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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-10
(45)【発行日】2022-03-18
(54)【発明の名称】二重容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 23/08 20060101AFI20220311BHJP
   B65D 1/02 20060101ALI20220311BHJP
   B65D 47/32 20060101ALI20220311BHJP
   B65D 55/08 20060101ALI20220311BHJP
【FI】
B65D23/08 B ZAB
B65D1/02 111
B65D47/32 100
B65D55/08 110
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017254311
(22)【出願日】2017-12-28
(65)【公開番号】P2019119470
(43)【公開日】2019-07-22
【審査請求日】2020-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126398
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】樽野 真輔
(72)【発明者】
【氏名】室屋 洋輔
【審査官】米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-204036(JP,A)
【文献】特開2003-040357(JP,A)
【文献】特開2017-109748(JP,A)
【文献】特開2017-218168(JP,A)
【文献】特開2007-191190(JP,A)
【文献】実開昭62-115370(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/02
B65D 23/08
B65D 47/32
B65D 55/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外層と内層とを有し、内層に収容される内容物の減少に伴って前記内層が収縮する二重容器であって、
口部にキャップが装着されるとともに、外層には外層と内層の間に外気を導入するための外気導入孔が形成されており、
容器本体の外層に凹部が形成され、ここに大気導入孔が穿設されるとともに、この凹部と連通して上方に向かって延在する溝部が設けられており、
前記キャップの外周面にはキャップの下端から少なくとも高さ方向の中途部に至る凹部または凸部の少なくとも一方が形成され、
少なくとも前記外気導入孔を覆って被覆フィルムが設けられ、前記被覆フィルムはキャップの前記凹部または凸部の高さ方向の中途位置まで被覆されており、
前記キャップの付け根と容器本体の肩部と前記被覆フィルムとの間には隙間が形成されており、前記キャップにおいて前記被覆フィルムとの間に形成される隙間は、その下端部において前記肩部の隙間から前記溝部へと連通していることを特徴とする二重容器。
【請求項2】
前記凹部または凸部は、ローレット加工によりキャップの全周に亘り形成されていることを特徴とする請求項1記載の二重容器。
【請求項3】
前記凹部または凸部は、キャップの下端から少なくとも高さ方向の中途部に至る溝部が、前記外気導入孔の形成位置に対応して形成されていることを特徴とする請求項1記載の二重容器。
【請求項4】
前記被覆フィルムはシュリンクフィルムであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の二重容器。
【請求項5】
前記被覆フィルムは、キャップの外周面の略全体を被覆しており、前記凹部または凸部の高さ方向の中途位置に切断容易線が形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の二重容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物の吐出に伴って内層が収縮する二重容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、外層容器と内袋とを有し且つ内容物の減少に伴って内袋が収縮する容器本体と、外層容器と内袋の間の中間空間と容器本体の外部空間との間の空気の出入りを調節する逆止弁とを備える二重容器(いわゆる積層剥離容器)が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示される積層剥離容器では、外殻の胴部の内側に弁が設けられている。
【0003】
この種の二重容器では、容器の内部(内容物を収容する内袋の内部)に空気が入り込むことを抑制することができ、内容物の変質等を最小限に抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平4-267727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、種々の容器に内容物を充填して販売する場合、シュリンクフィルム等で覆って消費者に提供することが広く行われている。積層剥離容器も例外ではなく、商品名や各種情報等が印刷されたシュリンクイフィルムで被覆した状態で市場に供給されている。
【0006】
しかしながら、容器本体の収容部に外気導入孔が設けられている二重容器(積層剥離容器)では、収容部の外周に密着するようにシュリンクフィルムを装着すると、外気導入孔が塞がれてしまうために、外殻と内袋の間に外気がスムーズに導入されずに、外殻の復元性が悪化するという問題がある。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、容器本体にシュリンクフィルム等の被覆フィルムを装着した場合でも外気の導入が円滑に行われ、外層(外殻)の復元性に優れた二重容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述の目的を達成するために、本発明の二重容器は、外層と内層とを有し、内層に収容される内容物の減少に伴って前記内層が収縮する二重容器であって、口部にキャップが装着されるとともに、外層には外層と内層の間に外気を導入するための外気導入孔が形成されており、容器本体の外層に凹部が形成され、ここに大気導入孔が穿設されるとともに、この凹部と連通して上方に向かって延在する溝部が設けられており、前記キャップの外周面にはキャップの下端から少なくとも高さ方向の中途部に至る凹部または凸部の少なくとも一方が形成され、少なくとも前記外気導入孔を覆って被覆フィルムが設けられ、前記被覆フィルムはキャップの前記凹部または凸部の高さ方向の中途位置まで被覆されており、前記キャップの付け根と容器本体の肩部と前記被覆フィルムとの間には隙間が形成されており、前記キャップにおいて前記被覆フィルムとの間に形成される隙間は、その下端部において前記肩部の隙間から前記溝部へと連通していることを特徴とする。
【0009】
外周面に凹部や凸部が形成されたキャップの周囲を被覆フィルムで覆った場合、被覆フィルムが凹凸形状に完全に倣った状態で被覆されることはなく、被覆フィルムとキャップの間に隙間が形成される。また、被覆フィルムをキャップの凹部または凸部の高さ方向の中途位置まで被覆するようにすれば、前記隙間は被覆フィルムが途切れたところで開放される。
【0010】
したがって、前記構成を採用することで、前記被覆フィルムの隙間により空気導入孔への空気の導入が円滑に行われる。その結果、外層(外殻)も速やかに元の形状に復元される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、容器本体にシュリンクフィルム等の被覆フィルムを装着した場合でも外気の導入が円滑に行われ、外層(外殻)の復元性に優れた二重容器を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】二重容器の一例を示す図であり、(a)はキャップ装着前の状態、(b)はキャップ装着状態、(c)はシュリンクフィルム被覆状態をそれぞれ示す。
図2】容器本体の概略斜視図である。
図3】容器本体の要部概略断面図である。
図4】外層と内層の層構成を示す概略断面図である。
図5】キャップの外周面に形成された凹凸の一例を示す図である。
図6図5のキャップにシュリンクフィルムで被覆した状態を示す断面図である。
図7】キャップの外周面に形成された凹凸の他の例を示す図である。
図8図7のx-x線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を適用した二重容器の実施形態について図面を参照して説明する。
【0014】
本実施形態の二重容器1は、容器本体2の内袋内に内容物を充填した後、キャップ30を口部4に装着してなるものである。図1において、(a)はキャップ装着前の状態、(b)はキャップ装着状態をそれぞれ示す。
【0015】
容器本体2にキャップ30を装着した後、図1(c)に示すように、容器本体2及びキャップ30に被覆フィルムとしてシュリンクフィルム40を被せ、加熱することによってシュリンクフィルム40を収縮させて容器本体2及びキャップ30に密着させている。
【0016】
ここで、積層剥離容器では、内袋内への外気の侵入を防ぐためにキャップ30を取り外さないで使用することが想定されているが、積層剥離容器に不慣れな消費者がキャップ30を取り外そうとする場合がある。そこで、本実施形態では、容器本体2とキャップ30の両方に密着するようにシュリンクフィルム40を装着することによってキャップ30を取り外し難くしている。
【0017】
ただし、このような構成を採用した場合、容器本体2からキャップ30に至る領域がシュリンクフィルム40で覆われることになるので、外気導入孔15に外気が十分に導入されなくなるという新しい問題が発生する。
【0018】
そこで、本実施形態では、図1(c)に示すように、キャップ30の下端側の外周面に、いわゆるローレット加工により凹凸部34を形成し、前記シュリンクフィルム40が凹凸部34の中途位置(図中矢印Aで示す位置)まで被覆されるように構成している。ローレット加工による凹凸部34は、キャップ30の高さ方向に延在する溝部と突条部が交互に形成されており、前記シュリンクフィルム40で被覆した際に、キャップ30とシュリンクフィルム40の間に隙間が形成され、そこから外気を導入することができる。
【0019】
次に、本実施形態の二重容器1の各構成要素について説明すると、本実施形態の二重容器1は、図2に示すように、容器本体2を主体とするものであり、容器本体2は、内容物を収容する収容部3と、収容部3から内容物を吐出する口部4を備えている。また、容器本体2の口部4には、キャップ30が取り付けられている。
【0020】
本実施形態の二重容器1は、いわゆる積層剥離容器であり、図3に示すように、容器本体2は、収容部3及び口部4において、外殻である外層11と内袋である内層12を備えており、内容物の減少に伴って内層12が収縮する。
【0021】
外層11と内層12は、多層パリソンとしてブロー成形に供され、一体に接合された状態で成形されるが、その使用形態としては、例えば使用前に口部4の上端接合部(図示せず)を除いて予め外層11から内層12を剥離しておき、内層12が外層11に接するまで内容物を充填する。内容物を押し出すことで、円滑に内層12が収縮する。あるいは、内層12が外層11に接合された状態のままとし、内容物の排出に伴って内層12が外層11から剥離して収縮するようにしてもよい。
【0022】
容器本体2の層構成についてさらに説明すると、容器本体2は、前記の通り、外層11と内層12を備え、外層11は、復元性が高くなるように、内層12よりも肉厚に形成されている。
【0023】
外層11は、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体及びその混合物などで構成される。外層11は、単層又は複数層構成であり、その最内層と最外層の少なくとも一方に滑剤を含有することが好ましい。外層11が単層構成の場合、その単層が最内層であり且つ最外層であるので、その層に滑剤を含有させればよい。外層11が2層構成の場合、容器内面側の層が最内層となり、容器外面側の層が最外層となるので、その少なくとも一方に滑剤を含有させればよい。外層11が3層以上で構成される場合、最も容器内面側の層が最内層であり、最も容器外面側の層が最外層となる。
【0024】
外層11は、図4に示すように、最内層11bと最外層11aの間にリプロ層11cを備えることが好ましい。リプロ層とは、容器の成形時に発生するバリをリサイクルして使用した層をいう。外層11が複数層構成の場合、その最内層と最外層の両方に滑剤を含有することが好ましい。
【0025】
滑剤としては、一般に滑剤として市販されているものを使用することができ、炭化水素系、脂肪酸系、脂肪族アマイド系、金属石鹸系の何れであってもよく、2種以上を併用してもよい。炭化水素系滑剤としては、流動パラフィン、パラフィンワックス、合成ポリエチレンワックスなどが挙げられる。脂肪酸系滑剤としては、ステアリン酸やステアリルアルコールなどが挙げられる。脂肪族アマイド系滑剤としては、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドの脂肪酸アミドや、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミドのアルキレン脂肪酸アミドなどが挙げられる。金属石鹸系滑剤としては、ステアリン酸金属塩などが挙げられる。
【0026】
外層11の最内層は、内層12に接触する層であり、外層11の最内層に滑剤を含有させることによって外層11と内層12の間の剥離性を向上させることができる。一方、外層11の最外層は、ブロー成形の際に金型に接触する層であり、外層11の最外層に滑剤を含有させることによって離型性を向上させることができる。
【0027】
外層11の最内層と最外層の一方又は両方は、プロピレンと別のモノマーとの間のランダム共重合体で形成することができる。これによって、外殻である外層11の形状復元性・透明性・耐熱性を向上させることができる。
【0028】
ランダム共重合体は、プロピレン以外のモノマーの含有量が、50mol%よりも小さいものであり、5~35mol%が好ましい。この含有量は、具体的には例えば、5、10、15、20、25、30mol%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。プロピレンと共重合されるモノマーとしては、ポリプロピレンのホモポリマーに比べた場合のランダム共重合体の耐衝撃性を向上させるものであればよく、エチレンが特に好ましい。プロピレンとエチレンのランダム共重合体の場合、エチレンの含有量は、5~30mol%が好ましく、具体的には例えば、5、10、15、20、25、30mol%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。ランダム共重合体の重量平均分子量は、10~50万が好ましく、10~30万がさらに好ましい。この重量平均分子量は、具体的には例えば、10、15、20、25、30、35、40、45、50万であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0029】
また、ランダム共重合体の引張弾性率は、400~1600MPaが好ましく、1000~1600MPaが好ましい。引張弾性率がこのような範囲の場合に、形状復元性が特に良好であるからである。引張弾性率は、具体的には例えば、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600Mpaであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0030】
なお、容器が過度に硬いと、容器の使用感が悪くなるため、ランダム共重合体に、例えば、直鎖状低密度ポリエチレンなどの柔軟材料を混合して外層11を構成してもよい。ただし、ランダム共重合体に対して混合する材料は、ランダム共重合体の有効な特性を大きく阻害することのなきよう、混合物全体に対して50重量%未満となるように混合することが好ましい。例えば、ランダム共重合体と直鎖状低密度ポリエチレンとを85:15の重量割合で混合した材料により外層11を構成することができる。
【0031】
内層12は、図4に示すように、容器外面側に設けられたEVOH層12aと、EVOH層12aの容器内面側に設けられた内面層12bと、EVOH層12aと内面層12bの間に設けられた接着層12cを備える。EVOH層12aを設けることで、ガスバリア性、及び外層11からの剥離性を向上させることができる。
【0032】
EVOH層12aは、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)樹脂からなる層であり、エチレンと酢酸ビニル共重合物の加水分解により得られる。EVOH樹脂のエチレン含有量は、例えば25~50mol%であり、酸素バリア性の観点から32mol%以下が好ましい。エチレン含有量の下限は、特に規定されないが、エチレン含有量が少ないほどEVOH層12aの柔軟性が低下しやすいので25mol%以上が好ましい。また、EVOH層12aは、酸素吸収剤を含有することが好ましい。酸素吸収剤をEVOH層12aに含有させることにより、EVOH層12aの酸素バリア性をさらに向上させることができる。
【0033】
EVOH樹脂の融点は、外層11を構成するランダム共重合体の融点よりも高いことが好ましい。外気導入孔15は、加熱式の穿孔装置を用いて外層11に形成することが好ましいが、EVOH樹脂の融点をランダム共重合体の融点よりも高くすることによって、外層11に外気導入孔15を形成する際に、孔が内袋13にまで到達することを防ぐ。この観点から、(EVOHの融点)-(ランダム共重合体層の融点)の差は大きい方がよく、15℃以上であることが好ましく、30℃以上であることが特に好ましい。この融点の差は、例えば5~50℃であり、具体的には例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50℃であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0034】
内面層12bは、二重容器1の内容物に接触する層であり、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体及びその混合物などのポリオレフィンからなり、低密度ポリエチレン又は直鎖状低密度ポリエチレンからなることが好ましい。内面層12bを構成する樹脂の引張弾性率は、50~300MPaが好ましく、70~200MPaが好ましい。引張弾性率がこのような範囲の場合に、内面層13bが特に柔軟であるからである。引張弾性率は、具体的には例えば、具体的には例えば、50、100、150、200、250、300Mpaであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0035】
接着層12cは、EVOH層12aと内面層12bとを接着する機能を有する層であり、例えば上述したポリオレフィンにカルボキシル基を導入した酸変性ポリオレフィン(例:無水マレイン酸変性ポリエチレン)を添加したものや、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)である。接着層12cの一例は、低密度ポリエチレン又は直鎖状低密度ポリエチレンと、酸変性ポリエチレンの混合物である。
【0036】
また、図2及び図3に示すように、収容部3の肩部においては、外層11に凹部7aが形成され、ここに大気導入孔15が穿設されている。大気導入孔15は、外層11にのみ設けられた貫通孔であり、内層12には到達していない。そして、この大気導入孔15から空気が導入されることで、外殻である外層11と内層12の間に中間空間21が形成される。すなわち、中間空間21と外部空間は、この大気導入孔15によって互いに連通されることになる。
【0037】
大気導入孔15には、弁部材5が設けられており、弁部材5は、外気導入孔15に挿通され且つ外気導入孔15に対してスライド移動可能な軸部5aと、軸部5aの中間空間21側に設けられ且つ軸部5aよりも断面積が大きい蓋部5cと、軸部5aの外部空間S側に設けられ且つ弁部材5が中間空間21に入り込むことを防ぐ係止部5bを備える。
【0038】
蓋部5cは、外層11を圧縮した際に外気導入孔15を実質的に閉塞させるように構成され、軸部5aに近づくにつれて断面積が小さくなる形状になっている。また、係止部5bは、外層11が圧縮された後に復元する際に中間空間21に空気が導入可能なように構成される。外層11を圧縮すると、中間空間21内の圧力が外圧よりも高くなって、中間空間21内の空気が外気導入孔15から外部に漏れ出す。この圧力差と空気の流れによって蓋部5cが外気導入孔15に向かって移動し、蓋部5cが外気導入孔15を閉塞する。蓋部5cが軸部5aに近づくにつれて断面積が小さくなる形状であるので、蓋部5cが容易に外気導入孔15に嵌って外気導入孔15を閉塞する。
【0039】
この状態で外層11をさらに圧縮すると、中間空間21内の圧力が高まり、その結果、内層12が圧縮されて、内層12内の内容物が吐出される。また、外層11への圧縮力を解除すると、外層11が自身の弾性によって復元しようとする。この際、蓋部5cが外気導入孔15から離れて、外気導入孔15の閉塞が解除されて、中間空間21内に外気が導入される。また、係止部5bが外気導入孔15を塞いでしまわないように、係止部5bには外層11に当接する部位に突起5dが設けられており、突起5dが外層11に当接することによって、外層11と係止部5bの間に隙間が設けられる。なお、突起5dを設ける代わりに、係止部5bに溝を設けることによって係止部5bが外気導入孔15を閉塞させることを防いでもよい。
【0040】
一方、キャップ30は、図5に示すように、注出口を有するキャップ本体31と、キャップ本体31に対してヒンジ33により開閉自在に取り付けられる蓋部32とから構成されており、前述の通り、キャップ本体31の外周面にはローレット加工による凹凸部34が全周に亘り形成されている。
【0041】
ローレット加工による凹凸部34は、キャップ30の高さ方向に延在する溝部34aと突条部34bが交互に形成されており、キャップ本体31の下端から上方向中途位置まで形成されている。なお、ローレット加工による凹凸部34は、キャップ本体31の高さ方向の全体に形成されていてもよい。
【0042】
そして、キャップ30が容器本体2に装着された状態で、容器本体2のほぼ全体を覆う形でシュリンクフィルム40が設けられている。シュリンクフィルム40は、容器本体2だけではなく、キャップ30にも被覆されているが、キャップ30においては、前記シュリンクフィルム40が凹凸部34の中途位置(図中矢印Aで示す位置)まで被覆されるように構成している。すなわち、キャップ本体31の下端からシュリンクフィルム40の上端(図中矢印Aで示す位置)までの寸法は、キャップ本体31の下端から凹凸部34の上端までの寸法よりも小さい。なお、シュリンクフィルム40の上端となる位置(矢印A)は、キャップ本体31の下端からキャップ本体31の上端までの高さに対し、1/4以上であることが好ましく、より好ましくは1/3以上、さらに好ましくは1/2以上である。
【0043】
キャップ30に凹凸部34を形成しておくことで、図6に示すように、前記シュリンクフィルム40で被覆した際に、キャップ30とシュリンクフィルム40の間に隙間が形成され、そこから外気を導入することができる。
【0044】
本実施形態の二重容器1の場合、容器本体2の外層11に凹部7aが形成され、ここに大気導入孔15が穿設されているが、さらに、この凹部7aと連通して上方(キャップ方向)に向かって延在する溝部7bが設けられている。また、キャップ30の付け根と容器本体2の肩部とシュリンクフィルム40との間には隙間(肩部の隙間)が形成される。キャップ30においてシュリンクフィルム40との間に形成される隙間は、その下端部において前記肩部の隙間から前記溝部7bへと連通する形となり、さらには溝部7bと連通する凹部7a、大気導入孔15、中間空間21へと外気が円滑に導入される。
【0045】
以上、本発明を適用した実施形態について説明してきたが、本発明がこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【0046】
例えば、キャップ30に形成する凹部または凸部は、ローレット加工による凹凸部に限られず、図7及び図8に示すように、キャップ本体31の周面に1本(あるいは複数本)の溝部35を形成してもよい。この場合にも、溝部35はキャップ本体31の下端から高さ方向の中途位置まで延在するように形成し、この溝部35の中途部までシュリンクフィルム40で被覆すればよい。なお、図7,8に示す例のように、1本の溝部35を形成する場合には、キャップ30を容器本体2に装着した際に、当該溝部35の位置と前記容器本体2の外層11に形成された溝部7bが一致させる必要がある。
【0047】
また、キャップ本体31には、前記溝部35の代わりに1本あるいは複数本の突条部を形成してもよい。突条部を形成することで、シュリンクフィルム40が持ち上げられ、キャップ本体31とシュリンクフィルム40の間に隙間が形成される。
【0048】
さらに、先の実施形態では被覆フィルムとしてシュリンクフィルムを用いたが、これに限らず、例えば熱収縮性のない通常のフィルム等を用いてもよい。
【0049】
さらにまた、先の実施形態では、シュリンクフィルム40が凹凸部34の中途位置(図中矢印Aで示す位置)まで被覆されるように構成したが、例えば未使用時には被覆フィルムがキャップの外周面の略全体を被覆するようにし、凹凸部34の高さ方向の中途位置に被覆フィルムに切断容易線を形成しておき、使用開始時にこの切断容易線を利用してキャップの上方を覆う被覆フィルムを切除するようにしてもよい。このようにすることで、開封前(使用前)にキャップが開けられることを確実に防止(いたずら防止)することができる。
【0050】
容器の形態としては、先の実施形態ではキャップ式の容器を例に説明したが、打栓式の容器等であってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 二重容器
2 容器本体
3 収容部
4 口部
5 弁部材
11 外層
11d 端面
12 内層
12d 端面
15 外気導入孔
30 キャップ
31 キャップ本体
32 蓋部
33 ヒンジ部
34 凹凸部
35 溝部
40 シュリンクフィルム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8