。耐性マーカーの検出は、以下に限定されないが、免疫組織化学及びフローサイトメトリーによるがん関連線維芽細胞の同定、免疫組織化学染色を使用するアルデヒドデヒドロゲナーゼ1、切断カスパーゼ3、シクロオキシゲナーゼ2、リン酸化Akt、Ki-67及びH2AXタンパク質、P糖タンパク質発現、ヒアルロナン(細胞外マトリックスの主なグリコサミノグリカン成分)、全ゲノムアレイ比較ゲノミクスハイブリダイゼーションにより同定される3q26.2の獲得並びに6q11.2-12、9p22.3、9p22.2-22.1、9p22.1-21.3、Xp22.2-22.12、Xp22.11-11.3、及びXp11.23-11.1の喪失、免疫染色により同定されるLRP過剰発現、RNA配列決定を使用するマイクロRNA MiR-193a-5pに関連する遺伝子産物であるHGF及びc-MET、細胞選別により同定されるCD44過剰発現、並びにヒストンデアセチラーゼの強力な阻害剤であるトリコスタチンAに基づく。化学療法耐性マーカーは、しばしば、タンパク質の過剰発現を形態を取ることがあり、この過剰発現のDNA、RNA、又はタンパク質レベルでの同定は、限定されないがDNA配列決定、RNA配列決定、及びタンパク質配列決定などの技術を使用する。一部の化学療法耐性マーカーは、エピジェネティックな変化の形態を取り、DNAパイロシーケンシングによるこれらの変化の同定は、化学療法耐性マーカーの同定に特に有用であり得る。さらに、遺伝子の突然変異は、遺伝子産物の発現に直接影響して、がん性細胞の形成をもたらす可能性があり、DNA配列決定による遺伝子突然変異の同定は、非常に有用である。現在では、耐性は通常、長期間の薬物投与後の治療において診断される。薬物耐性の迅速な評価のための方法が現在存在する。一般に、3つのクラスの試験手順、すなわち、新鮮腫瘍細胞培養試験、がんバイオマーカー試験、及びポジトロン放出断層撮影(PET)試験が使用される。薬物耐性は、新鮮腫瘍細胞培養試験を用いてin vitroで治療前に、及びPET試験を用いてin vivoで短時間の治療後に診断され得る。Lippert, T. et al. (2011). “Current status of methods to assess cancer drug resistance”. Int. J. Med. Sci. 8 (3): 245-253を参照されたい。
【0240】
[00309]腫瘍特異的抗原又は腫瘍特異的抗体及び抗腫瘍ワクチンの生産のための代表試料の使用
[00310]上述のように、対象試料の別の適用例は、腫瘍特異的抗体の生産又はがん若しくは腫瘍ワクチンの製造において使用され得る、腫瘍細胞及びそれに由来する抗原の単離のためのものである。
【0241】
[00311]がんワクチン接種の1つの手法は、がん細胞を死滅し得る免疫反応を刺激することを望んで、がん細胞からタンパク質を分離し、これらのタンパク質に対してがん患者を免疫することである。治療用がんワクチンは、乳がん、肺がん、結腸がん、皮膚がん、腎臓がん、前立腺がん、及び他のがんの治療のために開発されている。実際、前立腺がんを治療するためにDendreon Corporationによって開発された1つのそのようなワクチンが、2010年4月29日に進行性前立腺がん患者の治療での使用について米国食品医薬品局(FDA)の認可を受けた。このワクチンProvenge(登録商標)の認可は、このタイプの療法における新たな興味を刺激した。
【0242】
[00312]https://en.wikipedia.org/wiki/Cancer_vaccine - cite_note-8
例えば、例えば、腫瘍細胞又は同定された腫瘍細胞に由来するタンパク質分解切断された細胞表面抗原が、有効な治療的又は予防的腫瘍ワクチンの開発において使用され得る。これらの抗原は、ネイキッドであるか、又は他の部分、例えば、他のタンパク質やアジュバントに多量体化若しくはコンジュゲートされるか、又は細胞、例えば、樹状細胞に載せられることがある。生きたがん細胞のタンパク質分解処理により、in vivoで未処理のがん細胞のものを超える抗がん免疫応答を誘導するのに十分な抗原性標的を放出することが可能なことが示されている(Lokhov et al., J Cancer 2010 1:230-241)。
【0243】
[00313]特に、特定の患者試料から単離された腫瘍細胞に由来する異なる抗原の1つ又はカクテルを含有する腫瘍ワクチン、本質的には「個別化がんワクチン」の生産が企図され、したがって、患者の特定の腫瘍型に特異的な免疫刺激部分でその患者が治療され得る。一般に、これらのワクチンは、有効な免疫応答、例えば、特定の抗原を発現する腫瘍細胞に対する抗原特異的CTL応答を生成するために有効な量のそのような抗原を含む。前述のように、いくつかの例では、これらの抗原は、他の部分、例えば、樹状細胞上に載せられることがある。一般的に、そのようなワクチンは、他の免疫アジュバント、例えば、サイトカイン、TLRアゴニスト、TNF/Rアゴニスト又はアンタゴニスト、チェックポイント阻害剤を調節する薬剤なども含む。
【0244】
[00314]また、いくつかの実施形態において、本開示は、抗血清及びモノクローナル抗体の生産のためのそのような抗原の使用をさらに企図する。これらの抗体は、診断目的で、すなわち、試料中の腫瘍細胞又は抗原の検出のために使用され得る。或いは、そのような抗体、特に、そのような腫瘍抗原に特異的なヒト抗体又はヒト化抗体が、これらの抗原を発現するがんの治療において治療的に使用され得る。治療において潜在的に使用するための抗体を作製する方法は、当技術分野で周知である。
【0245】
[00315]本発明は、以下のように階層的に開示され得る複数の異なる実施形態を含む。
実施形態
1. エピタコ電気泳動をもたらすのに十分な1つ又は複数の電極の配列を備え、又はその配列と接触する、試料分析のための装置。
2. 前記装置は、円形、球形、又は多角形の形状を備える請求項1に記載の装置。
3. 前記試料の分析のための前記装置の使用中に、前記装置のエピタコ電気泳動ゾーンは、多角形又は円の縁部から多角形又は円の中心に向かって移動する、請求項2に記載の装置。
4. 前記多角形は、三角形、四角形、五角形、六角形、七角形、八角形、九角形、十角形から選択される、請求項3に記載の装置。
5. 前記多角形は、3、4、5、6、7、8、9、10~20、20~50、若しくは50~100個、又はより多数の辺を有する、請求項3に記載の装置。
6. 電極の前記配列は、エピタコ電気泳動をもたらすのに十分な1つ又は複数の電極の2次元配列を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
7. 前記1つ又は複数の電極は、1つ又は複数のリング状(円形)電極を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
8. 前記1つ又は複数の電極は、多角形形状に配置された1つ又は複数の電極を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
9. 前記多角形は、三角形、四角形、五角形、六角形、七角形、八角形、九角形、十角形から選択される、請求項8に記載の装置。
10. 前記多角形は、3、4、5、6、7、8、9、10~20、20~50、若しくは50~100個、又はより多数の辺を有する、請求項8に記載の装置。
11. 電極の前記配列の直径又は幅は、約1mmから約20mmの範囲である請求項6から10のいずれか一項に記載の装置。
12. 前記1つ又は複数の電極は、前記装置の中心における電極を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の装置。
13. 前記1つ又は複数の電極は、白金めっき及び/若しくは金めっきステンレス鋼リング、1つ若しくは複数のステンレス鋼電極、並びに/又は1つ若しくは複数のグラファイト電極を含む請求項1から12のいずれか一項に記載の装置。
14. 前記1つ又は複数の電極は、1つ又は複数のワイヤ電極を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の装置。
15. 前記1つ又は複数の電極は、2つ以上の規則的に離間された電極の配列を含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の装置。
16. 前記装置は、ガラス、セラミック、及び/又はプラスチックを含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の装置。
17. 前記装置は、1μl以下、1μl以上、10μl以上、100μl以上、1mL以上、4mL以上、5mL以上、10mL以上、又は15mL以上の試料ボリュームを収容する寸法を備える、請求項1から16のいずれか一項に記載の装置。
18. 前記ボリュームは約15mLである、請求項17に記載の装置。
19. 電流が、1つ又は複数の高電圧接続と前記システムの中心における接地接続とを介して印加される、請求項1から18のいずれか一項に記載の装置。
20. 試料が、前記装置に上部の開口を通して注入される、請求項1から19のいずれか一項に記載の装置。
21. 使用中に、集束された試料が前記装置の中心に集まる、請求項1から20のいずれか一項に記載の装置。
22. 前記集束された試料は、標的分析物を含む、請求項21に記載の装置。
23. 試料は、エピタコ電気泳動の後に前記装置の中心から収集される、請求項1から22のいずれか一項に記載の装置。
24. 前記装置への電気の印加が、試料に含まれる標的分析物を集束ゾーンに集束させる、請求項1から23のいずれか一項に記載の装置。
25. 前記標的分析物は、エピタコ電気泳動の後に前記装置の中心から収集される、請求項24に記載の装置。
26. 前記装置は、リーディング電解質及びトレーリング電解質をさらに備える、請求項1から25のいずれか一項に記載の装置。
27. 前記装置は、カチオン分離/エピタコ電気泳動のために使用される、請求項1から26のいずれか一項に記載の装置。
28. 前記装置は、アニオン分離/エピタコ電気泳動のために使用される、請求項1から27のいずれか一項に記載の装置。
29. 前記装置は、ゲルによって安定化された、又は他の様式でターミナル電解質から流体力学的に分離されたリーディング電解質を備え、前記ゲルは、任意選択で、pH安定性があり、粘性添加剤である、請求項1から28のいずれか一項に記載の装置。
30. 前記ゲル又は流体力学的分離は、装置動作中のリーディング電解質とターミナル電解質の混合を防止する、請求項29に記載の装置。
31. 前記ゲルは、非荷電材料を含み、及び/又はヒドロゲルを含む、請求項29又は請求項30に記載の装置。
32. 前記非荷電材料は、アガロース、ポリアクリルアミド、プルラミンなどを含む、請求項31に記載の装置。
33. 前記装置は、直径が約10μmから約20mmの厚さ(高さ)の範囲であるリーディング電解質を含む、請求項1から32のいずれか一項に記載の装置。
34. 前記装置は、管によってコンセントレータに接続されたリーディング電解質リザーバにおける電極を備える、請求項1から33のいずれか一項に記載の装置。
35. 前記管は、直接接続され、又は一方の端部で半透膜によって閉鎖される、請求項34に記載の装置。
36. 前記コンセントレータは、例えば、キャピラリー分析器、クロマトグラフィー、PCR装置、酵素反応器などの他の装置にオンラインで接続される、請求項34又は35に記載の装置。
37. 前記管は、前記リーディング電解質を含むゲルがない配置において、リーディング電解質の向流の流れを供給するために使用される、請求項34から36のいずれか一項に記載の装置。
38. 前記装置は、少なくとも1つの電解質リザーバを備える、請求項1から37のいずれか一項に記載の装置。
39. 前記装置は、少なくとも2つの電解質リザーバを備える、請求項1から38のいずれか一項に記載の装置。
40. 前記装置は、少なくとも3つの電解質リザーバを備える、請求項1から39のいずれか一項に記載の装置。
41. 試料は、リーディング電解質と混合され、次いで前記装置内に装填される、請求項1から40のいずれか一項に記載の装置。
42. 試料は、トレーリング電解質と混合され、次いで前記装置内に装填される、請求項1から41のいずれか一項に記載の装置。
43. 試料は、導電性溶液と混合され、次いで前記装置内に装填される、請求項1から42のいずれか一項に記載の装置。
44. エピタコ電気泳動のための適切なターミナルイオンを含有する試料が、前記装置内に装填される、請求項1から43のいずれか一項に記載の装置。
45. 前記試料の前記使用により、ターミナル電解質ゾーンを除去する、請求項44に記載の装置。
46. 前記装置は、標的分析物を濃縮するために使用される、請求項1から45のいずれか一項に記載の装置。
47. 前記装置は、前記標的分析物を約2倍以上から約1000倍以上に濃縮する、請求項45に記載の装置。
48. 前記標的分析物は標的核酸を含む、請求項45又は請求項46に記載の装置。
49. 前記標的分析物は、小さな無機イオン及び有機イオン、ペプチド、タンパク質、多糖、DNA、細菌及び/又はウイルスを含む、請求項45から47のいずれか一項に記載の装置。
50. 前記装置は、定電流、定電圧、又は定電力を使用して動作される、請求項1から49のいずれか一項に記載の装置。
51. 前記装置は、定電流を使用して動作される、請求項49に記載の装置。
52. 半径rで開始してから距離dにおける速度vを計算するためのエピタコ電気泳動境界速度方程式は、v(d)=uLI/2π(r-d)hκL=Constant/(r-d)によって与えられる、請求項50に記載の装置。
53. 前記装置は、定電圧を使用して動作される、請求項49に記載の装置。
54. 半径rで開始してから距離dにおける速度vを計算するためのエピタコ電気泳動境界速度方程式は、vL=uLUκT/[(r-d)κT+κLdによって与えられる、請求項52に記載の装置。
55. 前記装置は、定電力を使用して動作される、請求項49に記載の装置。
56. 半径rで開始してから距離dにおける速度vを計算するためのエピタコ電気泳動境界速度方程式は、
【0246】
【0247】
によって与えられる、請求項54に記載の装置。
57. 前記装置は、全血又は血漿から核酸を抽出するために使用される、請求項1から56のいずれか一項に記載の装置。
58. 前記核酸は、1つ又は複数の標的核酸を含む、請求項57に記載の装置。
59. 前記装置は、試料に含まれる核酸の全部を抽出するために使用される、請求項1から58のいずれか一項に記載の装置。
60. 前記装置は、試料からctDNAを抽出するために使用される、請求項1から59のいずれか一項に記載の装置。
61. 前記装置は、試料から、例えば、妊婦からの血液又は血漿からcfDNAを抽出するために使用される、請求項1から60のいずれか一項に記載の装置。
62. 前記装置は、試料から、例えば、細菌、ウイルス、酵母、真菌、又は寄生生物から微生物を抽出するために使用される、請求項1から61のいずれか一項に記載の装置。
63. 前記装置は、試料からバイオマーカーを抽出するために使用される、請求項1から62のいずれか一項に記載の装置。
64. 前記装置は、無細胞DNAから標的核酸を抽出するために使用される、請求項1から63のいずれか一項に記載の装置。
65. 前記装置は、試料から標的分析物を濃縮及び収集するために使用される、請求項1から64のいずれか一項に記載の装置。
66. 前記標的分析物は、任意のイオン、分子、核酸、バイオマーカー、及び/又は細胞若しくは細胞の集団、例えば所望のセルから選択される、請求項65に記載の装置。
67. 前記試料は生体試料を含む、請求項65又は66に記載の装置。
68. 前記標的分析物は、1つ又は複数の下流in vitro診断用途のために使用される、請求項66又は請求項67に記載の装置。
69. 前記装置の使用は、カラム又はビーズベースの抽出方法と比較してより高い抽出収率(潜在的に損失が減少する);MagNA Pure又は他のベンチトップ機器のより大きなフットプリントと比較してより単純な装置セットアップ;同様の使用に適用される他の装置と比較して潜在的により速い試料ターンアラウンド及び高い並列化可能性;抽出された核酸のダウンストリーム処理のための他のマイクロ流体ベースのシステムとの容易な統合のうちの任意の1つ又は複数をもたらす、請求項1から68のいずれか一項に記載の装置。
70. 前記試料の分析のためにエピタコ電気泳動を行うステップを含む、試料分析の方法。
71. 前記方法は、a.エピタコ電気泳動をもたらすための装置を提供するステップと、b.1つ又は複数の標的分析物を含む試料を前記装置上に提供するステップと、c.前記装置上にリーディング電解質及びトレーリング電解質を提供するステップと、d.前記装置を使用してエピタコ電気泳動を行うステップと、e.前記1つ又は複数の標的分析物を収集するステップとをさらに含む、請求項70に記載の方法。
72. 前記装置は、多角形又は円形又は回転楕円形の形状を備える、請求項71に記載の方法。
73. 前記試料の分析中に、前記装置のエピタコ電気泳動ゾーンは、エピタコ電気泳動中に多角形又は円の縁部から多角形又は円の中心に向かって移動する請求項71又は請求項72に記載の方法。
74. 前記多角形は、三角形、四角形、五角形、六角形、七角形、八角形、九角形、十角形から選択される、請求項73に記載の方法。
75. 前記多角形は、3、4、5、6、7、8、9、10~20、20~50、若しくは50~100個、又はより多数の辺を有する、請求項73に記載の方法。
76. エピタコ電気泳動は、1つ又は複数の電極の2次元配列を使用することによってもたらされる、請求項70から75のいずれか一項に記載の方法。
77. エピタコ電気泳動は、1つ又は複数のリング状(円形)電極を使用することによってもたらされる、請求項70から76のいずれか一項に記載の方法。
78. エピタコ電気泳動は、多角形形状に配置された1つ又は複数の電極によってもたらされる、請求項70から77のいずれか一項に記載の方法。
79. 前記多角形は、三角形、四角形、五角形、六角形、七角形、八角形、九角形、十角形から選択される、請求項78に記載の方法。
80. 前記多角形は、3、4、5、6、7、8、9、10~20、20~50、若しくは50~100個、又はより多数の辺を有する、請求項78に記載の方法。
81. 電極の前記配列の直径又は幅は、約10mmから約20mmの範囲である、請求項76から80のいずれか一項に記載の方法。
82. 前記方法は、エピタコ電気泳動をもたらすための前記装置の中心における電極の使用をさらに含む、請求項70から81のいずれか一項に記載の方法。
83. 1つ若しくは複数の白金めっき及び/若しくは金めっきステンレス鋼リング、1つ若しくは複数のステンレス鋼電極、並びに/又は1つ若しくは複数のグラファイト電極が、エピタコ電気泳動をもたらすために使用される、請求項70から82のいずれか一項に記載の方法。
84. 1つ又は複数のワイヤ電極が、エピタコ電気泳動をもたらすために使用される、請求項70から83のいずれか一項に記載の方法。
85. 2つ以上の規則的に離間された電極の配列が、エピタコ電気泳動をもたらすために使用される、請求項70から84のいずれか一項に記載の方法。
86. 前記装置は、ガラス、セラミック、及び/又はプラスチックを含む、請求項71から85のいずれか一項に記載の方法。
87. 前記方法は、1μl以下、1μl以上、10μl以上、100μl以上、1mL以上、10mL以上、又は15mL以上の試料ボリュームを使用する、請求項71から86のいずれか一項に記載の方法。
88. 前記ボリュームは約15mLである、請求項87に記載の方法。
89. 電流が、1つ又は複数の高電圧接続と前記システムの中心における接地接続とを介して印加される、請求項70から88のいずれか一項に記載の方法。
90. 試料が、前記装置に上部の開口を通して注入される、請求項70から89のいずれか一項に記載の方法。
91. 試料が集束され、前記集束された試料が前記装置の中心に集まる、請求項70から90のいずれか一項に記載の方法。
92. 前記集束された試料は、標的分析物を含む、請求項91に記載の方法。
93. 試料は、エピタコ電気泳動の後に前記装置の中心から収集される、請求項70から92のいずれか一項に記載の方法。
94. 前記方法を行うための電気の印加が、試料に含まれる標的分析物を集束ゾーンに集束させる、請求項70から93のいずれか一項に記載の方法。
95. 前記標的分析物は、円形ITPの後に収集される、請求項94に記載の方法。
96. 前記方法は、リーディング電解質及びトレーリング電解質の使用をさらに含む、請求項70から95のいずれか一項に記載の方法。
97. 前記エピタコ電気泳動は、カチオン分離のために使用される、請求項70から96のいずれか一項に記載の方法。
98. 前記エピタコ電気泳動は、アニオン分離のために使用される、請求項70から97のいずれか一項に記載の方法。
99. 前記方法は、ゲル、粘性添加剤によって安定化された、又は他の様式でターミナル電解質から流体力学的に分離された、リーディング電解質の使用を含む、請求項70から98のいずれか一項に記載の方法。
100. 前記ゲル又は流体力学的分離は、装置動作中のリーディング電解質とターミナル電解質の混合を防止する、請求項99に記載の方法。
101. 前記ゲルは、非荷電材料を含む、請求項99又は100に記載の方法。
102. 前記非荷電材料は、アガロース、ポリアクリルアミド、プルラミンなどを含む、請求項101に記載の方法。
103. 前記方法は、直径が約10μmから約20mmの厚さ(高さ)の範囲であるリーディング電解質の使用を含む、請求項70から102のいずれか一項に記載の方法。
104. 前記ピタコ電気泳動をもたらした後、前記方法から得られた濃縮された試料をさらに評価するために、キャピラリー分析器、クロマトグラフィー、PCR装置、酵素反応器などが使用される、請求項70から103のいずれか一項に記載の方法。
105. 管によってコンセントレータに接続されたリーディング電解質リザーバにおける電極を使用して、前記リーディング電解質を含むゲルがない配置において前記リーディング電解質の向流の流れを供給する、請求項70から104のいずれか一項に記載の方法。
106. まず、リーディング電解質がエピタコ電気泳動をもたらすための装置内に装填され、続いて、ターミナル電解質と混合された試料が装填される、請求項70から105のいずれか一項に記載の方法。
107. 試料がリーディング電解質と混合され、エピタコ電気泳動をもたらすための装置内に装填され、続いて、ターミナル電解質が装填される、請求項70から106のいずれか一項に記載の方法。
108. 試料が導電性溶液と混合され、次いで、エピタコ電気泳動をもたらすための装置内に装填される、請求項70から107のいずれか一項に記載の方法。
109. 円形ITPのための適切なターミナルイオンを含有する試料が、エピタコ電気泳動をもたらすための装置内に装填される、請求項70から108のいずれか一項に記載の方法。
110. 前記試料の使用により、ターミナル電解質ゾーンを除去する、請求項109に記載の方法。
111. 前記方法は、標的分析物を濃縮する、請求項70から110のいずれか一項に記載の方法。
112. 前記方法は、前記標的分析物を約1000倍以上にまで濃縮する、請求項111に記載の方法。
113. 前記標的分析物は標的核酸を含む、請求項111又は112に記載の方法。
114. 前記標的分析物は、小さな無機イオン及び有機イオン、ペプチド、タンパク質、多糖、DNA、細菌及び/又はウイルスを含む、請求項111から113のいずれか一項に記載の方法。
115. 前記方法は、定電流、定電圧、又は定電力を使用することによって行われる、請求項70から114のいずれか一項に記載の方法。
116. 前記方法は、定電流を使用することによって行われる、請求項115に記載の方法。
117. 半径rで開始してから距離dにおける速度vを計算するためのエピタコ電気泳動境界速度方程式は、v(d)=uLI/2π(r-d)hκL=Constant/(r-d)によって与えられる、請求項116に記載の方法。
118. 前記方法は、定電圧を使用することによって行われる、請求項115に記載の方法。
119. 半径rで開始してから距離dにおける速度vを計算するためのエピタコ電気泳動境界速度方程式は、vL=uLUκT/[(r-d)κT+κLdによって与えられる、請求項118に記載の方法。
120. 前記方法は、定電力を使用することによって行われる、請求項115に記載の方法。
121. 半径rで開始してから距離dにおける速度vを計算するためのエピタコ電気泳動境界速度方程式は、
【0248】
【0249】
によって与えられる、請求項120に記載の方法。
122. 前記方法は、全血又は血漿から核酸を抽出するために使用される、請求項70から121のいずれか一項に記載の方法。
123. 前記核酸は、1つ又は複数の標的核酸を含む、請求項122に記載の方法。
124. 前記方法は、無細胞DNAから標的核酸を抽出するために使用される、請求項70から123のいずれか一項に記載の方法。
125. 前記方法は、試料から標的分析物を濃縮及び収集するために使用される、請求項70から124のいずれか一項に記載の方法。
126. 前記試料は生体試料を含む、請求項125に記載の方法。
127. 前記標的分析物は、1つ又は複数の下流in vitro診断用途のために使用される、請求項125又は請求項126に記載の方法。
128. 前記方法は、カラム又はビーズベースの抽出方法と比較してより高い抽出収率(潜在的に損失が減少する);MagNA Pure又は他のベンチトップ機器のより大きなフットプリントと比較してより単純な装置セットアップ;同様の使用に適用される他の装置と比較して潜在的により速い試料ターンアラウンド及び高い並列化可能性;抽出された核酸のダウンストリーム処理のための他のマイクロ流体ベースのシステムとの容易な統合のうちの任意の1つ又は複数をもたらす、請求項70から127のいずれか一項に記載の方法。
129. 請求項1から69のいずれか一項に記載の装置を使用することによって、前記方法は行われる、請求項70から128のいずれか一項に記載の方法。
130. エピタコ電気泳動をもたらすのに十分な1つ又は複数の電極の配列を備え、又はその配列と接触する、試料分析のための装置であって、試料のエピタコ電気泳動分析のための装置の使用中に装置のエピタコ電気泳動ゾーンが多角形又は円の縁部から多角形又は円の中心に向かって移動するように、多角形又は円形又は回転楕円形の形状を備える装置。
131. 円形又は回転楕円形又は多角形のアーキテクチャを備え、さらに、エピタコ電気泳動をもたらすのに十分な1つ又は複数の電極の配列を備え、又はその配列と接触する、試料分析のための装置。
132. エピタコ電気泳動をもたらすのに十分な1つ又は複数の電極の2次元配列を備える、試料分析のための装置。
133. a.エピタコ電気泳動に十分な電極の配列を備える装置を提供するステップと、b.1つ又は複数の標的分析物を含む試料を前記装置上に提供するステップと、c.前記装置上にリーディング電解質及びトレーリング電解質を提供するステップと、d.前記装置を使用してエピタコ電気泳動を行うステップと、e.前記1つ又は複数の標的分析物を収集するステップとを含む、試料分析の方法。
134. a.エピタコ電気泳動をもたらすのに十分な1つ又は複数の電極の配列を備え、又はその配列と接触する装置を提供するステップであって、前記装置は、試料の分析のための前記装置の使用中に前記装置のエピタコ電気泳動ゾーンが多角形又は円又は回転楕円形の縁部から前記多角形又は円の中心に向かって移動するように、前記多角形又は円形又は回転楕円形の形状を備える、ステップと、b.1つ又は複数の標的分析物を含む試料を前記装置上に提供するステップと、c.前記装置上にリーディング電解質及びトレーリング電解質を提供するステップと、d.前記装置を使用してエピタコ電気泳動を行うステップと、e.前記1つ又は複数の標的分析物を収集するステップとを含む、試料分析の方法。
135. a.エピタコ電気泳動をもたらすのに十分な電極の非線形の連続的配列を備える装置を提供するステップと、b.1つ又は複数の標的分析物を含む試料を前記装置上に提供するステップと、c.前記装置上にリーディング電解質及びトレーリング電解質を提供するステップと、d.前記装置を使用してエピタコ電気泳動を行うステップと、e.前記1つ又は複数の標的分析物を収集するステップとを含む、試料分析の方法。
【実施例】
【0250】
実施例1
[00316]エピタコ電気泳動のための装置
[00317]エピタコ電気泳動のための装置は、一般的に、例えば、
図1~
図4に示されるように、同心又は多角形の円盤アーキテクチャを使用する。システムの作製のためにガラス又はセラミック(すなわち、同心又は多角形の円盤の材料)が使用されるが、それは、これらの材料が、装置動作中に有益である改善された熱伝達特性をもたらすからである。例えば、エピタコ電気泳動装置の平坦なチャネルは、狭いチャネルと比較して好ましい熱伝達能力を有するので、集束された材料の過熱(又は沸騰)は概して防止される。また、電流/電圧プログラミングが、装置のジュール加熱を調整するのに適している。また、プラスチック材料が装置作製のために使用される。一般に、所望の試料ボリューム、例えば、ミリリットルスケールの試料ボリューム、例えば15mLまでを収容するような寸法の装置が作製される。
【0251】
[00318]
図1~
図3を参照すると、2つの同心円盤がスペーサーによって分離され、それにより、エピタコ電気泳動試料処理のための平坦なチャネルを形成している。電流が、複数の高電圧接続(HV接続)とシステムの中心における接地接続とを介して印加される(例えば、
図1及び
図3を参照)。試料が、装置に上部の開口を通して注入される(例えば
図3を参照)。同心リングが円盤の中心に移動するにつれて(後でさらに論じられる)、電気の印加が試料の標的分析物を集束させ、標的分析物が、装置の底部のシリンジを通して収集される(例えば、
図3を参照)。
図2A(上面図)及び
図2Bに提示されるように好ましい装置構成は、外側円形電極(1)、ターミナル電解質(2)、及びリーディング電解質(3)からなる。一般に、外側円形電極(1)の直径は約10~200mmであり、リーディング電解質の直径は約10μm~約20mmの厚さ(高さ)の範囲である。リーディング電解質は、ゲル、粘性添加剤によって安定され、又は、他の様式で、例えば膜などによってターミナル電解質から流体力学的に分離される。ゲル又は流体力学的分離は、装置動作中のリーディング電解質とターミナル電解質の混合を防止する。また、いくつかの装置においては、後でさらに実施例2で論じられるように、電解質の非常に薄い(<100um)層を使用することによって混合が防止される。
【0252】
[00319]
図2A~
図2Bを参照すると、リーディング電解質の中心に、電極(5)を有する電極リザーバ(4)がある。電極(1、5)及び電解質(2、3)のアセンブリは、平坦な電気絶縁性の支持体(8)上に配置される。電解質リザーバ(4)は、例えば、試料をリザーバからピペッティングすることなどによって、分離プロセス後の濃縮試料溶液の除去のために使用される。
【0253】
[00320]代替的な配列(
図4を参照)では、中央電極(5)が、管(9)によってコンセントレータと接続されたリーディング電解質リザーバ(10)に移動される。管(9)は、直接接続され、又は一方の端部で半透膜(図示せず)によって閉鎖される。この配列は、使用される膜の特性に従って大きな分子の移動を停止させることによって、収集を促進する。この配列は、試料収集を単純化し、コンセントレータを、他の装置、例えば、キャピラリー分析器、クロマトグラフィー、PCR装置、酵素反応器などにオンラインで接続する手段を提供する。管(9)はまた、リーディング電解質を含むゲルがない配置において、リーディング電解質の向流の流れを供給するために使用され得る。
【0254】
[00321]一般に、リーディング電解質安定化のためのゲルは、任意の非荷電材料、例えばアガロース、ポリアクリルアミド、プルラミンなどによって形成される。行われる分離の性質に応じて、いくつかの装置では上面は開放されたままであり、又はいくつかの装置では上面は閉じられる。閉じられる場合、装置を覆うために使用される材料は、好ましくは、エピタコ電気泳動装置の動作中の蒸発を防止するために、熱伝導絶縁材料である。
【0255】
[00322]一般に、リング(円形)電極は、好ましくは金めっき又は白金めっきステンレス鋼リングであり、これは、最大耐薬品性及び電場均一性を可能にする。加えて、いくつかの装置、特に使い捨て装置では、ステンレス鋼及びグラファイト電極が使用される。代替的には、リング(円形)電極は、ワイヤ電極のアレイによって置換されてよい。さらに、規則的に離間された電極の2次元アレイが、エピタコ電気泳動装置において追加的に使用される。円形の向きで規則的に離間された電極のアレイが、エピタコ電気泳動装置において追加的に使用される。さらに、所望の試料分離に基づいて、(例えば、集束ゾーンを方向付けるために、)異なる電場形状をもたらすように他の電極構成も使用される。そのような構成は、電極の多角形配列として説明される。電気的に分離されたセグメントに分割された場合、駆動電場の時間依存形状のために、スイッチング電場が生成される。いくつかの装置では、そのような配列は試料収集を容易にする。
【0256】
実施例2
[00323]エピタコ電気泳動装置の動作
[00324]例えば
図1~
図4に提示された設計のエピタコ電気泳動装置は、リーディング電解質の後にターミナル電解質と混合された試料が続くか若しくはリーディング電解質と混合された試料の後にターミナル電解質が続く、2電解質リザーバ配列、又は
図5に提示されるような、3電解質リザーバ配列で動作される。そのような配列において、試料は任意の導電性溶液と混合され得る。或いは、試料が適切なターミナルイオンを含有する場合、ターミナル電解質ゾーンが除去され得る。
図2A~
図2Bを参照すると、ターミナル電解質リザーバ(2)を試料と適切なターミナル電解質との混合物で充填し、電力供給部(6)をオンにすると、イオンは中央電極(5)に向かって移動し始め、リーディング電解質とターミナル電解質の境界(7)でゾーンを形成する。移動中の試料ゾーンの濃度は、一般的な等速電気泳動の原理に従って調整される[Foret, F., Krivankova, L., Bocek, P., Capillary Zone Electrophoresis. Electrophoresis Library, (Editor Radola, B.J.) VCH, Verlagsgessellschaft, Weinheim, 1993.]。したがって、低濃度の試料イオンは濃縮され、高濃度の試料イオンは希釈される。試料ゾーンが電解質リザーバ(4)に入ると、分離プロセスが停止され、集束材料が装置の中心に集められる。実際に、移動ゾーンの最終濃度は、リーディングイオンの濃度に匹敵する濃度を有する。典型的には、エピタコ電気泳動を使用して、2から1000のいずれか又はそれより大きい濃縮係数が達成される。
【0257】
[00325]3電解質リザーバ配列では、試料は、リーディング電解質とターミナル電解質の間に適用され(例えば、
図5を参照)、そのような配列は、2電解質リザーバ配列と比較して若干速い試料濃縮及び分離をもたらす。
【0258】
[00326]混合を回避するために、リーディング電解質及びトレーリング電解質は、中性(非荷電)粘性媒体、例えば、アガロースゲルによって安定化される(例えば、任意選択で、ゲル内に含まれる、又はターミナル電解質から流体力学的に分離されるリーディング電解質を表す、
図2A~
図2B、
図3を参照)。
【0259】
[00327]等速電気泳動に使用される当業者に知られる全ての一般的な電解質は、リーディングイオンが目的の試料イオンよりも高い有効電気泳動移動度を有する場合、本エピタコ電気泳動装置と共に使用することができる。反対のことが、選択されたターミナルイオンに対して当てはまる。
【0260】
[00328]装置は、ポジティブモード(カチオン種の分離/濃縮)又はネガティブモード(アニオン種の分離/濃縮)のいずれかで動作される。エピタコ電気泳動を使用するアニオン分離のための最も一般的なリーディング電解質は、例えば、ヒスチジン、TRIS、クレアチニンなどの適切な塩基で所望のpHに緩衝された、例えば、塩化物、硫酸塩、又はギ酸塩を含む。アニオン分離用のエピタコ電気泳動のためのリーディング電解質の濃度は、リーディングイオンに対して5mM~1Mの範囲である。そして、ターミナルイオンは、しばしば、MES、MOPS、HEPES、酢酸塩、グルタミン酸塩、並びに他の弱酸のアニオン及び低移動度アニオンを含む。ポジティブモードのエピタコ電気泳動のためのターミナル電解質の濃度は、ターミナルイオンに対して5mM~10Mの範囲である。
【0261】
[00329]カチオン分離のために、エピタコ電気泳動の一般的なリーディングイオンは、例えば、酢酸塩又はギ酸塩が最も一般的な緩衝対イオンである、カリウム、アンモニウム、又はナトリウムを含む。そして、反応ヒドロキソニウムイオン移動境界が、任意の弱酸によって形成されるユニバーサルなターミナル電解質の役割をする。
【0262】
[00330]ポジティブとネガティブの両方のモードにおいて、リーディングイオンの濃度の増加は、所与の印加電圧に対する電流(電力)の増加を代償として試料ゾーンの比例的な増加をもたらす。典型的な濃度は、10~20mMの範囲内であるが、より高い濃度も可能である。
【0263】
[00331]さらに、ゾーン電気泳動分離だけで十分な場合、装置は、1つのバックグラウンド電解質のみだけで動作することができる。
[00332]電流及び/又は電圧プログラミングが、試料の移動速度を調整するのに適している。この同心配列では、断面積が移動中に変化し、ゾーン移動の速度は時間的に一定ではないことに留意されたい。したがって、この配列は、ゾーンが一定の速度で移動する等速電気泳動原理に厳密に従うものではない。電力供給部(6)の動作のモードによると、3つの基本的ケース、すなわち、1.定電流での分離;2.定電圧での分離;及び3.定電力での分離が区別され得る。
【0264】
[00333]以下で記載される方程式の変数は、次の通りである:d=移動した距離(d<0;r>);E=電場強度;H=電解質(ゲル)高さ;I=電流;J=電流密度;κ=電解質導電率;r=半径;S=断面積;u=電気泳動移動度;v=速度;及びX=中央電極からエピタコ電気泳動境界の長さ。
【0265】
[00334]高電圧電源(HVPS)によって供給される定電流を使用する一般的動作モードでは、移動ゾーンは、電流密度の増加のため、中心に近づくにつれて加速される。定電流での分離に関して、円形アーキテクチャを備える装置、例えば、1つ又は複数の円形電極を備える装置を使用すると、以下のように開始半径rからの距離dでのエピタコ電気泳動境界速度vの導出によって実証されるように、距離dでの相対速度は、リーディング電解質の移動度(導電率)のみに依存する。
【0266】
[00335]一般方程式:
[00336]U=IR又はE=J/κ(オームの法則)
[00337]E=U/X(電場強度)
[00338]
【0267】
【0268】
[00339]v=uE
[00340]S=2πXH
[00341]半径rで開始してから距離dにおけるエピタコ電気泳動境界速度v
[00342]v
(d)=u
LI/2π(r-d)hκ
L=Constant/(r-d)
[00343]移動距離(d)と定電流での距離dにおける相対速度との関係のグラフについては、
図6Bを参照されたい。
【0269】
[00344]定電圧での分離に関して、円形アーキテクチャを備える装置、例えば、1つ又は複数の円形電極を備える装置を使用すると、以下のように開始半径rからの距離dでのエピタコ電気泳動境界速度vの導出によって実証されるように、距離dでの相対速度は、LEとTEの両方の移動度(導電率)に依存する。
【0270】
[00345]一般方程式:
[00346]U=IR又はE=J/κ(オームの法則)
[00347]E=U/X(電場強度)
[00348]
【0271】
【0272】
[00349]境界速度の計算:
[00350]U
L=U-U
T=U-IR
T
[00351]U
L=U-Id/Sκ
T
[00352]U
L=U-U
Lκ
Ld/(r-d)κ
T
[00353]U
L=U(r-d)κ
T/[(r-d)κ
T+κ
Ld]
[00354]E
L=U
L/(r-d)
[00355]E
L=Uκ
T/[(r-d)κ
T+κ
Ld]
[00356]v
L=u
LE
L
[00357]v
L=u
LUκ
T/[(r-d)κ
T+κ
Ld
[00358]移動距離(d)と定電圧での距離dにおける相対速度との関係のグラフについては、
図6Cを参照されたい。
【0273】
[00359]定電力での分離に関して、円形アーキテクチャを備える装置、例えば、1つ又は複数の円形電極を備える装置を使用すると、以下のように開始半径rからの距離dでのエピタコ電気泳動境界速度vの導出によって実証されるように、距離dでの相対速度は、LEとTEの両方の移動度(導電率)に依存する。
【0274】
[00360]一般方程式:
[00361]P=UI=I2R(電力)
[00362]U=IR又はE=J/κ(オームの法則)
[00363]E=U/X(電場強度)
[00364]J=Eκ⇒I=SUκ/X;R=X/κS
[00365]境界速度の計算:
[00366]P=PL+PT
[00367]P=I2(RL+RT)
[00368]
【0275】
【0276】
[00369]
【0277】
【0278】
[00370]UL=IRL=I(r-d)/κLS
[00371]
【0279】
【0280】
[00372]
【0281】
【0282】
[00373]κは小さい数であり、したがって:
[00374]
【0283】
【0284】
[00375]移動距離(d)と定電力での距離dにおける相対速度との関係のグラフについては、
図6Dを参照されたい。
実施例3
[00376]例示的な装置を使用した円形/同心のITP
[00377]
図7に提示されるエピタコ電気泳動装置を使用して、スルファニル酸(SPADNS)を同心リングに集束したエピタコ電気泳動分離を行った。エピタコ電気泳動装置においてエピタコ電気泳動をもたらすためにXボルト/Yワットが印加された。
【0285】
[00378]
図7を参照すると、SPADNSは、
図7の赤いゾーン(red zone)として見られる同心リング状集束ゾーンに集束された。赤い円の上半分は、ゾーンの高さが約5mmであることを示した。エピタコ電気泳動ゾーンが縁部から装置の中心に向かって移動すると、最終的に、SPADNSの集束ゾーンが装置の中心に入り、装置の中心に収集され、したがって、エピタコ電気泳動を使用した所望の試料の集束及び回収が実証された。
【0286】
実施例4
[00379]例示的な装置を使用した円形/同心のITP
[00380]エピタコ電気泳動装置(
図8A)を使用して、スルファニル酸(SPADNS)を集束させるためにエピタコ電気泳動を行った。
図8Aの装置は、円形アーキテクチャを有し、直径10.2cmの円形金電極を有していた。10mMのHCl-ヒスチジン(pH6.25)が、リーディング電解質として使用され、5.8cmの直径を有する10mLの0.3%アガロースゲルに含有された。15mLの10mM MES Tris(pH8.00)がトレーリング電解質として使用された。装置のシリンジリザーバは、100mMの濃度でリーディング電解質HCl His(pH6.25)を含有した。0.137mMの濃度で300μlのSPADNSがトレーリング電解質中で調製され装置に装填された。エピタコ電気泳動を行うために1Wの定電力が使用された。
【0287】
[00381]
図8Bを参照すると、SPADNSは、
図8Bの赤いゾーンとして見られる同心リング状集束ゾーンに集束された。エピタコ電気泳動ゾーンが縁部から装置の中心に向かって移動すると、最終的に、SPADNSの集束ゾーンが装置の中心に入り、装置の中心に収集され、したがって、エピタコ電気泳動を使用した所望の試料の集束及び回収が実証された。
【0288】
[00382]さらに、
図8Aのエピタコ電気泳動装置を使用して、30ntオリゴマー(ROX-oligo)を集束させるためにエピタコ電気泳動を行った。
図8Aの装置は、円形アーキテクチャを有し、直径10.2cmの円形金電極を有していた。10mMのHCl-ヒスチジン(pH6.25)が、リーディング電解質として使用され、5.8cmの直径を有する10mLの0.3%アガロースゲルに含有された。15mLの10mM MES Tris(pH8.00)がトレーリング電解質として使用された。装置のシリンジリザーバは、100mMの濃度でリーディング電解質HCl His(pH6.25)を含有した。100μMの濃度で75μlのROX-oligoがトレーリング電解質中で調製され装置に装填された。エピタコ電気泳動を行うために1Wの定電力が使用された。
【0289】
[00383]
図8Cを参照すると、ROX-oligoは、
図8Cの青いゾーンとして見られる同心リング状集束ゾーンに集束された。エピタコ電気泳動ゾーンが縁部から装置の中心に向かって移動すると、最終的に、ROX-oligoの集束ゾーンが装置の中心に入り、装置の中心に収集され、したがって、エピタコ電気泳動を使用した所望の試料の集束及び回収が実証された。
【0290】
実施例5
[00384]例示的な装置を使用した円形/同心のITP
[00385]エピタコ電気泳動装置(
図9A~
図9B)を使用して、スルファニル酸(SPADNS)を集束させるためにエピタコ電気泳動を行い、続いてSPADNSを上記装置から収集した。
図9A~
図9Bの装置は、円形アーキテクチャを有し、直径11.0cmのステンレス鋼ワイヤ電極を有していた。
図9Bを参照すると、概略図の数は、ミリメートル単位の寸法を表している。20mMのHCl-ヒスチジン(pH6.20)がリーディング電解質として使用された。5mLの10mM MES Tris(pH8.00)が、トレーリング電解質として使用され、TEの導入前に形成され8.9cmの直径を有した(
図9C)0.3%アガロースゲルに含有され、又は、15mLの10mM MES Tris(pH8.00)が、トレーリング電解質として使用され、TEの導入前に形成され5.8cmの直径を有した(
図9D)0.3%ゲルに含有された。装置の電極リザーバは、100mMの濃度でリーディング電解質HCl His(pH6.25)を含有した。
【0291】
[00386]
図9Cを参照すると、0.137mMの濃度で150μlのSPADNSが15mLのトレーリング電解質中で調製され装置に装填された。エピタコ電気泳動を行うために2Wの定電力が使用された。SPADNSは、
図9Cの赤いゾーンとして見られる同心リング状集束ゾーンに集束された。エピタコ電気泳動ゾーンが縁部から装置の中心に向かって移動すると、最終的に、SPADNSの集束ゾーンが装置の中心に入り、装置の中心に収集され、したがって、エピタコ電気泳動を使用した所望の試料の集束及び回収が実証された。回収されたSPADNSは、最初の15mLのSPADNS含有試料の吸光度と比較して40倍増加した吸光度を有した。
【0292】
[00387]
図9Dを参照すると、0.137mMの濃度で150μlのSPADNSが15mLのトレーリング電解質中で調製され装置に装填された。エピタコ電気泳動を行うために2Wの定電力が使用された。SPADNSは、
図9Dの赤いゾーンとして見られる同心リング状集束ゾーンに集束された。エピタコ電気泳動ゾーンが縁部から装置の中心に向かって移動すると、最終的に、SPADNSの集束ゾーンが装置の中心に入り、装置の中心に収集され、したがって、エピタコ電気泳動を使用した所望の試料の集束及び回収が実証された。回収されたSPADNSは、最初の15mLのSPADNS含有試料の吸光度と比較して40倍増加した吸光度を有した。
【0293】
[00388]また、
図9A~
図9Bのエピタコ電気泳動装置を使用して、ゲルを使用しない装置における生理食塩水からSPADNSを集束させるためにエピタコ電気泳動を行った。20mMのHCl-ヒスチジン(pH6.20)が、リーディング電解質として使用された。13mLの10mM MES Tris(pH8.00)が、トレーリング電解質として使用され、これはさらに3mLの0.9%NaClと混合された。装置の電極リザーバは、100mMの濃度でリーディング電解質HClヒスチジン(pH6.25)を含有した。
【0294】
[00389]
図10を参照すると、0.137mMの濃度で150μlのSPADNSが、3mLの0.9%NaClと混合された13mLのトレーリング電解質中で調製され、装置に装填された。エピタコ電気泳動を行うために2Wの定電力が使用された。SPADNSは、
図10の赤いゾーンとして見られる同心リング状集束ゾーンに集束された。エピタコ電気泳動ゾーンが縁部から装置の中心に向かって移動すると、最終的に、SPADNSの集束ゾーンが装置の中心に入り、装置の中心に収集され、したがって、エピタコ電気泳動を使用した所望の試料の集束及び回収が実証された。
【0295】
[00390]また、
図9A~
図9Bのエピタコ電気泳動装置を使用して、エピタコ電気泳動を行って、スペーサーとして酢酸を用いてSPADNS及びパテントブルー色素を分離し集束させた。20mMのHCl-ヒスチジン(pH6.20)がリーディング電解質として使用された。5mLの10mM MES Tris(pH8.00)がトレーリング電解質として使用され、これはさらに、150μlの10mm酢酸、150μlの0.1mMパテントブルー色素、及び150μlの0.137mM SPADNSと混合された。SPADNS、酢酸、及びパテントブルー色素の有効移動度値(10
-9m
2/Vs)は、それぞれ55、42,7及び32であった。装置の電極リザーバは、100mMの濃度でリーディング電解質HCl His(pH6.25)を含有した。この実験では装置でゲルは使用しなかった。
【0296】
[00391]
図11を参照すると、トレーリング電解質、SPADNS、酢酸、及びパテントブルー色素のこの混合物が装置に装填された。エピタコ電気泳動を行うために2Wの定電力が使用された。SPADNSは、
図11の赤いゾーン/内側ゾーンとして見られる同心リング状集束ゾーンに集束され、パテントブルー色素は、
図11の青いゾーン/外側ゾーンとして見られる同心リング状集束ゾーンにやはり集束された。エピタコ電気泳動ゾーンが縁部から装置の中心に向かって移動すると、最終的に、SPADNS及びパテントブルー色素の集束ゾーンが装置の中心に順次入り、装置の中心に別々に収集されてよく、したがって、エピタコ電気泳動を使用した所望の試料の分離、集束、及び回収が実証された。
【0297】
実施例6
[00392]円形等速電気泳動のための装置
[00393]エピタコ電気泳動装置は、エピタコ電気泳動を行うために設計された(
図12)。
図12の装置は、円形アーキテクチャを有し、直径5.8cmの円形銅テープ電極を有していた。
【0298】
[00394]上述の手順では、様々なステップが説明された。しかしながら、添付の特許請求の範囲に記載の例示的な手順のより広い範囲から逸脱することなく、様々な修正及び変更が行われてもよく、追加の手順が実装されてもよいことは明らかであろう。