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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-09
(45)【発行日】2022-03-17
(54)【発明の名称】乗員拘束装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/2338 20110101AFI20220310BHJP
   B60R 21/207 20060101ALI20220310BHJP
   B60N 2/427 20060101ALI20220310BHJP
【FI】
B60R21/2338
B60R21/207
B60N2/427
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020553001
(86)(22)【出願日】2019-09-25
(86)【国際出願番号】 JP2019037529
(87)【国際公開番号】W WO2020080050
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-03-04
(31)【優先権主張番号】P 2018194968
(32)【優先日】2018-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(72)【発明者】
【氏名】松下 徹也
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 博之
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-029182(JP,A)
【文献】特開2016-007901(JP,A)
【文献】特開2016-078768(JP,A)
【文献】国際公開第2017/199851(WO,A1)
【文献】特開2013-220714(JP,A)
【文献】特開2014-051138(JP,A)
【文献】特開2017-074850(JP,A)
【文献】国際公開第2016/039160(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の座席に着座した乗員を拘束する乗員拘束装置であって、
当該乗員拘束装置は、
前記座席のシートバック内に収納されていて該座席に着座した乗員の側方の両側でそれぞれ膨張展開する一対のエアバッグと、
前記一対のエアバッグの少なくとも一方の内部に収容され該少なくとも一方のエアバッグと連通していて該少なくとも一方のエアバッグの内部で前記乗員の胴部の側方に膨張展開するインナバッグと、
前記収納されている一対のエアバッグそれぞれの前記乗員とは反対側を通って前記座席のシートバック内からシートクッション内にわたって収納されている一対の張力布とを備え、
前記インナバッグは、前記少なくとも一方のエアバッグよりも先に膨張展開を完了し、
前記一対の張力布は、前記一対のエアバッグの膨張展開によって前記座席の側部に展開し、前記シートバックから前記シートクッションまで張り渡されて該一対のエアバッグの前記乗員とは反対側の面を保持し、
前記少なくとも一方のエアバッグの膨張展開時の側面視において、前記インナバッグの前端は前記一対の張力布の少なくとも一方と重なる位置または該重なる位置より後方に配置されることを特徴とする乗員拘束装置。
【請求項2】
車両の座席に着座した乗員を拘束する乗員拘束装置であって、
当該乗員拘束装置は、
前記座席のシートバック内に収納されていて該座席に着座した乗員の側方の両側でそれぞれ膨張展開する一対のエアバッグと、
前記一対のエアバッグの少なくとも一方の内部に配置され該少なくとも一方のエアバッグを前後に区画する隔壁と、
前記隔壁に形成された連通孔と、
前記収納されている一対のエアバッグそれぞれの前記乗員とは反対側を通って前記座席のシートバック内からシートクッション内にわたって収納されている一対の張力布とを備え、
前記少なくとも一方のエアバッグは、前記隔壁よりも後方の空間が該隔壁よりも前方の空間よりも先に膨張展開を完了し、
前記一対の張力布は、前記一対のエアバッグの膨張展開によって前記座席の側部に展開し、前記シートバックから前記シートクッションまで張り渡されて該一対のエアバッグの前記乗員とは反対側の面を保持し、
前記少なくとも一方のエアバッグの膨張展開時の側面視において、前記隔壁は前記一対の張力布の少なくとも一方と重なる位置または該重なる位置より後方に配置されることを特徴とする乗員拘束装置。
【請求項3】
前記少なくとも一方のエアバッグは、前記乗員のニアサイドに位置しているエアバッグを含むことを特徴する請求項1または2に記載の乗員拘束装置。
【請求項4】
前記一対の張力布は、前記座席の表皮を開裂することにより該座席の側部に展開することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の乗員拘束装置。
【請求項5】
当該乗員拘束装置は、前記座席の側部に配置され前記一対のエアバッグ、前記一対の張力布を収容する一対のケースを備え、
前記一対の張力布は、前記一対のケースから前記座席の側部に展開することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の乗員拘束装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の座席に着座した乗員を拘束する乗員拘束装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の車両にはエアバッグ装置がほぼ標準装備されている。エアバッグ装置は、車両衝突などの緊急時に作動する安全装置であって、ガス圧で膨張展開して乗員を受け止めて保護する。エアバッグ装置には、設置箇所や用途に応じて様々な種類がある。例えば特許文献1の乗員拘束装置では、座席の両側の側部に乗員のすぐ脇へ膨張展開するサイドエアバッグが設けられている。
【0003】
特に特許文献1の乗員拘束装置では、エアバッグの膨張展開時に張力を与えられてエアバッグとシートクッションの両側面との間に広がる張力布を設けている。これにより、張力布によってエアバッグの移動を規制することができる。したがって、エアバッグによる乗員拘束性能を高めることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2016/039160号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の乗員拘束装置によれば、乗員から離れる方向、特に左右方向へのエアバッグの移動を張力布によって好適に規制することができ、エアバッグによる乗員拘束性能が飛躍的に高まった。しかしながら、乗員拘束装置には、乗員拘束性能の向上が常に求められている。このため、発明者らは特許文献1の技術の更なる改良について検討した。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑み、エアバッグの膨張展開時に座席の側部に展開する張力布を備える構成において乗員拘束性能の更なる向上を図ることが可能な乗員拘束装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明にかかる乗員拘束装置の代表的な構成は、当該乗員拘束装置は、座席のシートバック内に収納されていて座席に着座した乗員の側方の両側でそれぞれ膨張展開する一対のエアバッグと、一対のエアバッグの少なくとも一方の内部に収容され少なくとも一方のエアバッグと連通していて少なくとも一方のエアバッグの内部で乗員の胴部の側方に膨張展開するインナバッグと、収納されている一対のエアバッグそれぞれの乗員とは反対側を通って座席のシートバック内からシートクッション内にわたって収納されている一対の張力布とを備え、インナバッグは、少なくとも一方のエアバッグよりも先に膨張展開を完了し、一対の張力布は、一対のエアバッグの膨張展開によって座席の側部に展開し、シートバックからシートクッションまで張り渡されて一対のエアバッグの乗員とは反対側の面を保持することを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、膨張展開したエアバッグが張力布によって乗員に対して付勢される。これにより、エアバッグの乗員から離れる方向への移動を規制することができ、乗員をより確実に拘束することが可能となる。また上記構成では、エアバッグの内部にインナバッグが収容される。インナバッグは、エアバッグ内に収容されるためエアバッグよりも容量が小さく、膨張展開するためのガスの量が少ない。したがって、インナバッグは、エアバッグよりも早期に膨張が完了する。このため、衝突時、特に側突時に乗員の胴部を迅速に拘束することができ、乗員拘束性能の更なる向上を図ることが可能となる。
【0009】
上記少なくとも一方のエアバッグの膨張展開時の側面視において、インナバッグの前端は一対の張力布の少なくとも一方と重なる位置または重なる位置より後方に配置されるとよい。かかる構成によれば、張力布がインナバッグを跨がないため、張力布がインナバッグの膨張展開を阻害することがない。したがって、上述した効果が確実に得られる。
【0010】
上記課題を解決するために、本発明にかかる乗員拘束装置の他の構成は、車両の座席に着座した乗員を拘束する乗員拘束装置であって、当該乗員拘束装置は、座席のシートバック内に収納されていて座席に着座した乗員の側方の両側でそれぞれ膨張展開する一対のエアバッグと、一対のエアバッグの少なくとも一方の内部に配置され少なくとも一方のエアバッグを前後に区画する隔壁と、隔壁に形成された連通孔と、収納されている一対のエアバッグそれぞれの乗員とは反対側を通って座席のシートバック内からシートクッション内にわたって収納されている一対の張力布とを備え、少なくとも一方のエアバッグは、隔壁よりも後方の空間が隔壁よりも前方の空間よりも先に膨張展開を完了し、一対の張力布は、一対のエアバッグの膨張展開によって座席の側部に展開し、シートバックからシートクッションまで張り渡されて一対のエアバッグの乗員とは反対側の面を保持することを特徴とする。
【0011】
上記構成によっても、膨張展開したエアバッグが張力布によって乗員に対して付勢される。これにより、エアバッグの乗員から離れる方向への移動を規制することができ、乗員をより確実に拘束することが可能となる。また上記構成では、エアバッグの内部は隔壁によって前後方向で2つの空間に仕切られている。以下、エアバッグにおいて、隔壁よりも前方の空間を前チャンバと称し、隔壁よりも後方の空間を後チャンバと称する。後チャンバは、乗員の胴部の側方に位置し、前チャンバよりも先に膨張展開する。これにより、衝突時、特に側突時に乗員の胴部を迅速に拘束することができ、乗員拘束性能の更なる向上を図ることが可能となる。
【0012】
上記少なくとも一方のエアバッグの膨張展開時の側面視において、隔壁は一対の張力布の少なくとも一方と重なる位置または重なる位置より後方に配置されるとよい。これにより、張力布が後チャンバを跨がないため、張力布が後チャンバの膨張展開を阻害することがない。したがって、上述した効果が確実に得られる。
【0013】
上記少なくとも一方のエアバッグは、乗員のニアサイドに位置しているエアバッグを含むとよい。これにより、側突時の乗員と車体との接触を好適に防ぐことが可能となる。なお、ニアサイドとは、座席に着座した乗員の左右両側部のうち、車体側の側部であり、ファーサイドとは、座席に着座した乗員の左右両側部のうち、車体側ではない側部である。
【0014】
上記一対の張力布は、座席の表皮を開裂することにより座席の側部に展開するとよい。または当該乗員拘束装置は、座席の側部に配置され一対のエアバッグ、一対の張力布を収容する一対のケースを備え、一対の張力布は、一対のケースから座席の側部に展開するとよい。いずれの構成によっても、上述した効果を良好に得ることが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、エアバッグの膨張展開時に座席の側部に展開する張力布を備える構成において乗員拘束性能の更なる向上を図ることが可能な乗員拘束装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態にかかる乗員拘束装置を例示する図である。
図2図1のエアバッグの膨張展開時の状態を例示する図である。
図3図1のエアバッグの膨張展開時の状態を例示する図である。
図4図1のエアバッグの膨張展開時の状態を例示する図である。
図5】第2実施形態にかかる乗員拘束装置を例示する図である。
図6】第2実施形態にかかる乗員拘束装置を例示する図である。
図7】第2実施形態にかかる乗員拘束装置を例示する図である。
図8】本実施形態の乗員拘束装置の他の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0018】
なお、本実施形態においては、乗員が正規の姿勢で座席に着座した際に、乗員が向いている方向を前方、その反対方向を後方と称する。また乗員が正規の姿勢で座席に着座した際に、乗員の右側を右方向、乗員の左側を左方向と称する。更に、乗員が正規の姿勢で着座した際に、乗員の頭部方向を上方、乗員の腰部方向を下方と称する。そして、以下の説明において用いる図面では、必要に応じて、上述した乗員を基準とした前後左右上下方向を、Fr、Rr、L、R、Up、Downと示す。
【0019】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態にかかる乗員拘束装置100を例示する図である。理解を容易にするために、図1では、座席110の内部に収納されている部材を仮想線にて示している。また図1では、エアバッグが非膨張展開時の座席を例示している。
【0020】
本実施形態の乗員拘束装置100は、座席110に着座した乗員を拘束するための装置である。図1に例示するように、本実施形態の乗員拘束装置100は、車両(全体は不図示)の座席110、一対のエアバッグ120a・120b、および一対の張力布130a・130bを備える。座席110は、乗員の上半身を支持するシートバック112を備える。シートバック112の下方には乗員が着座するシートクッション114が設けられている。シートバックの上方には乗員の頭部を支持するヘッドレスト116が設けられている。
【0021】
一対のエアバッグ120a・120b(サイドエアバッグ)は、図1に例示するように座席110のシートバック112の左右両側の内部にそれぞれ収納され、カバー118によって覆われている。カバー118は、座席110の表皮の一部を構成している。一対のエアバッグ120a・120bは、車両の衝突時等に、座席110に着座した乗員の両側方でそれぞれ膨張展開する。なお、本実施形態では、カバー118が座席の表皮と一体となっている構成を例示したが、これに限定するものではなく、座席の表皮とカバーとを別体としてもよい。
【0022】
一対の張力布130a・130bは、本実施形態ではエアバッグ120a・120bそれぞれに対して設けられる。一対の張力布130a・130bは、収納されている一対のエアバッグ120a・120bそれぞれの乗員とは反対側を通って座席110のシートバック112内からシートクッション114内にわたって収納されている。
【0023】
図2図3および図4は、図1のエアバッグ120a・120bの膨張展開時の状態を例示する図である。図2(a)および(b)は、図1に例示する座席110に乗員Pが着座し、エアバッグ120a・120bが膨張展開した状態を上方から観察した状態を例示している。図3および図4は、図1に例示する座席110に乗員Pが着座し、エアバッグ120aが膨張展開した状態を側方から観察した状態を例示している。
【0024】
図2(a)および(b)に例示するように、乗員Pの左右両側方のうち、左側には車体側部102が配置されている。したがって、左右一対のエアバッグ120a・120bは、左側のエアバッグ120aがニアサイドに位置するエアバッグであり、右側のエアバッグ120bはファーサイドに位置するエアバッグである。
【0025】
図2および図3に例示するように、本実施形態の乗員拘束装置100では、左右一対のエアバッグ120a・120bのうち、車体側部102に面する左側のエアバッグ120a(ニアサイドエアバッグ)の内部の後方側の領域にインナバッグ140が収容されている。インナバッグ140は、エアバッグ120aの内部に収容されているため、エアバッグ120aよりも容量が小さい。このため、エアバッグ120aよりも少ないガス量で膨張展開が完了する。またインナバッグ140には、インナベント142が形成されている。これにより、エアバッグ120aとインナバッグ140とがインナベント142において連通する。
【0026】
車両の衝突を検知すると、インフレータ(不図示)によってインナバッグ140にガスが供給される。これにより、インナバッグ140は、図2(a)に例示するように、エアバッグ120aよりも先に膨張展開が完了する。このとき、インナバッグ140がエアバッグ120aの後方側の領域に配置されていることにより、インナバッグ140は、エアバッグ120aの内部で乗員Pの胴部P1(図3参照)の側方に膨張展開する。その後、インナバッグ140のインナベント142からガスが流出し、エアバッグ120aにガスが供給される。これにより、図2(b)に例示するように、エアバッグ120aの膨張展開が完了する。
【0027】
上記説明したように、本実施形態の乗員拘束装置100によれば、エアバッグ120aよりも容量の小さいインナバッグ140が、エアバッグ120aよりも先に乗員Pの胴部P1の側方に膨張展開する。これにより、衝突時に乗員Pの胴部P1を迅速に拘束することができる。したがって、乗員拘束装置100において高い乗員拘束性能が得られる。
【0028】
特に本実施形態では、図3に例示するように、エアバッグ120aの膨張展開時の側面視において、インナバッグ140の前端140aは張力布130aと重なる位置に配置される。これにより、張力布130aがインナバッグ140を跨がないため、張力布130aがインナバッグ140の膨張展開を阻害することがない。したがって、上述した効果が確実に得られる。
【0029】
なお、本実施形態では、インナバッグ140の前端140aは張力布130aと重なる位置に配置される構成を例示したが、これに限定するものではない。例えば、図4に例示するように、インナバッグ140の前端140aが張力布130aと重なる位置より後方に配置される構成、すなわち側面視においてインナバッグ140と張力布130aとが重ならない構成においても同様の効果を得ることが可能である。
【0030】
更に本実施形態の乗員拘束装置100では、図2(b)に例示するように、エアバッグ120a・120bが膨張展開すると、張力布130a・130bは、座席110の表皮を開裂することにより座席110の側部に展開する。これにより、張力布130a・130bがシートバック112からシートクッション114まで張り渡され、エアバッグ120a・120bそれぞれの乗員Pとは反対側の面が張力布130a・130bによって保持される。そして、エアバッグ120a・120bが張力布130a・130bによって乗員Pに対して付勢されることにより、エアバッグ120a・120bの乗員拘束性能を高めることが可能となる。
【0031】
(第2実施形態)
図5図6および図7は、第2実施形態にかかる乗員拘束装置200を例示する図である。図5(a)および(b)は、図1に例示する座席110に乗員Pが着座し、エアバッグ120a・120bが膨張展開した状態を上方から観察した状態を例示している。図6および図7は、図1に例示する座席110に乗員Pが着座し、エアバッグ120aが膨張展開した状態を側方から観察した状態を例示している。なお、第2実施形態では、第1実施形態と共通の構成要素については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0032】
図5および図6に例示するように、第2実施形態の乗員拘束装置200では、第1実施形態のインナバッグ140に替えて隔壁240がエアバッグ120aの内部に設けられている。隔壁240は、エアバッグ120aの内部を前後に区画する。以下、エアバッグ120aの内部において、隔壁240より前方の空間を前チャンバ122と称し、隔壁240より後方の空間を後チャンバ124と称する。隔壁240には、連通孔242が形成されている。これにより、前チャンバ122と後チャンバ124とが連通する。
【0033】
図6に例示するように、エアバッグ120aの2つのチャンバのうち、後チャンバ124は乗員Pの胴部P1の側方に配置される。車両の衝突を検知すると、インフレータ(不図示)によって、エアバッグ120aのうち後チャンバ124にガスが供給される。これにより、エアバッグ120aでは、図5(a)に例示するように、前チャンバ122よりも後チャンバ124のほうが先に膨張展開が完了する。
【0034】
このとき、後チャンバ124が乗員Pの胴部P1(図3参照)の側方に膨張展開することにより、衝突時に乗員Pの胴部P1を迅速に拘束することができる。したがって、衝突時、特に側突時に、乗員拘束装置200において高い乗員拘束性能を得ることが可能となる。
【0035】
その後、隔壁240の連通孔242からガスが流出し、前チャンバ122にガスが供給される。これにより、図5(b)に例示するように、前チャンバ122の膨張展開が完了する。したがって、前チャンバ122および後チャンバ124、すなわちエアバッグ120a全体によって乗員Pが拘束される。
【0036】
特に本実施形態では、図6に例示するように、エアバッグ120aの膨張展開時の側面視において、隔壁240は張力布130aと重なる位置に配置される。これにより、張力布130aが後チャンバ124を跨がないため、張力布130aが後チャンバ124の膨張展開を阻害することがない。したがって、上述した効果が確実に得られる。
【0037】
なお、本実施形態では、隔壁240は張力布130aと重なる位置に配置される構成を例示したが、これに限定するものではない。例えば、図7に例示するように、隔壁240が張力布130aと重なる位置より後方に配置される構成、すなわち側面視において後チャンバ124と張力布130aとが重ならない構成においても同様の効果を得ることが可能である。
【0038】
上記説明では、第1実施形態の乗員拘束装置100および第2実施形態の乗員拘束装置200ともに、ニアサイドに位置する左側のエアバッグ120aがインナバッグ140または隔壁240を有する構成を例示した。ただし、これに限定するものではなく、ファーサイドに位置するエアバッグや、左右両方のエアバッグにインナバッグ140または隔壁240を設ける構成とすることも可能である。
【0039】
図8は、本実施形態の乗員拘束装置の他の例を説明する図である。図8に例示する乗員拘束装置300は、座席110の側部に配置されるケース118a・118bを備える。ケース118aは、エアバッグ120a・120bを収容するケースであり、ケース118bは、張力布130a・130bを収容するケースである。
【0040】
図8に例示する乗員拘束装置300では、エアバッグ120a・120bの膨張展開時に、張力布130a・130bは、ケース118bから座席110の側部に展開する。このような構成によっても、上述した乗員拘束装置100と同様の効果を得ることができる。
【0041】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、以上に述べた実施形態は、本発明の好ましい例であって、これ以外の実施態様も、各種の方法で実施または遂行できる。特に本願明細書中に限定される主旨の記載がない限り、この発明は、添付図面に示した詳細な部品の形状、大きさ、および構成配置等に制約されるものではない。また、本願明細書の中に用いられた表現および用語は、説明を目的としたもので、特に限定される主旨の記載がない限り、それに限定されるものではない。
【0042】
したがって、当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、車両の座席に着座した乗員を拘束する乗員拘束装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0044】
P1…胴部、100…乗員拘束装置、102…車体側部、110…座席、112…シートバック、114…シートクッション、116…ヘッドレスト、118…カバー、118a・118b…ケース、120a…エアバッグ、120b…エアバッグ、122…前チャンバ、124…後チャンバ、130a…張力布、130b…張力布、140…インナバッグ、140a…前端、142…インナベント、200…乗員拘束装置、240…隔壁、242…連通孔、300…乗員拘束装置、P…乗員
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8