(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-10
(45)【発行日】2022-03-18
(54)【発明の名称】折板屋根葺き作業用のスタンション
(51)【国際特許分類】
E04D 15/04 20060101AFI20220311BHJP
E04G 21/32 20060101ALI20220311BHJP
【FI】
E04D15/04 V
E04G21/32 D
(21)【出願番号】P 2018026118
(22)【出願日】2018-02-16
【審査請求日】2020-10-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(73)【特許権者】
【識別番号】514084026
【氏名又は名称】株式会社久忠
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】古川 徹
(72)【発明者】
【氏名】竹口 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】角田 高志
(72)【発明者】
【氏名】高波 寛人
(72)【発明者】
【氏名】村上 敏章
(72)【発明者】
【氏名】町田 健一
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 治雄
(72)【発明者】
【氏名】岡田 秀明
(72)【発明者】
【氏名】赤尾 星児
(72)【発明者】
【氏名】出口 久一
(72)【発明者】
【氏名】出口 知史
(72)【発明者】
【氏名】出口 俊
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-209451(JP,A)
【文献】特開2009-215736(JP,A)
【文献】特開2012-158868(JP,A)
【文献】特開2003-129629(JP,A)
【文献】特開2015-197024(JP,A)
【文献】特開2006-207339(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 15/00、15/02、15/04
E04G 21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
安全用具取り付け用の支柱と、前記支柱を支持する支持部材とを備えて、前記支持部材が、折板屋根の隣接するハゼに掛け渡される折板屋根葺き作業用のスタンションにおいて、
前記支持部材の両端部を前記ハゼに着脱可能に固定する一対の固定具を備え、
前記固定具には、レバー操作にて前記ハゼを前記支持部材の端部との間に挟持する状態と、その挟持を解除する状態とに簡易切り替え可能なレバー操作式のトグルクランプ機構が採用されている折板屋根葺き作業用のスタンション。
【請求項2】
前記支柱は、前記支持部材の一端部に支持され、一対の前記トグルクランプ機構は、前記支持部材における支柱支持用の前記一端部と、該一端部とは反対側の他端部との間に配備されている請求項1に記載の折板屋根葺き作業用のスタンション。
【請求項3】
前記支柱の上部と前記支持部材の端部とにわたる斜材を備えている請求項1又は2に記載の折板屋根葺き作業用のスタンション。
【請求項4】
前記支持部材は、前記両端部が前記ハゼに載置されるとともに、前記両端部の横幅が該両端部にわたる中間部の横幅よりも幅広になるH型に形成されている請求項1~3のいずれか一項に記載の折板屋根葺き作業用のスタンション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折板屋根葺き作業時に、折板屋根に盛り替え可能に取り付けられる折板屋根葺き作業用のスタンションに関し、詳しくは、安全用具取り付け用の支柱と、前記支柱を支持する支持部材とを備えて、前記支持部材が、折板屋根の隣接するハゼに掛け渡される折板屋根葺き作業用のスタンションに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような折板屋根葺き作業用のスタンションは、折板屋根葺き作業の進捗に応じて、折板屋根に対するスタンションの取り付け位置を変更する盛り替えを頻繁に行う必要がある。そのため、上記のような折板屋根葺き作業用のスタンションとしては、支持部材(基台)の底部に、折板屋根の山部に沿って形成されたハゼ(突条)を把持する4つの固定部材を備え、各固定部材は、上部フランジと下部フランジとを有する略コ字形の2枚の把持片と、これらの把持片の上部フランジを支持部材に締め付け固定するボルト・ナットとを有し、2枚の把持片の下部フランジが、ボルトに対するナットの締め付け調節で上部フランジを支点にして開閉することで、2枚の把持片が折板屋根のハゼを把持して支持部材を折板屋根に固定する状態と、2枚の把持片が折板屋根のハゼに対する把持を解除して折板屋根に対する支持部材の固定を解除する状態とに切り替え可能に構成されたものがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の構成では、スタンションの盛り替えを行うたびに、4つの固定部材において、インパクトレンチやスパナなどの工具を使用して2枚の把持片の開閉操作を行う必要がある。そのため、スタンションの盛り替えに手間がかかるようになっており、施工効率の向上を図る上において改善の余地がある。又、盛り替え作業中にボルト・ナットや工具などを滑落させて紛失することによる作業の停滞を招く虞があり、この点からも施工効率の向上を図る上において改善の余地がある。
【0005】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、折板屋根葺き作業の進捗に応じたスタンションの盛り替えを、工具を使用することなく簡単かつ迅速に行えるようにして、折板屋根葺き作業における施工効率の向上を図れるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1特徴構成は、
安全用具取り付け用の支柱と、前記支柱を支持する支持部材とを備えて、前記支持部材が、折板屋根の隣接するハゼに掛け渡される折板屋根葺き作業用のスタンションにおいて、
前記支持部材の両端部を前記ハゼに着脱可能に固定する一対の固定具を備え、
前記固定具には、レバー操作にて前記ハゼを前記支持部材の端部との間に挟持する状態と、その挟持を解除する状態とに簡易切り替え可能なレバー操作式のトグルクランプ機構が採用されている点にある。
【0007】
本構成によれば、作業者がスタンションを折板屋根に取り付ける場合は、スタンションの支持部材を折板屋根の隣接するハゼに掛け渡した後、各トグルクランプ機構のレバー操作を行って、支持部材の各端部と各トグルクランプ機構との間に各ハゼを挟持することにより、スタンションを折板屋根に簡単に取り付けることができる。
又、作業者がスタンションを折板屋根から取り外す場合は、各トグルクランプ機構のレバー操作を行って、支持部材の各端部と各トグルクランプ機構による各ハゼの挟持を解除することにより、スタンションを折板屋根から簡単に取り外すことができる。
これにより、作業者は、折板屋根葺き作業の進捗に応じたスタンションの盛り替えを、インパクトレンチやスパナなどの工具を使用することなく、又、ボルト・ナットや工具などを滑落させて紛失することによる作業の停滞を招くことなく、簡単かつ迅速に行うことができる。
その結果、折板屋根葺き作業において、スタンションを使用することによる安全性の確保を行いながら、施工効率の向上を図ることができる。
【0008】
本発明の第2特徴構成は、
前記支柱は、前記支持部材の一端部に支持され、一対の前記トグルクランプ機構は、前記支持部材における支柱支持用の前記一端部と、該一端部とは反対側の他端部との間に配備されている点にある。
【0009】
本構成によれば、例えば、支柱が支持部材の中央部に支持され、一対のトグルクランプ機構が、支柱を挟んで支持部材の両端側に振り分け配備されている場合には、作業者は、支柱の右側に位置するトグルクランプ機構のレバー操作を行うときは、左手で支柱を把持しながら右手で右側のトグルクランプ機構のレバー操作を行うことになる。又、支柱の左側に位置するトグルクランプ機構のレバー操作を行うときは、右手で支柱を把持しながら左手で左側のトグルクランプ機構のレバー操作を行うことになる。つまり、各トグルクランプ機構のレバー操作を行うときに、操作する手をトグルクランプ機構の位置に応じて変更する手間が生じることになる。
これに対し、本発明の第2特徴構成では、支柱が支持部材の一端部に支持され、一対のトグルクランプ機構が支持部材の中央側に隣接して配備されることから、作業者は、一方の手で支柱を把持したまま、他方の手で各トグルクランプ機構のレバー操作を無理なく行うことができる。つまり、各トグルクランプ機構のレバー操作を行うときに、操作する手をトグルクランプ機構の位置に応じて変更する手間がなくなる。
その結果、折板屋根葺き作業の進捗に応じてスタンションの盛り替えを行うときの各トグルクランプ機構の操作性を向上させることができ、これにより、折板屋根葺き作業における施工効率の向上を更に図ることができる。
【0010】
本発明の第3特徴構成は、
前記支柱の上部と前記支持部材の端部とにわたる斜材を備えている点にある。
【0011】
本構成によれば、親綱を介して安全帯が取り付けられる支柱の支持強度を高めることができ、これにより、安全帯を使用して行う折板屋根葺き作業での作業者の安全性を向上させることができる。
特に、スタンションの構成として、支柱が支持部材の一端部に支持され、単一の斜材が支柱の上部と支持部材の他端部とに架設される構成を採用した場合は、折板屋根に対するスタンションの取り付け姿勢を、屋根葺き作業時に作業者が折板屋根から落下する危険性のある領域に対して支柱を挟んだ反対側の位置に斜材が位置するように設定すれば、万が一、作業者が折板屋根から落下しそうになったときには、そのときの荷重を斜材に対して引張力として作用させることができる。これにより、作業者が折板屋根から落下しそうになったときの荷重が斜材に圧縮力として作用する場合に比較して、斜材が持つ強度を支柱の補強に有効に活用することができる。つまり、複数の斜材を設ける場合に比較して、スタンションの軽量化による持ち運びの容易化を図りながら、支柱の支持強度を効果的に高めることができる。その結果、支柱に親綱を介して取り付けられる安全帯を使用して行う折板屋根葺き作業での作業者の安全性を向上させることができる。
【0012】
本発明の第4特徴構成は、
前記支持部材は、前記両端部が前記ハゼに載置されるとともに、前記両端部の横幅が該両端部にわたる中間部の横幅よりも幅広になるH型に形成されている点にある。
【0013】
本構成によれば、スタンションが折板屋根に取り付けられた状態では、幅広に形成された支持部材の両端部が折板屋根のハゼに載置されていることから、支持部材の横幅方向での折板屋根に対するスタンションのガタツキをより効果的に抑制することができる。
その結果、折板屋根葺き作業の進捗に応じたスタンションの盛り替えを簡単かつ迅速に行えるようにしながら、折板屋根に取り付けたスタンションの安定性を向上させることができる。
【0014】
本発明において、
前記支柱は、その上端の高さ位置が、台車を利用して折板屋根上を運搬される屋根材と干渉しない低い高さ位置に設定されていると好適である。
【0015】
本構成によれば、折板屋根葺き作業中に、作業者が複数の折板などの屋根材を折板屋根上にて台車を利用して運搬する場合には、スタンションの盛り替えを行わなくても、その運搬が折板屋根に取り付けられたスタンションによって阻害される虞を回避することができる。
これにより、折板屋根上での屋根材の運搬を円滑に行うことができ、結果、折板屋根葺き作業における施工効率の向上を更に図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】折板屋根葺き作業において折板屋根上の複数のスタンションに親綱を渡し掛けた状態を示す折板屋根上部の斜視図
【
図2】折板屋根葺き作業において折板屋根上のスタンションに安全ブロックを介して安全帯を取り付けた状態を示す折板屋根上部の斜視図
【
図3】折板屋根に対するスタンションの着脱操作を示す要部の縦断正面図
【
図4】スタンションが折板屋根に取り付けられた状態を示す要部の縦断側面図
【
図5】スタンションが折板屋根に取り付けられた状態を示す要部の横断平面図
【
図6】スタンションが折板屋根に取り付けられた状態を示す要部の拡大縦断側面図
【
図7】折板屋根のハゼを支持部材の端部と挟持片とで挟持した状態を示す要部の拡大縦断正面図
【
図8】スタンションが折板屋根に取り付けられた折板屋根葺き作業時での台車を利用した折板の運搬状態を示す要部の縦断側面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1~2に示すように、本発明にかかる折板屋根葺き作業用のスタンション1は、折板屋根2に盛り替え可能に取り付けることができる。そして、例えば、
図1に示すように、折板屋根2に取り付けられた複数のスタンション1に、安全用具3の一例である親綱3Bが渡し掛けられ、この親綱3Bに、安全用具3の一例である安全ブロック3A(
図2参照)を介して、作業者が装着した安全帯4(
図2参照)が取り付けられることにより、又は、
図2に示すように、折板屋根2に取り付けられた単一のスタンション1に、安全ブロック3Aを介して作業者の安全帯4が取り付けられることにより、折板屋根葺き作業時における作業者の安全性を確保することができる。
【0019】
図1~7に示すように、折板屋根2は、平行に並ぶ複数の梁20の各上面に溶接されたタイトフレーム21に、複数のタイトフレーム21にわたる姿勢でタイトフレーム21が延びる方向に連続して並べられる複数の折板(屋根材)22などを取り付けることで形成されている。各タイトフレーム21は、梁20に支持される谷部21Aと折板22を支持する山部21Bとが交互に位置する波状に形成されている。そして、各山部21Bから上方に延び出るハゼ締め用の吊子21Cを有している。各折板22は、タイトフレーム21の谷部21Aに入り込む谷部22Aと、ハゼ締め用の下ハゼ22Bを有する第1山部22Cと、ハゼ締め用の上ハゼ22Dを有する第2山部22Eとを備える形状に形成されている。
これにより、折板屋根葺き作業時には、各折板22の下ハゼ22Bが各タイトフレーム21の対応する吊子21Cに被さり、かつ、各折板22の上ハゼ22Dが隣接する折板22の下ハゼ22Bに被さるように、複数のタイトフレーム21に対して複数の折板22を屋根葺き方向の下手側から順に載置した後、重なる吊子21Cと下ハゼ22Bと上ハゼ22Dとを、図外の締め機を使用してハゼ締めすることにより、折板屋根2を形成することができる。そして、折板屋根2の山部2Aには、前述したハゼ締めによって折板屋根2の長手方向に延びるハゼ2Bが形成されている。
尚、
図1においては、梁20と交差する梁や、タイトフレーム21などの図示が省略されている。
【0020】
図2~7に示すように、各スタンション1は、折板屋根2の隣接するハゼ2Bに掛け渡される支持部材10、支持部材10に支持された安全用具取り付け用の支柱11、支柱11を補強する単一の斜材12、及び、支持部材10を折板屋根2に着脱可能に固定する一対の固定具13、などを備えている。これにより、各スタンション1は、折板屋根葺き作業時に、折板屋根葺き作業の進捗に応じた折板屋根2に対する盛り替えが可能に構成されている。
【0021】
支持部材10は、平行に配置される一対の第1部材14と、各第1部材14の中央部にわたる第2部材15とを有している。これにより、支持部材10は、その両端部10Aの横幅が該両端部10Aにわたる中間部10Bの横幅よりも幅広になるH型に形成されている。各第1部材14は、折板屋根2の隣接するハゼ2Bに載置される天板部14Aと、隣接するハゼ2Bにおける頭部2Baの外側縁に接触する縦壁部14Bとを有するように、その断面形状がL字状に形成されている。第2部材15は、一対の第1部材14にわたる溝部15Aを有するように、その断面形状がU字状に形成されている。又、第2部材15は、折板屋根2の隣接する山部2Aにわたるとともに、折板屋根2の隣接するハゼ2Bの間に収まる長さを有している。第2部材15における長手方向の両端には、補強用の平板部材16が溶接され、溝部15Aの底面と平板部材16との間に、固定具13に備えられた挟持片17の出退移動を許容する開口18が形成されている。そして、第2部材15における長手方向の両端と平板部材16の外面とに、第1部材14における天板部14Aの端縁が溶接されている。
【0022】
支柱11は、その下端部に備えられた下向きU字状の連結部11Aが、支持部材10における第2部材15の一端部に支持されている。支柱11の上端部には、安全用具取り付け用のリング部11Bが備えられている。
【0023】
斜材12は、その一端部が支柱11の上部に溶接されている。斜材12の他端部は、支持部材10における第2部材15の支柱連結側とは反対側に位置する平板部材16に溶接されている。これにより、斜材12は、支柱11の上部と、支持部材10における支柱支持側とは反対側の端部とにわたっている。
【0024】
各固定具13には、レバー操作式のトグルクランプ機構13が採用されている。各トグルクランプ機構13は、第2部材15にネジ止めされた固定部材13A、固定部材13Aに揺動可能に支持された操作レバー13B、固定部材13Aに摺動可能に支持された摺動ロッド13C、及び、操作レバー13Bと摺動ロッド13Cとを連係するリンク部材13D、などを有している。そして、摺動ロッド13Cの先端に、前述した挟持片17がボルト連結されている。
これにより、各トグルクランプ機構13は、操作レバー13Bの揺動操作が行われると、この操作に連動して、摺動ロッド13Cとともに挟持片17を摺動させて、挟持片17を支持部材10の開口18から出退させるように構成されている。そして、この構成により、各トグルクランプ機構13は、スタンション1の支持部材10が折板屋根2の隣接する所定のハゼ2Bに掛け渡された状態では、操作レバー13Bの揺動操作によって、所定の各ハゼ2Bを支持部材10の各第1部材14と各挟持片17とで挟持する状態と、その挟持を解除する状態とに簡易に切り替えることができる。
【0025】
各挟持片17は、それらの横幅が第2部材15の溝部15Aに内接する幅広に形成されている。そして、折板屋根2のハゼ2Bを第1部材14との間に挟持した状態では、幅広に形成された挟持片17の先端部が、ハゼ2Bにおける頭部2Baよりも幅狭で頭部2Baの真下に位置する起立部2Bbに作用するようになっている。
【0026】
上記の構成により、作業者がスタンション1を折板屋根2に取り付ける場合は、先ず、スタンション1における支持部材10の各第1部材14が、折板屋根2の隣接する所定のハゼ2Bにおけるタイトフレーム上の吊子共締め箇所に載置されるように、支持部材10を隣接するハゼ2Bに掛け渡す。次に、各トグルクランプ機構13の操作レバー13Bを操作して、各挟持片17を支持部材10の各開口18から各ハゼ2Bに向けて突出させて、所定の各ハゼ2Bを支持部材10の各第1部材14と各挟持片17とで挟持する。これにより、スタンション1を折板屋根2に簡単に取り付けることができる。
又、作業者がスタンション1を折板屋根2から取り外す場合は、各トグルクランプ機構13の操作レバー13Bを操作して、各挟持片17を第2部材15の溝内に退避させて、支持部材10の各第1部材14と各挟持片17による所定の各ハゼ2Bの挟持を解除する。これにより、スタンション1を折板屋根2から簡単に取り外すことができる。
つまり、作業者は、折板屋根葺き作業の進捗に応じたスタンション1の盛り替えを、インパクトレンチやスパナなどの工具を使用することなく、又、ボルト・ナットや工具などを滑落させて紛失することによる作業の停滞を招くことなく、簡単かつ迅速に行うことができる。
その結果、折板屋根葺き作業における施工効率の向上を図ることができる。
【0027】
又、このスタンション1においては、支柱11の上部と支持部材10における支柱支持用の一端部10Aaとは反対側の他端部10Abとにわたる単一の斜材12を備えることから、安全ブロック3Aや親綱3Bを介して安全帯4が取り付けられる支柱11の支持強度を高めることができ、これにより、安全帯4を使用して行う折板屋根葺き作業での作業者の安全性を向上させることができる。
特に、スタンション1を折板屋根2に取り付ける場合の取り付け姿勢を、屋根葺き作業時に作業者が折板屋根2から落下する危険性のある領域Aに対して支柱11を挟んだ反対側の位置に斜材12が位置するように設定すれば、万が一、作業者が折板屋根2から落下しそうになったときには、そのときの荷重を斜材12に対して引張力として作用させることができる。これにより、作業者が折板屋根2から落下しそうになったときの荷重が斜材12に圧縮力として作用する場合に比較して、斜材12が持つ強度を支柱11の補強に有効に活用することができる。つまり、複数の斜材12を設ける場合に比較して、スタンション1の軽量化による持ち運びの容易化を図りながら、支柱11の支持強度を効果的に高めることができる。その結果、支柱11に安全ブロック3Aや親綱3Bを介して取り付けられる安全帯4を使用して行う折板屋根葺き作業での作業者の安全性を向上させることができる。
【0028】
ちなみに、作業者は、自身の安全帯4を単一のスタンション1に安全ブロック3Aのみを介して取り付けるようにすれば(
図2参照)、複数のスタンション1に渡し掛ける親綱3Bを使用する場合(
図1参照)よりも、折板屋根葺き作業の進捗に応じた折板屋根2に対するスタンション1の盛り替えが行い易くなる。その結果、折板屋根葺き作業において、スタンション1などを使用することによる安全性の確保を行いながら、施工効率の向上を図ることができる。
【0029】
更に、このスタンション1においては、一対のトグルクランプ機構13が支持部材10における支柱11と斜材12との間の中間部10Bに隣接して配備されていることから、作業者は、一方の手で支柱11又は斜材12を把持したまま、他方の手で各トグルクランプ機構13の操作レバー13Bを無理なく操作することができる。
そして、一対のトグルクランプ機構13が配備される支持部材10の中間部10Bは、折板屋根2の隣接するハゼ2Bに掛け渡される長さを有する支持部材10と、支持部材10の一端部10Aaに支持された支柱11と、支柱11の上部と支持部材10の他端部10Abとにわたる斜材12との間に形成された広い三角空間の底辺を形成するものであることから、作業者が各トグルクランプ機構13の操作レバー13Bを操作する際に、各操作レバー13Bが斜材12に干渉して操作レバー13Bの操作が阻害される虞を回避することができる。
その結果、折板屋根葺き作業の進捗に応じてスタンション1の盛り替えを行うときの各トグルクランプ機構13の操作性を向上させることができ、これにより、折板屋根葺き作業における施工効率の向上を更に図ることができる。
【0030】
又、このスタンション1においては、支持部材10の形状が、折板屋根2の隣接するハゼ2Bに載置される両端部10Aの横幅が該両端部10Aにわたる中間部10Bの横幅よりも幅広になるH型であることから、スタンション1が折板屋根2に取り付けられた状態では、幅広に形成された支持部材10の両端部10Aが折板屋根2のハゼ2Bに載置された状態になる。これにより、支持部材10の横幅方向での折板屋根2に対するスタンション1のガタツキをより効果的に抑制することができる。
その結果、折板屋根葺き作業の進捗に応じたスタンション1の盛り替えを簡単かつ迅速に行えるようにしながら、折板屋根2に取り付けたスタンション1の安定性を向上させることができる。
【0031】
更に、このスタンション1においては、支持部材10の形状が前述したH型であることにより、スタンション1が折板屋根2に取り付けられた場合に各ハゼ2Bの頭部外側縁に接触する各第1部材14の縦壁部14Bも、それらの横幅が幅広になっている。これにより、折板屋根2に対するスタンション1の縦軸回りのガタツキを効果的に抑制することができ、折板屋根2に取り付けたスタンション1の安定性を向上させることができる。
そして、各第1部材14との間で折板屋根2のハゼ2Bを挟持する各挟持片17も、前述したように、それらの横幅が幅広に形成されていることから、折板屋根2のハゼ2Bを第1部材14と挟持片17とで挟持したときの挟持範囲を広くすることができる。これにより、スタンション1を折板屋根2に対してより安定的に強固に取る付けることができる。
しかも、折板屋根2のハゼ2Bを第1部材14と挟持片17とで挟持した状態では、前述したように、各挟持片17の先端部がハゼ2Bの起立部2Bbに作用することから、万が一、作業者が折板屋根2から落下しそうになることでスタンション1の上部に引張力が作用した場合には、挟持片17の先端部がハゼ2Bの頭部2Baに引っ掛かってその引張力に抗することになる。そして、ハゼ2Bの頭部2Baに引っ掛かる挟持片17が幅広に形成されていることから、その引っ掛かりに起因したハゼ2Bの変形を抑制することができる。
その結果、スタンション1を折板屋根2に対してより好適に強固に取る付けることができ、これにより、万が一、作業者が折板屋根2から落下しそうになっても、スタンション1が折板屋根2から外れて作業者が地上に落下する虞を回避することができる。
【0032】
ちなみに、本実施形態で例示した構成のスタンション1は、折板屋根2に取り付けた状態で、支柱11のリング部11Bに安全ブロック3A及び安全帯4を介して取り付けられた85kgの錘を折板屋根2から落下させる強度確認試験を行ったところ、折板屋根2に取り付けた状態が維持されることを確認することができた。
【0033】
図8に示すように、折板屋根2には、折板屋根上での複数の台車5を利用した折板22の運搬を可能にするために、台車案内用の複数のガイドレール6が着脱可能に敷設されている。そして、支柱11は、その上端の高さ位置が、各ガイドレール6で案内される複数の台車5を利用して折板屋根上を運搬される折板22と干渉しない低い高さ位置に設定されている。
これにより、折板屋根葺き作業中に、作業者が複数の折板22を折板屋根上にて台車5を利用して運搬する場合には、スタンション1の盛り替えを行わなくても、その運搬が折板屋根2に取り付けられたスタンション1によって阻害される虞を回避することができる。
その結果、折板屋根上での折板22の運搬を円滑に行うことができ、結果、折板屋根葺き作業における施工効率の向上を更に図ることができる。
【0034】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。
尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0035】
(1)スタンション1は、支柱11が支持部材10の中間部10Bに支持され、一対のトグルクランプ機構13が、支柱11を挟んで支持部材10の両端側に分散配備された構成であってもよい。
【0036】
(2)スタンション1は、支柱11を支持部材10に連結することで、支柱11の支持強度として、作業者の安全性を確保することができる高い強度が得られる場合には、支柱11の上部と支持部材10の端部10Aとにわたる斜材12を備えない構成であってもよい。
【0037】
(3)スタンション1は、支柱11が支持部材10の中間部10Bに支持され、支柱11の上部と支持部材10の一端部10Aaとにわたる斜材12と、支柱11の上部と支持部材10の他端部10Abとにわたる斜材12とを備えることで、支柱11の支持強度として、作業者の安全性を確保することができる高い強度が得られるように構成されていてもよい。
【0038】
(4)スタンション1は、支柱11の下部と支持部材10とにわたるリブを備えることで、支柱11の支持強度として、作業者の安全性を確保することができる高い強度が得られるように構成されていてもよい。
【0039】
(5)スタンション1は、前述した強度確認試験において折板屋根2に取り付けた状態が維持されるのであれば、支持部材10における両端部10Aの横幅が中間部10Bの横幅と同じになるように支持部材10が形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0040】
2 折板屋根
2B ハゼ
5 台車
10 支持部材
10A 支持部材の端部
10Aa 支持部材の一端部
10Ab 支持部材の他端部
10B 支持部材の中間部
11 支柱
12 斜材
13 固定具(トグルクランプ機構)
22 屋根材