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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-10
(45)【発行日】2022-03-18
(54)【発明の名称】手摺り
(51)【国際特許分類】
   A61G 5/14 20060101AFI20220311BHJP
   A61H 3/00 20060101ALI20220311BHJP
【FI】
A61G5/14
A61H3/00 Z
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018045401
(22)【出願日】2018-03-13
(65)【公開番号】P2019154782
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2020-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】598087841
【氏名又は名称】株式会社幸和製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100147706
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 裕司
(72)【発明者】
【氏名】安永 雅直
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-026687(JP,U)
【文献】特開2009-155951(JP,A)
【文献】特開2013-252326(JP,A)
【文献】特開2017-000188(JP,A)
【文献】登録実用新案第3197414(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 5/14
A61H 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のベース部材と、
前記各ベース部材からそれぞれ立設する一対の支柱部材と、
前記支柱部材同士の間に架設された手摺部材とを備える手摺りであって、
前記各ベース部材は、対応する前記支柱部材に対して回動自在に取り付けられており、
前記ベース部材は、前記支柱部材が取り付けられた取付位置を中心として、少なくとも、第1方向に延びる第1腕部と、前記第1方向に対して非平行である第2方向に延びる第2腕部とを有しており、
一方の前記ベース部材を対応する前記支柱部材に対して回動させたとき、他方の前記ベース部材が一方の前記ベース部材に干渉してそれ以上の回動が規制され、前記ベース部材が前記支柱部材に対して360°の回転ができないようになっている
手摺り。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば高齢者等の自力で立ち上がることが困難な者(以下、「ユーザ」という)が室内で立ち上がる際に使用する手摺りに関する。
【背景技術】
【0002】
従前より、ユーザが立ち上がる際に使用する手摺りが多数開発されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1に開示された手摺りは、床面と接するように配置される略板状の1枚もののベース部材と、当該ベース部材から立設された一対の支柱部材と、これら一対の支柱部材の間に架設された手摺部材とを備えている。
【0004】
ユーザは、略板状の1枚もののベース部材から立設する一対の支柱部材同士の間に架設された手摺部材を、室内で立ち上がる際の手がかりとすることにより、比較的容易に立ち上がることができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-63281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された手摺りは、そのベース部材が略板状の1枚ものであり、比較的大面積となっている。そのため、室内で使用できる範囲が限定されており、使い勝手が悪かった。
【0007】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、室内で使用できる範囲が比較的限定されない、使い勝手のよい手摺りを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一局面によれば、
一対のベース部材と、
前記各ベース部材からそれぞれ立設する一対の支柱部材と、
前記支柱部材同士の間に架設された手摺部材とを備える手摺りであって、
前記各ベース部材は、対応する前記支柱部材に対して回動自在に取り付けられており、
前記ベース部材は、前記支柱部材が取り付けられた取付位置を中心として、少なくとも、第1方向に延びる第1腕部と、前記第1方向に対して非平行である第2方向に延びる第2腕部とを有しており、
一方の前記ベース部材を対応する前記支柱部材に対して回動させたとき、他方の前記ベース部材が一方の前記ベース部材に干渉してそれ以上の回動が規制され、前記ベース部材が前記支柱部材に対して360°の回転ができないようになっている
手摺りが提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、一対の支柱部材に対してベース部材がそれぞれ取り付けられており、さらに、各ベース部材が、対応する支柱部材に対して回動自在となっている。このため、立ち上がろうとするユーザの体重が手摺部材に掛かかる方向と、支柱部材や手摺部材と室内の壁面との位置関係を考慮して、支柱部材に対するベース部材の取り付け角度を容易に設定できる。以上により、室内で使用できる範囲が比較的限定されない、使い勝手のよい手摺りを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明が適用された実施形態に係る手摺り10の斜視図である。
図2】本発明が適用された実施形態に係る手摺り10の正面図である。
図3】本発明が適用された実施形態に係る手摺り10の平面図である。
図4】本発明が適用された実施形態に係る手摺り10の側面図である。
図5】ベース部材12と支柱部材14とを分離した状態を示す斜視図である。
図6】ベース部材12における第1方向Xおよび第2方向Yを説明するための図である。
図7】ベース部材12(接床部20)のI-I線断面図である。
図8】他の実施形態に係るベース部材12(接床部20)の切断端面図である。
図9】ベース部材12の支柱接続部22に形成される複数のネジ挿通孔38の位置関係を説明するための図である。
図10】第2腕部28同士を互いに平行状態にした手摺り10に係る平面図である。
図11】ベース部材12の接床部20における第2方向Yと第1方向Xとが成す小さい方の角度θが一対の支柱部材14同士の内側に向けた状態の一例を示す斜視図である。
図12】他の実施形態に係るベース部材12の平面図である。
図13】他の実施形態に係るベース部材12の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(手摺り10の構成について)
図1から図5を用いて、本実施形態に係る手摺り10の構成について説明する。本実施形態に係る手摺り10は、大略、ベース部材12と、支柱部材14と、手摺部材16とを備えている。
【0014】
ベース部材12は、本実施形態に係る手摺り10において左右一対設けられており、各ベース部材12は基本的に対称に形成されているので、一方のベース部材12について説明し、他方のベース部材12の説明については一方のベース部材12の説明を援用する。
【0015】
ベース部材12は、大略、略板状の接床部20と、この接床部20の上面から突設された支柱接続部22とを備えている。
【0016】
接床部20は、例えば手摺り10を使用する室内の床面等に載置される部分である。本実施形態の接床部20は、図6に示すように、支柱接続部22が突設された中心位置(つまり、支柱部材14が取り付けられる取付位置24)を中心として、第1方向Xに延びる第1腕部26と、第2方向Yに延びる第2腕部28とを有している。なお、接床部20の周縁を軟質素材で形成されたクッション部材(図示せず)等で被覆してもよい。
【0017】
第2方向Yは、第1方向Xに対して非平行になっている。つまり、第2方向Yと第1方向Xとが互いに一直線上にない状態となっている。なお、本実施形態では、第2方向Yと第1方向Xとが成す小さい方の角度θは150°に設定されている。
【0018】
第1腕部26および第2腕部28は、それぞれ取付位置24から離れるにしたがって徐々に幅細となるように形成されている。このように形成することで、取付位置24付近では幅方向を比較的広くして安定感を出しつつ、先端付近では幅方向を比較的細くすることによって安定性を犠牲にすることなく手摺り10をコンパクトにすることができる。
【0019】
また、図7に示すように、接床部20の断面は、その中心部30に凹所32を有する形状となっている。つまり、接床部20は、その周縁部34で床に接しており、かつ、その中心部30は床から離れている。接床部20の断面をこのように形成することで、接床部20の曲げ剛性を向上させることができるとともに、床面に凹凸があったり、床面にゴミ等が落ちていたりして完全に平らな床ではない場合であっても、接床部20の周縁部34が床に対して安定して「面」で接しやすくなる。なお、本実施形態の接床部20は板材をプレス加工等して形成されていることから、その中心部30および周縁部34の厚さはほぼ一様であるが、例えば、図8に示すように、比較的厚い板材の中心部30を削り取って凹所32を形成してもよい。この場合、中心部30の厚さは、周縁部34の厚さよりも薄く形成されることになる。本実施形態では、接床部20は一の板材をプレス加工等して形成しているが、複数の部材を溶接やネジ締結等にて接合して形成してもよく、例えば、周縁部34と中心部30とを別部材として周縁部34の重量を中心部30に比して大きくすることにより、安定性を確保する構成を採用してもよい。
【0020】
図1から図5に戻り、支柱接続部22は、開口36を有するパイプ状に形成されており、この開口36の内径が支柱部材14における下端の外径よりもやや大きく設定されている。これにより、支柱部材14における下端が開口36から支柱接続部22に嵌挿される。これにより、ベース部材12が支柱部材14に対して回動自在に取り付けられている。もちろん、これとは逆に、支柱部材14における下端部をパイプ状に形成し、支柱接続部22を支柱部材14の下端部に嵌挿するようにしてもよい。
【0021】
また、支柱接続部22には、複数のネジ挿通孔38が形成されている。ネジ挿通孔38は、ベース部材12と支柱部材14とが互いに不所望に分離したり、支柱部材14に対してベース部材12が不所望に回転したりするのを防止するネジ40を挿通する孔であり、このネジ挿通孔38に挿通したネジ40の先端は、支柱部材14の下端部の側面にひとつ形成されたネジ貫通孔42に嵌められる。ネジ挿通孔38は、図9に示すように、接床部20の周縁部34における床に接地する面と平行な断面で見たとき、支柱接続部22の中心Cを中心として互いに所定の角度αをあけて形成されている。いずれかのネジ挿通孔38と、支柱部材14に形成されたネジ貫通孔42との位置を合わせることにより、支柱部材14に対するベース部材12の取付角度が決まる。なお、本実施形態では角度αは30°とされている(θは150°)。本実施形態の場合、図10を参照して説明すれば、それぞれの取付位置24を中心に、取付位置とは反対側の第1腕部26同士の先端を最大に離間するように第1腕部26の取付位置を調整した状態においても、第2腕部28同士が平行状態からさらに近づかないようにされる。これにより、第2腕部28側においては、第1腕部26側に比して手摺り10が転倒し難いものとされ、例えば、壁側に第1腕部26側を位置させて、設置スペース領域を小さくしながら、転倒し難い状態をつくることが可能となる。なお、このような構成は、第1腕部26と第2腕部28とを入れ替えても達成できる。
【0022】
支柱接続部22に形成するネジ挿通孔38の数は特に限定されるものではないが、いずれのネジ挿通孔38を使用した場合であっても一対のベース部材12同士が干渉しないような位置にネジ挿通孔38を設定するのが好適である。また、例えば図11に示すように、ベース部材12の接床部20における第2方向Yと第1方向Xとが成す小さい方の角度θが一対の支柱部材14同士の内側に向かない位置にネジ挿通孔38を設定するのが好適である。
【0023】
再び図1から図5に戻り、支柱部材14は、一対のベース部材12のそれぞれから立設された一対の部材であり、各支柱部材14は基本的に対称に形成されているので、一方の支柱部材14について説明し、他方の支柱部材14の説明については一方の支柱部材14の説明を援用する。
【0024】
支柱部材14は、断面円形のパイプ材で構成されており、上述のように、その下端部がベース部材12における支柱接続部22に嵌挿される。また、支柱部材14の下端部の側面には、ネジ40が貫通されるネジ貫通孔42が形成されている。本実施形態では、支柱部材14は、断面円形のパイプ材で構成されているが、断面角形のパイプ材で構成してもよく、また、中空のパイプ材ではなく中実の部材を採用してもよい。
【0025】
また、一対の支柱部材14同士の間隔は、ベース部材12における接床部20の第1腕部26および第2腕部28の長さや幅との関係で、一方のベース部材12を対応する支柱部材14に対して回動させていったとき、あるところで他方のベース部材12が一方のベース部材12に干渉してそれ以上の回動が規制され、一方のベース部材12が支柱部材14に対して360°回転できないようにするのが好適である。
【0026】
手摺部材16は、一対の支柱部材14同士の間に架設された部材であり、本実施形態では、4つの手摺部材16が鉛直方向に所定の間隔で設けられている。
【0027】
本実施形態で設けられている4つの手摺部材16のうち、最上段に設けられた最上段手摺部材50は、残りの3つの中段手摺部材52と形状が異なっている。以下では、最上段手摺部材50の形状について説明し、然る後、ひとつの中段手摺部材52の形状について説明する。なお、残り2つの中段手摺部材52についての説明は、最初の中段手摺部材52についての説明を援用して省略する。なお、手摺部材16の数は本実施形態のものに限定されず、最上段手摺部材50だけであってもよいし、1つ、2つ、あるいは4つ以上の数の中段手摺部材52を設けてもよい。
【0028】
最上段手摺部材50は、一対の湾曲部54と、これら湾曲部54同士の間に設けられた直線部56とで構成されている。なお、通常、ユーザは立ち上がり動作の際に直線部56を把持することから、直線部56は、手に馴染みやすい軟質素材や、すべりにくい素材で形成するのが好適である。また、一対の湾曲部54と直線部56とを同一素材で一体に形成し、然る後、例えばシート状の部材を直線部56に巻きつけてもよい。
【0029】
中段手摺部材52は、一対の直線状の端部58と、これら端部58同士の間に設けられた直線状の中間部60とで構成された略直線状の部材である。上述のように、ユーザは立ち上がり動作の際に直線状の中間部60を把持することが多いので、中間部60は、手に馴染みやすい軟質素材や、すべりにくい素材で形成するのが好適である。また、一対の端部58と中間部60とを同一素材で一体に形成し、然る後、例えばシート状の部材を中間部60に巻きつけてもよい。
【0030】
(手摺り10の特徴)
上述した実施形態の手摺り10によれば、一対の支柱部材14に対してベース部材12がそれぞれ取り付けられており、さらに、各ベース部材12が、対応する支柱部材14に対して回動自在となっている。このため、立ち上がろうとするユーザの体重が手摺部材16に掛かかる方向と、支柱部材14や手摺部材16と室内の壁面との位置関係を考慮して、支柱部材14に対するベース部材12の取り付け角度を容易に設定できる。以上より、ユーザの体重が掛かっても手摺り10全体が不所望に倒れることなく安定させることができ、かつ、ベース部材12と壁面との干渉を回避して支柱部材14や手摺部材16を壁際まで移動させることができるといった、相反する機能を成立させることができる。
【0031】
また、各ベース部材12が、支柱部材14が取り付けられた取付位置24を中心として、第1方向Xに延びる第1腕部26と、第2方向Yに延びる第2腕部28とを有しており、かつ、第1方向Xと第2方向Yとは互いに非平行になっている。これにより、第1方向Xと第2方向Yとが互いに平行である場合に比べて、ユーザの体重が掛かったときの安定性をより向上させることができる。もちろん、第1方向Xと第2方向Yとが平行になる構成を排除するものではない。
【0032】
さらに、一対の支柱部材14同士の間隔は、ベース部材12における接床部20の第1腕部26および第2腕部28の長さや幅との関係で、一方のベース部材12を対応する支柱部材14に対して回動させたとき、他方のベース部材12が一方のベース部材12に干渉してそれ以上の回動が規制され、一方のベース部材12が支柱部材14に対して360°回転できないようになっている。これにより、ユーザが誤って、例えば図11に示すように、ベース部材12の接床部20における第2方向Yと第1方向Xとが成す小さい方の角度θが一対の支柱部材14同士の内側に向けてしまう可能性を低減させることができる。
【0033】
(変形例1)
上述した実施形態のベース部材12における接床部20は2つの腕部(第1腕部26および第2腕部28)で構成されているが、接床部20を構成する腕部の数はこれに限定されるものではなく、図12に示すように、3つの腕部(第1腕部26、第2腕部28、および第3腕部70)で構成されてもよい。もちろん、3つ以上の腕部で接床部20を構成してもよい。
【0034】
(変形例2)
また、図13に示すように、例えば2つの腕部(第1腕部26および第2腕部28)で構成した接床部20に対して、補強部72を追加してもよい。補強部72は、その一端が第1腕部26における取付位置24とは反対側の端部寄りに接続されており、他端が第2腕部28における取付位置24とは反対側の端部寄りに接続されている。このように補強部72を追加することにより、ユーザからの荷重に対するベース部材12の耐力を向上させることができる。なお、補強部72は、第1腕部26および第2腕部28と一体に形成されてもよいし、これらとは別体で形成されてもよい。
【0035】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0036】
10…手摺り、12…ベース部材、14…支柱部材、16…手摺部材
20…接床部、22…支柱接続部、24…(支柱部材14の)取付位置、26…第1腕部、28…第2腕部、30…(接床部20の断面の)中心部、32…凹所、34…(接床部20の断面の)周縁部、36…(支柱接続部22の)開口、38…ネジ挿通孔、40…ネジ、42…ネジ貫通孔
50…最上段手摺部材、52…中段手摺部材、54…湾曲部、56…直線部、58…端部、60…中間部、70…第3腕部、72…補強部
X…第1方向、Y…第2方向、θ…2方向Yと第1方向Xとが成す小さい方の角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13