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特許7038263モルホリノキナゾリン化合物の製造方法及びその中間体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-09
(45)【発行日】2022-03-17
(54)【発明の名称】モルホリノキナゾリン化合物の製造方法及びその中間体
(51)【国際特許分類】
   C07D 239/84 20060101AFI20220310BHJP
   C07D 239/88 20060101ALI20220310BHJP
   C07D 239/90 20060101ALI20220310BHJP
   C07D 401/04 20060101ALI20220310BHJP
   C07D 401/14 20060101ALI20220310BHJP
【FI】
C07D239/84 CSP
C07D239/88
C07D239/90
C07D401/04
C07D401/14
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2021541182
(86)(22)【出願日】2019-12-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(86)【国際出願番号】 CN2019127763
(87)【国際公開番号】W WO2020147525
(87)【国際公開日】2020-07-23
【審査請求日】2021-11-10
(31)【優先権主張番号】201910040918.1
(32)【優先日】2019-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】317008399
【氏名又は名称】シャンハイ インリー ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】ズーシェン シュ
(72)【発明者】
【氏名】ジーリー リー
(72)【発明者】
【氏名】ジャンフェン ウー
(72)【発明者】
【氏名】ヤントン ルー
【審査官】安藤 倫世
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-533372(JP,A)
【文献】特表2018-513853(JP,A)
【文献】特表2012-509334(JP,A)
【文献】Bioorganic Chemistry,2018年,82,204-210
【文献】Journal of Heterocyclic Chemistry,2018年,56,124-141
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/CASREACT/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Vで表される化合物の製造方法であって、
パラジウム触媒及び塩基性試薬の作用下で、化合物Sと化合物IVとを、溶媒において下記式で示されるスズキ反応をさせ、化合物Vを得る工程を含むことを特徴とする方法。
【化1】
(ただし、R及びRは独立にH又は
【化2】

であり、Mは
【化3】
又は-BFKであり、XはCl又はBrであり、Xはハロゲン、
【化4】

であり、
はC1-4アルキル基であり、R4a、R4b、R4c、R4d及びR4eは独立にH、C1-6アルキル基、ニトロ基又はハロゲンである)
【請求項2】
において、前記ハロゲンはCl、Br及びIであり
びに/或いは、Rにおいて、前記C1-4アルキル基はメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、
【化5】
又はt-ブチル基であり
びに/或いは、R4a、R4b、R4c、R4d及びR4eにおいて、前記ハロゲンは独立にCl、Br又はIであり、
並びに/或いは、R4a、R4b、R4c、R4d及びR4eにおいて、前記C1-6アルキル基は独立にC1-3アルキル基である
ことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
において、前記ハロゲンはClであり、
並びに/或いは、R において、前記C 1-4 アルキル基はメチル基であり、
並びに/或いは、R 4a 、R 4b 、R 4c 、R 4d 及びR 4e において、前記C 1-6 アルキル基は独立にメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基である、
ことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記R 4a 、R 4b 、R 4c 、R 4d 及びR 4e において、前記C 1-6 アルキル基は独立にメチル基である、
ことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記Mは
【化6】

であり、 並びに/或いは、Xは塩素であり、
並びに/或いは、Xはハロゲン、
【化7】

であり
びに/或いは、R4a、R4b、R4d及びR4eは独立にHである、
ことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記Mは
【化8】
であり、
並びに/或いは、X
【化9】
である、
ことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記X
【化10】
である、
ことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
前記スズキ反応において、前記パラジウム触媒はテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、酢酸パラジウム、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロリド、ビス(トリ-o-メチルフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、ビス(トリ-t-ブチルホスフィン)パラジウム(Pd[P(t-Bu))、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウムジクロリド及び[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウムジクロリドのジクロロメタン錯体のうちの1つ又は複数であり
びに/或いは、前記スズキ反応において、前記パラジウム触媒は配位子の存在下で反応させる場合、前記配位子はトリフェニルホスフィン、トリ-o-メチルフェニルホスフィン、トリ-t-ブチルホスホニウムテトラフルオロボレート、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシ-ビフェニル及び2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジイソプロポキシ-1,1’-ビフェニルのうちの1つ又は複数であり、
並びに/或いは、前記スズキ反応において、前記パラジウム触媒と前記化合物IVのモル比は0.01~0.5であり
びに/或いは、前記スズキ反応において、前記溶媒は有機溶媒と水の混合溶媒であり、前記有機溶媒は芳香族炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒、塩化炭化水素系溶媒及びエーテル系溶媒のうちの1つ又は複数であり、前記有機溶媒と前記水の体積比は1:1~10:1であり
びに/或いは、前記スズキ反応において、前記塩基性試薬はアルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属フッ化塩、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属t-ブトキシド塩及びアルカリ金属水酸化物のうちの1つ又は複数であり、
並びに/或いは、前記スズキ反応において、前記塩基性試薬と前記化合物IVのモル比は1~10であり
びに/或いは、前記スズキ反応において、前記化合物Sと前記化合物IVのモル比は0.9~3であり
びに/或いは、前記スズキ反応において、前記スズキ反応の温度は0~130℃であり
びに/或いは、前記スズキ反応は保護ガスの存在下で行われ、
並びに/或いは、前記スズキ反応において、前記化合物Sは
【化11】

であり、
並びに/或いは、前記スズキ反応において、前記化合物IVは
【化12】

である、
ことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
前記スズキ反応において、前記パラジウム触媒はテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムであり、
並びに/或いは、前記スズキ反応において、前記パラジウム触媒と前記化合物IVのモル比は0.02~0.2であり、
並びに/或いは、前記スズキ反応において、前記溶媒は有機溶媒と水の混合溶媒であり、前記有機溶媒は芳香族炭化水素系溶媒及びアルコール系溶媒の混合溶媒であり、
並びに/或いは、前記スズキ反応において、前記溶媒は有機溶媒と水の混合溶媒であり、前記有機溶媒と前記水の体積比は5:1~10:1であり、
並びに/或いは、前記スズキ反応において、前記塩基性試薬と前記化合物IVのモル比は2~10であり、
並びに/或いは、前記スズキ反応において、前記化合物Sと前記化合物IVのモル比は0.9~1.5であり、
並びに/或いは、前記スズキ反応において、前記スズキ反応の温度は20~70℃である、
ことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項10】
さらに、前記化合物IVの製造方法を含み、それは方法1又は方法2で、
方法1は、化合物IIIと「三ハロゲン化ホスホリル及び/又は三ハロゲン化リン」とを、下記式のハロゲン化反応をさせ、前記化合物IVを得る工程を含み、
方法2は、塩基性試薬の作用下で、化合物IIIとスルホニル化試薬とを、有機溶媒において下記式の求核置換反応をさせ、前記化合物IVを得る工程を含み、
前記スルホニル化試薬は
【化13】

であり、
【化14】
がハロゲンである場合、前記化合物IVの製造方法は方法1であり、

【化15】
である場合、前記化合物IVの製造方法は方法2である、
ことを特徴とする請求項1~の少なくともいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項11】
方法1において、前記ハロゲン化反応は無溶媒の条件において行われ、
並びに/或いは、方法1において、前記「三ハロゲン化ホスホリル及び/又は三ハロゲン化リン」におけるハロゲン化はハロゲンであり、前記ハロゲンはCl、Br又はIであり
びに/或いは、方法1において、前記「三ハロゲン化ホスホリル及び/又は三ハロゲン化リン」と前記化合物IIIのモル比は1以上であり
びに/或いは、方法1において、前記ハロゲン化反応の温度は20~130℃であり
びに/或いは、方法2において、前記塩基性試薬は有機弱塩基及び/又は無機弱塩基塩であり
びに/或いは、方法2において、前記スルホニル化試薬が
【化16】
である場合、前記
【化17】
であり、
並びに/或いは、方法2において、前記スルホニル化試薬が
【化18】
である場合、前記
【化19】
であり、
並びに/或いは、方法2において、前記スルホニル化試薬と前記化合物IIIのモル比は1~1.5であり、
並びに/或いは、方法2において、前記有機溶媒はニトリル系溶媒、塩化炭化水素系溶媒及びエーテル系溶媒のうちの1つ又は複数であり、
並びに/或いは、方法2において、前記有機溶媒と前記化合物IIIの体積質量比は5~15mL/gである、
ことを特徴とする請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
方法1において、前記「三ハロゲン化ホスホリル及び/又は三ハロゲン化リン」におけるハロゲン化はハロゲンであり、前記ハロゲンはClであり、
並びに/或いは、方法1において、前記「三ハロゲン化ホスホリル及び/又は三ハロゲン化リン」と前記化合物IIIのモル比は1~30であり、
並びに/或いは、方法1において、前記ハロゲン化反応の温度は60~110℃であり、
並びに/或いは、方法2において、前記塩基性試薬は有機弱塩基及び/又は無機弱塩基塩であり、前記有機弱塩基は、第3級アミン系有機弱塩基及び/又はピリジン系有機弱塩基であり、前記無機弱塩基塩は、アルカリ金属炭酸塩である、
ことを特徴とする請求項10に記載の製造方法。
【請求項13】
さらに、有機溶媒において、化合物IIと化合物Aとを、下記式の求核置換反応をさせ、前記化合物IIIを得る工程を含むことを特徴とする請求項10に記載の製造方法。
【化20】
【請求項14】
さらに、塩基性試薬の作用下で、化合物Iを溶媒において下記式の反応をさせ、前記化合物IIを得る工程を含むことを特徴とする請求項13に記載の製造方法。
【化21】
【請求項15】
式YY-20394で表される化合物の製造方法であって、
工程S1:パラジウム触媒及び塩基性試薬の作用下で、化合物Sと化合物IVとを溶媒において下記式で示されるスズキ反応をさせ、前記化合物Vを得る工程、
工程S2:塩基性試薬の作用下で、メタンスルホニルクロリドと前記化合物Vとを有機溶媒において下記式の反応をさせ、化合物VIを得る工程、
工程S3:パラジウム触媒及び配位子の条件において、塩基性試薬の作用下で、化合物VIIと前記化合物VIとを、溶媒において下記式のカップリング反応をさせ、化合物YY-20394を得る工程を含み、
【化22】
ここで、前記化合物VにおけるR及びRが同時に
【化23】
である場合、前記化合物Vは工程S2を経ずにそのまま工程S3のカップリング反応を行い、
工程S1において、前記化合物Vの製造方法の条件及び操作は請求項1~14の少なくともいずれか一項に記載の製造方法と同様であることを特徴とする方法。
【請求項16】
前記の式YY-20394で表される化合物の製造方法において、前記化合物VにおけるR及びRが同時にH又は
【化24】
ではない場合、前記化合物Vは工程S2を経ずにそのまま工程S3のカップリング反応を行い、
並びに/或いは、工程S2において、前記塩基性試薬は有機弱塩基であり、
並びに/或いは、工程S2において、前記メタンスルホニルクロリドと前記化合物Vのモル比は1~5であり、
並びに/或いは、工程S2において、前記塩基性試薬と前記化合物Vのモル比は3~25であり、
並びに/或いは、工程S2において、前記有機溶媒は塩化炭化水素系溶媒であり、
並びに/或いは、工程S2において、前記反応温度は10~50℃であり、
並びに/或いは、工程S2において、前記化合物Vは
【化25】
であり、
並びに/或いは、工程S3において、前記パラジウム触媒はテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、酢酸パラジウム、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロリド、ビス(トリ-o-メチルフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、ビス(トリ-t-ブチルホスフィン)パラジウム(Pd[P(t-Bu))、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウムジクロリド及び[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウムジクロリドのジクロロメタン錯体のうちの1つ又は複数であり、
びに/或いは、工程S3において、前記パラジウム触媒と前記化合物VIのモル比は0.01~0.2であり
並びに/或いは、工程S3において、前記配位子はトリフェニルホスフィン、トリ-o-メチルフェニルホスフィン、トリ-t-ブチルホスホニウムテトラフルオロボレート、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニル及び2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジイソプロポキシ-1,1’-ビフェニルのうちの1つ又は複数であり
びに/或いは、工程S3において、前記配位子と前記化合物VIのモル比は0.02~0.4であり、
並びに/或いは、工程S3において、前記塩基性試薬はアルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属フッ化塩、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属t-ブトキシド塩及びアルカリ金属水酸化物のうちの1つ又は複数であり、
並びに/或いは、工程S3において、前記塩基性試薬と前記化合物VIのモル比は1~20であり、
並びに/或いは、工程S3において、前記化合物VIIと前記化合物VIのモル比は0.8~6であり
びに/或いは、工程S3において、前記溶媒は水溶性有機溶媒と水の混合溶媒であり、前記有機溶媒は水溶性有機溶媒であり、前記水溶性有機溶媒と水の体積比は1:1~15:1であり
びに/或いは、工程S3において、前記化合物VIは
【化26】
であり、
並びに/或いは、工程S3において、前記カップリング反応は保護ガスの存在下で行われ、前記保護ガスは窒素ガス又はアルゴンガスである、
ことを特徴とする請求項15の製造方法。
【請求項17】
前記工程S2において、前記塩基性試薬は有機弱塩基であり、前記有機弱塩基はピリジン系有機弱塩基及び/又は第3級アミン系有機弱塩基であり、
並びに/或いは、工程S2において、前記有機溶媒はジクロロメタンであり、
並びに/或いは、工程S3において、前記パラジウム触媒は酢酸パラジウムであり、
並びに/或いは、工程S3において、前記配位子は2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニルであり、
並びに/或いは、工程S3において、前記化合物VIIと前記化合物VIのモル比は1~3であり、
並びに/或いは、工程S3において、前記溶媒は水溶性有機溶媒と水の混合溶媒であり、前記有機溶媒は水溶性有機溶媒であり、前記水溶性有機溶媒はエーテル系溶媒及び/又はアルコール系溶媒であり、
並びに/或いは、工程S3において、前記溶媒は水溶性有機溶媒と水の混合溶媒であり、前記有機溶媒は水溶性有機溶媒であり、前記水溶性有機溶媒と水の体積比は3:1~15:1である、
ことを特徴とする請求項15の製造方法。
【請求項18】
前記工程S2において、前記塩基性試薬は有機弱塩基であり、前記有機弱塩基はピリジン系有機弱塩基であり、
並びに/或いは、工程S3において、前記溶媒は水溶性有機溶媒と水の混合溶媒であり、前記有機溶媒は水溶性有機溶媒であり、前記水溶性有機溶媒はエーテル系溶媒である、
ことを特徴とする請求項15の製造方法。
【請求項19】
前記工程S2において、前記塩基性試薬は有機弱塩基であり、前記有機弱塩基はピリジンであり、
並びに/或いは、工程S3において、前記溶媒は水溶性有機溶媒と水の混合溶媒であり、前記有機溶媒は水溶性有機溶媒であり、前記水溶性有機溶媒はテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン及びエチレングリコールジメチルエーテルのうちの1つ又は複数である、
ことを特徴とする請求項15の製造方法。
【請求項20】
前記工程S3において、前記溶媒は水溶性有機溶媒と水の混合溶媒であり、前記有機溶媒は水溶性有機溶媒であり、前記水溶性有機溶媒はテトラヒドロフランである、
ことを特徴とする請求項15の製造方法。
【請求項21】
式IVで表される化合物、
【化27】
(ただし、X及びXの定義はいずれも請求項1~5の少なくともいずれか一項に記載の通りである)
又は、式IIIで表される化合物、
【化28】
(ただし、XはCl又はBrである)
又は、式IIで表される化合物。
【化29】
【請求項22】
請求項21に記載の化合物IVであって、前記化合物IVは
【化30】
ある、ことを特徴とする化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は出願日が2019年1月16日の中国特許出願2019100409181の優先権を要求する。本願は上記中国特許出願の全文を引用する。
【0002】
本発明はモルホリノキナゾリン化合物の製造方法及びその中間体に関する。
【背景技術】
【0003】
モルホリノキナゾリン化合物YY-20394は、化学構造が
【化1】
であり、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼδ(PI3K δ)を抑制する活性を有する。
【0004】
PI3K δは細胞内におけるホスファチジルイノシトールキナーゼで、ホスファチジルイノシトールの3位ヒドロキシ基のリン酸化を触媒することができる。PI3KはクラスI、クラスII及びクラスIIIのキナーゼに分かれ、最も幅広く研究されているのは細胞表面における受容体によって活性化されるクラスI PI3Kである。哺乳動物細胞におけるクラスI PI3Kは構造及び受容体によってさらにクラスIaとクラスIbに分かれ、それぞれチロシンキナーゼ共役受容体とGタンパク質共役受容体からのシグナルを伝達する。クラスIa PI3KはPI3K α、PI3K β、PI3K δのサブタイプを、クラスIb PI3KはPI3K γのサブタイプを含む(非特許文献1)。クラスIa PI3Kは触媒サブユニットp110と調節サブユニットp85からなる二量体タンパク質で、脂質キナーゼとタンパク質キナーゼの二重活性を有し(非特許文献2)、細胞増殖と癌の発生、免疫疾患及び炎症に関連する疾患に関わるとされている。
【0005】
特許文献1では、化合物YY-20394及びその製造方法が開示された。当該特許において、2-アミノ-5-フルオロ安息香酸を原料とし、3工程の反応によってトリクロロ中間体I-11を合成し、さらに4工程の反応によって転換させて産物YY-20394を得た。このスキームは主に薬物の化学構造の改造に適するが、化合物I-11から化合物I-11-aを生成させる反応工程では、選択性が劣り、生成する不純物が多く、化合物I-11-aの収率が28%だけで、産業化生産に不利である。
【0006】
【化2】
【0007】
これに鑑み、収率が高く、選択性が良く、キナゾリン環における2位の副産物の生成が防げ、かつ操作が簡便で、反応条件が穏やかで、工業化生産に適する化合物YY-20394の製造方法の開発が切望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2015/055071号
【非特許文献】
【0009】
【文献】Trends.Biochem.Sci.,1997,22,267-272
【文献】Nat.Rev.Cancer 2002,2,489-501
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、既存技術と異なるモルホリンキナゾリン系化合物の製造方法及びその中間体を提供する。当該製造方法は、収率が高く、選択性が良く、キナゾリン環における2位の副産物の生成が防げ、キナゾリン環の4位がスズキ反応が生じる選択性を向上させ、かつ操作が簡便で、反応条件が穏やかで、産業化生産に適する。
【0011】
本発明は、以下の技術的解決策によって実現される。
【0012】
本発明は、式Vで表される化合物の製造方法であって、
パラジウム触媒及び塩基性試薬の作用下で、化合物Sと化合物IVとを、溶媒において下記式で示されるスズキ反応をさせ、化合物Vを得る工程を含む方法を提供する。
【0013】
【化3】
【0014】
ただし、R及びRは独立にH又は
【化4】
である。Mは
【化5】
又は-BFKである。
【0015】
はCl又はBrである。
【0016】
はハロゲン、
【化6】
である。
【0017】
はC1-4アルキル基である。
【0018】
4a、R4b、R4c、R4d及びR4eは独立にH、C1-6アルキル基、ニトロ基又はハロゲンである。
【0019】
において、前記C1-4アルキル基は、好ましくはメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、
【化7】
又はt-ブチル基であり、より好ましくはメチル基である。
【0020】
において、前記ハロゲンはCl、Br及びIが好ましく、Clがより好ましい。
【0021】
4a、R4b、R4c、R4d及びR4eにおいて、前記ハロゲンは独立にCl、Br又はIである。
【0022】
4a、R4b、R4c、R4d及びR4eにおいて、前記C1-6アルキル基は独立にC1-3アルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n-プロピル基又はイソプロピル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
【0023】
一つの技術的解決策において、前記Mは
【化8】
であり、好ましくは、
【化9】
である。
【0024】
一つの技術的解決策において、前記Xは塩素である。
【0025】
一つの技術的解決策において、前記Xはハロゲン、
【化10】
であり、好ましくは、
【化11】
である。
【0026】
一つの技術的解決策において、R4a、R4b、R4d及びR4eは独立にHである。
【0027】
一つの技術的解決策において、R4cは、好ましくは、ニトロ基又はC1-6アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基である。
【0028】
一つの技術的解決策において、X
【化12】
である場合、前記
【化13】
である。
【0029】
前記スズキ反応は本分野のこのような反応の通常の反応でもよい。
【0030】
前記スズキ反応において、前記パラジウム触媒は本分野のこのような反応の通常のパラジウム触媒でもよいが、好ましくは、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Pd(PPh)、酢酸パラジウムPd(OAc)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロリド(PdCl(PPh)、ビス(トリ-o-メチルフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(PdCl[P(o-tol))、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(Pd(dba))、ビス(トリ-t-ブチルホスフィン)パラジウム(Pd[P(t-Bu))、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウムジクロリド(PdCl(dppf))及び[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウムジクロリドのジクロロメタン錯体(PdCl(dppf)DCM)のうちの1つ又は複数であり、より好ましくは、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムである。
【0031】
前記スズキ反応において、前記パラジウム触媒は配位子の存在下で反応させてもよい。前記配位子は本分野のこのような反応の通常の配位子でもよいが、好ましくは、トリフェニルホスフィン(PPh)、トリ-o-メチルフェニルホスフィン(P(o-tol))、トリ-t-ブチルホスホニウムテトラフルオロボレート、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル(x-Phos)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニル(s-Phos)及び2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジイソプロポキシ-1,1’-ビフェニル(Ru-Phos)のうちの1つ又は複数である。
【0032】
前記スズキ反応において、前記パラジウム触媒と前記化合物IVのモル比は0.01~0.5でもよいが、好ましくは0.02~0.2であり、例えば0.06である。
【0033】
前記スズキ反応において、前記溶媒は本分野のこのような反応の通常の溶媒でもよいが、好ましくは有機溶媒と水の混合溶媒である。前記有機溶媒は本分野のこのような反応の通常の有機溶媒でもよいが、好ましくは、芳香族炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒、塩化炭化水素系溶媒及びエーテル系溶媒のうちの1つ又は複数であり、より好ましくは、芳香族炭化水素系溶媒及びアルコール系溶媒である。前記芳香族炭化水素系溶媒及びアルコール系溶媒は、好ましくはトルエン及びイソプロパノールである。前記芳香族炭化水素系溶媒とアルコール系溶媒の体積比は、好ましくは1:1~5:1であり、より好ましくは3:1~5:1であり、例えば4:1である。前記有機溶媒と前記水の体積比は本分野のこのような反応の通常の体積比でもよいが、好ましくは1:1~10:1であり、より好ましくは5:1~10:1である。
【0034】
前記スズキ反応において、前記混合溶媒の使用量は、具体的に限定されず、反応の進行に影響しなければよい。
【0035】
前記スズキ反応において、前記塩基性試薬は本分野のこのような反応の通常の塩基性試薬でもよいが、好ましくは、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属フッ化塩、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属t-ブトキシド塩及びアルカリ金属水酸化物のうちの1つ又は複数である。前記アルカリ金属炭酸塩は炭酸ナトリウム、炭酸カリウム及び炭酸セシウムのうちの1つ又は複数でもよいが、好ましくは炭酸カリウムである。前記アルカリ金属フッ化塩はフッ化カリウムでもよい。前記アルカリ金属リン酸塩はリン酸カリウムでもよい。前記アルカリ金属t-ブトキシド塩はナトリウムt-ブトキシド及び/又はカリウムt-ブトキシドでもよい。前記アルカリ金属水酸化物は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化リチウムのうちの1つ又は複数でもよい。
【0036】
前記スズキ反応において、前記塩基性試薬と前記化合物IVのモル比は1~10であり、例えば1.2であり、また例えば1.7でもよいが、好ましくは2~10であり、例えば9である。
【0037】
前記スズキ反応において、前記化合物Sと前記化合物IVのモル比は0.9~3でもよいが、好ましくは0.9~1.5であり、例えば1.0であり、また例えば1.2である。
【0038】
前記スズキ反応において、前記スズキ反応の温度は本分野のこのような反応の通常の温度でもよいが、好ましくは0~130℃であり、より好ましくは20~70℃であり、例えば45℃であり、また例えば70℃である。
【0039】
前記スズキ反応は保護ガスの存在下で行われてもよい。前記保護ガスは本分野のこのような反応の通常の保護ガス、例えば窒素ガス、また例えばアルゴンガスでもよい。
【0040】
前記スズキ反応の進行のモニタリング方法は本分野のこのような反応の通常のモニタリング方法(例えばTLC、また例えばLC-MS)によってモニタリングすることができ、一般的に、前記化合物IVが完全になくなったか、又は反応しなくなった時点が反応の終点とされる。前記スズキ反応の時間は好ましくは1~18hであり、例えば12hであり、また例えば7hであり、さらに例えば1hである。
【0041】
前記スズキ反応において、前記化合物Sは、好ましくは
【化14】
である。
【0042】
前記スズキ反応において、前記化合物IVは、好ましくは
【化15】
である。
【0043】
前記スズキ反応が終了した後、さらに、反応終了後の反応液を室温に冷却し、抽出し、濃縮しカラムクロマトグラフィーを行うという後処理工程を含んでもよい。
【0044】
前記式Vで表される化合物の製造方法は、さらに、前記化合物IVの製造方法を含んでもよく、それは方法1又は方法2である。
【0045】
方法1は、化合物IIIと「三ハロゲン化ホスホリル及び/又は三ハロゲン化リン」とを、下記式のハロゲン化反応をさせ、前記化合物IVを得る工程を含む。
【0046】
方法2は、塩基性試薬の作用下で、化合物IIIとスルホニル化試薬とを、有機溶媒において下記式の求核置換反応をさせ、前記化合物IVを得る工程を含む。
【0047】
前記スルホニル化試薬は
【化16】
である。
【0048】
【化17】
【0049】
ただし、R、R4a、R4b、R4c、R4d、R4e、X及びXの定義はいずれも前記の通りである。
【0050】
がハロゲンである場合、前記化合物IVの製造方法は方法1である。
【0051】

【化18】
である場合、前記化合物IVの製造方法は方法2である。
【0052】
方法1において、前記ハロゲン化反応は本分野のこのような反応の通常のハロゲン反応でもよい。
【0053】
方法1において、前記ハロゲン化反応は無溶媒の条件において行われる(ニート反応、neat reaction)。
【0054】
方法1において、前記「三ハロゲン化ホスホリル及び/又は三ハロゲン化リン」におけるハロゲン化はハロゲンであり、前記ハロゲンは、好ましくはCl、Br又はIであり、より好ましくはClである。
【0055】
方法1において、前記「三ハロゲン化ホスホリル及び/又は三ハロゲン化リン」と前記化合物IIIのモル比は1以上でもよいが、好ましくは1~30であり、例えば20であり、また例えば10である。
【0056】
方法1において、前記ハロゲン化反応の温度は本分野のこのような反応の通常の温度でもよいが、好ましくは20~130℃であり、より好ましくは60~110℃であり、例えば105℃である。
【0057】
方法1において、前記ハロゲン化反応の進行のモニタリング方法は本分野のこのような反応の通常のモニタリング方法(例えばTLC、また例えばLC-MS)によってモニタリングすることができ、一般的に、前記化合物IIIが完全になくなった時点が反応の終点とされる。前記ハロゲン化反応の時間は好ましくは2~24hであり、例えば3hである。
【0058】
方法1において、前記ハロゲン化反応が終了した後、さらに、ハロゲン反応終了後の反応液に対し、クエンチング、抽出、水洗及び濃縮を行うという後処理工程を含んでもよい。
【0059】
方法1において、前記の後処理工程では、前記クエンチング前に前記反応液に対して濃縮処理を行ってもよい。
【0060】
方法1において、前記の後処理工程では、前記クエンチングの手段は本分野のこのような反応の通常の手段でもよいが、好ましくは水を入れる手段であり、より好ましくは氷水を入れる手段である。
【0061】
方法1において、前記の後処理工程では、前記クエンチングの操作及び条件は本分野のこのような反応の通常の操作及び条件でもよい。前記抽出の有機溶媒は塩化炭化水素系溶媒でもよいが、好ましくはジクロロメタンである。
【0062】
方法1において、前記の後処理工程では、前記水洗は本分野のこのような反応の通常の水洗でもよいが、好ましくは飽和塩化ナトリウムによる水洗である。
【0063】
方法1において、前記の後処理工程では、前記濃縮の操作及び条件は本分野のこのような反応の通常の操作及び条件でもよいが、例えば減圧で濃縮してもよい。
【0064】
方法2において、前記塩基性試薬は本分野のこのような反応の通常の塩基性試薬でもよいが、好ましくは有機弱塩基及び/又は無機弱塩基塩であり、より好ましくは有機弱塩基である。前記有機弱塩基は第3級アミン系有機弱塩基及び/又はピリジン系有機弱塩基でもよい。前記第3級アミン系有機弱塩基は、好ましくはトリエチルアミン(TEA)及び/又はN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)である。前記無機弱塩基塩はアルカリ金属炭酸塩でもよいが、さらに好ましくは炭酸カリウムである。
【0065】
方法2において、前記スルホニル化試薬が
【化19】
である場合、前記
【化20】
は、好ましくは
【化21】
である。
【0066】
方法2において、前記スルホニル化試薬が
【化22】
である場合、前記
【化23】
は、好ましくは
【化24】
である。
【0067】
方法2において、前記スルホニル化試薬と前記化合物IIIのモル比は本分野のこのような反応の通常のモル比でもよいが、好ましくは1~1.5であり、例えば1である。
【0068】
方法2において、前記有機溶媒は本分野のこのような反応の通常の有機溶媒でもよいが、好ましくはニトリル系溶媒、塩化炭化水素系溶媒及びエーテル系溶媒のうちの1つ又は複数である。前記ニトリル系溶媒は、好ましくはアセトニトリルである。前記塩化炭化水素系溶媒は、好ましくはジクロロメタン及び/又はクロロホルムである。前記エーテル系溶媒は、好ましくはテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン及びエチレングリコールジメチルエーテルのうちの1つ又は複数である。
【0069】
方法2において、前記有機溶媒の使用量は具体的に限定されず、反応の進行に影響しなければよいが、例えば、前記有機溶媒と前記化合物IIIの体積質量比は5~15mL/gであり、例えば10mL/gでもよい。
【0070】
方法2において、前記反応の進行のモニタリング方法は本分野のこのような反応の通常のモニタリング方法(例えばTLC、また例えばLC-MS)によってモニタリングすることができ、一般的に、前記化合物IIIが完全になくなった時点が反応の終点とされる。前記反応の時間は、好ましくは0.5~5hであり、例えば2hである。
【0071】
方法2において、前記求核置換反応の温度は本分野のこのような反応の通常の温度でもよいが、好ましくは0~130℃でもよく、又は50~100℃であり、例えば70℃であり、また例えば80℃である。
【0072】
方法2において、前記求核置換反応が終了した後、さらに、反応終了後の反応液を室温に冷却し、固体が析出するまで水を入れ、ろ過及び乾燥を行うという後処理工程を含んでもよい。
【0073】
前記化合物IIIは、好ましくは
【化25】
である。
【0074】
前記式Vで表される化合物の製造方法は、さらに、有機溶媒において、化合物IIと化合物Aとを、下記式の求核置換反応をさせ、前記化合物IIIを得る工程を含んでもよい。
【0075】
【化26】
【0076】
前記求核置換反応の条件は本分野のこのような反応の通常の反応条件でもよい。
【0077】
前記求核置換反応において、前記有機溶媒は本分野のこのような反応の通常の有機溶媒でもよいが、好ましくは極性非プロトン性溶媒である。前記極性非プロトン性溶媒はアミド系溶媒でもよい。前記アミド系溶媒はN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)及び/又はN,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)でもよいが、好ましくはN,N-ジメチルアセトアミドである。
【0078】
前記求核置換反応において、前記有機溶媒の使用量は具体的に限定されず、反応の進行に影響しなければよいが、例えば、前記有機溶媒と前記化合物IIの体積質量比は5~15mL/gであり、例えば10mL/gでもよい。
【0079】
前記求核置換反応において、前記化合物Aと前記化合物IIのモル比は本分野のこのような反応の通常のモル比でもよいが、また1~10で、さらに1~3で、例えば2.4でもよい。
【0080】
ここで、前記求核置換反応の温度は本分野のこのような反応の通常の温度でもよいが、好ましくは20~100℃であり、例えば85℃である。
【0081】
前記求核置換反応の進行のモニタリング方法は本分野のこのような反応の通常のモニタリング方法(例えばTLC、また例えばLC-MS)によってモニタリングすることができ、一般的に、前記化合物IIが完全になくなった時点が反応の終点とされる。前記求核置換反応の時間は、好ましくは1~24hであり、より好ましくは1~5hであり、例えば2hである。
【0082】
ここで、前記化合物IIは、好ましくは
【化27】
である。
【0083】
前記求核置換反応が終了した後、さらに、求核置換反応終了後の反応液を室温に冷却し、固体が析出するまで水を入れ、ろ過及び乾燥を行うという後処理工程を含んでもよい。
【0084】
前記式Vで表される化合物の製造方法は、さらに、塩基性試薬の作用下で、化合物Iに溶媒において下記式の反応をさせ、前記化合物IIを得る工程を含んでもよい。
【0085】
【化28】
【0086】
前記反応の条件は本分野のこのような反応の通常の反応条件でもよい。
【0087】
ここで、前記溶媒は本分野のこのような反応の通常の溶媒でもよいが、好ましくは有機溶媒と水の混合溶媒である。前記有機溶媒は本分野のこのような反応の通常の有機溶媒でもよいが、好ましくはニトリル系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒及びアミド系溶媒のうちの1つ又は複数が好ましく、より好ましくはニトリル系溶媒である。前記ニトリル系溶媒は、好ましくはアセトニトリルである。
【0088】
ここで、前記溶媒の使用量は具体的に限定されず、反応の進行に影響しなければよい。
【0089】
ここで、前記塩基性試薬は本分野のこのような反応の通常の塩基性試薬でもよいが、好ましくは無機強塩基でる。前記無機強塩基は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム及び水酸化カルシウムのうちの1つ又は複数でもよいが、好ましくは、水酸化ナトリウムである。
【0090】
ここで、前記塩基性試薬と前記化合物Iのモル比は本分野のこのような反応の通常のモル比でもよいが、好ましくは1~20であり、例えば4である。
【0091】
ここで、前記反応の温度は本分野のこのような反応の通常の温度でもよいが、好ましくは0~80℃であり、例えば45℃である。
【0092】
ここで、前記置換反応の進行のモニタリング方法は本分野のこのような反応の通常のモニタリング方法(例えばTLC、また例えばLC-MS)によってモニタリングすることができ、一般的に、前記化合物Iが完全になくなった時点が反応の終点とされる。前記反応の時間は、好ましくは8~18時間であり、例えば12時間である。
【0093】
前記反応が終了した後、さらに、反応終了後の反応液を室温に冷却し、反応液のpH値を5~6に調整し、ろ過及び乾燥を行うという後処理工程を含んでもよい。
【0094】
また、本発明は、式YY-20394で表される化合物の製造方法であって、以下の工程を含む方法を提供する:
【0095】
工程S1:パラジウム触媒及び塩基性試薬の作用下で、化合物Sと化合物IVとを、溶媒において下記式で示されるスズキ反応をさせ、化合物Vを得る工程;
【0096】
工程S2:塩基性試薬の作用下で、メタンスルホニルクロリドと前記化合物Vとを、有機溶媒において下記式の反応をさせ、化合物VIを得る工程;
【0097】
工程S3:パラジウム触媒及び配位子の条件において、塩基性試薬の作用下で、化合物VIIと前記化合物VIとを、溶媒において下記式のカップリング反応をさせ、化合物YY-20394を得る工程。
【0098】
【化29】
【0099】
ただし、X、X、R及びRの定義はいずれも前記の通りである。前記化合物VにおけるR及びRが同時に
【化30】
である場合、前記化合物Vは工程S2を経ずにそのまま工程S3のカップリング反応を行う。前記化合物Vの製造方法の条件及び操作は上記の通りである。
【0100】
前記の式YY-20394で表される化合物の製造方法において、前記化合物VにおけるR及びRが同時にH又は
【化31】
ではない場合、前記化合物Vは工程S2を経ずにそのまま工程S3のカップリング反応を行ってもよい。
【0101】
工程S2において、前記反応の条件は本分野のこのような反応の通常の反応条件でもよいが、本発明において、以下の条件が好ましい。
【0102】
工程S2において、前記塩基性試薬は有機弱塩基が好ましい。前記有機弱塩基は本分野のこのような反応の通常の有機弱塩基でもよい。前記有機弱塩基はピリジン系有機弱塩基及び/又は第3級アミン系有機弱塩基でもよいが、好ましくはピリジン系有機弱塩基である。前記ピリジン系有機弱塩基はピリジンでもよい。
【0103】
工程S2において、前記メタンスルホニルクロリドと前記化合物Vのモル比は1~5で、例えば2でもよい。
【0104】
工程S2において、前記塩基性試薬と前記化合物Vのモル比は3~25で、例えば23でもよい。
【0105】
工程S2において、前記有機溶媒は、好ましくは塩化炭化水素系溶媒である。前記ハロゲン化炭化水素系溶媒は、好ましくはジクロロメタンである。
【0106】
工程S2において、前記反応温度は10~50℃でもよい。
【0107】
工程S2において、前記反応の進行のモニタリング方法は本分野のこのような反応の通常のモニタリング方法(例えばTLC、また例えばLC-MS)によってモニタリングすることができ、一般的に、前記化合物Vが完全になくなった時点が反応の終点とされる。前記反応の時間は、好ましくは1~24hである。
【0108】
工程S2において、前記化合物Vは、好ましくは
【化32】
である。
【0109】
工程S2において、前記反応が終了した後、さらに、反応終了後の反応液に対し、クエンチング、ろ過及びスラリー撹拌を行うという後処理工程を含んでもよい。
【0110】
工程S3において、前記カップリング反応は本分野の通常のカップリング反応でもよい。
【0111】
工程S3において、前記パラジウム触媒は本分野のこのような反応の通常のパラジウム触媒でもよいが、好ましくは、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Pd(PPh)、酢酸パラジウムPd(OAc)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロリド(PdCl(PPh)、ビス(トリ-o-メチルフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(PdCl[P(o-tol))、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(Pd(dba))、ビス(トリ-t-ブチルホスフィン)パラジウム(Pd[P(t-Bu))、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウムジクロリド(PdCl(dppf))及び[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウムジクロリドのジクロロメタン錯体(PdCl(dppf)DCM)のうちの1つ又は複数であり、より好ましくは酢酸パラジウムである。
【0112】
工程S3において、前記パラジウム触媒と前記化合物VIのモル比は0.01~0.2で、例えば0.1でもよい。
【0113】
工程S3において、前記配位子は本分野のこのような反応の通常の配位子でもよいが、好ましくはトリフェニルホスフィン(PPh)、トリ-o-メチルフェニルホスフィン(P(o-tol))、トリ-t-ブチルホスホニウムテトラフルオロボレート、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル(x-Phos)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニル(s-Phos)及び2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジイソプロポキシ-1,1’-ビフェニル(Ru-Phos)のうちの1つ又は複数であり、好ましくは2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニルである。
【0114】
工程S3において、前記配位子と前記化合物VIのモル比は0.02~0.4で、例えば0.2でもよい。
【0115】
工程S3において、前記塩基性試薬は本分野のこのような反応の通常の塩基性試薬でもよいが、好ましくはアルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属フッ化塩、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属t-ブトキシド塩及びアルカリ金属水酸化物のうちの1つ又は複数である。前記アルカリ金属炭酸塩は炭酸ナトリウム、炭酸カリウム及び炭酸セシウムのうちの1つ又は複数でもよいが、好ましくは炭酸セシウム(CsCO)である。前記アルカリ金属フッ化塩はフッ化カリウムでもよい。前記アルカリリン酸塩はリン酸カリウムでもよい。前記アルカリ金属t-ブトキシド塩はナトリウムt-ブトキシド及び/又はカリウムt-ブトキシドでもよい。前記アルカリ金属水酸化物は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化リチウムのうちの1つ又は複数でもよい。
【0116】
工程S3において、前記塩基性試薬と前記化合物VIのモル比は1~20で、例えば3で、また例えば6で、さらに例えば10で、さらに例えば15で、さらに例えば20でもよい。
【0117】
工程S3において、前記化合物VIIと前記化合物VIのモル比は0.8~6でもよいが、好ましくは1~3であり、例えば5であり、また例えば1.5である。
【0118】
工程S3において、前記溶媒は本分野のこのような反応の通常の溶媒でもよいが、好ましくは水溶性有機溶媒と水の混合溶媒である。前記水溶性有機溶媒は本分野のこのような反応の通常の水溶性有機溶媒でもよい。前記水溶性有機溶媒は、好ましくはエーテル系溶媒及び/又はアルコール系溶媒であり、より好ましくはエーテル系溶媒である。前記エーテル系溶媒は、好ましくはテトラヒドロフラン(THF)、1,4-ジオキサン及びエチレングリコールジメチルエーテルのうちの1つ又は複数であり、より好ましくはテトラヒドロフランである。前記有機溶媒と前記水の体積比は本分野の通常の体積比でもよいが、好ましくは1:1~15:1であり、より好ましくは3:1~15:1であり、例えば10:1であり、また例えば4:1である。
【0119】
工程S3において、前記カップリング反応の反応形態は本分野のこのような反応の通常の反応形態でもよいが、通常の加熱形態によってカップリング反応を行ってもよく、マイクロ波の条件でカップリング反応を行ってもよい。
【0120】
前記カップリング反応が通常の加熱形態である場合、前記カップリング反応の温度は30~130℃でもよいが、好ましくは80~120℃である。前記カップリング反応の時間は2~16hでもよく、例えば12hである。
【0121】
前記カップリング反応がマイクロ波の反応である場合、前記カップリング反応の温度は50~120℃でもよい。前記カップリング反応の時間は5~16hでもよく、例えば8hであり、また例えば12hである。
【0122】
工程S3において、前記化合物VIは、好ましくは
【化33】
である。
【0123】
工程S3において、前記カップリング反応は保護ガスの存在下で行われてもよい。前記保護ガスは本分野の通常の保護ガスでもよく、例えば窒素ガスであり、また例えばアルゴンガスである。
【0124】
工程S3において、前記カップリング反応が終了した後、さらに、反応終了後の反応液に対して、抽出、水洗、濃縮及びクロマトグラフィー分離を行うという後処理工程を含んでもよい。
【0125】
また、本発明は、式IVで表される化合物を提供する。
【0126】
【化34】
【0127】
ただし、X及びXはいずれも前記の通りである。
【0128】
前記化合物IVは、好ましくは
【化35】
であり、より好ましくは
【化36】
である。
【0129】
また、本発明は、前記式IVで表される化合物の製造方法であって、方法1又は方法2を含む方法を提供する。
【0130】
方法1は、化合物IIIと「三ハロゲン化ホスホリル及び/又は三ハロゲン化リン」とを、下記式のハロゲン化反応をさせ、前記化合物IVを得る工程を含む。
【0131】
方法2は、塩基性試薬の作用下で、化合物IIIとスルホニル化試薬とを、有機溶媒において下記式の求核置換反応をさせ、前記化合物IVを得る工程を含み、前記スルホニル化試薬は
【化37】
である。
【0132】
【化38】
【0133】
ただし、R、R4a、R4b、R4c、R4d、R4e、X及びXの定義はいずれも前記の通りである。
【0134】
がハロゲンである場合、前記化合物IVの製造方法は方法1である。
【0135】

【化39】
である場合、前記化合物IVの製造方法は方法2である。
【0136】
上記反応において、方法1及び方法2の条件はいずれも前記の通りである。
【0137】
また、本発明は、式IIIで表される化合物を提供する。
【0138】
【化40】
【0139】
ただし、XはCl又はBrである。
【0140】
前記化合物IIIは、好ましくは
【化41】
である。
【0141】
また、本発明は、前記化合物IIIの製造方法であって、有機溶媒において、化合物IIと化合物Aとを、下記式の求核置換反応をさせ、前記化合物IIIを得る工程を含む方法を提供する。
【0142】
【化42】
【0143】
ただし、XはCl又はBrである。
【0144】
ここで、前記の求核置換反応の条件はいずれも前記の通りである。
【0145】
また、本発明は、式IIで表される化合物を提供する。
【0146】
【化43】
【0147】
また、本発明は、式V-2で表される化合物を提供する。
【0148】
【化44】
【0149】
ただし、R及びRは独立にH又は
【化45】
である。
【0150】
前記化合物V-2は、好ましくは
【化46】
である。
【0151】
上記化合物の製造方法は任意に組み合わせることにより、式III、IV、V又はYY-20394で表される化合物の合成スキームを得ることができる(例えばI→II→III→IV→V→VI→YY-20394、II→III→IV→V→VI→YY-20394、I→II→III→IV→V、I→II→III→IV、II→III→IV、I→II→IIIなど)。
【0152】
本発明において、使用される略号は以下の通りである。
THF=テトラヒドロフラン;t-Bu=t-ブチル基;DCM=ジクロロメタン;NCS=N-クロロスクシンイミド;Ts=p-トルエンスルホニル基;Ns=p-ニトロトルエンスルホニル基;Ms=メタンスルホニル基;Tf=トリフルオロメタンスルホニル基;Ac=アセチル基;DIPEA=ジイソプロピルエチルアミン;DMF=N,N-ジメチルホルムアミド;DMAC=N,N-ジメチルアセトアミド;DMSO=ジメチルスルホキシド;dba=ジベンジリデンアセトン;dppf=1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン;x-Phos=2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル;s-Phos=2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニル;Ru-Phos=2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジイソプロポキシ-1,1’-ビフェニル;g=グラム;mg=ミリグラム;mL=ミリリットル;mol=モル;mmol=ミリモル;h=時間;LCMS=液相-質量分析;MS=質量分析;ESI=エレクトロスプレーイオン化;m/z=質量電荷比;H NMR=核磁気共鳴;MHz=メガヘルツ;brs=ブロードシングレット;d=ダブレット;t=トリプレット;q=カルテット;m=マルチプレット;dd=ダブルダブレット;J=結合定数;N=モル/リットル。
【0153】
本発明において、「室温」とは環境の温度で、10℃~35℃である。
【0154】
本発明において、「一晩」とは8~16時間である。
【0155】
本発明において、「水溶性有機溶媒」とは溶媒分子に、通常、極性基、例えば-OH、-SOH、-NH、-NHR、-COOH、-CN、-CO-、-CONH-基が含まれ、かつ炭素鎖が8個の炭素以下である。アセトン、アセトニトリル及びN,N-ジメチルホルムアミドはいずれもよく見られる「水溶性有機溶媒」である。
【0156】
本分野の常識に反しないことを前提に、上記各好適な条件を任意に組み合わせれば、本発明の各好適な実例が得られる。
【0157】
本発明で用いられる試薬及び原料はいずれも市販品として得られる。
【0158】
本発明の積極的な進歩効果は、本発明のモルホリノキナゾリン化合物の製造方法が、キナゾリン環の4位にスズキ反応が生じる選択性を向上させ、反応における副産物が多いという問題を解決し、収率が高く、かつ操作が簡便で、反応条件が穏やかで、産業化生産に適することにある。
【発明を実施するための形態】
【0159】
以下、実施例の形によってさらに本発明を説明するが、これによって本発明を記載された実施例の範囲内に限定するわけではない。以下の実施例において、具体的な条件が記載されていない実験方法は、通常の方法及び条件、或いは商品の説明書に従って選ばれる。
【0160】
実施例1 化合物I-11の合成
【化47】
【0161】
2-アミノ-5-フルオロ安息香酸(100.2g,0.65mol)をDMF(600mL)に溶解させ、室温で撹拌しながら、NCS(104.5g,0.78mol)を分けて入れた。添加終了後、室温で一晩撹拌した。反応液に水(1200mL)を入れると、固体が析出した。ろ過し、ケーキを水洗し、乾燥し、ジクロロメタンでスラリー撹拌を行い、ろ過し、乾燥し、化合物I-11-1(85.1g、収率70%)を得たが、灰白色の固体であった。LC-MS(ESI):m/z=190.0[M+H]
【0162】
反応瓶に化合物I-11-1(25.0g,0.13mol)、尿素(119.1g,1.98mol)を入れ、180℃に昇温させて8h反応させた。反応液を約100℃に冷却し、水を入れて2hスラリー撹拌を行った。ろ過し、ケーキをさらに水で2回スラリー撹拌を行い、ろ過し、乾燥し、化合物I-11-2(26.7g、収率94%)を得たが、褐色の固体で、そのまま次の工程の反応に使用した。LC-MS(ESI):m/z=215.0[M+H]
【0163】
反応瓶に化合物I-11-2(20.0g,0.093mol)、塩化ホスホリル(160g,1.04mol)を入れ、50℃以下で、DIPEA(24.0g,0.19mol)を滴下した。滴下終了後、110℃に昇温させて2h反応させた。反応液を濃縮し、トルエンで2回処理した。さらに少量のトルエンを入れ、ゆっくり水に滴下し、温度が40℃未満になるように制御した。滴下終了後、続いて0.5h撹拌し、層分離し、水層をトルエンで抽出した。トルエン相を合併し、飽和塩化ナトリウムで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮し、n-ヘプタンでスラリー撹拌を行い、ろ過し、乾燥し、化合物I-11(19.9g、収率85%)を得たが、オフホワイト色の固体であった。LC-MS(ESI):m/z=251.1[M+H]
【0164】
実施例2 化合物II-11の合成
【化48】
【0165】
室温において、化合物I-11(5g,0.020mol)のアセトニトリル(70mL)溶液に水酸化ナトリウム溶液(2N,40mL)を入れた。添加終了後、反応液を45℃で一晩撹拌した。反応液を室温に冷却し、さらに氷水浴において、ゆっくり塩酸溶液(2N,42mL)を入れ、pH値を5~6に調整し、固体が析出した。ろ過し、ケーキを水洗し、乾燥して化合物II-11(4.1g、収率89%)を得たが、オフホワイト色の固体であった。LC-MS(ESI):m/z=232.9[M+H]HNMR(400MHz,DMSO-d):δ13.63(brs,1H),8.06(dd,1H,J=2.8,8.4Hz),7.78(dd,1H,J=2.8,8.0Hz).
【0166】
実施例3 化合物III-11の合成
【化49】
【0167】
室温において、化合物II-11(3g,0.013mol)のDMAC(30mL)溶液に、モルホリン(2.7g,0.031mol)を入れた。添加終了後、反応液を85℃で2h撹拌した。反応液を室温に冷却し、さらに氷水浴において、水(70mL)を入れ、固体が析出した。ろ過し、ケーキを水洗し、乾燥して化合物III-11(3.2g、収率88%)を得たが、浅黄色の固体であった。LC-MS(ESI):m/z=284.1[M+H]H NMR(400MHz,DMSO-d):δ11.69(brs,1H),7.81(dd,J=8.4Hz,2.8Hz 1H),7.59(dd,J=8.0Hz,2.8Hz 1H),3.55-3.80(m,8H).
【0168】
実施例4 化合物IV-11の合成
【化50】
【0169】
室温において、化合物III-11(36.0g,0.13mol)のアセトニトリル(360mL)に、それぞれ炭酸カリウム(24g,0.17mol)、p-トルエンスルホニルクロリド(24.0g,0.13mol)を入れた。添加終了後、80℃で2h撹拌した。反応液を室温に冷却し、さらに氷水浴において、反応液に水を滴下し、温度が25℃未満になるように制御した。滴下終了後、続いて1h撹拌した。ろ過し、ケーキを水洗し、乾燥し、化合物IV-11(48g、収率86%)を得たが、黄色の固体であった。LC-MS(ESI):m/z=438.0[M+H]
【0170】
実施例5 化合物V-11の合成
【化51】
【0171】
反応瓶にそれぞれ化合物IV-11(157.0g,0.36mol)、化合物S-11(81.5g,0.33mol)、炭酸ナトリウム(345.5g,3.26mol)、トルエン(3.5L)、イソプロパノール(1.2L)、水(1.6L)を入れ、窒素ガスで3回置換し、窒素ガスの保護下で、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(18.8g,0.016mol)を入れた。添加終了後、反応液を35~40℃で1h撹拌した。反応液を室温に冷却し、層分離し、水相をトルエンで抽出した。トルエン相を合併し、ある程度まで濃縮し、n-ヘプタンを入れ、ろ過し、シリカゲルカラムによって精製、化合物V-11(115g、収率91%)を得た、黄色の固体であった。H NMR(400MHz,CDCl):δ7.94(d,J=2.8Hz,1H),7.63(dd,J=8.0Hz,2.8Hz,1H),7.55(dd,J=9.2Hz,2.8Hz,1H),7.24-7.27(m,1H),4.11(s,3H),3.90-4.06(m,6H),3.84(t,J=5.2Hz,4H).
【0172】
実施例6 化合物VI-11の合成
【化52】
【0173】
氷塩浴において、化合物V-11(110g,0.28mol)のピリジン(550g,6.59mol)溶媒に、メタンスルホニルクロリド(63.8g,0.56mol)を滴下した。滴下終了後、完全に反応するまで反応液を室温で撹拌した。反応液に慎重に水(1100mL)を入れ、ろ過し、ケーキを水洗し、乾燥し、ジクロロメタンでスラリー撹拌を行い、ろ過し、乾燥して化合物VI-11(105.0g、収率80%)を得たが、黄色の固体であった。LC-MS(ESI):m/z=468.1[M+H]H NMR(400MHz,DMSO-d):δ9.53(s,1H),8.43(d,J=2.4Hz,1H),8.07(dd,J=11.2Hz,2.4Hz;1H),8.03(d,J=2.4Hz,1H),7.57(dd,J=9.2Hz,2.4Hz;1H),4.04(s,3H),3.92-3.86(m,4H),3.74-3.72(m,4H),.3.12(s,3H).
【0174】
実施例7 化合物VI-11の合成
【化53】
【0175】
0~10℃において、化合物S-11(2.0g,8mmol)のピリジン(20mL)溶液にゆっくりメタンスルホニルクロリド(1.24mL,16.0mmol)を滴下し、滴下終了後、反応液を室温で一晩撹拌した。ピリジンを濃縮し、残留物に飽和炭酸水素ナトリウム(20mL)及びジクロロメタン(40mL)を入れ、有機相が分離し、水相をジクロロメタンで抽出した。有機相を合併し、飽和塩化ナトリウムで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮し、化合物T-11(4.29g、収率100%)を得たが、黄色の油状物であった。LC-MS(ESI):m/z=329.2[M+H]
【0176】
反応瓶にそれぞれ化合物T-11[352mg,0.65mmol(純度61%で計算する)]、化合物IV-11(281mg,0.64mmol)、炭酸ナトリウム(0.102g,0.96mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(74mg,0.064mmol)、トルエン/イソプロパノール/水混合液(体積比4/1/1、8mL)を入れ、添加終了後、反応液を窒素ガスで置換し、60℃で4h撹拌した。反応液を濃縮し、残留物をジクロロメタンで抽出し、有機相を飽和塩化ナトリウムで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮し、ジクロロメタンでスラリー撹拌を行い、ろ過し、化合物VI-11(170mg、収率53%)を得たが、黄色の固体であった。LC-MS(ESI):m/z=468.1[M+H]
【0177】
実施例8 化合物VII-11の合成
【化54】
【0178】
反応瓶にそれぞれ化合物P-11(100g,0.70mol)、化合物Q-21(127.5g,0.63mol)、アセトニトリル(100g)、ヨウ化カリウム(6g,0.036mol)を入れた。添加終了後、反応液を80℃で一晩撹拌した。反応液を濃縮し、アセトニトリルで加熱しながらスラリー撹拌を行い、ろ過し、乾燥し、化合物VII-11(140.0g、98%)を得たが、オフホワイト色の固体であった。H NMR(400MHz,DO):δ3.51(d,J=12.8Hz,2H),2.80(t,J=12.8Hz,2H),2.05-2.22(m,2H),1.90(d,J=13.2Hz,2H),1.40-1.62(m,3H),1.12(s,6H).
【0179】
実施例9 化合物YY-20394の合成
【化55】
【0180】
室温において、反応瓶にそれぞれ化合物VI-11(35g,0.075mol)、化合物VII-11(34g,0.15mol)、炭酸セシウム(244g,0.75)、x-Phos(3.55g,0.0074mol)、THFと水の混合液(10/1 v/v、385mL)、酢酸パラジウム(0.84g,0.0037mol)を入れた。混合物を窒素ガスで3回置換し、80℃で一晩撹拌した。反応液を室温に冷却し、濃縮してTHFを除去し、残留物をDCMで抽出した。有機相を飽和塩化ナトリウムで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮し、シリカゲルカラムによって精製し、エタノールでスラリー撹拌を行い、ろ過し、乾燥し、化合物YY-20394(26g、収率59%)を得たが、黄色の固体であった。LC-MS(ESI):m/z=589.3[M+H]H NMR(500MHz,DMSO-d)δ9.53(brs,1H),8.35(d,J=2.0Hz,1H),8.01(d,J=2.4Hz,1H),7.61(dd,J=9.6Hz,2.4Hz,1H),7.39(dd,J=9.6Hz,2.4Hz,1H),4.05(s,4H),3.87(s,2H),3.82-3.81(m,4H),3.73-3.72(m,4H),3.13(s,3H),2.94(d,J=10.8Hz,1H),2.04-1.98(m,2H),1.66(d,J=11.6Hz,2H),1.36-1.64(m,2H),1.21-1.18(m,1H),1.21-1.18(m,1H),1.04(s,6H).
【0181】
実施例10 化合物V-11の合成
【化56】
【0182】
氷水浴において、化合物III-11(1.0g,3.52mmol)のアセトニトリル(10mL)溶液に、メタンスルホニルクロリド(0.55mL,7.06mmol)を滴下し、さらにDIPEA(1.33mL,7.76mmol)を滴下した。滴下終了後、混合物を室温で2h撹拌した。反応液に氷水(15mL)を入れて10min撹拌し、ろ過し、ケーキを水洗し、乾燥して化合物IV-12(3.01g、100%)を得た。
【0183】
室温において、反応瓶にそれぞれ化合物IV-12(3.01g,3.52mmol)、化合物S-11(0.88g,3.52mmol)、炭酸ナトリウム(0.56g,5.30mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(408mg,0.353mmol)、トルエン/イソプロパノール/水混合液(体積比4/1/1、15mL)を入れ、添加終了後、反応液を窒素ガスで置換し、30℃で2h、45℃で一晩撹拌した。反応液を濃縮し、残留物にジクロロメタン(40mL)及び水(20mL)を入れ、ジクロロメタン相が分離し、水相をジクロロメタンで抽出した。有機相を合併し、飽和塩化ナトリウムで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮し、シリカゲルカラムによって精製して化合物V-11(1.02g、収率74%)を得たが、黄色の固体であった。LC-MS(ESI):m/z=390.2[M+H]
【0184】
実施例11 化合物V-11の合成
【化57】
【0185】
氷水浴において、化合物III-11(0.28g,0.99mmol)のジクロロメタン(10 mL)溶液に、DIPEA(0.26g,2.0mmol)を入れ、さらにトリフルオロメタンスルホン酸無水物(0.56g,2.0mmmol)を滴下した。滴下終了後、混合物を氷水浴において2h撹拌した。反応液に氷水(20mL)を入れ、ジクロロメタン(20×3mL)で抽出し、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮し、化合物IV-13(0.18g、収率44%)を得たが、褐色の固体であった。LC-MS(ESI):m/z=416.1[M+H]
【0186】
室温において、反応瓶にそれぞれ化合物IV-13(0.18g,0.43mmol)、化合物S11(0.2g,0.8mmol)、炭酸ナトリウム(0.1g,1.0mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(33mg,0.028mmol)、トルエン/イソプロパノール/水混合液(体積比4/1/1、6mL)を入れ、添加終了後、反応液を窒素ガスで置換し、70℃で6h撹拌した。反応液を濃縮し、酢酸エチル(8mL)を入れ、ろ過し、ろ液を濃縮し、分取TLCによって精製し(石油エーテル/酢酸エチル=1/1)、化合物V-11(0.09g、収率53%)を得た。LC-MS(ESI):m/z=390.1[M+H]
【0187】
実施例12 化合物V-11の合成
【化58】
【0188】
化合物III-11(1.0g,3.52mmol)の塩化ホスホリル(10mL)混合液を105℃で3h撹拌した。反応液を濃縮し、トルエンで2回処理し、残留物に氷水(15mL)を入れ、10min撹拌した後、ジクロロメタンで抽出した。有機相を飽和塩化ナトリウムで洗浄し、濃縮し、化合物IV-14(1.13g、収率100%)を得たが、黄色の固体であった。
【0189】
室温において、反応瓶にそれぞれ化合物IV-14(1.13g,3.52mmol)、化合物S-11(0.97g,3.88mmol)、炭酸ナトリウム(0.66g,6.23mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(408mg,0.353mmol)、トルエン/イソプロパノール/水混合液(体積比4/1/1、60mL)を入れ、添加終了後、反応液を窒素ガスで置換し、80℃で一晩撹拌した。反応液を濃縮し、残留物にジクロロメタン(50mL)及び水(20mL)を入れ、ジクロロメタン相を分離し、水相をジクロロメタンで抽出した。有機相を合併し、飽和塩化ナトリウムで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮し、シリカゲルカラムによって精製して化合物V-11(1.21g、収率88%)を得たが、黄色の固体であった。LC-MS(ESI):m/z=390.2[M+H]
【0190】
実施例13 化合物VI-11の合成
【化59】
【0191】
室温において、反応瓶に化合物T-11(520mg,0.97mmol)(純度61%で計算し、実施例7と同様である)、フッ化水素カリウム(494mg,6.34mmol)、1,4-ジオキサン/水(体積比10/1、4mL)を入れ、添加終了後、混合物を室温で1h撹拌した。反応液をろ過し、ケーキを1,4-ジオキサンで洗浄し、ろ液を合併し、濃縮し、乾燥して化合物T-31(480mg、収率100%)を得たが、浅黄色の油状物であった。
【0192】
反応瓶にそれぞれ化合物T-31(480mg,0.97mmol)、化合物IV-11(395mg,0.90mmol)、炭酸セシウム(340mg,1.35mmol)、酢酸パラジウム(10mg,0.045mmol)、x-Phos(43mg,0.09mmol)、THF/HO(体積比1/1、8mL)を入れ、混合物を窒素ガスで置換し、60℃で2h撹拌した。反応液を濃縮し、残留物をジクロロメタンで抽出し、有機相を飽和塩化ナトリウムで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮し、ジクロロメタンでスラリー撹拌を行い、ろ過し、乾燥して化合物VI-11(280mg、収率62%)を得た。LC-MS(ESI):m/z=468.1[M+H]
【0193】
実施例14 化合物V-11の合成
【化60】
【0194】
化合物S-11(1.25g,5.00mmol)、過ヨウ素酸ナトリウム(3.2g,15.00mmol)、酢酸アンモニウム(1.1g,15.00mmol)をそれぞれ反応瓶に入れ、さらにそれぞれアセトン(40 mL)、水(10mL)を入れ、80℃に加熱して撹拌しながら12時間反応させた。反応終了後、反応液を濃縮し、水(30mL)を入れ、EA(50mL×3)で抽出した。有機相を濃縮し、化合物S-21(0.66g、収率78%)を得た。LC-MS(ESI):m/z=169.3[M+H]
【0195】
反応瓶に化合物IV-11(1.2g,2.74mmol)、化合物S-21(0.51g,3.04mmol)、炭酸ナトリウム(0.4g,3.77mmol)、トルエン(16mL)、イソプロパノール(4mL)及び水(4mL)を入れた。撹拌し、窒素ガスで置換し、反応瓶にテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.1g,0.09mmol)を入れ、さらに窒素ガスで置換し、60℃に昇温させて12h反応させた。反応液を濃縮し、水(60mL)を入れ、ろ過し、乾燥し、粗製物を0.76g得た。(石油エーテル/酢酸エチル=1/1)(40mL)でスラリー撹拌を行い、カラムクロマトグラフィーによって精製して(石油エーテル/酢酸エチル=1/1)化合物V-11(0.46g、43%)を得た。LC-MS(ESI):m/z=390.1[M+H]
【0196】
実施例15 化合物VI-11の合成
【化61】
【0197】
化合物T-11(0.74g,2.26mmol)のアセトン(15mL)溶液に過ヨウ素酸ナトリウム(1.45g,6.78mmol)及び酢酸アンモニウム(0.87g,11.3mmol)の水(5mL)溶液を入れ、反応液を80℃に加熱して12時間反応させた。反応終了後、濃縮して溶媒を除去し、希塩酸(2N)を入れ、水を入れ、酢酸エチルで抽出した。有機相を濃縮し、化合物T-21(0.54g、収率96%)を得た。
【0198】
反応瓶に化合物IV-11(0.5g,1.14mmol)、化合物T-21(423mg,1.72mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(132mg,0.114mmol)、炭酸ナトリウム(363mg,3.42mmol)、トルエン(16mL)、イソプロパノール(4mL)及び水(4mL)を入れた。反応液を窒素ガスで置換し、60℃に昇温させて一晩反応させた。回転乾燥し、水を入れ、酢酸エチルで抽出した。有機相をさらに水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮した後、粗製品をカラムクロマトグラフィー(DCM:MeOH=50:1~20:1)によって精製して化合物VI-11(290mg、収率54%)を得た。LC-MS(ESI):m/z=468.1[M+H]
【0199】
実施例16 化合物YY-20394の合成
【化62】
【0200】
化合物S-11(1g,4.00mmol)のジクロロメタン(10mL)溶液にトリエチルアミン(1.2g,11.85mmol)を入れ、氷水浴において、反応液にゆっくりMsCl(0.92g,8.03mmol)を入れた。添加終了後、反応液を室温の条件で一晩撹拌した。反応液を濃縮して乾燥し、水を入れ、酢酸エチルで抽出し、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮し、化合物T-12(1.6g、収率98%)を得た。
【0201】
反応瓶に化合物IV-11(500mg,1.14mmol)、化合物T-12(697mg,1.72mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(132mg,0.114mmol)、炭酸ナトリウム(363mg,3.42mmol)、トルエン(16mL)、イソプロパノール(4mL)及び水(4mL)を入れた。反応液を窒素ガスで置換した後、60℃に昇温させて一晩反応させた。反応液を濃縮して乾燥し、水を入れ、酢酸エチルで抽出し、有機相をさらに水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮した後、粗製品をカラムクロマトグラフィー(PE:EA=1:1)によって精製して化合物VI-12(350mg、収率56%)を得た。LC-MS(ESI):m/z=546.1[M+H]
【0202】
10mLマイクロ波管に化合物VI-12(93mg,0.17mmol)、化合物VII-11(192mg,0.85mmol)、酢酸パラジウム(4mg,0.017mmol)、x-phos(16mg,0.034mmol)、炭酸セシウム(166mg,0.51mmol)、THF(1.4mL)及び水(0.35mL)を入れた。マイクロ波管を窒素ガスで置換し、80℃に昇温させて一晩反応させた。反応液を濃縮して乾燥し、水を入れ、酢酸エチルで抽出した。有機相を水洗し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮し、粗製品を分取TLCによって精製して(DCM:MeOH=30:1)化合物YY-20394(80mg、収率80%)を得たが、黄色の固体であった。LC-MS(ESI):m/z=589.3[M+H]
【0203】
実施例17 化合物I-21の合成
【化63】
【0204】
2-アミノ-5-フルオロ安息香酸(10g,64.5mmol)をDMF(50mL)に溶解させ、室温で撹拌しながら、NBS(12.6g,70.9mmol)を分けて入れた。添加終了後、室温で一晩撹拌した。反応液に水(120mL)を入れ、固体が析出し、ろ過し、ケーキを水洗し、乾燥し、化合物I-21-1(15g、100%)を得たが黄色の固体であった。LC-MS(ESI):m/z=234.1[M+H]+.
【0205】
反応瓶に化合物I-21-1(15g,64.1mmol)、尿素(38.5g,641mmol)を入れ、180℃に昇温させて5h反応させた。反応液を約100℃に冷却し、水を入れ、2hスラリー撹拌を行った。ろ過し、ケーキをさらに水で2回スラリー撹拌を行い、ろ過し、乾燥し、化合物I-21-2(16g、96%)を得たが、黄色の固体で、そのまま次の工程の反応に使用した。LC-MS(ESI):m/z=259.0[M+H]
【0206】
反応瓶に化合物I-21-2(16g,61.8mmol)、塩化ホスホリル(95g,618mmol)を入れ、室温の条件において、DIPEA(16g,123.6mmol)を滴下した。滴下終了後、110℃に昇温させて2h反応させた。反応液を濃縮し、濃縮をゆっくり氷水に注ぎ、10min撹拌し、ろ過し、ケーキを乾燥し、化合物I-21(19g、100%)を得た。
【0207】
実施例18 化合物II-21の合成
【化64】
【0208】
室温において、化合物I-21(19g,64.2mol)のアセトニトリル(240mL)溶液に水酸化ナトリウム溶液(2N,128mL)を入れた。添加終了後、反応液を45℃で一晩撹拌し、室温に冷却し、さらに氷水浴において、ゆっくり塩酸溶液(2N)を入れ、pH値を5~6に調整し、固体が析出し、ろ過し、ケーキを水洗し、乾燥し、化合物II-21(10.3g、58%)を得た。LC-MS(ESI):m/z=277.0[M+H]
【0209】
実施例19 化合物III-21の合成
【化65】
【0210】
室温において、化合物II-21(10.3g,37.1mmol)のDMAC(60mL)溶液に、モルホリン(8.1g,92.8mmol)を入れた。添加終了後、反応液を85℃で2h撹拌した。反応液を室温に冷却し、さらに氷水浴において、水(70mL)を入れ、固体が析出した。ろ過し、ケーキを乾燥し、化合物III-21(8g、66%)を得た。LC-MS(ESI):m/z=328.1[M+H]
【0211】
実施例20 化合物IV-21の合成
【化66】
【0212】
室温において、化合物III-21(0.5g,1.52mol)のアセトニトリル(10mL)に、それぞれ炭酸カリウム(274mg,1.98mmol)及びp-トルエンスルホニルクロリド(290mg,1.52mol)を入れた。添加終了後、80℃で2h撹拌した。反応液を室温に冷却し、さらに氷水浴において、反応液に水を滴下し、温度が25℃未満になるように制御した。滴下終了後、続いて1h撹拌した。ろ過し、ケーキを水洗し、乾燥し、化合物IV-21(650mg、88%)を得たが、黄色の固体であった。LC-MS(ESI):m/z=482.1[M+H]
【0213】
実施例21 化合物V-21の合成
【化67】
【0214】
反応瓶に化合物IV-21(200mg,0.41mmol)、化合物S-11(104mg,0.41mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(47mg,0.041mmol)、炭酸ナトリウム(130mg,1.23mmol)、トルエン(7.5mL)、イソプロパノール(2.5mL)及び水(3mL)を入れ、反応液を窒素ガスで置換した後、40℃に昇温させて撹拌しながら4時間反応させた。回転乾燥し、水を入れ、酢酸エチルで抽出し、有機相をさらに水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮した後、粗製品をカラムクロマトグラフィー(PE:EA=3:1)によって精製して化合物V-21(140mg、78%)を得たが、黄色の固体であった。LC-MS(ESI):m/z=434.1[M+H]
【0215】
実施例22 化合物VI-21の合成
【化68】
【0216】
氷浴の条件において化合物V-21(140mg,0.32mmol)のピリジン(5mL)溶液にMsCl(37mg,0.32mmol)を入れた。反応液を室温の条件において一晩撹拌し、回転乾燥し、水を入れ、酢酸エチルで抽出し、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、回転乾燥し、化合物VI-21(160mg、97%)を得たが、黄色の固体であった。LC-MS(ESI):m/z=512.1[M+H]
【0217】
実施例23 化合物YY-20394の合成
【化69】
【0218】
10mLマイクロ波管に化合物VI-21(140mg,0.27mmol)、化合物VII-11(308mg,1.37mmol)、酢酸パラジウム(6mg,0.027mmol)、x-phos(26mg,0.054mmol)、炭酸セシウム(264mg,0.81mmol)、THF(2mL)及び水(0.5mL)を入れ、マイクロ波管を窒素ガスで置換した。80℃に昇温させて一晩反応させた。反応液を回転乾燥し、水を入れ、酢酸エチルで抽出し、有機相をさらに水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮し、粗製品を分取TLCによって精製して(DCM:MeOH=30:1)化合物YY-20394(80mg、50%)を得たが、黄色の固体であった。LC-MS(ESI):m/z=589.4[M+H]
【0219】
実施例24 化合物V-11の合成
【化70】
【0220】
反応瓶にそれぞれ化合物IV-11(159mg,0.36mmol,1当量)、化合物S-11(100mg,0.40mmol,1.1当量)、炭酸ナトリウム(385mg,3.63mmol,10当量)、トルエン(4.3mL)、イソプロパノール(1.5mL)及び水(2mL)を入れ、窒素ガスで3回置換し、窒素ガスの保護下で、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(21mg,0.018mmol,0.05当量)を入れた。添加終了後、反応液を35~40℃で1h撹拌し、反応液をLC-MSによって検出したところ、反応液において、化合物IV-11がすでに完全に転換し、化合物V-11の含有量が72.59%(波長214nm)、99.03%(波長254nm)であった。反応終了後、反応液を回転乾燥し、水を入れ、酢酸エチルで(25mL)抽出し、有機相を回転乾燥し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(PE:EA=2:1)によって精製して化合物V-11を得たが、黄色の固体で、142mgで、収率が92%で、純度が85.41%(波長214nm)、91.71%(波長254nm)であった(当該収率はLCMSグラフの波長254nmにおける純度91.71%で換算された収率である)。
【0221】
比較例1
【化71】
【0222】
実施例24における化合物IV-11を化合物I-11(91mg,0.36mmol,1当量)に変更して実施例24の条件でスズキ反応を行い、反応液を35~40℃で1h撹拌し、反応液をLC-MSによって検出したところ、反応液における化合物V-12の含有量が28.64%(波長214nm)、35.39%(波長254nm)で、さらに大量に反応物I-11及び化合物S-11が存在した。反応液を35~40℃で続いて反応させ、一晩撹拌し、反応液をLC-MSによって検出したところ、反応液において、さらに一部の反応物I-11及び化合物S-11が存在し、化合物V-12の含有量が35.28%(波長214nm)、65.04%(波長254nm)であった。反応終了後、反応液を回転乾燥し、水を入れ、酢酸エチル(25mL)で抽出し、有機相を回転乾燥し、カラムクロマトグラフィー(PE:EA=4:1)によって精製して化合物V-12を得たが、黄色の固体で、73mgで、収率が50%で、純度が84.62%(波長214nm)、96.08%(波長254nm)であった(当該収率はLCMSグラフの波長254nmにおける純度96.08%で換算された収率である)。
【0223】
本比較例では、化合物I-11と化合物IV-11の同様の条件におけるスズキ反応を比較し、その反応の結果を表1にまとめた。
【0224】
【表1】
【0225】
表1における結果から、同様の条件において、キノリン環の2位の置換基の種類はスズキ反応の速度、進行、効果及び収率に影響することが分かる。基質IV-11は基質I-11(すなわち、特許WO2015055071A1に開示されたキノリン環における2位が塩素の化合物)よりも反応時間が1時間に短縮し、収率が42%向上することで、生産効率を向上させ、生産コストを低下させ、これは既存技術に基づいて予想できない。本願の発明者は、試みとスクリーニングをし続けたところ、創造的に基質IV-11でスズキ反応を行う場合、当該反応は短時間で高い収率が得られ、かつキノリン環の2位における副反応の発生を避け、後処理により有利であることを見出した。
【0226】
以上、本発明の具体的な実施形態を記述したが、当業者にとって、これらは例示の説明だけで、本発明の原理と実質に反しないという前提下において、これらの実施形態に対して様々な変更や修正をすることができる。そのため、本発明の保護範囲は添付の請求の範囲によって限定される。