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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-09
(45)【発行日】2022-03-17
(54)【発明の名称】感染症対策システム
(51)【国際特許分類】
   G16H 50/30 20180101AFI20220310BHJP
【FI】
G16H50/30
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021196845
(22)【出願日】2021-12-03
(62)【分割の表示】P 2021112523の分割
【原出願日】2021-07-07
(65)【公開番号】P2022019958
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2021-12-08
(31)【優先権主張番号】P 2020118217
(32)【優先日】2020-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509297093
【氏名又は名称】株式会社シグマクシス・ホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】溝畑 彰洋
(72)【発明者】
【氏名】安田 純子
(72)【発明者】
【氏名】木村 迅
(72)【発明者】
【氏名】生島 尚
【審査官】鈴木 和樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-194808(JP,A)
【文献】特開2019-160015(JP,A)
【文献】特開2015-161987(JP,A)
【文献】特開2020-57939(JP,A)
【文献】特開2020-8969(JP,A)
【文献】特開2017-162214(JP,A)
【文献】特開2012-198717(JP,A)
【文献】特開2011-172007(JP,A)
【文献】特開2010-277452(JP,A)
【文献】特表2020-531945(JP,A)
【文献】特許第6875594(JP,B1)
【文献】特許第6865321(JP,B1)
【文献】特許第6830285(JP,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0047457(KR,A)
【文献】玄 忠雄、ほか1名,開発進む濃厚接触の追跡アプリ 社会活動回復への救世主になるか,日経コンピュータ,日本,日経BP,2020年05月14日,第1016号,p.8,9
【文献】ifLinkを活用した近接人数可視化アプリケーション,東芝レビュー,株式会社東芝,2021年03月20日,第76巻,第2号,p.34
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00 - 80/00
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
子端末である複数のタグ端末と、親端末である複数の携帯端末と、各タグ端末及び各携帯端末を管理する管理サーバとを備えた感染症対策システムであって、
前記各タグ端末は、
当該タグ端末を識別するための子端末識別情報を含むビーコン信号を発信する発信部を備え、
前記各携帯端末は、
前記タグ端末から前記ビーコン信号を受信する受信部と、
当該携帯端末を識別するための親端末識別情報と、前記ビーコン信号に含まれる子端末識別情報と、前記ビーコン信号の受信日時をあらわす受信日時情報とを含む接触データを、前記管理サーバに送信する送信部とを備え、
前記管理サーバは、
前記各携帯端末から送信される接触データを受信する受信部と、
前記各携帯端末から送信される接触データに基づき、前記各携帯端末を利用する各ユーザと前記各タグ端末を利用する各ユーザとの接触状況を検知する検知部と
を具備する、感染症対策システム。
【請求項2】
前記検知部は、前記各携帯端末から送信される接触データを比較することで、同一時間帯において、複数の携帯端末が同一のタグ端末と接触していることが判明した場合には、前記複数の携帯端末の接触データを結合して結合リストを生成する、請求項に記載の感染症対策システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感染症対策システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インフルエンザウイルスやコロナウイルスなどをはじめとする様々な感染症の拡大阻止を図るために予防策が種々検討されている。感染拡大を阻止するためには、感染者を早期に発見することはもちろん、感染者と接触した接触者を早期に発見し、感染のおそれがあることをいち早く知らせることが重要になる。
例えば、下記特許文献1には、感染者と接触した接触者に対し、警告メールを送信することで感染のおそれがあることを知らせる感染症予防システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-217649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されたシステムでは、サーバ側で管理する接触者の情報(例えば、携帯電話機の電話番号、接触日時やメールアドレスなど)は、感染者の自己申告に委ねられている。このため、感染者と接触したにもかかわらず、申告漏れがあった接触者には、警告メールが通知されることはない。この結果、接触者への感染だけでなく、接触者による第三者への感染を招くおそれがある、という問題があった。
【0005】
本発明は、以上説明した事情を鑑みてなされたものであり、感染症の拡大を抑制することが可能な技術を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る感染症対策システムは、他人との接触状況をあらわす接触データを受信する第1受信部と、ユーザの健康状態をあらわすヘルスケアデータを受信する第2受信部と、ユーザの健康状態のリスクレベルを判定するための健康リスク基準情報を記憶する第1記憶部と、接触データに基づき、過去一定期間内にユーザと接触した接触ユーザを特定する特定部と、接触ユーザのヘルスケアデータと、健康リスク基準情報とに基づき、ユーザの健康リスクを判断する判断部と、判断の結果を、前記ユーザに通知する通知部とを具備することを要旨とする。
【0007】
本開示の別の態様に係る感染症対策システムは、子端末である複数のタグ端末と、親端末である複数の携帯端末と、各タグ端末及び各携帯端末を管理する管理サーバとを備えた感染症対策システムであって、各タグ端末は、タグ端末を識別するための子端末識別情報を含むビーコン信号を発信する発信部を備え、各携帯端末は、タグ端末から前記ビーコン信号を受信する受信部と、携帯端末を識別するための親端末識別情報と、ビーコン信号に含まれる子端末識別情報と、ビーコン信号の受信日時をあらわす受信日時情報とを含む接触データを、管理サーバに送信する送信部とを備え、管理サーバは、各携帯端末から送信される接触データを受信する受信部と、各携帯端末から送信される接触データに基づき、各携帯端末を利用する各ユーザと各タグ端末を利用する各ユーザとの接触状況を検知する検知部とを具備することを要旨とする。
【0008】
本開示の別の態様に係る感染症対策システムは、他人との接触状況をあらわす接触データを受信する第1受信部と、企業に属する各ユーザの行動履歴をあらわす行動データを受信する第2受信部と、各ユーザの健康状態をあらわすヘルスケアデータを受信する第3受信部と、感染症のリスクレベルを判定するための基準情報を記憶する記憶部と、接触データと、行動データと、ヘルスケアデータと、基準情報とに基づき、各ユーザの感染症のリスクレベルを判定する判定部と、判定の結果を出力する出力部とを具備し、出力部は、各ユーザの携帯端末に、各ユーザのリスクレベルに応じた行動指針をあらわす指針情報を表示する一方、企業のコンピュータに、リスクレベルごとの各ユーザの割合を表示することを要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の所定の態様によれば、感染症の拡大を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る感染症対策システムの構成の一例を示す図である。
図2】携帯端末、管理サーバのハードウェア構成の一例を示す図である。
図3】携帯端末の機能構成を示すブロック図である。
図4】ヘルスケアデータの入力画面を例示した図である。
図5】管理サーバの機能構成を示すブロック図である。
図6】基準テーブルの登録内容を例示した図である。
図7】企業のコンピュータに表示される判定結果の表示画面を例示した図である。
図8】各携帯端末に表示される判定結果の表示画面を例示した図である。
図9】接触トレース方法の第1態様を示す説明図である。
図10】接触トレース方法の第2態様を示す説明図である。
図11】応用例1に係る管理サーバの機能構成を示すブロック図である。
図12】健康リスク基準テーブルの登録内容を例示した図である。
図13】感染者に接触したユーザの健康リスクの変化を例示した図である。
図14】管理サーバによる体調リスク判断処理を示すフローチャートである。
図15】携帯端末がビーコン端末を検知する場合の説明図である。
図16】携帯端末によるビーコン端末の接触トレース方法を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。
【0012】
A.本実施形態
<システム構成>
図1は、本実施形態に係る感染症対策システム100の構成の一例を示す図である。
感染症対策システム100は、各ユーザが利用する携帯端末10と、各ユーザを管理する管理サーバ20とを含んで構成される。各携帯端末10と管理サーバ20とは、ネットワークNを介して相互通信可能となっている。
【0013】
ネットワークNのうちの1つまたは複数の部分は、有線ネットワークや無線ネットワークであってもよい。ネットワークNは、限定でなく例として、アドホック・ネットワーク(Ad Hoc Network)、イントラネット、エクストラネット、仮想プライベート・ネットワーク(Virtual Private Network:VPN)、ローカル・エリア・ネットワーク(Local Area Network:LAN)、ワイヤレスLAN(Wireless LAN:WLAN)、広域ネットワーク(Wide Area Network:WAN)、ワイヤレスWAN(Wireless WAN:WWAN)、大都市圏ネットワーク(Metropolitan Area Network:MAN)、インターネットの一部、公衆交換電話網(Public Switched Telephone Network:PSTN)の一部、携帯電話網、ISDNs(Integrated Service Digital Networks)、無線LANs、LTE(Long Term Evolution)、CDMA(Code Division Multiple Access)、ブルートゥース(Bluetooth(登録商標))、IrDA(登録商標)、衛星通信など、または、これらの2つ以上の組合せを含むことができる。
【0014】
<感染症対策システム100の概要>
本実施形態に係る感染症対策システム100は、ユーザの行動や、他人との接触状況、ユーザの健康状態をもとに感染症のリスクレベルを判定し、ユーザ本人や本人が所属する企業などに、リスクレベルの判定結果を速やかに通知することで感染症の拡大を抑制することを可能とする(詳細は後述)。
【0015】
携帯端末10は、各ユーザが所持する端末であり、例えばスマートフォン、携帯電話、パーソナルコンピュータ、ハンドヘルドコンピュータデバイス、ウェアラブル端末などによって構成されている。携帯端末10には、自端末を所持するユーザが過去に接触した人をトレース(追跡、確認)するためのアプリケーション(以下、「接触トレースアプリ」ともいう。)が格納されている。携帯端末10は、接触トレースアプリを起動することで、後述する接触トレース方法を実現する。
【0016】
管理サーバ20は、例えばサーバコンピュータにより実現され、各ユーザの携帯端末10から取得される様々な情報に基づき感染症のリスクレベルを判定し、判定結果を出力する。各ユーザの携帯端末10から取得される情報として、他人との接触状況をあらわす接触データや、ユーザの行動履歴をあらわす行動データ、ユーザの健康状態をあらわすヘルスケアデータなどがある(詳細は後述)。
【0017】
<ハードウェア構成>
図2は、携帯端末10、管理サーバ20のハードウェア構成の一例を示す図である。携帯端末10及び管理サーバ20は、それぞれ、CPU(Central Processing Unit)1、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等の記憶装置2、有線通信や無線通信などを行う通信IF(Interface)3、入力操作を受け付ける入力デバイス4、及び情報の出力を行う出力デバイス5を有する。入力デバイス4は、例えばキーボード、マウス、タッチパネル、マイク等である。出力デバイス5は、例えば、ディスプレイ(画面)及び/又はスピーカ等である。
【0018】
以下、図3を参照しながら、携帯端末10の機能構成について説明する。
【0019】
<携帯端末10の機能ブロック構成>
携帯端末10は、記憶部110と、制御部120と、操作部130と、表示部140と、近距離無線通信部150と、接触データ取得部160と、行動データ取得部170と、ヘルスケアデータ取得部180と、通信部190とを含む。
【0020】
制御部120と、操作部130と、表示部140と、近距離無線通信部150と、接触データ取得部160と、行動データ取得部170と、ヘルスケアデータ取得部180と、通信部190は、携帯端末10のCPU1が記憶装置2に記憶された各種プログラムを実行することによって実現される。なお、プログラムは、USBメモリやCD-ROM等の記憶媒体に格納することができる。
【0021】
記憶部110は、記憶装置2によって実現され、上述した接触トレースアプリAP1のほか、様々なアプリケーションや各種データを記憶する。
【0022】
制御部120は、携帯端末10を中枢的に制御する。操作部130は、操作内容に応じた各種コマンドを入力し、表示部140は、ディスプレイに各種情報を表示する。近距離無線通信部150は、例えばブルートゥース規格に準拠した近距離無線通信機能を利用して、近接した他の携帯端末10との間で近距離無線通信を行う。本実施形態では、ユーザが他のユーザ(以下、「接触ユーザ」ともいう。)に接触した場合に、当該ユーザの携帯端末10と接触ユーザの携帯端末10との間で近距離無線通信を行い、カプセル情報の交換を行う。「カプセル情報」とは、各ユーザに割り当てられるユニークな識別情報(トークン)である。カプセル情報は、記憶部110に格納される。詳細は後述するが、交換されるカプセル情報には、そのユーザ自身のカプセル情報だけでなく、そのユーザが過去に接触して得た他のユーザのカプセル情報も含まれる。なお、以下では説明の便宜上、そのユーザ自身のカプセル情報を「自カプセル情報」と呼び、そのユーザが過去に接触して得た他のユーザのカプセル情報を「履歴カプセル情報」と呼ぶ。
【0023】
接触データ取得部160は、記憶部110に格納されているカプセル情報を接触データとして取得する。
行動データ取得部170は、携帯端末10に搭載されているGPS(Global Positioning System)機能や加速度センサ、画像センサ(いずれも図示略)などを利用して、当該携帯端末10を利用するユーザの位置や行動内容などを含む行動履歴をあらわす行動データを取得する。
ヘルスケアデータ取得部180は、ユーザによって入力される体温データ、問診データといった健康状態をあらわす情報を、ヘルスケアデータとして取得する。
【0024】
図4は、ディスプレイに表示されるヘルスケアデータの入力画面G1を例示した図である。
ユーザは、入力画面G1に従って、自身の体温データ(例えば、36.5℃など)D1を入力するとともに、自身の体調をあらわす問診データ(例えば、体がだるいか、息切れがあるか、咳がでるかなど)D2をタップ入力する。なお、携帯端末10に検温機能が搭載されている場合には、検温機能を使って自動で体温を測定し入力してもよい。
【0025】
通信部190は、ネットワークNを介して管理サーバ20を含む外部機器と様々なデータを授受する。一例として、通信部190は、接触データや行動データ、ヘルスケアデータを管理サーバ20に送信する。これらすべてのデータは、ユーザの許諾が得られることを前提に管理サーバ20へ送信される。もっとも、全てのデータが、ユーザの許諾なく管理サーバ20へ送信される構成であってもよく、また、一部のデータ(例えば、接触データ)についてのみユーザの許諾を必要とし、他のデータについてはユーザの許諾を必要としない構成であってもよい。
【0026】
次に、図5を参照しながら、管理サーバ20の機能構成について説明する。
【0027】
<管理サーバ20の機能ブロック構成>
管理サーバ20は、記憶部210と、制御部220と、通信部230と、判定部240と、出力部250とを含む。
【0028】
制御部220と、通信部230と、判定部240と、出力部250は、管理サーバ20のCPU1が記憶装置2に記憶された各種プログラムを実行することによって実現される。なお、プログラムは、USBメモリやCD-ROM等の記憶媒体に格納することができる。
【0029】
記憶部210は、記憶装置2によって実現され、様々なアプリケーションや各種データを記憶する。記憶部210には、個別データベースDB1が格納されている。個別データベースDB1には、ユーザごとに、当該ユーザを識別するカプセル情報と、当該ユーザの携帯端末10から受信した接触データ、行動データ、ヘルスケアデータなどが対応づけて登録されている。また、記憶部210には、感染症のリスクレベルを判定するための基準テーブルTA1(基準情報)が記憶されている。
【0030】
制御部220は、管理サーバ20を中枢的に制御する。通信部(第1~第3受信部)230は、ネットワークNを介して携帯端末10を含む外部機器と様々なデータを授受する。一例として、通信部230は、各携帯端末10から接触データや行動データ、ヘルスケアデータを受信する。
【0031】
判定部240は、通信部によって受信された接触データや行動データ、ヘルスケアデータとともに、記憶部210に格納されている基準テーブルTA1を利用して各ユーザの感染症のリスクレベルを判定する。
【0032】
図6は、基準テーブルTA1の登録内容を例示した図である。
図6に示すように、基準テーブルTA1には、判定基準と、4段階の感染症のリスクレベルとが対応づけて登録されている。図6を例に説明すると、判定部240は、「発熱がなく、体調に異常が認められない場合」には、最もリスクレベルが低い「リスクレベル0(健常者)」と判定する。一方、判定部240は、「発熱があるものの、体調の異常は軽度であり、かつ、過去〇×日の間に感染者集団(クラスター)が発生した場所にいなかった場合」には、「リスクレベル1(リスク・ロー・ユーザ)」と判定する。また、判定部240は、「37.5℃以上の発熱が継続するとともに、体調に重度の異常が認められ、かつ、過去×〇日の間に感染者と接触している場合」には、「リスクレベル2(リスク・ハイ・ユーザ)」と判定する。さらに、判定部240は、「PCR検査によって陽性が認められた場合」には、最もリスクレベルが高い「リスクレベル3(感染者)」と判定する。
【0033】
ここで、発熱の有無や体調の異常の有無などは、例えばヘルスケアデータに基づいて判断する。また、ユーザがクラスターの発生場所にいたか否かなどは、例えばクラスター・マップ(図示略)や行動データに基づいて判断する。また、感染者との接触の有無などは、例えば接触データに基づいて判断する。なお、管理サーバ20は、外部サーバに定期的(または不定期)にアクセスすることで、最新のクラスター・マップを取得することができる。
【0034】
出力部250は、判定部240による判定結果を適宜加工し、各ユーザが所属する企業などのコンピュータや各ユーザの携帯端末10に出力する。
【0035】
図7は、企業のコンピュータに表示される判定結果の表示画面G2を例示した図であり、図8は、各ユーザの携帯端末10に表示される判定結果の表示画面G3を例示した図である。
【0036】
図7に示すように、企業のコンピュータの表示画面G2には、どのリスクレベルにどれくらいの人数のユーザがいるか(すなわち、リスクレベルごとのユーザの割合)をあらわすグラフgf1や、所定期間中のアラートの発生数をあらわすグラフgf2などが表示される。
【0037】
出力部250は、企業の管理者が視認しやすいように、リスクレベルごとに色分けしてグラフgf1を表示する。一例として、出力部250は、「リスクレベル0(健常者)」を緑色、「リスクレベル1(リスク・ロー・ユーザ)」を黄色、「リスクレベル2(リスク・ハイ・ユーザ)」を橙色、「リスクレベル3(感染者)」を赤色で表示する。
【0038】
なお、グラフgf2に示すアラートの通知条件は、管理サーバ20が任意に設定するこができる。例えば体温が37.5℃以上、または体調に重度の異常が認められたユーザの携帯端末10に対し、アラートを通知することができる。
【0039】
出力部250は、図7に示す表示画面G2に示す各グラフgf1、gf2のほか、各リスクレベルの変動履歴に基づいてリスクレベルの変動を予想し、予想した結果をあらわすグラフなどを企業のコンピュータに表示する。
【0040】
一方、図8に示すように、各ユーザの携帯端末10の表示画面G3には、当該ユーザのリスクレベルに応じた行動指針をあらわす指針情報Im1が表示される。例えば、「リスクレベル0(健常者)」のユーザであれば、「出勤OKです」といったメッセージが表示される。また、「リスクレベル1(リスク・ロー・ユーザ)」であれば、「リモートワークOKです」といったメッセージ、「リスクレベル2(リスク・ハイ・ユーザ)」であれば、「指定の医療機関で受診してください。」といったメッセージ、「リスクレベル3(感染者)」であれば、「治療を継続してください。」といったメッセージなどが表示される。
【0041】
各ユーザは、携帯端末10に表示される指針情報Im1を確認することで、自身が出勤してもよいか、またはリモートワークすべきか等を速やかに把握することができる。その他にも、各ユーザは、携帯端末10を適宜操作することで、所定期間単位(例えば週、月、単位など)での自身の体温の変化を確認したり、所定期間単位(例えば、週、月、単位など)で自身が何人と接触していたのか等を確認したりすることができる。なお、出力部250は、ユーザが自身のリスクレベルを速やかに把握できるように、企業のコンピュータへの表示と同様、リスクレベルを色分けして表示してもよい。
【0042】
つぎに、本実施形態に係る接触トレースアプリAP1を利用した接触トレース方法について詳細に説明する。
【0043】
<接触トレース方法の説明>
(1)第1態様
図9は、各携帯端末10の制御部120が接触トレースアプリAP1を起動することで実行される接触トレース方法の第1態様を示す説明図である。
以下の説明では、4人のユーザA~Dの間で接触が行われ、最終的にユーザAが感染症に感染したことが判明した場合を想定する。また、ユーザA~Dのそれぞれの携帯端末10において、自カプセル情報1~4が生成・格納されているものとする。
【0044】
本実施形態に係る接触トレース方法は、直接接触のみならず、間接接触や非接触の判定などもサポートすることが可能となっている。
【0045】
ユーザAとユーザBが接触(近接)すると、ユーザA及びユーザBの携帯端末10は、カプセル情報の交換を行う(A1参照)。カプセル情報を交換する際、各携帯端末10は、近距離無線通信機能を利用する。カプセル情報の交換によって得た他ユーザのカプセル情報は、それぞれ履歴カプセル情報として記憶部110に格納される。ユーザAとユーザBのカプセル情報の交換によって、ユーザAの携帯端末10の記憶部110には、自カプセル情報1に加えて履歴カプセル情報2が格納され、ユーザBの携帯端末10の記憶部110には、自カプセル情報2に加えて履歴カプセル情報1が格納される。
【0046】
ユーザCとユーザDが接触した場合も同様、ユーザC及びユーザDの携帯端末10は、カプセル情報の交換を行う(A2参照)。ユーザCとユーザDのカプセル情報の交換により、ユーザCの携帯端末10の記憶部110には、自カプセル情報3に加えて履歴カプセル情報4が格納され、ユーザDの携帯端末10の記憶部110には、自カプセル情報4に加えて履歴カプセル情報3が格納される。
【0047】
その後、ユーザBとユーザCが接触すると、ユーザB及びユーザCの携帯端末10は、カプセル情報の交換を行う(A3参照)。ユーザBとユーザCが接触した時点において、ユーザB及びユーザCは、自カプセル情報だけでなく履歴カプセル情報も保有している。よって、ユーザBとユーザCが接触した場合には、自カプセル情報とともに履歴カプセル情報の交換が行われることになる。この結果、ユーザBの携帯端末10の記憶部110には、自カプセル情報2及び履歴カプセル情報1に加え、ユーザCの携帯端末10から受け取った履歴カプセル情報3及び4が格納される。一方、ユーザCの携帯端末10の記憶部110には、自カプセル情報3及び履歴カプセル情報4に加え、ユーザBの携帯端末10から受け取った履歴カプセル情報2及び1が格納される。このように、本実施形態では、直接接触したユーザ(すなわち、直接接触者)のカプセル情報だけを交換するのではなく、そのユーザが過去に接触して得た他のユーザ(すなわち、間接接触者)のカプセル情報も交換する。なお、自カプセル情報と履歴カプセル情報を判別できるように、カプセル情報の種別をあらわすフラグを付加するようにしてもよい。
【0048】
その後、例えばPCR検査などを受けることにより、ユーザAが感染症に感染したことが判明すると、ユーザAは、自身の携帯端末10を操作して感染症の感染を管理サーバ20に報告(以下、「感染報告」ともいう。)する。感染報告には、ユーザAを特定するカプセル情報が含まれる。本実施形態では、感染した本人の許諾が得られた場合に感染報告を行う場合を想定するが、本人の許諾なしに感染報告を行ってもよい。
【0049】
管理サーバ20は、携帯端末10から感染報告を受け取ると、感染報告に含まれるカプセル情報(以下、「感染カプセル情報」ともいう。)と、個別データベースDB1に登録されている各ユーザのカプセル情報を比較することで、感染したユーザを特定する。ここでは、感染報告に含まれる感染カプセル情報が、ユーザAのカプセル情報であることから、管理サーバ20は、ユーザAが感染したユーザであると判断する。
【0050】
管理サーバ20は、他のユーザの携帯端末10に対し、ユーザAの感染カプセル情報を含めてユーザAとの接触判定を指示する。
他のユーザの携帯端末10は、管理サーバ20からユーザAの感染カプセル情報を受け取ると、受け取った感染カプセル情報と、記憶部110に格納されているカプセル情報とを比較することで、他のユーザの接触状況を判定する。
【0051】
(ユーザBの場合)
ユーザBの携帯端末10には、ユーザAを特定する履歴カプセル情報1が格納されている。ここで、ユーザAは、ユーザBが直接カプセル情報を交換したユーザであることから、ユーザBの携帯端末10は、ユーザBは直接接触者であると判断し、判断結果をディスプレイ(表示装置)に出力する。一例として、ユーザBは「直接接触者」である旨のメッセージとともに、「出社停止」を促すメッセージをディスプレイに表示する(A4参照)。
【0052】
(ユーザCの場合)
ユーザCの携帯端末10にも、ユーザAを特定する履歴カプセル情報1が格納されている。しかしながら、ユーザAは、ユーザCが直接カプセル情報を交換したユーザではなく、ユーザBとのカプセル情報の交換を介して、間接的に接触してカプセル情報を得たユーザである。よって、ユーザCの携帯端末10は、ユーザCは間接接触者であると判断し、判断結果をディスプレイに出力する。一例として、ユーザCは「間接接触者」である旨のメッセージとともに、「経過観察」を促すメッセージをディスプレイに表示する(A5参照)。
【0053】
(ユーザDの場合)
ユーザDの携帯端末10には、ユーザAを特定する履歴カプセル情報1は格納されていない。よって、ユーザDの携帯端末10は、ユーザDは非接触者であると判断し、判断結果をディスプレイに表示する。一例として、ユーザDは「非接触者」である旨のメッセージとともに、「通常勤務」を促すメッセージをディスプレイに表示する(A6参照)。
【0054】
かかる第1態様によれば、直接接触したユーザのカプセル情報だけを交換するのではなく、そのユーザが過去に接触して得た他のユーザのカプセル情報も交換する。これにより、いずれかのユーザに感染が認められた場合に、直接接触者だけでなく、間接接触者や非接触者を判断することができる。
【0055】
(1)第2態様
図10は、各携帯端末10の制御部120が接触トレースアプリAP1を起動することで実行される接触トレース方法の第2態様を示す説明図である。
なお、図10では、5人のユーザA~Eの間で接触が行われ、最終的にユーザA及びユーザEが感染症に感染したことが判明した場合を想定する。また、ユーザA~Eのそれぞれの携帯端末10において、自カプセル情報1~5が生成・格納されているものとする。
【0056】
ユーザAとユーザBが接触すると、ユーザA及びユーザBの携帯端末10は、カプセル情報の交換を行う(B1参照)。カプセル情報の交換によって得た他ユーザのカプセル情報は、それぞれ履歴カプセル情報として記憶部110に格納される。ユーザAとユーザBのカプセル情報の交換によって、ユーザAの携帯端末10の記憶部110には、自カプセル情報1に加えて履歴カプセル情報2が格納され、ユーザBの携帯端末10の記憶部110には、自カプセル情報2に加えて履歴カプセル情報1が格納される。
【0057】
その後、ユーザBとユーザCが接触すると、ユーザB及びユーザCの携帯端末10は、カプセル情報の交換を行う(B2参照)。ユーザBとユーザCが接触した時点において、ユーザBは、自カプセル情報だけでなく履歴カプセル情報も保有している。一方、ユーザCは、自カプセル情報のみを保有している。よって、ユーザBとユーザCが接触した場合には、ユーザBの携帯端末10の記憶部110には、自カプセル情報2及び履歴カプセル情報1に加え、ユーザCの携帯端末10から受け取った履歴カプセル情報3が格納される。一方、ユーザCの携帯端末10の記憶部110には、自カプセル情報3に加え、ユーザBの携帯端末10から受け取った履歴カプセル情報2及び1が格納される。
【0058】
その後、ユーザAとユーザDが接触すると、ユーザA及びユーザDの携帯端末10は、カプセル情報の交換を行う(B3参照)。ユーザAとユーザDが接触した時点において、ユーザAは、自カプセル情報だけでなく履歴カプセル情報も保有している。一方、ユーザDは、自カプセル情報のみを保有している。よって、ユーザAとユーザDが接触した場合には、ユーザAの携帯端末10の記憶部110には、自カプセル情報1及び履歴カプセル情報2に加え、ユーザDの携帯端末10から受け取った履歴カプセル情報4が格納される。一方、ユーザDの携帯端末10の記憶部110には、自カプセル情報4に加え、ユーザAの携帯端末10から受け取った履歴カプセル情報1及び2が格納される。
【0059】
その後、ユーザDとユーザEが接触すると、ユーザD及びユーザEの携帯端末10は、カプセル情報の交換を行う(B4参照)。ユーザDとユーザEが接触した時点において、ユーザDは、自カプセル情報だけでなく履歴カプセル情報も保有している。一方、ユーザEは、自カプセル情報のみを保有している。よって、ユーザDとユーザEが接触した場合には、ユーザDの携帯端末10の記憶部110には、自カプセル情報4及び履歴カプセル情報1及び2に加え、ユーザEの携帯端末10から受け取った履歴カプセル情報5が格納される。一方、ユーザEの携帯端末10の記憶部110には、自カプセル情報5に加え、ユーザDの携帯端末10から受け取った履歴カプセル情報4、1及び2が格納される。
【0060】
その後、例えばPCR検査などを受けることにより、ユーザAおよびユーザEが感染症に感染したことが判明すると、ユーザA及びユーザEは、それぞれ自身の携帯端末10を操作して管理サーバ20に感染報告する。ユーザAからの感染報告には、ユーザAを特定するカプセル情報が含まれる一方、ユーザEからの感染報告には、ユーザEを特定するカプセル情報が含まれる。
【0061】
管理サーバ20は、携帯端末10から感染報告を受け取ると、感染報告に含まれる感染カプセル情報と、個別データベースDB1に登録されている各ユーザのカプセル情報を比較することで、感染したユーザを特定する。ここでは、感染報告に含まれる感染カプセル情報が、ユーザAのカプセル情報及びユーザEのカプセル情報であることから、管理サーバ20は、ユーザA及びユーザEが感染したユーザであると判断する。
【0062】
管理サーバ20は、他のユーザの携帯端末10に対し、ユーザA及びユーザEの感染カプセル情報を含めてユーザA及びユーザEとの接触判定を指示する。
他のユーザの携帯端末10は、管理サーバ20からユーザA及びユーザEの感染カプセル情報を受け取ると、受け取った感染カプセル情報と、記憶部110に格納されているカプセル情報とを比較することで、他のユーザの接触状況を判定する。
【0063】
(ユーザBの場合)
ユーザBの携帯端末10には、ユーザAを特定する履歴カプセル情報1が格納されている。ここで、ユーザAは、ユーザBが直接カプセル情報を交換したユーザであることから、ユーザBの携帯端末10は、ユーザBは直接接触者であると判断し、判断結果をディスプレイに出力する。
【0064】
(ユーザCの場合)
ユーザCの携帯端末10にも、ユーザAを特定する履歴カプセル情報1が格納されている。しかしながら、ユーザAは、ユーザCが直接カプセル情報を交換したユーザではなく、ユーザBとのカプセル情報の交換を介して、間接的に接触してカプセル情報を得たユーザである。よって、ユーザCの携帯端末10は、ユーザCは間接接触者であると判断し、判断結果をディスプレイに出力する。
【0065】
(ユーザDの場合)
ユーザDの携帯端末10には、ユーザAを特定する履歴カプセル情報1とともに、ユーザEを特定する履歴カプセル情報5が格納されている。そして、ユーザA及びユーザEは、いずれもユーザDが直接カプセル情報を交換したユーザであることから、ユーザDの携帯端末10は、ユーザDは複数の感染者と接触したクラスター接触者(複数回、感染者との接触が確認された接触者)であると判断し、判断結果をディスプレイに出力する。
【0066】
かかる第2態様によれば、直接接触者だけでなく、間接接触者やクラスター接触者を判断することができる。なお、各携帯端末10は、接触状況の判定結果を管理サーバ20に送信してもよい。管理サーバ20は、各携帯端末10から送信される各ユーザの接触状況の判定結果を統合・分析することで、前掲図7に示すリスクレベルごとのユーザの割合をあらわすグラフgf1などを生成・出力することが可能となる。
【0067】
上記実施形態では、特に言及しなかったが、交換日時(年月日や時刻など)を特定するための日時情報を、交換対象となるカプセル情報に含めるようにしてもよい。カプセル情報に含まれる日時情報を利用することで、例えば、いつ感染者に接触したのか等を正確に把握することができる。また、どの範囲の接触者までカプセル情報の交換対象とするかは任意に設定・変更可能である。例えば、二次接触者(間接接触者)までのカプセル情報を交換対象としてもよい。また、二次接触者が多数いる場合には、直近N人(N≧1)までの二次接触者をカプセル情報の交換対象としてもよい。また、交換したカプセル情報は、例えば14日間など、所定期間だけ記憶部110に格納し、その後に消去するようにしてもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、感染報告を行う際、自端末10を特定するカプセル情報のみを管理サーバ20に送信したが、これに限る趣旨ではない。例えば、自端末10の記憶部110に格納されている全てのカプセル情報を管理サーバ20に送信してもよい。かかる構成によれば、感染者だけでなく直接接触者なども、管理サーバ20において判断することが可能となる。
また、カプセル情報を管理サーバ20に送信するタイミングは、感染報告を行う場合に限る趣旨ではない。感染報告とは異なるタイミング、例えばユーザ自身の体調が悪くなった場合やユーザが希望する場合など、ユーザが任意のタイミングでカプセル情報を管理サーバ20に送信してもよい。
【0069】
なお、管理サーバ20において管理される各ユーザのカプセル情報は、固定的なものであってもよいが、定期的(例えば1ヶ月ごと)に更新してもよい。
【0070】
また、各企業において確認された感染者のカプセル情報を企業間で共有することで、感染症の汎発流行(パンデミック)を抑制するようにしてもよい。なお、本実施形態では、ユーザの一例として企業に所属する従業員を例に説明したが、様々な団体に所属する構成員を含め、あらゆる人に本システムを適用可能である。
また、所定以上のリスクレベル(例えば、リスクレベル2以上)が認められたユーザ(以下、リスクユーザ)については、当該ユーザが所属する企業に知らせるだけではなく、他の企業に周知するようにしてもよい。一例として、管理サーバ20は、リスクユーザの接触データ、行動データ、ヘルスケアデータの少なくともいずれかのデータを、他の企業のコンピュータに送信する。これにより、リスクユーザの存在を他の企業に周知し、感染症の拡大を抑制するようにしてもよい。
【0071】
B.応用例
<応用例1>
上述した本実施形態では、ユーザの行動や、他人との接触状況、ユーザの健康状態をもとに感染症のリスクレベルを判定する場合について説明した。
これに対し、応用例1では、ユーザが過去に接触した他のユーザ(すなわち、接触ユーザ)の健康状態に基づき、ユーザ本人の健康リスクを判断する場合について説明する。
【0072】
図11は、応用例1に係る管理サーバ20の機能構成を示すブロック図である。
図11に示す管理サーバ20は、健康リスク基準テーブルTA2、特定部260、判断部270、通知部280を具備する点を除けば、図5に示す管理サーバ20と同様であるため、対応する部分には同一符号を付し、詳細な説明は割愛する。
【0073】
特定部260は、ユーザの携帯端末10から送信されるユーザの接触データに基づき、過去一定期間内(例えば、30日など)に当該ユーザと接触した接触ユーザを特定する。
判断部270は、特定部260によって特定された接触ユーザのヘルスケアデータと、記憶部210に格納されている健康リスク基準テーブル(健康リスク基準情報)TA2とに基づき、ユーザの健康リスクを判断する。
【0074】
図12は、健康リスク基準テーブルTA2の登録内容を例示した図である。
図12に示すように、健康リスク基準テーブルTA2には、判断基準と、m段階(ここでは、m=4)の健康リスクレベルとが対応づけて登録されている。具体的に説明すると、判断部270は、例えば「過去〇×日以内に、3人以上の接触ユーザの健康状態(以下、体調)の悪化が認められ、かつ、体調の悪化が所定日数以上継続している場合」には、この後にユーザの体調が悪化する可能性が高いと考えられることから、「健康リスクレベル3(予想)」と判断する。また、判断部270は、「過去△□以内に、3人未満の接触ユーザの体調の悪化が認められ、かつ、体調の悪化が継続している場合」には、この後にユーザの体調が悪化することが多少懸念されることから、「健康リスクレベル2(予想)」と判断する。
【0075】
一方、判断部270は、「過去△□以内に、3人未満の接触ユーザの体調の悪化が認められるものの、体調の回復が認められる場合」には、この後にユーザの体調が悪化する可能性は低いと考えられることから、「健康リスクレベル1(予想)」と判断する。また、判断部270は、「過去〇△以内に、接触ユーザの体調の悪化が認められない場合」には、この後、ユーザの体調が悪化するとは考え難いことから、「健康リスクレベル0(予想)」と判断する。なお、接触ユーザの体調は、例えば接触ユーザのヘルスケアデータから把握することができる。また、管理サーバ20は、例えば外部サーバに定期的(または不定期)にアクセスすることで、最新の健康リスク基準テーブルTA2にアップデートすることができる。
【0076】
図11に戻り、通知部280は、判断部270によるユーザの健康リスクレベルの判断結果を、ユーザが所属する企業などのコンピュータや、ユーザの携帯端末10に通知する。各ユーザは、携帯端末10等に通知される自身の健康リスクを確認することで、自覚症状がなくても、この後に自身の体調が悪化する可能性等を事前に把握しておくことができる。
【0077】
図13は、感染者に接触したユーザの健康リスクの変化を例示した図である。
図13のパターンAに示すように、感染者から感染報告があった場合に、当該感染者と接触した各ユーザの感染リスクを判定する方法では、すでに各ユーザの体調が大きく悪化していることが懸念される。
【0078】
そこで、本変形例では、図13のパターンBに示すように、感染者から感染報告がなされる前(具体的には、感染者の「体調悪化」や「体調悪化継続」が確認されたとき)に、過去一定期間内に感染者と接触した各ユーザの健康リスクを判断することで、各ユーザに健康リスクレベル等の注意喚起を可能とする。なお、本変形例では、健康リスクレベルの通知方法として、健康リスクレベルに応じたアイコン画像P1、P2をユーザの携帯端末10に表示する方法を想定するが、どのような方法を採用するかは適宜設定・変更可能である。
【0079】
図14は、管理サーバ20による体調リスク判断処理を示すフローチャートである。
特定部260は、体調リスクの判断対象となるユーザの接触データに基づき、過去一定期間内に当該ユーザと接触した他のユーザ(すなわち、接触ユーザ)を特定する(ステップS1)。
【0080】
判断部270は、各接触ユーザのヘルスケアデータを確認した後(ステップS2)各接触ユーザのヘルスケアデータと、最新の健康リスク基準テーブルTA2とに基づき、ユーザの健康リスクレベルを判断する(ステップS3)。
通知部280は、ユーザの健康リスクレベルの判断結果を、ユーザが所属する企業などのコンピュータや、ユーザの携帯端末10に通知し(ステップS4)、処理を終了する。
【0081】
<応用例2>
上述した本実施形態では、携帯端末10を所持するユーザ同士の接触を検知する場合について説明したが、これに限る趣旨ではない。例えば、ビーコン端末を所持するユーザと携帯端末10を所持するユーザの接触を検知する場合にも適用可能である。
【0082】
図15は、親端末となる携帯端末10が、子端末となるビーコン端末30を検知する場合の説明図である。
ビーコン端末30は、例えばBLE(Bluetooth Low Energy)を利用した端末であり、自端末を識別するタグ識別情報を含めてビーコン信号を発信する。携帯端末(受信部)10は、ビーコン端末30から発信されるビーコン信号を受信することで、ビーコン端末30を検知する。
【0083】
携帯端末(送信部)10は、ビーコン信号を受信すると、ビーコン信号に含まれるタグ識別情報(子端末識別情報)と、当該携帯端末10を識別するための携帯端末識別情報(親端末識別情報)と、ビーコン信号の受信日時をあらわす受信日時情報とを含む接触データを生成し、管理サーバ20に送信する。
【0084】
管理サーバ(受信部、検知部)20は、各携帯端末10から送信される接触データを受信すると、受信した接触データに基づき、各携帯端末10を利用するユーザと、各ビーコン端末30を利用するユーザとの接触状況を検知する。
【0085】
図16は、下記前提条件の下、携帯端末10によるビーコン端末30の接触トレース方法を説明するための説明図である。
(前提条件(図16のA参照))
・ユーザA~Cは、ビーコン端末30を所持し、10:00~11:00の時間帯において個室1の固定席に滞在。
・ユーザDは、ビーコン端末30を所持し、10:00~11:0の時間帯において個室2の固定席に滞在。
・ユーザXは、携帯端末10を所持し、10:00~10:30の時間帯において個室1を巡回し、ユーザA、Bと接触した後、個室2へ移動し、10:30~11:00の時間帯においてユーザDと接触。
・ユーザYは、携帯端末10を所持し、10:00~11:00の時間帯において個室1を巡回し、ユーザB、Cと接触。
・後にユーザAから感染症の感染報告あり。
【0086】
ユーザXの携帯端末10は、10:00~11:00の間にユーザA、B、Dのビーコン端末30からビーコン信号を受信し、ユーザA、B、Dのタグ識別情報を記憶する(図16のB参照)。ユーザXの携帯端末10は、ユーザXの携帯端末識別情報とともに、ユーザA、B、Dのタグ識別情報、ビーコン信号の受信日時情報を含む接触データを、管理サーバ20に送信する。
【0087】
一方、ユーザYの携帯端末10は、10:00~11:00の間にユーザB、Cのビーコン端末30からビーコン信号を受信し、ユーザB、Cのタグ識別情報を記憶する(図16のB参照)。ユーザYの携帯端末10は、ユーザYの携帯端末識別情報とともに、ユーザB、Cのタグ識別情報、ビーコン信号の受信日時情報を含む接触データを、管理サーバ20に送信する。
【0088】
管理サーバ20は、ユーザXの携帯端末10の接触データと、ユーザYの携帯端末10の接触データを比較する。管理サーバ20は、10:00~11:00の時間帯において、ユーザBのタグ識別情報が重複していることから(図16のC参照)、ユーザXとユーザYは、それぞれ同一のユーザBに接触したと判断する。そして、管理サーバ20は、ユーザXの携帯端末10とユーザYの携帯端末10の各接触データを結合して結合リストCLを作成する(図16のD参照)。
【0089】
図16のDに示すように、結合リストCLには、すでに感染報告のあったユーザ(感染者)Aのタグ識別情報が含まれていることから、管理サーバ20は、結合リストCLに基づき、接触候補者を抽出する。具体的には、結合リストCLには、ユーザX、Yの携帯端末識別情報、ユーザA、B、C、Dのタグ識別情報が含まれていることから、管理サーバ20は、結合リストCLに携帯端末識別情報またはタグ識別情報が登録されているユーザB、C、D、X、Yを、接触候補者として抽出する。
【0090】
その後、管理サーバ20は、接触候補者として抽出したユーザB、C、D、X、Yに対して濃厚接触者に該当するか否かを判断するためのアンケートを送信する。一例として、ユーザX、Yについては、各携帯端末10宛てにアンケートを送信する一方、ユーザB、C、Dについては、それぞれビーコン端末30以外の端末(例えば、スマホやPC)宛てにアンケートを送信する。なお、アンケートの内容は、例えば「10:00~11:00の時間帯に、個室1にいましたか?」など、滞在時間と滞在場所を問うメッセージでもよいが、これに限られない。
【0091】
各ユーザB、C、D、X、Yは、自身の携帯端末などを利用して、アンケートに回答する。ここでは、ユーザDのみが、10:00~11:00の時間帯において個室2に滞在しており、感染者Aと接触していないことから、管理サーバ20は、アンケートの回答結果に基づき、ユーザDを非濃厚接触者と判断する一方、ユーザB、C、X、Yを濃厚接触者と判断する(図16のE参照)。
【0092】
管理サーバ20は、濃厚接触者、非濃厚接触者を特定すると、これを各ユーザが所属する企業などのコンピュータや、各ユーザの携帯端末などに通知する。
このように、携帯端末10だけでなくビーコン端末30との接触も検知可能とすることで、システム全体の消費電力量を抑えることが可能となる。
【0093】
ここで、各ユーザに送信するアンケートについては、回答内容の精度を高めるために、位置情報を利用してもよい。例えば、ユーザX、Yの携帯端末10は、GPSや施設内のビーコンなどを利用して位置情報を取得し、取得した位置情報を接触データに含めて管理サーバ20に送信する。管理サーバ20は、ユーザX、Yの携帯端末10から取得した位置情報を利用(付与)して、ユーザB、C、D向けのアンケートを生成し、送信する。ユーザB、C、Dは、アンケートに付与された位置情報を確認することで、そのときに自分がどこにいたのか、記憶の呼び起こしが支援され、アンケートの回答内容の精度を高めることが可能となる。
また、以上説明した各実施形態及び応用例において、「部」とは、単に物理的手段を意味するものではなく、その「部」が有する機能をソフトウェアによって実現する場合も含む。また、1つの「部」や装置が有する機能が2つ以上の物理的手段や装置により実現されても、2つ以上の「部」や装置の機能が1つの物理的手段や装置により実現されても良い。
【符号の説明】
【0094】
100…感染症対策システム、10…携帯端末、20…管理サーバ、110…記憶部、120…制御部、130…操作部、140…表示部、150…近距離無線通信部、160…接触データ取得部、170…行動データ取得部、180…ヘルスケアデータ取得部、190…通信部、210…記憶部、220…制御部、230…通信部、240…判定部、250…出力部、260…特定部、270…判断部、280…通知部、AP1…接触トレースアプリ、DB1…個別データベース、TA1…基準テーブル、TA2…健康リスク基準テーブル。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16