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特許7038250艶調整粉体塗料組成物、艶調整硬化塗膜を有する塗装物品及び艶調整硬化塗膜の形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-09
(45)【発行日】2022-03-17
(54)【発明の名称】艶調整粉体塗料組成物、艶調整硬化塗膜を有する塗装物品及び艶調整硬化塗膜の形成方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 167/00 20060101AFI20220310BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20220310BHJP
   C09D 5/03 20060101ALI20220310BHJP
【FI】
C09D167/00
C09D5/00
C09D5/03
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021190401
(22)【出願日】2021-11-24
【審査請求日】2021-11-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】300075348
【氏名又は名称】日本ペイント・インダストリアルコ-ティングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100088801
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 宗雄
(72)【発明者】
【氏名】八田 崇史
(72)【発明者】
【氏名】高口 健二
【審査官】桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】特開平6-293867(JP,A)
【文献】国際公開第2019/074041(WO,A1)
【文献】特表2003-503577(JP,A)
【文献】特開2009-215371(JP,A)
【文献】特開2009-215372(JP,A)
【文献】特開平3-109468(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110423498(CN,A)
【文献】米国特許第5491202(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 167/00
C09D 5/00
C09D 5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル樹脂(A1)、ポリエステル樹脂(A2)、ポリエステル樹脂(A3)及び硬化剤(B)を含む、艶調整粉体塗料組成物であって、
前記ポリエステル樹脂(A1)の酸価は5mgKOH/g以上45mgKOH/g未満の範囲内であり、
前記ポリエステル樹脂(A2)の酸価は45mgKOH/g以上85mgKOH/g未満の範囲内であり、
前記ポリエステル樹脂(A3)の酸価は85mgKOH/g以上125mgKOH/g以下の範囲内であり、
前記ポリエステル樹脂(A1)、前記ポリエステル樹脂(A2)及び前記ポリエステル樹脂(A3)の含有量の合計100質量部に対して、
前記ポリエステル樹脂(A1)の含有量が、5.0質量部以上82.5質量部以下、
前記ポリエステル樹脂(A2)の含有量が、0.5質量部以上45.0質量部以下、及び
前記ポリエステル樹脂(A3)の含有量が、5.0質量部以上82.5質量部以下
の範囲内であり、
前記ポリエステル樹脂(A1)のSP値(SPA1)、前記ポリエステル樹脂(A2)のSP値(SPA2)及び前記ポリエステル樹脂(A3)のSP値(SPA3)が、下記条件:
SPA1<SPA2<SPA3、又は
SPA3<SPA2<SPA1
のいずれかを満たし、
前記艶調整粉体塗料組成物から形成した艶調整硬化塗膜の60度鏡面光沢度が、0以上65未満の範囲内である、
艶調整粉体塗料組成物。
【請求項2】
前記SP値の差の絶対値が、下記条件:
0.1<|SPA1-SPA2|<1.5、
0.1<|SPA2-SPA3|<2.5、及び
0.2<|SPA1-SPA3|<3.0
を満たす、請求項1に記載の艶調整粉体塗料組成物。
【請求項3】
前記硬化剤(B)は、β-ヒドロキシアルキルアミド化合物を含む、請求項1又は2に記載の艶調整粉体塗料組成物。
【請求項4】
前記SP値の差の絶対値が、下記条件:
0.1 <|SPA1-SPA2|<1.5、
0.1 <|SPA2-SPA3|<2.5、及び
0.2 <|SPA1-SPA3|<3.0
を満たし、
ポリエステル樹脂(A1)、ポリエステル樹脂(A2)及びポリエステル樹脂(A3)の含有量の合計100質量部に対して、ポリエステル樹脂(A2)の含有量が、1.0質量部以上30.0質量部以下の範囲内であり、
前記艶調整粉体塗料組成物から形成した艶調整硬化塗膜の60度鏡面光沢度が、0以上35未満の範囲内である、請求項1~3のいずれか1項に記載の艶調整粉体塗料組成物。
【請求項5】
前記SP値の差の絶対値が、下記条件:
0.1<|SPA1-SPA2|<1.5、
0.1<|SPA2-SPA3|<2.5、及び
0.2<|SPA1-SPA3|<3.0
を満たし、
ポリエステル樹脂(A1)、ポリエステル樹脂(A2)及びポリエステル樹脂(A3)の含有量の合計100質量部に対して、ポリエステル樹脂(A2)の含有量が、25.0質量部以上45.0質量部以下の範囲内であり、
前記艶調整粉体塗料組成物から形成した艶調整硬化塗膜の60度鏡面光沢度が、35以上65未満の範囲内である、請求項1~3のいずれか1項に記載の艶調整粉体塗料組成物。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載の艶調整粉体塗料組成物から形成した艶調整硬化塗膜を有する塗装物品であって、前記硬化塗膜の60度鏡面光沢度が、0以上35未満の範囲内である、塗装物品。
【請求項7】
請求項1~3及び請求項5のいずれか1項に記載の艶調整粉体塗料組成物から形成した艶調整硬化塗膜を有する塗装物品であって、前記硬化塗膜の60度鏡面光沢度が、35以上65未満の範囲内である、塗装物品。
【請求項8】
艶調整硬化塗膜の形成方法であって、
ポリエステル樹脂(A1)、ポリエステル樹脂(A2)、ポリエステル樹脂(A3)及び硬化剤(B)を含む艶調整粉体塗料組成物を被塗物に塗装する、粉体塗装工程、及び
前記塗装により得られた塗膜を加熱硬化させて、艶調整硬化塗膜を得る、硬化工程
を含み、
前記艶調整粉体塗料組成物は、ポリエステル樹脂(A1)、ポリエステル樹脂(A2)、ポリエステル樹脂(A3)及び硬化剤(B)を含み、
前記ポリエステル樹脂(A1)の酸価は5mgKOH/g以上45mgKOH/g未満の範囲内であり、
前記ポリエステル樹脂(A2)の酸価は45mgKOH/g以上85mgKOH/g未満の範囲内であり、
前記ポリエステル樹脂(A3)の酸価は85mgKOH/g以上125mgKOH/g以下の範囲内であり、
前記ポリエステル樹脂(A1)、前記ポリエステル樹脂(A2)及び前記ポリエステル樹脂(A3)の含有量の合計100質量部に対して、
前記ポリエステル樹脂(A1)の含有量が、5.0質量部以上82.5質量部以下、
前記ポリエステル樹脂(A2)の含有量が、0.5質量部以上45.0質量部以下、及び
前記ポリエステル樹脂(A3)の含有量が、5.0質量部以上82.5質量部以下
の範囲内であり、
前記ポリエステル樹脂(A1)のSP値(SPA1)、前記ポリエステル樹脂(A2)のSP値(SPA2)及び前記ポリエステル樹脂(A3)のSP値(SPA3)が、下記条件:
SPA1<SPA2<SPA3、又は
SPA3<SPA2<SPA1
のいずれかを満たし、
前記艶調整硬化塗膜の60度鏡面光沢度が、0以上65未満の範囲内である、艶調整硬化塗膜の形成方法。
【請求項9】
前記SP値の差の絶対値が、下記条件:
0.1<|SPA1-SPA2|<1.5、
0.1<|SPA2-SPA3|<2.5、及び
0.2<|SPA1-SPA3|<3.0
を満たし、
ポリエステル樹脂(A1)、ポリエステル樹脂(A2)及びポリエステル樹脂(A3)の含有量の合計100質量部に対して、前記艶調整粉体塗料組成物中のポリエステル樹脂(A2)の含有量が、1.0質量部以上30.0質量部以下の範囲内であり、
前記艶調整硬化塗膜の60度鏡面光沢度が、0以上35未満の範囲内である、請求項8に記載の艶調整硬化塗膜の形成方法。
【請求項10】
前記SP値の差の絶対値が、下記条件:
0.1<|SPA1-SPA2|<1.5、
0.1<|SPA2-SPA3|<2.5、及び
0.2<|SPA1-SPA3|<3.0
を満たし、
ポリエステル樹脂(A1)、ポリエステル樹脂(A2)及びポリエステル樹脂(A3)の含有量の合計100質量部に対して、前記艶調整粉体塗料組成物中のポリエステル樹脂(A2)の含有量が、25.0質量部以上45.0質量部以下の範囲内であり、
前記艶調整硬化塗膜の60度鏡面光沢度が、35以上65未満の範囲内である、請求項8に記載の艶調整硬化塗膜の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、艶調整粉体塗料組成物、艶調整硬化塗膜を有する塗装物品及び艶調整硬化塗膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環境負荷低減の意識が高まり、環境配慮型商品への置換が求められている。塗料組成物においては、有機溶剤を含まず、低公害で作業性に優れており、環境への負荷が小さい粉体塗料組成物が注目されている。更に、粉体塗料組成物は、余過剰分の塗料を回収及び再利用できること、多層の重ね塗りにより塗膜(硬化物)を厚くできること、塗装し易く熟練の技術者が不要であること等の利点から、オフィス製品、電子部品、OA機器、家電製品、建材、自動車部品等の表面の塗装に広く用いられている。
【0003】
粉体塗料組成物には、様々な樹脂系が存在している。例えば、粉体塗料組成物として、エポキシ樹脂系、アクリル樹脂系、ポリエステル樹脂系の粉体塗料組成物が主に使用されている。これらの中でもポリエステル樹脂系の粉体塗料組成物は、塗膜外観と塗膜物性の観点において比較的バランスのとれた塗膜を形成できる。
【0004】
また、塗装により得られる硬化塗膜の艶(以下、「光沢」と呼ぶことがある)は、美装の観点から用途、ニーズ等に応じて適宜調整されている。
【0005】
硬化塗膜の艶を調整する技術として、例えば、特開2009-215371号公報(特許文献1)、特開2009-215372号公報(特許文献2)及び特開2000-119561号公報(特許文献3)には、顔料、ワックス等の艶消し剤を用いる方法が記載されている。しかし、これらの方法で光沢の低い塗膜を得るためには艶消し剤を多量に配合する必要があり、そのため得られる塗膜の平滑性や隠ぺい性が劣ったり、耐衝撃性、耐候性等の要求される塗膜物性が発現しなかったり等の課題がある。
【0006】
また、例えば、特開平3-109468号公報(特許文献4)には、ゲル化時間の差が3分以上となる2種類のポリエステル樹脂を用いた艶消し粉体塗料用樹脂組成物についての記載がある。この場合、2種類のポリエステルBのゲル化時間の差(絶対値)により光沢度を制御しているため、硬化条件の厳密な制御が必要となり、場合によっては、所望の光沢度が得られないという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2009-215371号公報
【文献】特開2009-215372号公報
【文献】特開2000-119561号公報
【文献】特開平3-109468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
艶調整粉体塗料組成物から形成される艶調整硬化塗膜は、所望される光沢度を有することに加えて、平滑性に優れていることが求められる。しかし、上述の技術を始めとした広範な検討がなされているにも関わらず、同系統の樹脂組成物を用いた塗料組成物において、所望の光沢度、すなわちフルマットから中光沢までの範囲の光沢度を有し、かつ平滑性に優れる硬化塗膜を得るための技術が不十分であるのが現状である。
【0009】
本開示は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、所望の光沢度、すなわちフルマットから中光沢までの範囲に制御された光沢度を有し、更に、良好な平滑性、耐衝撃性及び耐候性を有する艶調整硬化塗膜を形成することができる艶調整粉体塗料組成物、艶調整硬化塗膜を有する塗装物品及び艶調整硬化塗膜の形成方法を提供することである。例えば、本開示では、OA機器、家電製品、鋼製家具、自動車部品等の表面の塗装に広く用いられる硬化塗膜として所望される性能(フルマットから中光沢までの範囲の光沢度、良好な平滑性、耐衝撃性及び耐候性)を有する硬化塗膜を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、下記態様[1]~[10]を提供する。
[1]ポリエステル樹脂(A1)、ポリエステル樹脂(A2)、ポリエステル樹脂(A3)及び硬化剤(B)を含む、艶調整粉体塗料組成物であって、
前記ポリエステル樹脂(A1)の酸価は5mgKOH/g以上45mgKOH/g未満の範囲内であり、
前記ポリエステル樹脂(A2)の酸価は45mgKOH/g以上85mgKOH/g未満の範囲内であり、
前記ポリエステル樹脂(A3)の酸価は85mgKOH/g以上125mgKOH/g以下の範囲内であり、
前記ポリエステル樹脂(A1)、前記ポリエステル樹脂(A2)及び前記ポリエステル樹脂(A3)の含有量の合計100質量部に対して、
前記ポリエステル樹脂(A1)の含有量が、5.0質量部以上82.5質量部以下、
前記ポリエステル樹脂(A2)の含有量が、0.5質量部以上45.0質量部以下、及び
前記ポリエステル樹脂(A3)の含有量が、5.0質量部以上82.5質量部以下
の範囲内であり、
前記ポリエステル樹脂(A1)のSP値(SPA1)、前記ポリエステル樹脂(A2)のSP値(SPA2)及び前記ポリエステル樹脂(A3)のSP値(SPA3)が、下記条件:
SPA1<SPA2<SPA3、又は
SPA3<SPA2<SPA1
のいずれかを満たし、
前記艶調整粉体塗料組成物から形成した艶調整硬化塗膜の60度鏡面光沢度が、0以上65未満の範囲内である、艶調整粉体塗料組成物。
[2]前記SP値の差の絶対値が、下記条件:
0.1<|SPA1-SPA2|<1.5、
0.1<|SPA2-SPA3|<2.5、及び
0.2<|SPA1-SPA3|<3.0
を満たす、[1]に記載の艶調整粉体塗料組成物。
[3]前記硬化剤(B)は、β-ヒドロキシアルキルアミド化合物を含む、[1]又は[2]に記載の艶調整粉体塗料組成物。
[4]前記SP値の差の絶対値が、下記条件:
0.1 <|SPA1-SPA2|<1.5、
0.1 <|SPA2-SPA3|<2.5、及び
0.2 <|SPA1-SPA3|<3.0
を満たし、
ポリエステル樹脂(A1)、ポリエステル樹脂(A2)及びポリエステル樹脂(A3)の含有量の合計100質量部に対して、ポリエステル樹脂(A2)の含有量が、1.0質量部以上30.0質量部以下の範囲内であり、
前記艶調整粉体塗料組成物から形成した艶調整硬化塗膜の60度鏡面光沢度が、0以上35未満の範囲内である、[1]~[3]のいずれか1つに記載の艶調整粉体塗料組成物。
[5]前記SP値の差の絶対値が、下記条件:
0.1<|SPA1-SPA2|<1.5、
0.1<|SPA2-SPA3|<2.5、及び
0.2<|SPA1-SPA3|<3.0
を満たし、
ポリエステル樹脂(A1)、ポリエステル樹脂(A2)及びポリエステル樹脂(A3)の含有量の合計100質量部に対して、ポリエステル樹脂(A2)の含有量が、25.0質量部以上45.0質量部以下の範囲内であり、
前記艶調整粉体塗料組成物から形成した艶調整硬化塗膜の60度鏡面光沢度が、35以上65未満の範囲内である、[1]~[4]のいずれか1つに記載の艶調整粉体塗料組成物。
[6][1]~[4]のいずれか1つに記載の艶調整粉体塗料組成物から形成した艶調整硬化塗膜を有する塗装物品であって、前記硬化塗膜の60度鏡面光沢度が、0以上35未満の範囲内である、塗装物品。
[7][1]~[3]及び[5]のいずれか1つに記載の艶調整粉体塗料組成物から形成した艶調整硬化塗膜を有する塗装物品であって、前記硬化塗膜の60度鏡面光沢度が、35以上65未満の範囲内である、塗装物品。
[8]艶調整硬化塗膜の形成方法であって、
ポリエステル樹脂(A1)、ポリエステル樹脂(A2)、ポリエステル樹脂(A3)及び硬化剤(B)を含む艶調整粉体塗料組成物を被塗物に塗装する、粉体塗装工程、及び
前記塗装により得られた塗膜を加熱硬化させて、艶調整硬化塗膜を得る、硬化工程
を含み、
前記艶調整粉体塗料組成物は、ポリエステル樹脂(A1)、ポリエステル樹脂(A2)、ポリエステル樹脂(A3)及び硬化剤(B)を含み、
前記ポリエステル樹脂(A1)の酸価は5mgKOH/g以上45mgKOH/g未満の範囲内であり、
前記ポリエステル樹脂(A2)の酸価は45mgKOH/g以上85mgKOH/g未満の範囲内であり、
前記ポリエステル樹脂(A3)の酸価は85mgKOH/g以上125mgKOH/g以下の範囲内であり、
前記ポリエステル樹脂(A1)、前記ポリエステル樹脂(A2)及び前記ポリエステル樹脂(A3)の含有量の合計100質量部に対して、
前記ポリエステル樹脂(A1)の含有量が、5.0質量部以上82.5質量部以下、
前記ポリエステル樹脂(A2)の含有量が、0.5質量部以上45.0質量部以下、及び
前記ポリエステル樹脂(A3)の含有量が、5.0質量部以上82.5質量部以下の範囲内であり、
前記ポリエステル樹脂(A1)のSP値(SPA1)、前記ポリエステル樹脂(A2)のSP値(SPA2)及び前記ポリエステル樹脂(A3)のSP値(SPA3)が、下記条件:
SPA1<SPA2<SPA3、又は
SPA3<SPA2<SPA1
のいずれかを満たし、
前記艶調整硬化塗膜の60度鏡面光沢度が、0以上65未満の範囲内である、艶調整硬化塗膜の形成方法。
[9]前記SP値の差の絶対値が、下記条件:
0.1<|SPA1-SPA2|<1.5、
0.1<|SPA2-SPA3|<2.5、及び
0.2<|SPA1-SPA3|<3.0
を満たし、
ポリエステル樹脂(A1)、ポリエステル樹脂(A2)及びポリエステル樹脂(A3)の含有量の合計100質量部に対して、前記艶調整粉体塗料組成物中のポリエステル樹脂(A2)の含有量が、1.0質量部以上30.0質量部以下の範囲内であり、
前記艶調整硬化塗膜の60度鏡面光沢度が、0以上35未満の範囲内である、[8]に記載の艶調整硬化塗膜の形成方法。
[10]前記SP値の差の絶対値が、下記条件:
0.1<|SPA1-SPA2|<1.5、
0.1<|SPA2-SPA3|<2.5、及び
0.2<|SPA1-SPA3|<3.0
を満たし、
ポリエステル樹脂(A1)、ポリエステル樹脂(A2)及びポリエステル樹脂(A3)の含有量の合計100質量部に対して、前記艶調整粉体塗料組成物中のポリエステル樹脂(A2)の含有量が、25.0質量部以上45.0質量部以下の範囲内であり、
前記艶調整硬化塗膜の60度鏡面光沢度が、35以上65未満の範囲内である、[8]に記載の艶調整硬化塗膜の形成方法。
【発明の効果】
【0011】
本開示により、所望の光沢度、すなわちフルマットから中光沢までの範囲に制御された光沢度を有し、更に、良好な平滑性、耐衝撃性及び耐候性を有する艶調整硬化塗膜を形成することができる艶調整粉体塗料組成物、艶調整硬化塗膜を有する塗装物品及び艶調整硬化塗膜の形成方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行い、酸価の異なる3種類のポリエステル樹脂、すなわち、低酸価ポリエステル樹脂、中酸価ポリエステル樹脂及び高酸価ポリエステル樹脂と硬化剤とを併用し、且つ前記3種類のポリエステル樹脂の溶解度パラメーター(SP値)が所定の関係を満足するように調整することにより、得られる塗膜の相溶性及び熱硬化性を制御して、得られる硬化塗膜の光沢度を調整することを着想した。その結果、本発明者らは、中酸価ポリエステル樹脂のSP値を、低酸価ポリエステル樹脂のSP値より高く、且つ高酸価ポリエステル樹脂のSP値より低くすることにより、あるいは、低酸価ポリエステル樹脂のSP値より低く、且つ高酸価ポリエステル樹脂のSP値より高くすることにより、所望の光沢度、すなわちフルマットから中光沢までの範囲の光沢度を有し、且つ平滑性、耐衝撃性及び耐候性に優れた艶調整硬化塗膜が得られることを見出した。なお、本開示の「塗膜」とは、塗装後硬化前の塗膜を意味し、硬化後の塗膜は「硬化塗膜」として区別する。
【0013】
以下、本開示の実施形態に係る艶調整粉体塗料組成物、艶調整硬化塗膜を有する塗装物品、及び艶調整硬化塗膜の形成方法の詳細を説明する。
【0014】
[艶調整粉体塗料組成物]
本開示の実施形態に係る艶調整粉体塗料組成物は、ポリエステル樹脂(A1)、ポリエステル樹脂(A2)、ポリエステル樹脂(A3)及び硬化剤(B)を含む。
ポリエステル樹脂(A1)の酸価は5mgKOH/g以上45mgKOH/g未満の範囲内であり、
ポリエステル樹脂(A2)の酸価は45mgKOH/g以上85mgKOH/g未満の範囲内であり、
ポリエステル樹脂(A3)の酸価は85mgKOH/g以上125mgKOH/g以下の範囲内である。
また、前記ポリエステル樹脂(A1)、前記ポリエステル樹脂(A2)及び前記ポリエステル樹脂(A3)の含有量の合計100質量部に対して、
前記ポリエステル樹脂(A1)の含有量が、5.0質量部以上82.5質量部以下、
前記ポリエステル樹脂(A2)の含有量が、0.5質量部以上45.0質量部以下、及び
前記ポリエステル樹脂(A3)の含有量が、5.0質量部以上82.5質量部以下の範囲内である。
ポリエステル樹脂(A1)のSP値(SPA1)、ポリエステル樹脂(A2)のSP値(SPA2)及びポリエステル樹脂(A3)のSP値(SPA3)は、下記条件:
SPA1<SPA2<SPA3、又は
SPA3<SPA2<SPA1
のいずれかを満たす。
SPA1、SPA2及びSPA3が、上記の条件を満たすことにより、得られる硬化塗膜の光沢度を自由に制御でき、所望の光沢度、すなわちフルマットから中光沢までの範囲の光沢値を得ることができる。
更に、前記艶調整粉体塗料組成物から形成した艶調整硬化塗膜の60度鏡面光沢度が、0以上35未満の範囲内である。
【0015】
以下、ポリエステル樹脂(A1)を「低酸価ポリエステル樹脂」又は「低酸価ポリエステル樹脂(A1)」、ポリエステル樹脂(A2)を「中酸価ポリエステル樹脂」又は「中酸価ポリエステル樹脂(A2)」、ポリエステル樹脂(A3)を「高酸価ポリエステル樹脂」又は「高酸価ポリエステル樹脂(A3)」と呼ぶことがある。
【0016】
本開示の実施形態に係る艶調整粉体塗料組成物を用いることにより、所望の範囲に光沢度を制御でき、フルマットから中光沢までの範囲の光沢度、良好な平滑性、耐衝撃性及び耐候性を有する艶調整硬化塗膜が得られる。このような艶調整硬化塗膜が得られるメカニズムとして次の仮説が考えられ得るが、本開示の範囲は、当該仮説により何ら影響されるものではない。
【0017】
本開示の実施形態に係る艶調整粉体塗料組成物は、SP値の異なる3種類のポリエステル樹脂を含んでいるため、熱硬化させるために加熱して溶融する際、SP値の差に起因して、上記3種類のポリエステル樹脂が互いに相溶し難い。そのため、3種類のポリエステル樹脂は加熱・溶融の進行する過程で均一にならず、高酸価ポリエステル樹脂部分、中酸価ポリエステル樹脂部分及び低酸価ポリエステル樹脂部分がそれぞれに形成され易い。一方で、用いる高酸価ポリエステル樹脂、中酸価ポリエステル樹脂及び低酸価ポリエステル樹脂それぞれを構成するモノマー種は同一又は類似であり、構造的な近似によってそれぞれが相溶しようとする効果も存在し、その不相溶、相溶のバランスから、塗膜の一体性を保持しつつ微細なドメインを形成すると考えられる。また、反応性が比較的高い高酸価ポリエステル樹脂部分、反応性が中程度の中酸価ポリエステル樹脂部分、反応性が比較的低い低酸価ポリエステル樹脂部分とでは、硬化収縮の程度が異なると考えられる。そのため、熱硬化が進行する過程で、硬化収縮の差異に起因して、艶調整硬化塗膜に凹凸が形成されると考えられ、更に、3種のポリエステル樹脂を用いることで、1種類又は2種類のポリエステル樹脂を用いる場合と比べて、艶調整硬化塗膜の凹凸の高さ及び分布等を適切に調整することができると考えられる。その結果、所望の範囲に光沢度を制御でき、フルマットから中光沢までの範囲の光沢度、良好な平滑性、耐衝撃性及び耐候性を有する艶調整硬化塗膜が得られると考えられる。
【0018】
本開示の実施形態に係る艶調整粉体塗料組成物により、フルマットから中光沢までの広範囲に亘って得られる硬化塗膜の光沢度を調整することができる。本開示の実施形態に係る艶調整粉体塗料組成物は、これに限定されず、高光沢までの範囲で光沢度を調整することも可能である。
【0019】
なお、本開示において、所望の光沢度とは、フルマットから中光沢、すなわち光沢度0以上65未満を意味し、一実施態様において、フルグロスから低光沢を意味し、別の実施態様において、中光沢を意味する。本開示の実施形態に係る艶調整粉体塗料組成物より得られる艶調整硬化塗膜は、シェルビングや収納庫等の鋼製家具用途に使用されることが多く、硬化塗膜が高光沢又はフルグロスであると、光の反射による眩しさのため、用途として適切でないためである。
【0020】
なお、光沢度は下記範囲内において、それぞれ下記のように呼ぶことがある。
0以上10未満:フルマット、全艶消し
10以上35未満:低光沢、艶消し、2分艶、3分艶
35以上65未満:中光沢、半艶消し、4分艶、5分艶、6分艶
65以上85未満:高光沢、7分艶、8分艶
85以上100以下:フルグロス、全艶
なお、本開示において「光沢度」は、JIS K 5600-4-7に準拠して測定した艶調整硬化塗膜の60度鏡面光沢度である。
【0021】
本開示においては、例えば、中光沢、低光沢又はフルマットの硬化塗膜を得ることができる。
【0022】
[ポリエステル樹脂(A1)~(A3)]
ポリエステル樹脂(A1)~(A3)は、多価カルボン酸を主成分とした酸成分と、多価アルコールを主成分としたアルコール成分とを原料として通常の方法により縮重合したものであってよい。酸成分及びアルコール成分等を含む成分組成及び縮重合の条件を適宜選択することにより、分子量、酸価及びSP値を適宜調整し、ポリエステル樹脂(A1)~(A3)を得ることができる。なお、縮重合の際、反応促進のため、触媒を用いてもよい。触媒としては、錫化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物等、公知のものが挙げられる。
【0023】
上記酸成分は特に限定されず、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、トリメリット酸及びこれらの無水物、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類及びこれらの無水物;コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、ドデカンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸類及びこれらの無水物;γ-ブチロラクトン、ε-カプロラクトン等のラクトン類及びこれらに対応するヒドロキシカルボン酸類;p-オキシエトキシ安息香酸等の芳香族オキシモノカルボン酸類等が挙げられる。酸成分は、1種を単独で用いてよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
上記アルコール成分は特に限定されず、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,5-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAアルキレンオキシド付加物、ビスフェノールSアルキレンオキシド付加物、1,2-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、2,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,4-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,2-ドデカンジオール、1,2-オクタデカンジオール等のジオール;トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の3価以上の多価アルコール類等が挙げられる。アルコール成分は、1種を単独で用いてよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
なお、本明細書における酸価は、固形分酸価を表し、JIS K 0070に記載される測定方法に準じて測定できる。
【0026】
SP値は、solubility parameter(溶解性パラメーター)の略であり、溶解性の尺度となるものである。SP値は、数値が大きいほど極性が高く、逆に数値が小さいほど極性が低いことを示す。
【0027】
SP値は、例えば、次の方法によって実測することができる[参考文献:SUH、CLARKE、J.P.S.A-1、5、1671~1681(1967)]。
【0028】
サンプルとして、ポリエステル樹脂0.5gを100mlビーカーに秤量し、アセトン10mlを、ホールピペットを用いて加え、マグネティックスターラーにより溶解したものを使用する。このサンプルに対して測定温度20℃で、50mlビュレットを用いて貧溶媒を滴下し、濁りが生じた点を滴下量とする。貧溶媒は、高SP貧溶媒としてイオン交換水を用い、低SP貧溶媒としてn-ヘキサンを使用して、それぞれ濁点測定を行う。本開示において、ポリエステル樹脂のSP値δ[(cal/cm1/2]は下記計算式によって与えられる。
δ=(Vml 1/2δml+Vmh 1/2δmh)/(Vml 1/2+Vmh 1/2
=V/(φ+φ
δ=φδ+φδ
Vi:溶媒の分子容(ml/mol)
φi:濁点における各溶媒の体積分率
δi:溶媒のSP値
ml:低SP貧溶媒混合系
mh:高SP貧溶媒混合系
【0029】
SP値の差の絶対値は、下記条件:
0.1<|SPA1-SPA2|<1.5、
0.1<|SPA2-SPA3|<2.5、及び
0.2<|SPA1-SPA3|<3.0
を満たすことが好ましい。これにより、所望の光沢度及び良好な平滑性を両立することができる艶調整硬化塗膜を得ることがより容易となる。SP値の差の絶対値が上記範囲にあることにより、形成される硬化塗膜が特に良好な平滑性を有し得る。例えば、SP値の差の絶対値が上記の範囲よりも大きくなった場合には、それぞれのポリエステル樹脂がマクロで不相溶となり、塗膜表面に模様が生じることがある。
【0030】
ポリエステル樹脂(A1)の含有量は特に限定されないが、ポリエステル樹脂(A1)、ポリエステル樹脂(A2)及びポリエステル樹脂(A3)の含有量の合計100質量部に対して、5.0質量部以上82.5質量部以下であることが好ましく、22.5質量部以上65.0質量部以下であることがより好ましい。これにより、低光沢又は中光沢を有し、かつ良好な平滑性を有する艶調整硬化塗膜を得ることがより容易となる。
ポリエステル樹脂(A1)は、酸価が5mgKOH/g以上45mgKOH/g未満である2種以上のポリエステル樹脂を含んでよい。なお、2種以上のポリエステル樹脂を含む場合、ポリエステル樹脂(A1)の酸価及びSP値は、それぞれ含まれる各ポリエステル樹脂の質量割合に基づき、酸価及びSP値の加重平均として算出する。
ポリエステル樹脂(A1)の酸価は、好ましくは10mgKOH/g以上40mgKOH/g以下であり、より好ましくは15mgKOH/g以上35mgKOH/gである。ポリエステル樹脂(A1)のSP値は、好ましくは9以上13以下である。
【0031】
ポリエステル樹脂(A2)の含有量は特に限定されないが、ポリエステル樹脂(A1)、ポリエステル樹脂(A2)及びポリエステル樹脂(A3)の含有量の合計100質量部に対して、0.5質量部以上45.0質量部以下であることが好ましく、1.0質量部以上34.0質量部以下であることがより好ましい。これにより、光沢度及び平滑性を両立することができる艶調整硬化塗膜を得ることがより容易となる。
ポリエステル樹脂(A2)は、酸価が45mgKOH/g以上85mgKOH/g未満である2種以上のポリエステル樹脂を含んでよい。2種以上のポリエステル樹脂を含む場合、ポリエステル樹脂(A2)の酸価及びSP値は、それぞれ含まれる各ポリエステル樹脂の質量割合に基づき、酸価及びSP値の加重平均として算出する。
ポリエステル樹脂(A2)の酸価は、好ましくは50mgKOH/g以上80mgKOH/g以下であり、より好ましくは55mgKOH/g以上75mgKOH/gである。ポリエステル樹脂(A2)のSP値は、好ましくは9以上13以下である。
【0032】
ポリエステル樹脂(A3)の含有量は特に限定されないが、ポリエステル樹脂(A1)、ポリエステル樹脂(A2)及びポリエステル樹脂(A3)の含有量の合計100質量部に対して、5.0質量部以上82.5質量部以下であることが好ましく、22.5質量部以上65.0質量部以下であることがより好ましい。これにより、低光沢又は中光沢、及び、良好な平滑性を有する艶調整硬化塗膜を得ることがより容易となる
ポリエステル樹脂(A3)は、酸価が85mgKOH/g以上125mgKOH/g以下である2種以上のポリエステル樹脂を含んでよい。2種以上のポリエステル樹脂を含む場合、ポリエステル樹脂(A3)の酸価及びSP値はそれぞれ、含まれる各ポリエステル樹脂質量割合に基づき、の酸価及びSP値の加重平均として算出する。
ポリエステル樹脂(A3)の酸価は、好ましくは90mgKOH/g以上120mgKOH/g以下であり、より好ましくは95mgKOH/g以上115mgKOH/gである。ポリエステル樹脂(A3)のSP値は、好ましくは9以上13以下である。
【0033】
ある実施形態において、ポリエステル樹脂(A1)、ポリエステル樹脂(A2)及びポリエステル樹脂(A3)の含有量の合計100質量部に対して、
ポリエステル樹脂(A1)の含有量は、5.0質量部以上82.5質量部以下、
ポリエステル樹脂(A2)の含有量は、0.5質量部以上45.0質量部以下、及び
ポリエステル樹脂(A3)の含有量は、5.0質量部以上82.5質量部以下
である。上記範囲内にあることで、低光沢又は中光沢及び、良好な平滑性を両立することができる艶調整硬化塗膜を得ることが容易となる。
【0034】
ある実施態様では、ポリエステル樹脂(A1)、ポリエステル樹脂(A2)及びポリエステル樹脂(A3)の含有量の合計100質量部に対して、ポリエステル樹脂(A2)の含有量が0.5質量部以上45.0質量部以下で、ポリエステル樹脂(A1)とポリエステル樹脂(A3)の質量比[(A1):(A3)]が1:2~2:1である。上記範囲内にあることで、低光沢又は中光沢を有し、かつ良好な平滑性を有する艶調整硬化塗膜を得ることがより容易となる。
【0035】
本実施形態において、ポリエステル樹脂(A2)の含有量は、ポリエステル樹脂(A1)、ポリエステル樹脂(A2)及びポリエステル樹脂(A3)の含有量の合計100質量部に対して、例えば、0.5質量部以上45.0質量部以下であってもよく、1.0質量部以上40.0質量部以下であってもよく、1.0質量部以上30.0質量部以下であってもよい。
【0036】
本実施形態において、例えば、ポリエステル樹脂(A1)とポリエステル樹脂(A3)の質量比が1:1の場合、ポリエステル樹脂(A1)が20.0質量部以上49.5質量部以下、ポリエステル樹脂(A2)が0.5質量部以上45.0質量部以下及びポリエステル樹脂(A3)が20.0質量部以上49.5質量部以下であってもよく、ポリエステル樹脂(A1)が33.0質量部以上49.5質量部以下、ポリエステル樹脂(A2)が1.0質量部以上34.0質量部以下及びポリエステル樹脂(A3)が33.0質量部以上49.5質量部以下であってもよい。
【0037】
ポリエステル樹脂(A1)とポリエステル樹脂(A3)の質量比[(A1):(A3)]は1:16.5~16.5:1であってもよい。また、ポリエステル樹脂(A2)と、ポリエステル樹脂(A1)及びポリエステル樹脂(A3)の合計との質量比[(A2):{(A1)+(A3)}]は、0.1:19.9~9:11であってよく、0.1:19.9~5:15であってよく、0.1:19.9~4:16であってもよい。
【0038】
ある実施形態において、SP値の差の絶対値が、下記条件:
0.1<|SPA1-SPA2|<1.5
0.1<|SPA2-SPA3|<2.5及び
0.2<|SPA1-SPA3|<3.0
を満たし、
ポリエステル樹脂(A1)、ポリエステル樹脂(A2)及びポリエステル樹脂(A3)の含有量の合計100質量部に対して、ポリエステル樹脂(A2)の含有量が、1.0質量部以上30.0質量部以下の範囲内であり、
艶調整粉体塗料組成物から形成した艶調整硬化塗膜の60度鏡面光沢度が、0以上35未満の範囲内である。当該実施形態に係る艶調整粉体塗料組成物は、フルマットから低光沢の範囲に亘って光沢を調整することがより容易であるため好ましい。
【0039】
本実施形態において、ポリエステル樹脂(A1)、ポリエステル樹脂(A2)及びポリエステル樹脂(A3)の含有量の合計100質量部に対して、例えば、ポリエステル樹脂(A1)が25.0質量部以上49.5質量部以下、ポリエステル樹脂(A2)が1.0質量部以上50.0質量部以下及びポリエステル樹脂(A3)が25.0質量部以上49.5質量部以下であってもよく、ポリエステル樹脂(A1)が30.0質量部以上49.5質量部以下、ポリエステル樹脂(A2)が1.0質量部以上40.0質量部以下及びポリエステル樹脂(A3)が30.0質量部以上49.5質量部以下であってもよい。
【0040】
別の実施形態において、SP値の差の絶対値が、下記条件:
0.1<|SPA1-SPA2|<1.5、
0.1<|SPA2-SPA3|<2.5及び
0.2<|SPA1-SPA3|<3.0
を満たし、
ポリエステル樹脂(A1)、ポリエステル樹脂(A2)及びポリエステル樹脂(A3)の含有量の合計100質量部に対して、ポリエステル樹脂(A2)の含有量が、25.0質量部以上45.0質量部以下の範囲内であり、
艶調整粉体塗料組成物から形成した艶調整硬化塗膜の60度鏡面光沢度が、35以上65未満の範囲内である。
当該実施形態に係る艶調整粉体塗料組成物は、塗膜の光沢を中光沢の範囲に調整することがより容易であるため好ましい。
【0041】
別の実施形態において、SP値の差の絶対値が、下記条件:
0.1<|SPA1-SPA2|<1.5、
0.1<|SPA2-SPA3|<2.5及び
0.2<|SPA1-SPA3|<3.0
を満たし、
ポリエステル樹脂(A1)、ポリエステル樹脂(A2)及びポリエステル樹脂(A3)の含有量の合計100質量部に対して、
ポリエステル樹脂(A1)の含有量が、60.0質量部以上85.0質量部以下、
ポリエステル樹脂(A2)の含有量が、10.0質量部以上20.0質量部以下かつ
ポリエステル樹脂(A3)の含有量が、5.0質量部以上30.0質量部以下;又は、
ポリエステル樹脂(A1)の含有量が、5.0質量部以上25.0質量部以下、
ポリエステル樹脂(A2)の含有量が、10.0質量部以上20.0質量部以下かつ
ポリエステル樹脂(A3)の含有量が、65.0質量部以上85.0質量部以下であり、
艶調整粉体塗料組成物から形成した艶調整硬化塗膜の60度鏡面光沢度が、35以上65未満の範囲内である。
当該実施形態に係る艶調整粉体塗料組成物は、塗膜の光沢を中光沢の範囲に調整することがより容易であるため好ましい。
【0042】
ポリエステル樹脂(A1)のガラス転移温度(Tg)は、例えば、40℃以上90℃以下であってよく、好ましくは50℃以上80℃以下である。上記範囲内にあることで、ガラス転移温度が上記範囲内にあることで、粉体塗料組成物の製造時に顔料分散性が良好になる、及び得られる粉体塗料組成物の貯蔵安定性が良好になるという利点がある。なお、本開示におけるTgは、JIS K 7121に準拠して、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定できる。
【0043】
ポリエステル樹脂(A1)の数平均分子量は、例えば、1,600以上4,500以下であってよく、4,200以上4,400以下であってよい。数平均分子量が上記範囲内にあることで、粉体塗料組成物の製造時に顔料分散性が良好になる、及び得られる粉体塗料組成物の貯蔵安定性が良好になるという利点がある。なお、本開示における数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いたスチレンホモポリマー換算の数平均分子量を意味する。
【0044】
ポリエステル樹脂(A2)のガラス転移温度(Tg)は、例えば、40℃以上90℃以下であってよく、好ましくは50℃以上80℃以下である。ガラス転移温度が上記範囲内にあることで、塗料組成物を安定に製造することが可能となる。
ポリエステル樹脂(A2)の数平均分子量は、例えば、1,000以上6,500以下であってよく、1,800以上6,200以下であってよい。数平均分子量が上記範囲内にあることで、粉体塗料組成物の製造時に顔料分散性が良好になる、及び得られる粉体塗料組成物の貯蔵安定性が良好になるという利点がある。
【0045】
ポリエステル樹脂(A3)のガラス転移温度(Tg)は、例えば、40℃以上90℃以下であってよく、好ましくは50℃以上80℃以下である。ガラス転移温度が上記範囲内にあることで、塗料組成物を安定に製造することが可能となる。
ポリエステル樹脂(A3)の数平均分子量は、例えば、1,000以上6,000以下でよく、1,600以上5,600以下であってよい。数平均分子量が上記範囲内にあることで、粉体塗料組成物の製造時に顔料分散性が良好になる、及び得られる粉体塗料組成物の貯蔵安定性が良好になるという利点がある。
【0046】
なお、艶調整粉体塗料組成物は、得られる塗膜の光沢度、平滑性及び塗膜物性に影響を及ぼさない範囲でポリエステル樹脂(A1)~(A3)以外の他のアクリル樹脂、アルキド樹脂等の樹脂を含み得る。ポリエステル樹脂(A1)~(A3)以外の他の樹脂を含む場合、当該他の樹脂の含有量は、艶調整粉体塗料組成物の樹脂固形分100質量部に対して、例えば、1質量部以上10質量部以下である。好ましくは1質量部以上5質量部以下、より好ましくは1質量部以上3質量部以下である。なお、艶調整粉体塗料組成物の樹脂固形分は、樹脂成分と、硬化剤成分とを意味する。
【0047】
[硬化剤(B)]
硬化剤(B)は、ポリエステル樹脂(A)に含まれるカルボキシル基と反応する硬化剤であれば特に限定されず、例えば、脂肪族ポリアミン、ポリアミノアミド、ケチミン、脂環族ジアミン、芳香族ジアミン、ジシアンジアミド、ポリアミド、β-ヒドロキシアルキルアミド(HAA)等のアミン硬化剤;エポキシ硬化剤等が挙げられる。硬化剤(B)は、2種以上の硬化剤を含んでよい。
【0048】
硬化剤(B)は、β-ヒドロキシアルキルアミド化合物(一般式(I))を含むことが好ましい。
【0049】
【化1】
ここで、Rは、水素原子、メチル基又はエチル基、Rは、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基又はHOCH(R)CH-、Aは、2価の炭化水素基を表す。
【0050】
硬化剤(B)がβ-ヒドロキシアルキルアミド化合物を含むことにより、低温で熱硬化反応を生じさせることができるため、耐熱性の低い被塗物に艶調整粉体塗料組成物を適用することが容易となる。また、硬化剤(B)としてβ-ヒドロキシアルキルアミド化合物を用いることにより、脱離物として水のみが生じる。その結果、硬化塗膜を得る際に有害物質の発生を抑制でき、環境への配慮の点からも有利となる。
【0051】
β-ヒドロキシアルキルアミド化合物は、市販製品を用いてもよい。市販製品としては、例えば、プリミドXL552(EMS-PRIMD社製、水酸基価:663mgKOH/g)が挙げられる。なお、本開示における水酸基価は、固形分水酸基価を表し、JIS K 0070に記載される測定方法に準じて測定できる。
【0052】
一般式(I)中のRとしては、水素原子又はメチル基が、Rとしては、HOCH(R1)CH-が、Aとしては炭素原子数2~10が好ましく、4~8のアルキレン基がより好ましい。
【0053】
β-ヒドロキシアルキルアミド化合物は、例えば、カルボン酸及び/又はカルボン酸エステルと、β-ヒドロキシアルキルアミンとを、ナトリウム又はカリウム等のアルコキシドの触媒の存在下で反応させることにより得られる。カルボン酸及びカルボン酸エステルとしては、例えば、コハク酸、アジピン酸、グルタル酸、コハク酸ジメチル、コハク酸ジエチル、アジピン酸ジメチル等が挙げられる。β-ヒドロキシアルキルアミンとしては、例えば、N-メチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、N-メチルプロパノールアミン等が挙げられる。
【0054】
硬化剤(B)の含有量は特に限定されず、ポリエステル樹脂(A1)~(A3)の含有量、それ以外に含まれ得る上記他の樹脂の種類及び含有量に応じて、適宜調整してよい。
例えば、硬化剤(B)がβ-ヒドロキシアルキルアミド化合物を含む場合、ポリエステル樹脂(A)、ポリエステル樹脂(A2)及びポリエステル樹脂(A3)に含まれるカルボキシル基のモル数の合計とβ-ヒドロキシアルキルアミド化合物の水酸基のモル数と比が、0.6/1~1/0.6であることが好ましく、より好ましくは0.8/1~1/0.8である。上記範囲内にあることで、塗料組成物の硬化反応性を向上させることができる。ある態様では、低温、例えば、165℃以下で、又は高温、例えば、200℃で10分以下の短時間で、所望の物性を発現する艶調整塗膜が得られる利点がある。更に、得られる艶調整硬化塗膜の防食性、機能的強度、耐薬品性及び耐水性を高めることがより容易となる。
【0055】
(硬化触媒)
艶調整粉体塗料組成物は、硬化触媒を含んでもよい。硬化触媒を含むことにより、艶調整粉体塗料組成物の反応性を適宜調整できる。
【0056】
硬化触媒の含有量は、艶調整粉体塗料組成物の樹脂固形分100質量部に対して、0質量部以上20質量部以下であり、ある態様においては0質量部以上15質量部以下であり、例えば、0質量部以上10質量部以下である。このような範囲内で硬化触媒を含むことにより、艶調整粉体塗料組成物の硬化速度を制御でき、様々な被塗物や塗装・乾燥設備に適用可能となる。
【0057】
硬化触媒は、目的に応じて適宜選択できる。例えば、硬化触媒は、イミダゾール類化合物、イミダゾリン類化合物及びこれらの金属塩複合体、3級ホスフィン類化合物、4級ホスホニウム塩類化合物及び4級アンモニウム塩類化合物から選択少なくとも1種の硬化触媒である。
【0058】
イミダゾール類化合物としては、特に限定されないが、例えば、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-イソプロピルイミダゾール等のアルキルイミダゾール類、1-(2-カルバミルエチル)イミダゾール等のカルバミルアルキル置換イミダゾール類、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール等のシアノアルキル置換イミダゾール類、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール等の芳香族置換イミダゾール類、1-ビニル-2-メチルイミダゾール等のアルケニル置換イミダゾール類、1-アリル-2-エチル-4-メチルイミダゾール等のアリル置換イミダゾール類及びポリイミダゾール等を挙げることができるが、好ましくは、アルキルイミダゾール類、芳香族置換イミダゾール類が挙げられる。また、市販製品を用いてもよい。市販製品としては、例えば、2MZ-H(四国化成工業社製;2-メチルイミダゾール)、C11Z(四国化成工業社製;2-ウンデシルイミダゾール)、C17Z(四国化成工業社製;2-ヘプタデシルイミダゾール)、1.2DMZ(四国化成工業社製;1,2-ジメチルイミダゾール)、2E4MZ(四国化成工業社製;2-エチル-4-メチルイミダゾール)、2P4MZ(四国化成工業社製;2-フェニル-4-メチルイミダゾール)、1B2MZ(四国化成工業社製;1-ベンジル-2-メチルイミダゾール)、1B2PZ(四国化成工業社製;1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール)等が挙げられる。
【0059】
イミダゾリン類化合物としては、特に限定されないが、例えば、2-フェニルイミダゾール、2-メチルイミダゾリン、2-ウンデシルイミダゾリン、2-ヘプタデシルイミダゾリン等が挙げられる。また、市販製品を用いてもよい。市販製品としては、例えば2PZ(四国化成工業社製;2-フェニルイミダゾリン)等が挙げられる。
【0060】
金属塩複合体としては、前記イミダゾール類化合物又は前記イミダゾリン類化合物を金属塩によって複合させたものを例示することができる。係る金属塩としては、特に限定されないが、例えば、銅、ニッケル、コバルト、カルシウム、亜鉛、ジルコニウム、銀、クロム、マンガン、錫、鉄、チタン、アンチモン、アルミニウム等の金属と、クロライド、ブロマイド、フルオライド、サルフェート、ニトレート、アセテート、マレート、ステアレート、ベンゾエート、メタクリレート等の塩類とからなるもの等が挙げられる。
3級ホスフィン類化合物としては、特に限定されないが、例えば、トリフェニルホスフィン、トリトリルホスフィン等が挙げられる。
【0061】
4級ホスホニウム塩類化合物としては、特に限定されないが、例えば、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド、ブチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、エチルトリフェニルホスホニウムアイオダイド、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド等が挙げられる。
【0062】
4級アンモニウム塩類化合物としては、特に限定されないが、例えば、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド等が挙げられる。
【0063】
ある態様においては、硬化触媒は、イミダゾール類化合物及びイミダゾリン類化合物のうち少なくとも1種である。本開示の粉体塗料組成物は、これらの硬化触媒を含むことにより、更に低温で硬化できる。
【0064】
(着色剤)
上述のように、艶調整粉体塗料組成物は、その他の成分として着色剤を含み得る。また、粉体塗料組成物に含まれる着色剤としては、通常、粉体塗料組成物に使用される既知の無機系顔料と有機系顔料を用いることができる。
【0065】
有彩色の無機系顔料としては、べんがら、クロムチタンイエロー、黄色酸化鉄等が、無彩色の無機系顔料としては、酸化チタン、カーボンブラック等がそれぞれ挙げられる。有彩色の有機系顔料としては、アゾ系、ペリレン系、縮合アゾ系、ニトロ系、ニトロソ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、キナクリドン系、ジオキサン系等の顔料が挙げられ、具体的には、アゾ系顔料としてはレーキレッド、ファストイエロー、ジスアゾイエロー、パーマネントレッド等、ニトロ系顔料としてはナフトールイエロー等、ニトロソ系顔料としてはピグメントグリーンB、ナフトールグリーン等、フタロシアニン系顔料としてはフタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等、アントラキノン系顔料としてはインダスレンブルー、ジアントラキノニルレッド等、キナクリドン系顔料としてはキナクリドンレッド、キナクリドンバイオレット等、ジオキサン系顔料としてはカルバゾールジオキサジンバイオレット等がそれぞれ挙げられる。
【0066】
着色剤の含有量は、その種類により異なるが、艶調整粉体塗料組成物の樹脂固形分100質量部に対して、無機系顔料では、0.05質量部以上60質量部以下、有機系顔料では、0.05質量部以上20質量部以下がそれぞれ好ましい。
【0067】
(体質顔料)
艶調整粉体塗料組成物は、無機充填剤を更に含んでよい。無機充填剤は、腐食因子の遮断に寄与して耐薬品性を向上させ得る。無機質充填剤としては、例えば、アルミナ、シリカ、沈降性硫酸バリウム、炭酸カルシウム、クレー、タルク、マイカ等の体質顔料;リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム等の防錆顔料等を挙げることができる。無機充填剤の量は、粉体塗料組成物の樹脂固形分100質量部に対して、5質量部以上60質量部以下であり、ある態様においては5質量部以上50質量部以下であり、例えば、5質量部以上35質量部以下である。
【0068】
(その他の成分)
艶調整粉体塗料組成物は、更に、表面調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、ワキ防止剤等の、通常の粉体塗料組成物に使用され得る既知の添加剤が適宜配合されていてもよい。
【0069】
[艶調整粉体塗料組成物]
艶調整粉体塗料組成物の平均粒子径は特に限定されず、例えば、塗装方法等に応じて、望ましい範囲を選択できる。
【0070】
静電塗装をする場合、艶調整粉体塗料組成物の平均粒子径は、例えば、15μm以上50μm以下であってよく、25μm以上40μm以下であってよく、25μm以上35μm以下あってよい。このような平均粒子径を有することにより、艶調整硬化塗膜の平滑性を高めることがより容易となる。
【0071】
流動浸漬塗装をする場合、艶調整粉体塗料組成物の平均粒子径は、例えば、50μm以上200μm以下であってよく、80μm以上170m以下であってよく、100μm以上150μm以下であってよい。このような平均粒子径を有することにより、艶調整硬化塗膜の平滑性を高めることがより容易となる。
【0072】
艶調整粉体塗料組成物の平均粒子径は、体積平均粒子径(D50)であり、例えば、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(日機装社製、マイクロトラック)等の粒度測定装置を用いて測定することができる。
【0073】
[最低溶融粘度]
艶調整粉体塗料組成物の最低溶融粘度は、例えば、1Pa・s以上200Pa・s以下であってよく、1Pa・s以上100Pa・s以下であってよい。これにより、例えば、複雑な形状を有する部品に、流動浸漬法又は静電粉体塗装法等により艶調整粉体塗料組成物を塗装した場合、偏肉や糸引き等の発生を抑制し、より均一な膜厚を有する硬化塗膜を形成できる。最低溶融粘度は、110℃から160℃まで昇温速度5℃/分で昇温させた場合の最低粘度であり、例えば、動的粘弾性測定装置(Rheosol-G3000;UBM社製)等で測定できる。
【0074】
[艶調整粉体塗料組成物の製造方法]
艶調整粉体塗料組成物は、既知の方法により製造できる。
例えば、艶調整粉体塗料組成物は、上記の各成分からなる原料を準備した後、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー等を使用して原料を予備的に混合し、次いで、コニーダー、エクストルーダー等の混練機を用いて原料を溶融混練することにより製造することができる。
溶融混練は、少なくとも原料の一部が溶融し全体を混練することができる温度で行われる。溶融混練時の温度は、一般に80℃以上130℃以下であり、ある態様においては、80℃以上120℃以下である。
得られた溶融物を冷却ロール、冷却コンベヤー等で冷却して固化し、粗粉砕及び微粉砕の工程を経て所望の粒径に粉砕する。粉砕は、物理的粉砕(粗粉砕、微粉砕)により行うことができ、例えば、ハンマーミル、ジェット衝撃ミル等の粉砕装置を用いて行うことができる。
次いで、所望により、分級を行う。例えば、巨大粒子及び微小粒子を除去し粒度分布を調整することが可能である。分級には、空気分級機、振動フルイ及び超音波フルイ等が使用される。
【0075】
[艶調整硬化塗膜の形成方法]
本開示の実施形態に係る艶調整硬化塗膜の形成方法は、
本開示の実施形態に係る艶調整粉体塗料組成物を被塗物に塗装する、粉体塗装工程、及び
当該塗装により得られた塗膜を加熱硬化させて、艶調整硬化塗膜を得る、硬化工程
を含む。
【0076】
(被塗物)
被塗物は特に限定されず、具体的には、鉄板、鋼板、アルミニウム板、セラミック板等及びそれらを表面処理したもの等が挙げられる。更に、これらを複雑な形状に加工した部材等が挙げられる。また、被塗物の具体的な態様として、鋼製家具、電子部品、OA機器、家電製品、建材、自動車部品等が挙げられる。
【0077】
(塗装方法)
艶調整粉体塗料組成物の塗装方法は特に限定されず、スプレー塗装法、静電粉体塗装法、流動浸漬法等の当業者によってよく知られた方法を用いることができるが、塗着効率の点から、静電粉体塗装法が好ましい。艶調整粉体塗料組成物を直接、鉄板等に塗装してもよい。艶調整粉体塗料組成物からなる1層の艶調整硬化塗膜であっても良好な保護機能を有するが、下塗り塗膜又は下塗り硬化塗膜の上に、艶調整粉体塗料組成物を上塗り塗料として塗布してもよい。下塗り塗膜又は下塗り硬化塗膜を形成する下塗り塗料としては、電着塗料やプライマー等の公知のものを用いることができる。
【0078】
以下、静電粉体塗装法の一例を示す。
例えば、被塗物の予備加熱を行ってもよい。被塗物の予備加熱は、電気炉、ガス炉のような加熱炉を用いるか、又はインダクションヒーターによる誘導加熱を行う。この場合、予備加熱はその被塗物の形状や厚みによる蓄熱量と予備加熱から塗装までのインターバルを考慮し、被塗物温度150℃以上250℃以下の温度を維持できる範囲で行う必要がある。一般的には、粉体塗料組成物の塗装温度より、10~30℃程度高めに設定する場合が多い。
【0079】
艶調整粉体塗料組成物を塗装する際の塗装膜厚は、要求される硬化塗膜外観、例えば平滑性、及び硬化塗膜物性等の条件に応じて、適宜調整することができ、また、過剰な艶調整粉体塗料組成物を再利用することができる。硬化塗膜のまだら感及び透けをより容易に防止し、また、塗膜表面又は内部の泡の発生をより容易に防止する観点から、少なくとも20μm以上であることが好ましく、150μm以下であることが好ましい。ある態様においては、40μm以上100μm以下であってよく、例えば60μm以上90μm以下であってよい。
【0080】
焼き付け条件、例えば、加熱温度及び加熱時間は、用いる硬化剤の種類及び量により適宜設定してよい。加熱温度は、塗膜表面又は内部の泡の発生をより容易に防止する観点から、例えば、140℃以上200℃以下であってよく、140℃以上190℃以下であってよい。別の態様において、150℃以上190℃以下であってよく、例えば、160℃以上190℃以下であってよく、更に別の態様において、160℃以上180℃以下であってよい。ある態様において、加熱温度は、150℃以上170℃以下であってよい。
【0081】
加熱時間は、加熱温度等も考慮して適宜設定することができる。例えば、上記加熱温度であれば、例えば、加熱時間は10分以上40分以下であってよい。
【0082】
フルマットから低光沢の範囲に亘って光沢を調整することをより容易とするため、ある実施形態において、SP値の差の絶対値が、下記条件:
0.1<|SPA1-SPA2|<1.5、
0.1<|SPA2-SPA3|<2.5、及び
0.2<|SPA1-SPA3|<3.0
を満たし、
ポリエステル樹脂(A1)、ポリエステル樹脂(A2)及びポリエステル樹脂(A3)の含有量の合計100質量部に対して、前記艶調整粉体塗料組成物中のポリエステル樹脂(A2)の含有量が、1.0質量部以上30.0質量部以下の範囲内である艶調整粉体塗料組成物を用い、
60度鏡面光沢度が0以上35未満の範囲内である艶調整硬化塗膜を形成してよい。これにより、60度鏡面光沢度が0以上35未満の範囲内である艶調整硬化塗膜を有する塗装物品が得られる。
【実施例
【0083】
以下、実施例を用いて本開示をより詳細に説明するが、本開示は実施例により何ら制限されるものではない。実施例中、「部」及び「%」は、ことわりのない限り質量基準による。
【0084】
(製造例1)
ポリエステル樹脂(A1-1)の製造
還流冷却器、攪拌機、温度計、コンデンサー及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、テレフタル酸19.8質量部、イソフタル酸20.6質量部、アジピン酸26.3質量部、トリメリット酸無水物1.8質量部、エチレングリコール14.0質量部、ネオペンチルグリコール8.9質量部及び1,3-プロパンジオール8.61質量部を混合し、窒素気流中で240℃にまで徐々に昇温し、生成する水を留去しながら、エステル化反応を行うことによって、ポリエステル樹脂(A1-1)(数平均分子量:4,200、SPA1-1:9.82、酸価:24.7mgKOH/g)を得た。
【0085】
(製造例2~14)
ポリエステル樹脂(A1-2)~(A3-5)、(a-4)~(a-5)の製造
ポリエステル樹脂(A1-1)と同様にして、ポリエステル樹脂(A1-2)~(A3-5)、(a-4)~(a-5)を製造した。各樹脂におけるモノマー組成及びSP値等の諸特数値を表1に示す。
【0086】
【表1】
【0087】
(実施例1)
[艶調整粉体塗料組成物1の調製]
ポリエステル樹脂(A1-1)49.5質量部、ポリエステル樹脂(A2-1)1.0質量部、ポリエステル樹脂(A3-1)49.5質量部、硬化剤(B1)としてプリミドXL-552 9.8質量部、顔料として酸化チタン(TI-PURE R-706)50質量部及びワキ防止剤としてベンゾイン-B 1.0質量部を、スーパーミキサー(KAWATA社製)を用いて約3分間混合した。次に、コニーダー(ブス社製)を用いて約100℃で溶融混練した。得られた混練物1を冷却後、粗粉砕し、更に、アトマイザー(ダルトン社製)を用いて微粉砕した。
次に、得られた粉砕物と流動添加剤としてスタフィロイドKA-1029J 2.0質量部を、150メッシュ篩を用いて分級して、粗大粒子を除去し、艶調整粉体塗料組成物1(平均粒子径:30μm)を得た。平均粒子径は、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(日機装社製、マイクロトラックMT3000II)を用いて測定した。
【0088】
[試験板の作製]
リン酸亜鉛処理を施したJIS G 3141(SPCC~SD)冷間圧延鋼板(75×150×0.8mm)に、上述のようにして得られた艶調整粉体塗料組成物1を、粉体塗料用静電塗装機(印加電圧-80kV)を用いて、乾燥膜厚80μmとなるように塗装し、160℃で15分間焼き付けて、塗膜1を有する試験板を作製した。
【0089】
(実施例2~19、比較例1~18)
各成分の種類及び量を、下記表2~5に記載したこと以外は実施例1と同様にして、艶調整粉体塗料組成物を調製した。用いた各成分の詳細を以下に記載する。
なお、比較例8及び9は、それぞれポリエステル樹脂(A1)の代わりにポリエステル樹脂(a4)を、ポリエステル樹脂(A3)の代わりにポリエステル樹脂(a5)を用いた例であり、表中のポリエステル樹脂(A)のSP値及び酸価は、それぞれ用いたポリエステル樹脂(a)の値に読み替えるものとする。また、比較例10~14は、成分として艶消し剤を用いた例である。
前記より得られた艶調整粉体塗料組成物を用いて、実施例1と同様にして各種塗膜を有する試験板を作製した。
【0090】
実施例、比較例(表2~表5)に記載される各成分の説明は、以下のとおりである。
[硬化剤(B1)]
・硬化剤(B1):プリミドXL-552(EMS-CHEMIE社製;β-ヒドロキシアルキルアミド)、水酸基価:663mgKOH/g
・硬化剤(B2):EPICRON AM-040-P(DIC社製;ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂、エポキシ当量:930g/eq
[その他]
・艶消し剤1:体質顔料、R-50A(丸尾カルシウム社製;炭酸カルシウム)
・艶消し剤2:芳香族多価カルボン酸のイミダゾリン塩類化合物、OSK-68(CHANT OIL社製;ピロメリット酸+2-フェニルイミダゾリン付加塩)
・艶消し剤3:ワックス、プロピルマット31(MICRO POWDER社製;ポリプロピレンワックス)
・顔料:TI-PURE R-706(デュポン社製;酸化チタン)
・ワキ防止剤:ベンゾイン-B(和光純薬工業社製;ベンゾイン)
・流動添加剤:スタフィロイドKA-1029J(アイカ工業社製;アクリル系樹脂微粒子)固形分濃度:100質量%
【0091】
上記実施例1~19および比較例1~18で得られた試験板を用いて、下記の評価を行った。得られた評価結果を表2~5に示す。
【0092】
(塗膜外観評価)平滑性
得られた硬化塗膜の外観(平滑性)を目視で観察し、以下の基準により評価した。
○:全体が均一で平滑である
△:一部にゆず肌が見られる
×:目立ったへこみが見られる
【0093】
(使用樹脂数)
ポリエステル樹脂(A1)、ポリエステル樹脂(A2)、ポリエステル樹脂(A3)のうち、いずれか1種のみを含む場合は使用樹脂数1、2種を含む場合は使用樹脂数2、全てを含む場合は使用樹脂数3とした。ポリエステル樹脂(A1)、ポリエステル樹脂(A2)、ポリエステル樹脂(A3)以外の樹脂については、使用樹脂数に算入しない。また、ポリエステル樹脂(A1)が複数の樹脂を含む場合であっても、それらがいずれもポリエステル樹脂(A1)に分類される限り、使用樹脂数1とし、ポリエステル樹脂(A2)、ポリエステル樹脂(A3)についても同様とする。
【0094】
(光沢度)
塗膜の60度鏡面光沢度を、鏡面光沢度計(micro-TRI-gloss;BYK-Gardner社製)を用い、JIS K 5600-4-7に準拠して測定した。また、以下の基準により評価した。
○:所望の光沢度(光沢度:0以上65未満)が得られる。
×:所望の光沢度が得られない。
【0095】
(耐衝撃性)
実施例及び比較例で得られた試験板について、JIS K 5600-5-3(耐おもり落下性試験)に準じて、耐おもり落下性を評価した。すなわち、デュポン式衝撃試験器(撃ち型1/2inch;上島製作所社製)を使用し、500gの重りを一定の高さから落下させ、割れの発生した高さを測定し、以下の基準により可とう性(耐重り落下性)を評価した。
○:重りを50cmの高さから落下させても割れが発生しない。
×:重りを50cmの高さから落下させた場合に割れが発生する。
【0096】
(耐候性)
実施例及び比較例で得られた試験板を、JIS B 7753に規定するサンシャインカーボンアーク灯式促進耐候性試験機であるサンシャインウェザーメーターS80(スガ試験機社製)を使用し、300時間の促進耐候性試験を行った。運転条件は、以下のとおりである。
放射照度:255W/m
ブラックパネル温度:63℃
水噴射時間:120分中18分
【0097】
促進耐候性試験後の塗膜の60°光沢値を、光沢計GN-268Plus(コニカミノルタ社製)により測定し、促進耐候性試験前の60°光沢値に対する変化率(光沢保持率)を算出し、以下の基準により評価した。
○:光沢保持率が60%以上
×:光沢保持率が60%未満
【0098】
【表2】
【0099】
【表3】
【0100】
【表4】
【0101】
【表5】
【0102】
このように、本開示の実施形態で規定する要件を満足する実施例1~19の艶調整粉体塗料組成物により、所望の光沢度及び良好な平滑性を両立することができる艶調整硬化塗膜を形成することができた。
実施例1~7、17、18に示されるように、ポリエステル樹脂(A1)~(A3)の混合割合を変化させた例であり、広範囲に亘って光沢度を調整することができた。
実施例8、9は、高酸価:低酸価の比率は固定しつつ、互いのSP差を小さくした樹脂を使用した例であり、得られる光沢度は大きくなり、更にSP差を小さくすると得られる光沢度は更に大きくなった。特定の理論に拘束されないが、樹脂同士のSP差を近づけることで、2つの樹脂がより相溶することにより、低光沢度発現に起因する樹脂のドメインが形成されにくくなることで光沢度が上がったためと考えられる。
実施例10~16は、ポリエステル樹脂(A1)~(A3)の酸価の範囲を変化させた例であり、全てにおいて所望の光沢度を満たし、平滑性に優れる塗膜が得られた。
実施例19は、高酸価:低酸価の比率は固定しつつ、互いのSP差を大きくした樹脂を使用した例であり、平滑性を維持したまま、光沢度を引き下げることが可能であった。
【0103】
一方、比較例1~4は、ポリエステル樹脂(A2)を含まない例であり、平滑性が不良であって、平滑性を保持したまま、フルマット~中光沢の範囲に光沢度を制御することが困難であることが確認された。
比較例5~7では、ポリエステル樹脂(A1)及びポリエステル樹脂(A3)のSP値よりも低いSP値のポリエステル樹脂(A2)を用いた。得られた硬化塗膜においては、光沢度が高くなり、所望の光沢度の硬化塗膜が得られなかった。
比較例8では、ポリエステル樹脂(A1)の代わりに、酸価の低い樹脂(a4)を用いた。得られた硬化塗膜においては、耐衝撃性が不良となった。
比較例9では、ポリエステル樹脂(A3)の代わりに、酸化の高い樹脂(a5)を用いた。得られた硬化塗膜においては、耐衝撃性が不良となった
比較例10~14では、ポリエステル樹脂(A1)及びポリエステル樹脂(A3)を用いず、艶消し剤により光沢を調整した。艶消し剤として体質顔料及びワックスを用いた比較例10及び14では、所望の光沢値を得るために艶消し剤を多量に配合する必要があり、得られた硬化塗膜においては、平滑性が不良であった。また、艶消し剤として芳香族多価カルボン酸のイミダゾリン塩類化合物を用いた比較例11~13では、得られた硬化塗膜においては、耐候性が不良となった。
比較例15、16では、ポリエステル樹脂(A2)を45.0質量部を超える量で用いた。得られた硬化塗膜においては、艶調整硬化塗膜の60度鏡面光沢度が65以上であり、所望の光沢度が得られなかった。
比較例17では、ポリエステル樹脂(A1)を82.5質量部を超える量で用い、ポリエステル樹脂(A3)を5.0質量部未満の量で用いた。得られた硬化塗膜においては、艶調整硬化塗膜の60度鏡面光沢度が65以上であり、所望の光沢度が得られなかった。
比較例18では、ポリエステル樹脂(A1)を5.0質量部未満の量で用い、ポリエステル樹脂(A3)を82.5質量部を超える量で用いた。得られた硬化塗膜においては、艶調整硬化塗膜の60度鏡面光沢度が65以上であり、所望の光沢度が得られなかった。
【要約】
【課題】フルマットから中光沢の光沢度、良好な平滑性、耐衝撃性及び耐候性を有する艶調整硬化塗膜を形成可能な艶調整粉体塗料組成物、艶調整硬化塗膜を有する塗装物品及び艶調整硬化塗膜の形成方法を提供する。
【解決手段】酸価5以上45未満のポリエステル樹脂(A1)、酸価45以上85未満のポリエステル樹脂(A2)、酸価85以上125以下のポリエステル樹脂(A3)及び硬化剤(B)を含み、(A1)~(A3)の合計100質量部に対し、(A1)が5.0~82.5質量部、(A2)が0.5~45.0質量部、(A3)が5.0~82.5質量部であり、(A1)のSP値(SPA1)、(A2)のSP値(SPA2)及び(A3)のSP値(SPA3)が、SPA1<SPA2<SPA3、又は、SPA3<SPA2<SPA1を満たし、形成された艶調整硬化塗膜の光沢度が0以上65未満である、艶調整粉体塗料組成物。
【選択図】なし