IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社イージスモスジャパンの特許一覧 ▶ 台湾異奇科技股▲ふん▼有限公司の特許一覧

<>
  • 特許-経路探索システム及び経路探索方法 図1
  • 特許-経路探索システム及び経路探索方法 図2
  • 特許-経路探索システム及び経路探索方法 図3
  • 特許-経路探索システム及び経路探索方法 図4
  • 特許-経路探索システム及び経路探索方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-10
(45)【発行日】2022-03-18
(54)【発明の名称】経路探索システム及び経路探索方法
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20200101AFI20220311BHJP
   G01C 3/06 20060101ALI20220311BHJP
【FI】
G05D1/02 S
G01C3/06 110A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017037576
(22)【出願日】2017-02-28
(65)【公開番号】P2018142276
(43)【公開日】2018-09-13
【審査請求日】2019-11-26
(73)【特許権者】
【識別番号】515334245
【氏名又は名称】株式会社イージスモスジャパン
(73)【特許権者】
【識別番号】517071818
【氏名又は名称】台湾異奇科技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100111257
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 栄二
(74)【代理人】
【識別番号】100110504
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 智裕
(72)【発明者】
【氏名】大朏 吉秀
(72)【発明者】
【氏名】胡 廸生
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-048842(JP,A)
【文献】特開平02-170205(JP,A)
【文献】特開2016-206999(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/02
G01C 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動装置に設置されて移動装置の前進経路中にある障害物を検知する経路探索システムであって、
移動装置の前進経路中に横方向に延びる線状のラインレーザー光を投射する投射部と、
投射されたラインレーザー光の反射光を含む移動装置前方の画像を撮像する撮像部と、
撮像部の画像においてラインレーザー光が障害物に投射されて形成される光切断線に基づいて移動装置の前進経路中に存在する障害物の相対的な位置及び距離を求める処理部とを備え、
投射部は、
レーザー光源とDOE(回折光学素子)とを有し、レーザー光源から出射されるレーザー光を回折光学素子に経由させて横方向に延びる線状のラインレーザー光として投射する構成を備え、
ラインレーザー光として、横方向に延びる一本の基準線と、この基準線と平行に横方向に延びる少なくとも一本の計算線とに投射され、
回折光学素子により、前記基準線と前記計算線との明るさを変えるように設定され、且つ、前記基準線と前記計算線とは、互いに異なる投射角度に設定され、
前記基準線の投射角度は、移動装置が走行する平面上において前記計算線よりも移動装置から一番近い位置に前記基準線が投射されるように設定され、
前記基準線は、撮像部で読み取った画像から移動装置と障害物との相対的な位置関係を求めるための基準となる線とされ、
前記計算線は、前記基準線を基準にして、撮像部で読み取った画像から障害物における移動装置との相対的な位置及び距離を求めるための線とされ、
処理部は、
前記基準線を形成するラインレーザー光の反射光である基準線をX軸とし、移動装置の位置と対応する前記反射光の基準線上の位置で移動装置の前進方向となる前記反射光の基準線と直交する方向をY軸とし、前記撮像部と前記投射部の前記平面からの高さ、前記撮像部の撮像角度、前記投射部の投射角度に基づいて作成された、移動装置の前進経路における障害物と移動装置との位置関係を示す位置座標テーブルを有し、
移動装置の前進経路中に障害物が存在し、撮像部が捉えた画像内において、前記計算線を形成するラインレーザー光の反射光である計算線が障害物の外形形状に基づいて変化して前記光切断線が形成されている場合、この計算線の前記光切断線を捉えた画像を前記位置座標テーブルと比較し、この位置座標テーブル上における前記光切断線のX軸方向及びY軸方向の位置及び距離に基づいて移動装置前進経路中における障害物の移動装置との相対的な位置及び距離を求める構成とする経路探索システム。
【請求項2】
請求項1に記載の経路探索システムにおいて、
レーザー光源のレーザー光は、可視光レーザー又は不可視光レーザーを含み、不可視光レーザーには赤外線レーザー光を含む経路探索システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の経路探索システムにおいて、
撮像部は、少なくとも一つのカメラモジュールから構成され、
カメラモジュールは、投射部の上方又は下方の位置に設置され、投射部から投射されたラインレーザー光を撮像可能な角度に設定されている経路探索システム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の経路探索システムにおいて、
基準線と計算線は、相互に平行な直線又は弧線である経路探索システム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の経路探索システムにおいて、
移動装置は、自律移動可能な自動機又は自律移動可能なロボットを含み、自律移動可能な自動機には自走式ロボット掃除機を含む経路探索システム。
【請求項6】
移動装置の前進経路中にある障害物を検知する経路探索方法であって、
移動装置の前進経路中に横方向に延びる線状のラインレーザー光を投射する投射ステップと、
投射されたラインレーザー光の反射光を含む移動装置前方の画像を撮像する撮像ステップと、
撮像ステップでの画像においてラインレーザー光が障害物に投射されて形成される光切断線に基づいて移動装置の前進経路中に存在する障害物の相対的な位置及び距離を求める処理ステップとを有し、
投射ステップは、
レーザー光源とDOE(回折光学素子)とを有する投射部により、レーザー光源から出射されるレーザー光を回折光学素子に経由させて横方向に延びる線状のラインレーザー光として投射し、
ラインレーザー光として、横方向に延びる一本の基準線と、この基準線と平行に横方向に延びる少なくとも一本の計算線とに投射され、
回折光学素子により、前記基準線と前記計算線との明るさを変えるように設定され、且つ、前記基準線と前記計算線とは、互いに異なる投射角度に設定され、
前記基準線の投射位置は、移動装置が走行する平面上において前記計算線よりも移動装置から一番近い位置に設定され、
前記基準線は、撮像部で読み取った画像から移動装置と障害物との相対的な位置関係を求めるための基準となる線とされ、
前記計算線は、前記基準線を基準にして、撮像部で読み取った画像から障害物における移動装置との相対的な位置及び距離を求めるための線とされ、
処理ステップは、
前記基準線を形成するラインレーザー光の反射光である基準線をX軸とし、移動装置の位置と対応する前記反射光の基準線上の位置で移動装置の前進方向となる前記反射光の基準線と直交する方向をY軸とし、前記撮像部と前記投射部の前記平面からの高さ、前記撮像部の撮像角度、前記投射部の投射角度に基づいて作成された、移動装置の前進経路における障害物と移動装置との位置関係を示す位置座標テーブルを用い、
移動装置の前進経路中に障害物が存在し、撮像ステップで捉えた画像内において、前記計算線を形成するラインレーザー光の反射光である計算線が障害物の外形形状に基づいて変化して前記光切断線が形成されている場合、この計算線の前記光切断線を捉えた画像を前記位置座標テーブルと比較し、この位置座標テーブル上における前記光切断線のX軸方向及びY軸方向の位置及び距離に基づいて移動装置前進経路中における障害物の移動装置との相対的な位置及び距離を求める構成とする経路探索方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動装置の前進方向の障害物検知や障害物回避に利用される経路探索システム及び経路探索方法に関する。
【背景技術】
【0002】
移動装置として、前方方向に移動が出来るロボットや自動的に移動できる装置が知られている。例えば、自走式移動装置として既存のロボット掃除機を例に説明すると、既存のロボット掃除機は、前方に障害物があるまで前進し、障害物を検知したある時点で方向転換を行うものである。障害物検知には、主に超音波センサーが使用されており、正確さに乏しく、前進経路の探索には不向きであった。
【0003】
なお、投影技術により物を検知する方法として、例えば、キーボードの投影画像のような仮想入力装置の技術が知られている(例えば、US6,614,422、US2012/0162077、US2014/0055364等)。しかし、これらの技術は人の指などが空間の所定位置を押えた場合にその位置を検知できるシステムであり、移動装置の前進方向の障害物を検知するものではなく、また、これを示唆するものでもない。
【0004】
これ以外にリモコン式のセンサーがある物体に対し特徴点を付け、例えば人の手や人の体の一部のXYZ空間における相対的な位置と動作の変化を読み取り、リモコンを経由して画面上の機能に還元する技術が知られている(例えば、US7,348,963、US7,433,024、US2008/0106746、US2009/0185274、US2009/0096783、US2009/0034649、US2009/0185274、US2009/0183125、US2010/0020078等)。しかし、これらの技術も移動装置の前進方向の障害物を検知するものではなく、また、これを示唆するものでもない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-268498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の事情に鑑みてなされたものであり、移動装置の移動時に前進経路中の障害物の位置及び距離を検知可能な経路探索システム及び経路探索方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る経路探索システムは、
移動装置に設置されて移動装置の前進経路中にある障害物を検知する経路探索システムであって、
移動装置の前進経路中に横方向に延びる線状のラインレーザー光を投射する投射部と、
投射されたラインレーザー光の反射光を含む移動装置前方の画像を撮像する撮像部と、
撮像部の画像においてラインレーザー光が障害物に投射されて形成される光切断線に基づいて移動装置の前進経路中に存在する障害物の相対的な位置及び距離を求める処理部とを備え、
投射部は、
レーザー光源とDOE(回折光学素子)とを有し、レーザー光源から出射されるレーザー光を回折光学素子に経由させて横方向に延びる線状のラインレーザー光として投射する構成を備え、
ラインレーザー光として、横方向に延びる一本の基準線と、この基準線と平行に横方向に延びる少なくとも一本の計算線とに投射され、
回折光学素子により、前記基準線と前記計算線との明るさを変えるように設定され、且つ、前記基準線と前記計算線とは、互いに異なる投射角度に設定され、
前記基準線の投射角度は、移動装置が走行する平面上において前記計算線よりも移動装置から一番近い位置に前記基準線が投射されるように設定され、
前記基準線は、撮像部で読み取った画像から移動装置と障害物との相対的な位置関係を求めるための基準となる線とされ、
前記計算線は、前記基準線を基準にして、撮像部で読み取った画像から障害物における移動装置との相対的な位置及び距離を求めるための線とされ、
処理部は、
前記基準線を形成するラインレーザー光の反射光である基準線をX軸とし、移動装置の位置と対応する前記反射光の基準線上の位置で移動装置の前進方向となる前記反射光の基準線と直交する方向をY軸とし、前記撮像部と前記投射部の前記平面からの高さ、前記撮像部の撮像角度、前記投射部の投射角度に基づいて作成された、移動装置の前進経路における障害物と移動装置との位置関係を示す位置座標テーブルを有し、
移動装置の前進経路中に障害物が存在し、撮像部が捉えた画像内において、前記計算線を形成するラインレーザー光の反射光である計算線が障害物の外形形状に基づいて変化して前記光切断線が形成されている場合、この計算線の前記光切断線を捉えた画像を前記位置座標テーブルと比較し、この位置座標テーブル上における前記光切断線のX軸方向及びY軸方向の位置及び距離に基づいて移動装置前進経路中における障害物の移動装置との相対的な位置及び距離を求める構成とする。
【0008】
また、本発明に係る経路探索方法は、
移動装置の前進経路中にある障害物を検知する経路探索方法であって、
移動装置の前進経路中に横方向に延びる線状のラインレーザー光を投射する投射ステップと、
投射されたラインレーザー光の反射光を含む移動装置前方の画像を撮像する撮像ステップと、
撮像ステップでの画像においてラインレーザー光が障害物に投射されて形成される光切断線に基づいて移動装置の前進経路中に存在する障害物の相対的な位置及び距離を求める処理ステップとを有し、
投射ステップは、
レーザー光源とDOE(回折光学素子)とを有する投射部により、レーザー光源から出射されるレーザー光を回折光学素子に経由させて横方向に延びる線状のラインレーザー光として投射し、
ラインレーザー光として、横方向に延びる一本の基準線と、この基準線と平行に横方向に延びる少なくとも一本の計算線とに投射され、
回折光学素子により、前記基準線と前記計算線との明るさを変えるように設定され、且つ、前記基準線と前記計算線とは、互いに異なる投射角度に設定され、
前記基準線の投射位置は、移動装置が走行する平面上において前記計算線よりも移動装置から一番近い位置に設定され、
前記基準線は、撮像部で読み取った画像から移動装置と障害物との相対的な位置関係を求めるための基準となる線とされ、
前記計算線は、前記基準線を基準にして、撮像部で読み取った画像から障害物における移動装置との相対的な位置及び距離を求めるための線とされ、
処理ステップは、
前記基準線を形成するラインレーザー光の反射光である基準線をX軸とし、移動装置の位置と対応する前記反射光の基準線上の位置で移動装置の前進方向となる前記反射光の基準線と直交する方向をY軸とし、前記撮像部と前記投射部の前記平面からの高さ、前記撮像部の撮像角度、前記投射部の投射角度に基づいて作成された、移動装置の前進経路における障害物と移動装置との位置関係を示す位置座標テーブルを用い、
移動装置の前進経路中に障害物が存在し、撮像ステップで捉えた画像内において、前記計算線を形成するラインレーザー光の反射光である計算線が障害物の外形形状に基づいて変化して前記光切断線が形成されている場合、この計算線の前記光切断線を捉えた画像を前記位置座標テーブルと比較し、この位置座標テーブル上における前記光切断線のX軸方向及びY軸方向の位置及び距離に基づいて移動装置前進経路中における障害物の移動装置との相対的な位置及び距離を求める構成とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、移動装置の移動時に前進経路中の障害物の位置及び距離を検知することができる。従って、移動装置は、障害物の検知結果より前方移動時に障害物を確実に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態による経路探索装置の外観構成を示す斜視図である。
図2】実施形態による経路探索装置が移動装置に設置されて使用されている状態を示す側面図である。
図3】実施形態による経路探索装置が移動装置に設置されて使用されている状態を示す上面図である。
図4】撮像部が撮像した移動装置前方の画像であって、投射部から投射されたラインレーザー光の反射光(基準線、計算線の光切断線)を含み、前進経路中の障害物に計算線が投射されて光切断線が形成されている場合の画像の模式図である。
図5】移動装置の前進経路における障害物と移動装置との相対的な位置関係を示す位置座標テーブルの一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態について説明する。
実施形態の経路探索システムは、図1に示すように、レーザー光をDOE(Diffractive Optical Element:回折光学素子)20を経由したラインレーザー光21を用いた経路探索装置1を有し、図2に示すように、この経路探索装置1を移動装置2に設置して移動装置2の前進経路中にある障害物4の検知に使用される構成とするものである。移動装置2は、例えば、自走式ロボット掃除機が挙げられるが、本発明は、これに限らず、他にも自律移動可能な自動機又は自律移動可能なロボット等を含む。経路探索装置1は、移動装置2の前方にラインレーザー光21を投射する投射部10、ラインレーザー光21が投射される移動装置2の前方の画像を撮像する撮像部30、移動装置2の前進経路中における障害物4の位置及び距離を求める処理部40を主要構成として備える。
【0012】
投射部10は、レーザー光源11とDOE20とを有する。投射部10は、レーザー光源11から出射されるレーザー光をDOE20に経由させて横方向に延びる線状のラインレーザー光21(例えば、STRUCTURE LIGHT、スリット光などを含む。)として移動装置2の前方の前進経路の区域3に向けて投射する構成とする。レーザー光源11から放たれたレーザー光は、不可視光の赤外線レーザー光源(IR laser light)が好ましいが、これに限らず、本発明は、可視光レーザーや不可視光レーザーを使用することができる。
【0013】
DOE20は、図1に示すように、レーザー光源11の前面に配置され、レーザー光源11から出射されるレーザー光をこのDOE20に経由させて横方向(移動装置2の前進方向に対して左右方向)に延びる線状のラインレーザー光21を形成する。DOE20は、一つのレーザー光を多数のレーザー光に分けることができ、また、レーザー光の形状も自由に設計することができるので、複数のレーザー光源11を要せずに任意の形状のレーザー光を形成することができる。
【0014】
図2及び図4を参照して、投射部10では、ラインレーザー光21としてDOE20によって、横方向に延びる一本の基準線22と、基準線22と平行に横方向に延びる二本の計算線23a,23bとに形成される。なお、計算線23は、二本に限定されず、少なくとも一本有していればよいし、また、三本以上等の複数本有していてもよい。また、基準線22及び計算線23a,23bは、相互に平行な直線に限らず、相互に平行な弧線であってもよい。基準線22と計算線23a,23bとは、互いに異なる投射角度に設定され、且つ移動装置2の前進方向(すなわち、水平方向)と交差状態となる投射角度で投射されている。基準線22は、移動装置2の前方斜め下に向けて移動装置2が走行する平面5上に投射される。
二本の計算線23a,23bは、基準線22よりも上に投射される。二本の計算線23a,23bのうち一方の計算線23aは、移動装置2の前方斜め下に向けて移動装置2が走行する平面5上に投射され、他方の計算線23bは、移動装置2の前方斜め上に向けて投射される。
【0015】
基準線22の投射角度は、移動装置2が走行する平面5上において計算線23a,23bよりも移動装置2から一番近い距離Dの位置に基準線22が投射されるように設定される。一方の計算線23aの投射角度は、移動装置2が走行する平面5上において基準線22よりも移動装置2から遠い距離の位置に一方の計算線23aが投射されるように設定される。他方の計算線23bの投射角度は、移動装置2の前方斜め上に向けて投射されるように設定される。なお、二本の計算線23a,23bは、移動装置2の前進経路中に障害物4があるとき、移動装置2の機動性能からして障害物4を回避移動可能な間隔が確保される位置より前方に向けて投射されるように設定される。
【0016】
基準線22は、撮像部30で読み取った画像から移動装置2と障害物4との相対的な位置関係を求めるための基準となる線である。二本の計算線23a,23bは、撮像部30で読み取った画像に基づいて、例えば、移動装置2が走行する平面5上に存在する障害物4の位置、距離、横幅、高さ等を主に検知するために使用することができる。なお、他方の計算線23bは、前方斜め上に向けて投射されるので、撮像部30で読み取った画像に基づいて、例えば、上方から垂れ下がって移動装置2が走行する平面5との間に隙間が存在するような障害物4の下端位置(あるいは走行平面5から当該障害物4までの隙間)や横幅等も検知するために使用することができる。
【0017】
投射部に備えるDOE20によれば、レーザー光源11を高出力にしなくても撮像部30で十分認識可能なラインレーザー光21を形成することができる。また、DOE20によれば、ラインレーザー光21である一本の基準線22と二本の計算線23a,23bの明るさをそれぞれ別々に設定することができる。例えば、一本の基準線22と二本の計算線23a,23bのそれぞれの明るさを変えることにより、撮像部30においては各線の区別を容易に行うことができる。なお、一本の基準線22と二本の計算線23a,23bの三本のうち、上下方向の真ん中に投射される一方の計算線23aは、障害物4と移動装置2との間の位置や距離の測定において重要な役割を担うので、撮像部30での認識を確実にするため最も明るく設定するのが好ましい。
【0018】
撮像部30は、少なくとも一つのカメラモジュールから構成される。カメラモジュールとして、例えば、CCD、CMOS等の撮像素子や、レンズ等を有する構成とすることができる。この撮像部30は、投射部10より投射されたラインレーザー光21(一本の基準線22と二本の計算線23a,23b)の反射光を含む移動装置2前方の画像を撮像する。撮像部30は、撮像の光軸の角度が予め固定されており、例えば、光軸が水平方向より下方を向くように設定される。撮像部30の設置位置は、投射部10から高さHの上方に設置されている(図1参照)。なお、撮像部30の設置位置は、投射部10の上の位置に限らず、投射部10の下や投射部10の左右等の任意の位置に設置することも可能である。
【0019】
処理部40は、画像処理装置(IPU:Image Processing Unit)から構成されるが、これに限らず、本発明は、CPU(Central Processing Unit)やMCU(Micro Controller Unit)等により構成することができる。この処理部40は、投射部10及び撮像部30と信号のやり取りができるように接続され、投射部10のレーザー光源11のコントロールを行い、また、撮像部30が読み取ったラインレーザー光21の反射光を含む画像のデータに基づいてソフトウエアやプログラム回路等の機能により移動装置2の前進経路中に存在する障害物4の相対的な位置及び距離を求める処理を行うものであり、本経路探索システムの主な機能を担うものである。
【0020】
処理部40は、例えば、撮像部30で撮像された画像における計算線23の光切断線に対して、移動装置2の前進経路の区域3における障害物4と移動装置2との位置関係を示す位置座標テーブル(図5参照)を有しており、この位置座標テーブルに基づいて障害物4の相対的な位置及び距離が求められる。光切断線とは、ラインレーザー光21の計算線23が障害物4に投射されて障害物4の外形形状に沿って形成される明線のことである。
【0021】
位置座標テーブルは、例えば、図5に示すように、撮像部30で捉えた画像と対応して、基準線22をX軸とし、移動装置2の中心位置と対応する基準線22上の位置で移動装置2の前進方向となる基準線22と直交する方向をY軸とし、特定の計算線23における光切断線の画像と対応してその光切断線を形成させている実空間上での障害物4の移動装置2との相対的な位置及び距離を示すものである(図5中の(X,Y)の数値は、X=移動装置2の中心線位置から横方向への距離、Y=移動装置2の前面から前方方向への距離をそれぞれ示す。)。位置座標テーブル上に示す障害物4の位置及び距離は、基準線22が相対する移動装置2との距離D、撮像部30の設定位置と投射部10の設定位置との間の高さH、また、撮像部30の撮像角度(カメラモジュールの光軸角度)や撮像部30の平面5からの高さ、投射部10の基準線22及び計算線23の投射角度や投射部10の平面5からの高さなどを考慮して決定することができる。この位置座標テーブルは、各々の計算線23a,23bごとに対して作成され、図5に例示した位置座標テーブルは、図4に示す移動装置2の前方斜め下方に投射される一方の計算線23aに対応したものである。
【0022】
次に、経路探索システムの動作を説明する。
例えば、移動装置2の前方経路の区域3内に2つの障害物4a,4bが存在する場合について説明する。図2及び図3を参照して、移動装置2は、平面5上を前方方向に前進しており、また、1つの立体的な障害物4aは、移動装置2との距離が近く且つ横幅の狭いものとし、もう1つの立体的な障害物4bは、移動装置2との距離が遠く且つ横幅の広いものとする。この場合、投射部10から投射された計算線23a,23bは、障害物4a,4bに投射されると障害物4a,4bの遠近(奥行)や外部形状に基づき変化し、障害物4a,4b上には計算線23a,23bの光切断線23a1,23a2,23b1,23b2が形成される。撮像部30で撮像された計算線23a,23bの画像でも同様に計算線23a,23bが変化し、この計算線23a,23bの光切断線23a1,23a2,23b1,23b2が捉えられる。
【0023】
このとき、処理部40は、画像における計算線23a,23bの光切断線23a1,23a2,23b1,23b2について、横方向に延びる基準線22をX軸と規定しこの基準線22に相対した光切断線23a1,23a2,23b1,23b2におけるY軸方向の距離d及びX軸方向の幅w等から、移動装置2の前面から基準線22の平面5上の投射位置までの距離D(図2参照)、投射部10から撮像部30までの高さH(図1参照)等を考慮して計算を行い、移動装置2の前進経路の区域3での障害物4a,4bの移動装置2との相対的な位置及び距離を求める。
【0024】
図4の例では、基準線22をX軸、基準線22と直交する方向をY軸として、一方の計算線23aより、移動装置2に近くて幅狭の障害物4aに投射されて形成された横方向に延びる光切断線23a1に対して、横方向に延びる基準線22(X軸)に相対してY軸方向の距離d1a及びX軸方向の幅w1a、また、移動装置2から遠くて幅広の障害物4bに投射されて形成された横方向に延びる光切断線23a2に対して、横方向に延びる基準線22(X軸)に相対してY軸方向の距離d2a及びX軸方向の幅w2aとして得られる。
【0025】
他方の計算線23bより、移動装置2に近くて幅狭の障害物4aに投射されて形成された横方向に延びる光切断線23b1に対して、横方向に延びる基準線22(X軸)に相対してY軸方向の距離d1b及びX軸方向の幅w1b、また、移動装置2から遠くて幅広の障害物4bに投射されて形成された横方向に延びる光切断線23b2に対して、横方向に延びる基準線22(X軸)に相対してY軸方向の距離d2b及びX軸方向の幅w2bが得られる。
【0026】
近くて幅狭の障害物4aに対する光切断線23a1の距離d1a及び幅w1aは、遠くて幅広の障害物4bに対する光切断線23a2の距離d2a及び幅w2aよりも小さい。光切断線23b1の距離d1b及び幅w1bも、光切断線23b2の距離d2b及び幅w2bよりも小さい。
以上の距離(d1a、d2a、d1b、d2b)及び幅(w1a、w2a、w1b、w2b)から、各障害物4a,4bについて移動装置2との相対的な位置及び距離が求められる。
【0027】
上記処理の例として、例えば、計算線23a,23bの光切断線23a1,23a2,23b1,23b2を捉えた画像を、位置座標テーブルと比較し、この位置座標テーブルから読み取った光切断線23a1,23a2,23b1,23b2の画像の(X,Y)の値より、この光切断線23a1,23a2,23b1,23b2を形成させた障害物4a,4bの移動装置2との相対的な位置及び距離、また障害物4a,4bの横幅を求めることができる。
【0028】
例えば、図5に示す位置座標テーブルにおいて、計算線23aの光切断線23a1は、位置座標(X,Y)=(20,60)から(40,60)にわたって形成されている。これより、この光切断線23a1を形成させている障害物4aは、移動装置2の中央前面の位置座標(X,Y)=(0,0)の位置に対して、位置座標(X,Y)=(20,60)から(20,60)の位置にわたって存在すること、移動装置2から前方へ60cm離れていること、横幅が20cm(40-20)有することが求められる。なお、この光切断線23a1を移動装置2の前進移動に従って追跡していけば、障害物4aの高さを求めることが可能である。
【0029】
このようにして、得られた障害物4a,4bの上記位置情報に基づいて、移動装置2が前方方向に移動する際に、障害物4a,4bを回避するように移動制御することができる。また、処理部40のソフトウエア設計(機能設計)により、移動装置2が障害物4a,4bを回避し前方方向に移動する経路を図3の矢印Pのように室内空間における走行プログラムを構築するマッピングの作成も可能となる。よって、以上より、移動装置2の走行及び効率を向上することができる。
【0030】
なお、実施形態では、投射部10のDOE20によって発生させる計算線23の数は、二本であるが、この計算線23の数が多ければ多いほど障害物4の移動装置2の前方経路3の中にある位置、距離、高さ、形状等の判断がし易く、またより正確に判断することができる。
【0031】
経路探索方法は、以下の内容を含むものである。
手順1:
移動装置2上に経路探索装置1を設置し、この経路探索装置1により移動装置2の前方の前進経路の区域3内における障害物4の位置を判断する。経路探索装置1は、投射部10により、移動装置2の前進経路中に横方向に延びる線状のラインレーザー光21を投射する投射ステップと、撮像部30により、投射されたラインレーザー光21の反射光を含む移動装置2前方の画像を撮像する撮像ステップと、処理部40により、撮像部30の画像中におけるラインレーザー光21が障害物4に投射されて形成される光切断線に基づいて移動装置2の前進経路中に存在する障害物4の相対的な位置及び距離を求める処理ステップとを実行する。
【0032】
手順2:
投射ステップにおいて、投射部10は、レーザー光源11の前に設置するDOE20により、レーザー光源11から発射するレーザー光を横方向に延びる線状のラインレーザー光21にして投射する。このラインレーザー光21は、横方向に延びる一本の基準線22と、基準線22と平行に横方向に延びる少なくとも一本の計算線23とで構成される。基準線22と計算線23とは、DOE20により、互いに異なる投射角度に設定する。基準線22の投射位置は、DOE20により、移動装置2が走行する平面5上における移動装置2から一番近い位置(距離D)に設定する。計算線23の投射位置は、DOE20により、基準線22よりも移動装置2から遠い位置に設定する。
【0033】
手順3:
処理ステップにおいては、基準線22をX軸とし、移動装置2位置と対応する基準線22上の位置で移動装置2の前進方向となる基準線22と直交する方向をY軸とし、移動装置2の前進経路における障害物4と移動装置2との位置関係を示す位置座標テーブル(図5参照)を用いる。そして、移動装置2の前進経路中に障害物4が存在し、計算線23が障害物4に投射されて障害物4の外形形状に基づいて変化して光切断線が形成されると、撮像ステップで捉えた画像内の計算線23も同様に障害物4に投射されて障害物4の外形形状に基づいて変化して形成された光切断線を捉えて撮像する。この際、処理ステップでは、この計算線23の光切断線を捉えた画像を、前記位置座標テーブルと比較し、この位置座標テーブル上における光切断線の位置及び距離等に基づいて移動装置2前進経路中における障害物4の移動装置2との相対的な位置及び距離を求める。これにより、移動装置2は、前方方向に移動している際に障害物4を避けて移動することができる。
【0034】
なお、本発明は、以上の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で必要に応じて変更することが可能である。
例えば、撮像部30及び/又は処理部40において、撮像画像中に映り込む日光や周辺の散乱光等を、フィルター、画像処理等の任意の手段で除去して、ラインレーザー光21(基準線22、計算線23)を認識し易くすることができる。
【符号の説明】
【0035】
1 経路探索装置
2 移動装置
3 前進経路の区域
4,4a,4b 障害物
5 平面
10 投射部
11 レーザー光源
20 DOE(回折光学素子)
21 ラインレーザー光
22 基準線
23 計算線
23a 一方の計算線
23b 他方の計算線
30 撮像部
40 処理部
F 前進方向
P 移動経路
図1
図2
図3
図4
図5